説明

眼底画像処理装置及びそれを用いた眼底画像処理システム並びに眼底画像処理プログラム

【課題】より精度よく眼底画像処理を行うことのできる眼底画像処理装置及びそれを用いた眼底画像処理システム並びに眼底画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】眼底カメラと、眼底カメラに接続された眼底画像処理装置と、を有し、眼底画像処理装置は、眼底カメラが出力される眼底画像を処理前眼底画像として表示する処理前眼底画像表示部と、処理前眼底画像のうちの一部領域を抽出する抽出部と、抽出部によって抽出された一部領域に対し、一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成する解析部と、解析データの比較基準となる基準データを記録してなるデータベース部と、解析データと基準データとの比較処理を行う比較処理部と、比較処理部の結果を表示する結果表示部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底画像処理装置及びそれを用いた眼底画像処理システム並びに眼底画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼底の血管を解析し、疾患の診断の材料として用いようとする従来の技術として、例えば特許文献1には、動脈と静脈血管の直径を観察し、疾患の診断の材料として用いようする画像解析システムに関する技術が開示されており、また特許文献2には、同様な目的のために動脈と静脈が交差し、動脈が手前にある場合に、この下にある静脈の血管径のさき細り程度を解析する技術が開示されており、更に特許文献3には、血管以外に漏出した眼底出血を観察するための技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−097634
【特許文献2】特開2003−190094
【特許文献3】特開2008−073280
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに上記いずれの特許文献も、まずは血管壁や血液の境界線の形状を解析することを目的とした技術であるが、眼底における血管径を求めるために血管と眼底(背景)を線で分けることは極めて困難であり、恣意的な基準を定めて機械的に分離せざるを得ないといった課題がある。特に上記特許文献2に記載の技術では、動脈静脈の交差部を正確に解析するために、交差部が撮影中心に位置するよう撮影しなければならないが、実際の撮影では撮影中心ではなく、撮影中心から外れた周辺部に存在することがほとんどである。すなわち照明も悪条件で、光学的にもひずみが大きくなるため、解析精度に課題が残る。
【0005】
そこで本発明は、以上を鑑み、より精度よく眼底画像処理を行うことのできる眼底画像処理装置及びそれを用いた眼底画像処理システム並びに眼底画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題について本発明者らは鋭意検討を行ったところ、血管の一部領域を抽出し、当該領域の各軸に対しスペクトル解析を行い、その結果を予め記録したデータと比較参照することで疾患の判定に役立てることができることを発見して本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の一観点に係る眼底画像処理システムは、眼底カメラと、眼底カメラに接続された眼底画像処理装置と、を有し、眼底画像処理装置は、眼底カメラが出力される眼底画像を処理前眼底画像として表示する処理前眼底画像表示部と、処理前眼底画像のうちの一部領域を抽出する抽出部と、抽出部によって抽出された一部領域に対し、一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成する解析部と、解析データの比較基準となる基準データを記録してなるデータベース部と、解析データと基準データとの比較処理を行う比較処理部と、比較処理部の結果を表示する結果表示部と、を有する。
【0008】
また、本発明の他の一観点に係る眼底画像処理装置は、処理前眼底画像を表示する処理前眼底画像表示部と、処理前眼底画像のうちの一部領域を抽出する抽出部と、抽出部によって抽出された一部領域に対し、一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成する解析部と、解析データの比較基準となる基準データを記録してなるデータベース部と、解析データと基準データとの比較処理を行う比較処理部と、比較処理部の結果を表示する結果表示部と、を有する。
【0009】
