説明

真空包装方法

【課題】電子レンジによる加熱調理に適する真空包装体のシール方法。
【解決手段】被包装物19を収容したトレイ20の上から、加熱軟化したカバーフイルム16を延伸させて密着させ真空包装体を形成する場合、第一工程として、カバーフイルム16を、連続するフランジ31に全域に、トレイ31の耐溶融限界温度でもって接着する。この耐溶融限界温度とは、カバーフイルム16のシーラント層は溶融するが、トレイ20は溶融しない。続く第二工程では、一部51を除いて、フランジ31全域にカバーフイルム16を、トレイ20耐溶融限界温度を越える温度で、黒塗り50の強接着を施す。加熱調理の場合、被包装物19から発生する蒸気圧により弱溶着の網目模様51は自然剥離するが、黒塗り50部分は蒸気圧では剥離はしない。ただし黒塗り50部分も人手では剥離は容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧チャンバー内において、被包装物を収容したトレイ周囲を真空状態に変化させたあと、前記耐圧チャンバーに還元する大気圧でもって、加熱したカバーフイルムを引き伸ばしながら前記トレイおよび被包装物の上面に押し付けて形成する食品の真空包装体形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前記した耐圧チャンバーは、例えば下記の特許文献1に示されている。該文献によると耐圧チャンバーは、トレイを内部に収容する下箱と、内部に熱盤を配置する上箱とにより構成される。前記上下両箱を、カバーフイルムを挟持するように密着させ、前記カバーフイルムを隔てて下箱内にトレイ配置空間、上箱内に熱盤配置空間が形成される。前記両配置空間内の空気を真空ポンプでもって同時吸引して真空化させ、そのあと上箱内に熱盤配置空間に大気圧を作用させると、熱盤によって加熱されたカバーフイルムが引き伸ばされ、トレイおよび同トレイに収容した被包装物に沿って密着し、前記被包装物を密封することになる。このようにして保存性の利く真空包装体は形成され、かかる真空包装体を電子レンジに収容して加熱することにより、食品である被包装物を加熱調理することができる。
【0003】
電子レンジでもって被包装物を加熱調理する場合、被包装物から噴出する蒸気は、特許文献2に示されるようにトレイとカバーフイルムとの間に意図的に形成された通気孔から噴出し、カバーフイルムの破裂を未然に防止する仕組みになっている。しかし通気孔からは外部の埃がトレイ内に進入するという問題があるので、特許文献3では前記の通気孔に相当する隙穴を感温性の糊で封じ、被包装物から噴出する蒸気熱で前記の糊を溶かせて隙孔を開口するものを開示している。しかし加工製造される糊の性状にはむらがあるから、必ずしも設定温度で溶融するとは限らないという問題がある。つまり設定温度前に開口するとトレイ内部の圧力不足で被包装物が生煮え状態になり、設定温度を超過すると過剰圧力でカバーフイルムが破裂して被包装物が飛び散るという問題がある。
【0004】
内部に空気を収容するトレイ包装体は、それを電子レンジでもって調理する場合、前記空気および食品が含む水分両方の膨張圧でカバーフイルムを開封する特性を備えるが、真空包装体の場合は食品から蒸発する蒸気圧のみがカバーフイルムの開封圧として作用するので、トレイ内部に充分な蒸気圧を貯えて食品の生煮えを防止しながら、カバーフイルムのシール箇所を部分的に蒸気圧で開封してカバーフイルムの破裂を防止する調整はなかなか難しい。プラスティック製のトレイは、そのシール材としてフイルムを使用し、両者を加熱シールして密封することになるが、シール用熱板の一部の温度を落として蒸気を抜く未熟溶着部分を形成しても、熱盤の熱自体はシール材で移動し全体を均温化する傾向があり、未熟溶着部分の温度は変化して開封のタイミングが次第に変化するという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開昭46−1491号公報
【特許文献2】特開平6−171611号公報
【特許文献3】特開平11−89715号公報
