説明

相形成剤による抽出及び結晶化によるモノマーの精製

【解決課題】 可能な限り低コストで環境に害を与えることなく、所望の合成モノマー以外の不純物を含む混合物から合成モノマーを高い収率で抽出すること。
【解決手段】 二重結合を有する酸性モノマーの精製方法であって、以下の工程:(a)開始混合物を用意し、(b)相形成剤、前記相形成剤の塩、またはそれらの混合物を添加して精製混合物を得、(c)少なくとも1種の第1の液相と、相境界によって前記第1の相と区別される少なくとも1種の相とによって相系を形成させ、(d)前記相系の温度を低下させ、(e)前記相系の前記相の1つにおいて、少なくとも50重量%の前記開始混合成分の1種を別の開始混合成分とともに含む結晶生成物を結晶系として形成させ、(f)前記結晶生成物を単離することを有することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重結合を有する酸性モノマーの精製方法、二重結合を有する酸性モノマーの合成装置、二重結合を有する酸性モノマーの製造方法、本発明の方法によって得られる二重結合を有する酸性モノマー、本発明の酸性モノマーを含む繊維、成形品、フィルム、発泡体、超吸収性ポリマー、その他の特殊ポリマー、繊維、成形品、フィルム、発泡体、超吸収性ポリマー、その他の特殊ポリマーの製造のための、本発明の酸性モノマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
大量生産される合成材料は、衛生的で純度の高い合成材料が求められる分野で盛んに使用されている。そのため、合成材料の大規模な合成のための純度の高いモノマーを提供することが重要になっている。
【0003】
このようなモノマーの純度に対する要求には、改良された反応器で新しい触媒系を使用して高い純度のモノマーを製造するモノマー合成の改良によって対応することができる。
【0004】
反応器と触媒について盛んに研究が行われているが、反応器から得られる粗モノマー流はなお純粋ではなく、粗モノマー流を慎重に精製し、得られる純粋なモノマーを重合することによって、純粋な合成材料に加工しなければならない。したがって、モノマーの工業的な製造における粗モノマー流の精製は大きな重要性を持つ。
【0005】
モノマーの工業的な合成と処理のさらなる進展において重要性を増している別のパラメータが、環境への影響である。環境への影響を考慮する場合、水または水系の使用が非常に重要である。また、廃棄物を減少させ、高い転化率によって高い収率を達成することは、工業的な合成による環境への影響を低減させることに貢献する。したがって、モノマーの工業的な合成においては、モノマー合成の収率を最適化するために、モノマー合成において多くの異なる流れを形成する、割合としては少ない量のモノマーを回収して再利用することが重要である。
【0006】
一例として、おしめ、生理用ナプキン、失禁用品に使用される吸水性ポリマーの合成が挙げられる。これらの吸水性ポリマーには非常に高い純度が要求される。したがって、これらの吸水性ポリマーの製造に使用されるアクリル酸の純度に対する要求も高い。高い純度が要求される工業的に製造されるポリマーの別の例は、飲料水の処理に使用されるポリマーである。この分野では、純度に対する高い要求があるために、未架橋・直鎖ポリアクリル酸を可能な限り純粋なアクリル酸から製造する。
【0007】
米国特許第4,720,577号は、酢酸などの二重結合を有さない低分子量カルボン酸を、脂肪族アミンとフェノールからなる抽出助剤を使用して精製することを開示している。しかし、脂肪族アミンとフェノールという二成分からなる抽出助剤の使用は、単一成分の抽出助剤と比較して複雑である。
【0008】
米国特許第3,997,599号は、灯油などの有機溶媒中でのトリオクチルホスフィンオキシドを用いる抽出によって、水相のメタクリル酸などのカルボン酸を精製することを開示している。しかし、環境に有害で、可燃性を有する有機溶媒の使用は不利である。
【0009】
ドイツ特許第21 36 396号は、非常に疎水性の高い溶媒による向流洗浄によってアクリル酸を精製することを開示しているが、有機溶媒が溶媒として好ましく使用されるため、火災の危険が高くなると共に、環境汚染が発生する。
【0010】
ドイツ特許第863 050号は、濃硫酸の添加による抽出によって水系アクリル酸・メタクリル酸を精製することを開示しており、アクリル酸・メタクリル酸の濃度が高い相が上部に形成される。しかし、この相には、使用される開始混合物と比較して、べンズアルデヒド、プロピオン酸、アクリル酸・メタクリル酸の二量体などの多くの不純物が蓄積される。これは、この抽出方法の大規模な応用に不利である。
【0011】
米国特許第3,663,375号は、硫酸または硫酸ナトリウムによる塩抽出によってイソ酪酸とメタクリル酸を含む混合物を精製するための3工程からなる方法を開示しており、第1の工程では、水相と有機相を形成することによって混合物を抽出し、第2の工程では、これらの相を互いに分離させ、第3の工程では、互いに分離された相を蒸留によって処理する。しかし、多くの工程が必要であり、アクリル酸やメタクリル酸などのモノマーの熱による蒸留も必要なため、この方法は不利である。アクリル酸やメタクリル酸の蒸留時に、アクリル酸やメタクリル酸の二量体やオリゴマーが容易に形成され、大規模にポリマーを製造する際には望ましくない。
【0012】
ドイツ特許公開第196 06 877 A1号は、アクリル酸をほとんど含まない溶媒の小さな部分的向流によって酸性水側流を抽出することを開示している。気相酸化によって得られたアクリル酸ガス流の主流は高沸点溶媒による吸収によって処理され、次に蒸留と結晶化が行われる。しかし、開示された抽出方法はアクリル酸をほとんど含まない溶媒を使用するために不利であり、主流の処理には適していない。
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,720,577号
【特許文献2】米国特許第3,997,599号
【特許文献3】ドイツ特許第21 36 396号
【特許文献4】ドイツ特許第863 050号
【特許文献5】米国特許第3,663,375号
【特許文献6】ドイツ特許公開第196 06 877 A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来技術から生じる欠点を克服することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、可能な限り低コストで環境に害を与えることなく、所望の合成モノマー以外の不純物を含む混合物から合成モノマーを高い収率で抽出することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、可能な限り少ない成分からなる相形成剤によるモノマーの精製を可能とすることにある。
【0017】
また、本発明の目的は、可能な限り少ない工程でモノマーの精製を行うことにある。
【0018】
また、本発明の目的は、モノマーの精製時に洗浄操作によって各種不純物を同時に減少させることにある。
【0019】
