説明

相互作用スクリーニングの方法、システムおよび装置

標的部分を同定するための相互作用スクリーニング法は、候補結合部分を第一の既知の部分および第二の既知の部分とともに小滴中に封入する。候補結合部分は小滴ごとに異なる。方法はさらに、小滴の一つまたは複数に関して、候補結合部分が第一の既知の部分および/または第二の既知の部分に結合しているかどうかを判定する工程を含む。場合によっては、方法はさらに、候補結合部分が第一の既知の部分または第一および第二の既知の部分に結合している少なくとも一つの小滴を隔離する工程を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる、2007年8月21日に出願された「Microfluidic Interaction Screening」と題する米国特許仮出願第60/956,966号の優先権を主張する。
【0002】
序文
本発明は、相互作用スクリーニングを実施する方法に関し、特に、標的実体と選択的に相互作用する一つまたは複数の抗体または他の部分を同定するために相互作用スクリーニングを実施するためのマイクロ流体学的方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
相互作用する実体を同定する、たとえば抗原-抗体、タンパク質-タンパク質、タンパク質-核酸、タンパク質-リガンド、核酸-核酸、細胞-タンパク質、細胞-細胞、リガンド-リガンドおよびリガンド-受容体の相互作用を同定するために様々な技術が開発されている。抗体(「Ab」)の場合、たとえば、抗原に対するAbの生成は、通常、標的抗原(「Ag」)、たとえばタンパク質または他のAgを取得し、精製し、そのAgを実験動物に注入し(多くの場合、数週にわたる多数回の注入を要する)、選択されるAb(またはmAb)がAgに対する必要な親和性および選択性を有するようなポリクロナールAbまたはモノクロナールAb(「mAb」)の場合にはAb産生細胞を選択しようとするコスト高で時間を浪費するプロセスを伴うものであった。標的抗原に対するAbの同定および単離のためのインビトロ代替方法であるファージディスプレイ法のために現在の相互作用スクリーニング技術を使用すると、特にスクリーニングで選択されたAbの親和性および特異性の特性決定のために、かなりの量の精製Agが必要である。
【0004】
同様に、イースト2ハイブリッド(Y2H)相互作用スクリーニングは、Agの細胞内発現がAg産生および精製の必要を除く、mAbの生成および選択のための手法を提供する。しかし、Y2H手法においては、以前から具現化されているように、通常、ベイト(bait)がタンパク質であり、非タンパク質Agに対してmAbを容易に選択することはできない。加えて、タンパク質は、高等哺乳動物中にあるため、イースト中では翻訳後修飾されず、そのため、翻訳後修飾(PTM)の状態を区別するY2HにおいてAbを同定することは、既知の技術を使用する場合に特有の難題を呈する。
【0005】
図1Aおよび1Bにそれぞれ示すハイブリドーマおよびファージディスプレイのための公知の技術は、通常、スクリーニングおよび活性アッセイのためにミリグラム量の精製タンパク質を要する。これらの技術は、多くの場合、非効率的なスクリーニング(偽陽性、生産性の低いハイブリドーマ、低いプレーティング効率など)を伴い、選択されたAbがその同族Agに対して所望の程度の特異性を有するということを立証する必要がある。タンパク質の産生および/または精製が律速となりえる:出費を要し、時間を浪費し、多くの場合、困難である。スクリーニングの非効率さと特異性を立証する必要性とが、結果的に、コストおよび労力の増加ならびにスループットの低下を生じさせる。
【0006】
図1には、マウスハイブリドーマ細胞によるmAb産生が、選択されたAgによって動物を免疫化してAb形成免疫細胞を刺激して、異なる特異性および能力を有する一定範囲のAbを産生することから出発することが見てとれる。捕集された免疫細胞を腫瘍(骨髄腫)細胞と融合させて、それぞれが特有の反応性を有するmAbを産生する不死化ハイブリドーマ細胞を産生する。そして、これらのハイブリドーマ細胞を、対象のAgに対する反応性を有するものを求めてインビトロでスクリーニングし、特異的クローンをたとえば限界希釈によって単離する。選択された細胞をクローン性増殖によって増殖させ、mAbの単一集団を各クローンから収穫する。図1Bは、例示的なファージディスプレイ技術、具体的にはM13バクテリオファージバイオパニングによるmAbの産生を示す。連続的なパニングおよび感染サイクルを実施して、固体担体に付着した「ベイト」に結合するファージを濃縮する。ファージミドを大腸菌(E. coli)中でレスキューし、個々の選択物をM13ヘルパーファージによる重複感染によってアッセイして、96穴酵素結合免疫吸着アッセイ法(「ELISA」)のためのファージを産生することができる。
【0007】
図7に示すような、潜在的なmAb産生体である多くの細胞の高速スクリーニングのためのマイクロ流体学ベースのハイブリドーマシステムがハーバード大学のDavid Weitz博士らによって開発されている。図7には、マウスmAbを分泌するハイブリドーマ細胞が、標的Agでコートされたビーズとともに小滴中でインキュベートされる様子が見てとれる。小滴は、マウスAbに対する蛍光標識された二次Ab、たとえばフルオレセイン標識二次Abを含有する小滴と合体する。そして、小滴は流路の狭窄部に通されて、ビーズが一列縦隊で検出器を通過するようになる。ビーズ単位で読み出しが起こる。二次Abの場所が計測され、蛍光標識されたビーズを有する小滴が選別される。Weitzらによって開発されたこのような設計においては、マウスmAbを分泌するハイブリドーマ細胞が、Agでコートされたビーズとともに小滴中でインキュベートされる。ハイブリドーマが、ビーズに付着したAgと相互作用するmAbを産生するならば、二次AbがそのmAbに結合して、ビーズ部位で蛍光の区域を生成する。そして、小滴は、フルオレセイン標識ビーズを含有する小滴がそれを含有しない小滴から分けられるように選別される。ハイブリドーマ細胞は小滴中で生存することができ、回収されることができ、1個の細胞が、生存するために毎時約50pLの培地を要すると推定される。これに関して、生存期間は滴サイズと相関することが観測されている。一般的なスクリーニングのためのインキュベーション期間は約4〜5時間である。培地含量および小滴サイズを調節することにより、少なくとも7時間にわたり小滴内で75%を超える細胞生存率および回収率を達成することができる。図8は、マイクロ流体学における細胞生存率および培地含量のスクリーニングを示す。流路狭窄部および中軸の分離点(nuclei separation)が単一小滴中の多数の細胞およびビーズを分離する。右側のグラフは、7時間後に計測したときの生存細胞対死細胞の割合を示す。
【0008】
特異的Agに対するmAbの従来的産生は、時間を浪費し、通常、特定の標的に対する所望のmAbの選択のために3〜6ヶ月を要し、また、コスト高であり、通常、mAb一つあたり約$8000を要する。加えて、mAbは、Ag標的に対する親和性に基づいて選択され、必ずしも、Ag標的に対する反応性に関して差別されるのではなく、選択的でもない。当技術分野において、選択される多くのAbが、望ましくない交差反応性のせいで役に立たないということは十分に認識されている。最後に、比較的脆弱なハイブリドーマ細胞の使用の制限がある。
【0009】
本明細書に開示される発明の少なくともいくつかの局面の目的は、たとえば、標的部分と相互作用する一つまたは複数の候補結合部分を同定し、場合によっては、そのような同定された候補結合部分を、標的に結合しない他の部分から単離するために、相互作用スクリーニングを実施する方法を提供することである。本明細書に開示される発明の少なくともいくつかの局面の目的は、標的に選択的に結合する候補を同定し、場合によっては、そのような候補を、標的に結合しない他のものから単離するための相互作用スクリーニングにより、Agまたは他の標的部分と選択的に結合する候補Abまたは他の部分を得る方法を提供することである。本明細書に開示される発明の少なくともいくつかの局面の目的は、そのような方法を実施するように作用する、すなわち、そのような相互作用スクリーニングを実施することができ、少なくとも特定の態様において、候補Abまたは他の実体、たとえばそのような候補のライブラリを選択し、一つまたは複数の反応性または特異的に反応性の候補をそうではないものから選別または単離するように作用するシステムを提供することである。本発明の少なくとも特定の方法の目的は、特定の新規なマイクロ流体学技術によって相互作用スクリーニングを実施することである。本発明のシステム局面の少なくとも特定の態様の目的は、そのようなマイクロ流体学技術によって相互作用スクリーニングを実施するように作用するシステムを提供することである。開示される発明の少なくとも特定の例示的なシステムおよび方法態様の目的は、標的Agに選択的に結合するAb、たとえばmAbを同定し、そのようなAbを、標的Agに選択的に結合しない他の候補から単離することである。本発明の特定のそのような方法およびシステム態様は、標的Agに結合するAbを同定して、それらを、非特異的または望ましくない結合性、たとえば非標的部分への結合親和性を有する他のAbと区別する。本開示の恩典を与えられると、本発明のさらなる目的および特徴が当業者には明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0010】
概要
一つの局面にしたがって、一つまたは複数の既知の他の部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための相互作用スクリーニング法は、少なくとも大多数が少なくとも一つの候補結合部分を含有する液体培地の小滴を提供することを含む。候補結合部分は、部分そのものとして直接小滴中に封入されることもできるし、微生物を封入することにより、その後その微生物が候補を小滴中に分泌または他のやり方で提供することによって提供することもできる。小滴はさらに、第一の既知の部分および第二の既知の部分を有する。候補結合部分は小滴ごとに異なる。本発明のこの局面または他の局面を参照して本明細書および本開示の他の部分で使用される語句「小滴ごとに異なる」およびすべての類似した語句は、小滴の少なくとも大部分(すなわち、半分を超える、たとえばほぼすべて)またはすべての中の候補結合部分が、小滴の他の大部分またはすべての中の候補結合部分と異なることをいう。相互作用スクリーニング法はさらに、小滴の一つまたは複数に関して、候補結合部分が第一の既知の部分に結合しているかどうか、および候補結合部分が第二の既知の部分に結合しているかどうかを判定する工程を含む。特定の例示的な態様において、そのような判定は、小滴の少なくとも大部分に関して実施される。開示される相互作用スクリーニング法の特定の例示的な態様は、判定工程の後、候補結合部分が第一の既知の部分に結合している少なくとも一つの小滴を、他の小滴から隔離する工程をさらに含む。特定の他の例示的な態様において、方法は、判定工程の後、候補結合部分が第一の既知の部分およびさらなる既知の部分に結合している少なくとも一つの小滴を、他の小滴から隔離する工程を含む。
【0011】
当業者は、本開示から、本明細書に開示される方法、システムおよび装置の様々な用途および様々な態様において、所与の小滴に含まれる候補結合部分と、その小滴に含まれる第一の既知の部分、第二の既知の部分およびさらなる既知の部分との間で結合が起こっているかどうかの判定が、結合部分としての候補の性質に関する情報を提供することができるということを理解するであろう。好結果の試験は、小滴中の既知の部分の一つには結合するが他のものには結合しないこと、または他の場合には、小滴中の既知の部分の両方(またはすべて)に結合することを含むことができる。たとえば、差別的結合は、結合特異性に関する情報または遺伝子ファミリーによってコードされる一部もしくは全メンバーを含むタンパク質への結合を評価するための情報を提供することができる。
【0012】
開示される相互作用スクリーニング法の特定の例示的な態様は、候補結合部分が第一の既知の部分には結合しているが、さらなる既知の部分には結合していない少なくとも一つの小滴を、他の小滴から隔離する工程を含む。特定の例示的な態様において、液体培地の小滴のいくつかまたはすべては、一つまたは複数のさらなる既知の部分をさらに含有し、方法はさらに、小滴の一つまたは複数に関して、候補結合部分が一つまたは複数のさらなる既知の部分に結合しているかどうかを判定することを含む。ここで使用される第一の既知の部分、第二の既知の部分およびさらなる既知の部分は、それらの分子または高分子構造が少なくとも部分的に既知であるという意味またはその部分が候補結合部分に対する相互作用スクリーニングに関して他のやり方で同定されているという意味で既知である。
【0013】
少なくともいくつかの例示的な態様において、第一の既知の部分は標的Agであってもよく、候補結合部分は、そのような標的Agに対する可能なAbであってもよい。特定の態様における小滴中の第二の既知の部分は、たとえば、所与の小滴の候補結合部分の、第二の既知の部分への結合が、その小滴の候補結合部分の、第一の既知の部分への特異的結合の欠如を示すという点において、非標的部分である。さらに他の態様において、第二の既知の部分への候補結合部分の結合の判定は、さらなる目的または異なる目的にも働くであろう。場合によっては、相互作用スクリーニングのための一つまたは複数のさらなる既知の部分の包含が、同様に、そのような類似した目的に働くことができる。
【0014】
先に開示された本発明の第一の局面または以下に開示される他の局面の方法、システムおよび装置の多くの態様において、所与の小滴は、集団の他の小滴の大部分とは異なるが、必ずしもすべてと異なるわけではないということが理解されるべきである。たとえば、一つより多い小滴が同じ候補結合部分を含有することもある。しかし、小滴の少なくとも大部分は、少なくとも大部分の他の小滴の候補結合部分とは異なる候補結合部分を有する。たとえば、組換え微生物を封入することにより、その後その微生物が候補結合部分を小滴中に分泌または他のやり方で提供することによって候補結合部分が小滴中に提供される態様において、微生物の各遺伝的変異体が少数の小滴中に発生することがある。したがって、「一つの小滴の微生物が他の小滴の微生物とは遺伝子的に異なるであろう」という記述(および本明細書におけるすべての類似したそのような記述)は、所与の小滴中の微生物が他の小滴の多くまたは大部分中の微生物とは異なるが、必ずしも他の小滴すべての中の微生物と異なるわけではないことを意味する。たとえば、本明細書に開示される方法、システムまたは装置の所与の態様の場合に微生物の108個の遺伝的変異体のライブラリを109個の小滴中に分散させるためには、平均で、得られる小滴集団中に、微生物変異体のそれぞれを有する小滴が約10個あるであろう。通常、それぞれぴったり10個の小滴ではなくポアソン分布が予想され、いくつかの小滴は多数の微生物を有し、その理由のため、多少なりとも有用であるかもしれない。小滴のいくつかまたは小滴の多くが多数の微生物(または小滴中に直接封入された多数の候補結合部分)を有する特定の例示的な態様は、場合によっては、本明細書に開示される方法、システムおよび装置を使用する効率的なスクリーニング戦略であってもよい。いずれにしても、そのような態様においては、所与の小滴が集団中のたとえば0、1、5、10、20またはそれどころか100個またはそれ以上の他の小滴と同じであるかもしれないにもかかわらず、各小滴は、各小滴が他の小滴の大多数とは異なるという点で、他の小滴とは異なる(概念が本明細書で使用される意味において)。同様に、別の例として、本開示の方法、システムまたは装置で使用される候補結合部分のライブラリが108個の異なるメンバーを有し、そのライブラリが109個の小滴中に封入されているならば、各候補が平均で約10個の小滴中にある。そのような態様において、所与の小滴が集団中のたとえば0、1、5、10、20またはそれどころか100個またはそれ以上の他の小滴と同じであるかもしれないにもかかわらず、各小滴は、各小滴が他の小滴の大多数とは異なるという意味において、集団の他の小滴とは異なる。
【0015】
本発明の上記および特定の他の局面のいくつかは、たとえばタンパク質-タンパク質、タンパク質-核酸、タンパク質-リガンド、核酸-核酸、細胞-タンパク質、細胞-細胞、リガンド-リガンド、リガンド-受容体、小分子-高分子などを含むことができる。先に開示された局面において、たとえば、特定の例示的な態様における小滴中の第一、第二および/またはさらなる既知の部分はタンパク質であり、小滴中の候補結合部分は、そのようなタンパク質の一つまたは複数のための候補Abである。特定の例示的な態様において、候補結合部分はmAbであり、既知の部分はAgである。また、Abのタンパク質標的を同定することが望ましい他の態様が考えられる。そのような態様において、標的部分はAbであってもよく、候補結合部分はタンパク質のライブラリである。本開示の恩典を与えられると、本明細書に開示される方法、システムおよび装置のこれらおよび他のスクリーニング用途が当業者には容易に明らかになるであろう。
