説明

眼内圧の上昇によって特徴付けられる眼の疾患のsiRNAによる治療

【課題】RNA干渉の使用によって目の疾患を治療するための配列及びプロトコルを開示する。
【解決手段】標的遺伝子は、房水の流入または房水の流出に関与する遺伝子より選択され、特に好ましい治療される疾患は緑内障及びブドウ膜炎を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼の疾患、特に緑内障(これに限定しない)の治療のための方法及び組成物に関する。好ましい実施態様では、本発明は、房水形成遺伝子及び房水流出遺伝子の発現をダウンレギュレートするためのRNAi技術の使用に関する。眼の疾患の治療のための方法及び組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子発現をダウンレギュレートするツールとしてのRNAi
相同組換えによる遺伝子標的が一般的に使用されて、哺乳動物における遺伝子機能が決定されているが、これはコストがかかり、時間を消費する方法である。代替的に、多数の遺伝子の機能が、リボザイムまたはアンチセンス技術を使用するmRNA阻害後に決定され得る。幾つかの場合において成功しているが、これらの技術は一般的に適用することが困難であった。siRNAによる「ノックダウン」の出現は、体細胞遺伝学において衝撃的な進化をもたらし、哺乳動物における遺伝子機能の安価で迅速な分析を可能にした。
【0003】
mRNAレベルでの遺伝子発現のノックアウトの簡易的で信頼できる方法を確立することは、最近の15年に亘って分子生物学において頻発するテーマであった。細胞または生物の機能の欠損を生じさせるための試みにおいて、例えば、アンチセンス配列、リボザイム、及びキメラオリゴヌクレオチドを含む各種の分子が試験されたが、その様な分子の設計は試行錯誤に基づいており、標的遺伝子の特性に依存していた。
【0004】
更に、所望の効果を予測することが困難であり、多くの場合には弱い抑制のみが達成された(Braasch & Corey, 2002)。
【0005】
1990年代の初期に植物において現象が発見された後、1998年にAndy Fire及びCraig Melloが、dsRNA(二本鎖RNA)が非常に効率的な様式で遺伝子発現を特異的及び選択的に阻害する可能性がある事を虫であるCaenorhabditis elegansを使用して初めて明らかにした(Fire et al., 1998)。彼らの実験では、第1の鎖(いわゆるセンスRNA)の配列は標的メッセンジャーRNA(mRNA)の相当する領域の配列と一致する。第2の鎖(アンチセンスRNA)は、このmRNAと相補的である。結果として得られるdsRNAは、相当する一本鎖RNA分子(特にアンチセンスRNA)よりも非常に(桁違いに)効率的であることが明らかとなった。Fire et al., 1998は、RNAi(RNA干渉)現象と名付けた。この強力な遺伝子サイレンシング機構は、大多数の系統発生学的な門のうちの幾つかの種において働くことが認められている。
【0006】
RNAiは、DICERという名称の酵素がdsRNAと遭遇し、低分子干渉RNA(siRNA)と称される断片に切断する際に開始する。このタンパク質は、RNアーゼ IIIヌクレアーゼファミリーに属する。タンパク質の複合体がこれらのRNAを集め、標的mRNAのような一致する配列を有する細胞中の任意のRNAを捜し出し、破壊するためのガイドとしてそれらのコードを維持し、使用する(Bosher & Labouesse, 2000参照)。
【0007】
RNAi現象(Akashi et al., 2001)は、
・ステップ1:dsRNA認識及びスキャンプロセス
・ステップ2:RNase III活性を介するdsRNA切断及びsiRNAの産生
・ステップ3:siRNAとRISC複合体中の結合因子との結合
・ステップ4:相補的な標的mRNAの認識
・ステップ5:siRNAと相補的な領域の中心における標的mRNAの切断
・ステップ6:標的mRNAの分解及びRISC複合体の再利用
のように要約されるであろう。
【0008】
遺伝子ノックダウンのための技術としてRNAi現象を適用する試みにおいて、哺乳動物細胞が、この方法の使用を妨害し得るウイルス感染に対する各種の保護現象を発達させていることがすぐに明らかになった。実際に、非常に低レベルのウイルスdsRNAの存在がインターフェロン応答を引き起こし、続いてアポトーシスを引き起こす翻訳の広範な非特異的抑制を生じさせる(Williams, 1997, Gil & Esteban, 2000)。
【0009】
2000年には、dsRNAを使用する初めての試みが、マウス卵母細胞及び初期胚において3つの遺伝子(伸長因子1a、E-カドヘリン、及びc-mosの対照の下でMmGFP)の特異的な阻害を生じさせた。翻訳の停止、及びPKR応答は発生が続けられた胚の様に認められなかった(Wianny & Zernicka-Goetz, 2000)。一年後、Ribopharma AG (Kulmbach, Germany)での研究が哺乳動物におけるRNAiの機能性を初めて明らかにした。SIRPLEX(登録商標)と称される短い(20-24塩基対)dsRNAを使用して、急性期反応を開始させずにヒトの細胞においてさえ遺伝子を特異的にスイッチオフした。同様の実験が他の研究グループによっても後に実施され、これらの結果が更に確認された(Elbashir et al., 2001; Caplen et al., 2001)。
【0010】
一年後、Paddison et al. (Paddison et al., 2002)は、ヘアピン構造に折りたたまれた低分子RNAを使用して、特定の遺伝子の機能を阻害することを試みた。この研究は、Caenorhabditis elegansにおける幾つかの遺伝子がヘアピン構造のRNAをコードすることによってRNAiを介して他の遺伝子を天然に制御していることを示す過去の研究から着想した。各種の正常及び癌のヒト及びマウスの細胞株において試験され、短いヘアピンRNA(shRNA)が、それらのsiRNAの相当するものと同様に効率的に遺伝子をサイレンシングすることが可能であった。更に、shRNAは、相当する二本鎖よりもin vivoにおいて良好な解離定数を示した。更に重要なことに、これらの著者は、細胞分裂の間に長く続く抑制効果を示すshRNAを合成するように改変したトランスジェニック細胞株を産生した(Eurogentec)。最近、低分子RNA(21-25 ntの範囲に含まれる)の他の群が、遺伝子発現のダウンレギュレートを仲介することが示された。これらのRNAは、small temporally regulated RNA (stRNA)として知られており、Caenorhabditis elegansにおいて発生の間の遺伝子発現の時間を制御すると記載されている。stRNAとsiRNAとは、明らかに類似しているが、異なる形態の作用を介することに注意するべきである(Banerjee & Slack, 2002参照)。siRNAと比較して、22 ntの長さのstRNAは、mRNAの完全性に影響を与えずに翻訳の開始後に標的mRNAの発現をダウンレギュレートする。最近の研究によって、線虫において最初に記載された2つのstRNAが、後生動物に存在する数百の更なるマイクロRNA(miRNA)を有する非常に大きなファミリーの一員であることを示している(Grosshans & Slack, 2002)。
【0011】
科学者は、Caenorhabditis elegans、Drosophila、トリパノソーマ、及び各種の他の無脊椎動物を含む複数のシステムにおいて、始めにRNAiを使用している。更に、最近は、この方法を使用して、複数のグループが各種の哺乳動物細胞株、特にHeLa細胞におけるタンパク質生合成の特異的な抑制を提供し、RNAiがin vitroの遺伝子サイレンシングのための広範に適用可能な方法であることを示している。これらの結果に基づいて、RNAiが遺伝子機能を評価(同定及びアサイン)するためのツールとして急速に認識されてきている。短いdsRNAオリゴヌクレオチドを使用するRNA干渉は、更に、部分的にのみ配列決定されている遺伝子の機能の解明を可能にするであろう。そのため、RNAiは、
・真核細胞における翻訳後レベルでの遺伝子発現の阻害。ここでは、RNAiは遺伝子機能を迅速に評価し、無効にされた際のフェノタイプを明らかにするための簡易的なツールである。
・移植後の真核生物における使用のためのRNAi技術の開発。
・RNA干渉の有力な経済的な重要性は、治療目的としての応用によって確立される。その様なものとして、RNAiはヒトの病気を治療するためのRNAに基づく薬剤を産生し得る。
のような研究において不可欠なものになるであろう。
【0012】
緑内障
緑内障は、失明の主な原因のひとつである。世界中の失明の約15%のケースが緑内障によるものである。最も一般的なタイプである原発性開放隅角緑内障は、40歳を越えている人口において1/200の罹患率を有する。
【0013】
緑内障は、その正常な生理学的限界を超える眼内圧(IOP)の持続的な上昇によって引き起こされる眼組織の破壊のプロセスとして単純に規定されている。
【0014】
多数の形態の緑内障が遺伝的要素を有することが次第に明らかになっており、最近の研究は緑内障に関与する染色体の領域及び遺伝子の同定に集中している。OAGの病因は、2つ以上の遺伝子における変異の組み合わせ、及びまだ同定されていない環境的な因子による多数の要素からなるのであろう。若年及び成人のOAGに関しては、複数の遺伝子座が同定されている。しかしながら、1つの遺伝子のみ(染色体1q21-q31、GLC1A遺伝子座のミオシリン/TIGR(trabecular meshwork inducible glucocorticoid response)遺伝子)が知られている。この遺伝子の30を超える変異が、世界中の民族的に広範なヒトにおいて同定されている。研究によって、この変異はOAG全体の約5%のみに関与することが示されている(Wirtz & Samples, 2003、及びKhaw et al, 2004a参照)。
