眼球下転量測定治具、治具貼付装置、および眼球下転量測定方法
【課題】累進屈折力レンズにおける眼球下転量の測定を、簡単、安価かつ精度高く実施できる眼球下転量測定治具、治具貼付装置、および眼球下転量測定方法を提供すること。
【解決手段】テープ状マスク3は、一方の面が着脱可能に貼り付けられる粘着部311を有するテープ基材31と、テープ基材31の一方の端部に設けられた折曲部32と、を有している。テープ基材31は、対向する2辺のうち一方の辺を第1辺33、他方の辺を第2辺34とする。測定は、テープ基材31の第1辺33を検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインと一致するように配置し、第2辺34が近用アイポイントラインと一致する幅を有するテープ基材31を選択することによって行われる。
【解決手段】テープ状マスク3は、一方の面が着脱可能に貼り付けられる粘着部311を有するテープ基材31と、テープ基材31の一方の端部に設けられた折曲部32と、を有している。テープ基材31は、対向する2辺のうち一方の辺を第1辺33、他方の辺を第2辺34とする。測定は、テープ基材31の第1辺33を検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインと一致するように配置し、第2辺34が近用アイポイントラインと一致する幅を有するテープ基材31を選択することによって行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズにおける眼球下転量測定治具、治具貼付装置、および眼球下転量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人が物を見る際、側方あるいは上下方を見るために頭を回転させたり目を回転させたりする(視覚動作という)。このような頭の回転角度や目の回転角度は個人に特有のものであり、このような個人の視覚動作に対応した眼鏡レンズの設計方法や調整方法が種々提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
累進屈折力レンズは、遠方視に対応する屈折力(度数)を持つ遠用部領域と近方視に対応する屈折力を持つ近用部領域とを備えた非球面レンズである。遠用部領域はレンズの上方位置に設定され、近用部領域はレンズの下方位置に設定され、これら両領域の間で屈折力が累進的に変化する累進帯を備えている。これらの領域には境目がなく1枚のレンズで遠くのものから近くのものまで見ることができる。遠用部領域、近用部領域および累進帯は、個々の使用目的(遠近重視、中近重視、近々重視、フルタイム使用、パートタイム使用、静的使用、動的使用など)に合わせて調整を行う必要がある(光学的フィッティング)。光学的フィッティングの中でも、累進屈折力レンズにおいては眼球下転量が重要である。眼球下転量とは、眼鏡装着者が水平視した状態でのレンズ上の視線位置を遠用アイポイントとし、近用視した状態でのレンズ上の視線位置を近用アイポイントとしたとき、遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である。
【0004】
眼鏡装着者に対して眼鏡調整を行う場合、単焦点レンズの場合は、眼鏡情報(検眼情報、眼鏡フレーム情報、眼鏡レンズ情報)を各個体(顔の形や大きさ、首の太さ、鼻、耳、眼の相対位置や形等)に適合させる工学的フィッティングを実施する。一方、累進屈折力レンズの場合は、工学的フィッティングのほかにも、上述の光学的フィッティングを実施する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−523244号公報
【特許文献2】特表2008−521027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2では、頭および眼球運動測定装置を用いて定量的な値を求め、これらの値に基づいて個々に最適なレンズを提供することができるものの、累進屈折力レンズにおける近用アイポイントの決定には、頭および眼球運動だけでなく姿勢も大きく関与するため、精度の高い近用アイポイントを決定することが困難な場合がある。
また、特許文献1および特許文献2のような眼球運動の測定は、お客様に対して時間的な検査負荷が大きすぎるといった問題や、検査機器が高価すぎるという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、累進屈折力レンズにおける眼球下転量の測定を、簡単、安価かつ精度高く実施できる眼球下転量測定治具、治具貼付装置、および眼球下転量測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の眼球下転量測定治具は、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する眼球下転量測定治具であって、前記眼鏡フレームに装着された検査用眼鏡レンズ表面に形成され、前記遠用アイポイントを通過して水平方向に延びる基準線が設けられたマスクを備えたことを特徴とする。
【0009】
眼球下転量の測定は、販売店等で消費者が実際に購入する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズを装着し、この検査用眼鏡レンズに対して本発明の眼球下転量測定治具を用いて行われる。検査用眼鏡レンズとしては、例えば、度の入っていないアクリル樹脂が用いられる。
この発明では、眼球下転量測定治具は、個々の眼球下転量を測定するために検査用眼鏡レンズに貼り付けられるマスクを備えている。マスクには基準線が設けられているので、この基準線が眼鏡レンズの遠用アイポイントと一致するようにマスクを配置して測定を行う。ここで、水平方向とは、このマスクを貼り付けた眼鏡レンズを装着した状態における水平方向である。
これによれば、遠用アイポイントが固定されるので、装着者が近方視したときの視線の位置を確定させることにより眼球下転量を測定することができる。
このように、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズが装着され、この検査用眼鏡レンズにマスクを用いて測定するので、装着者の視覚動作(眼や頭の動き)だけでなく、装着者が物を見るときの姿勢や癖にも応じた精度の高い測定を行うことができる。
また、測定は、装着者の検査用眼鏡レンズにおける視線が通る位置を確定させるだけでよいので、装着者に負担をかけずに簡単に行うことができるとともに、高価な設備が必要ないので、安価に実施することができる。
【0010】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記マスクは、前記装着者に予測される眼球下転量と同じ幅と、互いに対向する2辺とを有し、前記基準線は、前記マスクの対向する2辺のうちいずれか一方であることが好ましい。
【0011】
この発明では、マスクは互いに対向する2辺を有し、この2辺のうちのいずれか一方の辺を遠用アイポイントを通過する位置に合わせる。これにより、いずれか他方の辺が近用アイポイントと一致するか否かを判断することで、該装着者に対して最適なマスクを選択する。なお、いずれか他方の辺と近用アイポイントとの一致は、装着者が近方視(下方視)したときの視線が検査用眼鏡レンズにおいてマスクに隠れない状態となっていればよいが、いずれか他方の辺と近用アイポイントとが離れすぎていてはいけない。このようにして、該装着者に対して最適な幅のマスクを選択することにより、このマスクの幅を眼球下転量とする測定を行うことができる。
【0012】
これによれば、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズが装着され、この検査用眼鏡レンズにマスクを用いて測定するので、装着者の視覚動作(眼や頭の動き)だけでなく、装着者が物を見るときの姿勢や癖にも応じた精度の高い測定を行うことができる。
また、測定は、眼鏡レンズにおける視線が通るか否かによる判断を行うだけでよいので、装着者に負担をかけずに簡単に行うことができるとともに、高価な設備が必要ないので、安価に実施することができる。
【0013】
なお、測定された眼球下転量に基づいて眼鏡レンズが設計され、設計後の眼鏡レンズに対して本発明の眼球下転量測定治具を適用することができる。これによれば、レンズ設計が、該装着者に適しているかどうかの検査(確認)を行うために利用することもできる。
【0014】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記マスクは、互いに対向する2辺を有し、前記基準線は、前記対向する2辺から離れた位置に設けられたことが好ましい。
【0015】
この発明では、マスクは、対向する2辺を有する部材であり、基準線は、この2辺から離れた位置に形成されている。すなわち、基準線は、マスクを形成する2辺ではなく、マスク上に形成された直線であることを意味する。
これによれば、基準線と検査用眼鏡レンズの遠用アイポイントとを一致させてマスクを配置し、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズが装着され、この検査用眼鏡レンズにマスクを用いて測定するので、装着者の視覚動作(眼や頭の動き)だけでなく、装着者が物を見るときの姿勢や癖にも応じた精度の高い測定を行うことができる。
【0016】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記マスクは、前記対向する2辺のうちいずれか他方が、前記近用アイポイント側に向けられて配置され、テープ基材と、このテープ基材の検査用眼鏡レンズ側に設けられ前記検査用眼鏡レンズに着脱自在に貼り付ける粘着部と、を有するテープ状マスクであることが好ましい。
【0017】
この発明では、粘着部により、テープ状マスクが検査用眼鏡レンズに着脱自在となるため、簡単に貼り付けたり剥がしたりすることができる。
したがって、販売店等の店員が特別な技術を要することなく、簡単に測定および検査を行うことができる。また、テープ状マスクは安価に利用することができるので、コスト低減を図ることができる。
【0018】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記マスクは、前記検査用眼鏡レンズの表面の前記近用アイポイントがあると予測される領域に前記基準線と平行に形成される複数の線を有し、テープ基材と、このテープ基材の検査用眼鏡レンズ側に設けられ前記検査用眼鏡レンズに着脱自在に貼り付ける粘着部と、を有するテープ状マスクであることが好ましい。
【0019】
この発明では、近用アイポイントがあると予測される領域に複数の線を形成している。したがって、測定時には、装着者は実際に近方視したときの視線(近用アイポイント)と一致するかまたは最も近い線を判断すればよい。このようにして選択された線と基準線との距離が眼球下転量となる。
これによれば、装着者は、近方視したときの視線(近用アイポイント)がマスクに形成された複数の線のいずれかに一致するかを判断するだけでよいので、装着者に負担をかけずに簡単に測定を行うことができる。
また、近用アイポイントとなる候補が複数あるので、近用アイポイントの位置をより正確に特定することができ、精度の高い測定を行うことができる。
【0020】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記複数の線は、互いに異なる色の線であることが好ましい。
【0021】
この発明によれば、複数の線が異なる色で形成されるので、装着者には色を認識しやすく、近用アイポイントがどの線と一致するかまたは最も近いかの判断を容易に行うことができる。なお、複数の線は不透明な異なる色で一定の間隔で形成されることが好ましい。
【0022】
本発明の治具貼付装置は、前述の眼球下転量測定治具を眼鏡レンズに貼り付ける治具貼付装置であって、前記検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに取り付けられた眼鏡を保持する眼鏡保持部材と、この眼鏡保持部材で保持された眼鏡に前記テープ状マスクを供給するテープ供給部材と、を備え、前記眼鏡保持部材は、前記検査用眼鏡レンズに対向するベースと、このベースに検査用眼鏡レンズのアイポイントを通過して水平方向に延びて形成される水平注視野に直交する方向に移動自在に取り付けられた前記眼鏡フレームを支持するフレーム支持部材と、を有し、前記テープ供給部材は、前記テープ状マスクをカットするカッター部材と、このカッター部材でカットされたテープ状マスクを前記眼鏡保持部材で保持された眼鏡まで搬送し、前記テープ状マスクをその一方の辺が前記水平注視野に沿うように貼り付けるレンズ貼付部材と、を有することを特徴とする。
【0023】
この発明では、検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに取り付けられた眼鏡を眼鏡保持部材で保持し、テープ供給部材によりテープ状マスクを形成し、このテープ状マスクを眼鏡保持部材で保持された眼鏡の検査用眼鏡レンズに貼り付ける。
眼鏡保持部材にはフレーム支持部材が設けられ、フレーム支持部材を移動させることにより、保持された眼鏡の位置を調整することができる。したがって、検査用眼鏡レンズの遠用アイポイントとテープ状マスクの一方の辺との位置合わせを簡単に行うことができる。
【0024】
また、テープ供給部材は、カッター部材でカットされたテープ状マスクを搬送して検査用眼鏡レンズに貼り付けるレンズ貼付部材を有するので、例えば、市販のテープをセットするだけで、検査用眼鏡レンズの最適な位置にテープ状マスクを貼り付けることができる。なお、検査用眼鏡レンズのアイポイントを通過して水平方向に延びて形成される水平注視野とは、遠用アイポイントを通過して眼鏡の左右方向に延びるライン上において、装着者が左右方向に見える範囲のことを言う。
この発明によれば、テープ状マスクからなる測定治具を簡単に検査用眼鏡レンズに貼り付けることができる。したがって、販売店等で簡単に測定および検査を行うことができる。
【0025】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記テープ状マスクの端部は前記粘着部同士が重合するように折り曲げて形成されていることが好ましい。
【0026】
この発明では、テープ状マスクの端部が折り曲げられるため、粘着部が露出しない部分を形成できる。したがって、この粘着部が露出しない部分を把持することができ、テープ状マスクを検査用眼鏡レンズに貼り付けたり剥がしたりする動作を容易に行うことができる。
【0027】
本発明の治具貼付装置において、前記カッター部材は、前記テープ状マスクの端部を折り曲げる折曲形成部を有することが好ましい。
【0028】
この発明によれば、折曲形成部により、テープ状マスクの端部に粘着部が露出しない折曲部を形成することができ、これにより、その後の搬送や貼り付けの動作を簡易に行うことができる。
特に、テープのカットと同時に折曲形成部により折曲部を形成すれば、テープ状マスクの形成工程を短縮することができる。
【0029】
本発明の治具貼付装置は、一対の前記テープ状マスクを備えた測定テープおよび前記眼鏡を保持する眼鏡保持台を備え、前記眼鏡保持台の上面には、前記検査用眼鏡レンズに対応する位置に設けられた低反発性素材からなるレンズ載置部と、前記検査用眼鏡レンズの水平方向と直交する方向に移動自在に取り付けられ、前記眼鏡のフレームを支持するフレーム支持部材と、を有することを特徴とする。
【0030】
この発明では、眼鏡保持台の上面に低反発性素材からなるレンズ載置部が設けられている。レンズ載置部は、2つの検査用眼鏡レンズに対応した一対の低反発性素材からなる。
したがって、レンズ載置部の上に測定テープおよび眼鏡を載置し、該眼鏡をレンズ載置部側に押し付けることによって、測定テープに含まれるテープ状マスクを検査用眼鏡レンズに貼り付けることができる。
これによれば、一対のテープ状マスクからなる測定治具を簡単に検査用眼鏡レンズに貼り付けることができるため、販売店等で簡単に測定を行うことができる。
【0031】
本発明の治具貼付装置において、前記測定テープは、基材フィルムとカバーフィルムとを備え、前記基材フィルムと前記カバーフィルムとの間に一対の前記テープ状マスクを有することが好ましい。
【0032】
この発明では、測定テープは、基材フィルムとカバーフィルムとの間にテープ状マスクを挟持している。測定は、一対の検査用眼鏡レンズそれぞれで行う必要があるため、一対のテープ状マスクが必要である。したがって、一対のテープ状マスクは、基材フィルムとカバーフィルムとの間で位置がそれぞれ固定されるので、テープ状マスクを検査用眼鏡レンズに貼り付ける際、テープ状マスクの位置決めをそれぞれで行う必要がない。すなわち、テープ状マスクを簡単に眼鏡レンズに貼り付けることができる。
また、テープ状マスクはカバーフィルムで覆われているため、テープ状マスクの表面に塗布された接着剤が露出しないので、取り扱いが容易であり、流通性を向上させることができる。
【0033】
本発明の眼球下転量測定方法は、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する方法であって、前記眼鏡フレームに装着された検査用眼鏡レンズ表面に対して前記装着者に予測される眼球下転量と同じ幅を有するテープ状マスクを用い、このテープ状マスクの互いに対向する2辺のうちいずれか一方の辺を前記検査用眼鏡レンズにおける遠用アイポイントを通過するように位置決めし、いずれか他方の辺を前記検査用眼鏡レンズにおける近用アイポイント側に向けて前記検査用眼鏡レンズに貼り付けるマスク貼付工程と、このテープ状マスクが貼り付けられた検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに設けられた眼鏡を前記装着者が装着して近用アイポイントが前記テープ状マスクの他方の辺と一致しているか否かを判断する判断工程と、を備え、この判断工程で近用アイポイントが前記テープ状マスクの他方の辺と一致していないと判断した場合には前記テープ状マスクを検査用眼鏡レンズから剥がし、幅寸法の異なるテープ状マスクを貼り付けて再度判断工程を実施することを特徴とする。
【0034】
この発明では、装着者に対して予測される眼球下転量と同じ幅を有するテープ状マスクを検査用眼鏡レンズに貼り付けるマスク貼付工程を行う。この工程では、テープ状マスクの一方の辺を遠用アイポイントを通過して水平方向に延びて形成される水平注視野に一致させ、他方の辺を近用アイポイント側に向けた状態で、テープ状マスクを検査用眼鏡レンズに貼り付ける。
次に、テープ状マスクを貼り付けた眼鏡を装着者が実際に装着し、近方視したときの視線(近用アイポイント)がテープ状マスクの他方の辺と一致するか否かを判断する判断工程を行う。判断は、装着者が行ってもよいし、測定実施者が行ってもよい。なお、近用アイポイントとテープ状マスクの他方の辺との一致は、検査用眼鏡レンズ上で視線が通るか否かにより行う。
【0035】
判断工程において、近方視したときの視線(近用アイポイント)がテープ状マスクに隠れて通らないと判断した場合は、テープ状マスクを検査用眼鏡レンズから剥がし、より幅の小さいテープ状マスクを前述と同様にして貼り付けて、再度判断工程を実施する。
一方、近用アイポイントと、テープ状マスクの他方の辺とが一致したと判断された場合は、該テープ状マスクの幅が眼球下転量となる。
【0036】
これによれば、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズが装着され、この検査用眼鏡レンズにマスクを用いて測定するので、装着者の視覚動作(眼や頭の動き)だけでなく、装着者が物を見るときの姿勢や癖にも応じた精度の高い測定を行うことができる。
また、測定は、検査用眼鏡レンズにおける視線が通るか否かによる判断を行うだけでよいので、装着者に負担をかけずに簡単に行うことができるとともに、高価な設備が必要ないので、安価に実施することができる。
【0037】
さらに、測定治具としてテープ状マスクを用いるため、簡単に検査用眼鏡レンズに貼り付けたり剥がしたりすることができる。
