説明

真空紫外線を用いた吸水性樹脂粒子の表面架橋方法

本発明は、UV照射を用いた吸水性樹脂粒子の表面架橋方法に関する。本方法は、中空のドラム及び照射源を有する、いわゆるドラムリアクター中で行なわれる。ドラムは、長手方向軸および断面を有する。吸水性樹脂粒子は、ドラムに供給され、長手方向軸を中心に回転する、ドラム内で移動しながら照射される。照射源から発せられる照射線がドラム内の吸水性樹脂粒子に到達させうるような、照射源を備える。本発明の方法に使用される照射源は、100〜200nmの波長の紫外線を発生しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線(UV)を用い、ドラムリアクター中で行われる、表面架橋された吸水性樹脂(SAP)粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP)は、本技術分野において周知である。SAPは、おむつ、小児用パンツ、成人失禁用製品、女性用ケア製品などの吸収性物品において、これらの全体的な体積を低減しつつ、これらの製品の吸収倍率を増加させる目的で一般的に用いられている。SAPは、自重の何倍もに相当する量の水性液体を吸収し、保持することが可能である。
【0003】
SAPの工業的な生産は、1978年に日本で始まった。初期の吸水剤は、架橋されたデンプングラフトポリアクリレートであった。SAPの工業的な生産においては、最終的に部分中和ポリアクリル酸が初期の吸水剤に取って代わり、SAPにおける主要な重合体となっている。SAPは小粒子の形態で用いられることが多い。部分中和ポリアクリル酸は通常、部分的に中和され、わずかに架橋された重合体ネットワークを有し、当該重合体ネットワークは親水性で、水または生理食塩水などの水溶液に一旦浸されると膨潤することができる。重合体鎖間の架橋によって、SAPは水に溶解しない。
【0004】
水溶液を吸収した後、膨潤したSAP粒子は非常に軟化し、容易に変形する。変形すると、SAP粒子間の空間が遮断され、これにより液体に対する流れ抵抗が急激に増大する。これは一般的に「ゲルブロッキング」と称される。ゲルブロッキングの状況下では、液体は、SAP粒子間の間隙中の流れよりもずっと遅い拡散のみによって、膨潤したSAP粒子間を移動することになってしまう。
【0005】
ゲルブロッキングを低減させるために一般的に用いられている方法の1つは、粒子をより硬くするというものであり、これにより膨潤したSAP粒子が原形を保持して、粒子間に空間を作り出し、または当該空間を維持することが可能となる。硬さを増大させる周知の手法は、SAP粒子の表面上に露出しているカルボキシル基を架橋するというものである。この手法は一般的に、表面架橋と称される。
【0006】
この技術は、例えば、表面架橋され界面活性剤で被覆された吸水性樹脂粒子およびその調製方法に関する。表面架橋剤は、SAP粒子の表面上のカルボキシル基と反応する少なくとも2つのヒドロキシル基を有するポリヒドロキシル化合物でありうる。ある技術においては、表面架橋は150℃以上の温度で行われる。
【0007】
表面架橋剤としての水溶性過酸化物ラジカル開始剤もまた、公知である。当該表面架橋剤を含有する水溶液は、重合体の表面上に添加される。過酸化物ラジカル開始剤は分解するが、重合体は分解しないような温度に加熱することによって、表面架橋反応が達成される。
【0008】
最近になって、オキセタン化合物および/またはイミダゾリジノン化合物を表面架橋剤として用いることが開示されている。表面架橋反応は加熱下で行われ、この際の温度は好ましくは60〜250℃である。あるいは、表面架橋反応は、光照射処理(好ましくは紫外線を用いる)によってもまた、達成される。
【0009】
一般的に、表面架橋剤はSAP粒子の表面上に添加される。従って、反応は好ましくはSAP粒子の表面上で進行し、これにより粒子のコアに実質的に影響を及ぼすことなく、粒子の表面上での改善された架橋が得られる。それゆえに、SAP粒子はより硬くなり、ゲルブロッキングが低減される。
【0010】
上述した工業的な表面架橋プロセスの欠点は、比較的長時間、一般的には少なくとも約30分間を要するということである。しかしながら、表面架橋プロセスに時間がより必要とされると、より多くの表面架橋剤がSAP粒子中に浸透し、その結果、粒子内部の架橋が増加し、SAP粒子の性能に悪影響を及ぼしてしまう。従って、表面架橋の工程所要時間は短いことが好ましい。さらに、短い工程所要時間は、全体として経済的なSAP粒子製造プロセスという観点からも好ましい。
【0011】
一般的な表面架橋プロセスの他の欠点は、多くは約150℃以上という比較的高温下においてのみ、表面架橋が起こるということである。かような温度では、表面架橋剤が重合体のカルボキシル基と反応するのみならず、重合体鎖の内部または重合体鎖間の近接するカルボキシル基の無水物の生成や、SAP粒子中に含まれるアクリル酸ダイマーのダイマー開裂といった他の反応もまた、活性化される。これらの副反応はコアにも影響し、SAP粒子の性能を低下させる。加えて、高温にさらすことでSAP粒子の着色が引き起こされうる。従って、これらの副反応は一般的には好ましくない。
【0012】
本技術分野において公知のSAPは、一般的には、例えば水酸化ナトリウムを用いて部分的に中和されている。しかしながら、中和は表面架橋の必要性とのバランスに注意しなければならない。本技術分野において公知の表面架橋剤は、重合体鎖に含まれる遊離カルボキシル基と比較的高速で反応するが、中和されたカルボキシル基とは非常にゆっくりと反応するのみである。従って、あるカルボキシル基は、表面架橋と中和の双方ではなくいずれか一方のみに用いられうる。本技術分野において公知の表面架橋剤は、好ましくは、カルボキシル基と反応し、脂肪族基とは反応しない。
【0013】
SAP粒子の製造プロセスにおいては一般的に、表面架橋を行う前に遊離カルボキシル基の中和をまず行う。実際、中和工程は、単量体を重合し架橋してSAPを形成する前に、プロセスの極めて初期に行われることが多い。かようなプロセスは「前中和プロセス」と称される。あるいは、SAPは重合中または重合後に中和されてもよい(「後中和」)。さらに、これらの選択肢の組み合わせもまた可能である。
【0014】
SAP粒子の外表面上の遊離カルボキシル基の全体数は、上述した中和により制限されるが、遊離カルボキシル基は均一に分布しているわけではないとも考えられている。従って、現在のところ、むらなく分布した表面架橋を有するSAP粒子を得ることは困難である。むしろ、多くの場合SAP粒子は、表面架橋がかなり密集した領域、すなわち、表面架橋の数が比較的多い領域と、表面架橋がまばらな領域とを有する。この不均一性は、SAP粒子の好ましい全体的な硬さに悪影響を及ぼす。
【発明の開示】
【0015】
したがって、本発明の目的は、むらなく分布した均一な表面架橋を有するSAP粒子を製造する方法を提供することである。
【0016】
さらに、ゲルブロッキングを回避するための十分な硬さ(時に「ゲル強度」と称される)と、十分な膨潤能(時に「ゲル体積」と称される)との双方を有するSAP粒子を得ることは困難である。一般的に、SAP粒子のゲル強度の増大はゲル体積に悪影響を及ぼし、逆もまた同様である。
【0017】
従って、本発明の他の目的は、表面架橋をSAP粒子のまさに表面のみに限定し、性能の低下を最小化することである。このように、SAP粒子のコアは大きく影響を受けるべきではなく、当該コアへさらに導入される架橋は最小限に保つべきである。
【0018】
さらに、本発明の目的は、SAP粒子の表面架橋方法であって、迅速に行われ、当該方法の効率を増大させうる方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、SAP粒子の表面架橋方法であって、中程度の温度で行われ、無水物の生成やダイマー開裂といった好ましくない副反応を低減させうる方法を提供することである。
【0020】
発明の要約
本発明は、
a)吸水性樹脂粒子を準備する工程と;
b)長手方向軸および断面を有するドラム、並びに、100〜200nmの波長の紫外線を発生し、前記ドラム内の吸水性樹脂粒子に前記紫外線を到達させうる照射源を備えた反応器を準備する工程と;
c)前記吸水性樹脂粒子を前記ドラム内に供給する工程と;
d)前記長手方向軸を中心に前記ドラムを回転させることにより、前記ドラム内の前記吸水性樹脂粒子を動かす工程と;
e)前記吸水性樹脂粒子を前記ドラム内で動かしつつ、前記照射源により前記吸水性樹脂粒子に照射する工程と;および
f)前記吸水性樹脂粒子を前記ドラムから取り出して回収する工程と;
を有する、吸水性樹脂粒子の表面架橋方法に関する。
【0021】
図面の簡単な説明
本明細書は本発明を指摘しかつ明確に主張するものであるが、添付の図面および添付の明細書により理解できると考える。この際、同じ部材には同じ番号が付されている。
【0022】
図1は、本発明に係るドラムリアクターの模式図である。
【0023】
発明の開示
本発明に係るSAPは、好ましくは部分中和α,β−不飽和カルボン酸の単独重合体、または、部分中和α,β−不飽和カルボン酸が、自身と共重合可能な単量体と共重合されてなる共重合体を含む。さらに、SAPに好ましく含まれる前記単独重合体または共重合体は脂肪族基を含み、当該脂肪族基の少なくともいくらかは、少なくとも部分的にはSAP粒子の表面に含まれる。
【0024】
SAPは、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース;ポリビニルアルコールおよびポリビニルエーテルのような非イオン性型;ポリビニルピリジン、ポリビニルモルフォリニオンおよびN,N−ジメチルアミノエチルまたはN,N−ジエチルアミノプロピルアクリレートおよびメタクリレート、並びにこれらの対応する第4級塩のようなカチオン性型といった、置換および非置換の天然および合成の重合体を含む種々の化学形態で入手可能である。一般的に、本発明で有用なSAPは、スルホン酸、より一般的にはカルボキシル基のようなアニオン性の官能基を複数有する。本発明で好適に用いられる重合体の例としては、重合可能な不飽和酸含有単量体から調製される重合体が挙げられる。よって、かような単量体としては、少なくとも1つの炭素−炭素オレフィン性二重結合を含有するオレフィン性不飽和の酸および無水物が挙げられる。より詳細には、これらの単量体は、オレフィン性不飽和のカルボン酸および酸無水物、オレフィン性不飽和のスルホン酸、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0025】
