真空排気用のボールバルブ及び真空排気装置
【課題】簡素な構成で排気流量を小流量から大流量に切り替えることのできる真空排気用のボールバルブ及び真空排気装置を提供すること。
【解決手段】吸気ポート33と排気ポート34との間が前記貫通路45を介して連通する全開状態と、両ポート33、34の間が遮断される閉止状態と、前記貫通路45の一端が排気ポート34の開口部に臨みかつ前記貫通路45の他端が吸気ポート33の開口部から隠れる微小開放状態と、のいずれかとなるようにボール部材41を回動自在に設けると共に、前記微小開放状態のときに、前記貫通路45と吸気ポート33との間を微小な隙間により連通させるための微小連通路48を前記ボール部材41に設ける。
【解決手段】吸気ポート33と排気ポート34との間が前記貫通路45を介して連通する全開状態と、両ポート33、34の間が遮断される閉止状態と、前記貫通路45の一端が排気ポート34の開口部に臨みかつ前記貫通路45の他端が吸気ポート33の開口部から隠れる微小開放状態と、のいずれかとなるようにボール部材41を回動自在に設けると共に、前記微小開放状態のときに、前記貫通路45と吸気ポート33との間を微小な隙間により連通させるための微小連通路48を前記ボール部材41に設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空排気路に設けられる真空排気用のボールバルブ及び真空排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造を行う真空処理装置は、例えば処理雰囲気に石英が使用されている場合には、石英品に急激な応力が加わって破損することを防止するために、大気雰囲気から先ずスロー排気を行ってある程度減圧した後、通常排気を行って処理容器内を真空引きすることがある。このため図18に示すように処理容器100に接続された排気管101のメインバルブ(遮断バルブ)102の上流側及び下流側の間をスロー排気用のバイパス路103によりバイパスさせ、このバイパス路103にサブバルブ104を設けた構成が採用されている。真空排気時には先ずサブバルブ104を開いてスロー排気を行い、次いでサブバルブ104を閉じ、メインバルブ102を開いて所定の真空度まで一気に排気する。105は真空ポンプ、106は圧力調整部である。
【0003】
このような真空処理装置としては、石英チューブを用いたバッチ式の縦型熱処理装置や、載置台などに石英を用いた枚葉式の装置などが挙げられる。しかし例えば真空排気時だけに用いられるバイパス路やサブバルブを設けることはコスト的には得策とは言い難い。このためメインバルブとしてベローズ型のバルブを用いる場合には、微量排気のための開度が得られる位置を設定し、メインバルブを用いてスロー排気を行う手法も知られている。
【0004】
しかし、ベローズ型のバルブは、排気管101内に例えばO−リングなどのシール部材が曝されるため、副生成物が多く発生するプロセスには不向きである。このようなプロセスとしては、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法などにより、基板例えば半導体ウエハ(以下ウエハと言う)に対して、真空雰囲気に保たれた処理容器内において例えば酸化ハフニウム(HfO2)などの高誘電率膜(high−k膜)を成膜する成膜処理が挙げられる。
特許文献1及び2には、ボールに透孔を設けて流水音を小さくするボールバルブや液体水素を通流させるためのボールバルブについて記載されているが、既述の課題については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−4917(図8)
【特許文献2】特開2005−133763(段落0063)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構成で排気流量を小流量から大流量に切り替えることのできる真空排気用のボールバルブ及びこのボールバルブを用いた真空排気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の真空排気用のボールバルブは、
真空排気路に設けられる真空排気用のボールバルブにおいて、
吸気ポートと排気ポートとが形成され、弁室を構成するバルブ本体と、
このバルブ本体内に回動自在に収納された弁体であるボール部材と、
このボール部材に設けられ、前記吸気ポートと排気ポートとを連通させるためのガス流路をなす貫通路と、
前記吸気ポートと排気ポートの間を開閉するために前記貫通路に直交する軸の周りに前記ボール部材を回動させるための回動軸と、
前記排気ポートの周縁に設けられ、前記ボール部材とバルブ本体との間を気密にシールするためのシール部材と、
前記回動軸を回動させて、吸気ポートと排気ポートとの間が連通する全開状態と、両ポートの間が遮断される閉止状態と、前記貫通路の一端が吸気ポート及び排気ポートの一方の開口部に臨みかつ前記貫通路の他端が吸気ポート及び排気ポートの他方の開口部から隠れる微小開放状態と、のいずれかとなるように前記貫通路を位置させるための駆動部と、
前記ボール部材及びバルブ本体の少なくとも一方に設けられ、前記微小開放状態のときに、前記貫通路の他端と、吸気ポート及び排気ポートの他方の開口部と、の間を微小な隙間により連通させるための微小連通路と、を備えたことを特徴とする。
前記微小連通路は、貫通路とボール部材の外面との間を貫通した貫通孔または前記バルブ本体の内壁面に形成された溝部であり、前記吸気ポート側に設けられていることが好ましい。
【0008】
本発明の真空排気装置は、
処理容器に一端側が接続された真空排気路と、
この真空排気路に介設される前記真空排気用のボールバルブと、
前記真空排気路の他端側に接続された真空排気機構と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ボール部材に設けられた貫通路の一端が吸気ポート及び排気ポートの一方の開口部に臨みかつ前記貫通路の他端が吸気ポート及び排気ポートの他方の開口部から隠れている時に、当該他方の開口部と貫通路の他端との間を微小な隙間により連通させるための微小連通路を前記ボール部材及びバルブ本体の少なくとも一方に設けている。従って、微小開放状態が得られるボール部材の向きに余裕があり、ボール部材の停止位置に高い精度が要求されない。そのため、全開、閉止に加えて微小排気を行う状態を、簡素な構造でありながら得ることができる。この結果、このボールバルブを真空排気装置に用いることによって、一つのバルブでスロー排気と通常排気とを行うことができ、コスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のボールバルブが適用された成膜装置の一例を示す概略図である。
【図2】前記ボールバルブの一例を示す斜視図である。
【図3】前記ボールバルブを示す側面図である。
【図4】前記ボールバルブを示す分解斜視図である。
【図5】前記ボールバルブを示す横断面図である。
【図6】前記ボールバルブの一部を拡大して示す横断面図である。
【図7】前記ボールバルブの横断面を示す斜視図である。
【図8】前記ボールバルブを示す縦断面図である。
【図9】前記ボールバルブのボール部材を示す側面図である。
【図10】前記ボールバルブにおいてガスが排気される様子を示す模式図である。
【図11】前記ボールバルブにおいて微小連通路が吸気ポート側に対向する様子を示す模式図である。
【図12】前記ボールバルブの他の例を示す横断面図である。
【図13】前記他の例におけるボール部材を示す側面図である。
【図14】前記ボールバルブの他の例における横断面を示す斜視図である。
【図15】前記他の例におけるボールバルブを示す横断面図である。
【図16】前記ボールバルブの他の例を示す横断面図である。
【図17】前記ボールバルブの他の例を示す横断面図である。
【図18】従来の排気方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の真空排気用ボールバルブを備えた真空排気装置の実施の形態の一例として、この真空排気装置が適用された成膜装置を例に挙げて説明する。先ず、この成膜装置の概略について図1を参照して説明すると、この成膜装置は、基板である半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と言う)Wに対して例えばALD(Atomic Layer Deposition)法により成膜処理を行うための装置であり、処理容器1とこの処理容器1内においてウエハWを載置する載置台2とを備えている。
【0012】
