説明

眼科用液体組成物

【課題】本発明の目的は、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体を含んでいながら、ノズルから滴下される際に液切れがよく、滴下後にノズルの外部表面に液残りし難い眼科用液体組成物を提供することである。
【解決手段】眼科用液体組成物において、(A)ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体と、特定の含有割合の(B-1)コンドロイチン硫酸及び/又はその塩、(B-2)ヒアルロン酸及び/又はその塩、或いは(B-3)ブドウ糖とを特定の比率を併用することによって、ノズルから滴下される際に液切れが良好になり、滴下後にノズルの外部表面に液残りし難くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体を含有する眼科用液体組成物に関する。より具体的には、本発明は、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体を含んでいながら、ノズルから滴下される際に液切れがよく、滴下後にノズルの外部表面に残留(液残り)し難い眼科用液体組成物に関する。また、本発明は、ソフトコンタクトレンズへの微生物の付着を抑制できるソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体は、生体適合性が高い化合物として知られている。また、当該重合体は、角質の保護や保湿等の作用も有しており、スキンケアにも有効であることが知られている(特許文献1参照)。更に、当該重合体は、眼科分野において、ドライアイの予防又は治療(特許文献2参照)、有効成分の滞留性の向上(特許文献3参照)にも有効であることが分かっている。
【0003】
このように、上記重合体は、生体適合性のみならず、様々な薬理作用をも有しており、機能性素材として注目を浴びている。とりわけ、近年、眼科分野における当該重合体の利用が積極的に試みられており、当該重合体を配合した眼科用液体組成物の処方も報告されている(特許文献4−5参照)。
【0004】
一方、一般に、点眼剤等の眼科用液体組成物は、容器に対する押圧によってノズルから液滴が滴下できる様に構成された容器に収容されて使用される。そのため、眼科用液体組成物には、ノズルから滴下される際に液切れがよく、ノズルの外部表面に残留(液残り)しないような物性を備えさせることが肝要である。
【0005】
しかしながら、上記重合体を含む眼科用液体組成物は、収容される容器との適合性については、充分に検討されていないのが現状である。
【0006】
また、近年、ソフトコンタクトレンズの装用者が増加している。ソフトコンタクトレンズは装用感が良い反面、素材が含水しているために微生物が繁殖し易く、通常は消毒を必要としている。しかし、コンプライアンスが遵守されないなどの理由により消毒が不完全である事も多く、微生物よる感染症などが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−52848号公報
【特許文献2】特開平10−324634号公報
【特許文献3】特開平11−335301号公報
【特許文献4】特開2008−273959号公報
【特許文献5】特開平7−166154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体を含む眼科用液体組成物の物性について、検討を重ねたところ、当該重合体を含む眼科用液体組成物は、ノズルから滴下される際に液切れが悪く、滴下後にノズルの外部表面に液が残存し易いという新たな課題を見出した。このように、滴下後にノズルの外部表面に眼科用液体組成物が残存する場合には、残存液を介して異物の付着や雑菌の繁殖等の汚染を招く畏れがあり、その結果、次回使用時に汚染されたノズルを介して眼科用液体組成物が滴下される可能性も考えられる事から、好ましくない。更には残存した眼科用液体組成物の成分がノズルの外部表面で析出したり、ノズルから容器表面に眼科用液体組成物が液垂れすることによって、使用者に対して商品イメージや信頼性をも損ねさせるという懸念もある。更に、ノズルからの液切れが悪い場合には、滴下時に容器外の環境に晒された眼科用液体組成物の一部や析出物が容器内に逆流し、これによって容器内の眼科用液体組成物に異物や雑菌が混入するリスクを高めることにもなる。また、特に点眼剤の場合、過度に液切れが悪い場合は、点眼する一滴量に差が出てしまい、薬物の適用量がばらつくといった問題点もある。
【0009】
そこで、本発明は、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体を含んでいながら、ノズルから滴下される際に液切れがよく、滴下後にノズルの外部表面に残留(液残り)し難い眼科用液体組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の別の目的は、ソフトコンタクトレンズ表面への微生物の付着を抑制できるソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、眼科用液体組成物において、(A)ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体と、特定の含有割合の(B-1)コンドロイチン硫酸及び/又はその塩、(B-2)ヒアルロン酸及び/又はその塩、或いは(B-3)ブドウ糖とを特定の比率で併用することによって、ノズルから滴下される際に液切れが良好になり、滴下後にノズルの外部表面に液残りし難くなることを見出した。更に、(C-1)エチレンジアミン四酢酸及び/又はその塩、並びに/或いは(C-2)塩化ナトリウムをも共存させることによって、ノズルからの液切れがより一層改善され、ノズルの外部表面の液残りを一層抑制できることを見出した。更に、本発明者らは、意外にも、(A)ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体と、特定の含有割合の(B-1)コンドロイチン硫酸及び/又はその塩、(B-2)ヒアルロン酸及び/又はその塩、或いは(B-3)ブドウ糖との特定の比率での併用は、眼の縁や睫毛に眼科用組成物が付着した際の析出物の生成を抑制できることをも見出した。
【0012】
また、本発明者らは、ソフトコンタクトレンズ(以下、「SCL」と表記することもある)は菌が付着し易い性質があることを確認し、それを解決するための手段として、(A)ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種との併用が、SCLに対する菌の付着抑制に有効であることをも見出した。更に、本発明者らは、(A)ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種との併用が、SCLの濡れ性の向上、及びイオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(以下、「イオン性SHCL」と表記することもある)に付着した花粉タンパク質の洗浄効果の向上にも有効であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0013】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用液体組成物を提供する。
項1-1.(A)一般式(I)で表されるモノマーを、単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、n1は2〜4の整数、Rは水素原子又はメチル基、Rは、−(RO)n2−R−で表される基(Rは炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR〜Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖とを含み、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
であることを特徴とする、眼科用液体組成物。
項1-2.(A)成分が、一般式(I)で表されるモノマーの重合体、又は一般式(I)で表されるモノマーと下記一般式(II)で表されるモノマーの共重合体である、項1-1に記載の眼科用液体組成物。
【0016】
【化2】

【0017】
[式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは水素原子又は炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。]
項1-3.(A)成分が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートの共重合体である、項1-1又は1-2に記載の眼科用液体組成物。
項1-4.(A)成分の含有割合が0.0001〜5w/v%である、項1-1乃至1-3のいずれかに記載の眼科用液体組成物。
項1-5.更に、(C-1)エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の眼科用液体組成物。
項1-6.(C-1)成分として、エチレンジアミン酢酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1-5に記載の眼科用液体組成物。
項1-7.(C-1)成分の含有割合が0.0005〜0.2w/v%である、項1-5又は1-6に記載の眼科用液体組成物。
項1-8.更に、(C-2)成分として、塩化ナトリウムを含む、項1-1乃至1-7のいずれかに記載の眼科用液体組成物。
項1-9.(C-2)成分の含有割合が0.01〜10w/v%である、項1-8に記載の眼科用液体組成物。
項1-11.ポリエチレン製のノズルが備えられた容器に収容されてなる、項1-1乃至1-10のいずれかに記載の眼科用液体組成物。
項1-12.眼科用液体組成物が点眼剤であり、ポリエチレン製のノズルが装着された点眼容器に収容されてなる、項1-1乃至1-11のいずれかに記載の眼科用液体組成物。
【0018】
また、本発明は、下記に掲げる態様のSCL用眼科用液体組成物を提供する。
項2-1.(A)一般式(I)で表されるモノマーを、単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【0019】
【化3】

【0020】
[式中、n1は2〜4の整数、Rは水素原子又はメチル基、Rは、−(RO)n2−R−で表される基(Rは炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR〜Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを含むことを特徴とする、ソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-2.(A)成分が、一般式(I)で表されるモノマーの重合体、又は一般式(I)で表されるモノマーと下記一般式(II)で表されるモノマーの共重合体である、項2-1に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
【0021】
【化4】

