説明

真空断熱芯材製造装置およびそれを用いる真空断熱芯材の製造方法

【課題】繊維断面を異形形状に維持しながら真空断熱芯材用繊維を作製する真空断熱芯材製造装置を得る。
【解決手段】真空断熱芯材製造装置は、繊維シートを積層構造にした芯材を外被材で真空密封させて真空断熱パネルを作製するに際し、溶解された熱可塑性樹脂を複数の紡口から吐出するとともに吐出した熱可塑性樹脂を冷却させながら延伸して繊維を作製する機構と、繊維を開繊させて移動する金網コンベヤ上に捕集し搬送して部分接着することにより繊維をシート化する機構と、を備え、複数の紡口の少なくとも一部は、長方形または台形と長方形の一方の短辺の中央または台形の下底の中央を中心とする円とが重なった少なくとも3個の単位図形が長方形の他方の短辺の中央または台形の上底の中央が一致するように配置しながら互いに所定の角度で交差する開口であり、円の直径が長方形の短辺または台形の上底より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空断熱芯材製造装置およびそれを用いる真空断熱芯材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネ効率向上のために、より高性能な断熱材が求められている。そして、従来から、高い断熱性能を有する真空断熱パネルの芯材として、芯材に積層状の繊維シートが用いられている。その中でも、糸同士の密着、接触面積が少なくなり、空間を細分化しやすく、剛直性も向上し、安定に空間を維持することができるとの理由から、その断面を異形断面糸にした真空断熱パネルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、樹脂繊維では、衣料等を用途にし、繊維の空隙率を上げつつ断面割れを防止するためや、軽量化とふくらみを高めるために、繊維断面積を複数の突起形状に溶融紡糸するための紡口形状に関する技術が示されている。そして、3〜6個の突出部を持つ多葉断面形状をした異形断面糸を溶融紡糸する紡糸口金の吐出孔が、中心に位置する円形孔と該円形孔に連結して放射状に突出する3〜6本のスリット孔と該スリット孔の先端部に連結して位置する円形孔から構成され、該吐出孔が下式を満足するものである。但し、Dは中心円形孔の直径(mm)、Eはスリット孔の巾(mm)、Lはスリット孔の長さ(mm)、dはスリット孔先端の円形孔の直径(mm)、χは中心円形孔からのスリット孔の突出数(3〜6)、SDは中心円形孔の面積(mm)、Sdはスリット孔先端の円形孔の面積(mm)である(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【0004】
0.10mm<D<0.50mm (1)
0.05mm<E<0.10mm (2)
5<(L+d)/E<15 (3)
2<L/E<10 (4)
3.5<χ(EL+Sd)/SD<20 (5)
2.5<χSd/SD<14 (6)
0.5<Sd/EL<10 (7)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−58604号公報
【特許文献2】特開昭63−295709号公報
【特許文献3】特開平7−173708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術で示された異形断面糸は具体的にその形状を形成することが難しく、特に真空断熱芯材に使用する繊維は、衣料用とは異なり、紡口から吐出後に繊維が結晶化するまで延伸させることが必要であることから、その形状を維持することが困難であった。
【0007】
