説明

直流−直流変換回路、直流−直流変換制御回路および直流−直流変換制御方法

【課題】 複数の制御信号により出力が制御される直流−直流変換回路の突入電流を確実に防止する。
【解決手段】 直流−直流変換回路は、複数の制御信号生成回路、複数のソフトスタート制御回路および起動制御回路を備えて構成される。複数の制御信号生成回路は、複数の制御信号に対応して設けられ、各々が複数の出力値の中で対応する出力値に基づいて複数の制御信号の中で対応する制御信号を生成する。複数のソフトスタート制御回路は、複数の制御信号に対応して設けられ、各々が対応する制御信号の直流−直流変換回路の起動時における変動を制御する。起動制御回路は、直流−直流変換回路の起動時に出力制御に関与する制御信号の変更に伴って対応するソフトスタート制御回路に動作開始を指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流−直流変換回路、直流−直流変換制御回路および直流−直流変換制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯型電子機器においては、電源として二次電池が使用されている。一般に、二次電池により供給される電圧は二次電池の放電が進むのに伴って低くなるため、携帯型電子機器の内部で使用される電圧を一定に保つためにDC−DCコンバータ(直流−直流変換回路)を用いた電源回路が搭載されている。また、携帯型電子機器においては、ACアダプタ等を介して外部電源を接続することで簡単に二次電池を充電できるように、DC−DCコンバータを用いた充電回路も搭載されている。携帯型電子機器は、外部電源が接続されていないときには二次電池の電源供給を使用して駆動され、外部電源が接続されているときには外部電源の電源供給を使用して駆動されるのが一般的である。
【0003】
DC−DCコンバータにおいては、DC−DCコンバータの起動時の突入電流を防止することが非常に重要である。例えば、PWM制御方式のDC−DCコンバータにおいては、DC−DCコンバータの起動時に、デッドタイム制御回路を用いて、スイッチング素子をオン/オフさせるための制御信号のパルス幅を強制的に小さくして時間の経過に伴って徐々に大きくすることにより、突入電流を防止する方法が知られている。これとは別に、DC−DCコンバータの起動時に、DC−DCコンバータの出力電圧を0Vから徐々に上昇させるような出力傾斜制御により、突入電流を防止する方法も知られている。
【0004】
図6は、DC−DCコンバータの一例を示している。DC−DCコンバータCNVは、定電圧制御型DC−DCコンバータとして構成されており、メインスイッチングトランジスタT1、同期整流トランジスタT2、チョークコイルL1、平滑用コンデンサC1、ソフトスタート用コンデンサCS1および制御回路CTLを有している。メインスイッチングトランジスタT1は、n型トランジスタで構成されている。メインスイッチングトランジスタT1の入力端子は、入力電圧Viを受けるための入力端子P1に接続されている。メインスイッチングトランジスタT1の出力端子は、チョークコイルL1の一端に接続されている。メインスイッチングトランジスタT1の制御端子は、制御回路CTLにおけるPWM比較器PCMPの出力信号QPを受けている。
【0005】
同期整流トランジスタT2は、n型トランジスタで構成されている。同期整流トランジスタT2の入力端子は、接地線に接続されている。同期整流トランジスタT2の出力端子は、チョークコイルL1の一端に接続されている。同期整流トランジスタT2の制御端子は、制御回路CTLにおけるPWM比較器PCMPの出力信号/QPを受けている。チョークコイルL1の他端は、出力電圧Voを供給するための出力端子P2に接続されている。平滑用コンデンサC1は、出力電圧Voを平滑化するために設けられ、出力端子P2と接地線との間に接続されている。ソフトスタート用コンデンサCS1の一端は、制御回路CTLにおける誤差増幅器ERA1の第1および第2非反転入力端子のうち第2非反転入力端子に接続されている。ソフトスタート用コンデンサCS1の他端は、接地線に接続されている。
【0006】
制御回路CTLは、定電流回路I1、スイッチ回路SW1A、SW1B、放電抵抗RD1、抵抗R1、R2、電圧発生器E1、誤差増幅器ERA1、三角波発振器OSCおよびPWM比較器PCMPを備えて構成されている。定電流回路I1およびスイッチ回路SW1Aは、電源電圧Vhの供給線とソフトスタート用コンデンサCS1の一端(誤差増幅器ERA1の第2非反転入力端子)との間に直列接続されている。スイッチ回路SW1Bおよび放電抵抗RD1は、ソフトスタート用コンデンサCS1の一端(誤差増幅器ERA1の第2非反転入力端子)と接地線との間に直列接続されている。スイッチ回路SW1Aは、DC−DCコンバータCNVの起動要求に応答してオン状態になり、DC−DCコンバータCNVの停止要求に応答してオフ状態になる。スイッチ回路SW1Bは、DC−DCコンバータCNVの停止要求に応答してオン状態になり、DC−DCコンバータCNVの起動要求に応答してオフ状態になる。抵抗R1、R2は、出力端子P2と接地線との間に直列接続されている。電圧発生器E1は、基準電圧Ve1を発生させる。
【0007】
誤差増幅器ERA1は、第1非反転入力端子の電圧および第2非反転入力端子の電圧のうち低い方と反転入力端子の電圧との電圧差を増幅して出力信号DF1を生成する。誤差増幅器ERA1は、基準電圧Ve1を第1非反転入力端子で受け、ソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1(スイッチ回路SW1A、SW1Bの接続ノードの電圧)を第2非反転入力端子で受け、抵抗R1、R2により出力電圧Voを分圧した電圧Vd(抵抗R1、R2の接続ノードの電圧)を反転入力端子で受けている。従って、誤差増幅器ERA1は、電圧Vs1が基準電圧Ve1より低いときに電圧Vs1と電圧Vdとの電圧差を増幅して出力信号DF1を生成し、電圧Vs1が基準電圧Ve1より高いときに基準電圧Ve1と電圧Vdとの電圧差を増幅して出力信号DF1を生成する。三角波発振器OSCは、所定周期の三角波信号TWを発生させる。例えば、三角波信号TWの電圧の最低値は1.0Vであり、三角波信号TWの電圧の最高値は2.0Vである。
【0008】
PWM比較器PCMPは、非反転入力端子の電圧と反転入力端子の電圧とを比較し、反転入力端子の電圧の方が低いときに出力信号QP(/QP)を高レベル(低レベル)に設定し、反転入力端子の電圧の方が高いときに出力信号QP(/QP)を低レベル(高レベル)に設定する電圧−パルス幅変換器である。PWM比較器PCMPは、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1を非反転入力端子で受け、三角波信号TWを反転入力端子で受けている。従って、PWM比較器PCMPは、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が三角波信号TWの電圧より高いときに出力信号QPを高レベルに設定し、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が三角波信号TWの電圧より低いときに出力信号QPを低レベルに設定する。
【0009】
