説明

着色剤−ポリエステルおよび着色剤−ポリエステルを製造する方法

【課題】着色剤をポリエステルに共有結合させて着色剤−ポリエステル化合物を製造する。
【解決手段】酵素による重合方法であって、(a)エステルモノマーと、ヒドロキシル基を有する着色剤、またはヒドロキシル基を有するように官能化された着色剤と、酵素触媒とで構成された反応溶液を与える工程と、(b)エステルモノマーおよび着色剤を、酵素触媒を用いて反応させ、着色剤−ポリエステル化合物を含むポリマー生成物を得る工程と、(c)反応溶液からポリマー生成物を分離する工程とを含む。着色剤−ポリエステル化合物は、ポリエステルに共有結合した着色剤を含み、ポリエステルは、ラクトンを重合させることによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、着色剤を官能化し、最終的な排紙展色剤(例えば、インクまたはトナー)の安定性および性能を高める方法に関する。特に、本開示は、酵素による重合を用い、着色剤をポリエステルに共有結合させる方法に関する。また、本明細書には、この酵素による重合方法を用いて製造される着色剤−ポリエステルも開示されている。
【背景技術】
【0002】
インクおよびトナーは、着色剤(例えば、顔料および染料)を含んでいる。顔料は、溶解せず、大きく、凝集する傾向があり、物理的特性が異なるため、インク展色剤またはトナー展色剤に分散させることが困難である。したがって、最終的な排紙展色剤中で顔料が凝集することも、よくある問題である。したがって、顔料の欠点を克服するために、顔料の代わりに染料が用いられることが多い。しかし、染料は、高価であり、最終生成物にそのコストが跳ね返ってしまう。さらに、染料は、保持量によっては材料の特性に影響を及ぼす場合があり、粒径が小さいため、ガラス転移温度(Tg)を下げるか、またはインクおよびトナーのこのような他の性質を変えてしまうことがある。これらすべての否定的な属性は、インクおよびトナー中に保持されるポリマーマトリックスまたは高分子マトリックスと比較して、染料分子の粒径が小さいことと関連がある。
【0003】
着色剤は、インクおよびトナーのポリマーマトリックスに分散され、この分散物は、印刷機またはコピー機に適切なインクおよびトナーの機能を確保するため、ある程度の期間は凝集することなく、安定性を保持していることが望ましい。したがって、着色剤は、最終的な排紙展色剤(インクまたはトナー)の安定性および性能を高めるために、化学経路によって官能化されることが多い。官能化は、一般的に、これらの着色剤に短鎖分子をグラフト結合させることによる。
【0004】
しかし、別のアプローチは、着色剤に対し、インクまたはトナーのポリマーマトリックスと同じまたは同様のポリマーをグラフト結合することである。このアプローチは、典型的には、縮重合法によって行われる。しかし、縮重合法は、高温高減圧を使用し、毒性のある金属触媒を使用する。特に、縮重合法によるポリエステルの調製は、数日間かかり、重合を完全に行わせるには、高温(T>200℃)および低圧(p<1mmHg)にする。重縮合法が、200℃よりも高い温度で操作され、多くの着色剤が、150℃よりも高い温度では分解するため、縮重合法によって、着色剤が分解することがあり、着色剤−ポリエステルを製造するのに理想的とはいえない。さらに、縮重合法は、ラクトンを重合させるのには適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、着色剤を官能化し、着色剤がポリエステルに共有結合している着色剤−ポリエステル化合物を製造するための、低温で金属触媒を含まない酵素による重合方法を与えることによって、これらの要求事項および他の要求事項に対処するものである。
【0006】
いくつかの実施形態では、着色剤をポリエステルに共有結合させ、着色剤−ポリエステル化合物を製造するための酵素による重合方法であって、この方法は、(a)エステルモノマーと、ヒドロキシル基を有する着色剤、またはヒドロキシル基を有するように官能化された着色剤と、酵素触媒とで構成されている反応溶液を与える工程と、(b)エステルモノマーおよび着色剤を酵素触媒を用いて反応させ、着色剤−ポリエステル化合物を含むポリマー生成物を得る工程と、(c)の反応溶液からのポリマー生成物を分離する工程とを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、着色剤−ポリエステル化合物は、ポリエステルに共有結合した着色剤を含み、ポリエステルは、ラクトンを重合させることによって得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの実施形態では、着色剤をポリエステルに共有結合させ、着色剤−ポリエステル化合物を製造するための酵素による重合方法であって、(a)エステルモノマーと、ヒドロキシル基を有する着色剤、またはヒドロキシル基を有するように官能化された着色剤と、酵素触媒とを含む反応溶液を与えることと、(b)エステルモノマーおよび着色剤を酵素触媒を用いて反応させ、着色剤−ポリエステル化合物を含むポリマー生成物を得ることと、(c)反応溶液からポリマー生成物を分離する工程とを含む。
【0009】
(反応溶液)
いくつかの実施形態では、酵素による重合は、着色剤と、エステルモノマーと、酵素触媒とを含む反応溶液を与えることによって行われる。酵素による重合反応は、さらに水を含んでいてもよい。重合は、反応媒体中に存在する水、または着色剤に存在するヒドロキシル基のいずれか、またはこれら両者から開始されてもよい。したがって、2個のポリエステルの集合は、乾燥溶媒およびモノマーが存在しない条件で、この機構によって作成されてもよく、片方のポリエステルの集合は、これに結合した着色剤を有しており、他方のポリエステルの集合は、α−ヒドロキシル基を有しており、着色剤は結合していない。α−ヒドロキシル基を有するポリエステルは、着色していない。水の量および出発物質の濃度を調節することによって、着色していないポリエステルに対する着色した着色剤−ポリエステルの比率を変えることができる。
【0010】
(着色剤)
適切な着色剤は、染料、または顔料、または染料混合物、または顔料と染料の混合物などであってもよい。
【0011】
着色剤は、酵素触媒を介し、反応溶液中に存在するエステルモノマーと反応性である。この反応は、反応性末端基を有する着色剤を用いて行なってもよい。着色剤の反応性基の例は、反応性ヒドロキシル基である。