酸以外の単量体もまた、通常は少量であるが、SAPの調製に用いられうる。かような酸以外の単量体としては、例えば、酸含有単量体の水溶性または水分散性のエステルや、カルボン酸基またはスルホン酸基を全く含有しない単量体が挙げられる。よって、任意の酸以外の単量体としては、以下のタイプの官能基を含有する単量体が挙げられる:カルボン酸またはスルホン酸のエステル、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、ニトリル基、第4級アンモニウム塩基、アリール基(例えば、スチレン単量体由来のようなフェニル基)。これらの酸以外の単量体は周知の材料であり、例えば米国特許第4,076,663号および米国特許第4,062,817号により詳細に記載されている。
【0026】
オレフィン性不飽和のカルボン酸およびカルボン酸無水物の単量体としては、アクリル酸それ自体、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノアクリル酸、β−メチルアクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリロキシプロピオン酸、ソルビン酸、α−クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸、p−クロロ桂皮酸、β−ステリルアクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレンおよび無水マレイン酸により代表される(メタ)アクリル酸類が挙げられる。
【0027】
オレフィン性不飽和のスルホン酸単量体としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸およびスチレンスルホン酸のような脂肪族または芳香族のビニルスルホン酸類;スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のようなアクリルおよびメタクリルスルホン酸が挙げられる。
【0028】
本発明によるSAPは、好ましくはカルボキシル基を含有する。これらの重合体には、加水分解されたデンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、部分中和加水分解デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、部分中和デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、ケン化酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、加水分解されたアクリロニトリルまたはアクリルアミド共重合体、これらの共重合体のいずれかがわずかにネットワーク架橋された重合体、および、部分中和ポリアクリル酸、および、部分中和ポリアクリル酸がわずかにネットワーク架橋された重合体、部分中和ポリメタクリル酸、および、部分中和ポリメタクリル酸がわずかにネットワーク架橋された重合体が含まれる。これらの重合体は、単独で、または2以上の異なる重合体の混合物の形態で用いられうる。混合物として用いられる場合、個々の重合体が部分中和されている必要はなく、得られる共重合体が部分中和されていればよい。これらの重合体材料の例は、米国特許第3,661,875号、米国特許第4,076,663号、米国特許第4,093,776号、米国特許第4,666,983号、および米国特許第4,734,478号に開示されている。
【0029】
本発明での使用に最も好ましい重合体は、部分中和ポリアクリル酸がわずかにネットワーク架橋された重合体、部分中和ポリメタクリル酸がわずかにネットワーク架橋された重合体、これらの共重合体、およびこれらのデンプン誘導体である。最も好ましくは、SAPは部分中和され、わずかにネットワーク架橋されたポリアクリル酸(すなわち、ポリ(アクリル酸ナトリウム/アクリル酸))を含む。好ましくは、SAPは、50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは75〜95モル%中和されている。ネットワーク架橋によって重合体は実質的に水不溶性となり、ヒドロゲルを形成する吸水性樹脂の吸収倍率が部分的に決定される。これらの重合体をネットワーク架橋する工程、および一般的なネットワーク架橋剤は、米国特許第4,076,663号により詳細に記載されている。
【0030】
α,β−不飽和カルボン酸単量体を重合するのに適切な方法は、本技術分野において周知の水溶液重合である。α,β−不飽和カルボン酸単量体および重合開始剤を含む水溶液が、重合反応に供される。当該水溶液は、前記α,β−不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な単量体をさらに含んでもよい。少なくともα,β−不飽和カルボン酸は、単量体の重合の前、重合中、または重合後のいずれかにおいて部分中和されている必要がある。
【0031】
水溶液中の単量体は、通常は紫外(UV)線活性化のような活性化のための光開始剤を用いることによる標準的な遊離ラジカル技術により重合される。あるいは、レドックス開始剤が用いられてもよい。しかしながら、この場合、高い温度が必要となる。
【0032】
吸水性樹脂は、水不溶性となるためにわずかに架橋されていることが好ましい。所望の架橋構造は、所望の水溶性単量体、および分子単位中に少なくとも2つの重合可能な二重結合を有する架橋剤の共重合により得られうる。前記架橋剤は、水溶性重合体を架橋するのに有効な量で存在する。架橋剤の好ましい量は、所望の吸収倍率の程度および吸収された液体を保持するための所望の強度、すなわち所望の加圧下吸収性能により決定される。一般的に、架橋剤は、用いられる単量体(α,β−不飽和カルボン酸単量体および可能性のあるコモノマーを含む)100重量部あたり0.0005〜5重量部の量で用いられる。100重量部あたりの架橋剤の量が5重量部を超えると、得られる重合体の架橋密度が高くなりすぎ、吸収倍率が低下し、吸収された液体を保持するための強度が高くなる。架橋剤が100重量部あたり0.005重量部未満の量で用いられると、重合体の架橋密度が低くなりすぎ、吸収されるべき液体と接触した場合にむしろ粘つき水溶性となって、特に加圧下における吸収性能が低下する。当該架橋剤は、一般的には水溶液に溶解する。
【0033】
あるいは、架橋剤を単量体と共重合するために、重合後に重合体鎖を別の工程で架橋することもまた、可能である。
【0034】
重合、架橋および部分中和の後、湿潤状態のSAPを脱水(すなわち、乾燥)して、乾燥SAPを得る。脱水工程は、強制空気オーブン中で約1または2時間、約120℃の温度まで湿潤状態のSAPを加熱することにより、または、約60℃の温度で一晩、湿潤状態のSAPを加熱することにより、行われうる。乾燥後にSAP中に残存する水の量は、主に乾燥時間および乾燥温度に依存する。本発明によれば、「乾燥SAP」とは、残存水の量が、乾燥SAPの重量の0.5〜50重量%、好ましくは0.5〜45重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%、最も好ましくは0.5〜5重量%のSAPを意味する。以下、そうでないと特記しない限り、「SAP粒子」の語は乾燥SAPの粒子を意味する。
【0035】
SAPは、種々の形状の粒子でありうる。「粒子」の語は、顆粒、繊維、フレーク、球、粉末、プレートレット、およびSAPの技術分野の当業者に周知の他の形状および形態を意味する。例えば、当該粒子は、約10〜1000μm、好ましくは約100〜1000μmの粒子径を有する顆粒またはビーズの形態でありうる。他の実施形態において、SAPは、繊維の形状、すなわち細長い針状のSAP粒子でありうる。これらの実施形態において、SAP繊維は約1mm未満、通常は約500μm未満、好ましくは250μm未満50μm以上の最小径(すなわち、繊維の直径)を有する。繊維の長さは、好ましくは約3〜100mmである。本発明での使用にはあまり好ましくないが、繊維は織られうる長いフィラメントの形態であってもよい。
【0036】
しかしながら、本発明の方法はドラムリアクター中で行われるため、SAP粒子はリアクタードラムの内表面に沿ってドラムリアクター中を流れうるための十分な流動性を有しているべきである。この流動性は、SAP粒子が、例えばSAP粒子の表面への均一なUV照射をかなり阻害する、例えば物理的な絡み合いの効果による、互いの凝集体の形成をしないようなものでなければならない。
【0037】
本発明のSAP粒子は、コアおよび表面を有する。本発明によれば、乾燥SAP粒子は表面架橋工程に供される、すなわち、本発明の方法によって、乾燥SAP粒子はその表面が架橋されるが、当該粒子のコアにおける架橋数は実質的に増加しない。
【0038】
「表面」の語は、粒子の外部に面した境界を意味する。多孔質のSAP粒子については、露出した内表面もまた、表面に属する。本発明について、SAP粒子の「表面」は、完全で連続した、外部に面する乾燥SAP粒子の6体積%を意味し、これに対し「コア」は、94体積%を意味し、乾燥SAP粒子の内部領域を含む。
【0039】
表面架橋されたSAP粒子は、本技術分野において周知である。従来技術の表面架橋方法において、表面架橋剤はSAP粒子の表面に添加される。表面架橋されたSAP粒子において、SAP粒子の表面における架橋のレベルはSAP粒子のコアにおける架橋のレベルよりもかなり高い。
【0040】
一般的に用いられる表面架橋剤は、熱により活性化されうる表面架橋剤である。「熱により活性化されうる表面架橋剤」との語は、一般的には150℃程度の高温にさらされた場合のみに反応する表面架橋剤を意味する。従来技術において公知の熱により活性化されうる表面架橋剤は、例えば、SAPの重合体鎖間にさらに架橋を構築しうる二官能または多官能性の物質である。一般的な熱により活性化されうる表面架橋剤としては、例えば、二価もしくは多価のアルコール、または、二価もしくは多価のアルコールを生成しうるこれらの誘導体が挙げられる。かような物質の代表例は、アルキレンカーボネート、ケタール、およびジ−またはポリグリシジルエーテルである。さらに、(ポリ)グリシジルエーテル、ハロエポキシ化合物、ポリアルデヒド、ポリオール、およびポリアミンもまた、周知の熱により活性化されうる表面架橋剤である。架橋は例えば、カルボキシル基(重合体に含まれる)とヒドロキシル基(表面架橋剤に含まれる)とのエステル化反応により形成される。一般的には、重合体鎖のカルボキシル基の比較的大部分が重合工程前に中和されることから、通常はごくわずかのカルボキシル基のみが本技術分野において公知の当該表面架橋工程のために使用される。例えば、70モル%中和された重合体においては、10個中3個のカルボキシル基だけが、共有結合を介した表面架橋に使用される。
