眼及び眼の周囲組織の温度制御及び治療のための医療装置
本発明は、温度測定のためのサーミスタ、流体の交換及び治療方法の適用のための洗浄/吸引ポート、圧力測定のための圧力マノメータ並びに温度、圧力及び流量の制御のための外部装置を備えた医療装置を提供している。眼及び眼窩に適用されたときには、この装置は、低体温法又は温熱療法の適用、眼球内圧力(IOP)の制御及び治療法の適用において使用することができる。中枢網膜動脈閉塞、前視神経疾患、脈絡膜及び網膜病理学、硝子体及び前区を含む眼の炎症、緑内障、眼の前区及び/又は後区の炎症及び/又は感染、眼の外科手術前/中/後治療を患っている患者を治療する際、並びに半透過性膜を介する治療方法の適用する際に装置を使用する方法が記載されている。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、概して、組織の局部的な温度制御を誘導すること及び薬物の一定供給源を管理することによって、眼及び眼窩に対する損傷を減らし且つ防止するのに有用な医療用装置に関する。より特別には、本発明は、低体温法又は温熱療法の用途において使用するために眼の外面を包囲する装置を提供し、伝導及び対流原理を使用する流体の迅速な流れを提供し、治療方法の適用を提供し、並びに付属器及び外眼筋を含む眼窩の他の組織に対する温度制御の伝達を提供する。当該医療装置は、温度測定のためのサーミスタと、流体交換のための洗浄/吸引穴並びに眼の外周面を取り巻いている治療方法及び可撓性の膨張可能なユニットを備えている。温度、圧力及び流量の制御のための外部装置が説明されている。
【背景技術】
【0002】
眼に対する血流欠乏(虚血)によって、視神経及び網膜/脈絡膜組織の死亡を生じるかも知れない。中心網膜動脈閉塞(CRAO)の場合には、網膜に対して酸素及び栄養分を付与する主要な血管内に粒子(栓子)が存在するかも知れない。前虚血性視神経症(AION)の場合には、前視神経内で眼内に入る血管内に閉塞が存在するかも知れない。前虚血性視神経症を含む視神経炎(ON)には、ミエリン鞘内の疾患による視神経の炎症及び眼を出て行く神経繊維の被覆が存在する。ある期間(数分乃至数時間乃至数日間)の後に、組織の死が起こり、回復不可能な損傷の発生を生じるかも知れない。
【0003】
眼球/眼窩への一撃のような鈍い外傷により、眼の組織への病変が起こるかも知れない。このような鈍い外傷は、眼内又は眼の周囲に出血をもたらし且つそれに伴う眼の組織の腫脹をもたらす。不幸にも、医療及び外科的介入を含む一般的な眼科学的手段によって眼に対する損傷を制御することは難しい場合が多い。
【0004】
眼及び眼窩の他の種々の疾患は、最終的な機能の損失を有する組織の腫脹を生じるかも知れない。眼窩の炎症は、通常は、全身性医療又は均一な外科的減圧術によって管理される。眼の内部組織の他のタイプの炎症としては、後部ブドウ膜炎、脈絡膜炎、網膜炎、硝子体、強膜炎、甲状腺に関連する眼の疾患、水晶体アナフィラキシー、前方ブドウ膜炎及び交感性眼炎がある。続発性緑内障は、眼の前区を含む炎症によって生じるかも知れない。
【0005】
眼の感染は、角膜、強膜、硝子体、網膜/脈絡膜、毛様体、水晶体、前眼房を含むかも知れない。これらは、通常は、全身性抗生物質によって治療され、全身性ステロイド類、抗生物質の局所的低下及び眼球内抗生物質注射によって治療されることも時々ある。
【0006】
眼及び眼窩の腫脹又は炎症の現在の治療方法は常に満足できるものであるとは限らない。著しく損傷した眼又は眼窩においては、通常は、腫脹を制御するための医療方法が全身的に適用され、その結果、眼又は眼窩に達する極めて低レベル濃度状態で、身体の残りの部分には高レベルの医薬がもたらされる。眼及び/又は眼窩を減圧するための外科的介入は、領域を露出させ且つ固定体積の骨壁に対する圧縮を防止するために、眼窩又は頭蓋の骨壁に穴を開けることによる主要な介入を必要とする。視神経の周囲の鞘が著しく腫脹している場合には、乳頭水腫、虚血性視神経症及び激しい外傷のような猛烈な場合に鞘の外科的な減圧が試みられて来た。その結果、処置の成功及び失敗の様々な報告がなされている。
【0007】
低体温法は、最近の文献においては、酸素の消費を低減させ且つ脳及びその他の中枢神経系(CNS)組織の腫脹を減少させる目的のためには有望であることが判明した。眼はCNSの一部分であるので、眼の腫脹を脳の低体温法が防止するのと同じ方法で眼及び視神経の腫脹を低減させることができることは論理的であると考えられる。不幸にも、脳を冷却するために身体全体を冷却することは、内在する危険性を有し且つ身体を冷却することによって眼を同様に冷却することはまた、有害な作用をも有するかも知れない。心臓は、不整脈によって低体温法に応答し、血液凝固機構は、著しく損なわれて出血を生じさせるかも知れない。更に、身体を冷却することは、CNSを数度冷却させるだけである。眼の場合には、眼の内部へ外科的に進入し且つ眼を内部から冷却することによって、網膜及び硝子体外科手術中に眼の硝子体を冷却する試みがなされて来ている。低体温法後の眼のCNS組織の生存能力に対する最近の動物による研究は、類似した機能の保存を実証した。
【0008】
現在利用できる新しい技術においては、眼の中に外科的に侵入することなく眼の外面から局部的に冷却することによってCNS及び眼及び眼窩の温度を制御する新しい方法が必要な時期である。低体温法と結合させて連続的な形態で直に眼/眼窩への薬剤の管理投与によって、眼の疾患を治療するための新しい方法が存在するかも知れない。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、眼及び眼窩組織の疾患の治療を高めるための装置及び方法を提供する。より特別には、本発明は、外科的介入によって組織を侵害することなく、低体温法、高体温法又は発熱法を迅速に適用することによって、眼、視神経、眼窩及び眼窩周囲組織の温度を制御するための装置及び方法を提供する。更に、当該装置及び方法はまた、眼、視神経、眼窩及び眼窩周囲組織へ薬剤及び/又は化学物質を適用することもできる。
【0010】
当該装置の第一の実施形態は、眼の形状に適合して、上瞼及び下瞼の両方の円蓋内へ嵌合させる多層球状ユニットからなる熱調節シェルを含んでいる。流体は、入口穴内へ流入し、出口穴から流出するであろう。流体の迅速な流れは、眼及び眼の付属器を含む周囲組織と装置との間の対流による熱交換及び伝導による熱交換を生じるであろう。流体の迅速な流れは、半透膜又はナノ細管又はミリポア/マイクロポアのシステム又は組織に治療を伝達するための適当な材料を介して隣接する組織に、適当な薬剤及び/又は化学物質を管理投与することを容易化する。中枢網膜動脈閉塞のような疾患においては、虚血性外傷から眼を保護するために、眼の神経組織内に温度を迅速に低下させることが望ましい。ブドウ膜炎、眼性感染及び眼性炎症のような他の疾患においては、流体のより遅い流れは、有効であるかも知れない。
【0011】
ポンプ装置を、熱調節シェルの全体積に亘って多量の流体を迅速に搬送してシェル内のチャネル内に流体を分配する能力を有している多数の入口接続部及び出口接続部を備えた蠕動性ポンプによって構成しても良い。流体特性に応じて、当該装置を、眼、眼窩並びに隣接する静脈洞及びその他の眼窩周囲の組織へ最も良好な給送ができるように特有の設計としても良い。ポンプは。バッテリによって作動せしめられ且つ携帯性及び使用容易性を可能にするように簡素化することができる。外部装置は、温度、圧力及び流量を制御するであろう。
【0012】
熱調節シェルは、眼球内圧力の測定を可能にし且つ角膜から網膜及び視神経へ脳の中の構造を見ることが出来るように、角膜の前方に開口部を構成しても良い。シェルが角膜の前方の開口部が無い状態に設計されている場合には、眼の前区への治療の熱調節及び管理投与を容易化することができる。
【0013】
眼の周囲及び瞼の下にシェルを配置するために、挿入器は、瞼の下への熱調節シェルの優しい配置を可能にするであろう。シェルは、金属又はプラスチック又はシェル内に配置されたその他の合成物質のような半硬質材料によって設計して、形状及び堅牢性を付与するであろう。これは、シェルを眼の表面と接触状態に維持するために畝状パターン又はマトリックス状の構造としても良い。ひとたびシェルが定位置に配置されると、挿入器は取り外され、シェルは眼に密接したままである。
【0014】
視神経を含む後方眼窩を治療するときには、治療されるべき組織により近接して眼窩のより後方に温度調節シェルが入るのを可能にするために、上位及び/又は下位円蓋を外科的に開けることが望ましいかも知れない。
【0015】
網膜中心動脈閉塞の場合には、二重層シェルを介する正圧及び負圧の両方による脈動を形成することが有利かも知れない。シェルの脈動は、眼の内部に差圧を生じさせて、主要な網膜動脈から栓子を分散させることができるであろう。眼に対する過剰圧力を防止するために、眼球内圧力を監視し且つシェル内を流れる流体を調整するために、シェル内に、眼圧測定装置を形成することができる。
【0016】