【0016】
別の局面にしたがって、標的部分に結合する能力に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための相互作用スクリーニング法、システムおよび装置が提供される。スクリーニングは、液体培地の小滴を提供することを含み、各小滴(本明細書で使用される「各小滴」および類似した表現は、小滴のすべて、大部分または少なくともいくつかのそれぞれを意味する)は、候補結合部分としての少なくとも一つの組換え結合部分および少なくとも一つの標的部分を含有する。各小滴の候補結合部分は他の小滴の候補結合部分とは異なる。
【0017】
標的部分は、必ずしもではないが通常は、小滴のすべてにおいて同じである。小滴の間で分散した組換え結合部分は、たとえば、そのような部分のライブラリ、たとえばナイーブAbライブラリ、すなわち、特定の抗原に対して動物の免疫系では作られなかった不偏のランダム化ライブラリからのものであってもよい。そのようなライブラリの一つの非限定的なサブセットは、たとえば、抗体の単鎖組換えFvフラグメント(「scFv」)のものであってもよく、そのような抗体フラグメントは、組換えシステム中で製造するのに好都合であり、従来の抗体構造に典型的な結合領域を含むように設計されている。ナイーブscFvライブラリは、たとえば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開公報第20060160178号に開示されている技術にしたがって提供することができる。場合によっては、組換え結合部分は、以下さらに説明するように、その後の検出のために標識されている。候補結合部分および標的部分は任意の適当な部分の対であってもよい。
【0018】
特定の例示的な態様において、候補結合部分として小滴に含まれる組換え結合部分は、小滴中の組換え微生物、たとえばイースト、細菌、たとえば枯草菌(Bacillus subtitilis)、大腸菌、M13または他のバクテリオファージ、バキュロウイルス、アデノウイルス、真菌などによって提供される。以下さらに説明するように、本明細書に開示される方法、システムおよび装置において、小滴中の候補結合部分は、組換え微生物によって分泌または他のやり方で提供される、たとえばそのような微生物の表面に提示されることができる。本明細書に開示されるスクリーニング法、システムおよび装置の特定の例示的な態様において、候補結合部分は、事前に小滴中に封入(すなわち提供)されている組換え微生物のインキュベーション中に提供される。そのような例示的な態様において、組換え微生物の集団が、候補結合部分のライブラリを提供するための微生物のインキュベーションに適した培地中に提供される。各小滴中の微生物によって提供される候補結合部分は、他の小滴中の微生物によって提供される候補結合部分とは異なる。すなわち、先に説明したように、一つの小滴の微生物は他の小滴の微生物とは遺伝子的に異なって、少なくとも大部分の他の小滴内の微生物によって提供される組換え結合部分とは相応に異なる組換え結合部分(小滴のための候補結合部分として)を提供するであろう。したがって、そのような態様における微生物の異なる微生物は、それぞれが、少なくとも一つの組換え結合部分を、他の小滴中の微生物の大部分またはすべての他の微生物によって候補結合部分として提供される組換え結合部分とは異なる候補結合部分として提供することができる。
【0019】
標的部分は、場合によっては、担体粒子、たとえばビーズまたは他の固体担体粒子上に提供されることもできる。小滴は、場合によっては、特定の例示的な態様において、特定の用途に依存して、インキュベートされた後、候補結合部分が標的部分に結合している小滴(あるならば)を同定するために検査される。たとえば、小滴の少なくとも一部を、たとえば、モジュール中のマイクロチャネルの狭窄部を含む検出部位に一列縦隊のストリームとして通すことにより、検出器にかけて(expose)、候補結合部分が標的部分に結合している(または十分な親和性および/または特異性で結合している)小滴を同定することができる。そして、ソータを作動させてそのような小滴を他の小滴から分離することにより、同定された小滴を単離することができる。上述したように、断りない限り、本明細書および請求の範囲における小滴または「各小滴」などの性質または状態の参照は、多数(たとえば、すべて、大部分またはいくつか)の小滴の性質または状態を意味するが、必ずしもすべての小滴の性質または状態を意味するものではない。同様に、小滴または各小滴に対する動作の実行の参照は、多数(たとえば、すべて、大部分またはいくつか)の小滴に対するそのような動作の実行(状況に依存して集合的または一つずつ)を意味するが、必ずしもすべての小滴に対するそのような動作の実行を意味するものではない。
【0020】
標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための本明細書に開示されるスクリーニング法、システムおよび装置の特定の例示的な態様において、小滴は、組換え結合部分を含有するような水性小滴の分散液の油中エマルションを形成することによって提供される。特定の例示的な態様において、候補結合部分および標的部分は、小滴のストリーム、たとえばマイクロ流体流路中の小滴の一列縦隊のストリームとしての小滴中に封入される。たとえば候補結合部分が小滴中の組換え微生物によって提供される態様において、微生物は、マイクロ流体流路中で培地の小滴のストリームに分けることができる。
【0021】
本明細書に開示される方法、システムおよび装置はさらに、候補結合部分が標的部分に結合した一つまたは複数の小滴(あるならば)を同定することを含む。特定の例示的な態様において、候補結合部分、たとえば組換え結合部分は、標的部分への結合の視覚的または他の光学的検出のために標識されている。そして、候補結合部分が標的部分に結合した同定された小滴のすべてまたは少なくとも一つまたは複数を選別する、すなわち、他の小滴から隔離または分離する。そして、現在公知である技術または将来開発される技術を含む適当な技術によるさらなるスクリーニング、評価、産生などにより、選択された組換え結合部分のさらなる処理を進めることができる。
【0022】
この局面の特定の例示的な態様において、小滴はさらに、非標的部分または他の既知の部分もしくは多数の他の既知の部分を含み、それに対して候補結合部分が標的部分とともにスクリーニングされる。各小滴中に多数の既知の部分を有する特定の例示的な態様において、小滴の候補結合分子の結合性の改善された特性決定の恩典を達成することができる。したがって、たとえば、各小滴中に多数の既知の部分を有する特定の例示的な態様は、標的部分に対する候補結合部分の結合特異性を判定する(少なくとも予備的に)のに適している。換言するならば、これらの態様において、候補結合部分の特異性は、標的部分に結合するその候補結合部分の傾向を、それが、非標的部分として働く一つまたは複数の他の既知の部分に結合するかどうかとともに判定することによって評価することができる。特定の例示的な態様において、特定の小滴中の候補結合部分の結合親和性は、一つまたは複数の非標的部分に対してよりも標的部分に対して大きいかどうかが判定される。標的部分および非標的部分への候補結合部分の結合(あるならば)は、同時に判定することもできるし、別個に、たとえば別個の工程で判定することもできる。小滴中の一つまたは複数のそのような非標的部分は、担体粒子、たとえばビーズなどに担持されることもできるし、小滴中で担体粒子によって担持されない状態にあることもできる。上記のように、標的部分は、場合によっては、小滴中の一つまたは複数の粒子に担持され、同様に、非標的部分は、小滴中の一つまたは複数の他の粒子に担持されることができる。
【0023】
特定の例示的な態様において、二つまたはそれ以上の構造的に関連する標的部分に結合する結合部分を同定することが望ましい場合、構造的に関連する標的は、候補結合部分とともに小滴中に存在し、候補結合部分が構造的に関連する標的それぞれに結合するかどうかが判定される。構造的に関連する標的は、様々なクラスの分子、たとえばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸または他のタイプの有機および無機分子のいずれであってもよい。そのような構造的に関連する分子の非限定的な例は、小分子の異性体、タンパク質のイソ型、遺伝子ファミリーのメンバーによってコードされたタンパク質または様々な程度のPTMを受けたタンパク質および受けていないタンパク質である。
【0024】
特定の例示的な態様において、候補結合部分の結合は、小滴中の一つまたは複数の標的部分および一つまたは複数の非標的部分に関して、選択された候補結合部分が、小滴中の非標的部分のいずれかに結合する場合よりも高い親和性で一つまたは複数の標的部分に結合するように判定される。担体粒子が使用されるそのような態様において、担体粒子そのもの(すなわち、付着した既知の部分を有しない)は、担体粒子に付着した標的分子に結合するのではなく担体粒子に結合しているかもしれない候補結合部分を同定するために、「非標的」部分の例として働くことができる。
【0025】
特定の例示的な態様においては、二つまたはそれ以上の既知の部分が同じ担体粒子に付着しており、候補結合部分が、担体粒子に付着した既知の実体の一つまたは複数に結合するかどうかが判定される。そのような態様においては、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のような技術を使用して、担体粒子上の既知の部分のどれが候補結合部分と結合しているのかを予測することができる。
【0026】
既知の部分または標的部分または非標的部分を含有する小滴とは、その小滴がその部分の一つまたは複数のコピーを含有するということを意味するものと理解されるべきである。同様に、候補結合部分を含有する小滴とは、その小滴が候補結合部分の一つまたは複数のコピーを含有することを意味する。相応に、候補Abまたは候補タンパク質、候補リガンドなどを含有する小滴とは、その小滴がそのAb、タンパク質、リガンドなどの一つまたは複数のコピーをそれぞれ含有することを意味する。
【0027】
本発明の別の局面にしたがって、第一の既知の部分、第二の既知の部分および場合によっては一つまたは複数のさらなる既知の部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための相互作用スクリーニング法、システムおよび装置であって、スクリーニングが、液体培地の小滴を小滴の一列縦隊のストリームとしてマイクロ流体流路中に提供すること、および候補結合部分が第一および/または第二の既知の部分ならびにさらなる部分(あるならば)に付着または結合しているかどうかを判定することを含む相互作用スクリーニング法、システムおよび装置が提供される。特定の例示的な態様において、これは、流れ集束ジオメトリー(flow-focusing geometry)を使用して小滴を形成することによって達成される。本発明のこの局面にしたがって、選択/対抗選択パラダイムが小滴中で具現化される。特定の例示的な態様において、各小滴は、候補結合部分ならびに既知の部分として、少なくとも一つの標的部分および少なくとも一つの非標的部分を含有する。非標的部分(ここでもまた、上記説明と合致して、そのような部分の一つまたは複数のコピーを意味する)が各小滴中に標的部分および候補結合部分とともに提供される。本発明のこの局面の特定の例示的な態様における各小滴中の候補結合部分は組換え部分であり、この局面の他の例示的な態様においては、候補結合部分は組換え部分ではない。標的部分への結合に加えて非標的部分にも結合する小滴の候補結合部分の検出が、候補結合部分の結合が標的部分に対して非特異的であり、したがって、候補結合部分が所望の目的には望ましくないかもしれないという暗示を提供する。特定の例示的な態様において、非標的部分は、小滴中、担体粒子、たとえばビーズまたは他の固体担体粒子上に提供されることができる。特定の例示的な態様において、候補結合部分はAbまたはmAbであり、標的部分はAgである。そのような態様において、非標的部分に結合する場合よりも有意または十分に大きな程度に標的Agに結合するAbまたはmAbを含有する小滴を形成、同定および/または捕集するためにマイクロ流体学が使用される。特定の例示的な態様において、AbまたはmAbは、非修飾タンパク質、翻訳後修飾タンパク質または他の抗原に対して産生される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
添付図面を参照しながら、本明細書に開示される方法、システムおよび装置を説明する。
【0029】
【図1A】所与のAgに対するmAbを産生しかつ同定するための、公知のハイブリドーマ技術の略図である。
【図1B】所与のAgに対するmAbを産生しかつ同定するための、公知のファージディスプレイ技術の略図である。
【図2】本明細書に開示される方法の特定の例示的な態様において、小滴を生成し、組み合わせ、タイミングを調節し、選別することを含むマイクロ流体作用を具現化するのに適した装置およびシステムの部分切欠き略図である。
【図2A−D】本明細書に開示される方法の特定の例示的な態様において、小滴を生成し、組み合わせ、タイミングを調節し、選別することを含むマイクロ流体作用を具現化するのに適した装置およびシステムの部分切欠き略図である。
【図3A】本明細書に開示される方法の特定の例示的な態様において、小滴を生成することを含むマイクロ流体作用を具現化するのに適したマイクロ流体装置およびシステムの部分切欠き略図である。
【図3B】1000Hz小滴生成レートで作動する例示的な態様の場合の、選択されたシステム性質に対するマイクロ流体小滴直径の効果、具体的には小滴量および水流量に対する効果を示すグラフである。
【図4】本明細書に開示される方法の特定の例示的な態様において、流路の両側の電極の間に印加された電圧によってマイクロ流体流路中を一列縦隊で流れる小滴の合体または融合を含むマイクロ流体作用を具現化するのに適したマイクロ流体装置およびシステムの部分切欠き略図である。
【図5】本明細書に開示される方法の特定の例示的な態様において、たとえば小滴のタイミングを調節されたインキュベーションなどのために順序付けされ、融合した小滴をマイクロ流体モジュールの曲がりくねった流路に通すことを含むマイクロ流体作用を具現化するのに適したマイクロ流体装置およびシステムの部分切欠き略図である。
【図6】本明細書に開示される方法の特定の例示的な態様において、マイクロ流体モジュール中の小滴選別を含むマイクロ流体作用を具現化するのに適したマイクロ流体装置およびシステムの部分切欠き略図である。
【図7】標的部分に結合しないmAbを有する小滴からの後続の選別のためにマイクロ流体小滴中で標的部分に結合するmAbを分泌するハイブリドーマ細胞の同定に適したマイクロ流体装置およびシステムの部分切欠き略図である。
【図8A】図7のマイクロ流体小滴中のハイブリドーマ細胞の封入に適したマイクロ流体装置およびシステムの部分切欠き略図および7時間後に計測したときの生存細胞対死細胞の割合を示すグラフ(図8Aの右側)を含む関連のグラフである。
【図8B】細胞生存率を示すグラフである。
【図9】本明細書に開示される方法の特定の例示的な態様において、ハイブリドーマ細胞を二つのタイプのビーズ(標的Agでコートされたビーズおよび標的Agでコートされていない第二のビーズ)とともにマイクロ流体小滴中に封入することを含むマイクロ流体作用を具現化するのに適したマイクロ流体装置およびシステムの部分切欠き略図である。
【図10】本明細書に開示される方法の特定の例示的な態様において、タンパク質を培地中に直接分泌することができる微生物を二つのタイプのビーズ(標的Agでコートされたビーズおよび標的Agでコートされていない第二のビーズ)とともにマイクロ流体小滴中に封入することを含むマイクロ流体作用を具現化するのに適したマイクロ流体装置およびシステムの部分切欠き略図である。
【図11】本明細書に開示される方法の特定の他の例示的な態様において、(i)二つのタイプのビーズ(標的Agでコートされたビーズおよび標的Agでコートされていない第二のビーズ)を、タンパク質を培地中に直接分泌することができるM13ファージ感染大腸菌とともに、マイクロ流体小滴中に同時封入すること、(ii)小滴のインキュベーション、(iii)小滴と、標識された抗M13抗体を含有する第二の小滴との合体、ならびに(iv)M13ファージが結合しているビーズの検出および選別を含むマイクロ流体作用を具現化するのに適したマイクロ流体装置およびシステムの部分切欠き略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の特定の例示的な態様の詳細な説明
