説明

着座姿勢調整装置

【課題】デスクワークやテーブルでの食事を容易に行うことができるように着座者の姿勢を調整可能な着座姿勢調整装置を提供する。
【解決手段】この着座姿勢調整装置は、着座面101の上面に沿って延びるように形成されて着座者Wの臀部を支持する支持部材10と、支持部材10と着座面101との間に配置されて支持部材10を着座面前後方向の前側よりも後側の方が高くなるように傾斜させる傾斜用エアークッション20と、背面支持部102に取付けられ、着座面上下方向の下側よりも上側の方が着座面前後方向に大きく膨張するように形成された背面支持用エアークッション30と、各エアークッション内の空気量を調整する空気量調整装置40とを有することから、着座者Wがデスクワークやテーブルでの食事を行う際に、着座者Wの上半身の位置を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子に取付けられて着座者の姿勢を調整可能な着座姿勢調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車椅子に装着されて着座者を支持するクッションとして、車椅子の着座面に取付けられて着座者の臀部を支持する臀部支持用クッションと、車椅子の背面支持部に取付けられて着座者の背面を支持する背面支持用クッションとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−017274
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年では、車椅子に座りながらデスクワークやテーブルでの食事を行う機会が増えてきており、車椅子に座りながらのデスクワークやテーブルでの食事を行う際に、従来の車椅子では腕や肩が疲れ易いという意見が多く聞かれるようになってきている。例えば、図7に示すように、リクライニング機能の付いていない車椅子100では、車椅子100が例えばワークデスク110の前に配置された時に、車椅子100のアームレスト103がワークデスク110の下側に入らずに、着座者Wとワークデスク110との間隔が広くなることがあった。この場合、着座者Wはワークデスク110との間隔が広くなる分だけ腕を前方に伸ばす必要があるので、腕や肩に負担がかかりやすく、デスクワークによる疲労が溜まりやすいという問題点があった。
【0004】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、デスクワークやテーブルでの食事を容易に行うことができるように着座者の姿勢を調整可能な着座姿勢調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記目的を達成するために、車椅子に着脱自在に取付けられて着座者の姿勢を調整可能な着座姿勢調整装置であって、前記車椅子の着座面の上面に沿って延びるように形成されて着座者を上下方向に支持する支持部材と、支持部材と車椅子の着座面との間に配置されて支持部材を着座面前後方向の前側よりも後側の方が高くなるように傾斜させる傾斜用エアークッションと、車椅子の背面支持部に取付けられ、着座面上下方向の下側よりも上側の方が着座面前後方向に大きく膨張するように形成された背面支持用エアークッションと、各エアークッション内の空気量をそれぞれ調整可能な空気量調整装置とを備えている。
【0006】
これにより、着座面の上面に沿って延びるように形成されて着座者を上下方向に支持する支持部材と、支持部材と着座面との間に配置されて支持部材を着座面前後方向の前側よりも後側の方が高くなるように傾斜させる傾斜用エアークッションとを備え、傾斜用エアークッション内の空気量は空気量調整装置によって調整可能であることから、例えば、車椅子に着座している着座者がデスクワークやテーブルでの食事を行う際に、着座者の臀部の後側を持ち上げ、着座者の上半身を上方や前方に向かって適宜移動させることができる。また、背面支持部に取付けられ、着座面上下方向の下側よりも上側の方が着座面前後方向に大きく膨張するように形成された背面支持用エアークッションを備え、背面支持用エアークッション内の空気量は空気量調整装置によって調整可能であることから、例えば、車椅子に着座している着座者がデスクワークやテーブルでの食事を行う際に、着座者の上半身を前方に向かって適宜傾斜させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着座者の上半身を上方や前方に向かって適宜移動させることができ、着座者の上半身を前方に向かって適宜傾斜させることができるので、例えば車椅子のアームレストがワークデスクの下側に入らず、車椅子とワークデスクとの間隔が広くなる場合でも、着座者とワークデスクとの間隔を調整することができ、この間隔調整により着座者の腕や肩に加わる疲労を軽減することが可能となる。即ち、着座者はデスクワークやテーブルでの食事を腕や肩に負担がかからない姿勢で行うことができ、車椅子使用者の生活をより快適にする上で極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1乃至図4は本発明の一実施形態を示すもので、図1及び図2は着座姿勢調整装置の使用状態説明図、図3は着座姿勢調整装置が取付けられた車椅子の斜視図、図4は車椅子の斜視図である。