【0012】
また、着色剤は、着色剤をエステルモノマーに対して反応性にするために、反応性末端基を有するように官能化されてもよい。この反応は、着色剤が反応性末端基を有するように官能化することによって行われてもよい。
【0013】
適切な染料の例としては、Neozapon Red 492(BASF)、Orasol Red G(Ciba)、Direct Brilliant Pink B(Oriental Giant Dyes)、Direct Red 3BL(Classic Dyestuffs)、Supranol Brilliant Red 3BW(Bayer AG)、Lemon Yellow 6G(United Chemie)、Light Fast Yellow 3G(Shaanxi)、Aizen Spilon Yellow C−GNH(保土谷化学)、Bernachrome Yellow GD Sub(Classic Dyestuffs)、Cartasol Brilliant Yellow 4GF(Clariant)、Cibanon Yellow 2GN(Ciba)、Orasol Black CN(Ciba)、Savinyl Black RLSN(Clariant)、Pyrazol Black BG(Clariant)、Morfast Black 101(Rohm & Haas)、Diaazol Black RN(ICI)、Orasol Blue GN(Ciba)、Savinyl Blue GLS(Clariant)、Luxol Fast Blue MBSN(Pylam Products)、Sevron Blue 5GMF(Classic Dyestuffs)、Basacid Blue 750(BASF)、Neozapon Black X51(BASF)、Classic Solvent Black 7(Classic Dyestuffs)、Sudan Blue 670(C.I.61554)(BASF)、Sudan Yellow 146(C.I.12700)(BASF)、Sudan Red 462(C.I.26050)(BASF)、C.I.Disperse Yellow 238、Neptune Red Base NB543(BASF、C.I.SOLVENT Red 49)、BASF製のNeopen Blue FF−4012、ICI製のLampronol Black BR(C.I.SOLVENT Black 35)、Morton Morplas Magenta 36(C.I.SOLVENT Red 172)、米国特許第6,221,137号(この開示内容は、本明細書に参考として完全に組み込まれる)に開示されているような金属フタロシアニン着色剤などが挙げられる。また、ポリマー染料、例えば、米国特許第5,621,022号および米国特許第5,231,135号(これらの開示内容は、それぞれ、本明細書に参考として組み込まれる)に開示されているもの、例えば、Milliken & Companyから、Milliken Ink Yellow 869、Milliken Ink Blue 92、Milliken Ink Red 357、Milliken Ink Yellow 1800、Milliken Ink Black 8915−67、uncut Reactant Orange X−38、uncut Reactant Blue X−17、Solvent Yellow 162、Acid Red 52、Solvent Blue 44、uncut Reactant Violet X−80として市販されているものを用いてもよい。
【0014】
適切な顔料の例としては、PALIOGEN Violet 5100(BASFから市販されている)、PALIOGEN Violet 5890(BASFから市販されている)、HELIOGEN Green L8730(BASFから市販されている)、LITHOL Scarlet D3700(BASFから市販されている)、SUNFAST Blue 15:4(Sun Chemicalから市販されている)、Hostaperm Blue B2G−D(Clariantから市販されている)、Hostaperm Blue B4G(Clariantから市販されている)、Permanent Red P−F7RK、Hostaperm Violet BL(Clariantから市販されている)、LITHOL Scarlet 4440(BASFから市販されている)、Bon Red C(Dominion Color Companyから市販されている)、ORACET Pink RF(Cibaから市販されている)、PALIOGEN Red 3871 K(BASFから市販されている)、SUNFAST Blue 15:3(Sun Chemicalから市販されている)、PALIOGEN Red 3340(BASFから市販されている)、SUNFAST Carbazole Violet 23(Sun Chemicalから市販されている)、LITHOL Fast Scarlet L4300(BASFから市販されている)、SUNBRITE Yellow 17(Sun Chemicalから市販されている)、HELIOGEN Blue L6900、L7020(BASFから市販されている)、SUNBRITE Yellow 74(Sun Chemicalから市販されている)、SPECTRA PAC C Orange 16(Sun Chemicalから市販されている)、HELIOGEN Blue K6902、K6910(BASFから市販されている)、SUNFAST Magenta 122(Sun Chemicalから市販されている)、HELIOGEN Blue D6840、D7080(BASFから市販されている)、Sudan Blue OS(BASFから市販されている)、NEOPEN Blue FF4012(BASFから市販されている)、PV Fast Blue B2GO1(Clariantから市販されている)、IRGALITE Blue BCA(Cibaから市販されている)、PALIOGEN Blue 6470(BASFから市販されている)、Sudan Orange G(Aldrichから市販されている)、Sudan Orange 220(BASFから市販されている)、PALIOGEN Orange 3040(BASF)、PALIOGEN