説明

眼科および耳鼻咽喉科用装置材料

強度を向上させた軟質で高屈折率の装置材料が開示されている。これらの材料は、微小相分離された脂肪族および芳香族ドメインを含有する。本発明の装置材料は、自己強化高分子材料である。これらの材料は、芳香族アクリレートまたはメタクリレートモノマーまたはスチレン性モノマーと、少なくとも3000の数平均分子量(M)および0℃未満のガラス転移温度(T9)を有する二官能性マクロモノマーとの重合により、製造できる。これらの材料は、必要に応じて、少なくとも1000のMを有する一官能性マクロモノマーを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、改良された眼科または耳鼻咽喉科装置材料に関する。特に、本発明は、強度を改良した軟質で高屈折率のアクリル装置材料に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
小切開白内障手術の最近の進歩に伴って、人工水晶体で使用するのに適当な軟質で折り畳み可能な材料を開発することの重要性が増している。一般に、これらの材料は、3つの範疇の1つに入る:ヒドロゲル、シリコーンおよびアクリル。
【0003】
一般に、ヒドロゲル材料は、相対的に屈折率が低く、所定の屈折力を達成するのに厚いレンズが必要であるために、他の材料ほど望ましくない。シリコーン材料は、一般に、ヒドロゲルよりも屈折率が高いが、折り畳んだ位置で眼内に入れた後、爆発的に展開する傾向にある。爆発的に展開すると、角膜内皮を損傷するおそれがあり得、および/またはレンズ嚢を破裂させ得る。アクリル材料は、典型的には、屈折率が高く、そしてシリコーン材料よりもゆっくりとまたは制御可能に展開するので、望ましい。
【0004】
特許文献1は、眼内レンズ(「IOL」)材料として適当な高屈折率のアクリル材料を開示している。これらのアクリル材料は、主要成分として、2種のアリールアクリルモノマーを含有する。これらのアクリルの材料から製造されたIOLは、小切開部を通って挿入するために、巻かれるか折り畳まれ得る。
【0005】
特許文献2はまた、軟質アクリルIOL材料を開示している。これらの材料は、主要成分として、2種のアクリルモノマー(これらは、それらの各個の単独重合体の性質によって、定義されている)を含有する。第一モノマーは、その単独重合体が少なくとも約1.50の屈折率を有するものとして、定義されている。第二モノマーは、その単独重合体が22℃未満のガラス転移温度を有するものとして、定義されている。これらのIOL材料はまた、架橋成分を含有する。さらに、これらの材料は、必要に応じて、第四成分(これらは、最初の3つの成分とは異なる)を含有し得、これは、親水性モノマーから誘導される。これらの材料は、好ましくは、全体で約15%重量%未満の親水性成分を有する。
【0006】
特許文献3は、少なくとも約90重量%の2つの主要成分だけを含有する折り畳み可能で高屈折率の眼科用レンズ材料を開示している:1つは、アリールアクリル疎水性モノマーであり、そして1つは、親水性モノマーである。このアリールアクリル疎水性モノマーは、次式を有する:
【0007】
【化5】

