説明

相溶化されたポリプロピレンおよびポリ乳酸配合物並びにそれらの製造および使用方法

ポリオレフィン、ポリ乳酸、および反応性改質剤の配合物を含んでなる組成物。ポリプロピレン、ポリ乳酸、反応性改質剤を含んでなる混合物を反応性押し出し混和して相溶化された重合体状配合物を製造し、相溶化された重合体状配合物をフィルムに流し込み成型し、そしてフィルムを配向することを含んでなる配向フィルムの製造方法。ポリオレフィン、多官能性アクリレートコモノマー、および開始剤をエポキシ−官能化されたポリオレフィンの製造に適する条件下で接触させることを含んでなる反応性改質剤の製造方法であって、ここでエポキシ−官能化されたポリオレフィンが0.2重量%〜15重量%のグラフト化率を有する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
この開示は重合体状配合物に関する。より具体的には、この開示は生分解性重合体を含んでなる重合体状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
合成重合体状物質、例えばポリプロピレンおよびポリエチレン樹脂、は医学装置から食品容器までの範囲にわたる種々の最終用途製品の製造において広く使用されている。多くの産業、例えば包装産業、は二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムを包含する種々の完成品を作成するための種々の製造方法においてポリプロピレン物質を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
合成重合体状物質から構成される製品は広範な用途を有するが、それらの使用に対する1つの欠点はこれらの物質は自然環境において半永久的に残る傾向があることである。環境的関心に応えて、より容易に生分解可能な重合体状物質の製造および利用における興味が増大してきた。「グリーン物質」としても知られるこれらの物質は自然環境において加速された分解を受けうる。これらの生分解性重合体状物質の使用はそれらの劣悪な機械的および/または物理的性質によりしばしば限定される。それ故、望ましい物理的および/または機械的性質を有する生分解性重合体状組成物に対する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
ポリオレフィン、ポリ乳酸、および反応性改質剤を含んでなる組成物がここに開示される。
【0005】
ポリプロピレン、ポリ乳酸、反応性改質剤を含んでなる混合物を反応性押し出し混和して相溶化された重合体状配合物を製造し、相溶化された重合体状配合物を流延してフィルムにし、そしてフィルムを配向することを含んでなる配向フィルムの製造方法もここに開示される。
【0006】
ポリオレフィン、多官能性アクリレートコモノマー、および開始剤をエポキシ官能化されたポリオレフィンの生成に適する条件下で接触させることを含んでなる反応性改質剤の製造方法であって、ここでエポキシ官能化されたポリオレフィンが0.2重量%〜15重量%のグラフト化率を有する、反応性改質剤の製造方法もここに開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面の簡単な記述
この開示およびその利点のさらに完全な理解のために、次に添付図面および詳細な記述と関連させて以下の簡単な記述が参考にされ、ここで等しい整理番号は等しい部品を表す。
【図1−2】図1および図2は実施例1からの試料に関するフーリエ変換赤外分光法(FTIR)スペクトルである。
【図3】図3は実施例2からの試料に関する時間の関数としての溶融圧力のプロットである。
【図4】図4は実施例2からの試料に関する原子力顕微鏡写真を示す。
【図5】図5は実施例3からの試料に関する延伸温度の関数としての降伏強さのプロットである。
【図6】図6は135℃において延伸された実施例3からの試料に関するヘイズおよび45度光沢のプロットである。
【図7】図7は実施例3からの試料に関する延伸温度の関数としてのヘイズのプロットである。
【図8】図8は実施例3からの試料に関する延伸温度の関数としての45度光沢のプロットである。
【図9】図9は実施例2からの試料に関する原子力顕微鏡写真と相互関連する延伸温度の関数としての45度光沢のプロットである。
【図10】図10は実施例2からの試料に関する割線モジュラス、破壊時の引張り強さ、および破壊時の伸びのプロットである。
【図11】図11は実施例3からの試料に関する延伸温度の関数としてのフィルム密度のプロットである。
【図12】図12は相溶化されたおよび相溶化されていないPP/PLA配合物に関する延伸温度の関数としてのフィルム密度のプロットである。
【図13】図13は実施例11からの試料に関する延伸温度の関数としてのBOPP密度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な記述
以下で1つもしくはそれ以上の態様の説明的な実施法が示されるが、開示されたシステムおよび/または方法は現在知られているかまたは存在しているかにかかわらずいずれの技術を使用しても実行できることを最初に理解すべきである。開示はここに示されそして記述されている例示設計および実施法を包含する説明的な実施法、図面および技術に何ら限定されるべきでなく、添付された特許請求の範囲内でそれらの同等物の完全な範囲と共に改変されうる。
【0009】
生分解性重合体状組成物並びにそれらの製造および使用方法がここに開示される。ここでは生分解性とは生物の作用により特に害の無い生成物に破壊されうる物質をさす。ある態様では、生分解性重合体状組成物はポリ乳酸、ポリプロピレン、および少なくとも1種の反応性改質剤を含んでなりそして相溶化されたPP/PLA配合物(CB)と称される。別の態様では、重合体状組成物はポリ乳酸、ポリエチレン、および少なくとも1種の反応性改質剤を含んでなりそして相溶化されたポリエチレン配合物(CPEB)と称される。
【0010】
CBおよび/またはCPEBの製造方法は配合された物質の生成に適する条件下での反応性改質剤とポリオレフィン(例えば、ポリプロピレンまたはポリエチレン)およびポリ乳酸との同時配合を含んでなりうる。ここに記述されるタイプのCB類および/またはCPEB類はポリオレフィンもしくはポリ乳酸のいずれか単独またはポリオレフィンおよびポリ乳酸の相溶化されていない配合物と比較する時に望ましい物理的および/または機械的性質を示すことができる。
【0011】
ある態様では、CBはポリプロピレンを含んでなる。ポリプロピレンはホモ重合体で供給されうるが、ホモ重合体は5%までの例えばエチレンおよび1−ブテンの如きC−Cアルファ−オレフィン類を包含するがそれらに限定されない別のアルファ−オレフィンを含有しうる。少量の他のアルファ−オレフィン類の可能な存在にもかかわらず、このポリプロピレンはポリプロピレンホモ重合体として一般的に称される。
【0012】
ある態様では、ポリプロピレンホモ重合体はCB中にCBの合計重量の51重量パーセント(重量%)〜99重量%、或いは70重量%〜95重量%、或いは80重量%〜90重量%、の量で存在する。
【0013】
この開示における使用に適するポリプロピレンホモ重合体はこの開示の助けによって当該技術で既知であるいずれのタイプのポリプロピレンも包含しうる。例えば、ポリプロピレンホモ重合体はアタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、セミアイソタクチック、シンジオタクチックポリプロピレン、またはそれらの組み合わせでありうる。重合体はその懸垂基が無作為方式で重合体連鎖の両側に配置されている時には「アタクチック」である。対照的に、重合体はその懸垂基の全てが連鎖の同一側に配置されている時には「アイソタクチック」でありそしてその懸垂基が連鎖の反対側に交互にある時には「シンジオタクチック」である。セミアイソタクチック重合体では、一つおきの繰り返し単位が無作為置換基を有する。
【0014】
ある態様では、この開示における使用に適するポリプロピレンはASTM D1505に従い測定される0.895g/cc〜0.920g/cc、或いは0.900g/cc〜0.915g/cc、および或いは0.905g/cc〜0.915g/cc、の密度;示差走査熱量法により測定される150℃〜170℃、或いは155℃〜168℃、および或いは160℃〜165℃、の溶融温度;ASTM D1238条件“L”に従い測定される0.5g/10分〜30g/10分、或いは1.0g/10分〜15g/10分、および或いは1.5g/10分〜5.0g/10分、のメルトフローレート;ASTM
D638に従い測定される200,000psi〜350,000psi、或いは220,000psi〜320,000psi、および或いは250,000psi〜320,000psi、の引張り弾性率;ASTM D638に従い測定される3,000psi〜6,000psi、或いは3,500psi〜5,500psi、および或いは4,000psi〜5,500psi、の降伏時の引張り応力;ASTM D638に従い測定される5%〜30%、或いは5%〜20%、および或いは5%〜15%、の降伏時の引張り歪み;ASTM D790に従い測定される120,000psi〜330,000psi、或いは190,000psi〜310,000psi、および或いは220,000psi〜300,000psi、の曲げ弾性率;ASTM D2463に従い測定される3インチ−ポンド〜50インチ−ポンド、或いは5インチ−ポンド〜30インチ−ポンド、および或いは9インチ−ポンド〜25インチ−ポンド、のガードナー衝撃;ASTM D256Aに従い測定される0.2フィートポンド/インチ〜20フィートポンド/インチ、或いは0.5フィートポンド/インチ〜15フィートポンド/インチ、および或いは0.5フィートポンド/インチ〜10フィートポンド/インチ、の切欠きアイゾット衝撃強さ;ASTM D2240に従い測定される30〜90、或いは50〜85、および或いは60〜80、のショアD硬度;並びにASTM D648に従い測定される50℃〜125℃、或いは80℃〜115℃、および或いは90℃〜110℃、の熱歪み温度を有することができる。
【0015】
この開示における使用に適するポリプロピレンホモ重合体の例はトータル・ペトロケミカル・USA・インコーポレーテッド(Total Petrochemicals USA,Inc.)から市販されているポリプロピレンホモ重合体である3371、3271、3270、および3276を包含するが、それらに限定されない。ある態様では、ポリプロピレンホモ重合体(例えば、3371)は一般的に表1に示された物理的性質を有する。
【0016】
【表1】

【0017】
別の態様では、ポリプロピレンは高結晶性ポリプロピレンホモ重合体(HCPP)でありうる。HCPPは主としてアイソタクチックポリプロピレンを含有しうる。重合体におけるアイソタクチック性はメソペンダット(meso pentads)を用いる13
NMR分光法により測定できそしてメソペンダットの百分率(%mmmm)として表示できる。ここで使用される際には、用語「メソペンダット」は重合体連鎖の同一側に置かれた連続するメチル基をさす。ある態様では、HCPPは97%より大きい、または98%より大きい、または99%より大きい、メソペンダット百分率を有する。HCPPは幾らかの量のアタクチックまたは非晶質重合体を含んでなりうる。重合体のアタクチック部分はキシレン中に可溶性であり、そしてそのためにキシレン可溶性部分(XS%)と称される。XS%の測定では、重合体を沸騰しているキシレンの中に溶解させそして次に溶液を0℃に冷却すると、重合体のアイソタクチックまたは結晶性部分の沈殿をもたらす。XS%は、冷たいキシレン中に可溶性のまま残る元の量の部分である。従って、重合体中のXS%は製造される結晶性重合体の程度の指示値である。重合体の合計量(100%)はASTM D5492−98に従い測定されるキシレン可溶性部分およびキシレン不溶性部分の合計である。ある態様では、HCPPは1.5%より少ない、または1.0%より少ない、または0.5%より少ない、キシレン可溶性部分を有する。
【0018】
ある態様では、この開示における使用に適するHCPPはASTM D1505に従い測定される0.895g/cc〜0.920g/cc、或いは0.900g/cc〜0.915g/cc、および或いは0.905g/cc〜0.915g/cc、の密度;ASTM D1238に従い測定される0.5g/10分〜30g/10分、或いは1.0g/10分〜15g/10分、および或いは1.5g/10分〜5.0g/10分、のメルトフローレート;ASTM D882に従い測定される350,000psi〜420,000psi、或いは380,000psi〜420,000psi、および或いは400,000psi〜420,000psi、の機械方向(MD)における割線モジュラス;ASTM D882に従い測定される400,000psi〜700,000psi、或いは500,000psi〜700,000psi、および或いは600,000psi〜700,000psi、の横方向(TD)における割線モジュラス;ASTM D882に従い測定される19,000psi〜28,000psi、或いは22,000psi〜28,000psi、および或いは25,000psi〜28,000psi、のMDにおける破壊時の引張り強さ;ASTM D882に従い測定される20,000psi〜40,000psi、或いは30,000psi〜40,000psi、および或いは35,000psi〜40,000psi、のTDにおける破壊時の引張り強さ;ASTM D882に従い測定される50%〜200%、或いは100%〜180%、および或いは120%〜150%、のMDにおける破壊時の伸び;ASTM D882に従い測定される50%〜150%、或いは60%〜100%、および或いは80%〜100%、のTDにおける破壊時の伸び;示差走査熱量法により測定される150℃〜170℃、或いは155℃〜170℃、および或いは160℃〜170℃、の溶融温度;ASTM D2457に従い測定される70〜95、或いは75〜90、および或いは80〜90、の45℃における光沢;ASTM D1003に従い測定される0.5%〜2.0%、或いは0.5%〜1.5%、および或いは0.5%〜1.0%、の百分率ヘイズ;並びにASTM F1249−90に従い測定される0.15〜0.30g−ミル/100インチ/日、或いは0.15〜0.25g−ミル/100インチ/日、および或いは0.20〜0.21g−ミル/100インチ/日、の水蒸気透過率を有することができる。
【0019】
この開示における使用に適するHCPPの例はトータル・ペトロケミカル・USA・インコーポレーテッドから市販されているHCPPである3270を包含するが、それらに限定されない。HCPP(例えば、3270)は一般的に表2に示された物理的性質を有することができる。
【0020】
【表2】

