説明

直流モータ制御装置及び室内機

【課題】モータを制御すると共に、モータ駆動用の直流電圧をモータへ供給するためのモータ制御手段の破損に伴い、他の回路が破損することを防ぐ、ことを目的とする。
【解決手段】直流モータ制御装置10は、整流回路26によって、電力系統24からの交流電力が直流電力に整流され、そして、整流回路26から出力した直流電圧がモータ制御基板14を介して直流モータ18へ供給される。また、スイッチング電源38によって、整流回路26から出力された直流電圧が所定の大きさの直流電圧へ変換され、レギュレータIC40によって変動が抑制されたうえで、モータ制御基板14の制御回路用の電圧として、モータ制御基板14へ伝送される。さらに、ダイオード66が、レギュレータIC40とモータ制御基板14との間に設けられ、モータ制御基板14からレギュレータIC40への電流の流れを遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータ制御装置及び室内機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流モータへ駆動用の電力を供給すると共に、直流モータを制御する直流モータ制御装置は、サージ電圧によって直流モータ制御装置を構成するIC等が破損する場合がある。
ここで、特許文献1には、ブラシレスモータへ電力供給するモータ駆動装置の構成要素である制御手段への電力源・制御電源の正側出力と前記制御手段の制御電源入力端子間にサージ吸収手段を設け、接続電路に発生する急峻なサージ電圧吸収を可能とする、技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−87259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の直流モータ制御装置の構成を図2に示す。直流モータ制御装置120は、交流電力を直流電力に整流するための整流回路100と、整流回路100から出力された直流電圧を所定の大きさの直流電圧へ変換するスイッチング電源102と、スイッチング電源102から出力された直流電圧の変動を抑制するレギュレータIC104と、を備える。そして、直流モータ制御装置120は、スイッチング電源102から出力された直流電圧によって駆動して直流モータ106を制御すると共に、整流回路100から出力された直流電圧を該モータへ供給するパワーモジュール108を備える。
【0005】
パワーモジュール108が何らかの原因によって破損した場合、整流回路100からパワーモジュール108へモータ駆動用電圧VM(例えばDC140V〜340V)を伝送するVM伝送線110と、レギュレータIC104からパワーモジュール108へ制御回路用電圧VCC(例えば15V)を送電するVCC伝送線112が短絡する場合がある。
このような場合、VCC伝送線112を介して、レギュレータIC104へモータ駆動用電圧VMである高電圧が流れ、レギュレータIC104が破損する可能性があった。すなわち、パワーモジュール108の破損に伴い、レギュレータIC104までも破損する可能性があった。このため、直流モータ制御装置120が故障した場合に、破損個所の特定に時間を要したり、パワーモジュール108と共にレギュレータIC104も交換する必要性が生じていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、モータを制御すると共に、モータ駆動用の直流電圧をモータへ供給するためのモータ制御手段の破損に伴い、他の回路が破損することを防ぐことができる、直流モータ制御装置及び室内機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の直流モータ制御装置及び室内機は以下の手段を採用する。
【0008】
すなわち、本発明に係る直流モータ制御装置は、交流電力を直流電力に整流する整流手段と、前記整流手段から出力された直流電圧を所定の大きさの直流電圧へ変換する電圧変換手段と、前記電圧変換手段から出力された直流電圧の変動を抑制する抑制手段と、前記整流手段から出力された直流電圧をモータへ供給すると共に、前記抑制手段から出力された直流電圧によって駆動することによって該モータを制御するモータ制御手段と、前記電圧変換手段と前記モータ制御手段との間に設けられ、前記モータ制御手段から前記抑制手段への電流の流れを遮断する遮断手段と、を備える。
