説明

睡眠時無呼吸の薬理学的処置

【課題】 睡眠関連呼吸障害を予防または緩和するための薬理学的方法を提供する。
【解決手段】 セロトニン関連の薬学的活性を有する薬剤またはそれら薬剤の組み合わせを投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する、米国仮特許出願第60/076,216号の優先権を主張している、1999年2月26日に出願された国際特許出願第PCT/US99/04347号の優先権を主張している、2000年8月23日に米国特許出願第09/622,823号として出願されている、2001年12月18日に発行された米国特許第6,331,536号の優先権を主張している、2001年12月14日に出願されている米国特許出願第10/016,901号の優先権が主張されている。
【0002】
本願発明は、一般的に、呼吸障害の薬理学的処置方法に関し、とりわけ、(中枢性および閉塞性の)睡眠時無呼吸およびその他の睡眠関連呼吸障害を緩和するために、セロトニン関連レセプター活性を有する薬剤または組成物を投与することに関する。
【背景技術】
【0003】
呼吸障害は、主として睡眠中に発症するがために、勤務時間内に持続的な眠気を催し、それによって、実質的な経済的損失(例えば、何千もの仕事量の損失)や、雇用安全率(例えば、重機運転時の従業員の不注意)の低下を招く障害であり、多様な呼吸障害に関して、過去数年にわたって多大な研究が続けられてきた。 睡眠関連呼吸障害は、呼吸の反復的低下(呼吸低下)、呼吸の周期的停止(無呼吸)、または換気の継続的または持続的低下を特徴としている。
【0004】
睡眠時無呼吸とは、一般的に、睡眠時の鼻孔および口腔での気流の周期的な停止として定義される。 慣例的には、少なくとも10秒間の無呼吸が確認されると注意を要するが、20秒〜30秒間の無呼吸も珍しくなく、無呼吸が2分〜3分間に及ぶ場合もある。 臨床的に注意を要する無呼吸数の最小値は定かではないが、医療機関の受診者の場合、睡眠時間1時間当たり、少なくとも10回〜15回の無呼吸数が多い。
【0005】
睡眠時無呼吸は、中枢性、閉塞性および混合型の三つのタイプに分類されている。 中枢性睡眠時無呼吸では、すべての呼吸筋肉を駆動する神経が、一時的に機能停止してしまう。 閉塞性睡眠時無呼吸では、口咽頭の気道の閉塞によって、呼吸が継続しているにもかかわらず、気流が途切れてしまう。 中枢性睡眠時無呼吸に続いて閉塞性睡眠時無呼吸を発症する混合型睡眠時無呼吸は、閉塞性睡眠時無呼吸の変形である。 最も一般的な睡眠時無呼吸のタイプは、閉塞性睡眠時無呼吸である。
【0006】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、成人男性被用者の24%程度で、また成人女性被用者の9%程度で認められており、60歳代で有病率は最大になる。 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の特徴的な症状である習慣的な激しいいびきは、中年男性の最大24%で、また、中年女性の14%で認められ、加齢と共にその有病率は増大する。
【0007】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群に固有の症状として、上気道、特に、口腔咽頭近辺の閉塞がある。 この閉塞によって無呼吸となると、通常、進行性無酸素症に陥ってしまい、睡眠状態から覚醒することで初めて、気道が開放され、そして、気流が確保される。
【0008】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群において上気道の虚脱に至らしめる主要因子は、大気圧より低い圧力、すなわち、気流を安定させるための気道拡張筋や外転筋の能力を超える圧力が、吸気時に発生することである。 睡眠は、気道拡張筋や外転筋を含む上気道の筋肉の活動を鎮めるという重要な役割も果たす。
【0009】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者の多くにおいて、気流の流通も構造的な阻害が認められており、これによって、閉塞の素因が形成されるのである。 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の一部の患者において認められる気流の構造的な阻害は、通常、明白な解剖学的奇形、すなわち、咽頭扁桃肥大、下顎後退症または巨舌症によるものである。 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の素因を有する患者の多くにおいて認められる構造的異常は、気道のわずかな封鎖、すなわち、「咽頭密集」である。 上気道の密集縮小は、肥満者にもよく認められる。 口蓋および咽頭軟組織を高周波で振動するいびきの作用によって、上気道管腔が狭小となり、通常は、軟組織に生じた浮腫によって管腔の狭小化がさらに促される。
【0010】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群に特徴的な夜間無酸素症と睡眠からの覚醒という症状は、この症候群に起因する合併症を招く一連の二次的な生理学的現象を引き起こす。 最も一般的な症状は、再発性の覚醒応答に起因する徐波睡眠の欠落や睡眠の中断に起因すると考えられている神経精神病的障害および行動障害である。 夜間脳低酸素症も、重要な役割を果たす。 最もよく目にする症状は、日中の過度の居眠りである。 閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、今や、日中の居眠りを誘う主要原因であると認識されており、また、自動車事故などの問題を引き起こす危険因子であるとも考えられている。 他の関連症状として、知的障害、記憶喪失、人格障害および性的不能などがある。
【0011】
他の主要な症状は、心肺に出現し、この症状は、夜間無酸素症の再発現に起因するものと考えられている。 ほとんどの患者で、無呼吸の間の心拍数が、1分あたり30回〜50回にまで周期的に減少し、次いで、換気相では、1分あたり90回〜120回の頻拍となることが実証されている。 ごく一部の患者では、8〜12秒間の不全収縮による重度の徐脈や、非持続性腹部頻脈を含む重篤な不整頻脈を伴う症例も認められる。 閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、心臓病患者の左半身の換気不全も悪化させることもある。 この合併症は、主として、閉塞状態の間に左半身腹部に大きな負荷が加わるとの複合的効果に起因しており、また、二次的には、胸郭内負圧の増大、夜間無酸素症の再発現、それに慢性的な交感神経副腎活性の増大に起因している。
【0012】
中枢性睡眠時無呼吸は、症候群としては、閉塞性睡眠時無呼吸症候群よりも患者数は多くはないが、日中の肺胞換気低下や周期的呼吸にも関連する医学的障害、神経学的障害および/または神経筋学的障害を患った多様な患者で認めることができる。 中枢性睡眠時無呼吸で認められる特徴的な現象は、換気関連筋肉の中枢的駆動の一時的停止である。 中枢性睡眠時無呼吸では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群で認められるのと同様の一連の症状が認められる。 根底にある幾つかの機構によって、睡眠時の呼吸停止に至る。 その一つが、代謝性呼吸制御系と呼吸神経筋組織での欠陥である。 その他の中枢性睡眠時無呼吸障害は、別の無傷の呼吸制御系での一時的な不安定性に起因している。
【0013】
健常者の多くに、睡眠時、特に、睡眠導入時やREM睡眠時に中枢性無呼吸がほとんど認められないことが実証されている。 これら無呼吸は、生理学的障害または臨床的障害のいずれにも関連していない。 臨床的に重度の中枢性睡眠時無呼吸患者で認められる一連の特徴的な現象は、顕著な生理学的または臨床的状態をもたらす。 中枢性睡眠時無呼吸を患った患者には、通常、肺胞換気低下症候群、日中の炭酸過剰症および低酸素症が認められ、また、再発性呼吸不全、赤血球増加症、肺高血圧症および右心不全などの病歴に基づいて臨床所見が出される。 不眠、早朝頭痛、日中の疲労感や居眠りなども顕著に現れるようになってくる。 これとは対照的に、中枢性睡眠時無呼吸が、呼吸駆動の不安定性に起因している場合には、再発性夜間覚醒を含む睡眠障害、起床時の疲労感および日中の居眠りに関連する病歴に基づいて臨床所見が出される。
【0014】
睡眠時無呼吸およびその他の睡眠関連呼吸障害を患った成人を処置するための、目下のところ、最も一般的かつ有効な手法は、気道内正圧力付与法(PAP)という物理的治療法である。 気道内正圧力付与法を用いる場合、密閉式プラスティック製マスクで患者の鼻孔を覆うようにして装着してから、患者は睡眠に入る。 このマスクは、コンプレッサーに接続されており、また、このコンプレッサーから、鼻孔を経て、患者の気道に正圧力が付与される。 この方法の原理は、気道に圧力を付与することで、機械的な「分離」作用を負荷せしめ、これにより、気道の虚脱、つまり、閉塞性睡眠時無呼吸を予防するものである。 気道内正圧力付与法で処置した患者のほとんどで効果的な治療応答が観察されてはいるものの、多くの患者が、装置または圧力にどうしても馴染めずにおり、また、治療を拒否している。 さらに、隠密裏に実施された最近の追跡試験は、気道内正圧力付与法で長期間処置しても、実質的な治療効果が得られていないことを明確に示している。
【0015】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群を処置するすべく、上気道、頭蓋および顔面についての様々な外科的処置法がこれまでに試みられている。 閉塞性睡眠時無呼吸症候群を患った小児患者の多くについて、扁桃腺摘出が有効であるように思われるが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を患った成人患者の気道を外科処置することで、治療効果が得られた事例は希にしかない。 一般的に、無呼吸発生率が50%減少すれば、外科的処置は「成功」したとされているが、外科的処置によって治療効果を享受した患者とそうでない患者を特定するための有効なスクリーニング方法は確立されていない。
【0016】