【0015】
病因
大多数の緑内障は、上昇の程度は変化し得るが、IOPの上昇によって特徴付けられる。その上昇が始めは低い緑内障(すなわち、開放隅角緑内障、メラノサイト緑内障(melanocytic glaucoma)、及びある二次緑内障)では、網膜神経節細胞及び視神経損傷の進行が遅い。閉塞隅角緑内障では、IOPにおける突然の高い上昇が、間違いなく主に篩板のレベルでの軸索流の停止により多くの場合において失明に関与する。
【0016】
ヒトにおける研究では、組織の虚血が、緑内障で生じる視神経円板損傷の開始または進行における役割を担っていることが広く受け入れられている。網膜の神経節細胞変性はネクローシスである可能性があるが、IOPの上昇によって引き起こされるアポトーシスである可能性も有り、酸化窒素及びグルタメートの個々の役割が病気の進行の間に関係すると解されている(Osborne et al, 2003参照)。
【0017】
治療
複数の病因が緑内障症候群に関与するが、治療法の選択における絶対的な決定要因は、虹彩核膜角内の一次的な及び/または誘導された圧力変化の量である。
【0018】
IOPの上昇が緑内障において神経損傷を誘導する病態生理学的な機構は未知であるが、現在の治療法は、この圧力の低減を目的とする投薬または手術を含む。
【0019】
IOPの上昇の医学的な抑制は、4つのタイプの薬剤:房水形成抑制剤(とりわけ、カルボニックアンヒドラーゼインヒビター、βアドレナリン阻害剤、またはアルファ2-アドレノレセプターアゴニスト);縮瞳薬(すなわち、副交感神経様作用剤、コリン作用剤、または抗コリンエステラーゼインヒビター);ブドウ膜流出エンハンサー;高浸透圧剤(毛様体上皮内の血液/水の障壁を越える浸透圧の勾配を生じさせる)を使用して試みることが可能である。4つの全てが緑内障の治療において使用されており、はじめの3つは一般的に応急的な治療として及び長期の調節において使用され、高浸透圧剤は応急的及び手術前の治療として非常に重要である。第5のカテゴリーの薬剤である神経保護剤が、医学的な治療に加わる重要で有力な候補として現れ始めている。実際に、NOS及びグルタメートのレベルが緑内障で上昇していること、及びそれらが網膜の神経節細胞のネクローシスまたはアポトーシスに関与することが、神経保護療法及び神経再生の可能性を上昇させている。かくして、NOSインヒビター、活性アミノ酸アンタゴニスト、グルタメートレセプターアンタゴニスト、アポトーシスインヒビター、及びカルシウムチャンネルブロッカーは全て、将来的な緑内障の治療法の開発における有力な候補である。カルシウムチャンネルブロッカーは、視神経頭に対する弱められた微小循環の効果を低減し、小柱の細胞のレベルで流出機能を強力に増大する可能性がある。
【0020】
各種の眼の疾患及びそれらの治療のレヴューは参考文献、特にBunce (2005)、Costagliola (1995, 2000)、Cullinane (2002)、Sakaguchi (2002)、Shah (2000)、及びWang (2005)において与えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Braasch & Corey, 2002
【非特許文献2】Fire et al., 1998
【非特許文献3】Bosher & Labouesse, 2000
【非特許文献4】Akashi et al., 2001
【非特許文献5】Williams, 1997
【非特許文献6】Gil & Esteban, 2000
【非特許文献7】Wianny & Zernicka-Goetz, 2000
【非特許文献8】Elbashir et al., 2001
【非特許文献9】Caplen et al., 2001
【非特許文献10】Paddison et al., 2002
【非特許文献11】Banerjee Slack, 2002
【非特許文献12】Grosshans & Slack, 2002
【非特許文献13】Wirtz & Samples, 2003
【非特許文献14】Khaw et al, 2004a
【非特許文献15】Osborne et al, 2003
【非特許文献16】Bunce (2005)
【非特許文献17】Costagliola (1995)
【非特許文献18】Costagliola (2000)
【非特許文献19】Cullinane (2002)
【非特許文献20】Sakaguchi (2002)
【非特許文献21】Shah (2000)
【非特許文献22】Wang (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
現在存在する治療法は目的を達成するものではなく、流出機能の評価、治療の正確なモニタリング、及び手術の技術の複雑性に関連する実施する上での困難性の全てが予後を混乱させる。全ての緑内障における最重要の因子は網膜の神経節細胞の変性であるため、効果的な眼の降圧を介する神経保護が、いずれの利用する治療法にとっても必須の要件である(Khaw et al 2004b参照)。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明では、ヒトを含む動物におけるIOPの変化によって特徴付けられる眼の疾患の治療のための方法を提供する。特に、前記眼の疾患は、緑内障、ブドウ膜炎、及び炎症を含んで良い。前記方法は、眼の房水形成または房水流出に関与する遺伝子の発現のダウンレギュレートに基づく。ダウンレギュレートは、各種の候補遺伝子のmRNA発現を干渉することを目的とするsiNA(低分子干渉NA)という二本鎖核酸部分の使用によって作用されて良い。修飾された核酸または類似の化学的に合成されたものも本発明の範囲に含まれるが、前記siNAは好ましくはsiRNAである。
【0024】
本発明の好ましい実施態様は、siNAの局所的な適用に関する。本発明の実施態様は、眼の疾患の治療における使用のための製薬組成物も提供する。本発明は、局所的な眼の治療の分野で使用されて良く、緑内障の病因に関与する標的遺伝子の分野で使用されて良く、並びに動物(ヒトを含む)の病気を治療するための化学的に合成されたものの使用であって良い。
【0025】
緑内障の治療に加えて、本発明の方法は、前眼房の他の病気の治療のためにも適している。特に、本発明の方法は、眼の房水の形成または流出の変化によって特徴付けられる病気の治療に適用されて良い。治療され得る疾患の例としては、感染症または炎症のような局所的な疾患、及びブドウ膜炎または全身的な病気の発現のような全体の疾患が含まれる。更に、本発明のある実施態様は、糖尿病網膜炎の治療を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明者の選択したヒトの標的遺伝子に相当するGenBank Accession Numberを示す。
【図2−1】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−2】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−3】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−4】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−5】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−6】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−7】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−8】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−9】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−10】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−11】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−12】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−13】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−14】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−15】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−16】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−17】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図2−18】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。
