説明

真正性表示体

【課題】偽造が困難であり、識別性や意匠性の高い真正性表示体を提供する。
【解決手段】真正性表示体101は、シート状であり、反射光を観察することによってその真正性を判断され得るようになされている。真正性表示体は、特定の光を反射する反射領域12aを含む反射層12と、特定の光を反射する回折層15と、を備えている。反射層の反射領域は、コレステリック規則性の液晶構造を有する。回折層は、体積型ホログラムからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品等の真正性を表示する真正性表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カード、パスポート、身分証明書、商品券等の偽造防止や、偽造品、海賊品等の防止策の1つとして、物品等の真正性を表示する真正性表示体(識別用媒体)を対象物に貼付することが行われている。すなわち、真正性表示体の真正性を判定することによって、当該真正性表示体を貼付された対象物の真正性が判定される。したがって、真正性表示体は、偽造されにくいとともに、当該真正性表示体自体の真正性が正確に判定され得るようになっていなければならない。
【0003】
このような真正性表示体として、レリーフホログラムを利用したホログラムラベルがある。しかしながら、この種のホログラムは、近年の偽造技術の高度化や、ホログラム材料の入手が容易になったこと等から、一見よく似たホログラムラベルが偽造され、偽造されたホログラムラベルが実際の運用において見過ごされてしまう虞がある。
【0004】
また、偏光選択性および波長選択性を有するとともに見る角度によって反射色が変化するコレステリック液晶を、真正性表示体として、用いることも行われている。しかしながら、近年では、偽造技術も巧妙になり、コレステリック液晶による真正性表示体であっても偽造される虞がある。
【0005】
さらに、日本国特許第3652487号公報には、レリーフホログラム層とコレステリック液晶層とを備えた識別用媒体(真正性表示体)が開示されている。
【特許文献1】特許第3652487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、日本国特許第3652487号公報に開示された識別用媒体において、コレステリック液晶層は、入射光をレリーフホログラム層へ反射するための反射層としての機能しか有していない。そして、識別用媒体の真正性は、レリーフホログラムの像のみによって判断される。また、上述したようにレリーフホログラムは偽造され始めている。これらのことからすれば、この識別用媒体は、作製に手間がかかる一方で、上述したレリーフホログラム単品またはコレステリック液晶単品と同程度の真正性判定機能および偽造防止効果しか持ち得ない。
【0007】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、偽造が困難であるとともに高い識別性を有した真正性表示体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による真正性表示体は、反射光を観察することによってその真正性を判断され得るようになされたシート状の真正性表示体であって、コレステリック規則性の液晶構造を有し特定の光を反射する反射部を含む反射層と、体積型ホログラムからなり、特定の光を回折する回折層と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明による真正性表示体によれば、特定の光のみを反射し得るという反射層の機能と、特定の光のみを回折し得るという回折層の機能と、を利用してより正確に真正性の判定を行うことができる。また、体積型ホログラムの作製には特殊な設備や材料等が必要となるので、真正性表示体の複製は困難である。これらのことから、本発明による真正性表示体は、優れた真正性表示機能と高い偽造防止効果とを有している。
【0010】
本発明による真正性表示体において、前記反射層によって反射される特定の光の波長領域と、前記回折層によって回折される特定の光の波長領域と、が少なくとも一部分において重なっているようにしてもよい。このような真正性表示体によれば、反射層によって反射された光と、回折層によって回折された光と、の両方を視認することができる。そして、円偏向板をかざすことによって、回折層によって回折された光のみを明瞭に視認し得るようにすることもできる。したがって、簡単かつより正確に真正性の判定を行うことができる。また、反射層で反射される波長領域と、回折層で回折される波長領域とが重なっているため、回折層で回折される光を視認することができる状態で、反射層で反射される光も視認することができる。したがって、この真正性表示体を原版として体積型ホログラムを偽造すると、偽造品には反射層によって反射される光も記録されてしまう。このため、このような偽造品は、目視による判定のほか、例えば円偏光板を用いた判定方法により、容易かつ確実に偽造品と判断することができる。すなわち、このような真正性表示体によれば偽造品の作製を極めて困難とすることができる。
【0011】
また、本発明による真正性表示体において、前記反射層によって反射される特定の光の波長領域と、前記回折層によって回折される特定の光の波長領域と、のいずれか一方は他方に含まれるようにしてもよい。このような真正性表示体によれば、反射層によって反射された光と、回折層によって回折された光と、の両方を視認することができる。そして、円偏向板をかざすことによって、回折層によって回折された光のみを明瞭に視認し得るようにすることもできる。したがって、簡単かつより正確に真正性の判定を行うことができる。また、反射層で反射される波長領域と、回折層で回折される波長領域とが重なっているため、回折層で回折される光を視認することができる状態で、反射層で反射される光も視認することができる。したがって、この真正性表示体を原版として体積型ホログラムを偽造すると、偽造品には反射層によって反射される光も記録されてしまう。このため、このような偽造品は、目視による判定のほか、例えば円偏光板を用いた判定方法により、容易かつ確実に偽造品と判断することができる。すなわち、このような真正性表示体によれば偽造品の作製を極めて困難とすることができる。
【0012】
さらに、本発明による真正性表示体において、前記反射層によって反射される光の波長に対する光量分布において最大光量の半分以上の光量を有するようになる波長領域と、前記回折層によって回折される光の波長に対する光量分布において最大光量の半分以上の光量を有するようになる波長領域と、のいずれか一方は他方に含まれるようにしてもよい。すなわち、反射層の半値幅に対応する波長領域と、回折層の半値幅に対応する波長領域と、のいずれか一方が他方に含まれるようにしてもよい。このような真正性表示体によれば、反射層によって反射された光と、回折層によって回折された光と、の両方をより明瞭に視認することができる。そして、円偏向板をかざすことによって、回折層によって回折された光のみを明瞭に視認し得るようにすることもできる。したがって、真正性の判定をさらに正確に行うことができる。また、このような真正性表示体は、真正性判別の観点からだけでなく、偽造品防止の観点からも極めて優れている。すなわち、このような真正性表示体によれば、反射層によって反射される波長領域のうち高い反射率で反射される波長領域と、回折層によって回折される波長領域のうち高い回折効率で回折される波長領域と、が重なり合っている。したがって、回折層で回折される光を明瞭に視認することができる状態で、反射層で反射される光も明瞭に視認することができる。このため、この真正性表示体を原版として体積型ホログラムを偽造すると、偽造品には反射層によって反射される光も記録されてしまう。このような偽造品は、目視による判定のほか、例えば円偏光板を用いた判定方法により、容易かつ確実に偽造品と判断することができる。すなわち、このような真正性表示体によれば偽造品の作製を極めて困難とすることができる。
【0013】
さらに、本発明による真正性表示体において、前記反射層によって反射される光の波長に対する光量分布において最大光量を有するようになる波長(選択中心波長)は、前記回折層によって回折される光の波長に対する光量分布において最大光量を有するようになる波長(選択中心波長)よりも長波長であるようにしてもよい。一般的に、コレステリック規則性の液晶構造は、短波長側よりも長波長側においてより鋭い選択波長性を有している。したがって、反射層によって反射される光の波長領域の一部または全部と、回折層によって回折される光の波長領域の一部または全部と、を重ねやすくすることができる。すなわち、上述した偽造品の作成が極めて困難な真正性表示体を容易かつ確実に作成することができるようになる。
【0014】
さらに、本発明による真正性表示体において、前記反射層によって反射される特定の光の波長領域は、前記回折層によって回折される特定の光の波長領域から外れているようにしてもよい。このような真正性表示体によれば、反射層によって反射された光と、回折層によって回折された光と、を色によって識別することができる。したがって、反射層によって反射される光の有無と、回折層によって回折される光の有無と、を容易に確認することができる。したがって、真正性の識別をさらに正確に行うことができる。
【0015】
さらに、本発明による真正性表示体において、前記反射層によって反射される光の波長に対する光量分布において最大光量の半分以上の光量を有するようになる波長領域は、前記回折層によって回折される光の波長に対する光量分布において最大光量の半分以上の光量を有するようになる波長領域から外れているようにしてもよい。このような真正性表示体によれば、反射層によって反射された光と、回折層によって回折された光と、を色によって明瞭に識別することができる。したがって、反射層によって反射される光の有無と、回折層によって回折される光の有無と、を容易かつ確実に確認することができる。したがって、真正性の識別をさらに正確に行うことができる。
【0016】
さらに、本発明による真正性表示体において、前記反射層によって反射される光の波長に対する光量分布において最大光量を有するようになる波長(選択中心波長)は、前記回折層によって回折される光の波長(選択中心波長)に対する光量分布において最大光量を有するようになる波長よりも短波長であるようにしてもよい。一般的に、コレステリック規則性の液晶構造は、短波長側よりも長波長側においてより鋭い選択波長性を有している。したがって、反射層によって反射される光の波長領域と、回折層によって回折される光の波長領域と、をより明瞭に区分けすることができる。したがって、このような真正性表示体によれば、真正性の判定をさらに正確に行うことができる。
【0017】
さらに、本発明による真正性表示体において、前記反射層の前記反射部は、前記回折層の一部分のみと重なるように形成されているようにしてもよい。つまり、回折層上で反射部の輪郭がパターニングされていてもよい。このような真正性表示体によれば、反射層で反射された光を、反射部の占める領域に対応したパターンとして視認することができる。したがって、反射層で反射される光の有無を明瞭に視認することができる。これにより、真正性の判定をさらに正確に行うことができる。
【0018】
さらに、本発明による真正性表示体において、前記反射部のコレステリック規則性の構造がプラーナー配向状態であるようにしてもよい。このような真正性表示体によれば、反射層で特定の光が正反射(鏡面反射)されるので、反射された光をより明瞭に視認することができる。したがって、反射層で反射される光の有無を明瞭に視認することができる。これにより、真正性の判定をさらに正確に行うことができる。
【0019】
さらに、本発明による真正性表示体において、前記反射層が、入射した光を透過させる透過部をさらに有するようにしてもよい。このような真正性表示体によれば、反射層で反射された光を、反射部の占める領域に対応したパターンとして視認することができる。したがって、反射層で反射される光の有無を明瞭に視認することができる。これにより、真正性の判定をさらに正確に行うことができる。この場合、前記反射層は、並べて配置された複数の反射部および複数の透過部を含むようにしてもよい。
【0020】
さらに、本発明による真正性表示体において、前記反射部の一部分のみがプラーナー配向状態であるようにしてもよい。このような真正性表示体によれば、反射層で反射された光を、液晶構造がプラーナー配向状態となっている領域の占める形状に対応したパターンとして、視認することができる。したがって、反射層で反射される光の有無を明瞭に視認することができる。これにより、真正性の判定をさらに正確に行うことができる。
【0021】
さらに、本発明による真正性表示体が、前記反射層および前記回折層よりも、観察面側の反対側である裏面側に配置され、対象物に対して貼付可能とする貼付層をさらに備えるようにしてもよい。この場合、様々な対象物に容易に貼り付けることができる。
【0022】
さらに、本発明による真正性表示体が、前記貼付層よりも裏面側に積層された剥離可能な剥離部材をさらに備えるようにしてもよい。この場合、真正性表示体をラベルとして提供することができる。また、真正性表示体の取り扱い(例えば、流通時の扱い)が容易となる。
【0023】
さらに、本発明による真正性表示体において、前記回折層が反射型体積ホログラムからなるようにしてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0025】
本実施の形態において、真正性表示体101は、シート状からなり、反射光を観察することによってその真正性を識別し得るようになされている。真正性表示体101は、コレステリック規則性の液晶構造を有し特定の光を反射する反射部(反射領域とも呼ぶ)12aを含む反射層12と、体積型ホログラムからなり、特定の光を回折する回折層15と、を備えている。
【0026】