本発明のさらなる目的は、モノマーは反応性化合物であり、可能な限り熱応力にさらされるべきではないため、可能な限り穏やかなモノマーの精製を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的は、以下のカテゴリーを形成する請求項によって達成され、これらのカテゴリーを形成する請求項に従属する請求項は本発明の好ましい実施形態である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、二重結合を有する酸性モノマーの精製方法であって、以下の工程:
(a)開始混合成分として、開始混合物に基づき、
(a1)少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは62〜90重量%の酸性モノマーと、
(a2)少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも1重量%、特に好ましくは少なくとも10重量%の水、(a3)少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%の開始混合成分、又は(a2)及び(a3)と、
すなわち、(a)開始混合成分として、(a1)(a2)、(a1)(a3)、又は(a1)(a2)(a3)
を含む開始混合物(前記開始混合成分の合計重量は100重量%である)を用意し、
(b)好ましくは酸性モノマーよりも吸湿性の高い相形成剤、相形成剤の塩、またはそれらの混合物を添加して精製混合物を得、
(c)少なくとも1種の第1の液相と、相境界によって第1の相と区別される少なくとも1種の相とによって相系を形成させ、
(d)相系の温度を低下させ、
(e)相系の前記相の1つにおいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の開始混合成分の1種、好ましくは酸性モノマーと、別の開始混合成分とを含む結晶生成物を結晶系として形成させ、
(f)結晶生成物を単離すること
を有することを特徴とする方法に関する。
【0022】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、工程(c)及び(d)は、同じ場所、好ましくは共通の容器内において単一の工程で行われる。本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、工程(c)及び(d)は、互いに空間的に分離された場所、好ましくは少なくとも2つの容器内において2以上の工程で行われる。
【0023】
本発明に係る方法の別の実施形態では、工程(c)及び(d)は、他の工程によって遮られることなく、連続して行われる。
【0024】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、開始混合物は、開始混合成分(a3)として、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも15重量%、特に好ましくは少なくとも30重量%の、少なくとも1種の開始混合成分を有する。これは、特に酸性モノマーの処理によって得られる下部生成物の場合に該当する。開始混合成分、好ましくは開始混合成分(a3)は、水以外の不純物であり酸性モノマーとは異なる不純物であることが好ましい。開始混合成分は、本発明に係るモノマーよりも高い分子量を有することが好ましい。また、開始混合成分は、酸性モノマーよりも、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも20℃、特に好ましくは少なくとも40℃高い温度で沸騰することが好ましい。酸性モノマーのオリゴマーは、典型的な開始混合成分を構成する場合が多い。ここで、酸性モノマーのオリゴマーとは、少なくとも2つの酸性モノマー分子からなる分子を意味する。開始混合物のその他の開始混合成分としては、好ましくは後述する実施例で説明するように、酸性モノマーの合成・処理時に蓄積される反応生成物が挙げられる。
【0025】
一方、酸性モノマーを製造する際に、開始混合物は蒸留塔の下部液体に蓄積される場合が多い。そのような下部開始混合物は、下部開始混合成分として以下の成分を含む。
(a1S)少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも75重量%の酸性モノマー
(a2S)少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも2重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%の水
(a3S)少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%、特に好ましくは少なくとも10重量%の開始混合成分
ここで、下部開始混合成分の合計重量は100重量%である。
【0026】
また、本発明に係る方法によれば、精製に適した開始混合物は、酸性モノマーを蒸留する蒸留塔の上部で得られる場合も多い。
【0027】
そのような上部開始混合物は、上部開始混合成分として以下の成分を含む。
(a1K)少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも75重量%の酸性モノマー
(a2K)少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも2重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%の水
(a3K)少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、特に好ましくは少なくとも2重量%の開始混合成分
ここで、上部開始混合成分の合計重量は100重量%である。
【0028】
また、本発明に係る方法において、精製することができる有利な開始混合物はオリゴマーの分解時に得られる。これらの酸性モノマーのオリゴマーは、酸性モノマーを含む流れの精製時に様々な位置で形成される。また、オリゴマーは、酸性モノマーの合成時に形成されている場合もある。さらに、オリゴマーは、蒸留による酸性モノマーの熱精製によって形成される場合もある。また、酸性モノマーのオリゴマーは、結晶化などの精製工程で蓄積することも多い。
【0029】
オリゴマー分解装置から得られる下部液体としてのオリゴマー開始混合物は、下部液体に関して上述したオリゴマー開始混合成分を含む。
【0030】
また、少なくとも1種の酸性モノマーと水とを含む混合物の結晶化による精製は、相図によって限定される。少なくとも1種の酸性モノマーと水とを含む混合物における酸性モノマーの濃度を高めるために、本発明に係る方法を有利に使用することができる。
【0031】
