説明

真正性識別体

【課題】コレステリック液晶とレリーフホログラムとを積層した真正性識別体において、パターン形状に形成したコレステリック液晶が、そのままで認識できるため、偽造防止性に劣るという課題があった。
【解決手段】
前記コレステリック液晶層を10μm〜100μm幅のパターン状とし、前記コレステリック液晶層がある部分に位置する第1のホログラムレリーフと、前記コレステリック液晶のない部分に位置する第2のホログラムレリーフを有し、且つ、前記第2のホログラムレリーフの一部に第3のホログラムレリーフを含ませることにより、偏光板等の使用で第3のホログラムを浮き出させるという偽造防止性の高い真正性識別体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不正な意図に基づく偽造や改ざん等により得られたものと真正なものとの区別を可能にした真正性識別体に関するものである。また、本発明は、そのような真正性識別体を物品に適用するのに適するラベルの形態や転写シートの形態に加工したものにも関するものである。
本発明の「パターン」もしくは「パターン状」とは、帯状、網目状、市松文様状等の幾何模様、もしくは、その模様を呈している状態をいう。本発明では、帯状の例につき説明するが、例えば、100μmの幅の線状のコレステリック液晶が、100μmの間隔で並列に並んでいる状態をいう。
本明細書において、配合を示す「部」は質量基準である。また、「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
【背景技術】
【0002】
(主なる用途)本発明の真正性識別体の主なる用途としては、偽造防止分野に使用される真正性識別体であって、具体的には、クレジットカード等の偽造されて使用されると、カード保持者やカード会社等に損害を与え得るもの、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等がある。
これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報を保持した情報記録体であり、偽造による損害を防止する目的で、記録体そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0003】
また、これら情報記録体以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。
さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。また、プリンター用のトナー、用紙など、交換する備品を純正材料に限定している製品などにも、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0004】
(背景技術)
従来、情報記録体や上記した種々の物品(総称して、真正性識別対象物と言う。)の偽造を防止する目的で、その構造の精密さから、製造上の困難性を有すると言われるホログラムを真正性の識別可能なものとして適用することが多く行なわれている。しかしながら、ホログラムの製造方法自体は知られており、その方法により精密な加工を施すことができることから、ホログラムが単に目視による判定だけのものであるときは、真正なホログラムと偽造されたホログラムとの区別は困難である。
これらの真正性識別対象物、特にラベル形態や転写形態にてホログラム画像を施された物品は、ホログラム画像の目視確認という真正性識別のみでなく、新たな真正性識別方法を用いてその対象物の真正性を識別する必要が生じている。
【0005】
(先行技術)
これらの要求に応えるため、ホログラムに積層して、入射した光の内、左回り偏光もしくは、右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する光選択反射層をパターン状に形成し、偏光版等を使用して、その存在、すなわち、そのパターン形状をみて、真正性を確認する真偽判定用媒体が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
この光選択反射層として、コレステリック液晶を使用して、偏光版等を用いてそのパターン形状を確認する方法で偽造防止性を高めている。
しかしながら、特許文献1の記載にあるように、コレステリック液晶が見る角度によって着色し、偏光版を用いて確認しなくても、目視観察により、パターン形状を読み取ることができ、また、偏光板を利用して、コレステリック液晶パターンの下にあるホログラムからの反射光とそのパターン以外の部分のホログラムとを比較する程度の偽造防止効果しかなく、真正性を証明するという観点から不十分であるという欠点を有する。
【0006】
【特許文献1】特開2005−301093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、
