説明

着色組成物およびカラーフィルタ

【課題】コントラスト、輝度、および色純度について、優れた光学特性を同時に有するカラーフィルタを得ることができる、赤色着色組成物の提供。
【解決手段】本発明による赤色着色組成物は、赤色顔料と、黄色顔料とを含み、赤色顔料と黄色顔料の質量比が、95:5〜70:30であり、該赤色顔料と該黄色顔料の混合顔料の透過スペクトルにおいて、450nm〜550nmの平均透過率が0.5〜1.0%であり、かつ600nm〜700nmの平均透過率が90%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色顔料と黄色顔料とを含む赤色着色組成物および該赤色着色組成物を用いて形成されてなるカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置のさらなる高精細化、バックライトの省電力化、および高輝度化が要求されており、カラーフィルタのさらなる高透過率化および高コントラスト化が望まれている。これらの実現のために、カラーフィルタの材料および製造方法に関し、種々の研究が行われてきた。
【0003】
液晶表示装置用のカラーフィルタには、色材として顔料が用いられることが一般的である。顔料は、耐光性および耐熱性に優れる素材であり、これまで多数の顔料が研究されてきた。カラーフィルタの色特性はカラーフィルタ中の顔料の色特性に依存することが知られており、特に、赤色顔料については、望ましい色特性を得るために、一種類の顔料の使用のみでは、望ましい色特性を得ることが困難であった。また、顔料の微粒子化、微分散化を行っても、依然として望ましい色特性の実現が困難であった。
【0004】
そこで、望ましい色特性の実現のために、複数種の顔料を併用することが提案されている。例えば、主顔料としてC.I.ピグメントレッド254を用い、調色顔料としてC.I.ピグメントレッド242を用いて、波長545nmの輝線は透過させず波長585nmの輝線を透過させることのできる赤色硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。また、主顔料としてC.I.ピグメントレッド242を用い、調色顔料としてC.I.ピグメントレッド177または254を用いることも提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
しかしながら、今尚、望ましい色特性、特にコントラスト、輝度、および色純度等を、同時に向上できるカラーフィルタ用赤色着色組成物の開発が切望されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−372618号公報
【特許文献2】特許第3924872号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、今般、赤色顔料と黄色顔料とを特定の質量比で含む赤色着色組成物において、混合顔料の透過スペクトルにおける、波長450nm〜550nmおよび波長600nm〜700nmの平均透過率が特定の範囲内である組成物によれば、コントラスト、輝度、および色純度等について、優れた光学特性が同時に得られることを知見した。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
【0008】
したがって、本発明は、
赤色顔料と、黄色顔料とを含む赤色着色組成物であって、
前記赤色顔料と前記黄色顔料の質量比が、95:5〜70:30であり、
前記赤色顔料と前記黄色顔料の混合顔料の透過スペクトルにおける、波長450nm〜550nmの平均透過率が0.5〜1.0%であり、かつ波長600nm〜700nmの平均透過率が90%以上である、赤色着色組成物である。
【0009】
本発明によれば、コントラスト、輝度、および色純度について、優れた光学特性を同時に有するカラーフィルタを得ることができる、赤色着色組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
定義・測定方法
本発明において、色度とは、CIE色度座標における値である。混合顔料の透過スペクトルにおける平均透過率とは、混合顔料を30質量%濃度で均一に分散させて作製した厚さ2〜3μmの塗膜について、顕微分光装置OSP−SP2000(OLYMPUS社製)を用いて透過スペクトルを測定し、測定した透過スペクトルにおける特定波長間の透過率の平均値のことである。コントラストとは、カラーフィルタの光消偏性の割合を表すもので、2枚の偏光板を直交、或いは平行となるように組み合わせてカラーフィルタを挟んだ時に透過する輝度の比(偏光板平行時の輝度/偏光板直交時の輝度)のことである。
【0011】
赤色着色組成物
本発明において、赤色着色組成物は、赤色顔料と、黄色顔料とを含み、赤色顔料と黄色顔料の質量比が、95:5〜70:30であり、該赤色顔料と該黄色顔料の混合顔料の透過スペクトルにおける、波長450nm〜550nmの平均透過率が、0.5〜1.0%であり、波長600nm〜700nmの平均透過率が90%以上である。本発明の好ましい態様によれば、赤色顔料と黄色顔料の質量比は、90:10〜60:40であるのが好ましく、より好ましくは、85:15〜70:30である。また、波長450nm〜550nmの平均透過率は、好ましくは0.6〜0.9%であり、波長600nm〜700nmの平均透過率は、好ましくは95%以上である。平均透過率が上記範囲程度であれば、優れた輝度を得ることができる。
【0012】
顔料
本発明の好ましい態様によれば、赤色顔料は、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、およびC.I.ピグメントレッド264からなる群から選択される少なくとも二種の混合物を用いることができる。より好ましくは、赤色顔料は、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド242、およびC.I.ピグメントレッド254の三種を混合したものである。赤色顔料を少なくとも二種の混合物とすることで、色特性をより向上させることができる。本発明においては、市販の顔料を用いることもでき、例えば、Paliogen Red K3580(C.I.ピグメントレッド149、BASF製)、Chromofine Red 6605(C.I.ピグメントレッド177、大日精化製)、Novoperm Scarlet 4RF(C.I.ピグメントレッド242、Clariant製)、Irgaphor Red BT−CF(C.I.