Yellow 152、1560(BASFから市販されている)、LITHOL Fast Yellow 0991 K(BASFから市販されている)、PALIOTOL Yellow 1840(BASFから市販されている)、NOVOPERM Yellow FGL(Clariantから市販されている)、Ink Jet Yellow 4G VP2532(Clariantから市販されている)、Toner Yellow HG(Clariantから市販されている)、Lumogen Yellow D0790(BASFから市販されている)、Suco−Yellow L1250(BASFから市販されている)、Suco−Yellow D1355(BASFから市販されている)、Suco Fast Yellow Dl 355、Dl 351(BASFから市販されている)、HOSTAPERM Pink E 02(Clariantから市販されている)、Hansa Brilliant Yellow 5GX03(Clariantから市販されている)、Permanent Yellow GRL 02(Clariantから市販されている)、Permanent Rubine L6B 05(Clariantから市販されている)、FANAL Pink D4830(BASFから市販されている)、CINQUASIA Magenta(DU PONTから市販されている)、PALIOGEN Black L0084(BASFから市販されている)、Pigment Black K801(BASFから市販されている)、カーボンブラック、例えば、REGAL 330(商標)(Cabotから市販されている)、Nipex 150(Degusssaから市販されている)Carbon Black 5250およびCarbon Black 5750(Columbia Chemicalから市販されている)など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0015】
また、米国特許第6,472,523号、米国特許第6,726,755号、米国特許第6,476,219号、米国特許第6,576,747号、米国特許第6,713,614号、米国特許第6,663,703号、米国特許第6,755,902号、米国特許第6,590,082号、米国特許第6,696,552号、米国特許第6,576,748号、米国特許第6,646,111号、米国特許第6,673,139号、米国特許第6,958,406号、米国特許第6,821,327号、米国特許第7,053,227号、米国特許第7,381,831号、米国特許第7,427,323号に開示されている着色剤も適しており、これらの開示内容は、それぞれ、その全体が本明細書に参考として組み込まれている。
【0016】
いくつかの実施形態では、溶媒染料を用いる。本明細書で使用するのに適した溶媒染料の例としては、本明細書に開示されているインクキャリアと適合性であるため、アルコール溶性染料が挙げられる。適切なアルコール溶媒染料としては、Neozapon Red 492(BASF)、Orasol Red G(Ciba)、Direct Brilliant Pink B(Global Colors)、Aizen Spilon Red C−BH(保土谷化学)、Kayanol Red 3BL(日本化薬)、Spirit Fast Yellow 3G、Aizen Spilon Yellow C−GNH(保土谷化学)、Cartasol Brilliant Yellow 4GF(Clariant)、Pergasol Yellow CGP(Ciba)、Orasol Black RLP(Ciba)、Savinyl Black RLS(Clariant)、Morfast Black Conc. A(Rohm and Haas)、Orasol Blue GN(Ciba)、Savinyl Blue GLS(Sandoz)、Luxol Fast Blue MBSN(Pylam)、Sevron Blue 5GMF(Classic Dyestuffs)、Basacid Blue 750(BASF)、Neozapon Black X51[C.I.SOLVENT Black、C.I.12195](BASF)、Sudan Blue 670[C.I.61554](BASF)、Sudan Yellow 146[C.I.12700](BASF)、Sudan Red 462[C.I.260501](BASF)、これらの混合物などが挙げられる。
【0017】
(蛍光着色剤)
着色剤は、蛍光着色剤であってもよい。酵素による重合中にポリエステルと化学的に結合させることが可能な任意の蛍光着色剤を、本開示で用いてもよい。本開示によれば、本明細書で製造される蛍光着色剤は、本質的に無色であり、すなわち、適切な所定の紙基板上に、蛍光着色剤とブレンドした蛍光トナーを用いて作成した印刷物は、通常の表示条件では、目に見えない。しかし、これらの蛍光着色剤は、いくつかの実施形態では、適切な波長の光(いくつかの実施形態では、所定波長の紫外線(UV)光)をあてると目に見えるようになる。このような可視化は、蛍光着色剤を加えることによって、トナーに付与されてもよく、ここで、蛍光着色剤は、UV光をあてたときのみ目に見えるようになる材料であってもよい。いくつかの実施形態では、蛍光着色剤は、約10nm〜約400nmの波長のUV光、いくつかの実施形態では、約200nmから約395nmの特定範囲のUVにさらされると、発光する成分または蛍光を発する成分であってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、適切な蛍光着色剤としては、例えば、4,4’−ビス(スチリル)ビフェニル、2−(4−フェニルスチルベン−4−イル)−6−ブチルベンゾオキサゾール、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾール、β−メチルウンベリフェロン、4,−メチル−7−ジメチルアミノクマリン、4−メチル−7−アミノクマリン、N−メチル−4−メトキシ−1,8−ナフタルイミド、9,10−ビス(フェネチル)アントラセン、5,12−ビス(フェネチル)ナフタセン、DAYGLO INVISIBLE BLUE(商標) A−594−5、これらの組み合わせなどが挙げられる。他の適切な蛍光剤としては、例えば、9,10−ジフェニルアントラセンおよびその誘導体、N−サリチリデン−4−ジメチルアミノアニリン、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾイミダゾール、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0019】