睡眠時無呼吸症を患った患者に対して、数タイプの薬理学的処置法を試みたが、これまでのところ、有用性が認められる処置法は見当たらなかった。 このような試みを体系的にまとめた文献が、Hudgelが出している [J. Lab. Clin. MED., 126: 13-18 (1995)]。 予想される呼吸刺激特性に基づいて、幾つかの化合物が試験に供されている。 これら化合物として、(1)中枢性無呼吸症の患者では改善が見られたが、閉塞性無呼吸症では症状の悪化を招いてしまう炭酸脱水酵素のアセタゾルアミド、(2)閉塞性睡眠時無呼吸症候群において実質的な効果が認められなかったプロゲスティンのメドロキシプロゲステロン、および(3)喘息治療用として一般的に利用されており、中枢性無呼吸症の患者では改善が見られたが、閉塞性無呼吸症の成人患者での使用は望めない化合物であるテオフィリンがある。
【0017】
薬理学的処置法として、アデノシン、アデノシン類似体およびアデノシン再摂取阻害剤の投与(米国特許第5,075,290号)も試みた。 具体的には、生体内に遍在する化合物であり、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者から高濃度で検出されるアデノシンが、呼吸を刺激し、また、睡眠時無呼吸の動物モデルにおいて無呼吸の頻度をやや効果的に低減せしめることが知られている。
【0018】
利用可能なその他の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の薬理学的処置手段として、脳の活動を刺激する薬剤またはオピオイドアンタゴニストなどがある。 具体的には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群において脳脊髄液オピオイド活性が高いことは判っているので、中枢刺激またはオピオイドアンタゴニストが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を処置する上で役に立つであろうとことは、論理的に導くことができる。 実際のところ、中枢神経系および頸動脈小体化学受容器を刺激するドクサプラムは、無呼吸時間を短縮するものの、閉塞性睡眠時無呼吸患者の動脈の平均酸素飽和度に対して影響を与えないことが知られている。 換気を刺激することが知られているオピオイドアンタゴニストナロキソンは、閉塞性睡眠時無呼吸患者に対してわずかな助けにしかならなかった。
【0019】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群が、高血圧症の発生と密接に相関しているので、血圧が高い閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者を処置する上で、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤のような薬剤は有用であるかもしれないが、この薬剤が、閉塞性睡眠時無呼吸症候群それ自体の治療に適しているとは限らない。
【0020】
最後に、呼吸に関与する神経伝達物質および神経伝達系に作用する数個の薬剤を、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者に対して用いた試験が行われている。 これら化合物のほとんどが、ノルエピネフリン、ドーパミンおよびセロトニンなどのモノアミン神経伝達物質の活性を高める抗抑制薬として開発されたものである。 三環系の抗抑制薬であるプロトリプチリンを用いた小規模の実験において、多様な結果に加えて、重大な副作用が頻繁に認められた。 セロトニンは、睡眠を促すのみならず、呼吸をも刺激するので、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者に対して、トリプトファン、セロトニン前駆体および選択的セロトニン再摂取阻害剤を用いて試験が行われた。 セロトニン再摂取阻害剤、フルオキセティンの使用についての特許(米国特許第5,356,934号)が発行されてはいるものの、当初の試験では、これら化合物が、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者のわずか約50%でしか、明確な効果が認められなかったことを示唆している。 このように、睡眠関連呼吸障害を被った患者が利用できる処置方法が、患者の同意が取りつけにくい気道内正圧力付与法(PAP)という物理的治療法しかなく、また、薬理学的処置法に対する要望が実現されていない現状をも考慮すると、睡眠関連呼吸障害を被った多様な患者がその効果を享有できるような簡便な薬理学的処置法が待望されているのである。 さらに、患者の同意が容易に取り付けることができる、睡眠関連呼吸障害の現実的な処置法についても待望されている。
【発明の開示】
【0021】
本願発明は、睡眠関連呼吸障害を予防または緩和するための薬理学的処置を提供することに関する。
【0022】
本願発明は、睡眠関連呼吸障害を予防または緩和するための方法、すなわち、セロトニン受容体アンタゴニストの有効量を、処置を必要とする患者に投与する、ことを含む方法に関する。 また、睡眠関連呼吸障害を予防または緩和するために、セロトニン受容体アンタゴニストの組み合わせを投与する、ことを含む方法に関する。 セロトニン受容体アンタゴニストの組み合わせは、単一のセロトニン受容体サブタイプでも、あるいは一つ以上のセロトニン受容体サブタイプであってもよい。
【0023】
本願発明は、さらに、睡眠関連呼吸障害を予防または緩和するための方法、すなわち、セロトニン受容体アンタゴニストの組み合わせと、セロトニン受容体アゴニストの組み合わせとを協同して投与する、ことを含む方法に関する。 セロトニン受容体アンタゴニストの組み合わせ、それにセロトニン受容体アゴニストの組み合わせは、単一のセロトニン受容体サブタイプでも、あるいは一つ以上のセロトニン受容体サブタイプであってもよい。
【0024】
また、本願発明は、睡眠関連呼吸障害を予防または緩和するための方法、すなわち、セロトニン受容体アンタゴニストの組み合わせと、α2 アドレナリン作用性受容体サブタイプアンタゴニストとを協同して投与する、ことを含む方法に関する。 セロトニン受容体アンタゴニストの組み合わせは、単一のセロトニン受容体サブタイプでも、あるいは一つ以上のセロトニン受容体サブタイプであってもよい。
【0025】
上記方法での投与経路として、経口、腹膜内、皮下、静脈内、筋内、経皮などの全身系の他に、他の投与経路などがある。 浸透性ミニポンプおよび経時的放出性ペレットあるいはその他の投与用デポー剤なども利用できる。 薬剤が適切な受容体に首尾良く誘導さえすればよく、投与経路は特に限定されない。
【0026】
睡眠関連呼吸障害として、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、未熟呼吸、先天性中枢性低換気症候群、肥満性低換気症候群、中枢性睡眠時無呼吸症候群、シェーン・ストークス呼吸、およびいびきなどがあるが、これらに限定されない。
【0027】
セロトニン受容体アンタゴニストは、遊離塩基または四級化アンモニウム塩の形態とすることができる。 これらセロトニン受容体アンタゴニストの四級化は、例えば、メチルヨウ化物、エチルヨウ化物、または様々なベンジルハロゲン化物などの反応性アルキルハロゲン化物で、第三級の窒素原子を四級アンモニウム塩へ転換することで得られる。 四級化セロトニンアンタゴニスト、特に、メチル化ザトセトロンが、血液−脳関門を通過する性質を欠いている(Gidda et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 273: 695-701 (1995))ため、末梢神経系でしか作用しないことが知られている。 セロトニン受容体アンタゴニストは、化学化合物それ自体と、薬学的に許容可能なその塩類として定義される。
【0028】
セロトニン受容体アンタゴニストとして、遊離塩基または四級化した形態のザトセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ヒドロドラセトロン、メスカリン、オキセトロン、ホモクロルシクリジン、ペルラピン、オンダンセトロン(GR38032F)、ケタンセリン、ロキサピン、オランザピン、クロルプロマジン、ハロペリドール、r(+)オンダンセトロン、シスアプライド、ノルシスアプライド、(+)シスアプライド、(-)シスアプライド、(+)ノルシスアプライド、(-)ノルシスアプライド、デスメチルオランザピン、2-ヒドロキシメチルオランザピン、1-(2-フルオロフェニル)-3-(4-ヒドロキシアミノエチル)-プロプ-2-エン-1-オン-O-(2-ジメチルアミノエチル)-オキシム、リスペリドン、シプロヘプディン、クロザピン、メチセルギド、グラニセトロン、ミアンセリン、リタンセリン、シナンセリン、LY-53,857、メテルゴリン、LY-278,584、メチオセピン、p-NPPL、NAN-190、ピペラジン、SB-206553、SDZ-205,557、3-トロパニル-インドール-3-カルボン酸塩、3-トロパニル-インドール-3-カルボン酸メチオディド、およびその他のセロトニン受容体アンタゴニストならびにそれらの四級化した形態または薬学的に許容可能なその塩類の一つなどがあるが、これらに限定されない。
【0029】
セロトニン受容体アゴニストとして、8-OH-DPAT、スマトリプタン、L694247(2-[5-[3-(4-メチルスルフォニルアミノ)ベンジル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1H-インドール-3イル]エタナミン)、ブスピロン、アルニティダン、ザロスピロン、イプサピロン、ゲピロン、ゾルミトリプタン、リサトリプタン、311C90、α-Me-5-HT、BW723C86(1-[5(2-チエニルメトキシ)-1H-3-インドリル[プロパン-2-塩酸アミン)およびMCPP(M- クロロフェニルピペラジン)などがあるが、これらに限定されない。 セロトニン受容体アゴニストは、化学化合物それ自体と、薬学的に許容可能なその塩類として定義される。
【0030】
α2アドレナリン作用性受容体アンタゴニストとして、フェノキシベンザミン、フェントルアミン、トラゾリン、テラゾシン、ドキサゾシン、トリマゾシン、ヨヒンビン、インドラミン、ARC239、およびプラゾシン、または薬学的に許容可能なその塩類の一つなどがあるが、これらに限定されない。
【0031】