また、本発明の他の一観点に係る眼底画像処理プログラムは、コンピュータに、処理前眼底画像を表示するステップ、処理前眼底画像のうちの一部領域を抽出するステップ、抽出部によって抽出された一部領域に対し、一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成するステップ、解析データと予め記録された基準データの比較処理を行うステップ、比較処理部の結果を表示するステップ、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明により、より精度よく眼底画像処理を行うことのできる眼底画像処理装置及びそれを用いた眼底画像処理システム並びに眼底画像処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る眼底画像処理システムの概略図である。
【図2】実施形態に係る情報処理装置の構成を示す図である。
【図3】実施形態に係る眼底画像処理装置の機能ブロックを示す図である。
【図4】表示装置に表示される画面の例を示す図である。
【図5】表示装置に表示される画面の例を示す図であり、図4の部分拡大図である。
【図6】表示装置に表示される画面の例を示す図であり、抽出部により抽出された部分の例を示す図である。
【図7】表示装置に表示される画面の例を示す図であり、抽出部により抽出された部分の例を示す図である。
【図8】実施形態に係るスペクトル解析結果の一例を示す図である。
【図9】図8の結果をもとに得られる相関係数を示す図である。
【図10】実施形態に係る眼底画像処理プログラムのフロー図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面をもとに説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態の記載にのみ制限されるものでない。
【0013】
図1は本実施形態に係る眼底画像処理システムの概略図を示す。本図で示されるように、本実施形態に係る眼底画像処理システム(以下「本システム」という。)1は、眼底カメラ2と、この眼底カメラ2に接続された眼底画像処理装置3と、を有している。
【0014】
眼底カメラ2は、被験者の眼の眼底を撮影する装置であり、この機能を有する限りにおいて特に限定はされないが、撮影した眼底の画像をデジタルデータとして出力することができるものであって、1000万画素以上の解像度を有することが好ましい。眼底カメラ3は、散瞳剤を用いない無散瞳タイプのものもであってもよいし、散瞳剤を用いる散瞳タイプのものであっても良い。本実施形態に係る眼底カメラ2は、撮影した眼底の画像をデジタルデータとしてケーブル21を介して眼底画像処理装置2に出力することができる。なお、限定されるわけではないが、眼底カメラは、後述の処理を容易に行うために、非圧縮の画像データを提供するものであることは好ましい一形態である。また眼底カメラが撮影する眼底画像は、単色のものであってもよいが、カラーのものであることはより好ましい。また、複数のチャンネルを設け、チャンネルごとに色の異なる単色の眼底画像を撮影し、それぞれを別々又は合成して眼底画像処理装置に出力するものであってもよい。
【0015】
眼底画像処理装置3は、眼底カメラ2が出力する眼底画像データに対し各種処理を行うことのできる装置であって、この限りにおいて限定されるわけではないが、例えばコンピュータを用いて構成されていることは好ましい一例である。
【0016】
眼底画像処理装置3がコンピュータである場合、限定されるわけではないが、情報処理装置31と、この情報処理装置31に接続される入力装置32、表示装置33及び印字装置34と、を備えていることが好ましい。
【0017】
情報処理装置31は、いわゆるコンピュータの主要な本体部分であって、図2の例で示すように、バス311と、このバス311に接続される中央演算装置(以下「CPU」)312、RAM3131やハードディスク3132といった記録媒体313、I/Oポート314を有して構成されている。なお、上記眼底カメラ2は、I/Oポート313を介して情報処理装置31に接続されている。
【0018】
入力装置32は、情報処理装置31にケーブルを介して接続され、情報処理装置31に対し各種の入力を行わせることのできる装置であって、限定されるわけではないがいわゆるキーボードやマウスを例示することができる。
【0019】
表示装置33は、情報処理装置31にケーブルを介して接続されており、処理前の眼底画像や処理の結果等の様々な情報を表示することのできる装置であり、この機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置が好ましい。
【0020】
