説明

睡眠装置

【課題】対象者の睡眠の深さを目標の睡眠深度で制御することがより容易となる睡眠装置を提供する。
【解決手段】睡眠装置1の刺激提示部15は、刺激効果算出部13により測定された対象者Mの現在の睡眠深度と目標とする対象者Mの目標睡眠深度との乖離度に基づいて決定された刺激を付与する。このため、単に目標睡眠深度に応じて刺激を付与するよりも、対象者Mの現在の睡眠深度に応じて適切な刺激を付与することができる。これにより、対象者Mの睡眠の深さを目標の睡眠深度で維持することも容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠装置に関し、対象者に刺激を付与する睡眠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者である運転者の睡眠深度を一定のレベルで維持することができる装置が提案されている。例えば、特許文献1には、運転者の現睡眠深度を判定する睡眠深度判定部と、睡眠深度判定部によって判定された現睡眠深度と、最大レベルよりも浅い所定のレベルで予め定められた目標睡眠深度とを比較する睡眠深度比較部と、睡眠深度比較部によって現睡眠深度が目標睡眠深度に到達したと判断された場合に、人体の感覚閾値に基づく強度を有する感覚閾値刺激を使用者に付与する付与刺激制御部と刺激付与装置とを備えた睡眠装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−213711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、現在の睡眠深度が相当に深いものであった場合には、感覚閾値に基づいて決定された刺激では、適切に睡眠深度を制御することが困難である場合もあり得る。
【0005】
本発明は、このような実情を考慮してなされたものであり、その目的は、対象者の睡眠の深さを目標の睡眠深度で制御することがより容易となる睡眠装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、対象者の現在の睡眠深度を測定する睡眠深度測定ユニットと、対象者に刺激を付与する刺激付与ユニットとを備え、刺激付与ユニットは、睡眠深度測定ユニットにより測定された対象者の現在の睡眠深度と、目標とする対象者の目標睡眠深度との乖離度に基づいて決定された刺激を付与する睡眠装置。
【0007】
この構成によれば、刺激付与ユニットは、睡眠深度測定ユニットにより測定された対象者の現在の睡眠深度と目標とする対象者の目標睡眠深度との乖離度に基づいて決定された刺激を付与するため、単に目標睡眠深度に応じて刺激を付与するよりも、対象者の現在の睡眠深度に応じて適切な刺激を付与することができる。これにより、対象者の睡眠の深さを目標の睡眠深度で制御することがより容易となる。
【0008】
この場合、刺激付与ユニットは、対象者の現在の睡眠深度と対象者の目標睡眠深度との乖離度が大きいほど、より強い強度の刺激を付与するものとできる。
【0009】
この構成によれば、刺激付与ユニットは、対象者の現在の睡眠深度と対象者の目標睡眠深度との乖離度が大きいほど、より強い強度の刺激を付与するため、乖離度の大きさに応じて適切な強度の刺激を付与することができる。
【0010】
また、刺激付与ユニットは、対象者の現在の睡眠深度が深いほど、より強い強度の刺激を付与するものとできる。
【0011】
この構成によれば、刺激付与ユニットは、対象者の現在の睡眠深度が深いほど、より強い強度の刺激を付与するため、対象者の現在の睡眠深度の深さに応じて適切な強度の刺激を付与することができる。
【0012】
また、刺激付与ユニットは、対象者に刺激を付与した後に、睡眠深度測定ユニットが対象者の現在の睡眠深度を測定することが不可能なときは、対象者の現在の睡眠深度と、対象者の目標睡眠深度との乖離度に関わらず、予め設定された時間の経過後に対象者に刺激を再び付与するものとできる。
【0013】
この構成によれば、刺激付与ユニットは、対象者に刺激を付与した後に、睡眠深度測定ユニットが対象者の現在の睡眠深度を測定することが不可能なときは、対象者の現在の睡眠深度と、対象者の目標睡眠深度との乖離度に関わらず、予め設定された時間の経過後に対象者に刺激を再び付与するため、現在の睡眠深度を測定することが不可能であった場合でも確実に刺激が付与される。これにより、例えば刺激提示が外乱となり、生理波形が乱れて睡眠深度測定が不可能であった場合にも対応することが可能となる。
【0014】
