説明

眼鏡レンズの染色検査方法、眼鏡レンズの染色検査装置、及び眼鏡レンズの製造方法

【課題】 眼鏡レンズの染色状態を、客観的かつ効率的に評価できる眼鏡レンズの染色検査方法、眼鏡レンズの染色検査装置、及び眼鏡レンズの製造方法を提供する。
【解決手段】 眼鏡レンズを撮影して眼鏡レンズのカラー画像を得る撮影工程と、眼鏡レンズのカラー画像内にて染色有無判定位置を特定し、染色有無判定位置におけるL*値を取得し、取得したL*値と染色有無判定基準値とを比較して染色の有無を判定する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズの染色検査方法、眼鏡レンズの染色検査装置、及び眼鏡レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズは、顧客の要望に応じて種々の色に染色される。眼鏡レンズに施される染色の種類(以下、染色種ともいう)としては、例えば、均一染色やグラディエント染色等がある。均一染色とは、眼鏡レンズの全面を同じ色でかつ均一の染色濃度で染色することをいい、グラディエント染色とは、眼鏡レンズの全面あるいは一部を特定の方向に連続的に染色濃度を変化させて染色することをいう。なお、均一染色された眼鏡レンズを均一カラー眼鏡レンズと呼び、グラディエント染色された眼鏡レンズをグラディエントカラー眼鏡レンズと呼ぶ(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
通常、眼鏡レンズの染色は、眼鏡店や眼鏡レンズメーカの工場において行われる。染色の方法としては、眼鏡レンズの表面に着色能を有する液体を付着させて固定化する方法(例えば、眼鏡レンズを染料液に浸して染色する浸漬着色法)や、着色したフィルムを眼鏡レンズに貼り付けてフィルムに含まれた染料を眼鏡レンズに転写する方法や、気相中で有機染料を加熱・昇華させて眼鏡レンズに着色させる方法等が知られている。
【0004】
染色を終えた眼鏡レンズは、その染色が指定された通り行われたかどうかを検査する必要がある。従来は、染色を終えた眼鏡レンズを目視で観察したり、染色を終えた眼鏡レンズの中心部(幾何学中心)に光を照射してその光透過率を測定したりすることにより、染色の状態を検査していた(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特開平3−72978
【特許文献2】特開2004−85587
【特許文献3】特開2002−277348
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の目視による検査方法では、評価者の主観によって評価結果に差異が生じてしまい、客観的な評価結果を得ることが困難であった。また、前記光透過率を測定する検査方法では、定量的かつ客観的な評価が可能であるものの、染色カラー自体を評価しているわけではないため、注文によって指定された色と染色カラーとが異なっているようなエラーを検出することは困難であった。また、前記光透過率を測定する検査方法では、測定光の波長と染色カラーとの関係やレンズの光学的な形状が、測定値に影響する場合があり、評価結果に誤差が生じてしまう場合があった。
【0006】
また、眼鏡レンズメーカの工場等は、染色カラーや染色種等の染色条件がそれぞれ異なる多数枚の眼鏡レンズを受注した場合、受注した多数枚の眼鏡レンズについてそれぞれ指定通り染色されているかどうかを短時間で検査する必要がある。しかしながら、従来の方法では、染色条件がそれぞれ異なる多数枚の眼鏡レンズを短時間で評価することは困難であった。
【0007】
また、エラーの具体的内容(例えば、染色されるべき眼鏡レンズが染色されていなかったのか、染色種が間違って染色されたのか、染色カラーが指定と異なっているのか等)は、従来の方法では自動的には判断することが困難であった。そのため、エラーを検出した
場合には、それぞれ個別に目視を行ってその後の処理を判断する必要があった。
【0008】
そこで本発明は、眼鏡レンズの染色状態を、客観的かつ効率的に評価できる眼鏡レンズの染色検査方法、染色検査装置、及び眼鏡レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、眼鏡レンズの表面に施された染色の状態を検査する眼鏡レンズの染色検査方法であって、眼鏡レンズを撮影して前記眼鏡レンズのカラー画像を得る撮影工程と、前記眼鏡レンズのカラー画像内にて染色有無判定位置を特定し、前記染色有無判定位置におけるL*値を取得し、前記取得したL*値と染色有無判定基準値とを比較して染色の有無を判定する工程と、を有する眼鏡レンズの染色検査方法である。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記染色有無判定位置は、前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心上に特定される第1の態様に記載の眼鏡レンズの染色検査方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、眼鏡レンズの表面に施された染色の状態を検査する眼鏡レンズの染色検査方法であって、前記眼鏡レンズのカラー画像内にて複数の染色種判定位置を特定し、前記複数の染色種判定位置におけるL*値をそれぞれ取得し、前記取得したL*値のうち最大値と最小値との差と染色種判定基準値とを比較して染色種を判定する工程を有する眼鏡レンズの染色検査方法である。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記複数の染色種判定位置は、前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心から等距離であって該幾何学中心に対して互いに等角度間隔である位置上にそれぞれ特定される第3の態様に記載の眼鏡レンズの染色検査方法である。
【0013】
本発明の第5の態様は、眼鏡レンズの表面に施された染色の状態を検査する眼鏡レンズの染色検査方法であって、前記眼鏡レンズのカラー画像内にて染色カラー判定位置を特定し、前記染色カラー判定位置におけるL*,a*,b*値をそれぞれ取得し、前記取得したL*,a*,b*値と染色カラー判定基準値とを比較して染色カラーを判定する工程を有する眼鏡レンズの染色検査方法である。
【0014】
本発明の第6の態様は、前記染色カラーを特定する工程は、前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心からそれぞれ等距離にあり、該幾何学中心に対して互いに等角度間隔にある複数の濃度変化方向判定位置を特定し、前記複数の濃度変化方向判定位置におけるL*値をそれぞれ取得し、前記取得したL*値が最小あるいは最大である濃度変化方向判定位置と前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心とを結んで濃度変化方向線を特定し、前記濃度変化方向線上に前記染色カラー判定位置を特定する第5の態様に記載の眼鏡レンズの染色検査方法である。
【0015】
本発明の第7の態様は、前記染色カラーを特定する工程は、前記眼鏡レンズのカラー画像内における染色濃度が等しい複数の点を結んで染色濃度均一線を特定し、前記染色濃度均一線と直交しつつ前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心を通る濃度変化方向線を特定し、前記濃度変化方向線上に前記染色カラー判定位置を特定する第5の態様に記載の眼鏡レンズの染色検査方法である。
【0016】
本発明の第8の態様は、前記染色カラー判定位置は、前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心上、及び前記濃度変化方向線上であって該幾何学中心から所定の距離である位置上にそれぞれ特定される第6又は7の態様に記載の眼鏡レンズの染色検査方法である。
【0017】
本発明の第9の態様は、眼鏡レンズを保持する撮影台と、前記撮影台に保持された眼鏡レンズを照明する照明装置と、前記照明装置に照明された眼鏡レンズの被染色面を撮影してカラー画像を得る撮像手段と、撮影対象の眼鏡レンズを前記撮影台上に搬入するとともに撮影終了後の眼鏡レンズを前記撮影台上から搬出する搬送手段と、前記撮像手段により撮影された眼鏡レンズのカラー画像内にて染色有無判定位置を特定し、前記染色有無判定位置におけるL*値を取得し、前記取得したL*値と染色有無判定基準値とを比較して染色の有無を判定する染色検査制御コンピュータと、を備える眼鏡レンズの染色検査装置である。
【0018】
本発明の第10の態様は、前記染色検査制御コンピュータは、前記撮像手段により撮影された眼鏡レンズのカラー画像内にて複数の染色種判定位置を特定し、前記複数の染色種判定位置におけるL*値をそれぞれ取得し、前記取得したL*値のうち最大値と最小値との差と染色種判定基準値とを比較して染色種を判定する第9の態様に記載の眼鏡レンズの染色検査装置である。
【0019】
本発明の第11の態様は、前記染色検査制御コンピュータは、前記撮像手段により撮影された眼鏡レンズのカラー画像内にて染色カラー判定位置を特定し、前記染色カラー判定位置におけるL*,a*,b*値をそれぞれ取得し、前記取得したL*,a*,b*値と染色カラー判定基準値とを比較して染色カラーを判定する第9又は10の態様に記載の眼鏡レンズの染色検査装置である。
【0020】
本発明の第12の態様は、第1から8のいずれかの態様に記載の眼鏡レンズの染色検査方法を用いて前記眼鏡レンズの表面に施された染色の状態を検査する工程を有する眼鏡レンズの製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる眼鏡レンズの染色検査方法、眼鏡レンズの染色検査装置、及び眼鏡レンズの製造方法によれば、眼鏡レンズの染色状態を、客観的かつ効率的に評価できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.眼鏡レンズ受注・製造システムの構成
まず、本発明の一実施形態にかかる眼鏡レンズ受注・製造システムの構成について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる眼鏡レンズ受注・製造システムの構成を例示する概略図である。図1に示すように、本実施形態にかかる眼鏡レンズ受注・製造システムは、発注元としての眼鏡店1と、通信媒体4を介して眼鏡店1と接続されるレンズ工場5とを備えている。
【0023】
眼鏡店1は、眼鏡あるいは眼鏡レンズの発注元として構成されている。眼鏡店1には、眼鏡フレームの眼鏡枠形状測定装置2と、オンライン注文用端末としてのコンピュータである注文用端末3と、が設置されている。
【0024】
注文用端末3は、眼鏡レンズや眼鏡の注文内容を特定する注文データを、発注先であるレンズ工場5へ送信するように構成されている。注文用端末3は、注文データを入力する入力手段と、画面表示手段と、通信手段とを備えており、通信媒体4を介して発注先であるレンズ工場5と接続可能になっている。注文用端末3は、専用の端末でもあってもよく、また、注文用のソフトウェアがインストールされた汎用のパソコンでもあってもよい。また、例えばWWWブラウザが動作するパソコンのようにWWWクライアントとして動作する機器であってもよい。この場合は、インターネット上やレンズ工場5側のネットワーク上にWWWサーバを設け、そこに注文受付用のプログラムやホームぺージを起動しておくとよい。
【0025】
なお以下では、レンズ工場5への発注者を眼鏡店1として説明するが、発注者はこれに限定されず、例えば、眼科医、個人、眼鏡レンズ・眼鏡メーカの営業所等であってもよい。また、レンズ工場5と発注者とがオンラインで接続されている構成に限定されず、例えば、発注者からの注文をオフラインで受け付けたレンズ工場5が、注文内容を別途データ入力するように構成されていてもよい。また、図1では発注者として一つの眼鏡店1しか示していないが、実際には通信媒体4を介して多数の発注者がレンズ工場5に接続可能なように構成されている。
【0026】
通信媒体4は、眼鏡店1に設置される注文用端末3と、レンズ工場5に設置される後述するサーバ6とを接続可能にするネットワークである。通信媒体4は、特に種類が限定されず、例えば、公衆通信回線、専用回線、インターネット等を利用することができる。また、通信媒体4の途中に中継局を設けてもよい。
【0027】
レンズ工場5は、眼鏡店1からの注文に応じて眼鏡レンズや眼鏡を製造した後、製造した眼鏡レンズや眼鏡を発注元に出荷するように構成されている。具体的には、レンズ工場5は、注文用端末3からの注文データを受信して設計データ642や加工データ643を作成するサーバ6と、作成された設計データ642や加工データ643に基づいて眼鏡レンズの製造を行う各種装置と、を備えている。レンズ工場5は、前記各種装置として、玉型加工される前のアンカットレンズに染色を行う染色装置7と、染色されたアンカットレンズの染色状態を検査する染色検査装置8と、を備えている。サーバ6、染色装置7、及び染色検査装置8は、LANにより接続されて互いにデータ交換なように構成されている。レンズ工場5は、その他の前記各種装置として、例えば、レンズブランクを研削して光学面を形成する研削装置(カーブジェネレータ)や、研削された光学面を研磨して仕上げる研磨装置、レンズの表面に各種コーティングを施す各種コーティング装置、レンズの玉形加工を行う玉型加工装置等を備えているが、これらについては従来の技術が使用できるため記載は省略している。