以上のような構成のDC−DCコンバータCNVにおいて、メインスイッチングトランジスタT1がオン状態になると、同期整流トランジスタT2がオフ状態になり、入力側からチョークコイルL1を介して負荷に電流が供給される。チョークコイルL1の両端には入力電圧Viと出力電圧Voとの電圧差が印加されるため、チョークコイルL1を流れる電流は時間の経過に伴って増加し、負荷に供給される電流も時間の経過に伴って増加する。また、チョークコイルL1を電流が流れることで、チョークコイルL1にエネルギーが蓄積される。そして、メインスイッチングトランジスタT1がオフ状態になると、同期整流トランジスタT2がオン状態になり、チョークコイルL1に蓄積されたエネルギーが放電される。このとき、出力電圧Voは、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間Ton、メインスイッチングトランジスタT1のオフ期間Toffおよび入力電圧Viを用いて式(1)で表される。
Vo={Ton/(Ton+Toff)}×Vi・・・(1)
また、チョークコイルL1を流れる電流は、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間では入力側から出力側に流れ、メインスイッチングトランジスタT1のオフ期間では同期整流トランジスタT2を介して供給される。従って、平均入力電流Iiは、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間Ton、メインスイッチングトランジスタT1のオフ期間Toffおよび出力電流Ioを用いて式(2)で表される。
Ii={Ton/(Ton+Toff)}×Io・・・(2)
従って、入力電圧Viの変動に起因して出力電圧Voが変動する場合、出力電圧Voの変動を検出してメインスイッチングトランジスタT1のオン期間/オフ期間の比率を制御することで、出力電圧Voを一定に保つことができる。同様に、負荷の変動に起因して出力電圧Voが変動する場合も、出力電圧Voの変動を検出してメインスイッチングトランジスタT1のオン期間/オフ期間の比率を制御することで、出力電圧Voを一定に保つことができる。
【0010】
図7は、図6のPWM比較器の動作を示している。PWM比較器PCMPは、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が三角波信号TWの電圧より高いときに出力信号QPを高レベルに設定し、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が三角波信号TWの電圧より低いときに出力信号QPを低レベルに設定する。このため、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が低くなると、PWM比較器PCMPの出力信号QPのパルス幅(高レベル期間)は小さくなり、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が高くなると、PWM比較器PCMPの出力信号QPのパルス幅は大きくなる。このように、PWM比較器PCMPは、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧に比例したパルス幅の出力信号QPを生成する。
【0011】
従って、ソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1が基準電圧Ve1より高い期間では、出力電圧Voが低くなると、基準電圧Ve1と電圧Vd(抵抗R1、R2により出力電圧Voを分圧した電圧)との電圧差が大きくなり、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が高くなるため、PWM比較器PCMPの出力信号QPのパルス幅が大きくなり、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間が長くなる。一方、出力電圧Voが高くなると、基準電圧Ve1と電圧Vdとの電圧差が小さくなり、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が低くなるため、PWM比較器PCMPの出力信号QPのパルス幅が小さくなり、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間が短くなる。このように、PWM制御方式のDC−DCコンバータCNVでは、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間/オフ期間の比率を制御することにより、出力電圧Voを制御することが可能である。
【0012】
ところで、DC−DCコンバータCNVの起動時には、出力電圧Voは0Vであるため、入力電圧Viと出力電圧Voとの電圧差が最大になり、誤差増幅器ERA1において第1非反転入力端子の電圧が第2非反転入力端子の電圧より低いと仮定した場合、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧も最大になる。この場合、PWM比較器PCMPの出力信号QPのパルス幅が最大になり、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間が最大になる。また、チョークコイルL1を流れる最大電流Ipeakは、入力電圧Vi、出力電圧Vo、チョークコイルL1のインダクタンスLおよびメインスイッチングトランジスタT1のオン期間Tonを用いて式(3)で表される。
Ipeak={(Vi−Vo)/L}×Ton・・・(3)
DC−DCコンバータCNVの起動時には、出力電圧Voは0Vであるため、チョークコイルL1に印加される電圧が最大になるとともに、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間が最大になり、チョークコイルL1やメインスイッチングトランジスタT1に過大な突入電流が発生することが分かる。これは、DC−DCコンバータCNVが出力電圧Voを0Vから定格値(例えば、3.3V)まで一気に上昇させようとするために発生する。
【0013】
しかしながら、DC−DCコンバータCNVの起動時には、ソフトスタート用コンデンサCS1が定電流回路I1により充電されることで、ソフトスタート用コンデンサCSにより生成される電圧Vs1(誤差増幅器ERA1の第2非反転入力端子の電圧)は、0Vから徐々に上昇する。従って、DC−DCコンバータCNVの起動時には、誤差増幅器ERA1は、ソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1と抵抗R1、R2により出力電圧Voを分圧した電圧Vdとの電圧差を増幅して出力信号DF1を生成する。DC−DCコンバータCNVの起動時には、出力電圧Voは0Vであるため、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧は最小になり、PWM比較器PCMPの出力信号QPのパルス幅も最小になる。このため、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間が最小になり、突入電流が防止される。
【0014】