印字装置34は、情報処理装置31にケーブルを介して接続されており、診断の結果を紙などの媒体に印刷して表示を行うことのできる装置である。この印字装置としては市販されているプリンタが広く適用可能である。また、印字装置34は、眼底画像処理装置31に接続されている表示装置33による表示のみで十分と判断されるような場合には構成要件として省略可能である。
【0021】
ところで本実施形態に係る眼底画像処理装置3は、情報処理装置31のハードディスク3132等に眼底画像処理用のプログラムが格納されており、このプログラムをRAM3131等のメモリに読み出し、実行することで、眼底画像処理装置として機能することができる。このプログラムを実行した場合における眼底画像処理装置3の機能ブロック図を図3に示しておく。
【0022】
本図で示されるように、本実施形態に係る眼底画像処理装置3は、眼底画像処理装置3は、眼底カメラ2が出力する眼底画像を処理前眼底画像として表示する表示部351と、処理前眼底画像のうちの一部領域を抽出する抽出部352と、抽出部352によって抽出された一部領域に対し、一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成する解析部353と、解析データの比較基準となる基準データを記録してなるデータベース部354と、解析データと基準データとの比較処理を行う比較処理部355と、比較処理部355の結果を表示する結果表示部356と、を有するものとなる。
【0023】
処理前眼底画像表示部351は、上述の通り、眼底カメラ2が出力する眼底画像を処理前眼底画像として表示する機能を有するものである。ここで「処理前眼底画像」とは、後述の抽出部による処理が行われる前の眼底画像という意味であって、他の必要な事前処理を排除する意味ではない。また「眼底画像」とは、眼底カメラにより撮影した眼底の画像であって、それぞれ独自の強度をもつ複数の画素がマトリクス状に配置に配置されてなるものをいい、単色の画像であっても、カラーの画像であっても良いが、処理の正確性を期す上ではカラー画像であることがより好ましい。なお、限定されるわけではないが、後述の抽出部及び解析部による解析処理の容易性の観点から、非圧縮の画像データを用いて処理前眼底画像を表示することは好ましい一形態である。
【0024】
抽出部352は、処理前眼底画像表示部351により表示された処理前眼底画像からその一部領域の抽出を実現させることのできる部であり、この操作を実現できる限りにおいて限定されるわけではないが、抽出部は、例えば、表示装置33に表示された処理前眼底画像に対し、マウス322の動作を解して表示装置に表示される画面上のカーソルを動かし、画像のうち一部領域を抽出するようにすることが好ましい。なお一部領域の抽出は、限定されるわけではないが、できる限り眼底画像の中心近傍の明るい一領域であって、血管の両側部を含みかつ短冊状となるよう選択することが好ましい。このような部分を選択することで、後述の解析処理がより精度よく行うことができるといった効果がある。またこの場合において、抽出される一部領域は四角形状であることが好ましい。四角形状とすることで、領域の選択を行いやすくするとともに、後述のスペクトル解析処理が行いやすくなるといった利点がある。なおこの操作において表示装置に表示される画面の例を図4乃至図7に示しておく。また、この操作において、処理前眼底画像又はカーソルが回転移動するよう構成しておくことも一部領域選択の容易性の観点から好ましい。また、本実施形態において、血管領域の抽出は、できる限り血管領域の管壁部分を含み、血管以外の領域を含ませないように抽出しておくことが好ましい。このようにすることで、より正確に血管の状態を反映した処理を行うことができるようになる。
【0025】
なお、本実施形態において抽出部352の抽出に先立ち、眼底画像の被測定者における各種データの入力を求め、当該各種データを記録しておくことが好ましい。ここで「各種データ」とは、様々なデータが採用可能であるが例えば、氏名、年齢、性別、病名等を例示することができ、更に、血液生化学検査結果、脈波解析結果、超音波又はX線による血管の硬さに関するデータを含ませることも好ましい。
【0026】
解析部353は、上記抽出部352によって抽出された一部領域に対し、一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成する部である。ここで「軸」とは、一部領域内における画素の位置を特定するために基準となる直線を意味し、二次元の眼底画像の場合、上記一部領域において直交する二つの軸を設けることが好ましい。特に、一部領域が長方形である場合は、この長方形の直交する二辺即ち短辺及び長辺を軸としておくことが好ましい。
【0027】