【0009】
この着座姿勢調整装置は例えばリクライニング機能の付いていない車椅子100に着脱自在に取付けられて用いられるものである。この車椅子100には、着座者Wの臀部を上下方向に支持するために設けられている着座面101と、着座者Wの背面を支持するために設けられている背面支持部102と、着座者Wの腕を載置するために設けられているアームレスト103とを有する。
【0010】
また、本実施形態の着座姿勢調整装置は、車椅子100における着座面101の上面に沿って延びるように形成されて着座者Wの臀部を上下方向に支持する支持部材10と、支持部材10と着座面101との間に配置されて支持部材10を着座面前後方向の前側よりも後側の方が高くなるように傾斜させる傾斜用エアークッション20と、車椅子100の背面支持部102に取付けられ、着座面上下方向の下側よりも上側の方が着座面前後方向に大きく膨張するように形成された背面支持用エアークッション30と、各エアークッション20,30内の空気量をそれぞれ調整可能な空気量調整装置40とを備えている。
【0011】
支持部材10はゴムやプラスチックから成り、着座面101と同等またはそれより小さい面積を有する平板状部材から成る。
【0012】
傾斜用エアークッション20は着座面前後方向の前側よりも後側の方が着座面上下方向に大きく膨張するように形成された単一のエアーバッグ21から成る。エアーバッグ21は例えばゴムやプラスチックから成り、内部に空気を封入可能に形成されている。エアーバッグ21の上面は支持部材10の下面に例えば周知の面ファスナーによって着脱自在に取付けられ、エアーバッグ21の下面は例えば面ファスナーによって着座面101の上面に着脱自在に取付けられている。
【0013】
背面支持用エアークッション30は、着座面上下方向の下側よりも上側の方が着座面前後方向に大きく膨張するように形成された単一のエアーバッグ31から成る。エアーバッグ31はゴムやプラスチックから成り、内部に空気を封入可能に形成されている。エアーバッグ31にはベルト32が取付けられ、ベルト32によってエアーバッグ31が車椅子100の背面支持部102に着脱自在に取付けられている。
【0014】
空気量調整装置40は、電動エアーポンプ、電磁弁、コンピュータから成る制御装置等を有し、可撓性の連通管41を介して各エアーバッグ21,31に接続されている。空気量調整装置40は例えば周知のフック等を用いて車椅子100の背面支持部102に着脱自在に取付けられるようになっている。
【0015】
このように構成された着座姿勢調整装置では、例えば、支持部材10の上面にウレタンフォームを用いた周知のクッション50を載置するとともに、クッション50上に着座者Wが着座する。また、例えば、車椅子100を移動させる際には、図2に示すように各エアーバッグ21,31を収縮させた状態とし、車椅子100をワークデスク100の前に配置した際には、図1に示すように各エアーバッグ21,31を膨張させる。これにより、車椅子100を移動させる際には、着座している着座者Wの姿勢を安定させることができる。また、車椅子100がワークデスク110の前に配置された時には、車椅子100のアームレスト103がワークデスク110の下側に入らずに、車椅子100とワークデスク110との間隔が広くなる場合でも、エアーバッグ21を膨張させることにより、着座者Wの上半身を上方や前方に向かって適宜移動させることができ、エアーバッグ31を膨張させることにより、着座者Wの上半身を前方に向かって適宜傾斜させることができる。
【0016】
このように、本実施形態によれば、着座者Wの上半身を上方や前方に向かって適宜移動させ、着座者Wの上半身を前方に向かって適宜傾斜させることにより、着座者Wとワークデスク110との間隔を調整することができるので、この間隔調整により着座者Wの腕や肩に加わる疲労を軽減することが可能となる。即ち、着座者Wはデスクワークやテーブルでの食事を腕や肩に負担がかからない姿勢で行うことができ、車椅子使用者の生活をより快適にする上で極めて有利である。
【0017】
また、エアーバッグ21の上面が支持部材10の下面に取付けられるとともに、エアーバッグ21の下面が着座面101の上面に着脱自在に取付けられ、また、エアーバッグ31が背面支持部102に着脱自在に取付けられていることから、既存の車椅子に容易に取付けることが可能である。即ち、車椅子の大幅な改造等を要することなく車椅子使用者の生活を快適化することが可能である。