【発明の開示】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するのために、耐圧チャンバー内において、食品を収容したプラスティック製のトレイの周りに真空を作用させる一方、第一熱盤でもってカバーフイルムを加熱軟化させ、そのあと前記耐圧チャンバー内に還元する大気圧でもって前記の軟化したカバーフイルムを、前記のトレイおよび食品の上面に押し付けて真空包装体を形成する方法であって、前記第一熱盤の温度を、トレイの耐溶融限界値に設定し、前記耐圧チャンバー内に大気圧を還元する前に、前記の第一熱盤でもってカバーフイルムのシーラント層を溶融しながら、この溶融したシーラント層をトレイの周縁フランジ領域外に押し出し得る圧力を加える第一熱盤により、前記カバーフイルムをトレイのフランジに接着する第1工程と、前記第1工程域から搬送されてくるトレイのフランジをシール台でもって下から支持する一方、前記フランジとそれに接着しているカバーフイルムとを、一部に盗み欠き部を備える第二熱盤の、トレイの耐溶融限界値を超える温度と、前記第一熱盤の圧力よりも低い圧力で挟圧する第2工程とにより構成する。
【0007】
カバーフイルムをトレイのフランジに接着する第1工程において、第一熱盤の温度をトレイの耐溶融限界値に設定する、とした、トレイの耐溶融限界値とは、トレイを構成するプラスティック材(例えばポリエチレン)の表面が溶け出す直前の温度数値を言う。カバーフイルムのシーラント層を仮に酢酸ビニルなどポリオリフイン系樹脂で構成した場合、このシーラント層の融点は75℃付近であるから、第一熱盤の温度をそれよりも高い120℃〜140℃の範囲に設定し、第一熱盤によりカバーフイルムをトレイ周縁のフランジ上面に圧接する。第一熱盤の、120℃〜140℃という値は、トレイのフランジの融点に達していない。。しかし第一熱盤のカバーフイルムに対する押力を上げると、その圧力によりトレイのフランジ及び前記シーラント層に作用する温度は上昇する。この温度上昇と、第一熱盤の押圧力とにより、トレイのフランジと、カバーフイルムとの間で溶融したシーラント層を押し潰し、その圧力は押し潰した接着材の余分をフランジの外に押す。そしてこの挟圧時間が、トレイを構成するプラスティック材が溶融する耐溶融限界値に到達した時点で、第一熱盤による挟圧を停止する。結果として、この時点でトレイは未溶融の状態であり、カバーフイルムにおけるシーラント層はトレイに対して比較的緩やかな力で密着する。
【0008】
上記した第1工程域において、カバーフイルムを密着させたトレイを、後域のシール台に送って前記トレイのフランジを、前記のシール台でもって下から支持する。そして、前記フランジとそれに密着しているカバーフイルムとを、一部に盗み欠き部を備える第二熱盤により挟圧し加熱する。この場合の、第二熱盤の温度はトレイの耐溶融限界値を超える。つまりトレイの構成材料がポリエチレンの場合、180℃〜200℃に設定する。この180℃〜200℃と言う値は、トレイの耐溶融限界値を超え、トレイの表面を溶融させる。そして第一工程における第一熱盤の挟圧力に比較してより小さい第二熱盤の挟圧力により、カバーフイルムをトレイに溶着する。この場合の、トレイのフランジとカバーフイルムとの接着力は、第二熱盤の挟圧力でもって決定する。この接着は、真空包装体が市場流通したあと、消費者がカバーフイルムをトレイから比較的小さい力で容易に剥離できる程度の接着力であり、当該真空包装体を電子レンジ内で加熱調理する場合、第二熱盤の盗み欠き部により挟圧を避けた部分は被包装物である食品から発生する加熱蒸気圧により容易に剥離する。
【0009】
既に説明したように第1工程において、第一熱盤は、溶融したシーラント層をトレイの周縁フランジ領域外に押し出すに足りる圧力でもって、カバーフイルムをトレイのフランジに密着させた。かかる押圧力から得られる効果は、余分なシーラント材の外部への押し出しによりシーラント層の厚みが均一化し、シーラント層による接着力が全域で均等化する。このため蒸気圧に対して、盗み欠き部分のフイルム耐剥離抗力は均等であり、従って発生蒸気量に対応する盗み欠き部の接着力を、加熱温度と挟圧力との調整で正確化できる。