【0021】
別の態様では、ポリプロピレンはポリプロピレン異相(heterophasic)共重合体(PPHC)であることができ、ここではポリプロピレンホモ重合体相または成分が共重合体相または成分と一緒になっている。PPHCはPPHCの合計重量を基準として6.5重量%より多く〜11.5重量%より少ない、或いは8.5重量%より多く〜10.5重量%より少ない、或いは9.5重量%からの、エチレンを含んでなりうる。ここで、成分の百分率は断らない限り合計組成物中のその成分の重量百分率をさす。
【0022】
PPHCの共重合体相はエチレン/プロピレンゴム(EPR)とも称するプロピレンおよびエチレンのランダム共重合体でありうる。PP衝撃共重合体は、エチレンおよびプロプレンのランダム配置を有する短いシークエンスまたはブロックにより中断されている際立ったホモ重合体相を示す。ランダム共重合体と比べて、EPRを含んでなるブロック断片は共重合体全体としてのものとは異なるある種の重合体特性(例えば、固有粘度)を有する。理論により限定されることは望まないが、PPHCのEPR部分はゴム状特性を有し、それらはホモ重合体成分のマトリックス内に組み入れられる時にPPHCに増加した衝撃強さを与えるために機能しうる。ある態様では、PPHCのEPR部分はPPHCの14重量%より多く、或いはPPHCの18重量%より多く、或いはPPHCの14重量%〜18重量%、を構成する。
【0023】
PPHCのEPR部分中に存在するエチレンの量はEPR部分の合計重量を基準として38重量%〜50重量%、或いは40重量%〜45重量%、でありうる。PPHCのEPR部分中に存在するエチレンの量はフーリエ変換赤外分光(FTIR)方法を用いて分光写真法で測定できる。具体的には、重合体状試料のFTIRスペクトルを既知のEPRエチレン含有量を有する一連の試料に関して記録する。各エチレン濃度に関して720cm−1/900cm−1における透過率の比を計算しそして次に較正曲線を作成できる。較正曲線上での線状回帰分析を次に行って式を誘導し、それを次に使用して試料物質に関するEPRエチレン含有量を決定することができる。
【0024】
PPHCのEPR部分はプロピレンホモ重合体成分のものとは異なる固有粘度を示しうる。ここでは固有粘度は溶液中の重合体が該溶液の粘度を増加させる能力をさす。粘度はここでは内部摩擦による流れの抵抗として定義される。ある態様では、PPHCのEPR部分の固有粘度は2.0dl/gより大きく、或いは2.0dl/g〜3.0dl/g、或いは2.4dl/g〜3.0dl/g、或いは2.4dl/g〜2.7dl/g、或いは2.6dl/g〜2.8dl/g、でありうる。PPHCのEPR部分の固有粘度はASTM D5225に従い決定される。
【0025】
ある態様では、PPHCは65g/10分〜130g/10分、或いは70g/10分〜120g/10分、或いは70g/10分〜100g/10分、或いは70g/10分〜90g/10分、或いは75g/10分〜85g/10分、或いは90g/10分、のメルトフローレート(MFR)を有することができる。高いMFRにより示されるような優れた流動性質は成型された重合体状成分の高生産量製造を可能にする。ある態様では、PPHCは改質なしで反応器等級樹脂であり、それは低水準PPとも称することができる。ある種の態様では、PPHCは調節されたレオロジー等級樹脂であり、そこではメルトフローレートは例えば粘度変更(visbreaking)の如き種々の技術により調節されていた。例えば、MFRは引用することにより本発明の内容となる米国特許第6,503,990号明細書に記述されているように粘度変更により増加させることができる。この公報に記述されているように、樹脂のMFRを増加させる量の過酸化物が片、粉末、またはペレット形態の重合体樹脂と混合される。ここで定義されるMFRは特定温度においてそして特定負荷下でオリフィス中を流れるであろう溶融重合体樹脂の量をさす。MFRは特定寸法のオリフィスの中を230℃の温度および2.16kgの負荷においてポリプロピレンを押し出すデッドウエイトピストンであるプラストメーター(Plastom
eter)を用いてASTM D1238に従い測定することができる。
【0026】
適するPPHC類の代表例はトータル・ペトロケミカル・USA・インコーポレーテッドから市販されている衝撃共重合体樹脂である4920Wおよび4920WZを包含するが、それらに限定されない。ある態様では、PPHC(例えば、4920W)は一般的に表3に示された物理的性質を有する。
【0027】
【表3】

【0028】
ある態様では、CPEBはポリエチレン、或いは高密度ポリエチレン、或いは低密度ポリエチレン、或いは線状低密度ポリエチレンを含んでなる。
【0029】
ある態様では、CPEBは高密度ポリエチレン(HDPE)を含んでなる。ここでは、HDPEは0.941g/ccに等しいかまたはそれより大きい、或いは0.941g/cc〜0.965g/cc、或いは0.945g/cc〜0.960g/cc、の密度を有する。HDPEはホモ重合体または共重合体、例えばエチレンと1種もしくはそれ以上のアルファ−オレフィン単量体、例えばプロピレン、ブテン、ヘキセンなど、との共重合体、でありうる。ある態様では、HDPEはホモ重合体である。この開示における使用に適するHDPEは、ASTM D1238に従い測定される0.01g/10分〜50g/10分、または0.5g/10分〜20g/10分、または1.0g/10分〜10g/10分、のメルト−マス・フローレートを一般的に有することができる。ある態様では、この開示における使用に適するHDPEは、ASTM D638に従い測定される100,000psi〜350,000psi、または150,000psi〜300,000psi、または180,000psi〜220,000psi、の引張り弾性率を一般的に有することができる。ある態様では、この開示における使用に適するHDPEは、ASTM D790に従い測定される30,000psi〜350,000psi、または100,000psi〜300,000psi、または150,000psi〜200,000psi、の曲げ弾性率を一般的に有することができる。ある態様では、この開示における使用に適するHDPEは、示差走査熱量法(DSC)により測定される120℃〜140℃、または125℃〜135℃、または130℃〜133℃、の溶融温度を一般的に有することができる。
【0030】
この開示における使用に適するHDPEの例は両者ともトータル・ペトロケミカル・U
SA・インコーポレーテッドから市販されているポリエチレン樹脂である6450 HDPEおよびメタロセン高密度ポリエチレン樹脂であるmPE ER 2283 POLYETHYLENEを包含するが、それらに限定されない。ある態様では、適するHDPEは表4(例えば、6450 HDPE)または表5(例えば、ER 2283)に示された物理的性質を一般的に有する。
【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
ある態様では、CPEBは低密度ポリエチレン(LDPE)を含んでなる。ここでは、LDPEは0.910g/cm3〜0.940g/cm3、或いは0.917g/cm3〜0.935g/cm3、および或いは0.920g/cm3〜0.930g/cm3、の密度範囲を有するとして定義される。LDPEはHDPEと比べた時の増加した枝分かれの存在によりさらに特徴づけられうる。LDPEはホモ重合体または共重合体、例えばエチレンと1種もしくはそれ以上のアルファ−オレフィン単量体、例えばプロピレン、ブテン、ヘキセンなど、との共重合体、でありうる。ある態様では、LDPEはホモ重合体である。この開示における使用に適するLDPEは、ASTM D1238により測定される0.1g/10分〜60g/10分、または0.5g/10分〜30g/10分、または1g/10分〜20g/10分、のメルト−マス・フローレートを一般的に有することができる。ある態様では、この開示における使用に適するLDPEはASTM D638により測定される10,000psi〜70,000psi、または15,000psi〜65,000psi、または20,000psi〜60,000psi、の引張り弾性率を一般的に有することができる。ある態様では、この開示における使用に適するLDPEはASTM D790により測定される9,000psi〜60,000psi、または10,000psi〜55,000psi、または15,000psi〜50,000psi、の曲げ弾性率を一般的に有することができる。ある態様では、この開示における使用に適するLDPEは、示差走査熱量法(DSC)により測定される85℃〜125℃、または90℃〜120℃、または95℃〜120℃、の溶融温度を一般的に有することができる。
【0034】
適するLDPEの代表例は1020 FN 24であり、それはトータル・ペトロケミカル・USA・インコーポレーテッドから市販されているLDPEである。LDPE(例えば、1020 FN 24)は表6に示される物理的性質を一般的に有することができる。
【0035】
【表6】

【0036】
ある態様では、CPEBは線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含んでなる。LLDPEは有意数の短い枝分かれを有する実質的に線状のポリエチレンである。LLDPEはエチレンとより長い連鎖のオレフィン類との共重合により一般に製造される。LLDPEは、長鎖枝分かれの不存在のために、低密度ポリエチレンとは構造的に異なる。ある態様では、LLDPEは共重合体、例えばエチレンと1種もしくはそれ以上のアルファ−オレフィン単量体、例えばプロピレン、ブテン、ヘキセンなど、との共重合体、である。この開示における使用に適するLLDPEは、ASTM D792により測定される0.900g/cc〜0.920g/cc、または0.905g/cc〜0.918g/cc、または0.910g/cc〜0.918g/cc、の密度を一般的に有することができる。ある態様では、この開示における使用に適するLLDPEは、ASTM D1238により測定される0.1g/10分〜50g/分、または0.5g/10分〜30g/10分、または1g/10分〜20g/10分、のメルト−マス・フローレートを一般的に有することができる。ある態様では、この開示における使用に適するLLDPEは、ASTM D638により測定される20,000psi〜250,000psi、または50,000psi〜220,000psi、または100,000psi〜200,000psi、の引張り弾性率を一般的に有することができる。ある態様では、この開示における使用に適するLLDPEは、ASTM D790により測定される5,000psi〜150,000psi、または10,000psi〜130,000psi、または50,000psi〜110,000psi、の曲げ弾性率を一般的に有することができる。ある態様では、この開示における使用に適するLLDPEは、示差走査熱量法(DSC)により測定される70℃〜140℃、または80℃〜130℃、または90℃〜120℃、の溶融温度を一般的に有することができる。
【0037】
適するLLDPEの代表例はFINATHENE LL 4010 FE 18であり、それはトータル・ペトロケミカルズ(Total Petrochemicals)から市販されているLLDPEである。LLDPE(例えば、FINATHENE LL
4010 FE 18)は表7に示された物理的性質を一般的に有することができる。
【0038】
【表7】

