説明

真空下でワークピースを加工するため、ハウジングに対して回転可能なハウジング底部を有する装置

本発明は、真空下でワークピースを加工するための加工装置100に関するものであり、内部空間を有するハウジング1と、ハウジング蓋2と、ハウジング1に対し回転可能にしたハウジング底部6と、ハウジング底部6に連結し、かつハウジング1の内部空間に配置したロータ装置8であって、このロータ装置8内にワークピースを収容するための複数個のチャンバ81を設けた、該ロータ装置8とを備え、ハウジング1および/またはハウジング蓋2に複数個の作業開口4,12,13を形成し、ロータ装置8における複数個のチャンバ8のそれぞれには、少なくとも1つのロータ開口21を設け、これにより、ロータ装置8の回転に基づき円形経路82を規定し、この円形経路82に沿ってロータ開口21が変位する構成とし、作業開口4,12,13を円形経路82に沿って配置する際、それぞれのロータ開口21を、円形経路82に沿う変位時に作業開口4,12,13と合致できるよう構成し、ロータ装置8とハウジング1および/またはハウジング蓋2との間における、それぞれのロータ開口21周りにロータ開口シール部材14を設け、また、少なくとも2種類のロータシール部材を、ロータ装置8とハウジング蓋2および/またはハウジング1との間において、ロータ開口シール部材14と接触する状態で設け、円形経路82に沿う環状空間83,83a,83b,83cを、前記作業開口4,12,13および前記ロータ開口21の位置で区切り、前記環状空間83,83a,83b,83cを画定し、そして部分毎にシールする構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空下でワークピースを加工するための装置に関し、特に溶接または電子ビームによる表面加工用の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の課題に関しては、真空チャンバを設けた種々の装置が既知であり、これら装置は、特にワークピースの大きさおよび加工上の課題に応じて、異なる構造形態や大きさで製造される。小型の部品を、特に大量生産するためには、同期制御されるマシニングセンター(複合工作機械)も知られており、このような複合工作機械においては、ワークピースが同期制御により加工ステーション間で搬送されるよう構成され、例えば回転式のワークピース支持体(キャリッジ)に載置され、抽気(真空化)したシステム内の他のステーションに搬入及び搬出される。このようなマシニングセンターにおける同期制御は、ワークピースの搬送の他に、弁の開閉も同期制御し、システムの異なる領域を、同期制御に基づき抽気したり、通気したりする。
【0003】
例えば、特許文献1(米国特許第4162391号)には、ワークピースをポケットと称されるキャリッジの凹所に装入し、このキャリッジを同期回転駆動するシステムが開示されている。ワークピースを装入したポケットは、キャリッジによる回転によって1個の蓋の下に搬送され、これにより、蓋がキャリッジの一部をカバーし、この状態が、真空位置または加工位置に対応する。これら回転位置において、各ポケットは蓋の下方領域が密封され、この密封は、蓋とキャリッジとの間において、加工位置を包囲するシール材を設けることにより生ずる。第2のシール装置を、同様に加工位置を包囲するよう、蓋とキャリッジとの間に設け、密封された内側空間および密封された外側空間を画定する。これら密封された内側及び外側の空間に真空ポンプを接続し、この真空ポンプによって、各ポケットが密封された空間の加工位置に到達するのに同期して真空にする。真空状態にあり、かつ密封された内側空間内部で、ポケットがキャリッジと一緒に回転し、実際の加工位置、例えば溶接作業を行う加工位置に搬送する。その後、キャリッジの新たな回転により、各ポケットは密封された内側空間及び密封された外側空間から退去する。この装置では、真空源は、1つのポケットが密封された(外側)空間に到達するのに同期して動作する、すなわち弁が同期動作し、また加工を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4162391号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術に関連する本発明の課題は、同期制御で加工を行い、かつ構成簡単な、真空下でワークピースを加工するための装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の装置により解決することができる。好適な実施形態は従属請求項に記載する。
【0007】