また解析部353が行なうスペクトル解析とは、一部領域内の画素の空間周波数を軸方向に沿って求め数値化する処理を意味する。上記のように二つの軸を設定している場合、それぞれの軸に対しスペクトル解析を行なうことが好ましく、その中でも二次元フーリエ解析、二次元ウェーブレット解析を用いることは一つのプロセスで解析処理を行うことができる点においてより好ましい。なおこの解析において、処理前眼底画像データ又はその一部領域を事前に色毎の眼底画像データに分け、各色の眼底画像データ各々に対しスペクトル解析を行わせてそれぞれを解析データとして用いるようにしても良い。この場合、限定されるわけではないが、一部領域を抽出した後、処理の前に複数の単色眼底画像(各単色眼底画像を以下「チャンネル」という。)に分けることは、ユーザーにとって見やすい画面表示を確保しつつ処理をより高速にすることができる点において好ましい。
【0028】
ここで、限定されるわけではないが、スペクトル解析の一例を示しておく。図8は、実施形態に係るスペクトル解析結果の一例を示すものである。なお、本図の例においては、スペクトル解析に先立ち眼底画像を赤、青、緑のそれぞれの眼底画像に分離している。
【0029】
図中、最も左列の上段のグラフは、赤色の眼底画像から抽出した一部領域を、中段のグラフは緑色の眼底画像から抽出した一部領域を、下段は青色の眼底画像から抽出した一部領域をそれぞれ示している。
【0030】
また、左から2列目の上段のグラフは、赤色の眼底画像から抽出した一部領域に対し、横軸に沿ってスペクトル解析を行い、横軸に存在する画素数分の水平断面のスペクトルを重ね書きしたものである。左から2列目の中段のグラフは、緑色の眼底画像から抽出した一部領域に対し、横軸に沿ってスペクトル解析を行い、横軸に存在する画素数分の水平断面のスペクトルを重ね書きしたものである。また、左から2列目の下段のグラフは、青色の眼底画像から抽出した一部領域に対し、横軸に沿ってスペクトル解析を行い、横軸に存在する画素数分の水平断面のスペクトルを重ね書きしたものである。
【0031】
また、左から3列目の上段のグラフは、左から2列目上段の平均値のスペクトルを表し、左から3列目の中段のグラフは、左から2列目中段の平均値のスペクトルを表し、左から3列目の下段のグラフは、左から2列目下段の平均値スペクトルを表す。
【0032】
また、左から4列目の上段のグラフは、左から2列目上段の基準化したスペクトルの平均値を、また、左から4列目の中段のグラフは、左から2列目中段の基準化したスペクトルの平均値を、また、左から4列目の下段のグラフは、左から2列目下段の基準化したスペクトルの平均値を、をそれぞれ示している。
【0033】
また、左から5列目すなわち一番右の上段のグラフは、赤色の眼底画像から抽出した一部領域に対し、縦軸に沿ってスペクトル解析を行い、その結果を基準化したスペクトルの平均値を示し、一番右の中段のグラフは、緑色の眼底画像から抽出した一部領域に対し、縦軸に沿ってスペクトル解析を行い、その結果を基準化したスペクトルの平均値を示し、一番右の上段のグラフは、青色の眼底画像から抽出した一部領域に対し、縦軸に沿ってスペクトル解析を行い、その結果を基準化したスペクトルの平均値を示している。
【0034】
本実施形態においてデータベース部354は、上記解析部353が作成した解析データの比較基準となる基準データを記録してなる部である。具体的には、判断対象となる疾患のモデルとなる被験者に対し上記解析処理部が行うスペクトル処理を行った結果得られるグラフデータや、各これらグラフデータから得られる各種パラメータを格納する。
【0035】
また本実施形態において、比較処理部355は、上記解析部353とデータベース部354の結果を比較して所定の処理を行う部であり、具体的には、上記解析部353が上述の処理により得られる各グラフデータの少なくともいずれかと、データベース部354に格納された当該グラフデータとの比較処理を行うことを挙げることができる。なおこの場合における比較処理としては、限定されるわけではないが、例えばグラフ同士における相関係数を求めることがあげられる。ここで例として、例えば図9に、上記図8の結果に対し、各疾患等のパラメータに対し、比較処理を行った結果得られる相関係数を示す。この相関係数は統計的に優位なものとなっている。
【0036】
本実施形態において、結果表示部356は、比較処理部355の結果を表示する部であって、限定されるわけではないが、表示装置33にこの結果を表示し、更にユーザーの操作により印字装置34にこの結果を印字させることができる。これにより、診断対象者は、自己の診断の結果を簡単に確認することができる。
【0037】
以上、本実施形態に係る眼底画像処理システムにより、より精度よく眼底画像処理を行うことができる。
【0038】