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、繊維断面を異形形状に維持しながら真空断熱芯材用繊維を作製する真空断熱芯材製造装置およびそれを用いる真空断熱芯材の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る真空断熱芯材製造装置は、繊維シートを積層構造にした芯材を外被材で真空密封させて真空断熱パネルを作製するに際し、溶解された熱可塑性樹脂を複数の紡口から吐出するとともに上記吐出した熱可塑性樹脂を冷却させながら延伸して繊維を作製する溶融紡糸機構と、上記繊維を開繊させて移動する金網コンベヤ上に捕集し搬送して部分接着することにより上記繊維をシート化する繊維シート化機構と、を備えた真空断熱芯材製造装置において、上記複数の紡口の少なくとも一部は、長方形または台形と上記長方形の一方の短辺の中央または上記台形の下底の中央を中心とする円とが重なった少なくとも3個の単位図形が上記長方形の他方の短辺の中央または上記台形の上底の中央が一致するように配置しながら互いに所定の角度で交差する開口であり、上記円の直径が上記長方形の短辺または上記台形の上底より大きい。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る真空断熱芯材製造装置は、繊維シートから真空断熱芯材を作製する場合、紡口形状を異形紡口にしたため、真空断熱芯材に適した延伸条件においても繊維断面を異形形状に維持しながら繊維が成形でき、剛性が高い繊維となり、繊維と繊維の接触面積が低減されるとともに、芯材の充填率が低減されることで真空断熱パネルの高性能化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る真空断熱パネルの構造を示す断面模式図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る真空断熱芯材製造装置の溶融紡糸用の紡口の平面図である。
【図3】図2の溶融紡糸用の紡口を構成する単位図形である。
【図4】本実施の形態1における紡糸繊維の断面写真である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る真空断熱芯材製造装置の溶融紡糸用の紡口の平面図である。
【図6】図5の溶融紡糸用の紡口を構成する単位図形である。
【図7】本実施の形態2における紡糸繊維の断面写真である。
【図8】本実施の形態3における紡糸繊維の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の真空断熱芯材製造装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る真空断熱パネルの構造を模式的に示した断面図である。
この発明の実施の形態1に係る真空断熱パネルは、図1に示すように、繊維の断面形状が非円形である異形断面繊維1からなる繊維シート2と、該繊維シート2を積層して構成された芯材3と、該芯材3を覆って密閉する外被材4とを有している。
【0012】
図2は、この発明の実施の形態1に係る繊維シート2用の異形断面繊維1を溶融紡糸する真空断熱芯材製造装置の紡口の平面図である。図3は、図2の紡口を構成する単位図形である。
この発明の実施の形態1に係る真空断熱芯材製造装置の紡口10は、図2、図3に示すように、長方形11と円12が長方形11の一方の短辺の中央13を円12の中心として重なる単位図形14を6個長方形11の他方の短辺の中央15を揃えて順次60°回転した略星形六角形の開口である。
そして、長方形11の短辺の長さをW、円12の半径をRとする。また、長方形11の他方の短辺の中央15から一方の短辺の中央13を通る線を延長し、延長した線が円12の外周と交わるとき他方の短辺の中央15と線が交わった点16との距離をLとする。なお、必要に応じて長方形11の部分をスリット6、円12の部分を吐出端部5と称す。
【0013】
図4は、この発明の実施の形態1に係る真空断熱芯材製造装置を用いて作製した異形断面繊維の断面写真である。
【0014】
次に、この発明の実施の形態1に係る真空断熱パネルの製造方法について説明する。
まず、繊維シート2の作製方法について説明する。
例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET樹脂と記載)のペレットを押出し機で融点以上に加熱して溶解し、溶解された液状またはゲル状のPET樹脂をギアポンプで加圧して複数の紡口から吐出する。
複数の紡口から吐出された液状またはゲル状のPET樹脂は、冷却されることにより紡糸となる。この時、さらにスパンボンド方式やメルトブロー方式により圧縮空気で延伸して、10〜15μm程度の径の繊維を得る。
