説明

着用快適性に優れる厚地織物およびデニム商品

【課題】厚さが0.3mm以上の厚地織物であって、紡績調の風合いと膨らみ感と軽量性とを有し、使用時に肌との滑りがよい着用快適性に優れる厚地織物および該厚地織物を用いてなるデニム商品を提供する。
【解決手段】厚さが0.3mm以上の厚地織物であって、経糸および緯糸のうちどちらか一方に、有機繊維からなる紡績糸が配され、他方に、中空ポリエステルマルチフィラメント糸を含む2以上の糸条からなる混繊糸が配されてなることを特徴とする着用快適性に優れる厚地織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さが0.3mm以上の厚地織物であって、紡績調の風合いと膨らみ感と軽量性とを有し、使用時に肌との滑りがよい着用快適性に優れる厚地織物および該厚地織物を用いてなるデニム商品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、綿100%もしくは綿ポリエステル混などの紡績糸を含む織物は、その外観のナチュラル感や風合いから、デニム商品などとして広く使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。しかしながら、厚さが0.3mm以上の厚地織物となると、重量が大きいため、使用の際に着用者の疲労が大きいという問題があった。また、肌と接触する内衣の表面に紡績糸が現れるため、摩擦抵抗が大きく使用の際に疲労が増大するという問題があった。
【0003】
他方、布帛を軽量化させるために、中空マルチフィラメント糸を含む混繊糸を用いて布帛を構成することが提案されている(例えば、特許文献4参照)が、かかる布帛は軽量でかつふくらみ感を有するものの、紡績調の風合いを有するものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−197243号公報
【特許文献2】特開2003−301350号公報
【特許文献3】特開平9−137373号公報
【特許文献4】特開平9−143833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、厚さが0.3mm以上の厚地織物であって、紡績調の風合いと膨らみ感と軽量性とを有し、使用時に肌との滑りがよい着用快適性に優れる厚地織物および該厚地織物を用いてなるデニム商品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、紡績糸と、中空マルチフィラメント糸を含む混繊糸とを交織することにより、紡績調の風合いと膨らみ感と軽量性とを有し、使用時に肌との滑りがよい着用快適性に優れる厚地織物が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「厚さが0.3mm以上の厚地織物であって、経糸および緯糸のうちどちらか一方に、有機繊維からなる紡績糸が配され、他方に、中空ポリエステルマルチフィラメント糸を含む2以上の糸条からなる混繊糸が配されてなることを特徴とする着用快適性に優れる厚地織物。」が提供される。
【0008】
その際、前記の中空ポリエステルマルチフィラメント糸が中空率10%以上の中空ポリエステル繊維からなることが好ましい。また、前記の中空ポリエステルマルチフィラメント糸の総繊度が110dtex以上であることが好ましい。また、前記の中空ポリエステルマルチフィラメント糸の単糸繊度が5dtex以下であることが好ましい。前記の混繊糸において、構成する2以上の糸条が互いに糸長差を有することが好ましい。また、かかる混繊糸が空気加工された空気混繊糸であることが好ましい。さらには、かかる混繊糸が無撚であることが好ましい。
【0009】
本発明の厚地織物において、前記の有機繊維からなる紡績糸が経糸に配され、一方、前記の混繊糸が緯糸に配されることが好ましい。その際、織物が2/1または3/1の綾織組織を有することが好ましい。
また、本発明によれば、前記の織物を用いてなるデニム商品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、厚さが0.3mm以上の厚地織物であって、紡績調の風合いと膨らみ感と軽量性とを有し、使用時に肌との滑りがよい着用快適性に優れる厚地織物および該厚地織物を用いてなるデニム商品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明の織物は、厚さが0.3mm以上(好ましくは0.4〜2.0mm)の厚地織物であって、有機繊維からなる紡績糸が経糸および緯糸のうちどちらか一方に配される。紡績糸が、経糸および緯糸のどちらにも配されていない場合は、紡績調の風合いが得られず好ましくない。
【0012】
かかる紡績糸を構成する有機繊維としては特に限定されず、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリプロピレン等の合成繊維、レーヨンなどの再生繊維、綿、ウール、絹などの天然繊維、これらを複合したものなどの有機繊維が好ましく例示される。特に綿が好適であり、後記の中空ポリエステルマルチフィラメント糸を含む2以上のマルチフィラメント糸からなる混繊糸と交織することにより、優れた膨らみ感と軽量性が得られ好ましい。
また、前記紡績糸の種類も限定されるものではなく、オープンエンド紡績、結束紡績に代表される、エア交絡紡績糸やリング紡績糸などいずれでもよい。
【0013】