また、睡眠深度測定ユニットは、刺激付与ユニットが対象者に刺激を付与した直後の対象者の脳波に基づいて対象者の現在の睡眠深度を測定するものとできる。
【0015】
この構成によれば、睡眠深度測定ユニットは、刺激付与ユニットが対象者に刺激を付与した直後の対象者の脳波に基づいて対象者の現在の睡眠深度を測定する。これにより、例えば刺激提示が外乱となり、生理波形が乱れた場合であっても、刺激を付与した効果を抽出して対象者の現在の睡眠深度を精度良く測定することができる。
【0016】
また、刺激付与ユニットは、付与した刺激に対する対象者の現在の睡眠深度の変動が減少した場合、及び対象者の現在の睡眠深度と対象者の目標睡眠深度との乖離度に基づいて決定される刺激を付与する頻度が減少した場合のいずれかの場合は、より強い強度の刺激を付与するものとできる。
【0017】
この構成によれば、刺激付与ユニットは、付与した刺激に対する対象者の現在の睡眠深度の変動が減少した場合、及び対象者の現在の睡眠深度と対象者の目標睡眠深度との乖離度に基づいて決定される刺激を付与する頻度が減少した場合のいずれかの場合は、対象者が刺激に順応し、刺激を付与する効果が低下していると考えられるため、より強い強度の刺激を付与する。これにより、対象者に常に適切な刺激を与えることが容易となる。
【0018】
また、刺激付与ユニットは、対象者の周囲の振動及び雑音のいずれかを利用して対象者に刺激を付与するものとできる。
【0019】
この構成によれば、刺激付与ユニットは、対象者の周囲の振動及び雑音のいずれかを利用して対象者に刺激を付与するため、例えば、自動車内の対象者に対しては車内の振動及び雑音を利用して、小さな素子であっても対象者に刺激を付与する効果を高めることが可能となる。
【0020】
また、対象者の睡眠状態前の刺激付与ユニットが付与する刺激に対する生体反応量を測定する生体反応量測定ユニットをさらに備え、刺激付与ユニットは、生体反応量測定ユニットが測定した睡眠状態前の生体反応量に基づいて、対象者の睡眠状態時に付与する刺激を補正するものとできる。
【0021】
この構成によれば、対象者の睡眠状態前の刺激付与ユニットが付与する刺激に対する生体反応量を測定する生体反応量測定ユニットをさらに備え、刺激付与ユニットは、生体反応量測定ユニットが測定した睡眠状態前の生体反応量に基づいて、対象者の睡眠状態時に付与する刺激を補正する。このため、対象者ごとの個人差や状態によらずに対象者に適切な刺激を与えることが容易となる。
【0022】
この場合、刺激付与ユニットは、対象者に対して複数の位置に刺激を付与することが可能であり、生体反応量測定ユニットが測定した睡眠状態前の複数の位置ごとに付与された刺激に対する生体反応量に基づいて、複数の位置ごとに同時に付与する刺激を変更することにより、対象者の睡眠状態時に刺激を付与する位置を補正するものとできる。
【0023】
この構成によれば、刺激付与ユニットは、対象者に対して複数の位置に刺激を付与することが可能であり、生体反応量測定ユニットが測定した睡眠状態前の複数の位置ごとに付与された刺激に対する生体反応量に基づいて、対象者の睡眠状態時に刺激を付与する位置を補正する。このため、対象者ごとのシートへの座り方やベッドへの着床状態によらずに対象者に適切な位置に刺激を与えることが容易となる。また、刺激付与ユニットは、複数の位置ごとに付与する刺激を変更することにより、対象者の睡眠状態時に刺激を付与する位置を補正するため、刺激を付与することが可能な位置同士の中間位置が刺激を付与する位置として適切な場合でも、複数の位置ごとに付与する刺激を変更することにより、中間位置にも適切な刺激を与えることが可能となる。
【0024】
また、刺激付与ユニットは、対象者が着座するシート又は対象者が着床するベッドにかかる圧力及び対象者が着座するシート又は対象者が着床するベッドの傾斜角のいずれかに基づいて、対象者に付与する刺激を補正するものとできる。
【0025】
この構成によれば、刺激付与ユニットは、対象者が着座するシート又は対象者が着床するベッドにかかる圧力及び傾斜角のいずれかに基づいて、対象者に付与する刺激を補正する。このため、対象者の着座又は着床の仕方や対象者の体格によらずに対象者に適切な刺激を与えることが容易となる。
【0026】
また、刺激付与ユニットは、対象者に対して振動により刺激を付与し、振動の対象者の身体における伝播に基づいて、対象者に付与する刺激を補正するものとできる。
【0027】
