説明

眼疾患の治療及び予防方法

本発明書では、眼疾患の治療方法が提供される。該方法は、一般式(I)(式中、R1、R2、R3、R4及びAkは、明細書中で定義される通りである)の化合物を投与することを含む。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「眼障害の治療及び予防方法(METHODS FOR THE TREATMENT AND PREVENTION OF OCULAR DISORDERS)」と題する2007年5月19日に出願のDavid Houckへの米国特許仮出願第60/802208号に基づく優先権を主張する。上記参照出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(1 発明の分野)
本明細書では、水様液欠乏型ドライアイ状態、ブドウ膜炎及び水晶体過敏性眼内炎などの眼の疾患及び障害の治療又は予防におけるシクロスポリン化合物及び組成物の使用方法を提供する。いくつかの態様において、本明細書中で提供される方法で使用するための化合物は、3-アルキルアミノアルキル、3-ジアルキルアミノアルキル又は3-ヘテロシクリルアルキルで置換されたシクロスポリン化合物である。いくつかの実施態様において、該方法は、それを必要とする患者に、水様液欠乏型ドライアイ状態、ブドウ膜炎及び水晶体過敏性眼内炎などの眼の疾患及び障害を治療又は予防するのに有効な量の本明細書中で提供される化合物を投与することを含む。
【背景技術】
【0003】
(2 背景)
ドライアイ状態は、女性、年配者、及び結合組織障害(例えば、リウマチ様関節炎、シェーグレン症候群)を有する人々においてより頻繁に見受けられるが、広範な範囲の個体で起こる可能性がある。ドライアイを有する患者は、眼の刺激感又は不快感を訴えるのが一般的である。名称が暗示するように、乾燥が最も頻繁に挙げられる問題であり、患者は、さらに、かゆみ、灼熱感、又は「ざらざらする/砂のような」異物感を訴える場合がある。症状は、劣悪な空気品質、低湿度又は極度の暑さによって悪化し、1日の後期により顕著である傾向がある。時には、患者は、不快感と共に過剰な流涙又は流涙症を訴える。
【0004】
ブドウ膜の炎症であるブドウ膜炎は、米国において視力障害の原因の約10%を占める。眼のブドウ膜路は、虹彩、毛様体及び脈絡路からなる。網膜炎と呼ばれる上に重なる網膜の炎症、又は視神経炎と呼ばれる視神経の炎症は、ブドウ膜炎を伴って又は伴わないで起こり得る。
【0005】
ブドウ膜炎は、最も一般的には、解剖学的に前部、中間部、後部又はびまん性として分類される。前部ブドウ膜炎は、主として眼の前部弓形部分に集中し、虹彩炎及び虹彩毛様体炎を含む。中間部ブドウ膜炎は、末梢ブドウ膜炎とも呼ばれ、毛様体及び毛様体扁平部の領域の虹彩及び水晶体の直ぐ後ろの区域に集中し、それゆえ、別の用語「毛様体炎」及び「毛様体扁平部炎」も使用される。後部ブドウ膜炎は、網膜炎、脈絡膜炎又は視神経炎のいくつかの形態のいずれかを意味する。びまん性ブドウ膜炎は、前部、中間部及び後部構造体を含む眼のすべての部分を含む炎症を意味する。
【0006】
水晶体過敏性眼内炎は、ヒトの自己免疫疾患である。それは、外傷性又は医原性の水晶体嚢の破壊に続く炎症性の眼状態であり、水晶体誘発性ブドウ膜炎とも呼ばれる。水晶体過敏症は、水晶体が原因抗原であるブドウ膜炎の重篤な形態である。水晶体タンパク質は、通常、誕生前から水晶体嚢によって閉じ込められている。これらのタンパク質が、損傷又は手術によって又は時折白内障の進行中に眼中に放出されると、それらは、強烈に抗原性となり、自己免疫反応を刺激する場合がある。該反応が中程度であれば、それは慢性ブドウ膜炎と判断される。反応が極めて急速に進行するなら、眼は、すべての部分で重篤な炎症性となる。この後者の反応が、水晶体過敏症と名付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ドライアイ、ブドウ膜炎及び水晶体過敏性眼内炎などの眼の疾患及び障害を治療するための新規で効果的な化合物を開発することが引き続いて求められている。
【0008】
シクロスポリン類は、免疫抑制、抗炎症及び抗寄生虫特性を有する一群の非極性環状オリゴペプチドである。シクロスポリンAは、レスタシス(Restasis)の商標下でドライアイを治療するための局所眼用エマルジョン製剤の状態で上市されているシクロスポリンである。シクロスポリン類の非水溶性は、これらの化合物の製剤化における未解決の問題点である。一態様において、本発明は、眼疾患を治療するのに有用な特性を維持すると同時に、シクロスポリンAと比較して改善された水溶性を有するシクロスポリン誘導体を提供することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(3 要約)
本明細書では、眼疾患の治療又は予防方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の一般式(I)の化合物、或いはその医薬として許容し得る塩又は溶媒和物を投与することを含む、前記方法を提供する
【化1】

[式中、
Akは、アルキレンであり、
R1は、-NR5R6(ここで、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素、又は1〜6個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであるか、或いはR5及びR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4〜6個の環原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、該環は、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される別のへテロ原子を含んでいてもよく、アルキル、ヒドロキシル、アミノ、N-アルキルアミノ及びN,N-ジアルキルアミノから選択される同一又は異なってもよい1〜4個の基で置換されていてもよい)であり、
R2は、イソブチルであり、
R3は、(E)-2-ブテニル-1又はn-ブチルであり、
R4は、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル又はn-プロピルである]。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(4 詳細な説明)
眼の疾患及び障害の治療、予防又は改善方法を必要とする対象における、眼の疾患及び障害の治療、予防又は改善方法を提供する。一実施態様において、本発明は、眼疾患の治療又は予防のための医薬の製造において、前に定義した通りの一般式(I)の化合物、或いはその医薬として許容し得る塩又は溶媒和物を提供する。該方法及び組成物は、以下の項で詳細に説明される。
【0011】
(4.1定義)
本明細書中で提供される化合物及び複合体に言及する場合、次の用語は、特記しない限り、次の意味を有する。
【0012】
「シクロスポリン」は、当業者に周知の任意のシクロスポリン化合物又はその誘導体を指す。例えば、その内容が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Rueggerらの論文、Helv.Chim.Acta.59:1075-92(1976)、Borelらの論文、Immunology 32:1017-25(1977)を参照されたい。本明細書中で提供される方法で使用するための典型的な化合物は、シクロスポリン誘導体である。特記しない限り、本明細書に記載のシクロスポリンは、シクロスポリンAであり、本明細書に記載のシクロスポリン誘導体は、シクロスポリンAの誘導体である。
【0013】
「アルキル」は、詳細には約11個までの炭素原子を有する、より詳細には、炭素原子が1〜8個、さらにより詳細には炭素原子が1〜6個の低級アルキルのような一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。炭化水素鎖は、直鎖又は分枝鎖でよい。この用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、tert-オクチルなどの基によって例示される。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0014】
「アルキレン」は、詳細には約11個までの炭素原子、より詳細には1〜6個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖でよい二価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語は、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン異性体(例えば、-CH2CH2CH2-及び-CH(CH3)CH2-)などの基によって例示される。
【0015】
「アミノ」は、基-NH2を指す。
【0016】
「ヘテロ」は、ある化合物、又はある化合物上に存在する基を説明するのに使用される場合、該化合物又は基中の1つ以上の炭素原子がへテロ原子である窒素、酸素又は硫黄で代替されていることを意味する。ヘテロは、1〜5個の、特に1〜3個のへテロ原子を有するアルキル(例えば、ヘテロアルキル)、アリール(例えば、ヘテロアリール)のように、上述の任意のヒドロカルビル基に適用できる。
【0017】
「複素環(「heterocycle」又は「heterocyclic ring」)」は、当業者に周知の任意の複素環を指す。本明細書中で使用する場合、複素環は、当業者が認識するように、ヘテロアリール基又はシクロヘテロアルキル基でよい。いくつかの実施態様において、ヘテロシクリルは、環中に1つ以上のへテロ原子を含む4、5又は6員の飽和複素環を指す。
【0018】
「ジアルキルアミノ」は、基-NRR’を意味し、ここで、R及びR’は、独立に、本明細書中で定義される通りのアルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、ヘテロアリール又は置換されたヘテロアリール基である。
【0019】
「ハロゲン」又は「ハロ」は、クロロ、ブロモ、フルオロ又はヨードを指す。
【0020】
「医薬として許容し得る塩」は、その生物学的特性を保持し、毒性がないか、そうでなければ医薬として使用するのに望ましくない、本明細書中で提供される化合物の任意の塩を指す。このような塩は、当技術分野で周知の各種の有機及び無機対イオンから誘導し、含むことができる。このような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオン酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、桂皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホンサン、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、樟脳酸、樟脳スルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸などの有機又は無機酸を用いて形成される酸付加塩、或いは(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、(a)金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン若しくはアルミニウムイオン、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属水酸化物(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、亜鉛及びバリウムの水酸化物など)、アンモニアで代替されるか、或いは(b)脂肪族、脂環式又は芳香族有機アミン(例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、N-メチルグルカミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウムなど)などの有機塩基と配位する場合に形成される塩が含まれる。
【0021】
塩には、さらに、単に例として挙げれば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩など、そして該化合物が塩基性官能基を含むなら、ハロゲン化水素酸塩(例えば、塩酸塩及び臭化水素酸塩)、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩、ピクリン酸塩、桂皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ラウリル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、エタンスルホン酸塩、1,2-エタンジスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、4-クロロベンゼンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、4-トルエンスルホン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸塩、グルコヘプトン酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert-ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キナ酸塩、ムコン酸塩などの非毒性の有機又は無機酸の塩が含まれる。
【0022】
本明細書中で一般式の化合物について言及する場合、このような言及は、適切なら、一般式(I)の化合物の溶媒和物、水和物、或いは医薬として許容し得る酸又は塩基との塩を含むと解釈されることを理解されたい。
【0023】
「サルコシン」は、N-メチルグリシン(CH3NHCH2CO2H)を指す。
【0024】
「溶媒和物」は、非共有結合性分子間力によって結合された化学量論的又は非化学量論的量の溶媒をさらに含む本明細書中で提供される化合物又はその塩を指す。溶媒が水であるなら、該溶媒和物は水和物である。
【0025】
同一の分子式を有するが、それらの原子結合の性質又は配列、或いはそれらの原子の空間的配置を異にする化合物は、「異性体」と呼ばれることを理解されたい。それらの原子の空間的配置を異にする異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。
【0026】