【0009】
本発明によれば、整流手段によって、例えば電力系統からの交流電力が直流電力に整流され、そして、整流手段から出力された直流電圧がモータ制御手段を介してモータへ供給される。また、電圧変換手段によって、整流手段から出力された直流電圧が所定の大きさの直流電圧へ変換され、抑制手段によって変動が抑制されたうえで、モータ制御手段の制御回路用の信号として、モータ制御手段へ伝送される。
また、遮断手段が、電圧変換手段とモータ制御手段との間に設けられ、モータ制御手段から抑制手段への電流の流れを遮断する。
【0010】
ここで、モータ制御手段の故障により、整流手段からモータ制御手段へ電圧(高電圧、例えば144V〜340V)を伝送する伝送線と、抑制手段からモータ制御手段へ電圧(低電圧、例えば15V)を伝送する伝送線とが短絡する場合がある。この場合、整流手段からモータ制御手段へ流れる高電圧が、抑制手段へ流れることとなり、抑制手段が破損する可能性がある。
しかしながら、抑制手段とモータ制御手段との間に設けられた遮断手段によって、上記高電圧の抑制手段への流れが遮断されることとなるので、抑制手段の破損が防がれることとなる。
【0011】
従って、本発明は、モータ制御手段の破損に伴い、他の回路が破損することを防ぐことができる。
【0012】
また、本発明の直流モータ制御装置は、一端が前記遮断手段及び前記モータ制御手段に接続され、他端が基準電位に接続されるコンデンサが備えられ、前記コンデンサが、前記モータへ供給される電圧に対して耐圧を有してもよい。
【0013】
本発明によれば、直流モータ制御装置には、一端が遮断手段及びモータ制御手段に接続され、他端が基準電位に接続されるコンデンサが備えられる。該コンデンサは、整流手段からモータ制御手段へ電圧を伝送する伝送線と、抑制手段からモータ制御手段へ電圧を伝送する伝送線とが短絡した場合に、破損する場合がある。
【0014】
そのため、本発明は、該コンデンサを、モータへ供給される電圧に対して耐圧を有するコンデンサ、すなわち、高耐圧のコンデンサとすることによって、コンデンサの破損を防止できる。
【0015】
また、本発明の直流モータ制御装置は、前記モータが、空気調和機に用いられるファンを回転させ、前記遮断手段が、前記整流手段、前記電圧変換手段、及び前記抑制手段と共に前記空気調和機が有する室内機の制御基板に設けられ、前記モータ制御手段が、前記モータと共に前記空気調和機が有する室内機に設けられてもよい。
【0016】
本発明によれば、空気調和機の室内機の制御基板に遮断手段が設けられるので、空気調和機の室内機にモータ制御手段が設けられるので、室内機の制御基板の破損を防止することができる。
【0017】
一方、本発明に係る室内機は、上記記載の直流モータ制御装置によって、ファンを回転させるモータが制御される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、モータを制御すると共に、モータ駆動用の直流電圧をモータへ供給するためのモータ制御手段の破損に伴い、他の回路が破損することを防ぐことができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る直流モータ制御装置の構成図である。
【図2】従来の直流モータ制御装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る直流モータ制御装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る直流モータ制御装置10の構成図である。
なお、本実施形態に係る直流モータ制御装置10は、空気調和機に適用される。そして、直流モータ制御装置10は、室内制御装置16に設けられる室内制御基板12、及びファンアッセンブリ22に設けられるモータ制御基板14で構成される。なお、室内制御装置16及びファンアッセンブリ22は、室内機80に設けられている。
【0021】
室内制御基板12は、ファンアッセンブリ22との通信(モータ制御基板14に対する電力の供給や制御信号の伝送等)、各種情報を表示するディスプレイの制御、リモコンとの通信、及びルーパの制御等を行う。
モータ制御基板14は、ファンアッセンブリ22に備えられるファン20を回転させる直流モータ18(例えばブラシレスモータ)を制御する。
【0022】