選択的セロトニン再摂取阻害物質として、フルオキセチン、パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン、シタロプラム、ノルフルオキセチン、r(-)フルオキセチン、s(+)フルオキセチン、デメチルセルトラリン、デメチルシタロプラム、ベンラファキシン、ミナシプラン、シブトラミン、ネファゾドン、R-ヒドロキシネファゾドン、(-)ベンラファキシンおよび(+)ベンラファキシンなどがあるが、これらに限定されない。 選択的セロトニン再摂取阻害物質は、化学化合物それ自体と、薬学的に許容可能なその塩類として定義される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
麻酔をかけた幾つかの動物(下記参照)の呼吸についてのセロトニンまたはセロトニン類似体の効果に関するこれまでの研究において、様々な応答が実証されている。 例えば、セロトニンの投与によって、呼吸数の増大を招くと共に、ウサギでの一回呼吸量は減少する一方で、イヌでの一回呼吸量が増大することが示されている[Matsumoto, Arch. Int Pharmacodyn. Ther., 254: 282-292 (1981); Armstrong et al., J. Physiol. (Lord.), 365: 104 P (1985); Bisgard et al., Resp. Physio. 37: 61-80 (1979); Zucker et al. Circ. Res. 47: 509-515 (1980)]。 ネコに関する研究において、セロトニンを投与することで、無呼吸に先駆けて時折に換気亢進を招いたり [Black et al., Am. J. Physiol., 223: 1097-1102 (1972); Jacobs et al., Circ. Res., 29: 145-155 (1971)]、あるいは即座に無呼吸状態になった後に、急速浅呼吸に移行することが示されている[Szereda-Przestaszewska et al., Respir. Physio., 101: 231-237 (1995)]。
【0033】
ネコに関する研究において、選択的5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体アゴニストである2-メチル-5-ヒドロキシトリプトアミンを投与したところ、無呼吸に至ったことが示されている[Butler et al. Br. J. Pharmacol., 94: 397-412 (1988) ]。 セロトニン、2-メチル-5-ヒドロキシトリプトアミンまたは5-ヒドロキシトリプトアミン2受容体アゴニストである高用量のa-メチル-5-ヒドロキシトリプトアミンを静脈内に投与したところ、一過性の無呼吸に至り、また、無呼吸の時間も用量依存的に増大したことが示されている。 この応答は、選択的5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体アンタゴニストであるGR38032F(1,2,3,9-テトラヒドロ-9-メチル-3-[(2-メチルイミダゾール-1-イル)メチル]カルバゾール-4-オン、塩酸塩、二水和物)[Butler et al. Br. J. Pharmacol., 94: 397-412 (1988); Hagan et aL, Eur. J. Pharmacol., 138: 303-305 (1987)]ならびに、5-ヒドロキシトリプトアミン2受容体アンタゴニストであるケタンセリンおよびメチセルジド [Yoshioka et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 260: 917-924 (1992)]によって顕著に拮抗される。 新生ラットに、中枢セロトニン生合成を促すセロトニン前駆対L-トリプトファンを投与したところ、閉塞性無呼吸を再発した後に、しばしば中枢性無呼吸に至ったことが示されている[Hilaire et al., J. Physio., 466: 367-382 (1993); Morin, Neurosci. Lett., 160: 61-64 (1993)]。
【0034】
上記研究は、無呼吸状態の発生過程でのセロトニンの関与に関する重要な情報を提供してはいるが、上述したように、それら研究のすべてに共通して認められる一つの重要な問題点は、麻酔状態の動物を用いていることであり、それによって得られた結果が、特定のセロトニンアゴニストまたはアンタゴニストに関与しない状態、すなわち、麻酔または麻酔に起因する不正常な生理学的状態が関与する相互作用が除外できていないことにある。
【0035】
セロトニン受容体の活性によって、ラットにおける自発的睡眠関連中枢性無呼吸も増進されることが報告されている[Mendelson et al., Physio. Behav., 43: 229-234 (1988);Sato et al., Am. J. Physio., 259: R282-R287 (1990); Monti et al., Pharmacol. Biochem. Behav., 125-131 (1995); Monti et al., Pharmacol. Biochem. Behav., 53: 341-345 (1996); Thomas et al,. J. Appl. Physio., 78: 215-218 (1992); Thomas et al., J. Appl. Physio., 73: 1530-1536 (1995); Carley et al., Sleep, 19: 363-366 (1996) ; Carley et al., Physiol. Behav., 59: 827-831 (1996); Radulovacki et al., Sleep, 19: 767-773 (1996); CHRISTON et al., J. Appl. Physiol., 80: 2102-2107 (1996)]。 この仮説を検証するために、NREM睡眠時およびREM睡眠時の自発的無呼吸の発現を、セロトニン受容体でブロックして阻害できるかどうかを見極めるべく、自由に活動している動物について、セロトニンアンタゴニストの効果を確認するための実験を行った。 また、末梢セロトニン受容体での増大したセロトニン活性が、睡眠時無呼吸を増進するかどうかを見極めるべく、自由に活動している動物について、セロトニンおよびセロトニンアンタゴニストの一方または双方の効果を確認するための実験も行った。
【0036】
以下の実施例では、非急速眼球運動(NREM)睡眠時の他、とりわけ急速眼球運動(REM)睡眠時の中枢性無呼吸の抑制に関する、セロトニン受容体アンタゴニスト、特に、GR38032Fの投与によって得られる効果について記載している。 この効果は、呼吸活力の増大には関連していたが、試験で用いた用量範囲内では心臓血管に変化を及ぼさなかった。
【0037】
また、以下の実施例では、セロトニン受容体アンタゴニスト、特に、GR38032Fの投与によって完全に拮抗された自発的無呼吸発現の誘発に関するセロトニン投与の効果についても記載している。
【0038】
さらに、以下の実施例では、睡眠関連呼吸障害を適切に予防または緩和するための単一薬剤またはこれら薬剤の組み合わせとして好適な薬理学的処方、すなわち;
(a)5-ヒドロキシトリプトアミン2または5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体サブタイプアンタゴニスト活性の一方または双方を有する薬剤またはこれら薬剤の組み合わせ;
(b)5-ヒドロキシトリプトアミン2または5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体サブタイプアンタゴニスト活性の一方または双方と、5-ヒドロキシトリプトアミン1または5-ヒドロキシトリプトアミン2受容体サブタイプアゴニスト活性の一方または双方とを兼ね備えた薬剤またはこれら薬剤の組み合わせ;または
(c)5-ヒドロキシトリプトアミン2または5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体サブタイプアンタゴニスト活性の一方または双方と、α2アドレナリン作用性受容体サブタイプアンタゴニスト活性とを兼ね備えた薬剤またはこれら薬剤の組み合わせ、についても記載している。
【0039】
本願発明の他の実施例ならびに実施態様は、当業者からしてみれば自明の事項である。
【0040】
本願発明の十分な理解を図るべく、以下に例示のみを目的とした実施例を記載したが、この記載に基づいて、本願発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0041】
実施例1には、セロトニンアンタゴニストまたはアゴニストの一方または双方で処置し、次いで、生理学的記録および試験に供する動物の作製についての記載がなされている。
【0042】
実施例2には、処置動物およびコントロール(対照)動物の生理学的記録方法と、セロトニンアンタゴニストの投与によって得られた結果についての記載がなされている。
【0043】
実施例3には、セロトニンに続いてセロトニン受容体アンタゴニストを投与して得られた結果についての記載がなされている。
【0044】
実施例4には、特異的なセロトニン関連薬理学的活性を有し、かつ睡眠関連呼吸障害を効果的に抑制または予防するために利用される薬剤または組成物についての記載がなされている。
【0045】
以下の実施例は、本願発明の実施態様を例示するものでしかなく、本願発明を限定的に解釈することを意図するものでない。
【実施例】
【0046】
実施例1
生理学的試験および生理学的記録に供する動物の作製
雄の成体 Sprague-Dawley ラット(Sasco-King社、ウィルミントン、マサチューセッツ州:通常は試験区当たり8匹;300g)を、餌料と水を自由に摂取できる独立したカゴに収容して、12時間光源下(8時〜20時)/12時間暗黒下(20時〜8時)の環境下で1週間飼育した。 1週間の環境順化の後、以下の外科的処置を動物に施した。
【0047】