ホログラムとパターン形状のコレステリック液晶とホログラムとの積層体において、通常観察においては、通常のホログラムとしてのみ観察されるが、偏光板等を通して観察した際に、隠し情報(文字等)が発現する特性を持たせることにより、真正性を高めることができる真正性識別体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、
本発明の真正性識別体の第1の態様は、
透明基材の一方の面に10μm〜100μm幅のコレステリック液晶層がパターン状に設けられ、当該パターンの対応する位置に、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層、及び、前記ホログラムレリーフに接するように反射性薄膜層を設けたことを特徴とする真正性識別体において、
前記コレステリック液晶層がある部分に位置する第1のホログラムレリーフと、前記コレステリック液晶のない部分に位置する第2のホログラムレリーフを有し、
且つ、前記第2のホログラムレリーフの一部が第3のホログラムレリーフを含んでいることを特徴とするものである。
【0009】
以下、各々のホログラムレリーフが有するホログラムについて説明する。
ホログラム(回折格子を含む)は、例えば、その異なる2つのホログラムを、100μm以下の幅(縦長の帯状)で交互に形成した上で、全体を一つの観察光で参照したとき、それぞれの帯から再生される再生像が隣の帯から再生される再生像と光の干渉を生じ、それぞれの結像を阻害して、一つの再生像として結像しない性質を持つ。
そもそも、ホログラムは、例えば、それぞれの帯から再生された光が、同一ホログラムのものである場合には、そのホログラム形成面から離れた空間で干渉し、お互いに強め合って、最終的に目視等の観察距離(30cm程度)において、鮮やかな再生像に結像して見える仕組みを持つ。これに対し、そのホログラム形成面から100μm程度離れた空間で異なる再生光との干渉が起こると、もはや一つの再生像に結像せず、穏やかな虹色としてしか観察できず、それぞれの像を判別できなくなる。
【0010】
しかも、この穏やかな虹色を呈している箇所(二つの異なるホログラムを有する箇所。)を、通常のホログラム形成領域(例えば、ひとつのホログラムを再生するホログラム領域。)の中に、部分的に埋め込んでも、埋め込んだ箇所が虹色を呈しているために、目視観察ではその埋め込んだ箇所を判別することができないという性質も有する。
但し、この性質は、ひとつのホログラムを再生するホログラムを2種類、交互に設けたとしても、それぞれが100μm以上の幅を持つとその効果が低減し、300μm以上の幅を持たせるとほぼ観察されなくなる(この効果が解消する)。
100μm幅以下で形成した、この二つのホログラムの帯の一つを遮蔽する(帯に沿って遮蔽する。)と、残る一つの帯のみから再生光がでてくることにより、それらの再生光が干渉し、強め合って、鮮やかなホログラム再生像(残った方のホログラム。)を生じる。
【0011】
本発明は、この例えば2つの帯(帯は、3種以上でも同様の現象が発生する。3種以上にするとより複雑なホログラム再生が起こり、偽造防止効果高まる。但し、同一のホログラムを形成した帯が300μm以上離れると、ホログラム再生像が鮮明でなくなる。)を用い、その一方をコレステリック液晶の偏光性(左右円偏光等)と偏光板等との組み合わせにより遮蔽して、残った方のみのホログラム再生像を再生させるものであるが、その上で、その残った方のホログラムの帯の中の一部に第3のホログラムを埋め込んでいるものである。第1、第2のホログラムが同時に再生されると、前記した干渉が起こり、第2の一部に埋め込んでいる第3のホログラムの再生も阻害する。しかし、第1のホログラムが遮蔽され、この干渉がなくなると、第2のホログラム及び、第3のホログラムが浮かび上がってくるものである。もちろん、第3のホログラムは、幅が100μm以下としても、長さは300μm以上あることが必須となる。
第3のホログラムが、回折格子であると、その埋め込んだ形状に虹色に観察される。これがホログラムであると、所定の再生像として観察される。
【0012】
また、コレステリック液晶層は、10μm以上の厚さで、強い選択反射光(赤色〜青色の着色光)を発するため、本発明においては、0.5μm〜10μmの厚さとし、望ましくは、0.5μm〜5μmとし、コレステリック液晶層の帯がある箇所と、その隙間との反射性の違いを小さいものとする。0.5μm〜5μmの厚さであれば、選択的反射光が比較的小さく、上記した帯同士の干渉が十分発現する。
もちろん、コレステリック液晶としては、層内屈折率差が小さく、偏光を発生する成分が多い等の、「偏光性が強く選択反射性の小さい」ものが望ましい。
また、コレステリック液晶の性質を利用して、遮蔽効果を発現するものであれば、偏光板に限定されるものでなく、波長選択性を利用する等、種々の方法を用いることができる。