以下、本明細書に開示される方法、システムおよび装置の特定の例示的な態様のより詳細な説明が、Ab-Ag反応およびマイクロ流体学的に操作される小滴中の標的と結合するための固体担体としてのマイクロビーズの使用を伴うということが理解されよう。しかし、相互作用する部分が判定される、本明細書に開示される方法およびシステムの他の用途および態様が数多くあるということが理解されよう。発明の特定の局面は、たとえば、タンパク質-タンパク質、タンパク質-核酸、タンパク質-リガンド、核酸-核酸、細胞-タンパク質、細胞-細胞、リガンド-リガンド、リガンド-受容体、小分子-高分子などを含むことができる。本開示の恩典を与えられると、本発明の代替用途を含む数多くのそのような態様が当業者には明らかになるであろう。
【0031】
本明細書における開示から、全体として考慮すると、本明細書に開示される方法、システムおよび装置において、そのような小滴それぞれが、ある程度、従来技術で使用される96穴プレートの一つの穴の機能を果たし、ひいてはそれに取って代わることができるということが当業者によって認識されるであろう。本明細書に開示される方法、システムおよび装置で処理可能な小滴の数の多さを考慮すると、少なくとも特定の例示的な態様において、実質的なコスト、生産性、効率およびタイミングの利点を達成することができる。
【0032】
本発明の一つの局面にしたがって、先に開示されたように、一つまたは複数の標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための特定の相互作用スクリーニング法、システムおよび装置は、液体培地の小滴を提供することを含み、その小滴の少なくとも大多数が、候補結合部分としての少なくとも一つの組換え結合部分および少なくとも一つの標的部分を含有する。数多くの小滴それぞれの候補結合部分は他の小滴の候補結合部分とは異なる。候補結合部分が標的部分に結合した小滴(あるならば)の一つまたは複数が同定され、その後、それらの小滴を他の小滴から隔離することができる。特定の例示的な態様において、そのような相互作用スクリーニングは、組換え結合部分の水性分散液の小滴の油中エマルションを形成することを含む。そのようなエマルションは、任意の適当なやり方で、たとえば、水性分散液と油との混合物を形成し、その混合物を振とうし、かく拌し、他のやり方でかき混ぜる、または振動させることなどによって形成することができる。
【0033】
または、小滴は、液体培地のマイクロ流体処理、たとえばマイクロ流体封入によって形成することもできる。たとえば、少なくとも特定の例示的な態様に適した一つのマイクロ流体封入技術は、マイクロ流体流路中に流れ集束ジオメトリーを使用して小滴を形成する。水性ストリームが流路中の狭窄部に注入される。キャリヤ流体、たとえば油の対向伝搬(counter-propagating)ストリームが水性ストリームを流体力学的に集束させ、狭窄部を通過するときのその分解を安定させて実質的に均一なミクロンサイズの小滴にする。水性小滴の生成速度、間隔およびサイズは、油および水性ストリームの相対流量ならびにノズルジオメトリーによって制御される。典型的なスループットは毎秒3,000〜10,000個の小滴であってもよく、典型的な小滴サイズは均一に5〜100ミクロン、たとえば約30ミクロンである。具体的な用途のために必要である場合、各小滴を一つまたは複数の第二の小滴と合体または分解させることができる。たとえば、各小滴を、さらなる成分、たとえば標的部分、非標的部分、標識実体、補足培養培地、培地の性質または状態を変化させるための液体などを含有する第二の小滴と合体させることができる。小滴融合は、たとえば、まず二つの小滴タイプをマイクロ流体流路中で交互に並ぶ小滴タイプの一列縦隊のストリームに撚り合わせることにより、マイクロ流体学的に達成することができる。二つの小滴集団のサイズは、それらがマイクロ流体流路に沿って異なる速度で移動して小滴対を達成するよう、異なるように操作することができる。そして、これらの対を、たとえば、小滴が電場を通過する電場誘起双極子によって駆動して融合させる。特定の例示的な態様において、そのようなマイクロ流体流路および電場発生コンポーネントは小滴形成マイクロ流体流路とともに共通のモジュールに統合されている。
【0034】
特定の例示的な態様において、小滴は、具体的な用途に適切であるよう、一回または複数回、培養または他のやり方でインキュベートされる。小滴は、たとえば収集したエマルションとして非マイクロ流体容器中に一時的に保持されている間に集団的な塊としてインキュベートすることができる。代替的または追加的に、小滴は、マイクロ流体流路をたとえば一列縦隊ストリームとして通過するときにインキュベートされることもできる。正確な反応またはインキュベーション時間は、たとえばタイミングを調節する流路を使用して、すなわち、小滴を既知の流量で既知の長さのマイクロ流体流路に通すことによって達成することができる。
【0035】
図2は、本明細書に開示される方法、システムおよび装置のためのマイクロ流体モジュール中で小滴を生成、評価もしくは検査および/または選別するための技術を概略的に示す。図2Aは、形成された後に共通の下流マイクロ流体流路に交互に送られる、異なるサイズを有する二つの異なる小滴タイプを示す。特定の例示的な態様において、小滴タイプの一方は、組換え結合部分または組換え結合部分を発現して小滴培地中に分泌することができる微生物を含有し、第二の小滴は、場合によっては支持体上の標的部分および、場合によっては、同じく場合によっては支持体上の非標的部分を含有する。図2Bは、本開示のモジュール10または他の装置中のマイクロ流体流路中の小滴の対を示す。小滴対11が、電極12によって発生した電場に入り、この電場が単一小滴14のストリームへの融合を誘発する様子が見てとれる。合体する小滴対のいずれかの小滴を補助的な小滴と呼ぶこともできる。そのような小滴合体技術を一回または複数回使用して、たとえば(用途および態様に依存して)候補結合部分または小滴中にそれらを産生するための微生物、標的部分、補足液体培地、たとえばpH、塩濃度または小滴の他の特性、性質もしくは化学的性質を変化させるための小滴改質物質などを含む必要な成分をすべて有する、本明細書に開示される方法、システム、および装置で使用される小滴を構築することができる。図2C中、合体した単一小滴が、小滴をモジュールの比較的コンパクトなまたは小さな部分の中で前後に運んで所望のイベント、たとえば小滴を小滴に含まれる微生物からの候補結合部分で富化するインキュベーション、標的部分への結合または他のイベントが起こって、場合によっては適切なシグナル増幅の後に追跡され、記録されるための正確な時間を提供する曲がりくねったマイクロ流路16中を移動することが見てとれる。図2Dは小滴の隔離を示す。図2Dに示す態様において、標的部分に結合する小滴の候補結合部分を示すシグナルまたは他の検出された特性を有することが同定された小滴18が、電極22の作動により、接合部20で他の小滴から隔離される。本開示の恩典を与えられると、本明細書に開示される方法、システムおよび装置で使用される小滴を提供し、検査し、操作するためのこれらおよび他の適当な技術の様々な具現化が当業者には明らかになるであろう。
【0036】
上記のように、特定の例示的な態様において、小滴中の標的部分は小滴中の担体粒子上に担持されることができる。同様に、非標的部分が使用される態様において、小滴中の非標的部分または非標的部分の少なくともいくつかが小滴中の担体粒子上に担持されることもできる。担体粒子は、場合によっては、固体粒子、たとえばマイクロビーズのようなビーズである。たとえば標的部分および非標的部分(使用されるならば)が担体上に担持されない態様を含む特定の例示的な態様において、候補結合部分が標的部分(および/または場合によっては非標的部分)に結合する小滴の検出は、公知の技術による蛍光偏光スクリーニングの使用を含むことができる。本開示の恩典を与えられると、本明細書に開示される方法、システムおよび装置への蛍光偏光スクリーニングの適用性が当業者には明らかになるであろう。
【0037】
一つのタイプまたは一つより多いタイプの候補結合部分を各小滴中に提供することができる。同様に、一つのタイプまたは一つより多いタイプの標的部分を各小滴中に提供することができる。同様に、非標的部分が使用される態様において、一つまたは一つより多いタイプの非標的部分を各小滴中に使用することができる。
【0038】
先に開示したように、特定の例示的な態様において、各小滴中の組換え結合部分は、その組換え結合部分を分泌するその小滴中の微生物によって提供される。微生物は、候補結合部分のライブラリを小滴中に提供する。微生物の使用は、少なくとも特定の例示的な態様において、コスト減少、マイクロ流体分離条件下での持続的細胞生存度、より高い細胞回収率および取り扱いやすさの利点を有する。たとえば、枯草菌は、好気条件下、小滴中で少なくとも6日間生存することができる。微生物は、組換え結合部分を小滴の培地中に直接分泌することにより、組換え結合部分を提供することができる。特定の例示的な態様において、微生物は、たとえば組換え結合部分などを画定するバクテリオファージの作用による小滴中での微生物の溶菌と同時に組換え結合部分を提供する。特定の例示的な態様において、各微生物は、組換え結合部分を液体培地中に直接分泌する。各小滴中の微生物は、他の小滴中のいくつかまたはすべての他の微生物によって提供される候補結合部分とは異なる候補結合部分を提供する。すなわち、各小滴中の遺伝子的に異なる微生物は、各小滴中の組換え結合部分が各微生物における遺伝子操作された違いに対応して他の小滴中の組換え結合部分のいくつかまたはすべてとは異なるような一つまたは複数の組換え結合部分をその小滴の候補結合部分として提供する。組換え結合部分は、Ab、タンパク質、核酸などであってもよく、特定の例示的な態様における小滴の液体培地は、そのような組換え結合部分を産生する微生物の培養培地である。これに関して、小滴は、図2に関連して先に説明したように、または他の適当なやり方で、たとえば集合した塊としてマイクロ流体流路中でインキュベートすることができる。本開示の恩典を与えられると、当業者は、小滴中に組換え結合部分を創製するための様々な公知の技術の適用性を認識するであろう。
【0039】
小滴中の微生物(microbe)または微生物(microorganism)が組換え結合部分を提供する例示的な態様は、たとえば、ウイルスディスプレイ、ファージディスプレイもしくはイーストディスプレイまたは細菌分泌、古細菌分泌もしくは真核生物分泌を含む。小滴中でタンパク質をコードし、発現し、表示するための可能な手段の非限定的な例は、コードする遺伝子が結合部分に物理的に接続されるディスプレイ技術と、結合部分がコードする微生物から培地中に分泌され、そこで小滴内に保持される分泌技術とを含む。ウイルスディスプレイおよびファージディスプレイは、ウイルスおよび真核生物ホストまたはバクテリオファージおよび細菌ホストを使用するタンパク質相互作用のハイスループットスクリーニングのために使用することができる。たとえばM13繊維状ファージディスプレイの場合、対象のタンパク質またはペプチドをコードするDNAがpIIIまたはpVIII遺伝子に連結される。感染したホスト細胞は、ファージDNAのパッケージングおよび成熟したビリオンと、小(pIII)または大(pVIII)コートタンパク質いずれかの上のそれらの外被の一部としての関連するタンパク質フラグメントとのアセンブリを可能にする。pIIIまたはpVIII遺伝子への多くの異なるDNAフラグメントの組み込みがライブラリを創製し、このライブラリから対象のメンバーを単離することができる。典型的な実験において、関連するDNAまたはタンパク質標的を固体担体の表面に固定化することにより、その表面上の標的の一つに結合するタンパク質を表示するファージが残り、他のファージは洗い落とされる。残るファージを溶出させ、使用してさらに多くのファージを産生し(ヘルパーファージによる細菌感染により)、ひいては、適切な(すなわち結合する)ファージが濃縮されているファージ混合物を産生することができる。これらの工程の反復サイクリングは、望ましくない物質を除去することによって金のサンプルを濃縮することにならって「パニング」と呼ばれる。最終工程で溶出したファージを使用して適当な細菌ホストを感染させ、それからファージミドを捕集し、適切なDNAシーケンスを切除し、配列決定すると、適切な相互作用タンパク質またはタンパク質フラグメントを同定することができる。また、イーストディスプレイまたはイースト表面ディスプレイを使用することもできる。対象のタンパク質は、たとえばAga2pタンパク質との融合体としてイーストの表面に表示される。Aga2pタンパク質は、イースト細胞交配中に細胞−細胞接触を媒介するためにイーストによって自然に使用される。そのようなものとして、Aga2pを介するタンパク質のディスプレイは、タンパク質を細胞表面から離して映して、イースト細胞壁上の他の分子との潜在的な相互作用を最小限にする。磁気分離およびフローサイトメトリーとイーストディスプレイライブラリとの併用が、定方向進化を介してほぼあらゆる受容体に対して高親和性タンパク質リガンドを単離するための方法である。細菌ディスプレイ(bacterial display)(または細菌ディスプレイ(bacteria display)または細菌表面ディスプレイ)は、インビトロタンパク質進化のために使用されるタンパク質操作技術である。細菌の表面に表示されたポリペプチドのライブラリは、フローサイトメトリーまたは反復選択手順(バイオパニング)を使用してスクリーニングすることができる。大腸菌のような細菌における典型的な融合体はフラゲリンタンパク質を含む。
【0040】
加えて、小滴中のタンパク質をコードし、発現し、表示するために真核生物分泌を使用することができる。すべての真核生物細胞中には、高度に進化した分泌のプロセスがある。外側に標的化されたタンパク質は、粗面小胞体にドッキングしたリボソームによって合成される。合成されるとき、これらのタンパク質はERルーメン中に移行し、そこでグリコシル化され、分子シャペロンがタンパク質フォールディングを支援する。誤ってフォールディングされたタンパク質は通常ここで同定され、ER関連分解によってサイトゾルに逆輸送(retrotranslocate)され、そこでプロテアソームによって分解される。そして、正しくフォールディングされたタンパク質を含有する小胞がゴルジ体に入る。ゴルジ体の中で、タンパク質のグリコシル化が修飾され、切断および機能付与を含むさらなる翻訳後修飾が起こることができる。そして、タンパク質は分泌胞の中に移され、この分泌胞が細胞骨格に沿って細胞の縁まで移動する。分泌胞の中でさらに多くの修飾が起こることができる(たとえば、インスリンは、分泌胞の中でプロインスリンから切断される)。最終的に、小胞は、ポロソームと呼ばれる構造において、開口分泌と呼ばれるプロセスで細胞膜と融合して、その内容物を細胞環境の外に捨てる。
【0041】
加えて、細菌分泌および古細菌分泌を、小滴中のタンパク質をコードし、発現し、表示するために使用することができる。分泌は細菌および古細菌において周知である。Secシステムは、イースト中のSec61トランスロコン複合体および細菌中のSec Y-E-G複合からなる真核生物小胞体中のトランスロコンと相同性である保存された分泌システムである。Sec経路を介する分泌は一般に、分泌されるタンパク質上のN末端シグナルペプチドの存在を要する。グラム陰性細菌は二つの膜を有し、それにより、分泌を位相幾何学的により複雑にする。したがって、グラム陰性細菌中には少なくとも六つの特化した
分泌システムがある。グラム陽性微生物中では、内膜を透過するタンパク質の分泌が培地中への直接放出を可能にする。
【0042】
本明細書に開示される方法、システムおよび装置の特定の例示的な態様で使用するための微生物を含有する小滴は、たとえば、微生物集団を液体培地、たとえば微生物のインキュベーションに適した培養培地中に提供することによって形成することができる。小滴は、たとえば上述した様々な乳化もしくはマイクロ流体技術のいずれかにしたがって、または他の適当な技術によって、微生物集団またはライブラリを含有する液体培地を培地の小滴のストリームに分離することによって形成することができる。標的部分は、任意の適切な技術により、たとえば先に開示した小滴合体技術によって小滴中に提供することができる。具体的な用途に適切である場合、小滴は、たとえば、集合した塊として、マイクロ流体流路中の一列縦隊のストリームとして、または他の適当なやり方でインキュベートすることができる。
【0043】
特定の例示的な態様において、微生物は、標識されている組換え結合部分、たとえば緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識されている部分をそれぞれの小滴の培地中に分泌する。本開示の恩典を与えられると、小滴に含まれる微生物によって発現される組換え結合部分のための数多くの適当な代替標識が当業者には明らかになるであろう。標識は、候補結合部分のための検出可能なマーカを提供し、たとえばGFP-融合タンパク質の場合のように直接的に存在することもできるし、たとえば、その産生の後に起こるイベントを条件として、たとえば標的部分への結合と同時に候補結合部分に付着させることができる二次的な検出可能標識の場合のように条件的に存在することもできる。そのような二次的または条件的標識の数多くの非限定的な例の一つは、ヒト抗体に結合し、ひいてはそれを標識するために使用される、検出可能に標識されたヤギ抗体(たとえば、ヒトIgGに対して産生されたもの)である。