この構成によれば、刺激付与ユニットは、対象者に対して振動により刺激を付与し、振動の対象者の身体における伝播に基づいて、対象者に付与する刺激を補正する。このため、対象者の体格、体型及体脂肪率によらずに対象者に適切な刺激を与えることが容易となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の睡眠装置によれば、対象者の睡眠の深さを目標の睡眠深度で制御することがより容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係る睡眠装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る睡眠装置のシートに配置された機器を示す側面図である。
【図3】実施形態に係る睡眠装置の対象者に刺激を付与するバイブレータと圧力・加速度センサとを示す側面図である。
【図4】実施形態の睡眠装置の主な動作を示すフローチャートである。
【図5】現在の睡眠深度と目標睡眠深度と刺激強度との関係を示すグラフ図である。
【図6】刺激の振幅と提示時間との関係を示す図である。
【図7】刺激の提示時間と刺激強度との関係を示すグラフ図である。
【図8】刺激の振幅と刺激強度との関係を示すグラフ図である。
【図9】刺激の提示頻度と刺激強度との関係を示すグラフ図である。
【図10】刺激の提示間隔と刺激強度との関係を示すグラフ図である。
【図11】図5で現在の睡眠深度を一定とした場合の目標睡眠深度と刺激強度との関係を示すグラフ図である。
【図12】図11で刺激の提示とその結果とが複数点ある場合を示すグラフ図である。
【図13】刺激を付与した際に覚醒、維持及び効果なしの各場合における睡眠深度の変化を示すグラフ図である。
【図14】刺激の提示時間と覚醒、維持及び効果なしの各割合との関係を示すグラフ図である。
【図15】刺激の提示頻度と覚醒、維持及び効果なしの各割合との関係を示すグラフ図である。
【図16】刺激がある場合における仮眠開始からの睡眠深度の変動を示すグラフ図である。
【図17】図16と同一被験者における刺激が無い場合における仮眠開始からの睡眠深度の変動を示すグラフ図である。
【図18】図4において刺激を付与した効果を反映させる動作を示すフローチャートである。
【図19】β波含有率及びα波含有率と睡眠深度変化との関係を示すグラフ図である。
【図20】δ波含有率及びθ波含有率と睡眠深度変化との関係を示すグラフ図である。
【図21】睡眠段階変化とβ波の割合との関係を示すグラフ図である。
【図22】図4において対象者の睡眠深度が検出できない際の動作を示すフローチャートである。
【図23】刺激を付与したタイミングと睡眠深度との関係を示すグラフ図である。
【図24】刺激付与後に覚醒、維持及び効果なしとなる各場合の刺激付与後に睡眠深度が元に戻るまでの経過時間を示すグラフ図である。
【図25】刺激付与前に浅い眠り及び深い眠りのそれぞれの場合において、刺激付与後に覚醒、維持及び効果なしとなってから、当該睡眠深度が持続する時間を示すグラフ図である。
【図26】図4において刺激強度の変更・修正を行う動作を示すフローチャートである。
【図27】対象者への刺激提示位置を示す図である。
【図28】図27に示す刺激提示位置と皮膚電気活動との関係を示すグラフ図である。
【図29】年代及び性別ごとの生体反応量を示すグラフ図である。
【図30】図2のバイブレータの位置及び刺激提示位置ごとの対象者の刺激への反応を示すグラフ図である。
【図31】図2のバイブレータ同士の刺激強度の差と刺激提示位置との関係が非線形である場合を示すグラフ図である。
【図32】図2のバイブレータ同士の刺激強度の差と刺激提示位置との関係が線形である場合を示すグラフ図である。
【図33】シートへの圧力と刺激補正値との関係を示すグラフ図である。
【図34】シート角度と刺激補正値との関係を示すグラフ図である。
【図35】バイブレータの振幅に対する圧力・加速度計の振幅の振幅比と対象者の体脂肪率との関係を示すグラフ図である。
【図36】対象者の体脂肪率と生体反応量との関係を示すグラフ図である。
【図37】対象者の体脂肪率と皮膚電気活動との関係を示すグラフ図である。
【図38】対象者がスーツを着用の場合及び対象者がスーツを着用していない場合と生体反応量との関係を示すグラフ図である。
【図39】図4において刺激強度の変更・修正を行う動作を示すフローチャートである。
