眼の血管新生を阻害する方法
本発明は、眼血管の発達を阻害し、関連疾患を治療する、TSPAN12及びノリンのアンタゴニストを使用する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、その各内容を出典明示してここに援用する、2008年9月10日に出願された米国仮出願第61/095757号;2008年10月7日に出願された米国仮出願第61/103502号;及び2009年8月17日に出願された米国仮出願第61/234519号に対して米国特許法第119条(e)項の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に血管新生に関連した症状及び疾患の処置に有用な組成物及び方法に関する。特に、本発明は、テトラスパニン12(TSPAN12)及びノリン(Norrin)のアンタゴニストに関する。
【背景技術】
【0003】
血管新生が様々な疾患の発病に対する重要な寄与因子であることは、今は確立されている。これらには、固形腫瘍及び転移、眼球内新生血管病、例えば増殖網膜症、例えば糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症(RVO)、滲出型加齢黄斑変性症(AMD)、血管新生緑内障、移植された角膜組織及び他の組織の免疫拒絶、及び関節リウマチが含まれる。Dudaら J. Clin. Oncology 25(26): 4033-42(2007); Kesisisら Curr. Pharm. Des. 13: 2795-809(2007); Zhang & Ma Prog. Ret. & Eye Res. 26: 1-37(2007)。
【0004】
網膜は、網膜血管からの血液供給を受け、網膜、及び脈絡膜血管の内部に供給され、外部に供給される。網膜血管のダメージは、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、及び中心及び分枝状の網膜静脈閉塞症(虚血性網膜症)を含む、いくつかの疾病過程で生じる。このダメージによる網膜虚血にて、所望しない血管新生が生じる。脈絡膜の血管新生は、AMDを含む多くの疾病課程で生じる。その一方、網膜の不完全な血管新生は、ある種の遺伝病、例えば家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)、WntレセプターFrizzled4(Fzd4)、コレセプターLRP5、又は分泌リガンドノリンの変異に起因するノリエ病を患っている患者の特徴である(Bergerら Nature Genet. 1:199-203(1992); Chenら Nature Genet. 1:204-208(1992); Robitailleら Nature Genet. 32:326-30(2002); Toomesら Am. J. Hum. Genet. 74:721-30(2004))。これらの遺伝病のモデルは、対応する相同遺伝子についてノックアウトされたマウスにおいて入手可能である。
【0005】
眼の血管新生の分野における多くの利点にかかわらず、標的を同定し、現存する治療法の効果を補足又は向上可能な手段を開発することが、必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、TSPAN12が、ノリン-誘発性、Frizzled-4-及びLRP5-媒介性のシグナル伝達経路のコンポーネントであり、病的血管新生の発症に必要であるという発見に、少なくとも部分的に基づく。よって、ノリン及びTSPAN12は、ノリン、TSPAN12、Frizzled-4又はLRP5遺伝子における遺伝的変異を抱えない状態を含む、異常な眼の血管新生を阻害するための薬剤標的である。従って、本発明は、ノリン又はTSPAN12の活性をブロックする試薬を使用する血管新生に関連した眼病を処置する、新規の方法を提供する。
【0007】
一態様では、本発明は、TSPAN12アンタゴニストを被験者に投与することを含む、血管新生に関連した眼の疾患又は病状を患っている被験者における、血管新生を低減又は阻害する方法を提供する。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは抗TSPAN12抗体である。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは、第2の細胞外ループ等の細胞外ドメインを含む、TSPAN12のポリペプチド断片を含有する。いくつかの実施態様では、アンタゴニストは、免疫グロブリン定常領域、例えばIgG Fcをさらに含有する。いくつかの実施態様では、眼の疾患又は病状は:糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される。
【0008】
いくつかの実施態様では、本方法は、第2の抗血管新生剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、TSPAN12アンタゴニスト投与の前又は後に投与される。他の実施態様では、第2の抗血管新生剤は、TSPAN12アンタゴニストと同時に投与される。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、血管の内皮細胞増殖因子(VEGF)又はノリンのアンタゴニストである。いくつかの実施態様では、ノリンアンタゴニスト又はVEGFアンタゴニストは、抗ノリン抗体又は抗VEGF抗体(例えば、ラニビズマブ)である。
【0009】
他の態様では、 本発明は、ノリンアンタゴニストを被験者に投与することを含む、血管新生に関連した眼の疾患又は病状を患っている被験者における、血管新生を低減又は阻害する方法を提供する。いくつかの実施態様では、ノリンアンタゴニストは抗ノリン抗体である。いくつかの実施態様では、眼の疾患又は病状は:糖尿病性網膜症、CNV、AMD、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される。
【0010】
いくつかの実施態様では、本方法は、第2の抗血管新生剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、ノリンアンタゴニスト投与の前又は後に投与される。他の実施態様では、第2の抗血管新生剤は、ノリンアンタゴニストと同時に投与される。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、VEGFアンタゴニスト、例えば抗VEGF抗体、特にラニビズマブである。
【0011】
他の態様では、本発明は、TSPAN12アンタゴニストを被験者に投与することを含む、被験者における所望しない血管新生に関連した眼の疾患又は病状を処置する方法を提供する。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは抗TSPAN12抗体である。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは、第2の細胞外ループ等の細胞外ドメインを含む、TSPAN12ポリペプチド断片を含有する。いくつかの実施態様では、アンタゴニストは、免疫グロブリン定常領域、例えばIgG Fcをさらに含有する。いくつかの実施態様では、眼の疾患又は病状は、増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、CNV、AMD、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される。
【0012】
いくつかの実施態様では、本方法は、第2の抗血管新生剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、TSPAN12アンタゴニスト投与の前又は後に投与される。他の実施態様では、第2の抗血管新生剤は、TSPAN12アンタゴニストと同時に投与される。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、VEGF又はノリンのアンタゴニストである。いくつかの実施態様では、ノリンアンタゴニスト又はVEGFアンタゴニストは、抗ノリン抗体又は抗VEGF抗体(例えば、ラニビズマブ)である。
【0013】
他の態様では、 本発明は、ノリンアンタゴニストを被験者に投与することを含む、被験者における所望しない血管新生に関連した眼の疾患又は病状を処置する方法を提供する。いくつかの実施態様では、ノリンアンタゴニストは抗ノリン抗体である。いくつかの実施態様では、眼の疾患又は病状は:増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、CNV、AMD、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施態様では、本方法は、第2の抗血管新生剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、ノリンアンタゴニスト投与の前又は後に投与される。他の実施態様では、第2の抗血管新生剤は、ノリンアンタゴニストと同時に投与される。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、VEGFアンタゴニスト、例えば抗VEGF抗体、特にラニビズマブである。
【0015】
他の態様では、本発明は、本質的にアミノ酸CRREPGTDQMMSLK(配列番号:5)からなるペプチドを使用する、抗体を生成する方法を提供する。いくつかの実施態様では、本方法は、ペプチドを用いて動物を免疫化することを含む。いくつかの実施態様では、本方法は、ペプチドに結合する抗体又は抗体断片を同定するために、ライブラリ(例えば、Fabライブラリ)をスクリーニングすることを含む。いくつかの実施態様では、本発明は、任意のこのような方法により生じた抗体を提供する。いくつかの実施態様では、本発明は、任意のこのような抗体を使用する、TSPAN12を検出する方法を提供する。
【0016】
他の態様では、本発明は、TSPAN12アンタゴニストを投与することを含む、FZD4マルチマーの形成を阻害する、インビトロ又はインビボ方法を提供する。他の態様では、本発明は、TSPAN12アンタゴニストを投与することを含む、ノリン-媒介性シグナル伝達を阻害する、インビトロ及びインビボ方法を提供する。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは抗TSPAN12抗体である。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは、第2の細胞外ループ等の細胞外ドメインを含む、TSPAN12ポリペプチド断片を含有する。いくつかの実施態様では、アンタゴニストは、免疫グロブリン定常領域、例えばIgG Fcをさらに含有する。
【0017】
他の態様では、本発明は、FZD4マルチマー形成を高める薬剤を被験者に投与することを含む、任意のノリン、TSPAN12、FZD4又はLRP5遺伝子における遺伝的変異に起因する、先天性の眼の疾患を患っている被験者を処置する方法を提供する。いくつかの実施態様では、疾患は、FEVR、ノリエ病、コート病(Coate's disease)である。いくつかの実施態様では、FZD4マルチマー形成を増加させる薬剤は:ノリン、抗FZD4抗体、抗LRP5抗体、及び二重特異性抗FZD4/抗LRP5抗体からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、遺伝的変異により、FZD4-媒介性シグナル伝達が損なわれる。いくつかの実施態様では、被験者における遺伝的変異により:ノリン-C95R、FZD4-M105V及びFZD4-M157Vからなる群から選択される、被験者における異常なタンパク質生成物が生成される。いくつかの実施態様では、被験者における変異の存在性は、被験者を処置する前に検出される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、野生型(頂部)とTSPAN12ノックアウト(KO)マウス(底部)についての、代表的な未熟児網膜症(ROP)の網膜切片を示す。
【図2】図2は、野生型(WT;左)及びTSPAN12KOマウス(Hom;右)からの、ROPの網膜切片で観察された、新生血管核の数の定量的結果を示す。
【図3】図3は、TSPAN12が、Fzd4/LRP5により、ノリン-媒介性シグナル伝達を高めることを示す。
【図4】図4は、ノリン-媒介性シグナル伝達のTSPAN12向上が、Fzd4に対して特異的であることを示す。
【図5】図5は、TSPAN12が、Wnt3a-媒介性シグナル伝達を高めないことを示す。
【図6】図6は、ノリンがFzd4に結合し、LRP5又はTSPAN12に結合しないことを示す。
【図7】図7は、ノリンがFzd4発現細胞に結合し、Fzd5、LRP5又はTSPAN12発現細胞には結合せず、ノリンがTSPAN12と免疫共沈降しないことを示す。
【図8】図8は、TSPAN12がLRP5と会合しないことを示す。
【図9】図9は、TSPAN12が、Fzd4へのノリン結合性を高めないことを示す。
【図10】図10は、TSPAN12の同時発現が、細胞膜におけるFzd4の発現を変化させないことを示す。
【図11】図11は、野生型ノリン及びC95R変異ノリンにより形成される高次構造を示す。
【図12】図12は、TSPAN12の過剰発現が、モノマーC95Rノリンにおける障害を補償できることを示す。
【図13】図13は、TSPAN12が、シグナル伝達中のFZD4クラスター形成を調節することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
他に定められないならば、ここで使用される技術的及び科学的用語は、この発明が属する技術の当業者により、通常に理解されるような同様の意味を有する。例えば、Singletonら, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 第2版, J. Wiley & Sons(NewYork, NY 1994); Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press(Cold Spring Harbor, NY 1989)。本発明の目的にとって、所定の用語を以下に定める。
【0020】
ここで使用される場合、用語「TSPAN12」、「TSPAN12ポリペプチド」、「ノリン」、及び「ノリンポリペプチド」は、その調製方式及び種にかかわらず、天然から得られたTSPAN12又はノリンポリペプチドのアミノ酸配列を有するポリペプチドを称する。よって、このようなポリペプチドは、ヒト、マウス、又は任意の他の種からの、自然に生じるTSPAN12又はノリンのアミノ酸配列を有することができる。全長ヒトTSPAN12アミノ酸配列は:
MAREDSVKCLRCLLYALNLLFWLMSISVLAVSAWMRDYLNNVLTLTAETRVEEAVILTYFPVVHPVMIAVCCFLIIVGMLGYCGTVKRNLLLLAWYFGSLLVIFCVELACGVWTYEQELMVPVQWSDMVTLKARMTNYGLPRYRWLTHAWNFFQREFKCCGVVYFTDWLEMTEMDWPPDSCCVREFPGCSKQAHQEDLSDLYQEGCGKKMYSFLRGTKQLQVLRFLGISIGVTQILAMILTITLLWALYYDRREPGTDQMMSLKNDNSQHLSCPSVELLKPSLSRIFEHTSMANSFNTHFEMEEL(配列番号:1)
である。
【0021】
全長マウスTSPAN12アミノ酸配列は:
MAREDSVKCLRCLLYALNLLFWLMSISVLAVSAWMRDYLNNVLTLTAETRVEEAVILTYFPVVHPVMIAVCCFLIIVGMLGYCGTVKRNLLLLAWYFGTLLVIFCVELACGVWTYEQEVMVPVQWSDMVTLKARMTNYGLPRYRWLTHAWNYFQREGCGKKMYSFLRGTKQLQVLRFLGISIGVTQILAMILTITLLWALYYDRREPGTDQMLSLKNDTSQHLSCHSVELLKPSLSRIFEHTSMANSFNTHFEMEEL(配列番号:2)
である。
【0022】
全長ヒトノリンアミノ酸配列は:
MRKHVLAASFSMLSLLVIMGDTDSKTDSSFIMDSDPRRCMRHHYVDSISHPLYKCSSKMVLLARCEGHCSQASRSEPLVSFSTVLKQPFRSSCHCCRPQTSKLKALRLRCSGGMRLTATYRYILSCHCEECNS(配列番号:3)
である。
【0023】
全長マウスノリンアミノ酸配列は:
MRNHVLAASISMLSLLAIMGDTDSKTDSSFLMDSQRCMRHHYVDSISHPLYKCSSKMVLLARCEGHCSQASRSEPLVSFSTVLKQPFRSSCHCCRPQTSKLKALRLRCSGGMRLTATYRYILSCHCEECSS(配列番号:4)
である。
【0024】
このようなTSPAN12又はノリンポリペプチドは、天然から単離することもできるし、組換え及び/又は合成手段により生成することもできる。
【0025】
ポリペプチドに関して「単離された」とは、天然源から精製される、又は組換えもしくは合成方法により調製され、精製されることを意味する。「精製された」ポリペプチドは、他のポリペプチド又はペプチドを実質的には含有しない。ここで「実質的に含有しない」とは、他の供給源からのタンパク質の混成が、約5%未満、好ましくは約2%未満、より好ましくは約1%未満、さらに好ましくは約0.5%未満、最も好ましくは約0.1%未満であることを意味する。
【0026】
用語「アンタゴニスト」は広義の意味で使用され、ポリペプチドの生物活性を部分的又は全体的にブロック、阻害、又は中和する任意の分子を含む。例えば、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、眼における病的な血管形成を可能にし、ノリン-誘発性のシグナル伝達を転換又は開始させる、TSPAN12又はノリンの能力を、部分的又は全体的にブロック、阻害、又は中和するであろう。適切なアンタゴニスト分子には、特にアンタゴニスト抗体又は抗体断片、天然TSPAN12又はノリンポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体、ペプチド、TSPAN12又はノリンコレセプター(類)の可溶性断片、アンチセンスRNAs、リボザイム、RNAi、小有機分子等が含まれる。TSPAN12又はノリンポリペプチドのアンタゴニストを同定する方法は、TSPAN12又はノリンポリペプチドと、候補アンタゴニスト分子とを接触させ、通常ポリペプチドに関連する一又は複数の生物活性における検出可能な変化を測定することを含む。
【0027】
ここでの目的において「活性な」及び「活性」とは、生物学的及び/又は免疫学的活性を保持しているTSPAN12又はノリンの形態(類)を称し、ここで「生物学的」活性とは、抗体の生成を誘発する能力以外のTSPAN12又はノリンによって生ずる生物学的機能を称し、「免疫学的」活性とは、TSPAN12又はノリンが有する抗原性エピトープに対して抗体の生成を誘発する能力を称する。TSPAN12及びノリンの主要な生物活性は、ノリン-誘発性のシグナル伝達を転換又は開始させ、眼における病的な血管形成を誘発させることである。
【0028】
「TSPAN12コレセプター」又は「ノリンコレセプター」とは、TSPAN12又はノリンが結合し、TSPAN12又はノリンの生物活性を媒介する分子を称する。
【0029】
ここで、用語「抗体」は最も広い意味において使用され、特に、ヒト、非ヒト(例えば、マウス)及びヒト化モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望する結合特異性を示す限りそれらの抗体断片を包含する。
【0030】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0031】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')2断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
【0032】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖と一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。
【0033】
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステイン(類)を含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0034】
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
【0035】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、免疫グロブリンは異なるクラスが割り当てられる。免疫グロブリンには5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(イソ型)に分かれる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
【0036】
「抗体断片」は、全長抗体の一部、一般的にはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab')2及びFv断片が含まれる。
【0037】
ここで使用される場合、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を称し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物に対し、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohlerら, Nature, 256:495(1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4,816,567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991)及びMarksら, J. Mol. biol. 222: 581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0038】
ここでモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致する又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部であり、残りの鎖は、他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致する又は類似するもの、並びに所望の生物学的活性を表す限り、このような抗体の断片である(米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855(1984))。
【0039】
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRが、ヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一又は典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、Jonesら, Nature 321:522-525(1986);Riechmannら, Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596(1992)を参照のこと。
【0040】
ここで使用される場合、「処置」とは、有益な又は所望の臨床結果を得るための取り組みである。この発明の目的では、有益な又は所望の臨床結果は、限定するものではないが、検出可能であれ検出不可能であれ、徴候の軽減、疾患の程度の低減、疾患の安定化(つまり悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の回復又は緩和、及び寛解(部分的又は完全)を含む。「処置」は、疾患の発症又は変化を予防する意図で実施される治療介入である。従って、「処置」は、治癒的処置、又は予防的もしくは防止的手段を称する。処置を必要とするものは、既に疾患を患っている者、並びに疾患が防止される者を含む。特に処置は、細胞変性又はダメージの病態、例えば癌の処置における腫瘍細胞の病態を直接防止、遅延化、そうでなければ減少させ、又は他の治療剤による処置に対して、細胞をより敏感にさせる。
【0041】
「慢性」投与とは、急性様式とは異なり連続的な様式で薬剤(類)を投与し、初期の治療効果(活性)を長時間に渡って維持することを称する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処置である。
【0042】
「眼球内新生血管病」は、眼の血管新生により特徴付けられる疾患である。眼球内新生血管病の例には、限定されるものではないが、増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、結膜下出血、及び高血圧性網膜症が含まれる。好ましくは、眼球内新生血管病は、任意のノリン、TSPAN12、Frizzled-4又はLRP5遺伝子における、遺伝的変異に起因する病状を除外する。例えば、本発明の眼球内新生血管病は、好ましくはFEVR及びノリエ病を除外する。
【0043】
疾患の「病態」には、患者の幸福を損なう、全ての現象が含まれる。
【0044】
一又は複数の治療薬と「組合せた」投与とは、同時(同時期)及び任意の順序での連続した投与を含む。
【0045】
ここで用いられる場合、「担体」とは、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる用量及び濃度でそれらに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール類;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEENTM、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSTMを含む。
【0046】
「小分子」とは、ここで、約500ダルトン以下の分子量を持つと定義される。
【0047】
本発明を実施するための方法
TSPAN12又はノリン活性のアンタゴニストの調製及び同定
アンタゴニスト候補剤のスクリーニングアッセイは、TSPAN12又はノリンポリペプチドと結合又は複合体形成する化合物、又はそれらの活性及び/又は他の細胞性タンパク質との相互作用に干渉する化合物を同定するために設計される。
【0048】