また、本実施形態に係る眼底画像処理プログラムは、コンピュータに、処理前眼底画像を表示するステップ(S1)、処理前眼底画像のうちの一部領域を抽出するステップ(S2)、抽出部によって抽出された前記一部領域に対し、一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成するステップ(S3)、解析データと予め記録された基準データの比較処理を行うステップ(S4)、比較処理部の結果を表示するステップ(S5)、を実行させる。この処理のフローを図10に示しておく。
【0039】
本実施形態において、処理前眼底画像を表示するステップ(S1)は、眼底カメラ2が出力する眼底画像を処理前眼底画像として表示するステップである。ここで「処理前眼底画像」とは、後述の抽出するステップ(S2)による処理が行われる前の眼底画像という意味であって、他の必要な事前処理を排除する意味ではなく、他の必要な事前処理を加えてもよい。また「眼底画像」とは、眼底カメラにより撮影した眼底の画像であって、それぞれ独自の強度をもつ複数の画素がマトリクス状に配置に配置されてなるものをいい、単色の画像であっても、カラーの画像であっても良いが、処理の正確性を期す上ではカラー画像であることがより好ましい。なお、限定されるわけではないが、後述の抽出部及び解析部による解析処理の容易性の観点から、非圧縮の画像データを用いて処理前眼底画像を表示することは好ましい一形態である。
【0040】
また本実施形態において、処理前眼底画像のうちの一部領域を抽出するステップ(S2)は、上記処理前眼底画像を表示するステップ(S1)により表示された処理前眼底画像からその一部領域の抽出を実現させるステップであり、この操作を実現できる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、表示装置33に表示された処理前眼底画像に対し、マウス322の動作を解して表示装置に表示される画面上のカーソルを動かし、画像のうち一部領域を抽出するようにするステップであることが好ましい。なお一部領域の抽出は、限定されるわけではないが、できる限り眼底画像の中心近傍の明るい一領域であって、血管の両側部を含みかつ短冊状となるよう選択することが好ましい。このような部分を選択することで、後述の解析処理がより精度よく行うことができるといった効果がある。またこの場合において、抽出される一部領域は四角形状であることが好ましい。四角形状とすることで、領域の選択を行いやすくするとともに、後述のスペクトル解析処理が行いやすくなるといった利点がある。また、この操作において、処理前眼底画像又はカーソルが回転移動するよう構成しておくことも一部領域選択の容易性の観点から好ましい。また、本実施形態において、血管領域の抽出は、できる限り血管領域の管壁部分を含み、血管以外の領域を含ませないように抽出しておくことが好ましい。このようにすることで、より正確に血管の状態を反映した処理を行うことができるようになる。
【0041】
なお、本実施形態においてこのステップ(S2)に先立ち、眼底画像の被測定者における各種データの入力を求め、当該各種データを記録しておくステップを設けておくことは好ましい。ここで「各種データ」とは、様々なデータが採用可能であるが例えば、氏名、年齢、性別、病名等を例示することができ、更に、血液生化学検査結果、脈波解析結果、超音波又はX線による血管の硬さに関するデータを含ませることも好ましい。
【0042】
また本実施形態において、上記抽出ステップ(S2)によって抽出された一部領域に対し、一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成するステップ(S3)は、上記抽出ステップ(S2)によって抽出された一部領域に対し、一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成するステップである。ここで「軸」とは、一部領域内における画素の位置を特定するために基準となる直線を意味し、二次元の眼底画像の場合、上記一部領域において直交する二つの軸を設けることが好ましい。特に、一部領域が長方形である場合は、この長方形の直交する二辺即ち短辺及び長辺を軸としておくことが好ましい。
【0043】
また本ステップが行なうスペクトル解析とは、一部領域内の画素の空間周波数を軸方向に沿って求め数値化する処理を意味する。上記のように二つの軸を設定している場合、それぞれの軸に対しスペクトル解析を行なうことが好ましく、その中でも二次元フーリエ解析、二次元ウェーブレット解析を用いることは一つのプロセスで解析処理を行うことができる点においてより好ましい。なおこの解析において、処理前眼底画像データ又はその一部領域を事前に色毎の眼底画像データに分け、各色の眼底画像データ各々に対しスペクトル解析を行わせてそれぞれを解析データとして用いるようにしても良い。この場合、限定されるわけではないが、一部領域を抽出した後、処理の前に複数の単色眼底画像(各単色眼底画像を以下「チャンネル」という。)に分けるステップを設けることは、ユーザーにとって見やすい画面表示を確保しつつ処理をより高速にすることができる点において好ましい。
