説明

真贋判定用物品及び真贋判定装置

【課題】 真贋判別する物品に対して外界から光を照射することなく、物品の真贋判別を簡便にかつ確実に行うことが可能な、真贋判定用物品および真贋判定装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る真贋判定用物品10は、平板状の基体11の少なくとも一部に、自発光する機能を備えた発光剤が配設されてなる真贋判定用物品であって、前記基体のうち、前記発光剤を設けた領域15,16、17、18に外力を印加することにより、前記発光剤が自発光を開始することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真贋判定用物品及び真贋判定装置に係り、より詳細には、応力を発生させることにより自発光機能を備えた真贋判定用物品と、この真贋判定用物品からの発光を検知して真贋判定をする真贋判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、証明用紙の表面または裏面に、蛍光剤入り着色インク等による発光性の認証公印を表示することにより、証明書類の電子機器による製作・発行に対応する公印部分の改ざん、偽造等の防止対策を向上するとともに、認証書類の真贋判定が容易にかつ確実に行える証明書類が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、目視角度によって真珠光沢画像の色を変化させ得るようにして、デザイン性及び偽造防止効果を高めた偽造防止帳票も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、紫外光を吸収して可視光を発光する蛍光発色材の層を有するカード、並びに、この蛍光発色材の層の光吸収量に応じてカードの真偽を判別するカード真偽判別方法及びカード真偽判別装置も開発されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
しかしながら、上述した方法では、真贋判別する物品に対して外界に設けた何らかの光源からの可視光あるいは紫外光の照射が必須であった。つまり、物品が可視光または紫外光に暴露されて初めて、物品の真贋判別が可能になるものであった。可視光を用いる方法の場合には暗視野下における判別が困難であり、紫外光を用いる方法の場合には特殊な紫外光源を要するという課題があった。
【特許文献1】特開平8−90898号公報
【特許文献2】特開2002−211102号公報
【特許文献3】特許第2916991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、真贋判別する物品に対して外界から光を照射することなく、物品の真贋判別を簡便にかつ確実に行うことが可能な、真贋判定用物品および真贋判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る真贋判定用物品は、平板状の基体の少なくとも一部に、自発光する機能を備えた発光剤が配設されてなる真贋判定用物品であって、前記基体のうち、前記発光剤を設けた領域に外力を印加することにより、前記発光剤が自発光を開始することを特徴とする。
【0008】
前記発光剤としては、(a)無機母体材料中に、機械的エネルギーによって励起された電子が基底状態に戻る際に発光する希土類又は遷移金属の1種類以上からなる発光中心をドープしてなる応力発光材料、あるいは(b)非化学量論的組成を有するアルミン酸塩の少なくとも1種からなり、かつ機械的エネルギーによって励起された電子が基底状態に戻る際に発光する格子欠陥をもつ応力発光材料を含有するものが用いられる。
【0009】
前記発光剤を設けた領域は、前記基体の表面および/または裏面の中央部、前記基体の表面および/または裏面の周辺部、あるいは前記基体の側面とする形態が好ましい。
【0010】