【0039】
この開示における使用に適するポリオレフィン類(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)はいずれかの適する方法を用いて製造することができる。例えば、ポリオレフィンはチーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒、またはそれらの組み合わせを用いて製造することができる。ポリエチレンは、例えば、酸化クロム触媒はまたはいずれかの他の適する触媒を用いて製造することができる。
【0040】
ある態様では、ポリオレフィンは典型的にはチタンおよび有機金属アルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウム(CAl、をベースとするチーグラー−ナッタ触媒を用いて製造される。チーグラー−ナッタ触媒およびそのような触媒の製造方法は米国特許第4,298,718号明細書、第4,544,717号明細書、および第4,767,735号明細書に記述されており、それらのそれぞれは引用することにより本発明の内容となる。
【0041】
別の態様では、ポリオレフィンはメタロセン触媒を用いて製造できる。メタロセン触媒はπ結合を通して遷移金属と配位されている1個もしくはそれ以上のシクロペンタジエニル(Cp)基(これは置換されていてもまたは未置換であってもよく、それぞれの置換は同一もしくは相異なる)と結合している配位化合物として一般に特徴づけることができる。メタロセン触媒の例およびそのような触媒の製造方法は米国特許第4,794,096号明細書および米国特許第4,975,403号明細書に詳細に記述されており、それらのそれぞれは引用することにより本発明の内容となる。メタロセン触媒の使用により製造されるポリオレフィン類の例は米国特許第5,158,920号明細書、第5,416,228号明細書、第5,789,502号明細書、第5,807,800号明細書、第5,968,864号明細書、第6,225,251号明細書、第6,777,366号明細書、第6,777,367号明細書、第6,579,962号明細書、第6,468,936号明細書、第6,579,962号明細書、および第6,432,860号明細書
にさらに詳細に記述されており、それらのそれぞれは引用することにより本発明の内容となる。
【0042】
ポリオレフィンはいずれかの他の方法、例えばそれぞれが引用することにより本発明の内容となる米国特許第7,056,991号明細書および第6,653,254号明細書に記述されているような、チーグラー−ナッタ触媒およびメタロセン触媒の組み合わせ、を用いて製造することもできる。
【0043】
ポリオレフィンは1種もしくはそれ以上のオレフィン単量体(例えば、エチレン、プロピレン)を単独でまたは他の単量体と共に適当な反応容器中に触媒(例えば、チーグラー−ナッタ、メタロセン、など)の存在下でそしてそれらの重合用に適する反応条件下で入れることにより製造できる。オレフィンを重合体に重合するためのいずれかの適当な装置および方法を使用できる。例えば、そのような方法は溶液相、気相、スラリー相、塊状相、高圧方法またはそれらの組み合わせを包含しうる。そのような方法は米国特許第5,525,678号明細書、米国特許第6,420,580号明細書、米国特許第6,380,328号明細書、米国特許第6,359,072号明細書、米国特許第6,346,586号明細書、米国特許第6,340,730号明細書、米国特許第6,339,134号明細書、米国特許第6,300,436号明細書、米国特許第6,274,684号明細書、米国特許第6,271,323号明細書、米国特許第6,248,845号明細書、米国特許第6,245,868号明細書、米国特許第6,245,705号明細書、米国特許第6,242,545号明細書、米国特許第6,211,105号明細書、米国特許第6,207,606号明細書、米国特許第6,180,735号明細書、および米国特許第6,147,173号明細書に詳細に記述されており、それらは引用することにより本発明の内容となる。
【0044】
ある態様では、ポリオレフィンは気相重合方法により製造される。気相重合方法の一例は連続的循環系を包含し、そこでは循環気流(或いは再循環流または流動化媒体として知られる)が反応器中で重合熱により加熱される。反応器外部の冷却系により循環気流から循環の別の部分中へ熱が除かれる。1種もしくはそれ以上の単量体を含有する循環気流を流動床を通して触媒の存在下で反応条件下で連続的に循環させることができる。循環気流は一般的に流動床から引き出されそして反応器中に逆に戻される。同時に、重合体生成物を反応器から引き出すことができそして新しい単量体を加えて、重合した単量体を置換することができる。気相方法における反応器圧力は100psig〜500psig、または200psig〜400psig、または250psig〜350psig、に変動しうる。気相方法における反応器温度は、引用することにより本発明の内容となる米国特許第4,543,399号明細書、米国特許第4,588,790号明細書、米国特許第5,028,670号明細書、米国特許第5,317,036号明細書、米国特許第5,352,749号明細書、米国特許第5,405,922号明細書、米国特許第5,436,304号明細書、米国特許第5,456,471号明細書、米国特許第5,462,999号明細書、米国特許第5,616,661号明細書、米国特許第5,627,242号明細書、米国特許第5,665,818号明細書、米国特許第5,677,375、および米国特許第5,668,228号明細書に記述されているように、30℃〜120℃、または60℃〜115℃、または70℃〜110℃、または70℃〜95℃、に変動しうる。
【0045】
ある態様では、ポリオレフィンはスラリー相重合方法により製造される。スラリー相は一般に固体粒状重合体の液体重合媒体中懸濁液の製造を包含し、それに単量体および場合により水素が触媒と共に加えられる。懸濁液(これは希釈剤を包含しうる)は間欠的にまたは連続的に反応器から除去することができ、そこでは揮発性成分を重合体から分離しそして、場合により蒸留後に、反応器に再循環させることができる。重合媒体中で使用され
る液化した希釈剤はC〜Cアルカン(例えば、ヘキサンまたはイソブテン)を包含しうる。使用される媒体は一般的に重合条件下で液体でありそして比較的不活性である。塊状相方法はスラリー方法のものと同様である。しかしながら、ある方法は塊状方法、スラリー方法または塊状スラリー方法でありうる。
【0046】
ある態様では、CBおよび/またはCPEBはポリ乳酸を含んでなる。いずれかの適当なポリ乳酸をこの開示において使用できる。例えば、ポリ乳酸はポリ−L−ラクチド(PLLA)、ポリ−D−ラクチド(PDLA)、ポリ−LD−ラクチド(PDLLA)、またはそれらの組み合わせを含んでなりうる。ポリ乳酸はいずれかの適当な方法を用いて製造できる。例えば、引用することにより本発明の内容となる米国特許第5,310,865号明細書に記述されているようにポリ乳酸は乳酸の脱水縮合により製造できる。或いは、ポリ乳酸は乳酸からの環式ラクチド(環式二量体としても知られる)の合成およびその後の環式ラクチドの開環重合により製造できる。そのような方法の例は引用することにより本発明の内容となる米国特許第2,758,987号明細書に記述されている。
【0047】
触媒をポリ乳酸の製造において使用することができる。触媒はその方法に適するいずれのタイプであってもよい。そのような触媒の例はオクチル酸錫の如き錫化合物、チタン酸テトライソプロピルの如きチタン化合物、ジルコニウムイソプロポキシドの如きジルコニウム化合物、および三酸化アンチモンの如きアンチモン化合物を包含するが、それらに限定されない。
【0048】
これまでに記述されたもののような添加剤をポリ乳酸組成物の中に加えることができる。ポリ乳酸を製造するための別の方法は米国特許第5,821,327号明細書、米国特許第5,770,682号明細書、米国特許第5,508,378号明細書、米国特許第5,470,944号明細書、および米国特許第4,797,468号明細書に記述されており、それらは引用することにより本発明の内容となる。
【0049】
ある態様では、この開示における使用に適するポリ乳酸はASTM D792に従い測定される1.238g/cc〜1.265g/cc、或いは1.24g/cc〜1.26g/cc、および或いは1.245g/cc〜1.255g/cc、の密度;ASTM D1238に従い測定される5g/10分〜35g/10分、或いは10g/10分〜30g/10分、および或いは10g/10分〜20g/10分、のメルトインデックス(210℃、2.16kg);ASTM D3418に従い測定される150℃〜180℃、或いは160℃〜175℃、および或いは160℃〜170℃、の結晶溶融温度;ASTM D3417に従い測定される45℃〜85℃、或いは50℃〜80℃、および或いは55℃〜75℃、のガラス転移温度;ASTM D638に従い測定される4,000psi〜25,000psi、或いは5,000psi〜20,000psi、および或いは5,500psi〜20,000psi、の引張り降伏強さ;ASTM D638に従い測定される1.5%〜10%、或いは2%〜8%、および或いは3%〜7%、の引張り伸び;ASTM D790に従い測定される250,000psi〜600,000psi、或いは300,000psi〜550,000psi、および或いは400,000psi〜500,000psi、の曲げ弾性率;ASTM D256に従い測定される0.1フィート−ポンド/インチ〜0.8フィート−ポンド/インチ、或いは0.2フィート−ポンド/インチ〜0.7フィート−ポンド/インチ、および或いは0.4フィート−ポンド/インチ〜0.6フィート−ポンド/インチ、の切欠きアイゾット衝撃強さを有することができる。
【0050】
この開示における使用に適するポリ乳酸の例は、ネーチャー・ウォークス(Nature Works)LLCから市販されているNatureWorks 3051Dを包含するが、それに限定されない。ある態様では、この開示における使用に適するポリ乳酸(
例えば、NatureWorks 3051D)は一般的に表8に示された物理的性質を有することができる。
【0051】
【表8】