また、図1に示された一例において、真正性表示体101は、観察面5の側から順に配置された、保護層11と、反射層(以下において、液晶層またはコレステリック液晶層とも呼ぶ)12と、支持基材層(易接着PET層)13と、第1粘着層14と、回折層15と、第2粘着層16と、基材層(黒色PET層)17と、第3粘着層(貼付層)18と、第4セパレータ19と、を備えている。本実施の形態において、回折層15は、反射型体積ホログラムであるリップマンホログラムから構成されている。したがって、本実施の形態における、回折層15による回折は反射に相当する。以下の実施の形態の記載において、回折層15による「反射」とは、特別な説明がない場合、「回折」を意味するものとする。
【0027】
このうち反射層12および回折層(以下において、リップマンホログラム層とも呼ぶ)15について説明する。なお、図1に示された真正性表示体101の他の層については後で説明する。
【0028】
まず、反射層12について詳述する。
【0029】
図2は、観察面側から見た反射層12と回折層15を示す図である。図2(a)は、観察面側から目視した反射層12のみを示す図であり、図2(b)は、一部分について円偏光板を通して目視した反射層12を示す図であり、図2(c)は、観察面側から目視した回折層のみを示す図であり、図2(d)は、観察面側から目視した反射層と回折層との積層物を示す図であり、図2(e)は、一部分について円偏光板を通して目視した反射層と回折層との積層物を示す図である。
【0030】
反射層12は、コレステリック規則性の液晶構造(以下において、コレステリック液晶構造とも呼ぶ)を有する。したがって、この反射層12は、特定の波長領域の光であり、かつ、一方向の円偏光のみを反射し、その波長領域以外の光や逆方向の円偏光を透過させるようにする。そして、本実施の形態における真正性表示体101は、反射層12のこの作用を第1の真正性判定機能として利用するようになっている。
【0031】
反射層12は、概略以下のようにして形成され得る。まず、コレステリック規則性の液晶構造を有し得る液晶性組成物を、後述の支持基材層(図1に示す具体例においては、易接着PET層)13に、ロールコート法、グラビアコート法、バーコート法等を用いて塗布する。その後、液晶性組成物に対して配向処理を行い、コレステリック液晶分子を配向しコレステリック液晶構造を発現させる。次に、コレステリック液晶構造を固定化する。
【0032】
ここで、図3Aおよび図3Bに示すように、コレステリック液晶構造においては、液晶分子のダイレクターが回転するよう、液晶分子の物理的な分子配列が螺旋構造をとっている。コレステリック液晶構造(反射層12)は、このような液晶分子の物理的な分子配列に基づいて、一方向の円偏光成分と、これと逆回りの円偏光成分とを分離する偏光分離特性を有している。つまり、反射層12に入射した無偏光状態の光は、2つの偏光状態(右円偏光及び左円偏光)に分離され、一方は反射され、他方は透過する。したがって、反射層12の反射部12aのコレステリック液晶構造が右円偏光の光のみを反射するように作製するとともに、左円偏光のみを透過する円偏光板50等を介してこの反射層12を目視した場合、図2(b)に示すように、それまで視認することができていた反射層12からの反射光を視認することができなくなる。
【0033】
なお、以下の説明において、本実施の形態における反射層12は、右円偏向を選択的に反射し、左円偏向を透過させるようになされているとする。
【0034】
以上のような片方の円偏向のみを反射する現象は、円偏光二色性として知られ、液晶分子の螺旋構造における螺旋巻き方向を適宜選択すると、この螺旋巻き方向と同一の旋光方向を有する円偏光成分が選択的に反射される。そして、この場合の最大旋光光散乱は、次式(1)の波長λで生じる。
λ=nav・p ・・・ (1)
ここで、pは液晶分子の螺旋構造における螺旋ピッチ長(液晶分子の分子螺旋の1ピッチ当たりの長さ)、navは螺旋軸に直交する平面内での平均屈折率である。
【0035】
また、このときの反射光の波長バンド幅△λは次式(2)で表される。ここで、△nは複屈折値である。
△λ=△n・p ・・・ (2)
すなわち、コレステリック液晶構造を有する反射層12の反射部12aへ入射する無偏光状態の光は、上述したような偏光分離特性(偏光選択性)にしたがって、選択反射中心波長λを中心とした波長バンド幅△λの範囲(選択反射波長域)に属する一方の円偏光成分(例えば、右円偏向)が反射され、その他の光(例えば、左円偏光成分、および選択反射波長域外の右円偏光成分)が透過される。
【0036】
したがって、反射層12の反射部12aが反射する光の波長領域(選択波長領域)を調整しておくことにより、反射層12の反射部12aからの反射光を所望の色として視認し得るようにすることができる。例えば、反射層12の反射部12aによって反射される光の半値幅に対応する波長領域、言い換えると、反射層12の反射部12aによって反射される光の波長に対する光量分布において最大反射光量の半分以上の光量を確保できる波長領域を、480〜540nmとすると、反射部12aからの反射光は緑色として視認される。また他の例として、反射部12aによって反射される光の波長に対する光量分布において最大反射光量の半分以上の光量を確保できる波長領域を、605〜675nmとすると、反射部12aからの反射光は赤色として視認される。
【0037】
反射層12の反射部12aは、支持基材層(易接着PET層)13の観察面側の全面に均一に形成されていてもよい。この場合、上述した反射部12aで反射される緑色や赤色の光は、面状に観察される。
【0038】
一方、図2(a)に示すように、反射層12の反射部12aが、支持基材層(易接着PET層)13の観察面側の面上の一部分のみに形成されていてもよい。このような反射層12は、特開2004−133179号公報に開示されているよう、支持基材上に配置された液晶組成物を異なる条件で部分的に硬化することによって作製され得る。このような方法で形成された反射層12は、反射部12aと、入射した光を透過させる透過部(透過領域とも呼ぶ)12bと、からなるようになる(図2参照)。
【0039】
また、反射部12aをなすようになる液晶組成物を、例えばグラビア印刷機を用い、支持基材層上の一部分のみに配置することにより、反射部12aが支持基材層13上の一部分のみに形成された反射層12を作製することもできる。このような方法によって得られた反射層12においては、反射部12aが回折層15の一部分のみと重なるようにすることができる。
【0040】
図2に示す例において、反射層12は、並べて配置された複数の反射部12a(網掛け部分)および複数の透過部12bを含んでいる。そして、複数の反射部12aは、格子状のパターンを形成している。この場合、上述した反射部12aで反射される緑色や赤色の光は、このパターンとして観察される。すなわち、反射層12で反射された光を、反射部12aの占める領域に対応したパターンとして視認することができる。したがって、反射層12で反射される光の有無を明瞭に視認することができる。
【0041】
なお、支持基材層13上の一部分のみに反射部12aを形成する場合、反射部12aの面積を調節することによって、反射層12全体としての反射率を調節することができる。
【0042】
なお、この反射層12のパターンは、目視により格子状のパターンとして確認できる程度に大きなものでもよいし、目視では格子状のパターンとして確認できない程度に小さなものでもよい。
【0043】
図3Aおよび図3Bに示すように、コレステリック液晶構造は、複数の螺旋構造領域を含むようになる。図3Aに示す例において、コレステリック液晶構造からなる反射層12の反射部12aは、螺旋軸の方向が異なる複数の螺旋構造領域を含んでいる。このような反射部12aによれば、コレステリック液晶構造の構造的な不均一性により、選択的に反射される光を拡散させることができる。
【0044】
これに対して、図3Bに示す例においては、コレステリック規則性の構造は、いわゆるプラーナー配向状態となっている。つまり、コレステリック液晶構造に含まれる各螺旋構造領域の螺旋軸の方向は全て層の厚さ方向に一様に平行に延びている。このような反射部12aによれば、選択的に反射される光は鏡面反射(正反射)され、反射光を明瞭に視認することができる。また、見る角度によって色味が変化する角度依存性を有するようになる。この結果、反射層12と反射される光の有無を明瞭に視認することができる。
【0045】
なお、図3Aおよび図3Bに示すコレステリック液晶構造のいずれを作製する場合であっても、後に詳述するよう、配向処理が必要となる。そして、配向処理を部分的に異なる条件で行うことにより、反射層12の反射部12aの一部分のみをプラーナー配向状態とすることができる。この場合、反射層12の反射部12aで反射される光のうち、プラーナー配向状態となっている部分で反射される光をより明るく視認することができる。つまり、反射層12で反射された光の有無を、コレステリック液晶構造がプラーナー配向状態となっている領域の占める形状に対応したパターンが視認されるか否かによって、判断することができる。したがって、反射層12で反射される光の有無を明瞭に視認することができる。
【0046】
次に、反射層12の作製方法について詳述する。
【0047】
支持基材層13上に塗布される液晶性組成物としては、コレステリック規則性を示すカイラルネマチック液晶やコレステリック液晶を用いることができる。このような材料としては、螺旋構造領域(図3Aおよび図3B参照)を含むコレステリック液晶構造を形成し得る液晶材料であれば特に限定されるものではないが、特に、分子の両末端に重合性の官能基があるような重合性の液晶材料が、硬化後に光学的に安定した反射層12を得る上で好ましい。
【0048】
以下、液晶性組成物としてカイラルネマチック液晶を用いる場合を例に挙げて説明する。なお、カイラルネマチック液晶は、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料とカイラル剤とを混合したものである。ここで、カイラル剤は、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の螺旋ピッチ長を制御するとともに、液晶性組成物が全体としてコレステリック規則性を呈するようにするためのものである。そして、ネマチック液晶とカイラル剤との混合比率を調節することにより、上述した式(1)および式(2)における螺旋ピッチ長を制御することができ、これにより、選択反射波長中心λおよび波長バンド幅△λを調整することができる。また、このような液晶性組成物には、光重合開始剤や適当な添加剤が添加される。
【0049】
ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の一例としては、例えば、下記の一般式(1)で表わされる化合物や、下記の式(2−i)〜(2−xi)で表される化合物を挙げることができる。また、これらの化合物を単独で、もしくは混合して用いることができる。
【化1】

【化2】

【0050】
上記一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ水素又はメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR1及びR2はともに水素であることが好ましい。Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、ニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素又はメチル基であることが好ましい。また、上記一般式(1)において、分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と芳香環とのスペーサーであるアルキレン基の鎖長を示すa及びbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物は、安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物自体の結晶性が高い。また、a及びbがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物は、アイソトロピック転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物はどちらも液晶相を示す温度範囲が狭く好ましくない。
【0051】
なお、以上においては、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料として重合性液晶モノマーの例を挙げて説明したが、これに限らず、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子、液晶ポリマーなどを用いることも可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子、液晶ポリマーとしては、従来から提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
【0052】
一方、カイラル剤は、光学活性な部位を有する低分子化合物であり、主として分子量1500以下の化合物である。カイラル剤は主として、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料が発現する正の一軸ネマチック規則性に螺旋構造を誘起させる目的で用いられる。この目的が達成される限り、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料との間で溶液状態あるいは溶融状態において相溶し、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の液晶性を損なうことなく、これに所望の螺旋構造を誘起できるものであれば、カイラル剤としての低分子化合物の種類は特に限定されない。
【0053】
なお、このようにして液晶に螺旋構造を誘起させるために用いられるカイラル剤は、少なくとも分子中に何らかのキラリティーを有していることが必要である。従って、ここで用いられるカイラル剤としては、例えば1つあるいは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミンやキラルなスルフォキシドなどのようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、あるいはクムレンやビナフトールなどの軸不斉を持つ光学活性な部位を有する化合物が挙げられる。さらに具体的には、市販のカイラルネマチック液晶(例えばキラルドーパント液晶S−811(Merck社製))が挙げられる。