ここで:Xは、HまたはCHである;
mは、0〜6である;
Yは、存在しないか、O、S、またはNRであり、ここで、Rは、H、CH、C2n+1(n=1〜10)、イソ−OC、C、またはCHである;そして
Arは、任意の芳香環であり、これは、非置換であり得るか、またはCH、C、n−C、イソ−C、OCH、C11、Cl、Br、C、またはCHで置換され得る。
【0008】
この特許文献3で記載されたレンズ材料は、好ましくは、約−20℃と+25℃の間のガラス転移温度(「T9」)を有する。
【0009】
可撓性眼内レンズは、折り畳まれ、小切開部を通って挿入され得る。一般に、軟質材料は、ますます小さい切開部を通って挿入できるように、大きな範囲まで変形され得る。軟質アクリルまたはメタクリル材料は、典型的には、シリコーンIOLに必要なほどに小さい切開部を通ってIOLを挿入可能にする適当な強度および可撓性の組み合わせを有しない。シリコーンエラストマーの機械的特性は、無機充填剤(典型的には、表面処理シリカ)を加えることにより、改善される。表面処理シリカは、軟質アクリルゴムの機械的特性も改善するが、最終製品の光学的透明性を低下させる。軟質アクリルゴムに近い屈折率を有する代替充填材料が必要とされている。
【0010】
軟質重合体に強化充填剤を加えると、引張り強度および引き裂き耐性が改善されることが知られている。強化は、この重合体を堅くし、重合体鎖の運動の局所自由度を制限することにより、その堅牢性を改善し、そして弱い固定点のネットワークを導入することにより、その構造を強化する。特定の充填剤の強化性能は、その特性(例えば、大きさおよび表面の化学的性質)、それと併用するエラストマーの種類、および存在している充填剤の量に依存している。従来の充填剤には、カーボンブラックおよびケイ酸塩充填剤が挙げられ、この場合、その粒径(最大表面積に対する)および湿潤性(粘着強度の対する)は、主に重要である。そのマトリックスと充填剤との間の化学共有結合は、一般に、有効な強化には必要ではない。エラストマー強化における最近の適用および概説については、以下を参照のこと:非特許文献1および非特許文献2。
【0011】
特許文献4は、コンタクトレンズ用のポリブタジエン系組成物を開示している。これらの組成物は、重合可能なエチレン性不飽和基で末端キャップ化されたポリブタジエン化合物を含有するモノマー混合物の重合生成物から作られる。これらの末端キャップ化ポリブタジエン化合物は、通常のコンタクトレンズ用モノマーと配合される。
【特許文献1】米国特許第5,290,892号明細書
【特許文献2】米国特許第5,331,073号明細書
【特許文献3】米国特許第5,693,095号明細書
【特許文献4】米国特許第5,708,094号明細書
【非特許文献1】Boonstra、「Role of particulate fillers in elastomer reinforcement:a review」、Polymer、1979年、第20巻、p.691
【非特許文献2】Guら、「Preparation of high strength and optically transparent silicone rubber」、Eur.Polym.J.、1998年、第34巻、p.1727
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
改良された軟質で折り畳み可能なアクリル装置材料が発見され、これらは、IOLとして使用するのに特に適しているが、また、他の眼科または耳鼻咽喉科用装置(コンタクトレンズ、人工角膜、角膜リングまたはインレー、耳換気チューブおよび鼻移植片)としても有用である。これらの高分子材料は、微小相分離された脂肪族および芳香族ドメインを含む。これらの微小相分離されたドメインの存在は、これらの高分子材料の強度を向上させ、それらの表面特性に影響を与える。
【0013】
(発明の詳細な説明)
特に明記しない限り、全ての成分の量は、%(w/w)基準(「wt.%」)で存在している。
【0014】
本発明の装置材料は、自己強化高分子材料である。これらの材料は、a)芳香族アクリレートまたはメタクリレートモノマー(1)またはスチレン性モノマー(2)と、b)少なくとも3000の数平均分子量(M)および0℃未満のガラス転移温度(T9)を有する二官能性マクロモノマー(3)との重合により、製造できる。これらの材料は、必要に応じて、少なくとも1000のMを有する一官能性マクロモノマー(4)を含有する。
【0015】
【化6】