【0022】
[式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは水素原子又は炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。]
項2-3.(A)成分が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートの共重合体である、項2-1又は2-2に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-4.(A)成分の含有割合が0.0001〜5w/v%である、項2-1乃至2-3のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-5.(B)成分の含有割合が0.0002〜1.5w/v%である、項2-1乃至2-4のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-6.(A)成分の総量100重量部当たり、(B)成分を総量で0.1〜50000重量部含む、項2-1乃至2-5のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-7.更に、ホウ酸緩衝剤を含有する、項2-1乃至2-6のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-8.ホウ酸緩衝剤が、ホウ酸及び/又はホウ砂である、項2-7に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-9.ホウ酸緩衝剤の含有割合が0.1〜5w/v%である、項2-7又は2-8に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-10.更に、(C-1)エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項2-1乃至2-9のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-11.(C-1)成分として、エチレンジアミン酢酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項2-10に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-12.(C-1)成分の含有割合が0.0005〜0.2w/v%である、項2-10又は2-11に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-13.更に、(C-2)成分として、塩化ナトリウムを含む、項2-1乃至2-12のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-14.(C-2)成分の含有割合が0.01〜10w/v%である、項2-13に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-15.ソフトコンタクトレンズ用点眼剤又はソフトコンタクトレンズ用装着液である、項2-1乃至2-14のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-16.ポリエチレン製のノズルが備えられた容器に収容されてなる、項2-1乃至2-15のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
項2-17.ソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物がソフトコンタクトレンズ用点眼剤であり、ポリエチレン製のノズルが装着された点眼容器に収容されてなる、項2-1乃至2-16のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
【0023】
更に、本発明は、下記態様の方法を提供する。
項3-1.眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖を、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように併用することを特徴とする、ノズルからの眼科用液体組成物の液切れを改善する方法。
項3-2.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体を含む眼科用液体組成物に、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖を、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように配合することを特徴とする、ノズルからの眼科用液体組成物の液切れを改善する方法。
項4-1.眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖とを、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように併用することを特徴とする、ノズルへの眼科用液体組成物の液残りを改善する方法。
項4-2.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体を含む眼科用液体組成物に、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖を、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように配合することを特徴とする、ノズルへの眼科用液体組成物の液残りを改善する方法。
項5-1.眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖を、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように併用することを特徴とする、(B-1)成分、(B-2)成分、又は(B-3)成分を含む眼科用液体組成物の析出物の生成を抑制する方法。
項5-2.(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種を0.05〜0.5w/v%、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種を0.002〜0.1w/v%、又は(B-3)ブドウ糖を0.005〜0.2w/v%を含む眼科用液体組成物中で、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体を、
(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように配合することを特徴とする、(B-1)成分、(B-2)成分、又は(B-3)成分を含む眼科用液体組成物の析出物の生成を抑制する方法。
項6.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを含む眼科用液体組成物を、SCLと接触させることを特徴とする、SCLへの細菌の付着抑制方法。
項7.眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを併用することを特徴とする、SCLへの細菌付着を抑制する作用を該眼科用液体組成物に付与する方法。
項8.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを含む眼科用液体組成物を、SCLと接触させることを特徴とする、SCLの濡れ性向上方法。
項9.眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを併用することを特徴とする、SCLの濡れ性を向上させる作用を該眼科用液体組成物に付与する方法。
項10.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを含む眼科用液体組成物を、イオン性シリコーンハイドロゲルレンズと接触させることを特徴とする、イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに付着した花粉タンパク質を洗浄する方法。
項11.眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを併用することを特徴とする、イオン性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに付着した花粉タンパク質に対する洗浄作用を該眼科用液体組成物に付与する方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体を含んでいながらも、ノズルから滴下される際に液切れがよく、滴下後にノズルの外部表面に残留(液残り)し難い眼科用液体組成物を提供することができる。それによって、異物の混入や菌汚染等を抑制することができるので、本発明の眼科用液体組成物は、汚染の危険性が低減され、品質保持性に優れており、実用的観点から極めて有用である。
【0025】
また、本発明の眼科用液体組成物は、眼の縁や睫毛に付着した際の析出物の生成を抑制できるので、たとえ使用時に眼の縁や睫毛に付着したとしても、使用者の美容的外観を損なうことがなく、使用者にとって利便性が高い。
【0026】
更に、本発明の眼科用液体組成物によれば、SCLへの細菌の付着を抑制できるので、SCL装用に起因する微生物感染症のリスクを低減でき、SCLをより安全に使用することが可能になる。
【0027】
そして更に、本発明の眼科用液体組成物によれば、SCLの濡れ性を向上できるので、SCLの装用感を良好にし、SCL装用時の不快感を低減することができる。
【0028】
また、本発明者らは、SCLの中でも特にイオン性SHCLにおいて花粉タンパク質の付着が多い事を見出したが、本発明の眼科用液体組成物によれば、イオン性SHCLにおいても、付着した花粉タンパク質を洗い流す効果に優れているので、イオン性SHCLの装用中又は装用前後に本発明の眼科用液体組成物を使用することで、イオン性SHCLを清潔に保持でき、更には花粉症患者にとってもアレルギー症状の発症リスクを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】試験例1Aにおいて、試験液(比較例1-1〜1-4)の20滴滴下後のノズル付着液量を測定した結果を示す図である。即ち、図1は、MPCポリマーがノズル付着液量に与える影響について比較評価した結果を示す図である。
【図2】試験例1Aにおいて、試験液(実施例1-1、1-6、1-7、及び比較例1-3〜1-6)の20滴滴下後のノズル付着液量を測定した結果を示す図である。即ち、図2は、MPCポリマーとコンドロイチン硫酸ナトリウムの組合せがノズル付着液量に与える影響について比較評価した結果を示す図である。
【図3】試験例1Aにおいて、試験液(実施例1-2〜1-4、1-8、1-9、比較例1-3、1-4、1-7及び1-8)の20滴滴下後のノズル付着液量を測定した結果を示す図である。即ち、図3は、MPCポリマーとヒアルロン酸ナトリウムの組合せがノズル付着液量に与える影響について比較評価した結果を示す図である。
【図4】試験例1Aにおいて、試験液(実施例1-5、1-10、1-11、及び比較例1-3、1-4及び1-9)の20滴滴下後のノズル付着液量を測定した結果を示す図である。即ち、図4は、MPCポリマーとブドウ糖の組合せがノズル付着液量に与える影響について比較評価した結果を示す図である。
【図5】試験例3Aにおいて、試験液(実施例3-1〜3-2及び比較例3-1〜3-4)で処理したSCLに対するPseudomonas aeruginosaの付着菌数を測定した結果を示す図である。
【図6】試験例4において、試験液(実施例4-1及び比較例4-1〜4-3)で処理したSCLの接触角を測定した結果を示す図である。
【図7】参考試験例3において、各種SCLに対する花粉タンパク質の洗浄効果を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.眼科用液体組成物-1
本発明の眼科用液体組成物-1は、下記一般式(I)で表されるモノマーを、単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体(以下、単に「(A)成分」と表記することもある)を含有する。
【0031】
【化5】

【0032】
一般式(I)中、n1は、2〜4の整数、好ましくは2又は3、更に好ましくは2を示す。
【0033】
一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基、好ましくはメチル基を示す。
【0034】
また、一般式(I)中、Rは、−(RO)n2−R−で表される基を示す。ここで、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基を示す。このようなアルキレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が例示される。Rとして、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基、更に好ましくは炭素数2のアルキレン基(エチレン基)が挙げられる。また、n2は、0〜5の整数、好ましくは0〜2の整数、更に好ましくは0を示す。
【0035】
また、一般式(I)中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が例示される。R〜Rとして、好ましくは、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、更に好ましくは炭素数1のアルキル基(メチル基)が挙げられる。
【0036】
一般式(I)で表されるモノマーの好適な例として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC;n1が2、Rがメチル基、Rがエチレン基、R〜Rがメチル基)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルエタノールアミン(MPE;n1が2、Rがメチル基、Rがエチレン基、R〜Rが水素原子)、特に好ましくは2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが例示される。
【0037】
本発明の眼科用液体組成物-1において、(A)成分は、上記一般式(I)で表されるモノマー(以下、単に「モノマー(I)」と表記することもある)の重合体であってもよく、またモノマー(I)と他のモノマーとの共重合体であってもよく、更にはモノマー(I)の重合体とモノマー(I)と他のモノマーとの共重合体との混合物であってもよい。
【0038】
(A)成分として共重合体を使用する場合、モノマー(I)以外の他のモノマーとしては、最終的に得られる共重合体が、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものである限り制限されないが、好適な一例として、下記一般式(II)で表されるモノマー(以下、単に「モノマー(II)」と表記することもある)が例示される。
【0039】
【化6】