【図40】図4において刺激提示の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図41】シート又はベッドに加わるノイズの振幅と刺激強度との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る睡眠装置について説明する。本実施形態の睡眠装置は、車両等に搭載され、対象者の睡眠深度を目標睡眠深度に制御しつつ対象者に仮眠を取らせるための装置である。図1に示すように、本実施形態の睡眠装置1は、生体情報検出部11、特徴量算出部12、刺激効果算出部13、刺激提示方法決定部14、刺激提示部15、睡眠深度DB16及び刺激提示タイミングDB17を備えている。
【0031】
生体情報検出部11は、仮眠を取る対象者の情報を取得する。生体情報検出部11は、対象者に付与した刺激の効果を判定するために必要な情報を取得する。刺激の効果を判定するための情報としては、脳波、心拍、血圧、呼吸、皮膚電気活動、体温、眼球運動等の生理指標があり、生体情報検出部11はこれらの指標を接触あるいは非接触で検出しても良い。生体情報検出部11は、具体的には、車両であれば、シートやステアリングホイールに設けられた生理計測装置や圧電素子等のセンサ類である。また、生体情報検出部11では、加速度センサあるいは速度センサ等により、車両の6自由度の加速度や速度等の状態量に関する情報も検出しても良い。
【0032】
特徴量算出部12は、生体情報検出部11から得られた生体情報から刺激の効果の判定に必要な特徴量を算出する。特徴量算出部12は、脳波については、β波、α波、θ波、δ波、σ波、紡錘波及びK複合等を検出しても良い。特徴量算出部12は、脳波については、他には任意の周波数帯のパワースペクトルを算出しても良い。特徴量算出部12は、睡眠深度の変化を捉える場合は、覚醒から浅い眠りまでは皮膚電気活動を検出し、浅い眠りの変化は緩徐眼球運動又は腹式呼吸から胸式呼吸への変化といった呼吸様式変化を検出しても良い。
【0033】
刺激効果算出部13は、特徴量算出部12から得られた特徴量から刺激の効果又は現在の睡眠深度を算出する。刺激効果算出部13は、睡眠深度については脳波を用いて国際判定基準で決定しても良い。また、刺激効果算出部13は、心拍、血圧、呼吸、皮膚電気活動、体温、眼球運動等から睡眠深度を決定しても良い。刺激効果算出部13は、睡眠深度の変化を捉える場合は、皮膚電気活動により睡眠深度を決定しても良い。刺激効果算出部13は、緩徐眼球運動により睡眠深度を決定する場合は、緩徐眼球運動の低下又は消失で判断しても良い。刺激効果算出部13は、刺激の効果を捉える場合は、特徴波形の単位時間当たりの含有比率、パワー及び平均振幅等を利用しても良い。刺激効果算出部13が算出した刺激の効果又は睡眠深度は、睡眠深度DBに記録される。
【0034】
刺激提示方法決定部14は、刺激効果算出部13で算出された刺激の効果から刺激提示方法を決定する。刺激提示方法決定部14は、刺激提示タイミングDB17内に予めマップとして記録された条件に従って刺激提示方法を決定しても良い。刺激提示方法決定部14は、睡眠深度を従属変数とした関数で記載された条件に従って刺激提示方法を決定しても良い。刺激提示方法決定部14は、刺激効果算出部13で用いられた特徴量の中で少なくとも1つを用いて刺激提示方法を決定する。
【0035】
刺激提示部15は、浅い眠りを維持するための刺激を提示する。刺激提示部15が提示する刺激は知覚可能な刺激で良い。刺激提示部15は、例えば、光、音、振動、温熱、冷風及び匂い等を使用しても良い。図2に示すように、対象者Mが着座するシート20は、バイブレータ21〜23を備えている。また、シート20は、シートの背もたれの傾斜角θを測定するためのシート角センサ26を備えている。図3に示すように、バイブレータ21〜23はそれぞれ対象者Mの身体を伝播する振動を計測する圧力・加速度計28を備えている。また、刺激提示部15は、シェードの開閉、間接照明の点灯、シートヒータによるシートの暖房及び音楽の提供等を行なうものとしても良い。
【0036】
以下、本実施形態の睡眠装置1の動作について説明する。図4に示すように、対象者Mが睡眠装置1のボタン等を押下し、仮眠を開始する(S101)。睡眠装置1の刺激提示方法決定部13では、後述するような様々な条件に基づいて刺激強度の変更及び修正を行う(S102)。睡眠装置1の刺激提示部15は、シェードの開閉、間接照明の点灯、シートヒータによるシートの暖房及び音楽の提供等の機器動作を行なう(S103)。
【0037】
睡眠装置1の生体情報検出部11では、対象者Mの脳波、心拍、血圧、呼吸、皮膚電位、体温、眼球運動等の生理指標を検出する(S104)。また、睡眠装置1の生体情報検出部11では、車両の6自由度の加速度や速度等の車両状態に関する情報も検出する(S104)。睡眠装置1の特徴量算出部12は、生体情報検出部11から得られた生体情報から刺激の効果の判定に必要な特徴量を算出し、睡眠装置1の刺激効果算出部13は、特徴量算出部12から得られた特徴量から現在の対象者Mの睡眠深度を測定する(S105)。
