説明

真空吸引システム

【課題】 ワーク搬送テーブルのワーク収納孔内へワークを安定して装填でき、かつ排出することができる真空吸引システムを提供する。
【解決手段】 真空吸引システムはワーク収納孔5を有するワーク搬送テーブル2と、ワーク搬送テーブル2のワーク収納孔5に連通する真空吸引溝7を有するテーブルベース3とを備えている。これらワーク収納孔5および真空吸引溝7は真空配管9を介して真空発生源17に連通されている。真空配管9には負圧センサ10が接続され、この負圧センサ10からの信号に基づいて、圧縮エア発生源20からの圧縮エアが真空配管9内へ送られ、あるいは真空配管9内が大気開放されて、真空配管9内の真空度が調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品であるチップ部品のワークを搬送テーブルのワーク収納孔に吸引するための真空吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図8乃至図10により、ワークを搬送テーブルのワーク収納孔に吸引する従来の真空吸引システムについて述べる。
【0003】
このうち図8は従来の真空吸引システムを搬送テーブルに適用した例を示す部分縦断面、図9は図8に示す真空吸引システムの配管図、図10はワーク装填率と真空度との関連を説明するタイムチャートである。
【0004】
図8において、搬送テーブル2は、テーブルベース3上に回転自在に設けられ、このテーブルベース3はベース4上に固定して設けられている。また、搬送テーブル2を貫通して複数のワーク収納孔5が環状に設けられ、このワーク収納孔5により同心円状の複数列の収納孔列が形成されている。
【0005】
またテーブルベース3には真空吸引溝30が環状に設けられている。この真空吸引溝30は、テーブルベース3及びベース4を貫通して設けられた真空吸引孔8を介して真空配管9に連通し、この真空配管9はさらに図9に示す真空発生源17に絞り弁16を介して連通している。また真空吸引溝30と真空発生源17との間には、負圧センサ31が設けられている。また、真空吸引溝30は搬送テーブル2のワーク収納孔5からなる複数の収納孔列と同心円状に構成され、各真空吸引溝30は収納孔列に設けられた複数のワーク収納孔5の一部に連通されている。
【0006】
また搬送テーブル2にはワーク排出部が設けられ、このワーク排出部には、図8に示すようにテーブルベース3及びベース4を貫通して噴射ノズル11が設けられている。この噴射ノズル11は圧縮エア配管12を介して図示しない圧縮エア制御手段に連通している。
【0007】
図8乃至図10において、真空吸引溝30は、真空配管9及び真空吸引孔8を介して真空発生源17に連通しているため、真空吸引溝30が真空発生源17によって負圧化されるとともに、真空吸引溝30に連通する複数のワーク収納孔5が負圧化される。搬送テーブル2上に載置されたワークWまたは搬送テーブル2に当接したワークWは、ワーク収納孔5の負圧により吸引されてワーク収納孔5内に装填される。
【0008】
ワーク収納孔5と真空吸引溝30との間には漏れが生じるため、すべてのワーク収納孔5にワークWが装填されたとき、真空吸引溝30内の真空度が最も高くなり(以下最高真空度P2という)、全てのワーク収納孔5にワークWが全く収納されず開放されているとき、真空吸引溝30内の真空度が最低真空度となる(図10参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、全てのワーク収納孔5が開放されて真空度が最低の場合であっても、ワークWを吸引してワーク収納孔5に装填することができるよう、真空吸引溝30内の最低真空度はワークWの装填が可能な値に設定されている。しかしながら、ワーク収納孔5には真空吸引溝30が直接連通しており、かつワーク収納孔5と真空吸引溝30の間の流路抵抗が小さいため、一部のワーク収納孔5内にワークWが装填されなかった場合でも、最高真空度P2からの真空度の低下は極めて大きくなる。このため、最低真空度を装填可能な真空度として確保すると、最高真空度P2が極端に高くなり、ワーク排出部において噴射ノズル11から圧縮エアを噴射してワークWを排出しようとしたとき、圧縮エアの噴射力と吸引力が相殺されて排出不良が生じることがある。この傾向は同時複数のワークWの排出では更に高くなる。また、ワークWの吸引力が上昇すると、ワークWとテーブルベース3との摩擦力が上昇したり、搬送テーブル2とテーブルベース3間が空気吸引により摩擦が発生し、テーブル2の回転が不安定となることがある。