互いに鏡像でない立体異性体は、「ジアステレオマー」と呼ばれ、重ね合わせることのできない互いに鏡像である立体異性体は、「エナンチオマー」と呼ばれる。化合物が不斉中心を有する場合、例えば、その中心が4つの異なる基に結合されている場合、一対のエナンチオマーが存在し得る。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置によって特徴付けることができ、Cahn及びPrelogの規則(Chanらの論文、Angew.Chem.78:413-447(1966)、Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.5:385-414(誤植:Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.5:511);Prelog及びHelmchenの論文、Angew.Chem.94:614-631(1982)、Angew.Chem.Internat.Ed.Eng.21:567-583;Mata及びLoboの論文、Tetrahedron:Asymmetry 4:657-668(1993))に従って(R)又は(S)と呼ばれるか、或いは分子が偏光面を回転させる仕方によって特徴付けることができ、右旋性又は左旋性(すなわち、それぞれ(+)-又は(-)-異性体として)と呼ばれる。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとして、又はそれらの混合物として存在できる。等比率のエナンチオマーを含む混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0027】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される方法で使用するための化合物は、1つ以上の不斉中心を所持し、それゆえ、このような化合物は、個々の(R)-又は(S)-エナンチオマーとして、或いはそれらの混合物として生成させることができる。例えば、式中の任意の位置の立体化学を明示することによって別途指示しない限り、明細書及び特許請求の範囲中での個々の化合物の記載又は命名は、個々のエナンチオマー及びそのラセミ又は別の混合物の双方が含まれると解釈される。立体化学の決定法及び立体異性体の分離法は、当技術分野で周知である。特定の実施態様において、本明細書では、塩基で処理することによって本明細書中に記載した化合物の立体異性体を提供する。
【0028】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される方法で使用するための化合物は、「立体化学的に純粋」である。立体化学的に純粋な化合物は、当業者が「純粋」と認識するあるレベルの立体化学的純度を有する。もちろん、この純度レベルは、100%未満である。いくつかの実施態様において、「立体化学的に純粋」は、別の異性体を実質的に含まない化合物を意味する。特定の実施態様において、化合物は、その85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%が単一の異性体からなる。
【0029】
本明細書中で使用する場合、用語「対象」及び「患者」は、本明細書中で互換的に使用される。用語「対象」及び「対象群」は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット及びマウス)及びヒトを含めた霊長類(例えば、カニクイザル、チンパンジーなどのサル及びヒト)を含む哺乳動物などの動物を指す。別の実施態様において、対象は、家畜動物(例えば、ウマ、ウシ、ブタなど)又はペット(例えば、イヌ又はネコ)である。いくつかの実施態様において、対象は、ヒトである。
【0030】
本明細書中で使用する場合、用語「治療用薬剤」及び「治療用薬剤群」は、ある障害又はその1つ以上の症状を治療又は予防するのに使用できる任意の薬剤(群)を指す。いくつかの実施態様において、用語「治療用薬剤」は、本明細書中で提供される化合物を指す。いくつかの実施態様において、用語「治療用薬剤」は、本明細書中で提供される化合物を指さない。治療用薬剤は、ある障害又はその1つ以上の症状を治療又は予防するのに、有用であることが知られている、或いは使用されていた又は現に使用されている薬剤である。
【0031】
「治療有効量」は、対象にある疾患を治療するために投与した場合に、該疾患に関わるこのような治療を成し遂げるのに十分である、ある化合物又は複合体又は組成物の量を意味する。「治療有効量」は、とりわけ、化合物、疾患及びその重症度、並びに治療すべき対象の年齢、体重などに応じて変わり得る。
【0032】
任意の疾患又は障害を「治療すること」又は「治療」は、一実施態様において、対象に存在する疾患又は障害を改善することを指す。別の実施態様において、「治療すること」又は「治療」は、対象が識別できない可能性のある少なくとも1つの理学パラメーターを改善することを指す。さらに別の実施態様において、「治療すること」又は「治療」は、疾患又は障害を理学的(例えば、識別できる症状の安定化)又は生理学的(例えば、理学パラメーターの安定化)のいずれか又は双方で調節することを指す。さらに別の実施態様において、「治療すること」又は「治療」は、疾患又は障害の開始を遅延させることを指す。
【0033】
本明細書中で使用する場合、用語「予防用薬剤」及び「予防用薬剤群」は、使用される場合、障害又はその1つ以上の症状を予防するのに使用できる任意の薬剤(群)を指す。いくつかの実施態様において、用語「予防用薬剤」は、本明細書中で提供される化合物を指す。いくつかの他の実施態様において、用語「予防用薬剤」は、本明細書中で提供される化合物を指さない。いくつかの実施態様において、予防用薬剤は、ある障害の開始、発生、進行及び/又は重症度を予防又は遅らせるのに、有用であることが知られている、或いは使用されていた又は現に使用されている薬剤である。
【0034】
本明細書中で使用する場合、用語「予防する」、「予防すること」及び「予防」は、治療薬(例えば、予防用又は治療用薬剤)の投与又は治療薬群の組合せ(例えば、予防用又は治療用薬剤の組合せ)の投与の結果として、対象におけるある障害に関わる1つ以上の症状の再発、開始又は発生を予防することを指す。
【0035】
本明細書中で使用する場合、表現「予防有効量」は、ある障害に関連した1つ以上の症状の発生、再発又は開始の予防をもたらすのに、或いは、別の治療剤(例えば、別の予防用薬剤)の(諸)予防効果を増強又は改善するのに十分な治療薬(例えば予防用薬剤)の量を指す。
【0036】
本明細書中で使用する場合、用語「組み合わせて」は、1種を超える治療薬(例えば、1種以上の予防及び/又は治療用薬剤)の使用を指す。用語「組み合わせて」の使用は、治療薬(例えば、予防及び/又は治療用薬剤)が障害を有する対象に投与される順序を限定しない。第1治療薬(例えば、本明細書中で提供される化合物のような予防又は治療用薬剤)は、障害を有する対象に、第2治療薬(例えば、予防又は治療用薬剤)に先立って(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間又は12週間前に)、第2治療薬と同時に、又は第2治療薬に続いて(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間又は12週間後に)投与できる。
【0037】
本明細書中で使用する場合、用語「相乗的」は、本明細書中で提供される化合物と、障害を予防、管理又は治療するのに使用されていた、又は現に使用されている別の治療薬(例えば、予防又は治療用薬剤)との、該治療薬群の相加効果よりもより効果的である組合せを指す。治療薬の組合せ(例えば、予防又は治療用薬剤の組合せ)の相乗効果は、障害を有する対象に対して、より少ない投与量の1種以上の治療薬を使用すること、及び/又は前記治療薬をより少ない頻度で投与することを可能にする。より少ない投与量の治療薬(例えば、予防又は治療用薬剤)を利用できること、及び/又は前記治療薬をより少ない頻度で投与できることは、障害の予防又は治療における前記治療薬の効力を減じることなしに、対象に前記治療薬を投与することに付随する毒性を低減する。さらに、相乗効果は、障害の予防又は治療における薬剤の改善された効力をもたらす。最後に、治療薬の組合せ(例えば、予防又は治療用薬剤の組合せ)の相乗効果は、どちらかの治療薬の単独を使用することに付随する有害又は望ましくない副作用を回避又は低減する可能性がある。
【0038】
(4.2 本発明の実施態様)
本明細書では、水様液欠乏型ドライアイ状態、ブドウ膜炎及び水晶体過敏性眼内炎などの眼の疾患及び障害の治療、予防又は改善方法であって、それを必要とする患者に式Iの化合物を投与することを含む、前記方法を提供する。なんらかの特定の作用理論に制約されることを望むものではないが、いくつかの実施態様において、化合物は、所望する治療効果を提供する際に涙腺の流涙を増強又は回復するように作用すると考えられる。
【0039】
(4.2.1 本方法で使用するための化合物)
特記しない限り、用語「シクロスポリン」は、本明細書中で使用する場合、当業者に周知の通りの化合物、シクロスポリンAを指す。例えば、その内容が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Rueggerらの論文、Helv.Chim.Acta.59:1075-92(1976);Borelらの論文、Immunology 32:1017-25(1977)を参照されたい。用語「シクロスポリン化合物」は、該化合物が、天然、合成又は半合成であるかどうかにかかわらず、本明細書に記載の眼疾患に対して活性を有する任意のシクロスポリン化合物を指す。
【0040】
いくつかの実施態様において、Akは、-(CH2)p-(ここで、pは1、2、3又は4である)であり、且つ/又はR1は、-NR5R6であり、R5及びR6は、次のように選択される。すなわち、a)R5及びR6は、それぞれ独立に、1〜6個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであるか、或いはb)R5及びR6は、それらが結合している窒素原子を一緒になって、5〜6個の環原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、該環は、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される別のへテロ原子を含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、Akは、-CH2CH2-である。
【0041】
いくつかの実施態様において、R1は、-NR5R6であり、ここで、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素、又は1〜6個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであるか、或いはR5及びR6は、それらが結合している窒素原子を一緒になって、5〜6個の環原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、該環は、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される別のへテロ原子を含んでいてもよく、同一又は異なっていてもよい1〜4個のアルキル基で置換されていてもよい。
【0042】
いくつかの実施態様において、R5及びR6は、双方ともメチルである。いくつかの実施態様において、R5及びR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、6個の環原子を含む飽和の複素環を形成し、該環は、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される別のヘテロ原子を含んでいてもよい。さらなる実施態様において、R5及びR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、アゼチジニル環を形成する。なおさらなる実施態様において、R5及びR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ピロリジニル環を形成する。いくつかの実施態様において、R5及びR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、ピペリジニル環を形成する。いくつかの実施態様において、R5及びR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、N-メチルピペラジニル環を形成する。いくつかの実施態様において、R5及びR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、モルホリニル環を形成する。いくつかの実施態様において、R5及びR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、2,6-ジメチルモルホリニル環を形成する。
【0043】
特定の実施態様において、シクロスポリン化合物は、シクロスポリンAと当業者に周知の3番目の位置、すなわちN-メチルグリシンの位置で異なる。いくつかの実施態様において、シクロスポリン化合物は、3-アルキルアミノアルキル、3-N,N-ジアルキルアミノアルキル又は3-へテロシクリルアルキル基を含む。シクロスポリン化合物は、さらに、当業者に周知の他のシクロスポリン修飾形態を含む。
【0044】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される方法は、対象に治療上又は予防有効量の前記一般式(I)(ここで、B、X、R1、R2及びR3は、前に定義した通りである)のシクロスポリン化合物、或いはその医薬として許容し得る塩又は溶媒和物を投与することを含む。
【0045】
いくつかの実施態様において、R3は、(E)-2-ブテニル-1である。いくつかの実施態様において、R3は、n-ブチルである。
【0046】
いくつかの実施態様において、R4は、エチルである。
【0047】
さらなる実施態様において、Akは(CH2)pであり、pは2又は3であり;R1は-NR5R6であり、R5及びR6は、同一又は異なってもよく、水素又はC1-3アルキルであるか、或いはR5及びR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4〜6個の環原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、該環は、窒素及び酸素からなる群から選択される別のヘテロ原子を含んでいてもよく、メチル、ヒドロキシル及びジメチルアミノから選択される同一又は異なってもよい1つ又は2つの基で置換されていてもよく、R2はイソブチルであり、R3は(E)-2-ブテニル-1であり、R4はエチルである。
【0048】
本明細書中で提供される方法で使用される化合物の中には、下に挙げるシクロスポリン化合物がある。
A 3-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エトキシ]シクロスポリン。
B 3-[2-(アゼチジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン。
C 3-[2-(ピロリジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン。
D 3-[2-(ピペリジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン。
E 3-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン。
F 3-[2-(モルホリン-4-イル)エトキシ]シクロスポリン。
G 3-[2-(2,6-ジメチルモルホリン-4-イル)エトキシ]シクロスポリン。
H 3-[2-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン。
