説明

真空ゲート弁及びこれを備えた真空処理装置

【課題】使い勝手が良好でメンテナンス性に優れると共に、容易に且つ安価に製作することのできる真空ゲート弁及びこれを備えた真空処理装置を提供する。
【解決手段】一対の開口部4a、4bが対向して設けられる弁箱1と、前記開口部4a、4bの何れか一方を開閉すべく前記弁箱1内に設けられる弁体5とを有する真空ゲート弁Aであって、前記一方の開口部4aに着脱自在に装着される弁座6と、前記弁体5が着座する弁座6の着座面6aに設けられるシール部材7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な真空状態を維持形成するために、真空容器の連通孔に開閉自在に設けられる真空ゲート弁及びこれを備えた真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の真空ゲート弁としては、例えば次のようなものが存在する。即ち、この従来のものは、開口部が開設された弁箱と、該弁箱の開口部を開閉すべく昇降自在に設けられた弁体と、前記弁箱の開口部内周面に装着されるシール部材とを備えている。このシール部材は、弁箱の形状に合致するように特殊な形状に形成されている。かかる真空ゲート弁は、例えば複数連設される真空容器の連通孔間に配して使用されるものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−36759号公報(図2、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の真空処理装置に於いては、真空処理に際して発生する反応生成物等の不純物が真空ゲート弁のシール部材に付着することがある。このため、かかる不純物を除去すべくシール部材は定期的に又は不定期にメンテナンスが行われる。また、シール部材に摩耗や損傷等が発生した場合には、そのシール性を確保するために、交換作業を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、シール部材は弁箱側に装着されているために、そのメンテナンスや交換作業は非常に暗くて狭い真空容器内での作業となって、作業者にかかる負担は多大なものであった。
【0006】
また、特殊形状のシール部材の製作のみならず、これを装着すべく弁箱に形成される装着溝の製作は容易なものでないために、その製作費用が必要以上に嵩むという問題点も有していたのである。
【0007】
それ故に、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使い勝手が良好でメンテナンス性に優れると共に、容易に且つ安価に製作することのできる真空ゲート弁及びこれを備えた真空処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る真空ゲート弁は、一対の開口部が対向して設けられる弁箱と、前記開口部の何れか一方を開閉すべく前記弁箱内に設けられる弁体とを有する真空ゲート弁であって、前記一方の開口部に着脱自在に装着される弁座と、前記弁体が着座する弁座の着座面に設けられるシール部材とを備えたものである。
【0009】
このような真空ゲート弁は、例えば複数連設される真空容器間に配して使用される。即ち、真空ゲート弁の弁体により弁箱の一方の開口部を閉塞した後に、真空状態とした前記真空容器で各種の真空処理が行われるのである。
【0010】
この場合に於いて、真空処理により不純物等の異物が前記シール部材に付着して、メンテナンスが必要となったり、或いはシール部材に摩耗や損傷等が発生して交換が必要となった場合は、例えば次のようにしてシール部材のメンテナンスや交換作業が行われる。
【0011】
先ず、真空容器内に於いて、真空ゲート弁の弁座を弁箱の開口部から取外す。その後、弁座を真空容器から外部へ持ち出して、シール部材に付着した不純物等の異物を除去し、或いはシール部材を新たなものに交換する。この作業は、作業環境が劣悪な暗くて狭い真空容器内で行うのではなく、作業環境が良好な外部で行うことができるために、簡易に且つ効率的に一連作業を行うことが可能になる。また、シール部材を弁体側に設けた場合のように、重量物である弁体を弁箱から取外すような厄介な作業も不要である。従って、作業者にかかる負担も大幅に軽減されることになる。その後、真空容器内に於いて、弁座を弁箱の開口部に装着すればよい。
【0012】
また、前記弁座には、該弁座と弁箱間のシールを図るべく他のシール部材を備えさせてもよい。
【0013】
これによると、他のシール部材により弁箱と弁座との間のシールが確実に図られるために、真空容器内の良好な真空状態が維持されることになる。また、他のシール部材も前記シール部材と同様にして、そのメンテナンス及び交換作業を簡易に行うことができる。
【0014】
更に、前記弁箱に一方の開口部が設けられる前壁部と他方の開口部が設けられる後壁部とを備えさせ、前記弁座に、一方の開口部に弁座が装着された際に、前壁部の外面に当接する鍔部を設けると共に、該鍔部又は該鍔部が当接する前記前壁部の外面に前記他のシール部材が装着される凹溝を設けることも可能である。
【0015】
これによると、鍔部又は該鍔部が当接する前記前壁部の外面の凹溝に装着されたシール部材により、弁座と弁箱との間のシールが図られることになる。このため、真空容器内の良好な真空状態を維持することができる。
【0016】
また、前記一方の開口部に弁座を装着した際には、該弁座の着座面が前記前壁部の内面と略面一となるように構成してもよい。
