説明

省エネルギー水性塗料組成物

【課題】 船やボイラー及び車のエンジンなどの外面に塗布してエンジン内部の熱をコントロールすることによりガソリン等の燃料を完全燃焼させて燃費の効率や環境汚染を防止省エネルギー水性塗料組成物を提供する
【解決手段】 カチオン系エマルジョン樹脂塗料に、粒径が120μm以下の希土類元素を含む鉱物粉末または該鉱物粉体を焼成したセラミックスと、粒径が3〜40μmのシリコン金属微粉末を5〜40%重量%を混入したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラー、船舶、車両のエンジンやラジエター部分のような付属物などに塗って完全燃焼をさせることにより燃費の向上によるエネルギーの省力化や環境の汚染を防ぐことが可能な省エネルギー水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラー、エンジン、電子部品などに塗布することにより燃焼効率や機能の向上を図る塗料組成物が知られており、例えば、特開2003−202100号公報、特開2004−162051号公報などに提示されているが、これらの公報に提示されている従来の塗料組成物は、塗布した機器の表面における赤外線輻射効果(放射熱による冷却効果)の向上を図ることにより間接的に機能の効率を向上させるものであり、充分な効果が期待できない場合が多い。
【0003】
また、ボイラーなどに塗布して熱エネルギーの吸収を大きくすることにより稼働熱効率を高める塗料組成物が例えば特開2004−225027号公報に提示されているが、この種の塗料組成物はボイラーなどの内壁に塗布するものであって保守がきわめて困難であるばかりか、製造時に塗布する場合は問題ないが特に設置後においては塗布することができない。
【0004】
更に、人工鉱石の粉砕物をエンジンにおけるキヤブレター、エンジン本体、ラジエター、排気管などの表面に担持させることにより温度上昇を低減するとともに人工鉱石の波動的物性により燃料や空気の分子構造を微細化させる手段が提示されている(国際公開 (WO2002/079093))。
【0005】
ところが、前記人工鉱石を製造するには真空状態で且つ2000℃以上というきわめて高温度で繰り返して生成を行う必要があることから製造が困難で且つ高価なものとなり、また、人工鉱石の粉砕物を各種機器に担持させる手段として塗料に溶剤とともに添加する手段が提示されているが塗料の種類や配合などが具体的に示されておらず現実的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−202100号公報
【特許文献2】特開2004−162051号公報
【特許文献3】特開2004−225027号公報
【特許文献4】国際公開 (WO2002/079093)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、船やボイラー及び車のエンジンなどの外面に塗布してエンジン内部の熱をコントロールすることによりガソリン等の燃料を完全燃焼させて燃費の効率や環境汚染を防止することはいうまでもなく、製造や取り扱いも容易な省エネルギー水性塗料組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明である省エネルギー水性塗料組成物は、カチオン系エマルジョン樹脂塗料に、粒径が120μm以下の希土類元素を含む鉱物粉末または該鉱物粉体を焼成したセラミックス(好ましくは5〜40重量%の混入量)と、粒径が3〜40μmのシリコン金属微粉末(好ましくは5〜40重量%の混入量)を混入したことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明において、前記カチオン系エマルジョン樹脂塗料が、親水性官能基を有するモノマーの重合体からなる親水性分散粒子と、この分散粒子と異なる疎水性分散粒子とを混在させた混合分散系の水性エマルジョン樹脂塗料であるとよく、さらに、カチオン系エマルジョン樹脂塗料が、親水性官能基を有するモノマーの重合体からなる親水性分散粒子と、この分散粒子と異なる疎水性分散粒子とを混在させた混合分散系の水性エマルジョン樹脂塗料を配合させることもできる。
【0010】
加えて、前記カチオン系エマルジョン樹脂塗料はpHが5.9〜6.5の範囲であるとシリコン金属の超電導性を失うことがない。また、前記カチオン系エマルジョン樹脂塗料に疎水性フッ素エマルジョン樹脂を混合することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボイラー、船舶、車両のエンジンやラジエター部分のような付属物などに塗って完全燃焼をさせることにより燃費の向上によるエネルギーの省力化や環境の汚染を防ぐことができ、特に、従来の人工鉱石を用いるもののように超高温により製造するものでなく、製造の困難性もなく、エンジンなどの機器の外部に塗布することにより効果が得られるので製品への実施が容易であるばかりか、既存の機器にも簡単に実施することができ、また、実施後の保守や修繕もきわめて容易である。殊に、水性塗料としたことにより、溶剤を用いないので環境及び作業性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を詳細に説明すると、本発明は、カチオン系エマルジョン樹脂塗料(例えば昭和高分子 ポリゾールAP−1350)にシリコン金属Siとマイナスイオンを発生する麦飯石(登録商標)やモナズ石の微粉末物質を併用した混合組成物を分散してなるものであり、シリコン金属の超電導の特性を生かし、イオン発生セラミックや鉱石粉末により構成された塗料は水性カチオン系の樹脂の場合、シリコン金属が水素と結合し熱拡散率が高いために振動エネルギーが強く放出される。シリコン金属の水素化物とカチオン樹脂の間で、ResineNOH+SiHとなり金属水素化合物が生成され、水素を吸蔵すると発熱し、水素を放出すると吸熱する。
