説明

着色材料、及び組成物、特に化粧品組成物におけるそれらの使用

【課題】メーキャップ製品などの着色組成物における望ましくない効果を回避するための着色材料の提供。
【解決手段】固体基材に結合する着色された生成物を含む着色材料であって、前記着色された生成物が、ゲニポシド及び/又はゲニピン及び/又はゲニポシド酸及び/又は前述の生成物の少なくとも1種を含む植物の抽出物の着色された派生物であり、前記固体基材はケイ酸塩をベースとし、少なくとも1種の金属カチオンを含む着色材料。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の主題は、新規の着色材料、及び組成物、特に化粧品組成物におけるそれらの使用である。
【0002】
本発明は、とりわけ、皮膚又は体表成長部をメーキャップするよう特に意図された着色化粧品組成物の調製に適用される。本発明はまた、食料品の分野、薬剤の分野、インク、染料、塗料、並びにグラフィックアート及び装飾全般の分野に適用することができる製品などの、他の産業分野のための任意の種類の着色組成物にも適用される。
【0003】
本発明の文脈において、「着色材料」という表現は、それが導入された媒質中で、又はその材料若しくはそれが適用された担体の表面上で、染料として作用する物質を意味する。
【0004】
化粧品分野において、天然又は合成由来、及び無機又は有機の化学的性質の着色材料が、非常に頻用されている。着色材料は主に、メーキャップ製品の場合のように、皮膚又は体表成長部への着色効果をもたらすために使用される。
【0005】
これらの着色材料は特に植物由来であり得る。
【0006】
植物染料は液状媒質中で透明である。植物染料は、皮膚又は体表成長部への着色効果を全く示すことなく、組成物を単に着色するために使用することができる。しかし、植物染料は、メーキャップ製品中に使用すること、又はより具体的には、皮膚若しくは体表成長部又は表面の色が満足となるように表面を着色することを望む場合、不透明にする必要がある。このために、植物染料を不溶性にする。植物染料を不溶性にするための主な技術は、固体基材にそれらを固定することにある。染料、例えばアルミナなどの基材、及び沈殿剤として作用するカチオンの3つの要素で構成されるレーキが、特に知られている。
【0007】
一般に不溶性にした後で化粧品に使用できるよく知られている植物由来の染料の中で、アントシアニン、カロテノイド、クルクミン及びクロロフィルが挙げられる。
【0008】
植物学の科であるアカネ科のいくつかの植物は、青色又は暗藍色の染料の製造原料として使用されることが知られている。
【0009】
これらの植物の中で、以下の及び種
Genipa、特に、Genipa americana、
Gardenia、特に、Gardenia jasminoides、Gardenia ternifolia、Gardenia lucida、及びGardenia erubescens、
Rothmannia、特に、Rothmannia capensis、Rothmannia longiflora、及びRothmannia withfieldii、
Adenorandia、特に、Adenorandia kalbreyeri、並びに
Cremaspora、特に、Cremaspora triflora
が特に挙げられる。
【0010】
これらの植物について、以下の要素に留意すべきである。
【0011】
・Adenorandia kalbreyeri
該植物は明らかに赤道地方特有である(ナイジェリア、コンゴ、アンゴラ)。該植物が存在する諸国において、その果実から抽出される青色液体は、暗藍色の化粧品及び刺青の染料として作用する。これがそれについて知られている唯一の使用である。
【0012】
・Cremaspora triflora
該植物は、西アフリカにかなり広範囲に広がっている。
未熟な果実及び熟した果実が、アフリカの様々な地域で身体染料、及びコンゴでは織物染料として使用される暗藍色の染料を提供することで知られている。熟した果実は食用と見なされている。
【0013】
・Rothmannia longiflora
該植物は、西アフリカの小地域全体で知られており、暗藍色の刺青を入れるのに使用されるが(果実のジュース)、また染色にも使用され、その場合、それはインディゴの代替をすることができる。
その種子及び花もまた、黒色染料の原料として挙げられる。
【0014】
・Rothmannia withfieldii
該植物は、マリ及び西アフリカの小地域全体に存在する。果実及び種子のジュースは、ボディーペインティング及び暗藍色の繊維染色に使用される。
該植物は、青色着色する間のその使用のために、さらに言及される植物Piliostigma thonningiiとの組合せにおいて言及される。Rothmannia種はまた、Gardenia種との組合せにおいても言及される。