また、ソフトスタート用コンデンサCSにより生成される電圧Vs1は、出力電圧Voを規定する電圧であり、定電流回路I1により一定時間を掛けて徐々に上昇する。このため、出力電圧Voもそれに比例して上昇する。従って、出力電圧Voの立ち上がり傾斜は、電圧Vs1の立ち上がり傾斜により規定される。電圧Vs1が上昇して基準電圧Ve1より高くなると、誤差増幅器ERA1は、基準電圧Ve1と電圧Vdとの電圧差を増幅して出力信号DF1を生成する。従って、電圧Vs1が基準電圧Ve1に到達した後には、出力電圧Voは基準電圧Ve1により規定される。なお、DC−DCコンバータCNVの停止時には、ソフトスタート用コンデンサCS1が放電抵抗RD1を介して放電され、ソフトスタート用コンデンサCSにより生成される電圧Vs1が徐々に下降するため、出力電圧Voを徐々に下降させることができる。
【0015】
図8は、図6のDC−DCコンバータにおける出力電圧の立ち上がり/立ち下がりの様子を示している。時刻t1において、DC−DCコンバータCNVが起動されると、スイッチ回路SW1Aがオン状態になるとともにスイッチ回路SW1Bがオフ状態になるため、ソフトスタート用コンデンサCS1が定電流回路I1により充電される。これにより、ソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1が時間の経過とともに徐々に上昇する。これに伴って、出力電圧Voも時間の経過とともに徐々に上昇する。時刻t2において、電圧Vs1が基準電圧Ve1に到達すると、出力電圧Voが定格値(3.3V)に到達し、それ以降、出力電圧Voは基準電圧Ve1により制御されて一定に保たれる。
【0016】
時刻t3において、DC−DCコンバータCNVが停止されると、スイッチ回路SW1Aがオフ状態になるとともにスイッチ回路SW1Bがオン状態になるため、ソフトスタート用コンデンサCS1が放電抵抗RD1により放電される。これにより、ソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1が時間の経過とともに徐々に下降する。これに伴って、出力電圧Voも時間の経過とともに徐々に下降する。時刻t4において、電圧Vs1が0Vに到達すると、出力電圧Voも0Vに到達し、出力電圧Voが0Vになった時点でDC−DCコンバータCNVにおける全ての回路が動作を停止する。
【0017】
なお、本発明の先行技術としては、例えば、特許文献1〜5が挙げられる。
【特許文献1】特開平9−154275号公報
【特許文献2】特開平10−323026号公報
【特許文献3】特開2005−354845号公報
【特許文献4】特開2005−323413号公報
【特許文献5】特開2005−304279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述のように、DC−DCコンバータの突入電流を防止する方法は幾つか知られているが、これらの方法は、定電圧制御型DC−DCコンバータや定電流制御型DC−DCコンバータのように、単数の制御信号により出力が制御されるDC−DCコンバータに対するものである。DC−DCコンバータには、二次電池(リチウムイオン二次電池等)の充電回路としてよく使用される定電圧定電流制御型DC−DCコンバータのように、複数の制御信号により出力が制御されるDC−DCコンバータも存在する。
【0019】
定電圧定電流制御型DC−DCコンバータにおいては、負荷が受動負荷である場合、DC−DCコンバータが動作を開始して出力電圧が生成されると、出力電圧に比例し負荷インピーダンスに反比例する出力電流が流れる。一方、負荷が能動負荷(例えば、二次電池)である場合、DC−DCコンバータが動作を開始して出力電圧が生成されても直ぐに出力電流が流れることはない。出力電圧が負荷の電圧以上になるまでは出力電流は0Aであり、出力電圧が負荷の電圧より高くなると出力電流が流れ出す。定電圧定電流制御型DC−DCコンバータを二次電地の充電回路として使用した場合、DC−DCコンバータの起動時において、出力制御に関与する制御信号が切り替わる(出力電圧用制御信号の電圧と出力電流用制御信号の電圧との大小関係が入れ替わる)のに時間が掛かって無制御状態が存在し、突入電流が発生するという問題があった。
【0020】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、複数の制御信号により出力が制御される直流−直流変換回路の突入電流を確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一形態では、複数の制御信号により出力が制御される直流−直流変換回路(その直流−直流変換回路に適用される直流−直流変換制御回路)は、複数の制御信号生成回路、複数のソフトスタート制御回路および起動制御回路を備えて構成される。例えば、複数の制御信号は、出力電圧を一定に制御するための制御信号と出力電流を一定に制御するための制御信号とで構成される。また、例えば、直流−直流変換回路は、二次電池を充電するための充電回路に用いられ、半導体装置を用いて構成される。
【0022】
複数の制御信号生成回路は、複数の制御信号に対応して設けられる。複数の制御信号生成回路の各々は、複数の出力値の中で対応する出力値に基づいて複数の制御信号の中で対応する制御信号を生成する(制御信号生成工程)。複数のソフトスタート制御回路は、複数の制御信号に対応して設けられる。複数のソフトスタート制御回路の各々は、対応する制御信号の直流−直流変換回路の起動時における変動を制御する(ソフトスタート制御工程)。起動制御回路は、直流−直流変換回路の起動時に出力制御に関与する制御信号の変更に伴って対応するソフトスタート制御回路に動作開始を指示する(起動制御工程)。
【0023】
例えば、複数の制御信号生成回路の各々は、第1および第2基準電圧のうち低い方と対応する出力値から得られる電圧との電圧差を増幅して対応する制御信号を生成する誤差増幅器を備えて構成される。複数のソフトスタート制御回路の各々は、起動制御回路による動作開始の指示に応答して、対応する制御信号生成回路における第2基準電圧を第1基準電圧より低い電位から上昇させる。
【0024】
以上のような直流−直流変換回路では、制御信号生成回路毎にソフトスタート制御回路が設けられ、直流−直流変換回路の起動時において出力制御に関与する制御信号(制御信号生成回路)の変更に伴って対応するソフトスタート制御回路が動作を開始する。これにより、直流−直流変換回路の起動時において出力制御に関与する制御信号が切り替わるのに要する時間を短くすることができ、直流−直流変換回路の無制御状態を無くして突入電流を確実に防止できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数の制御信号により出力が制御される直流−直流変換回路の突入電流を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示している。図2および図3は、図1のPWM比較器の動作を示している。なお、本発明の一実施形態を説明するにあたって、図6で説明した要素と同一の要素については、図6で使用した符号と同一の符号を使用し、詳細な説明を省略する。
【0027】
本発明の一実施形態のDC−DCコンバータCNV1は、定電圧定電流制御型DC−DCコンバータとして構成されており、DC−DCコンバータCNV(図6)において、電流測定抵抗RSおよびソフトスタート用コンデンサCS2を追加するとともに、制御回路CTLを制御回路CTL1に置き換えて構成されている。例えば、DC−DCコンバータCNV1は、半導体装置により具現され、二次電池BTRの充電回路として携帯型電子機器に搭載される。電流測定抵抗RSは、出力端子P2とチョークコイルL1の他端との間に接続されている。ソフトスタート用コンデンサCS2の一端は、制御回路CTL1における誤差増幅器ERA2の第1および第2非反転入力端子のうち第2非反転入力端子に接続されている。ソフトスタート用コンデンサCS2の他端は、接地線に接続されている。
