説明

真空検体採取容器及び血液分離装置

【課題】ヘマトクリットが高い血液を分離する際にも分離効率が低下することなく、血液から血漿または血清を簡便に、かつ短時間で分離することができる真空検体採取容器及び血液分離装置を提供する。
【解決手段】両端に第1,第2の開口2a,2bを有する筒状の容器本体2と、第1,第2の開口2a,2bに気密的に取付けられている第1,第2の栓体3,4とを備え、容器本体2が、血液が採取される第1の内部空間A1と、血液から分離された血漿または血清が収容される第2の内部空間A2とを有し、第1の内部空間A1に採取された血液を血球と血漿または血清とに分離するための血液分離フィルタ6,7と、第1の内部空間A1に配置されており、採取された血液中の血球を凝集させる赤血球凝集剤および/または血液凝固促進剤8,8とをさらに備える、真空検体採取容器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液から血漿または血清を分離し、該血漿または血清中の成分を検査するのに用いられる真空検体採取容器及び血液分離装置に関し、より詳細には、ヘマトクリットが高い血液を分離する際にも分離効率が低下することなく、血液から血漿または血清を簡便に、かつ短時間で分離することができる真空検体採取容器及び血液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液から血球成分を除去し、臨床検査に必要な血漿または血清を得るために、遠心分離法が用いられてきた。しかし、遠心分離法では、凝固過程や分離後に上澄みの血漿または血清を移しかえる過程などの作業が煩雑であった。また、検査結果を得るまでに時間を要し、さらに大型で高価な遠心分離機が必要であった。
【0003】
この問題を解決するために、遠心分離機を用いることなく、血液から血球成分を除去し、臨床検査に必要な血漿または血清を得ることを可能とする様々な器具が提案されている。
【0004】
下記の特許文献1には、採取された血液から、血漿または血清を分離し、分離された血漿または血清を取出すことを可能とする血液検査用容器の一例が示されている。図14を参照して、特許文献1に示されている血液検査用容器を説明する。
【0005】
図14に縦断面図で示すように、血液検査用容器101は、外管102と、筒状部材103と、栓体104とを有する気密容器であり、内部が減圧されている。外管102内に、筒状部材103が挿入されている。外管102は、有底の管状容器で構成されており、外管102は上端に開口102aを有する。
【0006】
他方、筒状部材103は、上端に開口103aを有する。また、筒状部材103の下方部分には、フィルタ105が収納されている。フィルタ105は、フィルタ部材106と、フィルタ部材106の下方に配置された血球停止膜107とを有する。フィルタ部材106は、血球成分よりも血漿または血清を早く移動させるフィルタ材料により構成されている。血球停止膜107は、血球を捕捉し、分離された血漿または血清への血球の混入を防止する。
【0007】
筒状部材103の下端には、下方に突出された突出部103bが形成されている。突出部103bには血漿または血清流路108が設けられている。血漿または血清流路108は、血球停止膜107の下面に対向しており、かつ突出部103b内を下方に延びるように設けられている。フィルタ部材106により分離された血漿または血清は、血漿または血清流路108から下方の血漿または血清収納部109に流下される。なお、フィルタ部材105の上方の空間は、血液収容部110を構成している。
【0008】
栓体104は、把持部104aと、大径部104bと、小径部104cとを有する。大径部104bは、小径部104cよりも大きな径を有する。小径部104cが筒状部材103の開口103aに圧入されており、大径部104bが外管102の開口102aに圧入されている。
【0009】
上記血液検査用容器101の使用に際しては、栓体104に採血針を刺通させ、内外の圧力差により血液を血液収容部110に採取する。採取された血液は、フィルタ105によって濾過される。上述したように、フィルタ部材106では、血漿または血清が血球成分よりも速やかに下方に移動する。そして、血漿または血清は、血球停止膜107を通過し、血漿または血清流路108に至る。しかる後、血漿または血清は、血漿または血清収納部109に流下される。他方、血球は血球停止膜107により捕捉される。血球により血球停止膜107が閉塞されると、濾過が停止する。
【0010】
血漿または血清が分離された後には、外管102の開口102aに圧入されている栓体104を筒状部材103ごと抜去し、分離された血漿または血清を取出すことができる。
【特許文献1】特開2004−325412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の血液検査用容器101では、血液収容部110に採取された血液がフィルタ105によって濾過される。血液検査用容器101を用いて血液を分離する際には、血液中の赤血球の容積比率であるヘマトクリットが異なる血液が用いられる。
【0012】
しかしながら、特許文献1では、ヘマトクリットが高い血液が用いられた場合には、フィルタ105が目詰まりすることがあった。フィルタ105が目詰まりすると濾過効率が低下したり、濾過時に赤血球に負荷がかかって赤血球が破壊されることがあった。赤血球が破壊されて赤血球内成分が漏洩すると、血漿または血清収納部109に収容されている血漿または血清に赤血球内成分が混入する。この場合、得られた血漿または血清を検査すると、混入した赤血球内成分が検査結果に大きく影響し、信頼性の高い検査結果を得ることができなかった。
【0013】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、ヘマトクリットが高い血液を分離する際にも分離効率が低下することなく、血液から血漿または血清を簡便に、かつ短時間で分離することができる真空検体採取容器及び血液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、血液から血漿または血清を分離し、該血漿または血清中の成分を検査するのに用いられる真空検体採取容器であって、一端側に第1の開口を有し、他端側に第2の開口を有する筒状の容器本体と、第1の開口に気密的に取付けられている第1の栓体と、第2の開口に気密的に取付けられている第2の栓体とを備え、容器本体が、第1の開口側に配置されており、血液が採取される第1の内部空間と、第2の開口側に配置されており、血液から分離された血漿または血清が収容される第2の内部空間とを有し、第1,第2の内部空間の間に配置されており、第1の内部空間に採取された血液を血球と血漿または血清とに分離するための血液分離フィルタと、第1の内部空間に配置されており、第1の内部空間に採取された血液に接触することにより、血液中の血球を凝集させる赤血球凝集剤および/または血液凝固促進剤とをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
第1の発明の真空検体採取容器のある特定の局面では、血液分離フィルタと第2の内部空間との間に配置されており、血液分離フィルタにより分離された血球の通過を防止する血球停止フィルタをさらに備えている。
【0016】
第1の発明の真空検体採取容器の他の特定の局面では、血液分離フィルタと第2の内部空間との間に配置されており、血液分離フィルタにより分離された血漿または血清に接触されることにより膨潤し、流路を閉塞する流路閉塞部材をさらに備えている。
【0017】
第1の発明の真空検体採取容器のさらに他の特定の局面では、第2の栓体の外表面が、第2の栓体が採血針またはシリンジにより刺通されるのを防止するカバーにより覆われている。
【0018】
第1の発明の真空検体採取容器のさらに他の特定の局面では、容器本体の第2の内部空間において、第1の開口側に向って容器本体の内周面にテーパーが付けられている。
【0019】
第2の発明は、血液から血漿または血清を分離する血液分離器具と、少なくとも一端側に開口を有し、該開口に栓体が圧入されており、血液が採取される血液採取容器とを備える血液分離装置であって、血液分離器具が、一端側に向かって延びる第1の中空針と、一端側とは反対側の他端側に向かって延びる第2の中空針と、第1,第2の中空針間に配置されており、血液が流れる内部流路とを有する筒状の容器本体、および容器本体の内部流路に配置されており、血液を血球と血漿または血清とに分離するための血液分離フィルタを有し、血液分離器具の第1の中空針に血液採取容器の栓体を刺通させることにより、血液分離器具と血液採取容器とが連結され得るように構成されており、血液分離器具と血液採取容器とが連結されることによって、血液採取容器内に採取された血液が、血液分離器具の容器本体の内部流路に導かれるように構成されており、血液分離器具の容器本体が、第1の中空針の針先から内部流路に向かって、内部流路に血液が流入される第1の流路と、内部流路から第2の中空針の針先に向かって、内部流路から血液が流出される第2の流路と、外部空間から第1の中空針の針先に向かって、大気が流通可能な状態となり得る第3の流路とを有し、血液採取容器が、採取された血液に接触することにより、血液中の血球を凝集させる赤血球凝集剤および/または血液凝固促進剤を内部に有することを特徴とする。
【0020】
第2の発明の血液分離装置のある特定の局面では、血液分離器具が、容器本体の内部流路において、血液分離フィルタの下流に配置されており、血液分離フィルタにより分離された血球の通過を防止する血球停止フィルタをさらに備えている。
【0021】
第2の発明の血液分離装置の他の特定の局面では、血液分離器具が、容器本体の内部流路において、血液分離フィルタの下流に配置されており、血液分離フィルタにより分離された血漿または血清に接触されることにより膨潤し、流路を閉塞する流路閉塞部材をさらに備えている。
【0022】