次に、本発明の厚地織物において、経糸および緯糸のうち紡績糸が配されていないほうには、中空ポリエステルマルチフィラメント糸を含む2以上のマルチフィラメント糸からなる混繊糸が配されていることが肝要である。かかる混繊糸が含まれていない場合は、十分な膨らみ感と軽量性が得られず好ましくない。
【0014】
かかる混繊糸に含まれる中空ポリエステルマルチフィラメント糸は、中空率10%以上(好ましくは15〜40%)の中空ポリエステル繊維からなることが好ましい。中空率が10%未満では、十分な膨らみ感と軽量性が得られないおそれがある。また、中空ポリエステル繊維の横断面形状としては中空断面形状であれば特に限定されないが、丸中空断面形状が、容易に製造できるので好ましい。
【0015】
かかる中空ポリエステルマルチフィラメント糸の総繊度および単糸繊度は特に限定されないが、総繊度が110dtex以上(好ましくは110〜700dtex)であると、優れた軽量性が得られ好ましい。また、単糸繊度は5dtex以下(好ましくは0.5〜4.0dtex)であると、ソフトな風合いが得られ好ましい。
【0016】
前記の中空ポリエステルマルチフィラメント糸を形成するポリエステルとしては通常のポリエステルでよく、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびこれらに第3成分を共重合させた共重合ポリエステルが例示される。なかでも、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。また、ポリエステル中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分枝剤、艶消し剤、着色剤、その他各種改良剤等が必要に応じて配合されていてもよい。
【0017】
前記の中空ポリエステルマルチフィラメント糸は、通常の中空用紡糸口金を用いて通常に紡糸、延伸された延伸糸であってもよいし、加熱下で自己伸長性を有する未延伸糸(中間配向糸)であってもよい。このような加熱下で自己伸長性を有する未延伸糸は、前記のポリエステルを常法により紡糸し、2000〜4300m/分の速度で未延伸糸として一旦巻き取った後、180〜200℃に加熱されたヒーターを用いて、弛緩状態(オーバーフィード1.5〜10%)で熱処理することにより得られる。
【0018】
混繊糸に含まれる他糸条としては特に限定されないが、前述のようなポリエステルからなるポリエステルマルチフィラメント糸や、ポリウレタン弾性糸などが好適に例示される。
【0019】
かかる混繊糸を構成する糸条本数は2以上であれば特に限定されず、前記の中空ポリエステルマルチフィラメント糸および/または他糸条が、複数本含まれていてもよい。
ここで、混繊糸を構成する2以上の糸条が、互いに糸長差を有していると、優れた膨らみ感と軽量性が得られ好ましい。このように互いに糸長差をもうける方法としては、両糸条の熱水収縮率を異ならせる方法や、両糸条のうちどちらか一方を弾性糸とし、弾性糸を伸張させながら両糸条を混繊する方法などが例示される。
【0020】
また、混繊糸の混繊方法としては特に限定されないが、優れた膨らみ感と軽量性を得る上で、インターレース空気ノズルなどを用いた空気混繊方法が好適である。さらに、かかる混繊糸は無撚であることが好ましい。撚りが施されていると膨らみ感と軽量性が損なわれるおそれがある。
【0021】
本発明の厚地織物において、前記の紡績糸が経糸に配され、前記の混繊糸が緯糸に配されていてもよいし、その逆でもよい。なかでも前者のほうが、容易に製織でき好ましい。また、厚地織物の織組織は特に限定されず、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織でもよい。なかでも、2/1または3/1の綾織組織が好ましく例示される。かかる織組織を採用すれば、デニム商品として使用できるほどの布帛強度が得られる。さらには、厚地織物の表面と裏面に現れる、紡績糸と混繊糸の量を異ならせることができるので、紡績糸が多く現れた面を外気側に、混繊糸が多く現れた面を肌側に使用することにより、紡績調の風合い、使用時に肌との滑りがよい着用快適性が得られる。
【0022】
本発明の厚地織物は、前記の紡績糸と混繊糸を用いて通常の製織方法により交織することにより製造することができる。さらには、常法の撥水加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0023】
本発明の厚地織物は、前記の紡績糸と前記の混繊糸とで構成されているので、両者の組合せにより、紡績調の風合いと膨らみ感と軽量性とを有する。さらには、使用時に肌との滑りがよい着用快適性が得られる。
【0024】
次に、本発明のデニム商品は前記の厚地織物を用いてなるデニム商品であり、該デニム商品には、デニムパンツ、ダンガリーシャツ、デニムジャケットなどが含まれる。かかるデニム商品は、紡績調の風合いと膨らみ感と軽量性とを有する。さらには、該デニム商品を使用すると、使用時に肌との滑りがよい着用快適性が得られる。
【実施例】
【0025】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
<沸水収縮率(BWS)>
供試フィラメント糸条を、周長1.125mの検尺機のまわりに10回巻きつけて、かせを調製し、このかせを、スケール板の吊るし釘に懸垂し、懸垂しているかせの下端に、かせの総質量の1/30の荷重をかけて、かせの収縮処理前の長さL1を測定した。