本発明に係る真贋判定装置は、平板状の基体の少なくとも一部に、自発光する機能を備えた発光剤が配設されてなり、前記基体のうち、前記発光剤を設けた領域に外力を印加することにより、前記発光剤が自発光を開始する真贋判定用物品を用い、前記真贋判定用物品の発光を検知する真贋判定装置であって、前記真贋判定用物品に対して外力を印加する応力発生部と、前記真贋判定用物品が発光したことを検知する発光確認部と、を少なくとも具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る真贋判定用物品は、平板状の基体の少なくとも一部に、自発光する機能を備えた発光剤が配設されてなるので、基体を湾曲あるいは屈曲させたり、押し付けたり、擦るなどするだけで、基体の表面、裏面あるいは側面に対して容易に外力を加えることが可能である。また、真贋判定用物品を構成する基体のうち、前記発光剤を設けた領域に外力を印加するだけで、前記発光剤が自発光を開始する。
【0012】
したがって、本発明によれば、真贋判別する物品に対して外界から光を照射する必要がないので、暗視野の雰囲気中においても真贋判別が可能であり、また真贋判別のために特殊な光源を用意する必要もないことから、物品の真贋判別を簡便にかつ確実に行うことができる真贋判定用物品をもたらす。さらに、一定時間発光後、色が消失するので、繰り返し利用ができる。
【0013】
本発明に係る真贋判定装置は、上述した構成の真贋判定用物品、すなわち、平板状の基体の少なくとも一部に、自発光する機能を備えた発光剤が配設されてなり、前記基体のうち、前記発光剤を設けた領域に外力を印加することにより、前記発光剤が自発光を開始する真贋判定用物品を用いる。この真贋判定用物品に対して外力を印加する応力発生部は、真贋判定用物品の発光剤を設けた領域を湾曲あるいは屈曲させたり、押し付けたり、擦るなどすることにより、前記領域にある発光剤の発光を促す。そして、真贋判定用物品が発光したことを検知する発光確認部により、基体に発光剤が存在する証である発光情報を捕らえることができる。
【0014】
したがって、本発明によれば、真贋判定する際に外部光源を全く必要としないので、暗視野においても稼働することができ、また装置の小型化、低コスト化、省電力化などを容易に図れる真贋判定装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施の形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
図1と図2は、本発明に係る真贋判定用物品の一例を示す模式的な斜視図であり、図1は基体を一方の面側から見た状態を、図2は基体を他方の面側から見た状態を、それぞれ表している。
【0016】
図1及び図2に示すように、真贋判定用物品10は、平板状の基体11(一方の面11A、他方の面11Bと表記)の少なくとも一部に、自発光する機能を備えた発光剤が配設されてなる。そして、基体11のうち、発光剤を設けた領域15、16、17、18に外力を印加することにより、前記発光剤が自発光を開始するものである。基体の他方の面11Bに配された領域15は基体の側面を、領域16は中央部を、17と18は周辺部を表しており、特に17は外周部を、18はコーナー部を表す。この他に、基体の一方の面11Aには、例えば磁気ストライプからなる磁気情報12、各種の文字・数字情報13(例えば、名称13a、所属13b、氏名13cなど)や写真や絵画などからなる画像情報14が配された例を示しているが、必要に応じてこれらの情報12、13、14も、自発光する機能を備えた発光剤により形成しても構わない。
【0017】
平板状の基体11は、発光剤を設けた領域15、16、17、18に外力が印加されるものであれば、その材料に特に制限はないが、好適なものとしては紙、プラスチック、金属などが挙げられる。また、発光剤を設けた領域は、基体11の表面や裏面に設ける他に、基体に内在させてもよい。さらには、発光した状況が確認できるように、発光剤を設けた領域を透明部材で被覆する形態としても構わない。
【0018】
このような発光剤としては、(a)無機母体材料中に、機械的エネルギーによって励起された電子が基底状態に戻る際に発光する希土類又は遷移金属の1種類以上からなる発光中心をドープしてなる応力発光材料、あるいは(b)非化学量論的組成を有するアルミン酸塩の少なくとも1種からなり、かつ機械的エネルギーによって励起された電子が基底状態に戻る際に発光する格子欠陥をもつ応力発光材料を含有するもの、が用いられる。
【0019】