【0015】
ブルキナファソにおいて、2種の植物が青色染料の原料として言及される。それらは、
− Gardenia erubescens:化粧品に使用される黒色染料のための種子の使用、
− Gardenia ternifolia:化粧品における果実の使用
である。

ボディーペインティングのための伝統的な使用は、一般に、少なくとも皮膚の半永久的な着色という結果になることに留意すべきである。
【0016】
植物Genipa americanaの果実の抽出物に関して行われた研究は、皮膚と接触して着色する無色の化合物であるゲニピンを単離し、特徴付けることを可能にした(Djerassiら、J.Org.Chem.、1960年、25巻、2174頁、及びJ.Org.Chem.、1960年、26巻、1192頁)。
【0017】
ゲニピンに加えて、イリドイド類のその他のグリコシドが、特にゲニポシド及びゲニポシド酸を含めて、植物Genipa americanaの果実から単離された(Onoら、Chem.Pharm.Bull.、2005年、53巻(10号)、1342〜1344頁)。
【0018】
ゲニポシドは、水中に浸す又は浸軟することにより植物Genipa americanaの果実の果肉及び種子から抽出され、例えば酵素β−グルコシダーゼによる加水分解によってゲニピンを形成する。
【0019】
青色着色は、酸素の存在下での、ゲニピンの第一級アミン基を有するアミノ酸又はかかる基を有するタンパク質との反応の結果である(図1、Leeら、Anal.Chem.Acta、2003年、480巻、267〜274頁)。
【化1】

【0020】
特許出願JP52−053934の本文は、ゲニピン又はその類似体の1つの第一級アミン基を含む化合物との反応によって得られる着色材料を開示している。
【0021】
その正確なメカニズムは、完全には解明されていない。しかし、著者らは、いくつかの中間体を特定し、得られた着色材料が高分子量を有する水可溶性ポリマーから形成されるという仮説を提出した(Touyamaら、Chem.Pharm.Bull.、1994年、42巻(3号)、668〜673頁、及びChem.Pharm.Bull.、1994年、42巻(8号)、1571〜1578頁)。
【0022】
著者らは、ゲニピンから出発して、ゲニピンと反応するアミノ酸の性質に応じて、異なる彩度の青色を得ることが可能であることを示した(Fujikawa、J.Ferment.Technol.、1987年、64巻(4号)、419〜424頁)。
【0023】
したがって、ゲニポシド及び/又はゲニピンを含む抽出物から得られる着色は、反応することができ抽出物中に存在するアミノ酸若しくはタンパク質に関する組成物、反応媒質、又は抽出物を適用する担体によって決まる。
【0024】
著者らはまた、下記の式(A)のゲニポシド酸から出発する、赤色を有する着色された生成物も得ており、
【化2】


その化合物は、ゲニピン及び/又はゲニポシドを含む植物と同じ植物中に見られる(Moritomeら、J.Sci.Food Agric.、1999年、79巻、810〜814頁)。例えば、ゲニポシド酸は、Gardenia jasminoidesの果実から抽出されるか、その前駆体であるゲニポシドのエステル官能基の加水分解によって得られる。赤色着色は、酸性媒質中及び酸素の非存在下での、第一級アミン基を保有する化合物とのゲニポシド酸の反応の結果である(Moritomeら、J.Sci.Food Agric.、2002年、39巻(4号)、345〜352頁)。
【0025】
ゲニピン、ゲニポシド酸、又はゲニポシド類のそれらの前躯体を含む上述の植物の中で、とりわけ、Genipa americanaについて言及される。
【0026】
具体的には、アカネ科の植物Genipa americanaは熱帯植物であり、その果実は、伝統的にアマゾンの人々によって食料として使用されているが、それはまた、いくつかの種類の皮膚炎に対する有益な効果(特に、かゆみ止め効果)のため、外用としても使用される。この果実のジュースはまた、特定の条件下で、ボディーペインティングを行うためにも使用される。これは、果実が圧搾によって、イリドイド類のグリコシド(及びモノテルぺノイド(themonoterpenoids)の化学群のメンバーであるその他の化合物)に富んだ無色の液体ジュースを提供するからである。このジュースの組合せは自然に改変され、ゲニポシドが加水分解によってゲニピンに変換され、ゲニピンは、酸素の存在下で、媒質すなわちこのジュース中に存在するアミノ酸又はタンパク質との反応によって、色が暗青色に変化する。上述の反応によるゲニピンブルーの着色はまた、ジュースが得られた直後にそれが適用される担体の表面でも起こり得る。
【0027】
その結果として、SCRD(ルアーヴル、フランス)の販売する抽出物などのGenipa americanaの市販の溶媒抽出物は本来、色は青色である。