【0013】
この反応は次式のように示される。
2/n・M+H2 = 2/n・MHn+Q 〔可逆反応〕
式中、MHはシリコン水素化合物、Qは反応熱で正の値が発熱を示す。
尚、イオン鉱石粉は、常時マイナスイオンOHやO2を出す物質で、触媒の役目をしているものと考えられる。
【0014】
このように外部からの熱によって水素の出し入れを行うことができ、例えばエンジンの外部に塗布したときにエンジン内部の熱をコントロールして完全燃焼させることができる。
【0015】
このような省エネルギー塗料に於いて、カチオン系エマルジョン樹脂塗料が、親水性官能基を有するモノマーの重合体からなる親水性分散粒子と、この分散粒子と異なる疎水性分散粒子とを混在させた混合分散系の耐候性に優れ、有害な溶剤を用いない水性アクリルエマルジョン樹脂塗料を配合させることができる。
【0016】
また、カチオン系アクリルエマルジョン樹脂塗料は親水性分散粒子と疎水性分散粒子を混在させた混合分散系であり、これを混合したpHは酸性サイド即ちpH5.9〜6.5程度の範囲にするとよい。アルカリサイドのpHにすると、シリコン金属微粉末がアルカリ中では不安定となり、 Si金属+4H2Oアルカリ性 Si(OH)4+H2↑の反応で水素ガスが発生し、シリコン金属も水酸化物になりシリコン金属の超電導性を失うからである。
【0017】
さらに、親水性分散粒子と疎水性分散粒の混在した塗料は、イオン鉱石微粉末および金属シリコン微粉との親和性がよく、これらを均一に分散できる分散液となり、ディスパージョンは、経時的に安定したものとなる。
【0018】
本発明の水性カチオン系樹脂塗料は、アクリルに限らず全ての樹脂を用いても良い。即ちカチオン系アクリルウレタン、カチオン系酢酸ビニール樹脂、カチオン系アクリルシリコン、カチオン系フッ素樹脂エマルジョン、ポリアミド系やエポキシ系等、あらゆるカチオン系エマルジョンを用いることができる。また、カチオン系アクリルエマルジョンに疎水性フッ素エマルジョン樹脂をアルカリサイドにならないような範囲で混合してもよい。
【0019】
また、本発明に用いられる希土類元素を含む鉱物としては、例えば麦飯石(登録商標)があは、医王石、太陽石、アルカライト等とも称され、組織的には深成岩の一種で花崗岩に類似し、主に斜長石、カリ長石、黒雲母からなり、石英、角閃石、緑泥石があり、それに次ぎ燐石灰、磁鉄鉱、ジルコン、希土類元素などの副鉱物を有するものである。岩石として正式な名称は黒雲母モンゾナイト斑岩であり、吸着作用やマイナスイオンを発生する作用のあることが知られており、その成分を有するイオン鉱石粉としては例えば、以下に示す〔A組成物〕、〔B組成物〕、〔C組成物〕等があげられる。
【0020】
〔A組成物〕
SiO2=65〜70%、K2O<8%、Al2O=14〜16%、Na2O=2〜3%、C2O<2%、 MgO<3%、TiO2=0.2〜0.3%、MnO2=0.3% 多孔質粒子は、塗料の用途に応じて適宣その粒径を選択して設ければ良いため、その粒径を限定する必要性はない。しかしながら、120メッシュ(すなわち120μm以下)より好ましくは325メッシュのものを用いて添加効率が良いという結果を確認している。
【0021】
〔B組成物〕
LaO3 55%、M2O3 4.8%、MgO 14%、SiO2 22.7%、K2O 1%、CaO 1.4%、Fe2O3 1%、TiO2 0.1%
【0022】
〔C組成物〕
前記〔A組成物〕と〔B組成物〕の混合物を1,000℃以上の温度で焼成し、セラミック化し、微粉末としたもので次の成分の組成物である。
SiO 42%、LaO3 28%、MO3 9%、MgO 9%、K2O 5%、Na2O 2%、Ca 2%、TiO 1%、M2O2 1%、FeO3 1%
【0023】
また、本発明では、希土類元素を含む鉱物粉末だけでなく、該鉱物粉体をAlO3、SiO2の粉末とを混合し、1,000℃で焼成してセラミック化したものも用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下に本発明である省エネルギー水性塗料組成物の実施例を示す。
【0025】
(実施例1) 固形分 約36%省エネ塗料組成物
成 分 重量部
カチオン系アクリルエマルジョン
(昭和高分子社製 ポリゾールAP-1350)(33%固形分) 100.0
金属シリコン微粉末 25.0
前記実施の形態に示した〔C組成物〕のマイナスイオン鉱石粉セラミック 10.0
増粘剤 メチルセルローズ(3%水溶液) 0.5