I 3-{2-[(4-ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]エトキシ}シクロスポリン。
J 3-[2-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン。
K 3-[2-(イミダゾール-1-イル)エトキシ]シクロスポリン。
L 3-[2-(N-メチルアミノ)エトキシ]シクロスポリン。
M 3-[2-(N-イソプロピル-N-メチルアミノ)エトキシ]シクロスポリン。
N 3-[2-(アミノプロポキシ)]シクロスポリン。
以後、化合物の略字記号A〜Nを使用する。
【0049】
式(I)の化合物の塩は、新規であり、かくして、本発明のさらなる特徴を構成する。一実施態様において、塩は、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、フマル酸塩、馬尿酸塩、グルコン酸塩、アスコルビン酸塩、アジピン酸塩、グルタミン酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩、オレイン酸塩、ラウリル硫酸塩、臭化水素酸塩及び硝酸塩からなる群から選択される。
【0050】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体は、免疫抑制に対して最適化された効力を有する。シクロスポリンAに関する免疫調節効力は、混合リンパ球反応(mixed lymphocyte response)(MLR)のアッセイで測定できる。該アッセイは、当業者に周知であり、例えば、米国特許第6946465号を参照されたい。アッセイでは、ラット、マウス又はヒト由来のリンパ球を使用できる。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体は、MLRアッセイでシクロスポリンAと同等の効力を有する。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体は、シクロスポリンAと比べて、効力が約1〜約5000、約10〜約3000、約50〜約2000、約70〜約1000、約100〜約500、約150〜約300分の1である。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体は、シクロスポリンAに比べて、効力が約10〜約100、又は約100〜約5000分の1である。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体は、シクロスポリンAに比べて、効力が約2〜約100、約2〜約80、約2〜約65、約2〜約50、約2〜約30、約2〜約20、約2〜約10、約2〜約9、約2〜約7、約2〜約5分の1である。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体は、シクロスポリンAに比べて、効力が約1、5、10、15、25、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又は1000分の1である。
【0051】
他の細胞をベースにしたアッセイを使用して、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、TNF-α、インターフェロン及びTGF-βを含む特定の炎症促進性サイトカインの産生に対する活性を測定することもできる。いくつかの実施態様において、本明細書中のシクロスポリン誘導体は、サイトカインを下向き調節することによって、ドライアイ又はブドウ膜炎の治療において臨床的利益を提供する。
【0052】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体は、眼中での化合物の送達及び放出に向けて最適化された製剤を創製するのに有用である溶解性を有する。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体は、シクロスポリンAに優る改善された溶解性を有する。いくつかの実施態様において、シクロスポリン誘導体は、約0.001〜約5mM、約0.005〜約3mM、約0.007〜約1mM、約0.01〜約0.5mM、約0.02〜約0.3mM、約0.05〜約0.1mM、約0.06〜約0.6mM、約0.08〜約0.5mM又は約0.1〜約1mMの水溶性を有する。
【0053】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体は、シクロスポリンに比較して改善された安全性プロフィールを有する。安全性プロフィールは、急性及び慢性の動物毒性学モデルを含む各種の試験モデルで測定できる。潜在的なヒトへの毒性も、細胞毒性アッセイとして知られているヒトの細胞をベースにしたアッセイを使用して測定できる。細胞毒性は、各種の指標及びレポーターを使用して各種の細胞型で評価することができ、例えば、(「急性毒性に関するインビボでの開始投与量を見積もるためのインビトロデータの使用についての指導書(Guidance Document on Using In Vitro Data to Estimate In Vivo Starting Doses for Acute Toxicity)」)(NIH発行番号01-4500)を参照されたい。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される方法で使用するための化合物は、細胞毒性アッセイにおいて、シクロスポリンに比べて約2〜約10、約3〜約8、約2〜約6、約2〜約5、約2〜約3分の1の活性を有する。
【0054】
いくつかの実施態様において、化合物は、純粋な形態である。純度は、絶対純度、立体化学的純度又はその双方などの、当業者に周知の任意の純度でよい。いくつかの実施態様において、化合物は、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%純粋である。いくつかの実施態様において、化合物は、少なくとも90%純粋である。さらなる実施態様において、化合物は、少なくとも98%純粋である。これらの化合物の精製方法は、後で説明する。
【0055】
式(I)の化合物又はその医薬として許容し得る塩は、文献で既知であるか、或いは、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6583265号又は国際公開第99/65933号、国際公開第99/67280号に記載されているような既知法を適合させることによって調製できる。
【0056】
(4.2.2 医薬組成物及び投与方法)
本明細書中で提供される方法で使用するためのシクロスポリン化合物は、眼疾患を治療するのに有用である。
【0057】
本明細書中で提供される方法は、単独で、又は適合性があり且つ医薬として許容し得る1種以上の担体(希釈剤又は補助剤など)との組合せの形態で、或いは他の活性成分と組み合わせて使用される、適切なら塩の形態の少なくとも1種の一般式(I)の化合物を含む医薬組成物を使用する。臨床実践において、本明細書中で提供される方法で使用するためのシクロスポリン化合物は、限定はされないが、局所、経口、非経口を含む任意の通常の経路で、又は吸入(例えば、エアロゾルの形態の)によって投与することができる。一実施態様において、本明細書中で提供される方法で使用するためのシクロスポリン化合物は、経口で投与される。
【0058】
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、ピル、硬質ゼラチンカプセル、粉末又は顆粒を使用できる。これらの組成物において、本明細書中で提供される活性体は、蔗糖、乳糖又はデンプンなどの1種以上の不活性希釈剤又は補助剤と混合される。
【0059】
これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、又は制御放出を意図した被覆を含むことができる。
【0060】
経口投与のための液状組成物としては、水又は流動パラフィンなどの不活性希釈剤を含む医薬として許容し得る懸濁液、エマルジョン、シロップ及びエリキシルである溶液を使用できる。これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えば、湿潤、甘味又は風味剤を含むこともできる。
【0061】
非経口投与のための組成物は、エマルジョン又は滅菌溶液でよい。溶媒又はビヒクルとしては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、特にオリーブ油、又は注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルを使用できる。これらの組成物は、補助剤、特に湿潤、等張、乳化、分散及び安定剤を含むこともできる。滅菌は、いくつかの方法で、例えば、細菌用フィルターを使用して、放射線によって又は加熱によって成し遂げることができる。それらの組成物は、使用時に滅菌水又は任意のその他の注射可能な滅菌媒体中に溶解できる滅菌固体組成物の形態で調製することもできる。
【0062】
組成物は、エアロゾルでもよい。液体エアロゾルの形態で使用する場合、該組成物は、安定な滅菌溶液、又は使用時に非発熱性滅菌水、生理食塩水又は任意のその他の医薬として許容し得るビヒクルに溶解される固体組成物でよい。直接的に吸入されることを意図した固体エアロゾルの形態で使用する場合、活性成分は、微細に粉砕され、水溶性固体希釈剤又はビヒクル、例えば、デキストラン、マンニトール又は乳糖と組み合わされる。
【0063】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される組成物は、医薬組成物又は個々の単位剤形である。本明細書中で提供される医薬組成物及び個々の単位剤形は、予防又は治療有効量の1種以上の予防又は治療用薬剤(例えば、本明細書中で提供される化合物、或いはその他の予防又は治療用薬剤)、及び典型的には1種以上の医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含む。具体的な実施態様及びこの文脈において、用語「医薬として許容し得る」は、連邦又は州政府の規制当局によって承認されていること、或いは米国薬局方、又は動物、より詳細にはヒトでの使用に関するその他の一般的に認められた薬局方中に列挙されていることを意味する。用語「担体」は、希釈剤、補助剤(例えば、フロイントの(完全及び不完全)アジュバント)、賦形剤又はビヒクルを指し、治療剤は、これらの担体と一緒に投与される。このような医薬用担体は、水、及びオイル(ピーナツ油、大豆油、ミネラルオイル、ゴマ油などの、石油、動物、植物又は合成起源のオイルを含む)などの滅菌液体でよい。いくつかの実施態様において、医薬組成物を静脈内で投与するなら、水が担体である。生理塩水及びデキストロース及びグリセロールの水溶液も、液体担体として、特に注射可能な溶液のために採用できる。適切な医薬用担体の例は、E.W.Martinによる「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」中に記載されている。
【0064】
典型的な医薬組成物及び剤形は、1種以上の賦形剤を含む。適切な賦形剤は、製薬に関わる当業者にとって周知であり、適切な賦形剤の非制限的例には、デンプン、ブドウ糖、乳糖、蔗糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。ある特定の賦形剤が、ある医薬組成物又は剤形中に組み込むのに適しているかどうかは、限定はされないが、剤形を対象に投与する経路及び剤形中の具体的な活性成分を含む、当技術分野で周知の各種因子によって決まる。組成物又は個々の単位剤形は、所望なら、少量の湿潤剤又は乳化剤、或いはpH緩衝剤を含むこともできる。
【0065】
本明細書中で提供される乳糖不含組成物は、当業者に周知で且つ例えば、米国薬局方(U.S.Pharmacopia)(USP)SP(XXI)/NF(XVI)中に列挙されている賦形剤を含むことができる。一般に、乳糖不含組成物は、活性成分、並びに医薬として適合性があり、医薬として許容し得る量の結合剤/増量剤及び潤滑剤を含む。典型的な乳糖不含剤形は、活性成分、微結晶セルロース、α化デンプン及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0066】
水は、ある種の化合物の分解を促進するので、さらに、活性成分を含有する無水の医薬組成物及び剤形を提供する。例えば、水を添加(例えば、5%)することは、長期にわたる貯蔵寿命又は製剤安定性などの特性を判定するために、長期貯蔵を模擬する手段として製薬の技術分野で広く受け入れられている。例えば、Jens T.Carstensenの著作、「薬物の安定性:原理と実際(Drug Stability:Principles & Practice)」第2版、Marcel Dekker発行、New York、NY(ニューヨーク)州、1995年、379 80頁を参照されたい。実際、水及び熱は、ある種の化合物の分解を加速する。したがって、水分及び/又は湿度は、製剤の製造、取扱い、包装、貯蔵、出荷及び使用中に普通に遭遇するので、製剤に対する水の影響は、大きな重要性を有する場合がある。
【0067】
本明細書中で提供される無水の医薬組成物及び剤形は、無水の又は低水分の成分、及び低水分又は低湿度の条件を使用して調製できる。乳糖、及び第1級又は第2級アミンを含む少なくとも1種の活性成分を含有する医薬組成物及び剤形は、いくつかの実施態様において、製造、包装、及び/又は貯蔵中での水分及び/又は湿度との実質的な接触が予想されるなら、無水である。
【0068】
無水の医薬組成物は、その無水性が維持されるように調製され、貯蔵されるべきである。したがって、無水組成物は、いくつかの実施態様において、それらの組成物を適切な製剤キット中に封入できるような、水に対する曝露を防止することが知られている材料を使用して包装される。適切な包装の例には、限定はされないが、密封式のフォイル、プラスチック、単位投与用容器(例えば、バイアル瓶)、ブリスターパック、及びストリップパックが含まれる。
【0069】
本明細書中でさらに提供されるのは、活性成分の分解速度を低下させる1種以上の化合物を含有する医薬組成物及び剤形である。このような化合物は、本明細書中で「安定剤」と呼ばれ、限定はされないが、アスコルビン酸などの抗酸化剤、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤が含まれる。
【0070】
医薬組成物及び個々の単位剤形は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、徐放性製剤などの形態を取ることができる。経口製剤は、医薬級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。このような組成物及び剤形は、予防又は治療有効量の予防又は治療用薬剤を、いくつかの実施態様では、精製された形態で、対象に適切に投与するための形態を提供するのに適切な量の担体と共に含有する。製剤は、投与方式に適合すべきである。一実施態様において、医薬組成物又は個々の単位剤形は、無菌で、動物対象、又はヒト対象のような哺乳動物対象などの対象に投与するのに適した形態である。
【0071】