小分子は、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストとして作用する能力を有しており、よって治療的に有用である。このような小分子には、自然に生じる小分子、合成の有機又は無機化合物及びペプチド類が含まれる。しかしながら、本発明の小分子は、これらの形態に限定されるものではない。小分子の多くのライブラリが商業的に入手可能であり、多様なアッセイがここで考察され、所望の活性についてこれらの分子をスクリーニングすることは、当該技術でよく知られている。
【0049】
いくつかの実施態様では、小分子TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、TSPAN12又はノリンの一又は複数の生物活性を阻害する、それらの能力によって同定される。よって、候補化合物と、TSPAN12又はノリンとを接触させ、ついでTSPAN12又はノリンの活性を評価する。一実施態様においては、ノリン-媒介性シグナル伝達を転換又は開始させる、TSPAN12又はノリンの能力が評価される。TSPAN12又はノリンの生物活性が阻害された場合に、化合物はアンタゴニストとして同定される。
【0050】
TSPAN12又はノリンのアンタゴニストとして同定された化合物は、本発明の方法に使用することができる。例えば、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、眼球内新生血管病の処置に使用することができる。
【0051】
多くのよく知られている動物モデル(例えば、未熟児網膜症及びレーザー誘起脈絡膜血管新生のモデルを含む;Ruiz-Edera & Verkman Invest. Ophthalmol. & Vis. Sci. 48(10): 4802-10(2007), Yuら Invest. Ophthalmol. & Vis. Sci. 49(6):2599-605(2007))を、眼球内新生血管病の発症及び病理形成におけるTSPAN12又はノリンの役割をさらに理解するために、また天然のTSPAN12又はノリンポリペプチドの抗体及び他のアンタゴニスト、例えば小分子アンタゴニストを含む、治療候補剤の効能をテストするために使用することができる。このようなモデルのインビボ性質により、特にヒト患者における反応予測をすることができる。
【0052】
抗体結合研究
Wntシグナル伝達レポーター細胞において、TSPAN12又はノリンに結合する、又はその効果を阻害する抗体の能力をテストする。例示的方法を実施例2に提供するが、当業者にとっては、他の方法も容易に明らかであろう。例示的抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性、及びヘテロコンジュゲート抗体、ここで記載されたものの調製物が含まれる。
【0053】
抗体結合研究は、任意の公知のアッセイ方法、例えば競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイで実施することができる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques(CRC Press, Inc., 1987), pp.147-158。
【0054】
競合結合アッセイは、限定量の抗体との結合について、テスト用サンプル検体と競合する、標識された標準体の能力に依存する。テスト用サンプルにおける標的タンパク質の量は、抗体に結合する標準体の量に反比例する。結合する標準体の量の測定を容易にするために、抗体に結合する標準体と検体が、未結合の標準体及び検体から簡便に分離できるように、抗体は、好ましくは競合の前後に不溶性にされる。
【0055】
サンドイッチアッセイは、検出されるタンパク質の異なる免疫原性部分、又はエピトープに結合可能な2つの抗体の使用に関与する。サンドイッチアッセイにおいて、テスト用サンプル検体は、固体状支持体に固定された第1の抗体により結合し、その後、第2の抗体が検体に結合し、よって、不溶性の3部分複合体が形成される。例えば米国特許第4,376,110号を参照。第2の抗体はそれ自体、検出可能な部分で標識されるか(直接サンドイッチアッセイ)、又は検出可能な部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を使用して測定する(間接サンドイッチアッセイ)ことができる。例えば、サンドイッチアッセイの一つのタイプはELISAアッセイであり、このケースで、検出可能な部分は酵素である。
【0056】
免疫組織化学にとって、組織サンプルは新鮮又は凍結しているものであってよく、又はパラフィンに包埋され、ホルマリン等の防腐剤で固定化されていてもよい。
【0057】
心血管、内皮、及び血管新生疾患の処置に有用な組成物には、限定されるものではないが、標的遺伝子産物の発現及び/又は活性を阻害する、抗体、有機及び無機の小分子、ペプチド、リンペプチド、アンチセンス、siRNA及びリボザイム分子、三重らせん体分子等が含まれる。
【0058】
潜在的アンタゴニストのより特定の例には、TSPAN12又はノリンに結合するポリペプチド、特に限定されるものではないが、ポリ-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、単鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、及びこのような抗体又は断片のキメラ又はヒト化バージョン、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体が含まれる。TSPAN12について、ある種の細胞外ドメイン(類)も、アンタゴニストとして提供することができる(例えば、Hoら J. Virol. 80(13): 6487-96(2006); Hemler Nature Rev. Drug Discovery 7: 747-58(2008)を参照)。また潜在的アンタゴニストは、密接に関連しているタンパク質、例えば何の影響も付与しないが、コレセプター(類)と相互作用する、よって、TSPAN12又はノリンの作用を競合的に阻害する、TSPAN12又はノリンの変異形態のものであってもよい。
【0059】
他の潜在的なTSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、アンチセンス技術を使用して調製されたアンチセンスRNA又はDNAコンストラクトであり、ここで、例えばアンチセンスRNA又はDNA分子は、標的とされるmRNAにハイブリダイズし、タンパク質の翻訳を予防することにより、mRNAの翻訳を直接ブロックするように作用する。アンチセンス技術は、三重らせん体の形成、又はアンチセンスDNA又はRNAを介した遺伝子発現をコントロールするのに使用可能であり、その双方の方法は、DNA又はRNAへのポリヌクレオチドの結合に基づいている。ここで、成熟したTSPAN12及びノリンのポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド配列の5'コード化部分は、約10〜40塩基長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを設計するのに使用される。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に係る遺伝子の領域に相補的となるように設計され(三重らせん体−例えば、Leeら, Nucl. Acids Res. 6:3073(1979); Cooneyら, Science 241:456(1988); Dervanら, Science 251:1360(1991)を参照)、よって、TSPAN12又はノリンの転写及び生成が防止される。ここで称されるように、RNAの部分に対する配列「相補性」は、RNAとハイブリダイズ可能な程に十分な相補性を有し、安定した二本鎖を形成する配列を意味し;二重鎖アンチセンス核酸の場合、二本鎖DNAの一本の鎖が試験されるか、又は三重らせん体形成がアッセイされる。ハイブリダイズする能力は、アンチセンス核酸の相補性の度合い及び長さの双方に依存するであろう。一般的に、ハイブリダイズする核酸が長ければ長いほど、それが含み得、なおも安定した二本鎖(又は場合によっては三本鎖)を形成するRNAとの塩基のミスマッチが多くなる。当業者であれば、ハイブリダイズした複合体の融点を決定するために、標準的な手順を使用することにより、ミスマッチの許容度を確定することができる。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、インビボでmRNAにハイブリダイズし、mRNA分子のTSPAN12への翻訳がブロックされる(antisense - Okano, Neurochem. 56:560(1991); Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression(CRC Press: Boca Raton, FL, 1988)。
【0060】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA又はRNA又はキメラ混合物、又はその誘導体又は修飾体、単鎖又は二本鎖とすることができる。オリゴヌクレオチドは、例えば分子の安定性、ハイブリダイゼーション等を改善するために、塩基部分、糖部分、又はリン酸骨格で修飾することができる。オリゴヌクレオチドは、他の付加群、例えばペプチド(例えば、インビボで宿主細胞レセプターを標的とするため)、又は細胞膜を通っての輸送を容易にする薬剤(例えば、Letsingerら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:6553-6556(1989); Lemaitreら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:648-652(1987); PCT出願WO88/09810, 1988年12月15日公開を参照)、又は血液脳関門(例えば、PCT出願WO89/10134, 1988年4月25日公開を参照)、ハイブリダイゼーション誘発開裂剤(例えば、Krolら, BioTechniques 6:958-976(1988)を参照)、又は挿入剤(例えば、Zon, Pharm. Res. 5:539-549(1988)を参照)を含むことができる。この目的のために、オリゴヌクレオチドは、他の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発開裂剤等にコンジュゲート可能である。
【0061】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されるものではないが、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルクエオシン(queosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルクエオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、擬似ウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6-ジアミノプリンから選択される、少なくとも一の修飾された塩基部分を有し得る。
【0062】
また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されるものではないが、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロース、及びヘキソースを含む群から選択される、少なくとも一の修飾された糖部分を有し得る。
【0063】
さらなる他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホラミドチオアート、ホスホラミダート、ホスホルジアミダート、メチルホスホナート、アルキルホスホトリエステル、及びホルムアセタール又はその類似体からなる群から選択される、少なくとも一の修飾されたリン酸骨格を有する。
【0064】
さらなる他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはアノマーオリゴヌクレオチドである。アノマーオリゴヌクレオチドは、通常のユニットに反して、ストランドが互いに平行に走っている、相補RNAと、特定の二重鎖ハイブリッドを形成する(Gautierら, Nucl. Acids Res. 15:6625-6641(1987))。オリゴヌクレオチドは、2'-0-メチルリボヌクレオチド(Inoueら, Nucl. Acids Res. 15:6131-6148(1987))、又はキメラRNA-DNA類似体(Inoueら, FEBS Lett. 215:327-330(1987))である。
【0065】
いくつかの実施態様では、アンタゴニストは、抑制二本鎖RNA、例えばsiRNA、shRNA等である。
【0066】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成器(例えば、Biosearch, Applied Biosystems等から商業的に入手可能)を使用し、当該技術で公知の標準的な方法により合成することができる。例えば、ホスホロチオアートオリゴヌクレオチドは、Steinら(Nucl. Acids Res. 16:3209(1988))の方法により合成することができ、ホスホン酸メチルオリゴヌクレオチドは、制御された多孔質ガラスポリマー支持体を使用することにより調製することができる(Sarinら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448-7451(1988))。
【0067】
また、上述したオリゴヌクレオチドは、アンチセンスRNA又はDNAがインビボで発現して、TSPAN12又はノリンの生成を阻害可能なように、細胞に送達させることができる。アンチセンスDNAが使用される場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の約−10〜+10の位置で誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
【0068】
潜在的なアンタゴニストは、TSPAN12又はノリンに結合し、よってその活性をブロックする小分子をさらに含む。小分子の例には、限定されるものではないが、小ペプチド又はペプチド様分子、好ましくは可溶性ペプチド、及び合成の非ペプチジル有機又は無機化合物が含まれる。
【0069】
付加的な潜在的アンタゴニストはリボザイムであり、これは、RNAの特異的切断を触媒可能な酵素RNA分子である。リボザイムは相補標的RNAに対する、配列-特異性ハイブリダイゼーションにより作用し、続いてヌクレオチド鎖を切断する。潜在的なRNA標的の範囲内の特定のリボザイム切断部位は、公知の技術により同定することができる。さらなる詳細は、Rossi, Current Biology 4:469-471(1994)、及びPCT出願WO97/33551(1997年9月18日公開)を参照のこと。
【0070】
部位特異性認識配列でmRNAを切断するリボザイムは、標的遺伝子mRNAを破壊するのに使用可能であるが、ハンマーヘッド型リボザイムを使用するのが好ましい。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNAと相補塩基対を形成する、隣接領域により決定される位置でmRNAを切断する。唯一の必要条件は、標的mRNAが、2つの塩基の次の配列:5'-UG-3'を有していることである。ハンマーヘッド型リボザイムの構築及び生成は当該技術でよく知られており、その全体が参照としてここに導入される、Myers,Molecular Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, New York(1995),(特に、図4, 833頁を参照)、及びHaseloff 及び Gerlach, Nature, 334:585-591(1988)に、さらに詳細に記載されている。
【0071】
好ましくは、リボザイムは、切断認識部位が標的遺伝子mRNAの5'末端近傍に位置するように、すなわち無機能mRNA転写の細胞蓄積内が最小となり、効能が増加するように操作される。
【0072】
本発明のリボザイムは、RNAエンドリボヌクレアーゼ(以下、「Cech型リボザイム」)、例えばテトラヒメナ・サーモフィアにおいて自然に生じ(IVS、又はL-19 IVS RNAとして公知)、Thomas Cech及び共同研究者(Zaugら, Science, 224:574-578(1984); Zaug 及び Cech, Science, 231:470-475(1986); Zaugら, Nature, 324:429-433(1986); University Patents Incによる国際特許出願WO88/04300 ; Been 及び Cech, Cell, 47:207-216(1986))に広く記載されているものが含まれる。Cech型リボザイムは、標的RNA配列にハイブリダイズし、その後、標的RNAの切断が生じる、8つの塩基対活性部位を有する。本発明は、標的遺伝子に存在する8つの塩基対活性部位を標的とする、Cech型リボザイムを含む。
【0073】
アンチセンスアプローチにおいては、リボザイムは、修飾されたオリゴヌクレオチド(例えば、安定性、標的性等を改善するため)からなり、インビボで標的遺伝子を発現する細胞に送達されるべきである。好ましい送達法は、形質移入された細胞が十分量のリボザイムを生成し、内在性の標的遺伝子のメッセージを破壊し、翻訳を阻害するように、強構造のpol III又はpol IIプロモーターのコントロール下で、リボザイムを「コード化」するDNAコンストラクトを使用することを含む。アンチセンス分子とは異なり、リボザイムは触媒的であるために、効率のためには、細胞内濃度が低いことが要求される。
【0074】
転写阻害に使用された三重らせん体形成における核酸分子は、単鎖であるべきであり、デオキシヌクレオチドからなる。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成は、一般的に、二本鎖の一本の鎖におけるプリン又はピリミジンのかなり大きな伸長を必要とする、フーグスティーン塩基対則を介して三重らせん体の形成が促進されるように設計される。さらなる詳細は、例えばPCT出願WO97/33551,上掲を参照のこと。
【0075】
TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、限定されるものではないが、増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、結膜下出血、及び高血圧性網膜症を含む、眼球内疾患の処置にも有用であり得る。
【0076】
投与プロトコル、スケジュール、用量及び処方
TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、上述にて説明したような種々の疾患及び疾病に対する予防剤及び治療剤として、製薬的に有用である。
アンタゴニストの治療用組成物は、凍結乾燥製剤、水溶液の形態で、場合によっては製薬的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16版, A. Osol, A.編(1980))と、適切な純度を有する所望の分子を混合することにより、保管用に調製される。許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、亜鉛-タンパク質複合体);及び/又はトゥイーン(TWEEN)TM、プルロニクス(PLURONICS)TM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0077】
このような担体のさらなる例は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばホスファート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、マグネシウムトリシリカート、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、及びポリエチレングリコールを含む。アンタゴニストの局所用の担体又はゲルベースの形態は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又はメチルセルロース等の多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリラート、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びモクロウアルコールを含む。あらゆる投与について、従来のデポー形態が好適に用いられる。このような形態は、例えば、マイクロカプセル、ナノ-カプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入形態、鼻スプレー、舌下錠、及び徐放性製剤を含む。TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、典型的には、約0.1mg/ml〜100mg/mlの濃度で、このようなビヒクルに処方されるであろう。
【0078】
他の処方は、定型部材に、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストを導入することを含む。このような部材は、内皮細胞の成長及び血管新生の調節に使用することができる。さらに、腫瘍の浸潤及び転移を、これらの部材で調節することができる。
【0079】
インビボ投与に使用されるTSPAN12又はノリンのアンタゴニストは滅菌されていなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌フィルター膜を通す濾過により容易に達成される。凍結乾燥形態にある場合、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、典型的には使用時に適当な希釈剤と再構成するために他の成分と組み合わせて処方される。液状処方物の例は、皮下注射用の1回投与バイアルに充填された無菌の、透明な、無色の保存料未添加(unpreserved)溶液である。繰り返し使用に適した保存用製薬用組成物は、例えば、主として兆候及びポリペプチドの種類に応じて:
TSPAN12又はノリンのアンタゴニスト;
溶液におけるポリペプチド又は他の分子の最大安定の範囲内のpH、好ましくは約4-8を維持可能なバッファー;
攪拌誘発性凝集に対して、ポリペプチド又は分子を主として安定化させる洗浄剤/界面活性剤;
等張剤;
フェノール、ベンジルアルコール及びベンゼトニウムハロゲン化物、例えば塩化物の群から選択される防腐剤;及び
水;
を含有可能である。
【0080】
使用される洗浄剤が非イオン性である場合、それは、例えばポリソルバート類(polysorbates)(例えば、ポリソルバートTM(トゥイーンTM)20、80等)、又はポロキサマー類(poloxamers)(例えば、ポロキサマーTM188)であってよい。非イオン性界面活性剤の使用により、ポリペプチドの変性に起因しない剪断面応力に、処方物を暴露させることができる。さらに、このような界面活性剤を含有する処方物は、エアゾール装置、例えば肺投与に使用されるもの、及び針のないジェット注射ガンに使用することができる(例えば、欧州特許第257,956号を参照)。
【0081】
等張剤は、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストの液状組成物を確実に等張にするために存在し、多価糖アルコール、好ましくは三価又は高級糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールを含む。これらの糖アルコールは、単独で又は組合せて使用することができる。また塩化ナトリウム又は他の適切な無機塩を、溶液を等張にするのに使用することもできる。
【0082】
バッファーは、所望するpHに応じて、アセタート、シタラート、スクシナート、又はホスファートバッファーとすることができる。この発明の一タイプの液状処方物のpHは、約4〜8、好ましくは生理学的pHの範囲に緩衝される。
【0083】
防腐剤であるフェノール、ベンジルアルコール及びベンゼトニウムハロゲン化物、例えば塩化物は、使用可能な公知の抗菌剤である。
【0084】
ここに記載の治療用ポリペプチド製組成物は、一般的に無菌のアクセスポート、例えば、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針で貫通可能なストッパーを備えたバイアルを有する容器に入れられる。処方物は、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、又は筋肉内(i.m.)の繰り返し注射として、あるいは鼻内又は肺内送達に適したエアロゾル処方物として投与可能である(肺内送達については、例えば欧州特許第257,956号参照)。処方物は、好ましくは硝子体内(IVT)又は結膜下送達として投与される。
【0085】
また、治療用ポリペプチドは、徐放性調製物の形態で投与することが可能である。徐放性調製物の適切な例には、タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、このマトリクスは、例えばフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langerら, J. Biomed. Mater. Res. 15:167-277(1981)及びLanger, Chem. Tech. 12:98-105(1982)に記載されたポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、欧州特許第58,481号)、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタマートのコポリマー(Sidmanら, Biopolymers 22:547-556(1983))、非分解性エチレン-酢酸ビニル(Langerら, 上掲)、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLupron Depot(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)が含まれる。
【0086】
エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化されたタンパク質が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物活性の喪失及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の使用、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
【0087】