【0040】
一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基、好ましくはメチル基を示す。
【0041】
また、一般式(II)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。このようなアルキル基については、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が例示される。Rとして、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは炭素数4のアルキル基(n-ブチル基)が挙げられる。
【0042】
モノマー(II)の好適な例として、ブチルメタクリレート(BMA;Rがメチル基、Rがn-ブチル基)、メチルメタクリレート(MMA;Rがメチル基、Rがメチル基)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA;Rがメチル基、Rがヒドロキシエチル基);より好ましくは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート;特に好ましくはブチルメタクリレートが例示される。
【0043】
モノマー(II)が塩の形態をとれる場合(例えば、Rが水素原子の場合)には、モノマー(II)は塩であってもよい。モノマー(II)の塩の形態としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が例示される。
【0044】
(A)成分として共重合体を使用する場合、モノマー(I)と他のモノマーの構成比については、使用するモノマーの構造等によって異なるが、ドライアイに対する予防又は治療効果を有効に奏させるという観点から、通常、共重合体の全量に対して、モノマー(I)が50〜95モル%、好ましくは60〜90モル%、更に好ましくは75〜85モル%が例示される。
【0045】
また、(A)成分として使用される重合体の分子量については、構成されるモノマーの種類等によって異なり、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものである限り制限されないが、例えば、重量平均分子量が5千〜200万、好ましくは4万〜120万、更に好ましくは10万〜100万、特に好ましくは40万〜80万が挙げられる。重量平均分子量は、GPC分析によって測定される。
【0046】
モノマー(I)及びモノマー(II)は、公知の化合物であるか、又は公知の化合物から既知の方法(例えば、特開昭58-154591号公報、特開昭60-184093号公報、高分子論文集Vol.35, 423-427, 1978,社団法人高分子学会発行)で合成することができる。
【0047】
また、(A)成分として使用される重合体は、モノマー(I)及び必要に応じて他のモノマーを高分子化学の分野で公知の方法に従って重合反応することによって得ることができる。当該重合反応は、具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、t-ブタノール、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム又はこれらの混合溶媒等の適当な溶媒中で、重合開始剤の存在下、適当な温度条件下で一定時間重合させればよい。
【0048】
本発明の眼科用液体組成物-1において、(A)成分の中で、好ましくは、モノマー(I)の重合体、モノマー(I)とモノマー(II)の共重合体;更に好ましくはMPC又はMPEの重合体、MPC又はMPEとHEMA又はBMAの共重合体;より更に好ましくは、MPCのホモ重合体、MPCとHEMAの共重合体、MPCとBMAの共重合体;特に好ましくはMPCとBMAの共重合体が例示される。尚、本明細書において、MPCのホモ重合体又はMPCとモノマー(II)の共重合体をMPCポリマーと称することもある。
【0049】
また、(A)成分として使用される重合体は、市販品を使用する事もでき、市販の(A)成分としては、日油株式会社製のLipidureシリーズ(商品名:「LIPIDURE-PMB(BG)」、「LIPIDURE-PMB(Ph10)」、「LIPIDURE-PMB」、「LIPIDURE-HM」、「LIPIDURE-HM-500」)などが挙げられる。
【0050】
本発明の眼科用液体組成物-1において、上記(A)成分の含有割合については、当該(A)成分となる重合体の種類等に応じて適宜設定されるが、一例として、眼科用液体組成物-1の総量に対して、(A)成分が総量で0.0001〜5w/v%、より好ましくは0.0005〜2w/v%、更に好ましくは0.001〜1w/v%、特に好ましくは0.01〜0.5w/v%、最も好ましくは0.02〜0.2w/v%が例示される。ここで例示する(A)成分の含有割合は、ノズルからの液切れを一層良好にするという観点から有効であり、更には、析出物の生成抑制、SCLに対する菌の付着抑制、SCLの濡れ性の向上、又はイオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄効果の向上の観点からも好適である。
【0051】
本発明の眼科用液体組成物-1は、上記(A)成分に加えて、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖を下記の含有割合及び比率を充足する範囲で含有する。
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上。
このように(A)成分と、特定含有割合の(B-1)成分、(B-2)成分、又は(B-3)成分とを特定の比率で含有することによって、上記(A)成分を含む場合の欠点である、ノズルからの液切れの悪さ、使用後のノズルの外部表面における眼科用液体組成物の液残りを改善することが可能になる。更には、析出物の生成抑制、SCLに対する菌の付着抑制、SCLの濡れ性の向上、又はイオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄効果を向上させる事が可能になる。
【0052】
上記(B-1)成分、即ちコンドロイチン硫酸及び/又はその塩は、眼粘膜等において保湿作用を発揮するムコ多糖の一種として公知の高分子化合物である。本発明において使用されるコンドロイチン硫酸及びその塩は、その由来については特に制限されるものではなく、例えば、サケやサメ等の動物から得られたものであっても、また微生物から得られたものであってもよい。本発明に使用されるコンドロイチン硫酸の粘度平均分子量としては、特に制限されないが、例えば0.01万〜50万、好ましくは0.05万〜20万、更に好ましくは0.1万〜10万、特に好ましくは0.5〜5万、更に特に好ましくは0.7万〜4万、最も好ましくは0.8万〜3.5万程度の範囲にあるものが使用され得る。ここで粘度平均分子量は、第十五改正日本薬局方の一般試験法 粘度測定法 第1法:毛細管粘度計法に準じて極限粘度ηを求め(測定条件:溶解液0.2mol/L NaCl、温度25.0±0℃、ウベローデ粘度計)、得られた極限粘度ηを用いて下式Iより算出される。
式I:[η]=5.8×10−40.74 (ここで、Mは粘度平均分子量である。)
また、コンドロイチン硫酸の塩としては、具体的には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アルミニウム等のその他金属との塩等が例示される。好ましくは、コンドロイチン硫酸のアルカリ金属塩であり、更に好ましくはコンドロイチン硫酸ナトリウム(以下、コンドロイチン硫酸Naと表記することもある)である。
【0053】
本発明の眼科用液体組成物-1において、コンドロイチン硫酸又はその塩は、市販のものを利用することができる。
【0054】
本発明の眼科用液体組成物-1において、上記(B-1)成分は、コンドロイチン硫酸、及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、またこれらの中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。(B-1)成分として、好ましくは、コンドロイチン硫酸ナトリウムが例示される。
【0055】
本発明の眼科用液体組成物-1において、(B-1)成分の含有割合は、眼科用液体組成物-1の総量に対して、(B-1)成分が総量で0.05〜0.5w/v%を充足すればよいが、好ましくは0.1〜0.5w/v%、更に好ましくは0.2〜0.5w/v%が例示される。
【0056】
また、本発明の眼科用液体組成物-1において、(A)成分に対する(B-1)成分の比率については、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-2)成分の総量が5重量部以上を充足すればよいが、好ましくは5〜5000重量部、更に好ましくは25〜1000重量部が例示される。
【0057】
ここで例示する(B-1)成分の含有割合、及び(A)成分に対する(B-2)成分の比率は、ノズルからの液切れを一層良好にするという観点から有効であり、更には、析出物の生成抑制、SCLに対する菌の付着抑制、SCLの濡れ性の向上、又はイオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄効果の向上の観点からも好適である。
【0058】
また、上記(B-2)成分、即ちヒアルロン酸及び/又はその塩は、眼粘膜等において保湿作用を発揮するムコ多糖の一種として公知の高分子化合物である。本発明に使用されるヒアルロン酸及びその塩は、その由来については特に制限されるものではなく、例えば、鶏冠から得られたものであってもよく、また微生物由来のものであってもよい。本発明に使用されるヒアルロン酸の平均分子量としては、特に制限されないが、例えば0.1万〜500万、好ましくは1万〜400万、更に好ましくは10〜250万、特に好ましくは40万〜250万、更に特に好ましくは60万〜200万の範囲にあるものが例示される。
【0059】
ここで、本明細書においてヒアルロン酸の平均分子量とは、粘度平均分子量を意味する。粘度平均分子量は公知の測定方法により求めることができる。具体的には、ヒアルロン酸及び/又はその塩(乾燥物)を0.2M塩化ナトリウム溶液に溶解し、30℃における極限粘度(η)を求め、Laurentの式(η(極限粘度)=0.00036×Mv(粘度平均分子量)0.78)に基づいて粘度平均分子量が算出される。極限粘度(η)の測定は、第十五改正日本薬局方の一般試験法 粘度測定法 第1法:毛細管粘度計法に従って実施される。
【0060】
また、ヒアルロン酸の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アルミニウム等の金属との塩等が例示できる。このような塩の状態のものとして、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。また、ヒアルロン酸に比較して、塩の状態のヒアルロン酸を用いる方がより安定であることから好ましい。
【0061】
本発明の眼科用液体組成物-1において、ヒアルロン酸及びその塩は、市販のものを用いることができる。
【0062】
本発明の眼科用液体組成物-1において、上記(B-2)成分は、ヒアルロン酸、及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、またこれらの中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。(B-2)成分として、好ましくは、ヒアルロン酸ナトリウム(以下、ヒアルロン酸Naと表記することもある)が例示される。
【0063】
本発明の眼科用液体組成物-1において、(B-2)成分の含有割合は、眼科用液体組成物-1の総量に対して、(B-2)成分が総量で0.002〜0.1w/v%を充足すればよいが、好ましくは0.015〜0.1w/v%、更に好ましくは0.02〜0.1w/v%が例示される。
【0064】
また、本発明の眼科用液体組成物-1において、(A)成分に対する(B-2)成分の比率については、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-2)成分の総量が0.1重量部以上を充足すればよいが、好ましくは0.1〜3000重量部、更に好ましくは2〜100重量部が例示される。
【0065】
ここで例示する(B-2)成分の含有割合、及び(A)成分に対する(B-2)成分の比率は、ノズルからの液切れを一層良好にするという観点から有効であり、更には、析出物の生成抑制、SCLに対する菌の付着抑制、SCLの濡れ性の向上、又はイオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄効果の向上の観点からも好適である。
【0066】
また、(B-3)成分、即ちブドウ糖も、公知の化合物である。本発明の眼科用液体組成物-1において使用されるブドウ糖は、その由来等についても特に制限されない。
【0067】
本発明の眼科用液体組成物-1において、(B-3)成分の含有割合は、眼科用液体組成物-1の総量に対して、(B-3)成分が総量で0.005〜0.2w/v%を充足すればよいが、好ましくは0.02〜0.2w/v%、更に好ましくは0.05〜0.2w/v%が例示される。
【0068】
また、本発明の眼科用液体組成物-1において、(A)成分に対する(B-3)成分の比率については、(A)成分の総量100重量部当たり、(B-3)成分の総量が1重量部以上を充足すればよいが、好ましくは1〜2000重量部、更に好ましくは10〜1000重量部が例示される。
【0069】
ここで例示する(B-3)成分の含有割合、及び(A)成分に対する(B-3)成分の比率は、ノズルからの液切れを一層良好にするという観点から有効であり、更には、析出物の生成抑制、SCLに対する菌の付着抑制、SCLの濡れ性の向上、又はイオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄効果の向上の観点からも好適である。
【0070】
更に、本発明の眼科用液体組成物-1は、上記(A)成分、及び(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分に加えて、エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、単に(C-1)成分と表記することもある)、並びに/或いは塩化ナトリウム(以下、単に(C-2)成分と表記することもある)を含有することが好ましい。このように(C-1)成分及び/又は(C-2)成分を含むことによって、本発明の眼科用液体組成物-1において、ノズルからの液切れを格段顕著に良好にして、使用後のノズルの外部表面における液残りを一層効果的に抑制させることが可能になる。
【0071】
(C-1)成分として使用されるエチレンジアミン酢酸は、エチレンジアミンの2つのアミノ基に対して1〜4個のカルボキシメチル基が結合した化合物であり、本発明において上記(C-1)成分として使用されるエチレンジアミン酢酸については、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されない。本発明に使用されるエチレンジアミン酢酸としては、具体的には、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)等が例示される。また、エチレンジアミン酢酸の誘導体としては、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等が例示される。これらのエチレンジアミン酢酸及びその誘導体の中でも、エチレンジアミン四酢酸が好ましい。これらのエチレンジアミン酢酸及び/又はその誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0072】
また、(C-1)成分として使用されるエチレンジアミン酢酸及び/又はその誘導体の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、有機酸塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等)等]、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくは無機塩基との塩、より好ましくはアルカリ金属塩、更に好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩、特に好ましくはナトリウム塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0073】
なお、(C-1)成分として使用されるエチレンジアミン酢酸、その誘導体及び/又はそれらの塩は、水和物の形態であってもよい。
【0074】
本発明の眼科用液体組成物-1に(C-1)成分を配合する場合、エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩の中から、1種のものを選択して単独で使用してもよく、2種以上のものを任意に組み合わせて使用してもよい。本発明に使用される(C-1)成分として、好ましくはエチレンジアミン四酢酸及び/又はその塩、更に好ましくはエチレンジアミン四酢酸及び/又はそのナトリウム塩、より更に好ましくはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム及び/又はエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物が挙げられる。
【0075】
本発明の眼科用液体組成物-1に上記(C-1)成分を配合する場合、(C-1)成分の含有割合については、(C-1)成分の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、眼科用液体組成物-1の総量に対して、(C-1)成分が総量で0.0005〜0.2w/v%、好ましくは0.001〜0.1w/v%、更に好ましくは0.005〜0.05w/v%が例示される。
【0076】
本発明の眼科用液体組成物-1において、(A)成分に対する(C-1)成分の比率については、前述する含有割合を満たす限り特に制限されるものではないが、(A)成分の総量100重量部当たり、(C-1)成分の総量が0.1〜1000重量部、好ましくは1〜500重量部、更に好ましくは3〜200重量部、特に好ましくは5〜100重量部となる比率を充足することが望ましい。
【0077】
(C-1)成分が、上記の含有割合や比率を満たすことで、ノズルからの眼科用液体組成物の液切れ改善をはじめとする本発明の効果をより一層有効に奏させることが可能となり、好ましい。
【0078】
本発明の眼科用液体組成物-1に(C-2)成分を配合する場合、(C-2)成分の含有割合については、使用する(C-2)成分の種類等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、眼科用液体組成物-1の総量に対して、(C-2)成分が総量で0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%、更に好ましくは0.1〜2w/v%となる割合が例示される。
【0079】
本発明の眼科用液体組成物-1において、(A)成分に対する(C-2)成分の比率については、前述する含有割合を満たす限り特に制限されるものではないが、(A)成分の総量100重量部当たり、(C-2)成分の総量が1〜10000重量部、好ましくは5〜7000重量部、更に好ましくは10〜5000重量部、特に好ましくは50〜1000重量部となる比率を充足することが望ましい。
【0080】
(C-2)成分が、上記の含有割合や比率を満たすことで、本発明の効果をより一層有効に奏させることが可能となり、好ましい。
【0081】
本発明の眼科用液体組成物-1は、上記(C-2)成分以外の等張化剤を含んでいてもよい。本発明の眼科用液体組成物-1に配合できる等張化剤(塩化ナトリウム以外)としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる等張化剤の具体例として、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0082】
本発明の眼科用液体組成物-1に等張化剤(塩化ナトリウム以外)を配合する場合、該等張化剤の含有割合については、使用する等張化剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、眼科用液体組成物-1の総量に対して、等張化剤(塩化ナトリウム以外)が総量で0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%、更に好ましくは0.1〜2w/v%となる割合が例示される。
