直流モータの電機子
【課題】 軸方向に扁平な小型で、短絡および断線故障が抑制でき、且つ低コストの直流モータの電機子を提供すること。
【解決手段】 回転軸2と、回転軸2に装着され、12個のティースTを有する電機子コア3と、回転軸2に装着され12個のセグメントSを有するコンミテータ4と、3個のティースTに跨り巻回されると共に所定の2つのセグメントSに設けられたそれぞれのフックFに接続される12個のコイル部Cと、対向するSセグメントのフックFに接続される短絡部Dとを備えた電機子1である。フックFと、コイル部Cまたは短絡部Dとの接点は、コイル部内周6より内側で、且つコイル部端面5より一側面3a側の位置にあり、短絡部Dは互いに隣り合うティースTの間に形成されるスロットLを通過し、一側面3aと、他側面3bとに沿わせると共に、1個以上のティースTに係回される。
【解決手段】 回転軸2と、回転軸2に装着され、12個のティースTを有する電機子コア3と、回転軸2に装着され12個のセグメントSを有するコンミテータ4と、3個のティースTに跨り巻回されると共に所定の2つのセグメントSに設けられたそれぞれのフックFに接続される12個のコイル部Cと、対向するSセグメントのフックFに接続される短絡部Dとを備えた電機子1である。フックFと、コイル部Cまたは短絡部Dとの接点は、コイル部内周6より内側で、且つコイル部端面5より一側面3a側の位置にあり、短絡部Dは互いに隣り合うティースTの間に形成されるスロットLを通過し、一側面3aと、他側面3bとに沿わせると共に、1個以上のティースTに係回される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータの電機子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の電機子を備えた直流モータとして、図9に示すように、軸受105、106をそれぞれ配設したヨーク102aとエンドフレーム102bとから成るモータハウジング102と、ヨーク102aの内周面に等分に配設した複数のマグネット104と、軸受105、106で回転可能に支持しされる回転軸107を挿着した電機子103とを備える直流モータ101が開示されている。
【0003】
電機子103は、回転軸107と、回転軸107に挿着した電機子コア108と、主巻線部109と、短絡線116(図12)と、コンミテータ110とを備える。図10は、電機子103のA方向から見た図である。図10に示すように、電機子コア108は放射状に延びる12個のティース111を有する。周方向に隣り合うティース111の間には、ティース111の個数と同数のスロット112が形成される。スロット112には、複数個のティース111を跨ぎ巻回された主巻線部109が配置される。ここで、各ティース111に対し、ティース番号を時計回りに「1」〜「12」として付す。
【0004】
図9に示すように、コンミテータ110は回転軸107に固定されて回転軸107と一体となって回転し、陽極側給電ブラシと陰極側給電ブラシ(図示せず)とが摺接される12個のセグメント113が周方向に等間隔に設けられる。図10に示すように、各セグメント113は結線爪114を有し、短絡線116(図11)および主巻線部109が接続される。ここで、各セグメント113に対し、セグメント番号を時計回りに「1」〜「12」として付し、結線爪114にもセグメント113と同じ番号を付す(図10〜図12)。
【0005】
図11に示すように、短絡線116は、各セグメント113(図9)のある側の電機子コア108の端面108a(図9)側で、且つ回転軸107に巻かれ(首巻き)、所定角度(180°)を有して配置される2つの結線爪114に接続される。詳しくは、順次、番号「1」と番号「7」の各結線爪114が短絡線116aにより接続され、番号「6」と番号「12」の各結線爪114が短絡線116b、番号「11」と番号「5」の各結線爪114が短絡線116c、番号「4」と番号「10」の各結線爪114が短絡線116dと、番号「9」と番号「3」の各結線爪114が短絡線116eと、番号「2」と番号「8」の各結線爪114が短絡線116fとにより接続される。
【0006】
図11と図12に示すように、以下に説明する主巻線部109の巻線終了後、各結線爪114の番号「2」と番号「3」間の不要線119、番号「4」と番号「5」間の不要線119、番号「6」と番号「7」間の不要線119、番号「9」と番号「10」間の不要線119、番号「11」と番号「12」間の不要線119が切断される。そして、番号「8」の結線爪114に接続した短絡線116fの終端部gは、主巻線部109(図10)の巻き始めとされる。
【0007】
図10に示すように、主巻線部109は、2個のセグメント113(結線爪114)に結線された渡り線117と、渡り線117を両端として3つのティース111にそれぞれ巻回された巻線部118とを有する。主巻線部109は、短絡線116f(図12)の一端側の終端部gから連続して形成されており、番号「8」のセグメント113(結線爪114)を開始位置として1本の巻線が順次各ティース111に巻回されて形成される。詳しくは、番号「8」のセグメント113(結線爪114)に接続した短絡線116fは、そこから渡り線117aとなる。そして、渡り線117aから巻線部118aを経て渡り線117aが番号「3」のセグメント113(結線爪114)に接続される。そして、次の主巻線部109(巻線部118b、渡り線117b)、主巻線部109(巻線部118c、渡り線117c)、主巻線部109(巻線部118d、渡り線117d)とが、順次形成される。主巻線部109は、渡り線117が電機子コア108のセグメント113のある端面側に配線され、3個のティース111を跨って巻回されると共に、所謂、分巻き方式で巻回される(特許文献1参照。)。
【0008】
また、16個のティースと、ティースの3個に跨り巻回される主巻線部と、16個のセグメントを備えた電機子を有する直流モータが開示されている。この主巻線部の両端の渡り線が接続される2個のセグメントの結線爪は互いに90°の角度をなし、文献1の電機子103と同様に、主巻線部は分巻きされている。また、4個の給電ブラシがそれぞれセグメントに摺接し、相対向する第1給電ブラシと第3給電ブラシは電気的に接続され、相対向する第2給電ブラシと第4給電ブラシは電気的に接続され、180°対向するセグメンには短絡線が設けられていない(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−341854号公報
【特許文献2】特開2008−236941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1によれば、主巻線部109は、主巻線部109の渡り線117が電機子コア108の端面108a側において引き回され、210°の角度をなす2つの結線爪114に接続されると共に、複数のティース111を跨って分巻き方式で巻回される。このため、コンミテータ110の結線爪114と電機子103の巻線部118の端部(コイル端面)との間は、渡り線117を結線爪114に係止できる間隙U(図9)が必要である。即ち、結線爪114は、巻線部118のコイル端面118xより外側の位置にあるように間隙Uが設定される。結線爪114を巻線部118の内径側に入り込ませて、間隙Uを小さくすると、渡り線117の結線爪114への接続が不可能になる。
【0011】
また、短絡線116は、電機子コア108の各セグメント113のある端面側で、且つ回転軸107に巻かれる、所謂、首巻きにし、所定角度(180°)を持って配置される2つの結線爪114に接続されている。短絡線116の結線爪114への接続を可能するためには、主巻線部109と同じように、上記の間隙Uが必要である。以上により、主巻線部109および短絡線116の結線爪114への接続を可能するため、電機子コア108の端面108aとコンミテータ110との距離を短縮できず、直流モータ101が軸方向に長くなる問題がある。
【0012】
さらに、短絡線116は、上述したように、首巻方式で、短絡線116は180°の角度をなす2つの結線爪114に接続される。このため、短絡線116は、回転軸107や接続されない結線爪114に接触して、短絡故障を起こすおそれがある。また、主巻線部109は、分巻き方式で巻回され、渡り線117は210°の角度をなす2つの結線爪114に接続されるため、渡り線117が接続されない結線爪114に接触して、短絡故障を起こすおそれがある。以上により、電機子103は短絡故障を起こすおそれがある。
【0013】
また、主巻線部109の巻回終了後、短絡線116の不要線119を切断しなければならず、電機子コア108は切断の工程分、コストが高くなる。
【0014】
また、特許文献2によれば、主巻線部の両端の渡り線が接続される2のセグメントの結線爪がなす角度は90°であるが、文献1の電機子108と同じように、コンミテータと電機子コアとの間隙が小さくなると、渡り線の結線爪への接続が不可能になる。このため、直流モータを軸方向に短縮できない問題がある。
【0015】
また、結線爪を設けてない場合、ブラシの個数が2倍必要になり、電機子コアのコストが高くなる問題がある。
【0016】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、軸方向に扁平な小型で、短絡故障を抑制でき、且つ低コストの直流モータの電機子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、回転軸と、回転軸に装着され、4個以上の偶数個のティースを有する電機子コアと、回転軸に装着され、且つ陽極側給電ブラシおよび陰極側給電ブラシとが摺接され、ティースと同数個のセグメントを有するコンミテータと、1個以上のティースに跨り巻回されると共に、所定の2つのセグメントに設けられたそれぞれのフックに接続される複数個のコイル部と、回転軸を介して径方向で互いに対向するセグメントのフックに接続される短絡部と、を備えた電機子であって、フックとフックに接続されるコイル部または短絡部との接点は、コイル部の電機子コアの一側面から突出したコイル部内周より内側で、且つコイル部の一側面から突出したコイル部端面より一側面側の位置にあり、短絡部は、互いに隣り合うティースの間に形成されるスロットを通過し、一側面と、一側面に対して反対側の他側面とに沿わせると共に、1個以上のティースに係回される。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、ティースは、12個の第1ティース〜第12ティースが順次設けられ、第1ティース〜第12ティースに対応して第1セグメント〜第12セグメントが設けられ、短絡部は、短絡部の両端が接続される2つのセグメントがなす円周角に挟まれた両端のティースを除いた4つのティースに係回され、それぞれのセグメントに接続された短絡部の両端側から一側面に沿い、4つのティースの両端外側に形成されるそれぞれのスロットへ導入され、スロットを通過して、両端のティースのそれぞれの他側面に沿ってから、両端のティースの内側に形成されるそれぞれのスロットを一側面に向かって通過して、両端のティースに挟まれた2つのティースの一側面に沿って配線される。