脳電図(EEG)記録のための皮膚用電極と筋電図(EMG)記録のための頚部筋肉用電極を移植するために、ケタミン(Vedco社、セントジョゼフ、ミズーリ州;100mg/ml)とアセチルプロマジン(Vedco社、セントジョゼフ、ミズーリ州;10mg/ml;4:1、体積/体積)との1ml/体重kgの混合物を用いて、環境順化した動物に麻酔をかけた。 外科的に頭蓋表面を露出せしめ、そして、20%の過酸化水素水、次いで、95%のイソプロピルアルコール溶液で洗浄を行った。 次に、歯科用フッ化ナトリウム(FLURA-GELO、Saslow Dental社、マウントプロスペクト、イリノイ州)を塗布して、頭頂皮質より上部にある頭蓋を硬化せしめて、5分間、そのままの状態とした。 そして、頭頂皮質より上部にある頭蓋から、フッ化物混合物を除去した。 導線が添着された4本のステインレス鋼製小ネジから構成されている脳電図用電極を、頭頂皮質を覆う硬膜上に載置するために頭蓋に装着した。 薄層のJUSTI樹脂セメント(Saslow Dental社、マウントプロスペクト、イリノイ州)を塗布して、(頭蓋に移植されたネジの)ネジ頭、それに、移植片の接着をさらに促すためにその周囲の頭蓋を樹脂セメントで覆った。 球状部を具備した2本の導線からなる筋電図電極を、左右双方の頚部筋肉に挿入した。 すべての導線(すなわち、脳電図用導線および筋電図導線)を、小型コネクター(39F1401、Newark Electronics社、シャウバーグ、イリノイ州)に、はんだ付けした。 最後に、歯科用セメントで覆った頭蓋に記録機器を固定した。
【0048】
外科処置を終えた後、パルス間隔から導かれる血圧(BP)と心拍(HP)をモニターする無線発信機(TA11-PXT、Data Sciences International社、セントポール、ミネソタ州)を埋め込むための外科的処置に先駆けて、すべての動物の養生のために1週間を充てた。 動物に(上記したようにして)麻酔をかけて後、突状部から骨盤にかけて剃毛した。 剃毛箇所全体を、ヨー素で洗浄し、次いで、アルコールと生理食塩水で濯いだ。 腹部中線に4〜6cmの切開を入れて、大動脈の分岐点から腎臓部動脈に至る箇所を良く見えるようにした。 腹部内部を露出するために開創器を用い、そして、生理食塩水で湿らせたガーゼスポンジで腸を保持した。 滅菌済綿を具備したアプリケーターを用いて、大動脈を、その周囲にある脂肪や結合組織から切り離した。 3-0絹製縫合糸を大動脈の下方に置き、そして、縫合糸を引き締めて血流を制限した。 そして、移植片(Tal1-PXT)を鉗子で保持しつつ、傾斜端部に曲折箇所が設けられた21-ゲージ針を用いて、頭蓋方向に分岐している大動脈に穿孔を入れた。 案内子としてのゲージ針に沿って、カテーテルの先端を挿入し、そして、薄膜のBPセンサー部が脈管内に到達するまで挿入を継続した。 最後に、1滴の組織結合剤(VETBONDG(登録商標)、3M、ミネアポリス、ミネソタ州)を穿孔箇所に適用し、次いで、カテーテル挿入後の穿孔箇所を封孔するために、正方形のセルロース繊維片(約5mm2)で覆った。 3-0絹製縫合糸で、無線機能を備えた移植片を腹部に取り付け、次いで、切開部分を層状に縫合して閉じた。 二度目の外科処置を終えた後、セロトニン受容体アンタゴニストの投与と、それに続く、生理学的記録に先駆けて、動物を改めて1週間の期間をかけて養生した。
【0049】
実施例2
生理学的記録および無呼吸の抑制
各動物での生理学的パラメーター(下記を参照されたい)を、各動物について少なくとも3日の期間を開けて、任意の順序で記録を2回行った。 各記録の15分前に、オンダンセトロン(GR38032F;1,2,3,9-テトラヒドロ-9-メチル-3-[(2-メチルイミダゾール-1-イル)メチル]カルバゾール-4-オン、塩酸塩、二水和物;GLAXO Wellcome社、リサーチトライアングルパーク、ノースカロライナ州)のIMG/KGおよび生理食塩水(コントロール)のいずれかを、各動物に(LML/KG腹膜内軟塊物注射で)全身投与した。 多用途記録計での計測を、10時〜16時の間に実施した。
【0050】
一室型の体積記録計(PLYUN1R/U;Buxco Electronics社、シャロン、コネチカット州;6インチ×10インチ×6インチの寸法)、すなわち、2L/分の流速の新鮮空気の偏向流で換気されたチャンバー内に、各動物を解放し、そこで動物の呼吸を記録した。 頭部の埋設物から生体電子活動度の信号を取得するために、動物側のコネクターに埋設され、かつ被覆された引込口に至るケーブルを利用した。 呼吸、血圧、EEG活動度およびEMG活動度をビデオモニターに表示すると同時に、100速度/秒でデジタル化して、コンピューターディスク(Experimenter's Workbench;Datawave Technologies社、ロングモント、コロラド州)に保存した。
【0051】
Bennington et al. [Sleep, 17: 28-36 (1994)]に記載の方法に従って、二頭頂骨EEGと項部EMG信号を用いて、睡眠状態と覚醒状態を、10秒間にわたって評価した。 このソフトウェアは、覚醒(W)については、高周波の低振幅EEGと共に高いEMGトーンを示し、NREM睡眠については、増大したスピンドル状のシータ活性と共に低減したEMGトーンを示し、そして、REM睡眠については、シータ活性とデルタ活性の比率が小さく、またEMGトーンを示さない。 睡眠効率は、NREM睡眠またはREM睡眠の段階にある時間として記録されたすべての期間が占める割合(%)として表された。
【0052】
GR38032Fの効果を検証するために、自発的睡眠時無呼吸に関して生理学的に許容された動物モデル[ラット;Monti, et al., Pharamcol. Biochem. Behav., 51: 125-131 (1995)]を用いた。 具体的には、少なくとも2.5秒間の呼吸行動の停止として定義される睡眠時無呼吸を、各記録時において評価して、次いで、そこで認められたNREM睡眠またはREM睡眠での睡眠段階との関連づけを行った。 2.5秒の所要時間とは、少なくとも2回の呼吸が「欠落」することを意味しており、このことは、ヒトにおける10秒間の無呼吸期間が、2〜3回の呼吸の欠落を意味することと同義である。 閉鎖または閉塞した気道に関連する換気機能の低下によって、体積記録計の信号値が上昇しているので、そこで検出された状態は、呼吸の途切れというよりもむしろ、中枢性無呼吸であるといえる。 ある段階での1時間あたりの無呼吸として定義される無呼吸指数(AI)によって、NREM睡眠およびREM睡眠が個別に決定される。 ANOVAを用いた反復計測によって、睡眠段階(NREM対REM)と注射(コントロール対GR30832F)との効果を試験した。 Fisherの保証最小有意差(PLSD)を用いて多角的比較を制御した。 加えて、各呼吸の時期と呼吸量については、自動解析装置(Experimenters' Workbench;Datawave Technologies社、ロングモント、コロラド州)で評価した。 各動物での覚醒時から6時間のコントロール記録において得られた呼吸数(RR)と分換気(MV)の平均値をコンピュータで算出し、それら動物の睡眠期間中およびGR38032F投与期間中での呼吸を正規化するためのベースラインとして用いた。 また、別法として非パラメーター的(クラスカル-ワリス)解析によって、ANOVAを行った。 パラメーター的または非パラメーター的ANOVAを用いて得られた結果は、いずれの事例においても同一であった。
【0053】
同様のソフトウェア(Experimenter's Workbench;Datawave Technologies社、ロングモント、コロラド州)を用いて、血圧波形の解析、すなわち、各記録期間帯での各脈拍、収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)、それにパルス間隔を計測した。 パルス間隔によって、脈拍の間隔を介して心拍が明らかとなった。 平均血圧(MBP)は、収縮期血圧(SBP)の加重平均値と各脈拍に関する拡張期血圧(DBP)から、MBP=DBP+(SBP−DBP)/3の式に従って求めた。 また、各脈拍に関するパラメーターは、睡眠時/覚醒時およびその記録時間に基づいて分類した。
【0054】
多用途記録計を用いて得られた、6時間のNREM睡眠期間中の1時間当たりの無呼吸に対するセロトニンアンタゴニストGR38032Fの投与結果は、治療効果または6時間の経時的効果(二重ANOVA検定)のいずれにおいても、顕著な効果は認められなかったことを示した(図1を参照)。 しかしながら、対偶式t-検定(各検定でのp<0.01)を行ったところ、最初の2時間の記録時間内において無呼吸の顕著な抑制が認められた。 図2に記載したように、この呼吸効果は、最初の2時間でのGR38032FによるNREM睡眠の顕著な抑制と関連していた。 6時間の記録時間においてNREM睡眠が占める割合は、コントロール試験区の方が、GR38032Fを投与したラットよりも多かったが、記録時間の最初のわずか2時間で、統計上の有意的減少が認められた(p<0.001)。
【0055】
REM睡眠時無呼吸に関するGR38032Fの顕著な抑制効果も、6時間の記録時間を通して認められた(二重ANOVA検定での薬剤効果のp=0.01;図3を参照)。 この効果は、記録時間の最初の4時間において特に顕著で、その間は、いずれの動物も、REM睡眠時の自発的無呼吸を引き起こさなかった。 この効果は、最初の4時間でのREM抑制の単なる反射作用ではなかった。
【0056】
図4に表した結果は、GR38032Fが、REM睡眠に対して顕著な影響を及ぼさないことを示している。 薬剤で処置した動物でのREM睡眠の割合は、コントロールで処置した動物でのREM睡眠の割合よりも小さかったが、全記録時間またはその一部のいずれにおいても、統計上の有意差には至らなかった。
【0057】
W(覚醒)、NREM(非急速眼球運動)睡眠およびREM(急速眼球運動)睡眠での正規化分換気に関するGR38032Fの投与結果(図5を参照)は、すべての試験区において、換気が顕著に刺激されていることを示している(各試験区でのp=0.03)。 最後に、これら結果は、測定した (覚醒、NREM睡眠およびREM睡眠での平均血圧および心拍)心臓血管関連値に対して、何らの影響も及ぼしていないことを示していた(各値でのp>0.1、表1を参照)。
【0058】
【表1】

【0059】
全般的にみて、これら結果は、セロトニン作用系を操作することによって、REM睡眠およびNREM睡眠の双方での中枢性無呼吸の発生に対して実質的な影響が及ぶことを指し示している。 特に、本願発明での知見は、5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体アンタゴニストの全身投与が、自発的無呼吸の出現を抑制し、また、腹膜内へ注射をしてから少なくとも4時間は、REM関連無呼吸が完全に消失することを指し示している。 この無呼吸抑制は、覚醒時および睡眠時の双方において分換気の増大を招く全身性の呼吸刺激と関連していた。 最大の呼吸値が得られて後の最初の2時間の間でさえも、呼吸や血圧に変化を及ぼさない用量で、このような顕著な呼吸効果が認められた。