【0017】
この場合、弁座の着座面が前壁部の内面よりも更に内側に突出するように構成すると、弁体が後壁部側に移動させる必要が生じる。このため、前壁部と後壁部との間隔が広がって、弁箱自身の容量が増大する結果となる。これに対して、本発明に於いては、弁座の着座面が前記前壁部の内面と略面一となるように構成しているために、弁箱自身の容量を増大せしめることもなく、効率良く真空状態を得ることができるという利点がある。
【0018】
更に、本発明に係る真空処理装置は、前記何れかの真空ゲート弁と、該真空ゲート弁を介して連設される複数の真空容器とを備えたものである。
【0019】
このような真空処理装置によると、前記真空ゲート弁が有する機能を有効に発揮されるために、良好に真空処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、使い勝手が良好でメンテナンス性に優れると共に、容易に且つ安価に製作することのできる真空ゲート弁及びこれを備えた真空処理装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る真空ゲート弁を示す正面図である。
【図2】同使用状態を示す側部断面図である。
【図3】同使用状態を示す側部断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る真空処理装置を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本実施形態に係る真空ゲート弁について、図面に基づいて説明する。上面開口状の弁箱1は、図1及び図2に示すように、前後に所定間隔を有して配される正面略矩形状の前壁部2と後壁部3とを備えている。各壁部2、3の下部側には、夫々略矩形状の開口部4a、4bが対向するように設けられている。
【0023】
弁箱1内には、前壁部2の開口部4aを開閉するための弁体5が昇降自在に設けられている。前壁部2の開口部4aには、環状の弁座6が着脱自在に装着されている。図3に示すように、弁体5が着座する弁座6の着座面6aには凹溝6bが形成されており、該凹溝6bにはシール部材としてのOリング7が装着されている。弁座6は鍔部6cを有しており、弁座6を弁箱1の開口部4aに装着した際には、鍔部6cが弁箱1の前壁部2の外面に当接すると共に、弁座6の着座面6aが前壁部2の内面と略面一となるように構成されている。この場合、弁座6の着座面6aが前壁部2の内面よりも更に内側に突出するように構成すると、弁体5が後壁部3側に移動させる必要が生じる。このため、前壁部2と後壁部3との間隔が広がって、弁箱1自身の容量が増大する結果となる。これに対して、本実施形態に於いては、弁座1の着座面6aが前記前壁部2の内面と略面一となるように構成しているために、弁箱1自身の容量を増大せしめることもなく、効率良く真空状態を得ることができるという利点がある。
【0024】
弁箱1の前壁部2に当接する前記鍔部6cには、他のシール部材としてのOリング8が装着される凹溝6dが形成されている。これにより、弁箱1と弁座6との間のシールが確実に図られるために、後述する真空容器の良好な真空状態を維持し得ることになる。また、鍔部6cには所定間隔を有して多数の透孔(図示せず)が穿設されており、これに挿通したボルト9により、図1に示すように弁座6が弁箱1の開口部4aに着脱自在に取付けられる。尚、本実施形態に於いては、シール部材として汎用のOリング7、8を適用することができるために、コスト的に大変有利である。
【0025】
前記弁体4を昇降させる駆動手段は、図1に示すように、弁箱1の上方中央位置に下向きに配されたエアシリンダ20で構成されている。エアシリンダ20のシリンダロッド20aには、左右一対のリンク機構21が設けられている。このリンク機構21は、第1リンク機構22と第2リンク機構23とから構成される。尚、左右のリンク機構21は同様の構成からなるために、ここでは一方のリンク機構21についてのみ説明する。第1リンク機構22は、前記シリンダロッド5aの先端部が中央に固定される水平杆24と、その端部に回動自在に連結される連鎖25と、該連鎖25の他端部に固定されて弁箱1に回転自在に設けられる支軸26とからなっている。また、第2リンク機構23は、前記支軸26に一端部が固定される回動杆27と、該回動杆27の他端部に回動自在に連結される連結杆28とからなっている。連結杆28の他端部は、図2及び図3に示すように板状の押圧体29の上端部に固定されている。
【0026】
押圧体29は弁体5の背面側に配されており、上下方向に所定間隔を有して設けられた一対の平行リンク機構30により弁体5と連結されている。また、弁箱1の下部内面位置にはローラ31が転動自在に配されている。そして、前記エアシリンダ20のシリンダロッド20aが下降すると、リンク機構21、押圧体29及び平行リンク機構30を介して弁体5が下降する。弁体5が所定量下降すると、その下端面がローラ31に係合して上向きの押圧力を受ける。平行リンク機構23が回動して弁体5のみが弁座6側に接近し、その着座面6aに着座する。そして、弁座6に設けたOリング7により、該弁座6と弁体5間のシールが図られることになる。尚、かかる押圧体29による弁体5の開閉機構は、従来より存在する公知のものである。
【0027】