第2の発明の血液分離装置のさらに他の特定の局面では、血液分離器具が、容器本体の第3の流路に液密的に配置された弁部材を有し、弁部材を挟んだ外部空間側と第1の中空針の針先側との圧力差により、外部空間から第1の中空針の針先に向かって、大気が流通可能な状態となり得るように血液分離器具が構成されている。
【0023】
第2の発明の血液分離装置のさらに他の特定の局面では、血液分離器具の弁部材が切り込みを有し、圧力差の有無によって切り込みが開閉するように構成されており、かつ切り込みが開口することで、外部空間から第1の中空針の針先に向かって、大気が流通可能な状態となり得るように血液分離器具が構成されている。
【0024】
第2の発明の血液分離装置のさらに他の特定の局面では、血液分離器具が、容器本体の第3の流路に液密的に配置された連続発泡体を有し、連続発泡体が液密性および通気性を有している。
【0025】
第2の発明の血液分離装置のさらに他の特定の局面では、少なくとも一端側に開口を有し、該開口に栓体が圧入されて内部の減圧が維持されており、分離された血漿または血清が収納される検体収納容器をさらに備えている。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明の検体採取容器は、一端側に第1の開口を有し、他端側に第2の開口を有する筒状の容器本体と、第1の開口に気密的に取付けられている第1の栓体と、第2の開口に気密的に取付けられている第2の栓体とを備えている。容器本体は、第1の開口側に配置されており、血液が採取される第1の内部空間と、第2の開口側に配置されており、血液から分離された血漿または血清が収容される第2の内部空間とを有している。
【0027】
第1の発明では、第1の内部空間に配置されており、第1の内部空間に採取された血液に接触することにより、血液中の血球を凝集させる赤血球凝集剤および/または血液凝固促進剤を備えているため、第1の内部空間に血液が採取されると、血液中の血球が凝集される。
【0028】
第1の発明では、第1,第2の内部空間の間に配置されており、第1の内部空間に採取された血液を血球と血漿または血清とに分離するための血液分離フィルタをさらに備えているため、血液の分離の際には、血液分離フィルタにおいて血球と血漿または血清との移動速度差を利用し、血液を血球と血漿または血清とに分離することができる。
【0029】
赤血球凝集剤および/または血液凝固促進剤により凝集された血球は血液分離フィルタ内に流入しないため、血液分離フィルタに流入される血球が少なくされており、かつ血液分離フィルタの血液の流入される表面において、血球による目詰まりの発生が抑制されている。また、血液中の血球が一部凝集されずに血液分離フィルタに流入しても、血液分離フィルタによって血球と血漿または血清とに分離される。そして、分離された血漿または血清が第2の内部空間に収容される。
【0030】
よって、第1の発明では、ヘマトクリットの高い血液を分離する際にも血液分離フィルタが目詰まりせず、分離効率が低下することなく、血液から血漿または血清を簡便に、かつ短時間で分離することができる。
【0031】
血液分離フィルタと第2の内部空間との間に配置されており、血液分離フィルタにより分離された血球の通過を防止する血球停止フィルタをさらに備えている場合には、血液の分離の際に、血球停止フィルタにより血球の通過が確実に防止されて、赤血球や白血球の血漿または血清への混入をより一層確実に防止することができる。
【0032】
血液分離フィルタと第2の内部空間との間に配置されており、血液分離フィルタにより分離された血漿または血清に接触されることにより膨潤し、流路を閉塞する流路閉塞部材をさらに備えている場合には、分離された血漿または血清が第2の内部空間に収容された後には、流路閉塞部材の血漿または血清との接触による膨潤によって流路が閉塞される。
【0033】
よって、上記移動速度差により血漿または血清よりも遅れて血球が流路閉塞部材に至った際には、流路が閉塞されているため、第2の内部空間に収容された血漿または血清への血球の混入を防止することができる。さらに、血液を分離した後に、長時間放置されて赤血球内成分が漏洩した場合でも、流路が閉塞されているため、血漿または血清への赤血球内成分の混入を防止することができる。
【0034】
血液を分離した後に、内部空間に収容されている血漿または血清を取出す際には、第1の開口が下方側に、第2の開口が上方側となるように検体採取容器を配置した後に、第2の開口から第2の栓体を抜去すればよい。第1の発明では、流路が流路閉塞部材により閉塞されているため、内部空間に収容されている血漿または血清が、血液分離フィルタに至ることがない。従って、血漿または血清が、血球または赤血球内成分と接触し難いので、血漿または血清の汚染を防止することができる。よって、第2の開口から、汚染されていない血漿または血清を、容易にかつ簡便に取出すことができる。また、分離された血漿または血清などに接触し、検査技師などが血液中の病原体に感染することを確実に防ぐことができる。
【0035】
第2の栓体の外表面が、第2の栓体が採血針またはシリンジにより刺通されるのを防止するカバーにより覆われている場合には、誤って第2の栓体に採血針またはシリンジが刺通され、内部空間に血液が採取されるのを防止することができる。
【0036】
容器本体の第2の内部空間において、容器本体の第1の開口側に向って容器本体の内周面にテーパーが付けられている場合には、内部空間に収容されている血漿または血清の量が少ない場合であっても液面が高くなり、液面が第2の開口に近くなるため、血漿または血清をより一層容易に取出すことが可能となる。
【0037】
第2の発明の血液分離装置は、血液から血漿または血清を分離する血液分離器具と、少なくとも一端側に開口を有し、該開口に栓体が圧入されており、血液が採取される血液採取容器とを備えている。
【0038】
血液分離器具は、一端側に向かって延びる第1の中空針と、一端側とは反対側の他端側に向かって延びる第2の中空針と、第1,第2の中空針間に配置されており、血液が流れる内部流路とを有する筒状の容器本体、および容器本体の内部流路に配置されており、血液を血球と血漿または血清とに分離するための血液分離フィルタを有している。
【0039】
血液分離器具の容器本体は、第1の中空針の針先から内部流路に向かって、内部流路に血液が流入される第1の流路と、内部流路から第2の中空針の針先に向かって、内部流路から血液が流出される第2の流路と、外部空間から第1の中空針の針先に向かって、大気が流通可能な状態となり得る第3の流路とを有する。そして、血液分離器具の第1の中空針に血液採取容器の栓体を刺通させることにより、血液分離器具と血液採取容器とが連結され得るように構成されており、血液分離器具と血液採取容器とが連結されることによって、血液採取容器内に採取された血液が血液分離器具の容器本体の内部流路に導かれるように構成されている。
【0040】
第2の発明では、血液採取容器が、採取された血液に接触することにより、血液中の血球を凝集させる赤血球凝集剤および/または血液凝固促進剤を内部に有するため、血液採取容器内に血液が採取されたときに、血液中の血球が凝集される。赤血球凝集剤および/または血液凝固促進剤により凝集された血球は血液分離フィルタ内に流入しないため、血液分離フィルタに流入される血球が少なくされており、かつ、血液分離フィルタの血液の流入される表面において、血球による目詰まりの発生が抑制されている。また、血液中の血球が一部凝集されずに血液分離フィルタに流入しても、血液分離フィルタにおいて血球と血漿または血清との移動速度差により、血液から血漿または血清が分離される。
【0041】
よって、第2の発明では、ヘマトクリットの高い血液を分離する際にも血液分離フィルタが目詰まりせず、分離効率が低下することなく、血液から血漿または血清を簡便に、かつ短時間で分離することができる。
【0042】
また、第2の発明では、血液採取容器の栓体に第1の中空針の針先を刺通させると、第3の流路を通じて外部空間側から針先側に大気が移動し、針先から血液採取容器内に大気を流入させることができる。よって、第1の流路を通じて血液が内部流路に流入し、血液採取容器の空容積が増加しても、血液採取容器内に大気が流入されるため、血液採取容器内の圧力の低下を防ぐことができる。よって、血液から血漿または血清を簡便に、かつ短時間で分離することができる。
【0043】
血液分離器具が、容器本体の内部流路において、血液分離フィルタの下流に配置されており、血液分離フィルタにより分離された血球の通過を防止する血球停止フィルタをさらに備えている場合には、血液の分離の際に、血球停止フィルタにより血球の通過が確実に防止されて、赤血球や白血球の血漿または血清への混入をより一層確実に防止することができる。
【0044】
血液分離器具が、容器本体の内部流路において、血液分離フィルタの下流に配置されており、血液分離フィルタにより分離された血漿または血清に接触されることにより膨潤し、流路を閉塞する流路閉塞部材をさらに備えている場合には、分離された血漿または血清が第2の内部空間に収容された後には、流路閉塞部材の血漿または血清との接触による膨潤によって流路が閉塞される。
【0045】
よって、上記移動速度差により血漿または血清よりも遅れて血球が流路閉塞部材に至った際には、流路が閉塞されているため、第2の流路から流出された血漿または血清への血球の混入を防止することができる。さらに、血液を分離した後に、長時間放置されて赤血球内成分が漏洩した場合でも、流路が閉塞されているため、血漿または血清への赤血球内成分の混入を防止することができる。
【0046】
血液分離器具が、容器本体の第3の流路に液密的に配置された弁部材を有し、弁部材を挟んだ外部空間側と第1の中空針の針先側との圧力差により、外部空間から第1の中空針の針先に向かって、大気が流通可能な状態となり得るように血液分離器具が構成されている場合には、血液が採取された血液採取容器内に第1の中空針の針先を刺通させると、第3の流路を通じて外部空間側から針先側に大気が移動し、針先から血液採取容器内に大気を流入させることができる。さらに、第3の流路を通じて、第1の中空針の針先側から外部空間側に血液が移動しても、弁部材によりその移動が停止される。よって、第3の流路を通じて、血液の外部空間への流出を防ぐことができる。