【0028】
(1)サーバの構成
まず、レンズ工場5が備えるサーバ6の構成について説明する。サーバ6は、中央演算装置としてのCPUと、メモリと、HDD等の記憶装置として構成された記憶手段64と、通信媒体4を介して注文用端末3に接続される通信ポートと、LAN等を介して染色装置7や染色検査装置8に接続される通信ポートと、を備えたコンピュータとして構成されている。記憶手段64には、図示しない受注処理プログラム、設計データ作成プログラム、加工データ作成プログラム等がそれぞれ格納されている。これらのプログラムが記憶手段64からメモリへ読み出され、CPUにより実行されることにより、後述する受注処理手段61、設計データ作成手段62、及び加工データ作成手段63がサーバ6に実現されるように構成されている。また、記憶手段64には、後述する受注データ641、設計データ642、加工データ643等の各種データが格納されるように構成されている。
【0029】
<受注処理作成手段>
まず、受注処理プログラムによってサーバ6に実現される受注処理手段61について説明する。受注処理手段61は、通信媒体4を介して注文用端末3から注文データを受信し、注文データと注文データに基づいて決定されるデータとを含む受注データ641を作成し、記憶手段64に格納するように構成されている。
【0030】
受注処理手段61が作成する受注データ641には、レンズに関する情報、眼鏡フレームに関する情報、眼鏡レンズの処方値、レイアウト情報等が含まれる。以下に、受注データに含まれる各種情報についてそれぞれ説明する。
【0031】
レンズに関する情報には、例えば、レンズ種に関する情報や、レンズ加工指示に関する情報等が含まれる。レンズ種に関する情報には、例えば、レンズ材質、屈折率、レンズ表裏面の光学設計、レンズ外径、及びこれらを識別する識別コード等が含まれる。また、レンズ加工指示に関する情報には、例えば、レンズ厚さ、コバ厚、偏心、縁面の仕上げ方法、フレーム取付部の加工種類やその方法、レンズ染色情報6411、レンズコーティング情報、及びこれらを識別する識別コード等が含まれる。
【0032】
レンズ染色情報6411には、例えば、染色種情報、色情報、及び染色濃度情報等が含まれる。
【0033】
染色種情報とは、発注者が指定した染色の種類を特定する情報である。染色種情報には、例えば、染色領域情報、濃度変化の有無情報、及びこれらを識別する識別コード等が含まれる。染色領域情報は、例えば、眼鏡レンズ全面に染色を行うか(全面染色を行うか)、あるいは眼鏡レンズの一部にのみ染色を行うか(部分染色を行うか)等を特定する情報である。また、濃度変化の有無情報は、例えば、眼鏡レンズ全面に均一の濃度で染色を行うか(均一染色を行うか)、あるいは一定の方向に連続的に染色濃度を変化させて染色を行うか(グラディエント染色を行うか)等を特定する情報である。
【0034】
色情報とは、発注者が指定した染色カラーを特定する情報である。本実施形態においては、発注者は、予め設定されている複数種の染色カラー群から所望の染色カラーを選択することが可能なように構成されている。色情報の具体的な内容は、識別コードによって特定することが可能なように構成されている。なお、発注側から色見本(例えば染色済みのサンプルレンズ)が送られてきてそれに染色カラーを合わせる場合もある。その場合は色情報としては例えば「色見本有り」とする。色見本の場合は、本実施形態の染色検査における染色カラー判定の条件を事前に用意できないので、前記サンプルレンズを本実施形態に係る染色検査装置を用いて染色カラーを測定しておき、これを基に染色カラー判定条件を作成しておくとよい。
【0035】
染色濃度情報には、例えば、指定染色濃度情報や染色濃度変化情報等が含まれる。
【0036】
指定染色濃度情報は、発注者が指定した染色カラー(色情報で指定された染色カラー)における染色濃度を特定する情報である。なお、上述の染色種情報にてグラディエント染色が指定されたときには、指定染色濃度情報は、眼鏡レンズ上の特定の位置(例えば光学中心等)における染色濃度を特定する。
【0037】
本実施の形態において、染色濃度は、例えば次の通り定義される。
「染色濃度」(%)=100−「染色後の光透過率」×100
ここで「染色後の光透過率」とは、「眼鏡レンズへの照射光の光量」に対する「眼鏡レンズからの透過光の光量」の比をいう。なお、照射光の波長は、染色カラーに応じて適宜設定される。例えば、染色カラーが青色系の場合は波長585nmとし、赤色系の場合は波長525nmとし、黄色系の場合は波長630nmとする。
【0038】
なお、上述の指定染色濃度情報には、染色前の眼鏡レンズ(無色の眼鏡レンズ)が有する光損失が考慮されていない。すなわち、指定染色濃度情報は、それぞれ染色前の眼鏡レンズの光透過率を1(損失無し)と仮定した場合における染色濃度を示している。従って、指定染色濃度情報に基づいて染色を行う際には、染色前の眼鏡レンズが有する光損失を考慮して補正された加工用の染色濃度を算出する必要がある。すなわち、染色前の眼鏡レンズが有する光損失分を差し引いて加工用の染色濃度を算出する必要がある。なお、かかる補正処理は、後述する染色加工データ作成手段711により実施される。
【0039】
染色濃度変化情報には、例えば、染色濃度変化方向(例えば、染色濃度が低下する方向)、染色濃度変化パターン(例えば、染色濃度勾配一定、あるいは予め設定されている染色濃度変化パターン(例えば染色濃度が曲線的に変化する場合)等を指定。濃度勾配一定の場合は、その濃度勾配も指定)、染色濃度変化開始指定位置(染色濃度の低下を開始する位置。例えば染色濃度変化方向において濃染色濃度が高い側の玉形形状における最端からの距離で指定(その最端から染色濃度変化を開始する場合は0と指定))、染色濃度変化終了指定位置(染色濃度の低下を終了する位置。例えば染色濃度変化方向において染色濃度が低い側の玉形形状における最端からの距離で指定(その玉形の端で染色濃度変化が終了する場合は0と指定))、最高指定染色濃度(前記染色濃度変化開始指定位置の指定染色濃度)、最低指定染色濃度(前記染色濃度変化終了指定位置の指定染色濃度。なお、前記染色濃度変化終了指定位置から染色濃度低下方向側には染色が施さず染色濃度変化終了位置から段差なく染色濃度変化開始位置に向かって染色を施す場合は、前記最低指定染色濃度を0(透過率最大)と指定)、シタ染めの有無(染色濃度変化終了位置から染色濃度変化方向側を最低指定染色濃度で染色する場合はシタ染め有りと指定、染色しない場合はシタ染め無しと指定)等が含まれる。
【0040】
なお、上記において、各種位置情報は、アンカットレンズの形状ではなく、玉形加工済みの眼鏡レンズの形状を基準として指定されているが、アンカットレンズの形状や各種光学特性位置(光学中心、遠用部光学中心、小玉位置など)を基準として指定することもできる。
【0041】
また、上記において、染色濃度勾配は、染色濃度が変化する距離(染色濃度変化の開始位置から終了位置までの距離)に対する染色濃度の変化量で定義される。
【0042】
また、上記において、最高指定染色濃度及び最低指定染色濃度は、発注元が指定する染色濃度の最大値及び最小値である。なお、上記の指定染色濃度情報と同様に、最高指定染色濃度及び最低指定染色濃度には、染色前の眼鏡レンズ(無色眼鏡レンズ)が有する光損失が考慮されていない。従って、最高指定染色濃度及び最低指定染色濃度に基づいて染色を行う際には、染色前の眼鏡レンズが有する光損失を考慮して補正された加工用の最高染色濃度及び最低染色濃度を算出する必要がある。すなわち、染色前の眼鏡レンズの有する光損失分を差し引いて加工用の最高染色濃度及び最低染色濃度を算出する必要がある。かかる補正は、後述する染色加工データ作成手段711により実施される。
【0043】
レンズ染色情報6411に含まれる染色種情報、色情報、染色濃度情報は、必ずしもその全てが指定される必要があるとは限らず、発注者に指定された染色の状態が特定できれば(注文内容が特定できれば)十分である。例えば、均一染色の場合は、色情報と染色濃度情報とが指定されていれば染色の状態を特定できるので、その他の情報の指定を省略できる。また、グラディエント染色の場合は、染色濃度変化情報を指定することにより指定染色濃度情報を特定できるので、その他の情報の指定を省略できる。また、指定染色濃度、染色濃度変化方向、染色濃度変化パターン、染色濃度変化開始指定位置、及び染色濃度変化終了指定位置が指定されていれば最高指定染色濃度と最低指定染色濃度とを特定できるので、その他の情報の指定を省略できる。
【0044】
また、発注者による指定が必要な情報を限定することにより、発注者による指定作業の負担を低減させることが出来る。例えば、染色濃度変化方向を、眼鏡レンズの上から下に向かって染色濃度が低下する場合に限定したり、染色濃度変化パターンを所定のパターンに限定したりすることにより、発注者による指定作業の負担を低減させることが出来る。また、染色の状態について複数のパターンを予め登録しておき、その中から発注者が任意に選択できるようにすることで、発注者による指定作業の負担を低減させることが出来る。
【0045】
眼鏡フレームに関する情報には、例えば、フレームのサイズ、フレームの素材、フレームの色、玉形形状(眼鏡枠形状測定装置2により測定された眼鏡レンズ枠の形状や、縁無しフレームや溝掘りフレームのように予め設定されている玉形形状)、及びこれらを識別する識別コード等が含まれる。
【0046】
眼鏡レンズの処方値には、例えば、球面屈折力(S度数)、乱視屈折力(C度数)、乱視軸、プリズム(プリズム屈折力、プリズム基底方向)、加入屈折力等が含まれる。
【0047】
レイアウト情報には、例えば、瞳孔間距離、左右片眼瞳孔間距離、近用瞳孔間距離、セグメント小玉位置、アイポイント位置等が含まれる。
【0048】
<設計データ作成手段>
続いて、設計データ作成プログラムによってサーバ6に実現される設計データ作成手段62について説明する。設計データ作成手段62は、受注データ641と、眼鏡レンズの設計に必要となる基礎データ(光学面形状、玉形形状等)と、を記憶手段64からそれぞれ読み出し、これらに基づいて所望の眼鏡レンズ形状を計算して設計データ642を作成し、記憶手段64に格納するように構成されている。なお、設計に必要な基礎データは記憶手段64に予め記憶されている。また、設計データ642には、後述する染色加工データ644を作成する際に利用する玉形形状におけるアイポイント位置も含まれる。
【0049】
<加工データ作成手段>
続いて、加工データ作成プログラムによってサーバ6に実現される加工データ作成手段63について説明する。加工データ作成手段63は、受注データ641と設計データ642とを記憶手段64から読み出し、これらに基づいて各種製造工程における加工設計値を計算して加工データ643を作成し、記憶手段64に格納するように構成されている。加工データ643は、加工条件を決定するデータであって、例えば、使用するレンズ基材(眼鏡レンズブランク、アンカットレンズ、各種加工装置に対する設定値や制御データ、使用治具等を特定する情報等を含んでいる。
【0050】
<記憶手段>
続いて、サーバ6が備える記憶手段64について説明する。記憶手段64は、例えばHDD等の記憶装置として構成されている。上述したように、記憶手段64には、受注処理手段61により作成された受注データ641と、設計データ作成手段62により作成された設計データ642と、加工データ作成手段63により作成された加工データ643とがそれぞれ記憶(格納)される。また、後述する染色装置7より作成される染色加工データ644、及び染色検査判定基準データ645も記憶される。また、後述する染色検査装置8より作成される染色検査結果データ646も記憶される。また、図示していないが、前記設計データ642や加工データ643の作成に際して利用される各種基礎データ等や各種プログラムも記憶される。なお、上記の各種データは、注文番号等の識別コードに対応させて格納されている。
【0051】
(2)染色装置の構成
次に、レンズ工場5内が備える染色装置7の構成について図15を参照しながら説明する。図15は、本発明の一実施形態にかかる染色装置の構成を例示する概略図である。図15に示すように、染色装置7は、浸漬着色装置72と染色制御コンピュータ71とを備えている。
【0052】
<浸漬着色装置>
まず、染色装置7が備える浸漬着色装置72の構成について説明する。本実施形態にか
かる浸漬着色装置72は、染色対象である眼鏡レンズ100を染色液に浸漬させて染色を施すように構成されている。具体的には、浸漬着色装置72は、図15に示すように、レンズ100を保持するレンズ保持具75と、レンズ100を染色する所定の染色液761が入れられた染色槽76と、レンズ保持具75を所定の動作で上下動させて染色槽76内の染色液にレンズ100を浸漬させる浸漬装置73と、浸漬装置73を制御するための制御装置74と、を備えている。
【0053】
