説明

真偽判別可能な情報担持体

【課題】
一般的な材料及び一般的な印刷方式を用いて、誰でも簡単に目視チェックで画像変化確認することにより真偽判別可能な意匠性の高い偽造防止用情報担持体を提供する。
【解決手段】
金属光沢インキより成る第1の印刷画像の背景部(11)を網点面積率60%とし、第1の印刷画像のバラ画像部(12)を網点面積率75%〜100%の階調画像とし、第2の印刷画像である顔画像部(13)を透明ニスで網点面積率0%〜100%まで使用した多階調画像印刷することによって、観察角度を変化させることで、印刷画像がバラ画像から顔画像に変化する偽造防止情報担持体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券その他の貴重印刷物及び重要書類等の分野において、特に、観察角度によって変化する効果を付与した偽造防止用又は真偽判別用情報担持体にかかわるものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、セキュリティを要する重要書類等の印刷物には、新しい意匠性を持ち、偽造防止効果の高い偽造防止要素及び印刷技術が望まれている。このため、近年、干渉マイカや酸化フレークマイカ、顔料コートアルミニウムフレーク、光学的変化フレーク等の特殊な光反射性粉体をインキや塗料に配合することで、観察角度によって色彩変化を生じさせるカラー・フリップフロップ性に優れた印刷物や観察角度によって画像が変化するホログラム等の光学的なセキュリティ要素を貼付したものが多く存在するようになった。
【0003】
前記のような光学的な変化を示す偽造防止印刷物は、一般的に高価で特殊な装置及び材料を必要とするため、付加的な製造工程が必要になり、コストパフォーマンスが悪くなるといった問題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、以上のような問題点を解決するために、一般的で、かつ比較的安価な材料及び簡単な印刷手段を使用していながら、特定の観察角度において、人の目に認識される情報が、観察角度を変化させることによって、全く別の情報に変化する偽造防止用情報担持体に係る発明を既に出願している(特許文献1参照)。
【0005】
この先行発明による偽造防止用情報担持体は、比較的安価なアルミニウム粉末又は真鍮粉末を成分とした市販の銀色又は金色インキを用いて、一般的な印刷手段を利用することで、ホログラム的な効果を呈するセキュリティ画像を直接的にセキュリティ印刷物の基材に付与する構成を特徴とし、コストパフォーマンス及び機械的な流通強度が優れた高度な偽造防止技術を利用した偽造防止及び真偽判別印刷物となる。
【0006】
この先行発明で開示された偽造防止用情報担持体の技術的思想は、一つ目の効果として、光輝性材料を用いることによって、基材に対する面積率の異なる、すなわち、基材上に適切な面積率の疎密差を持つ二つの光輝性材料層より第1の印刷画像が形成されているとき、前記拡散光領域においては、前記適切な面積率の疎密差を持つ二つの光輝性材料層の両者から観察者の目に到達する反射光量は、互いに小さくなるため、視覚的に、面積率の疎密差で表現する第1の印刷画像を容易に認識することが可能になり、一方、前記正反射光領域では、前記二つの光輝性材料層には、面積率の疎密差が存在しているにもかかわらず、前記二つの光輝性材料層の両者から観察者の目に到達する反射光量が共に極端に大きくなるため、面積率の疎密差で表現する第1の印刷画像を視認することが難しくなるという効果である。
【0007】
更に、二つ目の効果として、光輝性材料を用いて形成された基材に対する面積率の極めて密な光輝性材料層と、光輝性材料層上に光輝性材料に比較して可視光吸収性の高い色材料を用いて形成された面積率の極めて疎な色材料層を重ねた層との二つの層による第2の印刷画像は、前記拡散光領域において、観察者の目に到達する反射光量は、互いに小さくなるため、構成成分は異なっているにもかかわらず、前記二つの層からの色調及び光反射性の差を視認することが難しくなり、結果として、同じ程度の刺激として人の目に観察されるため第2の印刷画像は視認できず、一方、前記正反射光領域では、前記光輝性材料のみの層から観察者の目に到達する反射光量は極端に大きくなるのに対して、前記可視光吸収性の高い色材料を光輝性材料層に重ねた層から観察者の目に到達する反射光量は相対的に小さくなるため、前記二つの層では、反射光量の差によるところの明暗差、すなわち色調差によって第2の印刷画像を容易に視認することが可能になるという効果がある。
【特許文献1】特許第3398758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人による先行発明は、二つの効果を重ね合わせることで、前記拡散光領域においては第1の印刷画像が視認でき、前記正反射領域においては第2の印刷画像を確認できる偽造防止情報担持体を形成できるが、二つ目の効果を発現させるためには、第1の印刷画像を構成している光輝性材料を用いて形成された基材に対する面積率の極めて密な光輝性材料層と、第2の印刷画像を構成している光輝性材料に比較して可視光吸収性の高い色材料を用いて形成された面積率の極めて疎な色材料層を、同一ピッチで精密に刷り合わせる必要がある。
裏返せば、第1の印刷画像と第2の印刷画像の刷り合わせがずれた場合には十分に機能せず、その効果が得られないため、大量生産における品質管理が難しい。
【0009】
また、前記拡散光領域においては第1の印刷画像が視認でき、前記正反射領域においては第2の印刷画像を確認できる偽造防止情報担持体を形成するためには、第1の印刷画像を構成する光輝性材料を用いて形成された基材に対する面積率の極めて密な光輝性材料層と、第2の印刷画像を構成している光輝性材料に比較して可視光吸収性の高い色材料を用いて形成された面積率の極めて疎な色材料層が、拡散光領域において同色(近似色)に見えるような適切な面積率の疎密差を見極めなければならない。可視光吸収性の高い色材料の色彩の種類と面積率を何通りにも変えて印刷し、第1の印刷画像から第2の印刷画像へ最適なスイッチ性が得られるような、可視光吸収性の高い色材料の色彩と面積率を見極めるまでに、多大な労力を必要とした。
【0010】
そして、最適なスイッチ性が得られる条件を見い出して印刷をすることができたとしても、前記拡散光領域における第1の印刷画像の視認において、可視光吸収性の高い色材料による第2の印刷画像が実際には若干見えてしまうため、第1の印刷画像から第2の印刷画像へ完全にスイッチするとは言えなかった。