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、第1ティースと第2ティースとがなす円周角度の間に配置されるセグメントを第1セグメントとして、セグメントは、第1ティース〜第12ティースにより、隣り合うティースがなす円周角の間に、順次第1セグメント〜第12セグメントが配置され、コイル部は、3個のティースを跨ってそれぞれ同一方向へ巻回されると共に、コイル部の両端は、コイル部が巻回される両側のティースがなす円周角の間に設けた2個のセグメントにそれぞれ接続されて、順次12個形成され、短絡部は、12個の第1短絡部〜第12短絡部が設けられ、第1短絡部と第7短絡部とは第2セグメントと第8セグメントとに接続され、第2短絡部と第8短絡部とは第9セグメントと第3セグメントとに接続され、第3短絡部と第9短絡部とは第4セグメントと第10セグメントとに接続され、第4短絡部と第10短絡部とは第11セグメントと第5セグメントとに接続され、第5短絡部と第11短絡部とは第6セグメントと第12セグメントとに接続され、第6短絡部と第12短絡部とは第1セグメントと第7セグメントとに接続される。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、コイル部と短絡部とは、連続した導線を一筆書き状に交互に巻回および係回することにより形成される。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明では、フックと、フックに接続されるコイル部または短絡部との接点は、電機子コアの一側面から突出したコイル部内周より内側で、且つコイル部の一側面から突出したコイル部端面より一側面側の位置にある。従って、フックを備えたコンミテータと電機子コアの一側面との距離が短縮され、本発明の電機子の軸方向長さが短縮できるので、軸方向に扁平な小型の直流モータの電機子を提供できる。
【0022】
また、短絡部は、互いに隣り合うティースの間に形成されるスロットを通過し、電機子コアの一側面と、一側面に対して反対側の他側面とに沿わせると共に、1個以上のティースに係回される。従って、本発明の電機子は、短絡部が空中に浮くことなく、且つ短絡部のセグメントや回転軸との接触が回避でき、短絡部の接触による短絡故障を抑制できる。
【0023】
さらに、本発明の電機子は、上記の短絡部の係回により、一側面と他側面とを軸方向に往復しながらティースに係回されるので、短絡部の張力が適正に緩和され、短絡部の断線が抑制できる。
【0024】
また、本発明の電機子は、回転軸を介して径方向で互いに対向するセグメントを短絡する短絡部が設けられるので、対向するセグメントを同電位にでき、陽極側ブラシと陰極側ブラシの一対をコンミテータのセグメントに摺接させれば良い。これにより新たに、陽極側と陰極側の一対のブラシの配備が不要になる。結果、電機子のコストが低減され、低コストの直流モータの電機子が提供できる。
【0025】
また、請求項2に記載の発明では、12個のティースが設けられる。そして、回転軸を介して径方向で互いに対向するセグメントのフックに接続される短絡部の両端側が、スロットを通過して、ティースの一側面と、ティースの他側面とを沿わせる共に、一側面と他側面とを軸方向に往復しながら4個のティースに係回される。従って、本発明の電機子は、短絡部が空中に浮くことなく、且つ短絡部のセグメントや回転軸との接触が回避でき、短絡部の接触による短絡故障を抑制できる。さらに、本発明の電機子は、上記の短絡部の係回により、一側面と他側面とを軸方向に往復しながらティースに係回されるので、短絡部の張力が適正に緩和され、短絡部の断線が抑制できる。
【0026】
また、請求項3に記載の発明では、ティースは周上に12個の第1ティース〜第12ティースが順次設けられる。コイル部は、3個のティースに跨り導線が巻回され、12個の第1コイル部〜第12コイル部が形成される。例えば、第1コイル部は第1ティースと第2ティースと第3ティースとを跨って巻回され、第1コイル部の両端は、それぞれ第1ティースの近傍にある第1セグメントのフックと、第1セグメントの隣で、且つ第2ティースの近傍にある第2セグメントのフックとに接続される。第2コイル部〜第12コイル部も第1コイル部と同じように形成されるので、コイル部の両端がそれぞれ接続されるセグメントのフックは、隣り合うと共に、巻回されるティースの近傍にある。従って、3個のティースを跨ったコイル部の巻回部分からフックに接続される引き出し線部分は、フック(又は、セグメント)や回転軸との接触が回避でき、コイル部の接触による短絡故障を抑制できる。
【0027】
また、短絡部は、スロットを通過し、一側面と他側面とを沿うと共に、軸方向に往復するジグザク配線により、本発明の電機子は、短絡部のセグメントや回転軸との接触が回避でき、接触による短絡故障を抑制できると共に、短絡部の張力が適正に緩和されて、短絡部の断線が抑制できる。
【0028】
また、請求項4に記載の発明では、コイル部と短絡部とは、連続した導線を一筆書き状に交互に巻回および係回することにより形成される。従って、各コイル部形成のための巻回とフックへの係止、および各短絡部の係回とフックへの係止と、の各作業が、順次連続して行えるので、各作業時間が短縮でき、本発明の電機子のコストが低減される。
【0029】
また、本発明の各短絡部は不要線がなく、不要線の切断が不要であるので、切断の工程分、電機子コア3のコストが低減される。以上により、低コストの直流モータの電機子が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例に係る電機子の短絡部の配線を説明する斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2に示す電機子を平面に展開した第1コイル部〜第6コイル部および第1短絡部〜第6短絡部の説明図である。
【図4】図2に示す電機子を平面に展開した第7コイル部〜第12コイル部および第7短絡部〜第12短絡部の説明図である。
【図5】図2に示す電機子を平面に展開したコイル部Cの巻回と短絡部Dの係回の説明図である。
【図6】導線11の電子機コアへの配線を示した展開図である。
【図7】導線12の電子機コアへの配線を示した展開図である。
【図8】図1の電子機のコンミテータ周辺の断面図である。
【図9】本発明に係る従来技術の直流モータの電機子の説明図である。
【図10】図9の電機子のA矢視図である。
【図11】図9の電機子の短絡線の配線方法の説明図である。
【図12】図9の電機子の短絡線の配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る電機子の短絡部の配線を説明する斜視図である。図2は、図1の平面図である。電機子1は、直流モータ(図示せず)の電機子であり、外周側に図示していないモータハウジングに固定した複数のマグネットが配備される。電機子1は、回転軸2と、回転軸2に圧入された電機子コア3と、回転軸2に圧入されたコンミテータ4と、コイル部C(図3、図4)と、短絡部D(図3、図4)とを備える。尚、図1および図2において、コイル部Cおよび短絡部Dは一部(コイル部C1および短絡部D1)のみ示している。
【0033】
電機子コア3は、軸方向へ積層した複数枚のコア7と、積層したコア7の両端面を挟持する絶縁材のインシュレータ8、9とを備える。コア7は、周上等分に放射するる複数(本実施形態では、12個)のティース部7aと、中心部分に回転軸2が挿入される穴7b(図2)とを有する。インシュレータ8、9は、ティース部7aと略同形状のティース部を備え、積層したコア7のティース部7aの放射方向の側面を挟持する。以下、ティース部7aの個数は12個として説明する。積層されたコア7のティース部7aと、インシュレータ8、9のティース部分とにより12個のティースT、即ち第1ティースT1〜第12ティースT12(図2)が形成される。
【0034】
図1および図2に示すように、コンミテータ4は、回転軸2に挿入され、ティース部7aの個数と同数のセグメントSが外周面に等分に配置される。セグメントSは、隣り合う2個のティースTがなす円周角の間に設けられる。そして、第1ティースT1と第2ティースT2とがなす円周角の間に設けたセグメントSを第1セグメントS1として、第1ティースT1〜第12ティースT12により、順次第1セグメントS1〜第12セグメントS12が設けられる。また、セグメントSの外周面には、陽極側ブラシ13と陰極側ブラシ14(図3〜図7)とが摺接する。
【0035】
セグメントSには、コイル部Cの巻初め、巻終りおよび短絡部Dの両端とが係止されるフックF、即ち、第1セグメントS1〜第12セグメントS12に対応して、それぞれ第1フックF1〜第12フックF12が設けられる。コイル部Cの巻回とフックFへの係止、および短絡部Dの係回とフックFへの係止と、が終了されると、フックFが折り曲げられ、そしてコイル部Cの巻初め、巻終りと、短絡部Dの端部とフックFとがヒュージング溶接される。
【0036】
詳しくは後述するが、コイル部Cは、3個のティースTを跨り所定の巻数、巻回され、コイル部Cの巻き始めと巻き終わりは、それぞれ所定の隣り合う2個のセグメントSのフックFに接続される。これにより、電機子1には12個のコイル部C、即ち第1コイル部C1〜第12コイル部C12が配備される。また、短絡部Dは、回転軸2を介して径方向で互いに対向する(円周角で180°ずれた位置にある)2つのセグメントSとを短絡するようにフックFに接続され、電機子1には12個の短絡部D、即ち第1短絡部D1〜第12短絡部D12が配線される。また、隣り合う2つのティースTとにより12個のスロットL、即ち第1スロットL1〜第1スロットL12が形成される。尚、詳しくは後述するが、短絡部Dは6本でも良い。
【0037】
図3は、図2に示す電機子コア3のティースTと、セグメントS(またはフックF)を平面に展開し、第1コイル部C1〜第6コイル部C6および第1短絡部D1〜第6短絡部D6の配線を示す説明図であり、コイル部Cは太実線、短絡部Dは実線で示す。図3および後述する図4〜図7において、長方形の中の番号1〜12は図2の第1ティースT1〜第12ティースT12および第1セグメントS1〜第12セグメントS12(または第1フックF1〜第12フックF12)を示す。
【0038】
図3に示すように、第1コイル部C1は第1ティースT1と第2ティースT2と第3ティースT3とを跨ぎ巻回され、第1コイル部C1の一端は第1セグメントS1に接続され、他端は第2セグメントS2に接続される。
【0039】
第2コイル部C2は第8ティースT1と第9ティースT9と第10ティースT10とを跨ぎ巻回され、第2コイル部C2の一端は第8セグメントS8に接続され、他端は第9セグメントS9に接続される。
【0040】
第3コイル部C3は第3ティースT3と第4ティースT4と第5ティースT5とを跨ぎ巻回され、第3コイル部C3の一端は第3セグメントS3に接続され、他端は第4セグメントS4に接続される。