レンズ保持具75は、例えば、左右一対のアンカットレンズ100を同時に同じ高さで保持するように構成されている。レンズ保持具75は、ロッド部751と、眼鏡レンズ支持部752と、ホルダー部753とを備えている。ロッド部751は、後述する浸漬装置73の昇降部733に、アーム部736を介して高さ調節可能に取付けられている。眼鏡レンズ支持部752は、ロッド部751の下端に固定され、染色対象の眼鏡レンズを鉛直方向に立てた状態で載置可能に構成されている。ホルダー部753は、ロッド部751に沿って上下に変位可能に接続されており、染色対象のアンカットレンズ100の上側の外周部を押さえた状態でロッド部751に固定されることにより、眼鏡レンズ支持部752と連携して染色対象のアンカットレンズ100を外周部から挟んで固定するように構成されている。
【0054】
染色槽76は、所定の染色液761を蓄える容器として構成されている。染色槽76内に蓄えられる染色液761の組成(染料、濃度)等は、染色加工データ644にて指定される。また、染色槽76の上部には染色液761の界面を露出させる開口が設けられている。染色槽76には図示しないヒータ手段が備えられている。ヒータ手段は、染色槽76内の染色液761の温度が、染色加工データ644にて指定された所定の温度になるように加熱するように構成されている。
【0055】
浸漬装置73は、レンズ100を保持したレンズ保持具75を所定の動作で上下動させて、染色槽76内の染色液761にレンズ100を浸漬させるように構成されている。本実施形態にかかる浸漬装置73は、後述する制御装置74によって駆動が制御される正逆回転自在な駆動モータ731と、鉛直方向に立設され駆動モータ731によって回転駆動されるねじ棒732と、ねじ棒732と螺合し、ねじ棒732の回転によって上下方向に変位する昇降部733と、を備えている。
【0056】
また、本実施形態にかかる浸漬装置73においては、駆動モータ731の回転軸は水平方向に配置されており、また、ねじ棒732は鉛直方向に配置されている。そのため、本実施形態にかかる浸漬装置73は、駆動モータ731の回転軸を垂直方向に変換してねじ棒732に回転を伝達するギアボックス734をさらに備えている。なお、ねじ棒732の基端は、ギアボックス734によって支持されている。なお、本発明は上述の形態に限定されず、駆動モータ731の回転軸とねじ棒732とを、それぞれ鉛直方向であって互いに平行になるように配置してもよい。
【0057】
また、このギアボックス734には、ねじ棒732と平行にガイドバー735が立設されている。昇降部733に設けられた鉛直方向に貫通する孔にガイドバー735を挿通させることにより、昇降部733の上下動を許容しつつ水平方向の回転を抑制して、ねじ棒732の回転によって昇降部733を上下方向に変位させることが可能なように構成されている。
【0058】
昇降部733には、レンズ保持具75を染色槽76上で保持するためのアーム部736が取付けられている。このアーム部736の先端には、レンズ保持具75のロッド部751を高さ調節可能に連結する取付部737が設けられている。昇降部733の原点位置(染色工程を開始する際における昇降部733の高さ位置)は、例えば、レンズ保持具75
が染色液761の界面から所定の高さになる位置とされる。
【0059】
なお、駆動モータ731は、例えばステッピングモータとして構成される。後述する制御装置74からの制御信号に基づいて、駆動モータ731の回転角度、回転数、回転速度等が制御されることにより、昇降部733の上下動動作が制御される。
【0060】
制御装置74は、後述する染色制御コンピュータ71から染色制御データを受信し、受信した染色制御データに基づいて駆動モータ731の動作を制御して、昇降部733に保持されたレンズ保持具75の昇降動作を制御するように構成されている。
【0061】
なお、図15に示す染色装置7は浸漬着色装置72を1つしか備えていないが、本発明はかかる形態に限定されない。すなわち、染色装置7が、複数台の浸漬着色装置72を備えていてもよい。また、かかる場合において、各浸漬着色装置72の染色槽76が、組成や温度等の諸条件が互いに異なる染色液761をそれぞれ蓄えていてもよい。そして、染色制御コンピュータ71が、複数の浸漬着色装置72から所定の条件を有する浸漬着色装置72を適宜選択して染色を行うようにしてもよい。
【0062】
<染色制御コンピュータ>
続いて、染色装置7が備える染色制御コンピュータ71の構成について説明する。染色制御コンピュータ71は、図示しないが中央演算装置としてのCPUと、メモリと、HDD等の記憶装置と、LAN等を介してサーバ6に接続される通信ポートと、浸漬着色装置72に接続される通信ポートと、入力手段と、を備えている。入力手段は、染色工程に搬送されてきた染色対象のレンズに関する情報をサーバ6に問い合わせるためにそのレンズを特定する情報を入力するために用いられ、染色対象のレンズ100あるいはレンズ100を載置したトレー(図示しない)等に添付されたタグ(一次元バーコードや2次元バーコードシール、ICチップ等)から識別コードを読み出し可能なように構成されている。また、記憶装置には、染色加工データ作成プログラムと染色検査判定基準作成プログラムとが格納されている。これらのプログラムが記憶装置からメモリへ読み出され、CPUにより実行されることにより、後述する染色加工データ作成手段711と染色検査判定基準データ作成手段712とが染色制御コンピュータ71に実現されるように構成されている。
【0063】
まず、染色制御コンピュータ71に実現される染色加工データ作成手段711について説明する。染色加工データ作成手段711は、染色対象であるレンズ100に対する染色条件を作成し、浸漬着色装置72の制御装置74に送信する染色制御データ等を含む染色加工データ644を作成するように構成されている。
【0064】
具体的には、まず、染色加工データ作成手段711は、入力手段により入力されたアンカットレンズ100の識別コードを取得し、かかる識別コードに基づいて、染色工程に必要な情報(玉形形状を特定するデータを含む設計データ642、レンズ染色情報6411を含む受注データ641等)と、染色対象であるアンカットレンズ100の染色条件設定に必要な位置情報(例えば光学中心位置、レンズ形状等)とをサーバ6から取得する。そして、染色加工データ作成手段711は、取得したこれらの情報を基に染色加工データ644を作成するように構成されている。
【0065】
なお、染色加工データ作成手段711は、染色工程で使用する装置や器具(染色装置、浸漬着色装置、レンズ保持具等)、染色液の組成(染料、濃度)、染色液の温度等の各種染色条件を決定し、染色加工データ644に加えるように構成されている。
【0066】
また、上述したように、染色加工データ作成手段711は、指定染色濃度情報に基づい
て染色を行う際に、染色前のアンカットレンズ100の光損出を考慮して補正し、加工用の染色濃度を算出し、染色加工データ644に加えるように構成されている。また、同様に、染色加工データ作成手段711は、最高指定染色濃度及び最低指定染色濃度に基づいて染色を行う際に、染色前のアンカットレンズ100の光損出を考慮して補正を行い、染色加工用の最高染色濃度及び最低染色濃度を算出し、加工データ643に加えるように構成されている。
【0067】
また、染色加工データ作成手段711は、レンズ染色情報6411にて指定されている染色濃度変化情報における位置情報(すなわち、染色濃度変化開始指定位置、及び染色濃度変化終了指定位置)を染色加工用の位置情報に変換して、染色加工データ644に加えるように構成されている。例えば、上述の染色濃度変化情報における位置情報は、アンカットレンズ100の形状ではなく、玉形加工済みの眼鏡レンズの形状を基準として指定されている。しかしながら、上述の浸漬着色装置72により実施される染色工程は、玉形加工済みの眼鏡レンズに対して直接行われるのではなく、玉形加工前のアンカットレンズ100に対して行われる。一方、上述の浸漬着色装置72における染色動作の基準位置(以下、染色基準位置とも呼ぶ)は、アンカットレンズ100において最初に浸漬が開始される位置(アンカットレンズ100の外周上であって染色濃度が高くなる方向における最端部分等)に指定される。そこで、染色加工データ作成手段711は、玉形加工済みの眼鏡レンズの形状を基準として指定された位置情報を、アンカットレンズ100の形状を基準とした染色加工用の位置情報に変換して、加工データ643に加えるように構成されている。なお、浸漬着色装置72における染色動作の基準位置は、浸漬着色装置の構成、浸漬着色装置の備えるレンズ保持具の構成、眼鏡レンズの位置合わせ方法等により変更されうる。そのため、浸漬着色装置72における染色動作の基準位置は、上記位置に限定せず、例えば、アンカットレンズ100における幾何学中心や、アンカットレンズ100上に配置された玉形形状110のボックス中心や、光学中心、アイポイント位置(瞳孔中心位置)等に指定してもよい。
【0068】
また、染色加工データ作成手段711は、浸漬着色装置72に対する染色制御データを作成して、染色加工データ644に加えるように構成されている。浸漬着色法において、染色濃度は、染色するレンズの材質、染料液の組成、染料液の温度、レンズが染料液に浸漬している時間等の各要素により定まる。染色加工データ作成手段711は、染色濃度を定めるこれらの要素と、レンズ染色情報6411と、染色加工データ作成手段711によって変換された上述の諸条件(染色加工用の最高染色濃度及び最低染色濃度、染色加工用の位置情報等)とに基づいて、アンカットレンズ100上の各位置における浸漬時間等を算出するように構成されている。そして、染色加工データ作成手段711は、この算出した浸漬時間を満たすように浸漬着色装置72の浸漬動作を決定し、浸漬着色装置72が備える駆動モータの駆動パターンを規定する染色制御データを作成して、染色加工データ644に加えるように構成されている。
【0069】
なお、染色加工データ作成手段711により決定される浸漬動作は、浸漬が開始される高さから最大浸漬深さまで降下させてもよいし、最大浸漬深さから浸漬が終了する高さまで上昇させてもよい。また、浸漬が開始される高さから最大浸漬深さまで降下させた後に浸漬が終了する高さまで上昇させる往復動作としてもよい。また、例えば、特許文献1に記載されているように、小振幅小周期の上下動と大振幅大周期の上下動とを組み合わせた動作としてもよい。
【0070】
以上のように作成された染色加工データ644は、染色加工データ作成手段711からサーバ6に送信され、サーバ6の記憶手段64に記憶されるように構成されている。
【0071】
なお、図16に、染色加工データ644に基づいてアンカットレンズ100に施される
染色の位置関係について例示する。
【0072】
図16は、レンズ径が2rのアンカットレンズ100に、破線で示す玉形形状110を重ねて表示したものである。この重ね合わせは、染色加工データ作成手段711によって行われる。玉形形状110は、アンカットレンズ100に玉形加工(縁摺り加工)を施して製造される眼鏡レンズの外形形状を示し、眼鏡枠形状測定装置2により測定された眼鏡枠形状や、予め設定された玉形形状のデータを基に設計データ作成手段62により作成された形状である。
【0073】
アンカットレンズ100は、一般に円形であり、その幾何学中心100cは、鉛直方向と水平方向の径方向でアンカットレンズ100の外周からそれぞれrの位置となる。図16において、幾何学中心100cを通る鉛直方向の軸を鉛直線100vとし、幾何学中心100cを通る水平方向の軸を水平線100hとする。また、アンカットレンズ100の上側の外周で、鉛直線100vと交差する点を最上点100uとし、アンカットレンズ100の下側の外周で鉛直線100vと交差する点を最下点100dとする。また、アンカットレンズ100の外周のうち装用者の顔における内側に位置する部分であって、水平線100hと交差する点を最内点100iとし、アンカットレンズ100の外周のうち装用者の顔における外側に位置する部分であって水平線100hと交差する点を最外点100oとする。また、このアンカットレンズ100の光学中心位置を100ocとする。
【0074】
また、玉形形状110の鉛直方向の最大寸法をBサイズ(縦サイズ)とし、水平方向の最大寸法をAサイズ(横サイズ)とする。また、玉形形状110に外接する二つの垂直接線Q1、Q2からそれぞれ等距離にある線を垂直中心線110vとし、玉形形状110に外接する二つの水平接線R1、R2からそれぞれ等距離にある線を水平中心線110hとする。これら垂直中心線110vと水平中心線110hの交点をボクシング中心110bcとする。また、玉形形状110におけるアイポイント(瞳孔中心位置)を110epとする。このアイポイント110epは、玉形形状110と装用者の眼鏡レンズの処方値やレイアウト情報(瞳孔間距離、左右片眼瞳孔間距離)によって決定された位置である。
【0075】
染色加工データ作成手段711は、アンカットレンズ100と玉形形状110との鉛直方向や水平方向をそれぞれ一致させつつ、アンカットレンズ100の光学中心100ocに対して玉形形状110におけるアイポイント110epを重ね合わせることにより、アンカットレンズ100と玉形形状110との重ね合わせを実施する。
【0076】