したがって、販売店等の店員が特別な技術を要することなく、簡単に測定および検査を行うことができる。また、テープ状マスクは安価に利用することができるので、コスト低減を図ることができる。
【0038】
本発明の眼球下転量測定方法は、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する方法であって、請求項10に記載の治具貼付装置を用いて、前記テープ状マスクに設けられた基準線と前記遠用アイポイントとが一致するように前記眼鏡フレームを位置決めし、前記検査用眼鏡レンズを前記測定テープ側に押し付けることで前記検査用眼鏡レンズに前記テープ状マスクを貼り付けるマスク貼付工程と、このテープ状マスクが貼り付けられた検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに設けられた眼鏡を前記装着者が装着して近用アイポイントが前記テープ状マスクに形成された複数の線のうちいずれの線と一致しているかを判断する測定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0039】
この発明では、テープ状マスクに設けられた基準線と検査用眼鏡レンズの遠用アイポイントとが一致するように眼鏡フレームを位置決めし、検査用眼鏡レンズを測定テープ側に押し付けることによって、検査用眼鏡レンズにテープ状マスクを貼り付ける。
次に、テープ状マスクを貼り付けた眼鏡を装着者が実際に装着し、近方視したときの視線(近用アイポイント)がテープ状マスクに形成された複数の線のうちいずれの線と一致するかまたは最も近いかの判断を行う。
【0040】
これによれば、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズが装着され、この検査用眼鏡レンズにテープ状マスクを貼り付けて測定するので、装着者の視覚動作(目や頭の動き)だけでなく、装着者が物を見るときの姿勢や癖にも応じた精度の高い測定を行うことができる。
また、測定は、視線がいずれの線と一致するかまたは最も近いかの判断を行うだけでよいので、装着者に負担をかけずに簡単に行うことができるとともに、高価な設備が必要ないので安価に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる眼球下転量測定治具を貼り付ける累進屈折力レンズを示す概略図。
【図2】前記第1実施形態にかかる治具貼付装置の構成の一部を示す概略平面図。
【図3】前記第1実施形態における治具貼付装置の構成を示す概略正面図。
【図4】前記第1実施形態においてテープ状マスクを切断する工程を示す説明図。
【図5】前記第1実施形態において眼球下転量測定治具を貼り付ける工程を示す説明図。
【図6】前記第1実施形態においてテープ状マスクを貼り付けた状態で眼球下転量を測定する様子を示す説明図。
【図7】前記第1実施形態においてテープ状マスクを貼り付けた状態で眼球下転量を測定する様子を示す説明図。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる眼球下転量測定治具を検査用眼鏡レンズに貼付した状態を示す概略平面図。
【図9】前記第2実施形態における眼球下転量測定治具を含む測定テープの構成を示す概略平面図。
【図10】図9のX−X断面図。
【図11】前記第2実施形態にかかる治具貼付装置の構成を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のXI−XI断面図。
【図12】前記第2実施形態において眼球下転量測定治具を検査用眼鏡レンズに貼り付ける工程を示す説明図。
【図13】前記第2実施形態において眼球下転量測定治具が検査用眼鏡レンズに貼り付けられた状態を示す断面図。
【図14】前記第2実施形態において装着者に実際に見えるラインを示す説明図。
【図15】前記第2実施形態において装着者に実際に見えるラインを示す説明図。
【図16】前記第2実施形態における治具貼付装置の変形例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のXVI−XVI断面図。
【図17】前記第2実施形態における眼球下転量測定治具の変形例を示す概略平面図。
【図18】前記第2実施形態における眼球下転量測定治具を含む測定テープの変形例を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
眼球下転量の測定は、販売店等で消費者が実際に購入する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズを装着し、この検査用眼鏡レンズに対して本発明の眼球下転量測定治具を用いて行われる。検査用眼鏡レンズとしては、例えば、度の入っていないアクリル樹脂等が用いられる。そして、測定された眼球下転量に基づいて眼鏡レンズを設計する。この眼鏡レンズは累進屈折力レンズであり、この累進屈折力レンズが設計どおりであるか否かの確認を行う場合は、設計後の眼鏡レンズに対して本発明の眼球下転量測定治具を適用することができる。
また、本実施形態では、眼鏡を装着した場合の鉛直方向を上下方向、眼鏡を装着した場合の水平方向を左右方向として説明する。
【0043】
(1.眼鏡レンズ)
図1に示すように、眼鏡レンズ10となる累進屈折力レンズは、上方に位置する遠用部領域11と、下方に位置する近用部領域12と、これら遠用部領域11と近用部領域12との間に位置する累進帯13と、累進帯13の側方に隣接した側方領域14と、を有している。
【0044】
遠用部領域11は、遠方視するのに適した相対的にプラス度数の低い平均度数を備えている。特に、装着者が正面視をした場合に瞳中心を通る水平線(つまり視線)が通過する位置を遠用アイポイントFPとし、遠用アイポイントFPを通過して左右方向に延びる線分であって、遠用部領域11における線分を遠用アイポイントラインFLとする。
【0045】
近用部領域12は、近方視(例えば、読書)するのに適した相対的にプラス度数の高い平均度数を備えている。特に、装着者が近方視(下方視)した場合の視線が通過する位置を近用アイポイントNPとし、近用アイポイントNPを通過して左右方向に延びる線分であって、近用部領域12における線分を近用アイポイントラインNLとする。
本実施形態では、眼球下転量として、遠用アイポイントラインFLと近用アイポイントラインNL間の上下方向の距離(長さ)Lを測定するものである。
【0046】
累進帯13は、遠用部領域11と近用部領域12との間で相対的なプラス加入度数が累進的に変化する領域である。
側方領域14は、非点収差領域と呼ばれるエリアである。側方領域14を通して見ると物が二重に見えたりするため、通常、装着者は側方領域14を通して物を見ない。
【0047】
眼鏡レンズ10は、このような累進屈折力レンズを成形加工することにより得られ、得られた眼鏡レンズ10は眼鏡フレーム20に装着されて眼鏡100となる(図2および図3参照)。
眼鏡フレーム20は、眼鏡レンズ10を装着して枠状に取り囲むフレーム枠21と、左右のフレーム枠21を連結するブリッジ22と、フレーム枠21からヒンジを介して回動可能に取り付けられたテンプル23と、を備えている。
なお、眼球下転量の測定は、アクリル樹脂製の検査用眼鏡レンズ12が眼鏡フレーム20に装着された眼鏡100を用いて行われる。以降は、眼鏡フレーム20に検査用眼鏡レンズ12が装着されているものとして説明する。
【0048】
(2.眼球下転量測定治具)
次に、眼鏡レンズ10における眼球下転量の長さを測定するための測定治具について説明する。ここで、眼球下転量とは、遠用アイポイントFPから近用アイポイントNPまでの距離であり、眼鏡レンズ10における遠用アイポイントラインFLと近用アイポイントラインNL間の上下方向の距離(長さ)Lである。
眼球下転量の長さLを測定するための測定治具として、図2に示すテープ状マスク3を用いる。測定治具は、装着者が実際に購入する眼鏡フレーム20に枠入れされたアクリル樹脂製の検査用眼鏡レンズ12に貼り付けられる。テープ状マスク3としては、例えば市販のメンディングテープ(住友スリーエム株式会社製)を用いることができる。
【0049】
テープ状マスク3は、一方の面が着脱可能に貼り付けられる粘着部311を有するテープ基材31と、テープ基材31の一方の端部に設けられた折曲部32と、を有している。
テープ基材31は、検査用眼鏡レンズ12に貼り付けた状態における上下方向の幅が例えば、10mm、10.5mm、11mm、11.5mm、12mm、12.5mm、13mm、13.5mm、14mm、14.5mm、15mmのものがある。テープ基材31は、対向する2辺により上記の幅を形成しており、対向する2辺のうち一方の辺を第1辺33、他方の辺を第2辺34とする。
なお、上記幅を有する各種テープ基材31のうち、装着者に適切な眼球下転量の長さと一致する幅のテープ基材31で測定した場合は、第1辺33は検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインFLと一致し、第2辺34は検査用眼鏡レンズ12の近用アイポイントラインNLと一致する。
【0050】
テープ基材31は、検査用眼鏡レンズ12に貼り付けた状態における左右方向の長さは特に限定されないが、検査用眼鏡レンズ12の左右方向の幅より小さければよい。
測定は、テープ基材31の第1辺33を検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインFLと一致するように配置し、第2辺34が近用アイポイントラインNLと一致する幅を有するテープ基材31を選択することによって行われる。このテープ基材31の幅が、眼球下転量の長さLとなる。
【0051】
折曲部32は、粘着部311同士を重合させることによって形成された非接着部分である。テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に貼り付けたり剥がしたりする際に後述の治具貼付装置400の把持部641により把持される。
【0052】
(3.治具貼付装置の構成)
次に、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に貼り付ける治具貼付装置400について説明する。
図3に示すように、治具貼付装置400は、眼鏡100を保持する眼鏡保持部材5と、眼鏡保持部材5に保持された眼鏡100にテープ状マスク3を供給するテープ供給部材6と、眼鏡保持部材5とテープ供給部材6とを連結する図示しない連結部と、を備えている。
【0053】
眼鏡保持部材5は、眼鏡100を載置したときに検査用眼鏡レンズ12と対向する載置面511を上面として有する直方体状に形成されたベース51と、このベース51の載置面511に沿って一方向に移動自在に設けられ、眼鏡100を適切な位置で支持するフレーム支持部材52と、を備えている。
【0054】
ベース51は、載置面511と直交する、対向する一組の第1側面部512、および対向する別の一組の第2側面部513を有している。眼鏡100を保持するには、検査用眼鏡レンズ12の外面が鉛直上向きとなる状態に、検査用眼鏡レンズ12が装着されたフレーム枠21が載置面511に載置されるとともに、左右のテンプル23はそれぞれ対向する第1側面部512に沿う状態とされる。載置面511は、平面状に形成されており、載置面511に載置された眼鏡100は載置面511に沿って眼鏡100の上下方向に移動可能とされる。また、載置面511には、検査用眼鏡レンズ12にマークされた遠用アイポイントFPとの位置合わせを行うための位置合わせラインPLが形成されている。
また、第1側面部512の上部、すなわち載置面511の縁部近傍には、載置面511と平行に、凹状の切欠部514が直線状に形成されている。
【0055】
フレーム支持部材52は、第2側面部513の左右方向の長さ以上の長さを有する長尺状の部材である。フレーム支持部材52は、その両端がU字状(フック状)に折り曲げられた係合部521を形成している。両方の係合部521の先端は、ベース51の切欠部514に係合し、検査用眼鏡レンズ12の上下方向に移動自在とされている。フレーム支持部材52は、フレーム枠21の下辺211に接した状態で移動することにより、眼鏡100の位置を調整する。フレーム支持部材52は図示しない制御手段により制御され、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントFPと載置面511上の位置合わせラインPLとの位置合わせが自動的に行われる。なお、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントFPと載置面511上の位置合わせラインPLとの位置合わせは、位置合わせラインPL上に遠用アイポイントFPが来たことを検知可能な検知手段を設けることにより行うことができる。
【0056】
テープ供給部材6は、送出テープ611を送り出す送出部61と、送出テープ611をカット(切断)し、カットされた送出テープ611の端部を折り曲げて折曲部32を形成するカッター部62と、カッター部62により形成されたテープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に圧着するための圧着部材631をテープ状マスク3に接着させる接着処理部63と、圧着部材631が接着されたテープ状マスク3を眼鏡100まで搬送して検査用眼鏡レンズ12に貼り付けるレンズ貼付部材64と、を備えている。
【0057】
送出部61は、市販のメンディングテープであり、送出テープ611をカッター部62へ送り出す。
カッター部62は、送出テープ611を切断する切断部621と、切断部621を受ける切断受部622と、切断された送出テープ611の端部に折曲部32を形成するための折曲支持部623、折曲生成部624、折曲仕上部625と、を有している。なお、折曲支持部623、折曲生成部624、および折曲仕上部625を折曲形成部とする。
【0058】
切断部621は、基部626に一つの鋭角が上向きとされた断面略三角形状に突出して形成されており、該鋭角が切断刃621Aを形成している。切断部621は送出テープ611の端部から所定の距離の位置に刃が位置するように設けられ、送出テープ611の進行方向に対して垂直方向(鉛直方向)に移動自在とされる。所定の距離とは、テープ状マスク3の長さ(例えば、50mm)に相当する距離である。
切断受部622は、切断部621の切断刃621Aを受ける接触面622Aを有し送出テープ611を挟んで切断部621と対向する位置に固定されている。
切断部621が鉛直上方向(切断受部622に近づく方向)に移動し、切断刃621Aが切断受部622の接触面622Aに接触することにより、送出テープ611は切断される。このように切断されると、テープ基材31と折曲部32とからなるテープ状マスク3が完成する。
【0059】
折曲支持部623は、基部626に鉛直上向きに突出した断面略台形状に形成され、切断部621よりも送出部61側に、切断部621と一体的に設けられている。折曲支持部623の切断部621に対向する側の壁面623Aは送出テープ611の進行方向に対して90°以上の傾斜をもって形成され、壁面623Aと折曲支持部623の上面623Bとの角度は0°より大きく90°以下であることが好ましい。折曲支持部623と切断部621との距離は、テープ状マスク3の折曲部32の半分の長さに相当する。例えば、折曲部32の長さが10mmである場合は、折曲支持部623と切断部621との距離は5mmである。折曲支持部623は、切断部621および基部626とともに送出テープ611の進行方向に対して直交する方向(鉛直方向)に動作する。
【0060】
折曲生成部624は、平板状の部材であり、送出テープ611を挟んで折曲支持部623の略鉛直上部に設けられる。折曲生成部624は、送出テープ611の進行方向に対して垂直方向(鉛直方向)に移動自在とされており、折曲生成部624と折曲支持部623が互いに近づく方向に移動したとき、折曲生成部624の一方の面と折曲支持部623の壁面623Aとが当接する。切断部621で送出テープ611が切断されると、折曲生成部624は鉛直下方向(折曲支持部623に近づく方向)に移動し、送出テープ611の端部を挟んで壁面623Aに当接する。これにより、送出テープ611の端部は壁面623Aと上面623Bに沿う状態となり、折り目が形成される。
【0061】
折曲仕上部625は、平板状の部材であり、折曲支持部623に対して送出テープ611の進行方向側に、一方の面が送出テープ611と平行となる状態に配置されている。折曲仕上部625は、送出テープ611と平行に移動自在とされている。折曲支持部623と折曲生成部624により送出テープ611の端部に折り目が形成され、折曲支持部623と折曲生成部624とが離れる方向に移動した後、折曲仕上部625は、折り目の付けられた送出テープ611の進行方向とは反対方向に移動し、折り目端部を押して送出テープ611の粘着部同士を重合させる(貼り合わせる)。これにより、折曲部32が形成される。
【0062】
接着処理部63は、圧着部材631をテープ状マスク3の表面に接着させる。圧着部材631としては、例えば、スポンジが挙げられる。また、接着剤としては、力を加えない状態では圧着部材631とテープ状マスク3とが剥離せず、力を加えると簡単に剥離する程度の接着力を有するものが好ましい。なお、空気等の吸引または液体の表面張力を利用して、圧着部材631をテープ状マスク3の表面に着けてもよい。
【0063】
レンズ貼付部材64は、テープ状マスク3の折曲部32を把持する把持部641と、把持部641の動作を制御する制御部642と、を有している。
把持部641は、折曲部32を把持し、折曲部32を把持した状態で眼鏡100の上部に移動する。そして、左右の検査用眼鏡レンズ12のうちいずれか一方の検査用眼鏡レンズ12の表面に下降し、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインFLと、テープ状マスク3の第1辺33とが一致するように、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に載置する。なお、把持部641の移動方向は、テープ供給部材6から眼鏡保持部材5までの眼鏡100における左右方向と、検査用眼鏡レンズ12に下降するための鉛直方向である。
制御部642は、把持部641をテープ供給部材6から眼鏡保持部材5に保持された検査用眼鏡レンズ12にまで移動させ、把持部641が上述の所定の動作を行うように制御する。
【0064】
図示しない連結部は、眼鏡保持部材5とテープ供給部材6とを連結し、眼鏡100における上下方向の位置を固定する。なお、眼鏡保持部材5とテープ供給部材6とは、眼鏡100における左右方向への移動は可能とされており、テープ状マスク3を貼り付ける際に、左右の検査用眼鏡レンズ12の位置を調整することができる。
したがって、テープ状マスク3の第1辺33と、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインFLとの位置合わせは、フレーム支持部材52を移動させることで眼鏡保持部材5に保持された眼鏡100の位置を調整する。
【0065】
(4.眼球下転量測定方法)
次に、治具貼付装置400を用いてテープ状マスク3を形成するマスク形成工程と、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に貼り付けるマスク貼付工程と、貼り付けられたテープ状マスク3により、眼球下転量を測定する測定工程について説明する。
まず、図3に示すように、眼鏡100の眼鏡フレーム20を開き、検査用眼鏡レンズ12とベース51の載置面511とが対向するように、すなわちテンプル23が第1側面部512に沿う状態となるように、眼鏡100をベース51に載置する。検査用眼鏡レンズ12には、予め遠用アイポイントFPが確定され、その位置にマークが付けられている。したがって、眼鏡100をベース51に載置すると、図示しない制御手段によりフレーム支持部材52が移動し、遠用アイポイントFPと位置合わせラインPLとの位置合わせが自動的に行われる。このように遠用アイポイントFPに位置合わせされた位置合わせラインPLは、検査用眼鏡レンズ12における遠用アイポイントラインFLとなる。