【0011】
また、可視光吸収性の高い色材料による第2の印刷画像の面積率は、最適な画像のスイッチ性を得るために、15%〜30%の範囲から見極められた特定の面積率による2値画像で形成されることと、第1の印刷画像の極めて密な光輝性材料層の上に規則性を合せて印刷することから、第2の印刷画像は、2値画像で表現することができる文字や記号等の比較的単純なデザインしか表現できなかった。
【0012】
本発明は、一般的で比較的安価な材料及び印刷方式を使用しており、大量生産も容易でありながら、特定の観察角度において、人の目に認識される情報が、観察角度を変化させることによって、全く別の情報に変化するため、カラー複写機では再現不可能な、偽造防止情報担持体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基材と、基材の一表面上の印刷画像領域全面に前記基材と異なる色を有する光輝性材料で形成された第1の印刷画像と、
前記印刷画像領域内の少なくとも一部に透明性材料から形成された第2の印刷画像を備え、
前記第1の印刷画像上に前記第2の印刷画像を形成することを特徴とする偽造防止用情報担持体である。
【0014】
前記第1の印刷画像は、50%〜100%の面積率の範囲で形成することを特徴とする偽造防止用情報担持体である。
【0015】
前記第2の印刷画像が、面積率0%から面積率100%の範囲内で階調表現された多階調画像であることを特徴とする偽造防止用情報担持体である。
【0016】
前記第2の印刷画像が、画像部と背景部から構成されており、前記画像部はロゴマーク、番号、文字、記号、バーコードの認証性を有する有意味情報であって、前記画像部は、前記背景部との面積率の差が75%以上あることを特徴とする偽造防止用情報担持体である。
【0017】
本発明は、第1の印刷画像が画像部と背景部から構成されており、第1の印刷画像の画像部と、第1の印刷画像の背景部との面積率の差が15%以上50%以下であると、より明瞭な画像のスイッチ効果を得ることができる。
【0018】
本発明は、第1の印刷画像の画像部が、基材の一表面上に65%〜100%の面積率で形成し、第1の印刷画像の背景部が、前記基材の一表面上に50%〜85%の面積率で形成することができる。
【0019】
本発明は、第1の印刷画像及び/又は第2の印刷画像の一方又は両方の少なくとも一部が、網点形状の大小及び疎密によって形成することができる。
【0020】
本発明は、第1の印刷画像及び/又は第2の印刷画像の一方又は両方の少なくとも一部が、万線形状の太細及び疎密によって形成することができる。
【0021】
本発明は、第1の印刷画像及び/又は第2の印刷画像の一方又は両方の少なくとも一部が、波線形状の太細及び疎密によって形成することができる。
【0022】
本発明は、第1の印刷画像及び/又は第2の印刷画像の一方又は両方の少なくとも一部が、破線形状の太細及び疎密によって形成することができる。
【0023】
本発明は、第1の印刷画像及び第2の印刷画像が、ウェットオフセット印刷、ドライオフセット印刷、凸版印刷、水無平版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷又は凹版印刷のいずれかの印刷工程によって基材に形成される偽造防止用情報担持体である。
【0024】
本発明は、第1の印刷画像が、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末、又はリン化鉄のいずれかの光輝性材料を含む印刷インキで形成される。
【0025】
本発明の、第2の印刷画像を形成する透明性材料が、透明ニス、インキワニス、透明インキ又はメジウムインキのいずれかである。
【0026】
本発明は、第2の印刷画像に、機能性材料を付与することによって、特定の波長において第2の印刷画像を視認できるようにすることができる。
【0027】
本発明は、第2の印刷画像の一部に、機能性材料を付与することによって第3の印刷画像を形成し、特定の波長において前記第3の印刷画像を視認できるようにすることができる。
【0028】
本発明に付与する機能性材料は、蛍光材料や赤外吸収性材料である。
【0029】
本発明は、銀行券、パスポート、運転免許証、株券、債券、小切手、IDカード、クレジットカード、商品券、ギフト券、通行券、回数券、切手、査証、はがき、シール又は本であることを特徴とする偽造防止用情報担持体である。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、以上の構成であることから次の効果が生じる。
先行発明のように第1の印刷画像の規則性を利用して第2の印刷画像を印刷する必要がないため、第1の印刷画像と第2の印刷画像との間に精密な刷り合わせを必要とせず、仮に第2の印刷画像が目的とする印刷位置よりずれて印刷されても、第1の印刷画像上に第2の印刷画像が配置されてさえいれば、正反射領域と拡散反射領域において、画像のスイッチ効果が得られる。
【0031】
本発明は、第2の印刷画像が透明であることから、先行発明のように、第1の印刷画像を構成する光輝性材料を用いて形成された基材に対する面積率の極めて密な光輝性材料層と、第2の印刷画像を構成している光輝性材料に比較して可視光吸収性の高い色材料を用いて形成された面積率の極めて疎な色材料層が、拡散光領域において同色(近似色)に見えるような適切な面積率の疎密差を見極める作業を必要としないため、簡単に形成できるようになった。
【0032】
本発明は、第2の印刷画像が透明性材料になったことにより、先行発明のように拡散反射領域における第1の印刷画像の観察において、第2の印刷画像が若干見えてしまうこともなく、第1の印刷画像から第2の印刷画像へ明瞭に画像がスイッチするようになった。
【0033】
本発明の第2の印刷画像は、先行発明のように特定の面積率といった階調制限がないので、文字や単純な記号だけではなく、顔画像や写真画像などの複雑な画像も階調のある画像で表現することが可能である。
【0034】
第1の印刷画像と第2の印刷画像に規則性を必要としないとことから、第1の印刷画像は、正反射光領域で潜像化し、拡散反射光領域で視認できる条件を満たす範囲内であれば階調画像にすることも可能であるため、文字や単純な記号だけではなく、顔画像や写真画像などの複雑な画像も階調のある画像で表現することが可能である。
【0035】