【0044】
特定の例示的な態様において、微生物は、真菌、たとえばピキア(Pichia)属のメンバーまたはサッカロマイセス(Saccharomyces)属のメンバーである真菌である。特定の例示的な態様において、微生物は細菌である。本開示の恩典を与えられると、本明細書に開示される方法、システムおよび装置で使用するための数多くの適当な真菌、細菌および他の微生物が当業者には明らかになるであろう。少なくとも特定の例示的な態様において、標的部分のための組換え結合部分および候補結合部分を提供するために小滴中に使用される細菌性微生物は、グラム陽性細菌、たとえば枯草菌である。特定の例示的な態様において、枯草菌は、それぞれの小滴中でインキュベートされて、scFv-GFP融合タンパク質である候補結合部分を培地中に直接分泌する。候補結合部分としてのscFv-GFP融合タンパク質のライブラリ、たとえば特定の例示的な態様においては、106〜109個の異なるscFv-GFP融合タンパク質のライブラリが小滴の間で集合的に形成される。特定の例示的な態様においては、ナイーブscFvライブラリが構築され、クロラムフェニコール耐性をコードする枯草菌−大腸菌二機能性プラスミド、たとえばpC194誘導体中にクローニングされる。特定の例示的な態様においては、Ab遺伝子がリーダー配列およびレポーター遺伝子と隣接しているナイーブscFvライブラリが構築されて適当な微生物中にクローニングされる。たとえば、特定の例示的な態様において、Ab遺伝子がアミラーゼリーダーペプチドの3'側下流およびGFPに対して5'側にクローニングされて、(アミノ末端)リーダーペプチド-Ab-GFPタンパク質(カルボキシル末端)の形態の融合タンパク質構築物を生じる。
【0045】
特定の例示的な態様において、候補結合部分は、レポーター遺伝子、たとえば酵素を含有する融合タンパク質構築物の形態の候補Abである。レポーター遺伝子は、たとえば、βガラクトシダーゼであってもよく、候補結合部分は、(アミノ末端)リーダーペプチド-mAb-βガラクトシダーゼ(カルボキシル末端)の形態の候補mAbであってもよい。代替態様において、レポーター遺伝子はアルカリホスファターゼであってもよく、その場合、候補結合部分は、(アミノ末端)リーダーペプチド-mAb-アルカリホスファターゼ(カルボキシル末端)の形態の候補抗体である。
【0046】
特定の例示的な態様において、ナイーブscFvライブラリを構築してそのナイーブscFvライブラリを細菌プラスミド、たとえば枯草菌−大腸菌二機能性プラスミド中にクローニングすることによって、微生物集団が提供される。場合によっては、枯草菌中のハイブリッド遺伝子が後期胞子プロモーター、たとえば後期胞子プロモーターspoVの制御下に置かれる。特定の例示的な態様において、クローンは、枯草菌の株、たとえばYB886へと形質転換され、その中で発現する。Ab遺伝子がまず大腸菌中にクローニングされ得、次いで、プラスミドDNAクローンを使用して枯草菌が形質転換される。場合によっては、限られた数のクローンの偏った増殖を阻害するために、細胞増殖は固体培地上で実施される。特定の例示的な態様において、候補結合部分はmAbであり、標的部分はAgである。場合によっては、一つまたは複数の非標的部分に結合するよりも有意または十分に大きな程度に標的Agに結合するmAbを含有する小滴を形成、同定および/または捕集するためにマイクロ流体学が使用される。特定の例示的な態様において、mAbは、非修飾タンパク質、翻訳後修飾タンパク質または他のAgに対して産生される。
【0047】
特定の例示的な態様は、scFv-GFP融合タンパク質を分泌する枯草菌を使用する。結合は、リン酸化ペプチドでコートされたビーズに結合した融合タンパク質の結合の検出および計測によって判定される。特定の例示的な態様は、scFv-GFP融合タンパク質を分泌する枯草菌を使用し、特異的結合は、リン酸化ペプチドでコートされたビーズおよび非リン酸化ペプチドでコートされた第二のビーズタイプに結合した融合タンパク質のGFPを計測することによって判定される。
【0048】
対応する候補結合部分が標的部分に結合している小滴は、適当な技術によって同定する、すなわち、標的部分への結合が検出されなかった(または、特定の例示的な態様においては、検出可能であったが、不十分な親和性または特異性で起こったと考えられた)小滴の中から検出し、区別することができる。本開示の恩典を与えられると、本明細書に開示される方法、システムおよび装置における様々な利用可能な小滴同定技術の適用性が当業者には明らかになるであろう。たとえば、小滴の同定は、小滴を検出器にかけ、検出器を作動させて、候補結合部分が小滴中の一つまたは複数の標的部分に結合している(具体的な用途および態様に依存して、とにかく結合している、または十分に結合していることを意味する)小滴(あるならば)を検出することによって実施することができる。先に記したように、特定の例示的な態様において、これは、候補結合部分が反応した標的部分を担持する、小滴中の一つまたは複数のビーズまたは他の担体粒子を同定することを含む。たとえば、モジュール中の小滴同定部位におけるレーザセンサまたは他の光学センサを使用して、各小滴がマイクロ流体流路に沿ってたとえば一列縦隊で流路中の構造物を通過するとき小滴を調べることができる。微生物によって提供される組換え結合部分が光学的に標識され、多数の標的部分、たとえば2〜50個の標的部分が小滴中のマイクロビーズ上に担持されている特定の例示的な態様において、検出は、各小滴を検査して、多数の標識がすぐ近くに出現するかどうか、すなわち、小滴の液体中の組換え結合部分の通常の分布を通して小滴中の他の場所で出現するよりも近くに出現するかどうかを判定することによって達成することができる。これは、粒子によって担持される標的部分への候補結合部分の結合を介して、標識が粒子と会合したことを示すであろう。本開示の恩典を与えられると、さらなる適当な技術が当業者には明らかになるであろう。
【0049】
そして、同定する工程で同定された小滴を選別し、他の小滴から単離することができる。本開示の恩典を与えられると、本明細書に開示される方法、システムおよび装置に適した公知の選別技術の適用性が当業者には明らかになるであろう。特定の例示的な態様においては、小滴を捕集し、検出器を移動させて小滴に通す(または、小滴のビーズまたは他の担体粒子(使用されるならば)に通す)。分子ピンセットまたは分子クリップを使用して適切な小滴を捕集することができる。他の態様においては、小滴(または粒子)を移動させて検出器に通す。たとえば、マイクロ流体モジュール中の上述した同定部位から一列縦隊のストリームで流れる小滴は、なおも一列縦隊のストリームとしてマイクロ流体流路中を同じモジュール中のソータ部位まで通すことができる。ソータ部位は、たとえば、マイクロ流体流路が第一および第二の下流流路に分岐する接合部を含むことができる。標的結合を有すると同定された小滴を第一の下流流路に通し、標的結合を有しないと同定された小滴を第二の下流流路に通して、それにより、潜在的に適切な小滴を見かけ的に不適切な小滴から隔離または分離することができる。この目的のために、小滴がソータを通過して流れるところで、ソータは、選択された小滴の流れの位置または方向を制御するための適当な技術、たとえば電気泳動、エレクトロウェッティング、ポンピングおよび弁などを使用することができる。
【0050】
図6は、特定の例示的な態様のマイクロ流体モジュールにおける小滴の選別を示す。電気的に中性であってもよい小滴が図6の下から上に流れる。電極18の対への高電圧高周波数シグナルの印加に応答して、選択された小滴はマイクロ流路中の「Y」字形分岐の片側に受動的に運ばれ、他の小滴は他方の側に引き込まれる。特定の例示的な態様において、小滴は、単一厚さの小滴のフィルムを表面上に形成した後、候補結合部分が標的部分(たとえば、小滴中の標的部分を担持する一つまたは複数の固体担体粒子)に結合しているフィルム中の小滴(あるならば)を同定することによって選別することができる。そのような小滴の同定は、光学的に、たとえば、フィルムの光学画像を取得し、その画像を検査して好結果の小滴のX-Y位置を判定することによって実施することができる。同定された小滴のX-Y位置を任意の適当なX-Y採集装置(picker device)とともに使用して、同定された小滴をフィルムから捕集することができる。特定の例示的な態様においては、レーザーキャプチャーダイセクションを使用して、同定された小滴をフィルムから取り出す。
【0051】
上記のように、標的部分は、小滴中の担体粒子、たとえばビーズ上に提供されることができる。本開示の恩典を与えられると、本明細書に開示される方法、システムおよび装置における使用に適したビーズが当業者には明らかになるであろう。少なくとも特定の用途に適したビーズは、たとえば、たとえば1ミクロン〜30ミクロンの平均直径を有するアガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、たとえばニッケルキレートビーズなどを含む。特定の例示的な態様において、標的部分は、担体粒子によって共有結合によって担持される。または、標的部分は、非共有結合的に担体粒子に付着させることもできる。適当な数の標的部分が担体粒子によって担持されることができる。特定の例示的な態様において、小滴中の一つまたは複数の担体粒子それぞれが、少なくとも20個、たとえば20〜500個の標的部分を担持する。特定の例示的な態様は、ビーズ1個あたり200〜500個の標的部分を使用する。
【0052】
上記のように、本明細書に開示される方法、システムおよび装置の特定の例示的な態様においては、非標的部分が小滴に含まれる。そのような非標的部分は、特定の用途において、標的部分に対する候補結合部分の結合親和性または特異性を判定するために使用することができる。具体的な用途の必要性に依存して、小滴中に含まれる候補結合部分は、標的部分のみに結合しているならば、または、他の場合には、非標的部分と比べて十分に優先的に標的部分に結合しているならば、標的部分に選択的に結合していると判定されることができる。たとえば、特定の例示的な態様において、結合の量または程度の差が、使用される方法、システムまたは装置の具体的な態様によって検出可能であるならば、小滴中の候補結合部分は優先的に標的部分に結合している。特定の例示的な態様において、検出された差が選択されたしきい量よりも大きいならば、候補結合部分は優先的に標的部分に結合しているとみなすことができる。
【0053】
特に小滴中の標的部分が担体粒子によって担持されている場合、非標的部分は、場合によっては、小滴中の担体粒子、たとえばビーズ上に担持される。非標的部分は通常、小滴中の一つまたは複数のそのような担体粒子上に共有結合または本開示の恩典を与えられると当業者には明らかになるであろう他の適当な手段によって担持されることができる。特定の例示的な態様において、具体的な用途に依存して、非標的部分は、適当なタンパク質、タンパク質エピトープ、小分子、修飾ペプチド、細胞またはウイルス、核酸などから選択されることができる。特定の例示的な態様において、非標的部分は、単に、標的部分を担持するタイプの担体粒子の表面である。すなわち、担体粒子は、候補結合部分が、粒子によって担持される標的部分ではなく担体粒子の表面に結合しているかどうかを判定するために裸のビーズとして使用される。より一般的には、標的部分を担持するための上記ビーズと類似した、または同じビーズまたは他の粒子は、小滴中で非標的部分を担持するために使用されることもできる。しかし、特定の例示的な態様において、小滴中で非標的部分を担持する担体粒子は、小滴中で標的部分を担持する粒子と区別可能である。たとえば、標的部分を担持する粒子は、一つの粒子だけを検出することが可能な染料を有すること、一方または他方の粒子が、区別可能な量子ドットである、または区別可能な量子ドットと会合していること、粒子タイプが蛍光偏光またはサイズによって区別可能であることなどの一つまたは組み合わせにより、非標的部分を担持する粒子と区別可能である。たとえば、粒子は、光学的に区別可能であってもよい。たとえば、各粒子は、励起時に異なる蛍光波長を有することができる。したがって、候補結合部分が光学検出または観測のために標識されている場合、そのような態様における小滴の光学的尋問は、標識された候補結合部分が標的部分のみに結合した小滴を、標識された候補結合部分が、標的部分および非標的部分の両方と反応したために、標的部分に対して非特異的である小滴と区別することができる。後者の小滴においては、両方の粒子タイプが光学的に検出可能な標識と会合していることが観測されるであろう。特定の例示的な態様において、具体的な用途の必要性に依存して、非標的部分は、標的部分が第一の粒子上に担持されるときの数または密度と完全にまたはほぼ同じ数または密度で第二の粒子上に担持されることができる。
【0054】
特定の例示的な態様において、各小滴は、標的部分および非標的部分の両方を含有し、そのいずれも担体粒子上に担持されていない。そのような態様においては、公知の技術にしたがって蛍光偏光を使用して、小滴の候補結合部分が、標的部分に結合しているのか、非標的部分に結合しているのか、いずれにも結合していないのか、両方に結合しているのかを判定することができる。本開示の恩典を与えられると、本明細書に開示される方法、システムおよび装置において蛍光偏光を使用することは当業者の能力の範囲内である。そのような判定は、他方で、後に上記原理にしたがって小滴を選別する際に使用することができる。
【0055】
標的部分を担持する担体粒子を含有する小滴とは、その小滴が一つまたは複数のそのような粒子を含有することを意味するということが理解されるべきである。したがって、担体粒子は、標的部分の一つまたは複数を担持する単一のビーズであってもよいし、それぞれが標的部分の一つまたは複数を担持する、小滴中の多数の粒子であってもよい。特定の例示的な態様において、標的部分を担持する担体粒子は、Abが求められる、すなわち、小滴中の候補Ab(「候補結合部分」)が反応する、または反応しないかもしれない少なくとも20個、たとえば20〜500個、通常は200〜500個の標的Agを有するビーズである。同様に、本明細書および請求の範囲における、非標的部分を担持する担体粒子(場合によってはおとり粒子と呼ばれる)を含有する小滴とは、その小滴が、それぞれ非標的部分の一つまたは複数のコピーを担持する一つまたは複数の粒子を含有することを意味する。特定の例示的な態様において、非標的実体は、粒子そのものの潜在的反応部位、たとえば粒子そのものの表面、たとえば標的部分を担持する第一の担持粒子に使用される同じタイプの非コートまたは「裸」ビーズの表面である。特定の例示的な態様において、非標的実体を担持する担持粒子は、少なくとも20個、たとえば20〜500個、一般的には200〜500個の非標的Agを有するビーズである。
【0056】
上記のように、本明細書で開示される方法、システムおよび装置の特定の態様は、マイクロ流体流路、接合部などを使用する。特定の例示的な態様は、小滴の正確な操作のための柔軟なプラットフォームとしてのモジュール中のマイクロ流体流路のネットワークを使用する。一つまたは複数のそのような液体取り扱いモジュールのシステムへのアセンブリが、たとえばマイクロ流体チップの形態で、本明細書に開示される方法、システムおよび装置の簡便かつロバストな具現化を提供する。一つの適当な小滴封入技術は流れ集束ジオメトリーを使用する。水性ストリームがマイクロ流体流路中の狭窄部に注入される。キャリヤ流体の一つまたは複数の対向伝搬ストリームが水性ストリームを流体力学的に集束させ、狭窄部を通過するときのその分解を安定させてミクロンサイズの小滴にする。具体的な用途に依存して、油が、少なくとも特定の例示的な態様に適当なキャリヤ流体の非限定的な例である。水性小滴の生成速度、間隔およびサイズは、油および水性ストリームの相対流量ならびにノズルジオメトリーによって制御される。典型的なスループットは毎秒3,000〜10,000個の小滴である。小滴生成は、ローディングモジュール中で実施することができる。具体的には、そのような態様において、小滴は、一つまたは複数の担体流体ストリームと試薬ストリームとが合わされるノズルで形成される。図3Aは、本明細書に開示される方法の特定の例示的な態様において、小滴を生成することを含むマイクロ流体作用を具現化するのに適したマイクロ流体装置およびシステムの部分切欠き略図である。図3Bは、1000Hz小滴生成レートで作動する例示的な態様の場合の、選択されたシステム性質に対するマイクロ流体小滴直径の効果、具体的には小滴量および水流量に対する効果を示すグラフである。特定の例示的な態様において、ノズルジオメトリーおよび流量の変化が、直径5μm〜80μmの小滴および1,000Hz〜20,000Hzの小滴生成レートを生じさせることができる。ローディングモジュールを使用して、細胞、ビーズ、タンパク質、核酸および他の生体物質をそのような小滴中に封入することができる。水性ストリームの小滴への分解を誘発することに加えて、担体流体(たとえば油)は、本明細書ではデューティサイクルと呼ばれる、小滴の間隔を制御することができる。通常、低い油−水性流量比は、密な間隔の小滴および高いデューティサイクルを生じさせ、高い油−水性流量比は、小滴どうしを離れさせ、デューティサイクルを低下させる。異なるデューティサイクルが異なる下流モジュールのために望ましい。たとえば、少なくとも特定の例示的な態様において、小滴の方向変更には、小滴直径およそ五つ分の最小間隔を要するが、長い装置上遅延時間またはエマルション生成は、密な間隔の小滴、たとえば直径二つ分未満の小滴間隔で、より効率的になることができる。