本明細書中で提供される医薬組成物は、その意図した投与経路と適合するように製剤される。投与経路の例には、限定はされないが、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下、筋内、皮下)、経口、口内、舌下、吸入、鼻腔内、経皮、局所、経粘膜、腫瘍内及び滑液内が含まれる。具体的な実施態様において、組成物は、定型的方法に従って、ヒトへの静脈内、皮下、筋内、経口、鼻腔内又は局所投与のために構成された医薬組成物として製剤される。ある実施態様において、医薬組成物は、定型的方法に従って、ヒトへの皮下投与のために製剤される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌された等張性水性緩衝液中の溶液である。必要なら、組成物は、可溶化剤、及び注射部位での痛みを軽減するためのリグノカムン(Lignocamne)などの局所麻酔薬を含むこともできる。
【0072】
剤形の例には、限定はされないが、錠剤;カプレット;軟質弾性ゼラチンカプセルなどのカプセル;カシェ剤;トローチ;ロゼンジ;分散剤;坐剤;軟膏;パップ(湿布)剤;ペースト;粉末;包帯;クリーム;プラスター;溶液;パッチ;エアロゾル(例えば経鼻スプレー又は吸入器);ゲル;懸濁剤(例えば、水性又は非水性液体懸濁剤、水中油型エマルジョン、又は油中水型液体エマルジョン)、溶液及びエリキシルを含む対象への経口又は粘膜投与に適した液体剤形;対象への非経口投与に適した液体剤形;対象への非経口投与に適した液体剤形を提供するように再構成できる滅菌固体(例えば、結晶性又は非晶質固体)が含まれる。
【0073】
本明細書中で提供される組成物、剤形の形状及び種類は、典型的には、それらの用途に応じて変化する。例えば、眼疾患の初期治療で使用される剤形は、該疾患の維持治療で使用される剤形に比べてより多量の1種以上の活性成分を含有することができる。同様に、非経口剤形は、同じ疾患又は障害を治療するのに使用される経口剤形に比べてより少量の1種以上の活性成分を含有することができる。本明細書に包含される具体的剤形が互いに異なるこれらの及びその他の方法は、当業者にとって容易に明らかであろう。例えば、「レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」第20版、Mack Publishing、Easton、PA(ペンシルベニア)州(2000年)を参照されたい。
【0074】
一般に、本明細書中で提供される組成物の諸成分は、別個に、或いは、例えば、活性薬剤の量を示したアンプル又は小袋などの密封容器中の凍結乾燥粉末又は水不含濃縮物のように単位剤形中で一緒に混合されて供給される。組成物を点滴によって投与する予定なら、該組成物を、無菌の医薬級の水又は生理塩水を含有する点滴瓶を用いて分散させることができる。組成物を注射によって投与するなら、投与に先立って諸成分を混合できるように、無菌の注射用水又は生理食塩水のアンプルを提供できる。
【0075】
本明細書中で提供される典型的な剤形は、食物と一緒に摂取される朝の個々の1日1回の投与として又はその日の間に分割投与として与えられる、1日につき約0.1mg〜約1000mgの範囲内にある本明細書中で提供される化合物、或いはその医薬として許容し得る塩、溶媒和物又は水和物を含有する。本明細書中で提供される個々の剤形は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、2.0、2.5、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、100、200、250、500又は1000mgの活性シクロスポリンを有する。
【0076】
(4.2.2.1 経皮、局所及び粘膜用剤形)
本明細書では、いくつかの実施態様において、経皮、局所及び粘膜用剤形を提供する。本明細書中で提供される経皮、局所及び粘膜用剤形には、限定はされないが、眼用の溶液、スプレー、エアロゾル、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、溶液、エマルジョン、懸濁液又は当業者に周知のその他の形態が含まれる。例えば、「レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」第20版、Mack Publishing、Easton、PA(ペンシルベニア)州(2000年)及び「医薬剤形入門(Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms)」第4版、Lea & Febinger、Philadelphia(1985年)を参照されたい。口腔内の粘膜組織を治療するのに適した剤形は、うがい薬又は口内用ゲルとして製剤できる。さらに、経皮剤形には、皮膚に適用し、所望量の活性成分の浸透を可能にするために指定期間中着けておくことのできる「貯蔵所型」又は「マトリックス型」パッチが含まれる。
【0077】
本明細書中に包含される経皮、局所及び粘膜用剤形を提供するのに使用できる適切な賦形剤(例えば、担体及び希釈剤)及びその他の材料は、製薬の技術分野の当業者にとって周知であり、所定の医薬組成物又は剤形を適用する個々の組織によって決まる。その事実を心に留め、典型的な賦形剤には、限定はされないが、ローション、チンキ、クリーム、エマルジョン、ゲル又は軟膏を形成するための、非毒性で且つ医薬として許容し得る、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、及びこれらの混合物が含まれる。所望なら、医薬組成物及び剤形に保湿剤又は湿潤剤を添加することもできる。このようなさらなる成分の例は、当技術分野で周知である。例えば、「レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」第20版、Mack Publishing、Easton、PA(ペンシルベニア)州(2000年)を参照されたい。
【0078】
治療すべき具体的な組織に応じて、さらなる成分を、本明細書中で提供される活性成分を用いる治療に先立って、該治療と一緒に、又は該治療に続いて使用できる。例えば、浸透増強剤を使用して、組織への活性成分の送達を助けることができる。適切な浸透増強剤には、限定はされないが、アセトン;エタノール、オレイルアルコール及びテトラヒドロフリルアルコールなどの各種アルコール;ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンなどのピロリドン;Kollidon級(ポビドン、ポリビドン);尿素;及びTween 80(ポリソルベート80)及びSpan 60(モノステアリン酸ソルビタン)などの各種の水溶性又は非水溶性糖エステルが含まれる。
【0079】
医薬組成物又は剤形のpH、或いは該医薬組成物又は剤形を適用する組織のpHを調節して、1種以上の活性成分の送達を改善することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度又は張性を調節して、送達を改善することができる。医薬組成物又は剤形にステアリン酸類などの化合物を添加して1種以上の活性成分の親水性又は親油性を有利に変更し、送達を改善することもできる。これに関して、ステアリン酸類は、製剤用の脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、及び送達増強剤又は浸透増強剤として役立つことができる。活性成分の様々な塩、水和物又は溶媒和物を使用して、生じる組成物の特性をさらに調節することができる。
【0080】
(4.2.2.2 眼投与のための医薬組成物)
本明細書中で提供される方法は、単独で、又は適合性があり且つ医薬として許容し得る希釈剤又は補助剤などの1種以上の担体との組合せの形態で、或いは眼疾患の治療で有用な別の薬剤などのその他の活性成分との組合せで使用される、少なくとも1種の一般式(I)の化合物、適切ならその塩形態を含有する医薬組成物を使用する。臨床実践において、本明細書中で提供される方法で使用するためのシクロスポリン化合物を含有する医薬組成物は、眼用薬物の投与に適した任意の形態、例えば、溶液、懸濁液、軟膏、ゲル、リポソーム分散液、コロイド状微小粒子懸濁液、眼内注射剤又は結膜下注射剤などの注射剤、或いは眼挿入物、例えば任意に生分解性の制御放出性ポリマーマトリックスの形態で投与することができる。いくつかの実施態様において、組成物は、水性溶液として製剤される。他の実施態様において、組成物は、懸濁液、粘性又は半粘性ゲル、或いは他のタイプの固体又は半固体の組成物である。
【0081】
製剤では、限定はされないが、水、水とC1-C7アルカノールなどの水混和性溶媒との混合物、0.5〜5%の非毒性水溶性ポリマーを含む植物油又はミネラルオイル、天然物(ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、トラガカントゴム、カラヤゴム、キサンタンゴム、カラゲニン、寒天及びアラビアゴムなど)、デンプン誘導体(酢酸デンプン及びヒドロキシプロピルデンプンなど)、さらにはその他の合成物(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、中性カルボポールなどの架橋ポリアクリル酸、又はそれらのポリマーの混合物など)を含む、各種の担体を使用できる。担体の濃度は、典型的には、活性成分の濃度の1〜10000倍である。
【0082】
製剤中に含めることのできるさらなる成分には、張性増強剤、保存剤、可溶化剤、非毒性の賦形剤、粘滑剤、金属イオン封鎖剤、pH調節剤、補助溶媒及び粘度増強剤が含まれる。
【0083】
いくつかの実施態様では、pHを例えば生理学的pHに調節するために、緩衝剤を使用する。pHは、典型的には、約4.0〜8.0、約4.0〜6.0又は約6.5〜7.5の範囲内に維持される。いくつかの実施態様において、pHは、約6、6.3、6.5、6.7、7.0、7.2又は7.5に維持される。酢酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、重炭酸ナトリウム、グルコン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、TRIS、及び各種のリン酸塩緩衝剤(Na2HPO4、NaH2PO4及びKH2PO4の組合せを含む)、並びにこれらの混合物などの適切な緩衝剤を添加することができる。添加される緩衝物質の量は、例えば、生理学的に許容できるpH範囲を確保し且つ維持するのに必要な量である。一般に、緩衝剤は、約0.05〜3重量%、約0.07〜2.5重量%、約0.1〜2重量%、約0.5〜2重量%又は約1〜2重量%の範囲の量で使用される。いくつかの実施態様において、緩衝剤の量は、製剤の約0.05、0.1、0.5、1、1.5、2、2.3又は3重量%である。
【0084】
いくつかの実施態様において、組成物は、イオン性又は非イオン性の化合物から選択される張性増強剤を含む。本明細書中で使用するためのイオン性化合物には、限定はされないが、例えば、CaCl2、KBr、KCl、LiCl、NaI、NaBr又はNaClなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハライド、或いはホウ酸が含まれる。非イオン性張性増強剤は、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、又はデキストロースである。本明細書中で提供される組成物は、例えば、即時使用眼用組成物に約50〜1000mオスモル、約100〜500mオスモル、約200〜400mオスモル、約280〜350mオスモル、又は約230〜320mオスモルの重量オスモル濃度を付与するのに十分な張性増強剤を含有する。
【0085】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される組成物は、保存剤を含有する。保存剤の例が、第4級アンモニウム塩(セトリミド、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンズオキソニウム(benzoxonium chloride)など)、チオサリチル酸のアルキル水銀塩(例えば、チオメルサールなど)、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀又はホウ酸フェニル水銀、パラベン(例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベンなど)、アルコール(例えば、クロロブタノール、ベンジルアルコール又はフェニルエタノールなど)、グアニジン誘導体(例えば、クロロヘキシジン又はポリヘキサメチレンビグアニドなど)、過ホウ酸ナトリウム、Germal(登録商標)II、或いはソルビン酸である。いくつかの実施態様において、保存剤は、セトリミド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンズオキソニウム、又はパラベンである。適切なら、眼用組成物に十分な量の保存剤を添加して、細菌及び真菌によって引き起こされる使用中の二次的汚染に対する防護を確実にする。
【0086】
別の実施態様において、本明細書中で提供される局所製剤は、保存剤を含有しない。このような製剤は、コンタクトレンズを着用する患者、いくつかの局所点眼薬を使用する患者、及び/又は既に障害された眼表面を有し、保存剤への曝露を制限することがより望ましい可能性のある患者のために有用である。
【0087】
本明細書中で提供される局所製剤は、さらに、可溶化剤を含有することができる。組成物中で使用するのに適した可溶化剤は、例えば、チロキサポール、脂肪酸グリセロールポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコール、グリセロールエーテル、シクロデキストリン(例えば、α-、β-又はγ-シクロデキストリン、例えば、アルキル化、ヒドロキシルアルキル化、カルボキシアルキル化又はアルキルオキシカルボニル-アルキル化誘導体、又はモノ-又はジグリコシル-α-、β-又はγ-シクロデキストリン、モノ-又はジマルトシル-α-、β-又はγ-シクロデキストリン又はパノシル-シクロデキストリン)、ポリソルベート20、ポリソルベート80、オリーブオイル、ヒマシ油、落花生油、ミネラルオイル、又はそれらの化合物の混合物である。いくつかの実施態様において、可溶化剤は、ヒマシ油とエチレンオキシドとの反応生成物、例えば、商業製品Cremophor(登録商標)EL又はCremophor RH40(登録商標)である。ヒマシ油とエチレンオキシドとの反応生成物は、眼によって十分許容される特に良好な可溶化剤であることが知られている。他の実施態様において、可溶化剤は、チロキサポール及びシクロデキストリンから選択される。本明細書中で使用される可溶化剤の濃度は、特に活性成分の濃度によって決まる。添加される量は、典型的には、活性成分を可溶化するのに十分な量である。例えば、可溶化剤の濃度は、活性成分の濃度の0.1〜5000倍である。
【0088】