【0054】
しかしながら、選択されたカイラル剤の性質によっては、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料が形成するネマチック規則性の破壊、配向性の低下、あるいはカイラル剤が非重合性の場合には、液晶性組成物の硬化性の低下や、硬化後のフィルムの信頼性の低下を招くおそれがある。さらに、光学活性な部位を有するカイラル剤の多量な使用は、液晶性組成物のコストアップを招く。従って、短い螺旋ピッチ長のコレステリック規則性を有する偏光選択反射層を形成する場合には、液晶性組成物に含有させる光学活性な部位を有するカイラル剤としては、螺旋構造を誘起させる効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、具体的には下記の一般式(3)、(4)又は(5)で表されるような、分子内に軸不斉を有する低分子化合物を用いることが好ましい。
【化3】

【化4】

【化5】

【0055】
上記一般式(3)又は(4)において、R4は水素又はメチル基を示す。Yは上記に示す式(i)〜(xxiv)の任意の一つであるが、中でも、式(i)、(ii)、(iii)、(v)及び(vii)のいずれか一つであることが好ましい。また、アルキレン基の鎖長を示すc及びdは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。c又はdの値が0又は1である上記一般式(3)又は(4)の化合物は、安定性に欠け、加水分解を受けやすく、結晶性も高い。一方、c又はdの値が13以上である化合物は融点(Tm)が低い。これらの化合物では、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料との間の相溶性が低下し、濃度によっては相分離などが起きるおそれがある。
【0056】
なお、このようなカイラル剤は、特に重合性を有する必要はない。しかしながら、カイラル剤が重合性を有している場合には、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料と重合され、コレステリック規則性が安定的に固定化されるので、熱安定性などの面では非常に好ましい。特に、分子の両末端に重合性の官能基があることが、耐熱性の良好な反射層12を得る上で好ましい。
【0057】
また、液晶性組成物に含有されるカイラル剤の量は、螺旋構造の誘起能力や最終的に得られるコレステリック液晶構造などを考慮して最適値が決められる。具体的には、用いられる液晶性組成物の材料により大きく異なるものではあるが、液晶性組成物の合計量100重量部当り、0.01〜60重量部、好ましくは0.1〜40重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部、最も好ましくは1〜20重量部の範囲で選ばれる。カイラル剤の含有量が上述した範囲よりも少ない場合は、液晶性組成物に充分なコレステリック規則性を付与することができない場合があり、上述した範囲を越える場合は、液晶分子の配向が阻害され、活性放射線などによって硬化させる際に悪影響を及ぼす危惧がある。
【0058】
さらに、液晶性組成物は支持基材層13上にそのまま塗布することも可能であるが、粘性を塗布装置に合わせたり、良好な配向状態を得る目的で有機溶媒などの適当な溶媒に溶解させてインキ化したりするようにしてもよい。
【0059】
このような溶媒としては、上述したような重合性の液晶材料を溶解することが可能であれば特に限定されるものではないが、支持基材層13を浸食しないものであることが好ましい。具体的には、アセトンや、酢酸−3−メトキシブチル、ジグライム、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、塩化メチレン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。重合性の液晶材料の希釈の程度は特に限定されるものではないが、液晶自体が溶解性の低い材料であり、また粘性が高いことなどを考慮して、5〜50%、さらに好ましくは10〜30%程度に希釈することが好ましい。
【0060】
(配向処理工程)
上述した塗布工程において、支持基材層13上に液晶性組成物を塗布し、コレステリック液晶層12を形成した後、配向処理工程において、コレステリック液晶層(反射層)12をコレステリック液晶構造が発現する所定の温度に保持し、コレステリック液晶層12中の液晶分子を配向させる。
【0061】
図3Aおよび図3Bは、コレステリック液晶構造を説明するための図である。
【0062】
図3Aおよび図3Bにおいて、反射層12に入射する光は光線31Rであり、反射する光は、図3Aでは、光線33であり、図3Bでは、光線36である。図3Aでは、反射する光の方向は、ばらついており、図3Bでは、反射する光の主光線方向が揃っている。
【0063】
上述したように、コレステリック液晶構造は、図3Aに示すように、複数の螺旋構造領域30の螺旋軸Lの方向が層内でばらついた配向状態となっていてもよいし、図3Bに示すようなプラーナー配向状態となっていてもよい。ただし、どちらの場合でも、配向処理は必要となる。すなわち、前者においては、コレステリック液晶構造中に複数の螺旋構造領域30を形成させるような配向処理が必要となり、後者においては、コレステリック液晶構造中に複数の螺旋構造領域30を形成させるような配向処理と、コレステリック液晶構造の液晶分子のダイレクターを支持基材層13上で一定方向に揃えるような配向処理とが必要となる。
【0064】
ここで、支持基材層13上に形成されたコレステリック液晶層(反射層)12を、コレステリック液晶構造が発現する所定の温度に保持すると、コレステリック液晶層12は液晶相を呈し、液晶分子自体の自己集積作用により、液晶分子のダイレクターが回転してなる螺旋構造が形成される。また、コレステリック液晶層12に拡散性を持たせない場合であれば、コレステリック液晶構造の液晶分子のダイレクターが支持基材層13上で一定方向に揃えられる。そして、このような液晶相の状態で発現したコレステリック液晶構造は、後述するような手法でコレステリック液晶層12を硬化させることにより、固定化することができる。
【0065】
このような配向処理工程は、支持基材層13上に塗布された液晶性組成物に溶媒が含有されている場合には、通常、溶媒を除去するための乾燥処理とともに行われる。溶媒を除去するためには、40〜120℃、好ましくは60〜100℃の乾燥温度が適しており、乾燥時間(加熱時間)はコレステリック液晶構造が発現し、実質上溶媒が除去されればよく、例えば、15〜600秒が好ましく、さらに好ましくは30〜180秒である。
【0066】
乾燥後に配向状態が不十分であることが分かった場合には、適宜加熱時間を延長するようにするとよい。なお、このような乾燥処理において減圧乾燥の手法を用いる場合には、配向処理のために別途加熱処理を行うことが好ましい。
【0067】
(硬化処理工程)
上述した配向処理工程において、コレステリック液晶層(反射層)12中の液晶分子を配向させた後、硬化処理工程において、コレステリック液晶層12を硬化させ、液晶相の状態で発現したコレステリック液晶構造を固定化する。
【0068】
硬化処理工程で用いられる方法としては、(1)液晶性組成物中の溶媒を乾燥させる方法、(2)加熱により液晶性組成物中の液晶分子を重合させる方法、(3)放射線の照射により液晶性組成物中の液晶分子を重合させる方法、及び(4)それらの方法を組み合わせた方法を用いることができる。
【0069】
このうち、上記(1)の方法は、コレステリック液晶層12の材料である液晶性組成物に含有されるネマチック規則性を示す重合性の液晶材料として液晶ポリマーを用いた場合に適した方法である。この方法では、液晶ポリマーを有機溶媒などの溶媒に溶解させた状態で支持基材層13に塗布することとなるが、この場合には、乾燥処理により溶媒を除去するだけで、コレステリック規則性を有する固体化したコレステリック液晶層12が形成される。なお、溶媒の種類や乾燥条件などについては、上述した塗布工程及び配向処理工程で述べたものを用いることができる。
【0070】
上記(2)の方法は、加熱により液晶性組成物中の液晶分子を熱重合させてコレステリック液晶層12を硬化させる方法である。この方法では、加熱(焼成)温度によって液晶分子の結合状態が変化するので、加熱時にコレステリック液晶層12の面内で温度ムラがあると、膜硬度などの物性や光学的な特性にムラが生じる。ここで、膜硬度の分布を±10%以内にするためには、加熱温度の分布も±5%以内に抑えることが好ましく、より好ましくは±2%以内に抑えることが好ましい。
【0071】
なお、支持基材層13上に形成されたコレステリック液晶層12を加熱する方法としては、加熱温度の均一性が得られれば特に限定はなく、ホットプレート上に密着して保持したり、ホットプレートとの間にわずかな気層を設けてホットプレートと平行になるように保持したりする方法を用いることができる。また、オーブンのような特定の空間全体を加熱する装置内に静置したり当該装置内を通過させたりする方法でもよい。なお、フィルムコーターなどを用いる場合には、乾燥ゾーンを長くして加熱時間を十分にとることができるようにすることが好ましい。
【0072】
加熱温度としては一般に、100℃以上の高温が必要となるが、支持基材層13の耐熱性から150℃程度までとすることが好ましい。ただし、耐熱性に特化したフィルムなどを支持基材層13の材料として用いれば、150℃以上の高温での加熱も可能である。
【0073】
上記(3)の方法は、放射線の照射により液晶性組成物中の液晶分子を光重合させてコレステリック液晶層12を硬化させる方法である。この方法では、放射線として、電子線や紫外線などを条件に応じて適宜用いることができる。通常は、装置の容易性などの観点から紫外線が好ましく用いられ、その波長は250〜400nmである。ここで、紫外線を用いる場合には、液晶性組成物に光重合開始剤が添加されていることが好ましい。
【0074】
液晶性組成物中に添加される光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルともいう)や、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどを挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、コレステリック液晶層12の必要な機能が損なわれない範囲で添加することも可能である。
【0075】
液晶性組成物に添加される光重合開始剤の添加量は、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲であることが好ましい。 以上のような一連の工程(塗布工程、配向処理工程及び硬化処理工程)を行うことにより、支持基材層13上に反射層12(厳密には、反射層12の反射部12a)を積層(固着)させることができる。
【0076】
次に、回折層15について詳述する。
【0077】
本実施の形態において、回折層15は、反射型の体積型ホログラム層であり、層内に干渉縞が記録されている。したがって、回折層15は、特定の波長領域の光であり、回折層15に対して所定の入射角度で入射した光を反射(回折)する。そして、本実施の形態における真正性表示体101は、回折層15のこの作用を第2の真正性判定機能として利用するようになっている。
【0078】
本実施の形態においては、図2(c)、(d)および(e)に示すように、回折層15をなす体積型ホログラムに像が記録されている。したがって、回折層15からの反射光(回折光)として像を視認することができる。この回折層15は、上下方向と左右方向との2方向の視点移動での像の切り替えが可能である。この結果、立体感や奥行きのある像の再生が可能となる。
【0079】
次に、回折層15の作製方法について詳述する。まず、体積ホログラム層の形成に用いられる材料について説明する。
【0080】
ホログラム用材料としては、従来公知の体積型ホログラム記録材料を使用できる。具体的には、銀塩感材、重クロム酸ゼラチン、光架橋型ポリマー、フォトポリマー等が例示される。特にフォトポリマーは、その他材料に比べて、乾式プロセスのみで体積型ホログラムを作製することができ、量産性に優れた材料である。本実施の形態において、ホログラム用材料として使用されるフォトポリマーは、少なくとも1種の光重合性化合物と、光重合開始剤を有するものである。以下、このような体積型ホログラム記録用フォトポリマーの各構成材料について説明する。
【0081】
(1.光重合性化合物)
本実施の形態において、用いられ得る光重合性化合物について説明する。本実施の形態における光重合性化合物としては、光ラジカル重合性化合物であってもよく、光カチオン重合性化合物であってもよい。以下、光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物に分けて説明する。
【0082】
(a.光ラジカル重合性化合物)
本実施の形態において、用いられ得る光ラジカル重合性化合物としては、本発明の体積型ホログラム用樹脂組成物を用いて体積型ホログラムを形成する際に、例えばレーザー照射等によって、後述する光ラジカル重合開始剤から発生した活性ラジカルの作用により重合する化合物であれば、特に限定されるものではないが、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ化合物を使用することができる。例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド結合物等をあげることができる。上記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルのモノマーの具体例を以下に示す。
【0083】
アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2−(p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、ビスフェノールAの(2−アクリルオキシエチル)エーテル、エトキシ化されたビスフェノールAジアクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)エチルアクリレート、o−ビフェニルアクリレート、9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシトリエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシジプロポキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジメチル)フルオレン等が例示される。
【0084】
また、硫黄含有アクリル化合物を使用することもできる。例えば、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン、4,4’−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルケトン、2,4−ビス(β−アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン等が挙げられる。
【0085】
さらに、メタクリル酸エステルとしては、上述したアクリル酸エステルに例示される化合物名のうち、「アクリレート」が「メタクリレート」に、「アクリロキシ」が「メタクリロキシ」に、及び「アクリロイル」が「メタクリロイル」に変換された化合物が例示される。
【0086】
さらにまた、上記光ラジカル重合性化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0087】
(b.光カチオン重合性化合物)
本実施の形態に用いられる光カチオン重合性化合物は、エネルギー照射を受け、後述する光カチオン重合開始剤の分解により発生したブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合する化合物である。例えば、エポキシ環やオキセタン環等の環状エーテル類、チオエーテル類、ビニルエーテル類等をあげることができる。
【0088】
上記エポキシ環を含有する化合物としては、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド等が例示される。
【0089】
また、上記光カチオン重合性化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0090】
さらに、上記の光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。
【0091】
ここで、上述の体積型ホログラム用樹脂組成物を用いた体積型ホログラムの形成は、以下のように行われ得る。まず、例えば目的とする像の形状で体積型ホログラム用樹脂組成物にレーザーを照射して、光ラジカル重合性化合物を重合させる。その後、体積型ホログラム用樹脂組成物の全面にエネルギーを照射することにより、光カチオン重合性化合物等の未硬化の物質を重合させ、体積型ホログラムを形成する。なお、像を形成する際のレーザー等と、全面にエネルギー照射されるエネルギーとは、通常異なる波長のものが用いられる。本実施の形態において用いられ得る光カチオン重合性化合物は、像を形成する例えばレーザー等によって重合しない化合物であることが好ましい。
【0092】
また、このような光カチオン重合性化合物は、上記光ラジカル重合性化合物の重合が、比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、常温で液状であることが好ましい。
【0093】
(c.その他)
本実施の形態において用いられ得る光重合性化合物は、後述するバインダー樹脂100重量部に対して10〜1000重量部、好ましくは10〜300重量部の割合で使用するとよい。ここで、体積型ホログラムは、例えばレーザー光又はコヒーレンス性の優れた光等によって光重合性化合物を重合させて干渉縞を形成し、像を形成するものである。従って、体積型ホログラム用樹脂組成物に光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物が含有されている場合には、それぞれにおける屈折率が異なるものが選択されて用いられるものであり、どちらの屈折率が大きいものであってもよい。本実施の形態においては、中でも材料選択性の面から光ラジカル重合性化合物の平均の屈折率が光カチオン重合性化合物より大きいものであることが好ましく、具体的には、平均の屈折率が0.02以上大きいことが好ましい。
【0094】
これは、光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物との平均の屈折率の差が上記値より低い場合には、屈折率変調が不十分となり、高精細な像を形成することが困難となる可能性があるからである。ここでいう平均の屈折率とは、光カチオン重合性化合物又は光ラジカル重合性化合物を重合させた後の重合体について測定する屈折率の平均値をいう。なお、ここでの屈折率は、アッベ屈折率計により測定された値である。
【0095】
(2.光重合開始剤)
次に、本実施の形態に用いられ得る光重合開始剤について説明する。本実施の形態における光重合開始剤としては、上述した光重合性化合物により種類が異なるものである。すなわち、光重合性化合物が光ラジカル重合性化合物である場合は、光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤を選択し、光重合性化合物が光カチオン重合性化合物である場合は、光重合開始剤は光カチオン重合開始剤を選択する必要がある。以下、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤に分けて説明する。
【0096】
(a.光ラジカル重合開始剤)
本実施の形態に用いられ得る光ラジカル重合開始剤としては、体積型ホログラム用樹脂組成物を用いて体積型ホログラム層を形成する際に照射される例えばレーザー等によって、活性ラジカルを生成し、上記光ラジカル重合性化合物を重合させることが可能な開始剤であれば、特に限定されるものではない。例えば、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等を使用することができる。具体的には、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(商品名イルガキュア784、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
【0097】
(b.光カチオン重合開始剤)
本実施の形態に用いられ得る光カチオン重合開始剤としては、エネルギー照射によりブレンステッド酸やルイス酸を発生し、上記光カチオン重合性化合物を重合させるものであれば、特に限定されるものではない。体積型ホログラム用樹脂組成物が光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物を含有する場合、光カチオン重合性化合物は、特に上記光ラジカル重合性化合物を重合させる例えばレーザーやコヒーレンス性の優れた光等に対しては反応せず、その後全面に照射されるエネルギーによって感光するものであることが好ましい。これにより、上記光ラジカル重合性化合物が重合する際、光カチオン重合性化合物がほとんど反応しないまま存在させることができ、体積型ホログラムにおける大きな屈折率変調が得られるからである。
【0098】
具体的には、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η6−ベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示される。さらに、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等も使用することができる。
【0099】
(c.その他)
本実施の形態において、光ラジカル重合開始剤としても、光カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示される。具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−t−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン化合物等が挙げられる。また、上記の光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいものである。さらに、光重合開始剤は、後述するバインダー樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部の割合で使用するとよい。
【0100】
(3.添加剤)
次に、本実施の形態において、体積型ホログラム用樹脂組成物に添加することができる添加剤について説明する。
【0101】
(a.増感色素)
本実施の形態においては、体積型ホログラム用樹組成物が増感色素を含有することが好ましい。上記光重合性化合物及び光重合開始剤は、紫外線に活性であるものが多いが、増感色素を添加することにより可視光にも活性となり、可視レーザー光を用いて干渉縞を記録することが可能となるからである。このような増感色素としては、干渉縞を記録する際に使用するレーザー光波長を考慮して選択されるものであるが、特に限定されるものではない。例えば、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、クマリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、シクロペンタノン系色素、シクロヘキサノン系色素等を使用することができる。
【0102】
上記シアニン系色素、メロシアニン系色素としては、3,3’−ジカルボキシエチル−2,2’−チオシアニンブロミド、1−カルボキシメチル−1’−カルボキシエチル−2,2’−キノシアニンブロミド、1,3’−ジエチル−2,2’−キノチアシアニンヨージド、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキサゾリジン等が挙げられる。また、上記クマリン系色素、ケトクマリン系色素としては、3−(2’−ベンゾイミダゾール)7−N,N−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等が挙げられる。
【0103】
体積型ホログラム層からなる回折層15が反射層12よりも観察面側に設けられる場合、体積型ホログラム層からなる回折層15は高透明性を要求される。したがって、このような場合、可視光領域に吸収波長を有する増感色素は、干渉縞記録後の後工程、加熱や紫外線照射により分解される等して無色になるものが好ましい。このような増感色素としては、上述したシアニン系色素が好適に用いられる。また、増感色素は、後述するバインダー樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜2重量部の割合で使用するとよい。
【0104】
(b.バインダー樹脂)
本実施の形態においては、体積型ホログラム用樹脂組成物がバインダー樹脂を含有することが好ましい。バインダー樹脂を含有することにより、成膜性、膜厚の均一性を向上させることができ、記録された干渉縞を安定に存在させることができるからである。
【0105】
このようなバインダー樹脂としては、ポリメタアクリル酸エステル又はその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニル又はその加水分解物、ポリビニルアルコール又はその部分アセタール化物、トリアセチルセルロース、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール又はその誘導体、ポリ−N−ビニルピロリドン又はその誘導体、スチレンと無水マレイン酸との共重合体又はその半エステル等をあげることができる。また、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルニトリル、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、及び酢酸ビニル等の共重合可能なモノマーからなる郡から選択される少なくとも1種のモノマーを重合させてなる共重合体を使用することもできる。また、側鎖に熱硬化又は光硬化可能な官能基を有するモノマーを重合させてなる共重合体も使用することができる。さらに、1種又は2種以上の混合物を用いることもできる。
【0106】
また、バインダー樹脂としては、オリゴマータイプの硬化性樹脂を使用することもできる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ノボラック、o−クレゾールノボラック、p−アルキルフェノールノボラック等の各種フェノール化合物とエピクロロヒドリンとの縮合反応により生成されるエポキシ化合物等が挙げられる。さらに、バインダー樹脂としては、ゾルゲル反応を利用した有機−無機ハイブリッドポリマーを使用することもできる。例えば、下記一般式(6)で表される重合性基を有する有機金属化合物とビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。
Rm M(OR’)n ・・・(6)
ここで、MはSi、Ti、Zr、Zn、In、Sn、Al、Se等の金属、Rは炭素数1〜10のビニル基又は(メタ)アクリロイル基、R’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+nは金属Mの価数である。
【0107】
金属MとしてSiを使用する場合の有機金属化合物の例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリアリルオキシシラン、ビニルテトラエトキシシラン、ビニルテトラメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0108】