【0057】
そのような態様は、拡散または表面相互作用による相互汚染または濃度変化を排除する、明確に画定され、封入された微小環境としての小滴を提供することができる。小滴は、さらなる操作および研究のために反応性物質、タンパク質、細胞または小さな粒子(たとえばビーズ)を単離することができる良好なマイクロカプセルを提供する。特定の例示的な態様において、小滴は、好結果の小滴、たとえば候補結合部分が標的部分に結合している小滴を選別し、回収するマイクロ流体チップに通される。たとえば、小滴中の他の場所で溶解状態にある標識の量に対するビーズ上の標識の量を分析するために、ビーズを含有する小滴をマイクロ流体流路の流路狭窄部、すなわち局所的狭窄部に通すことができる。特定の例示的な態様においては、フルオレセイン溶液を含有する小滴のバックグラウンドに対して、マイクロビーズ上の約1000個しかないフルオレセイン標識分子を検出することができる。
【0058】
用途に必要である場合、例えば、まず二つの小滴タイプを撚り合わせる、すなわち、交互に並ぶ小滴タイプのストリームを形成することにより、小滴の合体または融合を達成することができる。二つの小滴集団のサイズは、それらが異なる速度で移動して小滴対を達成するよう、異なるように操作することができる。そして、これらの対を、たとえば、小滴対が電場を通過するときに発生する電場誘起双極子によって駆動して融合させる。適当な電場は、マイクロ流路をはさんで、たとえばマイクロ流体モジュール中の融合部位で、融合部位に配置された電極を励起することにより、発生させることができる。図2A〜Dを参照して先に説明したように、一定の長さのタイミングを調節する流路をモジュール中に使用することにより、正確な反応時間を達成することができる。
【0059】
本明細書に開示されるマイクロ流体小滴反応システムの小滴ソータは、適当なやり方で、たとえば機械的弁(たとえばFluidigm)の使用を介して、マイクロ流体装置中で小滴を選別することができる。電場勾配中の誘静電力の使用が、正確に制御することができ、高周波数で切り換えることができ、可動部品を要しない代替手段を提供する。したがって、外部電場勾配の印加を変調させることに基づく滴単位での選別を容易に達成することができる。マイクロ流体流路中の分岐もしくは二叉または接合部に印加される小さな電場が、所与の小滴がどちらの流路に入るのかを正確に指図することができる。小滴に付与することができる大きな力および電場を印加するために要する短い時間が、これを、可動部品を有しない高速でロバストな選別エンジンにする。特定の例示的な態様における処理レートは、小滴生成レートおよび電場切り換え時間のみによって制限され、毎秒10,000個を容易に超えることができる。
【0060】
特定の例示的な態様においては、小滴貯蔵が使用される。捕集されたエマルションは、たとえば1時間未満から何ヶ月にも及ぶ期間にわたり貯蔵することができる。エマルション貯蔵は、たとえば特定の微生物ベースの方法、システムおよび装置における反応または転換に必要な期間にわたり小滴をインキュベートすることを可能にする。特定の例示的な態様においては、大きなライブラリのハイスループットスクリーニングのために装置外でのエマルション貯蔵が使用される。相互汚染の心配なく、長期間にわたり、ライブラリ中の個々の実体を標識し、乳化し、ライブラリの他すべての要素と合わせることができる。これらの乳化されたライブラリをマイクロ流体装置中に再注入することができ、その中で、場合によっては、個々の小滴を合体させる、検査する、選別する、および/または他のやり方でさらに処理することができる。上記のように、装置上で形成された第二の小滴との細胞合体を実施することができ、この第二の小滴は、たとえば、試薬、細胞、担体粒子などまたはそのような成分の任意の組み合わせを含有することができる。特定の例示的な態様において、本明細書に開示される方法、システムおよび装置は、ピコリットル量の小滴「反応器」を用いて独立したアッセイを実施することができる。小滴融合または隣接小滴の合体は、たとえば、二つの異なるサイズまたは粘度の小滴を含有するストリームを交互配置することによって達成することができる。小さい方(または粘度が低い方)の小滴は大きい方(または粘度が高い方)の小滴よりも高速で流路中を移動して、小さな小滴が大きな小滴に追いつく。流路に沿って配置された電極の作動によって連続的または間欠的に電場を印加して二つの小滴を合体させることができる。図4には、マイクロ流体装置内の小滴の融合が示されている。小滴は、図中、左から右に流れている。はじめ、小さい方の小滴は大きい方の小滴から離れているが、流路をいくらか移動した後、小さい方の小滴はそのパートナーに追いつく(左側に示す)。電極の間で電圧が印加されると、右側に示すように、対は融合する。電極は、図中、白い三角形として示されている。本開示の恩典を与えられると、小滴合体のための様々な代替技術が当業者には明らかになるであろう。
【0061】
上記のように、本明細書に開示される方法、システムおよび装置の特定の例示的な態様はインキュベーションを使用することができる。本明細書においては遅延モジュールとも呼ばれるインキュベーションまたは遅延部位を使用すると、制御されたプロセスで小滴内容物のインキュベーションおよび反応を可能にすることができる。たとえば、工程ごとに異なるインキュベーション条件を要する多段スクリーニングおよびアッセイプロトコルを受け入れるために、単一チップ中に多数のモジュールを使用することもできる。オンチップインキュベーション時間は、遅延ラインへの総流量、流路の断面積およびラインの長さによってセットすることができる。流路断面積を小滴断面積と同じくらいに維持して図5に見られるような流路中の一列縦隊の小滴の流れを維持することにより、完璧な順序付け(すなわち、先入れ先出し)を達成することができる。これは、小滴がラインの中で互いを追い越すことを防ぐ。通常、このような態様は、比較的小さな流路によって生じる高い圧力降下のせいで、比較的短い移動時間、たとえば約30秒未満に制限される。図5に示すマイクロ流体装置およびシステムは、特定の例示的な態様において、たとえば小滴のタイミングを調節されたインキュベーションなどのために、順序付けされ、融合した小滴をマイクロ流体モジュールの曲がりくねった流路に通すことを含むマイクロ流体作用を具現化するのに適している。場合によっては、流路断面積を小滴直径よりもわずかに大きくして小滴の「ほぼ完璧な」順序づけを生じさせることにより、より長いインキュベーション時間を達成することもできる。一般的な態様において、遅延ラインを通過する移動時間の変動は、小滴が装置を通過するとき互いに付着しようとする強い親和性のために、5%未満に維持されることが好ましい。単一層装置を用いた場合、30秒〜30分の移動時間が可能であるが、ラインの多重積層は、遅延時間を4時間に増すことを可能にする。
【0062】
先に説明したように、マイクロ流体モジュール中の小滴選別が図6に示されている。特定の例示的な態様において、マイクロ流体流路中の接合部における小滴の方向付けまたは方向変更は、分岐部のすぐ上流で各小滴に電場を印加することによって達成することができる。小滴は、たとえば、帯電状態であり、電気泳動力によって駆動されることもできるし、中性であり、誘電気泳動力によって駆動されることもできる。モジュールに組み込まれた電極によって適切な電場を発生させ、印加することができる。特定の例示的な態様において、検出部位またはモジュール(たとえば、蛍光検出、後方散乱検出などを用いる)に結合された選別モジュールは、検出された結果を指定の基準に比較することにより、毎秒4,000個までのレートで小滴を選別することができる。たとえば、小滴は、単に「保持」ビンおよび「廃棄」ビンに選別することもできるし、さらなる下流処理に選別することもできる。本開示の恩典を与えられると、そのような選別モジュールが、小滴の集団から個々の小滴または小滴の部分集団を取り出す高速で正確な方法を提供することができる適切な用途が当業者には明らかになるであろう。
【0063】
特定の例示的な態様において、上記のように、ビーズまたは他の担体粒子などを、様々な分子、たとえば標的部分または非標的部分を付着させることができる支持体として使用することができる。非限定的な例として、染色ビーズ、たとえばLuminex社から市販されている染色ビーズ(多重反応における使用のために販売)のセットを使用することができる。適当な材料および技術は、たとえば、2003年7月3日に発行された「Precision fluorescently dyed particles and methods of making and using same」と題し、Don J. Chandler、Van S. Chandler、Beth A. Lambert、Janet J. ReberおよびStacie L. Phippsを発明者とする米国特許第6,929,859号に記載されている。米国特許第6,929,859号の開示全体は参照により本明細書に組み入れられる。米国特許第6,929,859号は、直径約10nm〜100umの範囲のサイズのポリスチレンビーズを正確に染色するための技術を記載している。ビーズ粒子は、水不溶性であるが、適当な溶媒には可溶性である材料で構成されている。使用される染料は、好ましくは、近赤外線および/または赤外線領域、すなわち約1,000nmにまで及ぶ蛍光を示すスクアリン酸ベースの分子である。Luminex技術は、独立した濃度の二つ以上の染料が各ビーズ中に均一に吸収されて、ビーズ中に存在する染料に特徴的な多数の蛍光シグナルを生じさせる、再現精度の高いプロセスを可能にする。たとえば、異なる蛍光特性を有するビーズの二つ以上の集団を作るためには、一つの集団が他の集団と光学的に重複しないよう、染料の割合の適切な増大によって集団ごとに赤染料:オレンジ染料の比率を変化させる。
【0064】
特定の例示的な態様において、ビーズの部分集団を含有するビーズマップであって、ビーズマップ中の各領域によって規定される境界内でビーズの部分集団ごとに一つまたは複数の特性の別々の分布があるようなビーズマップが作成される。このような特性は、非限定的な例として、蛍光偏光、蛍光共鳴エネルギー移動、蛍光消光、pH感度およびサイズを含むことができる。通常、蛍光特性を確立するためには二つのパラメータ、すなわち蛍光色および色の強さまたは明るさ(蛍光チャネル単位として表す)が使用される。ビーズ集団は、これらのパラメータに基づいて分類されて「蛍光シグナル」を生成する。したがって、サンプル、たとえばマイクロ流体小滴内の、蛍光シグナルが異なるビーズそれぞれを、その蛍光シグナルに関して分析し、それにより、ビーズマップ中の所与の場所に割り当てることができる。
【0065】
本発明のこの局面の方法、システムおよび装置の少なくとも特定の例示的な態様の有意な利点は、マイクロ流体学によって、標的Agに選択的に結合する候補結合部分、たとえばmAbを、そうしないものから速やかに差別する能力である。すなわち、プロセスは、標的Agに結合するAbを同定するだけでなく、選択されたAbが、非標的部分への結合によって示されるような非特異的または望ましくない結合性を有しないことを保証するようにも設計されている。これは、mAbが標的Agおよび一つまたは複数の非標的部分に暴露され、非標的部分に結合するよりも有意に大きな程度に標的Agに結合するmAbを含有する小滴を同定し、捕集するためにマイクロ流体装置が使用される選択/対抗選択パラダイムによって達成される。この手法の一つの態様において、標的Agは、ビーズまたは固体担体として働く他の粒子に付着させる。場合によっては「Agコートされたビーズ」とも呼ばれる、標的部分を担持する粒子を、選択のために、すなわち、標的に結合する候補結合部分(たとえば候補mAb)を同定するために使用することができ、第二のタイプまたは第二のビーズを、対抗選択のために、すなわち、標的に優先的に結合する、または結合しない候補結合部分(たとえば、ここでもまたmAb)を同定するために使用することができる。すなわち、Agコートされたビーズと非標的コートされた第二のビーズとの間で小滴中の結合の差を検査することにより、結合特異性を判定することができる。このデュアルビーズ手法の例が図9に示されている。図中、ハイブリドーマ細胞を、二つの異なるビーズタイプ、すなわち、標的Agでコートされた第一のビーズタイプと、非標的部分、すなわち、選択されたmAbが結合することが望ましくない部分でコートされた第二のビーズタイプとを含有する小滴中でインキュベートしている。
【0066】
標的および非標的部分は、場合によっては、化学的接合によって、または、非限定的な例として、ビオチンとストレプトアビジンとの間のような高親和性の非共有結合的相互作用によってビーズと会合する。Agを固体担体に付着させるためのそのような方法は当技術分野で周知である。一つの非限定的な例は、Ag内のリシン残基を介しての、カルボキシル化された5ミクロンポリスチレンジビニル-ベンゼンコポリマービーズへのAgの直接的な化学結合である。第二の非限定的な例は、Agとビオチンまたはビオチン誘導体との間で融合タンパク質を生成した後、前記融合タンパク質をストレプトアビジンビーズに付着することである。
【0067】
図9においては、小滴培地中にマウスmAbを分泌するハイブリドーマ細胞を、二つのタイプのビーズ、すなわち、標的Agでコートされたビーズおよび場合によっては非標的部分でコートされた第二のビーズを有する小滴中でインキュベートする。そして、小滴を、マウスAbに対する蛍光標識された第二のAbを含有する小滴と合体させる。そして、その小滴を流路の狭窄部に通して、ビーズが一列縦隊で検出器を通過するようにする。そして、二次Abの場所を計測し、蛍光標識されたAbビーズおよび標識されていない第二のビーズの両方を有する小滴を選別し、選択する。代替態様においては、第二のビーズを、多数の異なる非標的Agでコートすることもできる。さらに他の態様においては、それぞれが一つまたは複数の異なる非標的部分を担持する多数の異なる第二のビーズを使用して、Ag結合ビーズをすべての第二のビーズと区別することができるようにする。さらに別の態様においては、「裸」ビーズを使用して、標的Agそのものではなく、Ag結合ビーズのビーズ部分に結合しているmAbを明らかにする。
【0068】
第一および第二のビーズタイプ、たとえば抗原コートされたビーズおよび第二のビーズは、非限定的な例としてサイズ、形状、色および/または蛍光シグナルを含む、適当な読み出しによって差別することを可能にする任意の方法で可変的に異なることができる。一つの非限定的な例において、ビーズは、サイズの違いによって差別される。別の非限定的な例において、Agコートされたビーズおよび第二のビーズは、ビーズを比色的または蛍光測定的に区別することを可能にする一つまたは複数の分子の存在または非存在に基づいて差別される。一つのそのような非限定的な例において、標的Agは、Agコートされたビーズだけが標識されるように色素産生性または蛍光分子で検出可能に標識される。さらなる非限定的な例において、非標的部分は、第二のビーズだけが標識されるように検出可能に標識された色素産生性または蛍光分子である。
【0069】
本明細書に開示される方法、システムおよび装置のさらに他の非限定的な例において、ビーズは、Agコートされたビーズのビーズ成分は標識されているが、第二のビーズのビーズ成分は標識されていない、または、第二のビーズのビーズ成分は標識されているが、Agコートされたビーズのビーズ成分は標識されていない、または、Agコートされたビーズのビーズ成分および第二のビーズの両方が標識されているが、検出プロセスによって区別することができるような差別的標識を含有する。この非限定的な例の好ましい態様において、Luminex社(Austin, TX)製のビーズの場合のように、スクアリン酸染料が使用される。したがって、例示的な例として、Agコートされたビーズはそのようなスクアリン酸染料を含有するが、第二のビーズは含有しない、または第二のビーズはそのようなスクアリン酸染料を含有するが、Agコートされたビーズは含有しない、またはAgコートされたビーズおよび第二のビーズがスクアリン酸染料を含有するが、それでも、それらの蛍光シグナルに基づいて差別することができる。
【0070】