本発明のコンセプトは、同期制御および弁操作による各作業空間における抽気(真空生成)を、抽気装置の継続的な動作によって、真空化すべき作業空間が装置内の回転搬送に際し、自動的に抽気領域に到達可能にする機構に代替することにある。これは、シール材の配置によって可能になる。
【0008】
本発明による装置は、ハウジング内に設けた回転可能なロータ装置を備え、ロータ装置内には、加工すべきワークピースを搬入するためのチャンバを形成する。同期回転によりロータ装置を、ワークピースを異なる加工位置間で搬送することができる。シール材、特にロータ装置内に形成したチャンバにおける各開口用のシール材であって、各開口を包囲し、かつロータ装置およびそれに伴って開口とともに回転するハウジングまたはハウジング蓋に対するシール材、および付加的なシール材の対であって、ロータ装置内における開口全体とハウジングまたはハウジング蓋との間に密封空間を画定するシール材の対によって、ロータ装置内に形成したチャンバを真空下で、ロータ装置内のチャンバに真空を生成する加工ステーションと実際にワークピースを加工するワークピース加工ステーションとの間における搬送を可能にする。さらに、真空を生成するために待機させる各チャンバに真空ポンプを接続することができ、この場合の真空ポンプは同期制御により動作するものではなく、一例としてむしろ継続的に動作する。これにより、真空ポンプまたは真空装置用に、回転搬送に合わせて同期動作する特殊な弁を設ける必要がなくなり、むしろ自動的に調節が行われるようになる。これは、真空の生成がロータ装置内におけるチャンバの回転位置にのみ依存することに由来する。
【0009】
これにより、真空下でワークピースを加工するための装置は、本発明の好適な一実施形態によれば、特にほぼ円筒状の内部空間を有するハウジング、および円筒状の内部空間を端面の一箇所でほぼ密閉するハウジング蓋を備えることになる。さらに、ハウジングに対し、回転可能なハウジング底部を設け、このハウジング底部はハウジングに対してシールするため、ハウジング底部、ハウジング蓋およびハウジングが囲むまたは包囲する空間が、内部空間を画定する。ハウジング底部にはロータ装置を連結し、ロータ装置はほぼ円筒状を有し、かつ内部空間内に収容する構成とする。ロータ装置内にワークピースを搬入するための複数個のチャンバを形成し、これらチャンバの個数は、例えば加工ステーションの個数に対応するようにし、しかも周方向に均一に離間するようロータ装置に配置する。
【0010】
ハウジングおよび/またはハウジング蓋には作業開口を形成するものとし、ロータ装置のチャンバは、それぞれ少なくとも1つのロータ開口を有し、これらロータ開口は、ロータ装置を同期回転することにより、作業開口と合致することができる。
【0011】
各ロータ開口周りに、ロータ開口に割り当てたロータ開口シール部材を設け、このシール部材により、ロータ装置とハウジングとの間、またはロータ装置とハウジング蓋との間におけるシールが可能になる
【0012】
さらに、ロータシール部材を、ロータ装置とハウジング蓋および/またはロータ装置とハウジングとの間に設ける。好適には、対として設けるロータシール部材の配置は、各ロータシール部材が、ハウジング蓋またはハウジングに形成した作業開口をすべて包囲し、かつハウジング蓋に形成した作業開口が、ロータ装置とハウジング蓋との間における空間、またはハウジングに形成した作業開口が、ロータ装置とハウジングとの間における空間を画定し、かつシールするよう行う。
【0013】
好適な一実施形態によれば、少なくとも3つの作業(加工用)開口を設け、各作業開口は少なくとも3つの加工ステーションに割り当てるようにする。すなわち、ワークピース交換ステーションに割り当てたワークピース交換用開口、加工ステーションに割り当てた加工装置用開口および抽気ステーションに割り当てた抽気開口である。付加的な加工ステーションおよび開口を、必要に応じて設けることができる。代案として、対応する開口を割り当てない加工ステーションを付加的に設けることもでき、このような加工ステーションは、例えばワークピース用の待機位置を規定する。
【0014】
ワークピース交換ステーションは、ワークピースをロータ装置のチャンバ内に搬入及び搬出用に設けるため、外気に対して開放させることができる。必要に応じて、個別にワークピース交換用開口のための閉鎖キャップを設けることもできる。抽気ステーションは、抽気ステーションに位置するロータ装置のチャンバに、抽気装置、一例として真空ポンプを連結することにより、チャンバを真空化するのに供する。さらに、加工ステーションは、実際にワークピースの加工をするための機能を有し、加工装置、一例として電子ビーム発生装置と連結することにより、例えば電子ビームでワークピースの表面加工を行うことができる。この目的につき、ワークピースを、真空状態で抽気ステーションから加工ステーションに搬送する構成とする。