【0047】
弁部材が切り込みを有し、圧力差の有無によって切り込みが開閉するように構成されており、かつ切り込みが開口することで、外部空間から第1の中空針の針先に向かって、大気が流通可能な状態となり得るように血液分離器具が構成されている場合には、弁部材を挟んだ外部空間側と第1の中空針の針先側との圧力差が無いときに切り込みが閉口するため、血液の外部空間への流出をより一層確実に防ぐことができる。
【0048】
血液分離器具が、第3の流路に液密的に配置された連続発泡体を有し、連続発泡体が液密性および通気性を有する場合には、血液が採取された血液採取容器内に第1の中空針の針先を刺通させると、第3の流路を通じて外部空間側から針先側に大気が移動し、針先から血液採取容器内に大気を確実に流入させることができる。よって、血液採取容器内の圧力の低下をより一層効果的に防ぐことができる。
【0049】
少なくとも一端側に開口を有し、該開口に栓体が圧入されて内部の減圧が維持されており、分離された血漿または血清が収納される検体収納容器をさらに備えている場合には、血液採取容器の栓体に第1の中空針の針先を刺通させ、さらに検体収納容器の栓体に第2の中空針の針先を刺通させると、血液採取容器内の血液が、検体収納容器の内部の減圧により真空吸引される。また、第1の流路を通じて血液が内部流路に流入し、血液採取容器の空容積が増加しても、第3の流路から大気が血液採取容器内に流入されるため、血液採取容器内の圧力の低下が防がれている。よって、血液採取容器と検体収納容器との圧力差が小さくなり難いため、血液を血球と血漿または血清とに短時間で分離でき、分離された血漿または血清を検体収納容器に収容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の具体的な実施形態を説明することにより本発明を明らかにする。
【0051】
図1(a),(b)に、第1の発明の第1の実施形態に係る真空検体採取容器を、斜視図および正面断面図で示す。
【0052】
図1(a),(b)に示すように、真空検体採取容器1は、一端側に第1の開口2aを有し、他端側に第2の開口2bを有する円筒状の容器本体2を有する。容器本体2の他端側は逆円錐台形状に先細りした形状を有し、第1の開口2aの開口径が第2の開口2bの開口径よりも小さくされている。容器本体2は中央部分の内周面に、内側に突出した環状棚部2cを有する。この環状棚部2cにより、該環状棚部2cに囲まれた開口部2dが形成されており、中空流路を構成している。環状棚部2c部分における容器本体2の内周面には、第1の開口2a側に向ってテーパー2eが付けられている。
【0053】
容器本体2は、環状棚部2cよりもわずかに第1の開口2a側において、後述する血液分離フィルタまたは血球停止フィルタを載置するためのフィルタ支持棚2fを有する。フィルタ支持棚2fには、血漿または血清が通過し得るように複数の孔が設けられている。容器本体2は、フィルタ支持棚2fよりもわずかに第1の開口2a側において、容器本体2の内周面から内側に突出した環状突部2gを有する。容器本体2は、環状棚部2cとフィルタ支持棚2fとの間において、容器本体2の内径がわずかに小さくされている。
【0054】
なお、図1(a),(b)では、第1の開口2aが下方側、第2の開口2bが上方側となるように真空検体採取容器1が図示されている。
【0055】
容器本体は、円筒状の形状に限られず、例えば角筒状などの形状を有していてもよい。容器本体の材質としては、空気非透過性を有するものであれば特に限定されない。容器本体の材質としては、例えばアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、またはアクリル等からなる樹脂が挙げられる。容器本体が合成樹脂からなる場合には、表面に金属や珪素などが蒸着されて、空気非透過性能が向上されていてもよい。
【0056】
容器本体2の第1の開口2aには、内部を気密封止するように第1の栓体3が取付けられている。第1の栓体3は、大径部3aと、小径部3bとを有する。大径部3aは、小径部3bよりも大きな径を有する。採血針またはシリンジによる刺通を容易とするために、第1の栓体3の外側表面の中央には、逆円錐台形状の凹部3cが設けられている。小径部3bが第1の開口2aに圧入されており、第1の栓体3により第1の開口2aが気密封止されている。
【0057】
第1の栓体は、空気非透過性を有し、かつ採血針またはシリンジにより刺通され得る材料により構成されていることが好ましい。第1の栓体を構成する材料としては、例えば天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、または熱可塑性エラストマー等の弾性体が挙げられる。
【0058】
他方、容器本体2の第2の開口2bには、着脱自在に第2の栓体4が取付けられている。第2の栓体4は、大径部4aと、小径部4bとを有する。大径部4aは、小径部4bよりも大きな径を有する。大径部4aは、容器本体2の外径よりも大きな径を有する。小径部4bが第2の開口2bに圧入されており、第2の栓体4により第2の開口2bが気密封止されている。
【0059】
第2の栓体は、空気非透過性を有する材料により構成されていることが好ましい。第2の栓体を構成する材料としては、例えば天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、または熱可塑性エラストマー等の弾性体が挙げられる。
【0060】
第2の栓体4が採血針またはシリンジにより刺通されるのを防止するために、第2の栓体4の外表面はカバー5により覆われている。本実施形態では、大径部4aの外表面全体がカバー5により覆われている。カバー5は大径部4aの外周側面からさらに下方に延ばされており、カバー5の下端5aは第2の開口2bの外周側面に至っている。カバー5の内周側面には、環状突部5bが形成されている。カバー5の内径は大径部4aの外径と等しいか若しくはわずかに小さくされているが、環状突部5b部分における内径は、小径部4bの外径と等しいか若しくはわずかに小さくされている。すなわち、環状突部5bの先端面5cが小径部4bの外周側面と当接されており、環状突部5bの側面5dが、大径部4aと小径部4bとの段差部分4cに当接されている。また、容易に把持し得るように、さらに第2の栓体4ごとカバー5を容易に抜去し得るように、カバー5の外周側面には複数の段差5eが形成されている。
【0061】
第2の栓体の外表面は、例えば金属、合成樹脂等からなるカバーにより覆われていることが好ましい。採血針またはシリンジにより刺通されないカバーが設けられている場合には、誤って第2の栓体に採血針またはシリンジが刺通され、第2の開口2b側に第2の内部空間に血液が採取されるのを防止することができる。カバーを構成する材料としては、特に限定されないが、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0062】
使用前は、第1,第2の開口2a,2bに第1,第2の栓体3,4が気密的に取付けられて、真空検体採取容器1内が減圧されている。真空検体採取容器1内が減圧されているのは、後述するように、血液を真空吸引しつつ効率的に濾過するためである。
【0063】
真空検体採取容器内の減圧度は、特に限定されないが、2〜90kPaの範囲が好ましく、20〜60kPaの範囲がより好ましい。減圧度が低すぎると、血液が効率的に分離しないことがあり、減圧度が高すぎると、赤血球に圧力が加わり溶血を引き起こすおそれがある。
【0064】
図1(b)に示すように、容器本体2は、第1の開口2a側に配置されており、かつ血液が採取される第1の内部空間A1と、第2の開口2b側に配置されており、血液から分離された血漿または血清が収容される第2の内部空間A2を有している。第2の内部空間A2は、環状棚部2cよりも第2の開口2b側に位置している。
【0065】
真空検体採取容器1は、第1の開口2a側に血液を血球と血漿または血清とに分離するための血液分離フィルタ6を備えている。血液分離フィルタ6は、円板状の形状を有する。血液分離フィルタ6は、容器本体2のフィルタ支持棚2fと環状突部2gとの間に配置されている。
【0066】
血液分離フィルタは、非対称フィルタと対称フィルタに分けることができる。非対称フィルタとは、ここでは血液の流入側から流出側にかけて孔径が小さくなるような構造を有するフィルタを総称する。それ以外の血液分離フィルタを対称フィルタと総称する。
【0067】
上記対称フィルタとしては、平均孔径は1μm以上、10μm以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは2μm以上、8μm以下の範囲である。平均孔径が1μmより小さいと赤血球が溶血することがあり、10μmより大きくなると血球と血漿もしくは血清との分離が著しく悪くなることがある。
【0068】
上記非対称フィルタとしては平均孔径が0.01μm以上、10μm以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは0.1μm以上、6μm以下である。平均孔径が0.01μmより小さいと血球成分が目詰まりを起こし分離できなくなること、または溶血することがあり、平均孔径が10μmより大きくなると血球と血漿もしくは血清との分離が著しく悪くなることがある。
【0069】
血液分離フィルタとしては、例えば、極細繊維の集積体、連続した気泡を有する発泡体または焼結体、中空糸膜、多孔質膜、多孔性粒子、複数溝および/または孔を有するフィルムなどが挙げられるが、実質的に血液を血球と血漿または血清に分離できるものであれば、上記の例示に限定されるものではではない。また、血球成分をフィルタの内部で捕捉することで血液を分離してもよいし、血球成分と血漿または血清成分の移動速度差によって血液を分離してもよい。
【0070】
血液分離フィルタを構成する材料としては、特に限定されず、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ウレタン、アクリル、レーヨン、ガラス等が挙げられる。