図16に示した例では、染色濃度変化方向(染色濃度が薄くなる方向)は鉛直方向下向きとしている。また、染色基準位置(最初に浸漬が開始される位置)120はアンカットレンズ100の外周の最上点100uに一致している。また、染色濃度変化開始指定位置111(染色濃度変化開始位置121)は、玉形形状110における鉛直方向最上端であり、水平接線R1と一致している。また、染色濃度変化終了指定位置112(染色濃度変化終了位置122)は、玉形形状110における鉛直方向最下端の少し手前(上側)であり、水平接線R2の上側に平行に位置している。また、染色濃度変化終了指定位置112(染色濃度変化終了位置122)における最低指定染色濃度は0である。
【0077】
<染色検査判定基準データ作成手段>
続いて、染色制御コンピュータ71に実現される染色検査判定基準データ作成手段712について説明する。染色検査判定基準データ作成手段712は、染色検査判定基準データ645を作成するように構成されている。染色検査判定基準データ645とは、後述する染色検査工程(S6)において染色検査装置8が参照するデータである。
【0078】
染色検査判定基準データ645には、検査する眼鏡レンズの染色条件に応じたアンカッ
トレンズ100上の判定位置と、その位置における判定基準値と、が含まれる。判定位置としては、例えば、染色の有無を判定するための染色有無判定位置、染色種を判定するための染色種判定位置、染色カラーを判定するための染色カラー判定位置、染色カラーの左右差を判定する染色カラーペア差判定位置等がある。また、判定基準値は、前記各判定位置に対してL*a*b*値を用いて設定される。なお、染色検査判定基準データ645の詳細については、眼鏡レンズの染色検査方法の項において後述する。
【0079】
なお、染色検査判定基準データ645の作成は、染色等の諸条件が異なり、かつ、条件どおり染色が施されている(エラーのない)複数枚のアンカットレンズ100を用意し、これらのアンカットレンズ100に対して各判定位置におけるL*a*b*値を測定して、その結果に基づいて適切な条件を予め設定しておくことが好ましい。上述の諸条件とは、具体的には、染色種、染色カラー、染色濃度(染色濃度変化パターン、染色濃度変化開始指定位置、染色濃度変化終了指定位置、最高指定染色濃度、最低指定染色濃度等)、レンズの材質、厚さ等が挙げられる。また、染色検査判定基準データ645を作成する際には、アンカットレンズ100に対する照明条件を考慮する(すなわち、後述する染色検査工程(S6)と照明条件を一致させる)ことが好ましい。なお、前記色見本に合わせて染色する場合の染色検査判定基準データは、サンプルレンズにおける各判定位置のL*a*b*値を後述する染色検査工程と同じ条件で測定し、この結果を基に設定すると良い。
【0080】
なお、以上のように作成された染色検査判定基準データ645は、染色検査判定基準データ作成手段712からサーバ6に送信され、サーバ6の記憶手段64に記憶される。
【0081】
図14に、例えば直径65mmのアンカットレンズ100にグラディエント染色を行う場合の染色検査判定基準データ645の例を示す。図14は、染色カラーがグレーであり、染色濃度変化方向が鉛直方向下向きであり、染色濃度勾配が0.46パーセント/mmであり、染色濃度変化開始位置121がアンカットレンズ100の外周の最上点100uであり、染色濃度変化終了位置122が前記最上点100uから鉛直方向下方に65mmの位置であり、最低染色濃度が最小(0)である場合の染色検査判定基準データ645を例示している。
【0082】
図14においては、染色の有無を判定する際の染色有無判定位置をアンカットレンズ100の画像データから求められたレンズ輪郭形状の幾何学中心100cとしている。なお、レンズ輪郭形状が円の場合はその中心位置を染色有無判定位置としても良い。
また、判断基準は、染色有無判定位置におけるL*値が、染色有無判定基準値(92.5)以下であること、としている。かかる判定基準を満たした(すなわち、染色有無判定位置におけるL*値が92.5以下である)アンカットレンズ100は染色有りと判定され、満たさないアンカットレンズ100は染色無しと判断される。
【0083】
また、図14においては、染色種を判定する際の染色種判定位置を、アンカットレンズ100のカラー画像の幾何学中心100cから15mmの距離にあって、かつ幾何学中心100cに対して互いに120度間隔で離れた3点としている。また、判断基準は、染色種判定位置におけるL*値の最大値と最小値の差が、染色種判定基準値(5.0)以上であることしている。かかる判定基準を満たした(すなわち、染色種判定位置におけるL*値の最大値と最小値の差が5.0以上である)アンカットレンズ100はグラディエント染色と判定され、満たさないアンカットレンズ100は均一染色と判断される。
【0084】
また、図14においては、染色カラーの判定は、各レンズのカラーを判定するカラー判定と、左右ペアのレンズの染色カラーの差を判定するペア差判定の二つを行う。
【0085】
カラー判定する際の染色カラー判定位置をアンカットレンズ100のカラー画像の幾何
学中心としている。そして、判断基準は、染色カラー判定位置におけるL*値が90.5以上かつ92.5以下であり、a*値が2.0以上かつ4.0以下であり、b*値が−1.2以上かつ1.2以下であること、としている。
【0086】
また、ペア差判定する際の染色カラーペア差判定位置をアンカットレンズ100のカラー画像の幾何学中心としている。そして、判断基準は、染色カラーペア差判定位置における右レンズのL*値であるLr*と左レンズのL*値であるLl*との差の絶対値が1.5以下であり、右レンズのa*値であるar*と左レンズのa*値であるal*との差の絶対値が1.5以下であり、右レンズのb*値であるbr*と左レンズのb*値であるbl*との差の絶対値が1.5以下であること、としている。
【0087】
上記カラー判定の基準を全て満たし、かつ、上記ペア差判定の基準を満たしたアンカットレンズ100は、染色カラーが指定通りと判定され、上記カラー判定及びペア差判定の基準のいずれか1つでも満たさないアンカットレンズ100は染色カラーに関する染色エラーと判断される。
【0088】
なお、ペア差判定を行わない場合は、カラー判定の基準のみで判断される。また、図14には、染色カラー判定位置と染色カラー判定基準値とについて他の例も示されている(例2、3)が、これについては後述する。
【0089】
(3)染色検査装置の構成
次に、レンズ工場5内に設けられる染色検査装置8の構成を、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態にかかる染色検査装置の構成を例示する概略図である。
【0090】
本実施形態にかかる染色検査装置8は、検査対象である眼鏡レンズ100を保持する撮影台85と、撮影台85に保持されたレンズ100を照明する照明装置84と、照明装置84に照明されたレンズ100の被染色面を撮影してカラー画像を得る撮像手段83と、を備えている。また、本実施形態にかかる染色検査装置8は、レンズ100を搬送する搬送手段86を備えている。また、本実施形態にかかる染色検査装置8は、染色検査制御コンピュータ91を有している。
【0091】
<撮像手段>
撮像手段83は、後述する照明装置84により照明された染色済みアンカットレンズ100を撮影してカラー画像を得るように構成されている。撮像手段83の動作は、後述する画像処理手段92により制御される。撮像手段83により撮影されたカラー画像は、CIEのXYZ表色系のXYZ値として染色検査制御コンピュータ91に伝達されて、画像処理手段92によりCIEのL*a*b*表色系のL*a*b*値に変換されデジタルデータ化される。撮像手段83としては、例えば、固体撮像素子を利用したカメラ(例えばCCDカメラ)等を利用することができる。また、撮像手段83は、リニアイメージセンサ(一次元イメージセンサ)として構成されていてもよく、エリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)として構成されていてもよい。
【0092】
<撮影台>
撮影台85は、検査対象である眼鏡レンズとしてのアンカットレンズ100を保持(載置)するように構成されている。なお、本実施形態にかかる撮影台85は、アンカットレンズ100を水平姿勢で保持しつつ、撮像手段83による撮影位置へと移動するように構成されている。
【0093】
具体的には、撮像手段83がリニアイメージセンサとして構成されセンサ方向に垂直に
レンズ100を移動させながら撮像する場合は、撮影台85は、アンカットレンズ100を保持しつつ、撮像手段83による撮影位置を一定の速度で通過するように構成されている(図19参照)。
【0094】
また、撮像手段83がリニアイメージセンサとして構成されセンサ方向がレンズの径方向に位置する状態でレンズ100を回転させながら撮像する場合は、撮影台85は、アンカットレンズ100を保持しつつ、撮像手段83の撮影位置へ移動し、撮影中にレンズ100を一定の速度で回転するように構成されている(図20参照)。
【0095】
また、撮像手段83がエリアイメージセンサとして構成されている場合には、撮影台85は、アンカットレンズ100を保持しつつ、撮像手段83の撮影位置へ移動し、撮影中に一時停止し、撮影完了後に撮影位置から移動するように構成されている。なお、後者の場合には、撮影台85は、撮像手段83による撮影位置内にアンカットレンズ100を保持しつつ固定されていてもよい。
【0096】
また、撮影台85の下方に後述する照明装置84が設けられ、撮影台85の上方に撮像手段83が設けられる場合には、撮影台85のうちアンカットレンズ100を下方から保持する部分を透光性を有する材料で構成したり、あるいは、撮影台85をアンカットレンズ100の外周のみを保持するような構成とし、照明装置84からの照射光を撮影台85が遮らないようにすることが好ましい。
【0097】
また、撮像手段は、温調装置871で温度が一定(例えば25℃)に調整された温調室873内に収容するようにすると測定精度が安定するという点で好ましい。
【0098】
<照明装置>
照明装置84は、撮影台85に保持されたアンカットレンズ100を照明するように構成されている。照明装置84は、検査対象である眼鏡レンズとしてのアンカットレンズ100に光を照射して、撮像手段83がカラー画像を撮影する際に必要な明るさを提供するように構成されている。照明装置84は、光源842と、光源842からの光を所定の方向に集光させる反射鏡843等を備えた照明器具と、光源842を点灯させる電源としての光源点灯装置841とを備えている。光源842としては、自然光に近い波長を有する光源を用いるとよい。光源としては具体的には、電球、放電灯、白色LEDなどが挙げられる。なお、照明器具は、温調装置872で温度が一定(例えば25℃)に調整された温調室874内に収容するようにすると測定精度が安定するという点で好ましい。
【0099】
なお、アンカットレンズ100への照射光の空間強度分布にムラができないように、光源842とアンカットレンズ100との間に、拡散板843を設けてもよい。その場合、撮影台85のうちアンカットレンズ100を下方から保持する部分を、透光性を有するとともに光に対する拡散性を有する材料で構成してもよい。また、図2においては、光源842を撮影位置の下方に設けているが、本発明は上述の形態に限定されない。すなわち、光源842を撮影位置から離れた位置に配置し、光源842からの光を、ライトガイド手段を用いて撮影位置へと導き、アンカットレンズ100に照射させるようにしてもよい。なお、図2のようにアンカットレンズ100の下方から照明して上方から撮影する構成に限らず、アンカットレンズ100の上方に照明装置84と撮像手段83とを配置してもよい。但し、かかる場合には、アンカットレンズ100表面からの反射光が撮影されてしまい、検査結果に影響が出る可能性がある。従って、反射光の影響を抑制する観点からは、図2のようにアンカットレンズ100を下方から照明してその透過光を撮影する方法がより好ましい。
【0100】
<搬送手段>
搬送手段86は、例えばコンベアとして構成されており、後述する染色工程(S5)にて染色されたアンカットレンズ100を所定のローディング位置へと搬送するとともに、撮影終了後のアンカットレンズ100を所定のアンローディング位置から搬出するように構成されている。
【0101】
具体的には、搬送手段86は、左右一組のアンカットレンズ100をトレー150上に載置して搬送するように構成されている。トレー150には、注文番号等の識別コードが記録されたタグ(一次元バーコードシール、2次元バーコードシール、ICチップ等)が添付されている。そして、撮影開始の際には、アンカットレンズ100を載置したトレー150と、空の撮影台85とが、所定のローディング位置まで搬送され、アンカットレンズ100がトレー150上から撮影台85上へと自動あるいは手動で移載されるように構成されている。また、撮影終了後には、空のトレー150と、アンカットレンズ100を載置した撮影台85とが、所定のアンローディング位置まで搬送され、アンカットレンズ100が撮影台85上からトレー150上へと自動あるいは手動で移載されるように構成されている。なお、搬送手段86は、染色検査工程(S6)において指定どおり(染色エラー無し)と判断されたレンズ100をUV検査工程(S7)へと搬送し、染色検査工程(S6)において染色エラー有りと判断されたアンカットレンズ100をレンズ研削加工工程(S4)又は染色工程(S5)へと搬送あるいは染色エラーレンズとしてストックするように、レンズ検査結果に基づいてレンズを振り分ける合否振分手段88を有して構成されている。
【0102】