セラミックのような絶縁材料によってシェルを外面コーティングすることによって、薬剤の熱的調整方向及び薬剤の給送を更に眼の方へ向けて導くことができる。シェルの内面を適切な膜によってコーティングすることによって、眼窩の他の組織、眼窩周囲及び周囲の静脈洞へと熱の調整及び薬剤の給送を導くことができる。
【0017】
薬剤は、より容易に、眼の強膜を貫通し、眼内により高いレベルをもたらすことができる。シェルは、眼の赤道の後方へ配置されるので、治療は、硝子体、網膜、脈絡膜、斑点及び前視神経を含む眼の後半分内へと導かれるであろう。温度制御もまた、眼の後半分へと延びるであろう。低体温法もまた、眼の後半分へと延びるであろう。低体温法の場合には、網膜及び視神経の神経学的組織の保護は、虚血のような傷害にかかわらず行うことができる。医師は、傷害を医療治療及び/又は外科手術によって治療するためのより長い期間を有するであろう。
【0018】
眼の前区の感染の場合には、低体温法及び適当な医療方法は、進行を停止し且つ感染薬剤を破壊するであろう。眼(眼内炎)内の感染もまた、低体温法及び適当な医療方法に応答するであろう。特に、迅速な冷却及び強膜を介する眼内への適当な医療法のコンスタントな管理投与によって、全身抗生物質又はその他の抗感染剤の大量投与よりもむしろ、感染部位のより近くに治療を伝達することによって、有効なレベルの治療を形成することができるかも知れない。
【0019】
眼の炎症は、低体温法及び適当な医療方法の両方に反応するであろう。眼の炎症としては、前方及び後方ブドウ膜炎、網膜炎、脈絡膜炎、脈管炎、乳頭炎、交感性眼炎、強膜炎、上強膜炎、硝子体及びその他の疾患のような疾患がある。眼全体が迅速に冷却することができるので、これらの疾患は、眼に対する損傷無く、より良好に制御することができる。
【0020】
眼窩、眼球付属器及び眼筋の炎症は、ステロイド、非−ステロイド抗炎症剤及び代謝拮抗物質のような適当な抗炎症剤と組み合わせて低体温法を利用することによって、より良好に管理することができる。このような炎症疾患は、眼窩の眼球突出症及び偽腫瘍を有するグレーブス病を含んでいるかも知れない。
【0021】
眼窩の感染は、低体温法及び適当な医療方法に対して敏感に反応しても良い。このような治療法から眼を遮蔽することは、セラミック化合物のような遮蔽体によって眼に当接するシェルの面をコーティングすることによって達成することができる。このようにして、治療法は、眼窩内の感染に対して眼から離れる方向に導くことができる。
【0022】
眼の腫れは、低体温法及び温熱法の両方に対して敏感に反応するかも知れない。低体温法は、前外科手術治療、外科治療及び術後管理に対して随伴するかも知れない。温熱法は、レーザー治療、光力学治療法の作用を増大させる際に有用であるかも知れない。
【0023】
斑状疾患は、医療方法、レーザー療法及び低体温法の組み合わせに反応するかも知れない。レーザー治療の前及び/又は後の網膜組織の保護及び斑点の浮腫の防止は、熱的制御及び薬剤の給送のこの装置によって達成することができるかも知れない。
【0024】
背中又は首に手術を受けた患者においては、患者は、眼窩、不良静脈性排水及び時たまは失明性の鬱血を受けやすい位置にある。このような外科的介入が続く虚血性視神経障害の防止のための新しい方法は、眼窩から海綿静脈洞への組織液の圧送及び静脈性排水の方法を使用することによって達成することができる。
【好ましい実施形態の説明】
【0025】
図1には、一般的な解剖学的構造が眼1の側面図で示されており、眼1は、上瞼及び下瞼2、上及び下円蓋3、眼窩4及び視神経5を有している。
【0026】
本発明による熱調節シェル6が図2(前面図)及び図3(側面図)に示されている。図3に見られるように、熱調節シェル6の断面図は、シェル6が眼1に適合し且つ眼1の表面に沿って摺動できるのに適した大きさの後方穴12を支持している。
【0027】
図4は、眼1上に配置されたときの装置6の一般的な位置を示している。熱調節シェル6は、温度制御された流体が熱調節シェル6内で循環されるのを容易化するように適切に設計された流体キャビティを含んでいる。
【0028】
熱調節シェル6は、適切に設計された中央前方開口7、流体入口穴8及び流体出口穴9を含んでいても良く、これらは両方ともシェル6と流体連通している。ワイヤー10のような他の構造又は図4に最も明確に見ることができるその他の適当な半硬質手段は、シェル6内での流体の流れを容易化することができる熱調節シェル6内に組み込むことができる。これは、眼1間での改良された熱伝導の熱調節シェル6への均一な又は選択的な流体の支持構造ばかりでなく導く方法を提供する。
【0029】
図6においては、薬剤1又はその他の流体は、半透過性膜を通過して眼1及び/又は周囲眼窩組織4へと流れるであろう。微小管13、ナノチューブ、マイクロポア又はその他の輸送装置は、この薬剤を、その内部透過膜15及び/又は外側半透過性膜14の中を給送するであろう。
【0030】
図7内のシェルの内側装置内には、キャビティ17が設けられており、熱伝達を最適化するために、流体がキャビティ17のチャネル16内を流れる。シェルを通るチャネル及びキャビティのこの装置が、図7の側面図及び図10の断面図に示されている。これらのチャネルは、図8に最も良く見ることが出来るように、畝状突起18によって形成されている。
【0031】
複数のキャビティシェルは、図9に示されている堅牢な外側層又はキャビティ17か又は図10に示されている堅牢な内側層又はキャビティ17を含んでいても良い。この硬質の又は半硬質の層又はキャビティは、装置の構造的形状を維持するばかりでなく、これはまた、セラミックのような材料からなる絶縁部材として機能することもでき又は鉛被覆のような材料からなるシールドとして機能することもでき且つ他の保護目的を提供することもできる。
【0032】
当該装置は、セラミックか、鉛か、鋼か又はその他の堅牢な物質によって作られた堅牢材料を備えた複数のキャビティシェルを含んでおり、これは、その外側層19又は内側層20上に配置されている。
【0033】
もう一つ別の実施形態においては、図11内のシリコーンラバージェル6の外側キャビティ14は可撓性であり且つポンプのスピード及び圧力を律動的に上昇させたり下降させたりする取り付けられたポンプ機構により、可撓性であり且つ脈動性である。内頚動脈洞への静脈及び流体の排水を容易化し且つ眼窩の鬱血を防止する。この作用は、急性の虚血性視神経の治療又は持効性の背部又は頚部外科手術中の視神経障害の防止に有用であるかも知れない。
【0034】
もう一つ別の実施形態においては、堅い外側シェル層又は図12に示されたキャビティ19は眼窩を安定化させ、一方、内側脈動シェル層15は眼1をマッサージして、眼球内眼球圧力を下げ且つ眼球内血管の流れを助長する。
【0035】
図4に見られるように、熱調節シェル6の断面図は、眼1に適合し且つ眼1の表面上を摺動することができるのに適した大きさの後方開口12を支持している。
【0036】
図13に示されているように、流体温度及び流体の循環は、所定の温度及び流量になるように制御することができる。流体ボトル21の高さを高くしたり低くしたりすることによって、正の圧力が制御される。流体の圧力は、流体管22を介して連通される。
【0037】
次いで、温度制御ユニット23に流体の流れが提供される。流体温度は、温度制御セレクタ24によって、所望の設定に調整される。温度調節された流体が、次いで、図13に示されているように供給コネクタ25に提供される。戻り流体は、流体戻りコネクタ27によって、流体管理ユニット26に提供される。
【0038】
適切な流体経路管28を使用して、流体が流体ポンプ29によって流体戻しコネクタ27から引き出される。
【0039】
流体の流れは、流体ポンプのスピードを調整することによって流体管理装置26を通って調節される。スピードの選択は、適切なポンプスピード指示器32を使用して流体管理装置26の前方パネル31上に表示されているスピードセレクタ30によって調節される。流体の管理は、適切な電源スイッチ33によって制御される入力パワーによって電気的に動力を供給されるのが好ましい。
【0040】
熱調節シェル6を保持するためのもう一つ別の手段が、図6及び7に示されているように、眼の鏡34を固定し且つ鏡34に合致する瞼2を使用して例示される。圧縮された後方伸長部35もまた図6に示されている。シェル16は、眼1に適合し且つ図15に示されているように、その後方伸長部35を広げることによって、後方に拡張させることができる。鏡34は、調節シェルの幾何学的構造6内に一体化しても良い。鏡34の幾何学的構造もまた、適切な硬質の又は半硬質の幾何学的構造を組み込んで、他の器具(図示せず)の取り付けを容易にすることもできる。図16及び17に示されているように、好ましい座ぐり固定リング36は、鏡幾何学的構造34内に又は周囲に組み込んでも良い。
【0041】
好ましい実施形態においては、複数の瞼鏡37の形状を有している熱調節装置が図18に示されている。これの前方部分38は瞼を冷却しており、一方、その後方部分39は、瞼鏡37ばかりでなく瞼と眼との両方に対する熱調節装置として機能するように瞼の下に引っ掛けられている。
【0042】
図19は、前方部分38が見えており、後方部分39が視界から隠れているシェルの伸長及び取り付けられたクランプ40として機能している状態の熱調節瞼鏡の前面図を示している。