【0041】
本発明の方法は、SAP粒子の表面架橋に用いられる。従って、SAP粒子に含まれる重合体鎖は、分子単位中に少なくとも2つの重合可能な二重結合を有する、本技術分野において公知の架橋剤によりすでに架橋されている。
【0042】
本発明の方法においては、SAP粒子の表面において、異なる重合体鎖の主鎖中に含まれる炭素原子間で直接共有結合が形成される。
【0043】
本発明に係る「直接共有結合」とは、架橋分子に含まれる原子のような中間の原子を介することなく、重合体鎖が共有結合のみによって互いに結合される共有結合である。これに対し、重合体鎖間の公知の架橋反応はどれも、当該重合体鎖間に共有結合を生じるが、架橋分子の反応生成物は重合体鎖間に取り込まれる。すなわち、公知の表面架橋反応は、直接共有結合を生じるのではなく、架橋分子の反応生成物を含む間接的な共有結合を生じる。当該直接共有結合は、第1の重合体鎖の主鎖中の炭素原子と第2の重合体鎖の主鎖中の炭素原子との間で形成される。この結合はSAP粒子の内部で粒子内に形成され、より詳細には当該結合はSAP粒子の表面において形成される。これに対し、SAP粒子のコアにはかような直接共有結合が実質的に存在しない。
【0044】
重合体鎖の「主鎖」とは、直接的に重合体鎖を形成する炭素原子を意味する。原理的には、仮に反応によって重合体鎖の主鎖の一部である炭素原子が除去されたとしたら、この反応はまた、当該重合体鎖において当該炭素原子が元来含まれていた箇所において重合体鎖を切断することになる。
【0045】
必要であれば、表面架橋剤分子もまた、本発明の方法に用いられてもよい。SAP粒子に表面架橋分子が添加される実施形態においては、SAP粒子の表面に含まれる重合体鎖間にさらなる共有結合が形成される。かようなさらなる共有結合は、前記表面架橋分子の反応生成物を含む。
【0046】
本発明の異なる重合体鎖の架橋は、別々のSAP粒子を互いに結合させることを意図するものではない。よって、本発明の方法は、異なるSAP粒子間のかなりの粒子間結合をももたらすものではなく、SAP粒子の内部での粒子内直接共有結合を生じるのみである。よって、かような粒子間の直接共有結合が仮に存在したとしても、さらなる粒子間の架橋材料が必要とされる場合がある。
【0047】
2つの炭素原子間の共有結合によって重合体鎖を互いに直接結合させる本発明の方法は、従来の表面架橋に代えて、またはこれに加えて、SAP粒子を表面架橋するために用いられうる。
【0048】
照射線で活性化可能なラジカル生成剤分子
本発明の方法においては、ラジカル生成剤分子は、必要であれば、表面架橋効率を向上するために添加されてもよい。しかしながら、このようなラジカル生成剤の使用は、必須ではなく、ラジカル生成剤は表面架橋方法の全体のコストを実質的に上げるため、コストを削減するためには省略してもよい。100nm〜200nmの波長のUV(真空UV)照射を使用するため、ラジカル生成剤は、表面架橋反応を開始させるためには必ずしも必要ではない。
【0049】
本発明においては、表面架橋反応を開始させるためにラジカル生成剤分子が添加されてもよい:照射線で活性化可能なラジカル生成剤分子は、SAP粒子の表面に含まれる重合体鎖の重合体主鎖に位置する炭素中心ラジカルを生成しうる。この反応は、UV照射によって起こる。異なる重合体鎖に含まれるこれらの炭素中心ラジカルの2つが互いに反応し、これにより重合体鎖間に直接共有結合を生成することができる。
【0050】
照射によって、ラジカル生成剤のいくらかが、第1段階として、通常は酸素中心で、第2段階においてSAP粒子の表面の重合体主鎖に含まれる炭素原子と反応して重合体主鎖中に炭素中心ラジカルを生成しうる中間体ラジカルを生成する。
【0051】
ビニル単量体の重合を開始させるのに一般的に用いられるいかなる光開始剤も、原則として、本発明における表面架橋のためのラジカル生成剤として添加されうる。かような光開始剤は一般的に、ビニル単量体のラジカル連鎖重合を引き起こすように作用する。光開始剤へのUV照射線の照射により生成する反応性中間体種は、SAP粒子の表面の重合体鎖の重合体主鎖に含まれるC原子のC−H結合から水素原子を引き抜くことができると考えられている(本発明ではそれと同時に架橋が開始される)。
【0052】
もっとも好ましくは、照射線で活性化可能なラジカル生成剤分子は、UV照射によりホモ開裂(いわゆる光開裂)するペルオキソ架橋(O−O)を含む。
【0053】
しかしながら、反応性中間体種はまた、UV照射により寿命の短い、いわゆる励起三重項状態へと変換されるケトン類であってもよい。三重項状態にあるケトンもまた、重合体主鎖に含まれるC原子のC−H結合から水素を引き抜くことができ、これにより当該ケトンはアルコールへと転化する(いわゆる光還元)。
【0054】
本発明のラジカル生成剤は、水溶性であることがかなり好ましい。水溶性ラジカル生成剤は、25℃にて、1重量%以上、好ましくは5重量%以上、もっとも好ましくは10重量%以上の水への溶解度を示すものである。
【0055】
本来は水溶性でないラジカル生成剤は、例えば分子構造中にカルボキシレートやアンモニウムなどの荷電基を導入するといった誘導体化により、水溶性となりうる。一例として、ベンゾフェノンは容易にベンゾイル安息香酸へと誘導体化されうる。しかしながら、ラジカル生成剤は、もともと水溶性である、すなわち、水溶性とするためにある官能基の導入が必要とされないことが好ましい。もともと水溶性であり照射線で活性化可能な一般的なラジカル生成剤は、アルカリ金属もしくは他の無機過硫酸塩または誘導体化された有機過硫酸塩のような過酸化物である。水溶性アゾ開始剤も同様に用いられうる(例えば、市販のV−50やVA−086(和光純薬工業株式会社製))。無機過酸化物は一般的に、水溶解度の要求を満足するが、有機化合物は一般的に誘導体化を必要とする。最も好ましい水溶性ラジカル生成剤は、過硫酸ナトリウムである。
【0056】
ラジカル生成剤を水溶液中で供給する利点(従って、水溶性ラジカル生成剤を用いる利点)は2つある。1点目は、水溶液によりSAP粒子の表面の効率的な湿潤が促進されるということである。よって、ラジカル生成剤分子は、実際には粒子表面へと輸送され、そこで表面架橋反応を開始させる。
【0057】
2点目は、SAP粒子表面の効率的な湿潤により、SAP粒子の表面に含まれる重合体鎖の可動性が高まるということである。これにより、重合体主鎖に含まれる炭素原子と、照射によりラジカル生成剤が変換されてなる反応性中間体種との2分子反応が促進される。この効果は、実際には今日最も広く用いられているSAP粒子であるポリ(メタ)アクリル酸からなるSAP粒子にとって特に有利である。ポリアクリル酸は106℃のガラス転移温度を有しており、ポリアクリル酸のナトリウム塩は、100モル%の中和度では200℃を超えるガラス転移温度を有するが、本発明の架橋反応は一般的には100℃未満の温度で行われる。水の存在下では、部分中和ポリアクリル酸のガラス転移温度は有意に低下する。例えば、65モル%中和ポリアクリル酸ナトリウムのガラス転移温度は、5重量%の水の存在下での約150℃から、35重量%の水の存在下では室温未満へと低下しうる。しかしながら、この効果を利用するためには、SAP粒子のまさに表面における実際の局所的な水濃度が重要である。
【0058】
本発明の架橋が実際にSAP粒子の表面に限定されるのを確実にするためには、水が拡散により粒子の全体積に亘って均一に分布しないようにすべきである。従って、UV照射工程は、ラジカル生成剤を含む水溶液をSAP粒子上に添加してから1時間以内に行われるべきであり、より好ましくは10分以内であり、もっとも好ましくは1分以内である。
【0059】
有機溶媒は、一般的に水に比べて高価であり、環境の観点からもより問題となりうることから、水溶性ラジカル生成剤がかなり好ましい。しかしながら、上述した誘導体化により水溶性とされていない有機ラジカル生成剤も用いられてもよく、水よりも有機溶媒中に添加されうる。例としては、UV照射線が照射されると光還元を起こすことが知られている、ベンゾフェノンまたはその他の適当なケトンが挙げられる。別の例としては、UV照射線が照射されると光開裂を起こすことが知られている過酸化ジベンゾイルまたはその他の有機過酸化物が挙げられる。
【0060】
本発明の方法において、ラジカル生成剤は、好ましくはSAP粒子の25重量%未満の量、より好ましくは15重量%未満の量、最も好ましくは1〜5重量%の量で添加される。ラジカル生成剤は一般的に、水溶液中で添加される。あるいは、あまり好ましくはないものの、ラジカル生成剤および水が2段階で添加されてもよいが、照射時には双方が表面に存在していなければならない。水の量は、好ましくはSAP粒子の25重量%未満であり、より好ましくは15重量%未満であり、最も好ましくは5〜10重量%である。経済的な理由からは、添加される水の量を可能な限り少なく維持し、表面架橋後の乾燥工程を短縮または完全に省略することが好ましい。
【0061】
表面架橋分子
表面架橋分子は、SAP粒子の表面に含まれる重合体鎖の主鎖に位置する上述した炭素中心ラジカルと反応しうる少なくとも2つの官能基を有する任意の化合物である。表面架橋分子中の官能基が炭素中心ラジカルと反応することにより、新たな共有結合が生成し、架橋分子が重合体主鎖にグラフトされる。
【0062】
表面架橋分子の官能基は、好ましくはC=C二重結合である。より好ましくは、架橋分子は3つ以上のC=C二重結合を含む。あるいは、当該官能基はまた、CH−X部分(Xはヘテロ原子である)であってもよい。CH−X部分の好ましい例は、エーテル(CH−O−R(Rはアルキル残基である))である。
【0063】
本発明の好ましい架橋分子は、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチルプロパントリアクリレートもしくは他のトリアクリレートエステル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラアリルオルソシリケート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラアリロキシエタン、ジアリルフタレート、ジエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルアミン、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルシトレート、またはトリアリルアミンといった、多官能のアリルおよびアクリル化合物である。
【0064】