他の種々の例示的な蛍光着色剤としては、蛍光顔料、例えば、カルボン酸−インデノフルオレノン(例えば、モノカルボン酸−インデノフルオレノンおよびジカルボン酸−インデノフルオレノン)、2−(5−ヒドロキシルペンチル)−1H−チオキサンテノ[2,1,9−def]イソキノリン−1,3(2H)−ジオンが挙げられる。また、蛍光顔料としては、種々の誘導体化した類似体、例えば、ローダミン、ペリレン(C.I.PIGMENT Orange 43およびC.I.PIGMENT Red 194を含む)、ペリノン、スクアライン、BONA顔料(例えば、C.I.PIGMENT Red 57およびC.I.PIGMENT Red 48)が挙げられる。
【0020】
(エステルモノマー)
いくつかの実施形態では、反応溶液は、エステルモノマーを含む。エステルモノマーは、環状エステルモノマーであってもよい。任意の適切な環状エステルモノマー、例えば、炭素原子が5〜16個、例えば、6〜15個、7〜12個、または8〜10個有する環状エステルを、酵素による重合で用いてもよい。環状エステルモノマーは、ラクトン、ラクチド、マクロライド、環状カーボネート、環状ホスフェート、環状デプシペプチドまたはオキシランであってもよい。適切な環状エステルモノマーの具体的な例としては、ラクトン、例えば、オキサシクロヘプタデカ−10−エン−2−オン(AMBRETTOLIDEとしてPenta Manufacturing Co.から入手可能)、ω−ペンタデカラクトン(EXALTOLIDEとしてPenta Manufacturing Co.から入手可能)、ペンタデカラクトン、11/12−ペンタデセン−15−オリド(ペンタデセンラクトンとしても知られる)、ヘキサデセンラクトン、カプロラクトンが挙げられる。他の適切なエステルモノマーとしては、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、プロピルマロラクトネート、2−メチレン−4−オキサ−12−ドデカノリド、ポリ(ブタジエン−b−ペンタデカラクトン、ポリ(ブタジエン−b−ε−CL)、ε−カプロラクトン、(R)体および(S)体の3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド、1,3−ジオキサン−2−オン、1,4−ジオキサン−2−オン、3(S)−イソプロピルモルホリン−2,5−ジオン、モルホリン−2,5−ジオン誘導体、トリメチレンカーボネート、1−メチルトリメチレンカーボネート、8−オクタノリド、δ−デカラクトン、12−ドデカノリド、α−メチレンマクロライド、α−メチレン−δ−バレロラクトンが挙げられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、反応溶液は、非環状エステルモノマーを含んでいてもよい。例示的な非環状エステルモノマーとしては、二塩基酸、ヒドロキシル酸、ジエステルが挙げられる。例えば、使用可能な適切な非環状エステルモノマーとしては、10−ヒドロキシデカン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、10−ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、3−ヒドロキシ酪酸、ジビニルジカルボキシレート(例えば、ジビニルアジペート、ジビニルセバケート)、2,2,2−トリクロロエチルエステル、2,2,2−トリフルオロエチルエステル、活性化していない二塩基酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、6−6’−O−ジビニルアジペート、α−ω−ジオキサカルボキン酸メチルエステル、ビス(ヒドロキシルメチル)酪酸、ω−フルオロ−(ω−1)ヒドロキシルアルカン酸が挙げられる。
【0022】
反応溶液に、エステルモノマーを独立して与えてもよく、または、エステルモノマーを含む有機溶液の形態で与えてもよい。
【0023】
反応溶液中、エステルモノマーに対する着色剤のモル比は、任意の効果的な比率であってもよく、例えば、約1:1〜約1:50、約1:5〜約1:45、約1:10〜約1:30、約1:15〜約1:20、約1:10〜約1:20、約1:10〜約1:25、約1:10〜約1:30、約1:10〜約1:40、約1:10〜約1:50、約1:15〜約1:25、約1:15〜約1:30、約1:15〜約1:40、約1:15〜約1:50、約1:20〜約1:40、約1:20〜約1:50であってもよい。エステルモノマーに対する着色剤の濃度を変えて、ポリマー生成物の分子量を制御することができる。
【0024】
(酵素)
反応溶液は、さらに、1つ以上の適切な酵素を含む。1つ以上の酵素は、着色剤とエステルモノマーとの反応を触媒し、低い温度で重合を行うことができる。使用可能な酵素の具体例は、リパーゼ、例えば、リパーゼPA、リパーゼPC、リパーゼPF、リパーゼA、リパーゼCA、リパーゼB(例えば、candita antarticaリパーゼB)、リパーゼCC、リパーゼK、リパーゼMM、クチナーゼまたはブタリパーゼである。
【0025】
酵素は、固定化された形態または担持された形態(非共有結合で結合した酵素、例えば、吸着した酵素、または他の酵素と架橋した酵素)、または固定され、担持された形態、または遊離形態で反応溶液中に存在していてもよい。
【0026】
1つ以上の酵素は、反応溶液中に任意の有効な濃度で存在していてもよく、例えば、約0.001g/cm〜約0.060g/cm、例えば、約0.002g/cm〜約0.050g/cm、約0.004g/cm〜約0.040g/cm、約0.005g/cm〜約0.030g/cm、約0.006g/cm〜約0.020g/cm、約0.01g/cm〜約0.050g/cmの濃度で存在していてもよい。固定化剤(例えば、架橋されたポリマーネットワーク、架橋されたポリマービーズ、ポリマー包装、膜、シリカゲル、シリカビーズ、砂、ゼオライトのうち、1つ以上)の重量に対する酵素の重量の比率を変えることによって、反応溶液中の1つ以上の酵素の濃度を制御してもよい。