この延伸して得られた繊維をコンベア上に吐出して堆積する。そして、コンベア上に堆積した繊維同士を、繊維と当る表面がフラットまたはエンボス加工したロールによって、一部熱融着させて繊維をシート化する。これによりシートの引張強度を増すことができ、シートのロール巻きや巻き戻しが可能になる。
このシート化された繊維をロール巻きする。
【0015】
次に、このロール化されたシート(以下、シートロールと記載)から必要なサイズのシートを引き出して裁断することで繊維シート2を得る。この繊維シート2を複数枚重ね芯材3を得る。この後、2枚の外被素材を重ね合わせた外被材4もしくは1枚の外被素材を折り返した外被材4で覆い、真空チャンバ内に配置し減圧することで外被材4に覆われた空間を真空状態にする。
外被材4で覆われた空間が所定の圧力、例えば0.1〜3Pa程度の真空圧になっている状態で外被材4の外周部を密閉し、真空チャンバ内の圧力を大気圧状態にまで戻す。
以上の工程により、この発明の実施の形態1に係る真空断熱パネルが完成する。
この真空断熱パネルの内部空間は真空状態に保持され、外被材4および芯材3は外部との圧力差による圧縮力を受けている。
【0016】
なお、長期真空下に置くことにより、芯材3または外被材4からガスが発生する場合とか、外部から気体が混入する場合とか、水分が混入する場合などが想定される場合には、必要に応じて外被材4で覆われた空間に適切なガス吸着剤を挿入する。
【0017】
また、繊維シート2に含有される水分については、裁断前後などに繊維シート2を加熱しながら減圧するような工程を設けてこの水分を除去してもよい。
また、外被材4で覆われた芯材3が真空チャンバ内において減圧された状態で、真空チャンバ内を加熱するような機構を設けて、繊維シート2に熱収縮や熱分解などの熱負荷が掛からない温度で、且つ真空放電などを誘発しない圧力に設定するなど、適切な条件にて繊維シート2の水分を除去してもよい。
【0018】
また、外被材4は、あらかじめ芯材挿入口を残して製袋加工しておき、芯材3を挿入した後、真空チャンバに配置し、所定の圧力になった後、芯材挿入口のみを密閉してもよい。
【0019】
ここで、複数の突起形状を有する異形断面繊維1からなる繊維シート2を芯材3とする真空断熱パネルは、繊維を異形断面化することによって繊維と繊維の接触面積を小さくすることができ、接触熱抵抗を大きくすることができる。その結果、固体熱伝導が低下し断熱性能が向上する。
【0020】
ところで、例えばPET樹脂を考えた場合、延伸工程で十分延伸させてPET繊維を非晶質構造から結晶構造にすることによって、繊維の剛直性向上と素材の熱伝導率低減が図れる。
実際、我々発明者は、延伸速度と結晶化度の関係を調べ、真空断熱芯材の繊維としてPET樹脂を適用するには、延伸繊維線速度が4100m/分以上であることが好ましいことが分かった。さらに、延伸繊維線速度を4500m/分以上に速くして延伸させることが、結晶化を進める上ではより好ましいことが分かった。しかし、延伸繊維線速度が速くなるに従って糸切れが発生するという課題が生じる。
【0021】
また、繊維径が太くなると繊維の傾斜に応じて、繊維自体を通した固体熱伝導が大きくなり、また繊維同士の接触点数が減少することなどから断熱性能の低減を招く。従って、熱伝導率低減には繊維径は細い方が好ましい。
このように結晶化を進めるとともに熱伝導率を低減するためには延伸繊維線速度を上昇し且つ繊維の細径化が好ましいが、逆に、延伸繊維線速度の上昇と繊維の細径化は共に紡糸の不安定さという課題を抱えている。
【0022】
また、異形断面繊維1の場合、紡口から押し出された紡糸をさらに延伸させる中で、異形断面形状を維持しながら成形することが難しい。
そこで、図2に示す紡口の開口形状寸法をそれぞれ変化させて繊維の断面形状を確認した。この結果、スリット数をnとし、W(mm)が式(8)、L/Wが式(9)、R(mm)が式(10)、nが式(11)を満たすときに、繊維断面が星形多角形形状になることが確認された。尚、星形多角形には複合多角形を含む。
【0023】
0.040≦W≦0.050 (8)
5≦L/W≦10 (9)
0.035≦R≦0.050 (10)
3≦n≦8 (11)