【0071】
血液分離フィルタは、血液中の成分を吸着する性質を有していてもよい。この場合には、血液分離フィルタに表面処理が施されていてもよい。表面処理剤としては、特に限定されないが、ポリエーテル系、シリコーン系等の潤滑剤、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドン等の親水性高分子類、さらには天然の親水性高分子類、高分子界面活性剤等が挙げられる。また、血液分離フィルタの表面は、酸化剤による化学処理、プラズマ処理などにより親水化処理が施されていてもよい。
【0072】
血液分離フィルタが極細繊維の集積体からなる場合には平均繊維径が0.5〜3.0μmの範囲にある繊維体が集積されて形成されていることが好ましい。平均繊維径が0.5μmより小さいと、血液を分離する際に溶血を起こし易くなる。平均繊維径が3.0μmより大きいと、血球と血漿または血清とを分離するために、血液分離フィルタを高密度に形成する必要があり、また使用する繊維の量も多くなりコストが高くなる。血液の分離効果をより一層高めるためには、平均繊維径は、0.5〜2.5μmの範囲にあることがより好ましい。
【0073】
容器本体内に設置されたときの血液分離フィルタの平均密度は、0.1〜0.5g/cm3の範囲であることが好ましい。平均密度が0.1g/cm3より低い場合には、血液の分離が効果的に行えないことがあり、得られる血漿若しくは血清の量が少なくなることがある。平均密度が、0.5g/cm3より高い場合には、赤血球への負荷が大きくなり、溶血を起こし易くなる。血液をより一層効率的に分離するためには、平均密度は0.15〜0.40g/cm3の範囲にあることが好ましい。
【0074】
血液分離フィルタとしての対称フィルタおよび非対称フィルタは、単独で用いられてもよく、組み合わせて用いられてもよい。
【0075】
血液分離フィルタは、血液中の成分を吸着する性質を有していてもよい。この場合には、血液中の成分の吸着を抑制または制御するために血液分離フィルタに表面処理が施されていてもよい。表面処理剤としては、特に限定されないが、ポリエーテル系、シリコーン系等の潤滑剤、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドン等の親水性高分子類、さらには天然の親水性高分子類、高分子界面活性剤等が挙げられる。また、血液分離フィルタの表面は、酸化剤による化学処理、プラズマ処理などにより親水化処理がされていてもよい。また逆に、疎水シリコーン、フッ素系表面処理剤により撥水処理がされていてもよい。
【0076】
真空検体採取容器1は、第1の内部空間A1において、赤血球凝集剤8,8が容器本体2の内周面に塗布されている。赤血球凝集剤8,8は、第1の内部空間A1に採取された血液に接触することにより、血液中の血球を凝集させる性質を有する。なお、赤血球凝集剤8,8に替えて、または赤血球凝集剤8,8とともに、血液凝固促進剤が容器本体2の第1の内部空間A1の内周面に塗布されていてもよい。
【0077】
上記赤血球凝集剤としては、ポリアミノ酸、ポリアミンスルホン、ポリブレン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンイミン、ポリアクリルアミド、カチオン変性ポリビニルアルコールなどのカチオン系ポリマー、バンコマイシン、カナマイシンなどの低分子化合物、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチなどの多糖類、植物レクチンなどの細胞結合性糖蛋白質などが例示されるが、これらに限定されない。
【0078】
上記血液凝固促進剤としては、吸着性無機物質や、ペプチド鎖において、アルギニン(Arg)と任意のアミノ酸残基との結合及び/又はリジン(Lys)と任意のアミノ酸残基との結合を加水分解し得る加水分解酵素などが例示される。
【0079】
上記吸着性無機物質としては、ガラス、シリカ、カオリン、セライト、ベントナイトなどの水不溶性の無機質微粒子が例示される。
【0080】
上記加水分解酵素としては、トリプシン、トロンビン、蛇毒トロンビン様酵素等のセリンプロテアーゼ;カテプシンB、フィシン等のチオールプロテアーゼ;キニナーゼ等の金属プロテアーゼなどが例示される。
【0081】
真空検体採取容器1は、血液分離フィルタ6により分離された血漿または血清に接触されることにより膨潤する樹脂からなる円板状の流路閉塞部材9を備えている。流路閉塞部材9は、血液分離フィルタ6と第2の内部空間A2との間に配置されている。流路閉塞部材9は、環状棚部2cに載置されている。流路閉塞部材9の第1の開口2a側の表面は、フィルタ支持棚2fと一定間隔を隔てられている。
【0082】
初期状態、すなわち膨潤前には血漿または血清が流れる流路を確保するように、流路閉塞部材9の中央に孔9aが形成されている。孔9aは開口部2dに連ねられている。なお、流路閉塞部材9は、後述する血球停止フィルタと血液分離フィルタ6との間に配置されてもよい。
【0083】
流路閉塞部材が、血球停止フィルタと第2の内部空間A2との間に配置されている場合には、血球停止フィルタと第2の内部空間A2との間の流路が閉塞されるため、第2の内部空間A2に収容されている血漿または血清を取出す際に、第1の開口2aが下方側に、第2の開口2bが上方側となるように真空検体採取容器1を配置しても血球停止フィルタに血漿もしくは血清が至ることがない。よって、血球停止フィルタに捕捉されている赤血球や白血球の血漿または血清への混入をより一層確実に防ぐことができる。
【0084】
流路閉塞部材を構成する材料としては、例えば、分子骨格に親水性の官能基を有し、自重に対し同量以上の水を吸収できる性質を有する樹脂が挙げられる。流路閉塞部材を構成する材料の具体例としては、ポリアクリル酸アルカリ金属塩系樹脂またはその共重合体およびそれらの架橋体、ポリアクリルアミド系樹脂またはその共重合体およびそれらの架橋体、ポリN−ビニルアセトアミド系樹脂またはその共重合体およびそれらの架橋体、シリコン系樹脂またはその共重合体およびそれらの架橋体、ポリビニルエーテル系樹脂およびその共重合体およびそれら架橋体、ポリアルキレンオキサイド系樹脂またはその共重合体およびそれらの架橋体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはその共重合体およびそれらの架橋体等が挙げられる。
【0085】
流路閉塞部材としては、粉末状、粒状としたものを用いてもよく、フィルムやシート状に成形したものを用いてもよく、ペースト状、スラリー状または溶液等にして添加し乾燥させるなどしてもよい。
【0086】
流路閉塞部材は、血漿または血清に接触されることでそれ自身が膨潤し、流路を閉塞させる。そのため、流路閉塞部材の必要量は、閉塞させる流路体積、流路閉塞部材の膨潤率及び膨潤速度によって異なる。よって、閉塞させる流路体積、流路閉塞部材の膨潤率及び膨潤速度から、流路閉塞部材の最適な量が計算される。
【0087】
閉塞させる流路体積は、血液中の水分が吸収されかつ検体の回収量が低下しない範囲で設定される。流路体積が大きくなると、閉塞させるための流路閉塞部材の量も多くなるため、検体の回収量が低下するおそれがある。
【0088】
従って、閉塞させる流路体積は、0.005〜1.0cm3の範囲にあることが好ましい。また、流路閉塞部材の体積は閉塞させる流路体積に対し、5〜95%の範囲にあることが好ましい。流路閉塞部材の体積が閉塞させる流路体積に対し5%より小さいと、流路を閉塞するまでの時間が長くなるため、溶血により赤血球から漏洩してきた成分が、分離した血漿または血清に混入するおそれがある。流路閉塞部材の体積が閉塞させる流路体積に対し95%より大きいと、血漿または血清がすべて回収される前に流路が閉塞されてしまうことがあり、血漿または血清の回収効率が低下するおそれがある。
【0089】
真空検体採取容器1は、血液分離フィルタ6により分離された血球の通過を防止する多数の孔10aが形成された円板状の血球停止フィルタ10を備えている。血球停止フィルタ10は、血液分離フィルタ6と流路閉塞部材9との間に配置されている。血球停止フィルタ10は、容器本体2のフィルタ支持棚2fに載置されている。血球停止フィルタ10の第1の開口2a側の表面が血液分離フィルタ6と当接されている。
【0090】
血球停止フィルタは、血球は通過しないが、血漿または血清は通過し得るように多数の孔が形成された膜からなる。もっとも血球停止フィルタは膜以外のフィルタ部材であってもよい。
【0091】
血球停止フィルタは赤血球の通過を防止できる性質を有していればよく、その材質は特に限定されない。このような性質を有する材質としては、例えば、ポリビニリデンジフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラスファイバー、ボロシリケート、塩化ビニルまたは銀等を挙げることができる。
【0092】
血球停止フィルタが多孔質物質を用いて構成されている場合には、血漿または血清の通過が可能である。血球停止フィルタを構成する多孔質物質としては、赤血球の通過を防止できる範囲の孔径を有するものであれば、特に限定されるものではない。赤血球の通過を防止するためには、孔径は1μm以下であることが好ましい。孔径が小さいと、血液中のタンパク成分などにより目詰まりを起こす可能性があるため、孔径は0.01μm以上であることが好ましい。赤血球の通過をより効果的に防止するためには、孔径は0.05μm以上、1μm以下の範囲にあることがより好ましい。
【0093】
濾過の流速を高めるために、血球停止フィルタの表面は親水処理されていてもよい。親水処理の方法としては、プラズマ処理、親水性高分子によるコーティング等が挙げられるが、これらの方法に限定されず、他の方法を用いてもよい。
【0094】
図2〜図4を用いて、上述した真空検体採取容器1の使用方法を以下説明する。
【0095】
図2〜図4には、血液を血球と血漿または血清とに分離し、さらに分離された血漿または血清を取出すまでの過程が段階的に示されている。
【0096】