この載置台2は、処理容器1の床面から伸びる昇降軸2aを介して昇降機構2bに接続されており、この昇降機構2bによって成膜処理が行われる上位置とウエハWの搬入出を行う下位置との間で昇降自在に構成されている。載置台2には、ウエハWの載置面に対して昇降自在に構成される図示しない昇降ピンが複数箇所において当該載置台2から吊り下げられており、前記下位置において、処理容器1の床面に設けられた受け渡し機構3によりこの昇降ピンがウエハWの載置面に対して上昇して、当該昇降ピンと外部の図示しない搬送アームとの間においてウエハWの受け渡しが行われる。この載置台2には、ウエハWを加熱するための加熱手段例えばヒーター4と、ウエハWを裏面側から静電吸着するための図示しない静電チャックとが設けられている。この載置台2の周囲には、当該載置台2を覆うように、例えば成膜ガスの付着を抑えるための石英からなるカバー体5が設けられている。また、既述の昇降軸2aや処理容器1の内壁面にも、このカバー体5が設けられている。図1中6は、処理容器1の下面と昇降軸2aとの間を気密に接続するベローズ、11は図示しないゲートバルブにより気密に閉じられる搬送口である。尚、処理容器1の床面側には、昇降軸2a側に向けてN2ガスなどのパージガスを吐出するための図示しない供給路が形成されている。
【0013】
処理容器1の天井面には、載置台2に対向するように、当該載置台2上のウエハWに対して処理ガスを供給するためのガスシャワーヘッド7が設けられている。このガスシャワーヘッド7の上面側には、ウエハWの表面にハフニウムを含む化合物を吸着させるための成膜ガスと、ウエハW上に吸着した成膜ガスを酸化するための酸化ガスと、を夫々供給するためのガス供給路8a、8bが接続されている。これらの成膜ガス及び酸化ガスは、ガスシャワーヘッド7の内部領域で互いに混じり合わずに処理容器1内に供給されるように夫々のガス流路が形成されている。また、ガスシャワーヘッド7の上面には、パージガス例えばN2ガスを処理容器1内に供給するためのガス供給路8cの一端側が接続されており、このパージガスは、ガスシャワーヘッド7内において前記成膜ガス及び酸化ガスからなる処理ガスと互いに混じり合わずに処理容器1内に供給されるようにガス流路が構成されている。また、前記ガス供給路8a、8bには、成膜ガス及び酸化ガスの通流する流路にパージガスを供給するために、ガス供給路8cの他端側に接続された図示しないパージガス供給源が接続されている。図1中9は、ガスシャワーヘッド7の下面に複数箇所に形成されたガス吐出孔であり、9aは、ガスシャワーヘッド7からウエハWの周縁部に対して周方向に亘ってパージガスを供給するための供給口である。
【0014】
処理容器1の側壁面におけるガスシャワーヘッド7と載置台2との間の領域には、当該処理容器1内の雰囲気を排気するための排気部21が1箇所設けられている。この排気部21から処理容器1の外側に伸びる真空排気路である排気管22には、当該排気管22内を排気されるガスの流量調整を行うための例えばAPC(Auto Pressure Controller)などからなる流量調整部23と、この排気管22内におけるガス流路の開閉を行うことによって処理容器1内の真空引き及びこの真空引きの停止を切り替えるための本発明のボールバルブ31と、が介設されている。このボールバルブ31から処理容器1の反対側に伸びる排気管22には、真空排気機構である真空ポンプ24が接続されている。この図1中21aは、排気部21に向かってガスシャワーヘッド7とウエハWとの間の領域から通流してくるガスを当該排気部21に引き込むための排気バッフル板である。
【0015】
次いで、このボールバルブ31について、図2〜図9を参照して詳述する。このボールバルブ31は、図2及び図3に示すように、排気管22に沿うように配置された概略円筒形状の弁室を構成するバルブ本体32と、このバルブ本体32における処理容器1側及び真空ポンプ24側に夫々設けられた吸気ポート33及び排気ポート34と、を備えている。これらの吸気ポート33及び排気ポート34は、排気管22の長さ方向における上流側(処理容器1側)及び下流側(真空ポンプ24側)の端部が夫々フランジ部36、36をなしており、これらのポート33、34におけるボールバルブ31側のフランジ部36、36がボルト35などによって周方向に亘って複数箇所においてバルブ本体32に夫々固定されている。また、これらの吸気ポート33及び排気ポート34は、排気管22側のフランジ部36と排気管22の端面に形成されたフランジ部22aとを夫々例えばクランプすることによって、排気管22に気密に接続される。このバルブ本体32には、後述のボール部材41を回動させるための回動軸37の一端側が例えば上方側から挿入されており、この回動軸37の他端側は、図3にも示すように、エアシリンダを用いたロータリーアクチュエータ(回転型のエアシリンダ)からなる駆動部38に接続されている。これらの駆動部38、ボールバルブ31、排気管22及び真空ポンプ24により、真空排気装置が構成される。
【0016】
バルブ本体32の内部には、図4に示すように、既述の回動軸37により例えば鉛直軸回りに回動自在に構成された概略球形の弁体であるボール部材41が収納されている。このボール部材41と吸気ポート33及び排気ポート34との間には、ボール部材41を処理容器1側及び真空ポンプ24側から夫々支持するために、概略リング状の例えば樹脂からなる吸気側支持部材42及び排気側支持部材43が夫々配置されている。これらの吸気側支持部材42及び排気側支持部材43におけるボール部材41の支持面は、図5に示すように、当該ボール部材41の外周面に沿うように球面状に窪んでいる。また、ボール部材41と排気ポート34との間には、排気側支持部材43及び排気ポート34に対してボール部材41を排気管22の周方向に亘って気密に押圧するために、例えばO−リングなどからなるシール部材44が配置されている。排気側支持部材43には、図6に示すように、内周面がリング状に切り欠かれた切り欠き部43aが形成されており、この切り欠き部43aに前記シール部材44が収納されている。これらのボール部材41、吸気側支持部材42、排気側支持部材43及びシール部材44は、吸気ポート33及び排気ポート34に対してバルブ本体32が気密に接続されることによって互いに圧接されている。
【0017】
次いで、ボール部材41について詳述する。このボール部材41の上面には、図8に示すように、例えば矩形に形成された回動軸37の先端部(下端部)が嵌合する切り欠き37aが形成されている。この回動軸37により、既述の吸気側支持部材42、排気側支持部材43及びシール部材44によってボール部材41を固定しようとする固定力に抗して、当該ボール部材41が後述の貫通路45に直交する軸の回りにこの例では鉛直軸回りに回動するように構成されている。
【0018】
また、このボール部材41には、処理容器1内の雰囲気を吸気ポート33側の吸気口33aから排気ポート34側の排気口34aに真空排気するために、内部を貫通するようにガス流路をなす貫通路45が直線状に形成されている。この貫通路45の両端部におけるボール部材41は、端面が切り欠かれて当該貫通路45の開口部46をなしている。そして、後述するように、回動軸37によって、吸気口33aと排気口34aとが貫通路45を介して連通する全開状態と、ボール部材41の外壁面がこれらの吸気口33a及び排気口34aに対向して両ポート33、34間が遮断される閉止状態と、貫通路45の一端が排気ポート34の開口部に臨みかつ貫通路45の他端が吸気ポート33の開口部から隠れる微小開放状態と、の間においてボール部材41が鉛直軸回りに回動するように構成されている。
【0019】
即ち、ボール部材41が閉止状態から全開状態に向かって回動すると、図6及び図7に示すように、排気側支持部材43にはシール部材44を収納するための切り欠き部43aが形成されているので、吸気口33a側の開口部46が当該吸気口33aに臨むよりも先に、排気口34a側の開口部46がこの切り欠き部43aを介して排気口34aに臨む(連通する)ことになる。この時のボール部材41の位置を既述の微小開放状態と呼ぶと、この微小開放状態において、吸気口33a側の開口部46は、吸気側支持部材42により吸気口33aから気密に区画されることになる。尚、ここで言う「気密に区画」とは、吸気ポート33及び吸気側支持部材42とボール部材41との間の極めて小さな隙間から僅かに処理容器1側の雰囲気が排気される場合も含まれる。
【0020】
これらの吸気側支持部材42、排気側支持部材43及びシール部材44は、図5に示すように、吸気口33a及び排気口34aに対して開口部46、46が対向するようにボール部材41を回動させた時に、開口部46の外周縁においてボール部材41を支持できるように配置されている。尚、図4及び図7においては、バルブ本体32の描画を省略しており、また図2では既述の切り欠き37aの描画を省略している。