また、第2の印刷画像を構成する透明材料の一部に蛍光材料や赤外吸収顔料等の材料を加えて、第3の印刷画像を形成することで、特定の波長域の光源において第3の印刷画像を観察することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな形態が実施可能である。
【0037】
まず、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の基本の実施形態及び第1の実施例である情報担持体(1)を示すものである。図2は、図1の情報担持体(1)を観察するときの照明光源(21)と視点(22)と情報担持体の三つの位置関係を示す図である。図3は、本発明の実施形態及び第1の実施例における情報担持体(1)を観察する視点角度に依存した観察図を示す。図4は、本発明の実施形態及び第1の実施例における第1の印刷画像である。図5は、正反射光領域で第1の印刷画像を観察したときの観察画像である。図6は、本発明の実施形態及び第1の実施例における第2の印刷画像である。図7は、本発明の実施形態及び第1の実施例において、拡散反射光領域で第2の印刷画像を観察したときの観察図である。図8は、本発明の実施形態及び第1の実施例において、第1の印刷画像の観察図と第2の印刷画像の観察図を重ね合せて説明する図である。
【0038】
図9は、本発明の第2の実施例における情報担持体である。図10は、第2の実施例における第1の印刷画像である。図11は、第2の実施例における第2の印刷画像である。図12は、第2の実施例における印刷画像(10)を観察する視点角度に依存した観察図である。
【0039】
図13は、本発明の第3の実施例における情報担持体(14)である。図14は、本発明の第3の実施例における印刷画像(15)を観察する視点を変更したときの観察図を示す。図15は、本発明の第3の実施例における第1の印刷画像を示す。図16は、本発明の第3の実施例におけるスペード画像部(18)のうち、透明ニスに蛍光材料が含まれている逆さハート領域(18a)を示す。図17は、本発明の第3の実施例におけるスペード画像部(18)のうち、透明ニスに蛍光材料が含まれていないスペードの下半分領域(18b)を示す。
【0040】
図18は、本発明の実施形態において、拡散光領域における第1の印刷画像の画像部(4)を基準とした第1の印刷画像及び第2の印刷画像の各領域の色差ΔEを示す。図19は、本発明の実施形態において、正反射光領域における第1の印刷画像の画像部を基準とした第1の印刷画像及び第2の印刷画像の各領域の色差ΔEを示す。
【0041】
図1の前記情報担持体(1)は、基材(2)である白色用紙上の一部分に、光輝性材料を含むインキで第1の印刷画像を印刷し、その上に透明ニスや透明インキなどで第2の印刷画像を重ねて印刷することで、前記情報担持体(1)を観察する視点の角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させることによって、印刷画像が変化する情報担持体(1)を得ることができる。
【0042】
基材は、白色用紙に限定するものではなく、上質紙、コート紙、プラスチックカードなどの印刷画像を担持できる平面を有していればよい。
印刷工程は、ウェットオフセット印刷に限定するものではなく、ドライオフセット印刷、凸版印刷、水無平版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷又は凹版印刷などの工程で印刷してもよい。
【0043】
前記印刷工程で印刷される一定面積の印刷領域において、下地を隠蔽しうる面積を%で表した印刷条件を面積率とし、特に網点で下地を隠しうる場合を網点面積率として説明する。
【0044】
情報担持体(1)は、基材(2)に図4の第1の印刷画像を印刷し、その上に図6の第2の印刷画像を印刷することで形成される。図4の第1の画像を形成するAの画像部(4)は、光輝性材料を含み練肉して作られた紫外線硬化型の金属光沢インキ「T&K TOKA UV NO3 シルバー」を用いて、ウェットオフセット印刷によって網点面積率100%での印刷が施してある。また、図4の第1の画像を形成するAの背景部(5)は、光輝性材料を含み練肉して作られた紫外線硬化型の金属光沢インキ「T&K TOKA UV NO3 シルバー」を用いて、ウェットオフセット印刷によって網点面積率70%での印刷が施してある。
【0045】
さらに、図6の第2の画像を形成するBの画像部(6)は、無色透明材料である酸化重合型の透明ニス「New Champion マット OPニス」を用いて、ウエットオフセット印刷によって網点面積率100%で印刷が施してある。また、図6の第2の画像を形成するBの背景部(7)は、無色透明材料である酸化重合型の透明ニス「New Champion マット OPニス」を用いて、ウエットオフセット印刷によって網点面積率25%で印刷が施してある。
【0046】
前記第1の印刷画像で用いられる光輝性材料が、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉、錫粉、又はリン化鉄などを成分とする銀色、青味金色又は赤味金色を示すいずれかの光輝性材料を含むインキであり、着色顔料を使用しない透明な第2の印刷領域が透明ニス、インキワニス、透明インキ又はメジウムインキのいずれかであり、これらのインキは、紫外線硬化型インキや酸化重合型インキに限定するものではなく、浸透型インキ、過熱乾燥インキ、蒸発乾燥インキなどの印刷インキであってもよい。
【0047】
図2は、前記情報担持体(1)を本発明でいうところの拡散光領域及び正反射光領域で観察したときの照明光源(21)と視点(22)と前記情報担持体(1)の三つの位置関係を図示したものである。照明光源(21)と視点(22)と前記情報担持体(1)が位置関係(a)にあるとき、拡散光領域で観察したことになり、照明光源(21)と視点(22)と前記情報担持体(1)が位置関係(b)にあるときは、正反射光領域で観察したことになる。
【0048】
本実施形態における前記情報担持体(1)は、拡散光領域で観察する場合、「A」の画像が観察されるが、前記第1の情報担持体(1)を正反射光領域で観察する場合は、「B」の画像が観察される。
【0049】
これは、図18に示した拡散光領域を意味する位置関係(a)及び正反射光を意味する位置関係(b)における金属光沢インキを網点面積率100%で印刷したAの画像部(4)を基準値としたときに、第1の印刷画像に第2の印刷画像を重ね合せたときの各領域の色差ΔEを示すグラフ(23)及びグラフ(24)から説明することができる。
【0050】