R=H、CH、CHCHである;
x=O(CHである;
w=0〜6である;
Y=(CHH、O(CHH、H、Br、Cl、またはFである;
b=0〜12である;
p=0〜22である;
q=0〜22である;
A=O、NH、OCH、OCHCHO、OC(O)NHCHCHOである;そして
m、n=コモノマーのモル分率であり、ここで、m<1であり、そしてn=1−mである。
【0016】
式(1)の好ましいモノマーには、R=CHである;w=1〜5であり、そしてY=Hであるものがある。式(2)の好ましいモノマーには、R=Hであり、そしてY=Hであるものがある。
【0017】
式(3)および(4)の好ましいモノマーには、A=OまたはOC(O)NHCHCHOである;B=C(O)C(=CH)CHである;p=2であり、そしてq=0であるか、またはp=q=1である;そしてm=0.33〜0.50であるものがある。
【0018】
式(1)および(2)のモノマーは、公知であり、そして公知方法により製造できる。例えば、米国特許第5,331,073号および第5,290,892号を参照のこと。式(1)および(2)の多くのモノマーは、種々の業者から市販されている。
【0019】
式(3)および(4)のマクロモノマーは、飽和直鎖ポリオレフィンの官能性末端基に重合可能基を結合することにより、製造できる。例えば、末端ヒドロキシル基を含有するポリイソブチレン、エチレン−ブチレン共重合体および水素化ブタジエンは、一方または両方の鎖末端で、アクリレート、メタクリレートまたはスチレン性基で末端キャップ化される。これらの末端キャップは、公知方法(例えば、塩化メタクリロイルとのエステル化またはイソシアネートとの反応)により共有結合されて、カーバメート連鎖を形成する。
【0020】
本発明の共重合体装置材料は、20〜70%の式(1)または(2)のモノマーと、80〜30%の式(3)のマクロモノマーとを含有する。この装置材料は、必要に応じて、1種またはそれ以上の追加成分を含有し、この追加成分は、式(4)の一官能性マクロモノマー、重合可能UV吸収剤および重合可能着色剤からなる群から選択される。式(4)の前記一官能性マクロモノマーは、もし存在するなら、好ましくは、80%まで、最も好ましくは、0.1〜40%の量で、存在している。好ましくは、本発明の装置材料は、式(1)および(2)のモノマー、マクロモノマー(3)および(4)、ならびに重合可能UV吸収剤および着色剤以外の他の成分を含有しない。例えば、本発明の装置材料は、別の通常の架橋剤(例えば、エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;メタクリル酸アリル;1,3−プロパンジオールジメタクリレート;2,3−プロパンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;およびそれらの対応するアクリレートを含有しない。
【0021】
本発明の装置材料を形成するために、選択される成分は、混ぜ合わされ、そして熱または放射線のいずれかの作用によって重合を開始するラジカル開始剤を使用して、重合される。
【0022】
適当な重合開始剤には、熱開始剤および光開始剤が挙げられる。好ましい熱開始剤には、ペルオキシ遊離ラジカル開始剤(例えば、ヘキサン酸t−ブチル(ペルオキシ−2−エチル)およびジ−(第三級ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(これは、Perkadox(登録商標)16として、Akzo Chemicals Inc.,Chicago,Illinoisから市販されている)が挙げられる。特に、本発明の材料が青色光吸収発色団を含有しない場合、好ましい光開始剤には、ベンゾイルホスフィンオキシド開始剤(例えば、2,4,6−トリメチル−ベンゾイルジフェニル−ホスフィンオキシド;これは、Lucirin(登録商標)TPOとして、BASF Corporation(Charlotte,North Carolina)から市販されている)が挙げられる。開始剤は、典型的には、約5%(重量)未満の量で、存在している。
【0023】
本発明の装置材料は、必要に応じて、反応性UV吸収剤または反応性着色剤を含有する。好ましい反応性UV吸収剤は、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタリル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールであり、これは、o−Methallyl Tinuvin P(「oMTP」)として、Polysciences,Inc.,Warrington,Pennsylvaniaから市販されている。UV吸収剤は、典型的には、約0.1〜5%(重量)の量で、存在している。適当な反応性青色光吸収化合物には、米国特許第5,470,932号で記載されたものが挙げられる。青色光吸収剤は、典型的には、約0.01〜0.5%(重量)の量で存在している。IOLを製造するのに使用するとき、本発明の装置材料は、好ましくは、反応性UV吸収剤および反応性着色剤の両方を含有する。
【0024】
上記成分の特定の組み合わせ、ならびに任意の追加成分の種類および量は、最終装置材料の所望の特性により、決定される。好ましい実施態様では、本発明の装置材料は、5.5または6mmの光学直径(optic diameter)を有するIOL(これらは、圧縮または伸展されて、2mm以下の大きさの切開部に挿入するように設計されている)を製造するのに使用される。
【0025】
この装置材料は、好ましくは、乾燥状態で、589nm(Na光源)および25℃で、Abbe’屈折計で測定したとき、少なくとも約1.47の屈折率を有する。1.47より低い屈折率を有する材料から製造されたレンズは、必ず、それより高い屈折率を有する材料から製造された同じ強度のレンズよりも厚い。そういうものとして、同程度の機械的強度および約1.47より低い屈折率を有する材料から製造されたIOLレンズは、一般に、IOLの移植のために、比較的に大きい切開部を必要とする。
【0026】
微小相分離材料は、2つのガラス転移温度(「T9」)を示す。連続相および非連続相は、それぞれ、T9を示す。連続相のT9は、材料の可撓性、ならびに折り畳みおよび展開特性を決定し、好ましくは、約+25℃未満、さらに好ましくは、約−20℃未満である。非連続相のT9は、材料の可撓性に対して、連続相のT9ほどには影響を与えない。T9は、10℃/分での示差走査熱量測定により測定され、一般に、熱流曲線の転移の中間点で決定される。
【0027】
この装置材料は、好ましくは、少なくとも200%、さらに好ましくは、300%と800%の間の伸び率、および6.0Mpa未満、さらに好ましくは、5.0MPa未満のヤング率を有する。これらの特性は、このような材料から製造されたレンズが容易に折り畳まれ、そして折り畳んだとき、破壊、引き裂きまたは分裂しないことを示す。高分子試料の引張り特性は、20mmの全長、4.88mmのグリップ領域長、2.49mmの全幅、0.833mmの狭隘部幅、8.83mmのフィレット半径、および0.9mmの厚さを有するダンベル形状引張り試験片に対して、決定される。試験は、50N装填セルを備えたインストロン材料試験機モデル4400を使用して、23±2℃および50±5%相対湿度の標準実験室条件で、実行する。そのグリップ距離は、14mmであり、そしてクロスヘッド速度は、500mm/分間であり、試料は、破断するまで引っ張られる。その伸び率(歪み)は、初期グリップ距離に対する破断時の位置の割合(「伸び率」)として、報告される。その弾性率は、0%歪み(「ヤング率」)および100%歪み(「100%弾性率」)における応力−歪み曲線の瞬間的傾斜として、計算される。応力(「応力」)は、初期面積が一定であると仮定して、試料に対する最大負荷、典型的には、試料が破断するときの負荷で、計算される。引き裂き耐性は、ASTM D624−91 「Standard Test Method for Tear Strength of Conventional Vulcanized Rubber and Thermoplastic Elastomers」に従って、刻み目を付けていない(unnicked)90℃の角度の試験片(Die C)に対して、測定した。これらの試験片は、全長20mm、ゲージ長9.0mmおよび厚さ0.9mmであった。試験は、50N装填セルを備えたインストロン材料試験機モデル4400を使用して、23±2℃の標準実験室条件で、実行した。そのグリップ距離は、9.0mmであり、そしてクロスヘッド速度は、500mm/分間であり、試料は、破断するまで引っ張った。引き裂き耐性(「引き裂き強度」)は、試験中に得られた最大力を試料の厚さで割った値から計算された。
【0028】
本発明の装置材料のIOLは、2mmの切開部を通って固定できる小さい交差部分に伸展または圧縮できる任意の設計であり得る。例えば、このIOLは、ワンピースまたはマルチピースの設計として知られているものであり得、オプティック(optic)およびハプティック(haptic)部品を含む。オプティックは、レンズとして供される部分であり、そしてハプティックは、オプティックの装着され、そしてオプティックを眼内の正しい位置で保持するアームのようなものである。マルチピースレンズは、オプティックおよびハプティックが別々に製造され、次いで、ハプティックがオプティックに装着されるので、そう呼ばれている。単一ピースレンズでは、オプティックおよびハプティックは、1つの部分の材料から形成される。その材料に依存して、ハプティックは、次いで、材料から切断または旋盤されて、このIOLが製造される。
【0029】
IOLに加えて、本発明の材料はまたは、他の眼科または耳鼻咽喉科用装置(例えば、コンタクトレンズ、人工角膜、角膜インレーまたはリング、耳換気チューブおよび鼻移植片)として、使用するのに適当である。
【0030】
本発明は、さらに、以下の実施例により説明するが、これらは、限定ではなく、例示として解釈される。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
ガラス製バイアルに、約3400の数平均分子量(Mn)および約2.2:1のエチレン/ブチレンのモル比を有する二官能性マクロマー[5](1.6731g)と、スチレン[6](0.4519g)と、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0386gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、110℃で、18.5時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性および熱特性を、表1および3に載せる。
【0032】
【化7】