【0013】
前期コレステリック液晶層をパターン状に設ける方法としては、溶剤系、水系、無溶剤系として、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、凹版印刷方式、スクリーン印刷方式、各種リソグラフィー等を用いて形成することができるが、感温液晶をゼラチン他樹脂膜等でカプセル化したインキを用いて形成してもよい。カプセル化したものは、その製造時の作業性だけでなく、物理特性(強靭性、耐摩耗性、耐熱性等)に優れるとともに、液晶の染み出し等の不具合を防止し、本発明に特に要求される衛生面で特に好適である。
特に、微細領域を設けるためには、それぞれ、ドライオフセット方式、精密彫刻版によるグラビア印刷方式、精密凹版を用いた凹版印刷方式、ステンレススクリーンを用いたスクリーン印刷方式や、精密リソグラフィー方式が好適である。
【0014】
ホログラムレリーフの複製の際には、すでに形成しているコレステリック液晶層のパターンと同調させて複製する必要があり、その精度を確保するためにコレステリック液晶による位置あわせ用マークをあらかじめ設けておき、このマークにホログラムによるマークを重ね合わせる等の手法を用いる。
但し、ホログラム(回折格子を含む)特有の冗長性により、10%程度のずれがあっても、その再生像への影響は少なく、偽造防止効果を劣化させる要因にはならない。
【0015】
本発明の真正性識別体の第2の態様は、
前記第3のホログラムレリーフが、「隠し情報」を表すことを特徴とするものである。
「隠し情報」は、所定の文字、記号、図柄の何れか、または、これらの組み合わせ情報であって、ホログラム形成層のパターン形状により表される。

本発明の真正性識別体の第3の態様は、
前記「隠し情報」が、前記第1及び第2のホログラムレリーフの向きを変えたものでもので表されていることを特徴とするものである。
【0016】
二つのホログラムを再生するパターンは一対の帯状をなしており、その両方に参照光をあて再生させるといずれのホログラムをも再生(結像)しないものであるが、その一部に「隠し情報」として、一対の帯の方向を変えたもので、「所定の文字、記号、図柄の何れか、または、これらの組み合わせ情報」を形成し、その他の部分はそのままとする。
すなわち、「隠し情報」を形成する一対の帯と、その他の部分の一対の帯がある角度で交差していることになる。この交差は、直交することが最も望ましいことは言うまでもない。
この時、コレステリック液晶の帯は、「隠し情報」を形成する一対の帯と平行とし、そのひとつと重なるように形成する。この一つの帯を遮蔽すると、方向を変えた部分のみ所定の回折格子として、もしくはホログラムとしての強い干渉を生じ、他の部分とは明確に判別できるようになることで、その「隠し情報」を発現させるものである。
このことにより、目視観察では、いずれのホログラムも結像しない一様な干渉縞の様に観察され、偏光版を通して観察した時には、「隠し情報」が浮き出るように鮮明に観察されることになる。他の部分はほとんど目視観察と同様に見える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の真正性識別体の第1の態様によれば、
透明基材の一方の面に10μm〜100μm幅のコレステリック液晶層がパターン状に設けられ、当該パターンの対応する位置に、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層、及び、前記ホログラムレリーフに接するように反射性薄膜層を設けたことを特徴とする真正性識別体において、
前記コレステリック液晶層がある部分に位置する第1のホログラムレリーフと、前記コレステリック液晶のない部分に位置する第2のホログラムレリーフを有し、
且つ、前記第2のホログラムレリーフの一部が第3のホログラムレリーフを含んでいることを特徴とする真正性識別体を提供することができる。
本発明の真正性識別体の第2の態様によれば、
前記第3のホログラムレリーフが、「隠し情報」を表すことを特徴とする請求項1記載の真正性識別体を提供することができる。
本発明の真正性識別体の第3の態様によれば、
前記「隠し情報」が、前記第1及び第2のホログラムレリーフの向きを変えたものでもので表されていることを特徴とする請求項1記載の真正性識別体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す真正性識別体Aの断面図である。
図2は、本発明の他の実施例を示す真正性識別体A´の断面図である。
図3は、本発明の他の実施例を示す真正性識別体A´´の断面図である。
【0019】
(透明基材)本発明で使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、真正性識別体A、A´、A´´を製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。