【0066】
(4−1.マスク形成工程)
次に、テープ状マスク3を形成する。装着者に対して予測される眼球下転量の長さLと同じ幅を有するメンディングテープをテープ供給部材6の送出部61に取り付ける。その後、送出部61から送出テープ611を送り出し、最初の折曲部32を形成するために、適当な位置で切断処理を行う。なお、ここで行う切断処理は、送出テープ611を最初に使用する際に、送出テープ611の端部に折曲部32を形成するために行うものであり、これ以降の工程では、送出テープ611の端部から所定距離ごとに同様の切断処理が行われる。
【0067】
ここで、切断処理について図4を用いて詳しく説明する。
図4(A)は、切断部621が鉛直上方向に移動して切断受部622の接触面622Aに接触し、切断刃621Aにより送出テープ611が切断された状態である。このように送出テープ611が切断された直後は、図4(B)に示すように、折曲生成部624が鉛直下方向に移動し、送出テープ611の端部は折曲支持部623の壁面623Aと上面623Bとに沿って折り目が形成される。次に、図4(C)に示すように、折曲支持部623および折曲生成部624を互いに離れる方向に移動させた後、折曲仕上部625を送出テープ611の進行方向とは反対の方向に移動させ、送出テープ611の折り目により形成された折曲端部を押し込む。これにより、図4(D)に示すような折曲部32が形成される。
【0068】
切断処理により折曲部32が形成された送出テープ611は、把持部641で折曲部32を把持できる位置まで送り出される。そして、図5(A)に示すように、把持部641は折曲部32を把持し、さらに接着処理部63により接着剤が塗布された圧着部材631を送出テープ611の表面に載置する。これにより、圧着部材631は、送出テープ611に接着される。そして、再度切断処理が行われると、テープ状マスク3が形成される(図5(B)参照)。
【0069】
(4−2.マスク貼付工程)
次に、図5(B)に示すように、把持部641により、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12の上部まで移動させる。
さらに、把持部641を制御して鉛直下方向(検査用眼鏡レンズ12に近づく方向)に移動させ、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインFLとテープ状マスク3の第1辺33とが一致するように、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12上に載置する(図5(C)参照)。
テープ状マスク3は、圧着部材631により検査用眼鏡レンズ12の表面に圧着される。テープ状マスク3が検査用眼鏡レンズ12に貼り付けられると、圧着部材631を剥がす。
このようにして、一方の検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク3を貼り付けた後、ベース51の位置を調整し、同様にして他方の検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク3を貼り付ける。
【0070】
(4−3.測定工程(判断工程))
装着者は、検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク3が貼り付けられた眼鏡100を装着し、遠方視および近方視した際の視線の位置を確認する。
具体的には、図6(A)に示すように、眼鏡100を装着した状態で、正面視をした場合の瞳中心(視線)が、テープ状マスク3の第1辺33を通過するか否かを確認する(遠用アイポイントの確認)。なお、本実施形態では、遠用アイポイントは予め正面視をした場合の瞳中心の位置を確定しているため、第1辺33上を視線が通過するのは当然である。なお、視線が第1辺33上を通過しない場合は、再度遠用アイポイントラインFLを確定させた後に、再度測定を実施する。
【0071】
次に、図6(B)に示すように、眼鏡100を装着した状態で、読書をしている(近方視)場合の瞳中心(視線)が、テープ状マスク3の第2辺34上を通過するか否かを判断する(近用アイポイントの位置を判断する)。図7には、テープ状マスク3の幅が大きい場合の例が示されている(図7(A)参照)。図7(B)のように近方視したときの視線はテープ状マスク3に隠れて確認できない。すなわち、近用アイポイントNPがテープ状マスク3の第2辺34に一致しないと判断する。このような場合はテープ状マスク3の幅が大きいので、より幅の小さいテープ状マスク3で再度測定を行う。また、視線がテープ状マスク3の第2辺34と離れた位置に確認される場合はテープ状マスク3の幅が小さいので、より幅の大きいテープ状マスク3で再度測定を行う。このようにして、近用アイポイントNPがテープ状マスク3の第2辺34と一致するか否かの判断を行い、最適な幅のテープ状マスク3を選択する。最終的に選択されたテープ状マスク3の幅が、該装着者に対応する眼球下転量の長さLである。
【0072】
(5.第1実施形態の作用効果)
以上のような第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
本実施形態では、所定の幅を有するテープ状マスク3を用いて、各個人の眼球下転量の長さLを測定する。測定実施者は、各種幅のテープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12の表面に貼り付けるだけでよいので、簡単かつ安価に測定を行うことができる。特に、店頭などで簡単に行えるため、有用性が高い。
また、装着者が実際に装着する眼鏡フレームを装着した状態で測定を行うことができるので、装着者の頭および眼球運動(視覚動作)だけでなく、装着者の姿勢にも応じた測定を行うことができる。したがって、眼鏡フレームや装着者の物を見る時の癖(姿勢)にも応じた各個人に最適な眼球下転量の長さLを精度高く測定することができる。
【0073】
さらに、装着者は、テープ状マスク3が貼り付けられた眼鏡100を装着し、遠方視したときと近方視したときにテープ状マスク3の第1辺33上および第2辺34上を視線が通るか否かを判断するだけでよいので、より簡単に測定を行うことができる。なお、測定実施者が、装着者の視線が通るか否かを目視で判断してもよく、複数の判断を得ることができ、より正確な測定を行うことができる。
【0074】
そして、テープ状マスク3の第1辺33上および第2辺34上を視線が通らない場合はテープ状マスク3を剥がして幅の異なるテープ状マスク3を再度貼り付けるだけでよいので、測定実施者に特別な技術がなくとも簡単に測定を実施することができる。
また、テープ状マスク3は粘着部同士が貼り付けられて形成された折曲部32を有しているので、把持部641は折曲部32を把持しやすく、テープ状マスク3を移動させたり、貼り付けたり、剥がしたりする操作を簡単かつ効率よく実施することができる。また、テープ状マスク3の粘着部311は、着脱自在となる程度の粘着力であるので、検査用眼鏡レンズ12から簡単に剥がすことができる。
【0075】
また、治具貼付装置400は、テープ供給部材6により、送出テープ611を切断し、折曲部32を形成することができる。したがって、簡単かつ効率的にテープ状マスク3を形成することができ、工程および所要時間の短縮を図ることができる。
さらに、眼鏡保持部材5とテープ供給部材6とは眼鏡100の上下方向に対して予め位置決めされており、テープ状マスク3の第1辺33と遠用アイポイントラインFLとの位置合わせは、フレーム支持部材52を移動させるだけでよい。したがって、各眼鏡フレームに応じて簡単に位置合わせを行うことができる。
【0076】
そして、テープ状マスク3を貼り付ける際、圧着部材631をテープ基材31の粘着部311とは反対側の面に接着した状態とした。これにより、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に載置したときに、テープ状マスク3によれや歪みが発生することを防止することができる。また、圧着部材631の重みにより、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に確実に貼り付けることができる。
【0077】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。第2実施形態の眼鏡レンズ(累進屈折力レンズ)は第1実施形態と同様の構成であるので説明を省略する。
【0078】
(1.眼球下転量測定治具)
図8には、第2実施形態にかかる眼球下転量測定治具が検査用眼鏡レンズ12に貼付された状態が示されている。第2実施形態では、眼球下転量の長さを測定するための測定治具として、図8に示すテープ状マスク70を用いる。
テープ状マスク70は、透視可能な透明なフィルムで形成され、一方の面が着脱可能に貼り付けられる長方形状の接着部71と、接着部71の対向する2辺に隣接して設けられる一対の非接着部72と、を有している。ここで、透視可能な透明なフィルムは、テープ状マスク70を介して文字が読める程度に透視できる透明度を有する。
接着部71は、無色透明であり、その表面には複数のマークが形成されている。遠用アイポイントFPを示すFPライン73と、近用アイポイントと予測される領域に形成される第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76と、を有している。接着部71の左右方向の長さは特に限定されないが、検査用眼鏡レンズ12の左右方向の幅より小さい。
【0079】
FPライン73は、検査用眼鏡レンズ12における遠用アイポイントFPを通過して検査用眼鏡レンズ12の左右方向に直線状に延びる遠用アイポイントラインFLと一致する直線である。遠用アイポイントFPは、装着者が眼鏡100を実際に装着した状態で水平視した場合に視線が通る位置であり、予めその位置が確定されている。
第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76は、近用アイポイントNPがあると予測される領域に形成され、FPライン73と平行に形成される直線である。これらの線の幅は特に限定されないが、例えば1mmである。また、これらの線の間隔は特に限定されないが、例えば2mmである。また、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76は、互いに異なる不透明な色で形成され、第1のNPライン74は赤色、第2のNPライン75は緑色、第3のNPライン76は青色である。
【0080】
テープ状マスク70は、FPライン73が、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントFPを通る遠用アイポイントラインFLに一致するように貼り付けられている。装着者が近方視したときに最も近くに見えるラインの位置を近用アイポイントNPとして、FPライン73と選択されたラインの位置までの距離を眼球下転量の長さとする。
非接着部72は、検査用眼鏡レンズ12に接着されていない部分である。この非接着部72を把持することでテープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12を容易に剥離することができる。
【0081】
(2.治具貼付装置の構成)
次に、テープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12に貼り付ける治具貼付装置について説明する。
まず、治具貼付装置に載置される測定テープについて説明する。図9および図10に示すように、測定テープ700は、基材フィルム711とカバーフィルム712とが積層され、基材フィルム711とカバーフィルム712との間にテープ状マスク70を有している。基材フィルム711とテープ状マスク70とは、第1の接着層720によって接着している。また、テープ状マスク70のカバーフィルム側の面には、第2の接着層730が形成されている。第2の接着層730は、テープ状マスク70の接着部71に対応する領域に形成される。すなわち、第2の接着層730が形成されない領域は、テープ状マスク70の非接着部72である。なお、第2の接着層730をテープ状マスク70の一方の面全体に形成し、非接着部72に相当する領域に印刷を施すことで接着剤の粘着性を弱めることにより非接着部72を形成してもよい。
【0082】
ここで、測定テープ700からテープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12に貼り付ける手順を具体的に説明する。
まず、カバーフィルム712を基材フィルム711から剥離する。カバーフィルム712と第2の接着層730との接着強度は、テープ状マスク70と第2の接着層730との接着強度より弱い。したがって、カバーフィルム712と第2の接着層730との間で剥離する。これにより、テープ状マスク70の表面に第2の接着層730が露出する。
次に、テープ状マスク70の表面に露出した第2の接着層730にアクリル樹脂製の検査用眼鏡レンズ12を押し付け、テープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12に貼り付ける。
そして、基材フィルム711をテープ状マスク70から剥離する。テープ状マスク70と第1の接着層720との接着強度は、基材フィルム711と第1の接着層720との接着強度より弱い。したがって、テープ状マスク70と第1の接着層720との間で剥離する。これにより、テープ状マスク70は第2の接着層730を介して検査用眼鏡レンズ12に貼り付けられた状態となる。
次に、検査用眼鏡レンズ12に貼り付けられたテープ状マスク70により眼球下転量の測定を行った後、テープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12から剥離する。このとき、検査用眼鏡レンズ12と第2の接着層730との接着強度は、テープ状マスク70と第2の接着層730との接着強度より弱いため、検査用眼鏡レンズ12と第2の接着層730との間で剥離する。
このようにして検査用眼鏡レンズ12は、テープ状マスク70および第2の接着層730が全て除去され、元の状態に復元される。
【0083】
以上のフィルムおよび接着剤の構成は以下の通りである。なお、上記の接着強度のバランスは、各フィルムに剥離剤を塗布することにより調整することができる。
例えば、基材フィルム711としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニル等からなる群より選択される少なくとも一種の材料を含むシートであることが好ましい。また、基材フィルム711の厚さは3μm以上500μm以下であることが好ましい。
カバーフィルム712としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニル等からなる群より選択される少なくとも一種の材料を含むシートで、剥離剤が塗布されていることが好ましい。カバーフィルム712の厚さは3μm以上500μm以下であることが好ましい。
テープ状マスク70としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニル等からなる群より選択される少なくとも一種の材料を含むシートで、剥離剤が塗布されていることが好ましい。テープ状マスク70の厚さは3μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0084】
第一の接着層720に使用される接着剤としては、アクリル樹脂系、ゴム系、ウレタン樹脂系、シリコン樹脂系、ビニルエーテル系、およびエポキシ系樹脂系からなる群より選択される少なくとも一種の材料を含む層であることが好ましい。第一の接着層720の厚さは1μm以上200μm以下であることが好ましい。
第二の接着剤730に使用される接着剤としては、アクリル樹脂系、ゴム系、ウレタン樹脂系、シリコン樹脂系、ビニルエーテル系、およびエポキシ系樹脂系からなる群より選択される少なくとも一種の材料を含む層であることが好ましい。第二の接着剤730の厚さは1μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0085】
また、測定テープ700は、両端縁付近に、基材フィルム711およびカバーフィルム712を貫通する貫通孔740が形成されている。貫通孔740は、治具貼付装置に載置する際、後述の治具貼付装置800の係合部840に係合し、測定テープ700を固定するものである。
【0086】
次に、治具貼付装置800の構成について説明する。図11(A)に示すように、治具貼付装置800は、眼鏡100を保持する眼鏡保持台810と、眼鏡保持台810の上面に設けられたレンズ載置部820と、眼鏡100の位置を調整するためのフレーム支持部材830と、測定テープ700の貫通孔740と係合する係合部840と、を備えている。
【0087】
眼鏡保持台810は、図11(B)に示すように、眼鏡100を載置したときに検査用眼鏡レンズ12と対向する載置面811を上面として有する直方体状に形成され、載置面811には、検査用眼鏡レンズ12と対向する位置にレンズ載置部820を収納可能な矩形状の一対の凹部812と、一対の凹部812に挟まれた領域に載置面811の高さより低い位置に上面を有する中間部813と、を有している。
【0088】
レンズ載置部820は、一対の凹部812にそれぞれ収納可能な矩形状の低反発弾性素材である。低反発弾性素材としては、検査用眼鏡レンズ12の表面を傷つけず適度な弾性があるものが好ましく、例えばウレタンが用いられる。
眼鏡保持台810およびレンズ載置部820の表面には、テープ状マスク70のFPライン73との位置合わせを行うための左右方向に延びる位置合わせラインPLと、中間部813上でフレーム20の中央線との位置あわせを行うための上下方向に延びるフレーム基準線BLと、が形成されている。
【0089】
フレーム支持部材830は、位置合わせラインPLに平行な長尺状の部材であり、検査用眼鏡レンズ12の上下方向に移動自在とされている。フレーム支持部材830は、フレーム枠21の下辺211に接した状態で移動することにより、眼鏡100の位置を調整する。フレーム支持部材830は手動で調整可能とされている。
係合部840は、一対のレンズ載置部820の外側に凸状に形成されている。係合部840は、測定テープ700の貫通孔740と係合して測定テープ700を固定する。
したがって、治具貼付装置800の位置合わせラインPLと係合部840の位置関係と、測定テープ700のFPライン73と貫通孔740との位置関係と、が一致するようにそれぞれを設計する。
【0090】
(3.眼球下転量測定方法)
次に、治具貼付装置800を用いてテープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12に貼り付けるマスク貼付工程と、貼り付けられたテープ状マスク70により、眼球下転量を測定する測定工程について説明する。
(3−1.マスク貼付工程)
図12(A)に示すように、治具貼付装置800の載置面811上に、測定テープ700を載置する。このとき、測定テープ700の一対の貫通孔740を治具貼付装置800の係合部840に係合させて、測定テープ700の位置を固定する。ここで、位置合わせラインPLとFPライン73とが一致することを確認する。
【0091】
次に、フレーム支持部材830の位置決めを行う。眼鏡100の眼鏡フレーム20を開き、検査用眼鏡レンズ12の外側の表面が測定テープ700に接する向きに眼鏡100を治具貼付装置800の載置面811に載置する(図12(B)参照)。このとき、フレーム20の中心がフレーム基準線BLに一致するように載置する。検査用眼鏡レンズ12には、予め遠用アイポイントFPが確定され、その位置にマークが付けられている。したがって、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントFPと位置合わせラインPLまたはFPライン73とが一致するように、フレーム支持部材830をフレーム枠21に当接させた状態で眼鏡100の位置の微調整を行う。