製剤は、さらに、非毒性の賦形剤、例えば、ワセリン、ジメチルスルホキシド、Miglyol 182(Dynamit Nobel Kay-Fries Chemical Company、Mont Vale、N.J.(ニュージャージー)州から購入可)、アルコール(例えば、エタノール、n-プロピルアルコール、又はイソプロピルアルコール)、リポソーム又はリポソーム様製品、又は流動シリコーン、乳化剤、湿潤剤又は増量剤(例えば、200、300、400及び600と称されるポリエチレングリコール、又は1000、1500、4000、6000及び10000と称されるカーボワックス)を含有する。所望なら使用できるその他の賦形剤を以下に列挙するが、それらは、いかなる意味でも考え得る賦形剤の範囲を制限するものと解釈されない。それらは、EDTA-二ナトリウム又はEDTAなどの錯化剤;アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル-ヒドロキシアニソール、ブチル-ヒドロキシトルエン又はα-トコフェロールアセテートなどの抗酸化剤;シクロデキストリン、チオ尿素、チオソルビトール、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム又はモノチオグリセロールなどの安定剤;ビタミンE、及びビタミンEトコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート(Tocopherol Polyethylene Glycol 1000 Succinate)(TPGS)などのビタミンE誘導体;或いは例えば、ラウリン酸ソルビトールエステル、オレイン酸トリエタノールアミン、又はパルミチン酸エステルなどのその他の賦形剤である。いくつかの実施態様において、賦形剤は、EDTA-二ナトリウムなどの錯化剤、及びシクロデキストリンなどの安定剤である。添加される賦形剤の量及び種類は、個々の要求に従い、一般には、約0.0001〜約90重量%の範囲である。
【0089】
本明細書中で提供される製剤には、担体の粘度を増すために、他の化合物を添加することができる。粘度増強剤の例には、限定はされないが、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース(HPMC)、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)などのセルロース系ポリマー、並びにポリビニルアルコール(PVA)、ヒアルロン酸又はその塩(例えばヒアルロン酸ナトリウム)、硫酸コンドロイチン及びその塩、デキストラン、及び通常「カルボマー」と呼ばれる架橋アクリル酸ポリマー(B.F.GoodrichからCarbopol(登録商標)ポリマーとして入手可能)などのその他の膨潤可能な親水性ポリマーが含まれる。いくつかの実施態様において、任意の増粘剤の量は、約15cps〜25cpsの範囲の粘度が提供されるような量である。なぜなら、前述の範囲の粘度を有する溶液は、一般に、快適性及び製剤の眼中への保持の双方のために最適と考えられるからである。
【0090】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される組成物は、本明細書中で提供される化合物、潤滑剤として精製水(潤滑剤としての精製水)中のカルメロースナトリウム、低張剤、ホウ酸塩緩衝剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及びリン酸ナトリウムを含有する。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される組成物は、本明細書中で提供される化合物、ミネラルオイル及びラノリンを含有する。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される組成物は、本明細書中で提供される化合物、緩衝溶液、等張水溶液、クエン酸塩緩衝剤、塩化ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、及びポリクアッドポリクアテルニウム(polyquad polyquaterium)を含有する。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される組成物は、本明細書中で提供される化合物、塩化ナトリウム、ホウ酸、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、精製水、及び安定化オキシクロロ複合体を含有する。
【0091】
(4.2.3 治療方法)
本明細書では、そのような治療を必要とする対象における、ドライアイ、ブドウ膜炎及び水晶体過敏性眼内炎などの眼疾患を治療又は予防するための方法が提供される。
【0092】
ドライアイは、いくつかの関連のない発病原因に由来する可能性があると思われるが、複雑な状況のすべての提示症状は、曝露された外表面の脱水及び前に概略を述べた症状の多くをもたらす前部眼の涙膜の破壊である共通の現象を共有する。いくつかの実施態様において、ドライアイの症状には、乾燥感、及び眼のまぶたと眼の表面との間に留まる小物体によって引き起こされることの多いような頑固な刺激感が含まれる。ひどい場合には、視力が実質的に障害される。ドライアイ疾患には、限定はされないが、乾性角結膜炎(keratoconjunctivitis sicca)(KCS)、加齢性ドライアイ、スティーヴンス-ジョンソン症候群、シェーグレン症候群、眼瘢痕性類天疱瘡、眼瞼炎、角膜損傷、感染、ライリー-デイ症候群、先天性無涙腺症、栄養障害又は欠損(ビタミンを含む)、薬理学的副作用、眼ストレス並びに腺及び組織の破壊、スモッグ、煙、過剰乾燥空気、浮遊粒子への環境曝露、自己免疫及びその他の免疫不全障害が含まれる。本明細書中で提供される方法は、ドライアイの1種以上の疾患を治療又は予防する。
【0093】
本明細書では、いくつかの実施態様において、ブドウ膜炎の治療又は予防方法を提供する。いくつかの実施態様において、ブドウ膜炎は、前部、中間部、後部、又はびまん性ブドウ膜炎である。前部ブドウ膜炎は、眼の主として前部部分に局在し、虹彩炎及び虹彩毛様体炎が含まれる。中間部ブドウ膜炎は、末梢ブドウ膜炎とも呼ばれ、毛様体及び毛様体扁平部の領域の虹彩及び水晶体の直ぐ後ろの区域に集中する。後部ブドウ膜炎は、網膜炎、脈絡膜炎又は視神経炎のいくつかの形態のいずれかを意味する。びまん性ブドウ膜炎は、前部、中間部及び後部構造体を含む眼のすべての部分を含む炎症を意味する。ブドウ膜炎の症状は、ブドウ膜炎の位置に応じて異なる場合があり、急性且つ重症の症状は、一般に、前部ブドウ膜炎においてより通常的であり、眼痛、眼充血、羞明、かすみ眼又は視力低下、及び失明を挙げることができる。その他の症状には、視野と共に移動する小斑点又は雲である「飛蚊症」、眼の慢性発赤、帯状角膜症、続発性緑内障、及び後部被膜下白内障が含まれる。
【0094】
本明細書では、いくつかの実施態様において、、水晶体過敏性眼内炎の治療又は予防方法を提供する。本明細書では、いくつかの実施態様において、ブドウ膜炎の重症形態である水晶体過敏症の治療又は予防方法を提供する。
【0095】
(4.2.4 投与量及び単位剤形)
ヒトの治療学において、医師は、予防又は治癒的治療に合わせ、年齢、体重、疾患の段階、及び治療すべき対象に特異的なその他の因子に合わせて、最も適切と考える投与計画を決定する。いくつかの実施態様において、投与比率は、成人に対して1日につき約0.001〜約1000mgである。いくつかの実施態様において、投与量は、成人に対して1日につき約1〜約1000mg、約5〜約250mg、又は約10〜50mgである。いくつかの実施態様において、投与量は、成人に対して1日につき約5〜約400mg、約25〜200mg、約50〜約500mgである。いくつかの実施態様において、投与量は、成人に対して1日につき約0.001〜約500mg、約0.001〜約100mg、約0.005〜約50mg、約0.01〜10mg、約0.03〜1mg、約0.05〜1mg、約0.06〜1mg、約0.08〜1mg、又は約0.1〜1mgである。いくつかの実施態様において、投与量は、成人に対して1日につき約0.001mg、0.005mg、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.3mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、60mg、70mg、80mg、又は100mgである。
【0096】
ある障害又はその1種以上の症状の予防又は治療で有効である本明細書中で提供される化合物又は組成物の量は、疾患又は状態の本質及び重症度、並びに活性成分を投与する経路によって変化する。頻度及び投与量は、また、投与される具体的な治療薬(例えば、治療又は予防用薬剤)、障害、疾患又は状態の重症度、投与経路、並びに対象の年齢、身体、体重、反応、及び過去の病歴に応じた、各対象に特異的な因子によって変化する。有効投与量は、インビトロ又は動物モデル試験系から得られる用量-反応曲線から推定できる。
【0097】
組成物の典型的な投与量には、対象又は検体の重量1kgにつきミリグラム又はマイクログラム量の活性化合物が含まれる(例えば、約0.1μg/kg〜約50mg/kg、約0.5μg/kg〜約25mg/kg、約0.1μg/kg〜約10mg/kg、約1μg/kg〜約5mg/kg、約10μg/kg〜約5mg/kg、約100μg/kg〜約2.5mg/kg、又は約100μg/kg〜約1mg/kg)。いくつかの実施態様において、投与量は、対象又は検体の重量1kgにつき約10μg/kg〜約50mg/kg、約100μg/kg〜約25mg/kg、又は約100μg/kg〜約10mg/kgである。提供される組成物の場合、対象に投与される投与量は、典型的には、活性化合物の重量を基準にして対象の体重1kgにつき0.140mg〜3mgである。若干の実施態様において、対象に投与される投与量は、対象の体重1kgにつき0.20mg〜2.00mg、又は0.30mg〜1.50mgである。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される組成物の場合、対象に投与される投与量は、活性化合物の重量を基準にして、対象の体重1kgにつき約0.0001mg〜0.01mgである。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される組成物の場合、対象に投与される投与量は、活性化合物の重量を基準にして、対象の体重1kgにつき約0.0005mg〜0.01mgである。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される組成物の場合、対象に投与される投与量は、活性化合物の重量を基準にして、対象の体重1kgにつき0.140mg〜3mgである。いくつかの実施態様において、対象に投与される投与量は、対象の体重1kgにつき約0.0001mg〜約0.01mg、約0.0005mg〜約0.001mg、約0.001mg〜約0.01mg、約0.20mg〜2.00mg、又は0.30mg〜1.50mgである。いくつかの実施態様において、対象に投与される投与量は、約0.001mg/kgであり、体重が約60kgの患者の場合、投与される式(I)の化合物の量は投与毎に約0.006mgである。
【0098】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される組成物の本明細書に記載の状態に対して推奨される1日当たり投与量範囲は、個々の1日1回投与として又はある1日の間の分割投与として与えられる約0.0005mg/日〜約0.1mg/日、又は約0.1mg/日〜約1000mg/日の範囲にある。一実施態様において、1日当たりの投与量は、等量に分割された用量で1日2回投与される。一実施態様において、1日当たり投与量の範囲は、約10mg/日〜約200mg/日、約10mg/日〜約150mg/日、又は約25mg/日〜約100mg/日である。別の実施態様において、1日当たり投与量の範囲は、約0.0001mg/日〜約0.01mg/日、別の実施態様において、1日当たり投与量の範囲は、約0.0005mg/日〜約0.005mg/日、或いは別の実施態様において、1日当たり投与量の範囲は、約0.001mg/日〜約0.05mg/日である。当業者にとって明らかなように、本明細書中で開示される範囲をはずれた活性成分の投与量を使用することが必要な場合もある。さらに、臨床医及び治療している医師が、患者の反応に合わせて治療を中断、調節、又は終結する方法及び時期を承知していることに留意されたい。
【0099】
当業者が容易に認識するように、種々の疾患及び状態に対して、別の治療有効量を適用できる可能性がある。同様に、このような障害を予防、管理、治療又は改善するのに十分ではあるが、本明細書中で提供される組成物に付随する有害作用を引き起こすには不十分であるか、或いは該有害作用を低減するのに十分である量も、上述の投与量及び投与頻度の計画に包含される。さらに、対象に本明細書中で提供される組成物の複数の投与量を投与する場合には、該投与量のすべてが同一である必要はない。例えば、対象に投与される投与量を増やして、該組成物の予防又は治療効果を改善することができ、或いは投与量を減らして、個々の対象が経験している1種以上の副作用を低減することができる。
【0100】
具体的な実施態様において、対象における障害又はその1種以上の症状を予防、治療、管理、又は改善するために投与される本明細書中で提供される組成物の投与量は、活性化合物の重量を基準にして、対象の体重1kgにつき、約0.0001mg、約0.0005mg、約0.0007mg、約0.0009mg、約0.001mg、約0.0012mg、約0.0015mg、約0.0017mg、約0.002mg、約0.0025mg、約0.003mg、約0.0035mg、約0.004mg、約0.005mg、約0.01mg、約0.1mg、1mg、又はそれ以上である。別の実施態様において、対象における障害又はその1種以上の症状を予防、治療、管理、又は改善するために投与される本明細書中で提供される組成物の投与量は、約0.0001mg〜約100mg、0.0005mg〜50mg、0.0008mg〜25mg、0.001mg〜10mg、0.0013mg〜10mg、0.0015mg〜10mg、0.0018mg〜10mg、0.002mg〜10mg、0.005mg〜10mg、0.015mg〜10mg、0.01mg〜1mg、又は0.1mg〜1mgの単位投与量である。
【0101】
いくつかの実施態様では、本明細書中で提供される同一組成物の投与を繰り返すことができ、その投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は6カ月程度まで隔てられる。他の実施態様では、同一の予防又は治療用薬剤の投与を繰り返すことができ、その投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は6カ月程度まで隔てられる。
【0102】
いくつかの実施態様では、本明細書中で提供される化合物又はその医薬として許容し得る塩を投与に適した形態で含有する単位剤形を提供する。このような形態は、前に詳細に説明している。個々の実施態様において、単位投与量は、約0.001、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.05、0.1、1、5、10、25、50又は100mgの活性成分を含有する。このような単位投与量は、当業者によく知られた技術に従って調製できる。
(4.2.5 併用療法)
【0103】