【0021】
また、2つの開口部46のうち例えば吸気口33a側に対向配置される開口部46において、既述の閉止状態から全開状態までボール部材41を回動させる方向のこの例では時計回り方向に当該開口部46から離間した部位におけるボール部材41の外表面には、図4及び図9に示すように、当該ボール部材41の高さ方向における概略中央位置にガス通流口47が形成されている。ボール部材41の内部には、このガス通流口47から貫通路45の内壁面に向かって伸びると共に、開口面積が貫通路45の開口面積よりも小さくなるように形成された微小連通路(オリフィス部)48が貫通孔として設けられており、この微小連通路48は、当該内壁面に形成されたガス孔49において貫通路45と連通している。微小連通路48は、この例では、上側からボール部材41を見た時に、貫通路45に平行な直線と、ボール部材41の回動中心及びガス通流口47を結ぶ直線とのなす角度θが例えば12°となるように形成されている。従って、この微小連通路48は、後述の図11に示すように、閉止状態から開放状態に向かってボール部材41を回動させた時に、両端側の開口部46、46が吸気口33a及び排気口34aと夫々連通する前に、ガス通流口47が吸気口33a側に臨んで吸気口33aと貫通路45とを連通させるように配置されている。そして、ボール部材41が更に回動して微小開放状態になると、排気ポート34側の開口部46が排気口34aと連通すると共に吸気ポート33側の開口部46が依然として吸気口33aから隠れた状態に保たれて、貫通路45及び排気口34a側の開口部46の外縁と当該排気口34aの内縁との間の領域を介して吸気口33aと排気口34aとを連通させることになる。
【0022】
この成膜装置は、既述の図1に示すように、例えばコンピュータからなる制御部50を備えており、この制御部50は、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えている。プログラムは、処理容器1内にウエハWを収納して真空引きを行う時には排気量を小流量から大流量に切り替えると共に、このウエハWに対して処理ガスを供給して成膜処理を行うように装置の各部に制御信号を送るように構成されている。また、メモリには、例えばウエハWに対して行われる成膜処理のレシピ例えば処理ガスの流量、処理圧力、処理温度及び成膜サイクルの回数などの処理条件の書き込まれる領域が設けられている。そして、CPUによりこのメモリからレシピが読み出されて、プログラムにより成膜処理が行われるように構成されている。このプログラム(処理パラメータの入力操作や表示に関するプログラムも含む)は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)などの記憶部51に格納されて制御部50にインストールされる。
【0023】
続いて、既述の成膜装置の作用について、図10及び図11を参照して説明する。先ず、例えば図示しない搬送アームにより、例えば大気雰囲気に保たれた処理容器1内に搬送口11を介してウエハWを搬入して、例えば成膜温度となるように温度調整された載置台2上に載置する。この時、図10(a)に示すように、ボールバルブ31が閉止状態に位置して真空排気が停止しており、ボール部材41は、真空ポンプ24により当該真空ポンプ24側に吸着されて、シール部材44を介して排気側支持部材43及び排気ポート34に当該ボール部材41の外壁面が気密に圧接されている。続いて、ウエハWを載置台2側に静電吸着し、搬送アームを処理容器1から退避させると共にゲートバルブを気密に閉じる。その後、成膜位置となるようにウエハWを上昇させる。
【0024】
そして、ボール部材41を時計回りに回動させると、図11に示すように、貫通路45の両端側の開口部46、46が吸気口33a及び排気口34aと夫々連通する前に、ガス通流口47が吸気口33a側に露出する。更にボール部材41を時計回りに僅かに回動させると、図10(b)に示すように、ボール部材41が微小開放状態に位置する。既述のように、排気側支持部材43の内周縁にはシール部材44を収納するための切り欠き43aが形成されているので、この微小開放状態において、排気ポート34側では、開口部46の側方側の端部が僅かに排気口34a側に露出して、排気口34aと貫通路45とが連通する。一方、吸気ポート33側では、開口部46は吸気口33aから隠れた状態となっており、吸気側支持部材42を介して気密に塞がれている。そのため、処理容器1内の雰囲気は、既述の図6及び図10(b)にガスの流れを矢印で示すように、微小連通路48と、貫通路45と、排気ポート34側における開口部46の外縁と切り欠き43a及び排気口34aの内縁との間の領域と、を介して真空ポンプ24側に排気されていく。この時、貫通路45よりも微小連通路48の開口面積を小さくしているので、微小連通路48を介して排気されるガス流量は、全開状態において排気される通常排気時におけるガス流量よりも小さいスロー排気となる。従って、処理容器1内の雰囲気は、徐々に排気されていく。
【0025】
次いで、例えば石英からなる既述のカバー体5が圧力変動によって破損しない程度の真空度例えば40Pa(0.3Torr)に処理容器1内の真空度が高くなってから、図10(c)に示すように、ボール部材41を更に時計回りに回動させて、ボール部材41を全開状態に位置させる。即ち、貫通路45の両端側の開口部46、46が夫々吸気口33a及び排気口34a側に対向するようにボール部材41を位置させる。この全開状態において、処理容器1内の雰囲気は、ボール部材41が既述の微小開放状態に位置している時よりも大流量で真空排気されていく。
【0026】
その後、処理容器1内の雰囲気が引き切りの状態となってから、処理容器1内の真空度がレシピに応じた処理圧力となるように流量調整部23を調整すると共に、ガス供給路8aを介して処理容器1内に既述の成膜ガスを供給する。この成膜ガスがウエハWに接触すると、このガスがウエハWの表面に吸着する。次いで、例えば各ガス供給路8a、8b、8cを介してガス吐出孔9及び供給口9aからウエハWに対してパージガスを吐出することにより、処理容器1内の成膜ガスをこのパージガスで置換する。続いて、ガス供給路8bから酸化ガスをウエハWに供給することにより、ウエハWの表面に吸着した成膜ガスを酸化する。ウエハWの表面では、成膜ガスの吸着と酸化との成膜サイクルにより、例えば酸化ハフニウム(HfO2)膜からなる薄膜が成膜される。そして、処理容器1内にパージガスを供給することにより、当該処理容器1内の酸化ガスをパージガスにより置換すると共に、この成膜サイクルを複数回繰り返すことにより、前記薄膜が積層される。
【0027】
この時、成膜処理により生成した副生成物や未反応の成膜ガスなどは、排気管22及びボールバルブ31を介して処理容器1から排気されていく。これらの副生成物や未反応の成膜ガスが排気管22やボールバルブ31の内壁面に接触すると、これらの副生成物や成膜ガスなどが当該内壁面に付着しようとする。しかし、既述の図10(c)に示すように、ボールバルブ31のシール部材44が開口部46の外縁に配置されているので、シール部材44は排気管22内を排気されるガスにほとんど接触しない。従って、シール部材44への付着物の付着が抑えられる。
【0028】
そして、成膜処理が終了すると、各ガスの供給を停止すると共に流量調整部23を介して処理容器1内を引き切りの状態にした後、図10(a)に示す閉止状態となるように、ボールバルブ31を反時計回りに回動させる。この時、既述のようにシール部材44には付着物がほとんど付着していないので、閉止状態においてボール部材41の外壁面と排気ポート34とがシール部材44により気密にシールされる。その後、処理容器1内に例えば不活性ガスを供給することによって当該処理容器1の内部雰囲気を大気雰囲気に戻した後、ウエハWを処理容器1から取り出す。
【0029】
上述の実施の形態によれば、ボール部材41に設けられた貫通路45の一端が排気ポート34の開口部に臨みかつ前記貫通路45の他端が吸気ポート33の開口部から隠れている時に、吸気口33aと貫通路45との間を微小な隙間により連通させるための微小連通路48を前記ボール部材41に設けている。従って、微小開放状態が得られるボール部材41の向きに余裕があり、ボール部材41の停止位置に高い精度が要求されない。そのため、全開、閉止に加えて微小排気を行う状態を、簡素な構造でありながら得ることができる。この結果、このボールバルブを真空排気装置に用いることによって、一つのボールバルブでスロー排気と通常排気とを行うことができ、コスト的に有利である。また、通常排気を行う前にスロー排気を行っているので、石英からなる部材(カバー体5)の圧力変動による破損を抑えることができる。