少なくとも酸性モノマーを主成分として含み、酸性モノマーよりも少ない第2の成分、好ましくは水を含む、少なくとも二成分共晶開始混合物の相図は、温度/濃度相図において固相・液相線を有する。様々な相系の温度/濃度相図における固相・液相線の測定に関する詳細は、Halle−Wittenberg第2章「相図」Axel Konig,Universitat Erlangen−Nurnbergにおける欧州テーマ別ネットワーク(European Thematic Network)CRYSOPT,28/29.09.2000による「溶融結晶化の理論と応用(Theory and Application of Melt Crystallization)」にさらなる証拠とともに記載されている。これらの固相・液相線は、固相・液相線が途切れるか、互いに接する少なくとも1つのS−L遮断点を有する。本発明に係る相図を説明する特性相図は、Atsuoka,M.:「溶融結晶化の展開(Developments in Melt Crystallization)」,工業的結晶化の進歩(Advances in Industrial Crystallization),J.Garside,R.J.Davey,A.G.Jones,Eds.,Oxford(U.K.);Butterworth−Heinemann Ltd.(1991),pp.229−244に記載されている。
【0032】
本発明に係る好ましい共晶開始混合物は、共晶開始混合成分として、酸性モノマーの濃度が0%未満または100%を超えない限りにおいて、少なくとも1つのS−L遮断点から+/−60%、好ましくは+/−30%、さらに好ましくは+/−10%、特に好ましくは+/−5%の濃度範囲の酸性モノマーを含む。少数成分の対応する濃度は相図に従う。
【0033】
アクリル酸、水、水以外の開始混合成分の好ましい共晶開始混合物AAは、共晶開始混合成分として以下の成分を含む。
(a1E)0.01〜99.99重量%、好ましくは15〜85重量%、特に好ましくは40〜65重量%の酸性モノマー
(a2E)5〜95重量%、好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは30〜50重量%の水
(a3E)少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも2重量%、特に好ましくは少なくとも10重量%の開始混合成分
ここで、共晶開始混合成分の合計重量は100重量%である。
【0034】
本発明に係る方法では、精製混合物は、好ましくは1〜80重量%、特に好ましくは10〜50重量%、更に好ましくは20〜30重量%の相形成剤を含む。
【0035】
また、相形成剤の塩を溶液として使用することが好ましく、好ましい溶媒は水である。相形成剤の塩の溶液は、相形成剤の塩を、相形成剤の塩の溶液に対して1〜60重量%、好ましくは20〜55重量%、特に好ましくは40〜50重量%の濃度で含む。
【0036】
本発明に係る方法では、pH値が6未満、特に好ましくは3未満、更に好ましくは1未満のブレンステッド酸、該ブレンステッド酸の塩、またはそれらの混合物を相形成剤として使用することが好ましい。特に好ましいブレンステッド酸は、周期律表(the Periodic Table of the Elements)の5主族(5th main groups)及び6主族(6th main groups)の原子、好ましくはリン、硫黄または酸素を含む酸である。硫酸、リン酸、硫酸またはリン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩はpHに関して特定の値を有しており、硫酸、硫酸水素ナトリウムまたはそれらの混合物が好ましい。
【0037】
本発明に係る方法では、相形成剤は添加時に液体であることが好ましい。したがって、通常の条件において20℃で液体の相形成剤が特に好ましい。
【0038】
本発明に係る「吸湿性」とは水に対する親和性を意味し、Rompp,Lexikon der Chemie,1997年完全改訂10版,1858頁に詳細に記載されており、当該文献に記載された湿度計によって測定されたものである。
【0039】
本発明に係る方法における温度低下の範囲と方法は、分離される開始混合物の温度/濃度相図の液相・固相線の特性に依存する。したがって、開始混合物における開始混合成分の液相線未満に温度を低下させることが好ましい。また、温度は固相線よりも高く維持することが好ましい。また、温度は固相・液相線によって定義される相図の範囲内に維持することが好ましい。共晶の場合には、最も濃度が高い開始混合成分の抽出のために選択された濃度範囲のS−L遮断点の温度未満に温度を低下させないことが好ましい。
【0040】
また、本発明に係る方法では、相系の形成後、好ましくは結晶系の形成後に、相形成剤の少なくとも一部を回収して工程(b)で開始混合物に再度添加することが好ましい。結晶系が酸性モノマーの結晶を含む場合には、例えば、相系または結晶系から相形成剤の濃度が高い相を除去し、水が除去された相形成剤の対応する処理後に工程(b)で開始混合物に再度添加することができる。
【0041】
また、本発明に係る方法では、相系は、少なくとも第1の液相と、相境界によって第1の相と区別される少なくとも1つの他の液相とから形成されることが好ましい。第1の液相は、他の液相よりも水の濃度が低い液相である。水の濃度が低い液相は、水の含有量が高い液相よりも低い密度を有することが好ましい。密度差は、少なくとも10kg/m、好ましくは少なくとも100kg/m、特に好ましくは少なくとも200kg/mである。本発明に係る方法では、水の含有量が低い液相における酸性モノマーの濃度は、水の含有量が高い液相における酸性モノマーの濃度よりも高いことが好ましい。各開始混合成分は、これらの液相を分離することによって分離される。
【0042】
本発明に係る方法では、相系の1つの相に形成された結晶生成物は、結晶生成物に対して好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%の酸性モノマーまたは水を主として含むことが好ましい。
【0043】
本発明の方法の精製性能をさらに高めるために、結晶系、単離された結晶生成物、またはそれらの両方に対してさらなる精製工程を行うことが好ましい。この精製工程で使用される方法及び装置としては、当業者に公知の適当な方法及び装置が挙げられる。これらの方法のうち、精製される材料に熱応力をほとんど与えない方法が好ましい。層結晶化や懸濁結晶化などの結晶化方法がこれらの方法に属するものであり、懸濁結晶化が好ましい。上述した結晶化方法による結晶化生成物に対して、洗浄工程をさらに行うことができる。また、さらなる精製工程を行う前に、結晶相の結晶を少なくともに部分的に溶融させることが有利である。
【0044】
好適な方法は欧州特許第616 998号、国際公開第WO99/14181号、米国特許第4,780,568号、国際公開第WO02/055469号から公知であり、これらの開示内容は本願の開示内容の一部をなすものとする。国際公開第WO02/055469号は、結晶生成物に基づいて少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも95重量%、特に好ましくは少なくとも99重量%の酸性モノマーを含む結晶生成物に特に好適な精製方法と精製装置を開示している。
【0045】