【0043】
図20においては、流体管理装置26は、適切な流体管材料22によって熱調節シェル6に連絡されている。
【0044】
熱調節シェル6の配置を維持する別の手段のみならず付加的な眼の冷却は、流れチャネル16を備え且つ図21に示された熱調節シェル6から分離されているか又は図22に示されたシェルと組み合わせられた冷却パッチ41の使用によって達成されることができる。流体の流れを結合されたユニット内の後方シェルへと促進するために、チャネル16が使用されている。
【0045】
熱調節を維持する別の手段は、瞼2、眼1及び図23に示された前方眼窩4を冷却する吸引補助装置46の使用である。
作動方法
眼1と周囲組織との熱調節は、種々の治療及び介入目的のために使用することができる。熱調節装置6は、眼1及び周囲組織の温度制御のための伝導方法及び対流方法の両方を使用している。
【0046】
装置6は、装置6が眼1上に取り付けられたときに、隅部及びその他の眼球構造の直接的な検査を可能にするために、前中心開口7を含んでいても良い。別の方法として、シェル6は、中心開口を有しておらず、この実施形態においては、角膜、前区眼及び近隣組織は、更に効率良く冷却することができる。
【0047】
流体流入ポート8及び流体出口ポート9は、眼1及び瞼2の解剖学的相対関係を利用するために、中央に又は横方向にするのが優先的であるけれども、前記装置6上のどこかに配置することができる。シェル6と眼1との間の伝導を使用する温度の熱交換又はその他の迅速に動いている洗浄流体の他の近隣構造及び対流が存在するであろう。
【0048】
この装置6は、眼1と伝導流体との間の熱交換を容易化する材料からなる。シリコーンラバーのような材料又は柔軟さ、展性及び良好な熱交換能力のような特性を有する他のあらゆる材料が望ましい。
【0049】
薬物及びその他の化学物質の管理投与の目的のために、材料は、半透過性膜又はミリポア/マイクロポア装置によって構成されるか又は治療方法の推移のためのそのキャビティ17内の特別なチャネル16によって準備された材料よって構成しても良い。
【0050】
シェル6の本体は、支持マトリックス10をもたらすワイヤー10又はその他の堅牢なメッシュによって補強しても良い。含まれる組織面を通して読み取りを行うために、種々のセンサー11を、ワイヤーマトリックス10又はシェル8内に埋め込んでも良い。埋設されたセンサー11は、眼球温度、眼球圧力、眼球面ペーハー、イオン濃度、化学検知又は濃度、酸素飽和度、薬剤濃度及び一般的に使用されるべき更に別の特性のような種々の眼球面特性を測定することができる。
【0051】
マトリックス10の堅牢性はまた、円蓋3を後方に押し且つ図15に示されているように眼1の後方面までシェル6の被覆を延ばす助けとなる。後方球又は眼窩4の治療においては、シェル6がより後方に延びるのを可能にさせるために、円蓋3の後方壁1の後方眼窩及び背面近くへ方向及び配置を付与するために、挿入器(図示せず)の使用を必要とするかも知れない。
【0052】
図4を参照すると、装置6は、熱交換のために流体を循環させる1以上のキャビティ17を包囲している二重層の又は複数層の装置である。これらのキャビティ内には、熱交換を最大化するために、循環流体を導く隆起部18及びチャネル16が設けられるであろう。眼1の後方部分の熱調節は、流体を導くための一方向弁及びゲートを含んでいても良いこれらのチャネル16を介して最適化されるであろう。これらの特徴は、流体の迅速ばかりでなく均一又は不均一な分布を可能にするであろう。
【0053】
もう一つ別の好ましい実施形態においては、これらのチャネル16、ゲート又はシェル層は、ある種の大きさの分子の選択的な濾過又は通過を可能にするために、種々の寸法のマイクロポア/ミリポア13を有していても良い。
【0054】
更に別の実施形態においては、シリコーンラバーシェル6の外側の被覆された層19は、眼1の熱的な調節を最大化するため、セラミック、鉛被覆又は更に別の絶縁材料によってコーティングすることができる。他の目的のために、内側コーティング層20又はその一部分は、眼1の外側の組織を治療するときに、眼又はその他の構造を強度の変化から保護するために、セラミック、鉛被覆又はその他の絶縁材料によってコーティングしても良い。
【0055】
更に別の好ましい実施形態においては、シェル6は、円蓋を後方に拡張させ且つ押圧する拡張可能な後方伸長部35を有することができる。この伸長部は、キャビティを通して循環する流体からの正圧によって又は付加的な流体入口ポートからより直接に、達成することができる。装置は、非侵襲性であるけれども、当該装置は、後方網膜、斑点、硝子体、視神経5、眼窩、付属器及びその他の周囲組織を効率良く冷却する通常の解剖学的終点を越えて可撓性で且つ影響を受け易い眼球円蓋3を押圧することができる。
【0056】
後方円蓋の切開がなされている場合には、結合及び円蓋3を越えた治療の伸長部が設けられ、より大きな表面領域が装置6によって治療できる。
【0057】
二重の層又は複数の層の装置が、一定圧力で押すか又は維持することによって、眼1上に正圧及び負圧の両方を提供することができる。眼1上の過剰圧力を防止するために、眼球内圧力を監視し且つ装置6内を流れる流体を調節するために、眼圧測定装置11を、封入シェル装置6内に組み込むことができる。
【0058】
シェルの設計6の他の実施形態は、眼1と瞼(図6)とのための一体化された冷却装置を含んでいる。瞼2は、瞼2を離隔状態に保持することによって、主として、瞼鏡34によって冷却することができる。この延長における熱的に制御された流体は、シェルの温度制御装置の残りの部分と一体化することができる。
【0059】
別の方法として、もう一つ別の好ましい実施形態においては、瞼温度制御装置及び眼球、温度制御された装置は、種々の体積の眼及び眼窩周囲組織の差動冷却を形成するために、内側20及び外側19のシェルの温度調節作用を最大化するために、別個の流体ポンプ装置によって別個に調節することができる。
【0060】
更に、シェル6内の2以上の区分を別個に温度制御することによって、所望の場合に、温度勾配を形成することができる。次いで、温度勾配は、眼1内の流体の流動特性に影響を及ぼすことができる。
【0061】
装置6のもう一つ別の好ましい実施形態においては、装置が外側層瞼鏡装置37は、瞼及び近隣構造のためのそれ自体の温度調節装置を備え且つ瞼鏡34として二重に機能する別個のユニットであっても良い。この装置は、眼1と瞼とを別個に温度調節するために、眼1のためのシェル装置6と組み合わせて動作する。この又はもう一つ別の実施形態は、装置の容易な挿入及び後退のためのクランプ40を使用しても良い。シェル6のための中央穴7と組み合わせたこの装置は、眼1が治療的な観察又は介入及び治療のために露出されるのを可能にする。
【0062】
もう一つ別の好ましい実施形態においては、眼1は、中央穴なしのシェルによって覆われ且つ露出される必要がない場合には、治療されている表面積がより大きいことにより、より効率の良い温度制御を有するであろう。チャネル16を備えた外側温度調節交換パッド41が、閉じられた瞼2を覆うことができる。入口ポート42及び出口ポート43のための別個の装置がこのパッド41に対して必要とされる。しかしながら、代替的な一体化された装置45は、パッド41及びシェル6の両方を組み入れるであろう。このパッド41を固定するために、ジップロック装置44を使用しても良い。
【0063】
この外側装置41は、接着剤、吸引機構又はその他の機械的手段の助けを借りて、パッド又はパッチのような瞼2の上又は近くに緩く又は堅牢に配置しても良い。キャビティ17の内部には、熱交換を最大化するために、循環液を再分配する隆起部18及びチャネル16が設けられるであろう。
【0064】
別の方法として、もう一つ別の好ましい実施形態においては、伝導熱交換装置46は、真空チャンバ47を使用して完全なシールされた装置を形成している瞼1を封じ込め、それによって、冷却、加熱、薬剤給送、洗浄及びその他の機能の目的のために、眼1のすぐ周囲に自由に循環するようにさせることができる。密封は、前記装置を前方に且つ眼を後方の境界をなすキャビティを形成するために、ジップロック装置44、吸引補助装置46、機械的クランプ40又は他の機械的手段によって達成することができる。吸引装置46は、真空チャンバ47内に真空を形成することによって、真空ポート49を介して空気を抜き取ることによって達成される。
【0065】
装置6の挿入の準備をするために、麻酔溶液及び/又はゲルを眼1に適用することができる。麻酔物質は、瞼2の下方へ挿入する前に、シェル6上にコーティングしても良い。プロパラカイン又はテトラカインのような市販によって入手可能な麻酔溶液及びリドカインのような麻酔ゲルが容易に利用可能である。
【0066】
瞼2、眼球面及び周囲領域は、次いで、ベタジンのような麻酔溶液によって適正に洗浄され且つ無菌布によって適正に覆われる。所望レベルの局所的で且つ局部麻酔に従って、他の技術が利用可能であり且つ選択することができる。
【0067】