【0010】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、ワークを安定して搬送テーブルに装填することができ、かつワークを安定して搬送テーブルにより搬送し、かつ排出することができる真空吸引システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、真空漏れ発生部と、真空発生源と、この真空発生源と真空漏れ発生部とを接続する真空配管とを有する真空吸引機構と、この真空吸引機構の真空配管に接続され、真空配管における真空度を調整する真空度調整機構とを備え、真空度調整機構は真空配管に第1調整部を介して接続された圧縮エア発生源と、真空配管に第2調整部を介して接続された大気開放部と、これら第1調整部および第2調整部を制御する制御部とを有することを特徴とする真空吸引システムである。
【0012】
本発明は、真空度調整機構は、真空漏れ発生部における真空度を検出する負圧センサを更に有し、制御部は負圧センサからの信号に基づいて第1調整部と第2調整部を制御することを特徴とする真空吸引システムである。
【0013】
本発明は、制御部は負圧センサからの信号に基づいて真空度を定め、真空度が低いレベルから高いレベルに向って順に、第1調整部および第2調整部のいずれも閉とする段階、第1調整部を閉としかつ第2調整部を開とする段階、第1調整部および第2調整部のいずれも開とする段階、第1調整部を開としかつ第2調整部を閉とする段階となるよう第1調整部と第2調整部を制御することを特徴とする真空吸引システムである。
【0014】
本発明は、真空漏れ発生部は、ワークを収納するワーク収納孔を有する搬送テーブルを備えていることを特徴とする真空吸引システムである。
【0015】
本発明は、真空漏れ発生部は、搬送テーブルの真空吸引機構側に設けられ、ワーク収納孔と連通する環状の真空吸引溝を有するテーブルベースを更に備えていることを特徴とする真空吸引システムである。
【0016】
本発明は、搬送テーブルのテーブルベース側の面に、ワーク収納孔と真空吸引溝との間に位置する微小断面吸引溝を設けたことを特徴とする真空吸引システムである。
【0017】
本発明は、搬送テーブルのワーク収納孔内に収納されたワークのワーク装填率を求めるワーク装填率測定部を更に備え、制御部はワーク装填率測定部からの信号に基づいて、第1調整部と第2調整部を制御することを特徴とする真空吸引システムである。
【0018】
本発明は、制御部はワーク装填率測定部からの信号に基づいて真空度を求め、真空度が低いレベルから高いレベルに向って順に、第1調整部および第2調整部のいずれも閉とする段階、第1調整部を閉としかつ第2調整部を開とする段階、第1調整部および第2調整部のいずれも開とする段階、第1調整部を開としかつ第2調整部を閉とする段階となるよう第1調整部と第2調整部を制御することを特徴とする真空吸引システムである。
【0019】
本発明は、第1調整部と第2調整部は、その開度が可変となっていることを特徴とする真空吸引システムである。
【0020】
本発明は、第1調整部及び又は第2調整部は、サーボバルブ及び/又はモータ駆動バルブからなることを特徴とする真空吸引システムである。
【0021】