Agに結合したAbの存在を検出し、その量をモニタリングするための数多くの方法が当技術分野に記載されている。本開示の恩典を与えられると、本開示の様々な態様へのそのような方法の適用性が当業者には明らかになるであろう。これらの方法の一つが、Agコートされたビーズ1個あたりに結合したAbの量を第二のビーズ1個あたりに結合したAbの量に対して計測するために使用される。一つの非限定的な例として、Abに結合する標識された二次Abが使用されて、標的Agに結合する能力に関して評価される。図9の例示される態様において、二次AbはマウスAb(たとえば、フルオレセイン標識された抗マウスAbであるが、他の標識が当技術分野で公知である)に結合する。他のAb種、たとえばヒトAbまたは一つの態様においてはヒトscFvフラグメントが評価される場合、使用される二次Abは、これらのAbに結合するAbである。二次Abおよびビーズがいずれも同じタイプのシグナル、たとえば蛍光を介して検出される場合、これらのシグナルが区別可能に検出可能であることが必要条件である。別の非限定的な例において、Abは、同じくGFPを含有する融合タンパク質の一部として、GFPによって発される緑色蛍光によってその融合タンパク質を見つけ出し、定量することができるように産生される。この後者の例は、たとえば、ハイブリドーマがAbの供給源として使用されない場合に特に適当である。
【0071】
図10は、デュアルビーズ特異性アッセイおよび分泌されたscFv-GFP融合タンパク質を使用するAg特異的Abの単離のためのマイクロ流体学ベースの手法を示す。タンパク質を培地中に直接分泌することができる微生物(たとえば枯草菌および他のグラム陽性微生物ならびにイーストおよび他の真核生物)において、リーダーペプチドがscFv-GFP融合タンパク質の5'末端に遺伝子的に融合される。このリーダーペプチドは、(a)グラム陽性微生物中の細胞膜周辺腔(すなわち、内膜に対して外部の層)、および(b)小胞体(特にピキア(Pichia)およびサッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)を含む真核生物中)へのタンパク質の輸送を機能化するのに十分である。微生物は小滴中に封入される。細菌および真核生物ホストは小滴内で融合タンパク質を発現し続ける。示される態様においては、少なくとも二つの差別可能な5ミクロンLuminexビーズタイプが、それぞれ異なるAgで別個にコートされている(図中、「抗原コートされたビーズ」および「第二のビーズ」と標識されており、Agコートされたビーズは、標的Agが付着した選択ビーズであり、第二のビーズは、非標的部分が付着した対抗選択ビーズである)。二つのビーズタイプを、融合タンパク質を発現するホスト細胞とともに、直径約30μmの小滴内に同時封入し、少なくとも108個の小滴のエマルションを捕集する。小滴エマルションをインキュベートして十分なタンパク質産生を可能にした後、マイクロ流体装置中に再び注入する。ビーズが一列縦隊で通過するようにビーズを流路の狭窄部に通す。ビーズタイプおよび各ビーズに対応する蛍光の量を測定する。Agコートされたビーズ1個あたりのGFP蛍光の量が第二のビーズ1個あたりのGFP蛍光の量を所定のしきい値分を超えるビーズを含有する小滴を捕集する。本発明のさらなる態様において、捕集されたビーズは、場合によっては、Luminex装置上で、および、選別されたエマルション中のコロニーをプレーティングし、DNA配列決定、ウェスタン分析およびELISA分析によって分析することにより、再び分析される。Ag含有ビーズが(GFPで)標識されており、第二のビーズが標識されていないならば(または、標識の量の差が所定のしきい値を超えるならば)、小滴中のmAbの結合は標的Agに特異的であるとみなされる。両方のビーズタイプが標識され、標識の差が設定しきい値を超えないならば、mAb結合は非特異的であるとみなされる。小滴中で第二のビーズだけが標識されているならば、その小滴中で作られているmAbは、非特異的であるか、第二のビーズをコートするAgに対して特異的である。いずれのビーズタイプも標識されていないならば、小滴は、mAb産生細胞を含有しないか、産生されるAbがいずれのビーズタイプ上のAgをも認識しないかのいずれかである。
【0072】
第二のビーズへのmAbの結合に対してAgコートされたビーズへのmAbの相対的結合に関して小滴を評価した後、Agコートされたビーズ1個あたりに結合したmAbの量が第二のビーズ1個あたりに結合したmAbの量を所定の量または実験的に測定されたしきい量だけ超える小滴のみがさらなる分析のために選別されるように小滴をゲーティングすることができる。他の小滴はさらなる考慮から除外される。一つのそのような態様において、小滴は、Agコートされたビーズ1個あたりのmAb結合の量が第二のビーズ1個あたりのmAb結合の量の少なくとも2倍の大きさであるならば、さらなる分析のために選択されるが、第二のビーズ1個あたりのmAb結合に対するAgコートされたビーズ1個あたりのmAb結合の比がより大きい小滴がさらなる分析のために優先的に選択される。
【0073】
ハイブリドーマはAb産生細胞であるが、マイクロ流体学における使用に関して制限がある。他の細胞タイプは、小滴中でより長く生存し、より短い倍加時間を有し、より低廉に増殖させ、維持することができるという点で、ハイブリドーマを上回る利点を有する。非限定的な例として、ハイブリドーマ以外の真核生物細胞株を使用することができる。そのような真核生物細胞株の非限定的な例は、いずれも特定のタンパク質を環境中に直接分泌することが知られ、リーダーペプチド配列がそのようなタンパク質の分泌を促進することが当技術分野で公知である昆虫および哺乳動物細胞株である。さらなる非限定的な例として、ディスプレイベクター、たとえばバキュロウイルス(昆虫細胞の場合)またはアデノウイルス(哺乳動物細胞の場合)などを使用して環境中にAbを表示する。ハイブリドーマ細胞以外の細胞が使用される態様の非限定的な例においては、Abのライブラリが細胞中に作成される。さらなる非限定的な例においては、合成ヒトフレームワークを含有するAbのライブラリが細胞中に作成される。第三の非限定的な例において、ライブラリ中のAbはscFvである。第四の非限定的な例において、Abライブラリは106〜109個のメンバーを含有する。好ましい態様において、Abライブラリは5×107〜5×108個のメンバーを含有する。また、好ましい態様において、スクリーニングされるAbライブラリを含有する微生物は、細胞膜周辺腔(すなわち、細胞壁と外膜との間の空間)ではなく環境中に自由にタンパク質を分泌し、産生されるAbは微生物によって分泌される。非限定的な例として、微生物は、タンパク質を環境中に直接分泌することが知られている枯草菌である。別の非限定的な例として、微生物は、真菌、たとえば、いずれもタンパク質を環境中に直接分泌することが知られているピキア属またはサッカロマイセス属のメンバーである。
【0074】
本発明の発明者であるMichael Weinerが、ナイーブscFvライブラリの構築を記載している(特許出願20060160178)。一つの態様において、同じライブラリ構築法が本発明で使用される。同じく本発明において、一つの態様において、枯草菌における効率的な発現を可能にし、機能的に活性なscFvの環境中への分泌を生じさせるフレームワークが使用される。一つの態様において、ライブラリは、クロラムフェニコール耐性をコードする枯草菌-大腸菌二機能性プラスミド(両微生物中で有効である)pC194誘導体中にクローニングされる。一つの態様において、Ab遺伝子は、リーダー配列およびレポーター遺伝子と隣接している。一つのそのような態様において、Ab遺伝子は、アミラーゼリーダーペプチドの3'側(下流)かつGFPに対して5'側にクローニングされる。そのような態様において、最終的な融合タンパク質構築物は、(アミノ末端)リーダーペプチド-Ab-GFPタンパク質(カルボキシル末端)の形態にある。第二の態様において、レポーター遺伝子は、酵素、たとえば、βガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ(または当技術分野でレポーターとして知られる他いくつかの酵素のいずれか)であり、その場合、最終融合タンパク質構築物は、それぞれ、(アミノ末端)リーダーペプチド-Ab-βガラクトシダーゼまたは(アミノ末端)リーダーペプチド-Ab-アルカリホスファターゼの形態にある。好ましい態様において、枯草菌中のハイブリッド遺伝子は、後期胞子プロモーター、たとえばspoVの制御下に置かれる。すべてのクローンが、枯草菌の株、一つの非限定的な例としてはプロテアーゼマイナス株YB886へと形質転換され、その中で発現する。大腸菌とは異なり、枯草菌は自然形質転換性である。したがって、Ab遺伝子は、まず大腸菌にクローニングされ、プラスミドDNAクローンが枯草菌へと形質転換され、好ましくは108個を超える個々の単離物にクローニングすることができる。限られた数のクローンの偏った増殖を防止するために、すべての細胞増殖を固体培地上で実施することができる。
【0075】
さらなる態様において、図10に示すように、PTMを含有する、または非修飾のタンパク質またはペプチドAgを調製する(多様なやり方、たとえば哺乳動物細胞からの精製または新規合成によって)。図10に示す態様は、デュアルビーズ特異性アッセイを使用するAg特異的Abの単離のためのマイクロ流体学ベースの手法を使用し、scFv-GFP融合タンパク質を分泌した(小滴中に)。mAbが、上記のようなAgコートされたビーズおよび第二のビーズの使用により、所望のAgに対する特異性に関してスクリーニングされる。この具体的な態様において、Agコートされたビーズは、付着した標的Ag(非修飾または翻訳後修飾されたタンパク質またはタンパク質エピトープ)を有し、第二のビーズは、付着したタンパク質またはエピトープの非標的バージョンの一つまたは複数を有する。一つの非限定的な例において、タンパク質またはエピトープの非修飾バージョンには差別的に結合するが、PTMによって修飾されたバージョンには結合しないmAbを得ることが望まれるならば、Agコートされたビーズは、付着した非修飾バージョンを有し、第二のビーズは、付着した一つまたは複数のバージョンを有する。第二の非限定的な例において、PTMによって修飾されたタンパク質またはエピトープのバージョンには差別的に結合するが、非修飾バージョンには結合しないmAbを得ることが望まれるならば、Agコートされたビーズは、付着した非修飾バージョンを有し、第二のビーズは、付着した非修飾バージョンを有する。第三の非限定的な例において、タンパク質またはエピトープの特定の修飾バージョンには差別的に結合するが、異なるふうに修飾されたバージョンには結合しないmAbを得ることが望まれるならば、Agコートされたビーズは、標的化されているタンパク質またはエピトープの修飾バージョンを付着させて有し、第二のビーズは、付着したタンパク質またはエピトープの、異なるふうに修飾されたバージョンおよび場合によっては非修飾バージョンを有する。図10に関して先に記したように、Ab産生細胞は、Agコートされたビーズおよび第二のビーズの両方を含有する小滴中にmAbを分泌するが、適当なインキュベーションの後、小滴は、mAbと、Agコートされたビーズおよび/または第二のビーズとの会合に関してモニタリングされる。そのような分析の後、Agコートされたビーズ(第二のビーズに対して)とのみ、またはそれと支配的に会合したmAbが選択される。ここでもまた、本態様においては、Abを産生する細菌細胞が好ましい態様であるが、代替態様においては、ハイブリドーマ細胞を含む、より下等または高等の真核生物細胞を使用してAbを産生した後、そのAbを、本明細書に記載されるデュアルビーズ手法により、標的に対する特異性および親和性に関して選択する。
【0076】
この非限定的な例においてGFPと融合したscFvとして調製されるmAbは、枯草菌によって産生されることができ、Agコートされたビーズおよび第二のビーズの使用により、所望のAgに対する特異性に関してスクリーニングされる。Ab産生細胞は、Agコートされたビーズおよび第二のビーズの両方を含有する小滴中にmAbを分泌する。適当なインキュベーションの後、小滴は、抗体と、Agコートされたビーズおよび第二のビーズとの会合に関してモニタリングされる。そのような分析の後、Agコートされたビーズ(第二のビーズに対して)とのみ、またはそれと支配的に会合したAbが選択される。タンパク質を培地中に直接分泌することができる微生物(たとえば、枯草菌および他のグラム陽性微生物ならびにイーストおよび他の真核生物)において、リーダーペプチドがscFv-GFP融合遺伝子の5'末端に遺伝子的に融合される。このリーダーペプチドは、(a)グラム陽性微生物中の細胞膜周辺腔(すなわち、内膜に対して外部の層)、および(b)小胞体(特にピキアおよびサッカロマイセス・セレビシエを含む真核生物中)へのタンパク質の輸送を機能化するのに十分である。微生物は小滴中に封入される。細菌および真核生物ホストは小滴内で融合タンパク質を発現し続ける。示される態様において、少なくとも二つの差別可能な5ミクロンLuminexビーズタイプがそれぞれ異なるAgで別個にコートされている(図中、「抗原コートされたビーズ」および「第二のビーズ」と標識されており、抗原コートされたビーズは、標的Agが付着した選択ビーズであり、第二のビーズは、非標的部分が付着した対抗選択ビーズである)。二つのビーズタイプを、融合タンパク質を発現するホスト細胞とともに、直径約30μmの小滴内に同時封入し、少なくとも108個の小滴のエマルションを捕集する。小滴エマルションをインキュベートして十分なタンパク質産生を可能にした後、マイクロ流体装置中に再び注入する。ビーズが一列縦隊で通過するようにビーズを流路の狭窄部に通す。ビーズタイプおよび各ビーズに対応する蛍光の量を測定する。Agコートされたビーズ1個あたりのGFP蛍光の量が第二のビーズ1個あたりのGFP蛍光の量を所定のしきい値分よりも超えるビーズを含有する小滴を捕集する。本発明のさらなる態様において、捕集されたビーズは、場合によっては、Luminex装置上で、および、選別されたエマルション中にコロニーをプレーティングし、DNA配列決定、ウェスタンおよびELISA分析によって分析することにより、再び分析される。Ag含有ビーズが標識されており(GFPで)、第二のビーズが標識されていないならば(または、標識の量の差が所定のしきい値を超えるならば)、小滴中のmAbの結合は標的Agに特異的であるとみなされる。両方のビーズタイプが標識され、標識の差が設定しきい値を超えないならば、mAb結合は非特異的であるとみなされる。小滴中で第二のビーズだけが標識されているならば、その小滴中で作られているmAbは、非特異的であるか、第二のビーズをコートする部分に対して特異的である。いずれのビーズタイプも標識されていないならば、小滴は、mAb産生細胞を含有しないか、産生されるAbがいずれのビーズタイプ上のAgをも認識しないかのいずれかである。
【0077】
マイクロ流体学ベースのAb選択手法がイースト2ハイブリッドアッセイに対して有する一つの利点は、イースト細胞が、より高等な真核生物細胞と同じようにはタンパク質を翻訳後修飾(リン酸化、アセチル化、グリコシル化など)しないということである。マイクロ流体学的スクリーニングを使用すると、翻訳後修飾されたタンパク質または翻訳後修飾することができるタンパク質の非修飾バージョンに対する適当なmAbを選択することができる。そのようなタンパク質(またはそのペプチドエピトープ)は、非限定的な例として、天然供給源からの精製または新規合成の後場合によってはインビボもしくはインビトロでの修飾を含む、当技術分野で周知の様々な方法で得ることができる。
【0078】
前記態様の多くにおいて、mAbは、タンパク質を培地中に直接分泌することができる微生物、たとえば枯草菌中で産生される。本発明の他の態様は、バクテリオファージを使用してmAbを微生物の外に輸送し、小滴に入れ、その中でmAbがAgと接触することができる。好ましい態様において、使用されるベクターはバクテリオファージM13である。大腸菌において、タンパク質上に配置されたリーダーペプチドがそのタンパク質を搬出して細胞膜周辺腔(すなわち、内膜と外膜との間の層)に入れるが、一般に培地には入れない。バクテリオファージM13は、それ自体を大腸菌外膜に通して押し出すことができ、その理由のため、本発明における使用には妥当な物質である。M13は、大コートタンパク質p8の約2700個のコピーに封入され、二つの異なる小コートタンパク質(p9、p6、p3)の5個のコピーで末端をキャッピングされた環状の1本鎖DNA(6407ヌクレオチド長)で構成されている。小コートタンパク質P3は、ホスト大腸菌のF線毛の先端の受容体に付着する。M13のような繊維状ファージによる感染は溶菌性ではない。ファージM13は、感染すると大腸菌中に濁りプラークを生じさせるウイルスである。M13ファージ粒子のサイズは、ファージがパッケージングする塩基の数によって決まる。ひとたびファージDNAがp8で完全にコートされたならば、p3/p6キャップの添加によって分泌は終了し、新たなファージは細菌表面から離れる。10分以内に、新たに感染したホストから新たなM13ファージ粒子が分泌され、感染から1時間以内に細胞1個あたりプラーク形成単位(pfu)1000個のレートで発生することができる。細菌ホストは増殖し、分裂し続けて、このプロセスが無期限に継続することを許すことができる。