徐放性のTSPAN12又はノリンのアンタゴニスト組成物は、リポソーム的に捕捉されたアンタゴニストを含有する。このようなリポソームはそれ自体公知の方法で調製される:独国特許第3,218,121号; Epsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688-3692(1985);Hwangら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030-4034(1980);欧州特許第52,322号;欧州特許第36,676号;欧州特許第88,046号;欧州特許第143,949号;欧州特許第142,641号;日本国特許出願第83-118008号;米国特許第4,485,045号及び同4,544,545号;及び欧州特許第102,324号。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モル以上の単層型の小体(約200-800オングストローム)のものである。コレステロール%の選択割合は、最適な治療がなされるように調節される。
【0088】
もちろん、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストの治療的に有効な用量は、処置(予防を含む)される病状、投与方法、処置に使用される化合物の種類、関与する任意の併用治療、患者の年齢、体重、一般的な病状、病歴等、このような因子に応じて変化するであろうし、その決定は医者の技量の範囲内で十分である。従って、治療専門者にとっては、最大の治療効果を得るのに必要な場合は、用量を滴定し、投与経路を変更する必要もあるであろう。
【0089】
上述した指針において、効果的な用量は、一般的に約0.001〜約1.0mg/kg、好ましくは約0.01-1.0mg/kg、最も好ましくは約0.01-0.1mg/kgの範囲内である。
【0090】
TSPAN12又はノリンのアンタゴニストの投与経路は、公知の方法、例えば静脈内、筋肉内、大脳内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、眼球内(硝子体内を含む)、関節内、滑液嚢内、くも膜下腔内、口腔、局所、又は吸入経路における注射又は注入により、又は記載したような徐放系によるものに一致する。
【0091】
ペプチド又は小分子がアンタゴニストとして使用されるならば、液状又は固体状の形態で、哺乳動物に経口的又は非経口的に投与されることが好ましい。
【0092】
塩を形成し、以下有用である分子の薬理学的に許容可能な塩の例は、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩)、アンモニウム塩、有機塩基塩(例えば、ピリジン塩、トリエチルアミン塩)、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩)、及び有機酸の塩(例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩)が含まれる。
【0093】
併用治療
当該問題の疾患の予防又は処置における、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストの有効性は、活性化合物を、同じ組成物において、又は別個の組成物として、それらの目的にとって有効な他の薬剤と連続的に又は組合せて投与することにより改善することができる。
【0094】
例えば、血管新生関連病、例えば眼病の処置に使用されるTSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、他の薬剤と組合せることができる。特に、互いに、又は他の抗血管新生剤と組合せて、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストを使用することが所望されている。いくつかの実施態様では、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、VEGFアンタゴニスト、例えば抗体、特にラニビズマブと組合せて使用される。
【0095】
TSPAN12又はノリンのアンタゴニストと組合せて投与される治療剤の有効量は、医者又は獣医の裁量となるであろう。用量の投与及び調節は、処置される病状の最大管理が達成されるようになされる。さらに、用量は、使用される治療剤の種類及び処置される特定の患者等の要因にも依存するであろう。典型的には、使用量は、付与される治療剤がTSPAN12又はノリンなしに投与されるのならば、使用される場合と同じ用量となるであろう。
【0096】
TSPAN12又はノリンの抗体
本発明の最も有望な薬剤候補のいくつかは、TSPAN12又はノリンの生成を阻害し、及び/又はTSPAN12又はノリンの活性を低減可能な抗体及び抗体断片である。
【0097】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、TSPAN12又はノリンポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に結合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例には、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、又は合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
【0098】
モノクローナル抗体
あるいは、抗TSPAN12又は抗ノリン抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
【0099】
免疫化剤は、典型的にはTSPAN12又はノリンのポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する。Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,(New York:Academic Press, 1986) pp. 59-103。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培養培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培養培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプテリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0100】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのAmerican Type Culture Collectionより入手可能である。また、ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も記載されている。Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987)pp. 51-63。
【0101】
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、TSPAN12又はノリンのポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイできる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定される。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0102】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる。Goding, 上掲。この目的のための適当な培養培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640培地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
【0103】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析法はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製手順によって培養培地又は腹水液から単離又は精製することができる。
【0104】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源として供給される。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成等しない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより(米国特許第4,816,567号;MorrisonR,上掲)、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
【0105】
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られている。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製にはインビトロ法もまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
【0106】
ヒト及びヒト化抗体
抗TSPAN12又は抗ノリン抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含み得る。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントのCDRの残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、好ましくは免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。Jonesら, Nature, 321:522-525(1986); Riechmannら, Nature, 332:323-329(1988); 及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596(1992)。
【0107】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は本質的に、Winter及び共同研究者(Jonesら, Nature, 321:522-525(1986);Riechmannら, Nature, 332:323-327(1988);Verhoeyenら, Science, 239:1534-1536(1988))の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施できる。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的にはいくつかのCDR残基及び場合によってはいくつかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0108】
また、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む当該分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381(1991);Marksら, J. Mol. Biol., 222:581(1991)。また、Coleら及びBoernerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる。Coleら, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoernerら, J. Immunol., 147(1):86-95(1991)。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することにより産生することができる。投与の際に、遺伝子再配列、組立、及び抗体レパートリーを含むあらゆる観点においてヒトに見られるものに非常に類似しているヒト抗体の生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;同5,545,806号;同5,569,825号;同5,625,126号;同5,633,425号;及び同5,661,016号、及び次の科学文献:Marksら, Bio/Technology 10, 779-783(1992); Lonbergら, Nature 368 856-859(1994); Morrison, Nature 368, 812-13(1994); Fishwildら, Nature Biotechnology 14:845-851(1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14:826(1996); Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93(1995)に記載されている。
【0109】
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本ケースにおいて、結合特異性の一方はTSPAN12又はノリンポリペプチドに対してであり、他方は任意の他の抗原又はポリペプチドに対してである。
【0110】
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術において公知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生成は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく。Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539(1983)。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開の国際公開第93/08829号、及びTrauneckerら, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
【0111】
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するためのさらなる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0112】
ヘテロ結合抗体
ヘテロ結合抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染の処置のために提案されている。国際公開第91/00360号; 国際公開第92/200373号; 欧州特許第03089号。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオラート及びメチル-4-メルカプトブチリミダート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示されているものが含まれる。
【0113】
免疫リポソーム
また、ここに開示する抗体は、免疫リポソームとして処方することができる。抗体を含むリポソームは、Epsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwangら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030(1980); 及び米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号に記載されたような、当該技術で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0114】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成可能である。リポソームは、所定の孔サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab’断片は、Martinら, J. Biol. Chem. 257: 286-288(1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに結合され得る。化学治療剤(ドキソルビシン等)は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizonら, J. National Cancer Inst. 81(19) 1484(1989)を参照。
【0115】
抗体の製薬組成物
ここで同定されるTSPAN12又はノリンポリペプチドに特異的に結合する抗体、並びにここに開示したスクリーニングアッセイで同定された他の分子は、種々の疾患の治療のために、製薬用組成物の形態で投与することができる。
【0116】
ここでの処方物は、処置される特定の徴候に必要な場合に1以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、その機能を増強させる薬剤を含んでもよい。このような分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
【0117】
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は上掲のRemington's Pharmaceutical Scienceに開示されている。
【0118】
インビボ投与に使用される処方物は無菌でなけらばならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
【0119】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物活性の喪失及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の使用、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
【0120】
抗体を使用した処置方法
TSPAN12又はノリンに対する抗体は、上述にて記した種々の血管新生に関連した病状を処置するのに使用することができると考えられる。
抗体は、公知の方法に一致して、例えばボーラスとしての静脈内投与、又は長時間にわたる連続注入、硝子体内、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、くも膜下腔内、口腔、局所、又は吸入経路により、哺乳動物、好ましくはヒトに投与される。抗体の硝子体内投与が好ましい。
【0121】
一実施態様では、病的な眼の血管新生は併用治療において攻撃される。抗TSPAN12及び/又は抗ノリン抗体及び他の抗体(例えば、抗VEGF)は、治療的有効量で患者に投与される。
例えば、疾患の種類及び重症度に応じて、約1μg/kg〜50mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)の抗体が、一又は複数の別個投与、又は連続注入にかかわらず、患者に投与する際の初期候補用量である。上述した要因に応じて、典型的な毎日又は週当たりの用量は、約1μg/kg〜100mg/kgの範囲、又はそれ以上であってよい。条件に応じた、数日又はより長期にわたる繰り返し投与において、疾患の兆候の発生が所望程度に抑制されるまで、処置は繰り返されるか、又は持続される。しかしながら、他の投薬計画も有用である。この治療の進捗具合は、例えば腫瘍のX線画像を含む、従来からの技術及びアッセイにより、容易にモニターされる。
【0122】
次の実施例は、例証目的のためだけに提供されるものであり、いかなる方法においても、本発明の範囲を限定することを意図してるものではない。
本明細書に引用された全ての特許及び参考文献の開示は、それらの全体が参照によりここに導入される。
【実施例】
【0123】
実施例において言及される商業的に入手可能な試薬は、特に示さない限りは、製造者の使用説明書に従い使用した。ここに引用された全ての参考文献は、出典明示によりここに援用される。
実施例1.TSPAN12は正常又は病的な血管新生に関与している
TSPAN12のコード化領域は、ヒト及びマウスを含むいくつかの生物体において公知であるが(例えば、GenBank(登録商標)受入番号、hTSPAN12についてはNM_012338、及びmTSPAN12についてはNM_173007)、それについての機能は同定されていない。その機能を明らかにし始めるために、従来からの方法を使用し、TSPAN12ノックアウト(KO)マウスを作製した。特に、標的コンストラクトを129/SvEvBrd(Lex-2)ES細胞にエレクトロポレーションし、サウザンブロットアッセイを使用し、標的クローンを同定した。標的クローンからの細胞をC57BL/6(アルビノ)胚盤胞に注射した。得られたキメラをC57BL/6(アルビノ)メスと交配させ、変異に対してヘテロ接合性であるマウスを生じさせ、続いてC57/BL6バックグラウンド(>N3)において戻し交配させ、表現型分析及び他の実験に使用した。TSPAN12−/−マウスは生存能力があり、繁殖能力もあった。
【0124】
c-末端細胞内ペプチドCRREPGTDQMMSLK(配列番号:5)に対して、αTSPAN12-Anaspec-Cと命名されたウサギポリクローナル血清を作製し、それを親和精製した。細菌において発現したアミノ酸116-221(aa116-221-His6)に相当するhis-タグTSPAN12断片に対して、α-TSPAN12-Josman-Bと命名された第2のポリクローナル血清を生じさせ、精製した。変異マウスにおける標的を、αTSPAN12-Anaspec-Cを使用する免疫沈降によりTSPAN12に富むP1頭部の可溶化液から、サウザンブロット、PCR及びウエスタンブロットにより確認した。
【0125】
まず、種々の組織におけるTSPAN12の発現性を分析し、P15での発達中の網膜血管系、及びP1で髄膜にて発現していることが見出された。非-CNS血管系では、ほとんど又は全く発現は検出されなかった。しかしながら、公開されている手順に従いプロセシングされたTSPAN12 KOマウスからのイソレクチン染色された網膜全載調製物において、NFL血管系に大規模な形態変化は観察されなかった(Gerhardtら, J. Cell. Biol. 161(6):1163-77(2003))。従って、種々の眼病モデルにおいて、表現型について、TSPAN12変異マウスを分析した。
【0126】
8つのTSPAN12(C57BL/6)het x het交配からのマウスの子供を生じせしめ、未熟児網膜症(ROP)のマウスモデルに使用した。6匹の子供を乳母と共に、P7で開始して5日間、75%の酸素(過酸素症)に置いた。P12にて、動物をエアコンの効いた部屋(酸素正常状態)に戻し、さらに5日間(P17)保持した。尾部のバイオプシーを遺伝子型判定に使用し、37の動物を次のようにして弱らせた:ホモ接合野生型n=8、ヘテロ接合型n=21、ホモ接合変異型n=8。
【0127】
P17に、右目を4%のPFAに配し、左目をダビットソンの固定液に配した。パラフィン工程及び切片化のために、角膜とレンズを左目から取り除いた。眼杯を虹彩側が下になり、切開面が面するようにブロックに配した。16ミクロン間隔の切片を得、特注の核アルゴリズムを具備するAperio ScanScope(登録商標)を使用し、血管新生について分析した。簡単には、神経線維層(NFL)に密接に関連した新生血管房を、アルゴリズム定量化の関心ある領域として同定した。ケース毎に、新生血管核を含む最小30切片を、網膜の血管新生の評価のために定量した。
【0128】
ROPモデルが作製されるように設定された条件下で飼育された野性型動物において、網膜/硝子体の界面で新生血管核が同定された(図1)。対照的に、ホモ接合型TSPAN12変異マウスは、ほとんど新生血管核を有さなかった(図2)。これらのデータにはTSPAN12がこのROPモデルにおいては、病的な血管新生に必要であることが示された。
【0129】
ROPモデルにおけるこの表現型の観察後、我々はより微細なスケールで網膜血管系の発達を分析した。マウスの網膜において、NFLの表在性血管網は、出芽、遊走及び出産後P0-P10の間の再構成の組合せを介して、視神経頭から確立される。その後、外網状層(OPL)及び内網状層(IPL)において、血管が出芽し、そこで2つの末梢血管床が確立され、3層血管構造に至る。P8までに、NFL血管系の発達が、TSPAN12−/−マウスの網膜全載においてほとんど変化しないことが見出された。断面では、OPLにおける毛細血管の形成が、TSPAN12+/+マウスではP11までに開始し、出芽がTSPAN12−/−マウスでは完全に不在であることが見出された。TSPAN12発現が血管系では検出されたが、他の網膜組織では検出されないという事実は、網膜組織像がヘマトキシリン及びエオシン染色において正常であると思われた観察と共に、血管障害が原発性であることを示している。また、成体のTSPAN12−/−マウスにおいて、OPLでは血管新生されず、障害が一過性ではないことが確認された。IPLにおける組織化された毛細血管床の代わりに、TSPAN12−/−マウスは、NFLとIPLの間の空間に、幾分拡大した蛇行状の毛細血管を示した。TSPAN12−/−網膜における内側及び外側の顆粒層の厚みは、成体においては一貫して低減しているが、発育中のマウスにおいてはそうではなく、これは神経細胞が血管新生における障害によって二次的に影響を受けていることを示している。
【0130】
同時に、TSPAN12−/−マウスの表現型は、表在性血管網のかなりの正常な発達、及びOPLにおける毛細血管の欠如、Fzd4変異マウス(Xuら Cell 116: 883-95(2004))及びノリン変異マウス(Luhmannら Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 46(9): 3372-82(2005))について報告されている表現型に非常に類似していると思われる表現型により特徴付けられる。よって、TSPAN12−/−マウスが、Fzd4又はそのリガンドノリンの破壊に起因する付加的な特徴的特性を示すかどうかをテストした。ノリン変異マウスは、P15で、NFLから内顆粒層の方へ広がる非常に特徴的な微小動脈瘤を示す。際だって、共焦点顕微鏡法によりTSPAN12−/−マウスのP16網膜を分析すると、ノリン変異マウスにおいて記載されたものに極めて類似した、微小動脈瘤様血管形成異常が明らかとなった。これらの高度に特徴的な形成異常の類似性は、ノリン変異マウスとTSPAN12−/−マウスの双方において、形成異常が実質的同時期に発生したという事実により支持される。さらなる類似性には、TSPAN12−/−マウスの網膜血管におけるMeca-32の異常発現が含まれ、有窓血管についてのマーカーは、網膜血管系では通常発現しないが、Fzd4変異マウスにおいてはアップレギュレートされる。ノリン及びFzd4は、コレセプターLRP5と共同して、カノニカルWnt-経路を活性化させ、細胞質β-カテニンの蓄積を促進させるリガンド/レセプター対であるため、TSPAN12−/−マウスの表現型的特徴は、TSPAN12がノリン/β-カテニンシグナル伝達に必要であり得ることが示された。