【0083】
本発明の眼科用液体組成物-1は、更に緩衝剤を含有することが望ましい。本発明の眼科用液体組成物-1に配合できる緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩等が挙げられる。これらの緩衝剤は組み合わせて使用しても良い。好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、及びクエン酸緩衝剤であり、特に好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、及びリン酸緩衝剤である。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリ
ウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等)、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等)、アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤の中でも、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤が好ましい。とりわけホウ酸緩衝剤は、本願発明の効果をより一層高める点から好ましく、中でも使用後のノズルの外部表面における液残りを一層効果的に抑制させる点、SCLにおける菌付着抑制効果を高める点、SHCLにおける花粉タンパク洗浄効果などを一層効果的に奏する点などにおいて、特に有効である。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。ホウ酸緩衝剤の中でも、特に好ましくはホウ酸及び/又はホウ砂であり、最も好ましくは、ホウ酸及びホウ砂を組み合わせて使用するする態様が挙げられる。
【0084】
本発明の眼科用液体組成物-1に緩衝剤を配合する場合、緩衝剤の含有割合については、使用する緩衝剤の種類、他の配合成分の種類や量等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、眼科用液体組成物-1の総量に対して、緩衝剤が総量で0.01〜10w/v%、好ましくは0.1〜5w/v%、更に好ましくは0.5〜2w/v%となる割合が例示される。また、緩衝剤がホウ酸緩衝剤である場合、眼科用液体組成物-1の総量に対して、ホウ酸緩衝剤が総量で0.1〜5w/v%、好ましくは0.1〜3w/v%、更に好ましくは0.2〜2w/v%、特に好ましくは0.5〜2w/v%となる割合が例示される。
【0085】
本発明の眼科用液体組成物-1は、更に界面活性剤を含有することが好ましい。本発明の眼科用液体組成物-1に配合可能な界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として特に制限されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0086】
本発明の眼科用液体組成物-1に配合可能な非イオン性界面活性剤としては、具体的には、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPブロックコポリマー類;POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油類;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。また、本発明の眼科用液体組成物-1に配合可能な両性界面活性剤としては、具体的には、アルキルジアミノエチルグリシン等が例示される。また、本発明の眼科用液体組成物-1に配合可能な陽イオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が例示される。また、本発明の眼科用液体組成物-1に配合可能な陰イオン性界面活性剤としては、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α−スルホメチルエステル、α−オレフィンスルホン酸等が例示される。本発明の眼科用液体組成物-1において、これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましい界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤であり、中でもより好ましくはPOE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)、ポロクサマー407、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)である。
【0087】
本発明の眼科用液体組成物-1に界面活性剤を配合する場合、界面活性剤の含有割合については、界面活性剤の種類、他の配合成分の種類や量等に応じて適宜設定できる。界面活性剤の含有割合の一例として、眼科用液体組成物-1の総量に対して、界面活性剤が総量で、0.001〜1.0w/v%、好ましくは0.005〜0.5w/v%、更に好ましくは0.01〜0.3w/v%が例示される。
【0088】
本発明の眼科用液体組成物-1のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明の眼科用液体組成物-1のpHの一例として、4.0〜9.5、好ましくは5.0〜8.5、更に好ましくは5.4〜8.0となる範囲が挙げられる。
【0089】
また、本発明の眼科用液体組成物-1の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。本発明の眼科用液体組成物-1の浸透圧比の一例として、好ましくは0.7〜5.0、更に好ましくは0.9〜3.0、特に好ましくは1.0〜2.0となる範囲が挙げられる。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十五改正日本薬局方に基づき0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。浸透圧比測定用標準液は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
【0090】
本発明の眼科用液体組成物-1には、上記の成分に加えて、有効成分(薬理活性成分や生理活性成分等)を配合することができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分又は収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分又は殺菌薬成分、糖類、高分子化合物又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、局所麻酔薬成分、緑内障治療成分、白内障治療成分等が例示できる。本発明において好適な薬理活性成分及び生理活性成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
【0091】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0092】
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピンなど。
【0093】
抗炎症薬成分又は収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
【0094】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、ジフェンヒドラミン又はその塩酸塩など、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、レボカバスチン又はその塩酸塩など、アンレキサノクス、イブジラスト、タザノラスト、トラニラスト、オキサトミド、スプラタスト又はそのトシル酸塩など、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウムなど。
【0095】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム、ユビキノン誘導体など。
【0096】
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチニン、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸マグネシウム、イプシロン−アミノカプロン酸、グリシン、アラニン、アルギニン、リジン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ吉草酸など。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0097】
抗菌薬成分又は殺菌薬成分:例えば、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、アシクロビルなど。
【0098】
糖類:例えば単糖類、二糖類、具体的にはマルトース、トレハロース、スクロース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
【0099】
高分子化合物又はその誘導体:例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、デキストラン、ペクチン、ポリビニルアルコール(完全、または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、マクロゴールおよびその薬学上許容される塩類など。
【0100】
セルロース又はその誘導体:例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロースなど。
【0101】
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなど。
【0102】
眼科用液体組成物の分野において各種成分の含有割合は既知であり、本発明の眼科用液体組成物-1中の上記成分の含有割合は、該眼科用液体組成物-1の剤型、薬理活性成分又は生理活性成成分の種類等に応じて適宜設定される。例えば、薬理活性成分又は生理活性成成分の含有割合は、眼科用液体組成物-1の総量に対して0.0001〜30w/v%、好ましくは0.001〜10w/v%程度の範囲から選択できる。
【0103】
また、本発明の眼科用液体組成物-1には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有させることができる。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水性溶媒、水性又は油性基剤など)、香料又は清涼化剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、キレート剤、安定化剤等の各種添加剤を挙げることができる。以下に本発明の眼科用液体組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
【0104】
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒。
【0105】
香料又は清涼化剤:例えば、テルペン類(具体的には、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、メントール、リモネン、リュウノウなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。)、精油(ウイキョウ油、クールミント油、ケイヒ油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など)など。
【0106】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩化ポリドロニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩酸塩など)、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
【0107】
pH調節剤:例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸など。
【0108】
キレート剤:例えば、アスコルビン酸、クエン酸など。
【0109】
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリンなど。
【0110】
本発明の眼科用液体組成物-1は、水を90w/v%以上、好ましくは94w/v%以上、更に好ましくは96w/v%以上、特に好ましくは97〜99.5w/v%含むものである。本発明の眼科用液体組成物-1において使用される水は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよい。例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等を使用できる。これらの定義は第十五改正日本薬局方に基づく。
【0111】
本発明の眼科用液体組成物-1は、所望量の上記(A)成分と、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分と、必要に応じて他の配合成分とを所望の濃度となるように添加することにより調製される。
【0112】
また、本発明の眼科用液体組成物-1は、点眼剤(但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤(コンタクトレンズ用点眼剤)を含む)、コンタクトレンズ装着液、洗眼剤(但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤(コンタクトレンズ用洗眼剤)を含む)、コンタクトレンズケア用剤(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤等を含む)等として使用することができる。これらの中でも、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液は、医薬品として又は医薬品並の高い品質保持が要求される点から、本発明の眼科用液体組成物-1として好適な製剤形態である。また、点眼剤及びコンタクトレンズ装着液は、一回の使用液量が少なく、一滴ずつ押出して用いる形態であり、ノズルからの液切れが良好であることが重視される製品形態であるため、本発明の眼科用液体組成物-1の好適な製剤形態である。特に、点眼剤は、常に一定の角度で点眼することが事実上非常に困難であり、使用者が無意識に液残りし易い様な角度から点眼しても、問題無いように備えておくことが肝要であるため、特に好適な製剤形態である。なお、本明細書において、単にコンタクトレンズと表記する場合には、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルレンズを含むあらゆるコンタクトレンズを包含する。
【0113】
また、点眼剤、洗眼剤、及びSCL装着液は、使用時に眼の縁や睫毛に付着しがちであるが、後記する試験例2に示すように、本発明者らの研究により、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分は眼の縁や睫毛に付着すると析出物を生成させ易いことが明らかになっている。このような析出物の生成は、使用者の美容的外観を損ねることにもなりかねない。これに対して、本発明の眼科用液体組成物-1によれば、(A)成分と、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分とを併用することによって、眼の縁や睫毛に付着しても析出物の生成を抑制することが可能になっている。かかる特性を有効に発現させることを重視する場合、本発明の眼科用液体組成物-1の好適な製剤形態の一例として、点眼剤、洗眼剤、及びSCL装着液が例示される。なお、SCL用点眼剤、SCL用洗眼剤である場合、SCLを装着した眼にそのまま直接適用してもよく、またSCLを装着する前に眼に適用してもよい。
【0114】
また、後記する試験例3に示すように、(A)成分と、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分とを併用することによってSCLへの菌の付着を顕著に抑制できる。更に、後記する試験例4に示すように、(A)成分と、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分とを併用することによってSCLの濡れ性を改善でき、SCLの装用感を高めることができる。このような特性を有効に発現させることを重視する場合、本発明の眼科用液体組成物-1の好適な製剤形態の一例として、SCL装用中に点眼可能な点眼剤(SCL用点眼剤)、SCL装着液、SCL装用中に洗眼可能な洗眼剤(SCL用洗眼剤)、SCL用ケア用剤;好ましくは、SCL用点眼剤、SCL装着液、SCL用洗眼剤;更に好ましくはSCL用点眼剤が例示される。
【0115】
更に、後記する参考例1に示すように、SCLの中でも、イオン性SHCLは、花粉タンパク質を著しく吸着し易いことが明らかとなっている。このような花粉タンパク質の吸着は、イオン性SHCLの使用期間の短縮を招くだけでなく、アレルギー症状を誘発する一因にもなりかねない。これに対して、本発明の眼科用液体組成物-1によれば、(A)及び(B)成分を併用することによって、イオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄効果を顕著に向上させることができる。かかる特性を有効に発現させることを重視する場合、本発明の眼科用液体組成物-1の好適な製剤形態の一例として、イオン性SHCL装用中に点眼可能な点眼剤(SHCL用点眼剤)、イオン性SHCL装用中に洗眼可能な洗眼剤(イオン性SCL用洗眼剤)、イオン性SHCL用コンタクトレンズ装着液、イオン性SHCL用ケア用剤;好ましくは、イオン性SHCL用点眼剤、イオン性SHCL用洗眼剤、イオン性SHCL用ケア用剤;更に好ましくはイオン性SHCL用洗眼剤、イオン性SHCL用ケア用剤が例示される。なお、ここでイオン性とは、当業者が通常理解するように、米国FDA(米国食品医薬品局)基準に則り、コンタクトレンズ素材中のイオン性成分含有率が1mol%以上であることをいう。
【0116】
本発明の眼科用液体組成物-1は、上記(A)成分に基づいてドライアイや目の乾きの予防乃至治療に有効であり、ドライアイや目の乾きの改善剤としても有用である。
【0117】
本発明の眼科用液体組成物-1は、眼科分野で一般的に使用されている容器、即ちノズルを備えた容器に収容して使用される。より具体的には、本発明の眼科用液体組成物-1が点眼剤である場合には点眼容器に収容して使用される。また、本発明の眼科用液体組成物-1を収容する点眼容器としては、容器にノズルが装着されている構造のもの、及びノズル部(液の注出部)と容器本体が一体成型された構造のもの(例えば、1回使い切りタイプの点眼剤など)のいずれであってもよい。
【0118】
本発明の眼科用液体組成物-1を収容する容器は、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。本発明の眼科用液体組成物-1を収容する容器として、プラスチック製を使用する場合、該プラスチック容器の構成材質については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミドのいずれか1種、これらの共重合体、または2種以上の混合体が挙げられる。また、上記共重合体としては、エチレン−2,6−ナフタレート単位、アリレート単位、エチレンテレフタレート単位、プロピレン単位、エチレン単位、イミド単位のいずれか1種を主体として、他のポリエステル単位、イミド単位を含む共重合体が挙げられる。
【0119】