(実施例2)
ガラス製バイアルに、実施例1で使用したものと同じ二官能性マクロマー[5](1.7056g)と、メタクリル酸ベンジル(BzMA)0.6813gと、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0424gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。次いで、その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、70℃で、1時間、次いで、110℃で、2時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および許容できる可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性を、表1に載せる。
【0033】
(実施例3)
ガラス製バイアルに、実施例1で使用したものと同じ二官能性マクロマー[5](1.6916g)と、メタクリル酸2−フェニルエチル(2−PEMA)0.6812gと、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0445gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。次いで、その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、70℃で、1時間、次いで、110℃で、2時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性を、表1に載せる。
【0034】
(実施例4)
ガラス製バイアルに、実施例1で使用したものと同じ二官能性マクロマー[5](1.7952g)と、メタクリル酸3−フェニルプロピル(3−PPMA)0.7545gと、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0438gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。次いで、その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、70℃で、1時間、次いで、110℃で、2時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性を、表1に載せる。
【0035】
(実施例5)
ガラス製バイアルに、実施例1で使用したものと同じ二官能性マクロマー[5](2.1456g)と、メタクリル酸4−フェニルブチル(4−PBMA)0.8809gと、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0463gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、70℃で、1時間、次いで、110℃で、2時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性を、表1に載せる。
【0036】
(実施例6)
ガラス製バイアルに、実施例1で使用したものと同じ二官能性マクロマー[5](2.2465g)と、メタクリル酸5−フェニルペンチル(5−PPMA)0.9138gと、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0504gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、70℃で、1時間、次いで、110℃で、2時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性を、表1に載せる。
【0037】
(実施例7)
ガラス製バイアルに、実施例1で使用したものと同じ二官能性マクロマー[5](2.4039g)と、4200の数平均分子量(Mn)および2:1のエチレン/ブチレンのモル比を有する一官能性マクロマー[7](0.4182g)と、メタクリル酸2−フェニルエチル(2−PEMA)[8](1.0140g)と、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0710gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、70℃で、1時間、次いで、110℃で、2時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性および熱特性を、表2に載せる。
【0038】
【化8】