【0028】
制御回路CTL1は、制御回路CTL(図6)において、電圧増幅器AMP、定電流回路I2、スイッチ回路SW2A、SW2B、放電抵抗RD2、電圧発生器E2、E3、誤差増幅器ERA2、電圧比較器VCMP、フリップフロップFF1を追加するとともに、PWM比較器PCMPをPWM比較器PCMP1に置き換えて構成されている。電圧増幅器AMPは、電流測定抵抗RSの一端の電圧を非反転入力端子で受け、電流測定抵抗RSの他端の電圧(出力電圧Vo)を反転入力端子で受けている。これにより、電圧増幅器AMPは、電流測定抵抗RSの一端の電圧と電流測定抵抗RSの他端の電圧との電圧差を増幅して電圧Vcを生成する。従って、電圧増幅器AMPにより生成される電圧Vcは、DC−DCコンバータCNV1の出力電流に対応している。
【0029】
定電流回路I2およびスイッチ回路SW2Aは、電源電圧Vhの供給線とソフトスタート用コンデンサCS2の一端(誤差増幅器ERA2の第2非反転入力端子)との間に直列接続されている。スイッチ回路SW2Bおよび放電抵抗RD2は、ソフトスタート用コンデンサCS2の一端(誤差増幅器ERA2の第2非反転入力端子)と接地線との間に直列接続されている。スイッチ回路SW2Aは、スイッチ回路SW1Aと同様に、DC−DCコンバータCNV1の起動要求に応答してオン状態になり、DC−DCコンバータCNV1の停止要求に応答してオフ状態になる。スイッチ回路SW2Bは、フリップフロップFF1の出力信号/QFが高レベルに設定されているときにオン状態になり、フリップフロップFF1の出力信号/QFが低レベルに設定されているときにオフ状態になる。電圧発生器E2は、基準電圧Ve2を発生させる。
【0030】
誤差増幅器ERA2は、第1非反転入力端子の電圧および第2非反転入力端子の電圧のうち低い方と反転入力端子の電圧との電圧差を増幅して出力信号DF2を生成する。誤差増幅器ERA2は、基準電圧Ve2を第1非反転入力端子で受け、ソフトスタート用コンデンサCS2により生成される電圧Vs2(スイッチ回路SW2A、SW2Bの接続ノードの電圧)を第2非反転入力端子で受け、電圧増幅器AMPにより生成される電圧Vcを反転入力端子で受けている。従って、誤差増幅器ERA2は、電圧Vs2が基準電圧Ve2より低いときに電圧Vs2と電圧Vcとの電圧差を増幅して出力信号DF2を生成し、電圧Vs2が基準電圧Ve2より高いときに基準電圧Ve2と電圧Vcとの電圧差を増幅して出力信号DF2を生成する。
【0031】
PWM比較器PCMP1は、第1非反転入力端子の電圧および第2非反転入力端子の電圧のうち低い方と反転入力端子の電圧とを比較し、反転入力端子の電圧の方が低いときに出力信号QP(/QP)を高レベル(低レベル)に設定し、反転入力端子の電圧の方が高いときに出力信号QP(/QP)を低レベル(高レベル)に設定する電圧−パルス幅変換器である。PWM比較器PCMP1は、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1を第1非反転入力端子で受け、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2を第2非反転入力端子で受け、三角波信号TWを反転入力端子で受けている。
【0032】
DC−DCコンバータCNV1の定電圧動作時には、出力電圧Voは定格値に近い状態であり、抵抗R1、R2により出力電圧Voを分圧した電圧Vdは基準電圧Ve1に近い状態である。一方、出力電流は定格値より十分に小さい状態であり、電圧増幅器AMPにより電流測定抵抗RSの両端の電圧差を増幅した電圧Vcは基準電圧Ve2より十分に小さい状態である。このため、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧は、三角波信号TWの電圧の最高値まで上昇している。PWM比較器PCMP1は、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1および誤差増幅器ERA2の出力信号DF2のうち電圧が低い方と三角波信号TWとを比較するため、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2は、PWM比較器PCMP1の動作に関与しない。
【0033】
従って、DC−DCコンバータCNV1の定電圧動作時には、図2に示すように、PWM比較器PCMP1は、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が三角波信号TWの電圧より高いときに出力信号QPを高レベルに設定し、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が三角波信号TWの電圧より低いときに出力信号QPを低レベルに設定する。このため、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が低くなると、PWM比較器PCMP1の出力信号QPのパルス幅は小さくなり、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が高くなると、PWM比較器PCMP1の出力信号QPのパルス幅は大きくなる。このように、DC−DCコンバータCNV1の定電圧動作時には、PWM比較器PCMP1は、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧に比例したパルス幅の出力信号QPを生成する。
【0034】
出力電圧Voが低くなると、基準電圧Ve1と電圧Vd(抵抗R1、R2により出力電圧Voを分圧した電圧)との電圧差が大きくなり、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が高くなるため、PWM比較器PCMP1の出力信号QPのパルス幅が大きくなり、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間が長くなる。一方、出力電圧Voが高くなると、基準電圧Ve1と電圧Vdとの電圧差が小さくなり、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が低くなるため、PWM比較器PCMP1の出力信号QPのパルス幅が小さくなり、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間が短くなる。このように、DC−DCコンバータCNV1の定電圧動作時には、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間/オフ期間の比率を制御することにより、出力電圧Voが調整される。
【0035】
また、DC−DCコンバータCNV1の定電流動作時には、出力電流は定格値に近い値状態であり、電圧増幅器AMPにより電流測定抵抗RSの両端の電圧差を増幅した電圧Vcは基準電圧Ve2に近い状態である。一方、出力電圧Voは定格値より十分に小さい状態であり、抵抗R1、R2により出力電圧を分圧した電圧Vdは基準電圧Ve1より十分に小さい状態である。このため、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧は、三角波信号TWの電圧の最高値まで上昇している。PWM比較器PCMP1は、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1および誤差増幅器ERA2の出力信号DF2のうち電圧が低い方と三角波信号TWとを比較するため、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1は、PWM比較器PCMP1の動作に関与しない。