【0060】
当業者であれば、睡眠関連呼吸障害を予防または緩和するために、(a) ケタンセリン、シナンセリン、LY-53,857、メテルゴリン、LY-278,584、メチオセピン、P-NPPL、NAN-190、ピペラジン、SB-206553、SDZ-205,557、3-トロパニル-インドール-3-カルボン酸塩、3-トロパニル-インドール-3-カルボン酸メチオディド、メチセルギド(Research Biochemicals社、ナティック、マサチューセッツ州);(b) リスペリドン(Janssen Pharmaceutica社、ティトゥスビル、ニュージャージー州);(c) シプロヘプディン、クロザピン、ミアンセリン、リタンセリン(Sigma Chemical社、セントルイス、ミズーリ州);(d) オンダセトロン、グラニセトロン(SmithKline Beecham社、キング オブ プラシア、ペンシルヴァニア州)、ザトセトロン、トロピセトロン、ドラセトロンおよびハイドロドラセトロン;(e) ロキサピン、オランザピン、クロルプロマジン、ハロペリドール、r(+)オンダンセトロン、シスアプライド、ノルシスアプライド、(+)シスアプライド、(-)シスアプライド、(+)ノルシスアプライド、(-)ノルシスアプライド、デスメチルオランザピン、2-ヒドロキシメチルオランザピン、1-(2-フルオロフェニル)-3-(4-ヒドロキシアミノエチル)-プロプ-2-エン-1-オン-O-(2-ジメチルアミノエチル)-オキシム;(f) メスカリン、オキセトロン、ホモクロルシクリジンおよびペルラピン、それに、その他のセロトニン受容体アンタゴニストまたはその四半分化体または薬学的に許容可能な塩類を、遊離塩基または四級化した形態のセロトニン受容体アンタゴニストとして使用するであろうが、これらに限定されない。 さらに、上記した結果が、他の哺乳動物、特に、霊長類動物(例えば、ヒト)にも当てはまることは、当業者であれば、容易に想到できるであろう。
【0061】
実施例3
睡眠時無呼吸の誘発と抑制
セロトニンまたはセロトニン類似体を麻酔をかけた動物に投与することで、呼吸応答の変化が認められた(上記した発明の詳細な説明を参照)。 実施例2に示したように、選択的5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体アンタゴニストであるGR38032Fの1mg/kgを腹膜内に投与することで、自発的中枢性無呼吸が抑制された。 この効果は、REM睡眠において特に顕著であり、REM睡眠期間中、注射をしてから少なくとも4時間は、無呼吸現象は全く認められなかった。 GR38032Fによる無呼吸抑制効果は、呼吸活動も同時に高めるが、試験で用いた用量では、血圧および心拍での変化は認められなかった。
【0062】
通常の睡眠時でのGR38032Fによる自発的無呼吸の抑制(実施例2を参照)は、GR38032Fによって緩和される中枢性無呼吸が、選択的5-HT3受容体アゴニストである、5-ヒドロキシトリプトアミンおよび2-メチル-5-ヒドロキシトリプトアミンで誘発された麻酔状態のラットを用いた従来の研究内容とも符合している。 5-ヒドロキシトリプトアミンは、血液-脳関門(BBB)を通過する性質を欠いているため、(従来の研究から得られた)これら結果は、末梢性5-ヒドロキシトリプトアミン受容体、特に、5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体によってもたらされる刺激によって、中枢性無呼吸が引き起こされることを指し示している。 麻酔状態の動物に関する先行技術での研究内容、それに、自由に動き回るラットに対してGR38032Fを投与した(上記実施例2に記載の)我々の研究を鑑みて、自発的睡眠関連中枢性無呼吸の亢進に関する末梢性5-ヒドロキシトリプトアミン受容体、特に、5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体での増大したセロトニン作用活性、それに、無呼吸の誘発が、5-ヒドロキシトリプトアミン受容体アンタゴニストの投与による拮抗作用に対して感受的であるか否かを検証した。
【0063】
雄の成体 Sprague-Dawley ラット(Sasco-King社、ウィルミントン、マサチューセッツ州:300g)を、餌料と水を自由に摂取できる独立したカゴに収容して、12時間光源下(8時〜20時)/12時間暗黒下(20時〜8時)の環境下で1週間飼育した。 1週間の環境順化の後、実施例1に記載の外科的処置(すなわち、脳電図(EEG)記録のための皮膚用電極と筋電図(EMG)記録のための頚部筋肉用電極の移植、それに、血圧(BP)と心拍(HP)をモニターする無線発信機の移植)を行って、生理学的試験に備えた。 外科処置を終えた後、本実施例での実験に先駆けて、動物を1週間の期間をかけて養生した。
【0064】
各動物について少なくとも3日の期間を開けて、任意の順序で記録を4回行った。 各記録の15分前に、(a) 生理食塩水(コントロール);(b) 0.79mg/kg セロトニン;(c) 0.1mg/kg GR38032F+0.79mg/kg セロトニン;または(d) 0.1mg/kg GR38032Fのいずれかを、無作為の順序で、各動物に(腹膜内注射で)投与した。 GR38032F+セロトニン試験区では、9時30分に0.1mg/kgのGR38032Fが投与され、次いで、9時45分に0.79mg/kgのセロトニンが投与された。 多用途記録計での計測を、10時〜16時の間に実施した。
【0065】
呼吸、血圧、EEG活動度およびEMG活動度のデータを、前出の実施例2に詳述された実験手順に従って、取得および記録した。 実施例2でも言及したように、少なくとも2.5秒間の呼吸行動の停止として定義される睡眠時無呼吸を、各記録時において評価して、次いで、そこで認められたNREM睡眠またはREM睡眠での睡眠段階との関連づけを行った。 2.5秒の所要時間とは、少なくとも2回の呼吸が「欠落」することを意味しており、このことは、ヒトにおける10秒間の無呼吸期間と同義である。
【0066】
分散解析(ANOVA)を用いた反復計測によって、無呼吸指数、呼吸パターン、血圧および心拍に関する、睡眠段階(NREM対REM)と注射(コントロール対セロトニン単独、GR30832F+セロトニンまたはGR30832F単独)との効果を試験した。 Fisherの保証最小有意差(PLSD)を用いて多角的比較を制御した。 また、非パラメーター的(クラスカル-ワリス)解析によって、ANOVAを行った。 パラメーター的または非パラメーター的ANOVAを用いて得られた結果は、いずれの事例においても同一であった。
【0067】
多用途記録計を用いた6時間の計測期間内におけるNREM睡眠での自発的無呼吸の亢進作用について、セロトニン単独(0.79mg/kg)、GR38032F(0.1mg/kg)+セロトニン(0.79mg/kg)またはGR38032F単独(0.1mg/kg)を投与して得られた結果を、図6に示した。 具体的には、NREM睡眠時において、自発的無呼吸指数は、いかなる薬物処置による影響も受けなかった。
【0068】
図7に示したように、REM睡眠時の自発的無呼吸の出現は、コントロールと比較して、セロトニン投与後に顕著に増えていた(>250%の増加)。 この結果は、このような増大現象は、GR38032Fを予め投与することによって解消されることも示唆している。 低用量(0.1mg/kg)のGR38032Fだけをで投与した場合でも、REM睡眠自発的無呼吸に関する効果は認められなかった。
【0069】
表2(6時間の多用途記録計を用いた計測から算出した薬物投与後の覚醒、NREM睡眠およびREM睡眠の割合)に記載の通り、セロトニン単独、GR38032F+セロトニンまたはGR38032F単独を、腹膜内投与しても、睡眠構成に何らの影響も及ばないことが明らかになった。最後に、無処置グループでは、呼吸数、VE、平均血圧、心拍またはPS無呼吸指数に対して顕著な影響が認められた(データ示さず)。
【0070】
【表2】

【0071】
全体として、これら結果は、末梢セロトニン受容体を操作することで、REM睡眠時での中枢性無呼吸の発生に対して影響が及ぶことを示している。 具体的には、これら結果は、セロトニンの全身投与によって、睡眠時の自発的無呼吸の発生が増長されることを示している。 ここで用いたセロトニンの用量では、睡眠、心臓血管関連値、呼吸数またはVEに対する影響は認められなかったが、REM関連自発的無呼吸指数は、>250%に増大していた。 さらに、無呼吸発生のメカニズムが、NREM無呼吸での影響が認められていないことからも、少なくとも部分的に睡眠状態に対して特異的である点にも留意しておくことが肝要である。
【0072】
これら知見は、5-ヒドロキシトリプトアミン3アゴニストおよびアンタゴニストを様々な用量で外的投与することによって、REM睡眠に特異的な無呼吸発現に変化を及ぼすことを実証している。 これら知見は、とりわけ、REM睡眠時の無呼吸の発現調節における、内因性セロトニン作用活性の生理学的役割を示唆するものである。 さらに、セロトニンは、血液-脳関門を通過しないので、セロトニンが、GR38032Fへの物質変換効果を奏することは、末梢神経系での関連性のある受容体の存在を示唆するものである。 さらに、このデータは、無呼吸に関するセロトニンの超生理学的レベルの作用が、低用量(0.1mg/kg)のGR38032Fでの前処置において受容体で媒介されており、そして、この作用が、無呼吸を含めた検証したいずれの要素に対しても独立した効果を及ぼさず、また、無呼吸発現に関する外因性セロトニンの効果を完全にブロックすることを示唆している。
【0073】
上記データを考慮すれば、セロトニンを投与して認められた無呼吸増進効果をもたらす末梢作用部位は、迷走神経の多神経節であると考えられる。 具体的には、ベツォルト-ヤリッシュ逆流での無呼吸要素が、ネコの多神経節でのセロトニン作用[Jacobs et al., Circ. Res., 29: 145-155 (1971), Sampson et al., Life Sci., 15: 2157-2165 (1975), Sutton, Pfllugers Arch., 389: 181-187 (1981)]、また、ラットの多神経節でのセロトニン作用[Yoshioka et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 260: 917-924 (1992) および McQueen et al., J. Physiol, 5073: 843-855 (1998)]に起因している、と幾つかの研究では結論付けられている。 セロトニンまたは5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体アゴニストを静脈投与することで、無呼吸応答に密接に関与する肺迷走神経受容体も刺激される[McQueen et al., J. Physio., 5073: 843-855 (1998)]。