本発明は、真空漏れ発生部と、真空発生源と、この真空発生源と真空漏れ発生部とを接続する真空配管とを有する真空吸引機構と、この真空吸引機構の真空配管に接続され、真空配管における真空度を調整する真空度調整機構とを備え、真空調整機構は真空漏れ発生部における真空度を検出する負圧センサと、真空配管に第1調整部を介して接続された圧縮エア発生源と、負圧センサからの信号に基づいて第1調整部を制御する制御部とを有することを特徴とする真空吸引システムである。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、真空漏れ発生部における真空度を安定させることができる。このため真空漏れ発生部としてワーク収納孔を有するワーク搬送テーブルを用いた場合、ワーク収納孔内にワークを安定して装填するとともに、ワーク収納孔からワークを安定して排出することができ、またワーク搬送テーブルによってワークを安定して搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
図1乃至図6は本発明による真空吸引システムを示す図である。このうち図1は真空吸引システムを示す配管図、図2は本発明を適用したワーク搬送装置を示す平面図、図3(a)はワーク搬送装置の拡大平面図、図3(b)はワーク搬送装置の拡大側断面図、図4は本発明による真空吸引システムの作用を示す図、図5は真空度のレベルとワークの装填率との関係を示す図、図6は電磁弁のON−OFF制御を示す図である。
【0025】
まず、図2および図3により本発明を適用したワーク搬送装置について説明する。
【0026】
図2において、ワーク搬送装置1は、ベース4に固定して設けられたテーブルベース3と、このテーブルベース3上を回転するとともに多数のワーク収納孔5を有する搬送テーブル2とを備えている。
【0027】
搬送テーブル2のワーク収納孔5は搬送テーブル2を貫通するとともに、環状に等間隔で配置され、これら多数のワーク収納孔5からなる収納孔列5aが同心円状に複数列設けられている。テーブルベース3の搬送テーブル2側の表面には、搬送テーブル2の複数の収納孔列5aにそれぞれ負圧を供給する為の環状の真空吸引溝7が設けられ、図3に示すように搬送テーブル2の各ワーク収納孔5は真空吸引溝7と微小断面吸引溝6を介して連通されている。この場合、微小断面吸引溝6は搬送テーブル2のテーブルベース3側の表面に設けられている。また、真空吸引溝7はテーブルベース3及びベース4を貫通して設けられた複数の真空吸引孔8を介して真空配管9に連通され、この真空配管9は図1に示すように更に絞り弁16を介して真空発生源17に連通している。この場合、真空配管9と真空発生源17とによって真空吸引機構が構成される。
【0028】
図2に示したワーク搬送装置1のワーク排出域においては、図3(a)(b)に示すようにテーブルベース3及びベース4を貫通して噴射ノズル11が設けられ、噴射ノズル11は圧縮エア配管12を介して図示しない圧縮エア制御手段に連通している。
【0029】
また図1において、真空配管9はマニホルド部23を有し、このマニホルド部23において真空配管9は絞り弁16を介して真空発生源17へ連通するライン23aと、電磁弁(第1調整部)18および絞り弁19を介して圧縮エア発生源20へ連通するライン23bと、電磁弁(第2調整部)21を介して大気開放部22へ連通するライン23cとに分岐している。
【0030】
このうち真空発生源17は真空を発生させ、真空配管9内を真空状態に保つものであり、圧縮エア発生源20は真空配管9内に圧縮エアを噴射して真空配管9内の真空度を調整するものである。また大気開放部22は真空配管9内を大気開放して、真空配管9内の真空度を調整するものである。
【0031】
また真空配管9には、マニホルド部23において負圧センサ10が設けられている。負圧センサ10は真空配管9内の真空度、すなわちワーク収納孔5以降の搬送テーブル2およびテーブルベース3側の真空度を検出するものである。
【0032】
この場合、ワーク収納孔5を含む搬送テーブル2とテーブルベース3との隙間等から真空漏れ発生部が構成され、負圧センサ10はこの真空漏れ発生部の真空度を検出することができる。
【0033】
負圧センサ10からの信号は制御部10aに送られ、この制御部10aにより電磁弁18,21を制御するようになっている。
【0034】
また制御部10aには、搬送テーブル2のワーク収納孔5内に収納されたワークWの装填率を求めるワーク装填率測定部10bが接続されている。制御部10aはこのワーク装填率測定部10bからの信号に基づいて、電磁弁18,21を制御することもできる。