あるいは、架橋分子は、スクワレン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、イコサペンタエン酸、ソルビン酸またはビニル末端シリコーンからなる群から選択される。
【0065】
アリル二重結合を有する化合物は一般的に、アクリル二重結合を有する化合物よりも好ましい。最も好ましい本発明の架橋分子は、塩化ジアリルジメチルアンモニウムである。
【0066】
表面架橋分子が添加される場合、当該分子は、SAP粒子を本発明のドラムリアクターに入れる前に、例えば(必要に応じて蒸発させてもよい)不活性溶媒を用いた溶液中で噴霧塗布により添加されるべきである。表面架橋分子は、添加直後に蒸発しうるジクロロメタンのような有機溶媒中で添加されうる。SAP粒子を湿らせる実施形態では、表面架橋分子は、懸濁液として、または表面架橋分子が水溶性の場合は溶液として、水とともに添加されてもよい。
【0067】
さらに、表面架橋分子がラジカル生成剤と共に添加される場合、ラジカル生成剤に対する表面架橋分子のモル比は、好ましくは0.2〜5の範囲であり、より好ましくは0.33〜3であり、最も好ましくは1〜3である。
【0068】
表面架橋分子がラジカル生成剤を添加せずに使用される場合には、表面架橋分子は、乾燥SAP粒子の0.1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%の濃度で添加されることが好ましい。
【0069】
表面架橋分子は、必要であればラジカル生成剤を含む水溶液と共に添加されうるように、水溶性であることが好ましい。あまり好ましくない水不溶性の表面架橋分子が添加される場合には、当該分子はラジカル生成剤を含む水溶液中に乳化もしくは懸濁されてもよく、または別途添加されてもよい。水不溶性の表面架橋分子はまた、添加直後に蒸発しうるジクロロメタンのような有機溶媒中で添加されうる。
【0070】
表面架橋分子および/またはラジカル生成剤は、流動層噴霧チャンバによりSAP粒子上に噴霧されうる。同時に、乾燥を達成するためにIR照射が用いられてもよい。IR光に代えてまたはこれと組み合わせて、従来の任意の乾燥装置が乾燥に用いられてもよい。しかしながら、本発明のある実施形態、例えば、少量の溶液中に溶解した少量の表面架橋分子および/またはラジカル生成剤のみが用いられる場合には、乾燥がほとんどまたは全く必要ない。
【0071】
本発明の方法によれば、表面架橋分子および/またはラジカル生成剤は常に、ドラムリアクター内での照射の前に、ドラムリアクターの外部でSAP粒子上に添加される。
【0072】
ラジカル生成剤を使用せずかつ表面架橋分子を使用しない反応機構:
中間炭素中心ラジカルの生成に寄与する幾つかの機構が知られている。ある程度は、これらの機構は同時に行なわれうる。
【0073】
100nm〜200nmの波長のUV(真空UV、以下ではVUVと称する)を照射すると、ヒドロキシルラジカルがO−H結合のホモ開裂により水分子から生成する。これらの非常に反応性の高い、短寿命の種は、SAP粒子の表面の重合体鎖の主鎖に含まれる炭素−水素結合(C−H結合)から水素原子を引き抜くことができ、これにより炭素中心ラジカルが生成する。
【0074】
【化1】

【0075】
原理的には、重合体鎖の主鎖に含まれる炭素−水素結合から水素原子を引き抜く代わりに、完全なカルボキシル基を重合体鎖から引く抜くこと(脱炭酸反応)もまた可能である。この反応の結果、炭素中心ラジカルがSAP粒子の表面に含まれる重合体鎖の主鎖に生成する。
【0076】
水分子は、例えば、乾燥SAP粒子内に含まれる残りの水分子でありうるが、噴霧塗布により、または好ましくは、水蒸気としてSAP粒子を若干湿らせることによって供給されてもよい。比較的低い残存含水率(乾燥SAPの0.5重量%未満)を有するSAP粒子が使用される場合に、湿潤は望ましい。
【0077】
水分子のO−H結合のホモ開裂は、200nm以下の波長を有するUV照射によってのみ実質的な程度まで達成されうる。
【0078】
さらに、分子酸素は、ホモ開裂して、反応性の高い原子状酸素となってもよい。これは、炭素中心ラジカルの生成を引き起こすのと類似した様式で反応する。
【0079】
【化2】

【0080】
本発明のドラムリアクターに入る前にSAP粒子に吸着した残りの酸素は、ドラムリアクター内の反応が不活性ガス雰囲気下で行なわれる場合には、すでに上記反応に寄与してもよい。または、制御された条件(即ち、ラジカル反応中に存在する酸素の分圧を制御・調節する条件)下で酸素を添加することが可能である。しかしながら、ドラムリアクターを用いる方法はまた、通常大気下で行なわれてもよい。
【0081】
上記反応後は、SAP粒子の表面に含まれる重合体鎖の主鎖に生成する2つの炭素中心ラジカルが結合して、重合体鎖間に直接共有結合を形成する。
【0082】
必要な場合のラジカル生成剤および表面架橋分子を用いた反応機構:
本発明の方法では、必要であれば、ラジカル生成剤および/または表面架橋分子を添加することができる。
【0083】
光開裂を起こすラジカル生成剤分子は活性な結合を有し、以下では一般にR−Rと表される。UV照射により、この活性な結合が開裂し、これにより、式3に従って2つのラジカル(R・およびR・)が生成する。
【0084】
【化3】

【0085】
ラジカル生成剤分子(いわゆる前駆体分子)に含まれる活性な結合が、当該分子を2つの同一の部分に分ける場合には、このホモ開裂により2つの同一のラジカルが生じる場合がある。あるいは、このホモ開裂により2つの異なるラジカルが生じる場合もある。
【0086】
生成したラジカルは、ここでSAP粒子の表面の重合体鎖の主鎖に含まれる脂肪族C−H基と反応し、式4に従って重合体主鎖中に炭素中心ラジカルを生成しうる。かような炭素中心ラジカルの2つは互いに反応し、重合体主鎖に含まれる炭素原子間に直接共有結合を生成しうる。
【0087】
【化4】

【0088】
繰り返すが、重合体鎖の主鎖に含まれる炭素−水素結合から水素原子を引き抜く代わりに、重合体鎖から完全なカルボキシル基を引き抜くこと(脱炭酸反応)も原理的には可能である。この反応の結果、炭素中心ラジカルがSAP粒子の表面に含まれる重合体鎖の主鎖に生成する。
【0089】
必要であれば、表面架橋分子が本発明の方法にさらに用いられうる。かような実施形態において、ラジカル生成剤分子から生成したラジカルは、架橋分子に含まれるC=C二重結合の1つと反応し、式5による架橋分子と最初のラジカルとの反応生成物からなるラジカルを生成しうる。
【0090】
【化5】

【0091】
式4の反応で生成した重合体鎖セグメント内の炭素中心ラジカルは、式5で生成したラジカルと反応しうる。この反応の反応生成物は、ラジカル生成剤分子と架橋分子との反応生成物が式6に従って重合体主鎖の炭素原子に共有結合する重合体鎖である。
【0092】
【化6】

【0093】
その後、式3でラジカル生成剤分子から生成したラジカルは、式6の反応生成物に含まれる架橋分子の第2のC=C二重結合と反応しうる。この反応は、式7で表される。
【0094】
【化7】

【0095】
2つの重合体鎖間に架橋を形成するためには、式8で表されるように、式5の反応生成物に含まれる炭素中心ラジカルは、同一のSAP粒子の表面の別の重合体鎖に含まれる別の炭素中心ラジカルと結合する。
【0096】
【化8】

【0097】
ゆえに、ラジカル生成剤または表面架橋分子を添加しない上記反応に対して、ラジカル生成剤及び表面架橋分子をさらに使用する反応は、SAP粒子の表面内の2つの異なる重合体鎖の主鎖に含まれる2つの炭素原子間に直接共有結合を生成しない。しかしながら、ラジカル生成剤及び表面架橋分子をさらに使用する場合には、式1及び2のおよび直接共有結合を生成する上記反応が、式3〜8に示される反応に加えて、行なわれるであろう。
【0098】
さらに、重合体主鎖の炭素中心ラジカルが式1、2および4に従って生成される場合には、ラジカル生成剤のみを使用することが可能である。かような実施形態では、直接共有結合のみが生成し、ラジカル生成剤はSAP粒子の表面に共有結合しない。
【0099】
ラジカル生成剤をさらに使用せずに表面架橋分子のみを添加することもまた可能である。かような実施形態では、VUV照射によりSAP粒子の表面に含まれる重合体主鎖に生成する炭素中心ラジカルは、表面架橋分子のC=C二重結合の1つと反応する。これにより、表面架橋分子は、SAP粒子の表面に共有結合し、表面架橋分子の反応前のC=C二重結合に含まれた2つのC原子の一方にラジカルが誘導される。このラジカルは、SAP粒子の表面の別の(近接する)重合体鎖から水素原子を再度引き抜くことができ、これにより、他の炭素中心ラジカルがこの別の重合体鎖の重合体主鎖中に形成する。この炭素中心ラジカルは、ここで、第1のC=C二重結合を含むラジカル反応によりSAP粒子にすでに共有結合した表面架橋分子に含まれる第2のC=C二重結合と反応できる。その結果、SAP粒子の2つの重合体鎖は、表面架橋分子の反応生成物を介して架橋する。
【0100】
照射により光開裂を起こすラジカル生成剤分子を用いる場合の正味の反応は、2つの重合体鎖セグメント間での架橋の形成であり、この際、当該架橋は、2つのC=C二重結合を有する1つの架橋分子と2つのラジカル生成剤分子との反応生成物を含む。この正味の反応は、式9で表される。
【0101】
【化9】

【0102】
表面架橋分子をさらに用いると、反応時間が短くなることで反応効率がより向上しうる。以下の理論に拘束されるわけではないが、表面架橋分子の非存在下での、UV照射で開始される表面架橋反応の律速段階は、2つの異なる重合体鎖に含まれる2つの炭素原子間で直接共有結合を形成する、2つの炭素中心ラジカルの再結合であると考えられる。この再結合は2次の速度論に従う、すなわち、反応速度は、互いに乗じられる双方の反応物(すなわち、結合する2つの炭素中心ラジカル)の濃度に比例する。
【0103】
しかしながら、表面架橋分子を添加する場合には、第2の反応物である表面架橋分子から生成するラジカルの濃度が非常に高く、反応を通じて当該濃度は定数とみなされうることから、表面架橋分子から生成するラジカルと重合体鎖に含まれる炭素中心ラジカルとの間の反応は、擬1次の速度論に従う、すなわち、反応速度は炭素中心ラジカルの濃度のみに比例すると考えられる。擬1次速度論の反応は、2次速度論の反応よりも速度論的に好ましい、すなわち、反応速度が大きいことが知られている。
【0104】
光開裂を起こすラジカル生成剤分子に代えて、カルボニル基を含み、照射により光還元を起こすラジカル生成剤分子を用いることも可能である。本発明の好ましい実施形態において、かようなラジカル生成剤分子はケトンである。
【0105】