ここで、図18の拡散光を意味する位置関係(a)及び正反射光を意味する位置関係(b)において、Aの画像部を基準として、Aの背景部(5)、Aの背景部(5)にBの画像部(6)を重ねて印刷した領域、Aの背景部(5)にBの背景部(7)を重ねて印刷した領域、Aの画像部(4)にBの画像部(6)を重ねて印刷した領域、Aの画像部(4)にBの背景部(7)を重ねて印刷した領域の計5つの領域とAの画像部(4)とのそれぞれの色差ΔEは、変角分光測色システムGCMS−4型〔村上色彩技術研究所製〕を使用して測定した。ただし、拡散光を意味する位置関係(a)を装置上で再現するために、測定サンプルに対する光源の入射光を45°に固定し、受光角度を−10°から0°まで変化させて測定した。また、正反射光を意味する位置関係(b)を装置上で再現するために、測定サンプルに対する光源の入射光を45°に固定し、受光角度を40°から50°まで変化させて測定した。
【0051】
拡散光を意味する位置関係(a)においては、Aの画像部(4)とAの背景部(5)との色差ΔEを示す折れ線(25)の値が7前後、Aの画像部(4)とAの背景部(5)にBの背景部(7)が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線(26)の値が7前後、Aの画像部(4)とAの背景部(5)にBの画像部(6)が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線(27)の値が8前後であった。
【0052】
それに対し、拡散光を意味する位置関係(a)において、Aの画像部(4)とAの画像部(4)にBの画像部(6)が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線(28)の値が4前後、Aの画像部(4)とAの画像部(4)にBの背景部(7)が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線(29)の値が1前後と、相対的に小さい値となった。
【0053】
Aの画像部(4)とAの背景部(5)の色差ΔEは、Aの背景部に重ねられるBの画像部(6)とBの背景部(7)の網点面積率の粗密差が異なっているにもかかわらず、色差ΔEが7〜8前後の相対的に大きい値を示しているのに対して、Aの画像部(4)とAの画像部(4)にBの画像部(6)又はBの背景部(7)が重ねられた領域との色差ΔEは、1〜4前後と相対的に小さい値を示していることから、第2の印刷画像である「B」の画像を視認し難く、Aの画像部(4)とAの背景部(5)で形成される「A」という画像が支配的に認識される結果となる。
【0054】
次に、正反射光を意味する位置関係(b)において、Aの画像部(4)とAの画像部(4)にBの画像部(6)が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線(30)の値が38〜44程度、Aの画像部(4)とAの背景部(5)にBの画像部(6)が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線(31)の値が43〜48程度とBの画像部(6)が重ねられた領域は相対的に大きい値であった。
【0055】
それに対し、Aの画像部(4)とAの画像部(4)にBの背景部(7)が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線(32)の値が9〜10程度、Aの画像部(4)とAの背景部(5)にBの背景部(7)が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線(33)の値が12〜14程度、Aの画像部(4)とAの背景部(5)との色差ΔEを示す折れ線(34)の値が5前後と、Bの背景画像(7)が重ねられた領域や何も重ね刷りされていない領域は相対的に小さな値であった。
【0056】
正反射光を意味する位置関係(b)では、Aの画像部(4)、Aの背景部(5)にかかわらず、重ねられる画像がBの画像部(6)の場合に色差ΔEが38〜48と相対的に大きな値を示しているのに対して、Bの背景部(7)が重ね刷りされた領域や重ね刷りされていない領域は、色差ΔEが相対的に小さな値となっていることから、第1の印刷画像である「A」の画像を視認し難く、Bの画像部(6)とBの背景部(7)で形成される「B」という画像が支配的に認識される結果となる。
【0057】
すなわち、図1の情報担持体(1)は、観察する視点の角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させることによって、図3のように「A」の画像が潜像化して「B」の画像に変化する。
【0058】
本発明の情報担持体は、光輝性材料及び可視光透明性を有し光輝性材料層からの正反射光を屈折させる隠蔽層を形成することによって、観察角度を照明光源に対して拡散光領域から正反射層領域へ変化させることによって、以下に示す二つ効果が相乗することを見い出した結果から生み出されたものである。
【0059】
まず、一つ目の効果として、光輝性材料を用いることによって、基材に対する面積率の異なる、すなわち、基材上に適切な面積率の疎密差を持つ二つの光輝性材料層が形成されているとき、前記拡散光領域においては、前記適切な面積率の疎密差を持つ二つの光輝性材料層の両者から観察者の目に到達する反射光量は、互いに小さくなるため、視覚的に、面積率の疎密差によるところの色調差すなわち濃淡差を容易に認識することが可能になる。一方、前記正反射光領域では、前記二つの光輝性材料層には、面積率の疎密差が存在しているにもかかわらず、前記二つの光輝性材料層の両者から観察者の目に到達する反射光量が共に極端に大きくなるため、面積率の疎密差によるところの色調差、すなわち濃淡差を視認することが難しくなると言う効果である。
【0060】
さらに、第2の効果として、光輝性材料を用いて形成された基材上に適切な面積率の疎密差を持つ光輝性材料層と、前記光輝性材料層上に光輝性材料に比較して可視光透過性の高い透明材料を用いて形成された透明材料層を重ねた層との二つの層においては、前記拡散光領域において、観察者の目に到達する反射光量は、互いに小さくなるため、構成成分は異なっているにもかかわらず、前記可視光透過性の高い透明材料を用いて形成された透明材料層を重ねた層からの色調及び光反射性の色調差を視認することが難しくなり、結果として、同じ程度の刺激として人の目に観察されるため、光輝性材料を用いて形成された基材上に適切な面積率の疎密差しか認識できない。一方、前記正反射光領域では、前記光輝性材料のみの光輝性材料層から観察者の目に到達する反射光量は極端に大きくなるのに対して、前記可視光透過性の高い透明材料を重ねた層から観察者の目に到達する反射光量は相対的に小さくなるため、前記二つの層では、反射光量の差によるところの明暗差、すなわち色調差を容易に視認することが可能になるという効果である。ここで用いる可視光透明性の高い透明材料は、正反射光領域における視認性の発現に粗密差を用いて階調のある視認性情報とすることもできる。