本実施形態に係る真空ゲート弁は、以上のように構成されている。かかる真空ゲート弁Aは、例えば図2及び図3に示すように、真空容器B、Cの連通孔40、41間に配して使用される。即ち、真空ゲート弁Aの弁体5により弁箱1の開口部4aを閉塞した後に、真空状態とした前記真空容器B、Cで各種の真空処理が行われるのである。
【0028】
この場合に於いて、真空処理により不純物等の異物が前記弁座6のOリング7に付着して、メンテナンスが必要となったり、或いはOリング7に摩耗や損傷等が発生して交換が必要となった場合は、例えば次のようにしてシール部材のメンテナンスや交換作業が行われる。
【0029】
先ず、真空容器B、C内に於いて、ボルト9を弁箱1から螺脱して該弁箱1の開口部4aから弁座6を取外す。かかるボルト9の螺脱作業は比較的単純な作業であるために、簡易に行うことができる。その後、弁座6を真空容器B、Cから外部へ持ち出して、Oリング7に付着した不純物等の異物を除去し、或いはOリング7を新たなものに交換するのである。この作業は、作業環境が劣悪な暗くて狭い真空容器B、C内で行うのではなく、作業環境が良好な外部で行うことができるために、簡易に且つ効率的に一連作業を行うことが可能になる。また、弁体5にOリング7を設けた場合のように、重量物である弁体5を弁箱1から取外すような厄介な作業も不要である。従って、作業者にかかる負担も大幅に軽減されることになる。その後、真空容器B、C内に於いて、弁座6を弁箱1の開口部4aに装着すればよい。
【0030】
また、本実施形態に係る真空ゲート弁Aは、全体の構成が非常に簡易であるために、その製作を容易に且つ安価に行うことができるという実用的な利点もある。
【0031】
尚、上記実施形態では真空ゲート弁Aについて説明したが、本発明は、例えば図4に示すように、真空ゲート弁Aを介して複数の真空容器B、C、Dを連設して真空処理装置Eとして構成することも可能である。この場合も、上述したと同様の作用効果を得ることができる。尚、真空容器は複数であればよく、その具体的な数は問うものではない。
【0032】
また、弁座6を弁箱1の開口部4aに取付ける手段も、上記実施形態のボルト9に限定されない。例えば、弁箱1の開口部4aに周囲に所定間隔を有してネジ杆を突設し、これにナットを締着して弁座6の取付手段としてもよい。
【0033】
更に、上記実施形態に於ける弁座6には鍔部6cが設けられているが、この鍔部6cは必ずしも設ける必要はなく、省略することも可能である。この場合は、例えば弁座6の外周面にシール部材を設けて弁箱1とのシールを図ると共に、弁座6に径方向の透孔を穿設して、これにボルト等を挿通して弁箱1に取付ければよい。
【0034】
また、各シール部材は決して上記実施形態の如きOリング7、8に限定されるものでなく、例えば板状のパッキン等であっても構わない。このように構成すると、Oリング7、8を装着するための凹溝6b、6dの形成が不要になるという利点がある。
【0035】
更に、上記実施形態では、弁座6の鍔部6cにOリング8を装着するための凹溝6を設けたが、これに代えて前記鍔部6cが当接する前記前壁部2の外面側に凹溝を設けるようにしてもよい。
【0036】
上記実施形態に於いては、弁箱1の開口部4aに弁座6を装着した際に、弁座6の着座面6aが前壁部2の内面と略面一となるように構成したが、必ずしもこのように構成する必要はない。
【0037】
その他、真空ゲート弁Aの各部の形状等の具体的な構成も本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0038】
1 弁箱
2 前壁部
3 後壁部
4a 開口部
4b 開口部
5 弁体
6 弁座
6a 着座面
6c 鍔部
6d 凹溝
7 シール部材(Oリング)
8 シール部材(Oリング)
A 真空ゲート弁
B 真空容器
C 真空容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の開口部が対向して設けられる弁箱と、
前記開口部の何れか一方を開閉すべく前記弁箱内に設けられる弁体とを有する真空ゲート弁であって、
前記一方の開口部に着脱自在に装着される弁座と、
前記弁体が着座する弁座の着座面に設けられるシール部材と、を備えてなることを特徴とする真空ゲート弁。
【請求項2】
前記弁座が、該弁座と弁箱間のシールを図るべく他のシール部材を備えた請求項1記載の真空ゲート弁。
【請求項3】
前記弁箱が、一方の開口部が設けられる前壁部と、他方の開口部が設けられる後壁部とを備え、前記弁座には一方の開口部に弁座が装着された際に、前記前壁部の外面に当接する鍔部が設けられると共に、該鍔部又は該鍔部が当接する前記前壁部の外面には前記他のシール部材が装着される凹溝が設けられた請求項2記載の真空ゲート弁。
【請求項4】
前記一方の開口部に弁座を装着した際に、該弁座の着座面が前記前壁部の内面と略面一となるべく構成された請求項3記載の真空ゲート弁。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一つに記載の真空ゲート弁と、
該真空ゲート弁を介して連設される複数の真空容器と、を備えてなることを特徴とする真空処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−236650(P2010−236650A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86359(P2009−86359)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】