【0041】
第4コイル部C4は第10ティースT10と第11ティースT11と第12ティースT12とを跨ぎ巻回され、第4コイル部C4の一端は第10セグメントS10に接続され、他端は第11セグメントS11に接続される。
【0042】
第5コイル部C5は第5ティースT5と第6ティースT6と第7ティースT7とを跨ぎ、第5コイル部C5の一端は第5セグメントS5に接続され、他端は第6セグメントS6に接続される。
【0043】
第6コイル部C6は第12ティースT12と第1ティースT1と第2ティースT2とを跨ぎ巻回され、第6コイル部C6の一端は第12セグメントS12に接続され、他端は第1セグメントS1に接続される。
【0044】
第1短絡部D1は、第2セグメントS2と、回転軸2を介して径方向で第2セグメントS2に対向する第8セグメントS8とに接続される。即ち、第2セグメントS2は、第8セグメントS8とに対して円周角で180°異なる位置にある。同様に、第2短絡部D2は第9セグメントS9と第3セグメントS3とに、第3短絡部D3は第4セグメントS4と第10セグメントS10とに、第4短絡部D4は第11セグメントS11と第5セグメントS5とに、第5短絡部D5は第6セグメントS6と第12セグメントS12とに、そして、第6短絡部D6は第1セグメントS1と第7セグメントS7とに、それぞれ接続される。尚、図3中、左側の線端mは右側の線端mに、左側の線端nは右側の線端nに、そして左側の線端oは右側の線端oにそれぞれ連結している。
【0045】
図4は、図2に示す電機子コア3のティースTと、セグメントS(またはフックF)を平面に展開し、コイル部C7〜C12および第7短絡部D7〜第12短絡部D12の配線を示す説明図であり、コイル部Cは太実線、短絡部Dは実線で示す。
【0046】
第7コイル部C7は第7ティースT7と第8ティースT8と第9ティースT9とを跨ぎ巻回され、第7コイル部C7の一端は第7セグメントS7に接続され、他端は第8セグメントS8に接続される。
【0047】
第8コイル部C8は第2ティースT2と第3ティースT3と第4ティースT4とを跨ぎ巻回され、第8コイル部C8の一端は第2セグメントS2に接続され、他端は第3セグメントS3に接続される。
【0048】
第9コイル部C9は第9ティースT9と第10ティースT10と第11ティースT11とを跨ぎ巻回され、第9コイル部C9の一端は第9セグメントS9に接続され、他端は第10セグメントS10に接続される。
【0049】
第10コイル部C10は第4ティースT4と第5ティースT5と第6ティースT6とを跨ぎ巻回され、第10コイル部C10の一端は第4セグメントT4に接続され、他端は第5セグメントT5に接続される。
【0050】
第11コイル部C11は第11ティースT11と第12ティースT12と第1ティースT1とを跨ぎ巻回され、第11コイル部C11の一端は第11セグメントS11に接続され、他端は第12セグメントS12に接続される。
【0051】
第12コイル部C12は第6ティースT6と第7ティースT7と第8ティースT8とを跨ぎ巻回され、第12コイル部C12の一端は第6セグメントS6に接続され、他端は第7セグメントS7に接続される。
【0052】
第7短絡部D7は、第8セグメントS8と、第2セグメントS8に対向する第2セグメントS2とに接続される。同様に、第8短絡部D8は第3セグメントS3と第9セグメントS9とに、第9短絡部D9は第10セグメントS10と第4セグメントS4とに、第10短絡部D10は第5セグメントS5と第11セグメントS11とに、第11短絡部D11は第12セグメントS12と第6セグメントS6とに、そして、第12短絡部D12は第7セグメントS7と第1セグメントS1とに、それぞれ接続される。尚、図4中、左側の線端pは右側の線端pに、左側の線端qは右側の線端qに、そして左側の線端rは右側の線端rにそれぞれ連結している。
【0053】
図5は、図2に示す電機子コア3のティースTと、セグメントS(またはフックF)とを平面に展開し、コイル部C(C1、C2、C3)の巻回および短絡部D(D1、D2、D3)の係回(配線引き回し)を示す説明図である。図5中、コイル部Cは太実線、短絡部Dは太破線で示す。図6は、導線11の電子機コア3へのコイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回とを示した展開図であり、コイル部Cは太実線、短絡部Dは実線で示す。図5において、ティースTの長方形の上側の辺と下側の辺は、それぞれ電子機コア3の一側面3aと、一側面3aに対して反対側の他側面3bに対応する。また、長方形で示す各ティースTの間はスロットLを示し、第1ティースT1と第2ティースT2の間は第1スロットL1であり、図5の右方向に進むにつれてスロット番号が順次上がり、第12ティースT12の右辺側(第1ティースT1の左辺側)は第12スロットL12を示す。尚、図3、図4、図6、図7においても、図示していないが、電子機コア3の一側面3a側と他側面3b側、およびスロットLの各位置関係は、図5の電子機コア3の一側面3a側と他側面3b側、およびスロットLと同じである。
【0054】
図6に示すように、第1コイル部C1と、第1短絡部D1と、第2コイル部C2と、第2短絡部D2と、第3コイル部C3と、第3短絡部D3と、第4コイル部C4と、第4短絡部D4と、第5コイル部C5と、第5短絡部D5と、第6コイル部C6と、第6短絡部D6は、順次連続した1本の導線11である。導線11の電機子コア3におけるコイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回とは、次のように一筆書き状に行われる。
【0055】
即ち、図5に示すように、コイル部C1の一端の巻き始めが第1セグメントS1の第1フックF1に係止され、第1ティースT1と、第2ティースT2と、第3ティースT3とを跨いで所定の回数巻回され、巻き終りは第2セグメントS2の第2フックF2に係止され、第1コイル部C1が形成される。図1、図2および図5に示すように、第2フックF2に係止された導線11は、引続き第1短絡部D1となって、電機子コア3の一側面3aに沿いながら第3スロットL3へ導入され、第3スロットL3を通過する。通過した第1短絡部D1は、順次第4ティースT4の他側面3bと、第4スロットL4と、第5、6ティースT5、T6の一側面3a上と、第6スロットL6と、第7ティースT7の他側面3b上とを軸方向に往復しながら通過する。そして、第7ティースT7の他側面3b上を通過した第1短絡部D1は、第7スロットL7を通過して上方向に引出され、一側面3aに沿いながら第8セグメントS8の第8フックF8に係止される。
【0056】
第8フックF8に係止された導線11は、第1短絡部D1から第2コイル部C2となって第8ティースT8と第9ティースT9および第10ティースT10とを跨ぎ、所定の回数、巻回されて第9セグメントS9の第9フックF9に係止され、第2コイル部C2が形成される。第9フックF9に係止された第2コイル部C2の巻き終りの導線11は、次に第2短絡部D2になる。第2短絡部D2は、第1短絡部D1と同じように電機子コア3の一側面3aと他側面3bとの間で各スロットL10、L11、L1、L2を通過して、一側面3aと他側面3bとを軸方向に往復しながら係回され(以下、ジグザク配線)、第3セグメントS3に係止される。そこから前述と同様に、図6に示すように、順次第3コイル部C3の巻回と、第3短絡部D3のジグザク配線と、第4コイル部C4の巻回と、第4短絡部D4のジグザク配線と、第5コイル部C5の巻回と、第6短絡部D6のジグザク配線とがなされる。そして、第6短絡部D6の終端部が第7セグメントS7の第7フックF7に係止され、一筆書き状の導線11の配線が終了する。
【0057】
導線11と同様に、第7コイル部C7と、第7短絡部D7と、第8コイル部C8と、第8短絡部D8と、第9コイル部C9と、第9短絡部D9と、第10コイル部C10と、第10短絡部D10と、第11コイル部C11と、第11短絡部D11と、第12コイル部C12と、第12短絡部D12とは、順次連続した1本の導線12である。
【0058】
図7は、導線12の電子機コア3へのコイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回とを示した展開図であり、コイル部Cは太実線、短絡部Dは実線で示す。図7に示すように、第7イルC7の巻き始めが第7ティースT7に係止され、導線11と同様に、順次第7コイル部C7の巻回と、第7短絡部D7の係回と、第8コイル部C8の巻回と、第8短絡部D8の係回と、第9コイル部C9の巻回と、第9短絡部D9の係回と、第10コイル部C10の巻回と、第10短絡部D10の係回と、第11コイル部C11の巻回と、第11短絡部D11の係回と、第12コイル部C12の巻回と、第12短絡部D12の係回とが順次なされる。そして、第12短絡部D12の終端部が第1セグメントS1の第1フックF1に係止され、一筆書き状の導線12の配線が終了する。尚、導線11の配線と導線12の配線とを見易くするために、図6と図7とに導線11と導線12の配線を示している。
【0059】
ところで、電子機コア3は巻線機(図示せず)に取付けられる。そして、導線11と導線12とが、回転軸2を介して径方向に対向した位置にある2つのフライヤ(図示せず)から供給され、電子機コア3が回転されて、略同時に導線11と導線12の電子機コア3へのコイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回と、導線11、12のフックFへの係止とがなされる。
【0060】
図8は、電子機3のコンミテータ4周辺の断面図であり、詳しくは、フックFと、導線11、12とのヒュージング溶接終了後のセグメントS近傍の部分断面を示す。図中、(a)はフックFに導線11、12が係止されている状態を示し、(b)はヒュージング溶接直後の状態、そして(c)はヒュージング溶接終了後、コンミテータ4が電子機コア3の一側面3a近傍の正規の位置へ移動された状態を示す。
【0061】
図8(a)に示すように、コイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回と、導線11、12のフックへの係止とが出来るように、フックFの少なくとも一部(導線11、12が係止される部分)がコイル部端面5より外側に配置され、この位置にて導線11、12がフックFへ係止される。導線11、12のフックFへの係止終了後、フックFが折り曲げられ、ヒュージング溶接が行われる(図8(b))。ヒュージング溶接終了後、コンミテータ4を電機子コア3の一側面3a方向へ再圧入移動させる。この移動により、フックFと、フックFに接続されるコイル部Cまたは短絡部Dとの接点は、コイル部Cの電機子コア3の一側面3aから突出したコイル部内周6より内側で、且つコイル部Cの一側面3aから突出したコイル部端面5より一側面側3aの位置に来る(図8(c))。ここで、コンミテータ4の移動に際し、導線11、12が断線しないようにフックFに係止したコイル部Cおよび短絡部Dの端部部分の長さと、コンミテータ4の移動量とが適正に設定さる。即ち、コンミテータ4の移動前における端部部分の長さW1(図8(a))が、移動後における端部部分の長さW2(図8(b))より僅かに長くなるように、長さW1と、長さW2と、コンミテータ4の移動量とが設定される。