【0027】
(任意の反応成分)
反応溶液に、モノマーを独立して与えてもよく、または、モノマーと溶媒とを含むモノマー溶液の形態で与えてもよい。撹拌をもっと容易にし、反応溶液をポンプで押し出しやすくするために反応媒体の粘度を下げることを促進する目的で反応物に溶媒を加えてもよい。
【0028】
このように、反応溶液は、1つ以上の適切な溶媒、例えばトルエン、ベンゼン、ヘキサンおよびその類似体(例えばヘプタン)、テトラヒドロフランおよびその類似体(例えば、2−メチルテトラヒドロフラン)、メチルエチルケトンおよびその類似体も含んでいてもよい。
【0029】
モノマーを反応溶液に加える前、または加えた後に、溶媒をモノマーと混合してもよい。存在する場合、溶媒は、モノマー含有量に対し、任意の適切な濃度範囲であってもよい。例えば、溶媒は、溶媒および環状モノマーの合計重量の1%〜約99%、例えば、約10%〜約90%、例えば、約25%〜約75%、例えば、約40%〜約60%、または例えば、約50%含まれていてもよい。
【0030】
(反応条件)
酵素による重合は、約50℃〜約90℃、または約60℃〜約90℃、または約70℃〜約90℃、または約80℃〜約90℃、または約50℃〜約60℃、または約50℃〜約70℃、または約50℃〜約80℃、または約60℃〜約80℃の温度で行ってもよい。
【0031】
この方法は、適切な酵素による重合技術によって行ってもよい。この方法は、バッチ式または連続式の反応器構造での塊重合または溶液重合を含んでいてもよい。後者の場合には、触媒は、カラム反応器に封入されており、エステルモノマーをポンプで触媒に通し、連続してポリマーを作成する。前者の場合では、触媒をケトルに入れ、加えたエステルモノマーとともに撹拌する。両方の場合で、着色剤を、酵素による重合のためのヒドロキシル開始部位として加える。エステルモノマーに対する着色剤の比率を利用し、ポリマーの分子量をある程度まで制御することができる。
【0032】
充填層反応器中の塊重合は、1つ以上の固定された酵素または担持された酵素を有する反応器を備えており、充填層反応器は、入口と出口を備えており、エステルモノマーと着色剤の溶液が供給される。この方法は、エステルモノマーと着色剤の溶液を充填層反応器に循環させ、着色剤−ポリエステルを豊富に含む溶液を作成することをさらに含んでいてもよく、その結果、1つ以上の固定された酵素または担持された酵素が、循環中に、充填層反応器中でエステルモノマーおよび着色剤を着色剤−ポリマーに変換し、出口を通って出て行く着色剤−ポリエステルを豊富に含む溶液を集める。
【0033】
充填層反応基は、酵素を固定するための1つ以上の固定化剤(例えば、架橋されたポリマーネットワーク、架橋されたポリマービーズ、ポリマー包装、膜、シリカゲル、シリカビーズ、砂、ゼオライト)を含んでいてもよい。
【0034】
反応器は、任意の適切な材料、例えば、ステンレス鋼の管、ガラス管、またはポリマー管(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の管)から作られていてもよい。
【0035】
反応器は、任意の適切な直径および長さを有していてもよい。いくつかの実施形態では、反応器の外側直径は、約0.1cm〜約300cm、例えば、約10cm〜約100cmであってもよく、長さは、約1cm〜約300cmであってもよい。
【0036】
固定された酵素触媒を用いる、連続式の充填層反応基中のポリエステルの塊重合は、米国特許出願第12/240,421号にさらに開示されており、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0037】
また、この方法は、エステルモノマーおよび着色剤が反応器内に滞留する時間、反応物の組成、反応器の温度、着色剤およびエステルの溶液中の開始濃度のうち、1つ以上を用い、分子量、多分散性、エステルモノマーが着色剤−ポリエステルに変換される比率の1つ以上を制御することを含んでいてもよい。反応溶液を反応器に供給する速度が下がると、反応容器内に反応溶液が残存する時間が長くなることがあり、これにより、着色剤およびエステルモノマーが着色剤−ポリエステルに変換される率が高まり、着色剤−ポリエステル生成物の分子量が大きくなる場合がある。
【0038】
この方法は、反応器の出口から集めた着色剤−ポリエステル生成物溶液を監視し、着色剤および1つ以上のエステルモノマーが着色剤−ポリエステル生成物に変換される率を監視することを含み得る。いくつかの実施形態では、監視することは、生成物が実質的に安定した分子量になるか、または望ましい分子量になったら、着色剤−ポリエステル溶液を集めることを含む。いくつかの実施形態では、監視することは、生成物溶液を集め、分析し、溶液中の着色剤−ポリエステルの分子量を決定することを含む。溶液中の着色剤−ポリエステルを分析するための任意の適切な技術(例えば、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)、示差走査熱量測定(DSC)、核磁気共鳴(NMR))を用いることができる。
【0039】
屈折率検出器(RI)および光ダイオードアレイ(PDA)を利用するポリエステルのゲル透過クロマトグラフィーを用い、着色剤と生成したポリエステルとの共有結合を確認する。ポリエステルの全体集合をRI検出器のシグナルによって観察してもよく、着色剤−ポリエステルを含む部分集合をPDA検出器によって観察する。
【0040】
重合させた後、集めた着色剤−ポリエステルを溶媒(例えば、メタノール)中で析出させ、任意の残留する溶媒またはエステルモノマーを除去するために、濾過によって回収してもよい。得られたケーキを任意の適切な抽出(例えば、メタノールを用いたソックスレー抽出)によって抽出し、ポリエステル生成物から、未反応の着色剤および未反応のエステルモノマーを除去してもよい。この抽出の後、共有結合した着色剤およびポリエステルを含むポリエステルがソックスレー円筒濾紙から回収され、乾燥させる。
【0041】
反応器は、固定された触媒が、反応中に管に残っているため、in−situで濾過器を備えていてもよく、それによって、重合が終了した後に、反応混合物を希釈し、濾過するさらなる工程を避けることができる。
【0042】
(反応生成物:着色剤−ポリエステルおよびポリエステル)