【実施例1】
【0010】
装置全体の側面を示す図2では、第一工程域に、上箱11と下箱12とからなる耐圧チャンバー10が備わり、第二工程域には下部のシール台46と、上部の第二熱盤14とが備わる。また横向き水平な軸15に支持したロールフイルム16は、リール17の巻き取り力により帯状のカバーフイルムとして引き出され、一方、被包装物19を収容したプラスティック製のトレイ20を、供給装置18でもって前記の耐圧チャンバー10に搬入するようになている。
【0011】
目視線に対する断面で表す図3では、耐圧チャンバー10内にトレイ20は2列で運びこまれるが、上箱11内には、上部のアクチュエータ22に連結された左右2個の第一熱盤21が備わる。一方下箱12内には、2個の窪み23を形成したトレイ受け台24と、前記の両窪み23の上域で、運びこまれるトレイ20を支える支持板25を、昇降ロッド26の上端に支持して配置している。
【0012】
また上箱11はコイルスプリング27を介して基礎材28に懸垂支持され、一方下箱12はリフトバー29を介して上下する。従って図4に占めすごとく、上箱11に対し下箱12をリフトバー29でもって押し上げて耐圧チャンバー10を密封する場合、下部アクチュエータ30はトレイ受け台24を下方に退避させる構造である。
【0013】
図5は耐圧チャンバー10の拡大図であり、下箱12の内部に配置した受け台24は、トレイ20を下から支持し、該支持板25はトレイ20を下降させてフランジ31をシール台24の上に添えることができる。上箱11内に設置した第一熱盤21は、フランジ31と同輪郭の逆椀形であり、既に説明したように上域のアクチュエータの下動力でもってカバーフイルム16をフランジ31に押し付けることができる。また受け台24における前記フランジ31の周りの溝33は、上域のカット刃34の受け入れ溝であり、カット刃34は枠フレーム35を介して外箱11に支持している。
【0014】
バー36を介しアクチュエータで第一熱盤21を引き上げる一方、下箱12を上箱11に密着するように押し上げると、上下両箱内の空気はそれぞれ真空ポンプでもって吸引される。上箱11及び枠フレーム35は上域からコイルスプリングの反力が作用しているので、下箱12をさらに上動させるとカット刃34は柔軟性のカバーフイルム16を溝33に押し入れる。そこでアクチュエータでもって第一熱盤21を下降させてフランジ31の上面にカバーフイルム16を押し付け、さらに下箱12を上域のコイルスプリングの反力に抗して押し上げ、フランジ31の周囲におけるカット刃34によってカバーフイルム16をカットした後、上下両箱内に大気圧を還元すると、第一熱盤21により加熱軟化したカバーフイルム16は延伸して、トレイ20及びその内部の被包装物19に密着することになる。
【0015】
カバーフイルム16の下側の面にはシーラント層がラミネートされており、仮にこのシーラント層を酢酸ビニルにより構成している場合、第一熱盤21の加熱温度を120℃に設定する。この設定温度は前記シーラント層の融点を超えるが、ポリエチレン製のトレイ20では耐溶融温度を超えない。短時間でトレイ20が耐溶融限界値に達するようにするために、第一熱盤21により高加圧でトレイのフランジ31とカバーフイルム16とを挟圧し、加圧力による加熱温度を高め、トレイ20が耐溶融限界値に達する時間制限でもって第一熱盤21による加圧を停止する。前記における第一熱盤21の加圧昇温効果により、カバーフイルムのシーラント層は粘性が乏しくなり余分な部分は外部に押し出される。ただ第一熱盤21による加圧昇温はトレイ20の耐溶融限界値を超えないように調整する結果、図6に示すごとくカバーフイルム16の、トレイ20のフランジ31に対する連続的な接着51を、弱い接着力で維持できる。
【0016】
図2においては、下箱12から、後域のシール台46に向け真空包装体を搬送する手段の図示は省略しているが、図7に示すように第2工程域に設置する台座41内の第二支持盤42は、シール台46の上に、移送されてくる真空包装体43を下降させかつそのフランジ31部分を着座させる。