本発明に係る発光剤を構成する応力発光材料(a)は、無機母体材料に、機械的エネルギーによって励起された電子が基底状態に戻る場合に発光する希土類又は遷移金属の1種類以上からなる発光中心をドープしてなるものである。ここで、無機母体材料としては、メリライト構造、FeS構造、ウルツ構造、スピネル構造、コランダム構造又はβ−アルミナ構造を有する酸化物、硫化物、炭化物又は窒化物が挙げられる。このうち、メリライト構造、FeS2構造、ウルツ構造、スピネル構造、コランダム構造又はβ−アルミナ構造を有する酸化物が好ましい。ここで、メリライト構造を有するものとしては、CaYAlO、CaYAlO、CaAlSiO、Ca(Mg,Fe)SiO、CaBSiO、CaNaAlSiO、CaMgSiO、 (Ca,Na)(Al,Mg)(Si,Al)O、Ca(Mg,Al)(Al,Si)SiO等が挙げられる。FeS構造を有するものとしては、 SrAlO、CaAlO、CaC、CoS、MnS、NiS、RuS、NiSeを主成分とする材料が挙げられる。ウルツ構造を有するものとしては、BeO、ZnO、ZnS、CdS、MnS、AlN、GaN、InN、TaN、NbN、α−SiCを主成分とする材料が挙げられる。スピネル構造を有するものとしては、MgAlO、CaAlO、コランダム構造を有するものとしては AlO、β−アルミナ構造を有するものとしては SrMgAl10O17などが挙げられる。また、無機母体材料としては非化学量論的組成を有するアルミン酸塩も用いることができる。
【0020】
これらの無機母体材料のうち、発光強度の面から、特にZnS並びに MAlO系(ここで Mは、Sr、Ca、Ba、Mg等を示す)が好ましい。ここで主成分とは、これらの成分を80[重量%]以上、好ましくは90[重量%]以上含む場合をいう。
【0021】
これらの無機母体材料にドープされる発光中心としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの希土類イオン、およびTi、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ta、W の遷移金属イオンのうちの1種類またはそれ以上を用いるのが好ましい。
【0022】
当該発光中心のドープ量は、発光強度、発光効率の点から、応力発光材料(a)中に0.001〜20[重量%]、特に0.001〜5[重量%]が好ましい。
【0023】
応力発光材料(a)は、例えば無機母体材料源に前記発光源、例えば希土類の酸化物を添加して混合した後、還元、不活性あるいは酸化雰囲気中で600〜1800[℃]で焼成し、発光中心をドープすることにより得ることができる。焼成は30分間以上が好ましい。またこのとき、ほう酸などのフラックスを添加することは、低い温度で製造できる点で好ましい。また、無機母体材料の形成反応とその中への発光中心のドープを同時に行う方法も挙げられる。この方法においては、母体材料組成になるように調整した原料と発光中心となる金属元素を混合し、焼成することにより製造するのが好ましい。ここで焼成条件及びフラックスの添加は上記と同様である。
【0024】
本発明で用いられる応力発光材料(a)としては、特開2001−64638号公報、特開2000−63824号公報、特開平11−16946号公報、特開2000−119647号公報及び特開2001−49251号公報記載のものが好ましい。
【0025】
また、成分(b)として、又は成分(a)の無機母体材料としての非化学量論的組成を有するアルミン酸塩としては、アルカリ土類金属酸化物とアルミニウム酸化物とから構成され、かつこの中のアルカリ土類金属イオンの組成比を欠損させたアルカリ土類金属欠損型のものが好ましく、具体的には、式MxAlO3+x、MxQAl10O16+x、Mx1Qx2AlO3+x1+x2 又はMx1Qx2LAl10O16+x1+x2(式中のM、Q及びLは、それぞれMg、Ca、Sr又はBaであり、xは0.8<x<1、x1及びx2は0.8<(x1+x2)<1 を満たす数である)で表わされるものを主成分とするものを挙げることができる。これらの中で、SrAlO3+x又はSrMgAl10O16+xが適している。
【0026】
欠陥濃度、すなわち、上記化合物における(1−x)又は[1−(x1+x2)]の値を制御することにより、発光中心の中心イオンとして、他の金属イオンを含有させなくても、応力発光強度が著しく向上する。この欠陥濃度の制御は、原料の仕込みモル比の調整と、焼成条件の制御によって達成することができる。仕込み時に、アルカリ土類金属の組成比を予め減らすことにより、該制御が容易となり、そして還元雰囲気中で焼成することにより、アルカリ土類金属欠損型アルミン酸塩が得られる。