【0092】
フレーム支持部材830の位置が決まると、眼鏡100を治具貼付装置800から一旦取り外し、測定テープ700のカバーフィルム712を基材フィルム711から剥離する。これにより、テープ状マスク70の第2の接着層730が露出する。
そして、眼鏡100がフレーム基準線BLおよびフレーム支持部材830に当接するように、一対の検査用眼鏡レンズ12の外側の表面を一対のレンズ載置部820の低反発性素材に押し付ける。これにより、図12(C)に示すように、検査用眼鏡レンズ12とテープ状マスク70が第2の接着層730を介して接着する。
【0093】
次に、図13に示すように、眼鏡100を基材フィルム711から剥離する。このとき、テープ状マスク70と第1の接着層720との間で剥離して基材フィルム711から離れ、テープ状マスク70は第2の接着層730を介して検査用眼鏡レンズ12に貼り付いた状態となる。これにより、図8に示すようなテープ状マスク70が貼り付けられた眼鏡100となり、眼球下転量を測定可能な状態となる。
【0094】
(3−2.測定工程)
次に、検査用眼鏡レンズ12に貼り付けられたテープ状マスク70により眼球下転量を測定する測定工程について説明する。
装着者は、検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク70が貼り付けられた眼鏡100を装着し、遠方視および近方視した際の視線の位置を確認する。
具体的には、眼鏡100を装着した状態で正面視した場合の瞳中心(視線)が、テープ状マスク70のFPライン73を通過するか否かを確認する。次に、眼鏡100を装着した状態で、読書をしている(近方視)場合の瞳中心(視線)がどの位置を通過するかを確認する。本実施形態では、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76が形成されているので、装着者はこれらのラインのうち、自分の視線が通過する位置と最も近いラインを判断する。
【0095】
ここで、このような眼鏡100を装着した装着者に実際に見えるラインについて説明する。装着者が眼鏡100を装着して近方視すると、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76はそれぞれ実際のラインの幅よりも広くぼやけた状態に見える(反射色)。図14に、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76と、各ラインとその周辺部における模式的な吸光スペクトルを示す。この吸光スペクトルは、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の中央の位置で吸収極大となり、各ラインから離れるほど吸収が小さくなっている。すなわち、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の中央の位置が最も濃く、その周辺部に向かうほど薄く見えるグラデーションとなっている。第1のNPライン74のグラデーションが終了する位置をそれぞれ第1の境界ライン741および第2の境界ライン742とし、第2のNPライン75のグラデーションが終了する位置をそれぞれ第3の境界ライン751および第4の境界ライン752とし、第3のNPライン76のグラデーションが終了する位置をそれぞれ第5の境界ライン761および第6の境界ライン762とすると、第2の境界ライン742と第3の境界ライン751との間に新たな白いラインが見える(透過光)。同様に、第4の境界ライン752と第5の境界ライン761との間に新たな白いラインが見える(透過光)。すなわち、実際に形成した第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の3本のラインよりも多くのラインが見えることになる(反射光と透過光の組み合わせ)。
【0096】
以上のように、テープ状マスク70に実際に形成した第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76とは異なる新たな白いラインを含めた5本のライン(反射光と透過光の組み合わせ)が装着者には見えるので、これらの5本のラインのうち自分の視線が通る位置に最も近いラインを判断することにより測定する。そして、選択されたラインとFPライン73との距離が、該装着者に対応する眼球下転量の長さとなる。
【0097】
(4.第2実施形態の作用効果)
以上のような第2実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
本実施形態では、遠用アイポイントを示すFPライン73、近用アイポイントを示す第1のNPライン74、第2のNPライン75、第3のNPライン76が形成されたテープ状マスク70を用いて眼球下転量の長さを測定する。
これによれば、装着者が実際に装着する眼鏡100を装着した状態で測定を行うことができるので、装着者の頭および眼球運動(視覚動作)だけでなく、装着者の姿勢にも応じた測定を行うことができる。したがって、眼鏡フレームや装着者の物を見るときの癖にも応じた個々に最適な眼球下転量の長さを精度高く測定することができる。
【0098】
また、装着者は、テープ状マスク70が貼り付けられた眼鏡100を装着し、近方視したときの視線の位置が検査用眼鏡レンズ12上の複数のラインのうちどのラインに最も近いかを判断するだけでよいので、装着者に負担をかけることなくより簡単に測定を行うことができる。
特に、第2実施形態では、実際に測定を行う際には、装着者には、テープ状マスク70に形成された第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の3本にラインよりも多くのラインが見える。通常、ラインの数が多いほどライン間の距離が狭くなるので、測定の精度が向上する。したがって、少ないラインの数であっても精度高く測定を行うことができる。
なお、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の幅や間隔を調整することで、装着者に実際に見えるラインの数を調整することができるため、有用性が高い。
【0099】
さらに、第2実施形態の治具貼付装置800は、レンズ載置部820が低反発性素材から構成されているので、載置面811に固定されたテープ状マスク70に対して検査用眼鏡レンズ12を押し付けるだけでよい。したがって、簡単にテープ状マスク70を貼り付けることができる。
特に、店頭等にいる測定実施者にとって、検査用眼鏡レンズ12をテープ状マスク70に押し付けるだけで貼り付けることができるので、簡単に測定の準備を行うことができ、有用性が高い。
【0100】
そして、上記第2実施形態では、一対のレンズ載置部820の間に載置面811およびレンズ載置部820の上面よりも高さが低い中間部813が設けられている。これによれば、眼鏡100を載置面811上に載置したとき、ブリッジ22が中間部813に適合するため、眼鏡100の位置を安定させることができる。
また、テープ状マスク70は、非接着部72を有しているので、非接着部72を把持することにより簡単にテープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12から剥離することができる。
【0101】
〔変形例〕
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
例えば、上記第1実施形態では、フレーム支持部材52が自動で移動することとしたが、手動で位置合わせを行うこととしてもよい。これによれば、フレーム支持部材52を制御する制御手段を必要としないため、より簡単な構成とすることができる。
【0102】
また、上記第1実施形態では、一方の検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク3を貼り付けた後、ベース51を左右方向に移動させることにより、他方の検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク3を貼り付ける工程としたが、これに限られない。例えば、レンズ貼付部材64の制御部642を延長し、左右の検査用眼鏡レンズ12の両方に把持部641を移動可能とした構成とすることもできる。これによれば、ベース51を移動させる必要がなく、把持部641のみの位置合わせを調整すればよいため、位置合わせがより安定する。
【0103】
また、上記第1実施形態では、テープ状マスク3の端部を折り曲げることによって折曲部32を形成したが、把持部641で把持できる形態であればこれに限られない。例えば、テープ基材31の端部から所定の距離までに、粘着性を有しない部材を粘着部311に貼り付けてもよい。これによれば、1つの部材をテープ基材31の粘着部311に貼り付けるだけでよいので、簡単な構成のテープ供給装置とすることができる。
【0104】
また、上記第1実施形態では、ベース51の載置面511を平面状に形成したが、眼鏡フレーム20(眼鏡100)をより安定して支持するために、ブリッジ22に係合する凸状部が載置面511上に設けられていてもよい。この場合、眼鏡フレーム20は、載置面511および凸状部に沿って移動自在となる。これによれば、眼鏡100の左右方向への移動を防止することができ、眼鏡100の位置をより安定させることができるため、テープ状マスク2の検査用眼鏡レンズ12への貼り付けをより精度高く行うことができる。
【0105】
さらに、上記第2実施形態では、テープ状マスク70に形成した第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の間隔を2mmとしたが、これに限られない。例えば、これらの間隔を0.5mmとすると、装着者には、各ライン間に、各ラインの色が合成された色からなる新たなライン(反射光)が見えることになる。すなわち、第1のNPライン74(赤色)と第2のNPライン75(緑色)との間に黄色の新たなラインが見え、第2のNPライン75(緑色)と第3のNPライン76(青色)との間にはシアン色の新たなラインが見える。これは、図15に示すように、第1のNPライン74と第2のNPライン75との間隔が狭いため、第1のNPライン74のぼやけた部分と第2のNPライン75のぼやけた部分とが重なり合うためである。
これによれば、各ラインの幅、間隔および色を調整するだけで、それぞれ異なる色のラインを見える状態にすることができる。色の種類が豊富であるので、装着者には判断しやすく、装着者の負担を低減することができる。
【0106】
また、上記第2実施形態では、テープ状マスク70に形成した第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76は、互いに異なる色で形成されているが、これらは同一の色で形成されていてもよい。これによれば、インクの種類を少なくすることができるので、コスト低減を図ることができる。
【0107】
また、上記第2実施形態では、治具貼付装置800の位置合わせラインPLと係合部840の位置関係と、測定テープ700のFPライン73と貫通孔740の位置関係とを一致させる設計であったが、治具貼付装置800の係合部840を上下方向に移動可能にしてもよい。これによれば、治具貼付装置800と測定テープ700の設計および製造をそれぞれ自由にすることができるので、汎用性が高い。
【0108】
そして、上記第2実施形態では、治具貼付装置800のレンズ載置部820を一対形成し、一対のレンズ載置部820の間に中間部813を設ける構成としていたが、図16(A)および(B)に示すように、一対のレンズ載置部820を連結した形状の眼鏡載置部920としてもよい。眼鏡載置部920は、低反発性素材で構成されているため、眼鏡100を載置したとき、眼鏡100のブリッジ22は低反発性素材に押し付けられて、安定して位置合わせを行うことができる。
【0109】
また、上記第2実施形態では、テープ状マスク70に遠用アイポイントラインFLを示すFPライン73を形成しているが、図17に示すように、テープ状マスクの一辺を遠用アイポイントラインとしてもよい。すなわち、治具貼付装置800の位置合わせラインPLにテープ状マスク80の一辺を一致させる。これによれば、テープ状マスク80に遠用アイポイントを示すラインを形成しなくてよいので、テープ状マスク80の製造を簡略化することができる。
さらに、上記第2実施形態では、測定テープ700は、基材フィルム711とカバーフィルム712との間にテープ状マスク70を有する構成となっていたが、この構成に限られない。例えば、図18に示すように、1枚の基材フィルム790に切欠部791を形成することにより、テープ状マスク70を切取可能に形成してもよい。この場合、テープ状マスク70は容易に切り取れるように、切欠部791を長く形成し連結部を少なく形成することが好ましく、例えばテープ状マスク70の四隅のみを連結させる状態に形成する。これによれば、材料コストの低減を図ることができる。
【0110】
また、上記実施形態では、検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスクを貼り付けて眼球下転量の測定を行ったが、測定された眼球下転量に基づいて設計された累進屈折力レンズ(眼鏡レンズ10)を眼鏡フレーム20に装着した眼鏡100に対してテープ状マスクを貼り付けてもよい。これによれば、設計された累進屈折力レンズの眼球下転量の確認を行うことができ、精度を高めることができる。すなわち、個々の装着者の視覚動作に応じた眼鏡レンズを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、累進屈折力レンズの眼球下転量を簡単に測定する測定治具として、眼鏡の販売店等で広く利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
10…眼鏡レンズ、12…検査用眼鏡レンズ、20…眼鏡フレーム、100…眼鏡、3…テープ状マスク、31…テープ基材、311…粘着部、32…折曲部、33…第1辺、34…第2辺、400…治具貼付装置、5…眼鏡保持部材、51…ベース、52…フレーム支持部材、6…テープ供給部材、61…送出部、611…送出テープ、62…カッター部、621…切断部、622…切断受部、623…折曲支持部、624…折曲生成部、625…折曲仕上部、63…接着処理部、631…圧着部材、64…レンズ貼付部材、641…把持部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズにおける眼球下転量測定治具、治具貼付装置、および眼球下転量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人が物を見る際、側方あるいは上下方を見るために頭を回転させたり目を回転させたりする(視覚動作という)。このような頭の回転角度や目の回転角度は個人に特有のものであり、このような個人の視覚動作に対応した眼鏡レンズの設計方法や調整方法が種々提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
累進屈折力レンズは、遠方視に対応する屈折力(度数)を持つ遠用部領域と近方視に対応する屈折力を持つ近用部領域とを備えた非球面レンズである。遠用部領域はレンズの上方位置に設定され、近用部領域はレンズの下方位置に設定され、これら両領域の間で屈折力が累進的に変化する累進帯を備えている。これらの領域には境目がなく1枚のレンズで遠くのものから近くのものまで見ることができる。遠用部領域、近用部領域および累進帯は、個々の使用目的(遠近重視、中近重視、近々重視、フルタイム使用、パートタイム使用、静的使用、動的使用など)に合わせて調整を行う必要がある(光学的フィッティング)。光学的フィッティングの中でも、累進屈折力レンズにおいては眼球下転量が重要である。眼球下転量とは、眼鏡装着者が水平視した状態でのレンズ上の視線位置を遠用アイポイントとし、近用視した状態でのレンズ上の視線位置を近用アイポイントとしたとき、遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である。
【0004】
眼鏡装着者に対して眼鏡調整を行う場合、単焦点レンズの場合は、眼鏡情報(検眼情報、眼鏡フレーム情報、眼鏡レンズ情報)を各個体(顔の形や大きさ、首の太さ、鼻、耳、眼の相対位置や形等)に適合させる工学的フィッティングを実施する。一方、累進屈折力レンズの場合は、工学的フィッティングのほかにも、上述の光学的フィッティングを実施する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−523244号公報
【特許文献2】特表2008−521027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2では、頭および眼球運動測定装置を用いて定量的な値を求め、これらの値に基づいて個々に最適なレンズを提供することができるものの、累進屈折力レンズにおける近用アイポイントの決定には、頭および眼球運動だけでなく姿勢も大きく関与するため、精度の高い近用アイポイントを決定することが困難な場合がある。
また、特許文献1および特許文献2のような眼球運動の測定は、お客様に対して時間的な検査負荷が大きすぎるといった問題や、検査機器が高価すぎるという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、累進屈折力レンズにおける眼球下転量の測定を、簡単、安価かつ精度高く実施できる眼球下転量測定治具、治具貼付装置、および眼球下転量測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の眼球下転量測定治具は、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する眼球下転量測定治具であって、前記眼鏡フレームに装着された検査用眼鏡レンズ表面に形成され、前記遠用アイポイントを通過して水平方向に延びる基準線が設けられたマスクを備えたことを特徴とする。
【0009】
眼球下転量の測定は、販売店等で消費者が実際に購入する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズを装着し、この検査用眼鏡レンズに対して本発明の眼球下転量測定治具を用いて行われる。検査用眼鏡レンズとしては、例えば、度の入っていないアクリル樹脂が用いられる。
この発明では、眼球下転量測定治具は、個々の眼球下転量を測定するために検査用眼鏡レンズに貼り付けられるマスクを備えている。マスクには基準線が設けられているので、この基準線が眼鏡レンズの遠用アイポイントと一致するようにマスクを配置して測定を行う。ここで、水平方向とは、このマスクを貼り付けた眼鏡レンズを装着した状態における水平方向である。
これによれば、遠用アイポイントが固定されるので、装着者が近方視したときの視線の位置を確定させることにより眼球下転量を測定することができる。
このように、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズが装着され、この検査用眼鏡レンズにマスクを用いて測定するので、装着者の視覚動作(眼や頭の動き)だけでなく、装着者が物を見るときの姿勢や癖にも応じた精度の高い測定を行うことができる。
また、測定は、装着者の検査用眼鏡レンズにおける視線が通る位置を確定させるだけでよいので、装着者に負担をかけずに簡単に行うことができるとともに、高価な設備が必要ないので、安価に実施することができる。
【0010】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記マスクは、前記装着者に予測される眼球下転量と同じ幅と、互いに対向する2辺とを有し、前記基準線は、前記マスクの対向する2辺のうちいずれか一方であることが好ましい。
【0011】