【0074】
動物種の相違はあるかもしれないが[Black et al., Am. J. Physio., 223: 1097-1102 (1972)]、ラットを用いた研究によれば、迷走神経での信号伝達に対するセロトニンの影響に加えて、セロトニンは、頸動脈化学受容体からも信号を有意に引き出し [McQueen et al., J. Physio, 5073: 843-855 (1998); Sapru et al., Res. Comm. Chem. Pathol. Pharmacol., 16: 245-250 (1977); Yoshioka, J. Pharmacol. Exp. Ther., 250: 637-641 (1989) および Yoshioka et al., Res. Comm. Chem. Pathol. Pharmacol. 74 : 39-45 (1991)]、また、VEを増大せしめる[McQueen et al., J. Physio., 5073: 843-855 (1998); Sapru et al., Res. Comm. Chem. Pathol. Pharmacol., 16: 245-250 (1977)]ことが実証されている。 無呼吸において化学受容体が介在する効果の可能性は排除できないが、McQueen et al., J. Physiol., 5073: 843-855 (1998)に記載のデータは、麻酔状態のラットでの無呼吸発生が、化学受容体の活性によって阻害はされているものの、静脈内のセロトニンが、迷走神経経路で無呼吸を引き起こすことを明確に示している。
【0075】
麻酔状態の動物においてセロトニンで誘発したベツォルト-ヤリッシュ逆流は、無呼吸と徐脈を伴う。 ここで用いた用量のセロトニンでは、6時間の記録期間において、心拍数または平均血圧のいずれにも変化を及ぼさなかった。 変動率で評価した拍動単位の心拍数と血圧値の変化についても、ここで用いた用量のセロトニンでは影響が認められなかった。 ここで認められた心臓血管の分離やセロトニンに対する呼吸応答は、無呼吸発現に伴う変化には、圧受容体が媒介していなかったことを示唆している。
【0076】
麻酔状態の動物でのベツォルト-ヤリッシュ逆流とREM睡眠時のセロトニンで誘発した無呼吸とは、同じ現象ではないが、相互に同様のメカニズムが関与しているものと考えられる。 セロトニン受容体を、外因性手段、すなわち、セロトニン作用性アゴニストまたはアンタゴニストのいずれかで意図的に操作することで、REM睡眠時の自発的無呼吸の発現を増幅または抑制することができる。 しかしながら、1mg/kgのGR38032Fが、REM無呼吸を顕著に抑制したとする我々の観察結果は、無呼吸発現の末梢調節における5-ヒドロキシトリプトアミン2またはその他の5-ヒドロキシトリプトアミン受容体サブタイプの役割を否定するものではなく、実際のところ、本願発明は、5-ヒドロキシトリプトアミン2および5-ヒドロキシトリプトアミン3を単独で、または組み合わせて使用すること、そして、2型および3型受容体拮抗作用を奏するセロトニンアンタゴニストの使用についても意図している(実施例4を参照)。
【0077】
ヒトの場合と同様、ラットでの無呼吸の頻度は、深い徐波睡眠、浅いNREM睡眠、REM睡眠の順で高まることが、よく知られている[Mendelson et al., Physiol. Behav., 43: 229-234 (1988); Sato et al., Am. J. Physio., 259: R282-287 (1990); Monti et al., Pharmacol. Biochem. Behav., 51: 125-131 (1995); Monti et al., Pharmacol. Biochem. Behav., 53: 341-345 (1996); Thomas et al., J. Appl. Physio., 73: 1530-1536 (1992) および Thomas et al., J. Appl. Physiol., 78: 215-218 (1995)]。 REM睡眠時の無呼吸発現の出現頻度の高さは、この睡眠状態での呼吸の変化に関係しているのかもしれない。 REM睡眠時には、通常、呼吸が浅くかつ不規則となり[Orem et al., Respir. Physio., 30: 265-289 (1977); Phillipson, Annu. Rev. Physio., 40: 133-156 (1978); Sieck et al., Exp. Neurol., 67: 79-102 (1980) および Sullivan, In: Orems et al., eds. , "Physiology in Sleep," Academic Press, New York, NY, pp. 213-272 (1980)]、また、VE値は最低になる[Hudgel et al., J. Appl. Physiol., 56: 133-137 (1984)]。 自律的活性の極度の一時的変化を伴う呼吸量の低下[Mancia et al., In; Orem et al., eds., "Physiology in Sleep," Academic Press, New York, NY, pp. 1-55 (1980)]の遠因は、無呼吸による中断を受けやすいREM睡眠時の呼吸維持力にもある。 よって、REM無呼吸発生における末梢神経系でのセロトニン活性が、とりわけ、迷走神経での持続的または一時的な意識的呼吸活動のセロトニン作用的調節に起因している可能性がある。 従って、REM睡眠時に、脳幹呼吸統合野による情報導入量が影響を受ける可能性がある。
【0078】
全体として、本明細書で示した結果は、REM睡眠時にセロトニンを末梢投与することで、受容体が媒介して、自発的無呼吸の悪化を招くことを指し示している。 また、これら知見は、標準的な条件下で睡眠時無呼吸の発現調節における、末梢神経系での内因性セロトニンの生理学的役割も指し示している。
【0079】
実施例4
睡眠時無呼吸の抑制または予防
本願明細書で示したデータ(実施例2〜3を参照)から明らかなように、部位および受容体サブタイプの双方に対する特異性に富んだ無呼吸の発生において、セロトニンは重要かつ密接な役割を果たす。 具体的には、無呼吸を抑制するセロトニン受容体アンタゴニストの効力は、重要な標的部位として表れる迷走神経の多神経節を含む末梢神経系での、その活性度に基づくものである。 この部位にある5-ヒドロキシトリプトアミン2および5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体は、麻酔状態の動物でのセロトニン誘発無呼吸に明確に関与している[Yoshioka et al., J. Pharmacol. Exp. Therp., 260: 917-924 (1992)]。 これら従来の知見に関連して、(末梢神経系へのセロトニンの投与が、睡眠関連無呼吸を悪化させるという)本明細書に記載のデータは、睡眠時無呼吸の病因における、両タイプの多神経節セロトニン受容体の重要性を示唆するものである。 さらに、セロトニンで誘発した無呼吸の発現増加は、5-ヒドロキシトリプトアミン3アンタゴニストであるGR38032Fの低用量でもって完全にブロックされた。 この結果は、先に実証したGR38032Fによる無呼吸の抑制(実施例2を参照)が、おそらくは、末梢神経系での活性に起因するものであることを示唆するものである。
【0080】
従って、上記事項を鑑みれば、2型または3型セロトニン受容体拮抗作用を奏する薬理学的薬剤を単独で、または組み合わせて、あるいは2型および3型セロトニン受容体拮抗作用を奏する薬剤を全身投与することで、睡眠関連呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群、未熟呼吸、シェーン・ストークス呼吸、睡眠関連低換気症候群)は、効果的に予防または抑制されるであろう。
【0081】
睡眠関連呼吸障害の予防または抑制のための効果的な処置方法として、5-ヒドロキシトリプトアミン2または5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体アンタゴニストを単独で、または組み合わせて全身投与する方法がある。 好適な実施態様によれば、セロトニン受容体アンタゴニストは、末梢神経系においてのみ活性を呈し、および/または血液-脳関門を通過しえない。 さらに好適な実施態様によれば、セロトニン受容体アンタゴニストは、5-ヒドロキシトリプトアミン2および5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体サブタイプ拮抗作用の双方の拮抗作用を奏する。
【0082】
睡眠関連呼吸障害の現在の薬理学的治療方法も、中枢性神経系、特に、脳幹でのセロトニンアゴニスト効果を介して無呼吸の抑制に関与している。 実際のところ、呼吸および上気道の活動を刺激するセロトニンの作用に鑑みて、セロトニンの薬効を高める薬剤が、睡眠時無呼吸症候群の薬理学的処置のために当初より用いられている。 初期の研究報告では、セロトニンの前駆物質であるL-トリプトファンが、睡眠時無呼吸症候群に関して有益な効果をもたらすであろうことを示唆している [Schmidt, Bull. Eur. Physiol. Respir., 19: 625-629 (1982)]。 最近になって、共に選択的セロトニン再摂取阻害物質(SSRIs)であるフルオキセチン[Hanzel et al., Chest., 100: 416-421 (1991)]およびパロキセチン[Kraiczi et al., Sleep, 22: 61-67 (1999)]が、睡眠時無呼吸症候群の患者すべてではないにしても、一部に対して有益であったことが実証されている。 加えて、セロトニンの前駆物質およびセロトニン再摂取阻害物質の組み合わせによって、イングランドブルドッグモデルでの睡眠時無呼吸症候群に起因する睡眠障害呼吸が軽減されている[Veasey et al., Sleep RES., A529; 1997 および Veasey et al., Am. J. Resp. Crit. Care MED., 157: A655 (1997)]。 にもかかわらず、初期の研究成果を土台にした現在の研究をもってしても、セロトニンの薬効を高める薬剤は未だ実現されていない。
