説明

真円保持装置

【課題】セグメント保持部材をセグメントリングの全周に亘って押し当て、セグメントの真円度を高精度に保持する。
【解決手段】掘進坑内で、真円の保持面30を構成する4つの分割保持フレーム31〜34を、2本一対の伸縮コラム2、2の伸長方向の駆動とともに、各分割保持フレーム間の4つの伸縮装置39〜42を各分割保持フレームの拡張方向に駆動することにより、4つの分割保持フレーム31〜34間の繋ぎフレーム35〜38を介して真円状に緊張させて、セグメントSの全周に亘って当接させセグメントリングRの全周に亘って押し当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法において掘進坑内に組み立てられるセグメントを所定の位置に保持保形し、セグメントリングの真円を保持する真円保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シールド工法では、シールド掘進機のセグメント組立装置の後部でシールド本体又は後方作業台車に設けられた支持フレームに真円保持装置が配設され、この真円保持装置で、シールドトンネル内でセグメント組立装置により組み立てられたセグメントを所定の位置に保持、保形する手法が採られている。この場合、真円保持装置は垂直方向に伸縮する左右一対の伸縮コラムと、これら一対の伸縮コラムの上端部に設けられ、セグメントの内面に対応する円弧状の保持面を有するセグメント保持部材とを備え、左右の各伸縮コラムを伸長させて上部の円弧状のセグメント保持部材をセグメントの内面に押し当てることにより、セグメントリングの真円度を保持するようになっている。この種の真円保持装置は、特許文献1などに開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−192793公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の真円保持装置では、セグメント保持部材をセグメントリングの上部又は上下部に押し当てて、セグメントリングの真円度を保持するようにしているため、掘進坑内において比較的大きい上下方向の土圧負荷に対しては高強度で正確な真円度を保持することができるが、水平方向の負荷に対しては弱く、セグメントリングの真円度を高精度に保持することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するもので、この種の真円保持装置において、セグメント保持部材をセグメントリングの全周に亘って押し当て、セグメントの真円度を高精度に保持すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、本発明の真円保持装置は、シールド掘進機のセグメント組立装置の後部でシールド本体又は後方作業台車に設けられた支持フレームに、垂直方向に伸縮する一対の伸縮コラムと、前記各伸縮コラムの上端部及び下端部に設けられ、セグメントの内面に対応する保持面を有するセグメント保持部材とを備え、前記セグメント組立装置により組み立てられたセグメントを所定の位置に保持し、保形する真円保持装置において、前記セグメント保持部材は、真円の保持面を構成し、外周方向に向けて拡張可能な複数の分割保持フレームと、前記各分割保持フレーム間に挿通配置され、前記真円の拡張により、前記各分割保持フレーム間を繋ぎ、当該拡張された真円を緊張状態に保持する繋ぎフレームと、前記各分割保持フレーム間にリンク結合され、前記各分割保持フレームを拡張及び収縮方向に駆動する伸縮装置とを備え、前記複数の分割保持フレームを拡張して、前記セグメントの全周に亘って押し当てる、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の真円保持装置によれば、上記の構成により、掘進坑内で、真円の保持面を構成する複数の分割保持フレームを、一対の伸縮コラムの伸長方向の駆動とともに、各分割保持フレーム間の伸縮装置を各分割保持フレームの拡張方向に駆動することにより、各分割保持フレーム間の繋ぎフレームを介して真円状に緊張させて、セグメントの全周に亘って当接させ、セグメントリングの全周に亘って押し当てるので、セグメントの真円度を高精度に保持することができる、という本願発明独自の格別な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の一実施の形態について、図1を用いて説明する。