この発明では、マスクは互いに対向する2辺を有し、この2辺のうちのいずれか一方の辺を遠用アイポイントを通過する位置に合わせる。これにより、いずれか他方の辺が近用アイポイントと一致するか否かを判断することで、該装着者に対して最適なマスクを選択する。なお、いずれか他方の辺と近用アイポイントとの一致は、装着者が近方視(下方視)したときの視線が検査用眼鏡レンズにおいてマスクに隠れない状態となっていればよいが、いずれか他方の辺と近用アイポイントとが離れすぎていてはいけない。このようにして、該装着者に対して最適な幅のマスクを選択することにより、このマスクの幅を眼球下転量とする測定を行うことができる。
【0012】
これによれば、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズが装着され、この検査用眼鏡レンズにマスクを用いて測定するので、装着者の視覚動作(眼や頭の動き)だけでなく、装着者が物を見るときの姿勢や癖にも応じた精度の高い測定を行うことができる。
また、測定は、眼鏡レンズにおける視線が通るか否かによる判断を行うだけでよいので、装着者に負担をかけずに簡単に行うことができるとともに、高価な設備が必要ないので、安価に実施することができる。
【0013】
なお、測定された眼球下転量に基づいて眼鏡レンズが設計され、設計後の眼鏡レンズに対して本発明の眼球下転量測定治具を適用することができる。これによれば、レンズ設計が、該装着者に適しているかどうかの検査(確認)を行うために利用することもできる。
【0014】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記マスクは、互いに対向する2辺を有し、前記基準線は、前記対向する2辺から離れた位置に設けられたことが好ましい。
【0015】
この発明では、マスクは、対向する2辺を有する部材であり、基準線は、この2辺から離れた位置に形成されている。すなわち、基準線は、マスクを形成する2辺ではなく、マスク上に形成された直線であることを意味する。
これによれば、基準線と検査用眼鏡レンズの遠用アイポイントとを一致させてマスクを配置し、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズが装着され、この検査用眼鏡レンズにマスクを用いて測定するので、装着者の視覚動作(眼や頭の動き)だけでなく、装着者が物を見るときの姿勢や癖にも応じた精度の高い測定を行うことができる。
【0016】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記マスクは、前記対向する2辺のうちいずれか他方が、前記近用アイポイント側に向けられて配置され、テープ基材と、このテープ基材の検査用眼鏡レンズ側に設けられ前記検査用眼鏡レンズに着脱自在に貼り付ける粘着部と、を有するテープ状マスクであることが好ましい。
【0017】
この発明では、粘着部により、テープ状マスクが検査用眼鏡レンズに着脱自在となるため、簡単に貼り付けたり剥がしたりすることができる。
したがって、販売店等の店員が特別な技術を要することなく、簡単に測定および検査を行うことができる。また、テープ状マスクは安価に利用することができるので、コスト低減を図ることができる。
【0018】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記マスクは、前記検査用眼鏡レンズの表面の前記近用アイポイントがあると予測される領域に前記基準線と平行に形成される複数の線を有し、テープ基材と、このテープ基材の検査用眼鏡レンズ側に設けられ前記検査用眼鏡レンズに着脱自在に貼り付ける粘着部と、を有するテープ状マスクであることが好ましい。
【0019】
この発明では、近用アイポイントがあると予測される領域に複数の線を形成している。したがって、測定時には、装着者は実際に近方視したときの視線(近用アイポイント)と一致するかまたは最も近い線を判断すればよい。このようにして選択された線と基準線との距離が眼球下転量となる。
これによれば、装着者は、近方視したときの視線(近用アイポイント)がマスクに形成された複数の線のいずれかに一致するかを判断するだけでよいので、装着者に負担をかけずに簡単に測定を行うことができる。
また、近用アイポイントとなる候補が複数あるので、近用アイポイントの位置をより正確に特定することができ、精度の高い測定を行うことができる。
【0020】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記複数の線は、互いに異なる色の線であることが好ましい。
【0021】
この発明によれば、複数の線が異なる色で形成されるので、装着者には色を認識しやすく、近用アイポイントがどの線と一致するかまたは最も近いかの判断を容易に行うことができる。なお、複数の線は不透明な異なる色で一定の間隔で形成されることが好ましい。
【0022】
本発明の治具貼付装置は、前述の眼球下転量測定治具を眼鏡レンズに貼り付ける治具貼付装置であって、前記検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに取り付けられた眼鏡を保持する眼鏡保持部材と、この眼鏡保持部材で保持された眼鏡に前記テープ状マスクを供給するテープ供給部材と、を備え、前記眼鏡保持部材は、前記検査用眼鏡レンズに対向するベースと、このベースに検査用眼鏡レンズのアイポイントを通過して水平方向に延びて形成される水平注視野に直交する方向に移動自在に取り付けられた前記眼鏡フレームを支持するフレーム支持部材と、を有し、前記テープ供給部材は、前記テープ状マスクをカットするカッター部材と、このカッター部材でカットされたテープ状マスクを前記眼鏡保持部材で保持された眼鏡まで搬送し、前記テープ状マスクをその一方の辺が前記水平注視野に沿うように貼り付けるレンズ貼付部材と、を有することを特徴とする。
【0023】
この発明では、検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに取り付けられた眼鏡を眼鏡保持部材で保持し、テープ供給部材によりテープ状マスクを形成し、このテープ状マスクを眼鏡保持部材で保持された眼鏡の検査用眼鏡レンズに貼り付ける。
眼鏡保持部材にはフレーム支持部材が設けられ、フレーム支持部材を移動させることにより、保持された眼鏡の位置を調整することができる。したがって、検査用眼鏡レンズの遠用アイポイントとテープ状マスクの一方の辺との位置合わせを簡単に行うことができる。
【0024】
また、テープ供給部材は、カッター部材でカットされたテープ状マスクを搬送して検査用眼鏡レンズに貼り付けるレンズ貼付部材を有するので、例えば、市販のテープをセットするだけで、検査用眼鏡レンズの最適な位置にテープ状マスクを貼り付けることができる。なお、検査用眼鏡レンズのアイポイントを通過して水平方向に延びて形成される水平注視野とは、遠用アイポイントを通過して眼鏡の左右方向に延びるライン上において、装着者が左右方向に見える範囲のことを言う。
この発明によれば、テープ状マスクからなる測定治具を簡単に検査用眼鏡レンズに貼り付けることができる。したがって、販売店等で簡単に測定および検査を行うことができる。
【0025】
本発明の眼球下転量測定治具において、前記テープ状マスクの端部は前記粘着部同士が重合するように折り曲げて形成されていることが好ましい。
【0026】
この発明では、テープ状マスクの端部が折り曲げられるため、粘着部が露出しない部分を形成できる。したがって、この粘着部が露出しない部分を把持することができ、テープ状マスクを検査用眼鏡レンズに貼り付けたり剥がしたりする動作を容易に行うことができる。
【0027】
本発明の治具貼付装置において、前記カッター部材は、前記テープ状マスクの端部を折り曲げる折曲形成部を有することが好ましい。
【0028】
この発明によれば、折曲形成部により、テープ状マスクの端部に粘着部が露出しない折曲部を形成することができ、これにより、その後の搬送や貼り付けの動作を簡易に行うことができる。
特に、テープのカットと同時に折曲形成部により折曲部を形成すれば、テープ状マスクの形成工程を短縮することができる。
【0029】
本発明の治具貼付装置は、一対の前記テープ状マスクを備えた測定テープおよび前記眼鏡を保持する眼鏡保持台を備え、前記眼鏡保持台の上面には、前記検査用眼鏡レンズに対応する位置に設けられた低反発性素材からなるレンズ載置部と、前記検査用眼鏡レンズの水平方向と直交する方向に移動自在に取り付けられ、前記眼鏡のフレームを支持するフレーム支持部材と、を有することを特徴とする。
【0030】
この発明では、眼鏡保持台の上面に低反発性素材からなるレンズ載置部が設けられている。レンズ載置部は、2つの検査用眼鏡レンズに対応した一対の低反発性素材からなる。
したがって、レンズ載置部の上に測定テープおよび眼鏡を載置し、該眼鏡をレンズ載置部側に押し付けることによって、測定テープに含まれるテープ状マスクを検査用眼鏡レンズに貼り付けることができる。
これによれば、一対のテープ状マスクからなる測定治具を簡単に検査用眼鏡レンズに貼り付けることができるため、販売店等で簡単に測定を行うことができる。
【0031】
本発明の治具貼付装置において、前記測定テープは、基材フィルムとカバーフィルムとを備え、前記基材フィルムと前記カバーフィルムとの間に一対の前記テープ状マスクを有することが好ましい。
【0032】
この発明では、測定テープは、基材フィルムとカバーフィルムとの間にテープ状マスクを挟持している。測定は、一対の検査用眼鏡レンズそれぞれで行う必要があるため、一対のテープ状マスクが必要である。したがって、一対のテープ状マスクは、基材フィルムとカバーフィルムとの間で位置がそれぞれ固定されるので、テープ状マスクを検査用眼鏡レンズに貼り付ける際、テープ状マスクの位置決めをそれぞれで行う必要がない。すなわち、テープ状マスクを簡単に眼鏡レンズに貼り付けることができる。
また、テープ状マスクはカバーフィルムで覆われているため、テープ状マスクの表面に塗布された接着剤が露出しないので、取り扱いが容易であり、流通性を向上させることができる。
【0033】
本発明の眼球下転量測定方法は、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する方法であって、前記眼鏡フレームに装着された検査用眼鏡レンズ表面に対して前記装着者に予測される眼球下転量と同じ幅を有するテープ状マスクを用い、このテープ状マスクの互いに対向する2辺のうちいずれか一方の辺を前記検査用眼鏡レンズにおける遠用アイポイントを通過するように位置決めし、いずれか他方の辺を前記検査用眼鏡レンズにおける近用アイポイント側に向けて前記検査用眼鏡レンズに貼り付けるマスク貼付工程と、このテープ状マスクが貼り付けられた検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに設けられた眼鏡を前記装着者が装着して近用アイポイントが前記テープ状マスクの他方の辺と一致しているか否かを判断する判断工程と、を備え、この判断工程で近用アイポイントが前記テープ状マスクの他方の辺と一致していないと判断した場合には前記テープ状マスクを検査用眼鏡レンズから剥がし、幅寸法の異なるテープ状マスクを貼り付けて再度判断工程を実施することを特徴とする。
【0034】
この発明では、装着者に対して予測される眼球下転量と同じ幅を有するテープ状マスクを検査用眼鏡レンズに貼り付けるマスク貼付工程を行う。この工程では、テープ状マスクの一方の辺を遠用アイポイントを通過して水平方向に延びて形成される水平注視野に一致させ、他方の辺を近用アイポイント側に向けた状態で、テープ状マスクを検査用眼鏡レンズに貼り付ける。
次に、テープ状マスクを貼り付けた眼鏡を装着者が実際に装着し、近方視したときの視線(近用アイポイント)がテープ状マスクの他方の辺と一致するか否かを判断する判断工程を行う。判断は、装着者が行ってもよいし、測定実施者が行ってもよい。なお、近用アイポイントとテープ状マスクの他方の辺との一致は、検査用眼鏡レンズ上で視線が通るか否かにより行う。
【0035】
判断工程において、近方視したときの視線(近用アイポイント)がテープ状マスクに隠れて通らないと判断した場合は、テープ状マスクを検査用眼鏡レンズから剥がし、より幅の小さいテープ状マスクを前述と同様にして貼り付けて、再度判断工程を実施する。
一方、近用アイポイントと、テープ状マスクの他方の辺とが一致したと判断された場合は、該テープ状マスクの幅が眼球下転量となる。
【0036】
これによれば、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズが装着され、この検査用眼鏡レンズにマスクを用いて測定するので、装着者の視覚動作(眼や頭の動き)だけでなく、装着者が物を見るときの姿勢や癖にも応じた精度の高い測定を行うことができる。
また、測定は、検査用眼鏡レンズにおける視線が通るか否かによる判断を行うだけでよいので、装着者に負担をかけずに簡単に行うことができるとともに、高価な設備が必要ないので、安価に実施することができる。
【0037】
さらに、測定治具としてテープ状マスクを用いるため、簡単に検査用眼鏡レンズに貼り付けたり剥がしたりすることができる。
したがって、販売店等の店員が特別な技術を要することなく、簡単に測定および検査を行うことができる。また、テープ状マスクは安価に利用することができるので、コスト低減を図ることができる。
【0038】
本発明の眼球下転量測定方法は、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する方法であって、請求項10に記載の治具貼付装置を用いて、前記テープ状マスクに設けられた基準線と前記遠用アイポイントとが一致するように前記眼鏡フレームを位置決めし、前記検査用眼鏡レンズを前記測定テープ側に押し付けることで前記検査用眼鏡レンズに前記テープ状マスクを貼り付けるマスク貼付工程と、このテープ状マスクが貼り付けられた検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに設けられた眼鏡を前記装着者が装着して近用アイポイントが前記テープ状マスクに形成された複数の線のうちいずれの線と一致しているかを判断する測定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0039】
この発明では、テープ状マスクに設けられた基準線と検査用眼鏡レンズの遠用アイポイントとが一致するように眼鏡フレームを位置決めし、検査用眼鏡レンズを測定テープ側に押し付けることによって、検査用眼鏡レンズにテープ状マスクを貼り付ける。
次に、テープ状マスクを貼り付けた眼鏡を装着者が実際に装着し、近方視したときの視線(近用アイポイント)がテープ状マスクに形成された複数の線のうちいずれの線と一致するかまたは最も近いかの判断を行う。
【0040】
これによれば、装着者が実際に装着する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズが装着され、この検査用眼鏡レンズにテープ状マスクを貼り付けて測定するので、装着者の視覚動作(目や頭の動き)だけでなく、装着者が物を見るときの姿勢や癖にも応じた精度の高い測定を行うことができる。
また、測定は、視線がいずれの線と一致するかまたは最も近いかの判断を行うだけでよいので、装着者に負担をかけずに簡単に行うことができるとともに、高価な設備が必要ないので安価に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる眼球下転量測定治具を貼り付ける累進屈折力レンズを示す概略図。
【図2】前記第1実施形態にかかる治具貼付装置の構成の一部を示す概略平面図。
【図3】前記第1実施形態における治具貼付装置の構成を示す概略正面図。
【図4】前記第1実施形態においてテープ状マスクを切断する工程を示す説明図。
【図5】前記第1実施形態において眼球下転量測定治具を貼り付ける工程を示す説明図。
【図6】前記第1実施形態においてテープ状マスクを貼り付けた状態で眼球下転量を測定する様子を示す説明図。
【図7】前記第1実施形態においてテープ状マスクを貼り付けた状態で眼球下転量を測定する様子を示す説明図。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる眼球下転量測定治具を検査用眼鏡レンズに貼付した状態を示す概略平面図。
【図9】前記第2実施形態における眼球下転量測定治具を含む測定テープの構成を示す概略平面図。
【図10】図9のX−X断面図。
【図11】前記第2実施形態にかかる治具貼付装置の構成を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のXI−XI断面図。
【図12】前記第2実施形態において眼球下転量測定治具を検査用眼鏡レンズに貼り付ける工程を示す説明図。
【図13】前記第2実施形態において眼球下転量測定治具が検査用眼鏡レンズに貼り付けられた状態を示す断面図。
【図14】前記第2実施形態において装着者に実際に見えるラインを示す説明図。
【図15】前記第2実施形態において装着者に実際に見えるラインを示す説明図。
【図16】前記第2実施形態における治具貼付装置の変形例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のXVI−XVI断面図。
【図17】前記第2実施形態における眼球下転量測定治具の変形例を示す概略平面図。
【図18】前記第2実施形態における眼球下転量測定治具を含む測定テープの変形例を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
眼球下転量の測定は、販売店等で消費者が実際に購入する眼鏡フレームに検査用眼鏡レンズを装着し、この検査用眼鏡レンズに対して本発明の眼球下転量測定治具を用いて行われる。検査用眼鏡レンズとしては、例えば、度の入っていないアクリル樹脂等が用いられる。そして、測定された眼球下転量に基づいて眼鏡レンズを設計する。この眼鏡レンズは累進屈折力レンズであり、この累進屈折力レンズが設計どおりであるか否かの確認を行う場合は、設計後の眼鏡レンズに対して本発明の眼球下転量測定治具を適用することができる。
また、本実施形態では、眼鏡を装着した場合の鉛直方向を上下方向、眼鏡を装着した場合の水平方向を左右方向として説明する。
【0043】
(1.眼鏡レンズ)
図1に示すように、眼鏡レンズ10となる累進屈折力レンズは、上方に位置する遠用部領域11と、下方に位置する近用部領域12と、これら遠用部領域11と近用部領域12との間に位置する累進帯13と、累進帯13の側方に隣接した側方領域14と、を有している。
【0044】
遠用部領域11は、遠方視するのに適した相対的にプラス度数の低い平均度数を備えている。特に、装着者が正面視をした場合に瞳中心を通る水平線(つまり視線)が通過する位置を遠用アイポイントFPとし、遠用アイポイントFPを通過して左右方向に延びる線分であって、遠用部領域11における線分を遠用アイポイントラインFLとする。
【0045】
近用部領域12は、近方視(例えば、読書)するのに適した相対的にプラス度数の高い平均度数を備えている。特に、装着者が近方視(下方視)した場合の視線が通過する位置を近用アイポイントNPとし、近用アイポイントNPを通過して左右方向に延びる線分であって、近用部領域12における線分を近用アイポイントラインNLとする。
本実施形態では、眼球下転量として、遠用アイポイントラインFLと近用アイポイントラインNL間の上下方向の距離(長さ)Lを測定するものである。
【0046】
累進帯13は、遠用部領域11と近用部領域12との間で相対的なプラス加入度数が累進的に変化する領域である。
側方領域14は、非点収差領域と呼ばれるエリアである。側方領域14を通して見ると物が二重に見えたりするため、通常、装着者は側方領域14を通して物を見ない。
【0047】
眼鏡レンズ10は、このような累進屈折力レンズを成形加工することにより得られ、得られた眼鏡レンズ10は眼鏡フレーム20に装着されて眼鏡100となる(図2および図3参照)。
眼鏡フレーム20は、眼鏡レンズ10を装着して枠状に取り囲むフレーム枠21と、左右のフレーム枠21を連結するブリッジ22と、フレーム枠21からヒンジを介して回動可能に取り付けられたテンプル23と、を備えている。
なお、眼球下転量の測定は、アクリル樹脂製の検査用眼鏡レンズ12が眼鏡フレーム20に装着された眼鏡100を用いて行われる。以降は、眼鏡フレーム20に検査用眼鏡レンズ12が装着されているものとして説明する。