【0061】
当然、前記情報担持体(1)をカラーコピー機でコピーした物は、オリジナルの前記情報担持体(1)とは全く視感性が異なり、光反射性及び観察角度による前記情報担持体(1)の変化を示すことはなく、前記情報担持体(1)は、カラーコピーによる偽造に対する防止効果にも優れていた。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって、本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
図1は、第1の実施例である情報担持体(1)である。実施例1は、発明を実施するための最良の形態と同様の構成であるため、同図面、同符号を用いて説明する。
【0063】
第1の印刷画像である図4は、拡散反射領域では図4のようにAの画像部(4)が観察され、正反射領域では図5のように「A」が消失しなければならないが、基材や光輝性材料、背景部と画像部の網点面積率の組合せによって最適な印刷条件が異なる。
【0064】
そこで、基材(2)である白色のコート紙上において、Aの背景部(5)を網点面積率50%、Aの画像部(4)の網点面積率を65%、85%、100%の3種類の印刷を試みることで、最適な印刷条件の見極めを行った。
【0065】
前記金属光沢インキによって形成されるAの画像部(4)の網点面積率を85%とした場合、「A」の画像が明瞭にスイッチする第1の印刷画像を得ることができた。
【0066】
前記金属光沢インキによって形成されるAの画像部(4)の網点面積率を65%とした場合、Aの背景部(5)とAの画像部(4)との網点面積率差が15%しかないため、第1の印刷画像自体のコントラストが低下し、拡散反射領域においての視認性が低い。よって、Aの背景部(5)とAの画像部(4)との網点面積率差が15%未満にすると、図4の拡散反射領域における第1の印刷画像の視認性が不十分となってしまう。
【0067】
前記金属光沢インキによって形成されるAの画像部(4)の網点面積率が100%とした場合、Aの背景部(5)とAの画像部(4)との網点面積率差が50%もあるため、第1の印刷画像のコントラストが高くなりすぎて、正反射領域において第1の印刷画像が潜像化されにくい。よって、Aの画像部(4)の網点面積率が100%においてAの背景部(5)を網点面積率50%未満とすると、Aの背景部(5)とAの画像部(4)との網点面積率差が50%を超えることになり、図4の正反射光領域における第1の印刷画像の潜像化が不十分となってしまう。
【0068】
基材(2)を白色のコート紙、金属光沢インキを「T&K TOKA UV NO3 シルバー」とした場合の最適な条件は、3種類あるAの画像部(4)の網点面積率それぞれにおいて、観察角度を拡散反射領域から正反射領域への変化を比較した結果から、第1の印刷画像のスイッチ性を得るためには、Aの背景部(5)とAの画像部(4)との網点面積率差が15%以上50%以下であることが条件であり、網点面積率差を25%としたときに明瞭な画像のスイッチ効果を得ることができた。
【0069】
第1の印刷画像が基材(2)を隠蔽する面積率は、網点形状の大小及び疎密を表す網点面積率に限定するものではなく、万線形状の太細及び疎密によって形成されたり、波線形状の太細及び疎密によって形成されたり、破線形状の太細及び疎密によって形成されたりする各種隠蔽層であればよい。
【0070】
また、金属光沢インキによって形成される第1の印刷画像は、Aの画像部(4)を密とし、Aの背景部(5)を疎としたが、疎密を逆にしてもよい。さらに、Aの背景画像(5)を疎とした場合、Aの画像部(4)は、粗密差が認識できる密度を有する範囲内の階調画像、例えば背景部(5)の網点面積率が50%の場合、画像部は網点面積率65%〜100%の範囲の階調で画像を表現することも可能である。
【0071】
第1の印刷画像が視認状態から潜像状態へスイッチすることが確認できたら、第1の印刷画像の上に透明ニスによる図6の第2の印刷画像であるBの画像部(6)をベタ印刷することで、情報担持体(1)が形成する。
【0072】
第2の印刷画像は、仮に基材(2)である白色のコート紙上に図6のようなBの画像部(6)を透明ニスでベタ印刷した場合においても、正反射光領域では図6のようにBの画像部(6)が観察され、拡散反射光領域では図7のように「B」が消失するように、第1の印刷画像上へ印刷する。
【0073】
第1の印刷画像と第2の印刷画像が視認・消失する効果を個別に表すと図8のようになる。第2の印刷画像は、Bの画像部(6)を印刷する基材(2)に光沢がある方が正反射光領域におけるBの画像部(6)の視認性がよいため、金属光沢インキで印刷された第1の印刷画像の領域内にBの画像部(6)を印刷することが望ましい。正反射光領域の観察は、第1の印刷画像のAの画像部(4)及びAの背景部(5)が共に反射光量が増大し、光沢感を持って潜像化しているため、Bの画像部(6)の視認性がよく、拡散反射光領域の観察では、金属光沢インキの光沢を感じづらいため、Bの画像部(6)は視認できず、第1の印刷画像であるAの文字だけが視認できる。
【0074】
第2の印刷画像である透明ニスによるBの画像部(6)を、ここではベタ印刷とし、Bの背景部(7)を印刷しない構成としたが、ベタ印刷画像に限定する必要はなく、例えば、画像部と背景部を分けない階調画像としてもよい。
【0075】
(実施例2)
図9は、第2の実施例である情報担持体(10)である。図12は、情報担持体(10)を観察する視点の角度に依存した観察図である。情報担持体(10)は、基材である白色のコート紙(2)上の一部分に、情報担持体(10)を観察する視点の角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させることによって、視認性情報が第1の印刷画像である図12(a)のバラ画像(13)から第2の印刷画像である図12(b)の顔画像(14)へ変化する印刷画像(11)を施してある。
【0076】