【0030】
ここで、例えば微小連通路48の形成されていない従来のボールバルブでは、閉止状態から全開状態に向かってボール部材41を回動させていくと、貫通路45の両端側における各々の開口部46、46の外縁と吸気口33a及び排気口34aの内縁との間の夫々の領域を介して、吸気ポート33側と排気ポート34側とが連通することになる。そして、これらの吸気ポート33側と排気ポート34側とが連通した状態から僅かにボール部材41を全開状態側に向かって回動させると、両方のポート33、34の連通領域が急激に増える。そのため、従来のボールバルブでは、閉止状態から全開状態にボール部材41を回動させる時において、ボール部材41の回動量に対する排気流量の増加量が極めて多いと言える。従って、従来のボールバルブを用いて微小流量で排気するためには、例えばサーボモータなどの高価な部材を用いてボール部材41の回動量を微小に制御することによって、ポート33、34同士が連通する領域の寸法を正確に調整する必要がある。
【0031】
しかし、本発明では、ボール部材41に微小連通路48を設けると共に、この微小連通路48のガス通流口47を開口部46から離間させて、微小流量で排気できるボール部材41の回動範囲を広く確保している。即ち、閉止状態から全開状態に向かってボール部材41を回動させていく時において、本発明では吸気口33a側にガス通流口47が露出すると共に排気ポート34側における開口部46の外縁と排気口34aの内縁との間の領域を介して貫通路45と排気ポート34とが連通する位置から、吸気口33a側における開口部46の内縁が当該吸気口33aの内縁に近接する位置までに亘って、微小連通路48を介して微小流量で排気できる。従って、この回動範囲では、ガス流量の変動がほとんどない。そのため、この回動範囲内となるようにボール部材41(回動軸37)を回動させることによって微小流量で確実に排気でき、例えば既述の高価な部材などを設けなくて済むのでボールバルブ31の製造コストを抑えることができる。
【0032】
更に、排気管22やボール部材41の内壁面に付着物が付着するおそれのある成膜ガスを排気する時(全開状態)には、シール部材44が貫通路45から区画されるので、シール部材44に付着物の付着するおそれが少ない。そのため、ボール部材41を閉止状態に回動させた時において、付着物の介在によって真空排気を停止できなくなるおそれが小さいし、また付着物の付着によるシール部材44の劣化を抑えることができる。また、全開時のコンダクタンスが大きく大流量のガスを排気できるボールバルブを用いて真空排気装置を構成することによって、直径寸法が例えば300mmもの大きさのウエハWを収納する処理容器1を備えた成膜装置用のバルブとして有利である。
【0033】
既述の例においては、上側から見たときの形状が線状となるように微小連通路48を形成したが、図12に示すように、概略扇形となるように形成しても良い。即ち、図13にも示すように、ボール部材41の高さ方向における中央部の手前側を貫通路45から側方側(閉止状態から全開状態にボール部材41が回動する時の回動方向)にかけて扇形の切り欠きを入れて、いわば既述の微小連通路48を長さ方向に亘って貫通路45と連通するように配置しても良い。このような形状においても、同様に微小開放状態において小流量でガスが排気され、同様の効果が得られる。
【0034】
また、図14及び図15に示すように、ガス通流口47及び微小連通路48をボール部材41に代えてバルブ本体32(吸気ポート33)に形成しても良い。即ち、吸気ポート33におけるバルブ本体32側のフランジ部36の内壁面にガス通流口47を形成し、このガス通流口47から伸びる微小連通路48を当該フランジ部36及び吸気側支持部材42に溝部として形成する。この微小連通路48の開口端であるガス孔49は、この吸気側支持部材42においてボール部材41を支持する内周面に形成される。この例においても、図15に示すように、閉止状態から全開状態に向かってボール部材41を回動させることによって吸気ポート33側の開口部46がバルブ本体32の内部領域を臨むように位置すると、微小連通路48と、貫通路45と、排気ポート34側の開口部46の外縁と排気口34aの内縁との間と、を介してガスが排気される。この例においても、微小連通路48を扇形状となるように形成しても良い。
【0035】
更に、既述の各例では微小連通路48を吸気ポート33側に形成したが、排気ポート34側に形成しても良い。その場合には、例えば微小開放状態において、吸気ポート33側では開口部46の外縁と吸気口33aの内縁との間からガスがボール部材41内に流入し、排気ポート34側ではシール部材44によりボール部材41の外壁面と排気側支持部材43及び排気ポート34とが気密にシールされたまま微小連通路48を介してガスが排気されるように構成される。具体的には、例えば図16に示すように、排気口34aが吸気口33aよりも小径となるように排気ポート34を形成すると共に、吸気ポート33側から排気ポート34側に向かって貫通路45が縮径するようにボール部材41を構成する。この例においても、排気流量が小流量から大流量に切り替えられる。
【0036】
また、図17に示すように、微小連通路48を吸気ポート33側及び排気ポート34側に夫々形成しても良い。この例では、微小開放状態において、2つの微小連通路48及び貫通路45を介してガスが排気される。また、この場合には、2つの微小連通路48、48のうち一方をボール部材41に形成し、他方をバルブ本体32に形成しても良い。
【0037】
また、既述の成膜装置としては、酸化ハフニウム膜を成膜する例について説明したが、例えばストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ランタン(La)、イットリウム(Y)などの酸化物具体的にはHfSiO、SrTiO、LaO2またはY doped HfOなどの高誘電体材料、あるいはシリコン酸化物(SiO2)などを成膜する場合に本発明を適用しても良い。また、ALD法以外にも、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によりこれらの酸化物の成膜を行う場合に本発明を適用しても良い。更に、このような成膜装置以外にも、例えばエッチング処理やアッシング処理を行うプラズマ処理装置などの真空処理装置、あるいは真空雰囲気にてウエハWの搬送を行う真空装置例えば複数の真空容器が気密に接続されたマルチチャンバーシステムにおける真空搬送室や、真空雰囲気と大気雰囲気との切り替えを行うロードロック室などに本発明のボールバルブが介設された真空排気路を接続しても良い。
【符号の説明】
【0038】
W ウエハ
1 処理容器
5 カバー体
24 真空ポンプ
31 ボールバルブ
33 吸気ポート
34 排気ポート
37 回動軸
41 ボール部材
44 シール部材
45 貫通路
46 開口部
47 ガス通流口
48 微小連通路
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空排気路に設けられる真空排気用のボールバルブ及び真空排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造を行う真空処理装置は、例えば処理雰囲気に石英が使用されている場合には、石英品に急激な応力が加わって破損することを防止するために、大気雰囲気から先ずスロー排気を行ってある程度減圧した後、通常排気を行って処理容器内を真空引きすることがある。このため図18に示すように処理容器100に接続された排気管101のメインバルブ(遮断バルブ)102の上流側及び下流側の間をスロー排気用のバイパス路103によりバイパスさせ、このバイパス路103にサブバルブ104を設けた構成が採用されている。真空排気時には先ずサブバルブ104を開いてスロー排気を行い、次いでサブバルブ104を閉じ、メインバルブ102を開いて所定の真空度まで一気に排気する。105は真空ポンプ、106は圧力調整部である。
【0003】
このような真空処理装置としては、石英チューブを用いたバッチ式の縦型熱処理装置や、載置台などに石英を用いた枚葉式の装置などが挙げられる。しかし例えば真空排気時だけに用いられるバイパス路やサブバルブを設けることはコスト的には得策とは言い難い。このためメインバルブとしてベローズ型のバルブを用いる場合には、微量排気のための開度が得られる位置を設定し、メインバルブを用いてスロー排気を行う手法も知られている。
【0004】