また、本発明の眼科用液体組成物-1を収容する容器に備えられているノズルについても、その構造や構成素材については特に制限されるものではない。ノズルの構造については、点眼剤容器、洗眼剤容器等で一般的に採用されている構造であればよく、またノズルの構成素材については、例えば、上記プラスチック容器の構成素材と同様のものが例示される。本発明の眼科用液体組成物-1の液切れを一層良好にさせるという観点からは、本発明の眼科用液体組成物-1を収容する容器としては、ポリエチレン又はポリプロピレンを構成素材として含むノズルが装着された容器が好適であり、特にポリエチレンを構成素材として含むノズルが装着された容器が特に好適である。ポリエチレンの種類としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等が挙げられるが、中でも低密度ポリエチレンを構成素材として含むノズルが好適である。
【0120】
2.眼科用液体組成物-2
本発明の眼科用液体組成物-2は、SCL用として使用される眼科用液体組成物である。
【0121】
本発明の眼科用液体組成物-2は、一般式(I)で表されるモノマーを、単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体(以下、単に「(A)成分」と表記することもある)を含有する。本発明の眼科用液体組成物-2で使用される(A)成分の種類、(A)成分の内の好適な例、(A)成分の含有割合については、上記眼科用液体組成物-1で使用される(A)成分と同様である。
【0122】
本発明の眼科用液体組成物-2は、(A)成分に加えて、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種(以下、単に(B)成分と表記することもある)を含有する。このように、(A)及び(B)成分を併用することによって、SCLに対する菌の付着を有効に抑制することが可能になる。また、このような(A)成分と(B)成分の併用は、SCLの濡れ性の増強効果や、イオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄効果を向上させる上でも有効である。
【0123】
本発明の眼科用液体組成物-2において、(B)成分として使用されるコンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸の塩、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、及びブドウ糖については、上記眼科用液体組成物-1で使用される(B-1)成分、(B-2)成分及び(B-3)成分で使用されるものと同様である。
【0124】
本発明の眼科用液体組成物-2において、上記(B)成分は、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸の塩、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、ブドウ糖の中から1種を選択して単独で使用してもよく、またこれらの中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0125】
(B)成分の中でも、SCLに対する菌の付着を一層有効に抑制するという観点から、好ましくは、コンドロイチン硫酸のアルカリ金属塩、ヒアルロン酸のアルカリ金属塩、ブドウ糖;更に好ましくはコンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ブドウ糖が例示される。これらの(B)成分は、イオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄効果をより一層向上させるという観点からも好適である。
【0126】
本発明の眼科用液体組成物-2において、(B)成分の含有割合は、(B)成分の種類、併用する(A)成分の種類等に応じて適宜設定されるが、一例として、眼科用液体組成物-2の総量に対して、(B)成分が総量で0.0002〜1.5w/v%、好ましくは0.001〜0.5w/v%が例示される。より具体的には、(B)成分の含有割合として、以下の範囲が例示される。
(B)成分がコンドロイチン硫酸及び/又はその塩の場合:これらが総量で、通常0.005〜1w/v%、好ましくは0.01〜0.5、更に好ましくは0.05〜0.5w/v%、
(B)成分がヒアルロン酸及び/又はその塩の場合:これらが総量で、通常0.0002〜0.1w/v%、好ましくは0.001〜0.1w/v%、更に好ましくは0.002〜0.1w/v%、特に好ましくは0.01〜0.1w/v%
(B)成分がブドウ糖の場合:通常0.001〜0.5w/v%、好ましくは0.002〜0.3w/v%、更に好ましくは0.005〜0.2w/v%、特に好ましくは0.005〜0.2w/v%
ここで例示する(B)成分の含有割合は、SCLに対する菌の付着を一層効果的に抑制するという観点から有効であり、更には、SCLの濡れ性の向上、又はイオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄効果の向上の観点からも好適である。
【0127】
本発明の眼科用液体組成物-2において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、前述する含有割合を満たす限り特に制限されるものではないが、(A)成分の総量100重量部当たり、(B)成分の総量が0.1〜50000重量部、好ましくは0.5〜1000重量部、更に好ましくは1〜500重量部となる比率を充足することが望ましい。より具体的には、(A)成分の総量100重量部に対する(B)成分の比率として、以下の範囲が例示される。
(B)成分がコンドロイチン硫酸及び/又はその塩の場合:これらが総量で、通常5〜50000重量部、好ましくは5〜5000重量部、更に好ましくは10〜500重量部
(B)成分がヒアルロン酸及び/又はその塩の場合:これらが総量で、通常0.1〜30000重量部、好ましくは1〜3000重量部、更に好ましくは2〜300重量部、特に好ましくは2〜100重量部
(B)成分がブドウ糖の場合:通常0.1〜20000重量部、好ましくは1〜2000重量部、更に好ましくは1〜1000重量部、特に好ましくは1〜500重量部
ここで例示する(A)成分に対する(B)成分の比率は、SCLに対する菌の付着を一層効果的に抑制するという観点から有効であり、更には、SCLの濡れ性の向上、又はイオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄効果の向上の観点からも好適である。
【0128】
上記(B)成分は、それぞれ単独で用いても良いし、これらを組み合わせて用いても良い。好ましい組み合わせとしては、コンドロイチン硫酸又はその塩とヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩とブドウ糖、ヒアルロン酸又はその塩とブドウ糖、コンドロイチン硫酸又はその塩とヒアルロン酸又はその塩とブドウ糖などが挙げられる。特に好ましい組み合わせとしては、コンドロイチン硫酸ナトリウムとヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムとブドウ糖、ヒアルロン酸ナトリウムとブドウ糖、コンドロイチン硫酸ナトリウムとヒアルロン酸ナトリウムとブドウ糖などが挙げられる。
【0129】
更に、本発明の眼科用液体組成物-2は、上記(A)成分及び(B)成分に加えて、エチレンジアミン酢酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、単に(C-1)成分と表記することもある)、並びに/或いは塩化ナトリウム(以下、単に(C-2)成分と表記することもある)を含有することが好ましい。本発明の眼科用液体組成物-2で使用される(C-1)成分及び(C-2)成分の種類、(C-1)成分及び(C-2)成分の内の好適な例、(C-1)成分及び(C-2)成分の含有割合等については、上記眼科用液体組成物-1で使用される(C-1)成分及び(C-2)成分の場合と同様である。
【0130】
本発明の眼科用液体組成物-2は、更に塩化ナトリウム以外の等張化剤を含有してもよい。本発明の眼科用液体組成物-2で使用される等張化剤(塩化ナトリウム以外)の種類、等張化剤の含有割合については、上記眼科用液体組成物-1で使用される等張化剤(塩化ナトリウム以外)の場合と同様である。
【0131】
本発明の眼科用液体組成物-2は、(A)及び(B)成分以外に、更に緩衝剤を含有することが好ましい。本発明の眼科用液体組成物-2で使用される緩衝剤の種類、緩衝剤の内の好適な例、緩衝剤の含有割合については、上記眼科用液体組成物-1で使用される緩衝剤の場合と同様である。
【0132】
また、本発明の眼科用液体組成物-2は、更に界面活性剤を含有することが好ましい。本発明の眼科用液体組成物-2で使用される界面活性剤の種類、界面活性剤の内の好適な例、界面活性剤の含有割合については、上記眼科用液体組成物-1で使用される界面活性剤の場合と同様である。
【0133】
本発明の眼科用液体組成物-2のpH及び浸透圧についても、上記眼科用液体組成物-1と同様である。
【0134】
本発明の眼科用液体組成物-2には、上記の成分に加えて、有効成分(薬理活性成分や生理活性成分等)、その他様々な成分や添加物等を配合することができる。これらについても、その種類や含有割合等については、上記眼科用液体組成物-1の場合と同様である。
【0135】
本発明の眼科用液体組成物-2は、所望量の上記(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて他の含有成分を所望の濃度となるように添加することにより調製される。
【0136】
本発明の眼科用液体組成物-2は、SCL用の眼科用液体組成物として使用され、その製剤形態の具体例としては、SCL装用中に点眼可能な点眼剤(SCL用点眼剤)、SCL装用中に洗眼可能な洗眼剤(SCL用洗眼剤)、SCL装着液、SCLケア用剤(SCL消毒剤、SCL用保存剤、SCL用洗浄剤、SCL用洗浄保存剤等が含まれる)等が例示される。なお、SCL用点眼剤、SCL用洗眼剤である場合、SCLを装着した眼にそのまま直接適用してもよく、またSCLを装着する前に眼に適用してもよい。
【0137】
これらの中でも、SCL用点眼剤、SCL用洗眼剤、SCL用洗浄剤、SCL装着液が好ましく、特にSCL用点眼剤は、本発明の眼科用液体組成物-2において好適な製剤形態である。
【0138】
更に、後記する参考例1に示すように、SCLの中でも、イオン性SHCLは、花粉タンパク質を著しく吸着し易く、イオン性SHCL用眼科用液体組成物には、吸着した花粉タンパク質の洗浄効果が高いことが要求されるが、本発明の眼科用液体組成物-2によれば、イオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄効果を顕著に向上させることができる。かかる特性を鑑みれば、本発明の眼科用液体組成物-2の好適な製剤形態の一例として、好ましくはイオン性SHCL用眼科用液体組成物、更に好ましくはイオン性SHCL用点眼剤、イオン性SHCL用洗眼剤、イオン性SHCL用洗浄剤、イオン性SHCL装着液、特に好ましくはイオン性SHCL用点眼剤が挙げられる。
【0139】
本発明の眼科用液体組成物-2は、上記(A)成分に基づいてドライアイや目の乾きの予防乃至治療に有効であり、ドライアイや目の乾きの改善剤としても有用である。また、本発明の眼科用液体組成物-2は、イオン性SHCLに付着した花粉タンパク質を洗い流す効果に優れているので、イオン性SHCLを清潔に保持でき、更には花粉症患者にとってもアレルギー症状の発症リスクを低減させることができるため、花粉などによるアレルギー症状の改善剤や目のかゆみ改善剤としても有用である。
【0140】
本発明の眼科用液体組成物-2を収容する容器については、上記眼科用液体組成物-1の場合と同様である。
【0141】
3.ノズルからの液切れ改善方法、ノズルへの液残りの改善方法
前述するように、(A)成分を含む眼科用液体組成物のノズルからの液切れの悪さ、或いは使用後のノズルへの液残りを、特定の含有割合の(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分を特定の含有比率で使用することによって改善することができる。
【0142】
従って、本発明は、更に別の観点から、下記I-1〜I-4の態様の方法をも提供する。
I-1.眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖とを、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように併用することを特徴とする、ノズルからの眼科用液体組成物の液切れを改善する方法。
I-2.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体を含む眼科用液体組成物に、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖を、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように配合することを特徴とする、ノズルからの眼科用液体組成物の液切れを改善する方法。
I-3.眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖とを、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように併用することを特徴とする、ノズルへの眼科用液体組成物の液残りを改善する方法。
I-4.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体を含む眼科用液体組成物に、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖を、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように配合することを特徴とする、ノズルへの眼科用液体組成物の液残りを改善する方法。
【0143】
これらの方法において、使用する(A)成分、及び(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分の種類や含有割合や比率、その他に配合される成分の種類や含有割合、眼科用液体組成物の製剤形態、眼科用液体組成物を収容する容器の種類等については、前記「1.眼科用液体組成物-1」と同様である。
【0144】
4.析出物の生成抑制方法
前述するように、特定の含有割合の(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分を含む眼科用液体組成物の析出物の生成を、(A)成分を使用することによって抑制することができる。従って、本発明は、更に別の観点から、下記II-1及びII-2の態様の方法をも提供する。
II-1.眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖とを、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように併用することを特徴とする、(B-1)成分、(B-2)成分、又は(B-3)成分を含む眼科用液体組成物の析出物の生成を抑制する方法。
II-2.(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種を0.05〜0.5w/v%、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種を0.002〜0.1w/v%、又は(B-3)ブドウ糖を0.005〜0.2w/v%の割合で含む眼科用液体組成物中で、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体を、
(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように配合することを特徴とする、(B-1)成分、(B-2)成分、又は(B-3)成分を含む眼科用液体組成物の析出物の生成を抑制する方法。
【0145】
これらの方法において、使用する(A)成分及び、(B-1)成分、(B-2)成分又は(B-3)成分の種類や含有割合や比率、その他に配合される成分の種類や含有割合、眼科用液体組成物の製剤形態、眼科用液体組成物を収容する容器の種類等については、前記「1.眼科用液体組成物-1」と同様である。
【0146】
5.SCLへの菌付着抑制方法、SCLへの菌付着抑制作用を付与する方法
また、前述するように、(A)及び(B)成分を併用することによってSCLへの菌の付着を顕著に抑制できる。従って、本発明は、更に別の観点から、下記III-1及びIII-2の態様の方法をも提供する。
III-1.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを含む眼科用液体組成物を、SCLと接触させることを特徴とする、SCLへの細菌の付着抑制方法。
III-2. 眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを併用することを特徴とする、SCLへの細菌付着を抑制する作用を該眼科用液体組成物に付与する方法。
【0147】
これらの方法において、使用する(A)及び(B)成分の種類や含有割合や比率、その他に配合される成分の種類や含有割合、眼科用液体組成物の製剤形態、眼科用液体組成物を収容する容器の種類等については、前記「2.眼科用液体組成物-2」と同様である。
【0148】
6.SCLの濡れ性向上方法、SCLの濡れ性を向上させる作用を付与する方法
また、前述するように、(A)及び(B)成分を併用することによってSCLの濡れ性を向上させることができる。従って、本発明は、更に別の観点から、下記IV-1及びIV-2の態様の方法をも提供する。
IV-1.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを含む眼科用液体組成物を、SCLと接触させることを特徴とする、SCLの濡れ性向上方法。
IV-2. 眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを併用することを特徴とする、SCLの濡れ性を向上させる作用を該眼科用液体組成物に付与する方法。
【0149】
これらの方法において、使用する(A)及び(B)成分の種類や含有割合や比率、その他に配合される成分の種類や含有割合、眼科用液体組成物の製剤形態、眼科用液体組成物を収容する容器の種類等については、前記「2.眼科用液体組成物-2」と同様である。
【0150】
7.イオン性SHCLに付着した花粉タンパク質の洗浄方法、イオン性SHCLに付着した花粉タンパク質に対する洗浄作用を付与する方法
また、前述するように、(A)及び(B)成分を併用することによって、イオン性SHCLに付着した花粉タンパク質に対して、優れた洗浄効果を奏することができる。従って、本発明は、更に別の観点から、下記V-1及びV-2の態様の方法をも提供する。
V-1.(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを含む眼科用液体組成物を、イオン性SHCLと接触させることを特徴とする、イオン性SHCLに付着した花粉タンパク質を洗浄する方法。
V-2. 眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを併用することを特徴とする、イオン性SHCLに付着した花粉タンパク質に対する洗浄作用を該眼科用液体組成物に付与する方法。
【0151】
これらの方法において、使用する(A)及び(B)成分の種類や含有割合や比率、その他に配合される成分の種類や含有割合、眼科用液体組成物の製剤形態、眼科用液体組成物を収容する容器の種類等については、前記「2.眼科用液体組成物-2」と同様である。
【実施例】
【0152】
以下に、試験例、実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0153】
試験例1A:ノズルからの液切れ評価試験(1)
13mL容量のポリエチレンテレフタレート製の点眼容器に、表1及び2に従って調製した試験液(実施例1-1〜1-11、及び比較例1-1〜1-9)を13mLずつ充填し、低密度ポリエチレン製ノズルを装着した。別途、測定用容器にろ紙を収容して蓋を閉めて密閉し、ろ紙と測定用容器の合計重量(初期値)を測定した。点眼容器のノズルの角度を水平(容器を横向き)にして試験液を一滴滴下した。次いで、測定用容器の蓋を開けて、測定用容器内で、一滴滴下後にノズル外側に付着した液を、収容されているろ紙で吸い取った後に、液を吸い取ったろ紙を測定用容器に収容した状態で測定用容器の蓋を閉めて密閉した。これを20滴分繰り返した後に、液を吸い取ったろ紙と測定用容器の合計重量を測定し、初期値を差し引いて、20滴滴下によってノズル外側に付着した液の合計重量(ノズル付着液量(mg/20回))を算出した。
【0154】
【表1】