【0062】
尚、フックFと、フックFに接続されるコイル部Cまたは短絡部Dとの接点は、フックFがコア7に接触しなければ、一側面3aより窪んだ端面3cの極近にあって良い。また、端面3cが一側面3aより突出している場合も、フックFがコア7に接触しなければ、上記の接点は、端面3cの極近にあって良い。
【0063】
また、短絡部Dの係回は、図1、図2および図5に示すパターンに限定されることなく、スロットLを通過して、軸方向に往復しながら電機子コア3の一側面3aと他側面3bとに短絡部Dを1個以上のティースTに係回するパターンであれば良い。
【0064】
また、本実施形態の電機子コア3のティースTは、12個設けられているが、4個以上の偶数個であれば良い。
【0065】
また、導線11と導線12はそれぞれ別体であるが、導線11と導線12とを1本の導線にして、電機子コア3にコイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回と、導線のフックFへの係止とを行っても良い。しかし、配線作業時間の関点から導線を2本にした方が好ましい。
【0066】
また、セグメントSとフックFは、銅合金などの良好な導電性の材質であるので、フックFに係止されたコイル部Cと短絡部Dとは、ヒュージング溶接後、導通される。従って、各コイル部Cと各短絡部Dとはそれぞれ別体の導線でも良い。しかし、配線作業時間の関点から各コイル部Cと各短絡部Dとが連続した導線の方が好ましい。
【0067】
さらに、本実施形態の電機子1では、導線11と導線12とを使用しているので、短絡部Dは、回転軸2を介して径方向で互いに対向する(円周角で180°ずれた位置にある)セグメントSに2本づつ接続され、合計12本、即ちセグメントSの個数と同数設けられているが、1本づつ接続することで、短絡部Dを6本、即ちセグメントSの個数の半分の本数にしても良い。
【0068】
次に、本発明の実施形態に係る電機子1の作動と効果について説明する。コンミテータ4は、回転軸2に挿入され、電機子コア3への各コイル部Cと各短絡部Dとの各両端側を各フックFに係止可能にするため、少なくともフックFの一部(導線11、12が係止される部分)がコイル部端面5より外側にある位置まで圧入される。この位置にて、導線11、12を各フックFに係止し(図8(a))、各コイル部Cの巻回と各短絡部Dの係回とを終了した後、各フックFを折り曲げてヒュージング溶接を行う(図8(b))。ヒュージング溶接終了後、コンミテータ4を電機子コア3の一側面3a方向へ再圧入移動させる。この移動により図8(c)に示すように、フックFと、フックFに接続されるコイル部Cまたは短絡部Dとの接点は、コイル部Cの一側面3aから突出したコイル部内周6より内側で、且つコイル部Cの一側面3aから突出したコイル部端面5より一側面側3aの位置で、端面3cの極近に来る。従って、電機子コア3の一側面3aとフックFを備えるコンミテータ4との距離が短縮でき、電機子1の軸方向長さも短縮できる。結果、軸方向に扁平な小型の直流モータの電機子1を提供できる。
【0069】
また、例えば、第1短絡部D1の中央部分は両端の第4、7ティースT4、T7に挟まれた2つの第5、6ティースT5、T6の一側面3aに沿って両側周方向へ配線される。この両側周方向へ配線された第1短絡部D1は、第4ティースT4と第5ティースT5、第6ティースT6と第7ティースT7とにより形成される第4スロットL4、第6スロットL6をそれぞれ他側面3bへ向かって通過して、それぞれ第4、7ティースT4、T7の各他側面3bに沿って配線される。それぞれの他側面3bに沿って配線された短絡部Dは、それぞれ外側の第4、7ティースT4、T7の両端に形成されている第3スロットL3、第7スロットL7を一側面3aへ向かって通過し、電機子コア3のコンミテータ4近傍の一側面3aに沿いながら、第2、8セグメントS2、S8の第2、8フックF2、F8にそれぞれ接続される。このように短絡部Dは、スロットLを通過し、一側面3aと他側面3bとを沿わせ、軸方向に往復しながら4つティースTに係回されることにより、空中に浮くことなく、コンミテータ4や回転軸2との接触が回避でき、接触による短絡故障を抑制できる。
【0070】
また、コイル部Cは、3個のティースTに跨り導線が巻回され、12個の第1コイル部C1〜第12コイル部C12が形成される。例えば、第1コイル部C1は第1ティースT1と第2ティースT2と第3ティースT3とを跨って巻回され、第1コイル部C1の両端は、それぞれ第1第1ティースT1の近傍にある第1セグメントS1の第1フックF1と、第1セグメントS1の隣で、且つ第2ティースS2の近傍にある第2セグメントS2の第2フックF2とに接続される。第2コイル部C2〜第12コイル部C12も第1コイル部C1と同じように形成されるので、コイル部Cの両端がそれぞれ接続されるセグメントSのフックFは、隣り合うと共に、巻回されるティースTの近傍にある。従って、3個のティースTを跨ったコイル部Cの巻回部分からフックFに接続される引き出し線部分は、フックF(又は、セグメント)や回転軸2への接触が回避でき、コイル部Cの接触による短絡故障を抑制できる。
【0071】
また、上述した短絡部Dの軸方向に往復するジグザク配線により、短絡部Dの応力が適正に緩和され、短絡部Dの断線が回避できる。
【0072】
さらに、導線11、12の配線時では、コンミテータ4の位置は、フックFの少なくとも一部(導線11、12が係止される部分)がコイル部端面5より外側に来るように配置される。この位置において、フックFに係止した導線11、12の引き出し線部分の長さW1は、コンミテータ4を一側面3aの極近まで移動した正規の位置における引き出し線部分の長さW2より僅かに長い(図8)。従って、コイル部Cの巻回とフックFへの係止時において生じた導線11、12の張りは、コンミテータ4の正規位置移動後において、適正に緩和されるので、コイル部Cの断線を回避できる。
【0073】
また、巻線機のフライヤから導線11と導線12が、巻線機に設置された電機子コア3に対向して供給される。そして導線11により、順次第1コイル部C1と、第1短絡部D1と、第2コイル部C2と、第2短絡部D2と、第3コイル部C3と、第3短絡部D3と、第4コイル部C4と、第4短絡部D4と、第5コイル部C5と、第5短絡部D5と、第6コイル部C6と、第6短絡部D6とが、配線(コイル部Cの巻回、短絡部Dの係回、フックFへの係止)される。これと略同時に、導線12により、順次第7コイル部C7と、第7短絡部D7と、第8コイル部C8と、第8短絡部D8と、第9コイル部C9と、第9短絡部D9と、第10コイル部C10と、第10短絡部D10と、第11コイル部C11と、第11短絡部D11と、第12コイル部C12と、第12短絡部D12とが、同じように配線される。結果、電機子1の配線作業時間が短縮されるので、電機子1のコストが低減される。
【0074】
また、電機子1は、短絡部Dを設けることにより、回転軸2を介して径方向で互いに対向する2つのセグメントSを同電位にでき、図3に示すように、陽極側ブラシ13と陰極側ブラシ14の一対をコンミテータ4のセグメントSに摺接させれば良く、これにより新たに、陽極側と陰極側の一対のブラシの配備が不要になり、電機子1のコストが低減される。
【0075】
さらに、図12に示すように、従来技術の電機子103は短絡部116の不要線119が切断されるが、本実施例の各短絡部Dは、不要線がなく、切断しなくて良いので、切断の工程分、電機子コア3のコストが低減される。以上により、低コストの直流モータの電機子1が提供できる。
【符号の説明】
【0076】
1 電機子
2 回転軸
3 電機子コア
3a 一側面
3b 他側面
4 コンミテータ
5 コイル部端面
6 コイル部内周
11、12 導線
C コイル部
D 短絡部
F フック
L スロット
S セグメント
T ティース
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータの電機子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の電機子を備えた直流モータとして、図9に示すように、軸受105、106をそれぞれ配設したヨーク102aとエンドフレーム102bとから成るモータハウジング102と、ヨーク102aの内周面に等分に配設した複数のマグネット104と、軸受105、106で回転可能に支持しされる回転軸107を挿着した電機子103とを備える直流モータ101が開示されている。
【0003】
電機子103は、回転軸107と、回転軸107に挿着した電機子コア108と、主巻線部109と、短絡線116(図12)と、コンミテータ110とを備える。図10は、電機子103のA方向から見た図である。図10に示すように、電機子コア108は放射状に延びる12個のティース111を有する。周方向に隣り合うティース111の間には、ティース111の個数と同数のスロット112が形成される。スロット112には、複数個のティース111を跨ぎ巻回された主巻線部109が配置される。ここで、各ティース111に対し、ティース番号を時計回りに「1」〜「12」として付す。
【0004】
図9に示すように、コンミテータ110は回転軸107に固定されて回転軸107と一体となって回転し、陽極側給電ブラシと陰極側給電ブラシ(図示せず)とが摺接される12個のセグメント113が周方向に等間隔に設けられる。図10に示すように、各セグメント113は結線爪114を有し、短絡線116(図11)および主巻線部109が接続される。ここで、各セグメント113に対し、セグメント番号を時計回りに「1」〜「12」として付し、結線爪114にもセグメント113と同じ番号を付す(図10〜図12)。
【0005】
図11に示すように、短絡線116は、各セグメント113(図9)のある側の電機子コア108の端面108a(図9)側で、且つ回転軸107に巻かれ(首巻き)、所定角度(180°)を有して配置される2つの結線爪114に接続される。詳しくは、順次、番号「1」と番号「7」の各結線爪114が短絡線116aにより接続され、番号「6」と番号「12」の各結線爪114が短絡線116b、番号「11」と番号「5」の各結線爪114が短絡線116c、番号「4」と番号「10」の各結線爪114が短絡線116dと、番号「9」と番号「3」の各結線爪114が短絡線116eと、番号「2」と番号「8」の各結線爪114が短絡線116fとにより接続される。
【0006】
図11と図12に示すように、以下に説明する主巻線部109の巻線終了後、各結線爪114の番号「2」と番号「3」間の不要線119、番号「4」と番号「5」間の不要線119、番号「6」と番号「7」間の不要線119、番号「9」と番号「10」間の不要線119、番号「11」と番号「12」間の不要線119が切断される。そして、番号「8」の結線爪114に接続した短絡線116fの終端部gは、主巻線部109(図10)の巻き始めとされる。