【0048】
(2.眼球下転量測定治具)
次に、眼鏡レンズ10における眼球下転量の長さを測定するための測定治具について説明する。ここで、眼球下転量とは、遠用アイポイントFPから近用アイポイントNPまでの距離であり、眼鏡レンズ10における遠用アイポイントラインFLと近用アイポイントラインNL間の上下方向の距離(長さ)Lである。
眼球下転量の長さLを測定するための測定治具として、図2に示すテープ状マスク3を用いる。測定治具は、装着者が実際に購入する眼鏡フレーム20に枠入れされたアクリル樹脂製の検査用眼鏡レンズ12に貼り付けられる。テープ状マスク3としては、例えば市販のメンディングテープ(住友スリーエム株式会社製)を用いることができる。
【0049】
テープ状マスク3は、一方の面が着脱可能に貼り付けられる粘着部311を有するテープ基材31と、テープ基材31の一方の端部に設けられた折曲部32と、を有している。
テープ基材31は、検査用眼鏡レンズ12に貼り付けた状態における上下方向の幅が例えば、10mm、10.5mm、11mm、11.5mm、12mm、12.5mm、13mm、13.5mm、14mm、14.5mm、15mmのものがある。テープ基材31は、対向する2辺により上記の幅を形成しており、対向する2辺のうち一方の辺を第1辺33、他方の辺を第2辺34とする。
なお、上記幅を有する各種テープ基材31のうち、装着者に適切な眼球下転量の長さと一致する幅のテープ基材31で測定した場合は、第1辺33は検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインFLと一致し、第2辺34は検査用眼鏡レンズ12の近用アイポイントラインNLと一致する。
【0050】
テープ基材31は、検査用眼鏡レンズ12に貼り付けた状態における左右方向の長さは特に限定されないが、検査用眼鏡レンズ12の左右方向の幅より小さければよい。
測定は、テープ基材31の第1辺33を検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインFLと一致するように配置し、第2辺34が近用アイポイントラインNLと一致する幅を有するテープ基材31を選択することによって行われる。このテープ基材31の幅が、眼球下転量の長さLとなる。
【0051】
折曲部32は、粘着部311同士を重合させることによって形成された非接着部分である。テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に貼り付けたり剥がしたりする際に後述の治具貼付装置400の把持部641により把持される。
【0052】
(3.治具貼付装置の構成)
次に、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に貼り付ける治具貼付装置400について説明する。
図3に示すように、治具貼付装置400は、眼鏡100を保持する眼鏡保持部材5と、眼鏡保持部材5に保持された眼鏡100にテープ状マスク3を供給するテープ供給部材6と、眼鏡保持部材5とテープ供給部材6とを連結する図示しない連結部と、を備えている。
【0053】
眼鏡保持部材5は、眼鏡100を載置したときに検査用眼鏡レンズ12と対向する載置面511を上面として有する直方体状に形成されたベース51と、このベース51の載置面511に沿って一方向に移動自在に設けられ、眼鏡100を適切な位置で支持するフレーム支持部材52と、を備えている。
【0054】
ベース51は、載置面511と直交する、対向する一組の第1側面部512、および対向する別の一組の第2側面部513を有している。眼鏡100を保持するには、検査用眼鏡レンズ12の外面が鉛直上向きとなる状態に、検査用眼鏡レンズ12が装着されたフレーム枠21が載置面511に載置されるとともに、左右のテンプル23はそれぞれ対向する第1側面部512に沿う状態とされる。載置面511は、平面状に形成されており、載置面511に載置された眼鏡100は載置面511に沿って眼鏡100の上下方向に移動可能とされる。また、載置面511には、検査用眼鏡レンズ12にマークされた遠用アイポイントFPとの位置合わせを行うための位置合わせラインPLが形成されている。
また、第1側面部512の上部、すなわち載置面511の縁部近傍には、載置面511と平行に、凹状の切欠部514が直線状に形成されている。
【0055】
フレーム支持部材52は、第2側面部513の左右方向の長さ以上の長さを有する長尺状の部材である。フレーム支持部材52は、その両端がU字状(フック状)に折り曲げられた係合部521を形成している。両方の係合部521の先端は、ベース51の切欠部514に係合し、検査用眼鏡レンズ12の上下方向に移動自在とされている。フレーム支持部材52は、フレーム枠21の下辺211に接した状態で移動することにより、眼鏡100の位置を調整する。フレーム支持部材52は図示しない制御手段により制御され、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントFPと載置面511上の位置合わせラインPLとの位置合わせが自動的に行われる。なお、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントFPと載置面511上の位置合わせラインPLとの位置合わせは、位置合わせラインPL上に遠用アイポイントFPが来たことを検知可能な検知手段を設けることにより行うことができる。
【0056】
テープ供給部材6は、送出テープ611を送り出す送出部61と、送出テープ611をカット(切断)し、カットされた送出テープ611の端部を折り曲げて折曲部32を形成するカッター部62と、カッター部62により形成されたテープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に圧着するための圧着部材631をテープ状マスク3に接着させる接着処理部63と、圧着部材631が接着されたテープ状マスク3を眼鏡100まで搬送して検査用眼鏡レンズ12に貼り付けるレンズ貼付部材64と、を備えている。
【0057】
送出部61は、市販のメンディングテープであり、送出テープ611をカッター部62へ送り出す。
カッター部62は、送出テープ611を切断する切断部621と、切断部621を受ける切断受部622と、切断された送出テープ611の端部に折曲部32を形成するための折曲支持部623、折曲生成部624、折曲仕上部625と、を有している。なお、折曲支持部623、折曲生成部624、および折曲仕上部625を折曲形成部とする。
【0058】
切断部621は、基部626に一つの鋭角が上向きとされた断面略三角形状に突出して形成されており、該鋭角が切断刃621Aを形成している。切断部621は送出テープ611の端部から所定の距離の位置に刃が位置するように設けられ、送出テープ611の進行方向に対して垂直方向(鉛直方向)に移動自在とされる。所定の距離とは、テープ状マスク3の長さ(例えば、50mm)に相当する距離である。
切断受部622は、切断部621の切断刃621Aを受ける接触面622Aを有し送出テープ611を挟んで切断部621と対向する位置に固定されている。
切断部621が鉛直上方向(切断受部622に近づく方向)に移動し、切断刃621Aが切断受部622の接触面622Aに接触することにより、送出テープ611は切断される。このように切断されると、テープ基材31と折曲部32とからなるテープ状マスク3が完成する。
【0059】
折曲支持部623は、基部626に鉛直上向きに突出した断面略台形状に形成され、切断部621よりも送出部61側に、切断部621と一体的に設けられている。折曲支持部623の切断部621に対向する側の壁面623Aは送出テープ611の進行方向に対して90°以上の傾斜をもって形成され、壁面623Aと折曲支持部623の上面623Bとの角度は0°より大きく90°以下であることが好ましい。折曲支持部623と切断部621との距離は、テープ状マスク3の折曲部32の半分の長さに相当する。例えば、折曲部32の長さが10mmである場合は、折曲支持部623と切断部621との距離は5mmである。折曲支持部623は、切断部621および基部626とともに送出テープ611の進行方向に対して直交する方向(鉛直方向)に動作する。
【0060】
折曲生成部624は、平板状の部材であり、送出テープ611を挟んで折曲支持部623の略鉛直上部に設けられる。折曲生成部624は、送出テープ611の進行方向に対して垂直方向(鉛直方向)に移動自在とされており、折曲生成部624と折曲支持部623が互いに近づく方向に移動したとき、折曲生成部624の一方の面と折曲支持部623の壁面623Aとが当接する。切断部621で送出テープ611が切断されると、折曲生成部624は鉛直下方向(折曲支持部623に近づく方向)に移動し、送出テープ611の端部を挟んで壁面623Aに当接する。これにより、送出テープ611の端部は壁面623Aと上面623Bに沿う状態となり、折り目が形成される。
【0061】
折曲仕上部625は、平板状の部材であり、折曲支持部623に対して送出テープ611の進行方向側に、一方の面が送出テープ611と平行となる状態に配置されている。折曲仕上部625は、送出テープ611と平行に移動自在とされている。折曲支持部623と折曲生成部624により送出テープ611の端部に折り目が形成され、折曲支持部623と折曲生成部624とが離れる方向に移動した後、折曲仕上部625は、折り目の付けられた送出テープ611の進行方向とは反対方向に移動し、折り目端部を押して送出テープ611の粘着部同士を重合させる(貼り合わせる)。これにより、折曲部32が形成される。
【0062】
接着処理部63は、圧着部材631をテープ状マスク3の表面に接着させる。圧着部材631としては、例えば、スポンジが挙げられる。また、接着剤としては、力を加えない状態では圧着部材631とテープ状マスク3とが剥離せず、力を加えると簡単に剥離する程度の接着力を有するものが好ましい。なお、空気等の吸引または液体の表面張力を利用して、圧着部材631をテープ状マスク3の表面に着けてもよい。
【0063】
レンズ貼付部材64は、テープ状マスク3の折曲部32を把持する把持部641と、把持部641の動作を制御する制御部642と、を有している。
把持部641は、折曲部32を把持し、折曲部32を把持した状態で眼鏡100の上部に移動する。そして、左右の検査用眼鏡レンズ12のうちいずれか一方の検査用眼鏡レンズ12の表面に下降し、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインFLと、テープ状マスク3の第1辺33とが一致するように、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に載置する。なお、把持部641の移動方向は、テープ供給部材6から眼鏡保持部材5までの眼鏡100における左右方向と、検査用眼鏡レンズ12に下降するための鉛直方向である。
制御部642は、把持部641をテープ供給部材6から眼鏡保持部材5に保持された検査用眼鏡レンズ12にまで移動させ、把持部641が上述の所定の動作を行うように制御する。
【0064】
図示しない連結部は、眼鏡保持部材5とテープ供給部材6とを連結し、眼鏡100における上下方向の位置を固定する。なお、眼鏡保持部材5とテープ供給部材6とは、眼鏡100における左右方向への移動は可能とされており、テープ状マスク3を貼り付ける際に、左右の検査用眼鏡レンズ12の位置を調整することができる。
したがって、テープ状マスク3の第1辺33と、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインFLとの位置合わせは、フレーム支持部材52を移動させることで眼鏡保持部材5に保持された眼鏡100の位置を調整する。
【0065】
(4.眼球下転量測定方法)
次に、治具貼付装置400を用いてテープ状マスク3を形成するマスク形成工程と、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に貼り付けるマスク貼付工程と、貼り付けられたテープ状マスク3により、眼球下転量を測定する測定工程について説明する。
まず、図3に示すように、眼鏡100の眼鏡フレーム20を開き、検査用眼鏡レンズ12とベース51の載置面511とが対向するように、すなわちテンプル23が第1側面部512に沿う状態となるように、眼鏡100をベース51に載置する。検査用眼鏡レンズ12には、予め遠用アイポイントFPが確定され、その位置にマークが付けられている。したがって、眼鏡100をベース51に載置すると、図示しない制御手段によりフレーム支持部材52が移動し、遠用アイポイントFPと位置合わせラインPLとの位置合わせが自動的に行われる。このように遠用アイポイントFPに位置合わせされた位置合わせラインPLは、検査用眼鏡レンズ12における遠用アイポイントラインFLとなる。
【0066】
(4−1.マスク形成工程)
次に、テープ状マスク3を形成する。装着者に対して予測される眼球下転量の長さLと同じ幅を有するメンディングテープをテープ供給部材6の送出部61に取り付ける。その後、送出部61から送出テープ611を送り出し、最初の折曲部32を形成するために、適当な位置で切断処理を行う。なお、ここで行う切断処理は、送出テープ611を最初に使用する際に、送出テープ611の端部に折曲部32を形成するために行うものであり、これ以降の工程では、送出テープ611の端部から所定距離ごとに同様の切断処理が行われる。
【0067】
ここで、切断処理について図4を用いて詳しく説明する。
図4(A)は、切断部621が鉛直上方向に移動して切断受部622の接触面622Aに接触し、切断刃621Aにより送出テープ611が切断された状態である。このように送出テープ611が切断された直後は、図4(B)に示すように、折曲生成部624が鉛直下方向に移動し、送出テープ611の端部は折曲支持部623の壁面623Aと上面623Bとに沿って折り目が形成される。次に、図4(C)に示すように、折曲支持部623および折曲生成部624を互いに離れる方向に移動させた後、折曲仕上部625を送出テープ611の進行方向とは反対の方向に移動させ、送出テープ611の折り目により形成された折曲端部を押し込む。これにより、図4(D)に示すような折曲部32が形成される。
【0068】
切断処理により折曲部32が形成された送出テープ611は、把持部641で折曲部32を把持できる位置まで送り出される。そして、図5(A)に示すように、把持部641は折曲部32を把持し、さらに接着処理部63により接着剤が塗布された圧着部材631を送出テープ611の表面に載置する。これにより、圧着部材631は、送出テープ611に接着される。そして、再度切断処理が行われると、テープ状マスク3が形成される(図5(B)参照)。
【0069】
(4−2.マスク貼付工程)
次に、図5(B)に示すように、把持部641により、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12の上部まで移動させる。
さらに、把持部641を制御して鉛直下方向(検査用眼鏡レンズ12に近づく方向)に移動させ、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントラインFLとテープ状マスク3の第1辺33とが一致するように、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12上に載置する(図5(C)参照)。
テープ状マスク3は、圧着部材631により検査用眼鏡レンズ12の表面に圧着される。テープ状マスク3が検査用眼鏡レンズ12に貼り付けられると、圧着部材631を剥がす。
このようにして、一方の検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク3を貼り付けた後、ベース51の位置を調整し、同様にして他方の検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク3を貼り付ける。
【0070】
(4−3.測定工程(判断工程))
装着者は、検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク3が貼り付けられた眼鏡100を装着し、遠方視および近方視した際の視線の位置を確認する。
具体的には、図6(A)に示すように、眼鏡100を装着した状態で、正面視をした場合の瞳中心(視線)が、テープ状マスク3の第1辺33を通過するか否かを確認する(遠用アイポイントの確認)。なお、本実施形態では、遠用アイポイントは予め正面視をした場合の瞳中心の位置を確定しているため、第1辺33上を視線が通過するのは当然である。なお、視線が第1辺33上を通過しない場合は、再度遠用アイポイントラインFLを確定させた後に、再度測定を実施する。
【0071】
次に、図6(B)に示すように、眼鏡100を装着した状態で、読書をしている(近方視)場合の瞳中心(視線)が、テープ状マスク3の第2辺34上を通過するか否かを判断する(近用アイポイントの位置を判断する)。図7には、テープ状マスク3の幅が大きい場合の例が示されている(図7(A)参照)。図7(B)のように近方視したときの視線はテープ状マスク3に隠れて確認できない。すなわち、近用アイポイントNPがテープ状マスク3の第2辺34に一致しないと判断する。このような場合はテープ状マスク3の幅が大きいので、より幅の小さいテープ状マスク3で再度測定を行う。また、視線がテープ状マスク3の第2辺34と離れた位置に確認される場合はテープ状マスク3の幅が小さいので、より幅の大きいテープ状マスク3で再度測定を行う。このようにして、近用アイポイントNPがテープ状マスク3の第2辺34と一致するか否かの判断を行い、最適な幅のテープ状マスク3を選択する。最終的に選択されたテープ状マスク3の幅が、該装着者に対応する眼球下転量の長さLである。
【0072】
(5.第1実施形態の作用効果)
以上のような第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
本実施形態では、所定の幅を有するテープ状マスク3を用いて、各個人の眼球下転量の長さLを測定する。測定実施者は、各種幅のテープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12の表面に貼り付けるだけでよいので、簡単かつ安価に測定を行うことができる。特に、店頭などで簡単に行えるため、有用性が高い。
また、装着者が実際に装着する眼鏡フレームを装着した状態で測定を行うことができるので、装着者の頭および眼球運動(視覚動作)だけでなく、装着者の姿勢にも応じた測定を行うことができる。したがって、眼鏡フレームや装着者の物を見る時の癖(姿勢)にも応じた各個人に最適な眼球下転量の長さLを精度高く測定することができる。
【0073】
さらに、装着者は、テープ状マスク3が貼り付けられた眼鏡100を装着し、遠方視したときと近方視したときにテープ状マスク3の第1辺33上および第2辺34上を視線が通るか否かを判断するだけでよいので、より簡単に測定を行うことができる。なお、測定実施者が、装着者の視線が通るか否かを目視で判断してもよく、複数の判断を得ることができ、より正確な測定を行うことができる。
【0074】
そして、テープ状マスク3の第1辺33上および第2辺34上を視線が通らない場合はテープ状マスク3を剥がして幅の異なるテープ状マスク3を再度貼り付けるだけでよいので、測定実施者に特別な技術がなくとも簡単に測定を実施することができる。
また、テープ状マスク3は粘着部同士が貼り付けられて形成された折曲部32を有しているので、把持部641は折曲部32を把持しやすく、テープ状マスク3を移動させたり、貼り付けたり、剥がしたりする操作を簡単かつ効率よく実施することができる。また、テープ状マスク3の粘着部311は、着脱自在となる程度の粘着力であるので、検査用眼鏡レンズ12から簡単に剥がすことができる。
【0075】
また、治具貼付装置400は、テープ供給部材6により、送出テープ611を切断し、折曲部32を形成することができる。したがって、簡単かつ効率的にテープ状マスク3を形成することができ、工程および所要時間の短縮を図ることができる。