【図3】幾つかの標的に関する幾つかの代表的な半定量的なゲルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
標的遺伝子
本発明では、その発現レベルがIOPを変化させ得る標的遺伝子のリストを規定している。これらの遺伝子は、房水形成に関与する遺伝子の群または房水流出に関与する遺伝子の群に分類できる。
・カルボニックアンヒドラーゼII、IV、及びXII
・アドレナリン作用性レセプター:ベータ1及び2、並びにアルファ1A、1B、及び1D
・アセチルコリンエステラーゼ
・シクロオキシゲナーゼ1及び2
・ATPアーゼ:アルファ1、アルファ2、アルファ3、ベータ1、ベータ2
・内皮球接着分子I(ELAM-1)
・アンギオテンシンシステム:アンギオテンシンII、アンギオテンシンII変換酵素(ACE I及びACE II)、アンギオテンシンIIレセプター(ATR1及びATR2)、及びレニン
・コチリン(Cochlin)
が標的遺伝子のリストである。
【0028】
siNAの設計
RNAiに関する機構は未知のままであるが、特異的なdsRNAオリゴヌクレオチドの産生に必要な工程は明らかである。21-26ヌクレオチドの長さのdsRNA二本鎖が、RNA干渉において最も効果的に働くことが示されている。遺伝子内の適切な相同領域を選択することも重要である。開始コドンからの距離、G/C含量、及びアデノシンダイマーの位置のような因子が、RNAiのためのdsRNAの産生を考慮する際には重要である。しかしながら、この事の1つの帰結は、最も効率的なRNAiのために幾つかの異なる配列を試験することを必要とする可能性があることであり、これにコストがかかる可能性がある。
【0029】
1999年にTuschl et al.は、siRNAのサイレンシング効果が、それらの効率が二本鎖の長さ、3'末端の突出の長さ、及びこれらの突出の配列に依存することを示すことを解明した。この研究に基づいて、Eurogentecは、標的mRNA領域、siRNA二本鎖の配列は以下のガイドラインを使用して選択されるべきであることを推奨している。
【0030】
RNAiは複雑なタンパク質相互作用の確立に依存するため、mRNAの標的は、関連のない結合因子を避けるべきであることは明らかである。ここで、5'及び3'の翻訳されない領域(UTR)並びに開始コドンに近接する領域の双方は、調節タンパク質結合部位が豊富に存在する可能性があるため避けるべきである。そのため、siRNAの配列は、
・mRNAの配列において、AUGの開始コドンの下流または停止コドンの上流の50から100 ntに位置する領域が選択される。
・この領域において、AA(N19)、CA(N19)の配列が検索される。
・同定された配列の各々のG/Cの割合を算出する。理想的には、G/C含量が50%であるが、70%未満で30%より大きい必要がある。
・好ましくは、AAA、CCC、GGG、TTT、AAAA、CCCC、GGGG、TTTTという繰り返しを含む配列を避ける。
・mRNAの二次構造によるアクセシビリティの予測も実施する。
・唯一の遺伝子が不活性化されることを確実にするために、過去の基準に最も適合するヌクレオチド配列でBLASTも実施する(すなわち、NCBI ESTデータベース)。
のように選択される。
【0031】
結果の解釈を最大化するために、以下の注意:
・常に、センス及びアンチセンス一本鎖を別々の実験で試験する。
・スクランブルsiRNA二本鎖を試験する。これは目的のsiRNAと同一のヌクレオチドの組成を有するが、任意の他の遺伝子(目的の遺伝子を含む)に対する有意な配列相同性を欠いているべきである。
・可能であれば、サイレンシングプロセスの特異性を調節するために、2つの独立したsiRNA二本鎖で同一の遺伝子をノックダウンする。
がsiRNAを使用する際には為されるべきである。
【0032】
実際に、選択された遺伝子の各々が、最適なオリゴヌクレオチドの設計のための上述の可変要素の全てを考慮に入れた予測プログラムにおけるヌクレオチド配列として導入される。このプログラムは、siRNAによって標的とされやすい領域に関して、任意のmRNAヌクレオチド配列をスキャンする。この分析の結果は、可能性があるsiRNAオリゴヌクレオチドのスコアである。最も高いスコアが、典型的に化学合成によって作製される二本鎖RNAオリゴヌクレオチドを設計するために使用される(他の長さも可能であるが、典型的には21bpの長さ)。
【0033】
siRNAに加え、修飾ヌクレオチドも使用されて良い。当該技術分野でよく知られた幾つかの化学修飾を試験することが意図される。これらの修飾はsiNAの安定性またはアベイラビリティーを増大することを目的とする。適切な修飾の例は、参照によって本明細書に含まれる、下記の文献に記載されている。
【0034】
2つのヌクレオチド3'突出を有する21-merのsiRNA二本鎖の3'末端ヌクレオチド突出部分をデオキシリボヌクレオチドで置き換えることは、RNAi活性に対して不利な効果を有さないことが複数の研究によって示されている。siRNAの各末端上の4つのヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドで置き換えることはよく許容されるが、デオキシリボヌクレオチドでの完全な置換はRNAi活性を生じないことが報告されている(Elbashir 2001)。更に、Elbashir et al.は、2'-O-メチルヌクレオチドでのsiRNAの置換はRNAi活性を完全に消失させることも報告している。
【0035】
WO 2005/044976に記載のアフィニティー修飾ヌクレオチドが使用されて良い。この文献は、標的mRNA及び/または相補的なsiNA鎖における相補的なヌクレオチドに対するアフィニティーを増大または低減するように修飾したヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを記載している。
【0036】
GB2406568は、分解に対する耐性の改善または取り込みの改善を与えるために化学的に修飾されている代替的な修飾オリゴヌクレオチドを記載している。その様な修飾の例は、ホスホロチオエートのヌクレオチド内リンケージ、2'-O-メチルリボヌクレオチド、2'-デオキシ-フルオロリボヌクレオチド、2'-デオキシリボヌクレオチド、「一般的な塩基(universal base)」ヌクレオチド、5-C-メチルヌクレオチド、及び逆向きデオキシ塩基の基(inverted deoxybasic residue)の結合を含む。
【0037】
WO 2004/029212は、siRNAの安定性の促進または標的効率の増大のために修飾されているオリゴヌクレオチドを記載している。修飾は、siRNAの2つの相補鎖の間の化学的な架橋及びsiRNAの鎖の3'末端の化学的な修飾を含む。好ましい修飾は、内部の修飾、例えば糖の修飾、核酸塩基の修飾、及び/または主鎖の修飾である。2'-フルオロ修飾リボヌクレオチド及び2'-デオキシリボヌクレオチドが記載されている。
【0038】
WO2005/040537は、本発明に使用されて良い修飾オリゴヌクレオチドを更に記載している。
【0039】
dsNA及び修飾dsNAの使用と同様に、本発明は短いヘアピンNA(shNA){siNA分子の2つの鎖が、ヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーであって良いリンカー領域で結合されて良い}を使用して良い。
【0040】
標的領域に完全に相補的なsiNAに加えて、相同領域を標的とするために分解siNA配列が使用されても良い。WO 2005/045037は、例えば更なる標的配列を提供し得る標準的でない塩基対(例えばミスマッチ及び/またはゆらぎ塩基対)を含ませることによって、その様な相同領域を標的とするsiNA分子の設計を記載している。ミスマッチが同定される場合は、標準的でない塩基対(例えば、ミスマッチ及び/またはゆらぎ塩基対)が、2つ以上の遺伝子配列を標的とするsiNA分子を産生するために使用されて良い。制限されない例として、UU及びCC塩基対のような標準的でない塩基対は、配列相同性を共有する各種の標的に関する配列を標的とすることが可能であるsiNA分子の産生に使用される。そのように、本発明のsiNAを使用する利点は、相同遺伝子の間で保存されているヌクレオチド配列と相補的な核酸配列を含むように、単一のsiNAを設計することが可能である事である。この方法では、異なる遺伝子を標的とする2つ以上のsiNA分子を使用する代わりに、単一のsiNAを2つ以上の遺伝子の発現を阻害するために使用できる。
【0041】
本発明の好ましいsiNA分子は二本鎖である。本発明のsiNA分子は、いずれの突出しているヌクレオチドを含まない平滑末端を含んで良い。1つの実施態様では、本発明のsiNAは1つ以上の平滑末端を含んで良い。好ましい実施態様では、siNA分子は3'突出を有する。本発明のsiNA分子は、nヌクレオチド(5≧n≧1)の3'突出を有する二本鎖核酸分子を含んで良い。Elbashir (2001)は、21ヌクレオチドのsiRNA二本鎖が3'末端2ヌクレオチド突出を含有する際に最も活性があることを示している。
【0042】
動物からヒトの臨床試験への移行を容易にするために、候補オリゴヌクレオチドを種間の配列保存に関して更にフィルターにかける。本発明の好ましい実施態様では、保存されているオリゴヌクレオチドが使用される;この事が、単一のオリゴヌクレオチド配列で動物モデルとヒトの臨床試験の双方で使用することを可能にする。
【0043】
本発明者の選択したヒトの標的遺伝子に相当するGenBank Accession Numberを図1に示す。これらの遺伝子の幾つかでは、選択的スプライシングが含まれるエクソンが異なる転写物のファミリーを生じさせる。本発明は、各転写形態を独立して標的とすることを可能にする。