【0079】
デュアルビーズ特異性アッセイおよびM13ベースのシステムを使用するAg特異的mAbの単離の非限定的な例、具体的には、選択的mAbを同定するためのバクテリオファージM13の使用が図11に示されている。この図に示される例においては、M13gp3タンパク質がscFvに融合される。さらに示すように、第二の小滴を使用して、蛍光標識された抗M13Abを導入している。他の非限定的な例においては、GFP-scFvのキメラ構築物をgp3タンパク質に融合させ、それにより、第二の小滴組み合わせの必要性を省くことが好ましい。
【0080】
二つの異なる5ミクロンLuminexビーズタイプがそれぞれ異なるAgで別個にコートされて(「抗原コートされたビーズ」および「第二のビーズ」と標識)、Agコートされたビーズは選択ビーズであり、第二のビーズは対抗選択ビーズである。二つのビーズタイプを、M13感染大腸菌とともに、30μm(またはわずかに大きめ)の小滴内に同時封入し、少なくとも108個の小滴のエマルションを捕集する。小滴エマルションをインキュベートして十分なファージ産生を可能にした後、再び注入し、蛍光標識された抗M13Abを含有する小滴と合体させ、mAb-Ag複合体を生成するのに十分な追加期間にわたりインキュベートする。ビーズが一列縦隊で通過するようにビーズを流路の狭窄部に通す。ビーズタイプおよび各ビーズを覆う蛍光の量を検出する。Agコートされたビーズ上の蛍光の濃度が第二のビーズ上の蛍光の濃度を所与のしきい値分よりも超えるビーズを含有する小滴を捕集する。マイクロ流体学結果は、場合によっては、Luminex装置上で、および/または、選別されたエマルション中にファージをプレーティングし、DNA配列決定、ウェスタンおよび/またはELISA分析によって分析することにより、再び分析される。
【0081】
非タンパク質標的に特異的に結合するAbを同定することが望ましい場合が数多く考えられる。核酸、炭水化物含有鎖などに結合するAbが単離された例が当技術分野で公知である。多くの場合、そのような非タンパク質標的に高い程度の親和性および特異性で結合するAbを得ることは困難である。多くの場合、非タンパク質標的Ag、特に小分子がハプテンとして使用される。すなわち、適当なAbを産生し、同定しようとして担体タンパク質に結合される。本発明において、Abを得るために動物を免疫化する必要はない。すでに形成されているAbライブラリが適当なバインダの存在に関して標的Agに対してスクリーニングされる。したがって、本発明において、非タンパク質標的Agに結合するmAbを選択するプロセスで担体タンパク質は要らない。本発明の一つの態様において、Agは、当技術分野で記載されているいくつかの手段のいずれかによって粒子(ビーズが非限定的な例である)に接合され、その場合、方法は、Agの化学的性質に依存して選択される。そして、選択されるmAbがその標的Agに対して特異的である公算を高めるために裸のビーズまたは非標的部分含有ビーズを使用することを含む、本明細書に記載された適切な手順のいずれかによってmAb選択が実施される。
【0082】
前記開示および特定の例示的な態様の詳細な説明から、本発明の範囲および真意を逸することなく、様々な改変、追加および他の代替態様が可能であるということが明らかである。したがって、上記例には、scFvを表示するためのファージの使用および環境中への融合scFvの直接分泌を含む、本発明の方法およびシステムの多くの変形のいくつかの表現が示され、記載されている。これらは、本明細書に開示された発明の基本概念を説明することを意図したに過ぎない。本開示の恩典を与えられると、バキュロウイルスディスプレイ、リボソーム結合ディスプレイ、鞭毛ディスプレイ、イースト表面ディスプレイ、ファージラムダおよび/またはT7ディスプレイを用いる本発明の方法、装置およびシステムをはじめとする、開示された発明の多くの他の態様またはバージョンが当業者には明らかになるであろう。同様に、本開示の恩典を与えられると、装置、標的Agまたは種などにおける変更が当業者には明らかになるであろう。
【0083】
開示された方法、システムおよび装置の様々な態様の本明細書に記されたすべての例が非限定的な例であるということが理解されるべきである。異なる、または追加的な工程、特徴などを含む変形および代替が、開示された発明の主題の範囲内であると理解されるべきである。説明される様々な態様の数多くの代替特徴、方法工程などのすべての可能かつ操作的な組み合わせおよび交換が明示的に述べられているかいないかにかかわらず、本開示が、そのような具体的な組み合わせまたは交換を含むことを意図するということが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 液体培地の小滴を提供する工程であって、その少なくとも大多数が、候補結合部分としての少なくとも一つの組換え結合部分、第一の既知の部分および第二の既知の部分を含有し、いくつかまたはすべての小滴の候補結合部分がいくつかまたはすべての他の小滴の候補結合部分とは異なる、工程、ならびに
b. 該小滴の一つまたは複数に関して、該候補結合部分が該第一の既知の部分に結合しているかどうか、および該候補結合部分が該第二の既知の部分に結合しているかどうかを判定する工程
を含む、一つまたは複数の既知の他の部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための相互作用スクリーニング法。
【請求項2】
候補結合部分が第一の既知の部分に結合している少なくとも一つの小滴を、他の小滴から隔離する工程をさらに含む、一つまたは複数の既知の他の部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項1記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項3】
第一の既知の部分および第二の既知の部分の少なくとも一つが既知の抗原であり、かつ候補結合部分が抗体である、一つまたは複数の既知の他の部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項2記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項4】
工程(b)が蛍光偏光を含む、一つまたは複数の既知の他の部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項2記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項5】
第一の既知の部分および第二の既知部分が小滴中で担体粒子によって担持されている、一つまたは複数の既知の他の部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項2記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項6】
− 工程(b)で同定された小滴の一つまたは複数に含まれる結合部分を産生する細胞を同定する工程と、
− 該細胞を増殖させる工程を含む、該結合部分を産生する工程と
をさらに含む、一つまたは複数の既知の他の部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項1記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項7】
小滴の少なくとも大多数が一つまたは複数のさらなる既知の部分をさらに含有し、方法が、該小滴の一つまたは複数に関して、候補結合部分が該さらなる既知の部分のいずれかに結合しているかどうかを判定する工程をさらに含む、一つまたは複数の既知の他の部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項2記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項8】
工程(b)の後、小滴の少なくとも一つから候補結合部分を得る工程をさらに含む、一つまたは複数の既知の他の部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項2記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項9】
標的結合部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための相互作用スクリーニング法であって、
a. 液体培地の小滴を提供する工程であって、候補結合部分としての少なくとも一つの組換え結合部分および少なくとも一つの標的結合部分を含有し、いくつかまたはすべての小滴の候補結合部分がいくつかまたはすべての他の小滴の候補結合部分とは異なる、工程、ならびに
b. 該小滴の一つまたは複数に関して、該候補結合部分が該標的結合部分に結合しているかどうかを判定する工程
を含む方法。
【請求項10】
工程(b)で同定された小滴の少なくとも一つを他の小滴から隔離する工程をさらに含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項9記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項11】
工程(a)において、組換え結合部分の水性分散液の小滴の油中エマルションを形成する工程を少なくとも含む工程によって、小滴が提供される、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項9記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項12】
工程(a)において、小滴の少なくとも一部それぞれの組換え結合部分が、該組換え結合部分を該小滴の培地中に直接分泌する該小滴中の微生物によって小滴中に提供され、異なる微生物が、他の小滴中の微生物によって候補結合部分として分泌される組換え結合部分とは異なる少なくとも一つの組換え結合部分を候補結合部分として提供する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合組換え部分を同定するための請求項9記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項13】
液体培地が微生物のための培地であり、かつ工程(a)が小滴をインキュベートする工程をさらに含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項12記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項14】
工程(a)において、小滴の少なくとも一部それぞれの組換え結合部分が、ウイルスディスプレイ、ファージディスプレイ、もしくはイーストディスプレイ、または細菌分泌、古細菌分泌、もしくは真核生物分泌によって小滴中に提供される、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項9記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項15】
組換え結合部分が、抗体、タンパク質、および核酸からなる群より選択される、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項9記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項16】
標的部分の少なくともいくつかが小滴中で担体粒子上に担持されている、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項9記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項17】
標的部分の少なくともいくつかが小滴中で固体担体粒子上に担持されている、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項9記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項18】
標的部分の少なくともいくつかが小滴中でビーズ上に担持されている、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項9記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項19】
工程(b)が、一つまたは複数の候補結合部分が標的部分に結合している小滴を、候補結合部分がほとんどまたはまったく標的部分に結合していない小滴と区別するための蛍光偏光スクリーニングの使用を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項9記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項20】
候補結合部分が標識されている、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項1記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項21】
a. 微生物のインキュベーションに適した培養培地中に微生物の集団を提供して候補結合部分のライブラリを発現させる工程であって、異なる微生物が、いくつかまたはすべての他の微生物によって提供される候補結合部分とは異なる少なくとも一つの候補結合部分を発現する、工程
b. 任意の順序で、
i. 該微生物の少なくとも一部を、マイクロ流体流路中、該培養培地の小滴のストリーム中に配置する工程、
ii. 該小滴の少なくともいくつかのそれぞれの中に、標的部分を担持する一つまたは複数の第一の担体粒子を提供する工程、および
iii. 該小滴の少なくとも一部をインキュベートする工程、ならびに
c. 次いで、
i. 該小滴の少なくとも一部を検出器にかける(expose)工程、および
ii. 該検出器を作動させて、該候補結合部分が該小滴中で該一つまたは複数の第一の固体担体粒子に十分に結合している小滴があるならば、それを検出する工程
を含む、対応する候補結合部分が該標的部分に結合している該小滴の一つまたは複数を同定する工程
を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するためのスクリーニング法。
【請求項22】
ソータを作動させて、工程(c)で同定された小滴の少なくともいくつかを他の小滴から隔離する工程を含む、工程(c)で同定された小滴の少なくともいくつかを単離する工程をさらに含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項23】
小滴中の微生物が候補結合部分を該小滴の液体培地中に直接分泌する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項24】
小滴中の微生物が該小滴中で細菌ディスプレイによって候補結合部分を提供する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項25】
小滴中の微生物が該小滴中でイーストディスプレイによって候補結合部分を提供する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項26】
微生物が細菌である、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項27】
微生物がピキア(Pichia)属のメンバーである、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項28】
微生物がサッカロマイセス(Saccharomyces)属のメンバーである、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項29】
微生物が工程(b)(iii)で培養されて、検出可能に標識されている候補結合部分をそれぞれの小滴の培養培地中に分泌する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項30】
微生物が工程(b)(ii)で培養されて、検出可能にGFP標識されている候補結合部分をそれぞれの小滴の培養培地中に分泌する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項29記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項31】
微生物がグラム陽性細菌である、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項32】