ピグメントレッド254、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、およびIragazin DPP Rubine FTX(C.I.ピグメントレッド264、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等が好ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、黄色顔料は、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、およびC.I.ピグメントイエロー213からなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくは、C.I.ピグメントイエロー150である。これらの黄色顔料を用いることで、コントラストおよび輝度をより向上させることができる。また、黄色顔料が金属錯体系顔料であれば、耐熱性をより向上することもできる。本発明においては、市販の顔料を用いることもでき、例えば、Paliotol Yellow D0960(C.I.ピグメントイエロー138、BASF製)、Graphtol Yellow H2R(C.I.ピグメントイエロー139、Clariant製)、Byplast Yellow Y−5688(C.I.ピグメントイエロー150、Lanxess製)、およびHostaperm Yellow h5G(C.I.ピグメントイエロー213、Clariant製)等が好ましい。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、顔料粒子のサイズ、すなわち混合顔料の体積平均粒径は、好ましくは、0.01〜0.30μmであり、より好ましくは0.01〜0.20μmである。なお、体積平均粒径は、顔料分散液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−ST150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定したものである。顔料の体積平均粒径が、上記範囲内であれば、透過率および耐熱性を同時に向上させることができる。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、顔料の配合量(質量比)は、C.I.ピグメントレッド177:C.I.ピグメントレッド242:C.I.ピグメントレッド254:C.I.ピグメントイエロー150=0〜60:0〜40:0〜40:10〜30であり、より好ましくは、30〜50:10〜30:0〜30:15〜30である。上記配合量であれば、コントラスト、輝度、および色純度について、より優れた光学特性を同時に実現することができる。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、赤色着色組成物は、上記の顔料を溶剤に分散させた分散体である。顔料の分散方法は、特に限定されず、公知の分散機を用いて分散させることができる。分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。分散処理において用いるビーズの径は、好ましくは0.03〜2.00mmであり、より好ましくは0.10〜1.00mmである。
【0017】
本発明においては、顔料を分散させる際に、ジルコニアビーズ等を適宜加え、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼社製)等を用いて、数時間分散を行うことが好ましい。例えば、ビーズ径が比較的大きめな2mmジルコニアビーズで1時間分散後、さらにビーズ径が比較的小さめな0.1mmジルコニアビーズで2時間分散することが挙げられる。また、分散後、5.0μmのメンブランフィルタで濾過することが好ましい。これにより、顔料の分散性をより向上することができ、透過率をより向上させることができる。
【0018】
その他の成分
本発明の好ましい態様によれば、赤色着色組成物は、上記の赤色顔料および黄色顔料以外にも、必要に応じて、溶剤、分散剤、モノマー、ポリマー、および重合開始剤等を含むものである。
【0019】
溶剤
上記の溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、および3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられる。本発明においては、市販の溶剤を用いることもでき、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(ダイセル化学工業株式会社製)、および3−メトキシブチルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)が好ましい。好ましい態様では、溶剤の含有量は、赤色顔料および黄色顔料の合計質量に対して10〜90質量%である。溶剤の含有量が上記範囲程度であれば、赤色着色組成物の粘度を所望の範囲に調整し、顔料分散性や顔料分散経時安定性を向上させることができる。また、顔料濃度を一定範囲内にすることができるため、赤色着色組成物を調製後、目標とする色度座標を達成することができる。
【0020】
分散剤
上記の分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できるが、これらの中でも高分子界面活性剤( 高分子分散剤)を用いることが好ましい。高分子界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、および3級アミン変性ポリウレタン類などが挙げられる。本発明においては、市販の分散剤を用いることもでき、例えば、ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、20000、24000、26000、および28000等の各種ソルスパース分散剤(ゼネカ株式会社製)、ならびにDisperbyk111(ビックケミー・ジャパン株式会社製)が好ましい。好ましい態様では、分散剤の含有量は、赤色顔料および黄色顔料の合計質量に対して10〜80質量%である。
【0021】
モノマー