<染色検査制御コンピュータ>
染色検査制御コンピュータ91は、中央演算装置としてのCPUと、メモリと、外部機器コントローラ94と、HDD等の記憶装置として構成された記憶手段95と、入力手段81と、ディスプレイ等の表示手段82と、LAN等を介してサーバ6に接続される通信ポートと、を備えている。外部機器コントローラ94は、照明装置84、撮影台85、搬送手段86、温度制御手段87、及び合否振分手段88にそれぞれ接続され、これらの動作を制御するように構成されている。また、記憶手段95には、判定基準データ読込プログラム、画像処理プログラム、及び判定処理プログラム等が格納されている。これらのプログラムが記憶手段95からメモリへ読み出され、CPUにより実行されることにより、後述するデータ読込手段、画像処理手段92、及び判定処理手段93が染色検査制御コンピュータ91に実現されるように構成されている。
【0103】
データ読込手段は、入力手段81により読み込まれた識別コードに基づいて、染色検査に必要な情報をサーバ6から読み込むように構成されている。入力手段81は、具体的には、キーボード等の入力装置や、検査対象である眼鏡レンズとしてのアンカットレンズ100の識別コード(例えば一次元バーコードや2次元バーコード、ICチップ等)を読み取る識別コード読取装置として構成されている。入力手段81により読み込まれたアンカットレンズ100の識別コードは、データ読込手段に渡されるように構成されている。そして、データ読込手段は、かかる識別コードに基づいて、アンカットレンズ100に関する受注データ641、設計データ642、加工データ643、染色加工データ644、及び染色検査判定基準データ645をサーバ6から読み込むように構成されている。データ読込手段は、サーバ6から読み込んだこれらのデータを、記憶手段95に格納するように構成されている。
【0104】
画像処理手段92は、撮像手段83を制御して、検査対象である眼鏡レンズとしてのアンカットレンズ100を撮影し、レンズ100のカラー画像データ(XYZデータ)を得る撮像手段制御機能921と、撮像手段制御機能921により得られたカラー画像データを所定の閾値と比較して2値化する2値化機能922と、その2値化したデータをもとにアンカットレンズ100のエッジ位置を検出して、アンカットレンズ100の外形形状を
得るエッジ検出機能923と、得られたアンカットレンズ100の外形形状を基に、染色検査判定基準データで定められている判定基準位置をカラー画像データ上に特定する判定位置特定機能924と、その位置のXYZ値をL*,a*,b*値に変換するLab値取得機能925と、を有する。
【0105】
判定処理手段93は、染色検査判定基準データ645に定められている判定位置及び判定基準と、Lab値取得機能925により得られたL*,a*,b*値とを基に、各種判定処理を行うように構成されている。具体的には、染色有無を判定する機能931と、染色種を判定する機能932と、染色カラーを判定する機能933とを有する。染色カラーを判定する機能933は、前記カラー判定機能とペア差判定機能とを有する。
【0106】
外部機器コントローラ94は、照明装置84の光源点灯装置841を制御して照明動作を制御する照明制御手段941と、撮影台85の備える駆動手段851を制御して撮影台85の動作を制御する撮影台駆動制御手段942と、搬送手段86の駆動手段861を制御して搬送手段86の動作を制御する搬送手段制御手段943と、撮像手段用温調室873の温度制御手段としての温調装置871及び照明手段用温調室874の温度制御手段としての温調装置872を制御する温度制御手段944と、合否振分手段88の駆動手段881を制御して合否振分手段の動作を制御する合否振分手段駆動制御手段945と、を有する。
【0107】
上述した染色検査装置8の動作、及び染色検査判定基準データ645の詳細については、眼鏡レンズの染色検査方法の項において後述する。
【0108】
なお、上記したレンズ工場5内の各種コンピュータ、ネットワーク機器、プログラムが有する機能は、適宜統合、分散させてもよい。例えば、染色検査判定基準データ作成手段712は、染色制御コンピュータ71上ではなく、染色検査制御コンピュータ91上やサーバ6上に設けてもよいし、さらに別のコンピュータ上に設けてもよい。
【0109】
2.眼鏡レンズ、及び眼鏡の製造方法
次に、眼鏡レンズの染色検査方法の説明に先立ち、上記した眼鏡レンズ受注・製造システムにより実施される眼鏡の受注から出荷までの手順について、図3に示したフローチャートにしたがって説明する。
【0110】
<受注工程(S1)>
まず、発注元である眼鏡店1において、注文用端末3に対し、レンズに関する情報、眼鏡フレームに関する情報、眼鏡レンズの処方値、レイアウト情報等を含む眼鏡あるいは眼鏡レンズの注文データを入力する。注文データの入力を受け付けた注文用端末3は、通信媒体4を介してサーバ6に注文データを送信する。なお、注文された眼鏡フレームがリム枠を有する場合には、注文用端末3は、玉形形状110を特定するデータとして眼鏡枠形状測定装置2により測定されたデータを送信する。また、注文された眼鏡フレームが溝掘り枠眼鏡のように一部にリム枠を有さない場合であったり、注文された眼鏡がリムレス眼鏡のように全周にリム枠を有さない場合には、注文用端末3は、選択した眼鏡フレームに対して予め設定されている玉形形状群から選択された玉形形状110をサーバ6へ送信する。なお、後者の場合には、サーバ6側が、複数種の玉形形状110を識別コードに対応させながら予め保持するものとし、注文用端末3は、注文データにより指定された玉形形状110の識別コードだけをサーバ6へ送信することとしてもよい。その他、注文データにより指定される情報としては、例えば、染色の有無、染色種(例えば均一カラー染色か、グラディエント染色か)、色情報、染色濃度情報等がある。なお、染色条件の指定については、発注元による指定作業を簡略化するため、予め諸条件が設定された染色パターン群からいずれかを発注元が選択し、注文用端末3は染色パターンの識別コードだけをサー
バ6へ送信することとしてもよい。
【0111】
サーバ6の受注処理手段61は、通信媒体4を介して注文用端末3から注文データを受信し、注文データと注文データに基づいて決定されたデータとを含む受注データ641を作成し、記憶手段64に格納する。
【0112】
<設計データ作成工程(S2)>
続いて、サーバ6の設計データ作成手段62は、受注データ641と眼鏡レンズの設計に必要となる基礎データ(光学面形状、玉形形状等)とを記憶手段64から読み出し、これらに基づいて所望の眼鏡レンズ形状を計算して上述の設計データ642を作成し、記憶手段64に格納する。
【0113】
<加工データ作成工程(S3)>
続いて、サーバ6の加工データ作成手段63は、受注データ641と設計データ642とを記憶手段64から読み出し、これらに基づいて各種製造工程における加工設計値を計算して加工条件を決定する上述の加工データ643を作成し、記憶手段64に格納する。
【0114】
<レンズ研削加工工程(S4)>
続いて、レンズ工場5の作業者は、加工データ643にしたがって、レンズ基材として、玉形加工が施されていないレンズブランク(光学的に仕上げられていない面を有する眼鏡レンズ)またはアンカットレンズ(両面が光学的に仕上げられた眼鏡レンズ)を用意して、トレー150上に載置する。このとき、左右の眼鏡レンズを同時に受注している場合は、左右のレンズ基材のセットをトレー150上に載置する。この際、トレー150には、注文番号等の識別コードが記録したタグ(一次元バーコードや2次元バーコードシール、ICチップ等)を添付する。レンズ基材にタグを直接添付してもよい。
【0115】
トレー150上にレンズブランクが載置されている場合には、眼鏡レンズブランクのうち光学的に仕上げられていない面を切削装置や研磨装置により切削、研磨して光学面を形成し、アンカットレンズ100を製造する。なお、レンズブランクとしては、片面だけが光学的に仕上げられたレンズ(セミフィニッシュト眼鏡レンズ)や、両面が光学的に仕上げられていないレンズがある。アンカットレンズ100の製造が完了したら、アンカットレンズ100をトレー150上に載置して次の染色工程S5に搬送する。また、トレー150上にアンカットレンズが載置されている場合には、切削、研磨を実施することなく、次の染色工程S5に搬送する。
【0116】
<染色工程(S5)>
アンカットレンズ100を載置したトレー150が染色装置7まで搬送されたら(染色工程S5に届いたら)、アンカットレンズ100に対する染色を行う。なお、アンカットレンズ100に対して浸漬法により紫外線吸収剤を塗布する場合は、紫外線吸収剤を塗布する工程を染色工程S5にて併せて実施してもよい。
【0117】
まず、染色制御コンピュータ71の入力手段が、トレー150あるいはアンカットレンズ100に添付されたタグに記録された識別コードを読み込んで、染色加工データ作成手段711に渡す。そして、染色加工データ作成手段711は、取得した識別コードに基づいて、染色工程に必要な情報(玉形形状を特定するデータを含む設計データ642、レンズ染色情報6411を含む受注データ641等)と、染色対象であるアンカットレンズ100の染色条件設定に必要な位置情報(例えば光学中心位置、レンズ形状等)とをサーバ6から取得する。そして、染色加工データ作成手段711は、取得したこれらの情報を基に染色加工データ644を作成する。
【0118】
この際、染色加工データ作成手段711は、染色工程で使用する装置や器具(染色装置、浸漬着色装置、レンズ保持具等)の構成、染色液の組成(染料、濃度)、染色液の温度等の各種染色条件を決定し、染色加工データ644に加える。また、染色加工データ作成手段711は、レンズ染色情報6411にて指定されている染色濃度変化情報における位置情報(すなわち、染色濃度変化開始指定位置、及び染色濃度変化終了指定位置)を染色加工用の位置情報に変換して、染色加工データ644に加える。また、染色加工データ作成手段711は、浸漬着色装置72に対する染色制御データを作成して、染色加工データ644に加える。
【0119】
続いて、染色制御コンピュータ71の染色検査判定基準データ作成手段712が、染色検査判定基準データ645を作成する。
【0120】
そして、染色制御コンピュータ71は、作成した染色加工データ644と染色検査判定基準データ645とをサーバ6に送信し、サーバ6の記憶手段64に記憶させる。
【0121】
続いて、染色対象のアンカットレンズ100を浸漬着色装置72のレンズ保持具75に保持させる。なお、注文内容がグラディエント染色であった場合には、染色加工データ644にて指定された向きに(例えば、染色基準位置120(アンカットレンズ100の外周の最上点100u)が下方になるように)アンカットレンズ100を取り付ける。アンカットレンズ100をレンズ保持具75に取り付けたら、レンズ保持具75をアーム部736の取付部737に取り付ける。このとき、昇降部733が原点位置にある時のレンズ保持具75の高さと染色液761の界面高さとが所定の距離になるように、レンズ保持具75の取り付け高さを調整する。
【0122】
取付部737へのレンズ保持具75の取り付けが終了したら、染色制御コンピュータ71は、サーバ6より染色加工データ644を読み出して染色制御データを抽出し、染色制御データを浸漬着色装置72の制御装置74へと送信する。染色制御データを受信した制御装置74は、駆動モータ731を駆動させて、レンズ保持具75を所定の速度で降下させた後に再び上昇させることにより、アンカットレンズ100を染色液761に浸漬させて染色する。その結果、染色基準位置120に近いほど染色液761への浸漬時間が長くなり、染色濃度に勾配を付けることが可能となる。
【0123】
染色加工後のアンカットレンズ100とその染色濃度の例を図17に示す。図17に示すように、染色基準位置120から染色濃度変化開始位置121までの間は、略一定の染色濃度であり、染色濃度変化開始位置121から染色濃度変化終了位置122までの間は、一定の染色濃度勾配で染色されており、染色濃度変化終了位置122より下側には染色が施されていない。
【0124】
アンカットレンズ100の染色が終了したら、レンズ保持具75を取付部737から取り外すとともに、アンカットレンズ100をレンズ保持具75から取り外す。取り外されたアンカットレンズ100は、トレー150上に再び載置され、染色検査装置8の搬送手段86により次の染色検査工程(S6)へと搬送される。
【0125】
<染色検査工程(S6)>
続いて、染色済みのアンカットレンズ100を載置したトレー150が染色検査装置8のローディング位置まで搬送されたら(染色検査工程(S6)に届いたら)、染色検査装置8により染色検査工程(S6)を実施する。なお、染色検査工程(S6)については後述する。
【0126】
<UV検査工程(S7)>
染色検査工程(S6)を実施した結果、指定通り染色されている(染色エラー無し)と判定されたアンカットレンズ100について、紫外線透過率を測定する。紫外線透過率が所定範囲内の場合は、合格と判定され、所定範囲外の場合は、不合格と判定される。UV検査工程(S7)にて合格と判定されたアンカットレンズ100については、次の色定着工程S8を実施する。不合格と判定されたアンカットレンズ100は、例えば、レンズ研削加工工程(S4)や染色工程(S5)を再び実施する。なお、紫外線吸収剤が眼鏡レンズ樹脂材料に添加されている場合は、レンズ研削加工工程(S4)におけるレンズ基材の選定から再び実施する。