本明細書では、いくつかの実施態様において、それを必要とする対象における水様液欠乏性ドライアイ状態、ブドウ膜炎又は水晶体過敏性眼内炎などの眼の疾患及び障害を治療又は予防するのに有効な第2薬剤を投与することを含む治療又は予防方法を提供する。第2薬剤は、ドライアイ、ブドウ膜炎又は水晶体過敏性眼内炎を治療又は予防するのに有効であることが当業者にとって周知である任意の薬剤でよい。第2薬剤は、当業者にとって現に周知である第2薬剤でよく、或いは第2薬剤は、ドライアイ、ブドウ膜炎及び/又は水晶体過敏性眼内炎の治療又は予防のために後に開発される第2薬剤でもよい。いくつかの実施態様において、第2薬剤は、ドライアイ、ブドウ膜炎及び/又は水晶体過敏性眼内炎の治療又は予防のために現に承認されている。
【0104】
いくつかの実施態様において、治療活性のある第2薬剤は、ドライアイ、ブドウ膜炎及び/又は水晶体過敏性眼内炎、或いはその根底にある原因のいずれかを治療するのに有用である可能性のある任意の薬物でよい。さらに、治療活性のある第2薬剤は、該疾患が関連しているかどうかにかかわらず、ドライアイ、ブドウ膜炎及び/又は水晶体過敏性眼内炎の疾患と同時に起こる可能性のある任意の疾患を予防又は治療するのに有用である任意の薬物でよい。いくつかの実施態様において、治療活性のある第2薬剤は、その使用の副作用として、本明細書中で考えられる眼疾患を引き起こす、眼疾患の一因となる、又は眼疾患を悪化させる可能性のある眼用局所組成物中で使用される薬物でよい。この態様において、本明細書中で提供される方法は、前記副作用を低減又は排除するのに有用である。
【0105】
本明細書中で提供される眼疾患の治療法で有用な治療活性のある第2薬剤の1つの部類が、ウリジン5’-三リン酸、ジヌクレオチド、シチジン5’-二リン酸、アデノシン5’-二リン酸、P1-(シチジン5’-)-P-(ウリジン5’-)四リン酸、P1,P4-ジ(ウリジン5’)-四リン酸、又はそれらの治療上有効な類似体又は誘導体などのヌクレオチドプリン作動性受容体作用薬であり、それらは、涙分泌、特に涙の粘液層に影響を及ぼす可能性があり、かくしてドライアイ疾患を治療する上で潜在能力を有する可能性がある。これらの化合物は、参照により本明細書に組み込まれる、次の特許、すなわち、米国特許第6555675号、米国特許第6548658号、米国特許第6436910号、米国特許第6348589号、米国特許第6331529号、米国特許第6323187号、米国特許第6319908号、及び米国特許第5900407号に記載されている。
【0106】
本明細書中で提供される眼疾患の治療方法で、治療活性のある第2薬剤として有用である化合物の別の有用な部類は、ニコチン及びその類似体、トランス-メタニコチン及びその類似体、エピバチジン及びその類似体、ピリドール誘導体、ロベリン及びその類似体などのピペリジンアルカロイド、いくつかのパラアルキルチオフェノール誘導体、及びイミダクロプリド及びその類似体などのニコチン性受容体作用薬である。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6277855号に開示のように、これらの化合物は、結膜杯細胞によるムチンの分泌を刺激すると考えられ、かくしてドライアイを治療するのに有用である可能性がある。
【0107】
本明細書中で提供される眼疾患の治療法で有用な治療活性のある第2薬剤の別の部類が、テトラサイクリン、テトラサイクリンの誘導体又は類似体、或いは化学的に修飾されたテトラサイクリンである。これらの化合物は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6455583 B1号に記載されているように、ドライアイのいくつかの症例に関連している涙クリアランスの遅延を矯正する上で潜在能力を有すると思われる。
【0108】
本明細書中で提供される眼疾患の治療方法で治療活性のある第2薬剤として有用である化合物の別の部類は、参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第6153607号に開示されているような、ドライアイを治療するのに有用であると考えられる、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、フルオロメトロン、酢酸フルオロメトロン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、ヒドロキシメチルプロゲステロン、リメキソラン(rimexolane)、ブデソニド、及びチクソコートルピバラテインなどのコルチコステロイド類である。
【0109】
本明細書中で提供される眼疾患の治療方法で治療活性のある第2薬剤として有用である化合物の別の部類は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5652209号中でドライアイを治療するのに有用であることが開示されている、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)を含む増殖因子又はサイトカインなどのヒト涙腺腺房上皮の産生物である。
【0110】
本明細書中で提供される眼疾患の治療方法で治療活性のある別の部類の有用な第2薬剤は、参照により本明細書に組み込まれる次の特許、米国特許第6107289号、米国特許第5958912号、米国特許第5688765号、及び米国特許第5620921号中でドライアイ疾患を治療するのに有用であることが教示されている、17α-メチル-17β-ヒドロキシ-2-オキサ-5α-アンドロスタン-3-オン、テストステロン又はテストステロン誘導体、4,5α-ジヒドロテストステロン又は誘導体、17β-ヒドロキシ-5α-アンドロスタン及び誘導体、19-ノルテストステロン又は誘導体、及び窒素置換アンドロゲンなどなどのアンドロゲン又はアンドロゲン類似体である。
【0111】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される眼疾患の治療方法で治療活性のある第2薬剤は、限定はされないが、プレドニゾン及びトリアムシノロンアセトニド;シクロペントラート及び臭化水素酸ホマトロピンなどの毛様体筋麻痺薬、及びメトトレキサート、シクロスポリンA、シクロホスファミド及びクロランブシルなどの免疫抑制薬を含む局所用コルチコステロイドである。
【0112】
本明細書中で提供される眼疾患の治療方法で治療活性のある別の部類の有用な第2薬剤は、限定はされないが、マクロライド類(例えば、ラパマイシン、トブラマイシン、アスコマイシン、アジスロマイシンなどのアザライド);オキサゾリジノン類(例えば、リネゾリド、エペレゾリド);キノロン類(例えば、オフロキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン)、ゲンタミシン、及びピロカルピンを含む抗生物質である。
【0113】
本明細書中で提供される眼疾患の治療方法で治療活性のあるその他の有用な第2薬剤は、シクロスポリンA、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、及びシクロスポリンGがら選択される。
【0114】
いくつかの実施態様において、第2薬剤は、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体と一緒に製剤されるか、或いは包装される。もちろん、当業者の判断により、このような複合製剤がどちらかの薬剤の活性又は投与方法を妨害する可能性がないなら、第2薬剤のみを、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体と一緒に製剤する。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体は、別個に製剤される。それらの製剤は、当業従事者の便宜のために、一緒に包装し、或いは別々に包装することができる。
【0115】
第2薬剤の投与量は、本明細書中で提供される併用療法で使用される量である。いくつかの実施態様において、本明細書中で提供される併用療法では、本明細書中で想定される疾患を予防又は治療するのに使用されていた又は現に使用されている投与量よりも少ない投与量が使用される。第2薬剤の推奨投与量は、当業者の知識から得ることができる。臨床的使用に関して承認されているこれらの第2薬剤の場合、推奨投与量は、例えば、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Hardmanら編、「Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics」第9版(1996年)、Mc-Draw-Hill、New York;「Physician’s Desk Reference(PDR)」57版(2003年)、Medical Economics Co.,Inc.、Montvale、NJ(ニュージャージー)州中に記載されている。
【0116】
各種の実施態様において、治療薬(例えば、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体及び第2薬剤)は、5分間未満隔てて、30分間未満隔てて、1時間隔てて、約1時間隔てて、約1時間〜約2時間隔てて、約2時間〜約3時間隔てて、約3時間〜約4時間隔てて、約4時間〜約5時間隔てて、約5時間〜約6時間隔てて、約6時間〜約7時間隔てて、約7時間〜約8時間隔てて、約8時間〜約9時間隔てて、約9時間〜約10時間隔てて、約10時間〜約11時間隔てて、約11時間〜約12時間隔てて、約12時間〜18時間隔てて、18時間〜24時間隔てて、24時間〜36時間隔てて、36時間〜48時間隔てて、48時間〜52時間隔てて、52時間〜60時間隔てて、60時間〜72時間隔てて、72時間〜84時間隔てて、84時間〜96時間隔てて、又は96時間〜120時間隔てて投与される。いくつかの実施態様では、2種以上の治療薬が、同一の来診時内に投与される。
【0117】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体及び第2薬剤は、周期的に投与される。サイクリング療法は、ある期間第1薬剤(例えば、第1の予防又は治療用薬剤)を投与すること、続いてある期間第2薬剤(例えば、第2の予防又は治療用薬剤)を投与すること、続いてある期間第3薬剤(例えば、第3の予防又は治療用薬剤)を投与すること等々、及びこの一連の投与を繰り返すこと、すなわち、1つの薬剤に対する耐性の発生を低減するための、1つの薬剤の副作用を回避又は低減するための、及び/又は治療の効力を改善するためのサイクルを含む。
【0118】
いくつかの実施態様では、同一薬剤の投与を反復することができ、該投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は6カ月間程度まで隔てることができる。他の実施態様では、同一薬剤の投与を反復することができ、該投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は6カ月間程度まで隔てることができる。
【0119】
いくつかの実施態様において、本明細書中で提供されるシクロスポリン誘導体及び第2薬剤は、ヒトを含む哺乳動物などの患者に、ある順序で、シクロスポリン誘導体が他の薬剤と一緒に作用してそれらが別な方法で投与された場合よりも高められた利益を提供できるような時間間隔内に投与される。例えば、第2活性薬剤は、同時に、又は続いて異なる時点に任意の順序で逐次的に投与できるが、同時に投与しない場合には、所望の治療又は予防効果を提供するためにそれらを十分近接した時間で投与すべきである。一実施態様において、シクロスポリン誘導体及び第2薬剤は、重なり合った時間にそれらの効果を発揮する。それぞれの第2薬剤は、任意の適切な形態、任意の適切な経路で別々に投与することができる。他の実施態様において、シクロスポリン誘導体は、第2活性薬剤の投与前に、投与と同時に、又は投与後に投与される。
【0120】
種々の実施態様において、シクロスポリン誘導体及び第2薬剤は、約1時間未満隔てて、約1時間隔てて、約1時間〜約2時間隔てて、約2時間〜約3時間隔てて、約3時間〜約4時間隔てて、約4時間〜約5時間隔てて、約5時間〜約6時間隔てて、約6時間〜約7時間隔てて、約7時間〜約8時間隔てて、約8時間〜約9時間隔てて、約9時間〜約10時間隔てて、約10時間〜約11時間隔てて、約11時間〜約12時間隔てて、24時間以下隔てて、又は48時間以下隔てて投与される。他の実施態様において、シクロスポリン誘導体及び第2薬剤は、同時に投与される。
【0121】
他の実施態様において、シクロスポリン誘導体及び第2薬剤は、約2〜約4日間隔てて、約4〜約6日間隔てて、約1週間隔てて、約1週間〜約2週間隔てて、又は2週間を超えて隔てて投与される。
【0122】
いくつかの実施態様において、シクロスポリン誘導体及び第2薬剤は、患者に周期的に投与される。サイクリング療法は、ある期間第1薬剤を投与すること、続いてある期間第2薬剤及び/又は第3薬剤を投与すること、及びこの一連の投与を繰り返すことを含む。サイクリング療法は、1種以上の薬剤に対する耐性の発生を低減し、1つの薬剤の副作用を回避又は低減し、且つ/又は治療の効力を改善することができる。
【0123】
いくつかの実施態様において、シクロスポリン誘導体及び第2薬剤は、約3週間未満の、2週間毎に約1回の、10日毎に1回の又は毎週1回のサイクルで投与される。1サイクルは、サイクル毎に約90分、サイクル毎に約1時間、サイクル毎に約45分にわたる点滴によるシクロスポリン誘導体及び第2薬剤の投与を含む。各サイクルは、少なくとも1週間の休止、少なくとも2週間の休止、少なくとも3週間の休止を含む。投与されるサイクル数は、約1〜約12サイクル、より典型的には約2〜約10サイクル、より典型的には約2〜約8サイクルである。
【0124】
別の実施態様において、一続きの治療は、患者に同時作用的に適用される。すなわち、第2薬剤の個々の投与は、シクロスポリン誘導体が、なお、第2活性薬剤と一緒に作用できるような時間間隔内に別個に投与される。例えば、1つの成分を、2週間毎に1回又は3週間毎に1回投与できる他の成分と組み合わせて1週間に1回投与できる。換言すれば、投与計画は、たとえ治療薬群が同時的又は同日中に投与されなくとも同時作用的に実施される。
【0125】
第2薬剤は、シクロスポリン誘導体と相加的又は相乗的に作用できる。一実施態様において、シクロスポリン誘導体は、同じ医薬組成物中の1種以上の第2薬剤と同時作用的に投与される。別の実施態様において、シクロスポリン誘導体は、別個の医薬組成物中の1種以上の第2薬剤と同時作用的に投与される。さらに別の実施態様において、シクロスポリン誘導体は、第2薬剤の投与に先立って、又は投与に続いて投与される。また、シクロスポリン誘導体及び第2薬剤を同一又は異なる投与経路で、例えば、経口と非経口で投与することも想定される。いくつかの実施態様において、シクロスポリン誘導体が、限定はされないが、毒性を含む有害副作用を潜在的に引き起こす第2薬剤と同時作用的に投与される場合、該第2活性薬剤は、有利には、有害副作用を顕在化させる閾値未満に下げた用量で投与することができる。
【0126】
(4.2.6 キット)
いくつかの実施態様において、眼疾患の治療又は予防方法で使用するためのキットが提供される。キットは、本明細書中で提供される医薬化合物又は組成物、及び眼疾患を治療又は予防するための使用法に関する情報をヘルスケア提供者に提供する説明書を含むことができる。説明書は、印刷形態、又はフロッピーディスク、CD、又はDVDなどの電子媒体の形態、或いはこのような説明を得ることのできるウェブサイトのアドレスの形態で提供できる。本明細書中で提供される化合物又は組成物の単位投与量は、対象に投与した場合に、該化合物又は組成物の治療又は予防上有効な血漿中濃度を対象中で少なくとも1日間対象内で維持できるような投与量を含むことができる。若干の実施態様において、本明細書中で提供される化合物又は組成物は、無菌の水性医薬組成物又は乾燥粉末(例えば、凍結乾燥した)組成物として含まれることができる。一実施態様において、化合物は、式(I)に一致している。