【0028】
したがって、皮膚と接触すると、ゲニピンは一時的な刺青のように、半永久的に付着するようになるので、化粧用のために、植物の果実から得られる無色のジュース又は抽出物それ自体を使うことは望ましくないようであることが理解される。そのように形成される皮膚のしみは、数日間及び2から3週間まで残り、目立ち続ける可能性がある。
【0029】
その結果として、特に皮膚又は体表成長部に適用するように意図された製品中で、着色材料として、この植物の抽出物を使用するためには、この望ましくない効果を回避するためにあらかじめ、ゲニピンが上に示したようにすでに反応して発色した抽出物を使用することが必須である。かかる抽出物は、上に示したように市販されている。加えて、メーキャップ製品などの着色組成物における使用のために、上に説明したように、この植物染料を不溶性にすることが、次いで必要である。
【0030】
それは、まさに、様々なメーキャップ製品において使用でき、刺青をするのに従来から使用されている製品とは違って、メーキャップをとる間に簡単に除去できるように、皮膚に染み付いたり半永久的に付着するようになってはならない、安定した着色材料を提供する目的で、本発明が解決しようと意図する、ゲニピン、又はゲニピン、ゲニポシド酸、若しくはゲニポシドを含む植物の抽出物を不溶性にするという問題である。
【0031】
本特許出願者は、この不溶性にすることを実施できた。そして開発された着色材料は本発明の主題を形成する。
【0032】
様々なアメリカインディアンの伝統は、植物化合物の粘土への吸着のための技術を報告している。例えば、考古学的性質の研究主題を形成してきた「マヤブルー」について言及することができる。この着色材料の調製は、天然インディゴの乾燥過程によるパリゴルスカイト類の粘土への吸着からなる。
【0033】
その他の植物原料はまた、粘土を緑色、黄色、赤色に着色することができたが、考古学的記録の分析がかかる生成物を明らかに報告している一方で、これらの化合物を得るための正確な方法及び成分は、今日まで明らかに解明されていない。
【0034】
したがって、本発明は新規な生成物として、ゲニポシド若しくはゲニピン若しくはゲニポシド酸に由来する染料、又は、少なくともゲニポシド及び/若しくはゲニピン及び/若しくはゲニポシド酸を含む着色植物抽出物を不溶性にした結果生じる着色材料に関する。
【0035】
本発明はまた、かかる着色材料を調製する方法に関する。
本発明はまた、特に化粧品分野におけるこの着色材料の使用に関する。
【0036】
より具体的には、本発明は、固体基材に結合する着色された生成物を含む着色材料であって、前記着色された生成物はゲニポシド及び/若しくはゲニピン及び/若しくはゲニポシド酸の着色された派生物、並びに/又は、上述の生成物の少なくとも1種を含む植物の着色抽出物であり、前記固体基材はケイ酸塩をベースとし、少なくとも1種の金属カチオンを含む着色材料に関する。
【0037】
本発明はまた、この着色材料の調製の方法に関し、前記方法は、
− 前記ゲニポシド及び/若しくはゲニピン及び/若しくはゲニポシド酸に由来する着色された生成物、並びに/又は、上述の生成物の1種を含む植物の抽出物の水溶液から出発して、着色された固体粒子の水性懸濁液を形成することによって、着色された生成物を不溶性にする段階であって、前記着色された固体粒子が、前記着色された生成物が結合する少なくとも1種の金属カチオンを含むケイ酸塩をベースとする固体基材から構成される段階と、
− 不溶性にする段階の間に得られた着色された固体粒子を回収する段階と
を含む。
【0038】
本発明は加えて、着色組成物、特に化粧品組成物の調製における着色材料の使用に関する。
【0039】
本発明はまた、前記着色材料を含む、又は前記調製方法に従って得られた化粧品組成物の局所適用を含む、皮膚又は体表成長部をメーキャップする方法に関する。
【0040】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な記述において明らかになる。
【0041】
上に記したように、本発明は、固体の形態で着色材料を調製するために、少なくとも1種の金属カチオンを含むケイ酸塩をベースとする担体に固定することによって、ゲニポシド及び/又はゲニピン及び/又はゲニポシド酸及び/又はそれらを含む植物の抽出物に由来する着色された生成物を不溶性にすることが可能であるという、本発明者らによる発見の結果であり、その長所の1つは、化粧品組成物中の着色材料として使用される場合、皮膚に永続的には付着しないようになるということである。
【0042】
かかる着色材料が、新規の生成物を構成する。
着色された生成物は、ゲニポシド又はゲニピン又はゲニポシド酸のいずれかの着色された派生物であり得る。
上に記したように、かかる着色された派生物は、従来技術において知られている。それは、ゲニポシド又はゲニピン又はゲニポシド酸を含む植物の抽出物、及びこれら抽出物から得られる着色された材料についても同じである。