【0127】
<色定着工程(S8)>
UV検査工程(S7)にて合格と判定されたアンカットレンズ100については、必要により加熱するなどして染色された色を定着させる。
【0128】
<各種コーティング工程(S9)>
色定着工程(S8)を終了したアンカットレンズ100については、ハードコート、反射防止膜、撥水膜、防汚膜、ミラーコート等、所望の膜のコーティングを行う。これらコーティング方法は従来技術により行うことができる。
【0129】
<玉形加工工程(S10)>
次いで、各種コーティング工程(S9)が施されたアンカットレンズ100を、加工データ643に基づいて玉形形状110に加工し、眼鏡レンズの製造を終了する。
【0130】
<枠入れ工程(S11)>
眼鏡レンズ単体ではなく眼鏡として受注している場合は、玉形加工工程(S10)により製造された眼鏡レンズを眼鏡フレームに取り付けて、眼鏡の製造を終了する。染色加工後のアンカットレンズ100を玉形加工して眼鏡フレームに取付けてなる眼鏡を図18に例示する。この眼鏡フレームは、左右の眼鏡レンズをそれぞれ保持するリム143と、この左右のリム143を連結するブリッジ141と、左右のリム143の両外側に形成された智を介して取付けられたテンプル142と、を備えている。
【0131】
<出荷工程(S12)>
そして、眼鏡レンズまたは眼鏡を発注元に出荷する。
【0132】
3.眼鏡レンズの染色検査方法
続いて、上述の染色検査工程S6において実施される眼鏡レンズの染色検査方法について、図4,5,7,9,10に示したフローチャートにしたがって説明する。
【0133】
図4は、本発明の一実施形態にかかる染色検査工程のフロー図である。図5は、本発明の一実施形態にかかる染色検査工程にて実施される染色の有無を判定する工程のフロー図であり、図6は、本発明の一実施形態にかかる染色有無判定位置を例示する概略図である。また、図7は、本発明の一実施形態にかかる染色検査工程にて実施される染色種を判定する工程のフロー図であり、図8は、本発明の一実施形態にかかる染色種判定位置を例示する概略図である。また、図9は、本発明の一実施形態にかかる染色検査工程にて実施される染色カラーを判定する工程のフロー図であり、図11は、本発明の一実施形態にかかる染色カラー判定位置を例示する概略図である。
【0134】
<検査対象レンズの特定工程(S6−1)>
図4に示すとおり、染色済みのアンカットレンズ100が染色検査工程S6に届いたら(アンカットレンズ100を載置したトレー150が図2のローディング位置まで搬送されたら)、入力手段81がトレー150あるいはアンカットレンズ100に添付されたタ
グに記録された識別コードを読み込み、データ読込手段に渡す。そして、データ読込手段は、取得した識別コードに基づいて、アンカットレンズ100に関する受注データ641、設計データ642、及び加工データ643を、サーバ6から読み込む。また、データ読込手段は、サーバ6から読み込んだこれらのデータを記憶手段95に格納する。
【0135】
<判定基準データの読込工程(S6−2)>
同様に、データ読込手段は、取得した識別コードに基づいて、アンカットレンズ100に関する染色検査判定基準データ645をサーバ6から読み込む。そして、データ読込手段は、サーバ6から読み込んだ染色検査判定基準データ645を記憶手段95に格納する。なお、判定基準データの読込工程(S6−2)は、検査対象レンズの特定工程(S6−1)と併せて一括して実施してもよいし、後述する染色の有無を判定する工程(S6−4)、染色種を判定する工程(S6−5)、染色カラーを判定する工程(S6−6)を実施する際にその都度実施してもよい。
【0136】
<カラー画像データの取得(S6−3)>
次に、空の撮影台85を図2のローディング位置まで移動させる。そして、検査対象のアンカットレンズ100を、トレー150上から撮影台85上へと移載する。空になったトレー150は、図2に示すアンローディング位置まで搬送して待機させる。
【0137】
そして、撮影台85を移動して、撮像手段83による撮影位置へとアンカットレンズ100を搬送させ、照明装置84により、撮影台85に保持されたアンカットレンズ100を照明する。そして、画像処理手段92の撮像手段制御機能921により撮像手段83を制御して、検査対象であるアンカットレンズ100を撮影し、アンカットレンズ100のカラー画像を得る。
【0138】
撮影が完了したら、撮影台85をアンローディング位置まで移動させる。そして、撮影完了後のアンカットレンズ100を、撮影台85上からトレー150上へと移載する。
【0139】
画像処理手段92の撮像手段制御機能921により撮像手段83を制御して撮影されたカラー画像データ(XYZ値)は、記憶手段95に記憶される。そして、このカラー画像データをもとに、染色の有無を判定する工程(S6−4)、染色種を判定する工程(S6−5)、染色カラーを判定する工程(S6−6)が順次実施され、染色が指定通り行われたかどうかが判定される。以下に、これらの各判定方法についてそれぞれ説明する。
【0140】
<染色の有無を判定する工程(S6−4)>
まず、染色の有無を判定する工程(S6−4)について、図5、6を参照しながら説明する。
【0141】
図5に示すとおり、まず、アンカットレンズ100のカラー画像データ内にて染色有無判定位置を特定する(S6−4−1)。
【0142】
具体的には、まず、画像処理手段92の有する2値化機能922により、上述のカラー画像データを2値化する。すなわち、カラー画像内の各位置における色情報もしくは明るさ情報と所定の閾値と比較することにより、カラー画像内の各位置が閾値より大きいか小さいかを判断して2値(0または1)にて表現する。ここで、閾値は、アンカットレンズ100の外周が認識できるような値とする。そして、画像処理手段92の有するエッジ検出機能923が、2値化機能922が作成したデータに基づいて、アンカットレンズ100のエッジ位置を検出し、アンカットレンズ100の外形形状を特定する(S6−4−1−1)。
【0143】
そして、画像処理手段92の有する判定位置特定機能924により、染色検査判定基準データ645で定められている判定基準位置を特定する(S6−4−1−2)。なお、ここで特定される判定基準位置とは染色有無判定位置である。本実施形態にかかる染色有無判定位置は、図6に示すように、アンカットレンズ100の外形形状の幾何学中心100c上に特定される。ここで、幾何学中心100cは、アンカットレンズ100の外周形状の縦方向の幅を水平に2等分する線と、横方向の幅を垂直に2等分する線との交点を求めることにより特定できる。なお、幾何学中心の求め方はこれに限定しない。例えば、アンカットレンズ100の外形状が円の場合はその中心点を用いても良い。
【0144】
次いで、画像処理手段92の有するLab変換機能925により、上述の染色有無判定位置(幾何学中心100c)におけるカラー画像データのXYZ値をL*a*b*値に変換してL*値を取得する(S6−4−2)。取得したL*値は、判定処理手段93に渡される。
【0145】
なお、この実施形態では、判定位置のみをLab変換機能925によりL*a*b*値に変換しているが、予めLab変換機能925により広範囲(例えば全画像データあるいはレンズ外形状内の画像データ)L*a*b*値に変換しておいても良い。この場合は、本実施形態における判定位置特定工程の度のL*a*b*値変換は省略できる。
【0146】
次いで、画像処理手段92の有する判定処理手段93により、記憶手段95に格納されている染色検査判定基準データ645に含まれる染色有無判定基準値を読み出す。そして、判定処理手段93により、上述のL*値と読み出した染色有無判定基準値とを比較して(S6−4−3)、アンカットレンズ100における染色の有無を判断する(S6−4−4)。具体的には、L*値が染色有無判定基準値(例えば92.5)以下である場合は染色有りと判定し、染色有無判定基準値より大きい場合は染色無しと判定する。
【0147】
染色無しと判定した場合は、判定処理手段93により、記憶手段95に格納されている受注データ641に含まれるレンズ染色情報6411を読み出して、それが染色指定条件通りであるかどうかを判定する(S6−4−7)。そして、指定通りである場合(注文内容が染色無しであった場合)は、「指定どおり無染色である」と判定し(S6−4−8)、染色検査工程(S6)を終了し、次工程であるUV検査工程(S7)を実施する。また、指定と一致していない場合(注文内容が染色有りであるにもかかわらず染色されていない場合)は、「染色エラー」と判定し(S6−4−9)、再染色又は再加工のいずれを実施すべきであるかを判断し(図4のS6−8)、染色工程(S5)を再度実施する。かかる判断結果は、染色検査結果データ646として記憶手段95に格納されるとともに、サーバ6の記憶手段64にも格納される。
【0148】
染色有りと判定した場合も、判定処理手段93により、記憶手段95に格納されている受注データ641に含まれるレンズ染色情報6411を読み出して、それが染色指定条件通りであるかどうかを判定する(S6−4−5)。そして、指定通りである場合(注文内容が染色有りであった場合)は、「指定通り染色されている」と判定し(S6−4−6)、後述する染色種を判定する工程(S6−5)を実施する。また、指定と一致しない場合(注文内容が染色無しであるにもかかわらず染色されている場合)は、染色エラーと判定し(S6−4−9)、再染色又は再加工のいずれを実施すべきかを判断し(図4のS6−8)、レンズ研削工程(S4)を再度実施する。かかる結果も、染色検査結果データ646として記憶手段95に格納されるとともに、サーバ6の記憶手段64にも格納される。
【0149】
<染色種を判定する工程(S6−5)>
染色の有無を判定する工程(S6−4)において、「指定どおり染色されている」と判断した場合には、染色種を判定する工程(S6−5)を実施する。以下に、染色種を判定
する工程(S6−5)について、図7、8を参照しながら説明する。
【0150】
図7に示すとおり、まず、画像処理手段92の有する判定位置特定機能924により、染色検査判定基準データ645で定められている判定基準位置を特定する(S6−5−1)。上記において、判定基準位置とは染色種判定位置であり、アンカットレンズ100の外形形状の幾何学中心100cから等距離であって、幾何学中心100cに対して互いに等角度間隔である位置上にそれぞれ特定される。例えば、図8においては、アンカットレンズ100のカラー画像の幾何学中心100cからそれぞれ15mmの距離にあって、幾何学中心100cに対して互いに120°間隔である位置K1,K2,K3上に染色種判定位置は特定される。なお、染色種判定位置の個数は3つ(120°間隔)に限定せず、4つ(90°間隔)、5つ(72°間隔)・・・のように多数設けてもよい。染色種判定位置の個数が多いと、より正確な判断結果を得られやすくなり好ましい。なお、アンカットレンズ100の外形形状を特定する方法や、幾何学中心100cを特定する方法は、染色の有無を判定する工程(S6−4)とほぼ同一であるので説明を省略する。
【0151】
次いで、画像処理手段92の有するLab変換機能925により、上述の染色種判定位置におけるカラー画像データのXYZ値をL*a*b*値に変換してL*値を取得する(S6−5−2)。得られたL*値は、判定処理手段93に渡される。
【0152】
次いで、判定処理手段93により、記憶手段95に格納されている染色検査判定基準データ645に含まれる染色種判定基準値を読み出す。そして、判定処理手段93により、上述のL*値と読み出した染色種判定基準値とを比較して(S6−5−3)、アンカットレンズ100における染色種を判断する(S6−5−4)。具体的には、取得したL*値のうち最大値と最小値との差と、染色種判定基準値とを比較して、L*値のうち最大値と最小値との差が染色種判定基準値(例えば、5.0)以下である場合には均一染色であると判断し、L*値のうち最大値Lmax*と最小値Lmin*との差が染色種判定基準値よりも大きい場合にはグラディエント染色であると判断する。
【0153】
均一染色と判定した場合は、判定処理手段93により、記憶手段95に格納されている受注データ641に含まれるレンズ染色情報6411を読み出して、それが指定通りであるかどうかを判定する(S6−5−7)。そして、指定通りである場合は、「指定通り均一染色された」と判定して(S6−5−8)、後述する均一染色における染色カラーを判定する工程(S6−7)を実施する。また、指定と一致していない場合(グラディエント染色するべきところを均一染色されている場合やグラディエント染色の濃度変化が指定より小さすぎる場合)は、「染色エラー」と判定し(S6−5−9)、再染色又は再加工のいずれを実施すべきであるかを判断し(図4のS6−8)、レンズ研削工程(S4)あるいは染色工程(S5)以降が再度実施する。かかる結果は、染色検査結果データ646として記憶手段95に格納されるとともに、サーバ6の記憶手段64にも格納される。
【0154】