分散剤 0.2
消泡剤(シリコン系) 0.1
防腐剤 0.2
清水 50.0
【0026】
(実施例2) 固形分 約37%省エネ塗料組成物
成 分 重量部
カチオン系アクリルエマルジョン
(昭和高分子社製 ポリゾールAP-1350)(33%固形分) 100.0
金属シリコン微粉末 10.0
前記実施の形態に示した〔A組成物〕のマイナスイオン鉱石粉セラミック 25.0
ウレタン系会合性増粘剤 0.5
分散剤 0.2
消泡剤(シリコン系) 0.1
防腐剤 0.2
清水 50.0
【0027】
(実施例3) 固形分 約41%省エネ塗料組成物
成 分 重量部
カチオン系フッ素樹脂エマルジョン(ダイキン工業製)(33%固形分) 100.0
金属シリコン微粉末分散液 (50%固形分) 20.0
前記実施の形態に示した〔A組成物〕のマイナスイオン鉱石粉セラミック 30.0
増粘剤 ヒドロキシメチルセルローズ4%水溶液 0.5
分散剤 0.2
消泡剤(シリコン系) 0.1
防腐剤 0.2
清水 50.0
【0028】
(実施例4) 固形分 約36%省エネ塗料組成物
成 分 重量部
カチオン系アクリル樹脂エマルジョン(33%固形分) 100.0
シリコン金属微粉末 10.0
前記実施の形態に示した〔C組成物〕のマイナスイオン鉱石粉微粉末 25.0
増粘剤 メチルセルローズ4%水溶液 0.5
分散剤 0.2
消泡剤(シリコン系) 0.1
防腐剤 0.2
清水 50.0
【0029】
(実施例5) 固形分 約36%省エネ塗料組成物
成 分 重量部
カチオン系アクリル樹脂エマルジョン(33%固形分) 100.0
シリコン金属微粉末 30.0
増粘剤 メチルセルローズ4%水溶液 0.5
分散剤 0.2
消泡剤(シリコン系) 0.1
防腐剤 0.2
清水 50.0
【0030】
(実施例6) 固形分 約41%省エネ塗料組成物
成 分 重量部
カチオン系アクリル樹脂エマルジョン (33%固形分) 100.0
前記実施の形態に示した〔C組成物〕のマイナスイオン鉱石粉微粉末 35.0
増粘剤 ヒドロキシメチルセルローズ4%水溶液 0.5
分散剤 0.2
消泡剤(シリコン系) 0.1
防腐剤 0.2
清水 50.0
【0031】
次に前記実施例1〜6に示した本発明である省エネ塗料組成物を船のボイラー噴射口に塗装した場合のガソリンの節約、エンジン排気ガスの煙の色、排気ガスのCO 、COの測定結果を比較例(塗装しない場合)とともに表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1によれば、本発明である省エネ塗料組成物を船のボイラー噴射口に塗装した場合に、ガソリンが7%節約され、また、排気ガスの色が白くCOガスが排出されないことが確認できた。
【0034】
また、前記実施例1〜6に示した本発明である省エネ塗料組成物を自動車のエンジン部分とラジエター部分に塗装した場合のガソリンの節約、エンジン排気ガスの煙の色、排気ガスのCO 、COの測定結果を比較例(塗装しない場合)とともに表2に示す。
尚、使用した自動車は同一メーカーの同一車種を用いた。
【0035】
【表2】

【0036】
表2から本発明が自動車のエンジン部分とラジエター部分に塗装した場合に前記表1に示した場合と同様な効果を得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン系エマルジョン樹脂塗料に、粒径が120μm以下の希土類元素を含む鉱物粉末または該鉱物粉体を焼成したセラミックスと、粒径が3〜40μmのシリコン金属微粉末を混入したことを特徴とする省エネルギー水性塗料組成物。
【請求項2】
前記カチオン系エマルジョン樹脂塗料に対する希土類元素を含む鉱物粉体または該鉱物粉体を焼成したセラッミクスの混入量が5〜40重量%、シリコン金属微粉末の混入量が5〜40重量%であることを特徴とする請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記カチオン系エマルジョン樹脂塗料が、親水性官能基を有するモノマーの重合体からなる親水性分散粒子と、この分散粒子と異なる疎水性分散粒子とを混在させた混合分散系の水性エマルジョン樹脂塗料であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記カチオン系エマルジョン樹脂塗料はpHが5.9〜6.5の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記カチオン系エマルジョン樹脂塗料に疎水性フッ素エマルジョン樹脂を混合したことを特徴とする請求項3に記載の塗料組成物。

【公開番号】特開2010−285473(P2010−285473A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138249(P2009−138249)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(596052935)大日技研工業株式会社 (4)
【出願人】(506416101)株式会社M.I.T (2)
【出願人】(500264320)有限会社コム・インスティチュート (3)
【Fターム(参考)】