【0155】
【表2】

【0156】
得られた結果を図1〜4に示す。MPCポリマーが配合されていない比較例1-1では、ノズルへの試験液の付着はほぼ無いものの、MPCポリマーを配合した比較例1-2、1-3及び1-4では、ホウ酸緩衝剤の有無に拘わらず、ノズル付着液量が顕著に増大した。また、MPCポリマーを配合せずに、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、又はブドウ糖を、ホウ酸緩衝剤と共に配合した場合(比較例1-5、1-7及び1-9)では、ホウ酸緩衝剤のみを配合した場合(比較例1-1)に比較して、ノズル付着液量をわずかに増大させていた。
【0157】
これに対して、MPCポリマーと共に、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、又はブドウ糖を配合した場合(実施例1-1〜1-11)では、これらを含まない場合(比較例1-3、1-4)に比して、ノズル付着液量が著しく減少することが判明した。更に、MPCポリマー及びヒアルロン酸ナトリウムに加えてエチレンジアミン四酢酸ナトリウムを含む場合(実施例1-4)では、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムを含まない場合(実施例1-3)に比較して、更にノズル液付着量を減少させることも確認された。同様に、MPCポリマー及びヒアルロン酸ナトリウムに加えて塩化ナトリウムを含む場合(実施例1-8)では、塩化ナトリウムを含まない場合(実施例1-2)に比較して、更にノズル液付着量を減少させることも確認された。
【0158】
また、本試験中、実施例1-1〜1-11と比較例1-1、1-5、1-7、及び1-9では滴下の際の液切れが良好であり、比較例1-2〜1-4、1-6、及び1-8では滴下の際の液切れが悪いことも、実感された。
【0159】
以上の結果から、眼科用液体組成物において、MPCポリマーと共に、更にコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及び/又はブドウ糖を配合することによって、点眼後のノズルの液切れがよく、品質保持性に優れた製剤を提供できることが明らかとなった。
【0160】
試験例1B:ノズルからの液切れ評価試験(2)
上記試験例1Aの結果から、MPCポリマーとコンドロイチン硫酸Naを特定の割合で併用することによって、ノズル液付着量が減少し、点眼後のノズルの液切れが改善されることが確認された。そこで、本試験では、MPCポリマーとコンドロイチン硫酸Naの含有量及び含有比が、点眼後のノズルの液切れに及ぼす影響をさらに詳しく分析するために、表3に示す試験液(実施例1-12〜1-21及び比較例1-10〜1-12)を調製し、上記試験例1Aと同様の手法で試験を行った。また、コンドロイチン硫酸Naを含まないこと以外は、表3に示す実施例又は比較例と同組成のコントロール試験液についても、同様に試験を行った。なお、本試験例では、測定されたノズル付着液量から、下記の算出式に従って、付着抑制率(%)を算出した。
【0161】
【数1】

【0162】
【表3】

【0163】
得られた結果を表4に示す。なお、表4には、上記試験例1Aにおける実施例1-1、1-6、1-7及び比較例1-6の結果についても併せて示す。コンドロイチン硫酸ナトリウムが0.05w/v%未満の場合(比較例1-10及び1-6)には、ノズルへの液の付着を抑制することができなかった。また、コンドロイチン硫酸Naが0.05w/v%以上であっても、MPCポリマー100重量部当たりコンドロイチン硫酸Naが5重量部を下回る場合(比較例1-11)、及びコンドロイチン硫酸Naが0.5 w/v%を上回る場合(比較例1-12)でも、ノズルへの液の付着を抑制することができなかった。一方、コンドロイチン硫酸Naが0.05〜0.5w/v%であり且つMPCポリマー100重量部当たりコンドロイチン硫酸Naが5重量部以上を充足する場合には、ノズルへの液の付着を効果的に抑制することができていた。
【0164】
また、緩衝剤として、ホウ酸緩衝剤を使用した場合(実施例1-1)には、リン酸緩衝剤を使用した場合(実施例1-18)に比して、付着抑制率が高い値を示しており、ノズルへの液付着抑制効果は、ホウ酸緩衝剤の配合によって一層顕著になることも明らかとなった。
【0165】
【表4】

【0166】
試験例1C:ノズルからの液切れ評価試験(3)
上記試験例1Aの結果から、MPCポリマーとヒアルロン酸ナトリウムを特定の割合で併用することによって、ノズル液付着量が減少し、点眼後のノズルの液切れがよくなることが確認された。そこで、本試験では、MPCポリマーとヒアルロン酸ナトリウムの含有量及び含有比が、点眼後のノズルの液切れに及ぼす影響をさらに詳しく分析するために、表5に示す試験液(実施例1-22〜1-30及び比較例1-13〜1-15)を調製し、上記試験例1Aと同様の手法で試験を行った。また、ヒアルロン酸Naを含まないこと以外は、表5に示す実施例又は比較例と同組成のコントロール試験液についても、同様に試験を行い、上記試験例1Bと同じ算出式に従って、付着抑制率(%)を算出した。
【0167】
【表5】

【0168】
得られた結果を表6に示す。なお、表6には、上記試験例1Aにおける実施例1-2、1-3、1-4、1-8、1-9及び比較例1-8の結果についても併せて示す。ヒアルロン酸ナトリウムが0.002w/v%未満の場合(比較例1-8及び1-13)には、ノズルへの液の付着を抑制することができなかった。また、ヒアルロン酸ナトリウムが0.002w/v%以上であっても、MPCポリマー100重量部当たりヒアルロン酸ナトリウムが0.1重量部を下回る場合(比較例1-14)、及びヒアルロン酸ナトリウムが0.1 w/v%を上回る場合(比較例1-15)でも、ノズルへの液の付着を抑制することができなかった。一方、ヒアルロン酸ナトリウムが0.002〜0.1w/v%であり且つMPCポリマー100重量部当たりヒアルロン酸ナトリウムが0.1重量部以上を充足する場合には、ノズルへの液の付着を効果的に抑制することができていた。
【0169】
また、緩衝剤として、ホウ酸緩衝剤を使用した場合(実施例1-2)には、リン酸緩衝剤を使用した場合(実施例1-25)に比して、付着抑制率が高い値を示しており、試験例1Bの結果と同様に、ノズルへの液付着抑制効果は、ホウ酸緩衝剤の配合によって一層顕著になることも明らかとなった。
【0170】
【表6】