このかせから荷重を除き、かせを木綿袋に入れ、このかせを収容している木綿袋を沸騰水から取り出し、この木綿袋からかせを取り出し、かせに含まれる水をろ紙により吸収除去した後、これを室温において24時間風乾した。この風乾されたかせを、前記スケール板の吊し釘に懸垂し、かせの下部分に、前記と同様に、かせの総質量の1/3の荷重をかけて、収縮処理後のかせの長さL2を測定した。
供試フィラメント糸条の沸水収縮率(BWS)を、下記式により算出した。
BWS(%)=((L1−L2)/L1)×100
<厚み測定>
JIS L−1096により測定した。
<ふくらみ感評価>
織物の膨らみ感について熟練者5人により官能判定し、1級(極めて不良)〜5級(極めて良好)の5段階で評価した。
<軽量性評価>
織物の軽量性について熟練者5人により官能判定し、1級(極めて不良)〜5級(極めて良好)の5段階で評価した。
<肌との滑り性評価>
肌との滑り性を熟練者5人により官能判定し、1級(極めて不良)〜5級(極めて良好)の5段階で評価した。
【0026】
[実施例1]
固有粘度が0.52のポリエチレンテレフタレートを、通常の丸中空用紡糸口金を用いて、常法により紡糸、延伸し、沸水収縮率が20%、中空率25%(丸中空断面)の167dtex/48fil(単糸繊度2dtex)の中空マルチフィラメント糸を得た。
一方、酸成分がモル比93/7のテレフタル酸及びイソフタル酸からなり、グリコール成分がエチレングリコールからなり、相対粘度1.45を有する共重合ポリエステルを調製した。この共重合ポリエステル樹脂を用いて、常法により紡糸、延伸し、沸水収縮率が65%、丸断面の84dtex/15fil(単糸繊度5.6dtex)のマルチフィラメント糸を得た。
【0027】
次いで、両糸条を引きそろえて通常のインターレース空気ノズルにより空気混繊し、総繊度280dtexの混繊糸を得た。
そして、インデイゴ染め綿糸10番手を経糸に、前記の混繊糸(無撚)を緯糸に配して3/1の綾織物(経糸密度85本/2.54cm、緯糸密度67本/2.54cm)を製織したのち、通常の染色仕上げ加工を行った。
得られた織物において、厚み0.6mm、ふくらみ感5級、軽量性5級、肌との滑り性4級であった。かかる織物を用いて綿糸が外気側に現れるようデニムパンツを縫製し、着用したところ、肌との滑りが良好であった。
【0028】
[実施例2]
実施例1において、丸断面のマルチフィラメント糸にかえて、44dtex/1filポリウレタン弾性糸(日清紡(株)製)を使用し、該ポリウレタン弾性糸を伸張させながら、中空マルチフィラメント糸と引きそろえて、通常のインターレース空気ノズルにより空気混繊し、総繊度280dtexの混繊糸を得ること以外は、実施例1と同様にした。
得られた織物において、厚み0.55mm、ふくらみ感4級、軽量性5級、肌との滑り性4級であった。
【0029】
[比較例1]
実施例1において、中空マルチフィラメント糸を他の糸と混繊することなく、単独糸条として用いて織物を製織すること以外は、実施例1と同様にした。得られた織物において、厚み0.62mm、ふくらみ感2級、軽量性2級、肌との滑り性3級であった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、厚さが0.3mm以上の厚地織物であって、紡績調の風合いと膨らみ感と軽量性とを有し、使用時に肌との滑りがよい着用快適性に優れる厚地織物および該厚地織物を用いてなるデニム商品が提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが0.3mm以上の厚地織物であって、経糸および緯糸のうちどちらか一方に、有機繊維からなる紡績糸が配され、他方に、中空ポリエステルマルチフィラメント糸を含む2以上の糸条からなる混繊糸が配されてなることを特徴とする着用快適性に優れる厚地織物。
【請求項2】
前記の中空ポリエステルマルチフィラメント糸が中空率10%以上の中空ポリエステル繊維からなる、請求項1に記載の着用快適性に優れる厚地織物。
【請求項3】
前記の中空ポリエステルマルチフィラメント糸の総繊度が110dtex以上である、請求項1または請求項2に記載の着用快適性に優れる厚地織物。
【請求項4】
前記の中空ポリエステルマルチフィラメント糸の単糸繊度が5dtex以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の着用快適性に優れる厚地織物。
【請求項5】
前記の混繊糸を構成する2以上の糸条が互いに糸長差を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の着用快適性に優れる厚地織物。
【請求項6】
前記の混繊糸が空気加工された空気混繊糸である、請求項1〜5のいずれかに記載の着用快適性に優れる厚地織物。
【請求項7】
前記の混繊糸が無撚である、請求項1〜6のいずれかに記載の着用快適性に優れる厚地織物。
【請求項8】
前記の有機繊維からなる紡績糸が経糸に配され、一方、前記の混繊糸が緯糸に配されてなる、請求項1〜6のいずれかに記載の着用快適性に優れる厚地織物。
【請求項9】
織物が2/1または3/1の綾織組織を有する、請求項8に記載の着用快適性に優れる厚地織物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の織物を用いてなるデニム商品。

【公開番号】特開2007−270358(P2007−270358A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93406(P2006−93406)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】