本発明に係る方法では、酸性モノマーは、7未満、好ましくは5未満、特に好ましくは3未満のpH値を有することが好ましい。酸性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。酸性モノマー及びブレンステッド酸のpH値の測定は、「Mabanalyse Theorie und Praxis der klassischen und der Elektrochemischen Titrierverfahren」,Walter de Gruyter & Co.、ベルリン、(1969年)に従って水溶液中で行う。ここで、「(メタ)アクリル酸」という用語は、「メタクリル酸」及び「アクリル酸」という命名法上の名称を有する化合物を意味する。これらの化合物のうち、本発明ではアクリル酸が好ましい。
【0046】
本発明は、二重結合を有する酸性モノマーの合成装置であって、流体が伝導する以下の構成要素:
i.気相モノマー合成装置または液相モノマー合成装置を有するモノマー合成装置
ii.気相モノマー合成装置に続く冷却装置
iii.液相モノマー合成装置または冷却装置に続く任意の第1の精製装置
iv.以下の構成要素を含む第1の抽出装置
(aa)液相モノマー合成装置、冷却装置、または任意に設けられた第1の精製装置に接続された開始混合物導管
(bb)相形成剤導管
(cc)開始混合物導管及び相形成剤導管を収容する抽出容器
v.第1の抽出装置、他の精製装置、またはそれらの両方に接続された任意の抽出装置
を有する装置に関する。
【0047】
本発明に係る装置の好ましい実施形態では、抽出装置の一部、好ましくは抽出容器の一部、特に抽出容器は冷却されることができる。この形態は、本発明に係る方法を単一の工程で行うために特に適している。
【0048】
本発明に係る装置の別の実施形態では、装置は、相境界部、好ましくは抽出容器の他に、相境界部から分離された結晶化部を有する。この分離された結晶化部では、少なくとも結晶化部の一部は冷却されることができる。
【0049】
典型的な結晶化部は、公知の結晶生成装置である。本発明に係る装置のこの形態は、本発明に係る方法を2以上の工程で行うために特に適している。
【0050】
本発明に係る「流体が伝導する」とは、気体、懸濁液を含む液体、またはそれらの混合物が対応する導管内を流れることを意味する。特に、パイプ、ポンプなどが使用される。
【0051】
本発明に係る酸性モノマーの合成装置の好ましい実施形態では、装置は、冷却装置に続いて第1の精製装置を有していなければならない。
【0052】
本発明に係る酸性モノマーの合成装置の別の好ましい実施形態では、装置は、液相モノマー合成装置に続いて第1の精製装置を有していなければならない。
【0053】
本発明に係る酸性モノマーの合成装置の別の好ましい実施形態では、装置は、第1の抽出装置、他の精製装置またはそれらの両方に接続された他の抽出装置を有していなければならない。
【0054】
したがって、本発明に係る酸性モノマーの合成装置では、モノマー合成装置は少なくとも2つの反応器を有することが好ましい。当業者にとって酸性モノマーの合成に好適な反応器を使用することができる。例えば、管状反応器、壁状反応器、層状反応器が挙げられる。反応器は担持遷移金属酸化物触媒を有することが好ましく、それによって、二重結合を有する炭化水素の気相酸化によって行われる酸性モノマーの合成が容易になる。担持遷移金属酸化物触媒は、当業者に公知のあらゆる材料に担持させることができる。例えば、各種金属、特に、酸性モノマーの合成時の反応条件に対して不活性かつセラミック的である材料、例えば、鉄鋼、アルミニウム、シリカ、ルチル又はアナターゼなどのチタニウムの混合または単独酸化物が挙げられる。特に好ましい遷移金属酸化物触媒は、バナジウム、ニッケル、モリブデンの混合酸化物またはそれらの少なくとも2種の混合物である。ここでは、ドイツ特許第196 06 877号の工程(I)を特に参照する。
【0055】
本発明に係る酸性モノマーの合成装置では、反応器の少なくとも1つは気相反応器であることが好ましい。
【0056】
少なくとも1つ、好ましくは2つの反応器によって抽出物を経てモノマー合成装置内で形成され、且つ酸性モノマーを含んでいる、ほとんどが気体の反応生成物は、次に冷却装置に送られる。冷却装置は原則として冷却塔であり、酸性モノマーを液相に移すために、気体の反応生成物を水と接触させる。
【0057】
本発明に係る酸性モノマーの合成装置の好ましい実施形態では、蒸留塔の形態の精製装置が冷却装置に続いて設けられる。この蒸留塔では、冷却装置によって得られた冷却生成物は、蒸留による熱暴露によって酸性モノマーを含む異なる成分に可能な限り分離される。抽出装置に下部開始混合物を送るために、蒸留塔は、開始混合物導管に接続された塔下部を下部に有することが好ましい。このようにして、蒸留時に蓄積し、蒸留塔の上部に送られず、且つ酸性モノマーを多く含んでいる、下部混合物を精製することができるので、装置の効率が向上し、特に酸性モノマーの収率が向上する。
【0058】
本発明に係る酸性モノマーの合成装置の別の実施形態では、蒸留塔は、開始混合物導管に接続された塔上部を上部に有することが好ましい。これによって、抽出装置の上部開始混合物としての、蒸留プロセスの上部生成物中の所望の酸性モノマー以外の不純物を含む混合物を精製することができ、酸性モノマーの合成装置の効率をさらに向上させることができる。
【0059】
冷却生成物の蒸留処理時に酸性モノマーのオリゴマーが形成される場合があり、オリゴマーは適当なオリゴマー分解装置によって酸性モノマーに再転換しなければならない。したがって、本発明に係る酸性モノマーの合成装置の一実施形態では、酸性モノマーのオリゴマーの分解装置が第1の精製装置に隣接して設けられる。当業者にとって酸性モノマーの分解に好適なあらゆる方法を使用することができ、特に、触媒作用による二量体または三量体分解装置が挙げられる。また、オリゴマー開始混合物を抽出装置に送るために、分解装置は、開始混合物導管に接続された分解装置下部を下部に有することが好ましい。
【0060】
本発明に係る酸性モノマーの合成装置の別の実施形態では、装置は、冷却装置に続く第1の精製装置を備え、第1の精製装置は結晶生成装置であることが好ましい。結晶生成装置によって結晶化された冷却生成物は結晶化時に共晶混合物を形成することが多く、必要な量の酸性モノマーを単離することができない。したがって、本発明に係る方法によって精製するために、共晶開始混合物を開始混合物導管を介して抽出装置に送ることが好ましい。結晶生成装置としては、当業者に公知であり、本発明に適した結晶生成装置を使用することができる。層結晶生成装置及び懸濁結晶生成装置がこの範疇に含まれる。懸濁結晶生成装置としては、ボイラー結晶化装置、スクラッチ結晶化装置、冷却板結晶化装置、結晶化ワーム、ドラム結晶化装置などを有利に使用することができ、懸濁結晶生成装置は好ましくは下流の洗浄塔とともに運転される。この点に関して国際公開第WO99/14181号を参照し、その開示内容は本明細書の開示内容の一部をなすものとする。
【0061】
さらに、本発明は、二重結合を有する酸性モノマーの製造方法であって、反応器で生成され、酸性モノマーを含む少なくとも1種の合成混合物を、水と接触させ、必要に応じて少なくとも1回の処理工程後に、開始混合物として、酸性モノマーを精製するために本発明に係る方法に供給する方法にも関する。