【0044】
RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。挙げている配列は、siNAによって標的とされるDNA配列である。従って、本発明は示されているDNA配列と相補的な配列を有するNA二本鎖を使用するであろう。
【0045】
図2に示されている配列は制限するものではない。実際に、標的DNAがAAまたはCAによって先行される必要はない。更に、任意の連続する配列によって隣接されている図2に含まれる配列によって、標的DNAが構成されて良い。
【0046】
in vitro及び動物試験
siRNA二本鎖の入手
好ましくは、RNAは、適当に保護されたリボヌクレオチドホスホルアミダイトと従来のDNA/RNA合成機を使用して化学的に合成される。2'-デオキシまたは2'-O-メチルオリゴリボヌクレオチドによるsiRNA二本鎖の1つまたは双方の置換は、ハエ抽出物においてサイレンシングを消失させた(Elbashir et al. 2001)。しかしながら、哺乳動物細胞では、2'-O-メチルオリゴリボヌクレオチドによるセンスsiRNAの置換が可能な様である(Ge et al. 2003)。
【0047】
最も簡易的には、各種の品質及びコストのRNA合成製品を販売している商業的なRNAオリゴ合成の業者より、siRNAが得られる。一般的には、21-nt RNAは合成するのが困難ではなく、RNAiに適する品質で容易に提供される。
【0048】
RNA合成試薬の供給業者は、Proligo (Hamburg, Germany)、Dharmacon Research (Lafayette, CO, USA)、Glen Research (Sterling, VA, USA)、ChemGenes (Ashland, MA, USA)、及びCruachem (Glasgow, UK)、Qiagen (Germany)、Ambion (USA)、及びInvitrogen (Scotland)を含む。以上のカスタムRNA合成会社は、標的確認のためのライセンスと共にsiRNAを提供する資格を有する。特に、本発明者のsiRNA供給業者は、siRNAのための伝統的なカスタム化学合成サービスを提供し、siRNAをHPLC精製し、RNアーゼを含まない水と共に乾燥した形態で提供する会社である、Ambion、Dharmacon、及びInvitrogenである。更なるsiRNAに関連する製品及びサービスへのリンク、並びにRNAi及びsiRNAの方法論の主なウェブの情報源は、上述の供給業者のウェブサイトにおいて見ることが可能である。
【0049】
アニーリング工程は、一本鎖RNA分子を使用する際に必要である。滅菌されており、RNアーゼが存在しない条件下で全ての作業工程を実施することが重要である。RNAをアニールするために、オリゴを260ナノメートル(nm)におけるUV吸収によってはじめに定量することが必要である。Elbashir et al. (2001)に基づく以下のプロトコル:
・各RNAオリゴを別々に分取し、希釈して50μMの濃度にする。
・30μlの各RNAオリゴ溶液と15μlの5×アニーリングバッファーとを混合する(最終的なバッファー濃度は:100 mM 酢酸ナトリウム、30 mM HEPES-KOH pH 7.4、2 mM 酢酸マグネシウム。最終的な容量は75μlである)。
・溶液を1分間90℃でインキュベートし、15秒間チューブを遠心分離して、1時間37℃に静置し、環境温度で使用する。その溶液は-20℃で凍結保存することが可能であり、5回まで凍結融解することができる。siRNA二本鎖の最終的な濃度は通常20μMである。
をアニーリングに使用する。代替的に、既にアニールされているdsRNAを供給業者より購入して良い。
【0050】
化学修飾されている核酸を使用しても良い。例えば、使用して良い修飾のタイプの概要が、参照によって本明細書に含まれるWO 03/070744に記載されている。この文献の第11から21頁に特に注目される。他の可能な修飾は上述のものである。当業者は、RNA分子に含まれて良い他のタイプの化学修飾に気づくであろう。
【0051】
in vitroシステム
標的遺伝子を発現する各種の細胞培養物のsiRNA干渉の特異性を調べた。これらの実験のために使用される細胞は、ウサギ無色素毛様体上皮細胞NPE、ヒト毛様体上皮細胞OMDC、及びヒト胎児腎細胞HEK293である。前記細胞は相当するsiRNA二本鎖と共にインキュベートされ、標的遺伝子発現のダウンレギュレートの分析を実施する。siRNAノックダウンを培養細胞の特異的なフェノタイプに繋げるために、標的タンパク質の低減を示すか、または少なくとも標的mRNAの低減を示すことが必要である。
【0052】
標的遺伝子のmRNAレベルは、リアルタイム定量PCR (RT-PCR)によって定量されて良い。更に、タンパク質レベルは、標的タンパク質の低減を直接モニターすることを可能にする、各種の標的に対する特異的な抗体を使用するウエスタンブロット分析のような当該技術分野でよく知られている各種の方法で測定されて良い。
【0053】
siRNA二本鎖のトランスフェクション
当該技術分野でよく知られている技術の幾つかの例は以下のものである: RNAiFect Transfection Reagent (Qiagen)及びLipofectamine 2000試薬(Invitrogen)のようなカチオン性脂質を使用してsiRNA二本鎖の単独のトランスフェクションをし、トランスフェクションの24、48、及び72時間後にサイレンシングに関するアッセイを実施することが可能である。
【0054】
典型的なトランスフェクションプロトコルは以下のように実施されて良い:6ウェルプレートの1つのウェルについて、100nMの最終的な濃度のsiRNAを使用してトランスフェクトする。RNAiFectのプロトコルに従って、トランスフェクションの前日に、DMEM、10%血清、抗生物質、及びグルタミンを含む3mlの適当な増殖培地中で1ウェル当たり2-4×105細胞を播種し、通常の増殖条件下(37℃及び5% CO2)で細胞をインキュベートする。トランスフェクトの当日に、細胞は30-50%コンフルエントである必要がある。85μlのバッファーECRで15μlの20μM siRNA二本鎖(100 nMの最終的な濃度に相当する)を希釈し、100μlの最終的な容量を与え、ボルテックスで混合する。複合体形成のために、19μlのRNAiFectトランスフェクション試薬を希釈したsiRNAに添加し、ピペッティングまたはボルテックスによって混合する。サンプルを室温で10-15分間インキュベートし、トランスフェクション複合体を形成させ、低量の抗生物質を含む2.9 mlの新しい増殖培地と共に、その複合体を細胞に滴々と添加する。プレートを回転させてトランスフェクション複合体の均一な分配を確実にした後に、細胞を通常増殖条件下でインキュベートさせる。一日後、その複合体を除去し、新しい完全な増殖培地を添加する。遺伝子サイレンシングをモニターするために、トランスフェクション後24、48、及び72時間後に細胞を回収する。Lipofectamine 2000試薬のプロトコルは全く同様である。トランスフェクションの前日に、DMEM、10%血清、抗生物質、及びグルタミンを含有する3mlの適当な増殖培地中で、1ウェル当たり2-4×105の細胞を播種し、通常の増殖条件下(37℃及び5% CO2)で細胞をインキュベートする。トランスフェクションの当日に、細胞は30-50%コンフルエントである必要がある。250μlのDMEMで12.5μl、20μMのsiRNA二本鎖(100 nMの最終的な濃度に相当する)を希釈し、262.5μlの最終的な容量を与え、混合する。更に、6μlのLipofectamine 2000を250μlのDMEMで希釈して混合する。室温で5分のインキュベート後に、希釈したオリゴマーと希釈したLipofectamineを混合して、室温で20分間のインキュベートの間に複合体を形成させる。その後、低量の抗生物質を含む2mlの新しい増殖培地と共に、その複合体を細胞に滴々と添加し、プレートを前後に振動させて穏やかに混合してトランスフェクション複合体の均一な分配を確実にする。通常の増殖条件下でその細胞をインキュベートし、その次の日に、複合体を除去し、新しい完全な培地を添加する。遺伝子のサイレンシングをモニターするために、トランスフェクトの24、48、及び72時間後に細胞を回収する。
【0055】
トランスフェクション効率は細胞のタイプだけでなく、細胞の継代数及びコンフルエントの程度にも依存する可能性がある。siRNA-リポソーム複合体の形成時間及び方法(例えば、ボルテックスに対する転倒)も重要である。低いトランスフェクション効率は、サイレンシングが成功しない最も頻度の高い原因である。良好なトランスフェクションは重要な問題であり、各々の新しく使用される細胞について注意深く試験する必要がある。トランスフェクション効率は、レポーター遺伝子、例えばCMV駆動EGFP発現プラスミド(例えばClontech社製)またはB-Gal発現プラスミドをトランスフェクトして、翌日に位相差及び/または蛍光顕微鏡によって評価して試験して良い。
【0056】
siRNA二本鎖の試験
標的タンパク質の存在量及び寿命(代謝回転)に依存して、ノックダウンフェノタイプが1から3日後またはその後に明らかになるであろう。フェノタイプが認められない場合は、タンパク質の減少を免疫蛍光またはウエスタンブロットによって確認して良い。
【0057】