UV照射により、このタイプのラジカル生成剤分子は「励起状態」(三重項状態)に遷移する。よって、これらはまだラジカルには変換してはいないが、照射前よりもずっと反応性が高い。
【0106】
次の段階において、励起状態にあるラジカル生成剤分子は、SAP粒子の表面の重合体鎖の主鎖に含まれる脂肪族C−H基と反応して水素ラジカルを引き抜き、これにより式10に従ってこの重合体鎖に位置する炭素中心ラジカルおよびケチルラジカルを生成する。
【0107】
【化10】

【0108】
このケチルラジカルは、ここで架橋分子の1つのC=C二重結合と反応できる。重合体鎖の主鎖に含まれる炭素中心ラジカルについては、原理的には式5〜9に示したのと同様の反応が起こる。
【0109】
あるいは(または表面架橋分子を用いない実施形態のみにおいて)、2つのケチルラジカルは互いに再結合していわゆるピナコール、例えば、開始剤がベンゾフェノンの場合はベンズピナコール、を生成しうる。
【0110】
光開裂を起こすラジカル生成剤分子を添加する場合にはラジカル生成剤分子の一部のみしか重合体鎖間の架橋に含まれないのに対し、光還元を起こすラジカル生成剤分子については、還元状態にある(ヒドロキシル基に還元されたカルボニル基を有する)ラジカル生成剤分子は全て重合体鎖間の架橋に含まれることに留意すべきである。
【0111】
よって、光開裂を起こすラジカル生成剤分子については、重合体鎖間の架橋に含まれる反応生成物は当初のラジカル生成剤分子の一部、一般的には当初の分子の半分、のみである。
【0112】
光還元を起こすラジカル生成剤分子については、重合体鎖間の架橋に含まれる反応生成物は還元状態にある(ヒドロキシル基に還元されたカルボニル基を有する)ラジカル生成剤分子の全てである。
【0113】
双方のタイプのラジカル生成剤分子について、表面架橋分子の反応生成物は最初の架橋分子であり、この際、ラジカル生成剤分子から生成したラジカルと反応した(または重合体鎖セグメントに生成した炭素中心ラジカルと直接反応した)C=C二重結合は、C−C単結合へと転化する。
【0114】
本発明の好ましい実施形態においては、双方のタイプのラジカル生成剤分子について、表面架橋分子は3つ以上のC=C二重結合を有する。かような実施形態においては、3つ以上の重合体鎖セグメントが、上述した反応に従って互いに架橋されうる。かような実施形態において、架橋に含まれるラジカル生成剤分子の反応生成物の数は、架橋分子に含まれるC=C二重結合の数に等しい。
【0115】
理論的には、ラジカル生成剤が添加される場合には、照射線により活性化可能なラジカル生成剤分子から生成したラジカルは、重合体鎖セグメントに含まれるカルボキシル基とも反応しうる。しかしながら、カルボキシル基は強く分極しており、当該ラジカルがカルボキシル基に含まれるO−H結合から水素ラジカルを引き抜けるであろうことは、熱力学的および速度論的にかなり起こりにくいため、当該ラジカルは脂肪族C−H結合と反応する方がずっと起こりやすい。
【0116】
本発明によれば、1つのタイプの架橋分子のみが用いられてもよいし、あるいは、化学的に異なる2種以上の架橋分子が添加されてもよい。同様に、1つのタイプの照射線により活性化可能なラジカル生成剤分子のみが用いられてもよいし、あるいは、化学的に異なる2種以上の照射線により活性化可能なラジカル生成剤分子が添加されてもよい。
【0117】
本発明の方法を用いると、本技術分野において周知の表面架橋と比較して、SAP粒子を表面架橋するための反応可能部位の数が顕著に増加する。従って、本技術分野において周知の表面架橋よりもずっと均質で均一な表面架橋が達成されうる。SAP粒子表面において表面架橋が均一に分布することにより、SAP粒子の全体的な硬さおよびゲル強度を改善するために、本技術分野において周知の表面架橋と比較して表面架橋の総数は必ずしも増加する必要はない。
【0118】
均一に分布した表面架橋を有するSAP粒子を確実に得るためには、必要な場合のラジカル生成剤および表面架橋分子は、添加される場合には、SAP粒子上に均一に分布する必要がある。従って、表面架橋剤は好ましくは噴霧によりSAP粒子上へ添加される。
【0119】
また、従来技術から知られている表面架橋と比較して、本発明による表面架橋は有意に速い。高温で行われる従来技術の表面架橋反応は、通常45分間程度かかる。時間がかかるこの工程のために、SAP粒子の製造プロセスが望まれるよりも非経済的となっている。これに対し、本発明による架橋プロセスは有意に短い反応時間内、一般的には数分以内で行われ、従って、SAP粒子の製造時間の点で全体的な改善が可能となる。その結果、エネルギーコストが削減され、処理量が向上する。
【0120】
さらに、表面架橋反応が速やかに進行することから、必要であれば添加されるラジカル生成剤分子および表面架橋分子がSAP粒子の内部へ浸透する時間がより短くなる。よって、従来技術の表面架橋と比較して、表面架橋をSAP粒子の表面に実際に限定し、SAP粒子のコアにおける望ましくないさらなる架橋反応を回避することがより容易となる。
【0121】
本発明の他の利点は、中和工程に関する。α,β−不飽和カルボン酸単量体は、重合工程の前に中和されることが多い(前中和)。単量体の酸基を中和するのに有用な化合物は一般的に、重合工程に有害な影響を及ぼすことなく酸基を十分に中和するものである。かような化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、およびアルカリ金属重炭酸塩が挙げられる。好ましくは、単量体の中和に用いられる化合物は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムである。その結果、重合体のα,β−不飽和カルボン酸に含まれるカルボキシル基は少なくとも部分的に中和される。水酸化ナトリウムが用いられる場合、中和により、水中で負に荷電したアクリレート単量体および正に荷電したナトリウムイオンに解離するアクリル酸ナトリウムが生じる。本技術分野において周知の表面架橋剤は重合体のカルボキシル基と反応することから、中和度は表面架橋の必要性とバランスをとる必要がある。これは、双方の工程がカルボキシル基を利用するためである。
【0122】
最終的なSAP粒子が膨潤状態にある場合、これらが水溶液を吸収した後には、ナトリウムイオンはSAP粒子内を自由に移動可能である。おむつまたは小児用パンツのような吸収性物品において、SAP粒子は一般的に尿を吸収する。蒸留水と比較して、尿は、少なくとも部分的には解離した形態で存在する塩を比較的大量に含む。液体は解離した塩のイオンにより生じる浸透圧に抗して吸収される必要があることから、尿に含まれるこの解離した塩により、SAP粒子中への液体の吸収はより困難となる。SAP粒子内を自由に移動可能なナトリウムイオンはこの浸透圧を低減させるため、このナトリウムイオンは粒子中への液体の吸収を強く促進する。従って、中和度が高いと、SAP粒子の性能および液体の吸収速度が顕著に増大しうる。
【0123】
さらに、中和度が高いと、一般的に材料の費用が削減され、その結果、SAP粒子の全体的な製造コストも減少する。重合体を中和するのに通常用いられる水酸化ナトリウムは一般的に、今日のSAPの重合体により好ましいアクリル酸と比較してより膨脹性が低い。従って、中和度の増加は所定量のSAPに含まれる水酸化ナトリウムの量を増加させる。その結果、SAPを製造するのに必要なアクリル酸が少なくなる。
【0124】
本発明のさらに他の利点は、表面架橋工程時の望ましくない副反応の削減である。従来技術において周知の表面架橋は高温(通常は約150℃かそれ以上)を必要とする。かような温度では、表面架橋が達成されるのみならず、多くの他の反応、例えば、重合体内での無水物の生成やアクリル酸単量体により予め生成したダイマーのダイマー開裂、が起こる。これらの副反応はSAP粒子の性能を低下させるため、極めて好ましくない。
【0125】
本発明による表面架橋工程は必ずしも高温を必要とせず、中程度の温度でも行われうることから、これらの副反応はかなり削減される。本発明によれば、表面架橋反応は、望ましくない副反応を避けるため、好ましくは100℃未満の温度で行われうる。
【0126】
また、従来技術において周知の表面架橋工程で通常用いられる約150℃かそれ以上の高温では、SAP粒子は時に白色から黄色っぽく変色する。本発明の方法において表面架橋に必要とされる温度は低いため、SAP粒子の退色の問題は顕著に減少しうる。
【0127】
本発明の方法による表面架橋は、好ましくはないが必要であれば、本技術分野において周知の熱により活性化可能な1以上の表面架橋剤(例えば、1,4−ブタンジオール)とともに行われてもよい。しかしながら、この場合には、UV照射および高温(通常は140℃超)が必要である。かような実施形態においては、得られるSAP粒子の表面には、熱により活性化可能な表面架橋剤の反応生成物がさらに含まれる。
【0128】
ラジカル生成剤および/または表面架橋分子が添加される実施形態において、本発明の方法は必要であれば、未反応の表面架橋分子および/またはラジカル生成剤分子を洗い流すための、または副反応により生成した分子を洗い流すための洗浄工程をさらに含んでもよい。
【0129】
UV照射
本発明において、SAP粒子は紫外線(UV)照射線に曝される。電磁波スペクトルのUV領域は、100〜380nmの波長範囲で定義され、以下の範囲に分けられる:UV−A(315〜400nm)、UV−B(280〜315nm)、UV−C(200〜280nm)、および真空UV(VUV)(100〜200nm)。
【0130】
好ましくは、パルス化または連続した、キセノン(Xe−)エキシマー照射源が使用される。周知のエキシマーレーザーとは反対に、エキシマーランプは、準単色でインコヒーレントな照射線を放出する。インコヒーレントなエキシマー照射線の生成は、例えば、特定のガス雰囲気中でのマイクロ波放電によってまたは誘電体バリア放電(DBD、無声放電)によって可能である。
【0131】
好ましいXe照射は、半値全幅(FWHM,半値幅)が14nmで172nmの波長にピークがある、160〜200nmのVUVスペクトル領域で比較的広いバンドを示す。本発明の方法に使用されるVUVスペクトル内の好ましい波長は、160〜200nmであり、より好ましくは、波長は172nmにピークを有する。
【0132】
反応器の形状はランプの外観に適合させなければならないため、ほとんどの市販のUV照射源の一定の形状(一般的にはドラムまたはコイル形状)が反応器の設計を制限するものの、インコヒーレントなエキシマー照射源は、無電極エンベロープであるため、様々な形状で容易に利用できる。
【0133】