例えば、リドカイン及びブピバカインの球周囲又は眼球後の注入は、極めて深く且つ完全な局部麻酔作用を達成することができる。別の方法として、鈍いグリーンバウメ(Green Baume)カニューレによる局部麻酔のテノンの湿潤物は、本質的に球性能のおそれを有しておらず、しかも、深い局部麻酔を全く効率的にさせる。更に、麻酔眼瞼ブロックは、瞼鏡34並びに装置6の挿入及びメインテナンスを容易にするためには、ある種の状況においては、麻酔眼瞼ブロックが望ましいかも知れない。
【0068】
瞼2が手動によって分離された状態においては、装置6は、球を取り巻いているキャビティ内に挿入される。装置6の形状は、そのリーチを最大化するために、異なる四分円内の円蓋3の異なる後方深さを利用することができる。その使用に依存して、装置6は、より少ない突き出し深さを有するように前もって作り上げることができる。当該装置6は、このシーケンスにおいて、医学的に、下位に、上位に且つ横方向に、より深くまで到達することができる。
【0069】
中間的には、医療用眼隅部腱は、後方リーチを制限する傾向があり、一方、束の間に且つ上位には、円蓋の伸長部が全く後方にある。一つの技術においては、瞼2は、処置を通して閉じられたまま留まるのを許容される。別の方法として、円蓋34と同様の形状の標準的な瞼鏡又は調節装置が、挿入されて瞼2が隔置された状態に保持され、次いで、熱調節シェル6の挿入が続く。
【0070】
更に、図14乃至19に示されている結合された熱調節瞼円蓋装置34を、瞼を隔置された状態に保つために使用することができる。図16及び17は、図14と同じ装置を示しており、限定的ではないが、隅角鏡、のぞきプリズム、眼底コンタクトレンズ、薬剤ウェル及びその他のものを含む、リングベース36又はその他の適当な硬質の又は半硬質の幾何学的構造が追加されている。
【0071】
以上、本発明を有利に使用することができる方法を例示する目的で本発明による眼及び周囲組織の温度制御及び眼の治療のための特別な医療装置及び方法を説明したが、本発明は、これらに限定されないことが理解されるべきである。すなわち、本発明は、ここに開示された部材から本質的に適正に構成されても良い。更に、ここに適切に例示的に開示された本発明は、ここに特別に開示されていない部材がなくても適切に実行することができる。従って、当業者が想到することができる如何なる或いは全ての変形、変更又は等価構造が、特許請求の範囲に規定されている本発明の範囲内に含まれると考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、眼、瞼、視神経並びに上方及び下方円蓋の側面図である。
【図2】図2は、眼の上に配置されたときの入口穴及び出口穴を備えている熱調節シェルの前面図である。
【図3】図3は、眼の形状に適合したときの熱調節シェルの側面図である。
【図4】図4は、眼の表面、瞼の下側並びに上方及び下方円蓋内に配置されたシェルの側面図であり、構造的な支持及び検知装置を眼に適合するための網を使用することができる。
【図5】図5は、支持のためのシェル上のワイヤーメッシュ構造とデータ採取点のために埋め込まれたセンサーとが一体化された眼の表面を覆っているシェルと、薬剤の給送、放射又はその他の治療手段装置及び配置の定位座標の側面図である。
【図6】図6は、薬剤のような物質がその半透過性の内側シェル膜を介して眼に管理投与し又はその半透過性シェル膜及びその周囲組織を介して眼窩組織へ管理投与することができるシェルの側面図であり、シェル内腔が内部組織を部分的に露出させている。
【図7】図7は、シェル内腔が部分的に露出されている状態のシェルの側面図であり、その外層の下方に露出されている内側流体チャネルとキャビティとを示している。
【図8】図8は、シェルの断面図であり、そのチャネル及びシェル内腔内の畝状突起とを備えている。
【図9】図9は、セラミック絶縁体又はその外層上をシールドしている鉛被覆のようなより堅牢な構造を備えた複数層シェルの側面図である。
【図10】図10は、セラミック絶縁体又はその内層上をシールドしている鉛被覆のようなより堅牢な構造を備えた複数層シェルの側面図である。
【図11】図11は、その外側層上にマッサージ機構を形成する軟らかい脈動外側シェルの壁を備えたシェルを示している。
【図12】図12は、軟らかい内側シェル壁を備えたシェルを図示しており、当該内側シェル壁は、その内側層のためのマッサージ機構を形成している。
【図13】図13は、シェルへの及びシェルからの温度制御され且つ圧力制御された流体を循環させるために、流体温度、流体圧力、流量、流れの動脈脈動を制御するための装置を表している。
【図14】図14は、瞼円蓋を内部に組み入れ且つ圧縮された後方シェル伸長部を備えている熱調節シェルを示している。
【図15】図15は、正の流体圧によって伸長せしめられた後方伸長部を備えている熱調節シェルを示している。
【図16】図16は、瞼を抑制するための組み込まれた瞼鏡と、眼を覆うように他の診断及び治療装置を固定するための手段とを備えた熱調節シェルの側方断面図である。
【図17】図17は、シェル内へ入る或いはシェルから出る流体ポートを備えている熱調節シェルの前面図であり、上方に或いは下方に配置された組み込み瞼鏡によって開放状態に保持されている瞼を備えており、シェルは、眼の周りの上位円蓋及び下位円蓋に配置されている。
【図18】図18は、熱調節多層瞼円蓋の側面図であり、装置の一部分が、眼を覆う熱調節シェル状後方伸長部を備えた瞼の下に押し込まれている。
【図19】図19は、熱調節円蓋の前面図であり、下に横たわってする後方シェル伸長部を備え且つ挿入クランプが取り付けられている。
【図20】図20は、流体管理装置、熱調節シェル及び関連する流体管材を含んでいる装置構造を示している。
【図21】図21は、眼の表面を覆うように取り付けられている熱調節シェルを備えている眼の断面図であり、部分的に閉じられた瞼の前方部分を覆うように冷却パッチが配置されており、各装置は、それ自体の熱調節ポンプ装置に指令を与えている。
【図22】図22は、熱調節流体とパッチとを共用しているシェルを備えているパッチの一体化されたジップロック装置を備えた、眼の断面図である。
【図23】図23は、眼、瞼及び眼窩周囲の熱調節のための吸引補助装置の側面図である。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、概して、組織の局部的な温度制御を誘導すること及び薬物の一定供給源を管理することによって、眼及び眼窩に対する損傷を減らし且つ防止するのに有用な医療用装置に関する。より特別には、本発明は、低体温法又は温熱療法の用途において使用するために眼の外面を包囲する装置を提供し、伝導及び対流原理を使用する流体の迅速な流れを提供し、治療方法の適用を提供し、並びに付属器及び外眼筋を含む眼窩の他の組織に対する温度制御の伝達を提供する。当該医療装置は、温度測定のためのサーミスタと、流体交換のための洗浄/吸引穴並びに眼の外周面を取り巻いている治療方法及び可撓性の膨張可能なユニットを備えている。温度、圧力及び流量の制御のための外部装置が説明されている。
【背景技術】
【0002】
眼に対する血流欠乏(虚血)によって、視神経及び網膜/脈絡膜組織の死亡を生じるかも知れない。中心網膜動脈閉塞(CRAO)の場合には、網膜に対して酸素及び栄養分を付与する主要な血管内に粒子(栓子)が存在するかも知れない。前虚血性視神経症(AION)の場合には、前視神経内で眼内に入る血管内に閉塞が存在するかも知れない。前虚血性視神経症を含む視神経炎(ON)には、ミエリン鞘内の疾患による視神経の炎症及び眼を出て行く神経繊維の被覆が存在する。ある期間(数分乃至数時間乃至数日間)の後に、組織の死が起こり、回復不可能な損傷の発生を生じるかも知れない。
【0003】
眼球/眼窩への一撃のような鈍い外傷により、眼の組織への病変が起こるかも知れない。このような鈍い外傷は、眼内又は眼の周囲に出血をもたらし且つそれに伴う眼の組織の腫脹をもたらす。不幸にも、医療及び外科的介入を含む一般的な眼科学的手段によって眼に対する損傷を制御することは難しい場合が多い。
【0004】
眼及び眼窩の他の種々の疾患は、最終的な機能の損失を有する組織の腫脹を生じるかも知れない。眼窩の炎症は、通常は、全身性医療又は均一な外科的減圧術によって管理される。眼の内部組織の他のタイプの炎症としては、後部ブドウ膜炎、脈絡膜炎、網膜炎、硝子体、強膜炎、甲状腺に関連する眼の疾患、水晶体アナフィラキシー、前方ブドウ膜炎及び交感性眼炎がある。続発性緑内障は、眼の前区を含む炎症によって生じるかも知れない。
【0005】
眼の感染は、角膜、強膜、硝子体、網膜/脈絡膜、毛様体、水晶体、前眼房を含むかも知れない。これらは、通常は、全身性抗生物質によって治療され、全身性ステロイド類、抗生物質の局所的低下及び眼球内抗生物質注射によって治療されることも時々ある。
【0006】
眼及び眼窩の腫脹又は炎症の現在の治療方法は常に満足できるものであるとは限らない。著しく損傷した眼又は眼窩においては、通常は、腫脹を制御するための医療方法が全身的に適用され、その結果、眼又は眼窩に達する極めて低レベル濃度状態で、身体の残りの部分には高レベルの医薬がもたらされる。眼及び/又は眼窩を減圧するための外科的介入は、領域を露出させ且つ固定体積の骨壁に対する圧縮を防止するために、眼窩又は頭蓋の骨壁に穴を開けることによる主要な介入を必要とする。視神経の周囲の鞘が著しく腫脹している場合には、乳頭水腫、虚血性視神経症及び激しい外傷のような猛烈な場合に鞘の外科的な減圧が試みられて来た。その結果、処置の成功及び失敗の様々な報告がなされている。