トランスフェクション後に、細胞から抽出される総RNAのフラクションをDNアーゼIで事前処理し、ランダムプライマーを使用する逆転写に使用する。プレmRNAの増幅の対照とするために、少なくとも1つのエクソン-エクソンをカバーする特異的なプライマー対を使用してPCRで増幅する。標的ではないmRNAのRT/PCRも対照として必要である。標的タンパク質の減少は検出不可能であるにもかかわらず、mRNAが効果的に減少することは、多くの安定なタンパク質の貯蔵が細胞内に存在する可能性があることを示唆している可能性がある。あるいは、リアルタイムPCR増幅を使用して、mRNAの低減または消失をより正確に試験することができる。リアルタイム逆転写(RT)PCRは、開始時の鋳型の量を最も特異的、高精度、及び再現的に定量する。リアルタイムPCRは、各PCRサイクルの間の複製配列の生産の指標として反応の間に発光する蛍光をモニターする。このシグナルは、反応におけるPCR生成物の量に応じて増大する。各サイクルの蛍光の発光量を記録することによって、対数増殖期の間のPCR反応をモニターすることが可能であり、そこでPCR生成物の量における最初の有意な増大は標的の鋳型の開始時の量に相関する。
【0058】
細胞培養物中で同定される異なるように発現している遺伝子の干渉パターンを確認するために、qRT-PCRを製造業者のプロトコルに従って実施する。定量的RT-PCR(qRT-PCR)のために、約250 ngの総RNAを逆転写に使用して、続いてMaster SYBR Green Iを含有する反応混合物中の各遺伝子に特異的なプライマーを使用してPCR増幅を実施する。基本的なPCR条件は、91℃で30分の最初のステップ、それに続いて95℃で5秒、62℃で10秒、及び72℃で15秒の40サイクルを含む。各標的遺伝子に一致する特異的なプライマー配列を使用する。b-アクチンmRNAの定量をデータの標準化のための対照として使用した。選択された細胞内/内部の対照の遺伝子発現がより大量であり、サンプル間で総RNAに対する割合で一定のままである際に、相対的な遺伝子発現の比較が最も効果的である。活性を有する参照として不変の細胞内の対照を使用する事によって、各反応に添加した総RNAの量における違いに関して、標的mRNAの定量を標準化することが可能である。
【0059】
製薬組成物
本発明は、1つ以上の種類のsiNA分子の同時の投与を含んで良い。これらの種類は1つ以上の標的遺伝子を標的とするために選択されて良い。
【0060】
本発明のsiNA及びその製剤または組成物は、当該技術分野でよく知られているように、眼に直接または局所的(例えば局在的)に投与されて良い。例えば、siNA分子は、被験者への投与のためのリポソームを含む送達媒体を含んで良い。担体及び希釈剤及びそれらの塩が、製薬学的に許容される製剤に存在して良い。核酸分子は、リポソームにおけるカプセル化、イオントフォレシス、または生体分解ポリマー、ヒドロゲル、シクロデキストリンポリ(乳酸-コグリコール酸)(PLGA)、及びPLCAミクロスフェア、生体分解ナノカプセル、及び生体接着ミクロスフェアのような他の媒体に含ませること、あるいはタンパク質性ベクターを含むが、それらに制限されない当業者に既知の各種の方法によって細胞に投与されて良い。他の実施態様では、本発明の核酸分子は、ポリエチレンイミン及びその誘導体、例えばポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-GAL)またはポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-トリ-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-トリGAL)誘導体と製剤化または複合体化しても良い。
【0061】
本発明のsiNA分子は、膜破壊剤及び/またはカチオン性脂質若しくはヘルパー脂質分子と複合体化しても良い。
【0062】
本発明で使用しても良い送達システムは、例えば水性及び非水性ゲル、クリーム、多重エマルション、ミクロエマルション、リポソーム、軟膏、水性及び非水性溶液、ローション、エアロゾル、炭化水素ベース、及び粉末を含み、可溶化剤、浸透促進剤(例えば脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、及びアミノ酸)、並びに親水性ポリマー(例えばポリカルボフィル及びポリビニルピロリドン)のような添加剤を含有して良い。1つの実施態様では、製薬学的に許容される担体はリポソームまたは経皮促進剤である。
【0063】
本発明の医薬製剤は、投与、例えばヒトを含む細胞または被験者への全身的若しくは局所的投与に適する形態である。適切な形態は、部分的に、使用または摂取の経路(例えば経口、経皮、または注射)に依存する。他の因子は当該技術分野で知られており、毒性及び組成物または製剤が効果を奏することを妨げる形態の様な検討を含む。
【0064】
本発明は、製薬学的に許容される媒体または希釈剤中に、製薬学的に有効量の所望の化合物を含む貯蔵または投与のために調製される組成物も含む。治療的な使用のために許容される媒体または希釈剤は、製薬学的な分野でよく知られている。例えば保存剤、安定剤、染料、及び香味剤が挙げられる。これらは、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びpヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。更に、抗酸化剤及び懸濁剤が使用されて良い。
【0065】
製薬学的に有効な用量は、疾患状態の発生を予防、阻害、または疾患状態を治療する(ある程度まで症状を軽減、好ましくは症状の全てを軽減する)ために必要とされる用量である。製薬学的な有効用量は、疾患のタイプ、使用される組成物、投与の経路、治療される哺乳動物のタイプ、関係する特定の哺乳動物の身体的な特性、併用薬、及び当業者が認識するであろう他の因子に依存する。
【0066】
一般的には、0.1mg/kgから100mg/kgの間の活性成分の1日の体重当たりの量が投与される。
【0067】
本発明の製剤は、従来の非毒性の製薬学的に許容される担体、アジュバント、及び/または媒体を含有する単位用量製剤で投与されて良い。製剤は、経口的な使用に適する形態、例えば錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁物、分散粉末若しくは顆粒、エマルション、硬質若しくは軟質カプセル、またはシロップ若しくはエリキシルであって良い。経口的な使用が意図される組成物が、製薬組成物の製造のための当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製されて良く、その様な組成物は、製薬学的に洗練され快適な製剤を提供するために甘味剤、香味剤、着色剤、または保存剤の1つ以上を含有して良い。錠剤は、錠剤の製造に適切な非毒性の製薬学的に許容される添加剤との混合物において、活性成分を含有する。
【0068】
これらの添加剤は、例えば、不活性希釈剤;例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム;顆粒化及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、またはアカシア;並びに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであって良い。錠剤はコーティングされなくて良く、既知の技術によってコーティングされても良い。ある場合では、その様なコーティングが既知の技術によって調製されて、胃腸管における崩壊及び吸収を遅延させ、それにより長期間にわたる持続的な作用を提供して良い。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような時間を遅延させる物質が使用されて良い。
【0069】
経口的な使用のための製剤は、活性成分が不活性固形希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合されている硬質ゼラチンカプセル、あるいは活性成分が水または油媒体、例えばピーナッツオイル、液状パラフィン、またはオリーブオイルと混合される軟質ゼラチンカプセルとして提供されても良い。
【0070】
水性懸濁物は、水性懸濁物の製造のために適切な添加剤との混合物中に活性物質を含有する。その様な添加剤は、懸濁剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロプロピル-メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアカシアゴムであり;分散または湿潤剤は、天然のホスファチド、例えばレシチン、脂肪酸とアルキレンとの縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、または長鎖脂肪族アルコールとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、または脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンである。水性分散物は、1つ以上の保存剤、例えば、エチル、またはn-プロピル p-ヒドロキシベンゾエート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、並びに1つ以上の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンを含有しても良い。
【0071】