グラディエント染色と判定した場合も、判定処理手段93により、記憶手段95に格納されている受注データ641に含まれるレンズ染色情報6411を読み出して、それが指定通りであるかどうかを判定する(S6−5−5)。そして、指定通りである場合は、「指定通りグラディエント染色された」と判断して(S6−5−6)、後述するグラディエント染色における染色カラーを判定する工程(S6−6)を実施する。また、指定と一致していない場合(均一染色するべき眼鏡レンズをグラディエント染色されている場合や均一染色なのに染色濃度差が指定より大きすぎる場合)は、染色エラーと判定して(S6−5−9)、再染色又は再加工のいずれを実施すべきであるかを判断し(図4のS6−8)、レンズ研削工程(S4)あるいは染色工程(S5)を再度実施する。かかる結果は、染色検査結果データ646として記憶手段95に格納されるとともに、サーバ6の記憶手段64にも格納される。
【0155】
なお、染色種判定の他の例としては、レンズ画像データのL*の分布から染色濃度勾配の有無を検出し、濃度勾配有りの場合は染色種がグラディエント染色、濃度勾配無しの場合は染色種が均一カラーと判定しても良い。
【0156】
<均一染色における染色カラーを判定する工程(S6−7)>
染色種を判定する工程(S6−5)において、「指定通り均一染色された」と判断した場合には、「均一染色における染色カラーを判定する工程(S6−7)」を実施する。以下に、図9、11を参照しながら説明する。
【0157】
本実施形態においては、染色カラーの判定としては、個々のレンズの染色カラーが指定通りか判定するカラー判定と、レンズを左右ペア染色する場合に左右の染色カラーの差が許容範囲内かどうかを判定するペア差判定の両方を行う。
【0158】
はじめにカラー判定について説明する。
【0159】
図9に示すとおり、まず、画像処理手段92の有する判定位置特定機能924により、染色検査判定基準データ645で定められている判定基準位置を特定する(S6−7−1)。上記において、判定基準位置とはカラー判定位置であり、図11に示すように、アンカットレンズ100の外形形状の幾何学中心上に特定される。なお、判定基準位置を特定する際には、染色の有無を判定する工程(S6−4)にて得られたアンカットレンズ100の外形形状を用いることが出来る。なお、アンカットレンズ100の外形形状を特定する方法や、幾何学中心100cを特定する方法は、染色の有無を判定する工程(S6−4)とほぼ同一であるので説明を省略する。
【0160】
次いで、画像処理手段92の有するLab変換機能925により、上述の染色有無判定位置におけるカラー画像データのXYZ値をL*a*b*値に変換してL*、a*,b*値を取得する(S6−7−2)。取得したL*、a*,b*値は、判定処理手段93に渡される。なお、この例では染色カラー判定位置を染色有無判定位置と同じ(共に幾何学中心100c)としているので、染色有無判定のL*値を取得する際にa*、b*を既に取得している場合は、そのデータを用いることができる。
【0161】
次いで、判定処理手段93により、記憶手段95に格納されている染色検査判定基準データ645に含まれるカラー判定基準値を読み出す。そして、判定処理手段93により、上述のL*、a*、b*値と、読み出した染色種判定基準値とを比較させ(S6−7−3)、アンカットレンズ100における染色カラーが指定どおりであるか否かを判断する(S6−7−4)。例えば、90.5≦L*≦92.5であり、2.0≦a*≦4.0であり、−1.2≦b*≦1.2である場合には、カラー判定の結果として染色カラーが指定通りであると判定する。
【0162】
次にペア差判定について説明する。
【0163】
図9に示すとおり、まず、画像処理手段92の有する判定位置特定機能924により、染色検査判定基準データ645で定められている判定基準位置を特定する(S6−7−7)。上記において、判定基準位置とはペア差判定位置であり、カラー判定の場合と同様に、アンカットレンズ100の外形形状の幾何学中心上に特定される。なお、幾何学中心100cを特定する方法は、カラー判定の場合と同じなので説明を省略する。
【0164】
次いで、画像処理手段92の有するLab変換機能925により、上述の染色有無判定位置におけるカラー画像データのXYZ値をL*a*b*値に変換してL*、a*,b*
値を取得する(S6−7−8)。そして、上記工程を左右ペアのレンズに対して行う。なお、ペア差判定においては、判定領域は、前記カラー判定の場合より広く取る方が好ましい(例えば、判定基準位置を中心に半径5mmの領域)。そして、この領域のXYZ値の平均値をL*a*b*値に変換する。
【0165】
次いで、判定処理手段93により、記憶手段95に格納されている染色検査判定基準データ645に含まれるペア差判定基準値を読み出す。そして、判定処理手段93により、上述のL*、a*、b*値と、読み出した染色種判定基準値とを比較させ(S6−7−9)、左右のアンカットレンズ100における染色カラー差が許容範囲内であるか否かを判断する(S6−7−4)。例えば、左右のL*値(Lr*,Ll*)の差の絶対値が1.5以下であり、左右のa*値(ar*,al*)の差の絶対値が1.5以下であり、左右のb*値(Lr*,Ll*)の差の絶対値が1.5以下である場合には、ペア差判定の結果として左右の染色カラーの差は許容範囲内と判定する。
【0166】
ここで、カラー判定及びペア差判定の両方が許容範囲内と判定された場合は、染色カラーが指定どおりであると判断して(S6−7−5)、上述したUV検査工程(S7)以降を実施する。また、上記カラー判定とペア差判定のうちいずれか一つでも満たさない場合には、「染色エラー」と判断し(S6−7−6)、再染色又は再加工のいずれを実施すべきであるかを判断して(図4のS6−8)、レンズ研削工程(S4)あるいは染色工程(S5)以降を再実施する。かかる結果は、染色検査結果データ646として記憶手段95に格納されるとともに、サーバ6の記憶手段64にも格納される。
【0167】
<グラディエント染色における染色カラーを判定する工程(S6−6)>
染色種を判定する工程(S6−5)において、「指定通りグラディエント染色された」と判断した場合には、「グラディエント染色における染色カラーを判定する工程(S6−6)」を実施する。本実施形態にかかるグラディエント染色における染色カラーを判定する工程(S6−6)は、上述の均一染色における染色カラーを判定する工程(S6−7)とほぼ同一であるので説明を省略する。
【0168】
4.本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、下記の(a)から(f)のうちの1つ又はそれ以上の効果を奏する。
【0169】
(a)上述したとおり、従来の目視による検査方法では、評価者の主観によって評価結果に差異が生じてしまい、客観的な評価結果を得ることが困難であった。これに対して本実施形態によれば、アンカットレンズ100の判定基準位置におけるL*値を取得して、あるいはL*、a*、b*値を取得して、これらと判定基準値とを定量的に比較している。そのため、染色の状態を客観的に検査することが可能となる。
【0170】
(b)また、従来の光透過率を測定する検査方法では、染色カラー自体を評価しているわけではないため、注文によって指定された色と染色カラーとが異なっているようなエラーを検出することは困難であった。これに対して本実施形態によれば、L*値だけでなく、a*値、及びb*値をも算出して、これらと判定基準値とを定量的に比較している。そのため、所定の染色カラーが染色されているか否かを定量的に検査することが可能となる。
【0171】
(c)また、従来の光透過率を測定する検査方法では、測定光の波長と染色カラーとの関係によって光透過率に差異が生じてしまい、評価結果に誤差が生じてしまう場合があった。これに対して本実施形態によれば、カラー画像データを基に検査しているため、このような心配はない。
【0172】
(d)また、本実施形態によれば、染色検査判定基準データ645を、染色等の諸条件が異なり、かつ、条件どおり染色が施されている(エラーのない)複数枚のアンカットレンズ100を用意し、これらのアンカットレンズ100に対してカラー画像データからL*a*b*値を取得して測定して予め作成することが出来る。そして、染色検査判定基準データ645を作成する際には、アンカットレンズ100に対する照明条件を考慮して作成することが出来る。すなわち、染色検査における照射光等の条件と、染色検査判定基準データ645を作成する際の照射光等の条件とを一致させることにより、評価結果に誤差が生じることを抑制することが出来る。
【0173】
(e)また、従来の方法では、染色条件がそれぞれ異なる多数枚の眼鏡レンズを短時間で評価することは困難であった。これに対して本実施形態によれば、アンカットレンズ100の染色条件に合わせた染色検査を自動的に実施し、受注データ641に併せた判判定をするように構成されている。そのため、染色条件がそれぞれ異なる多数枚のアンカットレンズ100について、効率的に染色検査を実施することが可能となる。
【0174】
(f)また、従来の方法では、染色エラーの具体的内容(例えば、染色するべきものが染色されなかったのか、染色種が間違って染色されたのか、染色カラーが異なっているのか等)は、自動的に判断することが困難であった。そのため、染色エラーを検出した場合には、それぞれ個別に目視を行って判断する必要があった。これに対して本実施形態によれば、エラー原因やエラー内容の切り分けを自動的に行うことができ、染色エラーを検出した場合における目視判断の必要性を低減することが出来る。
【0175】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態においては、染色カラー判定位置をアンカットレンズ100の外形形状の幾何学中心100c上に特定していたが、染色カラー判定位置は上述の実施形態に限定されない。以下に、本発明の他の実施形態について図10,12,13を参照しながら説明する。図10は、本発明の他の実施形態にかかる染色検査工程にて実施される染色カラーを判定する工程のフロー図であり、図12は、本発明の他の実施形態にかかる濃度変化方向判定位置を例示する概略図であり、図13は、本発明の他の実施形態にて特定される染色濃度方向線を例示する概略図である。
【0176】
図10に示すとおり、本実施形態にかかる染色カラーを特定する工程(S6−7)は、アンカットレンズ100上の濃度変化方向線を特定した後(S6−6−1)、かかる濃度変化方向線上に複数の染色カラー判定位置(カラー判定位置、ペア差判定位置)を特定する(S6−6−2、S6−6−8)点が、上述の実施形態とは異なる。
【0177】
具体的には、まず、画像処理手段92の有する判定位置特定機能924により、アンカットレンズ100のカラー画像の幾何学中心100cからそれぞれ等距離にあり、幾何学中心に対して互いに等角度間隔にある位置に濃度変化方向判定位置を特定する。図12に、アンカットレンズ100のカラー画像上に特定された濃度変化方向判定位置を例示する。図12に示す例では、アンカットレンズ100のカラー画像の幾何学中心100cからそれぞれ15mmの距離にあって、幾何学中心に対して互いに10°間隔の位置に、合計36個の濃度変化方向判定位置を特定している。なお、濃度変化方向判定位置は、より多数を特定してもよい。濃度変化方向判定位置の個数が多いと、より正確に濃度変化方向を特定できるため好ましい。
【0178】
続いて、画像処理手段92の有するLab変換機能925により、上述の濃度変化方向判定位置におけるXYZ値をそれぞれL*a*b*値に変換してL*値を取得する。そして、取得したL*値が最小(あるいは最大)である濃度変化方向判定位置と、アンカットレンズ100のカラー画像の幾何学中心100cとを結んで濃度変化方向線を特定する。
図13に、特定された濃度変化方向線を例示する。なお、L*値が所定の範囲内である濃度変化方向判定位置が複数個ある場合は、その両端の濃度変化方向判定位置に挟まれる中間点と、アンカットレンズ100のカラー画像の幾何学中心と、を結んで濃度変化方向線を特定してもよい。
【0179】
続いて、画像処理手段92の有するXYZ値取得機能924により、濃度変化方向線上に複数の染色カラー判定位置を特定する。図13に示す例では、アンカットレンズ100のカラー画像の幾何学中心と、濃度変化方向線上であって該幾何学中心から濃度が濃くなる方向に15mm離れた点と、をそれぞれ染色カラー判定位置として特定している。なお、染色カラー判定位置は2箇所に限定せず、より多数を特定してもよい。
【0180】
なお、図13には、染色カラー判定位置の例として濃度変化方向線上であって、幾何学中心から濃度が薄くなる方向に10mm離れた点を設定した場合も示している。このような低濃度側の判定位置を、前述したシタ染め有りの場合のシタ染め部分にくるように設定した場合は、シタ染め部の染色カラーも検査できるという利点がある。以後、上述の実施形態と同様に、染色カラー判定位置(カラー判定位置、ペア差判定位置)におけるL*値、a*値、b*値をそれぞれ取得する(S6−6−3、S6−6−9)。
【0181】
そして、判定処理手段93により、取得したL*,a*,b*値と染色カラー判定基準(カラー判定基準、ペア差判定基準)とを比較して(S6−6−4、S6−6−10)、アンカットレンズ100における染色カラーが指定どおりであるか否かを判断する(S6−6−5)。図14の染色カラー判定(例2、例3)に、本実施形態にかかる染色カラー判定基準値(カラー判定基準値、ペア差判定基準値)を示す。
【0182】