【0007】
図10に示すように、主巻線部109は、2個のセグメント113(結線爪114)に結線された渡り線117と、渡り線117を両端として3つのティース111にそれぞれ巻回された巻線部118とを有する。主巻線部109は、短絡線116f(図12)の一端側の終端部gから連続して形成されており、番号「8」のセグメント113(結線爪114)を開始位置として1本の巻線が順次各ティース111に巻回されて形成される。詳しくは、番号「8」のセグメント113(結線爪114)に接続した短絡線116fは、そこから渡り線117aとなる。そして、渡り線117aから巻線部118aを経て渡り線117aが番号「3」のセグメント113(結線爪114)に接続される。そして、次の主巻線部109(巻線部118b、渡り線117b)、主巻線部109(巻線部118c、渡り線117c)、主巻線部109(巻線部118d、渡り線117d)とが、順次形成される。主巻線部109は、渡り線117が電機子コア108のセグメント113のある端面側に配線され、3個のティース111を跨って巻回されると共に、所謂、分巻き方式で巻回される(特許文献1参照。)。
【0008】
また、16個のティースと、ティースの3個に跨り巻回される主巻線部と、16個のセグメントを備えた電機子を有する直流モータが開示されている。この主巻線部の両端の渡り線が接続される2個のセグメントの結線爪は互いに90°の角度をなし、文献1の電機子103と同様に、主巻線部は分巻きされている。また、4個の給電ブラシがそれぞれセグメントに摺接し、相対向する第1給電ブラシと第3給電ブラシは電気的に接続され、相対向する第2給電ブラシと第4給電ブラシは電気的に接続され、180°対向するセグメンには短絡線が設けられていない(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−341854号公報
【特許文献2】特開2008−236941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1によれば、主巻線部109は、主巻線部109の渡り線117が電機子コア108の端面108a側において引き回され、210°の角度をなす2つの結線爪114に接続されると共に、複数のティース111を跨って分巻き方式で巻回される。このため、コンミテータ110の結線爪114と電機子103の巻線部118の端部(コイル端面)との間は、渡り線117を結線爪114に係止できる間隙U(図9)が必要である。即ち、結線爪114は、巻線部118のコイル端面118xより外側の位置にあるように間隙Uが設定される。結線爪114を巻線部118の内径側に入り込ませて、間隙Uを小さくすると、渡り線117の結線爪114への接続が不可能になる。
【0011】
また、短絡線116は、電機子コア108の各セグメント113のある端面側で、且つ回転軸107に巻かれる、所謂、首巻きにし、所定角度(180°)を持って配置される2つの結線爪114に接続されている。短絡線116の結線爪114への接続を可能するためには、主巻線部109と同じように、上記の間隙Uが必要である。以上により、主巻線部109および短絡線116の結線爪114への接続を可能するため、電機子コア108の端面108aとコンミテータ110との距離を短縮できず、直流モータ101が軸方向に長くなる問題がある。
【0012】
さらに、短絡線116は、上述したように、首巻方式で、短絡線116は180°の角度をなす2つの結線爪114に接続される。このため、短絡線116は、回転軸107や接続されない結線爪114に接触して、短絡故障を起こすおそれがある。また、主巻線部109は、分巻き方式で巻回され、渡り線117は210°の角度をなす2つの結線爪114に接続されるため、渡り線117が接続されない結線爪114に接触して、短絡故障を起こすおそれがある。以上により、電機子103は短絡故障を起こすおそれがある。
【0013】
また、主巻線部109の巻回終了後、短絡線116の不要線119を切断しなければならず、電機子コア108は切断の工程分、コストが高くなる。
【0014】
また、特許文献2によれば、主巻線部の両端の渡り線が接続される2のセグメントの結線爪がなす角度は90°であるが、文献1の電機子108と同じように、コンミテータと電機子コアとの間隙が小さくなると、渡り線の結線爪への接続が不可能になる。このため、直流モータを軸方向に短縮できない問題がある。
【0015】
また、結線爪を設けてない場合、ブラシの個数が2倍必要になり、電機子コアのコストが高くなる問題がある。
【0016】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、軸方向に扁平な小型で、短絡故障を抑制でき、且つ低コストの直流モータの電機子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、回転軸と、回転軸に装着され、4個以上の偶数個のティースを有する電機子コアと、回転軸に装着され、且つ陽極側給電ブラシおよび陰極側給電ブラシとが摺接され、ティースと同数個のセグメントを有するコンミテータと、1個以上のティースに跨り巻回されると共に、所定の2つのセグメントに設けられたそれぞれのフックに接続される複数個のコイル部と、回転軸を介して径方向で互いに対向するセグメントのフックに接続される短絡部と、を備えた電機子であって、フックとフックに接続されるコイル部または短絡部との接点は、コイル部の電機子コアの一側面から突出したコイル部内周より内側で、且つコイル部の一側面から突出したコイル部端面より一側面側の位置にあり、短絡部は、互いに隣り合うティースの間に形成されるスロットを通過し、一側面と、一側面に対して反対側の他側面とに沿わせると共に、1個以上のティースに係回される。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、ティースは、12個の第1ティース〜第12ティースが順次設けられ、第1ティース〜第12ティースに対応して第1セグメント〜第12セグメントが設けられ、短絡部は、短絡部の両端が接続される2つのセグメントがなす円周角に挟まれた両端のティースを除いた4つのティースに係回され、それぞれのセグメントに接続された短絡部の両端側から一側面に沿い、4つのティースの両端外側に形成されるそれぞれのスロットへ導入され、スロットを通過して、両端のティースのそれぞれの他側面に沿ってから、両端のティースの内側に形成されるそれぞれのスロットを一側面に向かって通過して、両端のティースに挟まれた2つのティースの一側面に沿って配線される。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、第1ティースと第2ティースとがなす円周角度の間に配置されるセグメントを第1セグメントとして、セグメントは、第1ティース〜第12ティースにより、隣り合うティースがなす円周角の間に、順次第1セグメント〜第12セグメントが配置され、コイル部は、3個のティースを跨ってそれぞれ同一方向へ巻回されると共に、コイル部の両端は、コイル部が巻回される両側のティースがなす円周角の間に設けた2個のセグメントにそれぞれ接続されて、順次12個形成され、短絡部は、12個の第1短絡部〜第12短絡部が設けられ、第1短絡部と第7短絡部とは第2セグメントと第8セグメントとに接続され、第2短絡部と第8短絡部とは第9セグメントと第3セグメントとに接続され、第3短絡部と第9短絡部とは第4セグメントと第10セグメントとに接続され、第4短絡部と第10短絡部とは第11セグメントと第5セグメントとに接続され、第5短絡部と第11短絡部とは第6セグメントと第12セグメントとに接続され、第6短絡部と第12短絡部とは第1セグメントと第7セグメントとに接続される。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、コイル部と短絡部とは、連続した導線を一筆書き状に交互に巻回および係回することにより形成される。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明では、フックと、フックに接続されるコイル部または短絡部との接点は、電機子コアの一側面から突出したコイル部内周より内側で、且つコイル部の一側面から突出したコイル部端面より一側面側の位置にある。従って、フックを備えたコンミテータと電機子コアの一側面との距離が短縮され、本発明の電機子の軸方向長さが短縮できるので、軸方向に扁平な小型の直流モータの電機子を提供できる。
【0022】
また、短絡部は、互いに隣り合うティースの間に形成されるスロットを通過し、電機子コアの一側面と、一側面に対して反対側の他側面とに沿わせると共に、1個以上のティースに係回される。従って、本発明の電機子は、短絡部が空中に浮くことなく、且つ短絡部のセグメントや回転軸との接触が回避でき、短絡部の接触による短絡故障を抑制できる。
【0023】
さらに、本発明の電機子は、上記の短絡部の係回により、一側面と他側面とを軸方向に往復しながらティースに係回されるので、短絡部の張力が適正に緩和され、短絡部の断線が抑制できる。
【0024】
また、本発明の電機子は、回転軸を介して径方向で互いに対向するセグメントを短絡する短絡部が設けられるので、対向するセグメントを同電位にでき、陽極側ブラシと陰極側ブラシの一対をコンミテータのセグメントに摺接させれば良い。これにより新たに、陽極側と陰極側の一対のブラシの配備が不要になる。結果、電機子のコストが低減され、低コストの直流モータの電機子が提供できる。
【0025】
また、請求項2に記載の発明では、12個のティースが設けられる。そして、回転軸を介して径方向で互いに対向するセグメントのフックに接続される短絡部の両端側が、スロットを通過して、ティースの一側面と、ティースの他側面とを沿わせる共に、一側面と他側面とを軸方向に往復しながら4個のティースに係回される。従って、本発明の電機子は、短絡部が空中に浮くことなく、且つ短絡部のセグメントや回転軸との接触が回避でき、短絡部の接触による短絡故障を抑制できる。さらに、本発明の電機子は、上記の短絡部の係回により、一側面と他側面とを軸方向に往復しながらティースに係回されるので、短絡部の張力が適正に緩和され、短絡部の断線が抑制できる。
【0026】
また、請求項3に記載の発明では、ティースは周上に12個の第1ティース〜第12ティースが順次設けられる。コイル部は、3個のティースに跨り導線が巻回され、12個の第1コイル部〜第12コイル部が形成される。例えば、第1コイル部は第1ティースと第2ティースと第3ティースとを跨って巻回され、第1コイル部の両端は、それぞれ第1ティースの近傍にある第1セグメントのフックと、第1セグメントの隣で、且つ第2ティースの近傍にある第2セグメントのフックとに接続される。第2コイル部〜第12コイル部も第1コイル部と同じように形成されるので、コイル部の両端がそれぞれ接続されるセグメントのフックは、隣り合うと共に、巻回されるティースの近傍にある。従って、3個のティースを跨ったコイル部の巻回部分からフックに接続される引き出し線部分は、フック(又は、セグメント)や回転軸との接触が回避でき、コイル部の接触による短絡故障を抑制できる。