【0062】
本発明に係る酸性モノマーの製造方法は、少なくとも1つの反応器内で、少なくとも1つの二重結合を有する炭化水素の酸化によって行われることが好ましい。炭化水素の炭素数は、2〜10,好ましくは3〜5、特に好ましくは3である。アクリル酸を製造する場合には、プロピレンが炭化水素として特に好ましい。
【0063】
当業者に公知であり、好適なあらゆる装置を液相モノマー合成装置として使用することができ、溶媒の液相における抽出物としての二重結合を有する炭化水素から開始して、配位子を有する遷移金属化合物を触媒として使用して、酸性モノマーを、好ましくは溶媒に溶解された酸性モノマーを得る。
【0064】
本発明に係る酸性モノマーの製造方法では、本発明に係る酸性モノマーの合成装置を使用することが好ましい。
【0065】
本発明は、本発明に係る酸性モノマーの合成方法によって得られる酸性モノマーにも関する。
【0066】
本発明は、少なくとも本発明に係る酸性モノマーに基づく、繊維、成形品、フィルム、発泡体、超吸収性ポリマー、廃水処理・分散染料・化粧品・織物・皮革処理・製紙用の特殊ポリマー、又は衛生用品にも関する。
【0067】
また、本発明は、繊維、成形品、フィルム、発泡体、超吸収性ポリマー、衛生用品、洗浄剤、廃水処理・分散染料・化粧品・織物・皮革処理・製紙用の特殊ポリマーの製造における、本発明に係る酸性モノマーの使用にも関する。
【0068】
以下、本発明を図面と実施例を参照してさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0069】
図1に示すモノマー合成装置1では、アクリル酸、プロピレン、酸素を使用する場合には、酸性モノマーを合成するために必要な抽出物は、抽出物入口23から第1の反応器11に導入される。アクリル酸を合成する場合には、抽出混合物は、第1の反応器11における担持遷移金属触媒13による気相酸化反応によって、主としてアクロレインに転換され、さらなる気相酸化によって反応器12内でアクリル酸に転換される。第1の反応器11及び反応器12は、モノマー合成装置2としての気相モノマー合成装置2aを構成する。反応生成物導管18を介して、反応生成物はモノマー合成装置2から冷却装置3に送られる。第1の抽出装置5は開始混合物導管6を介して冷却装置3に取り付けられ、第1の抽出装置5では、冷却生成物に対して本発明に係る処理方法が行われる。また、冷却生成物を第1の精製装置4の冷却生成物導管19を介して供給することもできる。第1の精製装置4は、結晶化装置、洗浄装置を備えた結晶化装置、または蒸留塔であってもよい。第1の精製装置4が蒸留塔である場合には、蒸留塔は、下部に塔下部14、上部に塔上部15を有する。第1の抽出装置5’または5’’は、塔下部14または塔上部15またはそれらの両方に適当な開始混合物導管6を介して取り付けられることができる。また、酸性モノマーのオリゴマーの分解装置16が、蒸留塔として設計された第1の精製装置4にオリゴマー導管20を介して取り付けられることができる。分解装置16は分解装置下部17を有し、分解装置下部17は開始混合物導管6を介して抽出装置5’’’に接続されている。第1の精製装置4が結晶化装置または洗浄装置を備えた結晶化装置である場合には、精製された酸性モノマーを含む、結晶化装置または洗浄装置を備えた結晶化装置に蓄積された生成物は、特にそれらが共晶点に近い水系組成物として存在している場合には、開始混合物導管6を介して第1の抽出装置5’に供給されることができる。第1の精製装置5は抽出容器8を有し、抽出容器8には、開始混合物導管6に加えて相形成剤導管7が接続されている。このようにして構成された抽出装置は、抽出容器8に相境界と結晶化領域を有する。また、第1の抽出装置5、5’、5’’、5’’’には、相形成剤導管7を介して相形成剤タンク22から相形成剤が供給される。精製装置10には、第1の抽出装置5、5’、5’’、5’’’の生成物/結晶導管21を介して精製物が供給される。生成物/結晶導管21には抽出装置9が設けられ、結晶相に対して本発明に係るさらなる精製が行われる。精製装置10としては、当業者に公知であり、さらなる精製に適したあらゆる装置を使用することができる。精製装置10としては、結晶化装置または洗浄装置を備えた結晶化装置が特に好ましい。モノマー合成装置からの精製酸性モノマーは、生成物出口24を介して精製装置10から取り出される。第1の抽出装置5、5’、5’’、5’’’で形成された残渣は、残渣導管25を介して相形成剤調製装置26に供給され、相形成剤は回収され、相形成剤タンク23に送られる。相形成剤の処理・回収時に蓄積した残渣は、残渣排出口28を介してモノマー合成装置1から排出される。
【0070】
図1のモノマー合成装置1に示す以下の組み合わせは、例えば、さらなるモノマー合成装置1における使用の実施形態として好ましいものである。冷却装置3と第1の抽出装置5の組み合わせ;第1の抽出装置5’が結晶化装置または洗浄装置を備えた結晶化装置である場合における第1の精製装置4と第1の抽出装置5’の組み合わせ;第1の抽出装置5’が塔下部14を有する蒸留塔である場合における第1の精製装置4と第1の抽出装置5’の組み合わせ;第1の抽出装置5’’が塔上部15を有する蒸留塔である場合における第1の精製装置4と第1の抽出装置5’’の組み合わせ;第1の精製装置4が塔下部14と塔上部15を有する蒸留塔である場合における第1の精製装置4と第1の抽出装置5’及び更なる第1の抽出装置5’’の組み合わせ;第1の精製装置4が第1の抽出装置5’’に関連する蒸留塔である場合における第1の精製装置4と分解装置下部17を有する分解装置16の組み合わせ。
【0071】
図2は、図1に示す位置とは異なる位置でモノマー合成装置1に好ましく使用される抽出装置5を示し、抽出装置5は精製装置10と組み合わせられた抽出装置5を有する。開始混合物と相形成剤導管7を介して供給された相形成剤は、開始混合物導管6を介して抽出装置5に送られ、開始混合物に含まれる酸性モノマーは、本発明に係る方法によって精製されることができる。相形成剤と少量の酸性モノマー(残渣導管25を介して排出される混合物に対して20重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満)は、残渣導管25を介して相形成剤調製装置26に送られる。相形成剤調製装置26で得られた相形成剤は、相形成剤導管7を介して第1の抽出装置5に再び供給される。酸性モノマー濃度の高い結晶相は、生成物/結晶導管21を介して精製装置10に送られる。精製装置10は、結晶化装置または洗浄装置を備えた結晶化装置であってもよい。酸性モノマーの結晶は、生成物/結晶相を精製装置10に導入する前に少なくとも部分的に溶融させることが好ましい。精製装置10で結晶相がさらに精製され、精製残渣は精製残渣導管27を介して第1の抽出装置5に供給されることができ、精製された酸性モノマーは精製装置10から精製物出口24を介して排出されることができる。
【0072】