【0007】
低体温法は、最近の文献においては、酸素の消費を低減させ且つ脳及びその他の中枢神経系(CNS)組織の腫脹を減少させる目的のためには有望であることが判明した。眼はCNSの一部分であるので、眼の腫脹を脳の低体温法が防止するのと同じ方法で眼及び視神経の腫脹を低減させることができることは論理的であると考えられる。不幸にも、脳を冷却するために身体全体を冷却することは、内在する危険性を有し且つ身体を冷却することによって眼を同様に冷却することはまた、有害な作用をも有するかも知れない。心臓は、不整脈によって低体温法に応答し、血液凝固機構は、著しく損なわれて出血を生じさせるかも知れない。更に、身体を冷却することは、CNSを数度冷却させるだけである。眼の場合には、眼の内部へ外科的に進入し且つ眼を内部から冷却することによって、網膜及び硝子体外科手術中に眼の硝子体を冷却する試みがなされて来ている。低体温法後の眼のCNS組織の生存能力に対する最近の動物による研究は、類似した機能の保存を実証した。
【0008】
現在利用できる新しい技術においては、眼の中に外科的に侵入することなく眼の外面から局部的に冷却することによってCNS及び眼及び眼窩の温度を制御する新しい方法が必要な時期である。低体温法と結合させて連続的な形態で直に眼/眼窩への薬剤の管理投与によって、眼の疾患を治療するための新しい方法が存在するかも知れない。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、眼及び眼窩組織の疾患の治療を高めるための装置及び方法を提供する。より特別には、本発明は、外科的介入によって組織を侵害することなく、低体温法、高体温法又は発熱法を迅速に適用することによって、眼、視神経、眼窩及び眼窩周囲組織の温度を制御するための装置及び方法を提供する。更に、当該装置及び方法はまた、眼、視神経、眼窩及び眼窩周囲組織へ薬剤及び/又は化学物質を適用することもできる。
【0010】
当該装置の第一の実施形態は、眼の形状に適合して、上瞼及び下瞼の両方の円蓋内へ嵌合させる多層球状ユニットからなる熱調節シェルを含んでいる。流体は、入口穴内へ流入し、出口穴から流出するであろう。流体の迅速な流れは、眼及び眼の付属器を含む周囲組織と装置との間の対流による熱交換及び伝導による熱交換を生じるであろう。流体の迅速な流れは、半透膜又はナノ細管又はミリポア/マイクロポアのシステム又は組織に治療を伝達するための適当な材料を介して隣接する組織に、適当な薬剤及び/又は化学物質を管理投与することを容易化する。中枢網膜動脈閉塞のような疾患においては、虚血性外傷から眼を保護するために、眼の神経組織内に温度を迅速に低下させることが望ましい。ブドウ膜炎、眼性感染及び眼性炎症のような他の疾患においては、流体のより遅い流れは、有効であるかも知れない。
【0011】
ポンプ装置を、熱調節シェルの全体積に亘って多量の流体を迅速に搬送してシェル内のチャネル内に流体を分配する能力を有している多数の入口接続部及び出口接続部を備えた蠕動性ポンプによって構成しても良い。流体特性に応じて、当該装置を、眼、眼窩並びに隣接する静脈洞及びその他の眼窩周囲の組織へ最も良好な給送ができるように特有の設計としても良い。ポンプは。バッテリによって作動せしめられ且つ携帯性及び使用容易性を可能にするように簡素化することができる。外部装置は、温度、圧力及び流量を制御するであろう。
【0012】
熱調節シェルは、眼球内圧力の測定を可能にし且つ角膜から網膜及び視神経へ脳の中の構造を見ることが出来るように、角膜の前方に開口部を構成しても良い。シェルが角膜の前方の開口部が無い状態に設計されている場合には、眼の前区への治療の熱調節及び管理投与を容易化することができる。
【0013】
眼の周囲及び瞼の下にシェルを配置するために、挿入器は、瞼の下への熱調節シェルの優しい配置を可能にするであろう。シェルは、金属又はプラスチック又はシェル内に配置されたその他の合成物質のような半硬質材料によって設計して、形状及び堅牢性を付与するであろう。これは、シェルを眼の表面と接触状態に維持するために畝状パターン又はマトリックス状の構造としても良い。ひとたびシェルが定位置に配置されると、挿入器は取り外され、シェルは眼に密接したままである。
【0014】
視神経を含む後方眼窩を治療するときには、治療されるべき組織により近接して眼窩のより後方に温度調節シェルが入るのを可能にするために、上位及び/又は下位円蓋を外科的に開けることが望ましいかも知れない。
【0015】
網膜中心動脈閉塞の場合には、二重層シェルを介する正圧及び負圧の両方による脈動を形成することが有利かも知れない。シェルの脈動は、眼の内部に差圧を生じさせて、主要な網膜動脈から栓子を分散させることができるであろう。眼に対する過剰圧力を防止するために、眼球内圧力を監視し且つシェル内を流れる流体を調整するために、シェル内に、眼圧測定装置を形成することができる。
【0016】
セラミックのような絶縁材料によってシェルを外面コーティングすることによって、薬剤の熱的調整方向及び薬剤の給送を更に眼の方へ向けて導くことができる。シェルの内面を適切な膜によってコーティングすることによって、眼窩の他の組織、眼窩周囲及び周囲の静脈洞へと熱の調整及び薬剤の給送を導くことができる。
【0017】
薬剤は、より容易に、眼の強膜を貫通し、眼内により高いレベルをもたらすことができる。シェルは、眼の赤道の後方へ配置されるので、治療は、硝子体、網膜、脈絡膜、斑点及び前視神経を含む眼の後半分内へと導かれるであろう。温度制御もまた、眼の後半分へと延びるであろう。低体温法もまた、眼の後半分へと延びるであろう。低体温法の場合には、網膜及び視神経の神経学的組織の保護は、虚血のような傷害にかかわらず行うことができる。医師は、傷害を医療治療及び/又は外科手術によって治療するためのより長い期間を有するであろう。
【0018】
眼の前区の感染の場合には、低体温法及び適当な医療方法は、進行を停止し且つ感染薬剤を破壊するであろう。眼(眼内炎)内の感染もまた、低体温法及び適当な医療方法に応答するであろう。特に、迅速な冷却及び強膜を介する眼内への適当な医療法のコンスタントな管理投与によって、全身抗生物質又はその他の抗感染剤の大量投与よりもむしろ、感染部位のより近くに治療を伝達することによって、有効なレベルの治療を形成することができるかも知れない。
【0019】
眼の炎症は、低体温法及び適当な医療方法の両方に反応するであろう。眼の炎症としては、前方及び後方ブドウ膜炎、網膜炎、脈絡膜炎、脈管炎、乳頭炎、交感性眼炎、強膜炎、上強膜炎、硝子体及びその他の疾患のような疾患がある。眼全体が迅速に冷却することができるので、これらの疾患は、眼に対する損傷無く、より良好に制御することができる。
【0020】
眼窩、眼球付属器及び眼筋の炎症は、ステロイド、非−ステロイド抗炎症剤及び代謝拮抗物質のような適当な抗炎症剤と組み合わせて低体温法を利用することによって、より良好に管理することができる。このような炎症疾患は、眼窩の眼球突出症及び偽腫瘍を有するグレーブス病を含んでいるかも知れない。
【0021】
眼窩の感染は、低体温法及び適当な医療方法に対して敏感に反応しても良い。このような治療法から眼を遮蔽することは、セラミック化合物のような遮蔽体によって眼に当接するシェルの面をコーティングすることによって達成することができる。このようにして、治療法は、眼窩内の感染に対して眼から離れる方向に導くことができる。
【0022】
眼の腫れは、低体温法及び温熱法の両方に対して敏感に反応するかも知れない。低体温法は、前外科手術治療、外科治療及び術後管理に対して随伴するかも知れない。温熱法は、レーザー治療、光力学治療法の作用を増大させる際に有用であるかも知れない。
【0023】
斑状疾患は、医療方法、レーザー療法及び低体温法の組み合わせに反応するかも知れない。レーザー治療の前及び/又は後の網膜組織の保護及び斑点の浮腫の防止は、熱的制御及び薬剤の給送のこの装置によって達成することができるかも知れない。
【0024】
背中又は首に手術を受けた患者においては、患者は、眼窩、不良静脈性排水及び時たまは失明性の鬱血を受けやすい位置にある。このような外科的介入が続く虚血性視神経障害の防止のための新しい方法は、眼窩から海綿静脈洞への組織液の圧送及び静脈性排水の方法を使用することによって達成することができる。
【好ましい実施形態の説明】
【0025】
図1には、一般的な解剖学的構造が眼1の側面図で示されており、眼1は、上瞼及び下瞼2、上及び下円蓋3、眼窩4及び視神経5を有している。
【0026】
本発明による熱調節シェル6が図2(前面図)及び図3(側面図)に示されている。図3に見られるように、熱調節シェル6の断面図は、シェル6が眼1に適合し且つ眼1の表面に沿って摺動できるのに適した大きさの後方穴12を支持している。
【0027】