【0131】
実施例2.TSPAN12はWntシグナル伝達に関与している
TSPAN12、Fzd4及びノリンKOマウスにおいて観察される表現型間の類似性に基づき、TSPAN12が、Fzd4を介したノリン-誘発性β-カテニンWntシグナル伝達に関与しているかどうかを決定するために、Topflashレポーターアッセイを実施した。Topflashコンストラクトは、カノニカルβ-カテニンシグナル伝達に対して反応するLEF/TCFコンセンサス部位を含むプロモーター下、ホタルのルシフェラーゼからなる。構成的プロモーター下でウミシイタケルシフェラーゼを発現するコンストラクトが、内部対照体として使用される。レポーターコンストラクト及びレセプターで形質移入された細胞は、外来性TSPAN12又はベクター対照体の存在下、10nMの組換えノリンで活性化された。16-18時間後、レポーター活性(ホタル活性をウミシイタケ活性で割る)を決定した。ノリン-媒介性シグナル伝達は、対照細胞よりも、TSPAN12が過剰発現している細胞において、約4倍高かった(図3、左欄−右欄は、対照となるウミシイタケルシフェラーゼ発現が、全ての条件下で同じであることを示している)。野生型TSPAN12 mRNAがsiRNAを使用して低減している(発現は対照レベルの5分の1のわずかに下だった)細胞において、同様の実験を実施し、ノリン-誘発性、Fzd4/LRP5-媒介性発現は、TSPAN12ノックダウン後に、かなり低減したことが見出された。
【0132】
TSPAN12効果の特異性をさらに証明するために、frizzledコンストラクト及び/又はリガンドを変えた、いくつかの実験を実施した。まず、他のfrizzledコンストラクト(Fzd1、Fzd2、Fzd7、Fzd10)、並びにFzd4を発現する同様のベクターで形質移入された細胞を使用する実験を実施した。図4に示すように、ノリン-媒介性Wnt/β-カテニンのカノニカルシグナル変換における、TSPAN12の主要な影響は、Fzd10-媒介性シグナル伝達にあまり影響しないFzd4に対して特異的である。次に、シグナル伝達を誘発させるためのリガンドとしてWnt3aを使用するこのアッセイにおいて、シグナル伝達を分析した。ここで、TSPAN12は、任意のFZD-媒介性シグナル伝達をあまり高めなかったことが見出された(図5)。リガンドとしてWnt5aを使用しても同様の結果が観察された。
【0133】
実施例3.TSPAN12はFzd4-レセプター複合体の一部である
TSPAN12が、ノリン/β-カテニンシグナル伝達の開始の間に、実際に機能するならば、レセプター複合体の成分と共に共局在化し、相互作用することが予期される。この可能性をテストするために、flag-Fzd4(細胞外に位置するflag)とHA-TSPAN12を用いてHela細胞を形質移入した。細胞膜Fzd4を、氷上にて、非透過性の生存細胞において、flag抗体を用いて検出し、固定化及び透過化の後に続いて、TSPAN12を検出した。この染色パラダイムにより、Hela細胞の表面における多量のFzd4発現が明らかとなった。Fzd4は細胞膜に均一に分散していないが、その代わり、多くの点状領域に凝縮していることが見出された。TSPAN12はFzd4ポジティブ点状体と共に広範囲に共局在化しており、さらに、抗flag染色が細胞を透過することなく細胞表面で実施されるために、抗flag抗体で染色されない細胞内構造体に生じる。対照的に、CD9とFzd4は共局在化しなかった。Fzd4がFzd5で置き換えられ、TSPAN12と同時発現する場合、TSPAN12とFzd5が最も離間して局在化することが見出された(双方のタンパク質を強く発現したまれな細胞でのみ、分離が部分的に克服された)。
【0134】
ノリンのN末端アルカリホスファターゼ融合体(AP-ノリン)を含有する条件培地を使用し、ノリン-レセプター相互作用を研究する(Xuら 上掲)。Fzd4、LRP5又はTSPAN12のいずれかを使用してHeLa細胞を形質移入させ、flag-AP-ノリンを含有する条件培地で、これらの細胞を探索した。以前の報告と一致して、flag-AP-ノリンは、Fzd4を発現するが、LRP5は発現しない細胞に、効果的に結合することを見出した。重要なことに、ノリンは、TSPAN12を単独で発現する細胞には結合しなかった(図6)。TSPAN12とレセプター複合体との相互作用を探索するために、293細胞において、Fzd4、LRP5及びTSPAN12を同時発現させ、Frizzledの代替としてFzd5、テトラスパニンの代替としてCD9を、それぞれの対照体に使用した。(内部移行事象を防止するために)氷上にて、flag-AP-ノリンを含有する条件培地と共に、これらの細胞をインキュベートし、十分に洗浄した後、ノリン関連の膜タンパク質を穏やかに架橋させ、ついで抗flag抗体により免疫沈降させた。ノリンはFzd4を効果的に沈殿させるが、Fzd5はそうではなかった。さらに、TSPAN12は、ノリンにより、Fzd4と共沈殿したが、Fzd5とはせず、Frizzledが存在しない場合は沈殿した。対照的に、CD9は、TSPAN12と同程度に発現したが、ノリンにより、Fzd4と共沈殿しなかった(図7)。よって、TSPAN12は、Fzd4レセプター複合体と物理的に結合する。また、架橋剤を使用しない場合、TSPAN12は、洗浄抽出物(1%のNP-40+0.1%のN-ドデシル-ベータ-D-マルトシド)からLRP5の不在下において、ノリンによりFzd4と共沈殿した(図示せず)。TSPAN12とLRP5が同時発現し、TSPAN12が免疫沈降する場合、LRP5との関連性は、何も検出されなかった(図8)。
【0135】
TSPAN12によりノリン/β-カテニンシグナル伝達が強力に高められることで、TSPAN12がFzd4に結合するノリンを増加可能であるかどうかを分析した。この目的のために、Hela細胞をflag-Fzd4、LRP5、TSPAN12又はベクター対照体で形質移入し、続いて、flag-AP-ノリン条件培地のいくつかの希釈液を用いて探索した。細胞へのflag-AP-ノリンの結合性は、テストした全てのノリン濃度で、TSPAN12の存在下又は不在下で同様であった(図9)。TSPAN12がFzd4発現レベルを低下させるが、同時にノリン結合性を増加させる可能性を排除するため、flagペプチドに対して指向するHRP-結合抗体を用い、Fzd4の発現性を直接測定した。TSPAN12の同時発現は、細胞膜におけるFzd4の発現性を変化させなかった(図10)。共に、TSPAN12がノリンと共免疫沈降せず(Fzd4が存在しないならば)(図7)、Fzd4に対するノリンの結合性を高めない(図9)という発見は、TSPAN12が固有の方式でシグナル伝達を高めていることを示す。これは、いくつかの他のテトラスパニン類の機能と一致しており、典型的には、リガンドに直接結合はしないが、その代わりに、包埋したレセプターのシグナル伝達を容易にするマイクロドメインを組織化すると考えられる。よって、次は、TSPAN12がレセプター複合体のコンポーネント間の相互作用を容易にする可能性を試験した。
【0136】
実施例4.モノマーノリンC95Rの欠失はTSPAN12により迂回される
ノリンは、分子間ジスルフィド結合を介してダイマーを形成するシステインノットタンパク質のサブグループに属し(Vittら Mol. Endocrinol. 15(5): 681-94(2001))、ノリンダイマーがさらに高分子量の構造体に組み立て可能であると示唆される。(Perez-Vilarら J. Biol. Chem. 272(52): 33410-15(1997))。ノリンは、ノリンがAPに縮合していないならば、細胞外マトリックス(ECM)に強く会合している(Xuら 上掲)。分子間ジスルフィド結合の還元を通して、ノリンはモノマーに完全に転換可能であり、又は95位におけるシステインの変異により、分子間ジスルフィド結合が無効になると予測される。293細胞において、V5-タグされたノリンC95R変異体及びV5-タグされた野生型ノリンを発現させ、ECMからノリン抽出した。還元条件下、SDS PAGEにより、実際に区別できない、野生型及び変異ノリンのモノマーが明らかになった。以前の報告と一致して、非還元条件下での分析では、野生型ノリンがダイマー、及びより高分子量のアセンブリを形成することが明らかとなった。対照的に、ノリン-C95R変異体は、ほとんどがモノマーであり、大きなアセンブリは形成されなかった(図11)。全ノリンC95Rの小さなフラクションは、C95以外の位置での分子間ジスルフィドにより、又は可能であれば非共有結合により、ダイマーを形成した。
【0137】
ノリンは、膜に近接近して多くのFzd4分子を連れてきて、ノリン/β-カテニンシグナル伝達を高める可能性を有するモノマーより、より大きく組み立てられるが、モノマーノリン-C95Rはできないと予測される。この考えをテストするために、レセプターと共に、増大量の野生型ノリン又はノリンC95R cDNAを形質移入し、293細胞において、TSPAN12の存在下又は不在下において、Topflash活性を誘発させた。5-100ngのノリンプラスミドがFZD4及びLRP5と共に同時形質移入された場合、野生型ノリンの発現により、ノリン/β-カテニンシグナル伝達は効果的に誘発され、TSPAN12の添加により、この活性は強く高められる(図12)。しかしながら、モノマーノリンC95R変異体は、100ngのノリンプラスミドという最も高い用量でさえ、TSPAN12を過剰発現してない細胞においては、実際は不活性であった。TSPAN12はマイクロドメインにレセプターを連れてくることが可能で、互いに近接して配することができるという考えに一致して、TSPAN12は大規模な程度で、ノリンC95R変異体のシグナル伝達欠失をレスキューする。さらに、TSPAN12の添加により、野生型ノリンのシグナル伝達が増加した(図12)。共に、これらのデータには、ノリンマルチマー及びTSPAN12がそれぞれ、近接近して、多数のFZD4分子を連れてくる種々の手段を提供し、これらのメカニズムは互いに作用して、最大シグナル伝達を導き出すことが示されている。
【0138】
実施例5.TSPAN12はレセプタークラスター化を高める
ノリン/β-カテニンシグナル伝達を強く損なわせるが、ノリンに結合する能力は維持している、上述した変異FZD4-M157Vを使用するレセプタークラスター化の生化学的分析を実施した(Xuら, 上掲)。構造的情報(Dannら Nature 412:86-90(2001))により補助すると、M157V変異は、ノリン誘発性FZD4ダイマー化、及びその結果としてのマルチマー化(Dannら, 上掲;Toomesら, 上掲;Xuら, 上掲)に影響を与えることが提案されている。以前の報告(Xuら, 上掲)と一致して、FZD4-M157Vにより媒介されるシグナル伝達が、かなり損なわれていたことが見出された。興味あることに、TSPAN12同時発現は、FZD4-M157Vのシグナル伝達欠失を完全にレスキューした(図13A)。
【0139】
ついで、FZD4-M157Vを利用し、FZD4マルチマー化におけるTSPAN12の役割を直接調査した。293細胞をTSPAN12又は対照ベクターで形質移入し、FLAGTM-FZD4及びgD-FZD4、又はFLAG-FZD4-M157V及びgD-FZD4-M157Vで同時形質移入した。細胞を、ノリンを含有するか、又はリガンドを含有しない培地と共に、氷上でインキュベートした。細胞溶菌液を抗FLAG抗体で免疫沈降させ、gD-FZD4の共免疫沈降について探索した。タンパク質-タンパク質の相互作用の定量を可能にするために、この実験では、架橋剤を使用しなかった。gD-FZD4とFLAG-FZD4又はgD-FZD4-M157VとFLAG-FZD4-M157Vとの間の会合性に、同様の基本レベルが検出された(図13B、データは図示せず)。ノリンとTSPAN12はそれぞれ、FLAG-FZD4により低下するgD-FZD4の量を増加させ、ノリンとTSPAN12とを組合せることで、FZD4のクラスター化がさらに増加した(図13B、左側パネル;13C、白抜きバー)。重要なことに、M157V変異により、FLAG-FZD4と共にgD-FZD4をクラスター化させるノリンの能力がかなり損なわれるが、TSPAN12の同時発現により、この欠失は相殺された(図13B、右側パネル;13C、黒棒)。共に、これらのデータは、TSPAN12とノリンの双方がFZD4のマルチマー化を促進することを示し、ノリン/β-カテニンシグナル伝達には、i)FZD4のマルチマー化を促進する因子とii)リガンド結合によるFZD4の活性化が必要であることが示唆される。
【0140】
次に、FZD4レセプターのクラスター化を高める抗体の付加により、FZD4-M157Vの活性がレスキュー可能であるかどうかをテストした。24-ウェルプレートにおいて、1.6x105細胞/ウェルを、β-カテニンレセプター混合物(Topflash, pRL-CMV、及びpCan-myc-lef-1)、LRP5、及びFZD4又はFZD4-M157Vのいずれかを含有するDNA混合物で形質移入した。形質移入の24時間後、指示ウェルに1μg/mlの抗LRP5/6抗体を受容させた。1時間後、125ng/mlの組換えノリンを、指示したようにウェルに添加した。37℃でインキュベートしてさらに16時間後、細胞を溶解させ、Promega Dual-Glo(登録商標)試薬を使用し、ホタル及びウミシイタケのルシフェラーゼ発現を測定した。ホタルのルシフェラーゼ値を、ウミホタル発現に対して標準化させた。結果を表1に示す。FZD4を発現した細胞において、レポーター活性はノリンの存在下で〜6倍まで活性化する。FZD4-M157Vが発現した場合、ノリン活性は〜2倍のみ、かなり損なわれる。LRP5抗体を添加することにより、約2倍まで、FZD4-M157Vにおけるシグナル伝達欠失が部分的にレスキューされる。
【0141】
【0142】
実施例6.抗TSPAN12及び抗ノリン抗体の生成
多くの方法を使用し、抗TSPAN12及び抗ノリン抗体を生成した。例えば、予防接種及びハイブリドーマ技術により抗体を生成した。また、重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)に多様性を導入することより、単一のフレームワーク(ヒト化抗ErbB2抗体、4D5)に作製される合成ファージ抗体ライブラリも使用する(Leeら J. Mol. Biol.340: 1073-93(2004); Liangら J. Biol. Chem. 281: 951-61(2006))。ナイーブなライブラリを用いたプレートパニングを、MaxiSorpTM免疫プレートに固定化されたHis-タグヒトTSPAN12に対して実施する。増菌の4ラウンド後、クローンをランダムに選定し、ファージELISAを使用して、特定のバインダーを同定する。得られたhTSPAN12結合クローンを、His-タグマウスTSPAN12タンパク質を用いてさらにスクリーニングし、異種間クローンを同定する。それぞれのポジティブファージクローンについて、重鎖及び軽鎖の可変領域を、全長IgG鎖を発現するように設計されたpRK発現ベクターにサブクローンする。重鎖及び軽鎖のコンストラクトを、293又はCHO細胞に同時形質移入し、発現抗体を、プロテインAアフィニティーカラムを使用し、無血清培地から精製する。精製された抗体を、組換えTSPAN12又はノリンへの結合についてはELISAにより、FZD4と共に、全長ヒトTSPAN12又はマウスTSPAN12を発現する、もしくはヒト又はマウスノリンを発現する安定した株化細胞への結合についてはFACSによりテストする。ついで、抗体を、TSPAN12(抗TSPAN12抗体)により、ノリン-媒介性、FZD4/LRP5-媒介性のWntレポーター活性の増強のブロック、又はノリン-誘発性シグナル伝達(抗ノリン抗体)のブロックについてテストする。親和成熟について、関心ある最初のクローンから誘導された3つの異なるCDRループ(CDR-L3、-H1、及び-H2)の組合せを有するファージライブラリを、各選択位置が、約50:50の頻度で、非野生型残基に変異するか、又は野生型として維持されるように、柔軟なランダム化法により実施する(Liangら, 2006, 上述)。ついで、高親和性のクローンを、漸次増加する緊縮性を有する、ヒト及びマウスの双方のHis-タグTSPAN12タンパク質に対して、4ラウンドの液相パニングを介して同定する。
【0143】
実施例7.眼病のマウスモデル
マウスモデルにおいて、抗体又はTSPAN12ポリペプチドをテストする。マウスROPモデルについて、P7で開始して5日間、子供を75%の酸素(過酸素症)に置く。P12にて、動物をエアコンの効いた部屋(酸素正常状態)に戻し、さらに5日間(P17)保持した。抗TSPAN12、抗ノリン抗体、又はTSPAN12の大きな細胞外ループ(例えば、Hoら 上掲)を、P12の動物の硝子体内に注射する。アンタゴニストの親和性及び安定性により決定される予測に基づき、複数の用量レベルと頻度で実施する。P17に、右目を4%のPFAに配し、左目をダビットソンの固定液に配した。パラフィン工程及び切片化のために、角膜とレンズを左目から取り除いた。眼杯を、虹彩側が下になり、切開面が面するようにブロックに配した。16ミクロン間隔の切片を得、特注の核アルゴリズムを具備するAperio ScanScope(登録商標)を使用し、血管新生について分析した。NFLに密接に関連した新生血管房を、アルゴリズム定量化の関心ある領域として同定した。ケース毎に、新生血管核を含む最小30切片を、網膜の血管新生の評価のために定量した。
マウスレーザー誘起脈絡膜血管新生モデルにおいても、抗体及びポリペプチドをテストする。
【0144】
上述した明細書で、当業者は本発明を十分に実施可能であると考えられる。しかしながら、ここに示され記載されるものに加えて、本発明の種々の修正点は、上述の記載から、当業者には明らかであり、添付する特許請求の範囲に入る。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、その各内容を出典明示してここに援用する、2008年9月10日に出願された米国仮出願第61/095757号;2008年10月7日に出願された米国仮出願第61/103502号;及び2009年8月17日に出願された米国仮出願第61/234519号に対して米国特許法第119条(e)項の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に血管新生に関連した症状及び疾患の処置に有用な組成物及び方法に関する。特に、本発明は、テトラスパニン12(TSPAN12)及びノリン(Norrin)のアンタゴニストに関する。
【背景技術】
【0003】
血管新生が様々な疾患の発病に対する重要な寄与因子であることは、今は確立されている。これらには、固形腫瘍及び転移、眼球内新生血管病、例えば増殖網膜症、例えば糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症(RVO)、滲出型加齢黄斑変性症(AMD)、血管新生緑内障、移植された角膜組織及び他の組織の免疫拒絶、及び関節リウマチが含まれる。Dudaら J. Clin. Oncology 25(26): 4033-42(2007); Kesisisら Curr. Pharm. Des. 13: 2795-809(2007); Zhang & Ma Prog. Ret. & Eye Res. 26: 1-37(2007)。
【0004】
網膜は、網膜血管からの血液供給を受け、網膜、及び脈絡膜血管の内部に供給され、外部に供給される。網膜血管のダメージは、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、及び中心及び分枝状の網膜静脈閉塞症(虚血性網膜症)を含む、いくつかの疾病過程で生じる。このダメージによる網膜虚血にて、所望しない血管新生が生じる。脈絡膜の血管新生は、AMDを含む多くの疾病課程で生じる。その一方、網膜の不完全な血管新生は、ある種の遺伝病、例えば家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)、WntレセプターFrizzled4(Fzd4)、コレセプターLRP5、又は分泌リガンドノリンの変異に起因するノリエ病を患っている患者の特徴である(Bergerら Nature Genet. 1:199-203(1992); Chenら Nature Genet. 1:204-208(1992); Robitailleら Nature Genet. 32:326-30(2002); Toomesら Am. J. Hum. Genet. 74:721-30(2004))。これらの遺伝病のモデルは、対応する相同遺伝子についてノックアウトされたマウスにおいて入手可能である。
【0005】
眼の血管新生の分野における多くの利点にかかわらず、標的を同定し、現存する治療法の効果を補足又は向上可能な手段を開発することが、必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、TSPAN12が、ノリン-誘発性、Frizzled-4-及びLRP5-媒介性のシグナル伝達経路のコンポーネントであり、病的血管新生の発症に必要であるという発見に、少なくとも部分的に基づく。よって、ノリン及びTSPAN12は、ノリン、TSPAN12、Frizzled-4又はLRP5遺伝子における遺伝的変異を抱えない状態を含む、異常な眼の血管新生を阻害するための薬剤標的である。従って、本発明は、ノリン又はTSPAN12の活性をブロックする試薬を使用する血管新生に関連した眼病を処置する、新規の方法を提供する。
【0007】
一態様では、本発明は、TSPAN12アンタゴニストを被験者に投与することを含む、血管新生に関連した眼の疾患又は病状を患っている被験者における、血管新生を低減又は阻害する方法を提供する。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは抗TSPAN12抗体である。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは、第2の細胞外ループ等の細胞外ドメインを含む、TSPAN12のポリペプチド断片を含有する。いくつかの実施態様では、アンタゴニストは、免疫グロブリン定常領域、例えばIgG Fcをさらに含有する。いくつかの実施態様では、眼の疾患又は病状は:糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される。
【0008】
いくつかの実施態様では、本方法は、第2の抗血管新生剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、TSPAN12アンタゴニスト投与の前又は後に投与される。他の実施態様では、第2の抗血管新生剤は、TSPAN12アンタゴニストと同時に投与される。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、血管の内皮細胞増殖因子(VEGF)又はノリンのアンタゴニストである。いくつかの実施態様では、ノリンアンタゴニスト又はVEGFアンタゴニストは、抗ノリン抗体又は抗VEGF抗体(例えば、ラニビズマブ)である。
【0009】
他の態様では、 本発明は、ノリンアンタゴニストを被験者に投与することを含む、血管新生に関連した眼の疾患又は病状を患っている被験者における、血管新生を低減又は阻害する方法を提供する。いくつかの実施態様では、ノリンアンタゴニストは抗ノリン抗体である。いくつかの実施態様では、眼の疾患又は病状は:糖尿病性網膜症、CNV、AMD、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される。
【0010】
いくつかの実施態様では、本方法は、第2の抗血管新生剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、ノリンアンタゴニスト投与の前又は後に投与される。他の実施態様では、第2の抗血管新生剤は、ノリンアンタゴニストと同時に投与される。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、VEGFアンタゴニスト、例えば抗VEGF抗体、特にラニビズマブである。
【0011】
他の態様では、本発明は、TSPAN12アンタゴニストを被験者に投与することを含む、被験者における所望しない血管新生に関連した眼の疾患又は病状を処置する方法を提供する。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは抗TSPAN12抗体である。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは、第2の細胞外ループ等の細胞外ドメインを含む、TSPAN12ポリペプチド断片を含有する。いくつかの実施態様では、アンタゴニストは、免疫グロブリン定常領域、例えばIgG Fcをさらに含有する。いくつかの実施態様では、眼の疾患又は病状は、増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、CNV、AMD、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される。
【0012】
いくつかの実施態様では、本方法は、第2の抗血管新生剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、TSPAN12アンタゴニスト投与の前又は後に投与される。他の実施態様では、第2の抗血管新生剤は、TSPAN12アンタゴニストと同時に投与される。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、VEGF又はノリンのアンタゴニストである。いくつかの実施態様では、ノリンアンタゴニスト又はVEGFアンタゴニストは、抗ノリン抗体又は抗VEGF抗体(例えば、ラニビズマブ)である。
【0013】
他の態様では、 本発明は、ノリンアンタゴニストを被験者に投与することを含む、被験者における所望しない血管新生に関連した眼の疾患又は病状を処置する方法を提供する。いくつかの実施態様では、ノリンアンタゴニストは抗ノリン抗体である。いくつかの実施態様では、眼の疾患又は病状は:増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、CNV、AMD、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施態様では、本方法は、第2の抗血管新生剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、ノリンアンタゴニスト投与の前又は後に投与される。他の実施態様では、第2の抗血管新生剤は、ノリンアンタゴニストと同時に投与される。いくつかの実施態様では、第2の抗血管新生剤は、VEGFアンタゴニスト、例えば抗VEGF抗体、特にラニビズマブである。