(実施例8)
ガラス製バイアルに、実施例1で使用したものと同じ二官能性マクロマー[5](1.2705g)と、実施例7で使用したものと同じ一官能性マクロマー[7](1.2706g)と、メタクリル酸2−フェニルエチル(2−PEMA)[8](0.8818g)と、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0640gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、70℃で、1時間、次いで、110℃で、2時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性を、表2に載せる。
【0039】
(実施例9)
ガラス製バイアルに、実施例1で使用したものと同じ二官能性マクロマー[5](0.2008g)と、実施例7で使用したものと同じ一官能性マクロマー[7](2.4000g)と、メタクリル酸2−フェニルエチル(2−PEMA)[8](0.8667g)と、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0686gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、70℃で、1時間、次いで、110℃で、2時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性を、表2に載せる。
【0040】
(実施例10)
ガラス製バイアルに、約3400の数平均分子量(Mn)および約2.2:1のエチレン/ブチレンのモル比を有する二官能性マクロマー[5](2.9598g)と、スチレン[6](0.5749g)と、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0783gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、110℃で、17.9時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性および熱特性を、表3に載せる。
【0041】
(実施例11)
ガラス製バイアルに、約3400の数平均分子量(Mn)および約2.2:1のエチレン/ブチレンのモル比を有する二官能性マクロマー[5](2.9179g)と、スチレン[6](1.3259g)と、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0924gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、110℃で、17.9時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性および熱特性を、表3に載せる。
【0042】
(実施例12)
ガラス製バイアルに、約3400の数平均分子量(Mn)および約2.2:1のエチレン/ブチレンのモル比を有する二官能性マクロマー[5](2.5226g)と、スチレン[6](1.4144g)と、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0798gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、110℃で、17.1時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性および許容できる可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性および熱特性を、表3に載せる。
【0043】
(実施例13)
ガラス製バイアルに、約3400の数平均分子量(Mn)および約2.2:1のエチレン/ブチレンのモル比を有する二官能性マクロマー[5](2.3026g)と、スチレン[6](1.6158g)と、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0866gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、110℃で、17.1時間硬化させた。得られた材料は、優れた透明性、および実施例1〜12の材料と比較して限定された可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性および熱特性を、表3に載せる。
【0044】
(実施例14)
ガラス製バイアルに、約3400の数平均分子量(Mn)および約2.2:1のエチレン/ブチレンのモル比を有する二官能性マクロマー[5](1.9912g)と、スチレン[6](1.7096g)と、ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル(t−BPO)0.0735gとを充填した。そのモノマー混合物を十分にブレンドし、そしてポリプロピレン鋳型に注いだ。その開放鋳型アセンブリを真空下に置いて、このモノマー混合物から取り込まれた空気を除去した。充填された鋳型を常圧に戻し、次いで、閉じて、110℃で、17.1時間硬化させた。得られた材料は、十分な透明性および可撓性を示し、そして最小限の収縮で硬化した。硬化した重合体を、3時間にわたって、還流しているアセトンに抽出した。このアセトンをデカントし、その生成物を新たなアセトンでリンスし、次いで、60℃で、3時間真空乾燥した。代表的な引張り特性および熱特性を、表3に載せる。
【0045】
(表1)
【0046】
【表1】

BzMA:メタクリル酸ベンジル
2−PEMA:メタクリル酸2−フェニルエチル
3−PPMA:メタクリル酸3−フェニルプロピル
4−PBMA:メタクリル酸4−フェニルブチル
5−PPMA:メタクリル酸5−フェニルペンチル
t−BPO:ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル
(表2)
【0047】
【表2】