【0035】
なお、電磁弁18,21の代わりに後述のように、モータ駆動バルブまたはサーボバルブを用いることもできる。
【0036】
図1において、マニホルド部23、電磁弁18,21、絞り弁16,19は、いずれも制御エリア15内に配置されている。
【0037】
また、図1において、マニホルド部23に電磁弁18および絞り弁19を介して接続された圧縮エア発生源20と、マニホルド部23に電磁弁21を介して接続された大気開放部22と、負圧センサ10と、制御部10aとにより、真空配管9内の真空度を調整する真空度調整機構が構成されている。
【0038】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0039】
図2に示すように、ワーク搬送装置1のワーク装填域において図示しない装填手段によりワーク収納孔5にワークWが装填される。ワーク収納孔5内に装填されたワークWは、搬送テーブル2により途中で電気的測定手段(図示せず)により測定されながら回転搬送されて、ワーク搬送装置1のワーク排出域において噴射ノズル11から噴射された圧縮エアによりワーク収納孔5から排出される。
【0040】
この間、負圧センサ10はワーク収納孔5および真空吸引溝7に連通する真空配管9内の真空度、すなわちワーク収納孔5を含むワーク搬送テーブル2とテーブルベース3とからなる真空漏れ発生部における真空度を検出する。
【0041】
負圧センサ10からの信号は、その後、制御部10aに送られ、制御部10aにより、真空配管9内の真空度が以下のように調整される。
【0042】
まず、制御部10aによる真空配管9内の真空度調整の基本原理を述べる。ワーク収納孔5へのワークWの装填率が高くなると吸引の真空度は高くなるから、真空配管9内へエアを供給して真空配管9内の真空度を下げる。また真空配管9内へのエアの供給方式としては、(a)大気圧への解放、及び(b)圧縮エアの噴射の2方式を用いる。特に(b)の圧縮エアは高圧が得られるため応答が速く、また、(a)の大気圧への解放は応答が遅いが、より精密な制御が可能である。
【0043】
以上のことから前記(a)(b)を組み合わせ、或いは(a)(b)を各々単独で用いる。
【0044】
なお、圧縮エアの噴射はそれぞれ最少時間を単位としてセットし、それを単位時間当たり何回の割合で供給する。
【0045】
以下、ワーク装填率と、その制御の組み合わせを示す。
【0046】
負圧センサ10により真空配管9内の真空度を検知して条件により真空度のレベルを設定し、この真空度のレベルに応じて制御の組合せを定める。
(1)レベル1(初期設定真空圧:装填率0%時の圧力であってワーク1個でも搬送中に落下が無い最低真空圧) :エア噴射ゼロ
(2)レベル1〜レベル2(装填率が低い状態の真空圧) :エア噴射ゼロ
(3)レベル2〜レベル3(装填率が中位の状態の真空圧) :大気圧によるエア供給
(4)レベル3〜レベル4(装填率が高い状態の真空圧) :大気圧+圧縮エア噴射
(5)レベル4以上 :圧縮エア噴射
【0047】
次に図4乃至図6により、制御部10aによる具体的な制御作用について説明する。
【0048】
図1において、それぞれのワーク収納孔5と真空吸引溝7を連通させる微小断面吸引溝6の断面は、真空漏れ量を制限する絞り6aの役目を果たしており、全てのワーク収納孔5内にワークWが装填されていない状態(装填率0%)でも、真空吸引溝7内の真空度は確保される。この装填率0%のとき、絞り弁16の調整によりワーク収納孔5内にワークWを吸引保持するのに必要な最低限の真空度が設定(レベル1)されている。
【0049】
ワーク収納孔5内にワークWが装填されると、ワーク装填率の変化に伴い真空配管9のマニホルド部23の真空度が変化する。
【0050】
この間、負圧センサ10によりマニホルド部23の真空度が監視され、負圧センサ10からの信号が制御部10aに送られる。制御部10a内には、ワーク装填率に対応した図5に示すような真空度のレベルが設定されている。このように、真空配管9内の真空度(真空圧力)のレベルはワークWの装填率により変化する。制御部10aはこの真空度のレベル1−4および4以上に対応させて、真空配管9内の真空度を段階毎に調整する。