【0027】
欠損濃度は、上記のようにアルカリ土類金属イオンの欠損により制御することができ、そして、該欠損の場合は、0.01〜20[モル%]の範囲で選ぶのがよい。この欠損の割合が0.01[モル%]未満では十分な発光強度が得られないし、20[モル%]を超えると物質の結晶構造が維持できにくくなり、発光効率が低下して実用に適さなくなる場合がある。これらの理由から、該欠損のより好ましい割合は、0.01〜10[モル%]の範囲である。
【0028】
このような物質は、機械的エネルギーによって励起された電子が基底状態に戻る際に発光する格子欠損を有し、それ自体、高輝度応力発光特性を有し、応力発光材料(b)として用いることができる(特開2001−49251号公報)。
【0029】
本発明に係る発光剤には、前記応力発光材料(a)及び(b)以外に、(c)光エネルギーによって励起された電子が基底状態に戻る場合に発光する材料、及び/又は(d)樹脂を含有させることにより、発光時間の持続性を向上させることができるので好ましい。
【0030】
成分(c)は蓄光性材料として機能するものであり、具体的には硫化亜鉛、アルミナ、アルミン酸ストロンチウム、カルシウムリン酸塩等が挙げられる。なお、前記成分(a)及び(b)の中には、機械的エネルギーにより発光するとともに光エネルギーによっても発光するものもあり、これを用いると1種類の材料で応力による発光を持続させることができる。
【0031】
成分(d)の樹脂は、成分(a)、(b)及び(c)の担体として機能するものである。ここで担体は、成分(a)、(b)及び/又は(c)を均一に分散できるものであれば制限されない。このような樹脂としては、常温硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0032】
本発明に係る発光剤は、さらに溶剤を添加しても良く、公知のものが使用可能である。ただし系内への残存を避けるため、沸点が250[℃]以下の溶剤が好ましい。例えば、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘキサン、ペンタンなどの炭化水素溶媒、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、イソホロンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテートなどのグリコールモノエーテル類およびそれらのアセテート化物、さらに以上挙げた溶剤の1種ないしは2種以上の混合系を用いることができる。
【0033】
本発明の発光体組成物を基材上に、溶剤の揮発および/あるいは(d)の樹脂成分の反応等によって固定するために、熱、光を含む電磁波を用いることが出来、これらの方法を混成して行ってもよい。加熱方法は公知の方法を用いてよく、赤外線や高周波などを併用しても良い。また、光を含む電磁波として、マイクロ波から、赤外線、可視光、紫外光、真空紫外線、X線に至る、波長にして1〜10−12 [m]の範囲内で任意に用いることが出来、公知な電磁波源を用いることが出来る。赤外から紫外光の波長範囲の一般的な光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極放電ランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、各種レーザー、半導体レーザーなど公知のものを使用することが出来るが、300〜500[nm]の波長域に比較的多くエネルギー強度分布を持つ高圧水銀灯およびメタルハライドランプが特に好ましい。
【0034】
本発明に係る発光剤を設ける領域については、以下の種類が挙げられる。
(1)基体の表面および/または裏面の中央部
基体の表面11Aおよび/または裏面11Bの中央部16とした場合には、発光剤を設けた領域に対して外力を安定して印加することができ、かつ損傷しにくいことから、長期信頼性に優れた真贋判定用物品が得られる。その際、外力の印加方法は、例えば、基体を曲げても、押圧しても、擦ってもよく、これらを同時に行っても構わない。
【0035】
(2)基体の表面および/または裏面の周辺部