【0015】
好適には、ワークピース交換用開口は、閉鎖キャップにより密閉可能とし、ワークピース交換ステーションに位置するロータ装置のチャンバは、閉鎖キャップでハウジングを密閉した際、必要に応じて付加的な真空ポンプ装置に連結することができる。ワークピースの交換を極めて短時間のうちに行うことができ、かつ加工用に高品質の真空が求められることに基づき、長い抽気時間、特にワークピース加工ステーションにおいて必要とする加工時間に比して長い抽気時間が必要とされる場合、ワークピース交換ステーションに閉鎖キャップを設けることを前提として、ワークピース交換ステーションにおいてロータ装置のチャンバに搬入した部材を、このステーションで予め真空化しておくことができれば有利である。この場合、ワークピース交換ステーションに接続する真空ポンプ装置は、弁制御および同期制御する。
【0016】
好適な一実施形態によれば、本発明の装置は、抽気装置として真空ポンプを備え、このポンプは抽気開口に接続し、好適には、継続的、すなわち常時動作し、弁制御および同期制御しない構成とする。同期制御する搬送運動、すなわち回転運動が、特殊に配置したシール材が画定する空間において、ロータ装置の各チャンバによる真空空間または非真空空間内への搬送を規定することにより、真空ポンプは継続的に動作し、真空を生成する抽気が可能になる。チャンバに割り当てた搬送位置に到達後、チャンバが自動的に真空源に接続されるよう構成するため、本発明の装置に必要な構成部材の個数を比較的少なくすることができる。
【0017】
好適には、本発明の装置は、加工装置として電子ビーム発生装置を備え、この電子ビーム発生装置は作業(加工用)開口に装入する。電子ビーム発生装置は、固定または可動に、例えば蓋上または側壁に配置可能とすることで、垂直および/または水平方向に延びるビーム案内が可能になる。
【0018】
好適には、ハウジング蓋および/またはハウジングの抽気開口を形成する部位に、予抽気チャネルを例えば溝として形成し、この予抽気チャネルは、抽気開口からハウジング底部およびロータ装置の回転方向とは逆方向に延在させる。これにより、ロータ装置による回転運動の際、真空の生成をするため待機中のロータ装置のチャンバが、実際に抽気ステーションに到達する前に真空装置に接続することで、同一の同期時間でより長時間にわたって抽気することができるようになり、真空の質を向上させることができるようになる。この場合、予抽気チャネルの長さは、周方向において360°/nよりも短い構成とし、ここにnは加工ステーションまたはロータ装置内におけるチャンバの個数を示す。すなわち、予抽気チャネルは、ロータ装置内の各チャンバの1個のみに接続することになる。
【0019】
別の好適な一実施形態によれば、ハウジング蓋および/またはハウジングのワークピース交換用開口を形成する部位に、予通気チャネルを例えば溝として形成し、この予通気チャネルは、ワークピース交換用開口からハウジング底部およびロータ装置の回転方向とは逆方向に延在させる。予抽気チャネルと同様、これにより通気用に待機中のチャンバを、実際にワークピース交換ステーションに到達する前に大気圧および外気に通気することができるため、一方で通気に必要な時間を短縮することが可能になり、他方で急激な通気を緩慢にすることで、周囲の不純物、汚染物などの侵入を減少することができるようになる。特に予通気チャネルは、例えばワークピース交換用開口に向け徐々に拡張する構成とすることにより、通気を制御し、しかもより均一に行うことができる。
【0020】
好適な一実施形態によれば、作業開口はハウジング蓋に形成し、この場合、好適には、ロータ装置の各チャンバは、ハウジング蓋に向けて開放させ、一例としてほぼ円筒状のチャンバとして構成する。ハウジング蓋に作業開口を形成することにより、本発明の装置を特に構成簡単とすることができる。
【0021】
これに加え、代案として、基本的には開口をハウジングに設け、対応するロータ装置の開口を、チャンバにおける円筒状の側壁に設ける開口として形成することもできる。さらに、作業開口の一部を蓋に設け、他の一部をハウジングに設ける構成とすることもできるが、この場合、特にロータシール手段に関するシール作業の手間が増えることになる。これは、ハウジングの開口全体が、それぞれロータ装置に対するシールを必要とするのみならず、ハウジング蓋に設けた開口全体もそれぞれシールを必要とするためである。
【0022】