図1に示すように、真円保持装置1は、垂直方向に伸縮する一対の伸縮コラム2、2と、これら伸縮コラム2、2の上端部及び下端部に取り付けられ、セグメントSの内面に対応する保持面30を有するセグメント保持部材3とを備え、シールド掘進機のセグメント組立装置の後部でシールド本体又は後方作業台車に設けられた支持フレームFに、シールド軸方向に移動自在な支持台車を介して配設される。なお、ここでは、セグメント組立装置、支持台車などは既存の装置が採用されるので、これらの装置については説明を省略し、真円保持装置1の各部の構成についてのみ詳しく説明することにする。
【0009】
一対の伸縮コラム2、2はそれぞれ伸縮装置内蔵の垂直方向伸縮コラムで、一対の垂直方向コラム21、21と、各垂直方向コラム21、21の内部に配設される上部伸縮装置22U、22U及び下部伸縮装置22D、22Dと、各垂直方向コラム21、21の上下部に上部伸縮装置22U、22U及び下部伸縮装置22D、22Dを介して取り付けられる上部可動コラム23U、23U及び下部可動コラム23D、23Dとにより構成される。この場合、各垂直方向コラム21、21は鋼材により所定の長さを有する長い筒形形状に形成され、内部に上部伸縮装置22U、22U及び下部伸縮装置22D、22Dのための固定部材24、24が設けられる。各上部伸縮装置22U、22U及び各下部伸縮装置22D、22Dはいずれも伸縮ジャッキが採用され、各上部伸縮装置22U、22Uは各垂直方向コラム21、21内の上部側に上方に向けて伸縮可能に取り付けられ、下部伸縮装置22D、22Dは各垂直方向コラム21、21内の下部側に下方に向けて伸縮可能に取り付けられる。各上部可動コラム23U、23U及び各下部可動コラム23D、23Dはいずれも鋼材により垂直方向コラム21、21内に挿通可能な所定の長さを有する短い柱状に形成され、垂直方向コラム21、21から突出される端部に三角形状の取付プレート25P,25P、25P,25Pが突設される。各上部可動コラム23U、23Uは各垂直方向コラム21、21の上部開口に挿通配置され、各上部伸縮装置22U、22Uに作動連結されて上下方向に駆動され、各下部可動コラム23D、23Dは各垂直方向コラム21、21の下部開口に挿通配置され、下部伸縮装置22D、22Dに作動連結されて上下方向に駆動される。この一対の伸縮コラム2、2は既述の支持フレームF上に設置された支持台車の左右両側に垂直方向に向けて取り付けられる。
【0010】
セグメント保持部材3はリング状の部材で、複数の分割保持フレーム31、32、33、34と、複数の繋ぎフレーム35、36、37、38と、複数の伸縮装置39、40、41、42とにより構成される。この場合、複数の分割保持フレーム31、32、33、34は同じ大きさ、同じ形状の4つの分割保持フレームからなり、それぞれ鋼材によりセグメントSの内面に当接可能に中空の円弧形状に形成されて、その外周面にセグメントの保持面30、30、30、30が形成される。これら4つの分割保持フレーム31、32、33、34は4つの保持面30、30、30、30全体が真円をなすリング状に、また外周方向に向けて拡張可能に構成される。これら4つの分割保持フレーム31、32、33、34のうち、上下の各分割保持フレーム31、32にはそれぞれその内周面の両端付近に伸縮コラム・伸縮装置取付用の三角形の取付プレート31P,31P、32P,32Pが内方に向けて突設され、左右の各分割保持フレーム33、34にはそれぞれその内周面の両端付近に伸縮装置取付用の三角形の取付プレート33P,33P、34P,34Pが内方に向けて突設される。複数の繋ぎフレーム35、36、37、38は4つの円弧状の繋ぎフレームからなり、それぞれ鋼材により各分割保持フレーム31、33間、各分割保持フレーム33、32間、各分割保持フレーム32、34間、各分割保持フレーム34、31間に挿通可能に、そしてこれら分割保持フレーム31、32、33、34の外周方向への移動により真円の保持面30、30、30、30が拡張されたときの各分割フレーム31、33間、各分割保持フレーム33、32間、各分割保持フレーム32、34間、各分割保持フレーム34、31間に連繋可能に円弧形状される。