実験研究に適したパルス化Xeエキシマー照射源は、20Wまたは100Wの電力である商標名XeradexTM(Osram,Munich,Germany)で市販されている。しかしながら、表面架橋に使用されるドラムリアクターがかなり大きい場合には、照射源の電力は10kWまたはそれ以上と高い必要がある。
【0134】
10kW以下の電力である連続したXeエキシマー照射源は、Heraeus Noblelight(Hanau,Germany)から購入でき、より小さな電力の照射源はまた、Ushio Ltd.(例えば、Ushio Deutschland,Steinhoring)から市販されている。
【0135】
ドラムリアクターおよび方法
本発明の表面架橋方法が行われる本発明の光化学反応器は、図1に模式的に示されるドラムリアクターである。
【0136】
ドラムリアクター10は、好ましくは丸い形状(例えば、円形状)または楕円形状の断面を有する中空のドラム20を備える。ドラム20の断面は、多角形状、例えば、三角形状、四角形状またはそれ以上の数の角からなる形状、であってもよい。しかしながら、多角形状の実施形態では、角の数はある程度多いのが好ましく、角の数nは、好ましくはn>4であり、より好ましくはn>6であり、さらに好ましくはn>8である。ドラムは、いかなる種類の材料、例えば、ガラス、プレクシグラス(PlexiglasTM)のような合成材料または金属、からなっていてもよい。本発明では、当該材料が不透明か透明かは重要ではない。ドラム20は、長手方向軸30を有する。ドラムの長手方向の寸法は一般的に、断面よりも大きい。楕円形状の直径を有するドラムでは、長手方向の寸法は一般的に、最大直径よりも大きい。ドラムは、下部長手部材120および上部長手部材130をさらに備える(しかしながら、使用時にドラムは回転するため、上部長手部材と下部長手部材とは断続的に物理的に異なるドラムの部位を指す)。
【0137】
UV照射源40は、好ましくはドラム20の内部に取り付けられ、より好ましくは長手方向軸30に沿って、長手方向軸30に平行に、または長手方向軸30に対してある角度でまたはある円弧として、特に好ましくはやや傾斜した角度でドラム20の内部に取り付けられる。しかしながら、あまり好ましくはないものの、照射源40はドラムの外部に取り付けられてもよいが、照射がドラム内のSAP粒子に到達しうるように取り付けられる必要がある。照射源がドラム内に取り付けられる実施形態においては、ドラム20内での組み立てを容易にすべく、照射源40の寸法は適宜選択される必要がある。ドラム20の寸法およびドラム内のSAP粒子の所望の流速に応じて、1つの照射源または2以上の照射源が必要とされうる。棒状の照射源40は、棒状でない照射源40と比較して、本発明のドラム20での使用がより容易であるため、好ましい。
【0138】
ドラム20は水平に設置されてもよいが、傾斜して設置される、すなわち、長手方向軸30が水平ではなく、ある角度αだけ傾斜していることが好ましい(水平な実施形態では、角度αは0である)。傾斜している実施形態では、ドラム20の一端が上端50であり、反対側の末端が下端60である。
【0139】
リアクターは、ドラム20へSAP粒子を供給するための手段をさらに備える。当該供給手段70は、ドラムの一端に設置される。傾斜している実施形態では、供給手段70が設置された末端が上端50である。供給手段70は、例えば搬送スクリューまたは他の適当な手段である。
【0140】
SAP粒子の乾燥は、好ましくはSAP粒子がドラムリアクター中に供給される前に行われる。ドラムリアクター内での乾燥したSAP粒子の処理は、SAP粒子の凝集しやすさがかなり低減されることから、膨潤SAP粒子よりも容易である。さらに、VUV照射線は水に吸収されるので、比較的多量の水を含む膨潤SAP粒子を用いてドラムリアクター内部で作製されてもよい、水蒸気で飽和した環境は、VUVカバー範囲が減少するため、避けなければならない。
【0141】
にもかかわわず、本発明によるSAP粒子の表面架橋後に乾燥を行う場合には、流動促進剤を用いることで、凝集性が低減されうる。
【0142】
リアクターは、回収手段80をさらに備える。当該回収手段80は、好ましくはSAP粒子供給手段70とは反対側のドラム20の末端に設置されることが好ましく、架橋された後にドラム20から排出されるSAP粒子を回収する。傾斜している実施形態では、回収手段80が設置された末端は下端60であることが好ましい。回収手段80は、例えば漏斗または他の適当な手段である。
【0143】
あるいは、照射源40がドラム20の長手方向の寸法にぴったり沿って設置されない実施形態では、回収手段は下端60に向かうようにドラム内に設置されてもよく、この場合に当該下端60は、粒子がドラムから排出されるように開いてはおらず閉じている。かような実施形態において、SAP粒子はドラム20中に連続的または不連続的に供給され、ドラム内を移動する間に照射され、ドラムの下端60にあるSAP粒子が照射を受けないように、照射源が設置されていないかまたは照射源が隠されているドラムの下端60に向かって蓄積する。ある量のSAP粒子が蓄積したら、ドラムの下端を開け、SAP粒子がドラムから排出されうる。
【0144】
本発明の方法によれば、ドラム20は自身の長手方向軸30を中心に回転する。従って、ドラムリアクター10は、ドラム20の回転を駆動する駆動手段(図1には図示せず)を備える。当該駆動手段は、本技術分野において周知の適当な手段(例えば、モーター)でありうる。さらに、ドラム20を安定化させるため、必要であれば支持手段(例えば支持ロール90)が設置されてもよい。一般的に、ドラムはフレーム(図1には図示せず)内に取り付けられる。ドラムが回転している間、ドラム内のUV照射源は、本発明の方法が行われている間に回転する必要はない。
【0145】
本発明のドラムリアクター10には、好ましくはスクリーン100も取り付けられ、当該スクリーンは好ましくは放物面鏡である。スクリーン100はドラム20内のUV照射源の上部に取り付けられる。UV照射源と同様に、スクリーンもまた、ドラムが回転している間にUV照射源を中心として回転する必要はない。
【0146】
本発明の方法は、連続的な工程で実施される、すなわち、SAP粒子がドラムリアクターに連続的に供給され、ドラムから連続的に排出されることが好ましいが、当該方法はバッチ工程で非連続的に実施されてもよい。この場合、ある量のSAP粒子がドラム20に供給され、回転するドラム20内で照射され、そして次のバッチのSAP粒子がドラム20に入れられる前にドラム20から取り出される。
【0147】
本発明の方法によれば、SAP粒子は供給手段70を介してドラムに供給される。SAP粒子がドラム20内を移動している間、ドラムはその軸を中心に回転し、これによりSAP粒子を静かに撹拌する。ドラム内を移動する際、SAP粒子は照射源40によりUVを照射され、これにより表面架橋反応が開始し、進行する。ドラム20の末端において、SAP粒子はドラムから排出され、回収手段80により回収される。
【0148】
通常のSAP粒子は、一般的に10〜1000μmの範囲の粒子径分布を有している。方法の再現性を増大させるためには、照射時に起こりうる粒子径の分離の効果を回避すべきである。具体的には、より大きい粒子がリアクターをより速く通過することで、より小さい粒子よりも少ない量の照射線しか照射されない事態を回避すべきである。
【0149】
以下の理論に拘束されるわけではないが、連鎖反応機構を介して吸収された光子あたり数千の共有結合が生成する重合反応に対し、本発明の反応は通常、化学量論量のUV照射線の光子を必要とする。にもかかわらず、表面上の均一な架橋構造を得るためには、全ての粒子の全表面積への露光が達成される必要がある。
【0150】
ドラムリアクター10の重要な運転パラメータは、傾斜角α、ドラム20内の照射源40の位置、スクリーンのランプに対する位置、ドラム20中のガス雰囲気の組成、ドラム20の回転速度、および照射源の照射力(ランプの電力に対応する)である。別の重要なパラメータは、ドラム壁の内表面の特性である。スクリーン100が用いられる場合、照射源40に対するスクリーン100の位置は別の変数である。別途の加熱は通常必要ではない。
【0151】
傾斜角αは、水平線とドラムの長手方向軸30との間の角である。ドラム20の傾斜角αにより、SAP粒子の移動に対する重力の影響が決定される。傾斜角は0〜80°でありうる。好ましい実施形態において、傾斜角αは0°より大きく、より好ましくは0.5〜45°であり、さらに好ましくは1〜30°である。
【0152】
好ましくは、SAP粒子の移動の第1の駆動力は重力である。しかしながら、傾斜角は0と小さくてもよい。かような実施形態において、SAP粒子はドラムリアクターに供給され、初めにSAP粒子を正しい方向へと導くために、ドラムリアクターの供給側には「壁」が取り付けられる。粒子が一旦ドラム内部へ入ると、SAP粒子がドラムに供給される所定の移動方向を有するドラムの回転により、SAP粒子はらせん状の経路を動いてドラム内を搬送される。
【0153】
0°の傾斜角を有するドラムはバッチ工程で用いられる場合には、SAP粒子は回転開始前にドラムの長手方向に沿って均一に散布されうる(最初の移動方向は規定されない)。かような実施形態において、SAP粒子はドラムの回転中にドラムに供給されないため、SAP粒子はらせん状の経路を動くことはない。SAP粒子がUV照射された後、SAP粒子はドラムから取り出される。
【0154】
ドラム20内の照射源40の位置により、SAP粒子と照射源40との間の距離が決定される。ドラム内を移動するSAP粒子は、ドラムの全内表面に亘って均一に分布してはおらず、重力によって、主にドラムの下部に沿って移動する。よって、SAP粒子の多くはドラム内で完全ならせん状の経路には沿わず、部分的にらせん状の経路に沿うのみである。これは、SAP粒子がドラムの「壁」を登ってある「高さ」に到達すると、SAP粒子は重力によって落下するためである。
【0155】
よって、照射源40がドラムの下部120に向かって位置する場合(回転していない状態のドラムを想定)、照射源とSAP粒子との間の距離は相対的に小さい。照射源がドラムの上部130に向かって位置する場合(回転していない状態のドラムを想定)、照射源とSAP粒子との間の距離は増大する。
【0156】
実験室で使用されるような一般的に小スケールのドラムリアクター(例えば、本明細書に含まれる実施例で使用されるドラムリアクター)では、SAP粒子は、0.1秒〜30分、より好ましくは0.1秒〜15分、さらにより好ましくは0.1秒〜5分間、照射されることが好ましい。照射源と架橋されるべきSAP粒子との距離は、好ましくは2〜150mm、より好ましくは2〜50mmである。空気(大気雰囲気)を使用する場合には、上記距離は、一般的に、上記範囲の下限付近であり、窒素を用いた実施形態では、上記距離は、一般的に、上記範囲の上限付近である。上記距離は、原則、所定の雰囲気でのVUV照射のカバー範囲に依存する。