【0018】
また、背面支持用エアークッション32が着座面上下方向の下側よりも上側の方が着座面前後方向に大きく膨張するように形成されており、着座者Wの上半身の傾斜を好適に調整することができる。
【0019】
尚、本実施形態では、エアーバッグ21を面ファスナー等によって着座面101に着脱自在に取付けたものを示したが、エアーバッグ21をベルトやその他の周知の方法によって着座面101に着脱自在に取付けることも可能であり、単に載置することによりエアーバッグ21を着座面101に着脱自在に取付けることも可能である。
【0020】
また、本実施形態では、エアーバッグ31をベルト32によって背面支持部102に着脱自在に取付けるものを示したが、エアーバッグ21を面ファスナーやその他の周知の方法によって背面支持部102に着脱自在に取付けることも可能である。
【0021】
尚、本実施形態では、傾斜用エアークッション20を単一のエアーバッグ21から形成したものを示したが、傾斜用エアークッション20を複数のエアーバッグから形成することも可能である。この場合、各エアーバッグは互いに着座面幅方向に並ぶように配置され、それぞれ着座面前後方向の前側よりも後側の方が着座面上下方向に大きく膨張するように形成される。このため、支持部材10を着座面前後方向の前側よりも後側の方が高くなるように傾斜させることができ、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0022】
また、本実施形態では、傾斜用エアークッション20を単一のエアーバッグ21から形成したものを示したが、図5に示すように、傾斜用エアークッション20を互いに着座面前後方向に並ぶように配置された複数のエアーバッグ22から形成することも可能である。
【0023】
この場合、各エアーバッグ22はゴムやプラスチックから成り、着座面幅方向に延びるように形成され、例えば着座面101の幅寸法と同等の長さ寸法を有する。また、各エアーバッグ22は着座面前後方向の前側に配置されたエアーバッグ22よりも着座面上下方向に大きく膨張するように形成されている。さらに、各エアーバッグ22は空気量調整装置40に接続され、各エアーバッグ22内の空気量は空気量調整装置40によって調整されるようになっている。このため、支持部材10を着座面前後方向の前側よりも後側の方が高くなるように傾斜させることができ、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0024】
また、本実施形態では、背面支持用エアークッション30を単一のエアーバッグ31から形成したものを示したが、図5に示すように、背面支持用エアークッション30を互いに着座面上下方向に並ぶように配置された複数のエアーバッグ33から形成することも可能である。
【0025】
この場合、各エアーバッグ33はゴムやプラスチックから成り、着座面幅方向に延びるように形成されるとともに、例えば背面支持部102の幅寸法と同等の長さ寸法を有する。また、各エアーバッグ32は着座面上下方向の下側に配置されたエアーバッグ33よりも着座面前後方向に大きく膨張するように形成されている。各エアーバッグ33はシート状のベース部材34に取付けられ、ベース部材34がベルト35によって背面支持部102に着脱自在に取付けられている。さらに、各エアーバッグ33は空気量調整装置40に接続され、各エアーバッグ33内の空気量は空気量調整装置40によって調整されるようになっている。このため、各エアーバッグ33内の空気量を調整することにより、着座者Wの上半身を前方に向かって傾斜させることができ、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0026】
また、本実施形態では、背面支持用エアークッション30を単一のエアーバッグ31から形成したものを示したが、図6に示すように、背面支持用エアークッション30を互いに着座面幅方向に並ぶように配置された2つのエアーバッグ36から形成することも可能である。この場合、各エアーバッグ36は着座面上下方向の下側よりも上側の方が着座面前後方向に大きく膨張するように形成され、各エアーバッグ36内の空気量は空気量調整装置40によってそれぞれ調整されるようになっている。このため、各エアーバッグ36内の空気量を調整することにより、着座者Wの上半身を前方に向かって傾斜させることができ、前述と同様の作用効果を達成可能である。また、例えば、各エアーバッグ36を定期的に交互に膨張させることにより、着座者Wに上半身の捩じり運動をさせることができ、着座者Wが長時間に亘って同一の姿勢でいることを防止し、着座者の血流を促すことが可能となる。