【0051】
すなわち制御部10aは負圧センサ10からの信号に基づいて、マニホルド部23内の真空度がレベル1からレベル2のとき、電磁弁18,21をともに閉(OFF)となるように制御し、マニホルド部23内の真空度をそのまま維持する。
【0052】
マニホルド部23内の真空度がレベル2からレベル3のとき、制御部10aは大気圧のエア用の電磁弁21を開(ON)とし、圧縮エア用の電磁弁18を閉(OFF)となるように制御する。この場合、マニホルド部23内には大気開放部22を介して大気圧のエアが供給され、マニホルド部23内の真空度がわずかに低下し、このようにしてマニホルド部23内の真空度が調整される。
【0053】
また真空度のレベル2からレベル3の間においても、レベルが上昇するにつれて大気圧のエア用の電磁弁21の開の回数を増加させて、マニホルド部23内の真空度をきめ細かく調整する。
【0054】
マニホルド部23内の真空度がレベル3からレベル4のとき、制御部10aは圧縮エア用の電磁弁18を短時間だけ開(ON)とし、かつ大気圧のエア用の電磁弁21を開(ON)となるよう制御する。この場合、マニホルド部23内は大気開放部22を介して大気解放され、マニホルド部23内に大気圧のエアが供給される。同時に圧縮エア発生源20から圧縮エアが短時間噴射される。このためマニホルド部23内の真空度が低下し、このようにしてマニホルド部23内の真空度が調整される。
【0055】
またレベル3からレベル4の間においても、レベルが上昇するにつれて電磁弁18の開の回数を増加させてマニホルド部23内の真空度をきめ細かく調整する。
【0056】
マニホルド部23内の真空度がレベル4以上のとき、制御部10aは電磁弁18を開(ON)とし、かつ電磁弁21を閉(OFF)となるよう制御する。この場合、マニホルド部23内には圧縮エア発生源20から圧縮エアが噴射され、マニホルド部23内の真空度が低下し、このようにしてマニホルド部23内の真空度が調整される。
【0057】
この間、電磁弁18,21は開動作中、連続した開状態をとってもよく、ON−OFFのサイクルを繰り返して断続的な開状態をとってもよい。
【0058】
断続的な開動作中、電磁弁18,21がONしている時間tは、例えば5msのように固定されており、図4に示す圧縮エア噴射回数/秒(大気開放回数/秒)が変化するとサイクルタイムt及び休止時間tが変化するようになっている。例えば50回/秒の場合のサイクルタイムtは20ms、噴射時間tは5ms、休止時間tは15msとなる。
【0059】
上述のようにマニホルド部23の真空度がレベル2からレベル4の間、制御部10aにより電磁弁18,21が制御される。この場合、マニホルド部23内に絞り弁19により設定された噴射圧力P1の圧縮エアが圧縮エア発生源17から間欠的に噴射され、あるいはマニホルド部23が間欠的に大気開放されて大気開放部22からマニホルド部23内に大気が流入して真空度が調整される。
【0060】
レベル2未満になると両電磁弁18,21とも閉となり、負圧の減圧動作が停止するようになっている。なお、レベル2は前記ワーク収納孔5内にワークWを吸引保持するのに必要な最低限の真空度(レベル1)より少し高く設定され、通常状態においてはレベル2以上レベル4未満の範囲でワークWの装填・搬送・排出がされるようになっている。
【0061】
上記実施の形態において、制御部10aが負圧センサ10からの信号に基づいて、電磁弁18,21を制御してマニホルド部23内の真空度を調整する例について説明したが、これに限らず、制御部10aはワーク装填率測定部10bからの信号に基づいて電磁弁18,21を制御してもよい。
【0062】
すなわち、ワーク装填率測定部10bは、常時搬送テーブル2のワーク収納孔5内に収納されるワークWのワーク装填率を測定している。ワーク装填率測定部10bは、このワーク装填率を制御部10aに送る。
【0063】