【0017】
上部に配置した第二熱盤45は逆椀型で、その下縁のシール部46は真空包装体43のフランジ31と同輪郭で、同シール部は一部を切り欠いて盗み部47を形成し、切り欠き盗み部47はカバーフイルム16の一部に未溶着部を形成する。第二熱盤45は180℃に温度設定されており、図5の第一熱盤21による挟圧力よりも小さな力で、下域のシール台46上のフランジ31と、カバーフイルム16とを挟圧する。前記の180℃という値はポリエチレン製のトレイ20の耐溶融限界値を超え、当然、酢酸ビニルによるシーラント層も溶融するので、トレイ20とカバーフイルム16との溶着効果は向上する。ただこの場合、第二熱盤45は挟圧力を調整されており必要以上に溶着効果を上げない。
【0018】
第1図は、真空包装体の部分斜視図で、シール台46に支持したトレイ20の上面にカバーフイルム16を密着させた状態である。トレイのフランジ31部分と、カバーフイルム16との接着状態は、第一工程では黒塗り部分50も含めて、全周が網目模様51のような接着力が弱い密着であるが、第二工程では部分的な網目模様51を除いて、全体に黒塗り50の強接着を施す。このため電子レンジによる加熱調理の場合、被包装物19から発生する加熱蒸気圧により網目模様51は容易に自然剥離して蒸気を外部に排出するが、黒塗り50部分は蒸気圧では剥離はしない。ただ黒塗り50部分も人手では剥離は容易である。
【0019】
真空包装体の電子調理では、被包装物から発生する蒸気量のみでフイルムの部分剥離設定が必要であり、発生蒸気量に合った食品の生煮え防止対策、この対策の強化はフイルムの破裂を引き起こすという問題が付き纏うが、第一熱盤は、溶融したシーラント層をトレイの周縁フランジ領域外に押し出すに足りる圧力でもって、余分樹脂の外部への押し出しによりシーラント層の厚みを均一化し、シーラント層による接着力を全域で均等化するので、発生蒸気量の異なる各種真空包装体に沿って盗み欠き部の接着力を、加熱温度と挟圧力との調整で正確化でき効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】真空包装体の断面斜視図
【図2】装置全体図
【図3】第一工程域の耐圧チャンバー断面図
【図4】前図の作用説明図
【図5】耐圧チャンバー断面拡大図
【図6】真空包装体平面図
【図7】第二工程域のシール装置断面図
【符号の説明】
【0021】
10‥‥耐圧チャンバー
11‥‥上箱
12‥‥下箱
14‥‥第二熱盤
16‥‥カバーフイルム
20‥‥トレイ
21‥‥第一熱盤
24‥‥トレイ受け台
31‥‥フランジ
43‥‥真空包装体
46‥‥シール台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧チャンバー内において、食品を収容したプラスティック製のトレイの周りに真空を作用させる一方、第一熱盤でもってカバーフイルムを加熱軟化させ、そのあと前記耐圧チャンバー内に還元する大気圧でもって前記の軟化したカバーフイルムを、前記のトレイおよび食品の上面に押し付けて真空包装体を形成する方法であって、
前記第一熱盤の温度を、トレイの耐溶融限界値に設定し、前記耐圧チャンバー内に大気圧を還元する前に、前記の第一熱盤でもってカバーフイルムのシーラント層を溶融しながら、この溶融したシーラント層をトレイの周縁フランジ領域外に押し出し得る圧力を加える第一熱盤により、前記カバーフイルムをトレイのフランジに接着する第1工程と、
前記第1工程域から搬送されてくるトレイのフランジをシール台でもって下から支持する一方、前記フランジとそれに接着しているカバーフイルムとを、一部に盗み欠き部を備える第二熱盤の、トレイの耐溶融限界値を超える温度と、前記第一熱盤の圧力よりも低い圧力で挟圧する第2工程とからなる真空包装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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