【0043】
したがって、本発明は本質的に、ゲニポシド及び/又はゲニピン及び/又はゲニポシド酸から反応によって得られるこれら様々な着色された材料を、着色された生成物を不溶性にすることを可能にし、皮膚に永続的に付着するようになることを妨げる、非常に特異的な固体基材に固定した結果生じる生成物の調製にあり、そのことによって、特に、メーキャップの分野での適用を想定することを可能にする。
【0044】
ケイ酸塩中に含まれるカチオンは広範囲にわたる。しかし、これらのカチオンがAl3+、Fe3+、Mg2+、Fe2+、及びLiからなる群に属することは有利である。好ましくは、カチオンは、少なくともMg2+及びAl3+からなる群に属する。
【0045】
少なくとも1種の金属カチオンを含むケイ酸塩をベースとする固体基材として、粘土を選択することは、有利である。
この粘土は、天然粘土又は人工粘土であり得る。
粘土は、六角網目状に四面体を配列することによって形成される含水のフィロケイ酸塩で二次元シートを形成し、それら自体は上に述べられたものの中の中心のカチオン及び6個のOHイオンから形成される八面体のシートと組み合わされることが、よく知られている。
【0046】
これらのシートは、粘土の第1構造レベルをなす。これらのシートは集合して粒子になり、それら粒子自体は集合して凝集体となる。
【0047】
粘土は、天然であれ合成であれ、非常に広い範囲の中から選択できる。しかし、本発明の特に有利な代替形態によれば、粘土は「拡張可能な」又は「膨張性」粘土から選択される。
【0048】
本発明の別の有利な代替形態に従い、粘土は、高い平均イオン交換能力、好ましくは、固体基材を形成する粘土の100gにつき50meq.を超える能力を示すものから選択される。
【0049】
かかる粘土の例は、スメクタイト系に属する粘土及びバーミキュライト系に属する粘土から構成される。
【0050】
粘土がスメクタイト系に属する粘土から、より具体的には、サポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト及びベントナイトから選択されることは有利である。
【0051】
ラポナイトが粘土として選択されるのは、特に有利である。
別の有利な代替形態によれば、固体基材は硫酸マグネシウムとの珪酸ナトリウムの反応によって得られる。
【0052】
本発明の特に有利な代替形態によれば、着色材料は、その中央径(D50)により定義される平均粒径が30μmより小さく、好ましくは0.01μmから10μmの間を有利に示す粉末固体の形態をしている。
【0053】
粉末サンプルの中央径(D50)は、試験されるサンプルの重量の50%に見られる直径として定義される。
【0054】
上に記したように、ゲニポシド、ゲニピン及びゲニポシド酸は自然には着色されないが、文献にすでに記載された方法によって着色された派生物となる。
【0055】
本発明は、着色された生成物として、ゲニポシド又はゲニピン又はゲニポシド酸の全ての着色された派生物を対象としている。
使用される着色された生成物が、ゲニポシド、ゲニピン、又はゲニポシド酸を含む植物の抽出物、特に植物学の科であるアカネ科に属する植物から得られることは有利である。
【0056】
本発明の代替形態によれば、使用される着色された生成物は、酸素の存在下での、例えばアミノ酸及び/又はタンパク質が保有する第一級アミン基とのゲニピンの反応によって得られる。
【0057】
着色された生成物が着色された植物の抽出物であり、その着色が、酸素及び/又は環境大気の影響下における、抽出物中に存在するゲニピンの、同じ抽出物中に存在する第一級アミン基を有するアミノ酸及び/又はタンパク質との反応によって自然に得られることは、有利である。
【0058】
本発明の別の代替形態によれば、上に記したように、着色された生成物は、酸性媒質中及び酸素の非存在下において、植物の抽出物中に存在する又は植物の抽出物中に存在するゲニポシドから得ることができるゲニポシド酸の例えばアルギニン又はグルタミン酸などのアミノ酸が保有する少なくとも1種の第一級アミン基との反応によって得られる。
【0059】
ゲニポシド及び/又はゲニピン及び/又はゲニポシド酸を含む植物の抽出物から得られる着色された生成物を使用するために、特に植物学の科であるアカネ科から選択される植物を選択することは、有利である。
【0060】
上に記したように、着色された生成物となり得るこの科のいくつかの植物が知られており、かかる着色された生成物は、先行技術において特に、染料及び特に身体染料の生成のために、すでに使用されてきた。
【0061】
有利な代替形態によれば、植物は、Genipa属、Gardenia属、Rothmannia属、Adenorandia属、又はCremaspora属に属する。
【0062】