【0024】
そこで、樹脂材料がPETの場合における真空断熱芯材として適用するために必要な延伸繊維線速度を4600m/分にして、紡口への押出量を変化させた。異形断面繊維1の断面積と同じ断面積の円の直径を相当直径とすると、相当直径が10μm以上では糸切れなく紡糸ができた。
さらに、相当直径を13μmにすれば長期連続紡糸も可能であった。この長期連続紡糸時でも、繊維断面を星形多角形形状に成形することができる(図4の断面写真参照)。
【0025】
次に、この異形断面繊維1を芯材とする厚み約8mmの真空断熱パネルを作製し、熱伝導率と芯材の充填率を測定した。その結果、熱伝導率は0.0018W/(m・K)、芯材充填率は,0.14であった。この異形断面繊維1の相当直径と同じ直径の円断面繊維の熱伝導率は、0.0021W/(m・K)、芯材充填率は、0.16であった。従って、芯材繊維の異形断面化によって断熱性能が向上し、さらに芯材としての繊維を少なくすることができることから高性能で低コストの真空断熱が実現できる。
【0026】
一方、参考例1として、図2に示す紡口の吐出端部5の曲率半径Rをスリット幅Wの半分にして同様の紡糸試験を実施した。
その結果、繊維断面はほぼ円形に近い六角形になった。さらに同様に真空断熱パネル化して、熱伝導率と芯材充填率を測定した結果、熱伝導率は0.0021W/(m・K)で、芯材充填率は0.14と円断面繊維と同じ値であった。つまり、吐出端部5の曲率半径がスリット幅Wの半分の紡口形状の場合は安定に紡糸されるものの、繊維断面が星型多角形形状に成形されず、性能の向上も見られないことが確認された。
【0027】
さらに、参考例2として、図2に示す紡口の吐出端部5の曲率半径Rと同じ半径の円からなる開口を図形14の長方形の他方の短辺の中央15に重ねた紡口を作製し、これにて同様の紡糸試験を実施した。
その結果、繊維断面は参考例1と良く似た正六角形になった。同様にこれを真空断熱パネル化して、熱伝導率と芯材充填率を測定した結果、熱伝導率は0.0021W/(m・K)、芯材充填率は0.14であった。つまり、異形紡口の中央に吐出端部5と同じ半径の円の開口を設けた場合も繊維断面が星型多角形形状に成形されず、したがって断熱性能の向上も見られないことが確認された。
【0028】
以上の2つの参考例は、真空断熱芯材用として繊維を高い線速度で延伸させたことに対して、溶融された樹脂の表面張力が勝って突起のある異形断面形状が維持できず、円断面に近づいたものだと考えられる。
【0029】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2に係る真空断熱パネルの繊維シートを製作する真空断熱芯材製造装置の紡口の平面図である。図6は、図5の紡口を構成する単位図形である。図7は、この発明の実施の形態2における真空断熱芯材として作製した繊維断面写真である。
この発明の実施の形態2に係る真空断熱芯材製造装置の紡口10Bは、図5、図6に示すように、台形17と円12が台形17の下底の中央13で円12の中心が重なる単位図形14Bを6個台形17の上底部の中央15を揃えて順次60°回転した略星形六角形の開口である。
そして、台形17の上底の長さをWmin、円12の半径をRとする。また、台形17の上底の中央15から下底の中央13を通る線を延長し、延長した線が円12の外周と交わるとき上底の中央15と線が交わった点16との距離をLとする。なお、必要に応じて台形17の部分をテーパ状スリット6B、円12の部分を吐出端部5と称す。
【0030】
次に、この発明の実施の形態2に係る真空断熱芯材製造装置における真空断熱芯材用の繊維紡糸について説明する。
実施の形態1で示したものと同様の寸法範囲になる様に図5の形状の紡口を製作し紡糸を試みた。
実施の形態1と同様に延伸繊維線速度を4600m/minにして、紡口10Bへの押出量を変化させた。異形断面繊維の断面積と同じ断面積の円断面繊維の相当直径を求めたところ15μm以上で糸切れなく紡糸できた。また、長期連続紡糸については,相当直径を18μmにすることでこれが実現できた。また、この長期連続紡糸時における繊維断面を観察した結果、図7に示すように、繊維径は実施の形態1と比較して大きくなるものの、同様な星形多角形の断面が形成できることを確認した。