【0027】
また、短絡部は、スロットを通過し、一側面と他側面とを沿うと共に、軸方向に往復するジグザク配線により、本発明の電機子は、短絡部のセグメントや回転軸との接触が回避でき、接触による短絡故障を抑制できると共に、短絡部の張力が適正に緩和されて、短絡部の断線が抑制できる。
【0028】
また、請求項4に記載の発明では、コイル部と短絡部とは、連続した導線を一筆書き状に交互に巻回および係回することにより形成される。従って、各コイル部形成のための巻回とフックへの係止、および各短絡部の係回とフックへの係止と、の各作業が、順次連続して行えるので、各作業時間が短縮でき、本発明の電機子のコストが低減される。
【0029】
また、本発明の各短絡部は不要線がなく、不要線の切断が不要であるので、切断の工程分、電機子コア3のコストが低減される。以上により、低コストの直流モータの電機子が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例に係る電機子の短絡部の配線を説明する斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2に示す電機子を平面に展開した第1コイル部〜第6コイル部および第1短絡部〜第6短絡部の説明図である。
【図4】図2に示す電機子を平面に展開した第7コイル部〜第12コイル部および第7短絡部〜第12短絡部の説明図である。
【図5】図2に示す電機子を平面に展開したコイル部Cの巻回と短絡部Dの係回の説明図である。
【図6】導線11の電子機コアへの配線を示した展開図である。
【図7】導線12の電子機コアへの配線を示した展開図である。
【図8】図1の電子機のコンミテータ周辺の断面図である。
【図9】本発明に係る従来技術の直流モータの電機子の説明図である。
【図10】図9の電機子のA矢視図である。
【図11】図9の電機子の短絡線の配線方法の説明図である。
【図12】図9の電機子の短絡線の配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る電機子の短絡部の配線を説明する斜視図である。図2は、図1の平面図である。電機子1は、直流モータ(図示せず)の電機子であり、外周側に図示していないモータハウジングに固定した複数のマグネットが配備される。電機子1は、回転軸2と、回転軸2に圧入された電機子コア3と、回転軸2に圧入されたコンミテータ4と、コイル部C(図3、図4)と、短絡部D(図3、図4)とを備える。尚、図1および図2において、コイル部Cおよび短絡部Dは一部(コイル部C1および短絡部D1)のみ示している。
【0033】
電機子コア3は、軸方向へ積層した複数枚のコア7と、積層したコア7の両端面を挟持する絶縁材のインシュレータ8、9とを備える。コア7は、周上等分に放射するる複数(本実施形態では、12個)のティース部7aと、中心部分に回転軸2が挿入される穴7b(図2)とを有する。インシュレータ8、9は、ティース部7aと略同形状のティース部を備え、積層したコア7のティース部7aの放射方向の側面を挟持する。以下、ティース部7aの個数は12個として説明する。積層されたコア7のティース部7aと、インシュレータ8、9のティース部分とにより12個のティースT、即ち第1ティースT1〜第12ティースT12(図2)が形成される。
【0034】
図1および図2に示すように、コンミテータ4は、回転軸2に挿入され、ティース部7aの個数と同数のセグメントSが外周面に等分に配置される。セグメントSは、隣り合う2個のティースTがなす円周角の間に設けられる。そして、第1ティースT1と第2ティースT2とがなす円周角の間に設けたセグメントSを第1セグメントS1として、第1ティースT1〜第12ティースT12により、順次第1セグメントS1〜第12セグメントS12が設けられる。また、セグメントSの外周面には、陽極側ブラシ13と陰極側ブラシ14(図3〜図7)とが摺接する。
【0035】
セグメントSには、コイル部Cの巻初め、巻終りおよび短絡部Dの両端とが係止されるフックF、即ち、第1セグメントS1〜第12セグメントS12に対応して、それぞれ第1フックF1〜第12フックF12が設けられる。コイル部Cの巻回とフックFへの係止、および短絡部Dの係回とフックFへの係止と、が終了されると、フックFが折り曲げられ、そしてコイル部Cの巻初め、巻終りと、短絡部Dの端部とフックFとがヒュージング溶接される。
【0036】
詳しくは後述するが、コイル部Cは、3個のティースTを跨り所定の巻数、巻回され、コイル部Cの巻き始めと巻き終わりは、それぞれ所定の隣り合う2個のセグメントSのフックFに接続される。これにより、電機子1には12個のコイル部C、即ち第1コイル部C1〜第12コイル部C12が配備される。また、短絡部Dは、回転軸2を介して径方向で互いに対向する(円周角で180°ずれた位置にある)2つのセグメントSとを短絡するようにフックFに接続され、電機子1には12個の短絡部D、即ち第1短絡部D1〜第12短絡部D12が配線される。また、隣り合う2つのティースTとにより12個のスロットL、即ち第1スロットL1〜第1スロットL12が形成される。尚、詳しくは後述するが、短絡部Dは6本でも良い。
【0037】
図3は、図2に示す電機子コア3のティースTと、セグメントS(またはフックF)を平面に展開し、第1コイル部C1〜第6コイル部C6および第1短絡部D1〜第6短絡部D6の配線を示す説明図であり、コイル部Cは太実線、短絡部Dは実線で示す。図3および後述する図4〜図7において、長方形の中の番号1〜12は図2の第1ティースT1〜第12ティースT12および第1セグメントS1〜第12セグメントS12(または第1フックF1〜第12フックF12)を示す。
【0038】
図3に示すように、第1コイル部C1は第1ティースT1と第2ティースT2と第3ティースT3とを跨ぎ巻回され、第1コイル部C1の一端は第1セグメントS1に接続され、他端は第2セグメントS2に接続される。
【0039】
第2コイル部C2は第8ティースT1と第9ティースT9と第10ティースT10とを跨ぎ巻回され、第2コイル部C2の一端は第8セグメントS8に接続され、他端は第9セグメントS9に接続される。
【0040】
第3コイル部C3は第3ティースT3と第4ティースT4と第5ティースT5とを跨ぎ巻回され、第3コイル部C3の一端は第3セグメントS3に接続され、他端は第4セグメントS4に接続される。
【0041】
第4コイル部C4は第10ティースT10と第11ティースT11と第12ティースT12とを跨ぎ巻回され、第4コイル部C4の一端は第10セグメントS10に接続され、他端は第11セグメントS11に接続される。
【0042】
第5コイル部C5は第5ティースT5と第6ティースT6と第7ティースT7とを跨ぎ、第5コイル部C5の一端は第5セグメントS5に接続され、他端は第6セグメントS6に接続される。
【0043】
第6コイル部C6は第12ティースT12と第1ティースT1と第2ティースT2とを跨ぎ巻回され、第6コイル部C6の一端は第12セグメントS12に接続され、他端は第1セグメントS1に接続される。
【0044】
第1短絡部D1は、第2セグメントS2と、回転軸2を介して径方向で第2セグメントS2に対向する第8セグメントS8とに接続される。即ち、第2セグメントS2は、第8セグメントS8とに対して円周角で180°異なる位置にある。同様に、第2短絡部D2は第9セグメントS9と第3セグメントS3とに、第3短絡部D3は第4セグメントS4と第10セグメントS10とに、第4短絡部D4は第11セグメントS11と第5セグメントS5とに、第5短絡部D5は第6セグメントS6と第12セグメントS12とに、そして、第6短絡部D6は第1セグメントS1と第7セグメントS7とに、それぞれ接続される。尚、図3中、左側の線端mは右側の線端mに、左側の線端nは右側の線端nに、そして左側の線端oは右側の線端oにそれぞれ連結している。
【0045】
図4は、図2に示す電機子コア3のティースTと、セグメントS(またはフックF)を平面に展開し、コイル部C7〜C12および第7短絡部D7〜第12短絡部D12の配線を示す説明図であり、コイル部Cは太実線、短絡部Dは実線で示す。
【0046】
第7コイル部C7は第7ティースT7と第8ティースT8と第9ティースT9とを跨ぎ巻回され、第7コイル部C7の一端は第7セグメントS7に接続され、他端は第8セグメントS8に接続される。
【0047】
第8コイル部C8は第2ティースT2と第3ティースT3と第4ティースT4とを跨ぎ巻回され、第8コイル部C8の一端は第2セグメントS2に接続され、他端は第3セグメントS3に接続される。
【0048】
第9コイル部C9は第9ティースT9と第10ティースT10と第11ティースT11とを跨ぎ巻回され、第9コイル部C9の一端は第9セグメントS9に接続され、他端は第10セグメントS10に接続される。
【0049】
第10コイル部C10は第4ティースT4と第5ティースT5と第6ティースT6とを跨ぎ巻回され、第10コイル部C10の一端は第4セグメントT4に接続され、他端は第5セグメントT5に接続される。
【0050】
第11コイル部C11は第11ティースT11と第12ティースT12と第1ティースT1とを跨ぎ巻回され、第11コイル部C11の一端は第11セグメントS11に接続され、他端は第12セグメントS12に接続される。
【0051】
第12コイル部C12は第6ティースT6と第7ティースT7と第8ティースT8とを跨ぎ巻回され、第12コイル部C12の一端は第6セグメントS6に接続され、他端は第7セグメントS7に接続される。
【0052】
第7短絡部D7は、第8セグメントS8と、第2セグメントS8に対向する第2セグメントS2とに接続される。同様に、第8短絡部D8は第3セグメントS3と第9セグメントS9とに、第9短絡部D9は第10セグメントS10と第4セグメントS4とに、第10短絡部D10は第5セグメントS5と第11セグメントS11とに、第11短絡部D11は第12セグメントS12と第6セグメントS6とに、そして、第12短絡部D12は第7セグメントS7と第1セグメントS1とに、それぞれ接続される。尚、図4中、左側の線端pは右側の線端pに、左側の線端qは右側の線端qに、そして左側の線端rは右側の線端rにそれぞれ連結している。
【0053】
図5は、図2に示す電機子コア3のティースTと、セグメントS(またはフックF)とを平面に展開し、コイル部C(C1、C2、C3)の巻回および短絡部D(D1、D2、D3)の係回(配線引き回し)を示す説明図である。図5中、コイル部Cは太実線、短絡部Dは太破線で示す。図6は、導線11の電子機コア3へのコイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回とを示した展開図であり、コイル部Cは太実線、短絡部Dは実線で示す。図5において、ティースTの長方形の上側の辺と下側の辺は、それぞれ電子機コア3の一側面3aと、一側面3aに対して反対側の他側面3bに対応する。また、長方形で示す各ティースTの間はスロットLを示し、第1ティースT1と第2ティースT2の間は第1スロットL1であり、図5の右方向に進むにつれてスロット番号が順次上がり、第12ティースT12の右辺側(第1ティースT1の左辺側)は第12スロットL12を示す。尚、図3、図4、図6、図7においても、図示していないが、電子機コア3の一側面3a側と他側面3b側、およびスロットLの各位置関係は、図5の電子機コア3の一側面3a側と他側面3b側、およびスロットLと同じである。