【0157】
一般的に、ドラムの回転により個々のSAP粒子はドラムをまっすぐ転がるというよりは見かけ上はらせん状の経路を動く。よって、回転速度を増大させることにより、SAP粒子のドラム中の滞留時間は増加しうる。しかしながら、ドラムの回転速度を、SAP粒子がドラムの内表面に沿って均一に分布するほど遠心力が大きくなる程度まで増大させることは意図していない。この回転は、原理的にはSAP粒子のらせん状の移動を支持するが、回転速度は、SAP粒子の大部分をドラムの下部に維持し、内表面での「登り」が限定されるように調節されるべきである。
【0158】
ドラムの回転により、SAP粒子の静かな剪断運動が促進され、これによりSAP粒子が確実に回転してSAP粒子の全表面のUV照射線への均一な露光が達成される。同時に、SAP粒子の表面に生成した架橋を壊しかねないSAP粒子の磨耗が最小限となる。
【0159】
好ましくは、ドラムの回転速度は1〜180rpmであり、より好ましくは5〜100rpmであり、さらに好ましくは10〜60rpmである。しかしながら、適切な回転速度はドラムの断面積に強く依存する。
【0160】
ドラム内のSAP粒子の滞留時間は、ドラムの内表面の粗さによりさらに制御される。ドラムの内表面が比較的粗いと、比較的平坦な内表面と比較してSAP粒子の移動は遅くなる(回転速度が一定の場合)。表面が粗いほど、回転速度が一定の場合にはSAP粒子のらせん状の横の移動の勾配は急になる。さらに、ドラムの内表面のある部位に凹凸の障害を設けることにより、ドラム内のSAP粒子の滞留時間はさらに増大する。これは、特にドラムの傾斜角αが比較的大きい場合に、ドラム内のSAP粒子の移動を遅らせる目的で行われうる。
【0161】
障害の1つの可能な実施形態は、ドラム内のらせん形状の障害である(図1には図示せず)。らせん状の障害は、ドラムの内表面に密着して位置する。この障害は、ドラムの内表面に刻まれてもよいし、あるいは、ドラムの表面上に隆起させてもよい。らせん状の障害はドラムの回転と一緒に回転してもよいし(例えば、障害がドラムの内表面に固定されているか、もしくはドラムの内表面に刻まれている実施形態)、または、より好ましくは、らせん状の障害はドラムの回転方向とは逆の回転方向に回転してもよい(らせん状の障害がドラムの内表面に刻まれている実施形態では明らかに機能しない)。また、らせん形状の障害は、ドラムが回転している間は全く回転しないように設定されてもよい(これもまた、らせん状の障害がドラムの内表面に刻まれている実施形態では不可能である)。らせん状の障害は、ドラム内のSAP粒子の滞留時間が、らせん状の障害のない同一のドラムと比較して長くなるように設定されてもよい。
【0162】
あまり好ましくないが、らせん状の障害を備え、ドラムが傾斜して配置される(α>0°)実施形態で、SAP粒子をドラムの下端60から供給し、ドラム内を内表面に沿って上にSAP粒子を移動させることも可能である。かような実施形態において、らせん状の障害はドラムと同一の方向に回転する必要がある。らせん状の障害により、SAP粒子は確実に、らせん状の経路に沿ってドラム内を移動する。UV照射後、SAP粒子は、回収手段80が設置されたドラムの上端50から排出される。かような実施形態においては、らせん状の障害を介して、SAP粒子の輸送が重力に抗して促進される。ドラム内に刻まれたらせんも勿論、0°の傾斜角を有するリアクターの実施形態に用いられうる。
【0163】
また、非連続的なプロセスが用いられ、ドラムが傾斜して取り付けられる(α>0°)場合、SAP粒子は、下端60からドラムに供給され、ドラム内に設置されたらせん状の障害により照射される間に上に移動し、そして再度下端を通ってドラムから排出されてもよい(例えば、回転を停止することで、SAP粒子は下に流れ落ちる)。次いで、次のバッチのSAP粒子が下端60からドラムに供給される。かような実施形態においては、供給手段70および回収手段80の双方が、ドラムの同一の末端(下端)に設置される。
【0164】
しかしながら、SAP粒子が互いに積層すると下にある粒子が受けるUV照射が少なくなることから、この遮蔽効果を最小化するために、ドラム内のSAP粒子層の数はある程度小さくすべきである。一方、経済的な観点からはスループットは大きいほど好ましい。所定の寸法のリアクターについてみれば、各粒子が実質的に同量のUVを照射されるようにSAP粒子がドラム中で確実に十分に混合されるようにすることで、技術的/経済的な効率が改善されうる。この目的のためには、ドラムの長さを長くし、全てのSAP粒子が効率的に照射されて所望の表面架橋を確実に得られるようにすることが好ましい。
【0165】
例えばDegussa Corp.から市販されている親水性非晶質シリカのような、本技術分野において周知の流動促進剤が、例えばSAP粒子の水の含量が比較的高い場合に、凝集を避けるのを助ける目的で、必要に応じてドラム中のSAP粒子に添加されてもよい。この流動促進剤は、一般的にはSAP粒子の重量に対して0.1〜10重量%で添加される。
【0166】
SAP粒子のスループットが増大した場合、ランプの電力および/またはランプの数を適宜調節して、全てのSAP粒子に、所望の表面架橋を達成するのに有効なUV量が確実に照射されるようにすべきである。
【0167】
本発明の好ましい実施形態において、ドラムは、照射源40の上部に取り付けられたスクリーン100を備える。
【0168】
このスクリーンは、スクリーンの上部の領域で照射源40を隠す。よって、ドラムの上部130、およびその結果としてドラムの上部130の表面に沿って移動したSAP粒子は照射されない。SAP粒子が照射されない程度は、スクリーンのサイズを適宜選択することにより調節されうる。ドラムに供給されるSAP粒子が大きい粒子径分布を有する場合、より小さい粒子はより大きい粒子よりもずっとドラムの内表面に付着しやすく、よりらせん状に近い経路に沿ってドラム内を動く。その結果、より小さい粒子はより大きい粒子と比較してドラム内の滞留時間が長くなる。上記スクリーンは、壁に付着したより小さい粒子が過剰に多量のUVを照射されるのを防ぐ。これは、当該粒子が「壁を登る」間、遮蔽されるためである。
【0169】
好ましい実施形態において、スクリーンは、放物面鏡からなる。照射線を吸収するガスの非存在下では、この鏡はドラムの下部120を移動するSAP粒子の流れ上に照射線を反射でき、これにより照射効率が向上しうる。
【0170】
また、スクリーン100は、内表面の上部130から落下する粒子から照射源を保護する。
【0171】
コスト削減のために本発明の方法は通常大気下で行われることが好ましい。しかしながら、通常大気下では酸素が部分的にVUV線を吸収するので、VUV線のカバー範囲が制限される。さらに、酸素によるVUV吸収によって、オゾンが生成する。よって、操作員がオゾンと接触しないように、好ましくは換気した、容器内にプロセス用装置を設置することが望ましい。
【0172】
しかしながら、(酸素が照射線を吸収しないように)VUV線のカバー範囲を広げるためには、本発明の方法は窒素下で行うこともまた可能である。窒素中でのVUVのカバー範囲は、通常大気中のVUVのカバー範囲と比べて格段に広い。これにより、装置デザインおよび工程設計において自由度が広がる、例えば、より大直径のドラムを使用することができるため、SAP粒子の流入速度を増加できる。
【0173】
また、水分子もVUV線を吸収するので、高い大気湿度も避けなければならず、表面架橋が比較的一定割合で行われるように、大気湿度は実質的に長時間一定に保たなければならない。大気湿度をコントロールし、大気湿度を比較的低いレベルに抑えるために、SAP粒子の水分含量は、好ましくは比較的低いレベルで、一定に維持する必要がある。
【0174】
本発明の方法が通常大気下で行われない場合、所望のガス雰囲気(例えば、窒素または加圧水蒸気)を供給し維持するための手段110が設置される。ドラムのみを所望の雰囲気下に維持してもよいし、あるいは、図1に示すように、リアクター10またはドラム20を含むリアクター10の一部を、手段110により気相を制御可能な容器内に置くことにより、リアクター10の全体または少なくともドラム20およびその周辺装置を不活性雰囲気下に維持してもよい。
【0175】
ドラム20内の温度は、好ましくは20〜99℃であり、より好ましくは20〜75℃であり、最も好ましくは20〜50℃である。
【0176】
従来技術の架橋方法に必要とされる装置と比較して、本発明の方法に用いられるドラムリアクターは軽く、必要とするスペースも小さい。また、本発明の装置は安価である。
【0177】
本発明のドラムリアクターの代わりに、中心に棒状の照射源を有し、放射相称の形状を有する流動層リアクターが考えられうる。本発明のドラムリアクターとは異なり、流動層リアクターは気体の発生を必要とする。
【0178】
流動層リアクターの欠点は、大きめの直径を有する(すなわち重い)SAP粒子が速やかに沈殿し、その結果、小さめのSAP粒子と比較して少量の照射線にしか曝されないということである。異なるサイズのSAP粒子へのかような不均一なUV露光によれば、異なるサイズのSAP粒子についての表面架橋のバラツキが大きくなりうる。この問題は、UV曝露を促進するために振動板を用いても同様である。
【0179】
これに対し、本発明のドラムリアクターによれば、ドラム内でのSAP粒子の滞留時間について高い再現性が得られる。ドラム内でのSAP粒子の逆混合はごくわずかであり、同様のサイズを有するSAP粒子はドラム内での滞留時間が非常に近い。さらに、サイズがかなり異なるSAP粒子を用いる場合でも、スクリーンの遮蔽効果を利用すれば、全てのSAP粒子はそのサイズとは無関係に、同様の量のUVに曝されうる。
【0180】
本発明のドラムリアクターと比較した流動層リアクターの他の欠点は、流動層リアクターが気体流量制御のための高価な装置を必要とするということである。
【0181】
また、ドラムリアクターを用いると、かなり激しい撹拌と比較した静かな剪断運動のために、流動層リアクターと比較して磨耗が減少しうる。
【0182】
上述した関連した異なるパラメータは、1つのパラメータが変化すると少なくとも1つの他のパラメータもまた変化し、調節される必要があるというように、互いに関連することが多い。例えば、UVランプの電力は、本発明の方法に必要なUVランプの総数に影響を及ぼす。さらに、UVランプの寸法および総数は、ドラムの直径および長さに影響を及ぼしうる。一方、ドラムの長さ、傾斜角および回転速度は全てドラム中でのSAP粒子の滞留時間に影響するため、ドラムの長さは、必要とされるドラムの傾斜角および回転速度に影響を及ぼしうる。よって、本発明の方法において所望の変化を達成するには、1つのパラメータもしくは他のパラメータを代わりに変化させる、または2つ以上のパラメータを変化させることも可能でありうる。