【0031】
次に、この異形断面繊維を芯材とする厚み約8mmの真空断熱パネルを作製し、熱伝導率と芯材の充填率を測定した。その結果、熱伝導率は0.0019W/(m・K)、芯材の充填率は、0.13であった。従って、熱伝導率については実施の形態1に係る真空断熱パネルよりも高くなるものの、従来の円断面繊維よりは抑制できていることが分かる。
また、芯材の充填率は、円断面繊維は勿論、実施の形態1に係る異形断面繊維を用いたときよりもさらに低充填率であった。従って、この発明の実施の形態2に係る真空断熱芯材製造装置を用いて製作した異形断面繊維を繊維シート2に使用することにより、真空断熱パネルの断熱性能が向上するとともに、芯材の充填率をより低減させた低コストの真空断熱パネルが実現できる。
【0032】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3においては、この発明の実施の形態1において説明した真空断熱芯材製造装置を用いて、繊維材料としてPET樹脂の代りにポリスチレン(PS)樹脂を用いて異形断面繊維を繊維紡糸する。従って、真空断熱芯材製造装置について説明を省略する。
図8は、この発明の実施の形態3において繊維紡糸した異形断面繊維の断面写真である。
【0033】
PS樹脂はPET樹脂と比較して粘度が異なり、PET樹脂の繊維紡糸に適用した高い延伸繊維線速度で延伸させると糸切れが発生してしまう。従って、従来の円断面紡口を用いた場合も、糸の延伸繊維線速度は、約3千〜4千前半m/min台が限界である。
しかし、真空断熱パネルの芯材としてPS樹脂からなる異形断面繊維を用いるとき、繊維の結晶化を考慮すると、延伸樹脂線速度を3100m/min以上にすることが望まれるし、可能であれば3600m/min以上で延伸させることがさらに望まれる。
そこで、延伸繊維線速度を4000m/minに設定して、紡口への押出量を変化させた試験を試みた。その結果、異形断面繊維の断面積と同じ断面積の円断面繊維の相当直径が10μmまで糸切れなく紡糸できることを確認した。また、長期連続紡糸については、相当直径13μmにすることでこれが実現できた。この時の繊維断面を観察した結果、図7に示したように実施の形態1ならびに実施の形態2と同様に繊維の断面は星型多角形形状が形成されていることを確認した。
【0034】
次に、この繊維を芯材とする厚み約8mmの真空断熱パネルを作製し、熱伝導率と芯材の充填率を測定した。その結果、熱伝導率は0.0018W/(m・K)、芯材の充填率は、0.14と実施の形態1と同じ結果であった。従って、熱伝導率については実施の形態1と同様、断熱性能の向上ならびに芯材充填率の低減が実現できる。また一方で、PSは素材の密度が小さいことから、同一の真空断熱パネルを製作する場合、軽量化が図れる。
【0035】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4においては、この発明の実施の形態1において説明した真空断熱芯材製造装置を用いて、繊維材料としてPET樹脂の代りにアルミナホウ酸系のEガラスを用いて異形断面繊維を繊維紡糸する。真空断熱芯材製造装置の説明は省略する。
【0036】
次に、真空断熱パネルの製造方法について説明する。
繊維シートに用いるガラス繊維の製造方法として、Eガラス素材を溶解させて複数の口金から冷却させつつ延伸させながら繊維を作製する遠心法を用いた。この口金に上述した実施の形態1に係る紡口と幾何学的に相似な紡口を設けた。紡口の断面積と同じ断面積の円形紡口の相当直径を約0.7mmとし、延伸した繊維の相当直径が約5μmになる様に延伸して繊維を作製した。そして、延伸した繊維を移動する金網コンベヤ上に捕集し搬送してプレスまたはバインダ溶剤などを用いて繊維シート化させる。尚、この後の工程は実施の形態1の説明と同様である。
【0037】
このガラス繊維の断面も星形多角形形状に成形されることで、樹脂繊維と同等の効果が得られる。例えば、断面が円形状のガラス繊維を芯材として用いた真空断熱パネルの熱伝導率は、0.0018W/(m・K)であるのに対して、断面が星形六角形形状のガラス繊維を芯材として用いた真空断熱パネルの熱伝導率は、0.0015W/(m・K)である。