好適には、作業開口は同一の角度間隔、特に360°/nでハウジング蓋に配置し、この場合、nは本発明の装置における加工ステーションの個数を表す。この角度間隔は、同期制御による回転運動を容易にする。
【0023】
好適な一実施形態によれば、本発明の装置は、さらに駆動モータを備え、このモータによってハウジング底部を同期制御により駆動することができ、かつロータ装置とともに回転させることができる。この場合の同期制御は、一度の同期によって、ロータ装置における各チャンバが1つの加工ステーションから次の加工ステーションに搬送されるようにする。換言すれば、特に360°/nの角度領域で搬送される構成とする。
【0024】
好適には、ロータ装置のチャンバ内に、付加的に保持および/または回転装置、もしくはマニピュレータをワークピース用に設けることで、ワークピースの加工方法および加工精度を向上させることができる。
【0025】
好適な一実施形態によれば、共用の駆動装置を、保持および/または回転装置および/またはマニピュレータ用にハウジング底部に設ける。
【0026】
好適な一実施形態によれば、さらに加工ステーションにおいて、付加的な分子ポンプをロータ装置のチャンバに接続することができ、この分子ポンプにより加工プロセス時に真空状態を維持することで、加工時の部材によるガス発生を防止することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を、添付図面につき詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による、真空下でワークピースを加工するための装置を、図2に示す面A‐B線上の縦断面図である。
【図2】図2における異なる断面を示す図1のワークピースを加工するための装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および図2に示すように、真空下でワークピースを加工するための装置100は、ほぼ円筒状の構造部分として構成したハウジング1を備える。ハウジング1には蓋2を載置するものとし、この蓋2によりハウジング1の端面を閉じる構成とする。蓋2に対向する側のハウジング1の端面にハウジング底部6を設け、ハウジング底部6は、ハウジング1に対し相対回転可能に連結する。ハウジング底部6は、モータ7により段進的に回転駆動する。特に図示の実施形態では、モータ7の駆動は、ハウジング底部6が120°毎に回転する構成とする。これは装置100が、図1および図2に示す実施形態において、互いに120°の角度で離間して配置する3つの加工ステーション5,17,19を有することに起因する。
【0029】
ハウジング1、ハウジング蓋2およびハウジング底部6が画定する内部空間に、ロータ装置8を組み込み、このロータ装置8もほぼ円筒状に形成し、かつその体積はほぼ内部空間の容積に対応する。ロータ装置8は、ハウジング底部6に連結し、これにより、ロータ装置8はハウジング底部6と一緒に回転できる。さらに、図2に明示する通り、ロータ装置8内には、それぞれ円筒状に形成した3個のチャンバ81を設ける。チャンバ81は、ロータ開口21によりハウジングプレート2に向かって開放する。さらに、各チャンバ81は、周方向に順次互いに120°の角度毎に離間して配置し、装置100における加工ステーション5,17,19の数に対応する構成とする。ハウジング底部6を駆動モータ7により回転し、これに連動してロータ装置8も回転すると、ロータ装置8内に形成した各チャンバ81が、円形経路82に沿って、加工ステーション5,17,19のうち一つから次の加工ステーションに搬送されるまたは変位する。装置には、必要に応じて、3個以上のチャンバおよび加工ステーションを対応する箇所に設けることができる。さらに、加工ステーションの個数およびロータ装置8内に形成する各チャンバの個数を、必ずしも対応させる必要はない。加工ステーションより多くのチャンバを設ける場合、例えばチャンバのうち1個は、ハウジング底部6またはロータ装置8における特定の回転角度位置では待機位置となる。
【0030】
さらに、ロータ装置8の各チャンバ81内に、ワークピース保持装置9および回転装置10または他のマニピュレータが、駆動システムとともに取り付けられるようにする。図示の実施形態(図1参照)では、ワークピース保持装置9を回転するため、共通の駆動装置23をハウジング底部6に設け、ワークピース保持装置9は、ワークピース回転装置10に連結することにより、保持装置9および回転装置10を特定の加工位置および加工時間に、所望の加工作業ならびに割り当てるワークピース位置に応じて、回転または変位することができる構成とする。ただし、代案として、個別の駆動装置を、ロータ装置8の各チャンバ内におけるそれぞれの保持装置9または回転装置10用に設けることもできる。図示の形態で不可欠な点は、ロータ装置8を、ハウジング底部6側においてシールすることにある。すなわち、ハウジング底部6方向に対し、密に封止したチャンバを形成することが重要である。これは、例えば図示の実施形態に関し、各ワークピース回転装置10とロータ装置8との間にシール材を設けることを意味する。