図4は、眼1上に配置されたときの装置6の一般的な位置を示している。熱調節シェル6は、温度制御された流体が熱調節シェル6内で循環されるのを容易化するように適切に設計された流体キャビティを含んでいる。
【0028】
熱調節シェル6は、適切に設計された中央前方開口7、流体入口穴8及び流体出口穴9を含んでいても良く、これらは両方ともシェル6と流体連通している。ワイヤー10のような他の構造又は図4に最も明確に見ることができるその他の適当な半硬質手段は、シェル6内での流体の流れを容易化することができる熱調節シェル6内に組み込むことができる。これは、眼1間での改良された熱伝導の熱調節シェル6への均一な又は選択的な流体の支持構造ばかりでなく導く方法を提供する。
【0029】
図6においては、薬剤1又はその他の流体は、半透過性膜を通過して眼1及び/又は周囲眼窩組織4へと流れるであろう。微小管13、ナノチューブ、マイクロポア又はその他の輸送装置は、この薬剤を、その内部透過膜15及び/又は外側半透過性膜14の中を給送するであろう。
【0030】
図7内のシェルの内側装置内には、キャビティ17が設けられており、熱伝達を最適化するために、流体がキャビティ17のチャネル16内を流れる。シェルを通るチャネル及びキャビティのこの装置が、図7の側面図及び図10の断面図に示されている。これらのチャネルは、図8に最も良く見ることが出来るように、畝状突起18によって形成されている。
【0031】
複数のキャビティシェルは、図9に示されている堅牢な外側層又はキャビティ17か又は図10に示されている堅牢な内側層又はキャビティ17を含んでいても良い。この硬質の又は半硬質の層又はキャビティは、装置の構造的形状を維持するばかりでなく、これはまた、セラミックのような材料からなる絶縁部材として機能することもでき又は鉛被覆のような材料からなるシールドとして機能することもでき且つ他の保護目的を提供することもできる。
【0032】
当該装置は、セラミックか、鉛か、鋼か又はその他の堅牢な物質によって作られた堅牢材料を備えた複数のキャビティシェルを含んでおり、これは、その外側層19又は内側層20上に配置されている。
【0033】
もう一つ別の実施形態においては、図11内のシリコーンラバージェル6の外側キャビティ14は可撓性であり且つポンプのスピード及び圧力を律動的に上昇させたり下降させたりする取り付けられたポンプ機構により、可撓性であり且つ脈動性である。内頚動脈洞への静脈及び流体の排水を容易化し且つ眼窩の鬱血を防止する。この作用は、急性の虚血性視神経の治療又は持効性の背部又は頚部外科手術中の視神経障害の防止に有用であるかも知れない。
【0034】
もう一つ別の実施形態においては、堅い外側シェル層又は図12に示されたキャビティ19は眼窩を安定化させ、一方、内側脈動シェル層15は眼1をマッサージして、眼球内眼球圧力を下げ且つ眼球内血管の流れを助長する。
【0035】
図4に見られるように、熱調節シェル6の断面図は、眼1に適合し且つ眼1の表面上を摺動することができるのに適した大きさの後方開口12を支持している。
【0036】
図13に示されているように、流体温度及び流体の循環は、所定の温度及び流量になるように制御することができる。流体ボトル21の高さを高くしたり低くしたりすることによって、正の圧力が制御される。流体の圧力は、流体管22を介して連通される。
【0037】
次いで、温度制御ユニット23に流体の流れが提供される。流体温度は、温度制御セレクタ24によって、所望の設定に調整される。温度調節された流体が、次いで、図13に示されているように供給コネクタ25に提供される。戻り流体は、流体戻りコネクタ27によって、流体管理ユニット26に提供される。
【0038】
適切な流体経路管28を使用して、流体が流体ポンプ29によって流体戻しコネクタ27から引き出される。
【0039】
流体の流れは、流体ポンプのスピードを調整することによって流体管理装置26を通って調節される。スピードの選択は、適切なポンプスピード指示器32を使用して流体管理装置26の前方パネル31上に表示されているスピードセレクタ30によって調節される。流体の管理は、適切な電源スイッチ33によって制御される入力パワーによって電気的に動力を供給されるのが好ましい。
【0040】
熱調節シェル6を保持するためのもう一つ別の手段が、図6及び7に示されているように、眼の鏡34を固定し且つ鏡34に合致する瞼2を使用して例示される。圧縮された後方伸長部35もまた図6に示されている。シェル16は、眼1に適合し且つ図15に示されているように、その後方伸長部35を広げることによって、後方に拡張させることができる。鏡34は、調節シェルの幾何学的構造6内に一体化しても良い。鏡34の幾何学的構造もまた、適切な硬質の又は半硬質の幾何学的構造を組み込んで、他の器具(図示せず)の取り付けを容易にすることもできる。図16及び17に示されているように、好ましい座ぐり固定リング36は、鏡幾何学的構造34内に又は周囲に組み込んでも良い。
【0041】
好ましい実施形態においては、複数の瞼鏡37の形状を有している熱調節装置が図18に示されている。これの前方部分38は瞼を冷却しており、一方、その後方部分39は、瞼鏡37ばかりでなく瞼と眼との両方に対する熱調節装置として機能するように瞼の下に引っ掛けられている。
【0042】
図19は、前方部分38が見えており、後方部分39が視界から隠れているシェルの伸長及び取り付けられたクランプ40として機能している状態の熱調節瞼鏡の前面図を示している。
【0043】
図20においては、流体管理装置26は、適切な流体管材料22によって熱調節シェル6に連絡されている。
【0044】
熱調節シェル6の配置を維持する別の手段のみならず付加的な眼の冷却は、流れチャネル16を備え且つ図21に示された熱調節シェル6から分離されているか又は図22に示されたシェルと組み合わせられた冷却パッチ41の使用によって達成されることができる。流体の流れを結合されたユニット内の後方シェルへと促進するために、チャネル16が使用されている。
【0045】
熱調節を維持する別の手段は、瞼2、眼1及び図23に示された前方眼窩4を冷却する吸引補助装置46の使用である。
作動方法
眼1と周囲組織との熱調節は、種々の治療及び介入目的のために使用することができる。熱調節装置6は、眼1及び周囲組織の温度制御のための伝導方法及び対流方法の両方を使用している。
【0046】
装置6は、装置6が眼1上に取り付けられたときに、隅部及びその他の眼球構造の直接的な検査を可能にするために、前中心開口7を含んでいても良い。別の方法として、シェル6は、中心開口を有しておらず、この実施形態においては、角膜、前区眼及び近隣組織は、更に効率良く冷却することができる。
【0047】
流体流入ポート8及び流体出口ポート9は、眼1及び瞼2の解剖学的相対関係を利用するために、中央に又は横方向にするのが優先的であるけれども、前記装置6上のどこかに配置することができる。シェル6と眼1との間の伝導を使用する温度の熱交換又はその他の迅速に動いている洗浄流体の他の近隣構造及び対流が存在するであろう。
【0048】
この装置6は、眼1と伝導流体との間の熱交換を容易化する材料からなる。シリコーンラバーのような材料又は柔軟さ、展性及び良好な熱交換能力のような特性を有する他のあらゆる材料が望ましい。
【0049】
薬物及びその他の化学物質の管理投与の目的のために、材料は、半透過性膜又はミリポア/マイクロポア装置によって構成されるか又は治療方法の推移のためのそのキャビティ17内の特別なチャネル16によって準備された材料よって構成しても良い。
【0050】
シェル6の本体は、支持マトリックス10をもたらすワイヤー10又はその他の堅牢なメッシュによって補強しても良い。含まれる組織面を通して読み取りを行うために、種々のセンサー11を、ワイヤーマトリックス10又はシェル8内に埋め込んでも良い。埋設されたセンサー11は、眼球温度、眼球圧力、眼球面ペーハー、イオン濃度、化学検知又は濃度、酸素飽和度、薬剤濃度及び一般的に使用されるべき更に別の特性のような種々の眼球面特性を測定することができる。
【0051】
マトリックス10の堅牢性はまた、円蓋3を後方に押し且つ図15に示されているように眼1の後方面までシェル6の被覆を延ばす助けとなる。後方球又は眼窩4の治療においては、シェル6がより後方に延びるのを可能にさせるために、円蓋3の後方壁1の後方眼窩及び背面近くへ方向及び配置を付与するために、挿入器(図示せず)の使用を必要とするかも知れない。
【0052】
図4を参照すると、装置6は、熱交換のために流体を循環させる1以上のキャビティ17を包囲している二重層の又は複数層の装置である。これらのキャビティ内には、熱交換を最大化するために、循環流体を導く隆起部18及びチャネル16が設けられるであろう。眼1の後方部分の熱調節は、流体を導くための一方向弁及びゲートを含んでいても良いこれらのチャネル16を介して最適化されるであろう。これらの特徴は、流体の迅速ばかりでなく均一又は不均一な分布を可能にするであろう。
【0053】
もう一つ別の好ましい実施形態においては、これらのチャネル16、ゲート又はシェル層は、ある種の大きさの分子の選択的な濾過又は通過を可能にするために、種々の寸法のマイクロポア/ミリポア13を有していても良い。