図2に、真空検体採取容器1に血液を採取した直後の状態、図3に、真空検体採取容器1に採取された血液が分離されている途中段階の状態、図4に、分離された血漿または血清を真空検体採取容器1から取出す際の状態をそれぞれ正面断面図で示す。図2,3では、真空検体採取容器1が図1(b)に示す状態と上下が逆にされた状態で示されている。
【0097】
図2,3に示すように、血液を採取、分離する際には、第1の開口2aが上方側、第2の開口2bが下方側となるように真空検体採取容器1を配置する。
【0098】
図2に示すように、血液を第1の内部空間A1に流入させるために、第1の栓体2aに採血針11を刺通させる。採血針11から血液が第1の内部空間A1に流入されると、容器本体2の内周面に塗布されている赤血球凝集剤8,8が血液中に拡散する。血液を流入した後に、採血針を抜去する。
【0099】
なお、血液の採取に際しては、ホルダーを用いて真空採血を行ってもよいし、一旦シリンジに血液を採取した後にシリンジを第1の栓体3に刺通させてもよい。血液を採取した後には、採血針は好ましくは上記のように抜去されるが、第1の栓体3に刺通されたままでもよい。
【0100】
図3に示すように、第1の内部空間A1に流入された血液と赤血球凝集剤8,8とが接触することにより、血液中の赤血球が凝集する。そして、凝集した赤血球Xが血液中に拡散した状態となる。真空検体採取容器1では、血液分離フィルタ6に血液が流入するときに、赤血球が凝集しているため、血液分離フィルタ6の目詰まりが生じず、血液中の血漿または血清が血液分離フィルタ6内を速やかに通過する。すなわち、凝集した赤血球Xは、血液分離フィルタ6内に流入しないため、血液分離フィルタ6に流入される血球が少なくされており、かつ血液分離フィルタ6の第1の開口2a側の表面6aにおいて、血球による目詰まりの発生が抑制されている。
【0101】
血液分離フィルタ6では、凝集されずに血液分離フィルタ6に流入した血球と、血漿または血清とが血液分離フィルタ6内を通過する際に、血球よりも血漿または血清が早く移動する。
【0102】
相対的に速く移動した血漿または血清は、血球停止フィルタ10に先に達し、血球停止フィルタ10の孔10aを通過する。そして、血漿または血清は、流路閉塞部材9の孔9aを通過し、容器本体2の開口部2dの中空流路から流下して第2の内部空間A2に収容される。
【0103】
血漿または血清よりも低速で移動した血球は、血球停止フィルタ10に達しても、血球停止フィルタ10を通過しない。従って、第2の内部空間A2に収容された血漿または血清に血球は混入しない。
【0104】
図4に示すように、流路閉塞部材9は、血漿または血清に接触されることにより次第に膨潤し、収容されるべき血漿または血清が通過した後に流路を閉塞する。より具体的には、血液分離フィルタ6において相対的に早く移動した血漿または血清が、流路閉塞部材9が配置されている流路部分を通過した後、流路閉塞部材9が膨潤する。すなわち、流路閉塞部材9の孔9aが塞がり、流路閉塞部材9が流路を閉塞させる。
【0105】
図4に示すように、第2の内部空間A2に収容された血漿または血清を取出す際には、第1の開口2aが下方側、第2の開口2bが上方側となるように真空検体採取容器1を好ましくは上下反転させる。本発明では、開口部2dが流路閉塞部材8により閉塞されているため、真空検体採取容器1を上下反転させることができ、第2の内部空間A2に収容されている血漿または血清が、血液分離フィルタ6および血球停止フィルタ10に至ることがない。すなわち、分離された血漿または血清が血球または赤血球内成分と接触し、血漿または血清が汚染されることが防がれている。
【0106】
分離された血漿または血清を取出す際には、第2の開口2bに圧入されている第2の栓体4を抜去する。しかる後、第2の開口2bから、スポイト等を用いて血漿または血清を別の容器に移し替えて、臨床検査に用いることができる。或いは、検査機器のノズルから、血漿または血清を直接取出すこともできる。
【0107】
第1の発明では、容器本体2の内周面にテーパー2eが付けられており、血漿または血清の液面が第2の開口2bに近づけられているため、血漿または血清をより一層容易に取出すことが可能である。
【0108】
第1の発明の第2の実施形態に係る真空検体採取容器を、図5に正面断面図で示す。
【0109】
図5に示す真空検体採取容器21は、赤血球凝集剤に替えて、血液凝固促進剤が用いられていること、および流路閉塞部材が配置されていないことを除いては、上述した真空検体採取容器1と同様に構成されている。以下の真空検体採取容器21の説明では、真空検体採取容器1と同様に構成されているところは、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0110】
真空検体採取容器21は、第1の内部空間A1において、血液凝固促進剤22,22が容器本体2の内周面に塗布されている。血液凝固促進剤22,22は、第1の内部空間A1に採取された血液に接触することにより、血液中の血球を凝集させる性質を有する。なお、真空検体採取容器21では、真空検体採取容器1の環状棚部2cに配置されている流路閉塞部材9は配置されていない。
【0111】
真空検体採取容器21では、血液分離フィルタ6に血液が流入するときに、赤血球が血液凝固促進剤22,22により凝集した状態であるため、血液分離フィルタ6の目詰まりが生じず、血液中の血漿または血清が血液分離フィルタ6内を速やかに通過する。血液が分離されて血漿または血清が第2の内部空間A2に収容された後には、第2の開口2bから第2の栓体4を取外して、若しくは第2の栓体4の外表面を覆っているカバー5を取り外した後にシリンジを刺通させるなどして、血漿または血清を取出すことができる。
【0112】
第1の発明の第3の実施形態に係る真空検体採取容器を、図6に正面断面図で示す。
【0113】
図6に示す真空検体採取容器31は、血液分離フィルタの厚みが異なること、血球停止フィルタが配置されていないこと、および流路閉塞部材が配置されていないことを除いては、上述した真空検体採取容器1と同様に構成されている。以下の真空検体採取容器31の説明では、真空検体採取容器1と同様に構成されているところは、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0114】
真空検体採取容器31は、第1の開口2a側に血液を血球と血漿または血清とに分離するための血液分離フィルタ32を備えている。血液分離フィルタ32は、円板状の形状を有し、上述した血液分離フィルタ6よりも厚みが厚くされている。血液分離フィルタ32は、容器本体2のフィルタ支持棚2fに載置されており、フィルタ支持棚2fと環状突部2gとの間に挟持されている。なお、真空検体採取容器31では、真空検体採取容器1の棚部2cに配置されている流路閉塞部材9は配置されていない。
【0115】
本実施形態のように、血球停止フィルタが配置されずに、血液分離フィルタのみが配置されていてもよい。
【0116】
図7(a),(b)に、第2の発明の第1の実施形態に係る血液分離装置を、斜視図および正面断面図で示す。
【0117】
図7(a),(b)に示すように、血液分離装置51は、血液分離器具52と血液採取容器71とを備えている。図7(a),(b)では、血液分離器具52と血液採取容器71とが連結されているが、血液分離器具52と血液採取容器71とが連結されずに別々に用意されてもよい。すなわち、別々に用意された血液分離器具52と血液採取容器71とが使用に際して連結されてもよい。
【0118】
血液分離器具52は、円筒状の容器本体53を有する。容器本体53は、円筒状に限られず、例えば角筒状などの形状を有していてもよい。容器本体53の形状は、血液採取容器71、および後述する検体収納容器の形状に対応させて適宜変更され得る。
【0119】
容器本体53の材質としては、特に限定されず、射出成形が可能な合成樹脂等からなる。容器本体53の材質としては、例えば、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、またはアクリル等からなる樹脂が挙げられる。
【0120】
図7(b)に示すように、容器本体53は、一端側である上方に向かって延びる第1の中空針54と、一端側とは反対側の他端側である下方に向かって延びる第2の中空針55とを有する。第1の中空針54と第2の中空針55との間に、容器本体53は内部流路53Aを有する。
【0121】
容器本体53は、第1の中空針54の針先54aから内部流路53Aに向かって、内部流路53Aに血液が流入される第1の流路56を有する。容器本体53は、内部流路53Aから第2の中空針55の針先55aに向かって、内部流路53Aから血液が流出される第2の流路57を有する。さらに、容器本体53は、外部空間から第1の中空針54の針先54aに向かって、大気が流通可能な状態となり得る第3の流路58を有する。容器本体2は内部流路53Aの中央において、後述する血液分離フィルタまたは血球停止フィルタを載置するためのフィルタ支持棚53aを有する。フィルタ支持棚53aには、血漿または血清が通過し得るように複数の孔が設けられている。
【0122】
第3の流路58は、第1の中空針54の針先54aから下方に延ばされており、かつ内部流路53Aに至る手前で側方に延ばされて、容器本体53の側面53bの開口53cに至っている。よって、第3の流路58により、針先54aと容器本体53の外部空間とが接続されている。
【0123】
容器本体53の開口53cには、弁部材59が挿入されている。すなわち、弁部材59を挟んだ外部空間側と第1の中空針54の針先54a側との圧力差により、外部空間から第1の中空針54の針先54aに向かって、大気が流通可能な状態となり得るように弁部材59が配置されている。弁部材59は、例えばゴム弾性を有する材料等で構成されており、柔軟性を有する。
【0124】
図8(a)に、弁部材59を拡大して正面図で示し、図8(b)に、弁部材59を拡大して正面断面図で示す。
【0125】