【0031】
さらに、ハウジング蓋2には加工装置用の開口4を設け、開口4の上側に電子ビーム発生装置11を垂直方向に組み付け、電子ビーム発生装置11のビーム管3を加工ステーション5に位置するロータ装置8のチャンバ内に指向させ、またハウジング蓋2に設けた開口4内に挿通する。
【0032】
ハウジング蓋2における他の開口、すなわち電子ビーム発生装置を挿通する加工装置用の開口4に対し、ハウジング蓋2の周方向に120°の角度離間する開口として、ワークピース交換用の開口12を設ける。ワークピース交換用の開口12は、周囲に対し開放しているため、矢印W方向に沿って、ワークピースをワークピース交換ステーション17に位置するロータ装置8のチャンバ内に、搬入及び搬出することができる。
【0033】
第3の作業開口で、すなわちハウジング蓋2におけるワークピース交換用の開口12または加工装置用の開口4に対し、やはり120°の角度離間して設ける作業開口として、真空生成用の抽気開口13を設ける。真空生成用の抽気開口13は、接続手段を使用し、かつシールした状態で真空ポンプ装置Vに接続する。
【0034】
ハウジング蓋2とロータ装置8との間に摺動スリット16を形成することにより、ロータ装置8が、ハウジング蓋2、ハウジング1およびハウジング6底部で画定される内部空間において、ハウジング底部6とともに回転できるようにする。
【0035】
ハウジング蓋2に対する各ロータ開口21周りにロータ開口シール部材14を取り付けるものとし、シール部材14によって各ロータ開口をハウジング蓋に対し封止することができる。これにより、ワークピース交換用の開口12に関わらず、ロータ装置8における各チャンバであって、抽気ステーション19またはワークピース加工ステーション5に位置するチャンバに、真空を生成または維持することができるようになる。すなわち、摺動スリットを経て、ワークピース交換用の領域から加工チャンバ内、すなわちロータ装置8のチャンバであり、ワークピース加工ステーション5に位置するチャンバ内への空気の逆流を防止することが可能になる。
【0036】
さらに、図2に明示するように、すべてのロータ開口21の外側を共通して包囲する第1ロータシール部材15並びにロータ開口21の内側を同心状に包囲する第2ロータシール部材15を設ける。これら2つのロータシール部材15により、ロータ開口シール部材14であって、好適にはハウジング蓋2における半径方向内側および外側においてロータシール部材15と当接するシール部材14とともに、ロータ装置8とハウジング蓋2との間で、密封した空間(環状空間83)を作り出すことができる。この環状空間83は、ワークピース交換ステーション17領域(83d)においてのみ外気に対し開放する構成とするが、この外気に接する開口は、ワークピース交換用開口12を包囲するロータ開口シール部材14により、環状空間に対しては気密に構成されるようにする。これにより、ロータ装置8のチャンバのうち、ワークピース交換ステーション17に位置するチャンバのみが外気と連通する。
【0037】
図2に示すように、ハウジング蓋2には、予通気チャネル20および抽気チャネル18を形成する。抽気チャネル18は、ハウジング蓋2の抽気開口13から360°/2nの範囲にわたって、ロータ装置8の回転方向とは逆側に延在させ、予通気チャネル20も周方向に近似した範囲にわたって、ハウジング蓋2のワークピース交換用の開口12からロータ装置8の回転方向とは逆方向に延在させる。ロータ装置の回転方向は図2の矢印Rで示し、時計回りに対応する。抽気チャネル18および予通気チャネル20は、ハウジング蓋2において、例えば溝状の切除部として構成し、これによりロータ開口シール部材14による封止は、完全に密封できないようにする。すなわち、抽気チャネル18または予通気チャネル20の始端部にロータ装置8におけるチャンバのうち1つが到達すると、該当のチャンバが抽気開口13によって真空装置Vまたはワークピース交換用開口12に接続するよう構成する。好適には、抽気チャネル18および予通気チャネル20の構成は、作業開口4,12,13がチャンバにおける開口21に対面するようロータ装置が位置決めされる際に、ロータシール部材14がハウジング蓋2に対し再び完全に密封されるようにする。すなわち、この領域では浅い溝を設けることにより、加工位置におけるチャンバの密封を良好なものとする。代案として、ロータ開口シール部材14とロータシール部材15との間において、適切なシール材を使用し互いに当接させることにより、同様の効果をロータ装置8のあらゆる回転位置において生ずるようにすることができる。