【0127】
若干の実施態様において、適切な包装材料が提供される。本明細書中で使用する場合、「包装材料」は、系中で慣習的に使用され、対象に投与するのに適した本明細書中で提供される化合物又は組成物を定めた区域内に保持する能力のある固体のマトリックス又は材料を指す。このような材料には、ガラス及びプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリカーボネート)のボトル、バイアル瓶、紙、プラスチック、及びプラスチックフォイルで積層された包みなどが含まれる。電子ビーム滅菌技術を採用するなら、包装材料は、内容物の滅菌を可能にするのに十分な低密度を有するべきである。
【0128】
本明細書中で提供されるキットは、本明細書中で提供される化合物又は組成物に加えて、上記方法中で述べたような化合物又は組成物と共に使用するための第2薬剤、又は第2薬剤を含有する組成物を含むこともできる。
【0129】
以下の実施例は、本発明の方法で使用される組成物の調製を例示する。具体的に提供するのは、シクロスポリンAからの3-[2-(ピロリジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン(化合物C)の7段階合成である。化合物Cのリン酸塩の合成も示す。化合物A、B、D、E、F及びGは、それらのリン酸塩と並んで、終わりから2番目の還元アミノ化の段階中に異なるアミンを使用する類似の方法で合成できる。
【0130】
特許を請求する主題の多くの修正形態及び変更形態は、本明細書中の教示を考慮して可能であり、したがって、それらは特許を請求する主題の範囲に包含される。
【実施例】
【0131】
(5 実施例)
(実施例E1)
[3’-アセトキシ-N-メチル-Bmt]1[(R)-2’-(2-ピロリジン-1-イル)エトキシ-Sar]3シクロスポリンA(150mg)のメタノール(10mL)溶液に25wt%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液(0.04mL)を添加し、生じた混合物を窒素下に室温で24時間撹拌した。メタノールを減圧下で除去し、残留物を、酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム、塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を除去した後、残留物を、分取液体クロマトグラフィーを使用して精製し、33mgの3-[2-(ピロリジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン(化合物C)を得た。1H-NMRは、5.89、7.10、7.15、7.64及び7.96ppmのピークを有する。LCMS(ESI):C68H122N12O13に対して計算値1314、実測値1315.2(M+H)+
【0132】
同様の方法で処理することによって、次の化合物も調製した。
【表1】

【0133】
化合物Cのリン酸塩を次のように調製した。すなわち、化合物C(50mg)をアセトニトリル(1mL)と水(1.0mL)との溶媒混合物に溶解し、この溶液に、H3PO4水溶液(0.1M、0.38mL)を添加した。生じた混合物を完全に混合し、次いで、28時間凍結乾燥して50mgの対応するリン酸塩を得た。1H-NMRは、5.92、7.11、7.63及び8.01ppmのピークを有する。
【0134】
(参照実施例 1)
アルデヒドである[3’-アセトキシ-N-メチル-Bmt]1[(R)-2’-ホルミルメトキシ-Sar]3シクロスポリンA(290mg)をメタノール(15mL)に溶解し、この溶液に酢酸(30μL)、ピロリジン(50μL)、及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム(30mg)を添加した。生じた混合物を室温で一夜撹拌した。溶媒を除去し、残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して精製し、154mgの[3’-アセトキシ-N-メチル-Bmt]1[(R)-2’-(2-ピロリジン-1-イル)エトキシ-Sar]3シクロスポリンAを得た。1H-NMRは、5.92、7.08、7.16、7.60及び7.90ppmのピークを有する。
【0135】
(参照実施例 2)
デス-マーチンペルヨージナン(300mg)のジクロロメタン(30mL)懸濁液に、[3’-アセトキシ-N-メチル-Bmt]1[(R)-2’-ヒドロキシメチルメトキシ-Sar]3シクロスポリンA(600mg)のジクロロメタン(15mL)溶液を添加し、生じた混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を、MTBE(100mL)で希釈し、10%Na2S2O3と飽和NaHCO3の1:1(容積/容積)混合物(2×50mL)、飽和塩溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を除去した後、580mgの[3’-アセトキシ-N-メチル-Bmt]1[(R)-2’-ホルミルメトキシ-Sar]3シクロスポリンAを得た。
【0136】
(参照実施例 3)
[3’-アセトキシ-N-メチル-Bmt]1[2’-アセトキシ-Sar]3シクロスポリンA(5.14g)のTHF(10mL)と無水エチレングリコール(100mL)との溶媒混合物溶液に、樟脳スルホン酸(1.0g)を添加し、生じた混合物を50℃で5時間撹拌した。反応混合物を、飽和NaHCO3(150mL)、水(200mL)で希釈し、酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を、水(150mL)、飽和塩化ナトリウム溶液(150mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を除去した後、2.66gの[3’-アセトキシ-N-メチル-Bmt]1[(R)-2’-ヒドロキシメチルメトキシ-Sar]3シクロスポリンAが得られた。1H-NMRは、5.90、7.26、7.46、8.03及び8.55ppmのピークを有する。
【0137】
(参照実施例 4)
[3’-アセトキシ-N-メチル-Bmt]1[(R)-2’-チオフェニル-Sar]3シクロスポリンA(4.4g)の氷酢酸(90mL)溶液に酢酸水銀(4.4g)を添加し、生じた混合物を50℃で3時間撹拌した。次いで、溶媒を除去し、残留物を、酢酸エチル(300mL)に溶解し、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(150mL)、次いで塩水(150mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を除去した後、粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して精製して、5.14gの[3’-アセトキシ-N-メチル-Bmt]1[2’-アセトキシ-Sar]3シクロスポリンAを得た。
【0138】
(参照実施例 5)
[(R)-2’-チオフェニル-Sar]3シクロスポリンA(4.36g)の無水ジクロロメタン(60mL)溶液に、N,N-ジメチルアミノピリジン(1.23g)、トリエチルアミン(1.39mL)及び無水酢酸(0.63mL)を添加した。生じた混合物を室温で約2.5日間撹拌した。次いで、反応混合物を、酢酸エチルで希釈し、水及び塩水で洗浄し、濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムを使用し酢酸エチルとヘキサンとの混合物で溶離するクロマトグラフィーで精製して、[3’-アセトキシ-N-メチル-Bmt]1[(R)-2’-チオフェニル-Sar]3シクロスポリンAを得た。
【0139】
(参照実施例 6)
ナトリウムアミド(7.0g)の液体アンモニア(200mL)懸濁液にシクロスポリンA(8.0g)の無水t-ブチルメチルエーテル(TBME、50mL)溶液を不活性雰囲気下に-33℃で添加した。生じた混合物を、不活性雰囲気下に-33℃で90分間撹拌した。次いで、フェニルジスルフィド(25g)を添加し、反応混合物を、不活性雰囲気下に-33℃でさらに2時間撹拌した。次いで、固体塩化アンモニウム(17.5g)で反応を止め、アンモニアを蒸発させた。次いで、反応混合物を、TBME(250mL)及び水(250mL)で希釈し、完全に混合し、層を分離した。有機層を、塩水(250mL)で洗浄し、次いで濃縮した。残留物を、最初に酢酸エチルとヘプタンとの混合物で、次いでメタノールと酢酸エチルとの混合物で溶離するシリカゲルカラムを使用するクロマトグラフィーで精製し、4.36gの[(R)-2’-チオフェニル-Sar]3シクロスポリンAを得た。
【0140】
(5.1 実施例1: 経口剤形-経口カプセル製剤)
本明細書中で提供される方法で使用するための1種以上の化合物は、カプセルとして製剤することができる。このようなカプセルは、10〜100mgの化合物、並びに微結晶セルロース、α化デンプン、乳糖、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム及び二酸化ケイ素からなる群から選択される1種以上の賦形剤を含むことができる。生じる組成物を、ゼラチン又は可塑剤などの1種以上の標準的なカプセル化組成物を用いてカプセル化することができる。
【0141】
(5.2 実施例2: 経口液体製剤)
本明細書中で提供される方法で使用するための1種以上の化合物は、シロップ又はエリキシル中の塩として製剤することができる。化合物又は化合物群は、5〜50mg/mLの総濃度でよい。シロップ又はエリキシルは、さらに、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールの混合物、PEG400、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー(例えば、ポロキサマー407)、ポリソルベート20、エタノール、糖、クエン酸及び/又は風味剤を含むことができる。
【0142】
(5.3 実施例3: 眼用エマルジョン製剤)
本明細書中で提供される方法で使用するための化合物は、眼用エマルジョンとして製剤することができる。このようなエマルジョンは、1mL中に、0.05%の本明細書中で提供される化合物、並びにグリセリン、ヒマシ油、ポリソルベート80、カルボマー1342、精製水、及びpH調整用水酸化ナトリウムから選択される1種以上の賦形剤を含むことができる。生じる製剤は、230〜320mOsmol/kgの重量オスモル濃度及び6.5〜8.0のpHを有することができる。
【0143】
(5.4 実施例4: 眼用点滴剤)
本明細書中で提供される方法で使用するための化合物は、眼用点滴剤として製剤することができる。このような点滴剤は、本明細書中で提供される方法で使用するための1種以上の化合物、並びに潤滑剤としての精製水、滅菌低張-ホウ酸緩衝溶液、天然の涙中に見出される電解質、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、及びホスホン酸安定剤から選択される1種以上の賦形剤を含むことができる。
【0144】
本明細書中で提供される方法で使用するための化合物は、眼用点滴剤として製剤することができる。このような点滴剤は、本明細書中で提供される方法で使用するための1種以上の化合物、並びに潤滑剤としての精製水、滅菌低張-ホウ酸緩衝溶液、天然の涙中に見出される電解質、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、及びホスホン酸安定剤から選択される1種以上の賦形剤を含むことができる。
【0145】
本発明の眼用製剤は、好都合には、眼への適用を容易にするために、点滴具を備えた容器などの計量適用に適した形態で包装される。点滴適用に適した容器は、通常、適切な不活性の非毒性プラスチック材料から作られ、一般には約0.5〜約20mLの溶液を含む。1つの包装は、1つ以上の単位用量を含むことができる。特に、保存剤不含溶液は、約12までの、好ましくは約5つまでの単位用量を含有する再封できない容器中で製剤されることが多く、ここで、典型的な単位用量は、1〜約8滴、好ましくは1〜約3滴である。1滴の体積は約20〜40μLである。
【0146】
(6. 生物学的活性)
マウス混合リンパ球反応(Mixed Lymphocyte Response)(MLR)アッセイ:このアッセイは、マウスの脾臓から単離されたT-細胞のDNA中へのトリチウム化チミジンの取り込みを測定することによってT-細胞の増殖を観察する。すなわち、T-細胞の増殖は、DNA中へのトリチウム取り込みに直接比例する。集めた脾臓細胞は、2つの系統それぞれにつき3匹のマウス、すなわち3匹のC57BL/6系及び3匹のBALB/c系マウスから調製した。MLRでは、C57BL/6系マウスをレスポンダー(Responder)(R)として使用し、BALB系マウスはスティミュレーター(Stimulator)(S)である。完全培地は、25mM HEPES、10%熱不活化低バックグラウンドウシ胎児血清、50μM 2-メルカプトエタノール、2mM L-グルタミン、及び抗生物質で補足されたRPMI 1640からなる。
【0147】
BALB/c脾臓細胞に、Bevill照射装置中、3000レントゲンでガンマー線を照射し、S細胞として使用するために培地で1回洗浄し、S細胞の原液は、完全培地中で1.6×106/mLとした。R細胞は、完全培地中、8×105/mLで蓄えた。最終細胞密度は、96穴マイクロタイタープレート中の試験ウェル毎に2×105のR、及び4×105のSとした。化合物を、DMSO中の10mM原液から培養培地中で希釈し、化合物を、0.001μM〜30μMの10種の濃度(3倍希釈)で試験した。
【0148】
バックグラウンドの対照ウェルには、150μLの培地/0.3%DMSO及び50μLのR細胞(2×105/ウェル)を入れた。他のすべてのウェルには、100μLの培地/0.3%DMSO又は化合物(やはり0.3%DMSO中)、50μLのR細胞(2×105/ウェル)、及び50μLのS細胞(4×105/ウェル)を入れた。プレートを5%CO2中、37℃で5日間インキュベートし、続いて、1μCi/ウェルの3H-チミジンを6〜18時間適用した。細胞を採取し、シンチレーションカウンターを使用してトリチウムの取り込みを測定した。
【0149】
(インビトロでのT-リンパ球活性化の阻害)
リンパ球浸潤は、ドライアイ及びブドウ膜炎の主要機構の1つである。したがって、T-細胞活性化の阻害は、双方の疾患を治療するための基礎を提供する。ヒト細胞を用いるアッセイを使用して、化合物が、1)T-細胞活性化を阻害するか(バイオマーカーとしてサイトカイン放出を利用する)、及び2)サイトカインで誘発される病状を低減又は予防するかどうかを判定する。
【0150】