【0015】
他の態様では、本発明は、本質的にアミノ酸CRREPGTDQMMSLK(配列番号:5)からなるペプチドを使用する、抗体を生成する方法を提供する。いくつかの実施態様では、本方法は、ペプチドを用いて動物を免疫化することを含む。いくつかの実施態様では、本方法は、ペプチドに結合する抗体又は抗体断片を同定するために、ライブラリ(例えば、Fabライブラリ)をスクリーニングすることを含む。いくつかの実施態様では、本発明は、任意のこのような方法により生じた抗体を提供する。いくつかの実施態様では、本発明は、任意のこのような抗体を使用する、TSPAN12を検出する方法を提供する。
【0016】
他の態様では、本発明は、TSPAN12アンタゴニストを投与することを含む、FZD4マルチマーの形成を阻害する、インビトロ又はインビボ方法を提供する。他の態様では、本発明は、TSPAN12アンタゴニストを投与することを含む、ノリン-媒介性シグナル伝達を阻害する、インビトロ及びインビボ方法を提供する。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは抗TSPAN12抗体である。いくつかの実施態様では、TSPAN12アンタゴニストは、第2の細胞外ループ等の細胞外ドメインを含む、TSPAN12ポリペプチド断片を含有する。いくつかの実施態様では、アンタゴニストは、免疫グロブリン定常領域、例えばIgG Fcをさらに含有する。
【0017】
他の態様では、本発明は、FZD4マルチマー形成を高める薬剤を被験者に投与することを含む、任意のノリン、TSPAN12、FZD4又はLRP5遺伝子における遺伝的変異に起因する、先天性の眼の疾患を患っている被験者を処置する方法を提供する。いくつかの実施態様では、疾患は、FEVR、ノリエ病、コート病(Coate's disease)である。いくつかの実施態様では、FZD4マルチマー形成を増加させる薬剤は:ノリン、抗FZD4抗体、抗LRP5抗体、及び二重特異性抗FZD4/抗LRP5抗体からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、遺伝的変異により、FZD4-媒介性シグナル伝達が損なわれる。いくつかの実施態様では、被験者における遺伝的変異により:ノリン-C95R、FZD4-M105V及びFZD4-M157Vからなる群から選択される、被験者における異常なタンパク質生成物が生成される。いくつかの実施態様では、被験者における変異の存在性は、被験者を処置する前に検出される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、野生型(頂部)とTSPAN12ノックアウト(KO)マウス(底部)についての、代表的な未熟児網膜症(ROP)の網膜切片を示す。
【図2】図2は、野生型(WT;左)及びTSPAN12KOマウス(Hom;右)からの、ROPの網膜切片で観察された、新生血管核の数の定量的結果を示す。
【図3】図3は、TSPAN12が、Fzd4/LRP5により、ノリン-媒介性シグナル伝達を高めることを示す。
【図4】図4は、ノリン-媒介性シグナル伝達のTSPAN12向上が、Fzd4に対して特異的であることを示す。
【図5】図5は、TSPAN12が、Wnt3a-媒介性シグナル伝達を高めないことを示す。
【図6】図6は、ノリンがFzd4に結合し、LRP5又はTSPAN12に結合しないことを示す。
【図7】図7は、ノリンがFzd4発現細胞に結合し、Fzd5、LRP5又はTSPAN12発現細胞には結合せず、ノリンがTSPAN12と免疫共沈降しないことを示す。
【図8】図8は、TSPAN12がLRP5と会合しないことを示す。
【図9】図9は、TSPAN12が、Fzd4へのノリン結合性を高めないことを示す。
【図10】図10は、TSPAN12の同時発現が、細胞膜におけるFzd4の発現を変化させないことを示す。
【図11】図11は、野生型ノリン及びC95R変異ノリンにより形成される高次構造を示す。
【図12】図12は、TSPAN12の過剰発現が、モノマーC95Rノリンにおける障害を補償できることを示す。
【図13】図13は、TSPAN12が、シグナル伝達中のFZD4クラスター形成を調節することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
他に定められないならば、ここで使用される技術的及び科学的用語は、この発明が属する技術の当業者により、通常に理解されるような同様の意味を有する。例えば、Singletonら, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 第2版, J. Wiley & Sons(NewYork, NY 1994); Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press(Cold Spring Harbor, NY 1989)。本発明の目的にとって、所定の用語を以下に定める。
【0020】
ここで使用される場合、用語「TSPAN12」、「TSPAN12ポリペプチド」、「ノリン」、及び「ノリンポリペプチド」は、その調製方式及び種にかかわらず、天然から得られたTSPAN12又はノリンポリペプチドのアミノ酸配列を有するポリペプチドを称する。よって、このようなポリペプチドは、ヒト、マウス、又は任意の他の種からの、自然に生じるTSPAN12又はノリンのアミノ酸配列を有することができる。全長ヒトTSPAN12アミノ酸配列は:
MAREDSVKCLRCLLYALNLLFWLMSISVLAVSAWMRDYLNNVLTLTAETRVEEAVILTYFPVVHPVMIAVCCFLIIVGMLGYCGTVKRNLLLLAWYFGSLLVIFCVELACGVWTYEQELMVPVQWSDMVTLKARMTNYGLPRYRWLTHAWNFFQREFKCCGVVYFTDWLEMTEMDWPPDSCCVREFPGCSKQAHQEDLSDLYQEGCGKKMYSFLRGTKQLQVLRFLGISIGVTQILAMILTITLLWALYYDRREPGTDQMMSLKNDNSQHLSCPSVELLKPSLSRIFEHTSMANSFNTHFEMEEL(配列番号:1)
である。
【0021】
全長マウスTSPAN12アミノ酸配列は:
MAREDSVKCLRCLLYALNLLFWLMSISVLAVSAWMRDYLNNVLTLTAETRVEEAVILTYFPVVHPVMIAVCCFLIIVGMLGYCGTVKRNLLLLAWYFGTLLVIFCVELACGVWTYEQEVMVPVQWSDMVTLKARMTNYGLPRYRWLTHAWNYFQREGCGKKMYSFLRGTKQLQVLRFLGISIGVTQILAMILTITLLWALYYDRREPGTDQMLSLKNDTSQHLSCHSVELLKPSLSRIFEHTSMANSFNTHFEMEEL(配列番号:2)
である。
【0022】
全長ヒトノリンアミノ酸配列は:
MRKHVLAASFSMLSLLVIMGDTDSKTDSSFIMDSDPRRCMRHHYVDSISHPLYKCSSKMVLLARCEGHCSQASRSEPLVSFSTVLKQPFRSSCHCCRPQTSKLKALRLRCSGGMRLTATYRYILSCHCEECNS(配列番号:3)
である。
【0023】
全長マウスノリンアミノ酸配列は:
MRNHVLAASISMLSLLAIMGDTDSKTDSSFLMDSQRCMRHHYVDSISHPLYKCSSKMVLLARCEGHCSQASRSEPLVSFSTVLKQPFRSSCHCCRPQTSKLKALRLRCSGGMRLTATYRYILSCHCEECSS(配列番号:4)
である。
【0024】
このようなTSPAN12又はノリンポリペプチドは、天然から単離することもできるし、組換え及び/又は合成手段により生成することもできる。
【0025】
ポリペプチドに関して「単離された」とは、天然源から精製される、又は組換えもしくは合成方法により調製され、精製されることを意味する。「精製された」ポリペプチドは、他のポリペプチド又はペプチドを実質的には含有しない。ここで「実質的に含有しない」とは、他の供給源からのタンパク質の混成が、約5%未満、好ましくは約2%未満、より好ましくは約1%未満、さらに好ましくは約0.5%未満、最も好ましくは約0.1%未満であることを意味する。
【0026】
用語「アンタゴニスト」は広義の意味で使用され、ポリペプチドの生物活性を部分的又は全体的にブロック、阻害、又は中和する任意の分子を含む。例えば、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、眼における病的な血管形成を可能にし、ノリン-誘発性のシグナル伝達を転換又は開始させる、TSPAN12又はノリンの能力を、部分的又は全体的にブロック、阻害、又は中和するであろう。適切なアンタゴニスト分子には、特にアンタゴニスト抗体又は抗体断片、天然TSPAN12又はノリンポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体、ペプチド、TSPAN12又はノリンコレセプター(類)の可溶性断片、アンチセンスRNAs、リボザイム、RNAi、小有機分子等が含まれる。TSPAN12又はノリンポリペプチドのアンタゴニストを同定する方法は、TSPAN12又はノリンポリペプチドと、候補アンタゴニスト分子とを接触させ、通常ポリペプチドに関連する一又は複数の生物活性における検出可能な変化を測定することを含む。
【0027】
ここでの目的において「活性な」及び「活性」とは、生物学的及び/又は免疫学的活性を保持しているTSPAN12又はノリンの形態(類)を称し、ここで「生物学的」活性とは、抗体の生成を誘発する能力以外のTSPAN12又はノリンによって生ずる生物学的機能を称し、「免疫学的」活性とは、TSPAN12又はノリンが有する抗原性エピトープに対して抗体の生成を誘発する能力を称する。TSPAN12及びノリンの主要な生物活性は、ノリン-誘発性のシグナル伝達を転換又は開始させ、眼における病的な血管形成を誘発させることである。
【0028】
「TSPAN12コレセプター」又は「ノリンコレセプター」とは、TSPAN12又はノリンが結合し、TSPAN12又はノリンの生物活性を媒介する分子を称する。
【0029】
ここで、用語「抗体」は最も広い意味において使用され、特に、ヒト、非ヒト(例えば、マウス)及びヒト化モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望する結合特異性を示す限りそれらの抗体断片を包含する。
【0030】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0031】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')2断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
【0032】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖と一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。
【0033】
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステイン(類)を含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0034】
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
【0035】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、免疫グロブリンは異なるクラスが割り当てられる。免疫グロブリンには5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(イソ型)に分かれる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
【0036】
「抗体断片」は、全長抗体の一部、一般的にはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab')2及びFv断片が含まれる。
【0037】
ここで使用される場合、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を称し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物に対し、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohlerら, Nature, 256:495(1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4,816,567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991)及びMarksら, J. Mol. biol. 222: 581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0038】
ここでモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致する又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部であり、残りの鎖は、他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致する又は類似するもの、並びに所望の生物学的活性を表す限り、このような抗体の断片である(米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855(1984))。
【0039】
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRが、ヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一又は典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、Jonesら, Nature 321:522-525(1986);Riechmannら, Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596(1992)を参照のこと。
【0040】
ここで使用される場合、「処置」とは、有益な又は所望の臨床結果を得るための取り組みである。この発明の目的では、有益な又は所望の臨床結果は、限定するものではないが、検出可能であれ検出不可能であれ、徴候の軽減、疾患の程度の低減、疾患の安定化(つまり悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の回復又は緩和、及び寛解(部分的又は完全)を含む。「処置」は、疾患の発症又は変化を予防する意図で実施される治療介入である。従って、「処置」は、治癒的処置、又は予防的もしくは防止的手段を称する。処置を必要とするものは、既に疾患を患っている者、並びに疾患が防止される者を含む。特に処置は、細胞変性又はダメージの病態、例えば癌の処置における腫瘍細胞の病態を直接防止、遅延化、そうでなければ減少させ、又は他の治療剤による処置に対して、細胞をより敏感にさせる。
【0041】
「慢性」投与とは、急性様式とは異なり連続的な様式で薬剤(類)を投与し、初期の治療効果(活性)を長時間に渡って維持することを称する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処置である。
【0042】
「眼球内新生血管病」は、眼の血管新生により特徴付けられる疾患である。眼球内新生血管病の例には、限定されるものではないが、増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、結膜下出血、及び高血圧性網膜症が含まれる。好ましくは、眼球内新生血管病は、任意のノリン、TSPAN12、Frizzled-4又はLRP5遺伝子における、遺伝的変異に起因する病状を除外する。例えば、本発明の眼球内新生血管病は、好ましくはFEVR及びノリエ病を除外する。
【0043】
疾患の「病態」には、患者の幸福を損なう、全ての現象が含まれる。
【0044】
一又は複数の治療薬と「組合せた」投与とは、同時(同時期)及び任意の順序での連続した投与を含む。
【0045】
ここで用いられる場合、「担体」とは、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる用量及び濃度でそれらに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール類;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEENTM、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSTMを含む。
【0046】
「小分子」とは、ここで、約500ダルトン以下の分子量を持つと定義される。
【0047】
本発明を実施するための方法
TSPAN12又はノリン活性のアンタゴニストの調製及び同定
アンタゴニスト候補剤のスクリーニングアッセイは、TSPAN12又はノリンポリペプチドと結合又は複合体形成する化合物、又はそれらの活性及び/又は他の細胞性タンパク質との相互作用に干渉する化合物を同定するために設計される。
【0048】
小分子は、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストとして作用する能力を有しており、よって治療的に有用である。このような小分子には、自然に生じる小分子、合成の有機又は無機化合物及びペプチド類が含まれる。しかしながら、本発明の小分子は、これらの形態に限定されるものではない。小分子の多くのライブラリが商業的に入手可能であり、多様なアッセイがここで考察され、所望の活性についてこれらの分子をスクリーニングすることは、当該技術でよく知られている。
【0049】
いくつかの実施態様では、小分子TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、TSPAN12又はノリンの一又は複数の生物活性を阻害する、それらの能力によって同定される。よって、候補化合物と、TSPAN12又はノリンとを接触させ、ついでTSPAN12又はノリンの活性を評価する。一実施態様においては、ノリン-媒介性シグナル伝達を転換又は開始させる、TSPAN12又はノリンの能力が評価される。TSPAN12又はノリンの生物活性が阻害された場合に、化合物はアンタゴニストとして同定される。
【0050】
TSPAN12又はノリンのアンタゴニストとして同定された化合物は、本発明の方法に使用することができる。例えば、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、眼球内新生血管病の処置に使用することができる。
【0051】
多くのよく知られている動物モデル(例えば、未熟児網膜症及びレーザー誘起脈絡膜血管新生のモデルを含む;Ruiz-Edera & Verkman Invest. Ophthalmol. & Vis. Sci. 48(10): 4802-10(2007), Yuら Invest. Ophthalmol. & Vis. Sci. 49(6):2599-605(2007))を、眼球内新生血管病の発症及び病理形成におけるTSPAN12又はノリンの役割をさらに理解するために、また天然のTSPAN12又はノリンポリペプチドの抗体及び他のアンタゴニスト、例えば小分子アンタゴニストを含む、治療候補剤の効能をテストするために使用することができる。このようなモデルのインビボ性質により、特にヒト患者における反応予測をすることができる。
【0052】
抗体結合研究
Wntシグナル伝達レポーター細胞において、TSPAN12又はノリンに結合する、又はその効果を阻害する抗体の能力をテストする。例示的方法を実施例2に提供するが、当業者にとっては、他の方法も容易に明らかであろう。例示的抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性、及びヘテロコンジュゲート抗体、ここで記載されたものの調製物が含まれる。
【0053】
抗体結合研究は、任意の公知のアッセイ方法、例えば競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイで実施することができる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques(CRC Press, Inc., 1987), pp.147-158。
【0054】
競合結合アッセイは、限定量の抗体との結合について、テスト用サンプル検体と競合する、標識された標準体の能力に依存する。テスト用サンプルにおける標的タンパク質の量は、抗体に結合する標準体の量に反比例する。結合する標準体の量の測定を容易にするために、抗体に結合する標準体と検体が、未結合の標準体及び検体から簡便に分離できるように、抗体は、好ましくは競合の前後に不溶性にされる。
【0055】
サンドイッチアッセイは、検出されるタンパク質の異なる免疫原性部分、又はエピトープに結合可能な2つの抗体の使用に関与する。サンドイッチアッセイにおいて、テスト用サンプル検体は、固体状支持体に固定された第1の抗体により結合し、その後、第2の抗体が検体に結合し、よって、不溶性の3部分複合体が形成される。例えば米国特許第4,376,110号を参照。第2の抗体はそれ自体、検出可能な部分で標識されるか(直接サンドイッチアッセイ)、又は検出可能な部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を使用して測定する(間接サンドイッチアッセイ)ことができる。例えば、サンドイッチアッセイの一つのタイプはELISAアッセイであり、このケースで、検出可能な部分は酵素である。
【0056】
免疫組織化学にとって、組織サンプルは新鮮又は凍結しているものであってよく、又はパラフィンに包埋され、ホルマリン等の防腐剤で固定化されていてもよい。
【0057】
心血管、内皮、及び血管新生疾患の処置に有用な組成物には、限定されるものではないが、標的遺伝子産物の発現及び/又は活性を阻害する、抗体、有機及び無機の小分子、ペプチド、リンペプチド、アンチセンス、siRNA及びリボザイム分子、三重らせん体分子等が含まれる。
【0058】
潜在的アンタゴニストのより特定の例には、TSPAN12又はノリンに結合するポリペプチド、特に限定されるものではないが、ポリ-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、単鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、及びこのような抗体又は断片のキメラ又はヒト化バージョン、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体が含まれる。TSPAN12について、ある種の細胞外ドメイン(類)も、アンタゴニストとして提供することができる(例えば、Hoら J. Virol. 80(13): 6487-96(2006); Hemler Nature Rev. Drug Discovery 7: 747-58(2008)を参照)。また潜在的アンタゴニストは、密接に関連しているタンパク質、例えば何の影響も付与しないが、コレセプター(類)と相互作用する、よって、TSPAN12又はノリンの作用を競合的に阻害する、TSPAN12又はノリンの変異形態のものであってもよい。
【0059】
他の潜在的なTSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、アンチセンス技術を使用して調製されたアンチセンスRNA又はDNAコンストラクトであり、ここで、例えばアンチセンスRNA又はDNA分子は、標的とされるmRNAにハイブリダイズし、タンパク質の翻訳を予防することにより、mRNAの翻訳を直接ブロックするように作用する。アンチセンス技術は、三重らせん体の形成、又はアンチセンスDNA又はRNAを介した遺伝子発現をコントロールするのに使用可能であり、その双方の方法は、DNA又はRNAへのポリヌクレオチドの結合に基づいている。ここで、成熟したTSPAN12及びノリンのポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド配列の5'コード化部分は、約10〜40塩基長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを設計するのに使用される。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に係る遺伝子の領域に相補的となるように設計され(三重らせん体−例えば、Leeら, Nucl. Acids Res. 6:3073(1979); Cooneyら, Science 241:456(1988); Dervanら, Science 251:1360(1991)を参照)、よって、TSPAN12又はノリンの転写及び生成が防止される。ここで称されるように、RNAの部分に対する配列「相補性」は、RNAとハイブリダイズ可能な程に十分な相補性を有し、安定した二本鎖を形成する配列を意味し;二重鎖アンチセンス核酸の場合、二本鎖DNAの一本の鎖が試験されるか、又は三重らせん体形成がアッセイされる。ハイブリダイズする能力は、アンチセンス核酸の相補性の度合い及び長さの双方に依存するであろう。一般的に、ハイブリダイズする核酸が長ければ長いほど、それが含み得、なおも安定した二本鎖(又は場合によっては三本鎖)を形成するRNAとの塩基のミスマッチが多くなる。当業者であれば、ハイブリダイズした複合体の融点を決定するために、標準的な手順を使用することにより、ミスマッチの許容度を確定することができる。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、インビボでmRNAにハイブリダイズし、mRNA分子のTSPAN12への翻訳がブロックされる(antisense - Okano, Neurochem. 56:560(1991); Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression(CRC Press: Boca Raton, FL, 1988)。