【0020】
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
透明基材1の厚さは、通常5〜250μmであるが、反射性金属薄膜層3からの回り込み光を配慮する場合には、5〜50μm、特に5〜25μmとすることが望ましい。
【0021】
(ホログラムレリーフを有する透明樹脂層:ホログラム形成層ともいう。)本発明のホログラム形成層3を構成するための透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等が挙げられる。
【0022】
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
【0023】
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
上記の樹脂材料を用いてホログラム形成層3を形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
【0024】
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
【0025】
ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
【0026】
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm〜1μmである。
【0027】
単一回折格子のように、全く同一形状の凹凸の繰り返しであるものは、隣り合う凹凸が同じ形状であればある程、反射する光の干渉度合いが増しその強度が強くなり、最大値へと収束する。回折方向のぶれも最小となる。立体像のように、画像の個々の点が焦点に収束するものは、その焦点への収束精度が向上し、再現もしくは再生画像が鮮明となる。
さらに、透明金属化合物薄膜の場合は、その薄膜の上下の面が、同一レリーフ形状であり且つ、その面と面の距離(すなわち膜厚さ)が均一であればあるほど、再現もしくは再生強度が大きくなる。
【0028】
ホログラムレリーフ形状を賦形(複製ともいう)する方法は、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記透明基材1及び反射性金属薄膜層3上に、前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。
【0029】
上記の極微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温・高圧下で複製を行う。
原版は、Niなどの硬度の高い金属を用いる。光学的撮影もしくは、電子線描画などにより形成したガラスマスターなどの表面にCr、Ni薄膜層を真空蒸着法、スパッタリングなどにより5〜50nm形成後、Niなどを電着法(電気めっき、無電解めっき、さらには複合めっきなど)により50〜1000μm形成した後、金属を剥離することで作ることができる。
【0030】
複製方式は、平板式もしくは、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、複製温度は、通常60℃〜200℃とする。
この複製の際、すでに形成しているパターン形状のコレステリック液晶層と同調させて複製する必要があり、その精度を確保するためにコレステリック液晶による位置あわせ用マークをあらかじめ設けておき、このマークにホログラムによるマークを重ね合わせる等の手法を用いる。
但し、回折格子及びホログラム特有の冗長性により、10%程度のずれがあっても、その再生像への影響は少なく、偽造防止効果への影響を小さくすることができる。
【0031】
(反射性薄膜層)本発明では、ホログラム形成層3のホログラムレリーフ面に、一部または全面に反射性薄膜層4を形成する。この薄膜は、入射した光を反射する必要があるため、ホログラム形成層3よりも高い屈折率を有する薄膜であれば、特に限定されない。
反射性薄膜としては、真空薄膜法などにより形成される金属薄膜などの金属光沢反射層、又は透明反射層のいずれでもよいが、金属光沢反射層を部分的に設けたり、透明反射層を設けた場合は、その反射層に接して設けた感温液晶の変化をこの透明反射層を通して確認できるので好ましい。
【0032】
透明反射層としては、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム形成層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できることから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム形成層(本発明では、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1に該当する)よりも光屈折率の高い薄膜、例として、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITOなどがある。