【0036】
従って、DC−DCコンバータCNV1の定電流動作時には、図3に示すように、PWM比較器PCMP1は、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧が三角波信号TWの電圧より高いときに出力信号QPを高レベルに設定し、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧が三角波信号TWの電圧より低いときに出力信号QPを低レベルに設定する。このため、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧が低くなると、PWM比較器PCMP1の出力信号QPのパルス幅は小さくなり、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧が高くなると、PWM比較器PCMP1の出力信号QPのパルス幅は大きくなる。このように、DC−DCコンバータCNV1の定電流動作時には、PWM比較器PCMP1は、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧に比例したパルス幅の出力信号QPを生成する。
【0037】
出力電流が小さくなると、基準電圧Ve2と電圧Vc(電圧増幅器AMPにより電流測定抵抗RSの両端の電圧差を増幅した電圧)との電圧差が大きくなり、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧が高くなるため、PWM比較器PCMP1の出力信号QPのパルス幅が大きくなり、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間が長くなる。一方、出力電流が大きくなると、基準電圧Ve2と電圧Vcとの電圧差が小さくなり、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧が低くなるため、PWM比較器PCMP1の出力信号QPのパルス幅が小さくなり、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間が短くなる。このように、DC−DCコンバータCNV1の定電流動作時には、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間/オフ期間の比率を制御することにより、出力電流が調整される。
【0038】
電圧発生器E3は、基準電圧Ve3を発生させる。電圧比較器VCMPは、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧を非反転入力端子で受け、基準電圧Ve3を反転入力端子で受けている。これにより、電圧比較器VCMPは、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が基準電圧Ve3より高いときに出力信号SETを高レベルに設定し、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が基準電圧Ve3より低いときに出力信号SETを低レベルに設定する。フリップフロップFF1は、DC−DCコンバータCNV1の起動要求および停止要求に応答してリセット状態になり、電圧比較器VCMPの出力信号SETの立ち上がり遷移(低レベルから高レベルへの遷移)に応答してセット状態になる。これにより、フリップフロップFF1の出力信号/QFは、DC−DCコンバータCNV1の起動要求および停止要求に応答して高レベルに設定され、電圧比較器VCMPの出力信号SETの立ち上がり遷移に応答して低レベルに設定される。
【0039】
以上のような構成のDC−DCコンバータCNV1が起動されると、スイッチ回路SW1Aがオン状態になるとともにスイッチ回路SW1Bがオフ状態になって定電流回路I1によりソフトスタート用コンデンサCS1が充電され、ソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1が0Vから徐々に上昇する。電圧Vs1は誤差増幅器ERA1の第2非反転入力端子に供給されているため、電圧Vs1が基準電圧Ve1より低い期間では、出力電圧Voは電圧Vs1により規定される。
【0040】
また、DC−DCコンバータCNV1が起動されると、スイッチ回路SW2Aがオン状態になって定電流回路I2によりソフトスタート用コンデンサCS2が充電されるが、フリップフロップFF1がリセット状態に初期化され、フリップフロップFF1の出力信号/QFが高レベルに設定されるため、スイッチ回路SW2Bはオン状態のままである。このため、ソフトスタート用コンデンサCS2により生成される電圧Vs2は0Vに近い状態で保たれる。電圧Vs2は誤差増幅器ERA2の第2非反転入力端子に供給されているため、電圧Vs2が基準電圧Ve2より低い期間では、出力電流は電圧Vs2により規定される。この結果、出力電圧Voは0Vから徐々に上昇するように制御され、出力電流は0Aに近い状態で保たれるように制御される。
【0041】
DC−DCコンバータCNV1の負荷が二次電池BTRである場合、ソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1の上昇に伴って出力電圧Voも徐々に上昇するが、出力電流は0Aのままである。電圧Vs1が上昇しても出力電圧Voが二次電池BTRの電圧に到達するまでは電流測定抵抗RSの両端の電圧差は0Vであり、電圧増幅器AMPにより電流測定抵抗RSの両端の電圧差を増幅した電圧Vcも0Vである。しかしながら、ソフトスタート用コンデンサCS2の電圧は0Vに近い状態であるため、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2はPWM比較器PCMP1の動作には関与しないが、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧は誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧に近い状態である。
【0042】
出力電圧Voが上昇して二次電池BTRの電圧より高くなると出力電流が流れ出し、二次電池BTRの充電が開始される。DC−DCコンバータCNV1は定電圧動作を実施しているため、電圧Vs1が基準電圧Ve1より低い期間では出力電圧Voの制御を担当する誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が上昇するが、出力電流の制御を担当する誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧によりPWM比較器PCMP1の出力信号QP、/QPのパルス幅が制限されるため、出力電圧Voの上昇が妨げられる。一方、ソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1は更に上昇するため、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧も急激に上昇して三角波信号TWの電圧の最高値に到達する。