【0052】
ある態様では、ポリ乳酸はCBおよび/またはCPEB中にCBの合計重量の1重量%〜40重量%、或いは5重量%〜30重量%、或いは10重量%〜20重量%、の量で存在する。
【0053】
ある態様では、CBおよび/またはCPEBは反応性改質剤を含んでなる。ここでは、反応性改質剤は非混和性重合体の溶融配合物(例えば、PPおよびPLAまたはPEおよびPLA)に加えられた時に配合物を安定化させるために作用する化合物をその場で生成する重合体状添加剤をさす。その場で生成した化合物は相溶化剤として作用しそして反応性改質剤はこれらの相溶化剤への前駆体である。
【0054】
ある態様では、反応性改質剤はエポキシ官能化されたポリオレフィンを含んでなる。この開示における使用に適するエポキシ官能化されたポリオレフィン類の例はエポキシ官能化されたポリプロピレン、例えばグリシジルメタクリレートグラフト化されたポリプロピレン(PP−g−GMA)、エポキシ官能化されたポリエチレン、例えばポリエチレン−コ−グリシジルメタクリレート(PE−co−GMA)、またはそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない。この開示における使用に適するエポキシ官能化されたポリエチレンの例はLOTADER AX8840を包含し、それはアルケマ(Arkema)から市販されている8%のGMAを含有するPE−co−GMAである。
【0055】
別の態様では、反応性改質剤はPP−g−GMAを含んでなる。PP−g−GMAはいずれかの適当な方法により、例えばGMAをポリプロピレン上に開始剤、例えば過酸化物、の存在下でグラフト化することにより、製造できる。この開示における使用に適する開始剤の例はアルケマから市販されている過酸化物であるLUPERSOL 101およびTRIGANOX 301を包含するが、それらに限定されない。ある態様では、開始剤は配合物の合計重量の0.03%〜2重量%、或いは0.2重量%〜0.8重量%、或いは0.3重量%〜0.5重量%、の量で使用できる。
【0056】
PP上へのGMAのグラフト化反応は溶融状態で例えば単軸押し出し器または二軸押し
出し器の如き押し出し器の内部で実施できる。以下で、そのような方法は反応性押し出しと称する。PP、GMA、および開始剤(すなわち、過酸化物)を含んでなる供給原料を押し出し反応器内に連続的に押し出し器に沿って供給することができ、或いは供給原料(すなわち、PP、GMA、および開始剤)を外部で予備混合しそして押し出し器に供給することができる。
【0057】
別の態様では、PP−g−GMAはGMAをポリプロピレン上に開始剤および多官能性アクリレートコモノマーの存在下でグラフト化することにより製造される。多官能性アクリレートコモノマーはポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、またはそれらの組み合わせを含んでなりうる。
【0058】
多官能性アクリレートコモノマーは高い引火点によりさらに特徴づけることができる。物質の引火点はそれが空気中で発火可能混合物を生成しうるASTM D93に従い測定される最低温度である。引火点が高くなればなるほど、物質の引火性が小さくなり、それは溶融反応性押し出しに寄与する利点である。ある態様では、多官能性アクリレートコモノマーは50℃〜120℃、或いは70℃〜100℃、或いは80℃〜100℃、の引火点を有することができる。この開示における使用に適する多官能性アクリレートコモノマーの例はサルトマー(Sartomer)から市販されているSR259(ポリエチレングリコールジアクリレート)、CD560(アルコキシル化されたヘキサンジオールジアクリレート)、およびSR351(TMPTA)を包含するが、それらに限定されない。
【0059】
過酸化物および多官能性アクリレートコモノマーであるポリエチレングリコールジアクリレートの存在下におけるポリプロピレン上へのGMAのグラフト化反応はスキーム1に示される。
【0060】
【化1】