印刷画像(11)の構成は、図10である第1の印刷画像の上に図11である第2の印刷画像を印刷することで形成される。図10の第1の印刷画像は、光輝性材料である紫外線硬化型の金属光沢インキ「T&K TOKA UV NO3 シルバー」を用いて、ウェットオフセット印刷によって網点面積率60%〜100%まで使用した多階調画像で施してある。特に、バラ画像部(13)は、網点面積率75%〜100%までの多階調画像で表現することで、バラ画像を際立たせている。
【0077】
図7の顔画像部(14)は、バラ画像部(13)及び背景画像部(12)の上に重ね刷りする形で、酸化重合型の透明ニスである「New Champion マット OPニス」を用いて、ウエットオフセット印刷によって網点面積率0%〜100%まで使用した多階調画像で施してある。
【0078】
ここで、情報担持体(10)を観察したときの照明光源(21)、視点(22)及び情報担持体(10)の3つの位置関係は、前記図2と同様である。照明光源と視点が前記拡散光領域を意味する位置関係(a)にあるとき、情報担持体(10)には、「バラ画像」が観察され、照明光源と視点が前記正反射光領域を意味する位置関係(b)にあるときは、「顔画像」が観察される。
【0079】
当然、第1の実施例における情報担持体(10)をカラーコピー機でコピーした物は、オリジナルの情報担持体(10)とは全く視感性が異なり、光反射性及び観察角度による前記印刷画像(11)の変化を示すことはなく、第1の実施例における情報担持体(10)は、カラーコピーによる偽造に対する防止効果にも優れていた。
【0080】
(実施例3)
図13は、第3の実施例である情報担持体(15)である。図14は、情報担持体(15)を観察する視点を変更したときの観察図である。情報担持体(15)は、基材である白色のコート紙上の一部分に、情報担持体(15)を観察する視点の角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させることによって、視認性情報が第1の印刷画像である図14(a)のハート画像から第2の印刷画像である図14(b)のスペード画像へ変化する印刷画像(16)が施してある。
【0081】
印刷画像(16)の構成は、図15である第1の印刷画像の上に図14(b)のスペード画像(19)を印刷することで形成される。図15のハート画像部(17)は、光輝性材料である紫外線硬化型の金属光沢インキ「東洋インキ FLASHDRY FD OL シルバー」を用いて、ウェットオフセット印刷によって網点面積率100%のベタ印刷が施してあり、ハート画像部(17)の周囲の背景部(18)は、同じく光反射性インキである紫外線硬化型の金属光沢インキ「東洋インキ FLASHDRY FD OL シルバー」を用いて、ウェットオフセット印刷によって網点面積率50%で施してある。
【0082】
背景部(18)を、例えば、網点以外の形状、例えば、万線状網点で形成することも可能で、例えば、万線のスクリーン線数250、万線の幅を0.15mm、ピッチ0.30mmとすることで、万線状網点の網点面積率が50%となり、網点の場合と同様に明瞭なスイッチ効果を得ることができる。
【0083】
ただし、網点面積率が同じ50%であっても、例えば、万線状網点のスクリーン線数250、線幅0.50mm、ピッチ1.00mmとした場合は、背景部(18)の画線が目視で線として感じられ、拡散反射領域においてハート画像自体が荒く視認されることから、基材やインキによっても異なるが万線状網点で背景部(18)が異なるが、線幅0.50mm以内に抑えることが望ましい。
【0084】
図14(b)のスペード画像部(19)は、ハート画像部(17)及び背景部(18)の上に重ね刷りする形で、酸化重合型の透明ニスである「New Champion マット OPニス」を用いて、ウエットオフセット印刷によって網点面積率100%のベタ印刷が施してあるが、図16に示すスペード画像部(19)のうちの上半分である逆さハート画像部(19a)には蛍光材料を含有する透明ニスとし、図17に示すスペード画像の下半分領域(19b)には蛍光材料を含まない透明ニスとした。
【0085】
ここで、情報担持体(15)を観察したときの照明光源(21)、視点(22)及び情報担持体(15)の三つの位置関係は、前記図2と同様である。照明光源と視点が前記拡散光領域を意味する位置関係図14(a)にあるとき、情報担持体(14)には、ハート画像が観察され、照明光源と視点が前記正反射光領域を意味する位置関係図14(b)にあるときは、スペード画像が観察される。
【0086】
さらに、紫外線光源下で観察した場合、スペード画像部(18)の蛍光材料が含まれている印刷領域である逆さハート領域(18a)が発光し、逆さハート画像が観察できる。
【0087】
第2の実施例における情報担持体(15)をカラーコピー機でコピーした物は、オリジナルの情報担持体(15)とは全く視感性が異なり、光反射性及び観察角度による前記印刷画像(16)の変化を示すことがないだけでなく、紫外線光源下での観察において逆さハート画像も観察できないため、第2の実施例における情報担持体(15)は、カラーコピーによる偽造に対する防止効果にも優れていた。
【0088】
発明を実施するための最良の形態、第1及び第2、第3の実施例は、共に第1の印刷画像を金属光沢インキである「T&K TOKA UV NO3 シルバー」や「東洋インキ FLASHDRY FD OL シルバー」を用いて形成されたものであるが、前記金属光沢インキに限定するものではなく、代わりに「大日本インキ化学工業株式会社製 ニューチャンピオンゴールド(赤口)」や「大日本インキ化学工業株式会社製 ニューチャンピオンゴールド(青口)」を用いても同様の効果が得られる。
【0089】
発明を実施するための最良の形態、第1及び第2、第3の実施例は、コート紙の上に光輝性材料を含む金属光沢インキで第1の印刷画像を形成し、光沢度の低い透明ニスで第2の印刷画像を形成している。第1の印刷画像を形成する金属光沢インキの皮膜と第2の印刷画像を形成する透明ニスの皮膜、二つの皮膜の光沢度を測定するためにディジタル光沢計GM−3D〔村上色彩技術研究所製〕を使用し、光源45°における白ガラスの光沢度を82.0に校正して測定した。
【0090】