本発明の着色材料を生成するための好ましい植物の中では、Genipa americana及びGardenia jasminoides、とりわけGenipa americanaが挙げられる。
これら両方の植物にとって、抽出物が、果実全体又は少なくとも果実の一部の抽出物であることは、有利である。
【0063】
好ましくは、果実の果肉及び/又は種子の抽出物を選択する。
特に有利な代替形態に従うと、抽出物は、特に圧搾によって得られるこれらの植物のうちの1つの果実のジュース、又は、特に果実全体若しくは果実の一部を浸す又は浸軟することにより得られる水性抽出物である。
【0064】
どちらの場合においても、とりわけGenipa americanaの場合において、抽出物は、好ましくは植物の果実から、より具体的には果実全体又は果実の果肉及び/若しくは種子の抽出によって得られる。
【0065】
抽出は、果実若しくは少なくとも果実の一部を圧搾することによって、又は極性溶媒、好ましくは水性媒質中に浸す又は浸軟することによってもまた実施される。
【0066】
得られた抽出物は直接使用することができ、さもなければ、ゲニポシドを加水分解してゲニピン又はゲニポシド酸になるように処理することができる。
したがって、抽出物は、酵素的にβ−グルコシダーゼを使用して処理し、ゲニポシドを加水分解してゲニピンにすることができ、又は化学的に、例えば前述のMoritomeらの出版物に従って処理し、ゲニポシドのエステル官能基を加水分解してゲニポシド酸の酸性官能基にすることができる。
【0067】
また、第一級アミン基を有するアミノ酸又は抽出物中に存在するかかる基を含むタンパク質とのゲニピンの反応によって抽出物を着色させるために、酸素の存在下に、特に環境大気中に、抽出物を持ち込むこともできる。
【0068】
また、特定の色合いを得るために、第一級アミン基を保有する化合物、特に、かかる基を保有するアミノ酸を使用して、植物の抽出物を濃厚にすることも可能である。
上に説明したように、製品の色は、前記着色された生成物を結果として生じる反応の反応物及び条件によって決まる。
【0069】
第1の代替形態によれば、ゲニポシド及び/又はそれを含む植物の抽出物から場合によって得られるゲニピンから出発して、上に記載された条件下で得られる着色された生成物は、色が青色である。そのように得られた青色の色合いは、空色から暗藍色まで幅があり得、特に、アミノ酸に関する組成物、又はゲニピンと反応させたタンパク質に関する組成物によって決まる。
【0070】
第2の代替形態によれば、ゲニポシド及び/又はそれを含む植物の抽出物から場合によって得られるゲニポシド酸から出発して、上に記載された条件下で得られる着色された生成物は、色が赤色である。そのように得られた赤色の色合いはまた、ゲニポシド酸と反応したアミノ酸に応じて幅がある。この赤色の色合いは、日本特許第2873518号の本文に記載されている通り、反応媒質に、D−リボース又はD−キシロースなどのペントース類の糖を添加することによって、微妙に変化をつけることができる。
【0071】
いずれの代替形態によって得られたにせよ、着色された生成物は水溶性である。
着色された生成物は、本発明の主題である着色材料の調製のために使用される。
上に記したように、本発明はまた、上記定義の着色材料の調製方法に関する。
【0072】
この方法に従って、少なくとも1種の金属カチオンを含むケイ酸塩をベースとする着色された固体粒子の懸濁液が調製され、その粒子に、上記定義の着色された生成物が固定される。
この懸濁液は、ゲニポシド及び/又はゲニピン及び/又はゲニポシド酸及び/又はそれ/それらを含む植物の抽出物から得られる着色された生成物の水溶液から生成される。
【0073】
したがって、前記粒子に固定された着色された生成物は、不溶性になる。
着色された固体粒子は、次いで、いずれかの適切な固体/液体分離法、特に沈殿及び/又は濾過によって、水性媒質を除去することにより回収される。
【0074】
以下の説明から明らかになるように、水性媒質中の着色された粒子のこの懸濁液は、着色された生成物が固定することになる既存の固体粒子、特に粘土の粒子からか、又は、着色された生成物の水溶液中でケイ酸塩をベースとする着色された固体粒子をインサイチュで(insitu)形成すること、特に、ケイ酸塩塩、例えばケイ酸ナトリウムの水溶液との金属カチオンの塩の反応によって、得ることができる。
【0075】
あらかじめ形成された担体が使用される場合、水性懸濁液は、好ましくは攪拌しながら、着色された生成物の水溶液を、上記定義の固体基材、特に粘土と接触させることによって調製される。
【0076】
この方法によれば、固体基材は、粉末、又は水性の懸濁液の形態で、水溶液に添加される。
好ましい実施態様によれば、上記定義の着色された生成物の乾燥重量の50%から100%の間の量の固体基材が、前記水溶液に添加される。