化合物を、サイトカインの産生を測定するように設計されたインビトロ系中で、刺激されたヒトT-リンパ球と共にインキュベートした。サイトカインの産生は、インビボでのT-リンパ球の活性化及び結果として起こるサイトカイン誘発性傷害の指標である。ヒトT-リンパ球は、P23及びP26と名称をつけた2名のヒト供与者の炎症部位から単離した(Ysselらの論文、J.Immunol.Meth.,74:219)。細胞を、細胞培養培地中で化合物又はビヒクル(DMSO)と共に37℃で2時間、三つ組で処理した。次いで、5μLの抗-CD3/抗-CD28ExpandBeads(DynaBeads、Invitrogen 111.31)で刺激して、24時間インキュベートした。化合物を、3種の濃度、0.02、0.2及び2μMで試験した。未処理の対照を各サイトカインマーカーについて実施した。次のサイトカイン、IL2(Eli-pair、Diaclone)、IL4(Immuno Tools 313.300.49)、腫瘍壊死因子α(TNFα、Immuno Tools 313.330.1)、及びインターフェロンγ(IFN-γ)(Eli-pair、Diaclone)を、特定のELISAキットを使用し、製造業者の説明書に従って定量的に測定した。
【表2】

【0151】
上表1に挙げた化合物は、刺激されたヒトリンパ球からの、及びマウスMLRにおけるサイトカイン産生を阻害し、細胞毒性は、試験したいずれの濃度でも観察されなかった。
【0152】
人工涙製剤への化合物の溶解度を、濁度滴定を使用して測定した(Schoteらの論文、J.Pharm Sciences 91(3):856(2002))。種々の涙製剤は、緩衝化され、ナトリウム、カリウム、リン酸、及び塩化物を含む各種の生理学的電解質を含む。製剤は、主として、潤滑性及び粘度を提供する「活性」成分を異にする。化合物を、主要な部類の活性薬剤、すなわち、0.5%カルボキシメチルセルロース、0.95%プロピレングリコール、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム、1%ポリエチレングリコール400、+1%ポリビニルアルコール、及び0.1%デキストラン70及び0.3%ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む各種の人工涙製剤への溶解性について試験した。N-置換類似体の溶解度を各種人工涙中で測定すると、100〜2000μMであった(下記実施例を参照のこと)。
【表3】

【0153】
(HET-CAM試験を使用する眼刺激可能性の評価)
本発明の化合物を、それら化合物が眼に対して非刺激性である可能性について、HET-CAM試験として公知であるインビトロ試験で評価した。このインビトロ試験は、この特性を予測するものであることが認められている(Steilingらの論文、Toxicology in Vitro 13(2):375(1999))。この試験では、受精チキン卵の漿尿膜(chorio-allantoic membrane)(CAM)を試験物質/滅菌水の溶液に曝露する。約5分間のインキュベーション期間中に、刺激性を、CAM血管網の視覚観察によって、出血、溶解及び/又は凝集について評価する。これら諸効果のそれぞれの開始又は出現時刻を数値的に評点をつけ、評点を合計して単一の数値を得て、いくつかの卵にわたる平均数値評点を得た。歴史的対照物質及びビヒクルとの比較に基づいて、刺激可能性の格付けを得た(Luepkeの論文、Food Chem.Toxicol.23:287(1985))。本発明化合物の刺激可能性を下表に要約する。
【表4】

【0154】
(ウサギにおける眼耐容性の評価)
本発明の化合物を、ウサギの眼における3日間の試験期間にわたる点眼に関する耐容性について評価した。ウサギは、右眼に20分以内に50μLの試験物質/ビヒクル溶液5滴を、1日目には1回、2日目には2回、3日目には4回受け入れた。眼刺激性の評価は、ドレイズ尺度を使用して実施した(Draizらの論文、J.Pharmacol.Exp.Ther. 82:377(1944))。この評価で、化合物A(人工涙製剤中0.05%(w/w))は、極めて十分に耐容性であり、ビヒクルだけで処置した群と有意に異なるとは考えられない、ほんのわずかな結膜発赤を誘発した。
【0155】
本発明の化合物は、ドライアイ及びブドウ膜炎の局所治療で有益である溶解性及び抗炎症特性の双方を示す。
【0156】
(ウサギにおけるLPS誘発性ブドウ膜炎)
12匹のウサギで研究を行い、Allen JBらがExp.Eye Res. 62(1):21〜8(Jan;1996)に発表している方法に基づいて、ウサギにおけるエンドトキシン誘発性の急性ブドウ膜炎に対する化合物の効果を評価する。急性前部ブドウ膜炎を誘発するために、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)リポ多糖エンドトキシン(lipopolysaccharide endotoxin)(LPS)をウサギの右眼中に硝子体内で注射する。10ngのLPS又はビヒクルの硝子体内注射に続いて直ぐに、6匹のウサギに6時間毎に1回、両眼に最適用量、例えば0.1%w/vの化合物(右眼)又は対照(左眼)の局所治療を施す(下表参照)。4つの眼群には、ビヒクルのみを受け入れるネガティブ対照(群1)、薬物で治療しないポジティブ-ブドウ膜炎対照(群2)、薬物で治療するブドウ膜炎の眼(群3)を含み、各眼を、治療し、7日間続けた。眼を、臨床的刺激評点(顕微鏡眼検査)、蛍光染料試験、網膜電図検査法(網膜毒性の電気診断法)、眼房水のタンパク質濃度及び細胞数、並びに完全な眼組織病理学について評価する。7日目の後、群1と群3の間で臨床上有意な差異は見出されない。
【0157】
(モデルとしてイヌの乾性角結膜炎(KCS)を使用するドライアイに対する局所治療試験)
イヌKCSの典型的な臨床徴候には、進行性結膜炎、表層角膜炎、ムコイド眼漏、眼瞼痙攣、並びに視力喪失をもたらす終局的角膜瘢痕及び色素性角膜炎が含まれる。疾患は、両眼性で且つほとんど対称的である。KCSの診断は、典型的な臨床的特徴、及び濡れ/分が10mm未満のシルマー涙液試験(STT)値(正常値は15〜30mm/分)の存在に基づいてなされる。
【0158】
治療には、獣眼科医によって慢性(継続期間>3カ月)の免疫介在性KCSと診断されたイヌを選択した。研究は、病気に冒されたそれぞれの眼に1日に2回、0.1%濃度の化合物50μL(1滴)を使用する非盲検の単一群による効力研究である。薬物の効力を、涙液の産生量(STTで測定されるような)、角膜の臨床観察反応、並びにイヌの所有者及び関与眼科医の総合的効力評価に基づいて評価した。理学検査及び眼検査(生体顕微鏡法、間接検眼鏡法)を、試験継続期間(12週間)中、2週間毎に実施する。これらの検査には、STTを実施すること、及び眼炎症の重症度を評価することが含まれる。角膜炎症の量は、臨床試験前及び臨床試験中に、生体顕微鏡法により各検査中のそれぞれのイヌについて主観的に評点化される。0〜4(0=正常;4=最も重症)の範囲の評点を、3つのパラメーター、すなわち、角膜血管新生の面積(0、1〜25%、26〜50%、51〜75%、及び>75%)、透明度喪失の重症度(角膜混濁-正常、軽微、中度、重度の透明度喪失、及び不透明)、及び角膜混濁の面積(0、1〜25%、26〜50%、51〜75%、及び>75%)について記録した。結果を、テューキー-クラマー多重比較法を用いるANOVA、クラスカル-ウォリスの検定、スチューデントの検定及び/又はピアソンの相関係数(r)の計算を使用する統計解析によって実証する。すべての結果及び確率を、コンピューター化統計ソフトウェア(SAS,Inc、Cary、NC(ノースカロライナ)州)で出し、P<0.05の値を有意と考える。
【0159】
化合物に対する好ましい反応は、6週以内に眼科医によって観察されるような、STTでの≧5mm/分の増加、及び臨床徴候(例えば、粘液漏、眼瞼痙攣、結膜充血の減少など)の実質的改善として観察される。
【0160】
本明細書中で引用されたすべての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が、あたかも具体的且つ個別的に参照により組み込まれることを示すが如く、参照により本明細書に組み込まれる。本発明を、種々の好ましい実施態様に関して説明してきたが、当業者は、本発明の精神から逸脱することなしに、種々の修正、置換、省略、及び変更をなし得ることを認識するであろう。したがって、特許を請求する主題の範囲は、その等価形態を含む以下の特許請求の範囲によってのみ限定されると解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼疾患の治療又は予防方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の一般式(I)の化合物、或いはその医薬として許容し得る塩又は溶媒和物を投与することを含む、前記方法
【化1】

[式中、
Akは、アルキレンであり、
R1は、-NR5R6(ここで、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素、又は1〜6個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであるか、或いはR5及びR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4〜6個の環原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、該環は、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される別のへテロ原子を含んでいてもよく、アルキル、ヒドロキシル、アミノ、N-アルキルアミノ及びN,N-ジアルキルアミノから選択される同一又は異なってもよい1〜4個の基で置換されていてもよい)であり、
R2は、イソブチルであり、
R3は、(E)-2-ブテニル-1又はn-ブチルであり、
R4は、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル又はn-プロピルである]。
【請求項2】
R5及びR6が、それぞれ独立に、水素、又は1〜6個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであるか、或いはR5及びR6が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5〜6個の環原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、該環が、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される別のへテロ原子を含んでいてもよく、同一又は異なってもよい1〜4個のアルキル基で置換されていてもよい、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Akが-(CH2)p-であり、ここで、pは1、2、3又は4である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
R3が(E)-2-ブテニル-1であり、R4がエチルである、請求項1、2又は3記載の方法。
【請求項5】
R1がN-モルホリン又はN,N-ジメチルアミノである、請求項1〜4いずれか一項記載の方法。
【請求項6】
Akが(CH2)pであり、pが2又は3であり;R1が-NR5R6であり; R5及びR6が、同一又は異なってもよく、水素又はC1-3アルキルであるか;或いはR5及びR6が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4〜6個の環原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成し、該環は、窒素及び酸素からなる群から選択される別のへテロ原子を含んでいてもよく、メチル、ヒドロキシル及びジメチルアミノから選択される同一又は異なってもよい1又は2個の基で置換されていてもよく;R2がイソブチルであり;R3が(E)-2-ブテニル-1であり;R4がエチルである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
一般式(I)の化合物が、3-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エトキシ]シクロスポリン;3-[2-(アゼチジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン;3-[2-(ピロリジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン;3-[2-(ピペリジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン;3-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン;3-[2-(モルホリン-4-イル)エトキシ]シクロスポリン;3-[2-(2,6-ジメチルモルホリン-4-イル)エトキシ]シクロスポリン;3-[2-(3-ヒドロキシピロリジン-l-イル)エトキシ]シクロスポリン;3-{2-[(4-ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル]エトキシ}シクロスポリン;3-[2-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)エトキシ]シクロスポリン;3-[2-(イミダゾール-1-イル)エトキシ]シクロスポリン;3-[2-(N-メチルアミノ)エトキシ]シクロスポリン;3-[2-(N-イソプロピル-N-メチルアミノ)エトキシ]シクロスポリン;又は3-[2-(アミノプロポキシ)]シクロスポリン、或いはその医薬として許容し得る塩又は溶媒和物である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
疾患が、ドライアイ、ブドウ膜炎及び水晶体過敏性眼内炎からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の眼疾患を治療又は予防するための医薬を製造するための、請求項1〜7のいずれか一項で定義した通りの一般式(I)の化合物、或いはその医薬として許容し得る塩又は溶媒和物の使用。
【請求項10】
疾患が、ドライアイ、ブドウ膜炎及び水晶体過敏性眼内炎からなる群から選択される、請求項9記載の使用。
【請求項11】
眼疾患の治療又は予防方法であって、それを必要とする対象に、(a)治療有効量の請求項1で定義した通りの一般式(I)の化合物、或いはその医薬として許容し得る塩又は溶媒和物;及び(b)眼疾患を治療又は予防するのに有効な第2薬剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか一項で定義した通りの式(I)の化合物の医薬として許容し得る塩。

【公表番号】特表2009−537550(P2009−537550A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511089(P2009−511089)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/011919
【国際公開番号】WO2007/136759
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(507103363)スシネキス インク (6)
【Fターム(参考)】