【0060】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA又はRNA又はキメラ混合物、又はその誘導体又は修飾体、単鎖又は二本鎖とすることができる。オリゴヌクレオチドは、例えば分子の安定性、ハイブリダイゼーション等を改善するために、塩基部分、糖部分、又はリン酸骨格で修飾することができる。オリゴヌクレオチドは、他の付加群、例えばペプチド(例えば、インビボで宿主細胞レセプターを標的とするため)、又は細胞膜を通っての輸送を容易にする薬剤(例えば、Letsingerら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:6553-6556(1989); Lemaitreら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:648-652(1987); PCT出願WO88/09810, 1988年12月15日公開を参照)、又は血液脳関門(例えば、PCT出願WO89/10134, 1988年4月25日公開を参照)、ハイブリダイゼーション誘発開裂剤(例えば、Krolら, BioTechniques 6:958-976(1988)を参照)、又は挿入剤(例えば、Zon, Pharm. Res. 5:539-549(1988)を参照)を含むことができる。この目的のために、オリゴヌクレオチドは、他の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発開裂剤等にコンジュゲート可能である。
【0061】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されるものではないが、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルクエオシン(queosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルクエオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、擬似ウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6-ジアミノプリンから選択される、少なくとも一の修飾された塩基部分を有し得る。
【0062】
また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されるものではないが、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロース、及びヘキソースを含む群から選択される、少なくとも一の修飾された糖部分を有し得る。
【0063】
さらなる他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホラミドチオアート、ホスホラミダート、ホスホルジアミダート、メチルホスホナート、アルキルホスホトリエステル、及びホルムアセタール又はその類似体からなる群から選択される、少なくとも一の修飾されたリン酸骨格を有する。
【0064】
さらなる他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはアノマーオリゴヌクレオチドである。アノマーオリゴヌクレオチドは、通常のユニットに反して、ストランドが互いに平行に走っている、相補RNAと、特定の二重鎖ハイブリッドを形成する(Gautierら, Nucl. Acids Res. 15:6625-6641(1987))。オリゴヌクレオチドは、2'-0-メチルリボヌクレオチド(Inoueら, Nucl. Acids Res. 15:6131-6148(1987))、又はキメラRNA-DNA類似体(Inoueら, FEBS Lett. 215:327-330(1987))である。
【0065】
いくつかの実施態様では、アンタゴニストは、抑制二本鎖RNA、例えばsiRNA、shRNA等である。
【0066】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成器(例えば、Biosearch, Applied Biosystems等から商業的に入手可能)を使用し、当該技術で公知の標準的な方法により合成することができる。例えば、ホスホロチオアートオリゴヌクレオチドは、Steinら(Nucl. Acids Res. 16:3209(1988))の方法により合成することができ、ホスホン酸メチルオリゴヌクレオチドは、制御された多孔質ガラスポリマー支持体を使用することにより調製することができる(Sarinら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448-7451(1988))。
【0067】
また、上述したオリゴヌクレオチドは、アンチセンスRNA又はDNAがインビボで発現して、TSPAN12又はノリンの生成を阻害可能なように、細胞に送達させることができる。アンチセンスDNAが使用される場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の約−10〜+10の位置で誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
【0068】
潜在的なアンタゴニストは、TSPAN12又はノリンに結合し、よってその活性をブロックする小分子をさらに含む。小分子の例には、限定されるものではないが、小ペプチド又はペプチド様分子、好ましくは可溶性ペプチド、及び合成の非ペプチジル有機又は無機化合物が含まれる。
【0069】
付加的な潜在的アンタゴニストはリボザイムであり、これは、RNAの特異的切断を触媒可能な酵素RNA分子である。リボザイムは相補標的RNAに対する、配列-特異性ハイブリダイゼーションにより作用し、続いてヌクレオチド鎖を切断する。潜在的なRNA標的の範囲内の特定のリボザイム切断部位は、公知の技術により同定することができる。さらなる詳細は、Rossi, Current Biology 4:469-471(1994)、及びPCT出願WO97/33551(1997年9月18日公開)を参照のこと。
【0070】
部位特異性認識配列でmRNAを切断するリボザイムは、標的遺伝子mRNAを破壊するのに使用可能であるが、ハンマーヘッド型リボザイムを使用するのが好ましい。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNAと相補塩基対を形成する、隣接領域により決定される位置でmRNAを切断する。唯一の必要条件は、標的mRNAが、2つの塩基の次の配列:5'-UG-3'を有していることである。ハンマーヘッド型リボザイムの構築及び生成は当該技術でよく知られており、その全体が参照としてここに導入される、Myers,Molecular Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, New York(1995),(特に、図4, 833頁を参照)、及びHaseloff 及び Gerlach, Nature, 334:585-591(1988)に、さらに詳細に記載されている。
【0071】
好ましくは、リボザイムは、切断認識部位が標的遺伝子mRNAの5'末端近傍に位置するように、すなわち無機能mRNA転写の細胞蓄積内が最小となり、効能が増加するように操作される。
【0072】
本発明のリボザイムは、RNAエンドリボヌクレアーゼ(以下、「Cech型リボザイム」)、例えばテトラヒメナ・サーモフィアにおいて自然に生じ(IVS、又はL-19 IVS RNAとして公知)、Thomas Cech及び共同研究者(Zaugら, Science, 224:574-578(1984); Zaug 及び Cech, Science, 231:470-475(1986); Zaugら, Nature, 324:429-433(1986); University Patents Incによる国際特許出願WO88/04300 ; Been 及び Cech, Cell, 47:207-216(1986))に広く記載されているものが含まれる。Cech型リボザイムは、標的RNA配列にハイブリダイズし、その後、標的RNAの切断が生じる、8つの塩基対活性部位を有する。本発明は、標的遺伝子に存在する8つの塩基対活性部位を標的とする、Cech型リボザイムを含む。
【0073】
アンチセンスアプローチにおいては、リボザイムは、修飾されたオリゴヌクレオチド(例えば、安定性、標的性等を改善するため)からなり、インビボで標的遺伝子を発現する細胞に送達されるべきである。好ましい送達法は、形質移入された細胞が十分量のリボザイムを生成し、内在性の標的遺伝子のメッセージを破壊し、翻訳を阻害するように、強構造のpol III又はpol IIプロモーターのコントロール下で、リボザイムを「コード化」するDNAコンストラクトを使用することを含む。アンチセンス分子とは異なり、リボザイムは触媒的であるために、効率のためには、細胞内濃度が低いことが要求される。
【0074】
転写阻害に使用された三重らせん体形成における核酸分子は、単鎖であるべきであり、デオキシヌクレオチドからなる。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成は、一般的に、二本鎖の一本の鎖におけるプリン又はピリミジンのかなり大きな伸長を必要とする、フーグスティーン塩基対則を介して三重らせん体の形成が促進されるように設計される。さらなる詳細は、例えばPCT出願WO97/33551,上掲を参照のこと。
【0075】
TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、限定されるものではないが、増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、結膜下出血、及び高血圧性網膜症を含む、眼球内疾患の処置にも有用であり得る。
【0076】
投与プロトコル、スケジュール、用量及び処方
TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、上述にて説明したような種々の疾患及び疾病に対する予防剤及び治療剤として、製薬的に有用である。
アンタゴニストの治療用組成物は、凍結乾燥製剤、水溶液の形態で、場合によっては製薬的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16版, A. Osol, A.編(1980))と、適切な純度を有する所望の分子を混合することにより、保管用に調製される。許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、亜鉛-タンパク質複合体);及び/又はトゥイーン(TWEEN)TM、プルロニクス(PLURONICS)TM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0077】
このような担体のさらなる例は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばホスファート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、マグネシウムトリシリカート、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、及びポリエチレングリコールを含む。アンタゴニストの局所用の担体又はゲルベースの形態は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又はメチルセルロース等の多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリラート、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びモクロウアルコールを含む。あらゆる投与について、従来のデポー形態が好適に用いられる。このような形態は、例えば、マイクロカプセル、ナノ-カプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入形態、鼻スプレー、舌下錠、及び徐放性製剤を含む。TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、典型的には、約0.1mg/ml〜100mg/mlの濃度で、このようなビヒクルに処方されるであろう。
【0078】
他の処方は、定型部材に、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストを導入することを含む。このような部材は、内皮細胞の成長及び血管新生の調節に使用することができる。さらに、腫瘍の浸潤及び転移を、これらの部材で調節することができる。
【0079】
インビボ投与に使用されるTSPAN12又はノリンのアンタゴニストは滅菌されていなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌フィルター膜を通す濾過により容易に達成される。凍結乾燥形態にある場合、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、典型的には使用時に適当な希釈剤と再構成するために他の成分と組み合わせて処方される。液状処方物の例は、皮下注射用の1回投与バイアルに充填された無菌の、透明な、無色の保存料未添加(unpreserved)溶液である。繰り返し使用に適した保存用製薬用組成物は、例えば、主として兆候及びポリペプチドの種類に応じて:
TSPAN12又はノリンのアンタゴニスト;
溶液におけるポリペプチド又は他の分子の最大安定の範囲内のpH、好ましくは約4-8を維持可能なバッファー;
攪拌誘発性凝集に対して、ポリペプチド又は分子を主として安定化させる洗浄剤/界面活性剤;
等張剤;
フェノール、ベンジルアルコール及びベンゼトニウムハロゲン化物、例えば塩化物の群から選択される防腐剤;及び
水;
を含有可能である。
【0080】
使用される洗浄剤が非イオン性である場合、それは、例えばポリソルバート類(polysorbates)(例えば、ポリソルバートTM(トゥイーンTM)20、80等)、又はポロキサマー類(poloxamers)(例えば、ポロキサマーTM188)であってよい。非イオン性界面活性剤の使用により、ポリペプチドの変性に起因しない剪断面応力に、処方物を暴露させることができる。さらに、このような界面活性剤を含有する処方物は、エアゾール装置、例えば肺投与に使用されるもの、及び針のないジェット注射ガンに使用することができる(例えば、欧州特許第257,956号を参照)。
【0081】
等張剤は、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストの液状組成物を確実に等張にするために存在し、多価糖アルコール、好ましくは三価又は高級糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールを含む。これらの糖アルコールは、単独で又は組合せて使用することができる。また塩化ナトリウム又は他の適切な無機塩を、溶液を等張にするのに使用することもできる。
【0082】
バッファーは、所望するpHに応じて、アセタート、シタラート、スクシナート、又はホスファートバッファーとすることができる。この発明の一タイプの液状処方物のpHは、約4〜8、好ましくは生理学的pHの範囲に緩衝される。
【0083】
防腐剤であるフェノール、ベンジルアルコール及びベンゼトニウムハロゲン化物、例えば塩化物は、使用可能な公知の抗菌剤である。
【0084】
ここに記載の治療用ポリペプチド製組成物は、一般的に無菌のアクセスポート、例えば、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針で貫通可能なストッパーを備えたバイアルを有する容器に入れられる。処方物は、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、又は筋肉内(i.m.)の繰り返し注射として、あるいは鼻内又は肺内送達に適したエアロゾル処方物として投与可能である(肺内送達については、例えば欧州特許第257,956号参照)。処方物は、好ましくは硝子体内(IVT)又は結膜下送達として投与される。
【0085】
また、治療用ポリペプチドは、徐放性調製物の形態で投与することが可能である。徐放性調製物の適切な例には、タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、このマトリクスは、例えばフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langerら, J. Biomed. Mater. Res. 15:167-277(1981)及びLanger, Chem. Tech. 12:98-105(1982)に記載されたポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、欧州特許第58,481号)、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタマートのコポリマー(Sidmanら, Biopolymers 22:547-556(1983))、非分解性エチレン-酢酸ビニル(Langerら, 上掲)、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLupron Depot(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)が含まれる。
【0086】
エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化されたタンパク質が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物活性の喪失及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の使用、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
【0087】
徐放性のTSPAN12又はノリンのアンタゴニスト組成物は、リポソーム的に捕捉されたアンタゴニストを含有する。このようなリポソームはそれ自体公知の方法で調製される:独国特許第3,218,121号; Epsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688-3692(1985);Hwangら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030-4034(1980);欧州特許第52,322号;欧州特許第36,676号;欧州特許第88,046号;欧州特許第143,949号;欧州特許第142,641号;日本国特許出願第83-118008号;米国特許第4,485,045号及び同4,544,545号;及び欧州特許第102,324号。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モル以上の単層型の小体(約200-800オングストローム)のものである。コレステロール%の選択割合は、最適な治療がなされるように調節される。
【0088】
もちろん、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストの治療的に有効な用量は、処置(予防を含む)される病状、投与方法、処置に使用される化合物の種類、関与する任意の併用治療、患者の年齢、体重、一般的な病状、病歴等、このような因子に応じて変化するであろうし、その決定は医者の技量の範囲内で十分である。従って、治療専門者にとっては、最大の治療効果を得るのに必要な場合は、用量を滴定し、投与経路を変更する必要もあるであろう。
【0089】
上述した指針において、効果的な用量は、一般的に約0.001〜約1.0mg/kg、好ましくは約0.01-1.0mg/kg、最も好ましくは約0.01-0.1mg/kgの範囲内である。
【0090】
TSPAN12又はノリンのアンタゴニストの投与経路は、公知の方法、例えば静脈内、筋肉内、大脳内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、眼球内(硝子体内を含む)、関節内、滑液嚢内、くも膜下腔内、口腔、局所、又は吸入経路における注射又は注入により、又は記載したような徐放系によるものに一致する。
【0091】
ペプチド又は小分子がアンタゴニストとして使用されるならば、液状又は固体状の形態で、哺乳動物に経口的又は非経口的に投与されることが好ましい。
【0092】
塩を形成し、以下有用である分子の薬理学的に許容可能な塩の例は、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩)、アンモニウム塩、有機塩基塩(例えば、ピリジン塩、トリエチルアミン塩)、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩)、及び有機酸の塩(例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩)が含まれる。
【0093】
併用治療
当該問題の疾患の予防又は処置における、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストの有効性は、活性化合物を、同じ組成物において、又は別個の組成物として、それらの目的にとって有効な他の薬剤と連続的に又は組合せて投与することにより改善することができる。
【0094】
例えば、血管新生関連病、例えば眼病の処置に使用されるTSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、他の薬剤と組合せることができる。特に、互いに、又は他の抗血管新生剤と組合せて、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストを使用することが所望されている。いくつかの実施態様では、TSPAN12又はノリンのアンタゴニストは、VEGFアンタゴニスト、例えば抗体、特にラニビズマブと組合せて使用される。
【0095】
TSPAN12又はノリンのアンタゴニストと組合せて投与される治療剤の有効量は、医者又は獣医の裁量となるであろう。用量の投与及び調節は、処置される病状の最大管理が達成されるようになされる。さらに、用量は、使用される治療剤の種類及び処置される特定の患者等の要因にも依存するであろう。典型的には、使用量は、付与される治療剤がTSPAN12又はノリンなしに投与されるのならば、使用される場合と同じ用量となるであろう。
【0096】
TSPAN12又はノリンの抗体
本発明の最も有望な薬剤候補のいくつかは、TSPAN12又はノリンの生成を阻害し、及び/又はTSPAN12又はノリンの活性を低減可能な抗体及び抗体断片である。
【0097】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、TSPAN12又はノリンポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に結合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例には、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、又は合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
【0098】
モノクローナル抗体
あるいは、抗TSPAN12又は抗ノリン抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
【0099】
免疫化剤は、典型的にはTSPAN12又はノリンのポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する。Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,(New York:Academic Press, 1986) pp. 59-103。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培養培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培養培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプテリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0100】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのAmerican Type Culture Collectionより入手可能である。また、ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も記載されている。Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987)pp. 51-63。
【0101】
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、TSPAN12又はノリンのポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイできる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定される。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0102】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる。Goding, 上掲。この目的のための適当な培養培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640培地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
【0103】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析法はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製手順によって培養培地又は腹水液から単離又は精製することができる。
【0104】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源として供給される。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成等しない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより(米国特許第4,816,567号;MorrisonR,上掲)、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
【0105】