金属光沢インキ(T&K TOKA製 UV No.3 シルバー)の面積率100%の光沢度は55であり、透明ニス (DIC製 New Champion マット OPニス)の面積率100%の皮膜の光沢度は5である。金属光沢インキと透明ニスによる色差ΔEは、光沢度差に起因する明度差ΔLの影響が大きいことから、大きな色差ΔEを得るために光輝性材料の皮膜と透明な皮膜の光沢度の差は少なくとも10以上あることが望ましく、それ以下では正反射領域での第2の印刷画像のコントラストが大きく低下する。光輝性材料の皮膜と透明な皮膜の光沢度差が大きければ大きいほど正反射領域での第2の印刷画像の視認性は高くなる傾向にあることから、二つの皮膜間の光沢度差が大きくなる材料を用いることが望ましい。また、実施例では、光輝性材料よりも低光沢な透明ニス(DIC製 New Champion マット OPニス)を使用したが、例えば、光輝性材料より高光沢な透明ニス(DIC製 New Champion ハイグロス OPニス)を用いても、本発明のスイッチ効果は生じる。ただし、第2の印刷画像に光輝性材料よりも高光沢なインキを用いる場合には、第2の印刷画像は完全な正反射領域において濃淡反転した画像として出現することから、あらかじめ第2の印刷画像を階調反転して光輝性材料上に形成することが望ましい。
【0091】
また、第3の実施例では、透明ニスに蛍光材料を添加しているが、透明ニスに着色顔料や赤外吸収材料等の材料を加えることでも、情報担持体の意匠性や偽造防止効果を高めることができる。例えば、透明ニスで表現する画像の一部に、これらの材料を加えた透明ニスで第3の画像を形成する場合である。ただし、これらの材料を加えたために、拡散反射光領域において視認できてしまうと、本願発明の特徴である明瞭な画像のスイッチ効果は得られなくなってしまうため、黄色や水色などの光吸収性の弱い着色顔料や色濃度の低い赤外吸収材料を用いて、拡散光領域における色差ΔEの値が5以下程度の半透明に留める必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態における情報担持体を示す。
【図2】本発明の情報担持体を観察するときの照明光源と視点と情報担持体の3つの位置関係を示す。
【図3】本発明の実施形態における印刷画像を観察する視点角度に依存した観察図を示す。
【図4】本発明の実施形態における第1の印刷画像を示す。
【図5】本発明の実施形態における第1の印刷画像を正反射領域で観察したときの観察図を示す。
【図6】本発明の実施形態における第2の印刷画像を示す。
【図7】本発明の実施形態における第2の印刷画像を拡散反射光領域で観察したときの観察図を示す。
【図8】本発明の実施形態において、第1の印刷画像の観察図と第2の印刷画像の観察図を重ね合せて説明する図を示す。
【図9】実施例2における情報担持体を示す。
【図10】実施例2における第1の印刷画像を示す。
【図11】実施例2における第2の印刷画像を示す。
【図12】実施例2における印刷画像を観察する視点角度に依存した観察図を示す。
【図13】実施例3における情報担持体を示す。
【図14】実施例3における印刷画像を観察する視点を変更したときの観察図を示す。
【図15】実施例3における第1の印刷画像を示す。
【図16】実施例3におけるスペード画像部のうち、透明ニスに蛍光材料が含まれている逆さハート領域を示す。
【図17】実施例3におけるスペード画像部のうち、透明ニスに蛍光材料が含まれていないスペードの下半分領域を示す。
【図18】本発明の実施形態において、拡散光領域における第1の印刷画像の画像部を基準とした第1の印刷画像及び第2の印刷画像の各領域の色差ΔEを示す。
【図19】本発明の実施形態において、正反射光領域における第1の印刷画像の画像部を基準とした第1の印刷画像及び第2の印刷画像の各領域の色差ΔEを示す。
【符号の説明】
【0093】
1 本発明の実施形態の情報担持体
2 基材
3 本発明の実施形態の情報担持体における印刷画像領域
4 本発明の実施形態の情報担持体における第1の印刷画像であるAの画像部
5 本発明の実施形態の情報担持体における第1の印刷画像であるAの背景部
6 本発明の実施形態の情報担持体における第2の印刷画像であるBの画像部
7 本発明の実施形態の情報担持体における第2の印刷画像であるBの背景部
8 本発明の実施形態の正反射光領域の観察における第1の印刷画像
9 本発明の実施形態の拡散反射光領域の観察における第2の印刷画像
10 実施例2の情報担持体
11 実施例2の情報担持体における印刷画像
12 実施例2の情報担持体における背景部
13 実施例2の情報担持体におけるバラ画像部
14 実施例2の情報担持体における顔画像部
15 実施例3の情報担持体
16 実施例3の情報担持体における印刷画像
17 実施例3の情報担持体における第1の印刷画像のハート画像部
18 実施例3の情報担持体における第1の印刷画像の背景画像部
19 実施例3の情報担持体におけるスペード画像部
19a 実施例3の情報担持体におけるスペード画像部のうちの逆さハート領域
19b 実施例3の情報担持体におけるスペード画像部のうちの下半分領域
21 照明光源
22 視点
23 拡散光領域での第1の印刷画像及び第2の印刷画像におけるAの画像部とその他の画像部との色差ΔE
24 正反射光領域での第1の印刷画像及び第2の印刷画像におけるAの情報画像部とその他の画像部との色差ΔE
25 拡散光領域におけるAの画像部とAの背景部との色差ΔEを示す折れ線
26 拡散光領域におけるAの画像部とAの背景部にBの背景部が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線
27 拡散光領域におけるAの画像部とAの背景部にBの画像部が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線
28 拡散光領域におけるAの画像部とAの画像部にBの画像部が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線
29 拡散光領域におけるAの画像部とAの画像部にBの背景部が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線
30 正反射光領域におけるAの画像部とAの画像部にBの画像部が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線
31 正反射光領域におけるAの画像部とAの背景部にBの画像部が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線
32 正反射光領域におけるAの画像部とAの画像部にBの背景部が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線