さらに、眼鏡保持部材5とテープ供給部材6とは眼鏡100の上下方向に対して予め位置決めされており、テープ状マスク3の第1辺33と遠用アイポイントラインFLとの位置合わせは、フレーム支持部材52を移動させるだけでよい。したがって、各眼鏡フレームに応じて簡単に位置合わせを行うことができる。
【0076】
そして、テープ状マスク3を貼り付ける際、圧着部材631をテープ基材31の粘着部311とは反対側の面に接着した状態とした。これにより、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に載置したときに、テープ状マスク3によれや歪みが発生することを防止することができる。また、圧着部材631の重みにより、テープ状マスク3を検査用眼鏡レンズ12に確実に貼り付けることができる。
【0077】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。第2実施形態の眼鏡レンズ(累進屈折力レンズ)は第1実施形態と同様の構成であるので説明を省略する。
【0078】
(1.眼球下転量測定治具)
図8には、第2実施形態にかかる眼球下転量測定治具が検査用眼鏡レンズ12に貼付された状態が示されている。第2実施形態では、眼球下転量の長さを測定するための測定治具として、図8に示すテープ状マスク70を用いる。
テープ状マスク70は、透視可能な透明なフィルムで形成され、一方の面が着脱可能に貼り付けられる長方形状の接着部71と、接着部71の対向する2辺に隣接して設けられる一対の非接着部72と、を有している。ここで、透視可能な透明なフィルムは、テープ状マスク70を介して文字が読める程度に透視できる透明度を有する。
接着部71は、無色透明であり、その表面には複数のマークが形成されている。遠用アイポイントFPを示すFPライン73と、近用アイポイントと予測される領域に形成される第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76と、を有している。接着部71の左右方向の長さは特に限定されないが、検査用眼鏡レンズ12の左右方向の幅より小さい。
【0079】
FPライン73は、検査用眼鏡レンズ12における遠用アイポイントFPを通過して検査用眼鏡レンズ12の左右方向に直線状に延びる遠用アイポイントラインFLと一致する直線である。遠用アイポイントFPは、装着者が眼鏡100を実際に装着した状態で水平視した場合に視線が通る位置であり、予めその位置が確定されている。
第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76は、近用アイポイントNPがあると予測される領域に形成され、FPライン73と平行に形成される直線である。これらの線の幅は特に限定されないが、例えば1mmである。また、これらの線の間隔は特に限定されないが、例えば2mmである。また、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76は、互いに異なる不透明な色で形成され、第1のNPライン74は赤色、第2のNPライン75は緑色、第3のNPライン76は青色である。
【0080】
テープ状マスク70は、FPライン73が、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントFPを通る遠用アイポイントラインFLに一致するように貼り付けられている。装着者が近方視したときに最も近くに見えるラインの位置を近用アイポイントNPとして、FPライン73と選択されたラインの位置までの距離を眼球下転量の長さとする。
非接着部72は、検査用眼鏡レンズ12に接着されていない部分である。この非接着部72を把持することでテープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12を容易に剥離することができる。
【0081】
(2.治具貼付装置の構成)
次に、テープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12に貼り付ける治具貼付装置について説明する。
まず、治具貼付装置に載置される測定テープについて説明する。図9および図10に示すように、測定テープ700は、基材フィルム711とカバーフィルム712とが積層され、基材フィルム711とカバーフィルム712との間にテープ状マスク70を有している。基材フィルム711とテープ状マスク70とは、第1の接着層720によって接着している。また、テープ状マスク70のカバーフィルム側の面には、第2の接着層730が形成されている。第2の接着層730は、テープ状マスク70の接着部71に対応する領域に形成される。すなわち、第2の接着層730が形成されない領域は、テープ状マスク70の非接着部72である。なお、第2の接着層730をテープ状マスク70の一方の面全体に形成し、非接着部72に相当する領域に印刷を施すことで接着剤の粘着性を弱めることにより非接着部72を形成してもよい。
【0082】
ここで、測定テープ700からテープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12に貼り付ける手順を具体的に説明する。
まず、カバーフィルム712を基材フィルム711から剥離する。カバーフィルム712と第2の接着層730との接着強度は、テープ状マスク70と第2の接着層730との接着強度より弱い。したがって、カバーフィルム712と第2の接着層730との間で剥離する。これにより、テープ状マスク70の表面に第2の接着層730が露出する。
次に、テープ状マスク70の表面に露出した第2の接着層730にアクリル樹脂製の検査用眼鏡レンズ12を押し付け、テープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12に貼り付ける。
そして、基材フィルム711をテープ状マスク70から剥離する。テープ状マスク70と第1の接着層720との接着強度は、基材フィルム711と第1の接着層720との接着強度より弱い。したがって、テープ状マスク70と第1の接着層720との間で剥離する。これにより、テープ状マスク70は第2の接着層730を介して検査用眼鏡レンズ12に貼り付けられた状態となる。
次に、検査用眼鏡レンズ12に貼り付けられたテープ状マスク70により眼球下転量の測定を行った後、テープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12から剥離する。このとき、検査用眼鏡レンズ12と第2の接着層730との接着強度は、テープ状マスク70と第2の接着層730との接着強度より弱いため、検査用眼鏡レンズ12と第2の接着層730との間で剥離する。
このようにして検査用眼鏡レンズ12は、テープ状マスク70および第2の接着層730が全て除去され、元の状態に復元される。
【0083】
以上のフィルムおよび接着剤の構成は以下の通りである。なお、上記の接着強度のバランスは、各フィルムに剥離剤を塗布することにより調整することができる。
例えば、基材フィルム711としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニル等からなる群より選択される少なくとも一種の材料を含むシートであることが好ましい。また、基材フィルム711の厚さは3μm以上500μm以下であることが好ましい。
カバーフィルム712としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニル等からなる群より選択される少なくとも一種の材料を含むシートで、剥離剤が塗布されていることが好ましい。カバーフィルム712の厚さは3μm以上500μm以下であることが好ましい。
テープ状マスク70としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニル等からなる群より選択される少なくとも一種の材料を含むシートで、剥離剤が塗布されていることが好ましい。テープ状マスク70の厚さは3μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0084】
第一の接着層720に使用される接着剤としては、アクリル樹脂系、ゴム系、ウレタン樹脂系、シリコン樹脂系、ビニルエーテル系、およびエポキシ系樹脂系からなる群より選択される少なくとも一種の材料を含む層であることが好ましい。第一の接着層720の厚さは1μm以上200μm以下であることが好ましい。
第二の接着剤730に使用される接着剤としては、アクリル樹脂系、ゴム系、ウレタン樹脂系、シリコン樹脂系、ビニルエーテル系、およびエポキシ系樹脂系からなる群より選択される少なくとも一種の材料を含む層であることが好ましい。第二の接着剤730の厚さは1μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0085】
また、測定テープ700は、両端縁付近に、基材フィルム711およびカバーフィルム712を貫通する貫通孔740が形成されている。貫通孔740は、治具貼付装置に載置する際、後述の治具貼付装置800の係合部840に係合し、測定テープ700を固定するものである。
【0086】
次に、治具貼付装置800の構成について説明する。図11(A)に示すように、治具貼付装置800は、眼鏡100を保持する眼鏡保持台810と、眼鏡保持台810の上面に設けられたレンズ載置部820と、眼鏡100の位置を調整するためのフレーム支持部材830と、測定テープ700の貫通孔740と係合する係合部840と、を備えている。
【0087】
眼鏡保持台810は、図11(B)に示すように、眼鏡100を載置したときに検査用眼鏡レンズ12と対向する載置面811を上面として有する直方体状に形成され、載置面811には、検査用眼鏡レンズ12と対向する位置にレンズ載置部820を収納可能な矩形状の一対の凹部812と、一対の凹部812に挟まれた領域に載置面811の高さより低い位置に上面を有する中間部813と、を有している。
【0088】
レンズ載置部820は、一対の凹部812にそれぞれ収納可能な矩形状の低反発弾性素材である。低反発弾性素材としては、検査用眼鏡レンズ12の表面を傷つけず適度な弾性があるものが好ましく、例えばウレタンが用いられる。
眼鏡保持台810およびレンズ載置部820の表面には、テープ状マスク70のFPライン73との位置合わせを行うための左右方向に延びる位置合わせラインPLと、中間部813上でフレーム20の中央線との位置あわせを行うための上下方向に延びるフレーム基準線BLと、が形成されている。
【0089】
フレーム支持部材830は、位置合わせラインPLに平行な長尺状の部材であり、検査用眼鏡レンズ12の上下方向に移動自在とされている。フレーム支持部材830は、フレーム枠21の下辺211に接した状態で移動することにより、眼鏡100の位置を調整する。フレーム支持部材830は手動で調整可能とされている。
係合部840は、一対のレンズ載置部820の外側に凸状に形成されている。係合部840は、測定テープ700の貫通孔740と係合して測定テープ700を固定する。
したがって、治具貼付装置800の位置合わせラインPLと係合部840の位置関係と、測定テープ700のFPライン73と貫通孔740との位置関係と、が一致するようにそれぞれを設計する。
【0090】
(3.眼球下転量測定方法)
次に、治具貼付装置800を用いてテープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12に貼り付けるマスク貼付工程と、貼り付けられたテープ状マスク70により、眼球下転量を測定する測定工程について説明する。
(3−1.マスク貼付工程)
図12(A)に示すように、治具貼付装置800の載置面811上に、測定テープ700を載置する。このとき、測定テープ700の一対の貫通孔740を治具貼付装置800の係合部840に係合させて、測定テープ700の位置を固定する。ここで、位置合わせラインPLとFPライン73とが一致することを確認する。
【0091】
次に、フレーム支持部材830の位置決めを行う。眼鏡100の眼鏡フレーム20を開き、検査用眼鏡レンズ12の外側の表面が測定テープ700に接する向きに眼鏡100を治具貼付装置800の載置面811に載置する(図12(B)参照)。このとき、フレーム20の中心がフレーム基準線BLに一致するように載置する。検査用眼鏡レンズ12には、予め遠用アイポイントFPが確定され、その位置にマークが付けられている。したがって、検査用眼鏡レンズ12の遠用アイポイントFPと位置合わせラインPLまたはFPライン73とが一致するように、フレーム支持部材830をフレーム枠21に当接させた状態で眼鏡100の位置の微調整を行う。
【0092】
フレーム支持部材830の位置が決まると、眼鏡100を治具貼付装置800から一旦取り外し、測定テープ700のカバーフィルム712を基材フィルム711から剥離する。これにより、テープ状マスク70の第2の接着層730が露出する。
そして、眼鏡100がフレーム基準線BLおよびフレーム支持部材830に当接するように、一対の検査用眼鏡レンズ12の外側の表面を一対のレンズ載置部820の低反発性素材に押し付ける。これにより、図12(C)に示すように、検査用眼鏡レンズ12とテープ状マスク70が第2の接着層730を介して接着する。
【0093】
次に、図13に示すように、眼鏡100を基材フィルム711から剥離する。このとき、テープ状マスク70と第1の接着層720との間で剥離して基材フィルム711から離れ、テープ状マスク70は第2の接着層730を介して検査用眼鏡レンズ12に貼り付いた状態となる。これにより、図8に示すようなテープ状マスク70が貼り付けられた眼鏡100となり、眼球下転量を測定可能な状態となる。
【0094】
(3−2.測定工程)
次に、検査用眼鏡レンズ12に貼り付けられたテープ状マスク70により眼球下転量を測定する測定工程について説明する。
装着者は、検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク70が貼り付けられた眼鏡100を装着し、遠方視および近方視した際の視線の位置を確認する。
具体的には、眼鏡100を装着した状態で正面視した場合の瞳中心(視線)が、テープ状マスク70のFPライン73を通過するか否かを確認する。次に、眼鏡100を装着した状態で、読書をしている(近方視)場合の瞳中心(視線)がどの位置を通過するかを確認する。本実施形態では、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76が形成されているので、装着者はこれらのラインのうち、自分の視線が通過する位置と最も近いラインを判断する。
【0095】
ここで、このような眼鏡100を装着した装着者に実際に見えるラインについて説明する。装着者が眼鏡100を装着して近方視すると、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76はそれぞれ実際のラインの幅よりも広くぼやけた状態に見える(反射色)。図14に、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76と、各ラインとその周辺部における模式的な吸光スペクトルを示す。この吸光スペクトルは、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の中央の位置で吸収極大となり、各ラインから離れるほど吸収が小さくなっている。すなわち、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の中央の位置が最も濃く、その周辺部に向かうほど薄く見えるグラデーションとなっている。第1のNPライン74のグラデーションが終了する位置をそれぞれ第1の境界ライン741および第2の境界ライン742とし、第2のNPライン75のグラデーションが終了する位置をそれぞれ第3の境界ライン751および第4の境界ライン752とし、第3のNPライン76のグラデーションが終了する位置をそれぞれ第5の境界ライン761および第6の境界ライン762とすると、第2の境界ライン742と第3の境界ライン751との間に新たな白いラインが見える(透過光)。同様に、第4の境界ライン752と第5の境界ライン761との間に新たな白いラインが見える(透過光)。すなわち、実際に形成した第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の3本のラインよりも多くのラインが見えることになる(反射光と透過光の組み合わせ)。
【0096】
以上のように、テープ状マスク70に実際に形成した第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76とは異なる新たな白いラインを含めた5本のライン(反射光と透過光の組み合わせ)が装着者には見えるので、これらの5本のラインのうち自分の視線が通る位置に最も近いラインを判断することにより測定する。そして、選択されたラインとFPライン73との距離が、該装着者に対応する眼球下転量の長さとなる。
【0097】
(4.第2実施形態の作用効果)
以上のような第2実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
本実施形態では、遠用アイポイントを示すFPライン73、近用アイポイントを示す第1のNPライン74、第2のNPライン75、第3のNPライン76が形成されたテープ状マスク70を用いて眼球下転量の長さを測定する。
これによれば、装着者が実際に装着する眼鏡100を装着した状態で測定を行うことができるので、装着者の頭および眼球運動(視覚動作)だけでなく、装着者の姿勢にも応じた測定を行うことができる。したがって、眼鏡フレームや装着者の物を見るときの癖にも応じた個々に最適な眼球下転量の長さを精度高く測定することができる。
【0098】
また、装着者は、テープ状マスク70が貼り付けられた眼鏡100を装着し、近方視したときの視線の位置が検査用眼鏡レンズ12上の複数のラインのうちどのラインに最も近いかを判断するだけでよいので、装着者に負担をかけることなくより簡単に測定を行うことができる。
特に、第2実施形態では、実際に測定を行う際には、装着者には、テープ状マスク70に形成された第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の3本にラインよりも多くのラインが見える。通常、ラインの数が多いほどライン間の距離が狭くなるので、測定の精度が向上する。したがって、少ないラインの数であっても精度高く測定を行うことができる。
なお、第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の幅や間隔を調整することで、装着者に実際に見えるラインの数を調整することができるため、有用性が高い。
【0099】
さらに、第2実施形態の治具貼付装置800は、レンズ載置部820が低反発性素材から構成されているので、載置面811に固定されたテープ状マスク70に対して検査用眼鏡レンズ12を押し付けるだけでよい。したがって、簡単にテープ状マスク70を貼り付けることができる。
特に、店頭等にいる測定実施者にとって、検査用眼鏡レンズ12をテープ状マスク70に押し付けるだけで貼り付けることができるので、簡単に測定の準備を行うことができ、有用性が高い。
【0100】
そして、上記第2実施形態では、一対のレンズ載置部820の間に載置面811およびレンズ載置部820の上面よりも高さが低い中間部813が設けられている。これによれば、眼鏡100を載置面811上に載置したとき、ブリッジ22が中間部813に適合するため、眼鏡100の位置を安定させることができる。
また、テープ状マスク70は、非接着部72を有しているので、非接着部72を把持することにより簡単にテープ状マスク70を検査用眼鏡レンズ12から剥離することができる。
【0101】
〔変形例〕
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
例えば、上記第1実施形態では、フレーム支持部材52が自動で移動することとしたが、手動で位置合わせを行うこととしてもよい。これによれば、フレーム支持部材52を制御する制御手段を必要としないため、より簡単な構成とすることができる。