基体の表面11Aおよび/または裏面11Bの周辺部17、18とした場合には、複数の基体を重ねて設け、周辺部のみ覗き見るようにして、発光剤を設けた領域に外力を加えることにより、多数の基体に対して短時間で真贋判別を可能とする真贋判定用物品が得られる。その際、外力の印加方法は、例えば、基体を曲げても、押圧しても、擦ってもよく、これらを同時に行っても構わない。
【0036】
(3)基体の側面
基体の側面15とした場合には、擦りつける等の操作により側面に外力を加えることで真贋判別をすることができ、かつ、基体の表面や裏面は識別情報等を配置する領域として有効に活用できる。例えば、図2に示すように、磁気ストライブに記録された磁気情報を読み取る際に、この読み取り機側に基体の側面を擦りつける操作が行われれば、同時に発光剤を設けた領域が発光するか否かを検知することにより、真贋判別が容易に可能となる

【0037】
図3は、本発明に係る真贋判定装置の要部断面と構成要素との関係を示す模式的な図であり、平板状の基体を曲げた状態を表している。
図3に示した真贋判定装置50は、図1及び図2に基づき説明した構成からなる真贋判定用物品10を用いる。図3は、真贋判定用物品10の一面(上面)に磁気ストライプ12と、自発光する機能を備えた発光剤を設けた領域16とを配した例である。
【0038】
真贋判定装置50は、真贋判定用物品に対して外力を印加する応力発生部53と、真贋判定用物品10が発光16’したことを検知する発光確認部54と、を少なくとも具備している。これに加えて、応力発生部53からの信号αと発光確認部54からの信号βとを比較し、真贋判定用物品の真贋を判別する真贋判定部52を設けてもよい。また、磁気ストライプ12の磁気情報を再生する磁気読取部55を設けても構わない。さらには、制御部51から信号γ、信号δをそれぞれ発信し、真贋判定部52や磁気読取部55を制御するシステムを備えた形態としてもよい。
【0039】
図3では、真贋判定用物品10をその厚さ方向に湾曲させた状態の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、真贋判定用物品10のうち、自発光する機能を備えた発光剤を設けた領域16を屈曲させた状態、領域16に押圧を加えた状態、あるいは領域16を擦る状態になるように、基体10に対して応力発生部53を作動させても構わない。
【0040】
なお、情報記憶部として、磁気ストライプのほかに、バーコードや二次元コードによる情報表示や、接触用インターフェイスを備えたICモジュールや、非接触にて通信が可能なアンテナとICチップを備えたRFID(Radio Frequency IDentification)を備えた情報記録部としても良い。この場合、磁気読取部55に換えて、各情報記録方式に対応した情報読取部とすることになる。
【0041】
また、実施例においては、発光剤を設けた領域は矩形や円形状で、情報を表現したものではないが、より機能性を高めるために、発光剤を設けた領域を、文字、図形、バーコード、二次元コードなどにより、真贋判定用物品を特定するための情報として形成することも考えられる。このようにすることで、発光による真贋判定だけではなく、真贋判定用物品の識別をも可能とすることができる。さらに、前記の磁気ストライプやICモジュールなどの情報記録部に記録された識別情報と関連付けられた情報を、発光剤を設けた領域にて表示することにより、偽造を困難にすることも考えられる。情報記録部に記録された識別情報を所定の暗号化条件によりコード化し、発光剤を設けた領域をコード情報として表示すればさらに偽造は困難となる。
【0042】
さらに、発光剤を設けた領域の上に有色(例えば黒色)の印刷層を形成することにより、前記コード情報を表示することも可能である。具体的には、発光剤を設けた領域の上に、コード情報を表示する部分以外に印刷層を形成することにより実現できる。この方法によれば、発光剤を設けた領域は全て同じ形状で設けて、情報記録部に記録された識別情報に応じて印刷層のない部分を形成することにより、コード情報が表現可能となる。これにより、同一の真贋判定用物品を多数製造したのちに、印刷(インクジェット方式や熱転写方式等)によって異なる情報を表現することが可能となる。
【0043】
またさらに、配設する量や、材料の配合を調整するなど、発光強度や発光持続時間を変えた発光剤を複数種類用いて領域を形成することにより、真贋判定用物品を特定することも考えられる。例えば、中央部16よりコーナー部18の発光強度が強く、発光持続時間が短い発光剤を用いることにより、同一の発光剤を用いた場合との判別が可能となる。