【0171】
試験例1D:ノズルからの液切れ評価試験(4)
上記試験例1Aの結果から、MPCポリマーとブドウ糖を特定の割合で併用することによって、ノズル液付着量が減少し、点眼後のノズルの液切れのよくなることが確認された。そこで、本試験では、MPCポリマーとブドウ糖の含有量及び含有比が、点眼後のノズルの液切れに及ぼす影響をさらに詳しく分析するために、表7に示す試験液(実施例1-31〜1-37及び比較例1-16〜1-18)を調製し、上記試験例1Aと同様の手法で試験を行った。また、ブドウ糖を含まないこと以外は、表7に示す実施例又は比較例と同組成のコントロール試験液についても、同様に試験を行い、上記試験例1Bと同じ算出式に従って、付着抑制率(%)を算出した。
【0172】
【表7】

【0173】
得られた結果を表8に示す。なお、表8には、上記試験例1Aにおける実施例1-5、1-10、及び1-11の結果についても併せて示す。ブドウ糖が0.005w/v%未満の場合(比較例1-16)には、ノズルへの液の付着を抑制することができなかった。また、ブドウ糖が0.005w/v%以上であっても、MPCポリマー100重量部当たりブドウ糖が1重量部を下回る場合(比較例1-17)、及びブドウ糖が0.2 w/v%を上回る場合(比較例1-18)でも、ノズルへの液の付着を抑制することができなかった。一方、ブドウ糖が0.005〜0.2w/v%であり且つMPCポリマー100重量部当たりブドウ糖が1重量部以上を充足する場合には、ノズルへの液の付着を効果的に抑制することができていた。
【0174】
また、緩衝剤として、ホウ酸緩衝剤を使用した場合(実施例1-5等)には、リン酸緩衝剤を使用した場合(実施例1-37)に比して、付着抑制率が高い値を示しており、試験例1B及び1Cの結果と同様に、ノズルへの液付着抑制効果は、ホウ酸緩衝剤の配合によって一層顕著になることも明らかとなった。
【0175】
【表8】

【0176】
参考試験例1:ノズルからの液切れ評価試験(5)
表9に示す試験液(参考例1−2)を調製し、上記試験例1Aと同様の手法で試験を行った。また、塩酸テトラヒドロゾリン及びアラントインを含まないこと以外は、表9に示す参考例と同組成のコントロール試験液についても、同様に試験を行い、上記試験例1Bと同じ算出式に従って、付着抑制率(%)を算出した。
【0177】
結果を表9に併せて示す。この結果から、MPCポリマーと共に、塩酸テトラヒドロゾリン又はアラントインを配合しても、ノズルへの液付着抑制効果は認められなかった。即ち、上記試験例1A〜1Dで確認された液付着抑制効果は、MPCポリマーと、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及び/又はブドウ糖との組み合わせを選択した場合に認められる特有の効果であることが明らかとなった。
【0178】
【表9】

【0179】
試験例2:析出抑制試験
表10に記載の処方に従い、各成分を滅菌精製水に溶解して、全量を100mLとして試験液(実施例2-1〜2-3、及び比較例2-1〜2-3)を調製した。
【0180】
各試験液をスライドガラス上に100μLずつ滴下し、三夜室温にて放置した後に、目視にて各試験液の状態を観察して、以下の評価基準に従って、析出物の生成の程度を評価した。
<析出物の生成の程度>
− :析出物が析出していない
+ :ごく微量の白色固形物の析出があった(薄く、液滴乾燥部分の輪郭が不鮮明。中心部は顕著な析出なし)
++ :微量の白色固形物の析出があった(液滴乾燥部分の輪郭が鮮明。中心部は顕著な析出なし)
+++:白色固形物の析出があった(液滴乾燥部分の輪郭は鮮明。中心部も顕著な析出あり)
【0181】
結果を表10に併せて示す。この結果、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、又はブドウ糖を単独で配合した場合(比較例2-1〜2-3)には、白い結晶物の析出が認められた。特に、ヒアルロン酸ナトリウムを配合した場合(比較例2-2)では、析出物の生成が顕著であった。これに対して、MPCポリマーと共に、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、又はブドウ糖を組み合わせて配合した場合(実施例2-1〜2-3)では、析出物の生成を抑制できることが確認された。
【0182】
眼科用液体組成物は使用時に眼の縁や睫毛に付着しがちであることを考慮すると、析出物の生成を抑制することは、使用者の美容的外観を維持させる上で有効である。それ故、本試験結果から、MPCポリマーと、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、又はブドウ糖とを併用することによって、美容的外観の維持という使用者の要望にも応える製剤を提供できることも確認された。
【0183】
【表10】

【0184】
試験例3A:コンタクトレンズに対する菌付着抑制試験(1)
表11に示す試験液(実施例3-1〜3-2及び比較例3-1〜3-4)を用いて、SCL(SCL分類:グループIV、主材質:etafilconA)へのPseudomonas aeruginosa (ATCC9027)(細菌)の付着性について評価した。
【0185】
レンズを1枚あたり滅菌生理食塩水5mLに1晩浸漬させた(レンズの前処理)。各試験液1mLを24穴マルチプレートに入れ、それぞれにレンズを1枚ずつ入れた。コントロールとしては生理食塩水を用いた(n=5)。24時間後、それぞれのレンズの水分を不織布で軽く吸い取った後、106〜7CFU/mLのPseudomonas aeruginosa菌液(生理食塩水で懸濁)5mLを入れた6穴マルチプレートに入れ、30分間室温にて保存した。次に、それぞれのレンズをピンセットで生理食塩水5mLを入れた6ウェルプレートに入れ、1分間振とうした。レンズを、新しい生理食塩水5mLの入ったスピッツ管に移し,3分間超音波(38kHz)にかけた後、1分間試験管ミキサーにて攪拌することで、各SCLに付着した細菌を剥がし、付着菌液とした。
【0186】
得られた付着菌液を適当な濃度になるように希釈し、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・寒天培地(SCDLP寒天培地)上に播種し、33℃にて1晩培養後、観察されたコロニー数をカウントすることにより、各レンズに対する付着生菌数を求めた。
【0187】
結果を図5に示す。コントロール又は比較例3-1の場合に比較して、MPCポリマーを配合した場合(比較例3-2)、SCLへの菌付着量が増加することが確認された。これに対して、MPCポリマーと共に、コンドロイチン硫酸ナトリウム又はヒアルロン酸ナトリウムを配合した場合(実施例3-1及び3-2)には、ソフトコンタクトレンズへの菌付着が顕著に減少することがわかった。
【0188】
MPCポリマーを構成素材として含むソフトコンタクトレンズには、レンズへの菌付着抑制効果があることが知られているが、MPCポリマーを眼科用液体組成物成分としてレンズと接触させた場合には、それ単独では菌付着抑制効果を発揮せず、むしろ菌付着を増長する傾向があることが確認された。
【0189】
以上の結果から、MPCポリマーと、コンドロイチン硫酸ナトリウム又はヒアルロン酸ナトリウムとを併用することにより、ソフトコンタクトレンズへの菌付着抑制が可能な優れた製剤を提供できることが明らかとなった。
【0190】
【表11】

【0191】
本試験結果に基づいて、下記試験例3Bと同様の算出式に従って、コンタクトレンズへの菌付着抑制率(%)を算出した結果、実施例3-1の菌付着抑制率は19.9%、実施例3-2の菌付着抑制率は56.2%であった。なお、実施例3-1のコントロールとしては比較例3-3を、実施例3-2のコントロールとしては比較例3-4を、それぞれ用いた。
【0192】
試験例3B:コンタクトレンズに対する菌付着抑制試験(2)
上記試験例3Aにおいて、MPCポリマーとコンドロイチン硫酸ナトリウムの併用により、コンタクトレンズへの菌付着抑制効果が認められた(実施例3-1)。そこで、MPCポリマーとコンドロイチン硫酸ナトリウムの含有割合の変化、及びホウ酸緩衝剤の含有割合の変化が、コンタクトレンズへの菌付着抑制効果に与える影響について評価を行った。具体的には、表12に示す試験液(実施例3-3〜3-7)を調製し、上記試験例3Aと同様の手法で試験を行った。また、MPCポリマーを含まないこと以外は、表12に示す実施例と同組成のコントロール試験液についても、同様に試験を行った。測定された付着生菌数から、下記の算出式に従って、菌付着抑制率(%)を算出した。
【0193】
【数2】

【0194】
得られた結果を表12に併せて示す。この結果から、MPCポリマーとコンドロイチン硫酸ナトリウムの含有割合を変化させても、またホウ酸緩衝剤の濃度を変化させても、コンタクトレンズへの菌付着抑制効果が有効に奏されることが確認された。
【0195】
【表12】

【0196】
試験例3C:コンタクトレンズに対する菌付着抑制試験(3)
上記試験例3Aにおいて、MPCポリマーとヒアルロン酸ナトリウムの併用により、コンタクトレンズへの菌付着抑制効果が認められた(実施例3-2)。そこで、MPCポリマーとヒアルロン酸ナトリウムの含有割合の変化、及びホウ酸緩衝剤の含有割合の変化が、コンタクトレンズへの菌付着抑制効果に与える影響について評価を行った。具体的には、表13に示す試験液(実施例3-8〜3-12)を調製し、上記試験例3Aと同様の手法で試験を行った。また、MPCポリマーを含まないこと以外は、表13に示す実施例と同組成のコントロール試験液についても、同様に試験を行い、上記試験例3Bと同じ算出式に従って、菌付着抑制率(%)を算出した。
【0197】
得られた結果を表13に併せて示す。この結果から、MPCポリマーとヒアルロン酸ナトリウムの含有割合を変化させても、またホウ酸緩衝剤の濃度を変化させても、コンタクトレンズへの菌の付着を有効に抑制できることが確認された。
【0198】
【表13】

【0199】
試験例3D:コンタクトレンズに対する菌付着抑制試験(4)
MPCポリマーとブドウ糖の併用が、コンタクトレンズへの菌付着に与える影響について評価を行った。具体的には、表14に示す試験液(実施例3-13〜3-16)を調製し、上記試験例3Aと同様の手法で試験を行った。また、MPCポリマーを含まないこと以外は、表14に示す実施例と同組成のコントロール試験液についても、同様に試験を行い、上記試験例3Bと同じ算出式に従って、菌付着抑制率(%)を算出した。
【0200】
得られた結果を表14に併せて示す。この結果から、MPCポリマーとブドウ糖を併用することによって、コンタクトレンズへの菌の付着を抑制できることが確認された。
【0201】
【表14】