しかし、ベローズ型のバルブは、排気管101内に例えばO−リングなどのシール部材が曝されるため、副生成物が多く発生するプロセスには不向きである。このようなプロセスとしては、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法などにより、基板例えば半導体ウエハ(以下ウエハと言う)に対して、真空雰囲気に保たれた処理容器内において例えば酸化ハフニウム(HfO2)などの高誘電率膜(high−k膜)を成膜する成膜処理が挙げられる。
特許文献1及び2には、ボールに透孔を設けて流水音を小さくするボールバルブや液体水素を通流させるためのボールバルブについて記載されているが、既述の課題については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−4917(図8)
【特許文献2】特開2005−133763(段落0063)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構成で排気流量を小流量から大流量に切り替えることのできる真空排気用のボールバルブ及びこのボールバルブを用いた真空排気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の真空排気用のボールバルブは、
真空排気路に設けられる真空排気用のボールバルブにおいて、
吸気ポートと排気ポートとが形成され、弁室を構成するバルブ本体と、
このバルブ本体内に回動自在に収納された弁体であるボール部材と、
このボール部材に設けられ、前記吸気ポートと排気ポートとを連通させるためのガス流路をなす貫通路と、
前記吸気ポートと排気ポートの間を開閉するために前記貫通路に直交する軸の周りに前記ボール部材を回動させるための回動軸と、
前記排気ポートの周縁に設けられ、前記ボール部材とバルブ本体との間を気密にシールするためのシール部材と、
前記回動軸を回動させて、吸気ポートと排気ポートとの間が連通する全開状態と、両ポートの間が遮断される閉止状態と、前記貫通路の一端が吸気ポート及び排気ポートの一方の開口部に臨みかつ前記貫通路の他端が吸気ポート及び排気ポートの他方の開口部から隠れる微小開放状態と、のいずれかとなるように前記貫通路を位置させるための駆動部と、
前記ボール部材及びバルブ本体の少なくとも一方に設けられ、前記微小開放状態のときに、前記貫通路の他端と、吸気ポート及び排気ポートの他方の開口部と、の間を微小な隙間により連通させるための微小連通路と、を備えたことを特徴とする。
前記微小連通路は、貫通路とボール部材の外面との間を貫通した貫通孔または前記バルブ本体の内壁面に形成された溝部であり、前記吸気ポート側に設けられていることが好ましい。
【0008】
本発明の真空排気装置は、
処理容器に一端側が接続された真空排気路と、
この真空排気路に介設される前記真空排気用のボールバルブと、
前記真空排気路の他端側に接続された真空排気機構と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ボール部材に設けられた貫通路の一端が吸気ポート及び排気ポートの一方の開口部に臨みかつ前記貫通路の他端が吸気ポート及び排気ポートの他方の開口部から隠れている時に、当該他方の開口部と貫通路の他端との間を微小な隙間により連通させるための微小連通路を前記ボール部材及びバルブ本体の少なくとも一方に設けている。従って、微小開放状態が得られるボール部材の向きに余裕があり、ボール部材の停止位置に高い精度が要求されない。そのため、全開、閉止に加えて微小排気を行う状態を、簡素な構造でありながら得ることができる。この結果、このボールバルブを真空排気装置に用いることによって、一つのバルブでスロー排気と通常排気とを行うことができ、コスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のボールバルブが適用された成膜装置の一例を示す概略図である。
【図2】前記ボールバルブの一例を示す斜視図である。
【図3】前記ボールバルブを示す側面図である。
【図4】前記ボールバルブを示す分解斜視図である。
【図5】前記ボールバルブを示す横断面図である。
【図6】前記ボールバルブの一部を拡大して示す横断面図である。
【図7】前記ボールバルブの横断面を示す斜視図である。
【図8】前記ボールバルブを示す縦断面図である。
【図9】前記ボールバルブのボール部材を示す側面図である。
【図10】前記ボールバルブにおいてガスが排気される様子を示す模式図である。
【図11】前記ボールバルブにおいて微小連通路が吸気ポート側に対向する様子を示す模式図である。
【図12】前記ボールバルブの他の例を示す横断面図である。
【図13】前記他の例におけるボール部材を示す側面図である。
【図14】前記ボールバルブの他の例における横断面を示す斜視図である。
【図15】前記他の例におけるボールバルブを示す横断面図である。
【図16】前記ボールバルブの他の例を示す横断面図である。
【図17】前記ボールバルブの他の例を示す横断面図である。
【図18】従来の排気方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の真空排気用ボールバルブを備えた真空排気装置の実施の形態の一例として、この真空排気装置が適用された成膜装置を例に挙げて説明する。先ず、この成膜装置の概略について図1を参照して説明すると、この成膜装置は、基板である半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と言う)Wに対して例えばALD(Atomic Layer Deposition)法により成膜処理を行うための装置であり、処理容器1とこの処理容器1内においてウエハWを載置する載置台2とを備えている。
【0012】
この載置台2は、処理容器1の床面から伸びる昇降軸2aを介して昇降機構2bに接続されており、この昇降機構2bによって成膜処理が行われる上位置とウエハWの搬入出を行う下位置との間で昇降自在に構成されている。載置台2には、ウエハWの載置面に対して昇降自在に構成される図示しない昇降ピンが複数箇所において当該載置台2から吊り下げられており、前記下位置において、処理容器1の床面に設けられた受け渡し機構3によりこの昇降ピンがウエハWの載置面に対して上昇して、当該昇降ピンと外部の図示しない搬送アームとの間においてウエハWの受け渡しが行われる。この載置台2には、ウエハWを加熱するための加熱手段例えばヒーター4と、ウエハWを裏面側から静電吸着するための図示しない静電チャックとが設けられている。この載置台2の周囲には、当該載置台2を覆うように、例えば成膜ガスの付着を抑えるための石英からなるカバー体5が設けられている。また、既述の昇降軸2aや処理容器1の内壁面にも、このカバー体5が設けられている。図1中6は、処理容器1の下面と昇降軸2aとの間を気密に接続するベローズ、11は図示しないゲートバルブにより気密に閉じられる搬送口である。尚、処理容器1の床面側には、昇降軸2a側に向けてN2ガスなどのパージガスを吐出するための図示しない供給路が形成されている。
【0013】
処理容器1の天井面には、載置台2に対向するように、当該載置台2上のウエハWに対して処理ガスを供給するためのガスシャワーヘッド7が設けられている。このガスシャワーヘッド7の上面側には、ウエハWの表面にハフニウムを含む化合物を吸着させるための成膜ガスと、ウエハW上に吸着した成膜ガスを酸化するための酸化ガスと、を夫々供給するためのガス供給路8a、8bが接続されている。これらの成膜ガス及び酸化ガスは、ガスシャワーヘッド7の内部領域で互いに混じり合わずに処理容器1内に供給されるように夫々のガス流路が形成されている。また、ガスシャワーヘッド7の上面には、パージガス例えばN2ガスを処理容器1内に供給するためのガス供給路8cの一端側が接続されており、このパージガスは、ガスシャワーヘッド7内において前記成膜ガス及び酸化ガスからなる処理ガスと互いに混じり合わずに処理容器1内に供給されるようにガス流路が構成されている。また、前記ガス供給路8a、8bには、成膜ガス及び酸化ガスの通流する流路にパージガスを供給するために、ガス供給路8cの他端側に接続された図示しないパージガス供給源が接続されている。図1中9は、ガスシャワーヘッド7の下面に複数箇所に形成されたガス吐出孔であり、9aは、ガスシャワーヘッド7からウエハWの周縁部に対して周方向に亘ってパージガスを供給するための供給口である。
【0014】
処理容器1の側壁面におけるガスシャワーヘッド7と載置台2との間の領域には、当該処理容器1内の雰囲気を排気するための排気部21が1箇所設けられている。この排気部21から処理容器1の外側に伸びる真空排気路である排気管22には、当該排気管22内を排気されるガスの流量調整を行うための例えばAPC(Auto Pressure Controller)などからなる流量調整部23と、この排気管22内におけるガス流路の開閉を行うことによって処理容器1内の真空引き及びこの真空引きの停止を切り替えるための本発明のボールバルブ31と、が介設されている。このボールバルブ31から処理容器1の反対側に伸びる排気管22には、真空排気機構である真空ポンプ24が接続されている。この図1中21aは、排気部21に向かってガスシャワーヘッド7とウエハWとの間の領域から通流してくるガスを当該排気部21に引き込むための排気バッフル板である。