【0102】
また、上記第1実施形態では、一方の検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク3を貼り付けた後、ベース51を左右方向に移動させることにより、他方の検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスク3を貼り付ける工程としたが、これに限られない。例えば、レンズ貼付部材64の制御部642を延長し、左右の検査用眼鏡レンズ12の両方に把持部641を移動可能とした構成とすることもできる。これによれば、ベース51を移動させる必要がなく、把持部641のみの位置合わせを調整すればよいため、位置合わせがより安定する。
【0103】
また、上記第1実施形態では、テープ状マスク3の端部を折り曲げることによって折曲部32を形成したが、把持部641で把持できる形態であればこれに限られない。例えば、テープ基材31の端部から所定の距離までに、粘着性を有しない部材を粘着部311に貼り付けてもよい。これによれば、1つの部材をテープ基材31の粘着部311に貼り付けるだけでよいので、簡単な構成のテープ供給装置とすることができる。
【0104】
また、上記第1実施形態では、ベース51の載置面511を平面状に形成したが、眼鏡フレーム20(眼鏡100)をより安定して支持するために、ブリッジ22に係合する凸状部が載置面511上に設けられていてもよい。この場合、眼鏡フレーム20は、載置面511および凸状部に沿って移動自在となる。これによれば、眼鏡100の左右方向への移動を防止することができ、眼鏡100の位置をより安定させることができるため、テープ状マスク2の検査用眼鏡レンズ12への貼り付けをより精度高く行うことができる。
【0105】
さらに、上記第2実施形態では、テープ状マスク70に形成した第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76の間隔を2mmとしたが、これに限られない。例えば、これらの間隔を0.5mmとすると、装着者には、各ライン間に、各ラインの色が合成された色からなる新たなライン(反射光)が見えることになる。すなわち、第1のNPライン74(赤色)と第2のNPライン75(緑色)との間に黄色の新たなラインが見え、第2のNPライン75(緑色)と第3のNPライン76(青色)との間にはシアン色の新たなラインが見える。これは、図15に示すように、第1のNPライン74と第2のNPライン75との間隔が狭いため、第1のNPライン74のぼやけた部分と第2のNPライン75のぼやけた部分とが重なり合うためである。
これによれば、各ラインの幅、間隔および色を調整するだけで、それぞれ異なる色のラインを見える状態にすることができる。色の種類が豊富であるので、装着者には判断しやすく、装着者の負担を低減することができる。
【0106】
また、上記第2実施形態では、テープ状マスク70に形成した第1のNPライン74、第2のNPライン75、および第3のNPライン76は、互いに異なる色で形成されているが、これらは同一の色で形成されていてもよい。これによれば、インクの種類を少なくすることができるので、コスト低減を図ることができる。
【0107】
また、上記第2実施形態では、治具貼付装置800の位置合わせラインPLと係合部840の位置関係と、測定テープ700のFPライン73と貫通孔740の位置関係とを一致させる設計であったが、治具貼付装置800の係合部840を上下方向に移動可能にしてもよい。これによれば、治具貼付装置800と測定テープ700の設計および製造をそれぞれ自由にすることができるので、汎用性が高い。
【0108】
そして、上記第2実施形態では、治具貼付装置800のレンズ載置部820を一対形成し、一対のレンズ載置部820の間に中間部813を設ける構成としていたが、図16(A)および(B)に示すように、一対のレンズ載置部820を連結した形状の眼鏡載置部920としてもよい。眼鏡載置部920は、低反発性素材で構成されているため、眼鏡100を載置したとき、眼鏡100のブリッジ22は低反発性素材に押し付けられて、安定して位置合わせを行うことができる。
【0109】
また、上記第2実施形態では、テープ状マスク70に遠用アイポイントラインFLを示すFPライン73を形成しているが、図17に示すように、テープ状マスクの一辺を遠用アイポイントラインとしてもよい。すなわち、治具貼付装置800の位置合わせラインPLにテープ状マスク80の一辺を一致させる。これによれば、テープ状マスク80に遠用アイポイントを示すラインを形成しなくてよいので、テープ状マスク80の製造を簡略化することができる。
さらに、上記第2実施形態では、測定テープ700は、基材フィルム711とカバーフィルム712との間にテープ状マスク70を有する構成となっていたが、この構成に限られない。例えば、図18に示すように、1枚の基材フィルム790に切欠部791を形成することにより、テープ状マスク70を切取可能に形成してもよい。この場合、テープ状マスク70は容易に切り取れるように、切欠部791を長く形成し連結部を少なく形成することが好ましく、例えばテープ状マスク70の四隅のみを連結させる状態に形成する。これによれば、材料コストの低減を図ることができる。
【0110】
また、上記実施形態では、検査用眼鏡レンズ12にテープ状マスクを貼り付けて眼球下転量の測定を行ったが、測定された眼球下転量に基づいて設計された累進屈折力レンズ(眼鏡レンズ10)を眼鏡フレーム20に装着した眼鏡100に対してテープ状マスクを貼り付けてもよい。これによれば、設計された累進屈折力レンズの眼球下転量の確認を行うことができ、精度を高めることができる。すなわち、個々の装着者の視覚動作に応じた眼鏡レンズを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、累進屈折力レンズの眼球下転量を簡単に測定する測定治具として、眼鏡の販売店等で広く利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
10…眼鏡レンズ、12…検査用眼鏡レンズ、20…眼鏡フレーム、100…眼鏡、3…テープ状マスク、31…テープ基材、311…粘着部、32…折曲部、33…第1辺、34…第2辺、400…治具貼付装置、5…眼鏡保持部材、51…ベース、52…フレーム支持部材、6…テープ供給部材、61…送出部、611…送出テープ、62…カッター部、621…切断部、622…切断受部、623…折曲支持部、624…折曲生成部、625…折曲仕上部、63…接着処理部、631…圧着部材、64…レンズ貼付部材、641…把持部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する眼球下転量測定治具であって、
前記眼鏡フレームに装着された検査用眼鏡レンズ表面に形成され、前記遠用アイポイントを通過して水平方向に延びる基準線が設けられたマスクを備えたことを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項2】
請求項1に記載の眼球下転量測定治具において、
前記マスクは、前記装着者に予測される眼球下転量と同じ幅と、互いに対向する2辺とを有し、
前記基準線は、前記マスクの対向する2辺のうちいずれか一方であることを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項3】
請求項1に記載の眼球下転量測定治具において、
前記マスクは、互いに対向する2辺を有し、
前記基準線は、前記対向する2辺から離れた位置に設けられたことを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項4】
請求項2に記載の眼球下転量測定治具において、
前記マスクは、前記対向する2辺のうちいずれか他方が、前記近用アイポイント側に向けられて配置され、
テープ基材と、このテープ基材の検査用眼鏡レンズ側に設けられ前記検査用眼鏡レンズに着脱自在に貼り付ける粘着部と、を有するテープ状マスクであることを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の眼球下転量測定治具において、
前記マスクは、前記検査用眼鏡レンズの表面の前記近用アイポイントがあると予測される領域に前記基準線と平行に形成される複数の線を有し、
テープ基材と、このテープ基材の検査用眼鏡レンズ側に設けられ前記検査用眼鏡レンズに着脱自在に貼り付ける粘着部と、を有するテープ状マスクであることを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項6】
請求項5に記載の眼球下転量測定治具において、
前記複数の線は、互いに異なる色の線であることを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項7】
請求項4に記載の眼球下転量測定治具を検査用眼鏡レンズに貼り付ける治具貼付装置であって、
前記検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに取り付けられた眼鏡を保持する眼鏡保持部材と、
この眼鏡保持部材で保持された眼鏡に前記テープ状マスクを供給するテープ供給部材と、を備え、
前記眼鏡保持部材は、
前記検査用眼鏡レンズに対向するベースと、
このベースに検査用眼鏡レンズのアイポイントを通過して水平方向に延びて形成される水平注視野に直交する方向に移動自在に取り付けられた前記眼鏡フレームを支持するフレーム支持部材と、を有し、
前記テープ供給部材は、
前記テープ状マスクをカットするカッター部材と、
このカッター部材でカットされたテープ状マスクを前記眼鏡保持部材で保持された眼鏡まで搬送し、前記テープ状マスクをその一方の辺が前記水平注視野に沿うように貼り付けるレンズ貼付部材と、を有する
ことを特徴とする治具貼付装置。
【請求項8】
請求項4に記載の眼球下転量測定治具において、
前記テープ状マスクの端部は前記粘着部同士が重合するように折り曲げて形成されていることを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項9】
請求項7に記載された治具貼付装置において、
前記カッター部材は、前記テープ状マスクの端部を折り曲げる折曲形成部を有することを特徴とする治具貼付装置。
【請求項10】
請求項5または請求項6に記載の眼球下転量測定治具を検査用眼鏡レンズに貼り付ける治具貼付装置であって、
一対の前記テープ状マスクを備えた測定テープおよび前記眼鏡を保持する眼鏡保持台を備え、
前記眼鏡保持台の上面には、
前記検査用眼鏡レンズに対応する位置に設けられた低反発性素材からなるレンズ載置部と、
前記検査用眼鏡レンズの水平方向と直交する方向に移動自在に取り付けられ、前記眼鏡のフレームを支持するフレーム支持部材と、を有することを特徴とする治具貼付装置。
【請求項11】
請求項10に記載の治具貼付装置において、
前記測定テープは、基材フィルムとカバーフィルムとを備え、
前記基材フィルムと前記カバーフィルムとの間に一対の前記テープ状マスクを有することを特徴とする治具貼付装置。
【請求項12】
装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する方法であって、
前記眼鏡フレームに装着された検査用眼鏡レンズ表面に対して前記装着者に予測される眼球下転量と同じ幅を有するテープ状マスクを用い、このテープ状マスクの互いに対向する2辺のうちいずれか一方の辺を前記検査用眼鏡レンズにおける遠用アイポイントを通過するように位置決めし、いずれか他方の辺を前記検査用眼鏡レンズにおける近用アイポイント側に向けて前記検査用眼鏡レンズに貼り付けるマスク貼付工程と、
このテープ状マスクが貼り付けられた検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに設けられた眼鏡を前記装着者が装着して近用アイポイントが前記テープ状マスクの他方の辺と一致しているか否かを判断する判断工程と、を備え、
この判断工程で近用アイポイントが前記テープ状マスクの他方の辺と一致していないと判断した場合には前記テープ状マスクを検査用眼鏡レンズから剥がし、幅寸法の異なるテープ状マスクを貼り付けて再度判断工程を実施することを特徴とする眼球下転量測定方法。
【請求項13】
装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する方法であって、
請求項10に記載の治具貼付装置を用いて、前記テープ状マスクに設けられた基準線と前記遠用アイポイントとが一致するように前記眼鏡フレームを位置決めし、前記検査用眼鏡レンズを前記測定テープ側に押し付けることで前記検査用眼鏡レンズに前記テープ状マスクを貼り付けるマスク貼付工程と、
このテープ状マスクが貼り付けられた検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに設けられた眼鏡を前記装着者が装着して近用アイポイントが前記テープ状マスクに形成された複数の線のうちいずれの線と一致しているかを判断する測定工程と、を備えたことを特徴とする眼球下転量測定方法。
【請求項1】
装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する眼球下転量測定治具であって、
前記眼鏡フレームに装着された検査用眼鏡レンズ表面に形成され、前記遠用アイポイントを通過して水平方向に延びる基準線が設けられたマスクを備えたことを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項2】
請求項1に記載の眼球下転量測定治具において、
前記マスクは、前記装着者に予測される眼球下転量と同じ幅と、互いに対向する2辺とを有し、
前記基準線は、前記マスクの対向する2辺のうちいずれか一方であることを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項3】
請求項1に記載の眼球下転量測定治具において、
前記マスクは、互いに対向する2辺を有し、
前記基準線は、前記対向する2辺から離れた位置に設けられたことを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項4】
請求項2に記載の眼球下転量測定治具において、
前記マスクは、前記対向する2辺のうちいずれか他方が、前記近用アイポイント側に向けられて配置され、
テープ基材と、このテープ基材の検査用眼鏡レンズ側に設けられ前記検査用眼鏡レンズに着脱自在に貼り付ける粘着部と、を有するテープ状マスクであることを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の眼球下転量測定治具において、
前記マスクは、前記検査用眼鏡レンズの表面の前記近用アイポイントがあると予測される領域に前記基準線と平行に形成される複数の線を有し、
テープ基材と、このテープ基材の検査用眼鏡レンズ側に設けられ前記検査用眼鏡レンズに着脱自在に貼り付ける粘着部と、を有するテープ状マスクであることを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項6】
請求項5に記載の眼球下転量測定治具において、
前記複数の線は、互いに異なる色の線であることを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項7】
請求項4に記載の眼球下転量測定治具を検査用眼鏡レンズに貼り付ける治具貼付装置であって、
前記検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに取り付けられた眼鏡を保持する眼鏡保持部材と、
この眼鏡保持部材で保持された眼鏡に前記テープ状マスクを供給するテープ供給部材と、を備え、
前記眼鏡保持部材は、
前記検査用眼鏡レンズに対向するベースと、
このベースに検査用眼鏡レンズのアイポイントを通過して水平方向に延びて形成される水平注視野に直交する方向に移動自在に取り付けられた前記眼鏡フレームを支持するフレーム支持部材と、を有し、
前記テープ供給部材は、
前記テープ状マスクをカットするカッター部材と、
このカッター部材でカットされたテープ状マスクを前記眼鏡保持部材で保持された眼鏡まで搬送し、前記テープ状マスクをその一方の辺が前記水平注視野に沿うように貼り付けるレンズ貼付部材と、を有する
ことを特徴とする治具貼付装置。
【請求項8】
請求項4に記載の眼球下転量測定治具において、
前記テープ状マスクの端部は前記粘着部同士が重合するように折り曲げて形成されていることを特徴とする眼球下転量測定治具。
【請求項9】
請求項7に記載された治具貼付装置において、
前記カッター部材は、前記テープ状マスクの端部を折り曲げる折曲形成部を有することを特徴とする治具貼付装置。
【請求項10】
請求項5または請求項6に記載の眼球下転量測定治具を検査用眼鏡レンズに貼り付ける治具貼付装置であって、
一対の前記テープ状マスクを備えた測定テープおよび前記眼鏡を保持する眼鏡保持台を備え、
前記眼鏡保持台の上面には、
前記検査用眼鏡レンズに対応する位置に設けられた低反発性素材からなるレンズ載置部と、
前記検査用眼鏡レンズの水平方向と直交する方向に移動自在に取り付けられ、前記眼鏡のフレームを支持するフレーム支持部材と、を有することを特徴とする治具貼付装置。
【請求項11】
請求項10に記載の治具貼付装置において、
前記測定テープは、基材フィルムとカバーフィルムとを備え、
前記基材フィルムと前記カバーフィルムとの間に一対の前記テープ状マスクを有することを特徴とする治具貼付装置。
【請求項12】
装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する方法であって、
前記眼鏡フレームに装着された検査用眼鏡レンズ表面に対して前記装着者に予測される眼球下転量と同じ幅を有するテープ状マスクを用い、このテープ状マスクの互いに対向する2辺のうちいずれか一方の辺を前記検査用眼鏡レンズにおける遠用アイポイントを通過するように位置決めし、いずれか他方の辺を前記検査用眼鏡レンズにおける近用アイポイント側に向けて前記検査用眼鏡レンズに貼り付けるマスク貼付工程と、
このテープ状マスクが貼り付けられた検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに設けられた眼鏡を前記装着者が装着して近用アイポイントが前記テープ状マスクの他方の辺と一致しているか否かを判断する判断工程と、を備え、
この判断工程で近用アイポイントが前記テープ状マスクの他方の辺と一致していないと判断した場合には前記テープ状マスクを検査用眼鏡レンズから剥がし、幅寸法の異なるテープ状マスクを貼り付けて再度判断工程を実施することを特徴とする眼球下転量測定方法。
【請求項13】
装着者が実際に装着する眼鏡フレームに装着される眼鏡レンズの遠用アイポイントから近用アイポイントまでの距離である眼球下転量を測定する方法であって、
請求項10に記載の治具貼付装置を用いて、前記テープ状マスクに設けられた基準線と前記遠用アイポイントとが一致するように前記眼鏡フレームを位置決めし、前記検査用眼鏡レンズを前記測定テープ側に押し付けることで前記検査用眼鏡レンズに前記テープ状マスクを貼り付けるマスク貼付工程と、
このテープ状マスクが貼り付けられた検査用眼鏡レンズが眼鏡フレームに設けられた眼鏡を前記装着者が装着して近用アイポイントが前記テープ状マスクに形成された複数の線のうちいずれの線と一致しているかを判断する測定工程と、を備えたことを特徴とする眼球下転量測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−48321(P2011−48321A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266442(P2009−266442)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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