【0033】
好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Ti、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Auなどの酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したものなどが例示できる。またアルミニウムなどの一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが20nm以下になると、透明性が出てきて透明反射層として使用できる。
【0034】
透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、ホログラム形成層2のホログラムレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(化学蒸着法)などの真空薄膜法などにより設ければよい。
【0035】
(コレステリック液晶)本発明に用いられるコレステリック液晶層2は、光選択反射性を有するものであればよく、さらに、観察側からの入射光に対して左円偏光もしくは右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有するものであってもよい。また、これらのものを組み合わせて適用して、判定方法を複雑なものとし、より高度な真正性識別体とすることもできる。
コレステリック液晶としては、コレステロールのハロゲン化物、モノカルボン酸コレステロールエステル、モノカルボン酸シトステロールエステル、安息香酸誘導体のコレスタノールエステル、二塩基酸ジコレステリルエステル、主鎖型液晶高分子化合物、側鎖型液晶高分子化合物、剛直主鎖型液晶高分子化合物などが挙げられる。
【0036】
より具体的には、例えばコレステリルクロライド、コレステリルアセテート、コレステリルノナノエート、炭酸メチルコレステロール、炭酸エチルコレステロール、コレステリルp−メトキシベンゾエート、シトステロイルベンゾエート、シトステロイルp−メチルベンゾエート、コレスタニルベンゾエート、10、12−ドコサジインジカルボン酸ジコレステリルエステル、8、12−エイコサジカルボン酸ジコレステリルエステル、10、12−ペンタコサジインジカルボン酸ジコレステリルエステル、ドデカジカルボン酸ジコレステリルエステル、12、14−ヘキサコサジインジカルボン酸ジコレステリルエステル、4−(7−コレステリルオキシカルボニルヘプチルオキシ)フェノキシオクタン酸コレステリルエステル、L−グルタミン酸−γ−ベンジル/L−グルタミン酸−γ−ドデシル共重合体などがある。
【0037】
さらに、コレステリルホルメート、コレステリルアセテート、コレステリルプロピオネート、コレステリルブチレート、コレステリルペンタネート、コレステリルヘキサネート、コレステリルヘプタネート、コレステリルオクタネート、コレステリルノナノエート、コレステリルデカネート、コレステリルドデカネート(コレステリルラウレート)、コレステリルミリステート、コレステリルパルミテート、コレステリルステアレート、コレステリルオレエート、コレステリルオレイルカーボネート、コレステリルリノレート、コレステリル12−ヒドロキシステアレート、コレステリルメルカプタン、コレステロールクロライド、コレステリルフルオライド、コレステリルブロマイド、コレステリルアイオダイド等を挙げることができる。
【0038】
好ましくは、アルキルコレステロール(例えばコレステロールナノエート)およびコレステリルハライド(例えばコレステロールクロライド)コレステリルオレイルカーボネート3種の混合物が挙げられ、これらの3つのタイプの液晶は常温で使用できるように混合して用いられるのが一般的である。
尚、ここに示す化合物に限定されるものではなく、またこれらのコレステリック液晶化合物は、1種または2種以上混合して用いることができる。
ネマチック液晶化合物にカイラル化合物を加えてコレステリック液晶とするものとしては、液晶化合物として、4−置換安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸4’−置換フェニルエステル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸4’−置換ビフェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキサンカルボニルオキシ)安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4’−置換シクロヘキシルエステル、4−置換4’−置換ビフェニル、4−置換フェニル4’−置換シクロヘキサン、4’−置換シクロヘキサン、2−(4−置換フェニル)−5−置換ピリジン等、例えば、「パリオカラーLC242」(BASF社製)等が用いられる。