【0054】
更に別の実施形態においては、シリコーンラバーシェル6の外側の被覆された層19は、眼1の熱的な調節を最大化するため、セラミック、鉛被覆又は更に別の絶縁材料によってコーティングすることができる。他の目的のために、内側コーティング層20又はその一部分は、眼1の外側の組織を治療するときに、眼又はその他の構造を強度の変化から保護するために、セラミック、鉛被覆又はその他の絶縁材料によってコーティングしても良い。
【0055】
更に別の好ましい実施形態においては、シェル6は、円蓋を後方に拡張させ且つ押圧する拡張可能な後方伸長部35を有することができる。この伸長部は、キャビティを通して循環する流体からの正圧によって又は付加的な流体入口ポートからより直接に、達成することができる。装置は、非侵襲性であるけれども、当該装置は、後方網膜、斑点、硝子体、視神経5、眼窩、付属器及びその他の周囲組織を効率良く冷却する通常の解剖学的終点を越えて可撓性で且つ影響を受け易い眼球円蓋3を押圧することができる。
【0056】
後方円蓋の切開がなされている場合には、結合及び円蓋3を越えた治療の伸長部が設けられ、より大きな表面領域が装置6によって治療できる。
【0057】
二重の層又は複数の層の装置が、一定圧力で押すか又は維持することによって、眼1上に正圧及び負圧の両方を提供することができる。眼1上の過剰圧力を防止するために、眼球内圧力を監視し且つ装置6内を流れる流体を調節するために、眼圧測定装置11を、封入シェル装置6内に組み込むことができる。
【0058】
シェルの設計6の他の実施形態は、眼1と瞼(図6)とのための一体化された冷却装置を含んでいる。瞼2は、瞼2を離隔状態に保持することによって、主として、瞼鏡34によって冷却することができる。この延長における熱的に制御された流体は、シェルの温度制御装置の残りの部分と一体化することができる。
【0059】
別の方法として、もう一つ別の好ましい実施形態においては、瞼温度制御装置及び眼球、温度制御された装置は、種々の体積の眼及び眼窩周囲組織の差動冷却を形成するために、内側20及び外側19のシェルの温度調節作用を最大化するために、別個の流体ポンプ装置によって別個に調節することができる。
【0060】
更に、シェル6内の2以上の区分を別個に温度制御することによって、所望の場合に、温度勾配を形成することができる。次いで、温度勾配は、眼1内の流体の流動特性に影響を及ぼすことができる。
【0061】
装置6のもう一つ別の好ましい実施形態においては、装置が外側層瞼鏡装置37は、瞼及び近隣構造のためのそれ自体の温度調節装置を備え且つ瞼鏡34として二重に機能する別個のユニットであっても良い。この装置は、眼1と瞼とを別個に温度調節するために、眼1のためのシェル装置6と組み合わせて動作する。この又はもう一つ別の実施形態は、装置の容易な挿入及び後退のためのクランプ40を使用しても良い。シェル6のための中央穴7と組み合わせたこの装置は、眼1が治療的な観察又は介入及び治療のために露出されるのを可能にする。
【0062】
もう一つ別の好ましい実施形態においては、眼1は、中央穴なしのシェルによって覆われ且つ露出される必要がない場合には、治療されている表面積がより大きいことにより、より効率の良い温度制御を有するであろう。チャネル16を備えた外側温度調節交換パッド41が、閉じられた瞼2を覆うことができる。入口ポート42及び出口ポート43のための別個の装置がこのパッド41に対して必要とされる。しかしながら、代替的な一体化された装置45は、パッド41及びシェル6の両方を組み入れるであろう。このパッド41を固定するために、ジップロック装置44を使用しても良い。
【0063】
この外側装置41は、接着剤、吸引機構又はその他の機械的手段の助けを借りて、パッド又はパッチのような瞼2の上又は近くに緩く又は堅牢に配置しても良い。キャビティ17の内部には、熱交換を最大化するために、循環液を再分配する隆起部18及びチャネル16が設けられるであろう。
【0064】
別の方法として、もう一つ別の好ましい実施形態においては、伝導熱交換装置46は、真空チャンバ47を使用して完全なシールされた装置を形成している瞼1を封じ込め、それによって、冷却、加熱、薬剤給送、洗浄及びその他の機能の目的のために、眼1のすぐ周囲に自由に循環するようにさせることができる。密封は、前記装置を前方に且つ眼を後方の境界をなすキャビティを形成するために、ジップロック装置44、吸引補助装置46、機械的クランプ40又は他の機械的手段によって達成することができる。吸引装置46は、真空チャンバ47内に真空を形成することによって、真空ポート49を介して空気を抜き取ることによって達成される。
【0065】
装置6の挿入の準備をするために、麻酔溶液及び/又はゲルを眼1に適用することができる。麻酔物質は、瞼2の下方へ挿入する前に、シェル6上にコーティングしても良い。プロパラカイン又はテトラカインのような市販によって入手可能な麻酔溶液及びリドカインのような麻酔ゲルが容易に利用可能である。
【0066】
瞼2、眼球面及び周囲領域は、次いで、ベタジンのような麻酔溶液によって適正に洗浄され且つ無菌布によって適正に覆われる。所望レベルの局所的で且つ局部麻酔に従って、他の技術が利用可能であり且つ選択することができる。
【0067】
例えば、リドカイン及びブピバカインの球周囲又は眼球後の注入は、極めて深く且つ完全な局部麻酔作用を達成することができる。別の方法として、鈍いグリーンバウメ(Green Baume)カニューレによる局部麻酔のテノンの湿潤物は、本質的に球性能のおそれを有しておらず、しかも、深い局部麻酔を全く効率的にさせる。更に、麻酔眼瞼ブロックは、瞼鏡34並びに装置6の挿入及びメインテナンスを容易にするためには、ある種の状況においては、麻酔眼瞼ブロックが望ましいかも知れない。
【0068】
瞼2が手動によって分離された状態においては、装置6は、球を取り巻いているキャビティ内に挿入される。装置6の形状は、そのリーチを最大化するために、異なる四分円内の円蓋3の異なる後方深さを利用することができる。その使用に依存して、装置6は、より少ない突き出し深さを有するように前もって作り上げることができる。当該装置6は、このシーケンスにおいて、医学的に、下位に、上位に且つ横方向に、より深くまで到達することができる。
【0069】
中間的には、医療用眼隅部腱は、後方リーチを制限する傾向があり、一方、束の間に且つ上位には、円蓋の伸長部が全く後方にある。一つの技術においては、瞼2は、処置を通して閉じられたまま留まるのを許容される。別の方法として、円蓋34と同様の形状の標準的な瞼鏡又は調節装置が、挿入されて瞼2が隔置された状態に保持され、次いで、熱調節シェル6の挿入が続く。
【0070】
更に、図14乃至19に示されている結合された熱調節瞼円蓋装置34を、瞼を隔置された状態に保つために使用することができる。図16及び17は、図14と同じ装置を示しており、限定的ではないが、隅角鏡、のぞきプリズム、眼底コンタクトレンズ、薬剤ウェル及びその他のものを含む、リングベース36又はその他の適当な硬質の又は半硬質の幾何学的構造が追加されている。
【0071】
以上、本発明を有利に使用することができる方法を例示する目的で本発明による眼及び周囲組織の温度制御及び眼の治療のための特別な医療装置及び方法を説明したが、本発明は、これらに限定されないことが理解されるべきである。すなわち、本発明は、ここに開示された部材から本質的に適正に構成されても良い。更に、ここに適切に例示的に開示された本発明は、ここに特別に開示されていない部材がなくても適切に実行することができる。従って、当業者が想到することができる如何なる或いは全ての変形、変更又は等価構造が、特許請求の範囲に規定されている本発明の範囲内に含まれると考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、眼、瞼、視神経並びに上方及び下方円蓋の側面図である。
【図2】図2は、眼の上に配置されたときの入口穴及び出口穴を備えている熱調節シェルの前面図である。
【図3】図3は、眼の形状に適合したときの熱調節シェルの側面図である。
【図4】図4は、眼の表面、瞼の下側並びに上方及び下方円蓋内に配置されたシェルの側面図であり、構造的な支持及び検知装置を眼に適合するための網を使用することができる。
【図5】図5は、支持のためのシェル上のワイヤーメッシュ構造とデータ採取点のために埋め込まれたセンサーとが一体化された眼の表面を覆っているシェルと、薬剤の給送、放射又はその他の治療手段装置及び配置の定位座標の側面図である。
【図6】図6は、薬剤のような物質がその半透過性の内側シェル膜を介して眼に管理投与し又はその半透過性シェル膜及びその周囲組織を介して眼窩組織へ管理投与することができるシェルの側面図であり、シェル内腔が内部組織を部分的に露出させている。
【図7】図7は、シェル内腔が部分的に露出されている状態のシェルの側面図であり、その外層の下方に露出されている内側流体チャネルとキャビティとを示している。
【図8】図8は、シェルの断面図であり、そのチャネル及びシェル内腔内の畝状突起とを備えている。