直流モータ制御装置10は、電力系統24から交流電力(単相交流電力)が端子25を介して供給される。そして、交流電力は、整流回路26によって、直流電力へ整流される。整流回路26は、ダイオードスタック28とコンデンサ30で構成され、例えば、100V〜240Vの交流電力を144〜340Vの直流電力へ整流する。
【0023】
なお、端子25とダイオードスタック28との間には、ヒューズ32が設けられている。ヒューズ32は、ホルダーに着脱可能に備えられ、容易に交換可能とされている。
【0024】
整流回路26から出力される直流電圧は、直流モータ18を駆動させるための電圧であるモータ駆動用電圧VMとして、モータ制御基板14のパワーモジュール34へVM伝送線36及び端子37を介して伝送され、モータ制御基板14から直流モータ18へ供給される。
【0025】
また、整流回路26からの直流電圧は、該直流電圧を所定の大きさ(例えば18V)の直流電圧へ変換するスイッチング電源38へ出力され、スイッチング電源38で変換された直流電圧は、レギュレータIC40へ出力される。レギュレータIC40は、スイッチング電源38から出力された直流電圧の変動を抑制、すなわち、定電圧(例えば15V)とする。
【0026】
そして、レギュレータIC40から出力された直流電圧は、制御回路用電圧VCCとして、モータ制御基板14に備えられているパワーモジュール34へVCC伝送線42及び端子43を介して伝送される。
【0027】
すなわち、パワーモジュール34は、整流回路26から出力された直流電圧を直流モータ18へ供給すると共に、レギュレータIC40から出力された制御回路用電圧VCCによって駆動することによって直流モータ18を制御する。
また、室内制御基板12は、受光素子(フォトトランジスタ)44と発光ダイオード46で構成されたフォトカプラ48を備えている。
【0028】
受光素子44は、一端がVCC伝送線42に接続され、抵抗50,52が直列に接続された分割抵抗54に他端が接続される。分割抵抗54の一端は、基準電位(GND)とされた基準電位線56に接続される。抵抗50,52の間には、VSP伝送線58が接続され、VSP伝送線58には、一端が基準電位線56に接続されたコンデンサ60が接続される。
一方、発光ダイオード46は、一端が抵抗50を介してVCC伝送線42に接続され、他端がコンデンサ62に接続される。なお、コンデンサ62の一端は、基準電位線56に接続される。
【0029】
すなわち、フォトカプラ48の発光ダイオード46が発光し、受光素子44で該発光を受光する受光回数に応じてコンデンサ60が充電される。そして、コンデンサ60に充電された電圧が、直流モータ18の速度指令値(VSP)としてパワーモジュール34へVSP伝送線58及び端子59を介して伝送される。
【0030】
また、発光ダイオード46とコンデンサ62との間には、VF伝送線64が接続され、直流モータ18の回転数を示した回転数パルス出力(VF)がパワーモジュール34へVF伝送線64を介して伝送される。回転数パルス出力は、例えば直流モータ18の1回転当たり12の矩形波を出力する。
【0031】
なお、基準電位線56は、端子57を介してモータ制御基板14に接続されることによって、室内制御基板16とモータ制御基板14の基準電位を同電位としている。
【0032】
また、室内制御基板12は、レギュレータIC40とパワーモジュール34との間、すなわちVCC伝送線42上に設けられ、パワーモジュール34からレギュレータIC40への電流の流れを遮断するダイオード66が備えられている。
【0033】
また、室内制御基板12は、一端がダイオード66及びパワーモジュール34に接続、すなわちVCC伝送線42にされ、他端が基準電位線56に接続されたコンデンサ68が備えられている。本実施形態では、コンデンサ68は、直流モータ18へ供給されるモータ駆動用電圧VMに対して耐圧を有する、すなわち高耐圧のコンデンサとされている。
なお、コンデンサ68は、VCC伝送線42の電圧平滑を目的に設置され、VCC伝送線42へのノイズ及びサージ進入によるパワーモジュール34の誤動作及び破壊を防止するものである。
【0034】
以上のように、室内制御基板12は、VM伝送線36を介して直流モータ18を駆動させるためのモータ駆動用電圧VMである高電圧(144V〜340V)をパワーモジュール34へ伝送する。また、室内制御基板12は、VCC伝送線42、VF伝送線64、及びVSP伝送線58を介して、直流モータ18を制御するための電圧である、低電圧(15V)をパワーモジュール34へ伝送する。