上記の方法の有利な代替形態によれば、酸性媒質における処理の追加の段階が、好ましくは水溶液を固体基材と接触させる段階の後で、実施される。
【0077】
ケイ酸塩をベースとする着色された固体粒子がインサイチュで調製される場合において、以下の段階、すなわち
− 上記定義の着色された生成物の水溶液に、金属カチオン塩、好ましくは硫酸マグネシウム又は硫酸アルミニウムを添加する段階と、
− そのようにして得られた水溶液を、攪拌しながら、ケイ酸塩、好ましくはケイ酸ナトリウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液と接触させ、前記混合物が前記接触操作の間に反応して、前記着色された固体粒子をインサイチュで沈殿させる段階と
を含む方法が有利に実施される。
【0078】
上記に示された方法の代替形態のそれぞれにおいて、着色された生成物の水溶液が、水中で、上記定義の植物の抽出物、特にGenipa americanaの抽出物を溶解することによって得られることは有利である。
【0079】
加えて、その方法が、着色された生成物が固定された固体基材から本質的に構成される着色された材料から形成される粉末を収集するように意図した、沈殿及び/又は洗浄及び/又は濾過及び/又は乾燥及び/又は噴霧若しく微粒化の少なくとも1つの段階を含むことは有利である。
【0080】
広範な要点が上に明示されている方法の2つの代替形態のそれぞれにおいて、当業者は、様々な操作条件及びパラメータを変化させることができる。
後者は、加熱が水性媒質中の着色された生成物の分布を向上させるためと、固体基材への固定を向上させるためとの両方にとって有利となることを容易に理解する。しかし、固定に関しては加熱せずに、より緩慢な反応速度で、実質的に均等な結果を得ることができる。
【0081】
さらに、水性媒質に、酸、特に酒石酸を添加することによる固定の向上を観察することが可能であった。着色された材料を含む水性媒質を固体基材に接触させた後で、この添加が実施されることは有利である。しかし、また、接触操作の前に、不利益なく、酸を導入することができることも明らかである。さらに、酸は、この酸の塩によって代替することができる。本発明者らによって実施された試験は、さらに、酸又は酸性塩に頼ることが、より大きな粒子の取得にとって好ましいことを示した。
【0082】
加えて、本発明者らによって実施された試験は、特にグルコシドを含む市販由来の抽出物の場合、グルコシドの加水分解のための反応を実施することが有利であり、それは固体基材への着色された生成物の固定を向上させることを示した。
【0083】
様々な操作パラメータの同じ種類の効果は、方法の両方の代替形態について観察された。
本発明の別の主題は、着色材料を含むことができる着色組成物における、本発明の着色材料の使用に関する。
【0084】
本発明の着色材料は、化粧品組成物、特に皮膚又は体表成長部をメーキャップするように意図された化粧品組成物において、特に有用である。
したがって、本発明は、上記定義の着色材料を含む着色組成物、特に皮膚又は体表成長部をメーキャップするための化粧品組成物に関する。
【0085】
本発明の意味において、着色組成物とは、着色剤が、その特定の構造を変性させるその他の化合物なしに、その着色特性を保持する着色組成物である。
化粧品分野において、着色組成物は一般に、皮膚又は体表成長部をメーキャップするための製品、特にマスカラ、ファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、マニキュア、又は、粉おしろい若しくは固形パウダーである。
【0086】
本発明の着色材料を含む化粧品組成物は、化粧品として許容できる活性化剤、並びに真珠光沢剤、ポリマー、界面活性剤、レオロジー剤、香料、電解質、pH調整剤、抗酸化剤、保存料、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の化粧品として許容できる賦形剤、並びに場合によってその他の着色剤を含むことができる。
【0087】
本発明はまた、特に好ましい様式で、着色剤として、ゲニポシド及び/又はゲニピン及び/又はゲニポシド酸を含むアカネ科の抽出物、特に、Genipa americana又はGardenia jasminoidesの抽出物から調製される本発明の着色材料の、それを含むことができる着色組成物、より具体的には化粧品組成物、特に皮膚又はまつげなどの体表成長部をメーキャップするように意図した組成物における使用に関する。
【0088】
当業者なら、本発明の組成物中に存在する着色材料の量が、組成物の種類及び所望の効果に非常に大きく依存していることを容易に理解する。
【0089】
本発明はまた、皮膚又は体表成長部の少なくとも一部への、上に記載された組成物の適用を含む、皮膚又は体表成長部、特にまつげ、髪、若しくは爪をメーキャップする方法に関する。
【0090】