【0015】
次いで、このボールバルブ31について、図2〜図9を参照して詳述する。このボールバルブ31は、図2及び図3に示すように、排気管22に沿うように配置された概略円筒形状の弁室を構成するバルブ本体32と、このバルブ本体32における処理容器1側及び真空ポンプ24側に夫々設けられた吸気ポート33及び排気ポート34と、を備えている。これらの吸気ポート33及び排気ポート34は、排気管22の長さ方向における上流側(処理容器1側)及び下流側(真空ポンプ24側)の端部が夫々フランジ部36、36をなしており、これらのポート33、34におけるボールバルブ31側のフランジ部36、36がボルト35などによって周方向に亘って複数箇所においてバルブ本体32に夫々固定されている。また、これらの吸気ポート33及び排気ポート34は、排気管22側のフランジ部36と排気管22の端面に形成されたフランジ部22aとを夫々例えばクランプすることによって、排気管22に気密に接続される。このバルブ本体32には、後述のボール部材41を回動させるための回動軸37の一端側が例えば上方側から挿入されており、この回動軸37の他端側は、図3にも示すように、エアシリンダを用いたロータリーアクチュエータ(回転型のエアシリンダ)からなる駆動部38に接続されている。これらの駆動部38、ボールバルブ31、排気管22及び真空ポンプ24により、真空排気装置が構成される。
【0016】
バルブ本体32の内部には、図4に示すように、既述の回動軸37により例えば鉛直軸回りに回動自在に構成された概略球形の弁体であるボール部材41が収納されている。このボール部材41と吸気ポート33及び排気ポート34との間には、ボール部材41を処理容器1側及び真空ポンプ24側から夫々支持するために、概略リング状の例えば樹脂からなる吸気側支持部材42及び排気側支持部材43が夫々配置されている。これらの吸気側支持部材42及び排気側支持部材43におけるボール部材41の支持面は、図5に示すように、当該ボール部材41の外周面に沿うように球面状に窪んでいる。また、ボール部材41と排気ポート34との間には、排気側支持部材43及び排気ポート34に対してボール部材41を排気管22の周方向に亘って気密に押圧するために、例えばO−リングなどからなるシール部材44が配置されている。排気側支持部材43には、図6に示すように、内周面がリング状に切り欠かれた切り欠き部43aが形成されており、この切り欠き部43aに前記シール部材44が収納されている。これらのボール部材41、吸気側支持部材42、排気側支持部材43及びシール部材44は、吸気ポート33及び排気ポート34に対してバルブ本体32が気密に接続されることによって互いに圧接されている。
【0017】
次いで、ボール部材41について詳述する。このボール部材41の上面には、図8に示すように、例えば矩形に形成された回動軸37の先端部(下端部)が嵌合する切り欠き37aが形成されている。この回動軸37により、既述の吸気側支持部材42、排気側支持部材43及びシール部材44によってボール部材41を固定しようとする固定力に抗して、当該ボール部材41が後述の貫通路45に直交する軸の回りにこの例では鉛直軸回りに回動するように構成されている。
【0018】
また、このボール部材41には、処理容器1内の雰囲気を吸気ポート33側の吸気口33aから排気ポート34側の排気口34aに真空排気するために、内部を貫通するようにガス流路をなす貫通路45が直線状に形成されている。この貫通路45の両端部におけるボール部材41は、端面が切り欠かれて当該貫通路45の開口部46をなしている。そして、後述するように、回動軸37によって、吸気口33aと排気口34aとが貫通路45を介して連通する全開状態と、ボール部材41の外壁面がこれらの吸気口33a及び排気口34aに対向して両ポート33、34間が遮断される閉止状態と、貫通路45の一端が排気ポート34の開口部に臨みかつ貫通路45の他端が吸気ポート33の開口部から隠れる微小開放状態と、の間においてボール部材41が鉛直軸回りに回動するように構成されている。
【0019】
即ち、ボール部材41が閉止状態から全開状態に向かって回動すると、図6及び図7に示すように、排気側支持部材43にはシール部材44を収納するための切り欠き部43aが形成されているので、吸気口33a側の開口部46が当該吸気口33aに臨むよりも先に、排気口34a側の開口部46がこの切り欠き部43aを介して排気口34aに臨む(連通する)ことになる。この時のボール部材41の位置を既述の微小開放状態と呼ぶと、この微小開放状態において、吸気口33a側の開口部46は、吸気側支持部材42により吸気口33aから気密に区画されることになる。尚、ここで言う「気密に区画」とは、吸気ポート33及び吸気側支持部材42とボール部材41との間の極めて小さな隙間から僅かに処理容器1側の雰囲気が排気される場合も含まれる。
【0020】
これらの吸気側支持部材42、排気側支持部材43及びシール部材44は、図5に示すように、吸気口33a及び排気口34aに対して開口部46、46が対向するようにボール部材41を回動させた時に、開口部46の外周縁においてボール部材41を支持できるように配置されている。尚、図4及び図7においては、バルブ本体32の描画を省略しており、また図2では既述の切り欠き37aの描画を省略している。
【0021】
また、2つの開口部46のうち例えば吸気口33a側に対向配置される開口部46において、既述の閉止状態から全開状態までボール部材41を回動させる方向のこの例では時計回り方向に当該開口部46から離間した部位におけるボール部材41の外表面には、図4及び図9に示すように、当該ボール部材41の高さ方向における概略中央位置にガス通流口47が形成されている。ボール部材41の内部には、このガス通流口47から貫通路45の内壁面に向かって伸びると共に、開口面積が貫通路45の開口面積よりも小さくなるように形成された微小連通路(オリフィス部)48が貫通孔として設けられており、この微小連通路48は、当該内壁面に形成されたガス孔49において貫通路45と連通している。微小連通路48は、この例では、上側からボール部材41を見た時に、貫通路45に平行な直線と、ボール部材41の回動中心及びガス通流口47を結ぶ直線とのなす角度θが例えば12°となるように形成されている。従って、この微小連通路48は、後述の図11に示すように、閉止状態から開放状態に向かってボール部材41を回動させた時に、両端側の開口部46、46が吸気口33a及び排気口34aと夫々連通する前に、ガス通流口47が吸気口33a側に臨んで吸気口33aと貫通路45とを連通させるように配置されている。そして、ボール部材41が更に回動して微小開放状態になると、排気ポート34側の開口部46が排気口34aと連通すると共に吸気ポート33側の開口部46が依然として吸気口33aから隠れた状態に保たれて、貫通路45及び排気口34a側の開口部46の外縁と当該排気口34aの内縁との間の領域を介して吸気口33aと排気口34aとを連通させることになる。
【0022】
この成膜装置は、既述の図1に示すように、例えばコンピュータからなる制御部50を備えており、この制御部50は、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えている。プログラムは、処理容器1内にウエハWを収納して真空引きを行う時には排気量を小流量から大流量に切り替えると共に、このウエハWに対して処理ガスを供給して成膜処理を行うように装置の各部に制御信号を送るように構成されている。また、メモリには、例えばウエハWに対して行われる成膜処理のレシピ例えば処理ガスの流量、処理圧力、処理温度及び成膜サイクルの回数などの処理条件の書き込まれる領域が設けられている。そして、CPUによりこのメモリからレシピが読み出されて、プログラムにより成膜処理が行われるように構成されている。このプログラム(処理パラメータの入力操作や表示に関するプログラムも含む)は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)などの記憶部51に格納されて制御部50にインストールされる。
【0023】