図8(a),(b)に示すように、弁部材59は略円筒状の形状を有し、一端側に肉厚部59aを有する。肉厚部59aの外周径は、第3の流路58に圧入し得る程度の大きさとされており、開口53cの内周径とほぼ等しいか、若しくはわずかに大きくされている。そして、肉厚部59aから本体部59bが連ねられており、本体部59bの径が肉厚部59aの径よりも相対的に小さくされている。本体部59bには、切り込み59cが形成されている。切り込み59cは、例えばゴム弾性を有する材料からなる弁部材59を、カッター等を用いて切断するだけで容易に形成することができる。
【0126】
本実施形態では、切り込み59cは、弁部材59の長さ方向と直交する方向に延びるように形成されており、圧力差の有無によって切り込み59cが開閉するように弁部材59が構成されている。また、切り込み59cが開口することで、外部空間から第1の中空針54の針先54aに向かって、大気が流通可能な状態となり得るように弁部材59が構成されている。
【0127】
弁部材59は、常温でゴム弾性を有する材料により構成されていれば特に限定されない。弁部材59を構成する材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ウレタン、熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
【0128】
図7(b)に戻り、弁部材59は、肉厚部59a側が側面53b側に位置するように挿入されている。弁部材59は、肉厚部59aとは反対側、すなわち本体部59bの閉じられている部分から開口53cに挿入され、圧入されている。肉厚部59aの外周面が第3の流路58の内周面に液密的に密着されている。
【0129】
他方、切り込み59cは、弁部材59の第3の流路58に固定されている部分、すなわち上記肉厚部59aよりも第1の中空針の針先54a側に位置している。また、第3の流路58は開口53cから内側に向かって延ばされているが、この内側に向かって延ばされている第3の流路58部分において、切り込み59cは、第3の流路58の形成されている方向と直交する方向に延びている。
【0130】
容器本体53の内部流路53Aには、フィルタ支持棚53aよりも第1の中空針54側において、円板状の形状を有する血液分離フィルタ60が配置されている。血液分離フィルタ60の上面は、容器本体2の内面と一定間隔を隔てられている。
【0131】
血液分離器具52は、血液分離フィルタ60の下流に、血液分離フィルタ60により分離された血球の通過を防止する多数の孔62aが形成された円板状の血球停止フィルタ62を有している。より具体的には、血球停止フィルタ62は、容器本体53のフィルタ支持棚52aに載置されており、血球停止フィルタ62の上面が、血液分離フィルタ60の下面と当接されている。血球停止フィルタ62は、その大きさが異なることを除いては上述した血球停止フィルタ10と同様に構成されている。
【0132】
血液分離器具52は、血液分離フィルタ60の下流に、血液分離フィルタ60により分離された血漿または血清に接触されることにより膨潤する樹脂からなる円板状の流路閉塞部材63を有している。流路閉塞部材63は、内部流路53Aにおいて、血球停止フィルタ62よりも下流に配置されている。流路閉塞部材63の上面は、フィルタ支持棚52aと一定間隔を隔てられている。流路閉塞部材63は、その大きさが異なることを除いては上述した流路閉塞部材9と同様に構成されている。
【0133】
初期状態、すなわち膨潤前には血漿または血清が流れる流路を確保するように、流路閉塞部材63の中央に孔63aが形成されている。孔63aは第2の内部流路57に連ねられている。なお、流路閉塞部材63は、後述する血球停止フィルタ62と血液分離フィルタ60との間に配置されてもよい。
【0134】
血液分離器具52は、容器本体53の上端面53dから上方に向かって延びる円筒状の第1のホルダー64を有する。第1のホルダー64の上端64a近傍の内周面には、第2の係合部64bが形成されている。さらに、第1のホルダー64の中央近傍の内周面には、第1の係合部64cが形成されている。すなわち、第1のホルダー64は、第1,第2の係合部64b,64cの間に血液採取容器71を把持する把持部64dを有する。
【0135】
血液分離器具52は、容器本体53の下端面53eから下方に向かって延びる円筒状の第2のホルダー65を有する。第2のホルダー65の下端65a近傍の内周面には、第2のホルダー65の内周面から内側に向かって延びる環状の第1の係合部65bが形成されている。
【0136】
本実施形態では、容器本体53と、第1,第2のホルダー64,65とが一体的に構成されているが、異なる部材を用いて構成されてもよい。第1,第2の係合部の形状は特に限定されず、上述した環状の形状ほか、例えばドット状などの形状であってもよい。第1,第2のホルダー64,65は、特に限定されないが、例えば上述した容器本体53と同様の材料により構成される。
【0137】
血液分離器具52は、第2のホルダー65も上述した第1のホルダー65と同様に構成されていてもよい。すなわち、後述する検体収納容器の栓体が第2の中空針55に刺通される手前の位置、および栓体が第2の中空針55に刺通された際に、検体収納容器が血液分離器具52に把持され得るように、第2のホルダーが構成されていてもよい。
【0138】
血液分離器具が、容器本体から容器本体の一端側に向かって延びる筒状の第1のホルダーを有し、第1の中空針に血液採取容器の栓体が刺通された際に栓体が係合されるように、第1のホルダーの内周面から突出した第1の係合部を第1のホルダーが有する場合には、血液採取容器の栓体を第1の中空針に容易に刺通させることができる。さらに、血液の分離の際には、血液分離器具に血液採取容器が把持されるため、血液の分離を安全に行うことができる。
【0139】
第1の中空針に血液採取容器の栓体が刺通される手前の位置で栓体が係合されるように、第1のホルダーの内周面から突出した第2の係合部を第1のホルダーが有する場合には、血液の分離の前に血液分離器具に血液採取容器を予め把持させることができ、さらに第1の中空針に血液採取容器の栓体をより一層容易に刺通させることができる。
【0140】
血液分離器具が、容器本体から容器本体の他端側に向かって延びる筒状の第2のホルダーを有し、第2の中空針に検体収納容器の栓体が刺通された際に栓体が係合されるように、第2のホルダーの内周面から突出した第1の係合部を第2のホルダーが有する場合には、検体収納容器の栓体を第2の中空針に容易に刺通させることができる。さらに、血液の分離の際には、血液分離器具に検体収納容器が把持されるため、血液の分離を安全に行うことができる。
【0141】
第2の中空針に検体収納容器の栓体が刺通される手前の位置で栓体が係合されるように、第2のホルダーの内周面から突出した第2の係合部を第2のホルダーが有する場合には、血液の分離の前に血液分離器具に検体収納容器を予め把持させることができ、さらに第2の中空針に検体収納容器の栓体をより一層容易に刺通させることができる。
【0142】
血液採取容器71は、例えばガラス等からなる管状容器72を有する。管状容器72は、一端側に第1の開口72aを有し、他端に第2の開口72bを有する。第1,第2の開口72a,72bには、内部を気密封止するように栓体73が圧入されている。栓体73は、大径部73aと、大径部73aよりも径が小さな小径部73bとを有する。採血針またはシリンジによる刺通を容易とするために、栓体73の外側および内側の表面の中央には、凹部73c,73dがそれぞれ設けられている。
【0143】
栓体73は、気密性を有し、かつ第1,第2の中空針54,55により刺通可能な材料により構成されていれば特に限定されない。栓体73は、例えばゴム弾性材料により構成される。このようなゴム弾性材料としては、天然ゴム、ブチルゴム、熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0144】
2つの栓体73の小径部73bが、それぞれ第1,第2の開口72a,72bに圧入されており、2つの栓体73により第1,第2の開口72a,72bが気密封止されている。使用前は、血液採取容器71内は減圧されている。なお、例えば栓体73を一旦取外して血液採取容器71内に血液を採取する場合には、血液採取容器71内は減圧されていなくてもよい。また、血液採取容器の管状容器は両端が開口されていなくてもよく、一端のみが開口されて該開口に栓体が圧入されていてもよい。
【0145】
血液採取容器71は、容器内に採取された血液に接触することにより、血液中の血球を凝集させる赤血球凝集剤74,74を内部に有している。血液採取容器71の管状容器72の内周面に、赤血球凝集剤74,74が塗布されている。赤血球凝集剤74,74に替えて、または赤血球凝集剤74,74とともに、血液凝固促進剤が管状容器72の内周面に塗布されていてもよい。
【0146】
図9〜図11を用いて、上述した血液分離装置51の使用方法を説明する。
【0147】
図9に、血液採取容器71に血液が採取され、血液採取容器71から血液分離器具52の容器本体53内に血液が流入される前の状態を正面断面図で示す。図10に、血液分離器具52の容器本体53内に流入された血液が分離される途中段階の状態を正面断面図で示す。図11に、分離された血漿または血清を取り出すときの状態を正面断面図で示す。
【0148】
図9に示すように、血液の分離の際には、先ず上述した血液採取容器71に血液を採取する。採血方法としては、特に限定されないが、例えば採血針などを用いて、採血針の一端を血管に刺通し、他端を第2の開口72b側の栓体73に刺通することで、血液採取容器71内に血液を流入させる。採血針11から血液が血液採取容器71内に流入されると、管状容器72内の内周面に塗布されている赤血球凝集剤74,74が血液中に拡散する。血液を流入した後に、採血針を抜去する。
【0149】