図3では、例えば液相モノマー合成装置2bで得られた開始混合物は、開始混合物導管6を介して、アクリル酸の精製の場合には、60〜80重量%のアクリル酸とともに抽出装置5に供給される。抽出装置5は相境界部5aを有し、生成物の濃度が高く、好ましくは相形成剤の濃度が低い相が、生成物相導管33を介して、相境界部5aから分離され、結晶懸濁液を生成させるための結晶化装置29を備えた結晶化領域5bに送られる。結晶懸濁液は結晶懸濁液導管30を介して洗浄塔31に送られ、生成物は単離され、精製物出口24から排出され、必要に応じて精製装置10に供給される。結晶化装置29に蓄積された母液は、洗浄塔31における分離時に、母液導管32を介して回収されるか、残渣排出口28を介して少なくとも部分的に取り出される。生成物の濃度が低く且つ相形成剤の濃度が高い、相形成剤分離装置26の相境界部5aからの残渣は、残渣導管25を介して供給され、相形成剤、好ましくは硫酸である相形成剤は相形成剤導管7に供給され、相形成剤の調製時に蓄積された残渣は残渣排出口28を介して取り出される。相形成剤調製装置26は、消費相形成剤・残渣供給導管25に接続された第1のフラッシュ容器34を好ましくは有する。第1のフラッシュ容器34では、大部分が水とアクリル酸からなる低沸点成分が残渣から気化し、リサイクル導管35を介して相境界部5aに供給される。大部分が相形成剤と残渣である高沸点留分は、高沸点導管36を介して高温で作動するフラッシュ容器37に供給される。フラッシュ容器37では、相形成剤は低沸点成分として単離され、相形成剤導管7を介して相形成剤部5aに供給される。高沸点留分は残渣排出口28を介して排出される。
【実施例】
【0073】
1.相分離A
表1に示す組成の混合物724gを20℃に保持した容量1.5Lの二重壁実験室ガラス容器に入れ、マグネチックスターラーで撹拌した。次に、相形成剤(96%硫酸)226gを添加した。添加後に相分離が観察された。表1に各相の組成を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
2.相分離B
相分離Aと同様に実験を繰り返した。ただし、表2に示す組成の混合物874gを使用し、70%硫酸水素ナトリウム水溶液305gを相形成剤として使用した。表2に各相の組成を示す。
【0076】
【表2】

【0077】
3.抽出・結晶化実験(単一工程)
表3に示す組成(抽出物)の混合物170gを20℃に保持した容量250mlの二重壁実験室ガラス容器に入れ、マグネチックスターラーで撹拌した。次に、96%硫酸55gを相形成剤として添加して2相を形成させた。次に、温度を低下させ、結晶が6.8℃で形成された。温度をさらに5.4℃まで低下させると、結晶の形成が停止した。得られた結晶相の結晶を真空吸引フィルターによって単離し、99.8%アクリル酸102gで洗浄した。組成を表3に示す。主としてアクリル酸を含む相からの結晶化は完全であり、残渣は水/有機懸濁液として生成した。懸濁液は真空吸引フィルターを使用して結晶から容易に分離され、ろ過ケークが形成された。99.8%アクリル酸で洗浄後、抽出物に使用したアクリル酸に対して51%の収率で結晶が得られた。
【0078】
【表3】

【0079】
4.結晶化/層結晶化(2工程)
実施例1と同様にして得られた抽出物2Lを10℃に保持した容量4Lの二重壁実験室ガラス容器に上相として入れた。表4に抽出物の組成を示す。10℃の冷却フィンガー(cool finger)を実験室ガラス容器の中央に配置し、冷却フィンガーを99.8%アクリル酸に浸して表面を湿潤させた。次に、冷却フィンガーと二重壁実験室容器を4℃に冷却すると、結晶層が冷却フィンガーの表面に形成され始めた。さらに、冷却フィンガーを0.15℃/分の速度で−8℃まで冷却した。アクリル酸が減少した母液を排出し、冷却フィンガーから得られた結晶を分析した。次に、冷却フィンガーを0.2℃/分の速度で2℃まで温め、冷却フィンガー上の結晶層を発汗(sweating)によってさらに精製した。表4に各工程の結晶の組成を示す。
【表4】

【0080】
これらの結果はガスクロマトグラフィーと高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で得た。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係るモノマー合成装置の概略アセンブリのフロー図であり、抽出装置は異なる位置に配置されている。
【図2】本発明に係る抽出装置の組み合わせのフロー図であり、相形成剤調製装置とさらなる精製装置を有する。
【図3】抽出装置の2段階組み合わせのフロー図であり、抽出部と結晶化部は互いに分離され、液相モノマー合成装置を有する。
【符号の説明】
【0082】
1 モノマー合成装置
2 モノマー合成装置
3 冷却装置
4 第1の精製装置
5 第1の抽出装置
6 開始混合物導管
7 相形成剤導管
8 抽出容器
9 抽出装置
10 精製装置
11 第1の反応器
12 反応器
13 担持遷移金属酸化物触媒
14 塔下部
15 塔上部
16 分解装置
17 分解装置下部
18 反応生成物導管
19 冷却生成物導管
20 オリゴマー導管
21 生成物/結晶導管
22 相形成剤タンク
23 抽出物入口
24 精製物出口
25 残渣導管
26 相形成剤調製装置
27 精製残渣導管
28 残渣排出口
29 結晶化装置
30 結晶懸濁液導管
31 洗浄塔
32 母液導管
33 生成物相導管
34 第1のフラッシュ容器
35 リサイクル導管
36 高沸点導管
37 フラッシュ容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重結合を有する酸性モノマーの精製方法であって、以下の工程:
(a)開始混合成分として、開始混合物に基づき、
(a1)少なくとも5重量%の酸性モノマーと、
(a2)少なくとも0.01重量%の水、(a3)少なくとも0.01重量%の少なくとも1種の開始混合成分、または(a2)及び(a3)と、
を含む開始混合物(前記開始混合成分の合計重量は100重量%である)を用意し、
(b)相形成剤、前記相形成剤の塩、またはそれらの混合物を添加して精製混合物を得、
(c)少なくとも1種の第1の液相と、相境界によって前記第1の相と区別される少なくとも1種の相とによって相系を形成させ、
(d)前記相系の温度を低下させ、
(e)前記相系の前記相の1つにおいて、少なくとも50重量%の前記開始混合成分の1種を別の開始混合成分とともに含む結晶生成物を結晶系として形成させ、
(f)前記結晶生成物を単離すること