最後に、上に記したように、本発明の着色された材料はまた、化粧品以外、特に食料品又は装飾用塗料の分野における適用も有する。
【実施例】
【0091】
実施例1:ラポナイトへのGenipa americanaの抽出物の固定
SCRD(ルアーヴル、フランス)から取得された微粒化粉末の形状のGenipa americanaの果実の市販の抽出物100gを、60℃にした浸透圧的に処理した水10リットル中に溶解し、次に、溶解完了時に、出発時に計量された乾燥抽出物の重量の50%から100%の間の量、すなわち50gのラポナイトを、攪拌を続けながら添加する(割合は出発抽出物の濃度に応じて変化させることができ、当業者にとって取得可能な材料の質に応じて、これらの割合を調整することは、当業者次第である)。次いで、液体をおよそ80℃の温度にする。粘土粒子が着色された植物の化合物で満たされるようになり始めたとき、それは液体がはるかにより透明になるという事実によって観察できるのだが、この場合においては、酒石酸10gから20gの間の量を添加し、その効果により、粘土基材への植物の化合物の吸着現象が向上する。沈殿による分離を起こすことができる。粘土/有機材料複合物は沈積し、一方、上澄み液はくすんだ黄色である。
【0092】
次いで、沈殿による分離後、水性洗浄液がもはや酸性を示さず、着色がなくなるまで、沈着物を2から3回、清潔な水の添加により洗浄する。沈着物をフィルターに収集し、乾燥し、次に、粉末に還元する。最後に、粘土質の担体へ固定されなかった、見込まれる微量の有機物をそこから除去するために、水性/アルコール溶液を使用して、その粉末を再び洗浄する。
【0093】
実施例2:インサイチュで形成された固体基材へのGenipa americanaの抽出物の固定
上記と同じGenipa americanaの果実の微粒化された市販の抽出物の微粒化粉末100gを、およそ40℃にした浸透圧的に処理した水10リットルに溶解し、次に、溶解完了時に、MgO16%の含有率を示す市販の硫酸マグネシウム100gを添加し、最後に、ケイ酸塩38〜40重量%の含有率を示すケイ酸ナトリウム水溶液を添加する。次いで、かなりの綿状反応が現れるまで、組み合わされた混合物を80℃まで加熱する。沈殿によって液体を分離させる。清潔な水を連続的に添加することによって沈殿物を洗浄し、続いて、沈殿によって分離する。次いで、沈殿物をフィルターに収集し、乾燥する。次いで、それは、上記のアルコールで洗浄することができる。
【0094】
実施例3:本発明による着色材料を含むメーキャップ組成物
実施例2に従って得られた着色材料は、色が暗藍色の粉末である。それはマスカラに添加され、その処方は以下に記載される。
本発明による着色材料 8
マスカラのための賦形剤(香料及び保存料を含む) 十分量
水 適量 100
このように得られたマスカラは、色が暗藍色である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体基材に結合した着色された生成物を含む着色材料であって、前記着色された生成物が、ゲニポシド、ゲニピン、ゲニポシド酸、及び前述の生成物の少なくとも1種を含む植物の抽出物からなる群から選択される生成物又は生成物の混合物の着色された派生物であって、前記固体基材がケイ酸塩をベースとし、少なくとも1種の金属カチオンを含む、着色材料。
【請求項2】
前記固体基材が、Al3+、Fe3+、Mg2+、Fe2+、及びLiからなる群に属する少なくとも1種のカチオンを含む請求項1に記載の着色材料。
【請求項3】
前記固体基材が粘土である請求項1又は2に記載の着色材料。
【請求項4】
前記粘土がスメクタイトである請求項3に記載の着色材料。
【請求項5】
前記粘土がラポナイトである請求項3又は4に記載の着色材料。
【請求項6】
前記固体基材が、硫酸マグネシウムのケイ酸ナトリウムとの反応によって得られる請求項1又は2に記載の着色材料。
【請求項7】
前記固体基材が、30μmより小さい平均粒径(D50)を示す粉末の形態である請求項1〜6のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項8】
前記植物が、植物学の科であるアカネ科から選択される請求項1〜7のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項9】
前記植物が、Genipa属、Gardenia属、Rothmannia属、Adenorandia属又はCremaspora属に属する請求項8に記載の着色材料。
【請求項10】
前記着色された生成物が、酸素の存在下での、ゲニピンの少なくとも1種の第一級アミン基との反応によって得られる請求項1〜9のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項11】