図9に示すように、血液採取容器71に血液が採取された後、第1のホルダー64の上端64aより血液採取容器71を第1の開口72aに取付けられた栓体73側から挿入する。すなわち、第1の中空針54の針先54aが、血液採取容器71の栓体73に刺通される。第1の中空針54の針先54aが栓体73に刺通されて血液採取容器53の内部に至ると、栓体73の外表面が上端面53dに当接される。このとき、栓体73の大径部73aと小径部73bとの段差面が第1の係合部64cにより係合され、血液採取容器71が血液分離器具52に把持される。
【0150】
次に、図10に示すように、分離された血漿または血清が収納される検体収納容器75を用意する。
【0151】
検体収納容器75は、例えばガラス等からなる有底の管状容器76を有する。管状容器76は一端側に開口76aを有する。管状容器76の一端側とは反対側の他端は、有底とされている。開口76aには、内部を気密封止するように、上述した栓体73が圧入されている。なお、検体収納容器75内は減圧されている。検体収納容器75内が減圧されているのは、後述するように、血液を真空吸引し、かつ濾過するためである。なお、検体収納容器は、上述した血液採取容器71と同様に両端が開口されて、該開口に栓体が圧入されて構成されていてもよい。
【0152】
検体収納容器内の減圧度は、特に限定されないが、2〜90kPaの範囲が好ましく、20〜60kPaの範囲がより好ましい。減圧度が低すぎると、血液の分離を速やかに行うことができないことがあり、減圧度が高すぎると、赤血球に圧力が加わり、溶血を引き起こすおそれがある。
【0153】
図10に示すように、第2のホルダー65の下端65aより検体収納容器75を栓体73側から挿入する。すなわち、第2の中空針55の針先55aが、検体収納容器75の栓体73に刺通される。針先55aが栓体73に刺通されて検体収納容器75の内部に至ると、栓体73の外表面が下端面53eに当接される。このとき、栓体73の大径部73aと小径部73bとの段差面が第1の係合部65bにより係合され、検体収納容器75が血液分離器具52に把持される。
【0154】
本実施形態では、血液採取容器71内に採取された血液と赤血球凝集剤74,74とが接触することにより、血液中の赤血球が凝集している。そして、凝集した赤血球Xが血液中に拡散した状態となる。血液分離装置51では、血液分離フィルタ60に血液が流入するときに、赤血球が凝集しているため、血液分離フィルタ60の目詰まりが生じず、血液中の血漿または血清が血液分離フィルタ60内を速やかに通過する。すなわち、凝集された赤血球Xは血液分離フィルタ60内に流入しないため、血液分離フィルタ60に流入される血球が少なくされており、かつ、血液分離フィルタ60の血液が流入される表面において、血球による目詰まりの発生が抑制されている。
【0155】
血液分離フィルタ60では、凝集されずに血液分離フィルタに流入した血球と、血漿または血清とが血液分離フィルタ60内を通過する際に、血球よりも血漿または血清が早く移動する。
【0156】
本実施形態では、血液採取容器71内の圧力をP1、検体収納容器75内の圧力をP2、外部空間の圧力、すなわち大気圧をP3としたときに、分離開始時の圧力の関係がP3>P1>P2もしくはP3≒P1>P2とされている。よって、第1の中空針54の針先54aが栓体73に刺通されると、内部が減圧されている検体収納容器75により血液が真空吸引される。血液採取容器71内の血液は、第1の流路56を通過し、血液分離フィルタ60に達する。血液分離フィルタ60では、血液が通過するときに血球よりも血漿または血清が相対的に早く移動する。相対的に早く移動した血漿または血清は第2の流路57を通過し、検体収納容器75に流出される。
【0157】
上述した圧力の関係がP3>P1>P2である場合には、弁部材59を挟んだ外部空間側と第1の中空針54の針先54a側との圧力差により、弁部材59の切り込み59cが開口し、第3の流路58を通じて大気が血液採取容器53内に流れ込む。この結果、圧力の関係がP3≒P1>P2となる。
【0158】
図8(c)に正面断面図で示すように、圧力の関係がP3>P1であるときに、弁部材を挟んだ外部空間側と第1の中空針54の針先54a側との圧力差により、弁部材59の切り込み59cが開口する。切り込み59cが開口すると、第3の流路58を通過して大気が血液採取容器71内に流入する。なお、血液採取容器71内と外部空間との圧力差がほぼ等しくなると、ゴム弾性を有する弁部材59の切り込み59cがゴム弾性によって閉口し、図8(b)に示す状態に戻る。すなわち、弁部材59は、血液採取容器71内の圧力P1と大気圧P3との圧力差が小さくなると、切り込み59cがゴム弾性によって閉口し得るように構成されている。よって、血液採取容器71内と外部空間との圧力差がほぼ等しくなり、第1の中空針54の針先54aから第3の流路58に血液が流れ込んだ場合でも、弁部材59の切り込み59cから外部空間に血液が流出することがない。
【0159】
なお、血液採取容器71内の圧力P1と大気圧P3との関係P1>P3である場合には、弁部材59の気密性は保たれる。すなわち、圧力の関係がP1>P3である場合には、弁部材59の切り込み59cは開口せず、第1の中空針の針先から外部空間に向かって、大気は流通しない。
【0160】
他方、上述した圧力の関係がP3≒P1>P2である場合には、第1,第2の流路56,57を血液が通過し第2の中空針55の針先55aから血液が流出される。しかしながら、血液が分離されるに従って、血液採取容器71内の空容積が大きくなる。空容積が大きくなると血液採取容器71内の圧力が低下し、圧力の関係がP3>P1>P2となる。この場合にも、第3の流路58を通じて大気が血液採取容器71内に流れ込み、圧力の関係がP3≒P1>P2となる。
【0161】
上記のように、本実施形態では、血液採取容器71内の空容積が大きくなり、血液採取容器71内の圧力が低下することが防がれている。すなわち、血液が分離されている間に、血液採取容器71内の圧力P1と、検体収納容器75の圧力P2とがほぼ等しくなり、血液の分離速度が低下したり、血液の分離が停止することが防がれている。よって、血液分離装置51では、血液を血球と血漿または血清とに簡便に、かつ短時間で分離することができる。
【0162】
図11に示すように、血液の分離が終了した後、検体収納容器75から血液分離器具52を取り外す。このとき、栓体73の大径部73aと小径部73bの段差面が第2のホルダー65の第1の係合部65bにより係合されているため、栓体73ごと血液分離器具52を容易に取り外すことができる。
【0163】
分離された血漿または血清は、検体収納容器75の管状容器76の開口76aからスポイトを用いて、若しくは検体収納容器75を傾けて血漿または血清を容易に取り出すことができる。
【0164】
図12に、第2の発明の第2の実施形態に係る血液分離装置を正面断面図で示す。
【0165】
図12に示す血液分離装置81は、赤血球凝集剤に替えて、血液凝固促進剤が用いられていること、流路閉塞部材が配置されていないこと、および弁部材に替えて連続発泡体が用いられていることを除いては、上述した血液分離装置51と同様に構成されている。以下の血液分離装置81の説明では、血液分離装置51と同様に構成されているところは、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0166】
血液分離装置81は、血液分離器具82と血液採取容器83とを有する。
【0167】
第1の実施形態の血液分離器具52では、第3の流路58に弁部材59が挿入されていたが、図12に示す血液分離器具82では、弁部材59に替えて、連続発泡体84が挿入されている。
【0168】
連続発泡体84の外周径は、第3の流路58に圧入し得る程度の大きさとされており、開口53cの内径とほぼ等しいか、若しくはわずかに大きくされている。連続発泡体84は、開口53cに挿入され、圧入されている。連続発泡体84の外周面が第3の流路58の内周面に液密的に密着されている。連続発泡体84は、液密性および通気性を有する。
【0169】
血液分離器具82では、外部空間から第1の中空針54の針先54aに向かって、大気が第3の流路58を通過し、血液採取容器83内に大気が流通可能とされている。よって、血液分離器具82では、血液採取容器83内の圧力の低下を抑えることができるため、血液を血球と血漿または血清とに簡便に、かつ短時間で分離することができる。
【0170】
連続発泡体は、液密性および通気性を有するように構成されていれば、特に限定されない。連続発泡体を構成する材料としては、ウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン(PE)等を挙げられる。連続発泡体には、不織布などの多孔質体も含まれる。
【0171】
血液収納容器83では、血液凝固促進剤85,85が管状容器72の内周面に塗布されている。血液凝固促進剤85,85は、血液採取容器71内に採取された血液に接触することにより、血液中の血球を凝集させる性質を有する。
【0172】
血液分離装置81では、第1の血液分離フィルタ60に血液が流入するときに、赤血球が血液凝固促進剤85,85により凝集した状態であるため、血液分離フィルタ60の目詰まりが生じず、血液中の血漿または血清が血液分離フィルタ60内を速やかに通過する。血液が分離されて血漿または血清が検体収納容器75に収容された後には、管状容器76開口76aから栓体73を取外して血漿または血清を取出すことができる。
【0173】
なお、血液分離器具82では、血液分離装置51の内部流路53Aに配置されている流路閉塞部材64は配置されていない。
【0174】
図13に、第2の発明の第3の実施形態に係る血液分離装置を正面断面図で示す。
【0175】
図13に示す血液分離装置91は、血液分離フィルタの厚みが異なること、血球停止フィルタが配置されていないこと、および流路閉塞部材が配置されていないことを除いては、上述した血液分離装置51と同様に構成されている。以下の血液分離装置91の説明では、血液分離装置51と同様に構成されているところは、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0176】