また、上記ビニルモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等をあげることができる。
【0109】
ここで、体積型ホログラムは、干渉縞が屈折率変調又は透過率変調として記録され形成されるものである。よって、バインダー樹脂と光重合性化合物との屈折率差が大きいことが好ましい。本実施の形態においては、バインダー樹脂と光重合性化合物との屈折率差を大きくするために、下記一般式(7)で表される有機金属化合物を体積型ホログラム用樹脂組成物中に添加することもできる。
M(OR”)k ・・・(7)
ここで、MはTi、Zr、Zn、In、Sn、Al、Se等の金属、R”は炭素数1〜10のアルキル基を表し、kは金属Mの価数である。
【0110】
上記一般式(7)で表される化合物を体積型ホログラム用樹脂組成物中に添加すると、水、酸触媒の存在下でゾルゲル反応により、バインダー樹脂と網目構造を形成する。したがって、バインダー樹脂の屈折率を高くするたけでなく、膜の強靭性、耐熱性を向上させる効果がある。よって、光重合性化合物との屈折率差を大きくするには、金属Mは高い屈折率を有するものを使用することが好ましい。上記バインダー樹脂は、体積型ホログラム用組成物中に、通常15〜50重量%の範囲内、好ましくは20〜40重量%の範囲内で用いられる。
【0111】
次に、体積型ホログラム層の形成について説明する。
【0112】
体積型ホログラム層の形成は、まず上記体積型ホログラム用樹脂組成物を、例えば目的とする基材フィルム上に、一般的なコーティング手段により塗布し、必要に応じて乾燥し、体積型ホログラム形成用層とする。また、体積型ホログラム形成用層は、例えば2枚のガラス板等の基材の間に体積型ホログラム用樹脂組成物を注入することによって形成されたものであってもよい。次に、上記体積型ホログラム形成用層に、通常ホログラフィー露光装置に用いられるレーザー光(コヒーレンス性の優れた光(例えば波長300nm〜1200nmの光))による露光によって、上述した光重合性化合物を重合させて、目的とする像の干渉縞を記録する。これにより、体積型ホログラム層が形成される。
【0113】
上記体積型ホログラム用樹脂組成物は、塗布の際、必要に応じて溶媒を用いてもよい。このような溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を使用することができる。また、これらの溶媒を1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、体積型ホログラム用樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター等の方法を使用することができる。
【0114】
上記体積型ホログラム用樹脂組成物の塗布量は、体積型ホログラム層の用途や種類によって適宜選択されるものであるが、通常1g/m2〜100g/m2の範囲内、好ましくは2g/m2〜40g/m2の範囲内とされ、体積型ホログラム形成用層の膜厚は、通常1μm〜100μm、中でも2μm〜40μmの範囲内とすることが好ましい。さらに、体積型ホログラム用樹脂組成物を硬化させて形成される体積型ホログラム層の膜厚としては、1〜100μm、中でも10〜40μmの範囲内とすることが好ましい。
【0115】
上記体積型ホログラム形成用層に、通常ホログラフィー露光装置に用いられるレーザー光(コヒーレンス性の優れた光(たとえば波長300nm〜1200nmの光))による露光によって、上述した光重合性化合物を重合させて、目的とする像の干渉縞を記録する。上記レーザー光としては、可視レーザー、例えばアルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、ヘリウム−ネオンレーザー(633nm)、YAGレーザー(532nm)等を使用することができる。
【0116】
上記の像の干渉縞を記録する方法としては、従来の公知の方法を使用することができる。例えば、上記体積型ホログラム形成用層に原版を密着させ、基材フィルム側から可視光、あるいは紫外線や電子線等の電離放射線を用いて干渉露光を行うことにより像の干渉縞が記録される。また、屈折率変調の促進、光重合性化合物等の重合反応完結のために干渉露光後、紫外線による全面露光や加熱等の処理を適宜行うことができる。
【0117】
上述のように形成された体積型ホログラム層である回折層15は、特定の波長領域の光のみを回折する。そして、回折層15によって反射される光の波長領域は、干渉縞記録時に用いられる光の波長を調節することによって、調整することができる。したがって、回折層(透過型体積型ホログラム層)15が反射(回折)する光の波長領域(選択波長領域)を調整しておくことにより、回折層15が再生する像を所望の色で視認し得るようにすることができる。一例として、回折層15によって反射される光の半値幅に対応する波長領域、言い換えると、回折層15によって反射(回折)される光の波長に対する光量分布において最大反射光量の半分以上の光量を確保できる波長領域を520〜540nmとすると、回折層15からの反射光を緑色の像として視認することができる。
【0118】
ここで、回折層15が回折する光の波長領域と、先に説明した反射層12が反射する光の波長領域との関係について説明する。
【0119】
図4乃至図6は、回折層15及び反射層12が反射する光の波長領域について説明する図である。図4乃至図6中の曲線Hは、回折層15が反射(回折)する光の波長に応じた光量の分布を示し、曲線Cは、反射層12が反射する光の波長に応じた光量の分布を示している。
【0120】
上述したように、反射層12および回折層15が反射し得る光の波長領域は調整し得る。図4乃至図6には、反射層12の選択波長範囲および回折層15の選択波長範囲を種々変更した例が示されている。以下、各例について順に説明していく。
【0121】
まず、図4に示す例について説明する。ここで、先に用いた「半値幅」についてまず説明しておく。図4に示された回折層15を例とすると、半値幅とは、反射光量(回折光量)のピーク値Aの半分(A/2)となる波長間の幅であり、領域Dに示した範囲(半値幅20nm)である。言い換えると、回折層15によって反射される光の波長に対する光量分布Hにおいて反射光量のピーク値Aの半分(A/2)以上の反射光量を有するようになる波長領域Dの幅のことである。そして、回折層15によって反射される光には、この半値幅に対応した波長領域520〜540nmの範囲の波長を有する光が多く含まれる。このため、反射光には緑色以外の色として視認され得る光も含まれるが、反射光(回折層15によって再生される像)は、全体的に緑色として把握される。
【0122】
一方、図4に示す例の反射層12については、反射光量のピーク値Bの半分(B/2)となる領域Eで示される半値幅は60nmである。また、半値幅に対応する波長領域は480〜540nmの範囲である。この結果、回折層15と同様に、反射層12によって反射される光は、全体的に緑色として把握される。
【0123】
なお、回折層15の半値幅に対応した波長540nmと反射層12の半値幅に対応した波長540nmとが同一の値であり、本来図4において重なるものであるが、理解を容易にするために、図4では、あえて位置をずらして示している。
【0124】
このように、図4に示す例においては、回折層15が反射する光の半値幅に対応する波長領域は、反射層12が反射する光の半値幅に対応する波長領域内に含まれている。したがって、反射層12の反射光と回折層15の反射光は、多少の色味の違いはあるものの、いずれも緑色に観察される。
【0125】
次に、図5に示す例について検討する。
【0126】
図5に示す例において、回折層15によって反射(回折)される光の光量分布Hは、図4に示す例と同一になっている。したがって、半値幅Hに対応する波長領域は520nmから540nmである。
【0127】
一方、図5に示す例の反射層12について、半値幅に対応する波長領域は605nmから675nmである。この結果、回折層15と異なり、反射層12によって反射される光は、全体的に赤色として把握される。
【0128】
このように、図5に示す例においては、回折層15が反射する光の半値幅に対応する波長領域は、反射層12が反射する光の半値幅に対応する波長領域から外れており、全く重なっていない。したがって、反射層12の反射光と回折層15の反射光は、異なる色として識別され得る。
【0129】
次に、図6に示す例について説明する。
【0130】
図6に示す例の回折層15について、半値幅に対応する波長領域は600nmから620nmである。この結果、回折層15によって反射(回折)される光は、全体的に赤色として把握される。
【0131】
一方、図6に示す例の反射層12について、半値幅に対応する波長領域は410nmから480nmである。この結果、回折層15と異なり、反射層12によって反射される光は、全体的に青色として把握される。
【0132】
このように、図6に示す例において、回折層15が反射する光の半値幅に対応する波長領域は、反射層12が反射する光の半値幅に対応する波長領域から外れており、全く重なっていない。したがって、反射層12の反射光と回折層15の反射光は、異なる色として識別され得る。
【0133】
また、図6によく示されているように、一般的に、コレステリック規則性の液晶構造は、短波長側よりも長波長側においてより鋭い選択波長性を有するようになる。つまり、コレステリック液晶構造による反射光の光量分布Cは、短波長側よりも長波長側において傾きがきつくなる。したがって、図6に示す例のように、反射層12によって反射される特定の光の波長領域が、回折層15によって回折される特定の光の波長領域よりも短波長側にある場合、より具体的な態様としては、反射層12の選択中心波長が回折層15の選択中心波長よりも短波長である場合、反射層12によって反射される光の波長領域と、回折層15によって回折される光の波長領域と、をより明瞭に区分けすることができる。つまり、反射層12によって反射される特定の光の波長領域を、回折層15によって反射される特定の光の波長領域よりも短波長側に配置されるようにすることにより、反射層12の反射光と回折層15の反射光とを、より明瞭に異なる色として識別することができるようになる。
【0134】
その一方で、図6に示す例とは逆に、反射層12によって反射される特定の光の波長領域が、回折層15によって回折される特定の光の波長領域よりも長波長側にある場合、より具体的な態様としては、反射層12の選択中心波長が回折層15の選択中心波長よりも長波長である場合、反射層12によって反射される光の波長領域の一部または全部と、回折層15によって回折される光の波長領域の一部または全部と、を重ねやすくすることができる。この場合、後述するように、偽造品の作成が極めて困難な真正性表示体を容易かつ確実に作成することができるようになる。
【0135】
(反射率について)
図7は、反射層12及び回折層15の選択反射波長領域を重ねた場合のそれぞれの層からの光の反射について説明する図である。
【0136】
例えば、右偏光成分の光がコレステリック液晶構造からなる反射層12の反射部12aにおいて反射される場合には、左偏光成分の光はコレステリック液晶構造からなる反射層12の反射部12aにおいて反射せず、反射層12を透過する。すなわち、コレステリック液晶構造からなる反射層12の反射部12aは、入射する光(光線A)のうち最大で半分を反射し、残りの光(光線C)を透過させる。したがって、観察面側に反射層12を設けた場合には、無偏光状態の入射光のうち半分以上が反射層12で反射せずに透過する。そして、多くの光(光線C)が回折層15に到達するとともに、回折層15で回折されるようにすることができる。これにより、反射層12が回折層15よりも観察面側に配置されている場合、反射層12によって反射された反射色(光線B)と、回折層15によって再生された像(光線D)と、の両方を十分な明るさで明瞭に観察することができるようにし得る。
【0137】
ここで、上述のように、反射層12の反射部12aがパターンを形成するようにすることができる。そして、パターンが形成されている部分の面積を調整することによって、反射層12全体としての反射率を調節することもできる。
【0138】
一方で、回折層15が反射層12よりも観察面側に配置されている場合についても、リップマンホログラムの反射率(回折効率)が100%ではないため、リップマンホログラムで回折されずに透過した光が反射層12に入射し、その入射光のうちの一部が反射層12で反射する。したがって、この場合も、反射層12によって反射された反射色(光線B)と、回折層15によって再生された像(光線D)と、の両方を観察することができる。
【0139】
(真正性の判定方法、真正性表示体の作用効果)
上述したように、反射層12の選択波長領域および回折層15の選択波長領域を調整することができる。すなわち、図5および図4に示すように、反射層12の選択波長領域および回折層15の選択波長領域が、少なくとも一部分において重なるようにすることができる。また、図4に示すように、反射層12の選択波長領域および回折層15の選択波長領域のいずれか一方が他方を含むようにすることもできる(ここで一方が他方を含む態様には、反射層12の選択波長領域および回折層15の選択波長領域が一致することも含まれる)。さらに、図6に示すように、反射層12の選択波長領域および回折層15の選択波長領域が完全にずれる、すなわち全く重ならないようにすることもできる。
【0140】
またさらに、反射層12によって反射される光の波長に対する光量分布Cにおいて最大光量Bの半分以上の光量を有するようになる波長領域Eと、回折層15によって反射される光の波長に対する光量分布Hにおいて最大光量Aの半分以上の光量を有するようになる波長領域Dとの一方が他方を含むようにすることもできる(ここで一方が他方を含む態様には、波長領域Dと波長領域Eとが一致することも含まれる)。また、反射層12によって反射される光の波長に対する光量分布Cにおいて最大光量Bの半分以上の光量を有するようになる波長領域Eが、回折層15によって回折される光の波長に対する光量分布Hにおいて最大光量Aの半分以上の光量を有するようになる波長領域Dから外れるようにすることもできる。
【0141】