【0061】
理論により限定されることは望まないが、ポリプロピレン分子の第三級炭素上の水素は過酸化物の存在下で反応性押し出し中に容易に取り出されて、対を形成しない電子を有するポリプロピレンマクロラジカルを生成できる。一般的に不安定であるポリプロピレンマ
クロラジカルは「β−開裂(scission)」と称する段階によりフリーラジカルを生成する傾向がある。β−開裂はラジカルに対してベータ−位置にある結合が開裂して二重結合および新ラジカルの形成をもたらす反応群をさす。β−開裂反応は主として内部二重結合の形成に起因するためその発生は最終的重合体のアリル含有量に関連すると信じられている。β−開裂は典型的にはグラフト化反応(すなわち、GMAの添加)より起き易いため、GMAのより低いグラフト化およびより低い平均分子量を有するポリプロピレンをもたらす。しかしながら、多官能性アクリレートコモノマーを含んでなる反応では、多官能性アクリレートコモノマーはポリプロピレンマクロラジカルを容易に捕獲してより安定な中間体(すなわち、ポリプロピレン−アクリレートラジカル)の生成をもたらすために作用しうる。比較的安定なプロピレン−アクリレートラジカルはアクリレートタイプ単量体であるGMAとより容易に反応する傾向があり、そしてその結果としてグラフト化反応を起こし易い。
【0062】
さらに、スキーム1に示されているように、複数のフリーラジカルがグラフト化されたプロピレン−アクリレート分子上に存在しうるため、GMAの捕獲および反応の開始を容易にする。アクリレートフリーラジカルに対するGMAの反応性はポリプロピレン第三級マクロラジカルに対するものより高いことがありうる。従って、多官能性アクリレートコモノマーを含んでなる反応混合物を用いて製造されるPP−g−GMAは、多官能性アクリレートコモノマーの不存在下で他の同様な組成物を用いて製造されるPP−g−GMAより高いグラフト化度を示しうる。多官能性アクリレートコモノマーを用いて製造されるPP−g−GMAは以下では高度にグラフト化されたGMA(HGGMA)と称する。
【0063】
ある態様では、反応性改質剤であるHGGMAは80重量%〜99.5重量%、或いは90重量%〜99重量%、および或いは95重量%〜99重量%、の量で存在するポリプロピレン、0.5重量%〜20重量%、或いは1.0重量%〜10重量%、および或いは1.0重量%〜5.0重量%、の量で存在するGMA、0.5重量%〜15重量%、或いは1.0重量%〜10重量%、および或いは1.0重量%〜5.0重量%、の量で存在する多官能性アクリレートコモノマー、並びに0.05重量%〜1.5重量%、或いは0.2重量%〜0.8重量%、および或いは0.3重量%〜0.5重量%、の量で存在する開始剤を含んでなる反応混合物から製造される。HGGMA中のGMA:多官能性アクリレートコモノマーの比は1:5〜10:1、或いは1:2〜5:1、および或いは1:1〜3:1、の範囲でありうる。
【0064】
ポリオレフィン上へのGMAのグラフト化の量は種々の要素、例えば使用される物質のタイプおよび処理条件、に依存して変動しうる。そのようなパラメーターは当業者によりこの開示の助けによって変動して使用者の所望するグラフト化率を有する反応性改質剤を製造しうる。
【0065】
グラフト化率はいずれかの適する方法を用いて決定できる。例えば、グラフト化率はフーリエ変換赤外分光(FTIR)分光法により決定できる。ある態様では、グラフト化率の決定方法は、各成分の量が既知であるPPおよびGMAの混合物を有する重合体状試料のFTIRスペクトルを得ることを含んでなる。1つもしくはそれ以上の波長を成分濃度の関数としてプロットすることにより較正曲線を作成できる。PP−g−GMA試料のFTIRスペクトルを次に測定しそしてグラフト化率を決定するために較正曲線と比較する。この方法は引用することにより本発明の内容となるAngew.Makromol.Chem,1995,V229,1−13頁にさらに詳細に記述されている。ある態様では、HGGMAは0.2重量%〜15重量%、或いは0.5重量%〜10重量%、或いは1.0重量%〜5.0重量%、のグラフト化率を有することができる。
【0066】
ある態様では、反応性改質剤はCBおよび/またはCPEB中に配合物の合計重量を基
準として0.5重量%〜15重量%、或いは1.0重量%〜10重量%、或いは3.0重量%〜5.0重量%、の量で存在する。
【0067】
ある態様では、PP、PE、PLA、CBおよび/またはCPEBは所望する物理的性質、例えば印刷性、増加した光沢、または減じられたブロッキング傾向、を付与するための添加剤も含有しうる。添加剤の例は安定剤、紫外線遮断剤、酸化剤、抗酸化剤、制電剤、紫外線吸収剤、難燃剤、加工油、離型剤、着色剤、顔料/染料、充填剤、および/または他の適する添加剤を包含するが、それらに限定されない。上記の添加剤は単独でまたは組み合わせて使用して重合体の種々の調合物を製造することができる。例えば、安定剤すなわち安定化剤を使用して重合体樹脂を過度の温度および/または紫外線への露呈による劣化から保護することを助けうる。これらの添加剤は所望する性質を与えるために有効な量で含有されうる。有効な添加量およびこれらの添加剤の重合体状組成物への包含方法は当業者によりこの開示の助けによって決めることができる。
【0068】
ある態様では、CPEBは全てがこれまでにここに記述されたタイプのPE、PLA、およびPE−co−GMAを含んでなる。ある態様では、CBは全てがこれまでにここに記述されたタイプのPP、PLA、およびHGGMAを含んでなる。以下では、この開示はPP、PLA、および反応性改質剤を含んでなるCBに焦点を当てるが、他の相溶化された配合物(例えば、CPEB)も意図される。
【0069】
ある態様では、それぞれがこれまでにここに記述されているタイプのPPホモ重合体、PLA、および反応性改質剤(すなわち、エポキシ官能化されたポリオレフィン)を重合体状配合物の生成に適した条件下で接触させることによりCBを製造できる。PP、PLA、および反応性改質剤をドライブレンドし、押し出し器中に供給し、そして押し出し器内部で溶融させることができる。混合は連続ミキサー、例えばCBの成分を混合/溶融するための短い互いに噛み合わない反回転二軸押し出し器および単軸押し出し器またはポンプ操作用のギアポンプよりなるミキサー、を用いて行うことができる。CBをオーブン中または真空下でさらに乾燥することができる。
【0070】
理論により限定されることは望まないが、PP−エポキシ−PLAグラフト化共重合体の生成は反応性押し出し時に、最初はPPと会合している反応性改質剤(すなわち、エポキシ官能化されたポリオレフィン)の一部がPP/PLA界面に泳動する時に、起きる。反応性改質剤はPPおよびPLA相の間の界面においてPLA分子に接触しそしてPLAと反応して界面においてPP−エポキシ−PLAグラフト化共重合体を生成できる。反応性改質剤(すなわち、エポキシ官能化されたポリオレフィン)、PP、およびPLAの反応性押し出しからその場で生成する相溶化剤(すなわち、PP−エポキシ−PLA共重合体)は複数の機能を行うことができる。溶融状態では、相溶化剤はPPおよびPLAの間の界面張力を減ずることができそしてPP中のPLA相の分散性を改良する。CBが固化すると、相溶化剤はPPおよびPLAの界面に残り、そこでそれはPPおよびPLAを化学的に結合させるために作用しうる。それ故、相溶化剤は界面結合性を改良するために作用する接着剤または結合層を形成して、相溶化されていないPP/PLA配合物と比べる時に改良された相分散性および性質を有するCBを生ずる。
【0071】
この開示のCBをいずれかの適当な方法により最終用途製品に転化することができる。ある態様では、この転化はプラスチックス成形方法、例えば吹き付け成型、押し出し、射出吹き付け成型、射出延伸吹き付け成型、熱成形など、である。ある態様では、最終製品は射出成型製品である。配合物をその中で製造できる最終用途製品の例は食品包装、事務用品、プラスチック製材(lumber)、代用製材、パティオデッキ、構造支持材、積層床組成物、重合体状フォーム基質、装飾表面(すなわち、王冠成型など)、耐候性屋外材料、販売地点の標識および表示、家庭用品および消費物品、建築絶縁材、化粧品包装、
屋外代用材料、蓋および容器(すなわち、例えば食品、果実、飴およびクッキー)、器具、道具、電子部品、自動車部品、囲い、保護ヘッドギア、再使用可能な塗装ボール、玩具(例えば、レゴブロック)、楽器、ゴルフクラブヘッド、パイプ、事業用機器および電話部品、シャワーヘッド、ドアハンドル、蛇口ハンドル、車輪カバー、自動車フロントグリルなどを包含する。この開示のCBは織られた繊維、例えば織り、編み、クローシュ編み、結び、繊維加圧、またはそれらの組み合わせによりさらに処理してテクスタイルを製造できる布帛の如き織られた繊維における使用のための繊維(例えば、多成分繊維、二成分繊維など)に転化することができる。ある種の態様では、これらの繊維は集中強化および織り繊維、例えば多繊維織り布帛中の結合繊維としての使用のための糸および布帛、の中で使用することができる。そのような多繊維織り布帛はカーペット製造において使用することができる。さらなる最終用途製品は当業者にこの開示の助けによって明らかになるであろう。ある態様では、CBはここにさらに詳細に記述されるようにBOPPフィルムの製造用に使用される。
【0072】
CBおよびそれから構成される最終用途製品は相溶化剤を欠く他の同様な組成物と比べる時に改良された機械的性質、強さ、および/または引張り性質を示すことができる。以下では、性質の比較(例えば機械的、物理的、光学的)は相溶化剤を欠く他の同様なポリプロピレン組成物、または他の同様なポリ乳酸組成物、または他の同様なポリプロピレンおよびポリ乳酸組成物を含んでなる重合体状組成物との比較で行われる。
【0073】
ある態様では、ここに記述されたタイプのCBは0.5g〜100g/10分、或いは1.5〜50g/10分、或いは5.0〜20g/10分、のメルトフローレート(MFR)を有する。ここで定義されるMFRは特定温度においてそして特定負荷下でオリフィス中を流れるであろう溶融重合体樹脂の量をさす。MFRは特定寸法のオリフィスの中を230℃の温度および2.16kgの負荷においてポリプロピレンを押し出す死荷重ピストンであるプラストメーター(Plastometer)を用いてASTM D1238に従い測定することができる。
【0074】
ある態様では、製品は射出成型製品である。そのような態様では、ここに記述されたタイプのCBから構成される射出成型製品は増加した引張り弾性率を示す。引張り弾性率は引張り中の応力対弾性の比である。従って、引張り弾性率が大きくなればなるほど、物質は剛性がより大きくなり、そして特定量の歪みを生ずるのに必要な応力がより大きくなる。ある態様では、製品はASTM D638に従い測定される200kpsi〜350kpsi、或いは220kpsi〜300kpsi、或いは250kpsi〜300kpsi、の引張り弾性率を示すことができる。
【0075】
ある態様では、ここに記述されたタイプのCBから構成される射出成型製品はポリプロピレンおよび/または相溶化されていないPP/PLA配合物に匹敵する同様な切欠きアイゾット衝撃強さにより反映される衝撃強さを示す。アイゾット衝撃は試料中で破砕を開始させそして試料が破壊するまで破砕を続けるために必要な運動エネルギーとして定義される。アイゾット衝撃強さの試験は基準試料を1回の打撃で破壊する際に振子タイプハンマーから消費されるエネルギーにより示される曲げ衝撃による破壊に対する重合体の抵抗を測定する。試料は切欠かれ、それが応力を集中させそして延性破砕よりむしろ脆さを促進する。具体的には、アイゾット試験は試験試料の破壊中に振子により損失されるエネルギーの量を測定する。振子により損失されるエネルギーは、試料破砕を開始し、破砕を試料を越えて伝搬させるために必要なエネルギーと測定システムに伴う他のエネルギー損失(例えば、振子ベアリング内の摩擦、振子アーム振動、および試料放擲損失)との合計である。ある態様では、製品はASTM D256に従い測定される0.2フィート−ポンド/インチ〜2.0フィート−ポンド/インチ、或いは0.5フィート−ポンド/インチ〜1.5フィート−ポンド/インチ、或いは0.6フィート−ポンド/インチ〜1.0フ
ィート−ポンド/インチ、の切欠きアイゾット衝撃強さを示すことができる。
【0076】
ある態様では、ここに記述されたタイプのCBから構成される射出成型製品は増加した降伏時の引張り強さを示す。降伏時の引張り強さは物質を降伏させるのに必要な単位面積当たりの力である。ある態様では、製品はASTM D882に従い測定される4,000psi〜6,000psi、或いは4,500psi〜5,800psi、或いは5,000psi〜5,500psi、の降伏時の引張り強さを示すことができる。
【0077】
ある態様では、ここに記述されたタイプのCBから構成される射出成型製品は増加した曲げ弾性率により反映される増加した硬さを示す。曲げ弾性率試験は広義において試料物質角材を曲げるために必要な力を測定する。力は試料角材の中心に適用されるが、角材は両端で支持されている。ある態様では、製品はASTM D790に従い測定される170kpsi〜300kpsi、或いは180kpsi〜250kpsi、或いは200kpsi〜250kpsi、の曲げ弾性率を示すことができる。
【0078】
ある態様では、製品はフィルム、或いは二軸配向フィルムである。一般的に、重合体組成物の配向はそれにより方向性(互いに関する分子の配向)がフィルム内の重合体構造に付与される工程をさす。そのような配向を使用してフィルムに所望する性質、例えば靭性および不透明性、を付与する。ここで使用される際には、用語「二軸配向」は重合体状組成物がそのガラス転移温度以上であるがその結晶融点より下にある温度に加熱される工程をさす。加熱直後に、物質を次に押し出してフィルムにし、そして縦方法(すなわち、機械方向)および横断または横方向(すなわち、幅方向)の両方に延伸する。
【0079】
ある態様では、ここに記述されているタイプのCBを押し出し器の中で210℃もしくはそれ以下の、または180℃〜250℃の、または200℃〜220℃の、温度に加熱する。溶融重合体は次にダイを通って出ていきそして溶融プラークを使用して押し出しフィルム、流延フィルム、二軸延伸フィルムなどを製造することができる。ある態様では、溶融プラークはダイを通って出ていきそして追加延伸なしにローラー上にまきつけられて押し出しフィルムを製造することができる。或いは、溶融プラークはダイを通って出ていきそして冷却ローラー上にまきつけられながら一軸延伸され、そこでそれが冷却されて流延フィルムを製造することができる。
【0080】
ある態様では、溶融プラークはダイを通って出ていきそして第一のローラー(例えば、冷却ローラー)上に送られて、それが重合体状組成物(すなわち、CB)を固化させてフィルムにする。次に、フィルムを縦方向および横方向に延伸することによりそのようなフィルムを配向することができる。縦配向は一般的に2つの連続的に配置されたローラーの使用により行われ、第二(または速いローラー)は所望する配向比に対応してより遅いローラーに関連する速度で操作される。或いは、縦配向は速度が高まる一連のローラーを通して、時には温度調節および他の機能用の追加の中間ローラーを用いて、行うことができる。
【0081】
縦配向後に、フィルムを冷却し、予備加熱し、そして横配向区域に送ることができる。横配向区域は、例えば、幅枠機構を包含しており、そこでフィルムは横方向に圧力が加えられる。アニーリングおよび/または追加の処理をそのような配向後に行うことができる。
【0082】
或いは、フィルムを両方向に同時に延伸することができる。ある態様では、フィルムは0.2MPa〜15MPa、或いは1.0MPa〜10MPa、或いは2.0MPa〜7MPa、の延伸力を用いて製造することができる。ある態様では、フィルムは機械方向に90℃〜170℃、或いは100℃〜165℃、および或いは125℃〜160℃、の温
度において配向され、そして横方向に100℃〜180℃、或いは115℃〜170℃、および或いは125℃〜165℃、の温度において配向される。
【0083】
理論により限定されることは望まないが、冷却時に、延伸により課される分子整列は結晶化と競う傾向があり、そして引張られた重合体分子が延伸力の方向に整列された結晶領域を有する結晶性網目構造に凝縮(condense)する。二軸フィルム製造に関するさらなる開示は、引用することにより本発明の内容となる米国特許第4,029,876号明細書および米国特許第2,178,104号明細書に見られる。
【0084】
さらに、ここに記述されているタイプのCBから製造されるフィルムは多層フィルムの1つもしくはそれ以上の層を形成しうる。多層フィルムの他の層はいずれかの適当な共押し出し可能なフィルム、例えばシンジオタクチックポリプロピレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ブチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブチレン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン類など、またはそれらの組み合わせ、でありうる。
【0085】
この開示のCBから構成されるBOPPフィルムは増加した1%割線モジュラスにおいて反映されるような改良された硬さを示すことができる。割線モジュラスは物質の歪み応答に対する応力すなわち適用される力の下で変形に耐える能力の測定値である。ある態様では、BOPPフィルムはASTM D882に従い測定される200kpsi〜400kpsi、或いは250kpsi〜380kpsi、或いは300kpsi〜350kpsi、の1%割線モジュラスを有することができる。
【0086】
CBは破壊時の引張り強さ(降伏/破壊強さとも称する)および破壊時の引張り伸び(降伏/破壊時の伸びとも称する)における増加に反映されるような改良された引張り性質を示す。引張り性質を測定するための試験は重合体配向方向に平行である機械方向(MD)および/または重合体配向方向に垂直である横方向(TD)において行うことができる。破壊時の引張り強さは物質を破壊するのに必要な単位面積当たりの力である。ある態様では、MDにおける破壊時の引張り強さはASTM D882に従い測定される20kpsi〜40kpsi、または25kpsi〜35kpsi、または30kpsi〜33kpsi、の範囲にわたる。破壊時の引張り伸びは引張り下で物質が破壊する前に起きる長さにおける百分率増加である。ある態様では、MDにおける破壊時の引張り伸びはASTM D882に従い測定される50%〜150%、または70%〜120%、または80%〜100%、の範囲にわたる。
【0087】
ここに開示されているCBから製造されるBOPPフィルムは他の同様なPPホモ重合体または他の同様なPLAホモ重合体または相溶化されていないPP/PLA配合物を用いて製造される同様なBOPPフィルムと比べて改良された収縮率、光学的性質、遮断性質および/または印刷性を示すことができる。
【0088】
ある態様では、ここに開示されているCBから製造されるBOPPフィルムは減じられた収縮率を示すことができる。最初に冷却時の流入方向における収縮の長さ(示差収縮の測定時にはMDと称する)および交差流方向で生ずる収縮の長さ(示差収縮の測定時にはTDと称する)を測定することによりフィルム収縮率を計算できる。特定温度における流入および交差流収縮における差異に100%を掛け算して収縮百分率を与える。ある態様では、ここに開示されているタイプのCBから製造されるBOPPフィルムは125℃における5%〜20%、または8%〜15%、または10%〜12%、の収縮率を有する。
【0089】
ある態様では、ここに開示されているCB配合物から製造されるBOPPフィルムは増
加した光沢および減じられたヘイズを示す。物質の光沢は光と物質の表面との相互作用、より具体的には表面が反射方向に光を反射する能力、に基づく。光沢度を入射光の角度、例えば45度入射角度(「45度光沢」としても知られる)の関数として測定することにより光沢は測定される。ある態様では、ここに記述されているタイプのCBから製造されるBOPPフィルムはASTM D2457に従い測定される50〜130、または80〜130、または100〜130、の45度光沢を有する。
【0090】
ヘイズは物質内部からまたはその表面から拡散された光により生ずる物質の曇った外観である。物質のヘイズは30%もしくはそれより低いヘイズ百分率に関してはASTM D1003−00に従い測定することができる。30%より高いヘイズ百分率を有する物質はASTM E167に従い測定することができる。ある態様では、ここに記述されているタイプのCBから製造されるBOPPフィルムは1%〜90%、または3%〜50%、または5%〜10%、のヘイズ百分率を有する。
【0091】
この開示のCBから製造されるBOPPフィルムは同様な酸素透過率(oxygen transmission rate;OTR)を示すことができる。OTRは酸素気体が温度および相対湿度の特定条件においてフィルム中を透過する定常状態速度である。フィルムの一面を酸素雰囲気に露呈することによりOTRを測定できる。酸素はフィルム中に溶解しそして物質中を透過するにつれて、窒素がフィルムの反対側に流れそして伝達された酸素分子を電量センサーに移送する。この値が伝達速度として報告される。この速度を物質の平均厚さで掛け算し、結果が透過率とみなされる。ある態様では、この開示のCBから製造されるBOPPフィルムはASTM D3895に従い測定される100°Fにおける100〜300cc/100インチ/24時間、または100°Fにおける150〜250cc/100インチ/24時間、または100°Fにおける180〜220cc/100インチ/24時間、の酸素透過率を有する。
【0092】
この開示のCBから製造されるBOPPフィルムは増加した表面張力を示すことができる。この開示のCBから製造されるBOPPフィルムの表面張力は水の小滴とBOPPフィルムとの間の角度を測定することにより決定できる。接触角度は、液体/蒸気(例えば、水滴)界面がフィルムの表面と接触する角度である。ある態様では、ここに記述されたタイプのCBから製造されるBOPPフィルムはASTM D5946に従い測定される90°〜110°、または95°〜106°、または100°〜103°、の接触角度を有する。
【0093】
別の態様では、ここに記述されたタイプのCBを使用して流延フィルムを製造する。流延フィルムはASTM D5946に従い測定される90°〜110°、或いは95°〜105°、および或いは98°〜102°、の接触角度を有することができる。理論により限定されることは望まないが、高い接触角度はより低い表面張力および増加した印刷性を示唆する。
【0094】
ある態様では、ここに記述されたタイプのCBはフィルムに成形される時に減じられた表面粗さを有することができる。表面粗さの測定は原子力顕微鏡(AFM)の使用により行うことができる。AFMトポロジー写真では、Raが平均表面粗さを記述するために最も普遍的に使用されているパラメーターでありそして評価長さにわたり測定された粗さプロフィルの絶対値の要素として定義される。Z−範囲はz−方向における平均変位をさし、最高最低の表面粗さを反映する。
【実施例】
【0095】
開示を一般的に記述してきたが、以下の実施例は開示の特定態様としてそしてその実施法および利点を示すために提示される。実施例は説明のために提示されそして明細書また
は特許請求の範囲をいずれかの方法により限定する意図がないことを理解すべきである。以下では、断らない限り、組成物または調合物中の成分の量は組成物の合計重量を基準とした成分の重量パーセントを示す百分率として表示される。
【実施例1】
【0096】
反応性改質剤(すなわち、PP−g−GMA)の製造中にポリプロピレン上にグラフト化するGMAの程度を試験した。試料をトータル・ペトロケミカルズから市販されているポリプロピレンホモ重合体であるベースポリプロピレン樹脂3276並びにダウ・ケミカルズ(Dow Chemicals)から市販されている85℃の引火点および2.7cpsの粘度を有するGMAを用いて製造した。多官能性アクリレートコモノマーは25cpsの粘度を有するSR259ポリエチレングリコール(200)ジアクリレートおよび106cpsの粘度を有するSR351トリメチロールプロパントリアクリレート(TMTPA)エステル類であり、それらの両者はサルコマー(Sartomer)から市販されている。使用された開始剤は過酸化物LUPERSOL 101(L101)であった。調合物は表9にベース樹脂の百部当たりの重量部(phr)として示される。
【0097】
3276フラッフを多官能性アクリレートコモノマー(すなわち、GMA)および開始剤と50リットルミキサー中で30ポンドの量で混合した。次に、混合されたフラッフをMICRO−27ツイン−スクリュー押し出し器の中に100rpmのスクリュー速度で真空液化可能方式でそして10ポンド/時の生産量で供給した。領域プロフィルは400°F-400°F-395°F-390°F-380°F-375°F-370°F-365°F-360°F-360°F-360°F-360°Fであった。実験工程パラメーターは表9にまとめられている。
【0098】
【表9】