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記温度を前記相系の1相のみにおいて低下させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度を前記相系のモノマー濃度が最も高い相において低下させることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性モノマーは7未満のpH値を有することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性モノマーは(メタ)アクリル酸であることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記相形成剤は、6未満のpH値を有するブレンステッド酸、ブレンステッド酸の塩、またはそれらの混合物であることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ブレンステッド酸は、硫酸、硫酸塩、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記相形成剤は添加時に液体であることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記精製混合物は、前記相形成剤を1〜80重量%の量で含むことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記相形成剤の少なくとも一部を前記相系の形成後に回収し、前記開始混合物の工程(b)で再利用することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記結晶系、前記単離されたモノマー結晶、またはそれらの両方に対して少なくとも1回のさらなる精製工程を行うことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
二重結合を有する酸性モノマーの合成装置(1)であって、流体が伝導する以下の構成要素:
i.気相モノマー合成装置(2a)または液相モノマー合成装置(2b)を有するモノマー合成装置(2)
ii.前記気相モノマー合成装置(2a)に続く冷却装置(3)
iii.前記液相モノマー合成装置(2b)または前記冷却装置(3)に続く任意の第1の精製装置(4)
iv.以下の構成要素を有する第1の抽出装置(5)
(aa)前記液相モノマー合成装置(2b)、前記冷却装置(3)、または任意に設けられた前記第1の精製装置(4)に接続された開始混合物導管(6)
(bb)相形成剤導管(7)
(cc)前記開始混合物導管(6)及び前記相形成剤導管(7)を収容する抽出容器(8)
v.前記第1の抽出装置(5)、他の精製装置(10)、またはそれらの両方に接続された任意の抽出装置(9)
を有することを特徴とする装置。
【請求項13】
前記気相モノマー合成装置(2a)は、少なくとも1つの反応器(11,12)を有することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記反応器の少なくとも1つは、担持遷移金属酸化物触媒(13)を有することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記反応器の少なくとも1つは気相反応器であることを特徴とする請求項13または14に記載の装置。
【請求項16】
前記冷却装置(3)に続いて前記第1の精製装置(4)を有し、前記第1の精製装置(4)は蒸留塔を有することを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記蒸留塔は、前記開始混合物導管(6)に接続された塔下部(14)を有することを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記蒸留塔は、前記開始混合物導管(6)に接続された塔上部(15)を上部に有することを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記酸性モノマーのオリゴマーの分解装置(16)が前記第1の精製装置(4)に取り付けられていることを特徴とする請求項12〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記分解装置(16)は、前記開始混合物導管(6)に接続された分解装置下部(17)を下部に有することを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記冷却装置(3)に続いて前記第1の精製装置(4)を有し、前記第1の精製装置(4)は結晶生成装置であることを特徴とする請求項12〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
二重結合を有する酸性モノマーの製造方法であって、少なくとも1つの反応器から取り出され、前記酸性モノマーと少なくとも1種の合成成分とを含む合成混合物を水と接触させ、必要に応じて少なくとも1回の処理工程後に、開始混合物として請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法に供給することを特徴とする方法。
【請求項23】
前記酸性モノマーは、前記少なくとも1つの反応器内で、少なくとも1つの二重結合を有する炭化水素を酸化させることによって得られることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
請求項12〜21のいずれか1項に記載の装置(1)を前記方法を行うために使用することを特徴とする請求項20または21に記載の方法。
【請求項25】
請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られる酸性モノマー。
【請求項26】
少なくとも請求項25に記載の酸性モノマーに基づく、繊維、成形品、フィルム、発泡体、超吸収性ポリマー、廃水処理・分散染料・化粧品・織物・皮革処理・製紙用の特殊ポリマー、または衛生用品。
【請求項27】
繊維、成形品、フィルム、発泡体、超吸収性ポリマー、洗浄剤、廃水処理・分散染料・化粧品・織物・皮革処理・製紙用の特殊ポリマー、または衛生用品の製造のための請求項25に記載の酸性モノマーの使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)開始混合成分として、開始混合物に基づき、
(a1)少なくとも5重量%の酸性モノマーと、
(a2)少なくとも0.01重量%の水、(a3)少なくとも0.01重量%の少なくとも1種の開始混合成分、または(a2)及び(a3)と、
を含む開始混合物(前記開始混合成分の合計重量は100重量%である)を用意し、
(b)相形成剤、前記相形成剤の塩、またはそれらの混合物を添加して精製混合物を得、
(c)少なくとも1種の第1の液相と、相境界によって前記第1の相と区別される少なくとも1種の相とによって相系を形成させ、
(d)前記相系の温度を低下させ、
(e)前記相系の前記相の1つにおいて、少なくとも50重量%の前記開始混合成分の1種を別の開始混合成分とともに含む結晶生成物を結晶系として形成させ、
(f)前記結晶生成物を単離すること
を有することを特徴とする二重結合を有する酸性モノマーの精製方法。
【請求項2】
前記温度を前記相系の1相のみにおいて低下させることを特徴とする請求項1に記載の二重結合を有する酸性モノマーの精製方法。
【請求項3】
前記温度を前記相系のモノマー濃度が最も高い相において低下させることを特徴とする請求項2に記載の二重結合を有する酸性モノマーの精製方法。
【請求項4】
前記酸性モノマーは7未満のpH値を有することを特徴とする前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの精製方法。
【請求項5】