【0035】
ここで、パワーモジュール34の故障により、VM伝送線36とVCC伝送線42とが短絡する場合がある。この場合、整流回路26からパワーモジュール34へ流れる高電圧が、レギュレータIC40へ流れ込み、レギュレータIC40が破損する可能性がある。
しかしながら、レギュレータIC40とパワーモジュール34との間に設けられたダイオード66によって、上記高電圧のレギュレータIC40への流れが遮断されることとなるので、レギュレータIC40の破損が防がれる。
【0036】
また、VM伝送線36とVCC伝送線42との短絡によって、コンデンサ68へも高電圧が流れることとなる。しかし、コンデンサ68を高耐圧のコンデンサとすることで、コンデンサ68の破損が防がれる。
【0037】
なお、VM伝送線36とVCC伝送線42とが短絡すると、VM伝送線36は、基準電位にも短絡するため、ヒューズ32はすぐに溶断することとなり、室内制御基板12及びモータ制御基板14への電力系統24からの電力供給は停止される。
【0038】
以上説明したように、ダイオード66を有しない従来の室内制御基板12は、パワーモジュール34が故障し、VM伝送線36とVCC伝送線42とが短絡すると、これに伴い、レギュレータIC40及びコンデンサ68が破損していたが、本実施形態では、レギュレータIC40及びコンデンサ68の破損が防がれる。そのため、パワーモジュール34が故障し、VM伝送線36とVCC伝送線42とが短絡しても、パワーモジュール34の修復(交換)及びヒューズ32の交換を行うのみで修理が完了することとなる。
【0039】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0040】
例えば、上記実施形態では、直流モータ制御装置10を空気調和機の室内機80に適用する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、空気調和機の室内機以外の他の直流モータ18を駆動させる装置に適用する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 直流モータ制御装置
12 室内制御基板
14 モータ制御基板
16 室内制御装置
18 直流モータ
20 ファン
22 ファンアッセンブリ
26 整流回路
34 パワーモジュール
38 スイッチング電源
40 レギュレータIC
66 ダイオード
68 コンデンサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に整流する整流手段と、
前記整流手段から出力された直流電圧を所定の大きさの直流電圧へ変換する電圧変換手段と、
前記電圧変換手段から出力された直流電圧の変動を抑制する抑制手段と、
前記整流手段から出力された直流電圧をモータへ供給すると共に、前記抑制手段から出力された直流電圧によって駆動することによって該モータを制御するモータ制御手段と、
前記電圧変換手段と前記モータ制御手段との間に設けられ、前記モータ制御手段から前記抑制手段への電流の流れを遮断する遮断手段と、
を備えた直流モータ制御装置。
【請求項2】
一端が前記遮断手段及び前記モータ制御手段に接続され、他端が基準電位に接続されるコンデンサが備えられ、
前記コンデンサは、前記モータへ供給される電圧に対して耐圧を有する請求項1記載の直流モータ制御装置。
【請求項3】
前記モータは、空気調和機に用いられるファンを回転させ、
前記遮断手段は、前記整流手段、前記電圧変換手段、及び前記抑制手段と共に前記空気調和機が有する室内機の制御基板に設けられ、
前記モータ制御手段は、前記モータと共に前記空気調和機が有する室内機に設けられる請求項1又は請求項2記載の直流モータ制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の直流モータ制御装置によって、ファンを回転させるモータが制御される室内機。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−235605(P2012−235605A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102145(P2011−102145)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】