上記のモノマーとしては、例えば、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、および、上記のアクリレート基をメタクリレート基に置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、フェノール−エチレンオキサイド変性アクリレート、フェノール−プロピレンオキサイド変性アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ビスフェノールA−エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のアクリレートモノマー、および、これらのアクリレート基をメタクリレート基に置換したもの、ポリウレタン構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたエポキシアクリレートオリゴマー、ポリウレタン構造を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたウレタンメタクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたポリエステルメタクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたエポキシメタクリレートオリゴマー、アクリレート基を有するポリウレタンアクリレート、アクリレート基を有するポリエステルアクリレート、アクリレート基を有するエポキシアクリレート樹脂、メタクリレート基を有するポリウレタンメタクリレート、メタクリレート基を有するポリエステルメタクリレート、ならびにメタクリレート基を有するエポキシメタクリレート樹脂等が挙げられる。本発明においては、市販のモノマーを用いることもでき、例えば、SR399(サートマー社製)、アロニックスM−400(東亞合成株式会社製)、およびアロニックスM−450(東亞合成株式会社製)が好ましい。好ましい態様では、モノマーの含有量は、赤色顔料および黄色顔料の合計質量に対して5〜80質量%である。
【0022】
ポリマー
上記のポリマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等、および、重合可能なモノマーであるメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、sec-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレートの1種以上と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の2量体、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、ならびにこれらの酸無水物等が挙げられる。本発明においては、市販のポリマーを用いることもでき、例えば、アロニックスM−5600(東亞合成株式会社製)、アロニックスM−6200(東亞合成株式会社製)、アロニックスM−7100(東亞合成株式会社製)、およびアロニックスM−9050(東亞合成株式会社製)が好ましい。好ましい態様では、ポリマーの含有量は、赤色顔料および黄色顔料の合計質量に対して5〜80質量%である。
【0023】
重合開始剤
上記の重合開始剤としては、熱重合開始剤および光重合開始剤等を用いることができ、例えば、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、および1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。本発明においては、市販の重合開始剤を用いることもでき、例えば、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア907(いずれも、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)等のケトン系化合物、および2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)等のビイミダゾール系化合物が好ましい。好ましい態様では、重合開始剤の含有量は、赤色顔料および黄色顔料の合計質量に対して1〜40質量%である。
【0024】
カラーフィルタ
本発明の好ましい態様によれば、カラーフィルタの赤色画素部の色特性は、CIE色度座標におけるx、yの座標値として、0.630≦x≦0.670、0.320≦y≦0.350を満たすものであり、より好ましくは0.640≦x≦0.670、0.325≦y≦0.350である。また、色度座標x、yが上記範囲内程度において、輝度Y≧20であることが好ましい。色特性が上記範囲程度であれば、液晶表示装置に用いた場合に、望ましい色特性を達成でき、輝度のより高い表示装置とすることができる。
【0025】
カラーフィルタの製造方法
本発明によるカラーフィルタの製造方法は特に限定されないが、以下に示される好ましい態様に従い行うことができる。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、上記の赤色着色組成物を基材上に塗布し、減圧乾燥後、プリベークして、溶剤を除去する。組成物の塗布には、従来公知の方法を用いることでき、例えばスピンコート法、印刷法、インクジェット法、バーコート法、スプレー法、ダイコート法、ビードコート法、およびスリット&スピンコート法等が挙げられる。続いて、紫外線を露光して、組成物を硬化させる。さらに、焼成することで透明着色パターンを基材上に形成させることができる。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。
【0027】
実施例1
赤色着色組成物の調製
まず、顔料に配合するための硬化性樹脂組成物を以下の方法で調製した。重合槽中にメタクリル酸メチル(MMA)を63質量部、アクリル酸(AA)を12質量部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)を6質量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を88質量部仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(重合開始剤)を7質量部添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下、85℃で2時間攪拌し、更に100℃で1時間反応させた。得られた溶液に、更にメタクリル酸グリシジル(GMA)を7質量部、トリエチルアミンを0.4質量部、及びハイドロキノンを0.2質量部添加し、100℃で5時間攪拌し、共重合樹脂溶液(固形分50%)を得た。