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られている。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製にはインビトロ法もまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
【0106】
ヒト及びヒト化抗体
抗TSPAN12又は抗ノリン抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含み得る。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントのCDRの残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、好ましくは免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。Jonesら, Nature, 321:522-525(1986); Riechmannら, Nature, 332:323-329(1988); 及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596(1992)。
【0107】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は本質的に、Winter及び共同研究者(Jonesら, Nature, 321:522-525(1986);Riechmannら, Nature, 332:323-327(1988);Verhoeyenら, Science, 239:1534-1536(1988))の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施できる。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的にはいくつかのCDR残基及び場合によってはいくつかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0108】
また、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む当該分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381(1991);Marksら, J. Mol. Biol., 222:581(1991)。また、Coleら及びBoernerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる。Coleら, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoernerら, J. Immunol., 147(1):86-95(1991)。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することにより産生することができる。投与の際に、遺伝子再配列、組立、及び抗体レパートリーを含むあらゆる観点においてヒトに見られるものに非常に類似しているヒト抗体の生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;同5,545,806号;同5,569,825号;同5,625,126号;同5,633,425号;及び同5,661,016号、及び次の科学文献:Marksら, Bio/Technology 10, 779-783(1992); Lonbergら, Nature 368 856-859(1994); Morrison, Nature 368, 812-13(1994); Fishwildら, Nature Biotechnology 14:845-851(1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14:826(1996); Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93(1995)に記載されている。
【0109】
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本ケースにおいて、結合特異性の一方はTSPAN12又はノリンポリペプチドに対してであり、他方は任意の他の抗原又はポリペプチドに対してである。
【0110】
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術において公知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生成は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく。Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539(1983)。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開の国際公開第93/08829号、及びTrauneckerら, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
【0111】
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するためのさらなる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0112】
ヘテロ結合抗体
ヘテロ結合抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染の処置のために提案されている。国際公開第91/00360号; 国際公開第92/200373号; 欧州特許第03089号。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオラート及びメチル-4-メルカプトブチリミダート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示されているものが含まれる。
【0113】
免疫リポソーム
また、ここに開示する抗体は、免疫リポソームとして処方することができる。抗体を含むリポソームは、Epsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwangら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030(1980); 及び米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号に記載されたような、当該技術で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0114】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成可能である。リポソームは、所定の孔サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab’断片は、Martinら, J. Biol. Chem. 257: 286-288(1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに結合され得る。化学治療剤(ドキソルビシン等)は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizonら, J. National Cancer Inst. 81(19) 1484(1989)を参照。
【0115】
抗体の製薬組成物
ここで同定されるTSPAN12又はノリンポリペプチドに特異的に結合する抗体、並びにここに開示したスクリーニングアッセイで同定された他の分子は、種々の疾患の治療のために、製薬用組成物の形態で投与することができる。
【0116】
ここでの処方物は、処置される特定の徴候に必要な場合に1以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、その機能を増強させる薬剤を含んでもよい。このような分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
【0117】
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は上掲のRemington's Pharmaceutical Scienceに開示されている。
【0118】
インビボ投与に使用される処方物は無菌でなけらばならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
【0119】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物活性の喪失及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の使用、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
【0120】
抗体を使用した処置方法
TSPAN12又はノリンに対する抗体は、上述にて記した種々の血管新生に関連した病状を処置するのに使用することができると考えられる。
抗体は、公知の方法に一致して、例えばボーラスとしての静脈内投与、又は長時間にわたる連続注入、硝子体内、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、くも膜下腔内、口腔、局所、又は吸入経路により、哺乳動物、好ましくはヒトに投与される。抗体の硝子体内投与が好ましい。
【0121】
一実施態様では、病的な眼の血管新生は併用治療において攻撃される。抗TSPAN12及び/又は抗ノリン抗体及び他の抗体(例えば、抗VEGF)は、治療的有効量で患者に投与される。
例えば、疾患の種類及び重症度に応じて、約1μg/kg〜50mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)の抗体が、一又は複数の別個投与、又は連続注入にかかわらず、患者に投与する際の初期候補用量である。上述した要因に応じて、典型的な毎日又は週当たりの用量は、約1μg/kg〜100mg/kgの範囲、又はそれ以上であってよい。条件に応じた、数日又はより長期にわたる繰り返し投与において、疾患の兆候の発生が所望程度に抑制されるまで、処置は繰り返されるか、又は持続される。しかしながら、他の投薬計画も有用である。この治療の進捗具合は、例えば腫瘍のX線画像を含む、従来からの技術及びアッセイにより、容易にモニターされる。
【0122】
次の実施例は、例証目的のためだけに提供されるものであり、いかなる方法においても、本発明の範囲を限定することを意図してるものではない。
本明細書に引用された全ての特許及び参考文献の開示は、それらの全体が参照によりここに導入される。
【実施例】
【0123】
実施例において言及される商業的に入手可能な試薬は、特に示さない限りは、製造者の使用説明書に従い使用した。ここに引用された全ての参考文献は、出典明示によりここに援用される。
実施例1.TSPAN12は正常又は病的な血管新生に関与している
TSPAN12のコード化領域は、ヒト及びマウスを含むいくつかの生物体において公知であるが(例えば、GenBank(登録商標)受入番号、hTSPAN12についてはNM_012338、及びmTSPAN12についてはNM_173007)、それについての機能は同定されていない。その機能を明らかにし始めるために、従来からの方法を使用し、TSPAN12ノックアウト(KO)マウスを作製した。特に、標的コンストラクトを129/SvEvBrd(Lex-2)ES細胞にエレクトロポレーションし、サウザンブロットアッセイを使用し、標的クローンを同定した。標的クローンからの細胞をC57BL/6(アルビノ)胚盤胞に注射した。得られたキメラをC57BL/6(アルビノ)メスと交配させ、変異に対してヘテロ接合性であるマウスを生じさせ、続いてC57/BL6バックグラウンド(>N3)において戻し交配させ、表現型分析及び他の実験に使用した。TSPAN12−/−マウスは生存能力があり、繁殖能力もあった。
【0124】
c-末端細胞内ペプチドCRREPGTDQMMSLK(配列番号:5)に対して、αTSPAN12-Anaspec-Cと命名されたウサギポリクローナル血清を作製し、それを親和精製した。細菌において発現したアミノ酸116-221(aa116-221-His6)に相当するhis-タグTSPAN12断片に対して、α-TSPAN12-Josman-Bと命名された第2のポリクローナル血清を生じさせ、精製した。変異マウスにおける標的を、αTSPAN12-Anaspec-Cを使用する免疫沈降によりTSPAN12に富むP1頭部の可溶化液から、サウザンブロット、PCR及びウエスタンブロットにより確認した。
【0125】
まず、種々の組織におけるTSPAN12の発現性を分析し、P15での発達中の網膜血管系、及びP1で髄膜にて発現していることが見出された。非-CNS血管系では、ほとんど又は全く発現は検出されなかった。しかしながら、公開されている手順に従いプロセシングされたTSPAN12 KOマウスからのイソレクチン染色された網膜全載調製物において、NFL血管系に大規模な形態変化は観察されなかった(Gerhardtら, J. Cell. Biol. 161(6):1163-77(2003))。従って、種々の眼病モデルにおいて、表現型について、TSPAN12変異マウスを分析した。
【0126】
8つのTSPAN12(C57BL/6)het x het交配からのマウスの子供を生じせしめ、未熟児網膜症(ROP)のマウスモデルに使用した。6匹の子供を乳母と共に、P7で開始して5日間、75%の酸素(過酸素症)に置いた。P12にて、動物をエアコンの効いた部屋(酸素正常状態)に戻し、さらに5日間(P17)保持した。尾部のバイオプシーを遺伝子型判定に使用し、37の動物を次のようにして弱らせた:ホモ接合野生型n=8、ヘテロ接合型n=21、ホモ接合変異型n=8。
【0127】
P17に、右目を4%のPFAに配し、左目をダビットソンの固定液に配した。パラフィン工程及び切片化のために、角膜とレンズを左目から取り除いた。眼杯を虹彩側が下になり、切開面が面するようにブロックに配した。16ミクロン間隔の切片を得、特注の核アルゴリズムを具備するAperio ScanScope(登録商標)を使用し、血管新生について分析した。簡単には、神経線維層(NFL)に密接に関連した新生血管房を、アルゴリズム定量化の関心ある領域として同定した。ケース毎に、新生血管核を含む最小30切片を、網膜の血管新生の評価のために定量した。
【0128】
ROPモデルが作製されるように設定された条件下で飼育された野性型動物において、網膜/硝子体の界面で新生血管核が同定された(図1)。対照的に、ホモ接合型TSPAN12変異マウスは、ほとんど新生血管核を有さなかった(図2)。これらのデータにはTSPAN12がこのROPモデルにおいては、病的な血管新生に必要であることが示された。
【0129】
ROPモデルにおけるこの表現型の観察後、我々はより微細なスケールで網膜血管系の発達を分析した。マウスの網膜において、NFLの表在性血管網は、出芽、遊走及び出産後P0-P10の間の再構成の組合せを介して、視神経頭から確立される。その後、外網状層(OPL)及び内網状層(IPL)において、血管が出芽し、そこで2つの末梢血管床が確立され、3層血管構造に至る。P8までに、NFL血管系の発達が、TSPAN12−/−マウスの網膜全載においてほとんど変化しないことが見出された。断面では、OPLにおける毛細血管の形成が、TSPAN12+/+マウスではP11までに開始し、出芽がTSPAN12−/−マウスでは完全に不在であることが見出された。TSPAN12発現が血管系では検出されたが、他の網膜組織では検出されないという事実は、網膜組織像がヘマトキシリン及びエオシン染色において正常であると思われた観察と共に、血管障害が原発性であることを示している。また、成体のTSPAN12−/−マウスにおいて、OPLでは血管新生されず、障害が一過性ではないことが確認された。IPLにおける組織化された毛細血管床の代わりに、TSPAN12−/−マウスは、NFLとIPLの間の空間に、幾分拡大した蛇行状の毛細血管を示した。TSPAN12−/−網膜における内側及び外側の顆粒層の厚みは、成体においては一貫して低減しているが、発育中のマウスにおいてはそうではなく、これは神経細胞が血管新生における障害によって二次的に影響を受けていることを示している。
【0130】
同時に、TSPAN12−/−マウスの表現型は、表在性血管網のかなりの正常な発達、及びOPLにおける毛細血管の欠如、Fzd4変異マウス(Xuら Cell 116: 883-95(2004))及びノリン変異マウス(Luhmannら Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 46(9): 3372-82(2005))について報告されている表現型に非常に類似していると思われる表現型により特徴付けられる。よって、TSPAN12−/−マウスが、Fzd4又はそのリガンドノリンの破壊に起因する付加的な特徴的特性を示すかどうかをテストした。ノリン変異マウスは、P15で、NFLから内顆粒層の方へ広がる非常に特徴的な微小動脈瘤を示す。際だって、共焦点顕微鏡法によりTSPAN12−/−マウスのP16網膜を分析すると、ノリン変異マウスにおいて記載されたものに極めて類似した、微小動脈瘤様血管形成異常が明らかとなった。これらの高度に特徴的な形成異常の類似性は、ノリン変異マウスとTSPAN12−/−マウスの双方において、形成異常が実質的同時期に発生したという事実により支持される。さらなる類似性には、TSPAN12−/−マウスの網膜血管におけるMeca-32の異常発現が含まれ、有窓血管についてのマーカーは、網膜血管系では通常発現しないが、Fzd4変異マウスにおいてはアップレギュレートされる。ノリン及びFzd4は、コレセプターLRP5と共同して、カノニカルWnt-経路を活性化させ、細胞質β-カテニンの蓄積を促進させるリガンド/レセプター対であるため、TSPAN12−/−マウスの表現型的特徴は、TSPAN12がノリン/β-カテニンシグナル伝達に必要であり得ることが示された。
【0131】
実施例2.TSPAN12はWntシグナル伝達に関与している
TSPAN12、Fzd4及びノリンKOマウスにおいて観察される表現型間の類似性に基づき、TSPAN12が、Fzd4を介したノリン-誘発性β-カテニンWntシグナル伝達に関与しているかどうかを決定するために、Topflashレポーターアッセイを実施した。Topflashコンストラクトは、カノニカルβ-カテニンシグナル伝達に対して反応するLEF/TCFコンセンサス部位を含むプロモーター下、ホタルのルシフェラーゼからなる。構成的プロモーター下でウミシイタケルシフェラーゼを発現するコンストラクトが、内部対照体として使用される。レポーターコンストラクト及びレセプターで形質移入された細胞は、外来性TSPAN12又はベクター対照体の存在下、10nMの組換えノリンで活性化された。16-18時間後、レポーター活性(ホタル活性をウミシイタケ活性で割る)を決定した。ノリン-媒介性シグナル伝達は、対照細胞よりも、TSPAN12が過剰発現している細胞において、約4倍高かった(図3、左欄−右欄は、対照となるウミシイタケルシフェラーゼ発現が、全ての条件下で同じであることを示している)。野生型TSPAN12 mRNAがsiRNAを使用して低減している(発現は対照レベルの5分の1のわずかに下だった)細胞において、同様の実験を実施し、ノリン-誘発性、Fzd4/LRP5-媒介性発現は、TSPAN12ノックダウン後に、かなり低減したことが見出された。
【0132】
TSPAN12効果の特異性をさらに証明するために、frizzledコンストラクト及び/又はリガンドを変えた、いくつかの実験を実施した。まず、他のfrizzledコンストラクト(Fzd1、Fzd2、Fzd7、Fzd10)、並びにFzd4を発現する同様のベクターで形質移入された細胞を使用する実験を実施した。図4に示すように、ノリン-媒介性Wnt/β-カテニンのカノニカルシグナル変換における、TSPAN12の主要な影響は、Fzd10-媒介性シグナル伝達にあまり影響しないFzd4に対して特異的である。次に、シグナル伝達を誘発させるためのリガンドとしてWnt3aを使用するこのアッセイにおいて、シグナル伝達を分析した。ここで、TSPAN12は、任意のFZD-媒介性シグナル伝達をあまり高めなかったことが見出された(図5)。リガンドとしてWnt5aを使用しても同様の結果が観察された。
【0133】
実施例3.TSPAN12はFzd4-レセプター複合体の一部である
TSPAN12が、ノリン/β-カテニンシグナル伝達の開始の間に、実際に機能するならば、レセプター複合体の成分と共に共局在化し、相互作用することが予期される。この可能性をテストするために、flag-Fzd4(細胞外に位置するflag)とHA-TSPAN12を用いてHela細胞を形質移入した。細胞膜Fzd4を、氷上にて、非透過性の生存細胞において、flag抗体を用いて検出し、固定化及び透過化の後に続いて、TSPAN12を検出した。この染色パラダイムにより、Hela細胞の表面における多量のFzd4発現が明らかとなった。Fzd4は細胞膜に均一に分散していないが、その代わり、多くの点状領域に凝縮していることが見出された。TSPAN12はFzd4ポジティブ点状体と共に広範囲に共局在化しており、さらに、抗flag染色が細胞を透過することなく細胞表面で実施されるために、抗flag抗体で染色されない細胞内構造体に生じる。対照的に、CD9とFzd4は共局在化しなかった。Fzd4がFzd5で置き換えられ、TSPAN12と同時発現する場合、TSPAN12とFzd5が最も離間して局在化することが見出された(双方のタンパク質を強く発現したまれな細胞でのみ、分離が部分的に克服された)。
【0134】
ノリンのN末端アルカリホスファターゼ融合体(AP-ノリン)を含有する条件培地を使用し、ノリン-レセプター相互作用を研究する(Xuら 上掲)。Fzd4、LRP5又はTSPAN12のいずれかを使用してHeLa細胞を形質移入させ、flag-AP-ノリンを含有する条件培地で、これらの細胞を探索した。以前の報告と一致して、flag-AP-ノリンは、Fzd4を発現するが、LRP5は発現しない細胞に、効果的に結合することを見出した。重要なことに、ノリンは、TSPAN12を単独で発現する細胞には結合しなかった(図6)。TSPAN12とレセプター複合体との相互作用を探索するために、293細胞において、Fzd4、LRP5及びTSPAN12を同時発現させ、Frizzledの代替としてFzd5、テトラスパニンの代替としてCD9を、それぞれの対照体に使用した。(内部移行事象を防止するために)氷上にて、flag-AP-ノリンを含有する条件培地と共に、これらの細胞をインキュベートし、十分に洗浄した後、ノリン関連の膜タンパク質を穏やかに架橋させ、ついで抗flag抗体により免疫沈降させた。ノリンはFzd4を効果的に沈殿させるが、Fzd5はそうではなかった。さらに、TSPAN12は、ノリンにより、Fzd4と共沈殿したが、Fzd5とはせず、Frizzledが存在しない場合は沈殿した。対照的に、CD9は、TSPAN12と同程度に発現したが、ノリンにより、Fzd4と共沈殿しなかった(図7)。よって、TSPAN12は、Fzd4レセプター複合体と物理的に結合する。また、架橋剤を使用しない場合、TSPAN12は、洗浄抽出物(1%のNP-40+0.1%のN-ドデシル-ベータ-D-マルトシド)からLRP5の不在下において、ノリンによりFzd4と共沈殿した(図示せず)。TSPAN12とLRP5が同時発現し、TSPAN12が免疫沈降する場合、LRP5との関連性は、何も検出されなかった(図8)。
【0135】
TSPAN12によりノリン/β-カテニンシグナル伝達が強力に高められることで、TSPAN12がFzd4に結合するノリンを増加可能であるかどうかを分析した。この目的のために、Hela細胞をflag-Fzd4、LRP5、TSPAN12又はベクター対照体で形質移入し、続いて、flag-AP-ノリン条件培地のいくつかの希釈液を用いて探索した。細胞へのflag-AP-ノリンの結合性は、テストした全てのノリン濃度で、TSPAN12の存在下又は不在下で同様であった(図9)。TSPAN12がFzd4発現レベルを低下させるが、同時にノリン結合性を増加させる可能性を排除するため、flagペプチドに対して指向するHRP-結合抗体を用い、Fzd4の発現性を直接測定した。TSPAN12の同時発現は、細胞膜におけるFzd4の発現性を変化させなかった(図10)。共に、TSPAN12がノリンと共免疫沈降せず(Fzd4が存在しないならば)(図7)、Fzd4に対するノリンの結合性を高めない(図9)という発見は、TSPAN12が固有の方式でシグナル伝達を高めていることを示す。これは、いくつかの他のテトラスパニン類の機能と一致しており、典型的には、リガンドに直接結合はしないが、その代わりに、包埋したレセプターのシグナル伝達を容易にするマイクロドメインを組織化すると考えられる。よって、次は、TSPAN12がレセプター複合体のコンポーネント間の相互作用を容易にする可能性を試験した。
【0136】
実施例4.モノマーノリンC95Rの欠失はTSPAN12により迂回される
ノリンは、分子間ジスルフィド結合を介してダイマーを形成するシステインノットタンパク質のサブグループに属し(Vittら Mol. Endocrinol. 15(5): 681-94(2001))、ノリンダイマーがさらに高分子量の構造体に組み立て可能であると示唆される。(Perez-Vilarら J. Biol. Chem. 272(52): 33410-15(1997))。ノリンは、ノリンがAPに縮合していないならば、細胞外マトリックス(ECM)に強く会合している(Xuら 上掲)。分子間ジスルフィド結合の還元を通して、ノリンはモノマーに完全に転換可能であり、又は95位におけるシステインの変異により、分子間ジスルフィド結合が無効になると予測される。293細胞において、V5-タグされたノリンC95R変異体及びV5-タグされた野生型ノリンを発現させ、ECMからノリン抽出した。還元条件下、SDS PAGEにより、実際に区別できない、野生型及び変異ノリンのモノマーが明らかになった。以前の報告と一致して、非還元条件下での分析では、野生型ノリンがダイマー、及びより高分子量のアセンブリを形成することが明らかとなった。対照的に、ノリン-C95R変異体は、ほとんどがモノマーであり、大きなアセンブリは形成されなかった(図11)。全ノリンC95Rの小さなフラクションは、C95以外の位置での分子間ジスルフィドにより、又は可能であれば非共有結合により、ダイマーを形成した。
【0137】