細菌が枯草菌(Bacillus subtilis)である、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項31記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項33】
微生物が枯草菌であり、かつ工程(b)(iii)で培養されて、scFv-GFP融合タンパク質である候補結合部分をそれぞれの小滴の培養培地中に直接分泌して、scFv-GFP融合タンパク質のライブラリを小滴間で集合的に形成する、請求項21記載の標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための相互作用スクリーニング法。
【請求項34】
微生物が枯草菌であり、かつ工程(b)(iii)で培養されて、scFv-GFP融合タンパク質である候補結合部分をそれぞれの小滴の培養培地中に直接分泌して、106〜1010個の異なるscFv-GFP融合タンパク質のライブラリを小滴間で集合的に形成する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項35】
工程(a)における微生物の集団を提供する工程が、ナイーブscFvライブラリの構築と、該ナイーブscFvライブラリの枯草菌-大腸菌中へのクローニングとを含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項36】
候補結合部分が、GFPおよびscFvで構成された融合タンパク質の形態の検出可能に標識された候補抗体であり、標的部分が、固体担体粒子によって担持された抗原であり、かつ工程(a)における微生物の集団を提供する工程が、
i. ナイーブscFvライブラリを構築する工程、ならびに
ii. Ab遺伝子がリーダー配列およびレポーター遺伝子と隣接している該ナイーブscFvライブラリを、適当な微生物中にクローニングする工程
を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項37】
Ab遺伝子が、アミラーゼリーダーペプチドの3'側下流かつ緑色蛍光タンパク質(GFP)に対して5'側にクローニングされ、融合タンパク質が、(アミノ末端)リーダーペプチド-Ab-GFPタンパク質(カルボキシル末端)の形態にある、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項36記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項38】
候補結合部分が、レポーター遺伝子を含む融合タンパク質の形態の候補抗体である、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項39】
レポーター遺伝子が酵素である、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項38記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項40】
工程(a)における微生物の集団を提供する工程が、ナイーブscFvライブラリを構築する工程、および該ナイーブscFvライブラリを枯草菌-大腸菌二機能性プラスミド中にクローニングする工程を含み、枯草菌中のハイブリッド遺伝子が、該ハイブリッド遺伝子を発現することができるプロモーターの制御下に置かれる、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項41】
後期胞子プロモーター(late spore promoter)がspoVである、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項40記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項42】
クローンが枯草菌の株に形質転換され、かつその中で発現する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項40記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項43】
Ab遺伝子がまず大腸菌中にクローニングされ、プラスミドDNAクローンを使用して枯草菌が形質転換される、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項42記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項44】
限られた数のクローンの偏った増殖を阻害するために、細胞増殖が固体培地上で実施される、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項42記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項45】
工程(a)が、液体培地の少なくとも一部をマイクロ流体流路中で小滴の一列縦隊ストリームに分離する工程を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項9記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項46】
工程(a)が、流れ集束ジオメトリー(flow-focusing geometry)を使用して小滴を形成する工程を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項45記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項47】
液体培地が水性培地であり、かつ工程(a)が、
i. 水性培地のストリームをマイクロ流体流路中の狭窄部に注入する工程、
ii. 少なくとも一つの担体流体ストリームを対向伝搬(counter-propagating)させて該水性培地のストリームを流体力学的に集束させ、狭窄部を通過するとき、小滴へのその分解を安定させる工程
を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項46記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項48】
水性培地の小滴の生成速度、間隔およびサイズが、担体流体ストリームの流量に対する該水性培地のストリームの流量によって部分的に制御される、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項47記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項49】
小滴生成速度が毎秒3,000〜10,000個である、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項45記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項50】
小滴サイズが均一に5〜100ミクロンである、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項45記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項51】
工程(b)(iii)が、小滴を一列縦隊でマイクロ流体流路に通す間に微生物をインキュベートする工程を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項52】
工程(b)(iii)が、小滴を収集したエマルションとして非マイクロ流体容器中に一時的に保持する工程を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項53】
工程(b)(ii)が、
− 標的部分を担持する一つまたは複数の第一の固体担体粒子をそれぞれが含有する第二の小滴と交互に並ぶ小滴のストリームをマイクロ流体流路中に形成する工程、および
− 該小滴それぞれを隣接する第二の小滴と合体させる工程
を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項13記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項54】
第二の小滴がさらなる培養培地を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項52記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項55】
各小滴を、培養培地の性質を変化させるのに十分な流体を含む補助的な小滴と合体させる工程をさらに含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項56】
工程(c)が、小滴の少なくとも一部をマイクロ流体流路中で輸送して検出器に通す工程を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項57】
工程(c)が、単一厚さの小滴のフィルムを表面上に捕集し、候補結合部分が該小滴中の一つまたは複数の第一の固体担体粒子に結合している該フィルム中の小滴があるならばそれを同定する工程を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項58】
候補結合部分が小滴中の一つまたは複数の第一の固体担体粒子に結合しているフィルム中の小滴があるならばそれを同定する工程が、該フィルムの光学画像を取得し、該画像を検査する工程を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項57記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項59】
工程(d)が、マイクロマニピュレータを使用して、同定された小滴をフィルムから隔離する工程を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項57記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項60】
工程(d)が、レーザーキャプチャーダイセクションを使用して、同定された小滴をフィルムから取り出す工程を含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項57記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項61】
第一の固体担体粒子がビーズである、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項62】
ビーズが1〜30ミクロンの平均直径を有する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項61記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項63】
ビーズがポリスチレンビーズを含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項61記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項64】
標的部分が共有結合により第一の固体担体粒子によって担持されている、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項65】
標的部分が非共有結合的に第一の固体担体粒子に付着している、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項66】
第一の固体担体粒子の少なくとも大多数が、それぞれ少なくとも20個の標的部分を担持する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項67】
小滴の少なくとも大多数が第一の固体担体粒子の一つのみを含有する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項68】
標的部分がタンパク質ではない、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項69】
標的部分が小分子である、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項70】
小滴が、標的部分に加えて一つまたは複数の既知の部分をさらに含有し、かつ工程(c)が、候補結合部分が該さらなる既知の部分の少なくとも一つに結合している該小滴の一つまたは複数を同定する工程をさらに含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項71】
工程(b)が、小滴の少なくともいくつかのそれぞれの中に、非標的部分を担持する一つまたは複数の第二の担体粒子を提供する工程をさらに含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項72】
工程(b)が、小滴の少なくともいくつかのそれぞれの中に、一つまたは複数のさらなる既知の結合部分を提供する工程をさらに含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項73】
少なくとも一つのさらなる既知の結合部分が標的部分と同じ担体粒子上に担持されている、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項72記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項74】
工程(b)が、小滴の少なくともいくつかのそれぞれの中に、非標的部分を担持する一つまたは複数の第二の担体粒子を提供する工程をさらに含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項75】
第二の固体担体粒子が第二のビーズである、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項76】
第二のビーズがポリスチレンビーズを含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項75記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項77】
非標的部分が共有結合によって第二の固体担体粒子に付着している、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項78】
非標的部分が非共有結合的に第二の固体担体粒子に付着している、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項79】
第二の固体担体粒子が、非標的部分を提供する表面を有する裸のビーズである、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項80】
小滴の少なくとも大多数が、第二の固体担体粒子については一つのみ含有する、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項81】
標的部分がタンパク質ではない、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。
【請求項82】
d. 工程(c)で同定された少なくとも一つの小滴から少なくとも一つの微生物を回収する工程、
e. 工程(d)で回収された該微生物を、候補結合部分をコードする遺伝子の発現が起こる条件下で培養する工程を含む、工程(d)で回収された該小滴の該候補結合部分を産生する工程
をさらに含む、標的部分への結合に基づいて一つまたは複数の候補結合部分を同定するための請求項21記載の相互作用スクリーニング法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図2A−D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−536381(P2010−536381A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522031(P2010−522031)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/073879
【国際公開番号】WO2009/026448
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(510046435)アフォミックス コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】