いくつかの実施形態では、酵素による重合反応によって、ポリマー混合物(ポリマー生成物)を含む反応生成物が得られる。反応生成物は、着色剤−ポリエステルと、共有結合した着色剤を含まずに生成したポリエステル(以下、「着色剤を含まないポリエステル」)とを両方とも含んでいてもよい。着色剤−ポリエステルは、着色剤とポリエステルとを含み、着色剤は、ポリエステルに共有結合している。着色剤は、α位でポリエステルに共有結合していてもよい。
【0043】
ポリエステル(着色剤−ポリエステルの一部分として、または結合した着色剤を含まずに生成したポリエステル)は、エステルモノマーを重合させることによって作られる。生成したポリエステルの構造は、反応で使用するモノマーに依存している。ポリエステルの例示的な構造は、以下の反応構造モデルによってあらわされ、
【化1】



式中、Rは、着色剤であってもよく、mは、4〜15であってもよい。上述した任意のエステルモノマーを用いることによって、他の種々の構造が可能である。
【0044】
また、着色剤を含まないポリエステルを、その物理的特性、機械特性、レオロジー特性および/または熱特性のために用いてもよい。着色剤を含まないポリエステルは、例えば、特定の用途に望ましい物理的特性を有していてもよく、同時に、着色剤−ポリエステルの希釈剤(マトリックス)として役立つものであってもよい。したがって、着色剤を含まないポリエステルは、例えば、最終生成物中の着色剤−ポリエステルの濃度を、材料の他の望ましい特性に影響を与えることなく、特定の用途に望ましい濃度まで下げるのに役立てもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、反応生成物は、異なる着色剤−ポリエステルを含んでいてもよく、この場合、異なる着色剤が、異なるポリエステル分子に結合している。
【0046】
着色剤−ポリエステルは、任意の適切な重量平均分子量(M)を有していてもよく、例えば、約1,000g/mol〜約50,000g/mol、約2,000g/mol〜約25,000g/mol、約5,000g/mol〜約20,000g/mol、約5,000g/mol〜約10,000g/mol、約10,000g/mol〜約15,000g/mol、または約5,000g/mol〜約25,000g/molであってもよい。
【0047】
着色剤−ポリエステルは、任意の適切な数平均分子量(M)を有していてもよく、例えば、約1,000g/mol〜約50,000g/mol、約2,000g/mol〜約25,000g/mol、5,000g/mol〜約20,000g/mol、約5,000g/mol〜約10,000g/mol、または約6,000g/mol〜約8,000g/molであってもよい。
【0048】
着色剤−ポリエステルは、任意の適切な多分散性指数(M/M)(PDI)を有していてもよく、例えば、約1.00〜約2.50、約1.25〜約2.00、約1.50〜約1.75、または約1.40〜約1.60であってもよい。
【0049】
着色剤−ポリエステルは、任意の構造形態であってもよく、例えば、ポリエステルを製造するために使用されるモノマーの種類に依存して、アモルファスまたは結晶であってもよい。
【0050】
酵素による重合によって、蛍光着色剤を用いて合成された着色剤−ポリエステルは、目で観察されるように、蛍光挙動を保持しており、種々の用途で着色剤として用いることができる。
【0051】
(用途)
重合法およびこの方法によって製造される着色剤−ポリエステルは、種々の分野でさまざまな用途を有していてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、印刷、コーティング、バイオメディカル、またはセンサー産業において、着色剤−ポリエステルを用いてもよい。着色剤−ポリエステルをインクまたはトナーで用いてもよい。例えば、セキュリティ用途で蛍光をトナーが蛍光を発することができるように、蛍光着色剤−ポリエステルを透明トナーに組み込むことができる。蛍光着色剤−ポリエステルを、自動車用途の蛍光粉末コーティングに組み込んでもよく、または、蛍光衣服で使用するためのポリマー溶融物に対する添加剤として使用してもよい。
【0052】
(インクおよびトナー)
本明細書に記載される着色剤−ポリエステルを、インクで利用してもよい。いくつかの実施形態では、インクは、インク展色剤中に、場合により1つ以上の添加物と、場合により他の着色剤とともに、着色剤−ポリエステルを含んでいる。本明細書に記載されている着色剤−ポリエステルをトナーで利用してもよい。いくつかの実施形態では、トナーは、トナー展色剤中に、場合により1つ以上の着色剤と、場合により1つ以上のトナー添加剤とともに、着色剤−ポリエステルを含んでいる。本明細書に記載されている着色剤−ポリエステルを、EAトナーおよび懸濁物で製造されるトナーを含む化学合成法によって製造されるトナー、化学的な粉砕およびこれらの組み合わせなどによって製造されるトナーとともに利用してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、着色剤は、インクまたはトナー中に、例えば、インクまたはトナーの約0.1〜約15重量%、または約0.5〜約6重量%の量で含まれる。
【0054】
(プリンターおよびコピー機)
本開示は、本明細書に記載されるインクを含むプリンターに関するものであってもよい。特定的には、本開示は、本明細書に記載されるインクを含むプリンターカートリッジ、およびこのプリンターカートリッジを含むプリンターに関する。
【0055】
本開示から作られる着色剤−ポリエステルを、インク吐出デバイスで用いてもよい。インク吐出デバイスは、当該技術分野で知られており、したがって、このデバイスに関する詳細な記載はここでは述べない。本明細書に参考として組み込まれる米国特許第6,547,380号に記載されているように、インクジェット印刷システムは、一般的に、連続流式およびドロップオンデマンド式の2種類がある。
【0056】
また、本開示は、本明細書に記載されるトナーを含むコピー機に関するものであってもよい。特定的には、本開示は、本明細書に記載されるトナーを含むトナーカートリッジ、およびこのトナーカートリッジを含むコピー機に関する。
【0057】
(利点)
着色剤−ポリエステルを製造するための酵素による重合方法は、低い反応温度(約50℃〜約90℃)で行われ、金属触媒を用いず、大気圧で行われ、溶媒を用いないか、溶媒の量が減るため、もっと環境に優しい官能化法である。さらに、着色剤−ポリエステルは、生分解性であってよい。いくつかの実施形態では、酵素による重合方法によって、着色剤がα位でポリエステルに共有結合する。