ノリンは、膜に近接近して多くのFzd4分子を連れてきて、ノリン/β-カテニンシグナル伝達を高める可能性を有するモノマーより、より大きく組み立てられるが、モノマーノリン-C95Rはできないと予測される。この考えをテストするために、レセプターと共に、増大量の野生型ノリン又はノリンC95R cDNAを形質移入し、293細胞において、TSPAN12の存在下又は不在下において、Topflash活性を誘発させた。5-100ngのノリンプラスミドがFZD4及びLRP5と共に同時形質移入された場合、野生型ノリンの発現により、ノリン/β-カテニンシグナル伝達は効果的に誘発され、TSPAN12の添加により、この活性は強く高められる(図12)。しかしながら、モノマーノリンC95R変異体は、100ngのノリンプラスミドという最も高い用量でさえ、TSPAN12を過剰発現してない細胞においては、実際は不活性であった。TSPAN12はマイクロドメインにレセプターを連れてくることが可能で、互いに近接して配することができるという考えに一致して、TSPAN12は大規模な程度で、ノリンC95R変異体のシグナル伝達欠失をレスキューする。さらに、TSPAN12の添加により、野生型ノリンのシグナル伝達が増加した(図12)。共に、これらのデータには、ノリンマルチマー及びTSPAN12がそれぞれ、近接近して、多数のFZD4分子を連れてくる種々の手段を提供し、これらのメカニズムは互いに作用して、最大シグナル伝達を導き出すことが示されている。
【0138】
実施例5.TSPAN12はレセプタークラスター化を高める
ノリン/β-カテニンシグナル伝達を強く損なわせるが、ノリンに結合する能力は維持している、上述した変異FZD4-M157Vを使用するレセプタークラスター化の生化学的分析を実施した(Xuら, 上掲)。構造的情報(Dannら Nature 412:86-90(2001))により補助すると、M157V変異は、ノリン誘発性FZD4ダイマー化、及びその結果としてのマルチマー化(Dannら, 上掲;Toomesら, 上掲;Xuら, 上掲)に影響を与えることが提案されている。以前の報告(Xuら, 上掲)と一致して、FZD4-M157Vにより媒介されるシグナル伝達が、かなり損なわれていたことが見出された。興味あることに、TSPAN12同時発現は、FZD4-M157Vのシグナル伝達欠失を完全にレスキューした(図13A)。
【0139】
ついで、FZD4-M157Vを利用し、FZD4マルチマー化におけるTSPAN12の役割を直接調査した。293細胞をTSPAN12又は対照ベクターで形質移入し、FLAGTM-FZD4及びgD-FZD4、又はFLAG-FZD4-M157V及びgD-FZD4-M157Vで同時形質移入した。細胞を、ノリンを含有するか、又はリガンドを含有しない培地と共に、氷上でインキュベートした。細胞溶菌液を抗FLAG抗体で免疫沈降させ、gD-FZD4の共免疫沈降について探索した。タンパク質-タンパク質の相互作用の定量を可能にするために、この実験では、架橋剤を使用しなかった。gD-FZD4とFLAG-FZD4又はgD-FZD4-M157VとFLAG-FZD4-M157Vとの間の会合性に、同様の基本レベルが検出された(図13B、データは図示せず)。ノリンとTSPAN12はそれぞれ、FLAG-FZD4により低下するgD-FZD4の量を増加させ、ノリンとTSPAN12とを組合せることで、FZD4のクラスター化がさらに増加した(図13B、左側パネル;13C、白抜きバー)。重要なことに、M157V変異により、FLAG-FZD4と共にgD-FZD4をクラスター化させるノリンの能力がかなり損なわれるが、TSPAN12の同時発現により、この欠失は相殺された(図13B、右側パネル;13C、黒棒)。共に、これらのデータは、TSPAN12とノリンの双方がFZD4のマルチマー化を促進することを示し、ノリン/β-カテニンシグナル伝達には、i)FZD4のマルチマー化を促進する因子とii)リガンド結合によるFZD4の活性化が必要であることが示唆される。
【0140】
次に、FZD4レセプターのクラスター化を高める抗体の付加により、FZD4-M157Vの活性がレスキュー可能であるかどうかをテストした。24-ウェルプレートにおいて、1.6x105細胞/ウェルを、β-カテニンレセプター混合物(Topflash, pRL-CMV、及びpCan-myc-lef-1)、LRP5、及びFZD4又はFZD4-M157Vのいずれかを含有するDNA混合物で形質移入した。形質移入の24時間後、指示ウェルに1μg/mlの抗LRP5/6抗体を受容させた。1時間後、125ng/mlの組換えノリンを、指示したようにウェルに添加した。37℃でインキュベートしてさらに16時間後、細胞を溶解させ、Promega Dual-Glo(登録商標)試薬を使用し、ホタル及びウミシイタケのルシフェラーゼ発現を測定した。ホタルのルシフェラーゼ値を、ウミホタル発現に対して標準化させた。結果を表1に示す。FZD4を発現した細胞において、レポーター活性はノリンの存在下で〜6倍まで活性化する。FZD4-M157Vが発現した場合、ノリン活性は〜2倍のみ、かなり損なわれる。LRP5抗体を添加することにより、約2倍まで、FZD4-M157Vにおけるシグナル伝達欠失が部分的にレスキューされる。
【0141】
【0142】
実施例6.抗TSPAN12及び抗ノリン抗体の生成
多くの方法を使用し、抗TSPAN12及び抗ノリン抗体を生成した。例えば、予防接種及びハイブリドーマ技術により抗体を生成した。また、重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)に多様性を導入することより、単一のフレームワーク(ヒト化抗ErbB2抗体、4D5)に作製される合成ファージ抗体ライブラリも使用する(Leeら J. Mol. Biol.340: 1073-93(2004); Liangら J. Biol. Chem. 281: 951-61(2006))。ナイーブなライブラリを用いたプレートパニングを、MaxiSorpTM免疫プレートに固定化されたHis-タグヒトTSPAN12に対して実施する。増菌の4ラウンド後、クローンをランダムに選定し、ファージELISAを使用して、特定のバインダーを同定する。得られたhTSPAN12結合クローンを、His-タグマウスTSPAN12タンパク質を用いてさらにスクリーニングし、異種間クローンを同定する。それぞれのポジティブファージクローンについて、重鎖及び軽鎖の可変領域を、全長IgG鎖を発現するように設計されたpRK発現ベクターにサブクローンする。重鎖及び軽鎖のコンストラクトを、293又はCHO細胞に同時形質移入し、発現抗体を、プロテインAアフィニティーカラムを使用し、無血清培地から精製する。精製された抗体を、組換えTSPAN12又はノリンへの結合についてはELISAにより、FZD4と共に、全長ヒトTSPAN12又はマウスTSPAN12を発現する、もしくはヒト又はマウスノリンを発現する安定した株化細胞への結合についてはFACSによりテストする。ついで、抗体を、TSPAN12(抗TSPAN12抗体)により、ノリン-媒介性、FZD4/LRP5-媒介性のWntレポーター活性の増強のブロック、又はノリン-誘発性シグナル伝達(抗ノリン抗体)のブロックについてテストする。親和成熟について、関心ある最初のクローンから誘導された3つの異なるCDRループ(CDR-L3、-H1、及び-H2)の組合せを有するファージライブラリを、各選択位置が、約50:50の頻度で、非野生型残基に変異するか、又は野生型として維持されるように、柔軟なランダム化法により実施する(Liangら, 2006, 上述)。ついで、高親和性のクローンを、漸次増加する緊縮性を有する、ヒト及びマウスの双方のHis-タグTSPAN12タンパク質に対して、4ラウンドの液相パニングを介して同定する。
【0143】
実施例7.眼病のマウスモデル
マウスモデルにおいて、抗体又はTSPAN12ポリペプチドをテストする。マウスROPモデルについて、P7で開始して5日間、子供を75%の酸素(過酸素症)に置く。P12にて、動物をエアコンの効いた部屋(酸素正常状態)に戻し、さらに5日間(P17)保持した。抗TSPAN12、抗ノリン抗体、又はTSPAN12の大きな細胞外ループ(例えば、Hoら 上掲)を、P12の動物の硝子体内に注射する。アンタゴニストの親和性及び安定性により決定される予測に基づき、複数の用量レベルと頻度で実施する。P17に、右目を4%のPFAに配し、左目をダビットソンの固定液に配した。パラフィン工程及び切片化のために、角膜とレンズを左目から取り除いた。眼杯を、虹彩側が下になり、切開面が面するようにブロックに配した。16ミクロン間隔の切片を得、特注の核アルゴリズムを具備するAperio ScanScope(登録商標)を使用し、血管新生について分析した。NFLに密接に関連した新生血管房を、アルゴリズム定量化の関心ある領域として同定した。ケース毎に、新生血管核を含む最小30切片を、網膜の血管新生の評価のために定量した。
マウスレーザー誘起脈絡膜血管新生モデルにおいても、抗体及びポリペプチドをテストする。
【0144】
上述した明細書で、当業者は本発明を十分に実施可能であると考えられる。しかしながら、ここに示され記載されるものに加えて、本発明の種々の修正点は、上述の記載から、当業者には明らかであり、添付する特許請求の範囲に入る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TSPAN12アンタゴニストを被験者に投与することを含む、血管新生に関連した眼の疾患又は病状を患っている被験者における、血管新生を低減又は阻害する方法。
【請求項2】
TSPAN12アンタゴニストが抗TSPAN12抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TSPAN12アンタゴニストが、TSPAN12のポリペプチド断片を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
TSPAN12のポリペプチド断片がTSPAN12の細胞外ドメインを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
TSPAN12アンタゴニストが免疫グロブリン定常領域をさらに含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
免疫グロブリン定常領域がIgG Fcである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
眼の疾患又は病状が、糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
眼の疾患又は病状が、糖尿病性網膜症、AMD、DME、CRVO、及びBRVOからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2の抗血管新生剤を被験者に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第2の抗血管新生剤が、TSPAN12アンタゴニスト投与の前又は後に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第2の抗血管新生剤が、TSPAN12アンタゴニストと同時に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
第2の抗血管新生剤が、ノリン又は血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のアンタゴニストである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ノリンアンタゴニストが抗ノリン抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
抗VEGF抗体がラニビズマブである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ノリンアンタゴニストを被験者に投与することを含む、血管新生に関連した眼の疾患又は病状を患っている被験者における、血管新生を低減又は阻害する方法。
【請求項17】
ノリンアンタゴニストが抗ノリン抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
眼の疾患又は病状が、糖尿病性網膜症、CNV、AMD、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
眼の疾患が、糖尿病性網膜症、AMD、DME、CRVO、及びBRVOからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第2の抗血管新生剤を被験者に投与することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
第2の抗血管新生剤が、ノリンアンタゴニスト投与の前又は後に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第2の抗血管新生剤が、ノリンアンタゴニストと同時に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
第2の抗血管新生剤が、VEGFのアンタゴニストである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
抗VEGF抗体がラニビズマブである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
TSPAN12アンタゴニストを被験者に投与することを含む、被験者における所望しない血管新生に関連した眼の疾患又は病状を処置する方法。
【請求項27】
TSPAN12アンタゴニストが抗TSPAN12抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
TSPAN12アンタゴニストが、TSPAN12のポリペプチド断片を含有する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
TSPAN12のポリペプチド断片がTSPAN12の細胞外ドメインを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
TSPAN12アンタゴニストが免疫グロブリン定常領域をさらに含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
免疫グロブリン定常領域がIgG Fcである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
眼の疾患又は病状が、増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、CNV、AMD、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
眼の疾患又は病状が、糖尿病性網膜症、AMD、DME、CRVO、及びBRVOからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
第2の抗血管新生剤を被験者に投与することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
第2の抗血管新生剤が、TSPAN12アンタゴニスト投与の前又は後に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
第2の抗血管新生剤が、TSPAN12アンタゴニストと同時に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
第2の抗血管新生剤が、ノリン又はVEGFのアンタゴニストである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
ノリンアンタゴニストが抗ノリン抗体である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
抗VEGF抗体がラニビズマブである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ノリンアンタゴニストを被験者に投与することを含む、被験者における所望しない血管新生に関連した眼の疾患又は病状を処置する方法。
【請求項42】
ノリンアンタゴニストが抗ノリン抗体である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
眼の疾患又は病状が、増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、CNV、AMD、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
眼の疾患又は病状が、糖尿病性網膜症、AMD、DME、CRVO、及びBRVOからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
第2の抗血管新生剤を被験者に投与することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
第2の抗血管新生剤が、ノリンアンタゴニスト投与の前又は後に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
第2の抗血管新生剤が、ノリンアンタゴニストと同時に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
第2の抗血管新生剤が、VEGFのアンタゴニストである、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
抗VEGF抗体がラニビズマブである、請求項49に記載の方法。
【請求項1】
TSPAN12アンタゴニストを被験者に投与することを含む、血管新生に関連した眼の疾患又は病状を患っている被験者における、血管新生を低減又は阻害する方法。
【請求項2】
TSPAN12アンタゴニストが抗TSPAN12抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TSPAN12アンタゴニストが、TSPAN12のポリペプチド断片を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
TSPAN12のポリペプチド断片がTSPAN12の細胞外ドメインを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
TSPAN12アンタゴニストが免疫グロブリン定常領域をさらに含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
免疫グロブリン定常領域がIgG Fcである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
眼の疾患又は病状が、糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
眼の疾患又は病状が、糖尿病性網膜症、AMD、DME、CRVO、及びBRVOからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2の抗血管新生剤を被験者に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第2の抗血管新生剤が、TSPAN12アンタゴニスト投与の前又は後に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第2の抗血管新生剤が、TSPAN12アンタゴニストと同時に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
第2の抗血管新生剤が、ノリン又は血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のアンタゴニストである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ノリンアンタゴニストが抗ノリン抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
抗VEGF抗体がラニビズマブである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ノリンアンタゴニストを被験者に投与することを含む、血管新生に関連した眼の疾患又は病状を患っている被験者における、血管新生を低減又は阻害する方法。
【請求項17】
ノリンアンタゴニストが抗ノリン抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
眼の疾患又は病状が、糖尿病性網膜症、CNV、AMD、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
眼の疾患が、糖尿病性網膜症、AMD、DME、CRVO、及びBRVOからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第2の抗血管新生剤を被験者に投与することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
第2の抗血管新生剤が、ノリンアンタゴニスト投与の前又は後に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第2の抗血管新生剤が、ノリンアンタゴニストと同時に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
第2の抗血管新生剤が、VEGFのアンタゴニストである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
抗VEGF抗体がラニビズマブである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
TSPAN12アンタゴニストを被験者に投与することを含む、被験者における所望しない血管新生に関連した眼の疾患又は病状を処置する方法。
【請求項27】
TSPAN12アンタゴニストが抗TSPAN12抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
TSPAN12アンタゴニストが、TSPAN12のポリペプチド断片を含有する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
TSPAN12のポリペプチド断片がTSPAN12の細胞外ドメインを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
TSPAN12アンタゴニストが免疫グロブリン定常領域をさらに含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
免疫グロブリン定常領域がIgG Fcである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
眼の疾患又は病状が、増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、CNV、AMD、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
眼の疾患又は病状が、糖尿病性網膜症、AMD、DME、CRVO、及びBRVOからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
第2の抗血管新生剤を被験者に投与することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
第2の抗血管新生剤が、TSPAN12アンタゴニスト投与の前又は後に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
第2の抗血管新生剤が、TSPAN12アンタゴニストと同時に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
第2の抗血管新生剤が、ノリン又はVEGFのアンタゴニストである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
ノリンアンタゴニストが抗ノリン抗体である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
抗VEGF抗体がラニビズマブである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ノリンアンタゴニストを被験者に投与することを含む、被験者における所望しない血管新生に関連した眼の疾患又は病状を処置する方法。
【請求項42】
ノリンアンタゴニストが抗ノリン抗体である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
眼の疾患又は病状が、増殖性糖尿病性網膜症を含む増殖網膜症、CNV、AMD、糖尿病及び他の虚血-関連網膜症、DME、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラスマ症、CRVO、BRVO、角膜血管新生、網膜血管新生、ROP、結膜下出血、及び高血圧性網膜症からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
眼の疾患又は病状が、糖尿病性網膜症、AMD、DME、CRVO、及びBRVOからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
第2の抗血管新生剤を被験者に投与することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
第2の抗血管新生剤が、ノリンアンタゴニスト投与の前又は後に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
第2の抗血管新生剤が、ノリンアンタゴニストと同時に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
第2の抗血管新生剤が、VEGFのアンタゴニストである、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
抗VEGF抗体がラニビズマブである、請求項49に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−502106(P2012−502106A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526975(P2011−526975)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/056557
【国際公開番号】WO2010/030813
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/056557
【国際公開番号】WO2010/030813
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】
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