【0183】
しかしながら、異なるパラメータを通常の手法で変化させることで、本発明の方法は容易にかつ比較的速やかに最適化され、本発明の方法により得られるSAP粒子は所望の表面架橋度を有する。
【0184】
用途
本発明の方法により製造されるSAP粒子は、脱脂綿、使い捨ておむつ、および体液を吸収するための他の衛生材料並びに農業用途、好ましくは吸収性物品の吸収性コアに有用である。
【0185】
試験方法
SAP粒子の性能は遠心分離保持容量値(CRC)として記載されることが多い。CRCの試験方法は、EDANAの方法441.2−02に記載されている。
【0186】
SAP粒子からなるゲル床の透過性は通常、食塩水流れ誘導性(SFC)として測定される。SFCを測定するための試験方法は、1996年10月8日にGoldmanらに対して発行された、米国特許第5,562,646号に記載されている。本発明については、Jayco溶液に代えて0.9%NaCl溶液を用いるように、米国特許第5,562,646号の試験方法を改変する。0.3psiに代えて0.1psiの圧力をかけるように、米国特許第5,562,646号に記載される試験方法を改変する。
【実施例】
【0187】
ベースポリマー:
ベースポリマーとしては、2005年2月17日に出願された「被覆水膨潤性材料を含む吸収性物品」という名のWO 2005/014066 A1の実施例1.2に記載された水膨潤性重合体を用いる。しかしながら、当該実施例のような37.5g/gのCRC値を有するSAP粒子を得るためには、MBAAの量を通常の手法で適宜調節する必要がある。このCRC値は、原理的には、WO 2005/014066 A1の実施例1.2に記載されているCCRC法と同様の手法により調節されうることに留意すべきである。
【0188】
本実施例で用いるドラムリアクターは40cmの長さおよび11cmの直径を有する。ドラムはガラス製で、ドラムの内表面はわずかに粗くなっている。粗さの程度は、SAP粒子のドラム内の滞留時間が1分間となるように調節される。ドラムの内表面は粗さが均一となっている、すなわち、ドラム内には異なる粗さの程度を有する異なる領域は存在しない。
【0189】
ドラム内には、40cmの長さ(すなわち、ドラムと同じ長さ)の棒状の1.4kWのXeエキシマー照射源であるXeradexTM(Osram,Munich,Germany)が取り付けられている。この照射源は、ドラムの長手方向軸と平行に設置され、この際、照射源とドラムの下部長手部材との距離が20mmである。ドラムは、1°の傾斜角αを有するフレーム中に取り付けられている。
【0190】
このベースポリマーからなるSAP粒子10gを、11rpmの回転速度でドラムを回転させながら、アルキメデススクリューを介して20.2g/minの速度でドラムの上端から供給する。SAP粒子へUV照射している間、この回転速度を一定に維持する。ラジカル生成剤または表面架橋分子は用いられない。
【0191】
SAP粒子に、分子状酸素の不存在下で、分子状窒素下でドラム内で照射する。SAP粒子のドラム内の平均滞留時間は1分間と測定された。
【0192】
SAP粒子のドラム内の平均滞留時間は、リアクターに供給されるSAP粒子に着色したSAP粒子を添加し、この着色粒子がドラムから排出されるまでの時間を測定することにより決定される。この試験は5回行われ、平均時間が算出される。ドラムの長さは照射源の長さと等しいため、平均滞留時間は平均照射時間に等しい。
【0193】
ドラム内の温度は20℃に一定に保たれる。SAP粒子はドラムの下端から排出されて回収される。
【0194】
実施例1では、SAP粒子はドラム内に1回供給され、よって、SAP粒子は1分間照射される。
【0195】
実施例2のSAP粒子はドラム内に順に5回供給され、この際SAP粒子は、サンプルの全てのSAP粒子がドラムから排出された直後に再びドラム内に供給される。よって、実施例2のSAP粒子は合計で5分間照射される。
【0196】
最初のSAP粒子(すなわち、UV照射前のSAP粒子)およびUV照射後のSAP粒子のCRCおよびSFCの値を、上述した試験方法に従って決定する。結果を表1に要約する。
【0197】
【表1】

【0198】
表面架橋を有しない(よって、ベースポリマーのみからなる)SAP粒子については、SAP粒子の表面に導入された架橋によってSAP粒子が膨潤状態に制限されることがないため、CRC値は一般的にかなり高い。表面架橋後、SAP粒子のCRC値は低下する。
【0199】
これに対し、表面架橋されていないSAP粒子についてのSFCの値はとても低い(値は0と低い場合もありうる)。このSAP粒子はかなり柔らかいため、ゲルブロッキングが起こり、これによりSFC値がとても低くなる。
【0200】
通常、ベースポリマーのみからなる表面架橋されていないSAP粒子と比較したSFC値の増加及びCRC値の減少は、表面架橋が実際に起こっていることの間接的な証拠である。
【0201】
よって、本実施例によれば、本発明の方法により、ベースポリマーが実際に表面架橋されていることが示される。
【0202】
発明の詳細な説明に引用された全ての文献は、関連する部位が、参照により本明細書に引用される:いかなる文献の引用も本発明との関係でそれが従来技術であると認めるものと解釈されるべきではない。
【0203】
本発明の特定の実施形態を例示して説明したが、本発明の思想および範囲を逸脱することなく種々の変更および改変がなされうることは、当業者にとって自明である。従って、添付の特許請求の範囲には、本発明の範囲内のかような全ての変更および改変が包含されうるものとする。
【0204】
本明細書で値を定義するための寸法はいずれも技術的な寸法であり、本発明の文脈では文字通り理解されるべきではない。よって、本明細書で言及されている寸法と機能的に均等な寸法を有する全ての実施形態は、本発明の範囲に包含されるものとする。例えば、「40mm」の寸法は、「約40mm」の意味に理解されるべきである。
【0205】
2005年8月23日に出願された欧州特許出願第05018310.2号の、明細書、特許請求の範囲、図面および要約を含む、全開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】本発明に係るドラムリアクターの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)吸水性樹脂粒子を準備する工程と;
b)長手方向軸(30)および断面を有するドラム(20)、並びに、100〜200nmの波長の紫外線を発生し、前記ドラム(20)内の吸水性樹脂粒子に前記紫外線を到達させうる照射源(40)を備えた反応器(10)を準備する工程と;
c)前記吸水性樹脂粒子を前記ドラム(20)内に供給する工程と;
d)前記長手方向軸(30)を中心に前記ドラム(20)を回転させることにより、前記ドラム(20)内の前記吸水性樹脂粒子を動かす工程と;
e)前記吸水性樹脂粒子を前記ドラム(20)内で動かしつつ、前記照射源(40)により前記吸水性樹脂粒子に照射する工程と;および
f)前記吸水性樹脂粒子を前記ドラム(20)から取り出して回収する工程と;
を有する、吸水性樹脂粒子の表面架橋方法。
【請求項2】
前記照射源(40)は、前記ドラム(20)内に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照射源(40)は、前記長手方向軸(30)に沿って、前記長手方向軸(30)に平行に、または前記長手方向軸(30)に対してある角度でもしくはある円弧として配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記照射源(40)と前記ドラム内の前記吸水性樹脂粒子との距離が、2mm〜150mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドラム(20)の断面が、円形状もしくは楕円形状、または7以上の角を有する多角形状である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記照射源(40)の上部にスクリーン(100)が設置されている、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ドラム(20)が、1rpm〜180rpmの速度で回転する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記紫外線の照射が、20℃〜99℃の温度で行われる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記紫外線の照射前に、前記ラジカル生成剤分子を前記吸水性樹脂粒子に添加する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ラジカル生成剤が、水溶性であり、かつ、水溶液として添加される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ラジカル生成剤が過硫酸ナトリウムである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記紫外線の照射前に、少なくとも2つの官能基を有する表面架橋分子を前記吸水性樹脂粒子上にさらに添加し、この際、前記官能基はC=C二重結合またはCH−X部分(ここで、Xはヘテロ原子である)である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記吸水性樹脂粒子を前記ドラム内に連続的に供給し、前記吸水性樹脂粒子を前記ドラムから連続的に取り出す、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−506130(P2009−506130A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534497(P2006−534497)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【国際出願番号】PCT/JP2006/316799
【国際公開番号】WO2007/023982
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】