【0038】
図1および図2に示すように、ワークピースの搬入・搬出、抽気および加工のための3個のチャンバ及び加工ステーション5,17,19を備える装置100の加工サイクルは、以下に示すとおりである。加工ステーション5に位置するロータ装置8のチャンバにおける加工作業が完了し、かつワークピース交換ステーション17に位置するロータ装置8のチャンバにおけるワークピースの交換が完了した後、駆動モータ7がロータ装置8を120°の角度にわたり回転し始める。この場合、新たにワークピースを設けたチャンバが、抽気ステーション19に向けワークピース交換開口12領域を離れた直後であり、かつ抽気開口13に連通する抽気チャネル18に到達する前に自動的に抽気を開始する。ロータ装置8とハウジング蓋2との間の空間における抽気は、所望の領域においてのみ行う。これは、搬送されてくるチャンバのロータ開口シール部材14、次のステーションに搬送するロータ開口シール部材14、および回転方向に対面する、これらのロータ開口シール部材14の間に位置するロータシール部材15の部分が、抽気開口に対して開放する、密封空間を規定することに起因する。
【0039】
同時に、抽気したチャンバを、第2ステーションから電子ビーム発生装置11を設けたワークピース加工ステーション5の下方に回転する。この加工ステーション5では、加工プロセス中に生じるワークピースから発生するガスに関し、必要に応じて付加的な(図示せず)ポンプ、一例として分子ポンプを利用して真空状態を維持することができるようにする。
【0040】
加工済みのワークピースを収容したチャンバは、その後、ワークピース交換ステーション17に搬送し、該当のチャンバは、回転運動が完了する前にすでに予通気チャネル20により予め通気される。予通気チャネル20および抽気チャネル18の領域においてのみ、ロータ開口シール部材14によって摺動スリット16は完全にはシールされない。抽気チャネル18におけると同様に、各ロータ開口シール部材14およびロータシール部材15は、ロータ手段8とハウジング蓋2との間における空間は再びシールされ、これにより、この領域以外ではワークピース交換開口12からの外気が摺動スリット16に流入することを防止する。
【0041】
ロータ装置8の回転運動が完了した後、ワークピース加工ステーション5において新たな加工作業、例えば溶接作業または表面加工が電子ビームにより行われ、抽気ステーション19では、ステーション19に位置するロータ装置8のチャンバが、ポンプにより必要な真空状態になるまで抽気される。
【0042】
環状空間83は、83a,b,c,dの各部位で、ロータ開口シール部材14およびロータシール部材15により封止される。
【0043】
この原理は、蓋または同期装置の側壁において固定もしくは変位可能に配置したびビーム発生装置と同様に、垂直又は水平方向に延びるビーム案内にも適用される。
【0044】
必要に応じて、個々のチャンバに、付加的に固定または回転可能な保持装置、および加工プロセス中に構成部材の収容および変位用に付加的なマニピュレータを設けることが可能である。
【0045】
ワークピースの交換を極めて短時間で行うことができ、かつ高品質の真空状態が求められ、したがって長い抽気時間が必要な場合、部材交換用のステーション(ワークピース交換ステーション17)に閉鎖キャップ(図示せず)を設けることができる。これにより、ロータ装置8の該当チャンバがワークピース交換ステーション17に留まる同期時間の一部を、抽気用にこのステーション17で利用することが可能になる。
【0046】
上述したように、本発明により、抽気、及びその後のワークピース加工を真空下で行うことができ、しかも特に抽気を、ロータ装置8による搬送運動に合わせて個別に同期制御する必要がない。
【0047】