【0054】
図6に示すように、第1コイル部C1と、第1短絡部D1と、第2コイル部C2と、第2短絡部D2と、第3コイル部C3と、第3短絡部D3と、第4コイル部C4と、第4短絡部D4と、第5コイル部C5と、第5短絡部D5と、第6コイル部C6と、第6短絡部D6は、順次連続した1本の導線11である。導線11の電機子コア3におけるコイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回とは、次のように一筆書き状に行われる。
【0055】
即ち、図5に示すように、コイル部C1の一端の巻き始めが第1セグメントS1の第1フックF1に係止され、第1ティースT1と、第2ティースT2と、第3ティースT3とを跨いで所定の回数巻回され、巻き終りは第2セグメントS2の第2フックF2に係止され、第1コイル部C1が形成される。図1、図2および図5に示すように、第2フックF2に係止された導線11は、引続き第1短絡部D1となって、電機子コア3の一側面3aに沿いながら第3スロットL3へ導入され、第3スロットL3を通過する。通過した第1短絡部D1は、順次第4ティースT4の他側面3bと、第4スロットL4と、第5、6ティースT5、T6の一側面3a上と、第6スロットL6と、第7ティースT7の他側面3b上とを軸方向に往復しながら通過する。そして、第7ティースT7の他側面3b上を通過した第1短絡部D1は、第7スロットL7を通過して上方向に引出され、一側面3aに沿いながら第8セグメントS8の第8フックF8に係止される。
【0056】
第8フックF8に係止された導線11は、第1短絡部D1から第2コイル部C2となって第8ティースT8と第9ティースT9および第10ティースT10とを跨ぎ、所定の回数、巻回されて第9セグメントS9の第9フックF9に係止され、第2コイル部C2が形成される。第9フックF9に係止された第2コイル部C2の巻き終りの導線11は、次に第2短絡部D2になる。第2短絡部D2は、第1短絡部D1と同じように電機子コア3の一側面3aと他側面3bとの間で各スロットL10、L11、L1、L2を通過して、一側面3aと他側面3bとを軸方向に往復しながら係回され(以下、ジグザク配線)、第3セグメントS3に係止される。そこから前述と同様に、図6に示すように、順次第3コイル部C3の巻回と、第3短絡部D3のジグザク配線と、第4コイル部C4の巻回と、第4短絡部D4のジグザク配線と、第5コイル部C5の巻回と、第6短絡部D6のジグザク配線とがなされる。そして、第6短絡部D6の終端部が第7セグメントS7の第7フックF7に係止され、一筆書き状の導線11の配線が終了する。
【0057】
導線11と同様に、第7コイル部C7と、第7短絡部D7と、第8コイル部C8と、第8短絡部D8と、第9コイル部C9と、第9短絡部D9と、第10コイル部C10と、第10短絡部D10と、第11コイル部C11と、第11短絡部D11と、第12コイル部C12と、第12短絡部D12とは、順次連続した1本の導線12である。
【0058】
図7は、導線12の電子機コア3へのコイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回とを示した展開図であり、コイル部Cは太実線、短絡部Dは実線で示す。図7に示すように、第7イルC7の巻き始めが第7ティースT7に係止され、導線11と同様に、順次第7コイル部C7の巻回と、第7短絡部D7の係回と、第8コイル部C8の巻回と、第8短絡部D8の係回と、第9コイル部C9の巻回と、第9短絡部D9の係回と、第10コイル部C10の巻回と、第10短絡部D10の係回と、第11コイル部C11の巻回と、第11短絡部D11の係回と、第12コイル部C12の巻回と、第12短絡部D12の係回とが順次なされる。そして、第12短絡部D12の終端部が第1セグメントS1の第1フックF1に係止され、一筆書き状の導線12の配線が終了する。尚、導線11の配線と導線12の配線とを見易くするために、図6と図7とに導線11と導線12の配線を示している。
【0059】
ところで、電子機コア3は巻線機(図示せず)に取付けられる。そして、導線11と導線12とが、回転軸2を介して径方向に対向した位置にある2つのフライヤ(図示せず)から供給され、電子機コア3が回転されて、略同時に導線11と導線12の電子機コア3へのコイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回と、導線11、12のフックFへの係止とがなされる。
【0060】
図8は、電子機3のコンミテータ4周辺の断面図であり、詳しくは、フックFと、導線11、12とのヒュージング溶接終了後のセグメントS近傍の部分断面を示す。図中、(a)はフックFに導線11、12が係止されている状態を示し、(b)はヒュージング溶接直後の状態、そして(c)はヒュージング溶接終了後、コンミテータ4が電子機コア3の一側面3a近傍の正規の位置へ移動された状態を示す。
【0061】
図8(a)に示すように、コイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回と、導線11、12のフックへの係止とが出来るように、フックFの少なくとも一部(導線11、12が係止される部分)がコイル部端面5より外側に配置され、この位置にて導線11、12がフックFへ係止される。導線11、12のフックFへの係止終了後、フックFが折り曲げられ、ヒュージング溶接が行われる(図8(b))。ヒュージング溶接終了後、コンミテータ4を電機子コア3の一側面3a方向へ再圧入移動させる。この移動により、フックFと、フックFに接続されるコイル部Cまたは短絡部Dとの接点は、コイル部Cの電機子コア3の一側面3aから突出したコイル部内周6より内側で、且つコイル部Cの一側面3aから突出したコイル部端面5より一側面側3aの位置に来る(図8(c))。ここで、コンミテータ4の移動に際し、導線11、12が断線しないようにフックFに係止したコイル部Cおよび短絡部Dの端部部分の長さと、コンミテータ4の移動量とが適正に設定さる。即ち、コンミテータ4の移動前における端部部分の長さW1(図8(a))が、移動後における端部部分の長さW2(図8(b))より僅かに長くなるように、長さW1と、長さW2と、コンミテータ4の移動量とが設定される。
【0062】
尚、フックFと、フックFに接続されるコイル部Cまたは短絡部Dとの接点は、フックFがコア7に接触しなければ、一側面3aより窪んだ端面3cの極近にあって良い。また、端面3cが一側面3aより突出している場合も、フックFがコア7に接触しなければ、上記の接点は、端面3cの極近にあって良い。
【0063】
また、短絡部Dの係回は、図1、図2および図5に示すパターンに限定されることなく、スロットLを通過して、軸方向に往復しながら電機子コア3の一側面3aと他側面3bとに短絡部Dを1個以上のティースTに係回するパターンであれば良い。
【0064】
また、本実施形態の電機子コア3のティースTは、12個設けられているが、4個以上の偶数個であれば良い。
【0065】
また、導線11と導線12はそれぞれ別体であるが、導線11と導線12とを1本の導線にして、電機子コア3にコイル部Cの巻回と、短絡部Dの係回と、導線のフックFへの係止とを行っても良い。しかし、配線作業時間の関点から導線を2本にした方が好ましい。
【0066】
また、セグメントSとフックFは、銅合金などの良好な導電性の材質であるので、フックFに係止されたコイル部Cと短絡部Dとは、ヒュージング溶接後、導通される。従って、各コイル部Cと各短絡部Dとはそれぞれ別体の導線でも良い。しかし、配線作業時間の関点から各コイル部Cと各短絡部Dとが連続した導線の方が好ましい。
【0067】
さらに、本実施形態の電機子1では、導線11と導線12とを使用しているので、短絡部Dは、回転軸2を介して径方向で互いに対向する(円周角で180°ずれた位置にある)セグメントSに2本づつ接続され、合計12本、即ちセグメントSの個数と同数設けられているが、1本づつ接続することで、短絡部Dを6本、即ちセグメントSの個数の半分の本数にしても良い。
【0068】
次に、本発明の実施形態に係る電機子1の作動と効果について説明する。コンミテータ4は、回転軸2に挿入され、電機子コア3への各コイル部Cと各短絡部Dとの各両端側を各フックFに係止可能にするため、少なくともフックFの一部(導線11、12が係止される部分)がコイル部端面5より外側にある位置まで圧入される。この位置にて、導線11、12を各フックFに係止し(図8(a))、各コイル部Cの巻回と各短絡部Dの係回とを終了した後、各フックFを折り曲げてヒュージング溶接を行う(図8(b))。ヒュージング溶接終了後、コンミテータ4を電機子コア3の一側面3a方向へ再圧入移動させる。この移動により図8(c)に示すように、フックFと、フックFに接続されるコイル部Cまたは短絡部Dとの接点は、コイル部Cの一側面3aから突出したコイル部内周6より内側で、且つコイル部Cの一側面3aから突出したコイル部端面5より一側面側3aの位置で、端面3cの極近に来る。従って、電機子コア3の一側面3aとフックFを備えるコンミテータ4との距離が短縮でき、電機子1の軸方向長さも短縮できる。結果、軸方向に扁平な小型の直流モータの電機子1を提供できる。
【0069】
また、例えば、第1短絡部D1の中央部分は両端の第4、7ティースT4、T7に挟まれた2つの第5、6ティースT5、T6の一側面3aに沿って両側周方向へ配線される。この両側周方向へ配線された第1短絡部D1は、第4ティースT4と第5ティースT5、第6ティースT6と第7ティースT7とにより形成される第4スロットL4、第6スロットL6をそれぞれ他側面3bへ向かって通過して、それぞれ第4、7ティースT4、T7の各他側面3bに沿って配線される。それぞれの他側面3bに沿って配線された短絡部Dは、それぞれ外側の第4、7ティースT4、T7の両端に形成されている第3スロットL3、第7スロットL7を一側面3aへ向かって通過し、電機子コア3のコンミテータ4近傍の一側面3aに沿いながら、第2、8セグメントS2、S8の第2、8フックF2、F8にそれぞれ接続される。このように短絡部Dは、スロットLを通過し、一側面3aと他側面3bとを沿わせ、軸方向に往復しながら4つティースTに係回されることにより、空中に浮くことなく、コンミテータ4や回転軸2との接触が回避でき、接触による短絡故障を抑制できる。
【0070】