【0043】
誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が三角波信号TWの電圧の最高値に到達して基準電圧Ve3より高くなると、電圧比較器VCMPの出力信号SETが低レベルから高レベルに遷移する。これにより、フリップフロップFF1がセット状態になり、フリップフロップFF1の出力信号/QFが低レベルに設定されるため、スイッチ回路SW2Bがオフ状態になる。スイッチ回路SW2Bがオフ状態になると、定電流回路I2によりコンデンサCS2が充電されて、ソフトスタート用コンデンサCS2により生成される電圧Vs2が徐々に上昇するため、DC―DCコンバータCNV1の出力電流が0Aに近い状態から徐々に定格値まで上昇する。これにより、DC−DCコンバータCNV1の起動時の突入電流が防止される。
【0044】
図4は、本発明の第1比較例を示している。なお、本発明の第1比較例を説明するにあたって、本発明の一実施形態(図1)で説明した要素と同一の要素については、本発明の一実施形態で使用した符号と同一の符号を使用し、詳細な説明を省略する。
本発明の第1比較例のDC−DCコンバータCNV1aは、DC−DCコンバータCNV1(図1)において、ソフトスタート用コンデンサCS2を取り除くとともに、制御回路CTL1を制御回路CTL1aに置き換えて構成されている。制御回路CTL1aにおける制御回路CTL1(図1)との相違点は、定電流回路I2、スイッチ回路SW2A、SW2B、放電抵抗RD2、電圧発生器E3、電圧比較器VCMPおよびフリップフロップFF1が取り除かれている点、誤差増幅器ERA2がソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1を第2非反転入力端子で受けている点である。
【0045】
以上のような構成のDC−DCコンバータCNV1aが起動されると、スイッチ回路SW1Aがオン状態になるとともにスイッチ回路SW1Bがオフ状態になって定電流回路I1によりソフトスタート用コンデンサCS1が充電され、ソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1が0Vから徐々に上昇する。電圧Vs1は誤差増幅器ERA1の第2非反転入力端子に供給されているため、電圧Vs1が基準電圧Ve1より低い期間では、出力電圧Voは電圧Vs1により規定される。この結果、出力電圧Voは、0Vから徐々に上昇するように制御される。また、電圧Vs1は、誤差増幅器ERA2の第2非反転入力端子にも供給されているため、電圧Vs1が基準電圧Ve2より低い期間では、出力電流は電圧Vs1により規定される。この結果、出力電流は、0Aから徐々に増加するように制御される。
【0046】
DC−DCコンバータCNV1aの起動直後においては、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧および誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧が最小になり、メインスイッチングトランジスタT1のオン期間が最小になる。このため、入力側からの電流の突入が防止される。この後、ソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1が時間の経過に伴って徐々に上昇すると、誤差増幅器ERA1が出力電圧Voを徐々に上昇させるように動作し、誤差増幅器ERA2が出力電流を徐々に増加させるように動作する。電圧Vs1が基準電圧Ve1より高くなると、誤差増幅器ERA1は、基準電圧Ve1と電圧Vd(抵抗R1、R2により出力電圧Voを分圧した電圧)との電圧差を増幅して出力信号DF1を生成する。同様に、電圧Vs1が基準電圧Vs2より高くなると、誤差増幅器ERA2は、基準電圧Ve2と電圧Vc(電圧増幅器AMPにより電流測定抵抗RSの両端の電圧差を増幅した電圧)との電圧差を増幅して出力信号DF2を生成する。
【0047】
DC−DCコンバータCNV1aの負荷が二次電池BTRである場合、ソフトスタート用コンデンサCS1により生成される電圧Vs1の上昇に伴って出力電圧Voも徐々に上昇するが、出力電流は0Aのままである。電圧Vs1が上昇しても電流測定抵抗RSの両端の電圧差は0Vであり、電圧増幅器AMPにより電流測定抵抗RSの両端の電圧差を増幅した電圧Vcも0Vであるため、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧も上昇し、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2はPWM比較器PCMP1の動作に関与しなくなる。
【0048】
出力電圧Voが上昇して二次電池BTRの電圧より高くなると出力電流が流れ出し、二次電池BTRの充電が開始される。DC−DCコンバータCNV1aは定電圧動作を実施しており、電圧Vs1が基準電圧Ve1より低い期間では誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が上昇するため、出力電圧Voが更に上昇し、二次電池BTRの充電電流(出力電流)が急激に増加して突入電流が発生する。
【0049】
一方、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧はこの間も三角波信号TWの電圧の最大値に保たれているが、二次電池BTRの充電の開始により電流測定抵抗RSの両端に電圧差が発生し、電圧Vcが0Vから上昇を開始する。このとき、ソフトスタート用コンデンサCS2により生成される電圧Vs2は0Vではなく高い電圧に到達した状態であるため、出力電流が急激に増加しても誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧が急激に下降することはない。この間も電圧Vs1が基準電圧Ve1より低ければ誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧が上昇するため、出力電圧Voが更に上昇し、二次電池BTRの充電電流(出力電流)が更に急激に増加して突入電流が発生する。
【0050】
この後、出力電流の増加に伴って誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧が下降するため、DC−DCコンバータCNV1aは定電圧動作から定電流動作に移行する。このとき、PWM比較器PCMP1の動作に関与していない誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧が、PWM比較器PCMP1の動作に関与している誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧より遙かに高いため、誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧が誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧より低くなるまでに要する時間(定電圧動作から定電流動作への移行期間)が非常に長くなる。定電圧動作から定電流動作への移行期間ではDC−DCコンバータCNV1aが無制御状態になって突入電流が発生し続けるため、定電圧動作から定電流動作への移行期間を短くする必要がある。このように、本発明の第1比較例では、DC−DCコンバータCNV1aの起動時に、誤差増幅器ERA1の出力信号DF1の電圧と誤差増幅器ERA2の出力信号DF2の電圧との大小関係が入れ替わるまでの長期間において無制御状態が存在し、突入電流が発生するという問題がある。