【0039】
特に好ましくは、少なくとも分子の一方の末端にシアノ基又はフッ素原子を有する液晶化合物を用い、これらの液晶化合物にそれぞれ好適な各種のカイラル剤を加えたものが用いられる。カイラル化合物としては、「CB−15」、「C−15」(以上、BDH社製)、「CM−21」、「CM−22」、「CM−19」、「CM−20」、「CM」(以上、チッソ社製)、「S1082」、「S−811」、「R−811」(以上、メルク社製)、「パリオカラーLC756」(BASF社製)等を挙げることができる。
また、有機合成によって得られるネマチック液晶の末端基に不斉炭素を有する基を導入したコレステロール基を持たないコレステリック液晶や、コレステロール誘導体にシッフ系ネマチック液晶を加えた混合液晶も用いられる。さらには、天然コレステロールのハロゲン置換物、エステル化物(コレステリルベンゾエート、コレステリルクロライド、コレステリルオリエート、コレステリルノナノエート等も好適である。
【0040】
これらのコレステリック液晶をパターン状に設ける方法としては、溶剤系、水系、無溶剤系として、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、さらにはパターニングが可能なコーティング方式を用いて形成することができる。より好ましくは、液晶パターンの端面をなだらかなものとしてその境界をぼかせるグラビア方式が望ましく、グラビア版のセル形状を種々工夫することで上記効果を引き出すことができる。
さらには、パターン形成後の表面が粗面となる方式が望ましい。
また液晶をゼラチン他樹脂膜等でカプセル化したインキを用いて形成してもよい。カプセル化したものは、形成後の表面が粗面となっており、その表面で観察光を散乱するため、パターン形状をぼかす効果がある。また、その製造時の作業性だけでなく、物理特性(強靭性、耐摩耗性、耐熱性等)に優れるとともに、液晶の染み出し等の不具合を防止し、本発明の用途において要求される衛生面で特に好適である。
【0041】
前記コレステリック液晶層2の厚さは、0.5μm〜10μmとし、望ましくは、0.5μm〜5μmである。これにより、コレステリック液晶層の帯がある箇所と、その隙間との反射性の違いを小さいものとする。0.5μm〜5μmの厚さであれば、選択的反射光が比較的小さく、上記した帯同士の干渉が十分発現する。
もちろん、「コレステリック液晶」としては、液晶層内部の屈折率変化(差)が小さく、円偏光性を発揮する成分が多く、円偏光性の強いものが望ましい。すなわち、「偏光性が強く選択反射性の小さい」ものが望ましい。
【0042】
前記コレステリック液晶層2をパターン状に設ける方法としては、溶剤系、水系、無溶剤系として、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、凹版印刷方式、スクリーン印刷方式、各種リソグラフィー等を用いて形成することができるが、感温液晶をゼラチン他樹脂膜等でカプセル化したインキを用いて形成してもよい。特に、微細領域を設けるために、それぞれ、ドライオフセット方式、精密彫刻版によるグラビア印刷方式、精密凹版を用いた凹版印刷方式、ステンレススクリーンを用いたスクリーン印刷方式や、精密リソグラフィー方式が好適である。さらに、物理的特性を確保するためにカプセル化タイプ、紫外線硬化タイプが望ましい。
前記コレステリック液晶層2を設ける際、予め以下の配向膜を設ける等の配向処理を施しても良い。配向膜は、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリイミド樹脂等の一般に配向膜として使用し得るものであれば、いずれでもよい。配向膜は、これらの樹脂の溶剤溶液を、コレステリック液晶層4を形成する層の表面に適宜な塗布法により塗布し、乾燥させた後に、布、ブラシ等を用いて摩擦するラビングを行なって形成する。
【0043】
また、本発明の真正性識別体にさらに、粘着剤を施してラベルとしたり、接着剤を施して転写シートとすることもできる。(図示する。粘着剤層及び接着剤層は、接着層5として図示。)
その場合、粘着剤としては、従来公知の溶剤系及び水系のいずれの粘着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴムなどのゴム系樹脂などが挙げられる。
自然にやさしい材料構成とするために、特に、天然ゴムを主成分とするラテックス、それを変性したもの、特に天然ゴムにスチレン特にメタクリルさんメチルとをグラフト重合させて得た天然ゴムラテックス等の天然素材から作製されたものを用いても良く、形成厚さ、形成方法等は適宜選択する。