【0027】
尚、空気量調整装置40による各エアーバッグ21,22,31,33,36内の空気量の調整を着座者Wによる空気量調整装置40の操作によって行うことも可能であり、空気量調整装置40の制御装置によって自動的に行うことも可能である。
【0028】
また、本実施形態では、支持部材10を平板状部材から成るものを示したが、支持部材10をウレタンフォームや布等から成る平板状のクッションから形成することも可能である。
【0029】
また、本実施形態では、支持部材10と車椅子100とを特に連結していないものを示したが、支持部材10の後端側が上下方向に移動可能となるように、支持部材10の前端と車椅子100の着座面101の前端とを回動可能に連結することも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0030】
尚、本実施形態では、リクライニング機能の付いていない車椅子100に着座姿勢調整装置を取付けるものを示したが、リクライニング機能の付いている車椅子100に着座姿勢調整装置を取付けることも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明における一実施形態を示す着座姿勢調整装置の使用状態説明図
【図2】着座姿勢調整装置の使用状態説明図
【図3】着座姿勢調整装置が取付けられた車椅子の斜視図
【図4】車椅子の斜視図
【図5】本実施形態の変形例を示す着座姿勢調整装置の使用状態説明図
【図6】本実施形態の変形例を示す着座姿勢調整装置の使用状態説明図
【図7】従来の車椅子の使用状態説明図
【符号の説明】
【0032】
1…着座姿勢調整装置、10…支持部材、20…傾斜用エアークッション、21…エアーバッグ、22…エアーバッグ、30…背面支持用エアークッション、31…エアーバッグ、32…エアーバッグ、33…エアーバッグ、40…空気量調整装置、100…車椅子、101…着座面、102…背面支持部、103…アームレスト、W…着座者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子に着脱自在に取付けられて着座者の姿勢を調整可能な着座姿勢調整装置であって、
前記車椅子の着座面の上面に沿って延びるように形成されて着座者を上下方向に支持する支持部材と、
支持部材と車椅子の着座面との間に配置されて支持部材を着座面前後方向の前側よりも後側の方が高くなるように傾斜させる傾斜用エアークッションと、
車椅子の背面支持部に取付けられ、着座面上下方向の下側よりも上側の方が着座面前後方向に大きく膨張するように形成された背面支持用エアークッションと、
各エアークッション内の空気量をそれぞれ調整可能な空気量調整装置とを備えた
ことを特徴とする着座姿勢調整装置。
【請求項2】
前記傾斜用エアークッションを、着座面前後方向の前側よりも後側の方が着座面上下方向に大きく膨張するように形成された単一または複数のエアーバッグから構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の着座姿勢調整装置。
【請求項3】
前記傾斜用エアークッションが、互いに着座面前後方向に並ぶように配置された複数のエアーバッグを有し、
各エアーバッグを、着座面前後方向の前側に配置されたエアーバッグよりも着座面上下方向に大きく膨張するように形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の着座姿勢調整装置。
【請求項4】
前記背面支持用エアークッションを、着座面上下方向の下側よりも上側の方が着座面前後方向に大きく膨張するように形成されたエアーバッグから構成した
ことを特徴とする請求項1、2または3の何れかに記載の着座姿勢調整装置。
【請求項5】
前記背面支持用エアークッションが、互いに着座面上下方向に並ぶように配置された複数のエアーバッグを有し、
各エアーバッグを、着座面上下方向の下側に配置されたエアーバッグよりも着座面前後方向に大きく膨張するように形成した
ことを特徴とする請求項1、2または3の何れかに記載の着座姿勢調整装置。
【請求項6】
前記背面支持用エアークッションを、着座面上下方向の下側よりも上側の方が着座面前後方向に大きく膨張するように形成されるとともに互いに着座面幅方向に並ぶように配置された2つのエアーバッグから形成し、
空気量調整装置を各エアーバッグ内の空気量をそれぞれ調整可能に構成した
ことを特徴とする請求項1、2または3の何れかに記載の着座姿勢調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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