【図9】図9は、セラミック絶縁体又はその外層上をシールドしている鉛被覆のようなより堅牢な構造を備えた複数層シェルの側面図である。
【図10】図10は、セラミック絶縁体又はその内層上をシールドしている鉛被覆のようなより堅牢な構造を備えた複数層シェルの側面図である。
【図11】図11は、その外側層上にマッサージ機構を形成する軟らかい脈動外側シェルの壁を備えたシェルを示している。
【図12】図12は、軟らかい内側シェル壁を備えたシェルを図示しており、当該内側シェル壁は、その内側層のためのマッサージ機構を形成している。
【図13】図13は、シェルへの及びシェルからの温度制御され且つ圧力制御された流体を循環させるために、流体温度、流体圧力、流量、流れの動脈脈動を制御するための装置を表している。
【図14】図14は、瞼円蓋を内部に組み入れ且つ圧縮された後方シェル伸長部を備えている熱調節シェルを示している。
【図15】図15は、正の流体圧によって伸長せしめられた後方伸長部を備えている熱調節シェルを示している。
【図16】図16は、瞼を抑制するための組み込まれた瞼鏡と、眼を覆うように他の診断及び治療装置を固定するための手段とを備えた熱調節シェルの側方断面図である。
【図17】図17は、シェル内へ入る或いはシェルから出る流体ポートを備えている熱調節シェルの前面図であり、上方に或いは下方に配置された組み込み瞼鏡によって開放状態に保持されている瞼を備えており、シェルは、眼の周りの上位円蓋及び下位円蓋に配置されている。
【図18】図18は、熱調節多層瞼円蓋の側面図であり、装置の一部分が、眼を覆う熱調節シェル状後方伸長部を備えた瞼の下に押し込まれている。
【図19】図19は、熱調節円蓋の前面図であり、下に横たわってする後方シェル伸長部を備え且つ挿入クランプが取り付けられている。
【図20】図20は、流体管理装置、熱調節シェル及び関連する流体管材を含んでいる装置構造を示している。
【図21】図21は、眼の表面を覆うように取り付けられている熱調節シェルを備えている眼の断面図であり、部分的に閉じられた瞼の前方部分を覆うように冷却パッチが配置されており、各装置は、それ自体の熱調節ポンプ装置に指令を与えている。
【図22】図22は、熱調節流体とパッチとを共用しているシェルを備えているパッチの一体化されたジップロック装置を備えた、眼の断面図である。
【図23】図23は、眼、瞼及び眼窩周囲の熱調節のための吸引補助装置の側面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼及び眼の周囲組織の温度制御及び治療のための医療装置であって、
眼に適合し且つ眼の外周に沿って摺動できる大きさ及び形状とされたシェルであって、前記眼の周りに当該シェルを位置決めできるようにするための後方開口を有している前記シェルと、
流体入口穴と流体出口穴とであり、共に、前記シェルを介して流体を循環させるように前記シェルと流体連通している前記流体入口穴及び流体出口穴と、を含んでいる医療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療装置であって、
前記シェルが更に、当該シェルが当該装置の内部に配置されたときに、眼の検査を可能にするための中央前方開口を更に含んでいる医療装置。
【請求項3】
請求項1に記載の医療装置であって、
眼球特性を測定するために、前記シェル内に配置されているセンサーを更に含んでいる医療装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医療装置であって、
前記シェル内を流れる流体の流体温度、圧力及び流量を制御するための装置を更に含んでいる医療装置。
【請求項5】
請求項3に記載の医療装置であって、
眼をマッサージするために、前記シェル内の流体の圧力を変化させるための装置を更に含んでいる医療装置。
【請求項6】
請求項5に記載の医療装置であって、
前記圧力を変化させるための装置が、シェルと、眼の眼窩組織との間に配置されている脈動ユニットを含んでいる医療装置。
【請求項7】
請求項1に記載の医療装置であって、
前記シェルが、眼及び/又は眼窩組織内へ薬剤を導入するための手段を更に含んでいる医療装置。
【請求項8】
請求項1に記載の医療装置であって、
外側シェルコーティングを更に含んでいる医療装置。
【請求項9】
請求項8に記載の医療装置であって、
前記外側シェルコーティングが、絶縁材と薬剤とからなる群から選択されている医療装置。
【請求項10】
請求項1に記載の医療装置であって、
内側シェルコーティングを更に含んでいる医療装置。
【請求項11】
請求項10に記載の医療装置であって、
前記内側シェルコーティングが、熱伝導材と薬剤とからなる群から選択されたものである医療装置。
【請求項12】
請求項1に記載の医療装置であって、
瞼の分離及び冷却のための検眼を更に含んでいる医療装置。
【請求項13】
請求項12に記載の医療装置であって、
他の装置の取り付けを容易にするための端ぐり固定リングを更に含んでいる医療装置。
【請求項14】
請求項1に記載の医療装置であって、
瞼を冷却するために、前記シェルと流体連通している流体チャネルを備えている冷却パッチを更に含んでいる医療装置。
【請求項1】
眼及び眼の周囲組織の温度制御及び治療のための医療装置であって、
眼に適合し且つ眼の外周に沿って摺動できる大きさ及び形状とされたシェルであって、前記眼の周りに当該シェルを位置決めできるようにするための後方開口を有している前記シェルと、
流体入口穴と流体出口穴とであり、共に、前記シェルを介して流体を循環させるように前記シェルと流体連通している前記流体入口穴及び流体出口穴と、を含んでいる医療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療装置であって、
前記シェルが更に、当該シェルが当該装置の内部に配置されたときに、眼の検査を可能にするための中央前方開口を更に含んでいる医療装置。
【請求項3】
請求項1に記載の医療装置であって、
眼球特性を測定するために、前記シェル内に配置されているセンサーを更に含んでいる医療装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医療装置であって、
前記シェル内を流れる流体の流体温度、圧力及び流量を制御するための装置を更に含んでいる医療装置。
【請求項5】
請求項3に記載の医療装置であって、
眼をマッサージするために、前記シェル内の流体の圧力を変化させるための装置を更に含んでいる医療装置。
【請求項6】
請求項5に記載の医療装置であって、
前記圧力を変化させるための装置が、シェルと、眼の眼窩組織との間に配置されている脈動ユニットを含んでいる医療装置。
【請求項7】
請求項1に記載の医療装置であって、
前記シェルが、眼及び/又は眼窩組織内へ薬剤を導入するための手段を更に含んでいる医療装置。
【請求項8】
請求項1に記載の医療装置であって、
外側シェルコーティングを更に含んでいる医療装置。
【請求項9】
請求項8に記載の医療装置であって、
前記外側シェルコーティングが、絶縁材と薬剤とからなる群から選択されている医療装置。
【請求項10】
請求項1に記載の医療装置であって、
内側シェルコーティングを更に含んでいる医療装置。
【請求項11】
請求項10に記載の医療装置であって、
前記内側シェルコーティングが、熱伝導材と薬剤とからなる群から選択されたものである医療装置。
【請求項12】
請求項1に記載の医療装置であって、
瞼の分離及び冷却のための検眼を更に含んでいる医療装置。
【請求項13】
請求項12に記載の医療装置であって、
他の装置の取り付けを容易にするための端ぐり固定リングを更に含んでいる医療装置。
【請求項14】
請求項1に記載の医療装置であって、
瞼を冷却するために、前記シェルと流体連通している流体チャネルを備えている冷却パッチを更に含んでいる医療装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2008−520397(P2008−520397A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543507(P2007−543507)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/042688
【国際公開番号】WO2006/058189
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507169370)
【出願人】(507169392)
【出願人】(507169381)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/042688
【国際公開番号】WO2006/058189
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507169370)
【出願人】(507169392)
【出願人】(507169381)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]