そして、いずれの場合においても、反射層12の反射部12aによって反射される光はいずれか一方の右円偏向成分(あるいは左円偏向成分)だけである。したがって、右円偏向成分を吸収し得る円偏向板50を介し、真正性表示体101からの反射光を観察すると、それまで観察することができていた反射部12aからの反射光を観察することができなくなる(図2(b)および図2(e)参照)。一方、回折層15によって反射(回折)されるか否かは、偏向成分に依存しないため、円偏向板50を介したとしても、回折層15によって再生される像を、円偏向板50を介さない場合と同様に観察することができる。このような偏向板50を用いた判定を行うことにより、真正性表示体101の真正性を正確に識別することができる。
【0142】
なお、反射層12の選択波長領域および回折層15の選択波長領域が完全にずれている、あるいは部分的にずれている場合には、回折層15によって再生される像と、反射層12の反射部12aによって反射される光と、を異なる色で視認し得る。この場合、反射層12の反射部12aからの反射光の有無を明瞭に判断することができる。
【0143】
また、上述したように、反射層12の反射部12aがパターンを形成することが有用である。この場合、反射層12の反射部12aからの反射光をパターンとして視認することができるので、反射層12の反射部12aからの反射光の有無を明瞭に判断することができる。
【0144】
さらに、レリーフホログラムは、左右方向の視点の移動での画像の切り替えが可能であるのに対して、回折層15は、左右方向と上下方向の2方向の視点の移動での像の切り替えが可能であり、立体感や奥行きのある像の再生が可能である。
【0145】
また、図2(d)に示すように、反射層12の選択波長領域および回折層15の選択波長領域が少なくとも一部分において重なる場合、回折層15によって再生される像を視認することができる状態で、同時に、反射層12の反射部12aによって反射される光を視認することができる。したがって、この真正性表示体を原版として回折層15をなす体積型ホログラムを偽造すると、偽造品には反射層12の反射部12aによって反射される光も記録されてしまう。このような偽造品は、上述した円偏向板50を用いた判定方法により、容易かつ確実に偽造品と判断することができる。
【0146】
さらに、体積ホログラム層からなる回折層15は、その製造、複製に高度な技術と特殊な設備を必要とし、使用する材料も特殊であり、その流通が管理されている。そのため、回折層15は、偽造が困難である。
【0147】
また、反射層12と回折層15とを積層して一体とした真正性表示体101とすることにより、貼付作業が容易である。加えて、真正性を判定する際に、反射層12と回折層15との双方を用いた真正性の判定が可能であり、偽造防止効果をさらに高めることができる。
【0148】
(変形例)
なお、上記の実施の形態に対する種々の変形や変更が可能である。
【0149】
(1)上述した実施の形態において、コレステリック規則性の構造を有する反射層12として、カイラルネマチック液晶を用いる例を示したが、これに限らず、例えば、コレステリック液晶等を用いてもよい。また、その他の螺旋構造領域を形成し得る組成物を用いて反射層12を作製してもよい。
【0150】
(2)上述した実施の形態において、反射層12の反射部12aが格子状のパターンを形成するように配置される例を示したが、これに限られない。例えば、文字や模様等を形成するように反射層12の反射部12aをパターニングし、意匠性を高めてもよい。また、上述したように、反射層12の反射部12aの一部分のみをプラーナー配向状態としてもよい。そしてこの場合、プラーナー配向させる領域あるいはその他の領域を、文字や模様等を形成するようにパターニングしてもよい。
なお、反射層12の反射部12aをパターニングする方法としては、例えば、特開2004−133179号公報に開示された手法を用いることができる。
また、反射層12は、その厚さや、螺旋ピッチ数を変化させることにより反射率を調整して設けてもよい。一方、反射層12を支持基材となる層の全面に形成してもよい。この場合、層の厚みや螺旋ピッチ数を変化させることにより、反射層12の反射率を調整することが有用である。
【0151】
(3)上述した実施の形態において、真正性表示体の各層間に、プライマーを塗布してなるプライマー層をさらに設けるようにしてもよい。プライマー層を設けることによって、各層間の密着性を向上させることができる。また、対象物との密着性を上げるため、ヒートシール層23と対象物との間に、さらに別のヒートシール層を設けるようにしてもよい。
【0152】
(4)上述した実施の形態において、回折層15の裏面側に第2粘着層16と基材層17とを設ける例を示したが、これに限らず、易接着PET層を設けてもよい。
【0153】
(5)上述した実施の形態において、回折層15よりも裏面側(観察面側とは反対側)にバリア層を設けてもよい。回折層15を形成する樹脂組成物やセパレータ、ならびにヒートシール層等の組み合わせによっては、経時的に回折層15から他の層への低分子量成分の移行が起こり、これに起因して記録されたホログラムのピーク波長が青側(短波長側)に移行したり、セパレータ等にこれが移行した場合にはその剥離性を変化させたりする場合がある。そこで、バリア層を設けることにより、これらの阻害要因を解消し、真正性表示体としての耐久性を向上させてもよい。
このようなバリア層として用いられ得る材料としては、そのバリア性を発現する材料であれば、特に制限はないが、通常、透明性有機樹脂材料を用いることによってその目的を達成することができる。中でも、無溶剤系の3官能以上、好ましくは6官能以上の、紫外線や電子線等の電離放射線に反応する電離放射線硬化性エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。特に、その中でもウレタン変性アクリレート樹脂がそのバリア性の高さから好ましく用いられる。
また、これらの電離放射線硬化性樹脂としては、そのコーティング適性、最終的に得られるバリア層の硬度等を考慮すると、その分子量は500〜2000の範囲のものが好ましく用いられる。また、バリア層のコーティングは基本的に無溶剤系であるため、回折層、セパレータ、ヒートシール層のどの層にも積層形成できる。また、各層の密着性が弱い場合には、密着性を向上させる機能を有する層等が形成されたものであってもよい。
【0154】
(6)上述した実施の形態において、回折層15をなす体積型ホログラムとして、反射型体積型ホログラムを用いた例を示したが、これに限られない。回折層15をなす体積型ホログラムとして、透過型体積型ホログラムを用いるようにしてもよい。この場合、透過型体積型ホログラムの裏面側に別途の反射層を設けることにより、透過型体積型ホログラムに記録された像を、別途の反射層で反射された光として視認することができる。なお、別途の反射層としては、公知の層を用いることができ、例えば、コレステリック液晶層を用いることもできる。また、この別途の反射層は透明性を有している必要はない。
【0155】
(実施例)
以下、本発明による真正性表示体を、具体的な実施例により詳細に説明する。
【0156】
(実施例1)
以下に説明する真正性表示体101の実施例1は、上述した図1に示す態様である。以下において、図1に示す真正性表示体101の反射層12および回折層15以外の層についても詳細に説明する。上述したように、実施例1に係る真正性表示体101は、対象物に容易に貼付可能なラベルとして使用され得るようになっている。
【0157】
真正性表示体101は、観察面5の側から裏面6の側へ、保護層11、反射層12、支持基材層(易接着PET層)13、第1粘着層14、回折層15、第2粘着層16、基材層(黒色PET層)17、第3貼付層(貼付層)18、第4セパレータ19の順に積層されている。
【0158】
保護層11は、真正性表示体101の表面を保護する層であり、最も観察面側に積層されている。保護層11は、略透明であるので、保護層11を介して、コレステリック液晶層12によって反射される反射光および回折層15によって再生される像を目視し、真正性の判定を行うことができる。保護層11は、観察面側からの入射光の偏光を乱すことなく反射層12の偏光分離機能を発揮させる必要があることから、複屈折の少ない材料を用いることが望ましい。例えば、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリカーボネート系高分子、シクロオレフィンポリマーから成るフィルム等が使用できる。
【0159】
また、保護層11として、例えばアクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等から、1種又は2種以上を混合した樹脂や、紫外線、電子線等に反応する電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化系樹脂を一般的に知られている方法で塗布したものを用いてもよい。
【0160】
支持基材層13は、ポリエチレンテレフタレート(PET)により形成された易接着性を有する易接着PET層であり、反射層12の支持基材となる層である。この支持基材層13は、略透明である。反射層12の支持基材としては、ポリカーボネート系高分子、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系高分子、ポリイミド系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリスチレン系高分子、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、酢酸セルロース系高分子、ポリ塩化ビニル系高分子、ポリアクリレート系高分子、ポリメチルメタクリレート系高分子などの熱可塑性ポリマーなどからなるフィルムを用いることができる。
【0161】
なお、支持基材層13上に反射層12を積層する場合には、前述のように、コレステリック規則性の構造を示す液晶性組成物を塗布した後、配向処理及び硬化処理を行うのが一般的である。そしてこのとき、反射層12に拡散性を持たせるならば、コレステリック液晶構造がプラーナー配向状態とならないように制御する必要がある。この場合、支持基材層13としては、液晶性組成物が塗布される側の表面に配向能を有していないものを用いることが好ましい。ただし、支持基材層13のうち液晶性組成物が塗布される側の表面の材料が、延伸フィルムなどのように表面に配向能を有しているものであっても、支持基材層13としての延伸フィルムの表面に表面処理を施したり、液晶性組成物の材料や、液晶性組成物を配向処理する際のプロセス条件などを制御したりすることにより、反射層12のコレステリック液晶構造がプラーナー配向状態とならないように制御することも可能である。
【0162】
また、支持基材層13の液晶性組成物が塗布される側の表面が配向能を有している場合には、反射層12と支持基材層13との間に易接着層などの中間層を設けることにより、コレステリック液晶構造の配向状態を制御し、コレステリック液晶構造のうち中間層との界面近傍の液晶分子のダイレクターが複数の方向に向くようにすることも可能である。なお、易接着層などの中間層を設ける場合には、反射層12と支持基材層13との間の密着性を高めることもできる。なお、このような中間層としては、反射層12の材質及び支持基材層13の材質の両方に対して高い密着性が得られるものであればよく、一般に市販されているものを用いることができる。具体的には、例えば、東洋紡績(株)製の易接着層付PETフィルムA4100や、パナック社製の易接着材料AC−X、AC−L、AC−Wなどが挙げられる。
【0163】
第1粘着層14は、略透明であり、粘着剤を塗布して形成された層である。本実施例では、粘着剤を用いた粘着層としたが、加熱され加圧されることにより、接着性を発揮するヒートシールを用いたヒートシール層としてもよい。第2粘着層16は、粘着剤を塗布して形成される層である。基材層17は、その観察面側に粘着層16を介して回折層15が形成されている。本実施例では、黒色のポリエチレンテレフタレート(PET)により形成されており、対象物の表面反射を除去するとともに、見た目のコントラストを向上させて、画像をより見やすくしている。第3粘着層18は、粘着剤を塗布して形成される層であり、真正性表示体101を対象物に容易に貼付可能とする貼付層である。第4セパレータ19は、第3貼付層18の裏面側に積層された剥離可能な剥離部材である。
【0164】
図8は、実施例1の真正性表示体の製造方法を示す図である。実施例1の真正性表示体101は、積層体S1から積層体S6を積層することにより形成されている。以下、各積層体について説明する。
【0165】
積層体S1は、保護層11、反射層12、支持基材層13が積層されることによって、形成されている。まず、支持基材層13である易接着PETフィルム(コスモシャインA4100(50μm);東洋紡績(株)製)の易接着面上に、下記のように調整したコレステリック液晶溶液をバーコーターにより乾燥後の膜厚が1.6μmとなるように塗布後、80℃のオーブンで加熱し配向処理(乾燥処理)を行った。
【0166】
(コレステリック液晶溶液)
・紫外線硬化型のネマチック液晶からなる主剤:95.8重量部
・重合性カイラル剤:4.2重量部
・光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製):5重量部
上記主剤に重合性カイラル剤及び光重合開始剤を添加したものを、シクロヘキサノンに溶解し、コレステリック液晶溶液を得た。
【0167】
その後、窒素雰囲気下で反射層12に対して365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射し、反射層12を硬化させることにより510nmに反射中心波長を有する反射層12/支持基材層13を得た。このようにして得られた反射層12/支持基材層13の反射層12上に、下記組成からなる保護層溶液をバーコーターにより乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、80℃のオーブンで乾燥させて積層体S1を得た。
【0168】
(保護層溶液)
・ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量 100,000):100重量部
・メチルエチルケトン:400重量部
積層体S2は、第1未処理PET層41、体積型ホログラム層からなる回折層15、第2未処理PET層42が積層されることによって、形成されている。第2未処理PET層42(ルミラーT60(50μm);東レ(株)製)上に下記組成からなる体積型ホログラム記録用溶液を、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにアプリケータを用いて塗布した。その後、塗布した体積型ホログラム記録用溶液を90℃のオーブンで乾燥させて体積型ホログラム記録用層/第2未処理PET層42を得た。この得られた積層体の体積型ホログラム記録用層面をホログラム原版に密着させ、レーザー光(532nm)を第2未処理PET層側から80mJ/cm2入射し、体積型ホログラム記録用層にホログラムの像を記録し、回折層15を形成した。その後、回折層15を含む積層体をホログラム原版から剥離させ、第1未処理PET層41(ルミラーT60(50μm))を積層体の回折層15上にラミネートした。その後、積層体に対して加熱処理および紫外線定着露光処理を施して、530nmに反射中心波長を有する積層体S2を得た。
【0169】
(体積型ホログラム記録用溶液)
・ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量 200,000):100重量部
・9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン:80重量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル:70重量部
・ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート:5重量部
・3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニンヨードニウム塩:1重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/1−ブタノール=1/1(重量比)):200重量部
積層体S3は、第1セパレータ43、第1粘着層14、第2セパレータ44が積層されることによって、形成されている。第2セパレータ44(SPPET(50μm);東セロ(株)製)上に下記組成からなる粘着層溶液を乾燥後の膜厚が20μmとなるようにアプリケータを用いて塗布した。その後、第2セパレータ44および粘着層溶液を100℃のオーブンで乾燥させて第1粘着層14/第2セパレータ44を得た。次に、第1粘着層14/第2セパレータ44の第1粘着層14側に第1セパレータ43(SPPET(38μm);東セロ(株)製)をラミネートして積層体S3を得た。ここで使用した第1セパレータ43と第2セパレータ44は剥離力の異なるものを用いた。
【0170】
(粘着層溶液)
・アクリル系粘着剤(ニッセツPE−118;日本カーバイド工業(株)製)):100重量部
・イソシアネート系架橋剤(ニッセツCK−101;日本カーバイド工業(株)製:2重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン/酢酸エチル=2/1/1(重量比)):60重量部
積層体S4は、第3セパレータ45、第2粘着層16、基材層(黒色PET層)17、第3粘着層(貼付層)18、第4セパレータ19が積層されることよって、形成されている。基材層17である黒色PETフィルム(ルミラーX30(75μm);東レ(株)製)上に、第1粘着層14で使用した粘着層溶液と同じものを乾燥後の膜厚が25μmとなるようにアプリケータを用いて塗布した。その後、基材層17および粘着層溶液を100℃のオーブンにて乾燥させて第2粘着層16/基材層17を得た。その後、第2粘着層16/基材層17の第2粘着層16側に第3セパレータ45(SPPET(38μm);東セロ(株)製)をラミネートして、第3セパレータ45、第2粘着層16、基材層17を得た。その後、基材層17のもう一方の面に、同様な方法により、第3粘着層18(溶液は第1粘着層14と同じものを使用)を形成し、第4セパレータ19(SPPET(38μm);東セロ(株)製)をラミネートして積層体S4を得た。
【0171】
実施例1の真正性表示体101は、これらの積層体S1から積層体S4を用いて、以下のように形成される。
【0172】
積層体S2(第1未処理PET層41/回折層15/第2未処理PET層42)の第1未処理PET層41、及び積層体S3(第1セパレータ43/第1粘着層14/第2セパレータ44)の第2セパレータ44を剥離し、積層体S2の回折層15面と第1粘着層14面を向かい合わせてラミネートして積層体S5(第1セパレータ43/第1粘着層14/回折層15/第2未処理PET層42)を得た。その後、積層体S5の第2未処理PET層42及び積層体S4(第3セパレータ45/第2粘着層16/基材層17/第3粘着層18/第4セパレータ19)の第3セパレータ45を剥離し、積層体S5の回折層15面と積層体S4の第2粘着層16面を向かい合わせてラミネートして積層体S6(第1セパレータ43/第1粘着層14/回折層15/第2粘着層16/基材層17/第3粘着層18/第4セパレータ19)を得た。次に、積層体S6の第1セパレータ43を剥離し、積層体S6の第1粘着剤14面と積層体S1(保護層11/反射層12/支持基材層13)の支持基材層13面とを向かい合わせてラミネートして真正性表示体101を得た。
【0173】
実施例1によれば、真正性表示体101は、反射層12による真正性を表示する機能と、回折層15による真正性を表示する機能とを有するラベルとして使用することができる。また、真正性表示体101は、ラベルとして提供できるので、様々な対象物に容易に貼付して利用することができる。
【0174】
反射層12は、回折層15よりも観察面側に設けられているので、回折層15の複製条件に一致したレーザー光源及び入射角度において複製を妨げるように設けることができる。例えば、回折層15が、入射角度が30°にて複製できるホログラム(緑色)の場合、入射角度30°での光を反射する反射層12を設けると、反射層12の反射光も記録されてしまうので、回折層15を複製できない。
【0175】
また、反射層12は、再生波長にかかわらず、斜め入射では位相差を持ち、反射層12の厚みを厚くすることにより、回折層15へ入射する光と回折層15から反射する光の間に生じる位相差を大きくすることができる。これは特定角度からの再生入射光を反射層12が反射しない場合でも、位相差を生じるため、複製しにくくする効果をもたらす。
【0176】
さらに、直線偏光で複製を試みた場合、法線から角度がついた入射光では反射層12が位相子として働き、入射光の位相がずれる。さらにまた、回折層15で回折された光は、反射層12を透過する際に再度位相がずれる。例えば、位相がλ/10以上ずれた場合には、複製は困難になり、λ/2となった場合には位相が反転するので干渉しない。したがって複製を防止することができる。
【0177】
その上、そもそもコレステリック反射面に入射する入射光の一部が反射するため、反射層12の像が記録されてしまう。よって、複製されたホログラムには、所望画像以外に反射層12による反射成分が記録される。このため上述した、円偏向板を用いた真正性判断により、このような複製品を偽造品と判定することができる。すなわち、より偽造が困難な真正性表示体とすることができる。
【0178】
(実施例2)
図9は、本発明による真正性表示体の実施例の実施例2の層構成を示す図である。実施例2に係る真正性表示体102は、対象物に容易に貼付可能なラベルとして使用され得るようになっている。
【0179】
実施例2の真正性表示体102は、観察面5の側から裏面6の側へ、保護層11、反射層12、支持基材層(両面易接着PET層)20、回折層15、第2粘着層16、基材層(黒色PET層)17、第3粘着層3(貼付層)18、第4セパレータ19の順に積層されて構成されている。
【0180】
図10は、実施例2の真正性表示体の製造方法を示す図である。
【0181】
実施例2の真正性表示体102は、積層体S4、積層体S7を用いて、以下のように形成される。
【0182】
積層体S7は、保護層11、反射層12、支持基材層20を積層することによって、形成されている。この積層体S7は、実施例1に示した積層体S1と略同様であるが、支持基材層20として、易接着PETフィルムではなく両面易接着PETフィルム(コスモシャインA4300(50μm);東洋紡績(株)製)を用いている点において異なる。実施例1に示した積層体S2を作製するときにラミネートする第1未処理PET層41の代わりに、積層体S7の支持基材層20面と回折層15面とを向かい合わせてラミネートしたこと以外は同様な方法で、積層体S8(保護層11/反射層12/支持基材層20/回折層15/第2未処理PET層42)を得た。その後、積層体S8の第2未処理PET層42及び積層体S4の第3セパレータ45を剥離し、積層体S8の回折層15面と積層体S4の第2粘着層16面を向かい合わせてラミネートすることにより、真正性表示体102が得られた。
【0183】
実施例2では、支持基材層20として両面易接着PETフィルムを用い、支持基材層20の裏面側に、直に回折層15を設ける例を示したが、これに限らず、支持基材層20として易接着PETフィルムを用い、この易接着PETフィルムと回折層15との間に、略透明である粘着剤を塗布して粘着層を形成し、回折層15を設けてもよい。
【0184】
(実施例3)
図11は、本発明による真正性表示体の実施例の実施例3の層構成を示す図である。
【0185】
実施例3の真正性表示体103は、観察面5の側から裏面6の側へ、第3未処理PET層21、剥離性保護層22、反射層12、回折層15、ヒートシール層23の順に積層されている。実施例3の真正性表示体103は、反射層12及び回折層15を対象物に転写して利用するものである。
【0186】
第3未処理PET層21は、最観察面側に積層されるが、熱転写後に剥離される層である。
【0187】
剥離性保護層22は、対象物上に反射層12及び回折層15を転写する際に、第3未処理PET層21の剥離を容易に行うことを可能とする層であり、例えばアクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等から、1種又は2種以上を混合したもの等を用いることができる。上記の中でも、分子量20000〜100000程度のアクリル系樹脂単独、又はアクリル系樹脂と分子量8000〜20000の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とからなり、さらに添加剤として分子量1000〜5000のポリエステル樹脂が1〜5重量%含有する組成物からなることが特に好ましい。
【0188】
ヒートシール層23は、最も裏面側に形成される層であり、反射層12及び回折層15を熱転写により対象物に転写する際に、密着させて加熱等することにより、回折層15と対象物とを接着する。したがって、ヒートシール層23は、真正性表示体103を対象物に貼付可能とする貼付層としての機能を有する。
【0189】
このようなヒートシール層23としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体樹脂、セルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。上記の中でも、180℃以下の温度でヒートシール可能な層であることが好ましく、さらにエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)の酢酸含量25%以上のものを用いることが好ましい。また、上記樹脂に、必要に応じてヒートシール層が着色されたものであってもよい。
【0190】
図12は、実施例3の真正性表示体の製造方法を示す図である。
【0191】
実施例3の真正性表示体103は、積層体S9を用いて以下のように形成される。
【0192】
積層体S9は、第3未処理PET層21、剥離性保護層22、反射層12が積層されることによって、形成されている。まず、第3未処理PET層21(ルミラーT60(25μm);東レ(株)製)上に、下記組成からなる剥離性保護層溶液を、バーコーターにて乾燥後の膜厚が1μmとなるように塗布した。
【0193】
(剥離性保護層溶液)
・ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量 100,000):97重量部
・ポリエチレンワックス(重量平均分子量 10,000、平均粒径 5μm):3重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比)):400重量部
その後、100℃のオーブンで乾燥させて第3未処理PET層21/剥離性保護層22を得た。次に、剥離性保護層22上に積層体S1で使用したコレステリック液晶溶液をバーコーターにより乾燥後の膜厚1.6μmとなるように塗布した後、80℃のオーブンで加熱し配向処理(乾燥処理)、硬化処理(例えば紫外線硬化処理)を行い、積層体S9が得られた。
【0194】
次に、積層体S2の作製方法と同様にして、積層体S10を作製した。ただし、積層体S10の作製においては、積層体S2の作製において、回折層と第1未処理PET層41とをラミネートしたことに代え、回折層15面と積層体S9の反射層12面とを向かい合わせてラミネートした。これにより、積層体S10(第3未処理PET層21/剥離性保護層22/反射層12/回折層15/第2未処理PET層42)が得られた。その後、積層体S10の第2未処理PET層42を積層体S10のその他の部分から剥離した。次に、回折層15面上に下記組成からなるヒートシール層溶液を乾燥後の膜厚が4μmとなるようにバーコーターにて塗布し、その後、積層体を100℃のオーブンで乾燥させて真正性表示体103を得た。
【0195】
(ヒートシール層溶液)
・ポリエステル樹脂(バイロナールMD1985;東洋紡績(株)製):100重量部
・溶剤(水/イソプロピルアルコール=1/1(重量比)):100重量部