油性懸濁物は、植物油、例えばピーナッツオイル、オリーブオイル、ゴマ油、若しくはココナッツオイル、または鉱物油、例えば液体パラフィン中に活性成分を懸濁することによって製剤化されて良い。油性懸濁物は、増粘剤、例えばミツロウ、硬質パラフィン、またはセチルアルコールを含有して良い。甘味剤及び香味剤を添加して、快適な経口製剤を提供して良い。これらの組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸の添加によって保存されて良い。
【0072】
水の添加による水性懸濁物の調製に適切な分散粉末及び顆粒は、分散剤若しくは湿潤剤、懸濁剤、及び1つ以上の保存剤との混合物中に活性成分を提供する。適切な分散剤若しくは湿潤剤または懸濁剤は、既に上述して例示している。更なる添加剤、例えば甘味剤、香味剤、及び着色剤が存在しても良い。
【0073】
本発明の製薬組成物は水中油型エマルションの形態であって良い。油相は植物油または鉱物油、あるいはこれらの混合物であって良い。適切な乳化剤は、天然ゴム、例えばアカシアゴム若しくはトラガカントゴム、天然のホスファチド、例えばダイズ、レシチン、及び脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、及びエチレンオキシドと前記部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであって良い。エマルションは、甘味剤及び香味剤を含有しても良い。
【0074】
シロップ及びエリキシルは、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、グルコース、またはスクロースと共に製剤化して良い。その様な組成物は、粘滑剤、保存剤、香味剤、及び着色剤を含有しても良い。前記製薬学的な組成物は、滅菌している注射可能な水性または油性の懸濁物の形態であって良い。
【0075】
上述の適切な分散剤または湿潤剤、及び懸濁剤を使用する既知の技術に従って、この分散物が製剤化されて良い。
【0076】
滅菌されている注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒における滅菌されている注射可能な溶液若しくは懸濁物、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であっても良い。とりわけ、使用されて良い許容される媒体及び溶媒は、水、リンガー溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液である。更に、滅菌されている、不揮発性油が溶媒または懸濁媒体として従来のように使用される。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の普通の不揮発性油が使用されて良い。更に、オレイン酸のような脂肪酸が注射可能な製剤に使用されて良い。
【0077】
本発明の核酸分子は、例えば薬剤の直腸投与のために坐剤の形態で投与されても良い。これらの組成物は、常温で固体であるが直腸の温度で液体であるため、直腸で融解して薬剤を放出する適切な無刺激性の添加剤と薬剤とを混合することによって調製されて良い。その様な物質はココアバター及びポリエチレングリコールを含む。
【0078】
本発明の核酸分子は、滅菌されている媒体中で非経口的に投与されて良い。前記薬剤は、媒体及び使用される濃度に依存して、媒体中に懸濁または溶解されて良い。有利には、局所的な麻酔剤、保存剤、及び緩衝剤のようなアジュバントが前記媒体中に溶解されて良い。
【0079】
任意の特定の被験者のための特定の用量は、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食餌、投与時間、投与経路、及び排出速度、薬剤の組み合わせ、並びに治療される特定の病気の重度を含む各種の因子に依存すると解される。
【0080】
ヒトを除く動物に対する投与に関しては、前記組成物が動物の食餌または飲み水に添加されても良い。動物が治療に適当な量の組成物をその食餌と共に摂取するように、動物の食餌及び飲み水の組成物を製剤化することは簡便である可能性がある。食餌または飲み水に添加するためのプレミックスとして組成物を提供することも簡便である可能性がある。
【0081】
本発明の核酸分子は、全体的な治療効果を増大するために他の治療用化合物と組み合わせて、被験者に投与しても良い。症状を治療するための複数の化合物の使用は有利な効果を増大すると共に、副作用の存在を低減し得る。
【0082】
あるいは、本発明のあるsiNA分子は真核生物プロモーターより細胞内で発現されて良い。siNA分子を発現することができる組換えベクターは標的細胞に送達され、持続的に存在し得る。代替的に、核酸分子を一過性に発現するために提供されるベクターが使用されて良い。その様なベクターは必要であれば繰り返し投与されて良い。一度発現すると、siNA分子は標的mRNAと相互作用して、RNAi応答を生じさせる。siNA分子を発現するベクターの送達は全身的であって良く、例えば静脈内若しくは筋肉内投与によって、被験者から摘出した標的細胞に投与し、続いて被験者に再導入することによって、または所望の標的細胞に導入することを可能にし得る任意の他の方法によって送達されて良い。
【0083】
動物試験
ニュージーランドウサギは、IOPを試験するために設計された実験のプラットホームにおける標準のものである。前記ウサギは、操作が容易で、大きな目を有し、ヒトの器官と類似している。更に、IOPを測定する現在の装置は、マウスまたはラットのような小さな眼を有する動物における使用に適さない。最後に、ウサギは、局所的な市販の降圧剤を使用して40%まで降下させることが可能なIOP(約23 mm Hg)を有する。かくして、ウサギ緑内障モデルを産生すること(例えば、手術して上強膜の静脈をブロックすること、または小柱網を人工的に閉塞させること)が可能であるが、本発明者は、IOPにおける薬理学的な低減を容易に及び再現的に測定することが可能であるため、正常血圧のウサギを使用した。
【0084】
実験プロトコル
正常血圧のニュージーランドシロウサギ(オス、2-3 kg)を使用した。前記ウサギを、食餌と水に自由に近づける個々のカゴに入れた。人工的な12時間の光/暗闇のサイクルをそれらに受けさせ、IOPの制御できない日周期の変動を避けた。動物の操作及び治療は、European Communities Council Directive (86/609/EEC)及びAssociation for Research in Vision and Ophthalmology on the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Researchの記載に従って実施された。
【0085】
角膜の表面に対して少量(典型的には40μl)滴下することによって、薬剤を典型的に投与した。反対側の眼を媒体のみで処理して、他の眼に同じ現象が存在しないように各実験における対照として使用した。同じ動物における複数の実験は無効にすべきである。
【0086】
IOPの測定はコンタクトトノメーター(TONOPEN XL, Mentor, Norwell, Massachusetts)を使用して実施した。TonoPenトノメーターは、その信頼性及び小さいサイズのために非常に簡易的である。この装置を使用する測定は、核膜の表面にトノメーターのセンサーを慎重に適用して実施した。この装置は、ウサギの3から30 mm Hgの範囲内の眼内圧を測定するために選択されたトノメーターであることが示されている(Abrams et al., 1996)。全ての測定はこの間隔の中におさまる:眼圧の平均ベースライン値は17.0±0.39 mm Hg(n=100)であった。IOPは夜から日中に変化するため、全ての実験を同時に実施して、IOPをより安定にさせ、媒体処理との客観的な比較を可能にした。動物に対する苦痛を避けるために、ウサギに局所的に麻酔をかけた(オキシブプロカイン/テトラカイン、0.4%/1%、生理食塩水溶液中(1/4 v:v))。前記溶液を、眼内圧の各々の測定が実施される前に核膜に適用(10μl)した。siRNAまたは生理食塩水を40μlの容量で角膜に局所的に適用した。
【0087】
ウサギにおけるsiRNAの応用の標準的なプロトコルは以下のものであった。40μlの最終的な容量の生理食塩水溶液(0.9% w/v)の用量のsiRNAを4日間連続して各々の日に一方の眼に適用した。反対側の眼は対照として実施し、40μlの滅菌生理食塩水(0.9% w/v)を同じ時点で注入した。10日間、IOPを各適用の前並びに適用後の2、4、及び6時間後に測定した。最大の応答は、2日目と3日目の間に認められた。他の降圧剤化合物であるXalatan(latanoprost 0.005%)及びTrustop(Dorzolamide 2%)とsiRNAとの効果の比較をアッセイし、同じ条件でIOPを測定した。
【実施例】
【0088】
(実施例1 In vitroアッセイ)
RNAi技術を使用する緑内障に関与する各種の標的の阻害を測定するために、第1ステップは細胞培養物における実験の実施であった。各標的のために、上述のルールに従って特定のソフトウェアを使用して幾つかのsiRNAを設計した。最も良好な特性を有するsiRNAを選択して試験した。siRNAを細胞培養物、例えばNPE、OMDC、及びHEK293に適用した。標的遺伝子におけるsiRNAの効果を、標準のプロトコルに従ってリアルタイムPCR及び半定量的PCRによって分析した。標的遺伝子の転写レベルを、ハウスキーピング遺伝子であるアクチンを使用して標準化した。下記の表Iは、上述の標的遺伝子の幾つかのためのリアルタイムPCR実験の代表的な結果を示す。値は、対照細胞で標準化した各遺伝子発現におけるsiRNA干渉の割合の平均及びそれらの標準偏差を表わす。対照細胞と比較すると、24及び48時間の双方の時点における各種の転写物のレベルが、siRNA処理後に有意に減少した。表には、幾つかの異なる試験したsiRNA及び標的遺伝子の干渉におけるそれらの異なる効力が含まれる。表において使用されるsiRNAは、以下の図2に挙げられているヒトsiRNAの標的に相当する。