【0083】
前述したセロトニンの薬効を高める薬剤がもたらす効果は、中枢神経系に与える効果に基づいた、セロトニン前駆物質およびセロトニン再摂取阻害物質の無呼吸の治療での利用可能性を示唆している。 したがって、末梢神経でのセロトニン再摂取阻害物質によるセロトニンの薬効改善効果が未確認のため、これら化合物に関して、無呼吸の治療における再現可能な効果は未だ実証されていない。 実際のところ、呼吸を刺激する特異的な5-ヒドロキシトリプトアミン1Aアゴニストであるブスピロン[Mendelson et al., Am. Rev. Respir. DIS., 141: 1527-1530 (1990)]は、睡眠時無呼吸症候群の5名の患者の内の4名の患者の無呼吸指数を減少せしめ [Mendelson et al., J. Clin. Psychopharmacol., 11: 71-72 (1991)] 、また、1名の小児の術後の持続性吸息を解消した[Wilken et al., J. Pediatr., 130: 89-94 (1997)]ことが、報告されている。 ブスピロンは全身的に作用するが、末梢神経系での5-ヒドロキシトリプトアミン1受容体が、無呼吸の発生に関して果たす役割は報告されていない。 ブスピロンが実現する適度の無呼吸抑制は、末梢神経系でのセロトニン作用性効果とは異質の中枢神経系に作用する効果に基づくものである。
【0084】
睡眠時無呼吸症候群を治療するために、フルオキセチンまたはパロキセチンのようなセロトニン再摂取阻害物質を用いる理由の一つは、これら物質が有している上気道の活動を促す性質にある。 第四脳質の床部[Rose et al., Resp.. Physio., 101: 59-69 (1995)]または舌下運動核[Kubin et al., Neurosci. Lett., 139: 243-248 (1992)]にセロトニンを適用することで、5-ヒドロキシトリプトアミン2受容体が優勢に媒介していると考えられる効果によって、ネコの上気道の活動が促される。 これとは逆に、5-ヒドロキシトリプトアミン2受容体アンタゴニストをイングランドブルドッグに投与したところ、上気道筋肉の電気的活動度が低下して、上気道の断面積が消失してしまい、閉塞性無呼吸を招くに至っている[Veasey et al., Am. J. Crit. Care Med., 153: 776-786 (1996)]。 これら観察結果は、セロトニン再摂取阻害物質で処置した患者の一部に認められる、睡眠不調呼吸の改善策を提供するものである。
【0085】
本願明細書で示したデータ(実施例2〜3)ならびに前出の説明にも関連するが、
(a) セロトニン2型または3型受容体拮抗作用のいずれかを奏する薬剤またはその組み合わせ(これら薬剤の単独または組み合わせでの使用)、および/または5-ヒドロキシトリプトアミン1または5-ヒドロキシトリプトアミン2受容体アゴニストのいずれかとの組み合わせ;
(b) セロトニン2型および3型受容体拮抗作用の双方を奏する単一または複数の薬剤、またはその組み合わせと、5-ヒドロキシトリプトアミン1または5-ヒドロキシトリプトアミン2受容体アゴニストのいずれかとの組み合わせ;または
(c) 好適な拮抗様および作動様薬理学的プロフィールを実現する薬剤(すなわち、上記した受容体サブタイプに対して拮抗的かつ作動的である薬剤)、
を全身投与することで、睡眠関連呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群、未熟呼吸、シェーン・ストークス呼吸、睡眠関連低換気症候群)を、効果的に予防または抑制することができる。
【0086】
好ましい実施態様として以下の薬剤、すなわち;
(a) セロトニンアゴニストが、中枢性セロトニン作用だけを呈する薬剤またはその組み合わせ;
(b) セロトニンアゴニストが、中枢性5-ヒドロキシトリプトアミン2作用だけを呈する薬剤またはその組み合わせ;
(c) セロトニンアンタゴニストが、末梢作用だけを呈し、また、セロトニンアゴニストが、中枢性セロトニン作用だけを呈する薬剤またはその組み合わせ;
(d) 中枢神経系セロトニンの放出を誘発する能力を備え、かつ上記した拮抗様プロフィール(すなわち、5-ヒドロキシトリプトアミン2および5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体アンタゴニストの双方)を有する薬剤またはその組み合わせ;または
(e) 中枢神経系セロトニンの放出を誘発する能力を備え、かつ末梢拮抗性効果のみを呈する薬剤またはその組み合わせ、がある。
【0087】
睡眠関連呼吸障害を予防または緩和するために、当業者が想到するであろう多くのセロトニン受容体アゴニストとして、8-OH-DPAT(8-ヒドロキシ-2-(ジ-n-プロピルアミノ)テトラリン、スマトリプタン、L694247(2-[5-[3-(4-メチルスルフォニルアミノ)ベンジル-1、2、4-オキサジアゾール-5-イル]-1H-インドール-3イル]エタナミン)、ブスピロン、アルニティダン、ザロスピロン、イプサピロン、ゲピロン、ゾルミトリプタン、リサトリプタン、311C90、α-ME-5-HT、BW723C86(1-[5(2-チエニルメトキシ)-1H-3-インドリル[プロパン-2-塩酸アミン)、MCPP (m-クロロフェニルピペラジン)などが、セロトニン受容体アンタゴニストとの組み合わせにおいて使用できるが、これらに限定されない。
【0088】
セロトニン前駆物質またはセロトニン再摂取阻害物質による作用以外の薬理学的メカニズムも、中枢神経系セロトニン活性を高めるために活用することができる。 実のところ、少なくとも一つのメカニズムが、中枢神経系において選択的標的となりうるセロトニンの放出量の増大を可能にする。 具体的には、脳幹セロトニン作用性ニューロン(ヘテロ受容体)上にあるシナプス前部のα2アドレナリン作用性受容体の拮抗作用が、セロトニン放出を促す。 選択的5-ヒドロキシトリプトアミン2および5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体アンタゴニストが、シナプス前部のα2アドレナリン作用性受容体およびシナプス後部の5-ヒドロキシトリプトアミン2および5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体をブロックすることが知られている[deBoer, J. Clin. Psychiatr., 57 (4): 19-25 (19960; Devane, J. Clin. Psychiatry., 59 (20): 85-93 (1998); および Puzantian, Am. J. Heatlh-Syst. Pharm., 55: 44-49 (1998)]。 中枢α2受容体に対する薬剤の親和性は、末梢α2受容体の10倍ほど大きい[Puzantian, Am. J. Heatlh-Syst. Phare., 55: 44-49 (1998)]ため、中枢セロトニン放出は、高血圧症のような最小アドレナリン作用性副作用において促される。 このように、これら薬理学的薬剤は、5-ヒドロキシトリプトアミン2A、5-ヒドロキシトリプトアミン2Cおよび5-ヒドロキシトリプトアミン3受容体に対して高い親和性を示すアンタゴニストであるので、その実質的効果は、脳内のシナプス後部の5-ヒドロキシトリプトアミン1の活性を高め、そして、中枢神経系および末梢神経系でのシナプス後部の5-ヒドロキシトリプトアミン2Cおよび5-ヒドロキシトリプトアミン3の活性を低減する。 これら薬理学的効果の各々は、呼吸を刺激し、かつ無呼吸を抑制する。
【0089】
上記事項を鑑みれば、α2アドレナリン作用性アンタゴニスト活性と、セロトニン2型または3型受容体アンタゴニスト活性のいずれかを有する薬理学的薬剤を(を単独で、または組み合わせて)全身投与することで、睡眠関連呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群、未熟呼吸、シェーン・ストークス呼吸、睡眠関連低換気症候群)は、効果的に予防または抑制されるであろう。
【0090】
好ましい実施態様として以下の薬剤、すなわち;
(a) α2アドレナリン作用性アンタゴニスト効果を中枢で呈する薬剤またはその組み合わせ;
(b) セロトニンアンタゴニスト効果を末梢で呈する薬剤またはその組み合わせ;
(c) α2アドレナリン作用性アンタゴニスト効果を中枢で、かつセロトニンアンタゴニスト効果を末梢で呈する薬剤またはその組み合わせ;
(d) α2アドレナリン作用性アンタゴニスト効果をシナプス前部で呈する(a)-(c)の実施態様の薬剤またはその組み合わせ;
(e) α2アドレナリン作用性アンタゴニスト効果を、セロトニン作用性ニューロンのシナプス前部のヘテロ受容体において選択的に呈する(a)-(d)の実施態様の薬剤またはその組み合わせ;または
(f) α2アドレナリン作用性アンタゴニスト効果が、以下の薬理学的プロフィール、すなわち、セロトニン2型または3型受容体拮抗作用の双方とα2 アドレナリン作用性アンタゴニスト活性とを有する薬剤またはその組み合わせによって発現される(a)-(d)の実施態様の薬剤またはその組み合わせ、がある。
【0091】
睡眠関連呼吸障害を予防または緩和するために、当業者が想到するであろう多くのα2アドレナリン作用性受容体 アンタゴニストとして、フェノキシベンザミン、フェントルアミン、トラゾリン、テラゾシン、ドキサゾシン、トリマゾシン、ヨヒンビン、インドラミン、ARC239、およびプラゾシンなどが、セロトニン受容体アンタゴニストとの組み合わせにおいて使用できるが、これらに限定されない。
【0092】
睡眠関連呼吸障害と診断された者に対して、これら疾患を予防または抑制するための有効量の組成物または薬剤、すなわち、前記薬理学的プロフィールのいずれかを有する組成物または薬剤を投与する。 体重や身体表面などの因子を考慮して、用量を算出することができる。 睡眠関連呼吸障害の処置のための好適な服用量を決定するために必要な計算上の工夫は、当業者であれば、過度の実験を経ずに容易に実現しえる。 好適な服用量は、服用量を決定するために確立されたアッセイを用いて確定することができる。 上記方法での投与経路として、経口、腹膜内、皮下、静脈内、筋内、経皮などの全身系の他に、他の投与経路などがある。 浸透性ミニポンプおよび経時的放出性ペレットあるいはその他の投与用デポー剤なども利用できる。