続いて、既述の成膜装置の作用について、図10及び図11を参照して説明する。先ず、例えば図示しない搬送アームにより、例えば大気雰囲気に保たれた処理容器1内に搬送口11を介してウエハWを搬入して、例えば成膜温度となるように温度調整された載置台2上に載置する。この時、図10(a)に示すように、ボールバルブ31が閉止状態に位置して真空排気が停止しており、ボール部材41は、真空ポンプ24により当該真空ポンプ24側に吸着されて、シール部材44を介して排気側支持部材43及び排気ポート34に当該ボール部材41の外壁面が気密に圧接されている。続いて、ウエハWを載置台2側に静電吸着し、搬送アームを処理容器1から退避させると共にゲートバルブを気密に閉じる。その後、成膜位置となるようにウエハWを上昇させる。
【0024】
そして、ボール部材41を時計回りに回動させると、図11に示すように、貫通路45の両端側の開口部46、46が吸気口33a及び排気口34aと夫々連通する前に、ガス通流口47が吸気口33a側に露出する。更にボール部材41を時計回りに僅かに回動させると、図10(b)に示すように、ボール部材41が微小開放状態に位置する。既述のように、排気側支持部材43の内周縁にはシール部材44を収納するための切り欠き43aが形成されているので、この微小開放状態において、排気ポート34側では、開口部46の側方側の端部が僅かに排気口34a側に露出して、排気口34aと貫通路45とが連通する。一方、吸気ポート33側では、開口部46は吸気口33aから隠れた状態となっており、吸気側支持部材42を介して気密に塞がれている。そのため、処理容器1内の雰囲気は、既述の図6及び図10(b)にガスの流れを矢印で示すように、微小連通路48と、貫通路45と、排気ポート34側における開口部46の外縁と切り欠き43a及び排気口34aの内縁との間の領域と、を介して真空ポンプ24側に排気されていく。この時、貫通路45よりも微小連通路48の開口面積を小さくしているので、微小連通路48を介して排気されるガス流量は、全開状態において排気される通常排気時におけるガス流量よりも小さいスロー排気となる。従って、処理容器1内の雰囲気は、徐々に排気されていく。
【0025】
次いで、例えば石英からなる既述のカバー体5が圧力変動によって破損しない程度の真空度例えば40Pa(0.3Torr)に処理容器1内の真空度が高くなってから、図10(c)に示すように、ボール部材41を更に時計回りに回動させて、ボール部材41を全開状態に位置させる。即ち、貫通路45の両端側の開口部46、46が夫々吸気口33a及び排気口34a側に対向するようにボール部材41を位置させる。この全開状態において、処理容器1内の雰囲気は、ボール部材41が既述の微小開放状態に位置している時よりも大流量で真空排気されていく。
【0026】
その後、処理容器1内の雰囲気が引き切りの状態となってから、処理容器1内の真空度がレシピに応じた処理圧力となるように流量調整部23を調整すると共に、ガス供給路8aを介して処理容器1内に既述の成膜ガスを供給する。この成膜ガスがウエハWに接触すると、このガスがウエハWの表面に吸着する。次いで、例えば各ガス供給路8a、8b、8cを介してガス吐出孔9及び供給口9aからウエハWに対してパージガスを吐出することにより、処理容器1内の成膜ガスをこのパージガスで置換する。続いて、ガス供給路8bから酸化ガスをウエハWに供給することにより、ウエハWの表面に吸着した成膜ガスを酸化する。ウエハWの表面では、成膜ガスの吸着と酸化との成膜サイクルにより、例えば酸化ハフニウム(HfO2)膜からなる薄膜が成膜される。そして、処理容器1内にパージガスを供給することにより、当該処理容器1内の酸化ガスをパージガスにより置換すると共に、この成膜サイクルを複数回繰り返すことにより、前記薄膜が積層される。
【0027】
この時、成膜処理により生成した副生成物や未反応の成膜ガスなどは、排気管22及びボールバルブ31を介して処理容器1から排気されていく。これらの副生成物や未反応の成膜ガスが排気管22やボールバルブ31の内壁面に接触すると、これらの副生成物や成膜ガスなどが当該内壁面に付着しようとする。しかし、既述の図10(c)に示すように、ボールバルブ31のシール部材44が開口部46の外縁に配置されているので、シール部材44は排気管22内を排気されるガスにほとんど接触しない。従って、シール部材44への付着物の付着が抑えられる。
【0028】
そして、成膜処理が終了すると、各ガスの供給を停止すると共に流量調整部23を介して処理容器1内を引き切りの状態にした後、図10(a)に示す閉止状態となるように、ボールバルブ31を反時計回りに回動させる。この時、既述のようにシール部材44には付着物がほとんど付着していないので、閉止状態においてボール部材41の外壁面と排気ポート34とがシール部材44により気密にシールされる。その後、処理容器1内に例えば不活性ガスを供給することによって当該処理容器1の内部雰囲気を大気雰囲気に戻した後、ウエハWを処理容器1から取り出す。
【0029】
上述の実施の形態によれば、ボール部材41に設けられた貫通路45の一端が排気ポート34の開口部に臨みかつ前記貫通路45の他端が吸気ポート33の開口部から隠れている時に、吸気口33aと貫通路45との間を微小な隙間により連通させるための微小連通路48を前記ボール部材41に設けている。従って、微小開放状態が得られるボール部材41の向きに余裕があり、ボール部材41の停止位置に高い精度が要求されない。そのため、全開、閉止に加えて微小排気を行う状態を、簡素な構造でありながら得ることができる。この結果、このボールバルブを真空排気装置に用いることによって、一つのボールバルブでスロー排気と通常排気とを行うことができ、コスト的に有利である。また、通常排気を行う前にスロー排気を行っているので、石英からなる部材(カバー体5)の圧力変動による破損を抑えることができる。
【0030】
ここで、例えば微小連通路48の形成されていない従来のボールバルブでは、閉止状態から全開状態に向かってボール部材41を回動させていくと、貫通路45の両端側における各々の開口部46、46の外縁と吸気口33a及び排気口34aの内縁との間の夫々の領域を介して、吸気ポート33側と排気ポート34側とが連通することになる。そして、これらの吸気ポート33側と排気ポート34側とが連通した状態から僅かにボール部材41を全開状態側に向かって回動させると、両方のポート33、34の連通領域が急激に増える。そのため、従来のボールバルブでは、閉止状態から全開状態にボール部材41を回動させる時において、ボール部材41の回動量に対する排気流量の増加量が極めて多いと言える。従って、従来のボールバルブを用いて微小流量で排気するためには、例えばサーボモータなどの高価な部材を用いてボール部材41の回動量を微小に制御することによって、ポート33、34同士が連通する領域の寸法を正確に調整する必要がある。
【0031】
しかし、本発明では、ボール部材41に微小連通路48を設けると共に、この微小連通路48のガス通流口47を開口部46から離間させて、微小流量で排気できるボール部材41の回動範囲を広く確保している。即ち、閉止状態から全開状態に向かってボール部材41を回動させていく時において、本発明では吸気口33a側にガス通流口47が露出すると共に排気ポート34側における開口部46の外縁と排気口34aの内縁との間の領域を介して貫通路45と排気ポート34とが連通する位置から、吸気口33a側における開口部46の内縁が当該吸気口33aの内縁に近接する位置までに亘って、微小連通路48を介して微小流量で排気できる。従って、この回動範囲では、ガス流量の変動がほとんどない。そのため、この回動範囲内となるようにボール部材41(回動軸37)を回動させることによって微小流量で確実に排気でき、例えば既述の高価な部材などを設けなくて済むのでボールバルブ31の製造コストを抑えることができる。
【0032】
更に、排気管22やボール部材41の内壁面に付着物が付着するおそれのある成膜ガスを排気する時(全開状態)には、シール部材44が貫通路45から区画されるので、シール部材44に付着物の付着するおそれが少ない。そのため、ボール部材41を閉止状態に回動させた時において、付着物の介在によって真空排気を停止できなくなるおそれが小さいし、また付着物の付着によるシール部材44の劣化を抑えることができる。また、全開時のコンダクタンスが大きく大流量のガスを排気できるボールバルブを用いて真空排気装置を構成することによって、直径寸法が例えば300mmもの大きさのウエハWを収納する処理容器1を備えた成膜装置用のバルブとして有利である。
【0033】
既述の例においては、上側から見たときの形状が線状となるように微小連通路48を形成したが、図12に示すように、概略扇形となるように形成しても良い。即ち、図13にも示すように、ボール部材41の高さ方向における中央部の手前側を貫通路45から側方側(閉止状態から全開状態にボール部材41が回動する時の回動方向)にかけて扇形の切り欠きを入れて、いわば既述の微小連通路48を長さ方向に亘って貫通路45と連通するように配置しても良い。このような形状においても、同様に微小開放状態において小流量でガスが排気され、同様の効果が得られる。