また、コイル部Cは、3個のティースTに跨り導線が巻回され、12個の第1コイル部C1〜第12コイル部C12が形成される。例えば、第1コイル部C1は第1ティースT1と第2ティースT2と第3ティースT3とを跨って巻回され、第1コイル部C1の両端は、それぞれ第1第1ティースT1の近傍にある第1セグメントS1の第1フックF1と、第1セグメントS1の隣で、且つ第2ティースS2の近傍にある第2セグメントS2の第2フックF2とに接続される。第2コイル部C2〜第12コイル部C12も第1コイル部C1と同じように形成されるので、コイル部Cの両端がそれぞれ接続されるセグメントSのフックFは、隣り合うと共に、巻回されるティースTの近傍にある。従って、3個のティースTを跨ったコイル部Cの巻回部分からフックFに接続される引き出し線部分は、フックF(又は、セグメント)や回転軸2への接触が回避でき、コイル部Cの接触による短絡故障を抑制できる。
【0071】
また、上述した短絡部Dの軸方向に往復するジグザク配線により、短絡部Dの応力が適正に緩和され、短絡部Dの断線が回避できる。
【0072】
さらに、導線11、12の配線時では、コンミテータ4の位置は、フックFの少なくとも一部(導線11、12が係止される部分)がコイル部端面5より外側に来るように配置される。この位置において、フックFに係止した導線11、12の引き出し線部分の長さW1は、コンミテータ4を一側面3aの極近まで移動した正規の位置における引き出し線部分の長さW2より僅かに長い(図8)。従って、コイル部Cの巻回とフックFへの係止時において生じた導線11、12の張りは、コンミテータ4の正規位置移動後において、適正に緩和されるので、コイル部Cの断線を回避できる。
【0073】
また、巻線機のフライヤから導線11と導線12が、巻線機に設置された電機子コア3に対向して供給される。そして導線11により、順次第1コイル部C1と、第1短絡部D1と、第2コイル部C2と、第2短絡部D2と、第3コイル部C3と、第3短絡部D3と、第4コイル部C4と、第4短絡部D4と、第5コイル部C5と、第5短絡部D5と、第6コイル部C6と、第6短絡部D6とが、配線(コイル部Cの巻回、短絡部Dの係回、フックFへの係止)される。これと略同時に、導線12により、順次第7コイル部C7と、第7短絡部D7と、第8コイル部C8と、第8短絡部D8と、第9コイル部C9と、第9短絡部D9と、第10コイル部C10と、第10短絡部D10と、第11コイル部C11と、第11短絡部D11と、第12コイル部C12と、第12短絡部D12とが、同じように配線される。結果、電機子1の配線作業時間が短縮されるので、電機子1のコストが低減される。
【0074】
また、電機子1は、短絡部Dを設けることにより、回転軸2を介して径方向で互いに対向する2つのセグメントSを同電位にでき、図3に示すように、陽極側ブラシ13と陰極側ブラシ14の一対をコンミテータ4のセグメントSに摺接させれば良く、これにより新たに、陽極側と陰極側の一対のブラシの配備が不要になり、電機子1のコストが低減される。
【0075】
さらに、図12に示すように、従来技術の電機子103は短絡部116の不要線119が切断されるが、本実施例の各短絡部Dは、不要線がなく、切断しなくて良いので、切断の工程分、電機子コア3のコストが低減される。以上により、低コストの直流モータの電機子1が提供できる。
【符号の説明】
【0076】
1 電機子
2 回転軸
3 電機子コア
3a 一側面
3b 他側面
4 コンミテータ
5 コイル部端面
6 コイル部内周
11、12 導線
C コイル部
D 短絡部
F フック
L スロット
S セグメント
T ティース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に装着され、4個以上の偶数個のティースを有する電機子コアと、
前記回転軸に装着され、且つ陽極側給電ブラシおよび陰極側給電ブラシとが摺接され、前記ティースと同数個のセグメントを有するコンミテータと、
1個以上の前記ティースに跨り巻回されると共に、所定の2つの前記セグメントに設けられたそれぞれのフックに接続される複数個のコイル部と、
前記回転軸を介して径方向で互いに対向する前記セグメントの前記フックに接続される短絡部と、
を備えた電機子であって、
前記フックと前記フックに接続される前記コイル部または前記短絡部との接点は、前記コイル部の前記電機子コアの一側面から突出したコイル部内周より内側で、且つ前記コイル部の前記一側面から突出したコイル部端面より前記一側面側の位置にあり、
前記短絡部は、互いに隣り合う前記ティースの間に形成されるスロットを通過し、前記一側面と、該一側面に対して反対側の他側面とに沿わせると共に、1個以上の前記ティースに係回される、
ことを特徴とする電機子。
【請求項2】
前記ティースは、12個の第1ティース〜第12ティースが順次設けられ、前記第1ティース〜前記第12ティースに対応して第1セグメント〜第12セグメントが設けられ、
前記短絡部は、該短絡部の両端が接続される2つの前記セグメントがなす円周角に挟まれた両端の前記ティースを除いた4つの前記ティースに係回され、それぞれの前記セグメントに接続された前記短絡部の両端側から前記一側面に沿い、4つの前記ティースの両端外側に形成されるそれぞれの前記スロットへ導入され、該スロットを通過して、両端の前記ティースのそれぞれの前記他側面に沿ってから、両端の前記ティースの内側に形成されるそれぞれの前記スロットを前記一側面に向かって通過して、両端の前記ティースに挟まれた2つの前記ティースの前記一側面に沿って配線される、ことを特徴とする請求項1に記載の電機子。
【請求項3】
前記第1ティースと前記第2ティースとがなす円周角度の間に配置される前記セグメントを第1セグメントとして、前記セグメントは、前記第1ティース〜前記第12ティースにより、隣り合う前記ティースがなす円周角の間に、順次前記第1セグメント〜前記第12セグメントが配置され、
前記コイル部は、3個の前記ティースを跨ってそれぞれ同一方向へ巻回されると共に、前記コイル部の両端は、前記コイル部が巻回される両側の前記ティースがなす円周角の間に設けた2個のセグメントにそれぞれ接続されて、順次12個形成され、
前記短絡部は、12個の第1短絡部〜第12短絡部が設けられ、
前記第1短絡部と前記第7短絡部とは前記第2セグメントと前記第8セグメントとに接続され、前記第2短絡部と前記第8短絡部とは前記第9セグメントと前記第3セグメントとに接続され、前記第3短絡部と前記第9短絡部とは前記第4セグメントと前記第10セグメントとに接続され、前記第4短絡部と前記第10短絡部とは前記第11セグメントと前記第5セグメントとに接続され、前記第5短絡部と前記第11短絡部とは前記第6セグメントと前記第12セグメントとに接続され、前記第6短絡部と前記第12短絡部とは前記第1セグメントと前記第7セグメントとに接続される、
ことを特徴とする請求項2に記載の電機子。
【請求項4】
前記コイル部と前記短絡部とは、連続した導線を一筆書き状に交互に巻回および係回することにより形成される、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電機子。
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に装着され、4個以上の偶数個のティースを有する電機子コアと、
前記回転軸に装着され、且つ陽極側給電ブラシおよび陰極側給電ブラシとが摺接され、前記ティースと同数個のセグメントを有するコンミテータと、
1個以上の前記ティースに跨り巻回されると共に、所定の2つの前記セグメントに設けられたそれぞれのフックに接続される複数個のコイル部と、
前記回転軸を介して径方向で互いに対向する前記セグメントの前記フックに接続される短絡部と、
を備えた電機子であって、
前記フックと前記フックに接続される前記コイル部または前記短絡部との接点は、前記コイル部の前記電機子コアの一側面から突出したコイル部内周より内側で、且つ前記コイル部の前記一側面から突出したコイル部端面より前記一側面側の位置にあり、
前記短絡部は、互いに隣り合う前記ティースの間に形成されるスロットを通過し、前記一側面と、該一側面に対して反対側の他側面とに沿わせると共に、1個以上の前記ティースに係回される、
ことを特徴とする電機子。
【請求項2】
前記ティースは、12個の第1ティース〜第12ティースが順次設けられ、前記第1ティース〜前記第12ティースに対応して第1セグメント〜第12セグメントが設けられ、
前記短絡部は、該短絡部の両端が接続される2つの前記セグメントがなす円周角に挟まれた両端の前記ティースを除いた4つの前記ティースに係回され、それぞれの前記セグメントに接続された前記短絡部の両端側から前記一側面に沿い、4つの前記ティースの両端外側に形成されるそれぞれの前記スロットへ導入され、該スロットを通過して、両端の前記ティースのそれぞれの前記他側面に沿ってから、両端の前記ティースの内側に形成されるそれぞれの前記スロットを前記一側面に向かって通過して、両端の前記ティースに挟まれた2つの前記ティースの前記一側面に沿って配線される、ことを特徴とする請求項1に記載の電機子。
【請求項3】
前記第1ティースと前記第2ティースとがなす円周角度の間に配置される前記セグメントを第1セグメントとして、前記セグメントは、前記第1ティース〜前記第12ティースにより、隣り合う前記ティースがなす円周角の間に、順次前記第1セグメント〜前記第12セグメントが配置され、
前記コイル部は、3個の前記ティースを跨ってそれぞれ同一方向へ巻回されると共に、前記コイル部の両端は、前記コイル部が巻回される両側の前記ティースがなす円周角の間に設けた2個のセグメントにそれぞれ接続されて、順次12個形成され、
前記短絡部は、12個の第1短絡部〜第12短絡部が設けられ、
前記第1短絡部と前記第7短絡部とは前記第2セグメントと前記第8セグメントとに接続され、前記第2短絡部と前記第8短絡部とは前記第9セグメントと前記第3セグメントとに接続され、前記第3短絡部と前記第9短絡部とは前記第4セグメントと前記第10セグメントとに接続され、前記第4短絡部と前記第10短絡部とは前記第11セグメントと前記第5セグメントとに接続され、前記第5短絡部と前記第11短絡部とは前記第6セグメントと前記第12セグメントとに接続され、前記第6短絡部と前記第12短絡部とは前記第1セグメントと前記第7セグメントとに接続される、
ことを特徴とする請求項2に記載の電機子。
【請求項4】
前記コイル部と前記短絡部とは、連続した導線を一筆書き状に交互に巻回および係回することにより形成される、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電機子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−188558(P2011−188558A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48369(P2010−48369)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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