【0093】
最後に、上記の化合物に関して、これら化合物にキラル中心が含まれうることを、当業者は認識するであろう。 従って、かような薬剤は、異なる鏡像異性体からなる鏡像異性体混合物として提供されうる。 本願発明は、いずれか一つの鏡像異性体のみ、あるいは一つ以上の立体異性体を含んだ鏡像異性体混合物の使用についても意図している。
【0094】
本願発明の好適な実施態様について説明を行ってきたが、本願発明は、当業者が本明細書を考慮して想到するであろうすべての修正と変更、とりわけ、特許請求の範囲に記載の発明とその構成要件によって解釈されるすべての態様の包含を意図している。 本願明細書で引用したすべての文献は、本明細書の一部を構成するものとしてそれらの全内容を援用する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】非急速眼球運動(NREM)睡眠時の1時間当たりの無呼吸割合に関するセロトニンアンタゴニストGR38032F(オンダンセトロン)の効果とコントロール(対照)の効果を示すグラフである。 図中の各データポイントは、9匹のラットで得られた標準誤差の平均値である(コントロールに対するP=0.007)。
【図2】NREM睡眠時に費やした全記録時間の割合に関するセロトニンアンタゴニストGR38032F(オンダンセトロン)の効果とコントロールの効果を示すグラフである。 図中の各データポイントは、9匹のラットで得られた標準誤差の平均値である(コントロールに対するP=0.0001)。
【図3】急速眼球運動(REM)睡眠時の1時間当たりの無呼吸割合に関するセロトニンアンタゴニストGR38032F(オンダンセトロン)の効果とコントロールの効果を示すグラフである。 図中の各データポイントは、9匹のラットで得られた標準誤差の平均値である(コントロールに対するP=0.01)。
【図4】REM睡眠時に費やした全記録時間の割合に関するセロトニンアンタゴニストGR38032F(オンダンセトロン)の効果とコントロールの効果を示すグラフである。 図中の各データポイントは、9匹のラットで得られた標準誤差の平均値である。
【図5】覚醒時、非急速眼球運動(NREM)睡眠時、急速眼球運動(REM)睡眠時の正規化分換気に関するセロトニンアンタゴニストGR38032F(オンダンセトロン)の効果とコントロールの効果を示すグラフである。 各データ棒は、プールしたすべての動物(N=9)について取得した六つの記録時間についての標準誤差の平均値である(すべての試験区において、GR38032Fを投与した後の分換気値は顕著に改善されていた;コントロールに対するP<0.03)。
【図6】非急速眼球運動(NREM)睡眠時の自発的無呼吸に関するセロトニン(0.79 mg/kg)、GR38032F(0.1 mg/kg)+セロトニン(0.79 mg/kg)およびGR38032F (0.1 mg/kg)の効果を示すグラフである。 各データ棒は、すべての動物について取得した六つの記録時間についての標準誤差の平均値である(N=10、P=0.97)。
【図7】急速眼球運動(REM)睡眠時の自発的無呼吸に関するセロトニン(0.79 mg/kg)、GR38032F(0.1 mg/kg)+セロトニン(0.79 mg/kg)およびGR38032F (0.1 mg/kg)の効果を示すグラフである。 各データ棒は、すべての動物について取得した六つの記録時間についての標準誤差の平均値である(N=10;コントロールに対するセロトニン投与時のP=0.01;セロトニン単独に対するGR38032F+セロトニン投与時のP=0.05;コントロールに対するGR38032F+セロトニン投与時のP=0.99;および、GR38032F単独に対するP=0.51)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠関連呼吸障害の治療剤を製造するための少なくとも一つの遊離塩基または四級化した形態のセロトニン受容体アンタゴニストの使用であって、当該アンタゴニストが、ザトセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、オキセトロン、および、オランザピンからなるグループから選択される、ことを特徴とするセロトニン受容体アンタゴニストの使用。
【請求項2】
前記睡眠関連呼吸障害が、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、未熟呼吸、先天性中枢性低換気症候群、肥満性低換気症候群、中枢性睡眠時無呼吸症候群、シェーン・ストークス呼吸、およびいびきからなるグループから選択される請求項1に記載の使用。
【請求項3】
睡眠関連呼吸障害の治療剤を製造するための四級化したグラニセトロンの使用。
【請求項4】
前記睡眠関連呼吸障害が、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、未熟呼吸、先天性中枢性低換気症候群、肥満性低換気症候群、中枢性睡眠時無呼吸症候群、シェーン・ストークス呼吸、およびいびきからなるグループから選択される請求項3に記載の使用。
【請求項5】
睡眠関連呼吸障害の治療剤を製造するためのセロトニン受容体アンタゴニストとセロトニン受容体アゴニストの使用であって、当該アンタゴニストが、(i) 遊離塩基または四級化した形態のザトセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、オキセトロン、および、オランザピンからなるグループから選択されたアンタゴニスト、(ii) 四級化したグラニセトロン、および、(iii) これらの組み合わせのいずれかである、ことを特徴とするセロトニン受容体アンタゴニストとセロトニン受容体アゴニストの使用。
【請求項6】
四級化したセロトニン受容体アンタゴニストが、メチル化、エチル化またはベンジル化されている請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記セロトニン受容体アゴニストが、8-OH-DPAT、スマトリプタン、L694247、ブスピロン、アルニティダン、ザロスピロン、イプサピロン、ゲピロン、ゾルミトリプタン、リサトリプタン、311C90、α-Me-5-HT、BW723C86およびMCPPからなるグループから選択される請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記セロトニン受容体アゴニストが、5-ヒドロキシトリプタミン1受容体サブタイプアゴニストである請求項5に記載の使用。
【請求項9】
前記セロトニン受容体アゴニストが、5-ヒドロキシトリプタミン2受容体サブタイプアゴニストである請求項5に記載の使用。
【請求項10】
前記セロトニン受容体アゴニストの効果が、中枢神経系で発現する請求項5に記載の使用。
【請求項11】
前記セロトニン受容体アンタゴニストの効果が、末梢神経系で発現する請求項5に記載の使用。
【請求項12】
前記セロトニン受容体アゴニストの効果が中枢神経系で発現し、かつ前記セロトニン受容体アンタゴニストの効果が末梢神経系で発現する請求項5に記載の使用。
【請求項13】
睡眠関連呼吸障害の治療剤を製造するためのセロトニン受容体アンタゴニストと選択的セロトニン再摂取阻害物質の使用であって、当該アンタゴニストが、(i) 遊離塩基または四級化した形態のザトセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、オキセトロン、および、オランザピンからなるグループから選択されたアンタゴニスト、(ii) 四級化したグラニセトロン、および、(iii) これらの組み合わせのいずれかである、ことを特徴とするセロトニン受容体アンタゴニストと選択的セロトニン再摂取阻害物質の使用。
【請求項14】
前記選択的セロトニン再摂取阻害物質が、フルオキセチンおよびパロキセチンからなるグループから選択される請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記選択的セロトニン再摂取阻害物質が、フルボキサミン、セルトラリン、シタロプラム、ノルフルオキセチン、r(−)フルオキセチン、s(+)フルオキセチン、デメチルセルトラリン、デメチルシタロプラム、ベンラファキシン、ミルナシプラン、シブトラミン、ネファゾドン、R-ヒドロキシネファゾドン、(−)ベンラファキシン、および、(+)ベンラファキシンからなるグループから選択される請求項13に記載の使用。
【請求項16】
睡眠関連呼吸障害の治療剤を製造するためのセロトニン受容体アンタゴニストと選択的セロトニン再摂取阻害物質の使用であって、当該アンタゴニストが、ザトセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、オキセトロン、および、オランザピンからなるグループから選択され、および、当該選択的セロトニン再摂取阻害物質が、フルボキサミン、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム、ノルフルオキセチン、r(−)フルオキセチン、s(+)フルオキセチン、デメチルセルトラリン、デメチルシタロプラム、ベンラファキシン、ミナシプラン、シブトラミン、ネファゾドン、R-ヒドロキシネファゾドン、(−)ベンラファキシン、および、(+)ベンラファキシンからなるグループから選択される、ことを特徴とするセロトニン受容体アンタゴニストと選択的セロトニン再摂取阻害物質の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−168404(P2010−168404A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109025(P2010−109025)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【分割の表示】特願2004−550292(P2004−550292)の分割
【原出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【出願人】(503063593)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (12)
【Fターム(参考)】