制御部10aは、図5に示すように、マニホルド部23内の真空度とワーク装填率との関係を内蔵しており、ワーク装填率測定部10bからの信号に基づいて、真空度とワーク装填率との関係を用いてマニホルド部23内の真空度のレベル1−4および4以上を決定する。
【0064】
次に制御部10aは決定した真空度のレベル1−4および4以上に対応して、上述と同様、電磁弁18,21を制御する。
【0065】
すなわち制御部10aは、レベル1からレベル2の場合、電磁弁18,21を閉とし、レベル2からレベル3の場合、電磁弁18を閉、電磁弁21を開としてマニホルド部23と大気開放部23とを連通させる。レベル3からレベル4の場合、制御部10aは電磁弁18を短時間開としてマニホルド部23内に圧縮エア発生源20から圧縮エアを噴射し、かつ電磁弁21を開とし、マニホルド部23内に大気を供給する。その後制御部10aはレベル4以上の場合、電磁弁18を開としてマニホルド部23内に圧縮エア発生源20から圧縮エアを噴射し、かつ電磁弁21を閉とする。
【0066】
次に図7により本発明の変形例について説明する。図7に示す変形例は、真空配管9のマニホルド部23に接続された電磁弁21および大気開放部22を削除するとともに、マニホルド部23にサーボバルブ26を介して圧縮エア発生源20を接続したものである。なおサーボバルブ26の代わりにモータ駆動バルブを設けてもよい。
【0067】
またマニホルド部23には、負圧に応じたアナログ値を出力する負圧センサ10cが接続されている。負圧センサ10cからの信号は制御部10aに送られ、制御部10aによりアナログ値からなる負圧センサ10cからの信号に基づいて、サーボバルブ26が制御される。
【0068】
この場合、制御部10bは負圧センサ10cからの信号に基づいて、マニホルド部23内の真空度を定め、マニホルド部23内の真空度に基づいてサーボバルブ26を制御して圧縮エア発生源20からの圧縮エアをマニホルド部23内に噴射して、真空度を調整する。
【0069】
図7において、サーボバルブ26を負圧センサ10cからのアナログ信号に基づいて制御することができるので、マニホルド部23内の真空度を高速かつ高精度に制御することができる。
【0070】
なお、図7において、図1乃至図6に示す実施の形態と同一部分には、同一符号を符して詳細な説明は省略する。
【0071】
このように、上記各実施の形態によればワークWを吸引する真空配管9中に圧縮エアを噴射するとともに、真空配管9内を大気開放とすることにより、真空配管9内の真空度をきめ細かく調整することができる。
【0072】
なお真空配管9への圧縮エアの噴射および大気開放の制御方法について、レベル1〜レベル4およびレベル4以上に応じて図4、図5に示すように行なわれるが、図4、図5は制御方法の一例であって、ワーク収納孔5の個数や真空配管9の容積、或いは真空発生源17および圧縮エア発生源20の容易さや供給圧力の可変性によって種々の制御方法をとることができる。
【0073】
また図1において、絞り弁16,19は必ずしも設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明による真空吸引システムの配管図。
【図2】本発明を適用したワーク搬送装置を示す平面図。
【図3】本発明を適用したワーク搬送装置を示す拡大図。
【図4】本発明による真空吸引システムの作用を示す図。
【図5】真空度のレベルとワークの装填率との関係を示す図。
【図6】電磁弁のON−OFF制御を示す図。
【図7】本発明による真空吸引システムの変形例を示す図。
【図8】従来の真空吸引システムを示す図。
【図9】図8に示す真空吸引システムの配管図。
【図10】ワーク装填率と真空度との関連を説明する図。
【符号の説明】
【0075】
1 ワーク搬送装置
2 搬送テーブル
3 テーブルベース
4 ベース
5 ワーク収納孔
6 微小断面吸引溝
7 真空吸引溝
8 真空吸引孔
9 真空配管
10 負圧センサ
10a 制御部
10b ワーク装填率測定部
10c 負圧センサ
11 噴射ノズル
12 圧縮エア配管
16 絞り弁
17 真空発生源