これら4つの繋ぎフレーム35、36、37、38はそれぞれ、各分割保持フレーム31、33間、各分割保持フレーム33、32間、各分割保持フレーム32、34間、各分割保持フレーム34、31間で一端が一方の分割保持フレーム31、32の各開口内周面側に固定され、他端が他方の分割保持フレーム33、34の各開口内に差し込まれて、各分割保持フレーム31、32、33、34の外周方向への移動により真円の保持面30、30、30、30が外周方向に向けて拡張されると、各分割保持フレーム31、33間、各分割保持フレーム33、32間、各分割保持フレーム32、34間、各分割保持フレーム34、31間で真円の一部をなし、当該拡張された真円を緊張した状態(つまり突っ張った)に保持する。複数の伸縮装置39、40、41、42は各分割保持フレーム31、32、33、34を拡張及び収縮方向に駆動する伸縮装置で4つの伸縮ジャッキで構成され、各伸縮装置39、40、41、42は本体の基端部が左右の各分割保持フレーム33、34の伸縮装置用の取付プレート33P,33P、34P,34Pに取付ピンP3,P3、P4,P4を介して軸支され、伸縮ロッドの先端が上下の各分割保持フレーム31、32の伸縮コラム・伸縮装置用の取付プレート31P,31P、32P,32Pに取付ピンP1,P1、P2,P2を介して軸支されて、各分割保持フレーム31、33間、各分割保持フレーム33、32間、各分割保持フレーム32、34間、各分割保持フレーム34、31間、にリンク結合される。このようにしてセグメント保持部材3は上部の分割保持フレーム31の各取付プレート31P、31Pが各伸縮コラム2、2の上部取付プレート25P、25Pに取り付け固定されるとともに、下部の分割保持フレーム32の各取付プレート32P、32Pが各伸縮コラム2、2の下部取付プレート25P、25Pに取り付け固定されて各伸縮コラム2、2の周囲に取り付けられ、支持フレームFの周囲に配置される。
【0011】
このようにして真円保持装置1が支持フレームFに組み付けられ、2本一対の伸縮コラム2、2の伸縮装置22U,22D、22U,22Dとセグメント保持部材3の4つの伸縮装置39、40、41、42で4つの分割保持フレーム31、32、33、34を拡張して、セグメントSの全周に亘って押し当てるようになっている。すなわち、掘進坑内において、シールド機のスキンプレート内でセグメント組立装置によりセグメントが組み立てられて、セグメントリングが形成されると、2本一対の伸縮コラム2、2の伸縮装置22U,22D、22U,22D及び4つの伸縮装置39、40、41、42が同時に伸長駆動される。この場合、各垂直方向コラム21、21内で各伸縮装置22U,22D、22U,22Dの伸長により上下の各可動コラム23U,23D、23U,23Dが各垂直方向コラム21、21から上下方向に伸びて、上下の各分割保持フレーム31、32が外周方向に拡張し、上下2つの保持面30、30をセグメントリングRの内面に当接し、押し当てるとともに、各分割保持フレーム31、33間、各分割保持フレーム33、32間、各分割保持フレーム32、34間、各分割保持フレーム34、31間の4つの伸縮装置39、40、41、42の伸長により左右2つの分割保持フレーム33、34が、各分割保持フレーム31、33間、各分割保持フレーム33、32間、各分割保持フレーム32、34間、各分割保持フレーム34、31間に繋ぎフレーム35、36、37、38を張り出しながら、外周方向に拡張して、左右2つの保持面30、30をセグメントリングRの内面に当接し、押し当てる。そしてこれら4つの分割保持フレーム31、32、33、34は繋ぎフレーム35、36、37、38を介して真円状に緊張し、4つの保持面30、30、30、30が真円状に拡張されて、この真円の保持面30、30、30、30全体がセグメントリングRの全周に押し当てられ、セグメントリングRに加わる土圧による負荷を支持し、セグメントリングRを真円に保持、保形する。