【0099】
グラフト化率を次に生じたPP−g−GMA生成物のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルに基づき測定した。PP−g−GMA生成物を熱いキシレンの中に溶解させそして過剰量のアセトンの中で沈殿させた。GMAオリゴマーはアセトン中に可溶性である。沈殿したPP−g−GMAを次に真空下で乾燥し、そしてKBrと共にFTIR分析用ディスクに圧縮した。図1は種々のPP−g−GMA試料のFTIRスペクトルである。図1に言及すると、ポリプロピレンの存在は全ての試料に関して2722cm−1におけるピークの出現により検出できる。試料1は0.05phrの過酸化物を有するベース樹脂の再押し出し物である。試料2はGMA−グラフト化されたPPであり、それは通常
(すなわち、多官能性アクリレートコモノマーの不存在下)の反応性押し出し調合物を用いて製造され、1730cm−1における無視できるC=Oピーク強度を示し、そのピークはグラフト化されたGMAに指定されており、最小のGMAグラフト化率が得られたことを示す。しかしながら、多官能性アクリレートコモノマーが存在する時(試料3および4)には、強いC=Oピークが観察された。
【0100】
図2に示された試料3および4に関する1730cm−1におけるC=Oピークのより限定的な試験は信号が実際に2つの重複するピークであることを示唆しており、GMAおよび多官能性アクリレートコモノマーの両方がポリプロピレン骨格上にグラフト化されたことを示す。ポリプロピレン主鎖上にグラフト化されたGMA分子に指定された約860cm−1における弱いエポキシピークもFTIRスペクトル中で可視的である。
【0101】
グラフト化率(GMA%)を次にFTIR結果を基準として計算しそしてそれらも表9にまとめられている。純粋な単量体としてのGMAを用いる時(多官能性アクリレートコモノマーなし)には、試料2で観察されたグラフト化率は無視できた。しかしながら、3:1のGMA:多官能性アクリレートコモノマーの比では、試料3および4で示されるようにグラフト化率は増加した。この実施例で記述されたようにして製造されたPP−g−GMAをここに記述された他の成分(例えば、PPおよびPLA)と組み合わせて生分解性の重合体状組成物を製造することができる。理論により限定しようとは望まないが、高グラフト性PP−g−GMAはCBを製造するためのPP/PLA配合物の相溶化においてさらに有効になりうる。
【実施例2】
【0102】
種々の反応性改質剤を用いておよび用いずに3271およびPLA6201Dから製造されたCBの溶融圧力を押し出し中に監視した。試料5は反応性改質剤なしのPP/PLA配合物であり、試料6は反応性改質剤としてPP−g−GMA−3を含むPP/PLA配合物であり、試料7は反応性改質剤としてPP−g−GMA−6を含むPP/PLA配合物であり、そして試料8は反応性改質剤としてLOTADER AX8840を含むPP/PLA配合物であった。LOTADER AX8840はアルケマ(Arkema)から入手可能なGMAで官能化された反応性ポリエチレン樹脂である。PP−g−GMA−3は0.5%より少ないGMAを含んでなるグラフト化されたPP−g−GMAを製造するために使用される低グラフト性の官能化されたポリプロピレンであり、PP−g−GMA−6は実施例1に記述されたような3%のGMAを含んでなる高グラフト化されたPP−g−GMAを製造するために使用される高グラフト性の官能化されたポリプロピレンでありそしてLOTADER AX8840は8%のGMAを含んでなる高グラフト化されたPP−g−GMAを製造するために使用されるポリエチレン官能化された樹脂である。
【0103】
反応混合物調合物および製造されたPP/PLA配合物のMFRは表10にまとめられている。
【0104】
【表10】

【0105】
3271を10%のPLA6201D(押し出し前に75℃において6時間にわたり真空下で予め乾燥された)および5%の示された相溶化剤と配合した。配合された混合物を27mmの同時回転する2スクリュー押し出し器の中で押し出した。押し出し器のスクリュー速度は100rpmに設定されそして生産速度は15ポンド/時であった。デボル口を真空にして押し出し中に発生した揮発分を除去した。
【0106】
図3は各試料に関する溶融圧力データを押し出し時間の関数として示す。相溶化されていないPP/PLA配合物(試料5)と比較すると、PP−g−GMA−3の添加(試料6)は組成物の溶融圧力に影響しなかったが、高グラフト性PP−g−GMA−6の存在(試料7)はPP/PLA配合物の圧力をわずかに高めた。理論により限定しようとは望まないが、わずかな増加はPP−g−GMA中のエポキシド基とPLA-COOH基の反応によることであり得て、それはPP−g−GMA−co−PLA共重合体を製造しそして溶融圧力におけるわずかな増加を引き起こす。PP/PLA/LOTADER配合物(試料8)は最高の溶融圧力を示し、それは溶融押し出し中のPLAのための有効な連鎖延長剤として作用しうる試料8中の高いGMA含有量に起因しうる。
【0107】
押し出されたペレットを圧縮成型しそして引き続き原子力顕微鏡(AFM)により相分散に関して同定した。生じたAFM写真は図4に示されている。図4に言及すると、全ての試料がPLA相10がポリプロピレン相20中に分散されている非混和性配合物を形成したことが観察された。相溶化されていないPP/PLA配合物(試料5)中のPLA相10は5マイクロメートル(μm)までおよびそれより大きい範囲にわたる種々の寸法を有することが観察された。PP−g−GMA−3(試料6)中のPLA相10は相溶化されていないPP/PLA配合物(試料5)中より小さくそしてより多く分散されていた。PP/PLA/LOTADER配合物(試料8)中のPLA相10は相溶化されていないPP/PLA配合物中およびPP−g−GMA−3配合物中で観察されたものより小さくそしてより多く分散されていた。最後に、PP−g−GMA−6配合物(試料7)中で観察されたPLA相10は他の試料(試料5、6、8)で観察されたものより均一な寸法でより小さくそしてより多く分散されていた。
【実施例3】
【0108】
種々の反応改質剤を用いて製造されたCBから製造された二軸配向フィルムの降伏強さを試験しそしてPPと比較した。試料10−13と指定された4種の試料を表11に挙げられた調合物から製造した。反応性改質剤は指定されたようなエポキシ−官能化されたPP(GMA−3およびGMA−6)並びにエポキシ−官能化されたPE(LOTADER)であった。配合物を製造しそして16ミル厚さのシートに流し込み成型しそしてBrueckner Karo IVを用いて延伸した。面積延伸比は6x6であり、機械および横方向の両方において30m/分の延伸速度であった。物質を130℃〜155℃の広い温度ウィンドウで延伸できた。
【0109】
【表11】

【0110】
結果は表12にまとめられそして図5にプロットされる。
【0111】
【表12】

【0112】
図5は延伸温度の関数としての機械方向における延伸降伏強さのプロットである。図5に言及すると、試料13を除いてほとんどの試料を特定温度に関する匹敵する延伸力において延伸できた。5%のLOTADERを含んでなる試料13は、相溶化されていないPP/PLA配合物(試料10)と比べた時に15%ほど低下した延伸力を示した。それ故、LOTADERが相溶化されたPP/PLA配合物は例えば高結晶性ポリプロピレン(HCPP)の如きポリプロピレン樹脂より容易な延伸およびより広い加工ウィンドウを与えることができた。
【実施例4】
【0113】
135℃において実施例3から延伸された種々のCB試料から製造されたBOPPフィルムに関する光学的性質を試験した。ヘイズ百分率および45度光沢百分率を測定しそして結果は表13にまとめられそして図6にプロットされる。
【0114】
【表13】