33 正反射光領域におけるAの画像部とAの背景部にBの背景部が重ねられた領域との色差ΔEを示す折れ線
34 正反射光領域におけるAの画像部とAの背景部との色差ΔEを示す折れ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一表面上の印刷画像領域全面に前記基材と異なる色を有する光輝性材料で形成された第1の印刷画像と、
前記印刷画像領域内の少なくとも一部に透明性材料から形成された第2の印刷画像を備え、
前記第1の印刷画像上に前記第2の印刷画像を形成することを特徴とする偽造防止用情報担持体。
【請求項2】
前記第1の印刷画像は、50%〜100%の面積率の範囲で形成することを特徴とする請求項1記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項3】
前記第2の印刷画像が、面積率0%から面積率100%の範囲内で階調表現された多階調画像であることを特徴とする請求項1又は2記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項4】
前記第2の印刷画像が、画像部と背景部から構成されており、前記画像部はロゴマーク、番号、文字、記号、バーコードの認証性を有する有意味情報であって、前記画像部は、前記背景部との面積率の差が75%以上あることを特徴とする請求項1又は2記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項5】
前記第1の印刷画像が画像部と背景部から構成されており、前記第1の印刷画像の画像部と、前記第1の印刷画像の背景部との面積率の差が15%以上50%以下であることを特徴とする請求項1乃至4記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項6】
前記第1の印刷画像の画像部は、前記基材の一表面上に65%〜100%の面積率で形成し、
前記第1の印刷画像の背景部は、前記基材の一表面上に50%〜85%の面積率で形成することを特徴とする請求項1乃至5記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項7】
第1の印刷画像及び/又は第2の印刷画像の一方又は両方の少なくとも一部が、網点形状の大小及び疎密によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至6記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項8】
第1の印刷画像及び/又は第2の印刷画像の一方又は両方の少なくとも一部が、万線形状の太細及び疎密によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至6記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項9】
第1の印刷画像及び/又は第2の印刷画像の一方又は両方の少なくとも一部が、波線形状の太細及び疎密によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至6記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項10】
第1の印刷画像及び/又は第2の印刷画像の一方又は両方の少なくとも一部が、破線形状の太細及び疎密によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至6記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項11】
前記第1の印刷画像及び第2の印刷画像が、ウェットオフセット印刷、ドライオフセット印刷、凸版印刷、水無平版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷又は凹版印刷のいずれかの印刷工程によって基材に形成されていることを特徴とする請求項1乃至10記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項12】
前記第1の印刷画像は、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末、又はリン化鉄のいずれかの光輝性材料を含む印刷インキで形成することを特徴とする請求項1乃至11記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項13】
前記第2の印刷画像を形成する透明性材料は、透明ニス、インキワニス、透明インキ又はメジウムインキのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至12記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項14】
前記第2の印刷画像に、機能性材料を付与することによって、特定の波長において前記第2の印刷画像を視認できることを特徴とする請求項1乃至13記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項15】
前記第2の印刷画像の一部に、機能性材料を付与することによって第3の印刷画像を形成し、特定の波長において前記第3の印刷画像を視認できることを特徴とする請求項1乃至13記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項16】
前記機能性材料が、蛍光材料や赤外吸収性材料であることを特徴とする請求項14又は15記載の偽造防止用情報担持体。
【請求項17】
前記偽造防止用情報担持体が、銀行券、パスポート、運転免許証、株券、債券、小切手、IDカード、クレジットカード、商品券、ギフト券、通行券、回数券、切手、査証、はがき、シール又は本であることを特徴とする請求項1乃至16記載の偽造防止用情報担持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−188973(P2008−188973A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28954(P2007−28954)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】