共重合樹脂溶液(固形分50%)の組成
・メタクリル酸メチル(MMA)(株式会社クラレ製): 63質量部
・アクリル酸(AA)(日本触媒製): 12質量部
・メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)(日本触媒製): 6質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)(純正化学社製): 88質量部
・2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(重合開始剤)(商品名:ABN−R、株式会社日本ファインケム社製): 7質量部
・メタクリル酸グリシジル(GMA)(日本油脂株式会社製): 7質量部
・トリエチルアミン(和光純薬社製): 0.4質量部
・ハイドロキノン(精工化学社製): 0.2質量部
【0028】
次に、下記の材料を室温で攪拌および混合して硬化性樹脂組成物を得た。
硬化性樹脂組成物の組成
・上記共重合樹脂溶液(固形分50%): 16質量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(商品名:SR399、サートマー社製): 24質量部
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:エピコート180S70、油化シェルエポキシ社製): 4質量部
・2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名:イルガキュア907、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):4質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル(純正化学社製): 52質量部
【0029】
続いて、下記の材料を、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼社製、ビーズ径:0.3mm)を用いて混合し、赤色着色組成物を得た。
赤色着色組成物の組成
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177(商品名:Chromofine Red 6605、大日精化製) 3.2質量部
C.I.ピグメントレッド242(商品名:Novoperm Scarlet 4RF、Clariant製) 2.4質量部
C.I.ピグメントレッド254(商品名:Irgaphor Red BT−CF、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製) 1.2質量部
・黄色顔料:C.I.ピグメントイエロー150(商品名:Byplast Yellow Y−5688、Lanxess製) 1.2質量部
・分散剤:Disperbyk111(ビックケミー・ジャパン社製) 2.4質量部
・上記硬化性樹脂組成物: 16質量部
・溶剤:3−メトキシブチルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)73.6質量部
【0030】
赤色フィルタの製造
0.7mmのガラス基板(旭硝子株式会社製 AN材)にスピンコーターを用いて、上記赤色組成物を塗布した後、80℃で3分間プリベークし赤色塗膜を乾燥させた。次に乾燥塗膜に高圧水銀ランプを用いて200mJ/cmで露光後、230℃で30分間ポストベークして赤色フィルタを製造した。赤色フィルタの赤色着色層の膜厚は、2.73μmであった。
【0031】
実施例2
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177 3.6質量部
C.I.ピグメントレッド242 1.6質量部
C.I.ピグメントレッド254 0.8質量部
・黄色顔料:C.I.ピグメントイエロー150 2.4質量部
【0032】
実施例3
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177 3.2質量部
C.I.ピグメントレッド242 1.2質量部
C.I.ピグメントレッド254 1.2質量部
・黄色顔料:C.I.ピグメントイエロー150 2.4質量部
【0033】
実施例4
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177 2.8質量部
C.I.ピグメントレッド242 1.6質量部
C.I.ピグメントレッド254 2.0質量部
・黄色顔料:C.I.ピグメントイエロー139(商品名:Graphtol Yellow H2R、Clariant製) 1.6質量部
【0034】
実施例5
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177 2.8質量部
C.I.ピグメントレッド242 1.6質量部
C.I.ピグメントレッド254 2.0質量部
・黄色顔料:C.I.ピグメントイエロー138(商品名:Paliotol Yellow D0960、BASF製) 1.6質量部
【0035】
実施例6
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177 2.8質量部
C.I.ピグメントレッド242 1.6質量部
C.I.ピグメントレッド254 2.0質量部
・黄色顔料:C.I.ピグメントイエロー213(商品名:Hostaperm Yellow h5G、Clariant製) 1.6質量部
【0036】
実施例7
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177 2.8質量部
C.I.ピグメントレッド242 1.6質量部
C.I.ピグメントレッド149(商品名:Paliogen Red K3580、BASF製) 2.0質量部
・黄色顔料:C.I.ピグメントイエロー150 1.6質量部
【0037】
実施例8
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド242 1.6質量部
C.I.ピグメントレッド254 2.4質量部
C.I.ピグメントレッド264(商品名:Iragazin DPP Rubine FTX、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製) 2.4質量部