【0058】
酵素による重合方法は、着色剤を官能化する単純で効果的な方法を与える。得られた着色剤−ポリエステルは、同様のポリマーを含むポリマーマトリックスと高い適合性を有しており、したがって、相分離または沈殿を引き起こすことなく、または分散させる必要なく、インクまたはトナーに着色剤を非常に簡単に組み込むことができる。したがって、これらの高分子構造に起因して、着色剤−ポリエステルは、トナーまたはインクのポリマーマトリックス中で分散し、安定なままであると思われる。
【0059】
酵素による重合方法は、一般的に、高温を必要としないため、この方法では、熱分解を最低限にする(予防する)ことによって、着色剤は分解しない。さらに、酵素による重合方法で使用する低温は、200℃以上で行われる縮重合よりも環境に優しい製造経路である。酵素による重合方法は、金属系触媒および溶媒が必要ではなく、エステルモノマーから製造した生分解性ポリマーに着色剤を組み込むことができるため、さらに環境に優しい。
【0060】
上に開示されている種々の特徴および他の特徴、機能、またはこれらの代替物は、望ましくは、多くの他の異なるシステムまたは用途と組み合わせてもよいことを理解されたい。また、現時点ではわかっていないか、または予測されていない種々の代替物、改変、変更または改良が、後で当業者によってなされてもよく、これらもまた、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
実施例
【0061】
(具体例1)
酵素による重合反応の具体例を、反応図IおよびIIに示す。着色剤を、酵素による重合方法によってエステルモノマーに結合し、着色剤−ポリエステルを作成してもよい(反応図I)。
【化2】

【0062】
また、エステルモノマーを、水(場合により、反応系に存在する)によって開始される、酵素による重合方法によって重合させ、ポリエステルを作成してもよい(反応図II)。
【化3】







【0063】
(作業例1(酵素による重合によって、蛍光染料を官能化))
適切な着色剤の例は、以下の化学式を有する2−(5−ヒドロキシルペンチル)−1H−チオキサンテノ[2,1,9−def]イソキノリン−1,3(2H)−ジオンである。
【化4】

【0064】
以下の反応図IIIは、酵素による重合によって、着色剤を官能化するための2工程の方法の反応スキームをまとめたものである。反応の第1部分(3a)は任意であり、この部分は、ヒドロキシル基がすでに存在していない場合には、ヒドロキシル基を着色剤に結合する役目を担っていた。この方法の第2部分(3b)では、反応性ヒドロキシル基を有する着色剤を、ポリエステル生成物に共有結合させ、ここで、着色剤のヒドロキシル基、または場合により水が、酵素による重合の開始部位であった。
【化5−1】


【化5−2】

【0065】
Hostasol無水物HYANHのヒドロキシル化(3a):ClariantによってHostasolとして市販され、発売されている、チオキサンテノ[2,1,9−def]イソクロメン−1,3−ジオン(1)(10g、32.86mmol)を着色剤として用い、100mlのSchlenkフラスコに撹拌棒とともに入れた。5−アミノ−1−ペンタノール(20.34g、197mmol)を、ジメチルホルムアミド(DMF)(35ml)およびp−トルエンスルホン酸(0.38g、2mmol)とともにフラスコに入れた。このフラスコをゴム製セプタムで密閉し、アルゴンを流し、次いで、130℃に設定した油浴に6時間置いた。反応後に、薄層クロマトグラフィー(TLC)(溶出液トルエン:メタノール 4:1)にかけた。この混合物を50℃まで冷却し、メタノール40mlを加え、橙色固体を得て、これを溶液から濾過し、次いで、メタノール200mlで洗浄した。減圧オーブン中、固体を一晩乾燥させ、(2−(5−ヒドロキシペンチル)−1H−チオキサンテノ[2,1,9−def]イソキノリン−1,3(2H)−ジオン)(2)の固体生成物12.98gを得た。
【0066】
酵素による重合(3b)によって、2−(5−ヒドロキシペンチル)−1H−チオキサンテノ[2,1,9−def]イソキノリン−1,3(2H)−ジオン顔料(2)を、ポリエステル鎖で官能化(3b):アンブレトリッド(3)(50g、198mmol)、エクザルトリッド(4)(47.6g、198mmol)、Novozyme 435(ビーズに担持されたCandita Antartica Lypase B、3.33g)、トルエン(107.3g)、2−(5−ヒドロキシペンチル)−1H−チオキサンテノ[2,1,9−def]イソキノリン−1,3(2H)−ジオン(9.64g、24.8mmol)を、250mlのガラス製シュレンクフラスコに撹拌棒とともに入れた。このフラスコをゴム製セプタムで密閉し、アルゴンを流し、次いで、モノマーが一晩かけて重合するように、80℃に事前設定した油浴に置いた。この後、フラスコを冷却し、内容物を回収した。固形ワックス状の物質を少量のジクロロメタン(約100ml)に溶解し、触媒を除去するために減圧濾過によって濾過し、次いで、濾液をメタノール約2Lに加え、溶液からポリマーを析出させた。ポリマー析出物を第2の減圧濾過によって回収し、残留物をソックスレー円筒濾紙に入れた。次いで、この物質をメタノールでソックスレー抽出し、ポリマー析出物を7日間かけて洗浄した。2−(5−ヒドロキシペンチル)−1H−チオキサンテノ[2,1,9−def]イソキノリン−1,3(2H)−ジオン(2)は、メタノールにはわずかに溶解性であり、一方、官能化された染料(5)は、ポリマーの性質のために溶解しない。得られた固体物質は、明るい橙色であり、このことは、顔料がポリエステルに共有結合し、ポリエステル−染料を生成していることを示している。
【0067】