【0034】
また、図14及び図15に示すように、ガス通流口47及び微小連通路48をボール部材41に代えてバルブ本体32(吸気ポート33)に形成しても良い。即ち、吸気ポート33におけるバルブ本体32側のフランジ部36の内壁面にガス通流口47を形成し、このガス通流口47から伸びる微小連通路48を当該フランジ部36及び吸気側支持部材42に溝部として形成する。この微小連通路48の開口端であるガス孔49は、この吸気側支持部材42においてボール部材41を支持する内周面に形成される。この例においても、図15に示すように、閉止状態から全開状態に向かってボール部材41を回動させることによって吸気ポート33側の開口部46がバルブ本体32の内部領域を臨むように位置すると、微小連通路48と、貫通路45と、排気ポート34側の開口部46の外縁と排気口34aの内縁との間と、を介してガスが排気される。この例においても、微小連通路48を扇形状となるように形成しても良い。
【0035】
更に、既述の各例では微小連通路48を吸気ポート33側に形成したが、排気ポート34側に形成しても良い。その場合には、例えば微小開放状態において、吸気ポート33側では開口部46の外縁と吸気口33aの内縁との間からガスがボール部材41内に流入し、排気ポート34側ではシール部材44によりボール部材41の外壁面と排気側支持部材43及び排気ポート34とが気密にシールされたまま微小連通路48を介してガスが排気されるように構成される。具体的には、例えば図16に示すように、排気口34aが吸気口33aよりも小径となるように排気ポート34を形成すると共に、吸気ポート33側から排気ポート34側に向かって貫通路45が縮径するようにボール部材41を構成する。この例においても、排気流量が小流量から大流量に切り替えられる。
【0036】
また、図17に示すように、微小連通路48を吸気ポート33側及び排気ポート34側に夫々形成しても良い。この例では、微小開放状態において、2つの微小連通路48及び貫通路45を介してガスが排気される。また、この場合には、2つの微小連通路48、48のうち一方をボール部材41に形成し、他方をバルブ本体32に形成しても良い。
【0037】
また、既述の成膜装置としては、酸化ハフニウム膜を成膜する例について説明したが、例えばストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ランタン(La)、イットリウム(Y)などの酸化物具体的にはHfSiO、SrTiO、LaO2またはY doped HfOなどの高誘電体材料、あるいはシリコン酸化物(SiO2)などを成膜する場合に本発明を適用しても良い。また、ALD法以外にも、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によりこれらの酸化物の成膜を行う場合に本発明を適用しても良い。更に、このような成膜装置以外にも、例えばエッチング処理やアッシング処理を行うプラズマ処理装置などの真空処理装置、あるいは真空雰囲気にてウエハWの搬送を行う真空装置例えば複数の真空容器が気密に接続されたマルチチャンバーシステムにおける真空搬送室や、真空雰囲気と大気雰囲気との切り替えを行うロードロック室などに本発明のボールバルブが介設された真空排気路を接続しても良い。
【符号の説明】
【0038】
W ウエハ
1 処理容器
5 カバー体
24 真空ポンプ
31 ボールバルブ
33 吸気ポート
34 排気ポート
37 回動軸
41 ボール部材
44 シール部材
45 貫通路
46 開口部
47 ガス通流口
48 微小連通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気路に設けられる真空排気用のボールバルブにおいて、
吸気ポートと排気ポートとが形成され、弁室を構成するバルブ本体と、
このバルブ本体内に回動自在に収納された弁体であるボール部材と、
このボール部材に設けられ、前記吸気ポートと排気ポートとを連通させるためのガス流路をなす貫通路と、
前記吸気ポートと排気ポートの間を開閉するために前記貫通路に直交する軸の周りに前記ボール部材を回動させるための回動軸と、
前記排気ポートの周縁に設けられ、前記ボール部材とバルブ本体との間を気密にシールするためのシール部材と、
前記回動軸を回動させて、吸気ポートと排気ポートとの間が連通する全開状態と、両ポートの間が遮断される閉止状態と、前記貫通路の一端が吸気ポート及び排気ポートの一方の開口部に臨みかつ前記貫通路の他端が吸気ポート及び排気ポートの他方の開口部から隠れる微小開放状態と、のいずれかとなるように前記貫通路を位置させるための駆動部と、
前記ボール部材及びバルブ本体の少なくとも一方に設けられ、前記微小開放状態のときに、前記貫通路の他端と、吸気ポート及び排気ポートの他方の開口部と、の間を微小な隙間により連通させるための微小連通路と、を備えたことを特徴とする真空排気用のボールバルブ。
【請求項2】
前記微小連通路は、貫通路とボール部材の外面との間を貫通した貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の真空排気用のボールバルブ。
【請求項3】
前記微小連通路は、前記バルブ本体の内壁面に形成された溝部であることを特徴とする請求項1に記載の真空排気用のボールバルブ。
【請求項4】
前記微小連通路は、前記吸気ポート側に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の真空排気用のボールバルブ。
【請求項5】
処理容器に一端側が接続された真空排気路と、
この真空排気路に介設される請求項1ないし4のいずれか一つに記載の真空排気用のボールバルブと、
前記真空排気路の他端側に接続された真空排気機構と、を備えたことを特徴とする真空排気装置。
【請求項1】
真空排気路に設けられる真空排気用のボールバルブにおいて、
吸気ポートと排気ポートとが形成され、弁室を構成するバルブ本体と、
このバルブ本体内に回動自在に収納された弁体であるボール部材と、
このボール部材に設けられ、前記吸気ポートと排気ポートとを連通させるためのガス流路をなす貫通路と、
前記吸気ポートと排気ポートの間を開閉するために前記貫通路に直交する軸の周りに前記ボール部材を回動させるための回動軸と、
前記排気ポートの周縁に設けられ、前記ボール部材とバルブ本体との間を気密にシールするためのシール部材と、
前記回動軸を回動させて、吸気ポートと排気ポートとの間が連通する全開状態と、両ポートの間が遮断される閉止状態と、前記貫通路の一端が吸気ポート及び排気ポートの一方の開口部に臨みかつ前記貫通路の他端が吸気ポート及び排気ポートの他方の開口部から隠れる微小開放状態と、のいずれかとなるように前記貫通路を位置させるための駆動部と、
前記ボール部材及びバルブ本体の少なくとも一方に設けられ、前記微小開放状態のときに、前記貫通路の他端と、吸気ポート及び排気ポートの他方の開口部と、の間を微小な隙間により連通させるための微小連通路と、を備えたことを特徴とする真空排気用のボールバルブ。
【請求項2】
前記微小連通路は、貫通路とボール部材の外面との間を貫通した貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の真空排気用のボールバルブ。
【請求項3】
前記微小連通路は、前記バルブ本体の内壁面に形成された溝部であることを特徴とする請求項1に記載の真空排気用のボールバルブ。
【請求項4】
前記微小連通路は、前記吸気ポート側に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の真空排気用のボールバルブ。
【請求項5】
処理容器に一端側が接続された真空排気路と、
この真空排気路に介設される請求項1ないし4のいずれか一つに記載の真空排気用のボールバルブと、
前記真空排気路の他端側に接続された真空排気機構と、を備えたことを特徴とする真空排気装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−174540(P2011−174540A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39063(P2010−39063)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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