本発明による好適な態様によれば、真空下でワークピースを加工するための装置100を提案する。装置100は、ほぼ円筒状の内部空間を有するハウジング1と、ハウジング蓋2と、ハウジング1に対して回転可能なハウジング底部6と、ハウジング底部6に連結し、かつハウジング1の内部空間に配置したほぼ円筒状のロータ装置8であって、装置8内にワークピースを収容する複数個のチャンバの形式としたロータ装置8を有する。この場合、ハウジング1および/またはハウジング蓋2に作業開口4,12,13を形成し、ロータ装置8の各チャンバには、少なくとも1つのロータ開口21を設け、このロータ開口21は、作業開口4,12,13と合致できるようにする。さらに、ロータ装置8とハウジング1またはハウジング蓋2との間における各ロータ開口21周りに、ロータ開口シール部材14また、ロータ装置8とハウジング蓋2および/またはハウジング1との間にロータシール部材15を設け、各ロータシール部材15は、ハウジング蓋2またはハウジング1に形成した作業開口4,12,13をすべて共通して包囲し、またロータ装置8とハウジング蓋2またはハウジング1との間における空間を含めてハウジング蓋2に形成した作業開口4,12,13を画定しかつシールする。
【0048】
ここで強調されるべきは、発明の詳細な説明および/または請求項に開示の特徴は、当初の開示内容の目的につき、互いに個別かつ独立した事項として見なし、同様に、特許請求の範囲に記載の発明を限定する目的につき、実施形態および/または請求項に記載の発明に関する特徴の組み合わせを、互いに独立した事項として見なすべき点である。さらに、明確にすべきは、範囲に関するすべての記載または一連のユニットに関する記載は、当初の開示内容および特許請求の範囲に記載の発明を限定する目的につき、あらゆる中間値またはユニットの下位概念を開示し得るものであり、特に範囲に関する記載を限定するものとしても示し得る点である。
【符号の説明】
【0049】
1 ハウジング
2 ハウジング蓋
4 作業開口(加工装置用の開口)
5 加工ステーション(ワークピース加工ステーション)
6 ハウジング底部
7 駆動モータ
8 ロータ装置
9 回転装置
10 回転装置
11 電子ビーム発生装置
12 作業開口(ワークピース交換用の開口)
13 作業開口(抽気開口)
14 ロータ開口シール部材
15 ロータシール部材
16 摺動スリット
17 加工ステーション(ワークピース交換ステーション)
18 抽気チャネル
19 加工ステーション(抽気ステーション)
20 予通気チャネル
21 ロータ開口
23 駆動装置
81 チャンバ
82 円形経路
83 環状空間
83a,b,c,d 環状空間の部分
100 装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空下でワークピースを加工するための加工装置(100)であって、
内部空間を有するハウジング(1)と、
ハウジング蓋(2)と、
前記ハウジング(1)に対し回転可能にしたハウジング底部(6)と、
前記ハウジング底部(6)に連結し、かつ前記ハウジング(1)の前記内部空間に配置したロータ装置8であって、該ロータ装置(8)内にワークピースを収容するための複数個のチャンバ(81)を設けた、該ロータ装置8と
を備えた加工装置(100)において、
前記ハウジング(1)および/または前記ハウジング蓋(2)に複数個の作業開口(4,12,13)を形成し、前記ロータ装置(8)における前記複数個のチャンバ(8)のそれぞれには、少なくとも1つのロータ開口(21)を設け、これにより、前記ロータ装置(8)の回転に基づき円形経路(82)を規定し、該円形経路(82)に沿って前記ロータ開口(21)が変位する構成とし、
前記作業開口(4,12,13)を前記円形経路(82)に沿って配置する際、それぞれの前記ロータ開口(21)を、前記円形経路(82)に沿う変位時に前記作業開口(4,12,13)に合致できるよう構成し、
前記ロータ装置8と前記ハウジング(1)および/または前記ハウジング蓋(2)との間における、それぞれの前記ロータ開口(21)周りにロータ開口シール部材(14)を設け、また
少なくとも2種類のロータシール手段(12)を、前記ロータ装置(8)と前記ハウジング蓋(2)および/または前記ハウジング(1)との間において、前記ロータ開口シール手段(14)と接触する状態で設け、前記円形経路(82)に沿う環状空間(83,83a,83b,83c)を、前記作業開口(4,12,13)および前記ロータ開口(21)の位置で区切り、前記環状空間(83,83a,83b,83c)を画定し、そして部分毎にシールする構成とした