【0115】
図6に言及すると、相溶化されていないPP/PLA配合物(試料10)のBOPPフィルムは曇って見え、70%のヘイズ百分率を有した。反応性改質剤は一般にフィルムのヘイズを減じた。それぞれ試料12および13であるGMA−6およびLOTADERを用いて製造された試料は相溶化されていないPP/PLA配合物と比べた時に20%ほど低下したヘイズ百分率を有するより透明なBOPPフィルムをもたらした。GMA−6およびLOTADERに関する低いヘイズ百分率結果は、両方の反応性改質剤が溶融配合中の界面張力を減じそして良好なPLA分散を与えうることを示唆した。さらに、理論により限定しようとは望まないが、これらの相溶化された系統は固体状態で界面を強化して、二軸配向中のマトリックス−粒子境界の分離を防止し、そして気孔形成を最少にし、それがフィルム透明度をさらに減ずる。
【実施例5】
【0116】
GMA−6またはLOTADERを含んでなるPP/PLA配合物から製造されたBOPPフィルムのヘイズをさらに試験した。実施例3からの試料10、12、および13を130℃〜155℃の範囲にわたる6種の延伸温度において延伸した。各フィルムに関するヘイズ百分率を次に測定しそして結果は表14にまとめられそして図7に表示され、そこではヘイズ百分率は延伸温度の関数としてプロットされる。
【0117】
【表14】

【0118】
結果は、相溶化されていないPP/PLA配合物である試料10は低い温度においては
曇っており高いヘイズ百分率を有するようでありそしてより高い延伸温度においてはより透明であり減じられたヘイズ百分率を有するようであった。ヘイズ百分率は145℃において最低値に達し、そして延伸温度が高まるにつれてわずかに増加した。反応性改質剤を含むPP/PLA配合物はより低い温度におけるものと同様に行動し、試料12および13に関するヘイズ百分率は試料10に関して観察されたものより低かった。より高い温度では、試料12および13に関するヘイズ百分率は試料10と同様であった。さらに、反応性改質剤としてGMA−6を有する試料12はより広い延伸温度にわたり反応性改質剤としてLOTADERを有する試料13より低いヘイズ百分率をもたらした。
【0119】
試料10、12、および13に関する種々の延伸温度における45度光沢も試験した。結果は表15にまとめられそして図8にプロットされる。
【0120】
【表15】

【0121】
図8は延伸温度の関数としての45度光沢のプロットである。45度光沢に関する傾向はヘイズ百分率に関する傾向と同様であることが観察された。図8に言及すると、130℃において延伸された試料10および12の両者はその高い45度光沢により示されるように高度に光沢性であった。試料13に関する45度光沢は試料10および12より低かった。全体として、延伸温度が145℃の温度まで高まるにつれて45度光沢は減少し、そして次に45度光沢は145℃〜155℃において安定した。
【0122】
BOPPフィルムに関する表面粗さも試験した。理論により限定しようとは望まないが、高ヘイズBOPPフィルムに関すると一般に表面はより粗いため表面ヘイズは一般にフィルムの合計ヘイズに有意に寄与する。図9に示されているように、2種の延伸温度である130℃および145℃におけるAFM写真が実施例3からの試料10および12の両方に関して得られた。表面粗さはAFM写真に基づいても定量化されそして結果は表16に示されている。Raは平均表面粗さを記述するために最も普遍的に使用されているパラメーターでありそして評価長さにわたり測定された粗さプロフィルの絶対値の要素として定義される。Z−範囲はz−方向における平均変位をさし、最高最低の表面粗さを反映する。
【0123】
【表16】

【0124】
図9Aに言及すると、130℃の延伸温度における相溶化されていないPP/PLA配合物を含んでなる試料10は多数の高度に広幅の非ガウスピーク220を示し、それらは実質的に重複する傾向があった。この試料は他の試料と比較した時により高い表面粗さ度を示した。さらに、試料10は130℃において最高のヘイズ百分率を有する。しかしながら、試料10は130℃において高い45度光沢も有することに注目することは興味ある。典型的には高いヘイズは低い光沢と関連しておりそして低いヘイズは高い光沢と関連しているため、高い光沢性能と一緒になったこの高いヘイズは予期されない。130℃における高いヘイズおよび高い光沢を有する試料10は独特なフィルム外観をもたらす。フィルムをくしゃくしゃにする時には、外観はアルミニウム箔と同様である。理論により限定しようとは望まないが、高い光沢は表面上のPLA相の存在と関連することもありうる。
【0125】
比較として、反応性改質剤GMA−6と相溶化されたPP/PLA配合物である試料12を130℃において延伸した時、図9B、にはより少ない数のピーク230を有する傾向があり、それは一般的に外観においてはより滑らかな表面を示すより低い数値のガウスであった。理論により限定しようとは望まないが、AFM結果は試料12中の相溶化された系統は例えば金属処理の如き最少の表面粗さを要求する処理用に使用できることを示唆している。
【0126】
AFMを145℃において延伸された試料10および12に対して行いそして顕微鏡写真はそれぞれ図9Cおよび9Dに示される。結果は、相溶化された配合物(CB)から製造されるフィルムも相溶化されていないPP/PLA配合物から製造されるフィルムより滑らかな表面を示したことを表わしている。
【実施例6】
【0127】
ポリプロピレン(PP)および相溶化されたPP/PLA配合物から製造されたBOPPフィルムの間の接触角度の比較研究を試験した。試料16、17、および18と指定された流し込み成型フィルム、BOPP用の流し込み成型シート、およびBOPPフィルムのを種の試料をポリプロピレンベース樹脂、相溶化されていないPP/PLA配合物、および相溶化されたPP/PLA/PP−g−GMA−6から製造した。表面接触媒体としてDI水を用いてASTM D5946に従い接触角度が得られた。結果は表17にまとめられている。
【0128】
【表17】

【0129】
結果は、ポリプロピレン物質に関する接触角度は約106−107°であったことを示す。配向フィルムはPLAの存在下では表面張力における改良を示さない。相溶化されたPP/PLA配合物の流し込み成型フィルムはわずかに低い接触角度を示すことが注目され、PLAの存在がポリプロピレン流し込み成型フィルムの表面張力を高めうることを示す。しかしながら、100°を越える接触角度はフィルム表面張力が依然として水よりはるかに低いことを意味する。
【0130】
これらの配合物から製造されるフィルムの印刷性に対するPP/PLA配合物中の異なるポリプロピレンホモ重合体の使用の影響を試験した。試料19〜23と指定された5種の流し込み成型フィルム試料を製造した。3271ポリプロピレンホモ重合体をベース樹脂として用いて試料19を製造した。試料20および21は、それぞれベース樹脂としてのPPH5060およびMR2002を10%のPLAと共に用いて製造された相溶化されていない配合物であった。PPH5060は6g/10分のメルトフローレートを有するホモ重合体ポリプロピレンでありそしてMR2002は15.0g/10分のメルトフローレートを有するメタロセン触媒を用いて製造されたホモ重合体ポリプロピレンである。PPH5060およびMR2002の両者はトータル・ペトロケミカルズから市販されている。試料22および23は、PP/PLA配合物中の反応性改質剤として製造されそして使用されたPP−g−GMA−3およびPP−g−GMA−6であった。これらのフィルムに関する接触角度が測定されそして表18にまとめられた。
【0131】
【表18】

【0132】
結果は、全ての試料に関する接触角度が同様であることを示す。PPH5060/PLA配合物(試料20)に関する接触角度はMR2002/PLA配合物(試料21)に関して観察されたものよりわずかに低く、後者はまたPPホモ重合体(試料19)よりわずかに低かった。PP−g−GMA−3(試料22)から製造された流し込み成型フィルムに関する接触角度はPP−g−GMA−6(試料23)のものと同じである。理論により限定しようとは望まないが、より高い接触角度はより低い表面張力を示唆し、それはフィ
ルムが良好な印刷性質を有することの指標である。これらのフィルムに関する接触角度は同様であったため、これらの印刷性質は同様であると予期される。
【実施例7】
【0133】
CBから製造されたBOPPフィルムの機械的性質を試験しそしてPPと比較した。1%割線モジュラス、破壊時の引張り強さ、および破壊時の伸びを実施例3からの試料に関して機械方向(MD)において測定しそして結果は表19にまとめられそして図10にプロットされる。
【0134】
【表19】

【0135】
PLAはPPより高いモジュラスを有するため、PP/PLA配合物から製造されたフィルム中のPLAの存在はフィルムの硬さを高めることが予期される。しかしながら、図10に言及すると、PP/PLA配合物から製造されたフィルムはポリプロピレンホモ重合体に匹敵する1%割線モジュラスを示す。PP/PLA配合物および反応性改質剤としてのGMA−6を使用して製造されたBOPPフィルムは1%割線モジュラスにおいて35%〜40%の増加を示した。理論により限定しようとは望まないが、性能におけるこの差異に対する説明は相溶化されていないPP/PLA配合物中のPPおよびPLA相の間の弱い界面接着性でありうる。この弱い界面接着性は固相延伸中のPPマトリックスからより硬いPLA領域へ適用される負荷の無効な移行をもたらす。
【0136】
相溶化は界面を効果的に強化し、そして物質の硬さに対するPLAの寄与が増加する。LOTADERはポリエチレンベース改質剤であることに注目すること。LOTADERは実施例4に示されているようにヘイズの減少において有効であるような一方で、それはこの系のモジュラスにおけるわずかな増加を生ずる。理論により限定しようとは望まないが、固相において系を強化できないことはGMA−6相溶化系におけるPPおよびPLAの間の界面の重要性をさらに助ける固相におけるPEおよびPPの間の非相溶化性から生ずると信じられる。
【実施例8】
【0137】
射出成型試料に関してポリプロピレンホモ重合体3271から製造された製品の引張り性質、曲げ弾性率およびアイゾット衝撃を相溶化されていないPP/PLA配合物、PP−g−GMA−6相溶化剤を含むPP/PLA配合物、およびLOTADER相溶化剤を含むPP/PLA配合物から製造された製品に関するこれらの値と比較した。PP/PLAおよびPP−g−GMA−6の組成物は85重量%のPP、10重量%のPLA、および5重量%のPP−g−GMA−6を含有していた。PP/PLAおよびLOTADERの組成物は85重量%のPP、10重量%のPLA、および5重量%のPP−g−GMA−6を含有していた。製品はAST試料でありそして前記の方法に従う射出成型により製造される。結果は表20にまとめられる。
【0138】
【表20】

【0139】
結果は、より高い引張り弾性率により証明されるように、GMA−6と相溶化されたPP/PLA配合物は相溶化されたLOTADERおよび相溶化されていないPP/PLA配合物より高い硬さを示したことを表わす。理論により限定しようとは望まないが、GMA−6相溶化PP/PLA配合物はGMA−6相溶化された系における強化されたPP/PLA界面による可能性があり、それはより硬いPLA相の最大利点となる。
【0140】
しかしながら、BOPPフィルムとは異なり、射出成型試料に関すると、相溶化されていないPP/PLA配合物およびPP/PLA/LOTADER配合物はPPより高い硬さを有する。理論により限定しようとは望まないが、この観察はBOPPフィルム中の二軸配向中の(例えば気孔形成の如き方法により)界面接触する界面の弱体化によるかもしれない。射出成型試料に関すると、PPおよびPLAの間の界面接着性は未変化のままであり、PP/PLA配合物中でさえ高度に硬いPLAの利点をある程度まで有しうるようにさせる。
【実施例9】
【0141】
実施例8の配合物から製造されたBOPPフィルムに関する125℃における収縮および周囲温度における遮断性質を試験しそして結果は表21にまとめられている。
【0142】
【表21】