【0044】
また、接着剤としては、接着剤としては、種々の物品に対する接着性を確保するためのものであるので、反射性金属薄膜層4との接着性がよく、被着体と強固に接着できるものが好ましい。具体的には、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ゴム変性物などが挙げられ、これらの中から適するものを適宜選択して使用でき、また、これらは単体、もしくは2種以上の混合系で、更に必要に応じてハードレジンや可塑剤、その他の添加剤を加えて使用することができ、形成厚さ、形成方法等は適宜選択する。
【0045】
(実施例1)
透明基材1として、25μmのPETフィルムの表面に、ステンレス版を用いたスクリーン印刷方式により厚さ3μmの下記組成のコレステリック液晶層2を100μm幅で100μmおきに形成し、4cm四角のパターンを得た。
・<コレステリック液晶組成物>
バイカラーLC242 37質量部
バイカラーLC756 2質量部
紫外線重合開始剤 1質量部
メチルイソブチルケトン 60質量部
【0046】
上記印刷を行なった面上にメラミン樹脂組成物を塗布し、レリーフホログラムの複製用型の型面を、接触させたまま加熱硬化させることにより、レリーフホログラムの形成を行ない、厚さ5μmのホログラム形成層3を得た。
このレリーフホログラムは、4cm四角のエリア内に、幅100μm、長さ4cmの帯状に2つの回折格子(第1のホログラムレリーフ:回折格子B:溝のピッチ0.8μm・形成角度45度、第2のホログラムレリーフ:回折格子C:溝ピッチ0.8μm・形成角度30度)を交互に形成したものであって、その回折格子Bの一部に、半径5mmの円形状に、高さ5mm・幅3mmで、回折格子D(第3のホログラムレリーフ:溝ピッチ0.6μm・形成角度38度)を形成したものである。
この回折格子Cと、上記したコレステリック液晶パターンとを重ねるように位置合わせして、複製を行った。重ね合わせ精度は、10μmのずれ以内であった。
このレリーフホログラムの賦型された面上に、TiO2を真空蒸着して、厚みが40nmの透明反射性薄膜層4を形成して、真偽判定用識別体Aを得た。
【0047】
得られた真正性識別体Aを観察側から眺めると、回折格子BとCが干渉し合い、全面が均一な回折格子の様に観察された。もちろん、回折格子Dの存在も観察されなかった。
この真正性識別体Aに偏光板を重ねて観察すると、コレステリック液晶パターンの部分のみが遮蔽され(回折格子Cが遮蔽される。)回折格子Bとその中の回折格子Dが鮮やかに観察され、高い偽造防止性を有することを確認できた。
【0048】
(実施例2)
実施例1の真正性識別体Aの反射性薄膜の上に、次の組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が20μmになるように、塗工し70℃で乾燥させて、粘着剤層(接着層5)を形成し、実施例2の真正性識別体A´を得た。
・<粘着剤組成物>
酢酸ビニル−アクリル共重合体 30質量部
トルエン 40質量部
酢酸ビニル 40質量部
【0049】
この真正性識別体A´を、回折格子に合わせて、4cm四角に切り出し、カード会社名が印刷されているクレジットカードのその社名上に貼付した以外は、実施例1と同様に処理し、実施例2を得た。その効果は、実施例1と同様の偽造防止性を確認できた。この時、真正性識別体A´を通して、その社名を観察することもできた。
【0050】
(実施例3)
反射性薄膜として、ALを真空蒸着して、厚みが100nmの反射性金属層を形成したこと、及び、このホログラムシートの反射性薄膜の上に、次の組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が5μmになるように、塗工し70℃で乾燥させて、接着剤層(接着層5)を形成した以外は実施例1と同様に実施し、実施例3の、真正性識別体A´´を得た。
・<接着剤組成物>
塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体 30質量部
トルエン 40質量部
酢酸ビニル 40質量部
【0051】
この、真正性識別体A´´を、回折格子に合わせて、4cm四角に切り出し、カード会社名が印刷されているクレジットカードのその社名上に乗せ、100℃5分間プレスしてカード基材に転写し、その後、透明基材を剥離した。結果、カード最表面より3μm下に埋め込まれた。
その効果は、実施例1と同様の偽造防止性を確認できた。
【0052】
(実施例4)
回折格子Dとして、実施例1の回折格子Bの一部に、「隠し情報」として”H“の文字を、高さ5mm・幅3mm(文字としての画線幅0.5mm。)で、溝ピッチ0.6μm・形成角度38度の回折格子を形成した以外は実施例1と同様に実施し、実施例4を得た。