2−PEMA:メタクリル酸2−フェニルエチル
t−BPO:ヘキサン酸t−ブチルペルオキシ−2−エチル
(表3)
【0048】
【表3】

本発明は、特定の好ましい実施態様を参照して、記述されている;しかしながら、本発明は、その特有または必須の特性から逸脱することなく、他の特定の形態またはそれらのバリエーションで具体化され得ることが理解できるはずである。従って、上記実施態様は、いずれの点でも、限定ではなく、例示と見なされ、本発明の範囲は、前出の記述よりもむしろ、添付の請求の範囲により、示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含有する、高分子眼科または耳鼻咽喉科用装置材料:
a)式(1)の芳香族アクリレートまたはメタクリレートモノマーおよび式(2)のスチレン性モノマーからなる群から選択されるモノマー、および
b)少なくとも3000の数平均分子量(M)および0℃未満のガラス転移温度(T9)を有する式(3)の二官能性マクロモノマー:
【化1】

ここで、
【化2】

である;
R=H、CH、CHCHである;
x=O(CHである;
w=0〜6である;
Y=(CHH、O(CHH、H、Br、Cl、またはFである;
b=0〜12である;
p=0〜22である;
q=0〜22である;
A=O、NH、OCH、OCHCHO、OC(O)NHCHCHOである;そして
m、n=コモノマーのモル分率であり、ここで、m<1であり、そしてn=1−mである、
装置材料。
【請求項2】
前記装置材料が、さらに、少なくとも1000の数平均分子量を有する式(4)の一官能性マクロモノマーを含有する、請求項1に記載の装置材料:
【化3】

【化4】

である;
A=O、NH、OCH、OCHCHO、OC(O)NHCHCHOである;
p=0〜22である;
q=0〜22である;そして
m、n=コモノマーのモル分率であり、ここで、m<1であり、そしてn=1−mである、
装置材料。
【請求項3】
式(1)において、R=CHである;w=1〜5であり、そしてY=Hである;そして式(2)において、R=Hであり、そしてY=Hである、請求項3に記載の装置材料。
【請求項4】
式(3)において、A=OまたはOC(O)NHCHCHOである;B=C(O)C(=CH)CHである;p=2であり、そしてq=0であるか、またはp=q=1である;そしてm=0.33〜0.50である、請求項1に記載の装置材料。
【請求項5】
式(4)において、A=OまたはOC(O)NHCHCHOである;B=C(O)C(=CH)CHである;p=2であり、そしてq=0であるか、またはp=q=1である;そしてm=0.33〜0.50である、請求項2に記載の装置材料。
【請求項6】
前記装置材料が、a)20〜70重量%の式(1)の芳香族アクリレートまたはメタクリレートモノマーからなる群から選択されるモノマーおよび式(2)のスチレン性モノマーと、b)80〜30重量%の式(3)の二官能性マクロモノマーとを含有する、請求項1に記載の装置材料。
【請求項7】
前記装置材料が、80重量%までの式(4)の前記一官能性マクロモノマーを含有する、請求項2に記載の装置材料。
【請求項8】
前記装置材料が、0.1〜40重量%の式(4)の前記一官能性マクロモノマーを含有する、請求項7に記載の装置材料。
【請求項9】
前記装置材料が、さらに、重合可能UV吸収剤および重合可能着色剤からなる群から選択される成分を含有する、請求項1に記載の装置材料。
【請求項10】
前記装置材料が、25℃未満の連続相T9を有する、請求項1に記載の装置材料。
【請求項11】
前記装置材料が、−20℃未満の連続相T9を有する、請求項10に記載の装置材料。
【請求項12】
前記装置材料が、300%と800%の間の伸び率および6.0MPa未満のヤング率を有する、請求項1に記載の装置材料。
【請求項13】
前記装置材料が、5.0MPa未満のヤング率を有する、請求項12に記載の装置材料。
【請求項14】
請求項1に記載の装置材料を含む、眼科または耳鼻咽喉科用装置。
【請求項15】
前記装置が、人工水晶体;コンタクトレンズ;人工角膜;角膜インレー;角膜リング;耳換気チューブおよび;鼻移植片からなる群から選択される、請求項13に記載の眼科または耳鼻咽喉科用装置。

【公表番号】特表2008−506453(P2008−506453A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521451(P2007−521451)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/003939
【国際公開番号】WO2006/019404
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】