【0143】
表21からは、PLAを含むおよび含まないBOPPフィルムに関する135℃における収縮における差異は小さい。相溶化されていないPP/PLA配合物、PP−g−GMA−6と相溶化されたPP/PLA、およびLOTADERと相溶化されたPP/PLA配合物に関する酸素遮断性質におけるPPと比べた減少が観察された。さらに、135℃において延伸された相溶化されていないPP/PLA配合物は、比較的透明であるように見えた145℃において延伸されたものと比べて、比較的不透明であるように見えた。
【実施例10】
【0144】
実施例3からの試料から製造されたBOPPフィルムにおける気孔形成を試験しそしてPPと比較した。気孔形成はフィルム密度と関係するため、実施例5から製造されたフィルムの密度を測定しそしてポリプロピレンから製造されたBOPPフィルムの密度と比較した。結果は表22および23にまとめられておりそして図11および12にプロットされる。
【0145】
【表22】

【0146】
【表23】

【0147】
図11は相溶化されていないPPホモ重合体トータル・ペトロケミカルズ3371および相溶化されたPP/PLA配合物に関する135℃および145℃の延伸温度におけるBOPPフィルム密度のプロットであり、図12は延伸温度の関数としてのフィルム密度のプロットである。PP/PLA配合物の予測された密度が計算されそして対照線300として示される。対照線は以下の式:
ΦPPρPP+ΦPLAρPLA
[式中、Φおよびρはそれぞれ配合物中の各成分の容量部分および密度である]
を用いて計算された。図11に言及すると、低いおよび高い温度の両方で延伸されたポリプロピレンフィルムは匹敵するフィルム密度を有するようである。しかしながら、PP/PLA配合物は予測されたものより低い密度を有するフィルムを生じ、フィルム中の気孔の存在を示唆している。試料が130℃〜150℃の温度範囲内で延伸された時にも同様な傾向が観察された、図12。相溶化されたPP/PLA配合物は相溶化されていないPP/PLA配合物より少ない気孔形成度を有することが見出された。理論により限定しようとは望まないが、高モジュラス分散相は二軸配向中にポリプロピレンマトリックスと共に変形または配向しないため気孔形成を促進してマトリックス−粒子境界において気孔の形成を開始するために必要である。結果は、PP/PLAと共に反応押し出される時に相溶化剤を製造する反応性改質剤の使用が強化された界面を有するPP/PLA配合物の生成をもたらすことを示す。強化された界面の存在は相溶化されたPP/PLA配合物の界面における気孔の生成を遅らせた。
【実施例11】
【0148】
より多いPLA量におけるBOPPフィルムの密度を試験した。試料14、15、および16と指定された3種のBOPP試料を製造した。試料14はトータル・ペトロケミカルズ・ポリプロピレン3371から製造され、試料15は70%のトータル・ペトロケミカルズ・ポリプロピレンおよび30%のPLA6201を配合することにより製造され、そして試料16は70%のトータル・ペトロケミカルズ・ポリプロピレンおよび30%のPLA6201、並びに3%のLotaderを配合することにより製造された。全ての試料を次にBruckner Karo IVを用いて30m/分の延伸速度および同時6x6延伸比において二軸配向のために延伸した。しかしながら、試料15および16はそのような条件では容易に延伸されなかった。条件を3m/分の延伸速度および同時4x4延伸比に変えた。延伸は約145℃〜約155℃の温度範囲において行われた。結果は表23にまとめられそして図13に示される。
【0149】
【表24】

【0150】
理論により限定しようとは望まないが、より大量のPLAの存在は、特に横方向において、延伸力を低下させ、それは多分延伸中の気孔形成によるものであった。図13は延伸温度の関数としてのBOPP密度のプロットである。図13に言及すると、相溶化されていない試料である試料15は試料14と比べた時により低いBOPP密度をそして図12に示されているようにより低いPLA量(試料10)を有することが観察された。理論により限定しようとは望まないが、より低い延伸温度、より低い延伸速度、および/またはより低い延伸比がフィルムの気孔形成にとってより好ましく、試料15で観察されたようなより低い密度をもたらす。
【0151】
さらに、試料15および16は白色でありそして不透明で粗い表面を有するように見えた。試料15および6の両者を光学顕微鏡下でさらに観察すると大きな気孔を有することが見出された。
【0152】
態様を示しそして記述してきたが、開示の精神および教示から逸脱せずにそれらの改変を当業者により行うことができる。ここに記述された態様は例示用のみであり、そして限定することを意図しない。ここに開示された発明の多くの変更および改質は可能でありそして発明の範囲内である。多くの範囲または限定が明白に述べられている場合には、そのような明白な範囲または限定は明白に述べられた範囲または限定内に入る同様な程度の相互作用する範囲または限定を包括すると理解すべきである(例えば、1〜10は2、3、4などを包括し、0.10より大きいは0.11、0.12、0.13などを包括する)。例えば、下限Rおよび上限Rを有する数範囲が表わされている場合には常に、その範囲に入るいずれの数も具体的に表わされる。特に、範囲内のそれに続く数が具体的に表わされる:R=R+k*(R−R)、ここでkは1パーセント増分での1パーセント〜100パーセントの範囲にわたる変数であり、すなわち、kは1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、...50パーセント、51パーセント、52パーセント、.....、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、または100パーセントである。さらに、以上で定義された2つのRにより定義されるいずれの数範囲も具体的に表わされる。特許請求の範囲のいずれかの要素に関する用語「場合により」の使用は、当該要素が必要であるか或いは必要でないかを意味することが意図される。両方の場合とも請求の範囲内であることが意図される。例えば含んでなる、包含する、有するなどの如きより広い用語の使用は、例えば本質的になる、実質的に含んでなるなどの如きより狭い用語を包括すると理解すべきである。
【0153】
従って、保護の範囲は以上で示された記述により限定されるのではなく、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は特許請求の範囲の全ての同等物を包含する。それぞれのおよび全ての特許請求の範囲は本発明の態様として明細書に組み入れられる。それ故、特許請求の範囲はさらなる記述でありそして本開示の追加である。参考文献、特に本出願の優先権日後の発行日付を有するかもしれないいずれかの参考文献、の論議はそれが本発明の先行技術であることの承認ではない。ここに引用される全ての特許、特許出願、および文献は、ここに示されたものを補充する例示、工程、または他の詳細事項を与える程度までは、引用することにより本発明の内容となる。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン、ポリ乳酸、および反応性改質剤の配合物を含んでなる組成物。
【請求項2】
ポリオレフィンがポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせを含んでなる請求項1の組成物。
【請求項3】
ポリエチレンが高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、またはそれらの組み合わせを含んでなる請求項2の組成物。
【請求項4】
ポリプロピレンが5重量%までの別のC−Cアルファオレフィンを含んでなるホモ重合体、高結晶性ポリプロピレンホモ重合体、ポリプロピレン異相共重合体、またはそれらの組み合わせである請求項2の組成物。
【請求項5】
ポリ乳酸がポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、ポリ−LD−ラクチド、またはそれらの組み合わせを含んでなる請求項1の組成物。
【請求項6】
反応性改質剤がエポキシ官能化されたポリオレフィンを含んでなる請求項1の組成物。
【請求項7】
エポキシ官能化されたポリオレフィンがエポキシ官能化されたポリプロピレン、エポキシ官能化されたポリエチレン、またはそれらの組み合わせを含んでなる請求項6の組成物。
【請求項8】
エポキシ官能化されたポリオレフィンがグリシジルメタクリレートグラフト化されたポリプロピレン、ポリエチレン−コ−グリシジルメタクリレート、またはそれらの組み合わせを含んでなる請求項6の組成物。
【請求項9】
配合物が組成物の合計重量を基準として
ポリオレフィンがポリエチレンであるポリオレフィンを51重量%〜99重量%の量で、ポリ乳酸を1重量%〜40重量%の量で、そして
反応性改質剤がポリエチレン−コ−グリシジルメタクリレートである反応性改質剤を0.5重量%〜15重量%の量で
含んでなる請求項1の組成物。
【請求項10】
配合物が組成物の合計重量を基準として
ポリプロピレンを含んでなるポリオレフィンを51重量%〜99重量%の量で、
ポリ乳酸を1重量%〜40重量%の量で、そして
グリシジルメタクリレートグラフト化されたポリプロピレンを含んでなる反応性改質剤を0.5重量%〜15重量%の量で
含んでなる請求項1の組成物。
【請求項11】
配合物が0.5g/10分〜100g/10分のメルトフローレートを有する請求項10の組成物。
【請求項12】
請求項10の組成物から製造される射出成型製品。
【請求項13】
200kpsi〜350kpsiの引張り弾性率を有する請求項12の製品。
【請求項14】
0.2フィートポンド/インチ〜2.0フィートポンド/インチの切欠きアイゾット衝撃強さを有する請求項12の製品。
【請求項15】
4,000psi〜6,000psiの引張り強さを有する請求項12の製品。
【請求項16】
170kpsi〜300kpsiの曲げ弾性率を有する請求項12の製品。
【請求項17】
請求項10の組成物から製造されるフィルム。
【請求項18】
フィルムが機械方向、横方向、または両方に配向される請求項17のフィルム。
【請求項19】
200kpsi〜400kpsiの1%割線モジュラスを有する請求項17のフィルム。
【請求項20】
20kpsi〜40kpsiの破壊時の引張り強さを有する請求項17のフィルム。
【請求項21】
50%〜150%の破壊時の引張り伸びを有する請求項17のフィルム。
【請求項22】
100°Fにおける100cc/100インチ/24時間〜100°Fにおける300cc/100インチ/24時間の酸素透過率を有する請求項17のフィルム。
【請求項23】
5%〜20%の収縮を示す請求項17のフィルム。
【請求項24】
50〜130の45度光沢を有する請求項17のフィルム。
【請求項25】
1%〜90%のヘイズを有する請求項17のフィルム。
【請求項26】
ポリプロピレン、ポリ乳酸、反応性改質剤を含んでなる混合物を反応性押し出し混和して相溶化された重合体状配合物を製造し、
相溶化された重合体状配合物をフィルムに流延し、そして
フィルムを配向する
ことを含んでなる配向フィルムの製造方法。
【請求項27】
ポリオレフィン、多官能性アクリレートコモノマー、および開始剤をエポキシ官能化されたポリオレフィンの製造に適する条件下で接触させることを含んでなる反応性改質剤の製造方法であって、ここでエポキシ官能化されたポリオレフィンが0.2重量%〜15重量%のグラフト化率を有する方法。
【請求項28】
多官能性アクリレートコモノマーがポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロルプロパントリアクリレート、またはそれらの組み合わせを含んでなる請求項27の方法。
【請求項29】
多官能性アクリレートコモノマーが50℃〜120℃の引火点を有する請求項27の方法。
【請求項30】
ポリオレフィンがプロピレンを含んでなりそして80重量%〜99.5重量%の量で存在し、
多官能性アクリレートコモノマーがグリシジルメタクリレートを含んでなりそして0.5重量%〜20重量%の量で存在し、そして
開始剤が過酸化物を含んでなりそして0.03重量%〜2重量%の量で存在する
請求項27の方法。
【請求項31】
グリシジルメタクリレート:多官能性アクリレートコモノマーの比が1:5〜10:1を含んでなる請求項27の方法。

【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図4】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−526950(P2011−526950A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516615(P2011−516615)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048501
【国際公開番号】WO2010/002669
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】