得られた真正性識別体Aを観察側から眺めると、回折格子BとCが干渉し合い、全面が均一な回折格子の様に観察された。もちろん、「隠し情報」である”H“の文字(回折格子D)の存在も観察されなかった。
この真正性識別体Aに偏光板を重ねて観察すると、コレステリック液晶パターンの部分のみが遮蔽され(回折格子Cが遮蔽される。)回折格子Bとその中の「隠し情報」である”H“の文字(回折格子D)が鮮やかに観察され、高い偽造防止性を有することを確認できた。
【0053】
(実施例5)
実施例1において、回折格子B、Cの変わりに、ホログラムB:会社の徽章を表すホログラム、ホログラムC:会社マークのホログラムを使用し、回折格子Dの変わりに、「隠し情報」として、ホログラムD:「真正」の文字のホログラムを使用した以外は、実施例4と同様に処理し、実施例5を得た。
得られた真正性識別体Aを観察側から眺めると、ホログラムBとホログラムCが干渉し合い、全面が均一な回折格子の様に観察された。もちろん、ホログラムDの存在も観察されなかった。
この真正性識別体Aに偏光板を重ねて観察すると、コレステリック液晶パターンの部分のみが遮蔽され(ホログラムCが遮蔽される。)ホログラムBとその中のホログラムDが鮮やかに観察され、高い偽造防止性を有することを確認できた。
【0054】
(実施例6)
実施例1において、回折格子Bと回折格子Cの一対の帯(100μm幅と100μm幅の対の帯。)を4cm四角の中に縦方向に配置し、その中央部に5mm円形の形状で、この一対の帯を30度傾けたホログラムレリーフを形成したこと、及び、コレステリック液晶層の帯の印刷を、この30度傾けた一対の帯を平行に且つ、その中の回折格子Cと重なるように形成したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた真正性識別体Aを観察側から眺めると、回折格子BとCが干渉し合い、全面が均一な回折格子の様に観察された。もちろん、この円形及び回折格子Dの存在も観察されなかった。
この真正性識別体Aに偏光板を重ねて観察すると、コレステリック液晶パターンの部分のみが遮蔽され(回折格子Cが遮蔽される。)、この円形及び回折格子Dが鮮やかに観察され、高い偽造防止性を有することを確認できた。
【0055】
(比較例)
回折格子B,C,Dを全て、300μmの帯とし、コレステリック液晶層も300μm幅として形成した以外は全て実施例1と同様にして比較例を得た。
これを目視にて観察したところ、B,C,Dの回折格子が全て観察され、偽造防止効果は得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の1実施例を示す真正性識別体Aの断面図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す真正性識別体A´の断面図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す真正性識別体A´´の断面図である。
【符号の説明】
【0057】
A、A´、A´´ 真正性識別体
1 透明基材
2 パターン形状のコレステリック液晶層
3 ホログラム形成層(パターン上のホログラムレリーフを有する)
4 反射性薄膜層
5 接着層(粘着剤層もしくは接着剤層)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に10μm〜100μm幅のコレステリック液晶層がパターン状に設けられ、当該パターンの対応する位置に、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層、及び、前記ホログラムレリーフに接するように反射性薄膜層を設けたことを特徴とする真正性識別体において、
前記コレステリック液晶層がある部分に位置する第1のホログラムレリーフと、前記コレステリック液晶のない部分に位置する第2のホログラムレリーフを有し、
且つ、前記第2のホログラムレリーフの一部が第3のホログラムレリーフを含んでいることを特徴とする真正性識別体。
【請求項2】
前記第3のホログラムレリーフが、「隠し情報」を表すことを特徴とする請求項1記載の真正性識別体。
【請求項3】
前記「隠し情報」が、前記第1及び第2のホログラムレリーフの向きを変えたものでもので表されていることを特徴とする請求項1記載の真正性識別体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−107748(P2010−107748A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279898(P2008−279898)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】