【0051】
図5は、本発明の第2比較例を示している。なお、本発明の第2比較例を説明するにあたって、本発明の一実施形態(図1)で説明した要素と同一の要素については、本発明の一実施形態で使用した符号と同一の符号を使用し、詳細な説明を省略する。
本発明の第2比較例のDC−DCコンバータCNV1bは、DC−DCコンバータCNV1(図1)において、ソフトスタート用コンデンサCS2を取り除くとともに、制御回路CTL1を制御回路CTL1bに置き換えて構成されている。制御回路CTL1bにおける制御回路CTL1(図1)との相違点は、電圧発生器E3、電圧比較器VCMPおよびフリップフロップFF1が取り除かれている点、スイッチ回路SW2Bに代えてスイッチ回路SW3Bが設けられている点である。スイッチ回路SW3Bは、スイッチ回路SW1Bと同様に、DC−DCコンバータCNV1bの停止要求に応答してオン状態になり、DC−DCコンバータCNV1bの起動要求に応答してオフ状態になる。以上のような構成のDC−DCコンバータCNV1bは、DC−DCコンバータCNV1a(図4)と同様に動作する。このため、本発明の第2比較例でも、本発明の第1比較例で説明したような突入電流の問題がある。
【0052】
これらに対して、前述した本発明の一実施形態では、誤差増幅器ERA1に対応して第1ソフトスタート制御回路(ソフトスタート用コンデンサCS1等)が設けられるとともに、誤差増幅器ERA2に対応して第2ソフトスタート制御回路(ソフトスタート用コンデンサCS2等)が設けられ、DC―DCコンバータCNV1の起動時において定電圧動作から定電流動作への移行に伴って第2ソフトスタート制御回路が起動される。これにより、定電圧動作から定電流動作への移行期間を短くすることができ、DC−DCコンバータCNV1の無制御状態を無くして突入電流を確実に防止できる。
【0053】
なお、前述の実施形態では、スイッチング方式のDC−DCコンバータに本発明を適用した例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、例えば、リニアレギュレータ方式のDC−DCコンバータに本発明を適用してもよい。前述の実施形態では、降圧型DC−DCコンバータに本発明を適用した例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、例えば、昇圧型DC−DCコンバータあるいは昇降圧型DC−DCコンバータに本発明を適用してもよい。
【0054】
また、前述の実施形態では、二次電池の正極側の電圧を制御して二次電池を充電するDC−DCコンバータ(充電回路)に本発明を適用した例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。例えば、二次電池の負極側の電圧を制御して二次電池の正極および負極間に印加される電圧を制御して二次電池を充電するDC−DCコンバータ(充電回路)に本発明を適用してもよい。
【0055】
更に、前述の実施形態では、DC−DCコンバータが半導体装置により具現された例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、例えば、DC−DCコンバータがモジュール(プリント基板等)により具現されてもよい。前述の実施形態では、DC−DCコンバータを用いた充電回路および二次電池が別々に携帯型電子機器に搭載される場合に本発明を適用した例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。例えば、DC−DCコンバータを用いた充電回路および二次電池で構成される二次電池パックが携帯型電子機器に搭載される場合に本発明を適用してもよい。
【0056】
以上の実施形態において説明した発明を整理し、付記として以下に開示する。
(付記1)
複数の制御信号により出力が制御される直流−直流変換回路であって、
前記複数の制御信号に対応して設けられ、各々が複数の出力値の中で対応する出力値に基づいて前記複数の制御信号の中で対応する制御信号を生成する複数の制御信号生成回路と、
前記複数の制御信号に対応して設けられ、各々が対応する制御信号の直流−直流変換回路の起動時における変動を制御する複数のソフトスタート制御回路と、
直流−直流変換回路の起動時に出力制御に関与する制御信号の変更に伴って対応するソフトスタート制御回路に動作開始を指示する起動制御回路とを備えることを特徴とする直流−直流変換回路。
(付記2)
付記1に記載の直流−直流変換回路において、
前記複数の制御信号生成回路の各々は、第1および第2基準電圧のうち低い方と対応する出力値から得られる電圧との電圧差を増幅して対応する制御信号を生成する誤差増幅器を備え、
前記複数のソフトスタート制御回路の各々は、前記起動制御回路による動作開始の指示に応答して、対応する制御信号生成回路における第2基準電圧を第1基準電圧より低い電位から上昇させることを特徴とする直流−直流変換回路。
(付記3)
付記1に記載の直流−直流変換回路において、
前記複数の制御信号は、出力電圧を一定に制御するための制御信号と出力電流を一定に制御するための制御信号とで構成されることを特徴とする直流−直流変換回路。
(付記4)
付記1に記載の直流−直流変換回路において、
直流−直流変換回路は、二次電池を充電するための充電回路に用いられることを特徴とする直流−直流変換回路。
(付記5)
付記1に記載の直流−直流変換回路において、
直流−直流変換回路は、半導体装置を用いて構成されることを特徴とする直流−直流変換回路。
(付記6)
複数の制御信号により出力が制御される直流−直流変換回路に適用される直流−直流変換制御回路であって、
前記複数の制御信号に対応して設けられ、各々が複数の出力値の中で対応する出力値に基づいて前記複数の制御信号の中で対応する制御信号を生成する複数の制御信号生成回路と、
前記複数の制御信号に対応して設けられ、各々が対応する制御信号の直流−直流変換回路の起動時における変動を制御する複数のソフトスタート制御回路と、
直流−直流変換回路の起動時に出力制御に関与する制御信号の変更に伴って対応するソフトスタート制御回路に動作開始を指示する起動制御回路とを備えることを特徴とする直流−直流変換制御回路。
(付記7)
付記6に記載の直流−直流変換制御回路において、
前記複数の制御信号生成回路の各々は、第1および第2基準電圧のうち低い方と対応する出力値から得られる電圧との電圧差を増幅して対応する制御信号を生成する誤差増幅器を備え、
前記複数のソフトスタート制御回路の各々は、前記起動制御回路による動作開始の指示に応答して、対応する制御信号生成回路における第2基準電圧を第1基準電圧より低い電位から上昇させることを特徴とする直流−直流変換制御回路。
(付記8)
付記6に記載の直流−直流変換制御回路において、
前記複数の制御信号は、出力電圧を一定に制御するための制御信号と出力電流を一定に制御するための制御信号とで構成されることを特徴とする直流−直流変換制御回路。
(付記9)
複数の制御信号により出力が制御される直流−直流変換回路に適用される直流−直流変換制御方法であって、
前記複数の制御信号の各々について、複数の出力値の中で対応する出力値に基づいて制御信号を生成する制御信号生成工程と、
前記複数の制御信号の各々について、制御信号の直流−直流変換回路の起動時における変動を制御するソフトスタート制御工程と、