また、断面が円形状のガラス繊維を芯材として用いた真空断熱パネルの芯材の充填率は、10%であるのに対して、断面が星形六角形形状のガラス繊維を芯材として用いた真空断熱パネルの芯材の充填率は、8%であり、いずれも低減できる。従って、この場合も高性能で低コストの真空断熱パネルが実現できる。
【0038】
尚、口金の断面積と繊維の断面積の比が50倍以上且つ200倍以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0039】
1 異形断面繊維、2 繊維シート、3 芯材、4 外被材、5 吐出端部、6 スリット、6B テーパ状スリット、10、10B 紡口、11 長方形、12 円、13 (長方形の一方の短辺の)中央、14、14B 単位図形、15 (長方形の他方の短辺の)中央、16 点、17 台形。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートを積層構造にした芯材を外被材で真空密封させて真空断熱パネルを作製するに際し、溶解された熱可塑性樹脂を複数の紡口から吐出するとともに上記吐出した熱可塑性樹脂を冷却させながら延伸して繊維を作製する溶融紡糸機構と、上記繊維を開繊させて移動する金網コンベヤ上に捕集し搬送して部分接着することにより上記繊維をシート化する繊維シート化機構と、を備えた真空断熱芯材製造装置において、
上記複数の紡口の少なくとも一部は、長方形または台形と上記長方形の一方の短辺の中央または上記台形の下底の中央を中心とする円とが重なった少なくとも3個の単位図形が上記長方形の他方の短辺の中央または上記台形の上底の中央が一致するように配置しながら互いに所定の角度で交差する開口であり、
上記円の直径が上記長方形の短辺または上記台形の上底より大きいことを特徴とする真空断熱芯材製造装置。
【請求項2】
上記長方形の短辺または上記台形の上底をW(mm)、上記長方形の長辺または上記台形の高さと上記円の半径との和をL(mm)、上記円の半径をR(mm)、上記単位図形の数をnとしたとき、上記紡口は下記式を満足していることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱芯材製造装置。
0.040≦W≦0.050
5≦L/W≦10
0.035≦R≦0.050
3≦n≦8
【請求項3】
請求項1に記載の真空断熱芯材製造装置を用いてポリエチレンテレフタレートからなる熱可塑性樹脂を4100m/分以上の繊維線速度で延伸することを特徴とする真空断熱芯材の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の真空断熱芯材製造装置を用いてポリスチレンからなる熱可塑性樹脂を3100m/分以上の繊維線速度で延伸することを特徴とする真空断熱芯材の製造方法。
【請求項5】
繊維シートを積層構造にした芯材を外被材で真空密封させて真空断熱パネルを作製するに際し、溶解されたガラス素材を複数の口金から吐出するとともに上記吐出したガラス素材を冷却させながら延伸して繊維を作製する遠心工程と、上記繊維を移動する金網コンベヤ上に捕集し搬送してシート化する繊維シート化工程と、を含む真空断熱芯材の製造方法において、
上記複数の口金の少なくとも一部は、長方形または台形と上記長方形の一方の短辺の中央または上記台形の下底の中央を中心とする円とが重なった少なくとも3個の単位図形が上記長方形の他方の短辺の中央または上記台形の上底の中央が一致するように配置しながら互いに所定の角度で交差する開口であり、
上記円の直径が上記長方形の短辺または上記台形の上底より大きく、
上記口金の断面積と上記繊維の断面積の比が50倍以上且つ200倍以下にしたことを特徴とする真空断熱芯材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112065(P2012−112065A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261472(P2010−261472)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】