前記着色された生成物が、酸性媒質中及び酸素の非存在下での、ゲニポシド酸の少なくとも1種の第一級アミン基との反応によって得られる請求項1〜9のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項12】
前記第一級アミン基が、アミノ酸、タンパク質、又はその両者が保有するものである請求項10又は11に記載の着色材料。
【請求項13】
前記アミノ酸又は前記タンパク質が、ゲニポシド、ゲニピン及びゲニポシド酸からなる群から選択される生成物又は生成物の混合物を含む植物の抽出物中に存在する請求項12に記載の着色材料。
【請求項14】
前記抽出物が、Genipa americanaの抽出物である請求項8〜13のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項15】
前記抽出物が、Gardenia jasminoidesの抽出物である請求項8〜13のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項16】
前記抽出物が、前記植物の果実全体又は前記果実の少なくとも一部の抽出物である請求項14又は15に記載の着色材料。
【請求項17】
前記抽出物が、果実の果肉若しくは種子又はその両者の抽出物である請求項14〜16のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項18】
前記抽出物が、圧搾によって得られる果実のジュース、又は果実若しくは果実の一部を浸すか浸軟させることによって得られる水性抽出物である請求項14〜17のいずれか一項に記載の着色材料。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の着色材料の調製の方法であって、
請求項1及び8〜18のいずれか一項に記載の着色された生成物の水溶液から出発して、着色された固体粒子の水性懸濁液を形成することによって、前記着色された生成物を不溶性にする段階であって、前記着色された固体粒子が、前記着色された生成物が結合する、少なくとも1種の金属カチオンを含むケイ酸塩をベースとする固体基材から構成される段階と、
不溶性にする段階の間に得られた着色された固体粒子を回収する段階と
を含む方法。
【請求項20】
水性懸濁液が、攪拌しながら、請求項1〜7のいずれか一項に記載の固体基材に前記着色された生成物の前記水溶液を接触させることによって調製される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記固体基材が、前記水溶液に、前記固体基材の粉末又は水性懸濁液の形態で導入され、固体基材の量が、上記定義の着色された生成物の乾燥重量の50%から100%の間である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記水溶液を前記固体基材に接触させる段階の後に実施される、酸性媒質中での処理の段階を追加的に含む請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
水性懸濁液の形成が、以下の段階
請求項1及び8〜18のいずれか一項に記載の着色された生成物の前記水溶液に前記金属カチオンの塩を添加する段階と、
そのようにして得られた水溶液を、攪拌しながら、ケイ酸塩塩の水溶液に接触させ、前記混合物が前記接触操作中に反応して、前記着色された固体粒子をインサイチュで沈殿させる段階と
を含む請求項20に記載の方法。
【請求項24】
着色された生成物の前記水溶液が、水に、請求項1及び8〜18のいずれか一項に記載の抽出物を溶解することによって得られる請求項19〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記着色された生成物が固定された前記固体基材から本質的に構成される粉末を収集するように意図した、洗浄、濾過、乾燥、噴霧、及び微粒化からなる群から選択される少なくとも1つの段階を追加的に含む請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の、又は、請求項19〜25のいずれか一項に記載の方法に従って得られる着色材料を含む組成物。
【請求項27】
マスカラ、ファンデーション、アイシャドウ、アイライナー、マニキュア、粉おしろい、及び固形パウダーからなる群から選択される化粧品組成物である請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
塗料及び装飾用塗料から選択される請求項26に記載の組成物。

【公開番号】特開2010−155830(P2010−155830A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−295126(P2009−295126)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】