直流−直流変換回路の起動時に出力制御に関与する制御信号の変更に伴って対応する制御信号についてソフトスタート制御工程の開始を指示する起動制御工程とを含むことを特徴とする直流−直流変換制御方法。
(付記10)
付記9に記載の直流−直流変換制御方法において、
前記制御信号生成工程では、前記複数の制御信号の各々について、第1および第2基準電圧のうち低い方と対応する出力値から得られる電圧との電圧差を増幅して制御信号を生成し、
前記ソフトスタート制御工程では、前記複数の制御信号の各々について、前記起動制御工程による開始の指示に応答して第2基準電圧を第1基準電圧より低い電位から上昇させることを特徴とする直流−直流変換制御方法。
(付記11)
付記9に記載の直流−直流変換制御方法において、
前記複数の制御信号は、出力電圧を一定に制御するための制御信号と出力電流を一定に制御するための制御信号とで構成されることを特徴とする直流−直流変換制御方法。
【0057】
以上、本発明について詳細に説明してきたが、前述の実施形態およびその変形例は発明の一例に過ぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明を逸脱しない範囲で変形可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態を示す説明図である。
【図2】図1のPWM比較器の動作を示す説明図(定電圧動作時)である。
【図3】図1のPWM比較器の動作を示す説明図(定電流動作時)である。
【図4】本発明の第1比較例を示す説明図である。
【図5】本発明の第2比較例を示す説明図である。
【図6】DC−DCコンバータの一例を示す説明図である。
【図7】図6のPWM比較器の動作を示す説明図である。
【図8】図6のDC−DCコンバータにおける出力電圧の立ち上がり/立ち下がりの様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
AMP‥電圧増幅器;BTR‥二次電池;C1‥平滑用コンデンサ;CNV1‥DC−DCコンバータ;CS1、CS2‥ソフトスタート用コンデンサ;CTL1‥制御回路;E1、E2、E3‥電圧発生器;FF1‥フリップフロップ;I1、I2‥定電流回路;L1‥チョークコイル;OSC‥三角波発振器;PCMP1‥PWM比較器;R1、R2‥抵抗;RD1、RD2‥放電抵抗;RS‥電流測定抵抗;SW1A、SW1B、SW2A、SW2B‥スイッチ回路;T1‥メインスイッチングトランジスタ;T2‥同期整流トランジスタ;VCMP‥電圧比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御信号により出力が制御される直流−直流変換回路であって、
前記複数の制御信号に対応して設けられ、各々が複数の出力値の中で対応する出力値に基づいて前記複数の制御信号の中で対応する制御信号を生成する複数の制御信号生成回路と、
前記複数の制御信号に対応して設けられ、各々が対応する制御信号の直流−直流変換回路の起動時における変動を制御する複数のソフトスタート制御回路と、
直流−直流変換回路の起動時に出力制御に関与する制御信号の変更に伴って対応するソフトスタート制御回路に動作開始を指示する起動制御回路とを備えることを特徴とする直流−直流変換回路。
【請求項2】
請求項1に記載の直流−直流変換回路において、
前記複数の制御信号生成回路の各々は、第1および第2基準電圧のうち低い方と対応する出力値から得られる電圧との電圧差を増幅して対応する制御信号を生成する誤差増幅器を備え、
前記複数のソフトスタート制御回路の各々は、前記起動制御回路による動作開始の指示に応答して、対応する制御信号生成回路における第2基準電圧を第1基準電圧より低い電位から上昇させることを特徴とする直流−直流変換回路。
【請求項3】
請求項1に記載の直流−直流変換回路において、
前記複数の制御信号は、出力電圧を一定に制御するための制御信号と出力電流を一定に制御するための制御信号とで構成されることを特徴とする直流−直流変換回路。
【請求項4】
請求項1に記載の直流−直流変換回路において、
直流−直流変換回路は、二次電池を充電するための充電回路に用いられることを特徴とする直流−直流変換回路。
【請求項5】
請求項1に記載の直流−直流変換回路において、
直流−直流変換回路は、半導体装置を用いて構成されることを特徴とする直流−直流変換回路。
【請求項6】
複数の制御信号により出力が制御される直流−直流変換回路に適用される直流−直流変換制御回路であって、
前記複数の制御信号に対応して設けられ、各々が複数の出力値の中で対応する出力値に基づいて前記複数の制御信号の中で対応する制御信号を生成する複数の制御信号生成回路と、
前記複数の制御信号に対応して設けられ、各々が対応する制御信号の直流−直流変換回路の起動時における変動を制御する複数のソフトスタート制御回路と、
直流−直流変換回路の起動時に出力制御に関与する制御信号の変更に伴って対応するソフトスタート制御回路に動作開始を指示する起動制御回路とを備えることを特徴とする直流−直流変換制御回路。
【請求項7】
請求項6に記載の直流−直流変換制御回路において、
前記複数の制御信号生成回路の各々は、第1および第2基準電圧のうち低い方と対応する出力値から得られる電圧との電圧差を増幅して対応する制御信号を生成する誤差増幅器を備え、
前記複数のソフトスタート制御回路の各々は、前記起動制御回路による動作開始の指示に応答して、対応する制御信号生成回路における第2基準電圧を第1基準電圧より低い電位から上昇させることを特徴とする直流−直流変換制御回路。
【請求項8】
請求項6に記載の直流−直流変換制御回路において、
前記複数の制御信号は、出力電圧を一定に制御するための制御信号と出力電流を一定に制御するための制御信号とで構成されることを特徴とする直流−直流変換制御回路。
【請求項9】
複数の制御信号により出力が制御される直流−直流変換回路に適用される直流−直流変換制御方法であって、
前記複数の制御信号の各々について、複数の出力値の中で対応する出力値に基づいて制御信号を生成する制御信号生成工程と、
前記複数の制御信号の各々について、制御信号の直流−直流変換回路の起動時における変動を制御するソフトスタート制御工程と、
直流−直流変換回路の起動時に出力制御に関与する制御信号の変更に伴って対応する制御信号についてソフトスタート制御工程の開始を指示する起動制御工程とを含むことを特徴とする直流−直流変換制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の直流−直流変換制御方法において、
前記制御信号生成工程では、前記複数の制御信号の各々について、第1および第2基準電圧のうち低い方と対応する出力値から得られる電圧との電圧差を増幅して制御信号を生成し、
前記ソフトスタート制御工程では、前記複数の制御信号の各々について、前記起動制御工程による開始の指示に応答して第2基準電圧を第1基準電圧より低い電位から上昇させることを特徴とする直流−直流変換制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−206216(P2008−206216A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35988(P2007−35988)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】