【0044】
また、真贋判定装置の構成としては、応力発生部と発光確認部を制御する部分があればよく、実施例に限定されることなく、さまざまな構成が考えられる。なお、発光確認部では、前述のように、発光剤を設けた領域をコード情報として表示した場合を考慮して、コードを認識する機能を有する構成とすることも考えられる。さらに、実施例のような真贋判定部を設けずに、制御部にて、応力発生部、発光確認部、情報読取部をそれぞれ制御する構成としても良い。この場合、制御部にて、応力発生部を制御し、その後、発光確認部からの情報(発光の有無、又は認識したコード情報)を受信し、真贋を判定し、ランプやブザーなどの判定結果通知部に通知する構成としてもよい。さらには、情報読取部にて読み取られ識別情報と、発光確認部からのコード情報を比較して、真贋判定する構成とすることも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、偽造防止が求められる磁気カードやICカード等、各種の金券や証書、機密文書や通信文などを記載したはがき、封書等に利用される、真贋判定用物品及び真贋判定装置に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る真贋判定用物品の一例を示す模式的な斜視図であり、基体を一方の面側から見た状態を表している。
【図2】本発明に係る真贋判定用物品の一例を示す模式的な斜視図であり、基体を他方の面側から見た状態を表している。
【図3】本発明に係る真贋判定装置の要部断面と構成要素との関係を示す模式的な図である。
【符号の説明】
【0047】
α、β、γ、δ 信号、10 真贋判定用物品、11 基体、11A 一方の面、11B 他方の面、12 磁気情報、13、13a、13b、13c 文字・数字情報、14 画像情報、15 側面、16 中央部、16’ 発光、17 外周部、18 コーナー部、50 真贋判定装置、51 制御部、52 真贋判定部、53 応力発生部、54 発光確認部、55 磁気読取部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基体の少なくとも一部に、自発光する機能を備えた発光剤が配設されてなる真贋判定用物品であって、
前記基体のうち、前記発光剤を設けた領域に外力を印加することにより、前記発光剤が自発光を開始することを特徴とする真贋判定用物品。
【請求項2】
前記発光剤は、(a)無機母体材料中に、機械的エネルギーによって励起された電子が基底状態に戻る際に発光する希土類又は遷移金属の1種類以上からなる発光中心をドープしてなる応力発光材料、あるいは(b)非化学量論的組成を有するアルミン酸塩の少なくとも1種からなり、かつ機械的エネルギーによって励起された電子が基底状態に戻る際に発光する格子欠陥をもつ応力発光材料を含有することを特徴とする請求項1に記載の真贋判定用物品。
【請求項3】
前記発光剤を設けた領域は、前記基体の表面および/または裏面の中央部であることを特徴とする請求項1に記載の真贋判定用物品。
【請求項4】
前記発光剤を設けた領域は、前記基体の表面および/または裏面の周辺部であることを特徴とする請求項1に記載の真贋判定用物品。
【請求項5】
前記発光剤を設けた領域は、前記基体の側面であることを特徴とする請求項1に記載の真贋判定用物品。
【請求項6】
平板状の基体の少なくとも一部に、自発光する機能を備えた発光剤が配設されてなり、前記基体のうち、前記発光剤を設けた領域に外力を印加することにより、前記発光剤が自発光を開始する真贋判定用物品を用い、前記真贋判定用物品の発光を検知する真贋判定装置であって、
前記真贋判定用物品に対して外力を印加する応力発生部と、前記真贋判定用物品が発光したことを検知する発光確認部と、を少なくとも具備していることを特徴とする真贋判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−116778(P2006−116778A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305863(P2004−305863)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】