・黄色顔料:C.I.ピグメントイエロー150 1.6質量部
【0038】
実施例9
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177 4.0質量部
C.I.ピグメントレッド242 2.4質量部
・黄色顔料:C.I.ピグメントイエロー150 1.6質量部
【0039】
比較例1
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177 2.0質量部
C.I.ピグメントレッド242 2.0質量部
C.I.ピグメントレッド254 3.6質量部
・黄色顔料:C.I.ピグメントイエロー150 0.4質量部
【0040】
比較例2
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177 4.0質量部
C.I.ピグメントレッド242 0.4質量部
C.I.ピグメントレッド254 0.4質量部
・黄色顔料:C.I.ピグメントイエロー150 3.2質量部
【0041】
比較例3
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド242 1.2質量部
C.I.ピグメントレッド254 6.8質量部
【0042】
比較例4
顔料の配合を以下のとおりとした以外は、実施例1と同様にして、赤色着色組成物を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、赤色フィルタを製造した。
・赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177 2.0質量部
C.I.ピグメントレッド242 2.8質量部
C.I.ピグメントレッド254 3.2質量部
【0043】
光学特性試験
上記の実施例および比較例で製造した赤色フィルタについて、透過スペクトルにおける平均透過率を以下の方法により求めた。まず、赤色フィルタの透過スペクトルを、顕微分光装置OSP−SP2000(OLYMPUS社製)を用いて測定した。次に、測定した透過スペクトルにおける波長450nm〜550nmの平均透過率と、波長600nm〜700nmの平均透過率を算出した。
【0044】
結果は、表1に示されるとおりであり、実施例では、透過スペクトルにおける、波長450nm〜550nmの平均透過率が0.5〜1.0%であり、かつ波長600nm〜700nmの平均透過率が90%以上であることがわかる。なお、図1に、実施例1および比較例3の透過スペクトルを示す。図2は、波長400nm〜600nmにおける拡大図である。
【0045】
次に、上記の実施例および比較例で製造した赤色フィルタについて、上記で求めた透過スペクトルτ(λ)、C光源の分光スペクトルP(λ)、およびXYZ表色系における等色関数を用いて、下記式(1)〜(6)より色度座標(x、y)および輝度Yを算出した。
【数1】

【0046】
続いて、上記の実施例および比較例で製造した赤色フィルタのコントラストについて、以下の方法により測定した。上記で製造した赤色フィルタを2枚の偏光板(SEG1425DU、日東電工株式会社製)で直交、或いは平行になるように挟んで測定資料とした。測定資料にバックライト(東芝株式会社製、商品名:メロウ5D FL10EX−D−H、色温度6500K)を点灯し、輝度計(コニカミノルタセンシング社製 LS−100)を用いて、輝度を測定した。測定した輝度値を用いて、コントラストを、下記式(7)
コントラスト=平行輝度(cd/m)/直交輝度(cd/m) 式(7)
により算出した。
【0047】
上記の測定の結果は、表1に示されるとおりであり、実施例の赤色フィルタでは、輝度Yが20以上であり、同時にコントラストにも優れるものであることがわかる。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1および比較例3で調製した赤色着色組成物の透過スペクトルである。
【図2】実施例1および比較例3で調製した赤色着色組成物の透過スペクトルの拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色顔料と、黄色顔料とを含む赤色着色組成物であって、
前記赤色顔料と前記黄色顔料の質量比が、95:5〜70:30であり、
前記赤色顔料と前記黄色顔料の混合顔料の透過スペクトルにおける、波長450nm〜550nmの平均透過率が0.5〜1.0%であり、かつ波長600nm〜700nmの平均透過率が90%以上である、赤色着色組成物。
【請求項2】
前記赤色顔料が、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、およびC.I.ピグメントレッド264からなる群から選択される少なくとも二種である、請求項1に記載の赤色着色組成物。
【請求項3】
前記黄色顔料が、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、およびC.I.ピグメントイエロー213からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1または2に記載の赤色着色組成物。
【請求項4】
前記赤色顔料および黄色顔料が、0〜60質量%のC.I.ピグメントレッド177と、0〜40質量%のC.I.ピグメントレッド242と、0〜40質量%のC.I.ピグメントレッド254と、10〜35質量%のC.I.ピグメントイエロー150とを含むものである、請求項1に記載の赤色着色組成物。
【請求項5】
赤色画素部、緑色画素部、および青色画素部を有してなるカラーフィルタであって、
前記赤色画素部が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の赤色着色組成物により形成されたものである、カラーフィルタ。
【請求項6】
前記赤色画素部の色特性が、CIE色度座標におけるx、yの座標値として、0.630≦x≦0.670、0.320≦y≦0.350を満たすものである、請求項5に記載のカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−6968(P2010−6968A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168592(P2008−168592)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】