【0044】
また本実施形態において、解析データと予め記録された基準データの比較処理を行うステップ(S4)は、解析を行うステップにより得られるデータと、予め記録された基準データとを比較して所定の処理を行うステップであり、具体的には、上記解析ステップ(S3)が上述の処理を介して得る各グラフデータの少なくともいずれかと、予め格納されたグラフデータとの比較処理を行うことを挙げることができる。なおこの場合における比較処理としては、限定されるわけではないが、例えばグラフ同士における相関係数を求めることがあげられる。
【0045】
本実施形態において、比較処理部の結果を表示するステップ(S5)は、比較処理部355の結果を表示する部であって、限定されるわけではないが、表示装置33にこの結果を表示し、更にユーザーの操作により印字装置34にこの結果を印字させる処理を挙げることができる。これにより、診断対象者は、自己の診断の結果を簡単に確認することができる。
【0046】
以上、本実施形態に係る眼底画像処理プログラムにより、より精度よく眼底画像処理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、眼底画像処理システム並びに眼底画像処理プログラムとして、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0048】
1…眼底画像処理システム、2…眼底カメラ、3…眼底画像処理装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼底カメラと、
前記眼底カメラに接続された眼底画像処理装置と、を有し、
前記眼底画像処理装置は、
前記眼底カメラが出力される眼底画像を処理前眼底画像として表示する処理前眼底画像表示部と、
前記処理前眼底画像のうちの一部領域を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された前記一部領域に対し、前記一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成する解析部と、
前記解析データの比較基準となる基準データを記録してなるデータベース部と、
前記解析データと基準データとの比較処理を行う比較処理部と、
前記比較処理部の結果を表示する結果表示部と、を有する眼底画像処理システム。
【請求項2】
前記一部領域は、四角形であり、
前記解析部は、前記四角形の直交する二辺のそれぞれを軸として、前記各軸に対するスペクトル解析を行う請求項1記載の眼底画像処理システム。
【請求項3】
前記解析部は、解析に先立ち、前記処理前眼底画像データを色毎の眼底画像データに分け、各色の眼底画像データ各々に対しスペクトル解析を行う請求項1記載の眼底画像処理システム。
【請求項4】
処理前眼底画像を表示する処理前眼底画像表示部と、
前記処理前眼底画像のうちの一部領域を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された前記一部領域に対し、前記一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成する解析部と、
前記解析データの比較基準となる基準データを記録してなるデータベース部と、
前記解析データと基準データとの比較処理を行う比較処理部と、
前記比較処理部の結果を表示する結果表示部と、を有する眼底画像処理装置。
【請求項5】
コンピュータに、
処理前眼底画像を表示するステップ、
前記処理前眼底画像のうちの一部領域を抽出するステップ、
前記抽出するステップによって抽出された前記一部領域に対し、前記一部領域の各軸に対するスペクトル解析を行ない解析データを作成するステップ、
前記解析データと予め記録された基準データの比較処理を行うステップ、
前記比較処理部の結果を表示するステップ、を実行させるための眼底画像処理プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−30788(P2011−30788A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180073(P2009−180073)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】