血液分離装置91は、血液分離器具92を有する。血液分離装置92は、血液を血球と血漿または血清とに分離するための血液分離フィルタ93を有している。血液分離フィルタ93は、容器本体53のフィルタ支持棚53aに載置されている。なお、血液分離器具92では、血液分離器具52の内部流路53Aに配置されている流路閉塞部材63は配置されていない。
【0177】
本実施形態のように、血球停止フィルタが配置されずに、血液分離フィルタのみが配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】(a)及び(b)は、第1の発明の第1の実施形態に係る真空検体採取容器を示す斜視図および正面断面図。
【図2】第1の発明の第1の実施形態に係る検体採取容器の使用方法を説明するための図であり、真空検体採取容器に血液を採取した直後の状態を示す正面断面図。
【図3】第1の発明の第1の実施形態に係る検体採取容器の使用方法を説明するための図であり、真空検体採取容器に採取された血液が分離されている途中段階の状態を示す正面断面図。
【図4】第1の発明の第1の実施形態に係る検体採取容器の使用方法を説明するための図であり、分離された血漿または血清を真空検体採取容器から取出す際の状態を示す正面断面図。
【図5】第1の発明の第2の実施形態に係る真空検体採取容器を示す正面断面図。
【図6】第1の発明の第3の実施形態に係る真空検体採取容器を示す正面断面図。
【図7】(a)及び(b)は、第2の発明の第1の実施形態に係る血液分離装置を示す斜視図および正面断面図。
【図8】(a),(b)は、第2の発明の第1の実施形態に係る血液分離装置の血液分離器具の弁部材を拡大して示す正面図、および正面断面図。(c)は、弁部材の切り込みが開口した状態を示す正面断面図。
【図9】第2の発明の第1の実施形態に係る血液分離装置の使用方法を説明するための図であり、血液採取容器に血液が採取され、血液採取容器から血液分離器具の容器本体内に血液が流入される前の状態を示す正面断面図。
【図10】第2の発明の第1の実施形態に係る血液分離装置の使用方法を説明するための図であり、血液分離器具の容器本体内に流入された血液が分離される途中段階の状態を示す正面断面図。
【図11】第2の発明の第1の実施形態に係る血液分離装置の使用方法を説明するための図であり、分離された血漿または血清を取り出すときの状態を示す正面断面図。
【図12】第2の発明の第2の実施形態に係る血液分離装置を示す正面断面図。
【図13】第3の発明の第3の実施形態に係る血液分離装置を示す正面断面図。
【図14】従来の検体採取容器の一例を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0179】
1…真空検体採取容器
2…容器本体
2a,2b…第1,第2の開口
2c…環状棚部
2d…開口部
2e…テーパー
2f…フィルタ支持棚
2g…環状突部
3…第1の栓体
3a…大径部
3b…小径部
3c…凹部
4…第2の栓体
4a…大径部
4b…小径部
4c…段差部分
5…カバー
5a…下端
5b…環状突部
5c…先端面
5d…側面
5e…段差
6…血液分離フィルタ
6a…表面
8…赤血球凝集剤
9…流路閉塞部材
9a…孔
10…血球停止フィルタ
10a…孔
11…採血針
21…真空検体採取容器
22…血液凝固促進剤
31…真空検体採取容器
32…血液分離フィルタ
51…血液分離装置
52…血液分離器具
53…容器本体
53a…フィルタ支持棚
53b…側面
53c…開口
53d…上端面
53e…下端面
53A…内部流路
54…第1の中空針
54a…針先
55…第2の中空針
55a…針先
56…第1の流路
57…第2の流路
58…第3の流路
59…弁部材
59a…肉厚部
59b…本体部
59c…切り込み
60…血液分離フィルタ
62…血球停止フィルタ
62a…孔
63…流路閉塞部材
63a…孔
64…第1のホルダー
64a…上端
64b…第2の係合部
64c…第1の係合部
64d…把持部
65…第2のホルダー
65a…下端
65b…第1の係合部
71…血液採取容器
72…管状容器
72a,72b…第1,第2の開口
73…栓体
73a…大径部
73b…小径部
73c,73d…凹部
74…赤血球凝集剤
75…検体収納容器
76…管状容器
76a…開口
81…血液分離装置
82…血液分離器具
83…血液採取容器
84…連続発泡体
85…血液凝固促進剤
91…血液分離装置
92…血液分離器具
93…血液分離フィルタ
A1,A2…第1,第2の内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から血漿または血清を分離し、該血漿または血清中の成分を検査するのに用いられる真空検体採取容器であって、
一端側に第1の開口を有し、他端側に第2の開口を有する筒状の容器本体と、前記第1の開口に気密的に取付けられている第1の栓体と、前記第2の開口に気密的に取付けられている第2の栓体とを備え、
前記容器本体が、前記第1の開口側に配置されており、血液が採取される第1の内部空間と、前記第2の開口側に配置されており、血液から分離された血漿または血清が収容される第2の内部空間とを有し、
前記第1,第2の内部空間の間に配置されており、前記第1の内部空間に採取された血液を血球と血漿または血清とに分離するための血液分離フィルタと、
前記第1の内部空間に配置されており、前記第1の内部空間に採取された血液に接触することにより、血液中の血球を凝集させる赤血球凝集剤および/または血液凝固促進剤とをさらに備えることを特徴とする、真空検体採取容器。
【請求項2】
前記血液分離フィルタと前記第2の内部空間との間に配置されており、前記血液分離フィルタにより分離された血球の通過を防止する血球停止フィルタをさらに備える、請求項1に記載の真空検体採取容器。
【請求項3】
前記血液分離フィルタと前記第2の内部空間との間に配置されており、前記血液分離フィルタにより分離された血漿または血清に接触されることにより膨潤し、流路を閉塞する流路閉塞部材をさらに備える、請求項1または2に記載の真空検体採取容器。
【請求項4】
前記第2の栓体の外表面が、前記第2の栓体が採血針またはシリンジにより刺通されるのを防止するカバーにより覆われている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空検体採取容器。
【請求項5】
前記容器本体の第2の内部空間において、第1の開口側に向って前記容器本体の内周面にテーパーが付けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の真空検体採取容器。
【請求項6】
血液から血漿または血清を分離する血液分離器具と、少なくとも一端側に開口を有し、該開口に栓体が圧入されており、血液が採取される血液採取容器とを備える血液分離装置であって、
前記血液分離器具が、一端側に向かって延びる第1の中空針と、一端側とは反対側の他端側に向かって延びる第2の中空針と、前記第1,第2の中空針間に配置されており、血液が流れる内部流路とを有する筒状の容器本体、および前記容器本体の内部流路に配置されており、血液を血球と血漿または血清とに分離するための血液分離フィルタを有し、
前記血液分離器具の第1の中空針に前記血液採取容器の栓体を刺通させることにより、前記血液分離器具と前記血液採取容器とが連結され得るように構成されており、前記血液分離器具と前記血液採取容器とが連結されることによって、前記血液採取容器内に採取された血液が、前記血液分離器具の容器本体の内部流路に導かれるように構成されており、
前記血液分離器具の容器本体が、第1の中空針の針先から内部流路に向かって、内部流路に血液が流入される第1の流路と、内部流路から第2の中空針の針先に向かって、内部流路から血液が流出される第2の流路と、外部空間から第1の中空針の針先に向かって、大気が流通可能な状態となり得る第3の流路とを有し、
前記血液採取容器が、採取された血液に接触することにより、血液中の血球を凝集させる赤血球凝集剤および/または血液凝固促進剤を内部に有することを特徴とする、血液分離装置。
【請求項7】
前記血液分離器具が、前記容器本体の内部流路において、前記血液分離フィルタの下流に配置されており、前記血液分離フィルタにより分離された血球の通過を防止する血球停止フィルタをさらに備える、請求項6に記載の血液分離装置。
【請求項8】
前記血液分離器具が、前記容器本体の内部流路において、前記血液分離フィルタの下流に配置されており、前記血液分離フィルタにより分離された血漿または血清に接触されることにより膨潤し、流路を閉塞する流路閉塞部材をさらに備える、請求項6または7に記載の血液分離装置。
【請求項9】
前記血液分離器具が、前記容器本体の前記第3の流路に液密的に配置された弁部材を有し、前記弁部材を挟んだ外部空間側と第1の中空針の針先側との圧力差により、外部空間から第1の中空針の針先に向かって、大気が流通可能な状態となり得るように血液分離器具が構成されている、請求項6〜8に記載の血液分離装置。
【請求項10】
前記血液分離器具の弁部材が切り込みを有し、前記圧力差の有無によって前記切り込みが開閉するように構成されており、かつ前記切り込みが開口することで、外部空間から第1の中空針の針先に向かって、大気が流通可能な状態となり得るように血液分離器具が構成されている、請求項9に記載の血液分離装置。
【請求項11】
前記血液分離器具が、前記容器本体の前記第3の流路に液密的に配置された連続発泡体を有し、前記連続発泡体が液密性および通気性を有する、請求項6〜10のいずれかに記載の血液分離装置。
【請求項12】
少なくとも一端側に開口を有し、該開口に栓体が圧入されて内部の減圧が維持されており、分離された血漿または血清が収納される検体収納容器をさらに備える、請求項6〜11に記載の血液分離装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−10468(P2007−10468A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191248(P2005−191248)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】