実施例3によれば、真正性表示体103は、積層される層の数が少なく、厚みを薄く積層されており、ヒートシール層23によって対象物に貼付可能であるので、真正性を表示する機能を有する転写箔として使用できる。また、最観察面側に積層される第3未処理PET層21は、熱転写後に剥離するため、転写後の真正性表示体には残らない。
【0196】
なお、実施例3において、反射層12と回折層15との間にプライマー層を形成してもよい。
【0197】
また、実施例3では、最も観察面側に積層された第3未処理PET層21は、対象物へ貼り付けた後に、剥離することができる。この場合における真正性表示体103の最表面は剥離性保護層22となる。したがって、第3未処理PET層21は、反射層12よりも観察面側に積層されているが、複屈折性を有する部材を用いることもできる。
【0198】
(実施例4)
次に、実施例4について説明する。実施例4においては、対象物に容易に貼付可能なラベルとして使用され得る真正性表示体を示している。
【0199】
なお、実施例4から後に説明する実施例6として説明する真正性表示体においては、回折層15が反射層12よりも観察面5の側に配置されている。上述したように、このような実施例4から実施例6の真正性表示体においても、回折層15が反射光により再生する像と反射層12の反射光からの反射色とは、ともに鮮明に目視することができ、偽造が困難であり、意匠性や識別性の高い真正性表示体として用いることができる。
【0200】
図13は、真正性表示体の実施例4の層構成を示している。
【0201】
実施例4の真正性表示体104は、観察面5の側から裏面6の側へ、第3未処理PET層21、剥離性保護層22、回折層15、第1粘着層14、反射層12、支持基材層(易接着PET層)13、第1粘着層(貼付層)24、第2セパレータ25の順に積層されている。
【0202】
図14は、実施例4の真正性表示体の製造方法を示す図である。図14に示すように、この真正性表示体104は、積層体S11と積層体S12とを用いて、以下のように形成することができた。積層体S11は、第3未処理PET層21、剥離性保護層22、回折層15、第2未処理PET層42が積層されることによって、形成されている。まず、実施例3において積層体S9の作製方法で説明したようにして、第3未処理PET層21/剥離性保護層22の積層体を得た。また、実施例1において積層体S2から回折層15/第2未処理PET層42を得たのと同様にして、回折層15/第2未処理PET層42の積層体を得た。次に、得られた積層体(第3未処理PET層21/剥離性保護層22)および積層体(回折層15/第2未処理PET層42)を、剥離性保護層22面と回折層15面とが向かい合うようにして80℃で熱ラミネートし、積層体S11を得た。
【0203】
積層体S12は、第2セパレータ44、第1粘着層14、反射層12、支持基材層(易接着PET層)13、第1粘着層24、第2セパレータ25が積層されることによって、形成されている。この積層体S12は、実施例1に示した積層体S1と二つの積層体S3とを用いて形成される。
【0204】
まず、実施例1において積層体S1の作製方法で説明したようにして、反射層12/支持基材層13の積層体を得た。次に、第1セパレータ43を剥離した積層体S3の第1粘着層14と、上記で得た積層体(反射層12/支持基材層13)の反射層12とを向かい合わせてラミネートする。さらに、支持基材層13面にも同様に、第1セパレータ43を剥離した積層体S3をラミネートして、積層体S12を得た。
【0205】
積層体S11の第2未処理PET層42及び積層体S12の第2セパレータ44を剥離し、回折層15面と第1粘着層14面とを向かい合わせてラミネートすることにより、真正性表示体104が得られる。ここで、実施例4では、貼付層として第1粘着層24を用いる例を示したが、ヒートシール層23を用いてもよい。
【0206】
実施例4によれば、回折層15は、反射層12よりも観察面側(光の入射側)に設けられているので、回折層15が複製される可能性はあるが、反射層12による偏光機能は複製が困難である。したがって、円偏光板を通して見た場合に、反射層12からの反射光の見え方が変化することは無く、反射層12の機能は失われたものしか複製できない。このため、偽造された場合にもその真贋は容易に判定可能である。
【0207】
また、回折層15は、その回折効率が100%でないので、回折層15を透過した光が反射層12で反射する。したがって、この真正性表示体を原版として偽造品を複製した場合、偽造品には反射層12からの反射成分が記録されてしまう。したがって、より偽造が困難な真正性表示体とすることができる。
【0208】
(実施例5)
実施例5においては、対象物に容易に貼付可能なラベルとして使用され得る真正性表示体を示している。
【0209】
図15は、真正性表示体の実施例5の層構成を示す図である。
【0210】
実施例5の真正性表示体105は、観察面5の側から裏面6の側へ、保護層11、回折層15、支持基材層(易接着PET層)13、反射層12、支持基材層(易接着PET層)13、第3粘着層(貼付層)18、第4セパレータ19の順に積層されている。 また、支持基材層13は、膜厚が薄いものを用いることで、反射層12の偏光機能を乱すことなく、真正性表示体として使用できる。さらに、支持基材層13を2枚重ね、異方性の方向を直交させ、支持基材層13が反射層12に与える複屈折の影響を抑えてもよい。
【0211】
(実施例6)
以下に示す実施例6は、実施例4および実施例5に比べて、より厚みが薄く、対象物に転写することにより使用可能な真正性表示体の層構成を示している。
【0212】
図16は、真正性表示体の実施例6の層構成を示す図である。
【0213】
実施例6の真正性表示体106は、観察面5の側から裏面6の側へ、第3未処理PET層21、剥離性保護層22、回折層15、反射層12、ヒートシール層23の順に積層されている。真正性表示体106の作製は、まず、実施例4に示した積層体S11の第2未処理PETフィルム42を剥離し、回折層15上に積層体S1で使用したコレステリック反射層溶液を同様の方法で塗布して反射層12を形成する。さらに、その上から真正性表示体103で用いたヒートシール層溶液を同様な方法で塗布してヒートシール層23を形成して、真正性表示体106が得られる。最観察面側の第3未処理PETフィルム21は、真正性表示体106を対象物に熱転写した後に剥離するため、転写後には残らない。
【0214】
(実施例7)
実施例7として、上述した実施例1乃至6の真正性表示体の反射層15の反射波長領域を変更した真正性表示体を作製した。実施例7では、反射層の作製において、PETフィルム上に乾燥後の膜厚が4μmとなるようにコレステリック液晶溶液を塗布した。また、反射層12の反射中心波長が640nmで半値幅が70nmとなるようにした。この結果、実施例7に係る真正性表示体によれば、反射層12と回折層15とが反射する光の波長領域が異なっているため、双方の反射光の視認性を向上させることができた。また、円偏向板50を通すことによって、反射層12からの反射光の見え方が明確に異なったので、真正性表示体の真正性の判定を容易かつ正確に行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】図1は、本発明による真正性表示体の実施の形態の一例を示す層構成図である。
【図2】図2は、観察面側から見た反射層および回折層を示す図である。
【図3A】図3Aは、コレステリック液晶構造を説明するための図である。
【図3B】図3Bは、コレステリック液晶構造を説明するための図である。
【図4】図4は、反射層によって反射される光の波長に関する光量分布および回折層によって反射される光の波長に関する光量分布の一例を示す図である。
【図5】図5は、反射層によって反射される光の波長に関する光量分布および回折層によって反射される光の波長に関する光量分布の他の例を示す図である。
【図6】図6は、反射層によって反射される光の波長に関する光量分布および回折層によって反射される光の波長に関する光量分布のさらに他の例を示す図である。
【図7】図7は、反射層による反射作用および回折層による反射作用について説明するための図である。
【図8】図8は、図1に示された実施例1の真正性表示体の製造方法を示す図である。
【図9】図9は、実施例2による真正性表示体を示す層構成図である。
【図10】図10は、図9に示された実施例2の真正性表示体の製造方法を示す図である。
【図11】図11は、実施例3による真正性表示体を示す層構成図である。
【図12】図12は、図11に示された実施例3の真正性表示体の製造方法を示す図である。
【図13】図13は、実施例4による真正性表示体を示す層構成図である。
【図14】図14は、図13に示された実施例4の真正性表示体の製造方法を示す図である。
【図15】図15は、実施例5による真正性表示体を示す層構成図である。
【図16】図16は、実施例6による真正性表示体を示す層構成図である。
【符号の説明】
【0216】
5 観察面
6 裏面
11 保護層
12 反射層(液晶層、コレステリック液晶層)
12a 反射部(反射領域)
12b 透過部(透過領域)
13 支持基材層
14 第1粘着層
15 回折層(ホログラム層、体積型ホログラム層)
16 第2粘着層
17 基材層
18 第3粘着層(貼付層)
19 第4セパレータ(剥離部材)
101,102,103,104,105,106 真正性表示体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射光を観察することによってその真正性を判断され得るようになされたシート状の真正性表示体であって、
コレステリック規則性の液晶構造を有し特定の光を反射する反射部を含む反射層と、
体積型ホログラムからなり、特定の光を回折する回折層と、を備えた
ことを特徴とする真正性表示体。
【請求項2】
前記反射層によって反射される特定の光の波長領域と、前記回折層によって回折される特定の光の波長領域と、は少なくとも一部分において重なっている
ことを特徴とする請求項1に記載の真正性表示体。
【請求項3】
前記反射層によって反射される特定の光の波長領域と、前記回折層によって回折される特定の光の波長領域と、のいずれか一方は他方に含まれる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の真正性表示体。
【請求項4】
前記反射層によって反射される光の波長に対する光量分布において最大光量の半分以上の光量を有するようになる波長領域と、前記回折層によって回折される光の波長に対する光量分布において最大光量の半分以上の光量を有するようになる波長領域と、のいずれか一方は他方に含まれる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の真正性表示体。
【請求項5】
前記反射層によって反射される光の波長に対する光量分布において最大光量を有するようになる波長は、前記回折層によって回折される光の波長に対する光量分布において最大光量を有するようになる波長よりも長波長である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の真正性表示体。
【請求項6】
前記反射層によって反射される特定の光の波長領域は、前記回折層によって回折される特定の光の波長領域から外れている
ことを特徴とする請求項1に記載の真正性表示体。
【請求項7】
前記反射層によって反射される光の波長に対する光量分布において最大光量の半分以上の光量を有するようになる波長領域は、前記回折層によって回折される光の波長に対する光量分布において最大光量の半分以上の光量を有するようになる波長領域から外れている
ことを特徴とする請求項1,2,3または6に記載の真正性表示体。
【請求項8】
前記反射層によって反射される光の波長に対する光量分布において最大光量を有するようになる波長は、前記回折層によって回折される光の波長に対する光量分布において最大光量を有するようになる波長よりも短波長である
ことを特徴とする請求項1,6または7に記載の真正性表示体。
【請求項9】
前記反射層の前記反射部は、前記回折層の一部分のみと重なるように形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の真正性表示体。
【請求項10】
前記反射部のコレステリック規則性の構造はプラーナー配向状態である
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の真正性表示体。
【請求項11】
前記反射層は、入射した光を透過させる透過部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の真正性表示体。
【請求項12】
前記反射層は、並べて配置された複数の反射部および複数の透過部を含む
ことを特徴とする請求項11に記載の真正性表示体。
【請求項13】
前記反射部の一部分のみがプラーナー配向状態である
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の真正性表示体。
【請求項14】
前記反射層および前記回折層よりも、観察面側の反対側である裏面側に配置され、対象物に対して貼付可能とする貼付層をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の真正性表示体。
【請求項15】
前記貼付層よりも裏面側に積層された剥離可能な剥離部材をさらに備えた
ことを特徴とする請求項14に記載の真正性表示体。
【請求項16】
前記回折層は、反射型体積ホログラムからなる
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の真正性表示体。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−102203(P2007−102203A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240440(P2006−240440)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】