【0202】
参考試験例2:コンタクトレンズに対する菌付着抑制試験(5)
表15に示す試験液(参考例3−4)を調製し、上記試験例3Aと同様の手法で試験を行った。また、MPCポリマーを含まないこと以外は、表15に示す参考例と同組成のコントロール試験液についても、同様に試験を行い、上記試験例3Bと同じ算出式に従って、菌付着抑制率(%)を算出した。
【0203】
結果を表15に併せて示す。この結果から明らかなように、MPCポリマーと共に、塩酸ピリドキシン又はタウリンを配合すると、コンタクトレンズへの菌の付着を抑制することはできず、寧ろコンタクトレンズへの菌の付着を増大させる結果を招いた。即ち、上記試験例3A〜3Dで確認されたコンタクトレンズへの菌付着抑制効果は、MPCポリマーと、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及び/又はブドウ糖との組み合わせを選択した場合に認められる特有の効果であることが明らかとなった。
【0204】
【表15】

【0205】
試験例4:SCLの濡れ性試験
表16に記載の処方に従い、各成分を精製水に溶解して全量を100mLとして試験液(実施例4-1及び比較例4-1〜4-3)を調製した。
【0206】
次に、SCL(SCL分類:グループIII、主材質:BalafilconA、イオン性SHCL)を試験液5mLに1枚ずつ浸漬させ、室温にて24時間静置した。
【0207】
その後、レンズ表面の水分を軽くふき取り、接触角測定機(Drop Master 500)及び解析ソフト(FAMAS)(いずれも協和界面科学株式会社製)を用いて、生理食塩水をレンズ表面に1μL滴下させた際の接触角を測定した。
【0208】
測定は、1枚につき5回行った。測定ポイントは500msごとに2500msまで行い、1500ms時点での接触角を採用した。
【0209】
【表16】

【0210】
結果を図6に示す。接触角が小さいほど、SCL表面が濡れやすい状態であり、装用感が向上することを示している。この結果、コンドロイチン硫酸ナトリウム単独の場合(比較例4-3)では接触角が上昇し、濡れ性が悪化している傾向を示した。一方、MPCポリマー単独の場合(比較例4-2)では若干の濡れ性改善効果が認められた。これに対して、MPCポリマーと、コンドロイチン硫酸ナトリウムとを併用した場合(実施例4-1)では、濡れ性が格段に改善することが判明した。
【0211】
MPCポリマーでは、ハードコンタクトレンズに対する濡れ性改善効果が知られているものの(特開2000-98310号公報等)、SCLに対する濡れ性改善効果は知られておらず、今回の試験の結果、SCLに対する濡れ性改善効果は小さいことが判明した。
【0212】
本試験結果から、MPCポリマーとコンドロイチン硫酸ナトリウムとを併用することによって、SCLに対する濡れ性を改善して、SCLの装用感を向上させる製剤を提供できることが明らかとなった。
【0213】
参考試験例3:SCLに対する花粉タンパク質洗浄試験
表17に示す4種のSCLを試験に用いて、SCLに対する花粉タンパク質の吸着特性を評価した。
【0214】
まず、試験に使用するレンズを、生理食塩液4mLに1枚ずつ浸漬させ、室温にて一晩保存した(レンズの前処理)。
【0215】
花粉タンパク質抗原((株)エル・エス・エル社製 Cetar Pollen Extract-Ja、性状:凍結乾燥粉末(Cedar Pollen粗抽出物 Mountain ceder、Juniperus Asheiiの花粉から抽出))を、生理食塩液に溶解し、5mg/30mL花粉タンパク質液を調製した。24穴プレートの各穴に、花粉タンパク質液1.0mLを入れ、前処理済みのレンズの余分な水分をふき取った後に浸漬し、34℃120rpmにて18時間振とうを行った。次いで、レンズを取り出し、生理食塩液100mLに素早く(約1秒)浸漬させて余分な液をすすいだ後、ビーカーのふちを使って軽く水分を切り、24穴プレートの各穴に入れた花粉タンパク質分離用液(1%炭酸ナトリウム及び1%SDS含有水溶液)1mLに浸漬させた。34℃120rpmで3時間振とうし、レンズに吸着した花粉タンパク質を花粉タンパク質分離用液中に分離させた。
【0216】
マイクロBCAアッセイキット(Thermo SCIENTIFIC,Pierce #23235)を用いて、花粉タンパク質分離用液中の花粉タンパク質量を、アルブミン換算値として定量し、レンズに対する花粉タンパク質吸着量を求めた。
【0217】
【表17】

【0218】
結果を図7に示す。イオン性SHCLであるレンズAを用いた場合には、非シリコーン製のSCLであるレンズC及びレンズDや、非イオン性SHCLであるレンズBと比較すると、顕著に高い花粉タンパクの吸着が認められた。この結果から、花粉タンパク質は、ソフトコンタクトレンズの中でも、イオン性SHCLに対して吸着する傾向が強く、イオン性SHCLには花粉タンパク質の吸着という特有の課題があることが確認された。
【0219】
試験例5:イオン性SHCLに対する花粉タンパク質洗浄試験
上記参考試験例3にて花粉タンパクの顕著な吸着が確認されたレンズA(イオン性SHCL)を用いて、下記の試験を実施した。
【0220】
先ず、レンズAを、5mLの生理食塩液に1枚ずつ浸漬させ、一晩室温にて保存した(レンズの前処理)。花粉タンパク質抗原((株)エル・エス・エル社製 Cetar Pollen Extract-Ja、性状:凍結乾燥粉末(Cedar Pollen粗抽出物 Mountain ceder、Juniperus Asheiiの花粉から抽出))を生理食塩液に溶解し、5mg/50mL花粉タンパク質液を調製した。24穴プレートの各穴に、1.0mLの花粉タンパク質液を入れ、前処理したレンズの余分な水分をふき取り浸漬させ、34℃、120rpm/minで8時間振とうを行った。
【0221】
花粉タンパク質液に浸漬させたレンズAを取り出し、生理食塩液100mLに素早く(約1秒)浸漬させて余分な液をすすいだ後、水分をふき取り、24穴プレートに入れた表18に記載の各試験液(実施例5-1〜5-5、及び比較例5-1〜5-2)に浸漬して34℃、120rpm/minで15時間振とうを行った。その後、レンズAを取り出し、生理食塩液100mLに素早く(約1秒)浸漬させて余分な液をすすいだ後、ビーカーのふちを使って、軽く水分を切り、24穴プレートに入れた花粉タンパク質分離用液(1%炭酸ナトリウム及び1%SDS含有水溶液)0.5mLに浸漬させた。34℃120rpmで3時間振とうし、レンズに吸着した花粉タンパク質を花粉タンパク質分離用液中に分離させた。
【0222】
マイクロBCAアッセイキット(Thermo SCIENTIFIC,Pierce #23235)を用いて、花粉タンパク質分離用液中の花粉タンパク質量を、アルブミン換算値として定量し、レンズAに付着している花粉タンパク質吸着量を求めた。次式により、比較例5-1の花粉タンパク質吸着量に対する、他の比較例及び実施例の花粉タンパク質吸着の改善率を算出した。
【0223】
【数3】

【0224】
結果を表18に併せて示す。この結果から、MPCポリマーと、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、又はブドウ糖とを併用した場合(実施例5-1〜5-5)では、MPCポリマー単独の場合(比較例5-2)に比して、格段にレンズに残存した花粉の量が少ない事が確認された。つまり、実施例5-1〜5-5においては、レンズに吸着した花粉の洗浄効果が高いことが明らかになった。コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びブドウ糖には、SCLにおけるタンパク質の洗浄効果が知られていないことを踏まえれば、本試験結果は、極めて意外性のあるものといえる。また、更に緩衝剤としてホウ酸及びホウ砂を用いた場合には、花粉タンパク質に対する洗浄効果がより高まることも確認された。
【0225】
以上の結果から、MPCポリマーと、コンドロイチン硫酸ナトリウム又はヒアルロン酸ナトリウムとを併用することによって、イオン性SHCLに対して花粉洗浄効果の優れた製剤を提供できることが明らかとなった。
【0226】
【表18】

【0227】
製剤例
表19−21に記載の処方で、点眼剤(実施例6−7、19−20、及び32−33)、コンタクトレンズ用点眼剤(実施例8−16、21−29、及び34−42)、コンタクトレンズ装着液(実施例17、30、及び43)、並びに洗眼剤(実施例18、31、及び44)が調製される。
【0228】
これらの製剤例の内、実施例6−7、14−20、27−33及び40−44は、本発明の眼科用液体組成物-1の実施態様例であり、実施例8−18、21−31及び34−44は、本発明の眼科用液体組成物-2の実施態様例である。なお、実施例6−14、17−25、28−36、及び39−44において配合されているMPCポリマーは、表1で使用したものと同じものである。また、実施例15−16、26−27、及び37−38において配合されているMPCポリマーは、商品名「LIPIDURE-HM」(日油株式会社製)を用いて処方量のMPCポリマー濃度となるよう配合した。
【0229】
【表19】

【0230】
【表20】

【0231】
【表21】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(I)で表されるモノマーを、単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【化1】

[式中、n1は2〜4の整数、Rは水素原子又はメチル基、Rは、−(RO)n2−R−で表される基(Rは炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR〜Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖とを含み、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
であることを特徴とする、眼科用液体組成物。
【請求項2】
点眼剤又はコンタクトレンズ装着液である、請求項1に記載の眼科用液体組成物。
【請求項3】
ポリエチレン製のノズルが装着された容器に収容されてなる、請求項1又は2に記載の眼科用液体組成物。
【請求項4】
(A)一般式(I)で表されるモノマーを、単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、
【化2】

[式中、n1は2〜4の整数、Rは水素原子又はメチル基、Rは、−(RO)n2−R−で表される基(Rは炭素数1〜4のアルキレン基、n2は、0〜5の整数を示す)、及びR〜Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
(B)コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、これらの塩、及びブドウ糖の中の少なくとも1種とを含むことを特徴とする、ソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
【請求項5】
ソフトコンタクトレンズ用点眼剤である、請求項4に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用液体組成物。
【請求項6】
眼科用液体組成物において、(A)一般式(I)で表されるモノマーを単独又は共重合可能な他のモノマーと重合した重合体と、(B-1)コンドロイチン硫酸及びその塩の中の少なくとも1種、(B-2)ヒアルロン酸及びその塩の中の少なくとも1種、又は(B-3)ブドウ糖とを、
(B-1)成分の含有割合が0.05〜0.5w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-1)成分の比率が5重量部以上、
(B-2)成分の含有割合が0.002〜0.1w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-2)成分の比率が0.1重量部以上、又は
(B-3)成分の含有割合が0.005〜0.2w/v%であり、且つ(A)成分100重量部に対する(B-3)成分の比率が1重量部以上
となるように併用することを特徴とする、ノズルからの眼科用液体組成物の液切れを改善する方法。
【化3】

[式中、n1、及びR〜Rは、前記と同じ。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−93897(P2011−93897A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221871(P2010−221871)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】