AC2:
siRNA1:ヒト配列番号73に相同性を有するウサギ配列
siRNA2:ヒト配列番号54に相同性を有するウサギ配列
siRNA3:ヒト配列番号66に相同性を有するウサギ配列
PTGS1
siRNA1:ヒト配列番号353に相同性を有するウサギ配列
siRNA2:ヒト配列番号369に相同性を有するウサギ配列
PTGS2
siRNA1:ヒト配列番号426に相同性を有するウサギ配列
siRNA2:ヒト配列番号421に相同性を有するウサギ配列
siRNA3:ヒト配列番号477に相同性を有するウサギ配列
【0089】
【表1】

【0090】
図3は、上述の幾つかの標的に関する幾つかの代表的な半定量的なゲルを示す。各標的遺伝子の遺伝子発現の低減は、siRNAサイレンシングにおける効率に依存する。各標的に関して、in vitro試験で得られる最も効果的なsiRNAを、動物モデルに投与した。各種のsiRNAで処理した細胞からRNAを調製した。特異的なプライマーを使用して半定量的PCRによってサンプルを分析した。図は、ベータアドレナリン作用性レセプター2の発現に関する代表的な半定量的なゲル(A)及びアセチルコリンエステラーゼの発現に関するゲル(B)を示す(M:MWマーカー;C:対照細胞;TC:トランスフェクション対照;1:siRNA1;2:siRNA2;3:siRNA3;NC:ネガティブコントロール)。各標的遺伝子に関する発現レベルは、siRNAサイレンシングにおける効率に依存する。図において使用されるsiRNAは、以下の図2に挙げられるヒトの標的遺伝子に相当する。
Panel A(ベータアドレナリン作用性レセプター2)
1: ヒト配列番号122に相同性を有するウサギ配列
2: ヒト配列番号125と同一のウサギ配列
3: ヒト配列番号139に相同性を有するウサギ配列
Panel B(アセチルコリンエステラーゼ)
1: ヒト配列番号162に相同性を有するウサギ配列
2: ヒト配列番号177に相同性を有するウサギ配列
【0091】
(実施例2 In vivoアッセイ)
siRNAの治療的な応用の前に、in vivoアッセイを評価して適切なsiRNAの送達を評価した。
【0092】
in vitroアッセイによって選択されたsiRNAを上述のプロトコルに従って動物モデルに適用した。日周期によるIOPの変動の効果を避けるために、全ての適用を同時に実施した。siRNAの効果を測定するために、眼内圧(IOP)を上述のように測定した。
【0093】
緑内障の症状は眼内圧の増大に存在するため、siRNAの適用に続く眼内圧のレベルの低減を得ることを目的とした。
【0094】
各種の標的に関する結果の大多数は、対照及び市販薬(Latanoprost及びDorzolamide)との比較におけるIOPレベルの有意な低減を示し、媒体のみで処理された動物(ネガティブコントロール)にはIOPのベースラインにおいていずれの有意な変化も存在しなかった。データを表IIに示す(値は、標準化されたsiRNA処理後のIOP低減の最大の割合の平均とそれらの標準偏差を表わす)。IOPにおける低減は処理された標的の全てに関して統計的に有意であった。これらの結果は、siRNAと市販薬とが同様の方法で働き、IOPを約20%低減するが、siRNAはより持続的な効果を示すことを示す。実験プロトコルにおいて動物に副作用は認められなかった。これらの実験で使用したsiRNAは、以下の図2に挙げられるヒトの標的に相当する。
AC2:ヒト配列番号73に相同性を有するウサギ配列
AC4:ヒト配列番号5と同一のウサギ配列
AC12:ヒト配列番号522と同一のウサギ配列
ADRB1:ヒト配列番号105と同一のウサギ配列
ADRB2:ヒト配列番号139に相同性を有するウサギ配列
ADRA1A:ヒト配列番号546に相同性を有するウサギ配列
ADRA1B:ヒト配列番号619に相同性を有するウサギ配列
ACHE:ヒト配列番号189に相同性を有するウサギ配列
PTGS1:ヒト配列番号322に相同性を有するウサギ配列
PTGS2:ヒト配列番号426と同一のウサギ配列
SELE:ヒト配列番号262に相同性を有するウサギ配列
ACE1:ヒト配列番号866に相同性を有するウサギ配列
AGTR1:ヒト配列番号705に相同性を有するウサギ配列
AGTR2:ヒト配列番号744と同一のウサギ配列
ATP1A1:ヒト配列番号1399と同一のウサギ配列
ATP1B2:ヒト配列番号1820と同一のウサギ配列。
【0095】
【表2】

[参考文献]




【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者における、房水形成遺伝子及び房水流出遺伝子を含む群より選択される標的遺伝子の発現をダウンレギュレートすることを含む、眼の疾患の治療方法において使用するための医薬の調製におけるsiNAの使用。
【請求項2】
前記眼の疾患が、患者における眼内圧(IOP)の変化に特徴付けられる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記眼の疾患が、緑内障、感染症、炎症、ブドウ膜炎、及び全身的な病気の発現を含む群より選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記眼の疾患が緑内障である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記眼の疾患が糖尿病網膜炎である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記標的遺伝子の発現が、患者の眼においてダウンレギュレートされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記標的遺伝子が、カルボニックアンヒドラーゼII、IV、及びXII;アドレナリン作用性レセプターベータ1及び2並びにアルファ1A、1B、及び1D;アセチルコリンエステラーゼ;シクロオキシゲナーゼ1及び2;ATPアーゼアルファ1、アルファ2、アルファ3、ベータ1、ベータ2;内皮球接着分子I (ELAM-1);アンギオテンシンシステム:アンギオテンシンII、アンギオテンシンII変換酵素(ACE I及びACE II)、アンギオテンシンIIレセプター(ATR1及びATR2)、及びレニン;コチリンを含む群より選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記siNAがsiRNAである、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記siRNAがdsRNAである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記siRNAがshRNAである、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記siNAが修飾オリゴヌクレオチドを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記siNAが患者の眼に局所的に投与される、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記siNAが患者の角膜に投与される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
多数の種類のsiNAが使用される、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記多数の種類が同一のmRNAの種類を標的とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記多数の種類が各種のmRNAの種類を標的とする、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記siNAが、配列番号1から配列番号1829より選択される配列を標的とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記標的遺伝子がカルボニックアンヒドラーゼIVであり、前記siNAが配列番号1から配列番号46より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記標的遺伝子がカルボニックアンヒドラーゼIIであり、前記siNAが配列番号47から配列番号98より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記標的遺伝子がベータアドレナリン作用性レセプター1であり、前記siNAが配列番号99から配列番号109より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項21】
前記標的遺伝子がベータアドレナリン作用性レセプター2であり、前記siNAが配列番号110から配列番号160より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項22】
前記標的遺伝子がアセチルコリンエステラーゼであり、前記siNAが配列番号161から配列番号190より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項23】