このようにしてセグメントリングRの保持、保形が完了すると、真円保持装置1は、セグメント保持部材3の4つの伸縮装置39、40、41、42の収縮により左右2つの分割保持フレーム33、34が、各分割保持フレーム31、33間、各分割保持フレーム33、32間、各分割保持フレーム32、34間、各分割保持フレーム34、31間の繋ぎフレーム35、36、37、38を左右の各分割保持フレーム33、34内に収納しながら、内周方向に収縮してセグメントSの内面から離れると同時に、2本一対の伸縮コラム2、2(の各伸縮装置22U,22D、22U,22D)の収縮駆動により上下2つの分割保持フレーム31、32が内周方向に収縮してセグメントSの内面から離れて、これら4つの分割保持フレーム31、32、33、34が(拡張前の)真円のリング状に戻される。そして、新たに組み立てられたセグメントリングの位置に移動されて、同様の動作が繰り返される。
【0012】
以上説明したように、この真円保持装置1によれば、掘進坑内で、真円の保持面30、30、30、30を構成する4つの分割保持フレーム31、32、33、34を、2本一対の伸縮コラム2、2の垂直方向の駆動とともに、各分割保持フレーム31、33間、各分割保持フレーム33、32間、各分割保持フレーム32、34間、各分割保持フレーム34、31間の4つの伸縮装置39、40、41、42を各分割保持フレーム31、32、33、34の拡張方向に駆動することにより、4つの分割保持フレーム31、32、33、34間の繋ぎフレーム35、36、37、38を介して真円状に緊張させて、セグメントSの全周に亘って当接させ、セグメントリングRに全周に亘って押し当てるので、セグメントSの真円度を高精度に保持することができる。
【0013】
なお、この実施の形態では、セグメント保持部材3を4つの分割保持フレーム31、32、33、34と、4つの繋ぎフレーム35、36、37、38と、4つの伸縮装置39、40、41、42で構成したが、これら各部の数量は特に限定されるものではなく、セグメント保持部材3の分割数は任意であり、繋ぎフレームと伸縮装置の数はセグメント保持部材3の分割数によって適宜決定される。また、一対の伸縮コラム2、2の伸縮機構もまたこれに限定されるものではなく、公知の各種の形式に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態における真円保持装置の正面図
【符号の説明】
【0015】
S セグメント
R セグメントリング
F 支持フレーム
1 真円保持装置
2 伸縮コラム
21 垂直方向コラム
22U 上部伸縮装置
22D 下部伸縮装置
23U 上部可動コラム
23D 下部可動コラム
24 固定部材
25P、25P、25P、25P 取付プレート
3 セグメント保持部材
30、30、30、30 保持面
31、32、33、34 分割保持フレーム
35、36、37、38 繋ぎフレーム
39、40、41、42 伸縮装置
31P、32P、33P、34P 取付プレート
P1、P2、P3、P4 取付ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機のセグメント組立装置の後部でシールド本体又は後方作業台車に設けられた支持フレームに、垂直方向に伸縮する一対の伸縮コラムと、前記各伸縮コラムの上端部及び下端部に設けられ、セグメントの内面に対応する保持面を有するセグメント保持部材とを備え、前記セグメント組立装置により組み立てられたセグメントを所定の位置に保持し、保形する真円保持装置において、
前記セグメント保持部材は、
真円の保持面を構成し、外周方向に向けて拡張可能な複数の分割保持フレームと、
前記各分割保持フレーム間に挿通配置され、前記真円の拡張により、前記各分割保持フレーム間を繋ぎ、当該拡張された真円を緊張状態に保持する繋ぎフレームと、
前記各分割保持フレーム間にリンク結合され、前記各分割保持フレームを拡張及び収縮方向に駆動する伸縮装置と、
を備え、
前記複数の分割保持フレームを拡張して、前記セグメントの全周に亘って押し当てる、
ことを特徴とする真円保持装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−249846(P2009−249846A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96057(P2008−96057)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】