加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記ロータ装置8の前記チャンバ(81)は、前記ハウジング底部(6)および前記ロータ装置(8)の同期回転により、加工ステーション(5,17,19)に変位可能とした、加工装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置において、複数個の前記作業開口は、ワークピース交換ステーション(17)に割り当てたワークピース交換用開口(12)、ワークピース加工ステーション(5)に割り当てた加工装置用開口(4)および抽気ステーション(19)に割り当てた抽気用開口(13)を有する構成とした、加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、前記ワークピース交換用開口(12)は、閉鎖キャップにより封止可能とし、前記ワークピース交換ステーション(17)に位置する前記ロータ装置8の前記チャンバは、前記閉鎖キャップで封止した状態において、真空ポンプ装置に接続可能とした、加工装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の装置において、さらに、真空ポンプを備え、該真空ポンプは、前記抽気開口(13)に、好適には常時接続する構成とした、加工装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の装置において、さらに、前記加工装置用開口(4)に配置した電子ビーム発生装置(11)を備えた、加工装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一項に記載の装置において、前記ハウジングプレート(2)および/または前記ハウジング(1)における前記抽気開口(13)は抽気チャネル(18)を有する構成とし、該抽気チャネル(18)は、前記抽気開口(13)から前記ハウジング底部(6)および前記ロータ装置(8)の回転方向とは逆方向に延在する構成とした、加工装置。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか一項に記載の装置において、前記ワークピース交換用開口(12)の前記ハウジング蓋(2)および/または前記ハウジング(1)に予通気チャネル(20)を形成し、該予通気チャネル(20)は、前記ワークピース交換用開口(12)から前記ハウジング底部(6)および前記ロータ装置(8)の回転方向とは逆方向に延在する構成とした、加工装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置において、前記作業開口(4,12,13)を、順次等角度間隔360°/nで配置した加工装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置において、前記ロータ装置(8)の前記チャンバを、前記ハウジング蓋(2)に向けて開放させ、しかもほぼ円筒状のチャンバとして構成した加工装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置において、さらに、前記ハウジング底部(6)に連結した駆動モータ(7)を備え、前記ハウジング底部(6)を、加工ステーション(5,17,19)間で同期変位させる構成とした、加工装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置において、前記ロータ装置(8)の前記チャンバ内に、ワークピースのための保持および/または回転装置(9,10)、および/またはマニピュレータを設けた、加工装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、前記ハウジング底部(6)に、ワークピースのための前記保持および/または前記回転装置(9,10)、および/または前記マニピュレータ用の駆動装置(23)を設けたことを特徴とする加工装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置において、前記内部空間をほぼ円筒状に構成し、および/または、前記ロータ装置(8)をほぼ円筒状に構成し、および/または、前記ロータシール部材(15)が前記作業開口(4,12,13)をすべて包囲する構成とした、加工装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−510368(P2012−510368A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537898(P2011−537898)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008519
【国際公開番号】WO2010/063436
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511132432)グローバル ビーム テクノロジーズ アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】Global Beam Technologies AG.
【Fターム(参考)】