すなわち、カラー判定においては、幾何学中心100cにおいて、90.5≦L*≦92.5、2.0≦a*≦4.0、−1.2≦b*≦1.2であり、かつ、濃度変化方向線上であって該幾何学中心から濃度が濃くなる方向に15mm離れた点において、87≦L*≦89、2.0≦a*≦4.0、−1.20≦b*≦1.20であれば、染色カラーが指定どおりであると判断する。
【0183】
また、ペア差判定においては、幾何学中心100cにおいて、左右のL*値(Lr*,Ll*)の差の絶対値が1.5以下、左右のa*値(ar*,al*)の差の絶対値が1.5以下、左右のb*値(Lr*,Ll*)の差の絶対値が1.5以下であり、かつ、濃度変化方向線上であって該幾何学中心から濃度が濃くなる方向に15mm離れた点において、左右のL*値(Lr*,Ll*)の差の絶対値が1.5以下、左右のa*値(ar*,al*)の差の絶対値が1.5以下、左右のb*値(Lr*,Ll*)の差の絶対値が1.5以下であれば、左右の染色カラーの差は許容範囲内と判定する。
【0184】
ここで、カラー判定及びペア差判定の両方が許容範囲内と判定された場合は、染色カラーが指定どおりであると判断して(S6−6−6)、上述したUV検査工程(S7)以降を実施する。また、上記カラー判定とペア差判定のうちいずれか一つでも満たさない場合には、「染色エラー」と判断し(S6−6−7)、再染色又は再加工のいずれを実施すべきであるかを判断し(図4のS6−8)、レンズ研削工程(S4)あるいは染色工程(S5)以降を再実施する。かかる結果は、染色検査結果データ646として記憶手段95に格納されるとともに、サーバ6の記憶手段64にも格納される。
【0185】
本実施形態によれば、濃度変化方向線上に複数設けられた染色カラー判定位置のそれぞれにおいて染色カラーの判定を行うことが可能となり、より正確な染色カラー判定を行うことが可能となり、染色カラーの判定と染色種の判定とを併せて行うことが可能となる。
【0186】
<本発明のさらに他の実施形態>
また、濃度変化方向線を特定する方法は上述の実施形態に限定されない。本実施形態にかかる染色カラーを特定する工程(S6−7)では、まず、画像処理手段92の有する判定位置特定機能924により、アンカットレンズ100のカラー画像内において、染色濃度が等しい複数の点を抽出し、それら結んで染色濃度均一線を特定する。例えば、アンカットレンズ100のカラー画像の幾何学中心100cとアンカットレンズ100の外周(最も濃度が濃い側)との中間くらいの位置において、各位置の染色濃度と所定の閾値との比較を行い、画像データの2値化処理を行う。そして、その境界線を検出して、染色濃度均一線とする。図13に、特定された染色濃度均一線を例示する。なお、染色濃度が等しい複数の点を結んだ線が曲線になってしまい、直線にならない場合には、かかる曲線とアンカットレンズ100の外周線との両交点を結ぶ直線を染色濃度均一線としてもよい。
【0187】
続いて、画像処理手段92の有する判定位置特定機能924により、染色濃度均一線と直交しつつ、アンカットレンズ100のカラー画像の幾何学中心100cを通る濃度変化方向線を特定する。そして、上述の実施形態と同様に、濃度変化方向線上に複数の染色カラー判定位置を特定し、染色カラー判定位置におけるL*値、a*値、b*値をそれぞれ取得し、取得したL*,a*,b*値と染色カラー判定基準とを比較して染色カラーを判定する。
【0188】
本実施形態によれば、濃度変化方向線上に複数設けられた染色カラー判定位置のそれぞれにおいて染色カラーの判定を行うことが可能となり、より正確な染色カラー判定を行うとともに、染色種の判定も併せて行うことが可能となる。
【0189】
なお、上記実施形態では、染色カラー判定として、カラー判定とペア差判定の両方を行う場合の例を示したが、ペア差判定を省略してもよいその場合は、カラー判定の結果のみから判定される。
【0190】
また、上記実施形態においては、判定基準として、CIEのL*a*b*表色系のL*a*b*値を用いたため、濃度と染色カラーとの判定を容易に区別して行うことができるというメリットを有するが、同様にL*u*v値やL*C*h*値を用いても良い。
【0191】
また、各種判定位置として主に幾何学中心を用いた場合について説明したが、光学中心、遠用部光学中心、小玉位置などを各種判定位置として使用してもよい。
【0192】
また、上記実施の形態において、各判定位置は所定の領域を持っていてもよい。その場合は、例えば、特定された判定位置を中心とする半径2mmの領域内のXYZ値の平均値をL*a*b*値に変換する等、所定の領域内の平均値を判定値としても良い。
【0193】
また、上記実施形態は、眼鏡レンズの受注・製造システムに組み込まれた例を示したが、眼鏡レンズの所定の位置あるいは指定された位置のL*a*b*値を測定する計測装置であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明の一実施形態にかかる眼鏡レンズ受注・製造システムの構成を例示する概略図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる染色検査装置の構成を例示する概略図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる眼鏡レンズの製造方法のフロー図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる染色検査工程のフロー図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる染色検査工程にて実施される染色の有無を判定する工程のフロー図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる染色有無判定位置を例示する概略図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる染色検査工程にて実施される染色種を判定する工程のフロー図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる染色種判定位置を例示する概略図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる染色検査工程にて実施される染色カラーを判定する工程のフロー図である。
【図10】本発明の他の実施形態にかかる染色検査工程にて実施される染色カラーを判定する工程のフロー図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる染色カラー判定位置を例示する概略図である。
【図12】本発明の他の実施形態にかかる濃度変化方向判定位置を例示する概略図である。
【図13】本発明の他の実施形態にて特定される染色濃度方向線を例示する概略図である。
【図14】本発明の一実施形態及び他の実施形態にかかる染色検査判定基準データを例示する表図である。
【図15】本発明の一実施形態にかかる染色装置の構成を例示する概略図である。
【図16】本発明の一実施形態にかかる染色加工データに基づいてアンカットレンズに施される染色の位置関係を例示する概略図である。
【図17】本発明の一実施形態にかかる染色加工後のアンカットレンズとその染色濃度を例示する概略図である。
【図18】本発明の一実施形態にかかる染色加工後のアンカットレンズを玉形加工して眼鏡フレームに取付けてなる眼鏡の概略図である。
【図19】アンカットレンズを一定の速度で水平通過させながら撮影する様子を示す概略図である。
【図20】アンカットレンズを一定の速度で回転させながら撮影する様子を示す概略図である。
【符号の説明】
【0195】
8 染色検査装置
83 撮像手段
84 照明装置
85 撮影台
86 搬送手段
91 染色検査制御コンピュータ
100 アンカットレンズ
100c 幾何学中心
140 眼鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズの表面に施された染色の状態を検査する眼鏡レンズの染色検査方法であって、
眼鏡レンズを撮影して前記眼鏡レンズのカラー画像を得る撮影工程と、
前記眼鏡レンズのカラー画像内にて染色有無判定位置を特定し、前記染色有無判定位置におけるL*値を取得し、前記取得したL*値と染色有無判定基準値とを比較して染色の有無を判定する工程と、を有する
ことを特徴とする眼鏡レンズの染色検査方法。
【請求項2】
前記染色有無判定位置は、前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心上に特定される
ことを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズの染色検査方法。
【請求項3】
眼鏡レンズの表面に施された染色の状態を検査する眼鏡レンズの染色検査方法であって、
前記眼鏡レンズのカラー画像内にて複数の染色種判定位置を特定し、前記複数の染色種判定位置におけるL*値をそれぞれ取得し、前記取得したL*値のうち最大値と最小値との差と染色種判定基準値とを比較して染色種を判定する工程を有する
ことを特徴とする眼鏡レンズの染色検査方法。
【請求項4】
前記複数の染色種判定位置は、前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心から等距離であって該幾何学中心に対して互いに等角度間隔である位置上にそれぞれ特定される
ことを特徴とする請求項3に記載の眼鏡レンズの染色検査方法。
【請求項5】
眼鏡レンズの表面に施された染色の状態を検査する眼鏡レンズの染色検査方法であって、
前記眼鏡レンズのカラー画像内にて染色カラー判定位置を特定し、前記染色カラー判定位置におけるL*,a*,b*値をそれぞれ取得し、前記取得したL*,a*,b*値と染色カラー判定基準値とを比較して染色カラーを判定する工程を有する
ことを特徴とする眼鏡レンズの染色検査方法。
【請求項6】
前記染色カラーを特定する工程は、前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心からそれぞれ等距離にあり、該幾何学中心に対して互いに等角度間隔にある複数の濃度変化方向判定位置を特定し、前記複数の濃度変化方向判定位置におけるL*値をそれぞれ取得し、前記取得したL*値が最小あるいは最大である濃度変化方向判定位置と前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心とを結んで濃度変化方向線を特定し、前記濃度変化方向線上に前記染色カラー判定位置を特定する
ことを特徴とする請求項5に記載の眼鏡レンズの染色検査方法。
【請求項7】
前記染色カラーを特定する工程は、前記眼鏡レンズのカラー画像内における染色濃度が等しい複数の点を結んで染色濃度均一線を特定し、前記染色濃度均一線と直交しつつ前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心を通る濃度変化方向線を特定し、前記濃度変化方向線上に前記染色カラー判定位置を特定する
ことを特徴とする請求項5に記載の眼鏡レンズの染色検査方法。
【請求項8】
前記染色カラー判定位置は、前記眼鏡レンズのカラー画像の幾何学中心上、及び前記濃度変化方向線上であって該幾何学中心から所定の距離である位置上にそれぞれ特定されることを特徴とする請求項6又は7に記載の眼鏡レンズの染色検査方法。
【請求項9】
眼鏡レンズを保持する撮影台と、
前記撮影台に保持された眼鏡レンズを照明する照明装置と、
前記照明装置に照明された眼鏡レンズの被染色面を撮影してカラー画像を得る撮像手段と、
前記撮像手段により撮影された眼鏡レンズのカラー画像内にて染色有無判定位置を特定し、前記染色有無判定位置におけるL*値を取得し、前記取得したL*値と染色有無判定基準値とを比較して染色の有無を判定する染色検査制御コンピュータと、を備える
ことを特徴とする眼鏡レンズの染色検査装置。
【請求項10】
前記染色検査制御コンピュータは、前記撮像手段により撮影された眼鏡レンズのカラー画像内にて複数の染色種判定位置を特定し、前記複数の染色種判定位置におけるL*値をそれぞれ取得し、前記取得したL*値のうち最大値と最小値との差と染色種判定基準値とを比較して染色種を判定する
ことを特徴とする請求項9に記載の眼鏡レンズの染色検査装置。
【請求項11】
前記染色検査制御コンピュータは、前記撮像手段により撮影された眼鏡レンズのカラー画像内にて染色カラー判定位置を特定し、前記染色カラー判定位置におけるL*,a*,b*値をそれぞれ取得し、前記取得したL*,a*,b*値と染色カラー判定基準値とを比較して染色カラーを判定する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の眼鏡レンズの染色検査装置。
【請求項12】
請求項1から8のいずれかに記載の眼鏡レンズの染色検査方法を用いて前記眼鏡レンズの表面に施された染色の状態を検査する工程を有する
ことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−109442(P2009−109442A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284567(P2007−284567)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】