前記標的遺伝子がELAM-1(セレクチン E)であり、前記siNAが配列番号191から配列番号318より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項24】
前記標的遺伝子がプロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ1であり、前記siNAが配列番号319から配列番号374より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項25】
前記標的遺伝子がプロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ2であり、前記siNAが配列番号375から配列番号491より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項26】
前記標的遺伝子がカルボニックアンヒドラーゼXIIであり、前記siNAが配列番号492から配列番号538より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項27】
前記標的遺伝子がアルファアドレナリン作用性レセプター1Aであり、前記siNAが配列番号539から配列番号598より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項28】
前記標的遺伝子がアルファアドレナリン作用性レセプター1Bであり、前記siNAが配列番号599から配列番号634より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項29】
前記標的遺伝子がアルファアドレナリン作用性レセプター1Dであり、前記siNAが配列番号635から配列番号646より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項30】
前記標的遺伝子がアンギオテンシノゲンであり、前記siNAが配列番号647から配列番号694より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項31】
前記標的遺伝子がアンギオテンシンIIレセプタータイプ1であり、前記siNAが配列番号695から配列番号749より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項32】
前記標的遺伝子がアンギオテンシンIIレセプタータイプ2であり、前記siNAが配列番号750から配列番号807より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項33】
前記標的遺伝子がアンギオテンシンI変換酵素1であり、前記siNAが配列番号808から配列番号939より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項34】
前記標的遺伝子がアンギオテンシンI変換酵素2であり、前記siNAが配列番号940から配列番号1139より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項35】
前記標的遺伝子がレニンであり、前記siNAが配列番号1140から配列番号1196より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項36】
前記標的遺伝子がコチリンであり、前記siNAが配列番号1197から配列番号1307より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項37】
前記標的遺伝子がATPアーゼアルファ1であり、前記siNAが配列番号1308から配列番号1500より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項38】
前記標的遺伝子がATPアーゼアルファ2であり、前記siNAが配列番号1501から配列番号1606より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項39】
前記標的遺伝子がATPアーゼアルファ3であり、前記siNAが配列番号1607から配列番号1705より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項40】
前記標的遺伝子がATPアーゼベータ1であり、前記siNAが配列番号1706から配列番号1780より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項41】
前記標的遺伝子がATPアーゼベータ2であり、前記siNAが配列番号1780から配列番号1829より選択される配列を標的とする、請求項17に記載の使用。
【請求項42】
siNAを投与して、患者における房水形成遺伝子及び房水流出遺伝子を含む群より選択される標的遺伝子の発現をダウンレギュレートすることを含む、眼の疾患の治療方法。
【請求項43】
前記眼の疾患が、緑内障、感染症、炎症、ブドウ膜炎、及び全身的な病気の発現を含む群より選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記眼の疾患が緑内障である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記眼の疾患が糖尿病網膜炎である、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記標的遺伝子が、カルボニックアンヒドラーゼII、IV、及びXII;アドレナリン作用性レセプターベータ1及び2並びにアルファ1A、1B、及び1D;アセチルコリンエステラーゼ;シクロオキシゲナーゼ1及び2;ATPアーゼアルファ1、アルファ2、アルファ3、ベータ1、ベータ2;内皮球接着分子I(Endothelial Leukocyte Adhesion Molecule I) (ELAM-1);アンギオテンシンシステム:アンギオテンシンII、アンギオテンシンII変換酵素(ACE I及びACE II)、アンギオテンシンIIレセプター(ATR1及びATR2)、及びレニン;コチリンを含む群より選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記siNAがsiRNAである、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記siRNAがdsRNAである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記siRNAがshRNAである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記siNAが修飾オリゴヌクレオチドを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
配列番号1から配列番号1829より選択されるヌクレオチド配列と相補的である、患者の眼内圧(IOP)の変化によって特徴付けられる眼の疾患の治療における使用のための単離されているsiNA分子。
【請求項52】
眼の疾患の治療のための医薬の調製における、配列番号1から配列番号1829より選択されるヌクレオチド配列と相補的である配列を有する単離されているsiNA分子の使用。
【請求項53】
配列番号1から配列番号1829より選択されるヌクレオチド配列と相補的である配列を有するsiNAを含む製薬組成物。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−8】
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【図2−9】
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【図2−10】
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【図2−11】
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【図2−12】
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【図2−13】
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【図2−14】
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【図2−15】
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【図2−16】
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【図2−17】
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【図2−18】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−205594(P2012−205594A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157548(P2012−157548)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2007−529002(P2007−529002)の分割
【原出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(507058270)
【Fターム(参考)】