染料−ポリエステル生成物(5)をテトラヒドロフラン(THF)に希釈し、光ダイオードアレイ検出器(PDA)を取り付けたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)またはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)に注入すると、この物質は、滞留時間41.9分の1本の高分子ピークを有していた(MWが92g/molの内部トルエン標準を用いると、GPC分析によって94g/molと報告され、ピークは54.4分)。狭いポリスチレン標準に基づいて、GPCでも、ポリエステル−染料生成物は、Mが9,770g/molであり、Mが6,460g/molであり、PDIが1.51であることが報告された。ポリエステルの全体集合(着色剤が結合していないポリエステルと、着色剤−ポリエステル)を、屈折率検出器(RI)で測定すると、Mが14,210g/molであり、Mは8,880g/molであり、PDIが1.60であった。
【0068】
これらのGPCの結果から、結論として、染料がポリエステルに共有結合しており、酵素による官能化がうまくいっていることがわかった。さらに、このデータは、反応図I、II、IIIの設計に利用され、概説されている酵素による重合の機構を支持している。
【0069】
酵素による重合によって、蛍光着色剤を用いて合成された着色剤−ポリエステルは、目で観察されるように、蛍光挙動を保持しており、種々の用途で着色剤として用いることができる。
【0070】
上に開示されている種々の特徴および他の特徴、機能、またはこれらの代替物は、望ましくは、多くの他の異なるシステムまたは用途と組み合わせてもよいことを理解されたい。また、現時点ではわかっていないか、または予測されていない種々の代替物、改変、変更または改良が、後で当業者によってなされてもよく、これらもまた、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、ポリエステルとを含み、前記着色剤が、前記ポリエステルに共有結合しており、前記ポリエステルが、酵素触媒を用いてラクトンを重合させることによって得られる、着色剤−ポリエステル化合物。
【請求項2】
前記着色剤が、前記ポリエステルにα位で共有結合した染料、顔料、または顔料と染料の混合物である、請求項1に記載の着色剤−ポリエステル化合物。
【請求項3】
前記着色剤が、カルボン酸−インデノフルオレノン、2−(5−ヒドロキシルペンチル)−1H−チオキサンテノ[2,1,9−def]イソキノリン−1,3(2H)−ジオン、ローダミン、ペリレン、ペリノン、スクアライン、BONA顔料、4,4’−ビス(スチリル)ビフェニル、2−(4−フェニルスチルベン−4−イル)−6−ブチルベンゾオキサゾール、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾール、β−メチルウンベリフェロン、4,−メチル−7−ジメチルアミノクマリン、4−メチル−7−アミノクマリン、N−メチル−4−メトキシ−1,8−ナフタルイミド、9,10−ビス(フェネチル)アントラセン、5,12−ビス(フェネチル)ナフタセン、DAYGLO INVISIBLE BLUE(商標) A−594−5、9,10−ジフェニルアントラセン、N−サリチリデン−4−ジメチルアミノアニリン、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾイミダゾール、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される蛍光着色剤である、請求項1に記載の着色剤−ポリエステル化合物。
【請求項4】
前記ラクトンが、オキサシクロヘプタデカ−10−エン−2−オン、ペンタデカラクトン、ペンタデセンラクトン、ヘキサデセンラクトン、ω−ペンタデカラクトン、カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、プロピルマロラクトネート、2−メチレン−4−オキサ−12−ドデカノリド、ポリ(ブタジエン−b−ペンタデカラクトン、ポリ(ブタジエン−b−ε−CL)、ε−カプロラクトン、(R)体および(S)体の3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド、1,3−ジオキサン−2−オン、1,4−ジオキサン−2−オン、3(S)−イソプロピルモルホリン−2,5−ジオン、モルホリン−2,5−ジオン誘導体、トリメチレンカーボネート、1−メチルトリメチレンカーボネート、8−オクタノリド、δ−デカラクトン、12−ドデカノリド、α−メチレンマクロライド、α−メチレン−δ−バレロラクトンからなる群から選択される1つ以上の要素である、請求項1に記載の着色剤−ポリエステル化合物。
【請求項5】
前記着色剤−ポリエステル化合物が、約1,000g/mol〜約50,000g/molのMおよび/またはMを有する、請求項1に記載の着色剤−ポリエステル化合物。
【請求項6】
前記着色剤−ポリエステル化合物が、約1.00〜約2.50のPDIを有する、請求項1に記載の着色剤−ポリエステル化合物。
【請求項7】
着色剤をポリエステルに共有結合させて着色剤−ポリエステル化合物を製造する方法であって、前記方法は、
(a)エステルモノマーと、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する着色剤と、または少なくとも1つのヒドロキシル基を有するように官能化された着色剤と、酵素触媒とを含む反応溶液を与えることと、
(b)前記エステルモノマーおよび前記着色剤を前記酵素触媒を用いて反応させ、着色剤−ポリエステル化合物を含むポリマー生成物を得ることと、
(c)前記反応溶液から前記ポリマー生成物を分離することとを含む、方法。
【請求項8】
前記酵素触媒が、リパーゼPA、リパーゼPC、リパーゼPF、リパーゼA、リパーゼCA、リパーゼB、リパーゼCC、リパーゼK、リパーゼMM、クチナーゼ、ブタリパーゼからなる群から選択される1つ以上の要素である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素触媒が、candita antartica lipaseBである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)が、前記反応溶液を約50℃〜約90℃の温度まで加熱することを含む、請求項7に記載の方法。

【公開番号】特開2012−55310(P2012−55310A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190124(P2011−190124)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】