18 電磁弁
19 絞り弁
20 圧縮エア発生源
21 電磁弁
22 大気開放部
23 マニホルド部
26 サーボバルブ
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空漏れ発生部と、
真空発生源と、この真空発生源と真空漏れ発生部とを接続する真空配管とを有する真空吸引機構と、
この真空吸引機構の真空配管に接続され、真空配管における真空度を調整する真空度調整機構とを備え、
真空度調整機構は真空配管に第1調整部を介して接続された圧縮エア発生源と、真空配管に第2調整部を介して接続された大気開放部と、これら第1調整部および第2調整部を制御する制御部とを有することを特徴とする真空吸引システム。
【請求項2】
真空度調整機構は、真空漏れ発生部における真空度を検出する負圧センサを更に有し、制御部は負圧センサからの信号に基づいて第1調整部と第2調整部を制御することを特徴とする請求項1記載の真空吸引システム。
【請求項3】
制御部は負圧センサからの信号に基づいて真空度を定め、真空度が低いレベルから高いレベルに向って順に、第1調整部および第2調整部のいずれも閉とする段階、第1調整部を閉としかつ第2調整部を開とする段階、第1調整部および第2調整部のいずれも開とする段階、第1調整部を開としかつ第2調整部を閉とする段階となるよう第1調整部と第2調整部を制御することを特徴とする請求項2記載の真空吸引システム。
【請求項4】
真空漏れ発生部は、ワークを収納するワーク収納孔を有する搬送テーブルを備えていることを特徴とする請求項1記載の真空吸引システム。
【請求項5】
真空漏れ発生部は、搬送テーブルの真空吸引機構側に設けられ、ワーク収納孔と連通する環状の真空吸引溝を有するテーブルベースを更に備えていることを特徴とする請求項4記載の真空吸引システム。
【請求項6】
搬送テーブルのテーブルベース側の面に、ワーク収納孔と真空吸引溝との間に位置する微小断面吸引溝を設けたことを特徴とする請求項5記載の真空吸引システム。
【請求項7】
搬送テーブルのワーク収納孔内に収納されたワークのワーク装填率を求めるワーク装填率測定部を更に備え、
制御部はワーク装填率測定部からの信号に基づいて、第1調整部と第2調整部を制御することを特徴とする請求項4記載の真空吸引システム。
【請求項8】
制御部はワーク装填率測定部からの信号に基づいて真空度を求め、真空度が低いレベルから高いレベルに向って順に、第1調整部および第2調整部のいずれも閉とする段階、第1調整部を閉としかつ第2調整部を開とする段階、第1調整部および第2調整部のいずれも開とする段階、第1調整部を開としかつ第2調整部を閉とする段階となるよう第1調整部と第2調整部を制御することを特徴とする請求項7記載の真空吸引システム。
【請求項9】
第1調整部と第2調整部は、その開度が可変となっていることを特徴とする請求項1記載の真空吸引システム。
【請求項10】
第1調整部及び又は第2調整部は、サーボバルブ及び/又はモータ駆動バルブからなることを特徴とする請求項9記載の真空吸引システム。
【請求項11】
真空漏れ発生部と、
真空発生源と、この真空発生源と真空漏れ発生部とを接続する真空配管とを有する真空吸引機構と、
この真空吸引機構の真空配管に接続され、真空配管における真空度を調整する真空度調整機構とを備え、
真空調整機構は真空漏れ発生部における真空度を検出する負圧センサと、真空配管に第1調整部を介して接続された圧縮エア発生源と、負圧センサからの信号に基づいて第1調整部を制御する制御部とを有することを特徴とする真空吸引システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−27881(P2006−27881A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212981(P2004−212981)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(591009705)株式会社 東京ウエルズ (47)
【Fターム(参考)】