前記酸性モノマーは(メタ)アクリル酸であることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの精製方法。
【請求項6】
前記相形成剤は、6未満のpH値を有するブレンステッド酸、ブレンステッド酸の塩、またはそれらの混合物であることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの精製方法。
【請求項7】
前記ブレンステッド酸は、硫酸、硫酸塩、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項6に記載の二重結合を有する酸性モノマーの精製方法。
【請求項8】
前記相形成剤は添加時に液体であることを特徴とする前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの精製方法。
【請求項9】
前記精製混合物は、前記相形成剤を1〜80重量%の量で含むことを特徴とする前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの精製方法。
【請求項10】
前記相形成剤の少なくとも一部を前記相系の形成後に回収し、前記開始混合物の工程(b)で再利用することを特徴とする前記請求項1〜9のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの精製方法。
【請求項11】
前記結晶系、前記単離された結晶生成物、またはそれらの両方に対して少なくとも1回のさらなる精製工程を行うことを特徴とする前記請求項1〜10のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの精製方法。
【請求項12】
二重結合を有する酸性モノマーの合成装置(1)であって、流体が伝導する以下の構成要素:
i.気相モノマー合成装置(2a)または液相モノマー合成装置(2b)を有するモノマー合成装置(2)
ii.前記気相モノマー合成装置(2a)に続く冷却装置(3)
iii.前記液相モノマー合成装置(2b)または前記冷却装置(3)に続く任意の第1の精製装置(4)
iv.以下の構成要素を有する第1の抽出装置(5)
(aa)前記液相モノマー合成装置(2b)、前記冷却装置(3)、または任意に設けられた前記第1の精製装置(4)に接続された開始混合物導管(6)
(bb)相形成剤導管(7)
(cc)前記開始混合物導管(6)及び前記相形成剤導管(7)を収容する抽出容器(8)
v.前記第1の抽出装置(5)、他の精製装置(10)、またはそれらの両方に接続された任意の抽出装置(9)
を有することを特徴とする二重結合を有する酸性モノマーの合成装置。
【請求項13】
前記気相モノマー合成装置(2a)は、少なくとも1つの反応器(11,12)を有することを特徴とする請求項12に記載の二重結合を有する酸性モノマーの合成装置。
【請求項14】
前記反応器の少なくとも1つは、担持遷移金属酸化物触媒(13)を有することを特徴とする請求項13に記載の二重結合を有する酸性モノマーの合成装置。
【請求項15】
前記反応器の少なくとも1つは気相反応器であることを特徴とする請求項13または14に記載の二重結合を有する酸性モノマーの合成装置。
【請求項16】
前記冷却装置(3)に続いて前記第1の精製装置(4)を有し、前記第1の精製装置(4)は蒸留塔を有することを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの合成装置。
【請求項17】
前記蒸留塔は、前記開始混合物導管(6)に接続された塔下部(14)を有することを特徴とする請求項16に記載の二重結合を有する酸性モノマーの合成装置。
【請求項18】
前記蒸留塔は、前記開始混合物導管(6)に接続された塔上部(15)を上部に有することを特徴とする請求項17に記載の二重結合を有する酸性モノマーの合成装置。
【請求項19】
前記酸性モノマーのオリゴマーの分解装置(16)が前記第1の精製装置(4)に取り付けられていることを特徴とする請求項12〜18のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの合成装置。
【請求項20】
前記分解装置(16)は、前記開始混合物導管(6)に接続された分解装置下部(17)を下部に有することを特徴とする請求項19に記載の二重結合を有する酸性モノマーの合成装置。
【請求項21】
前記冷却装置(3)に続いて前記第1の精製装置(4)を有し、前記第1の精製装置(4)は結晶生成装置であることを特徴とする請求項12〜20のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの合成装置。
【請求項22】
少なくとも1つの反応器から取り出され、前記酸性モノマーと少なくとも1種の合成成分とを含む合成混合物を、水と接触させた後に、開始混合物として請求項1〜9のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの精製方法に供給し、二重結合を有する酸性モノマーを得ることを特徴とする二重結合を有する酸性モノマーの製造方法。
【請求項23】
前記酸性モノマーは、前記少なくとも1つの反応器内で、少なくとも1つの二重結合を有する炭化水素を酸化させることによって得られることを特徴とする請求項20に記載の二重結合を有する酸性モノマーの製造方法。
【請求項24】
請求項12〜21のいずれか1項に記載の二重結合を有する酸性モノマーの合成装置(1)を、前記二重結合を有する酸性モノマーの製造方法を行うために使用することを特徴とする請求項22または23に記載の二重結合を有する酸性モノマーの製造方法。
【請求項25】
請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法によって得られる二重結合を有する酸性モノマー。
【請求項26】
少なくとも請求項25に記載の二重結合を有する酸性モノマーに基づく、繊維、成形品、フィルム、発泡体、超吸収性ポリマー、廃水処理・分散染料・化粧品・織物・皮革処理・製紙用の特殊ポリマー、または衛生用品。
【請求項27】
繊維、成形品、フィルム、発泡体、超吸収性ポリマー、洗浄剤、廃水処理・分散染料・化粧品・織物・皮革処理・製紙用の特殊ポリマー、または衛生用品の製造のための、請求項25に記載の二重結合を有する酸性モノマーの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−516972(P2006−516972A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500554(P2006−500554)
【出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000163
【国際公開番号】WO2004/063134
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(504341139)ストックハウゼン ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】