【0038】
対象者Mの睡眠深度が所定の睡眠深度に達するか、あるいは所定の睡眠時間に達するまで、睡眠装置1はS104〜S105の工程を実行する(S106)。睡眠装置1の刺激効果算出部13が対象者Mの睡眠深度を検出することができない場合の処理については後述する(S106)。対象者Mの睡眠深度が所定の睡眠深度に達したか、あるいは所定の睡眠時間に達したときは(S106)、睡眠装置1の刺激提示部15は、シェードの開閉以外の間接照明の点灯、シートヒータによるシートの暖房及び音楽の提供等の機器動作を停止する(S108)。
【0039】
睡眠装置1の刺激効果算出部13は、現在の対象者Mの睡眠深度の測定を続行する(S109)。睡眠装置1の刺激提示方法決定部14は、対象者Mの現在の睡眠深度と目標睡眠深度との差を算出する(S110)。現在の睡眠深度が目標睡眠深度よりも深いときは(S110)、睡眠装置1の刺激提示方法決定部14は、現在の睡眠深度と目標睡眠深度との乖離度から刺激強度を決定する(S111)。
【0040】
刺激提示タイミングDB16には、図5に示すような現在の睡眠深度と目標睡眠深度とに対する刺激強度の関係が記憶されている。睡眠装置1の刺激提示方法決定部14は、図5に示す関係を参照して、現在の睡眠深度と目標睡眠深度とから刺激強度を算出する。また、刺激提示方法決定部14は、算出した刺激強度から刺激提示方法を決定する。刺激提示方法決定部14は刺激提示部15の機能から、例えば、刺激として振動を与える場合には、刺激の提示時間や振幅を決定することができる。
【0041】
図6に示すように、刺激の強度は、概ね、刺激としての振動の振幅が大きく、提示時間が長いほど強くなる。すなわち、刺激の強度は、図6の左下から右上に到るにつれて強くなる。刺激提示タイミングDB16には、図7〜10に示すように、刺激として振動を与える場合の提示時間、振幅、提示頻度及び提示間隔と刺激強度との関係がさらに詳細に記録されている。刺激提示方法決定部14は、刺激提示タイミングDB16に記録されている刺激の提示時間、振幅、提示頻度及び提示間隔等の刺激強度を調整するためのパラメータと刺激強度との関係に基づいて、刺激強度を調整する。例えば、刺激提示方法決定部14は、覚醒させる場合は、浅い眠りを維持する場合に比べて刺激の提示時間を長くする。
【0042】
あるいは、刺激提示方法決定部14は、刺激強度を調整するためのパラメータの多項式等の関数式を用いて刺激強度を決定しても良い。あるいは、刺激提示方法決定部14は、刺激提示の時間間隔や経過時間や現在の睡眠深度を加味して刺激強度を変更しても良い。
【0043】
刺激提示方法決定部14は、個人の感度特性により刺激による効果が刺激提示タイミングDB16に当初用意されていたテーブルと異なる場合には、対象者個人を特定して学習しても良い。この場合の学習は、後述する刺激の効果を計る手法を用いる。例えば、図11に示すように、図5における現在の睡眠深度を固定した場合において、実線で示される予め用意された値とは異なる破線で示される結果が検出された場合は、刺激提示方法決定部14は、破線で示される値に基づいて、対象者個人ごとに刺激提示タイミングDB16に記録された値を変更しても良い。また、図12に示すように、実線で示される予め用意された値とは異なる結果が複数点検出された場合は、刺激提示方法決定部14は、複数点の結果に基づいて図中破線で示すように対象者個人ごとに刺激提示タイミングDB16に記録された値を変更しても良い。
【0044】
なお、現実に皮膚変動の速さや大きさに応じて感覚器の反応は良くなることが知られており、刺激を維持した場合でも皮膚変動の速さや大きさに応じて、図13に示すように、対象者が覚醒する場合、睡眠深度が維持される場合及び効果が無い場合に分かれることが知られている。図14に刺激の提示時間に対する対象者が覚醒する場合、睡眠深度が維持される場合及び効果が無い場合それぞれの割合を示し、図15に刺激の提示頻度に対する対象者が覚醒する場合、睡眠深度が維持される場合及び効果が無い場合それぞれの割合を示す。さらに、図16及び図17に同一の対象者における維持された刺激の有無による睡眠段階の経過を示す。このように、刺激の提示方法を変更することにより、浅い眠りの維持や覚醒が可能となる。
【0045】
図4に戻り、刺激提示部15は刺激提示方法決定部14が決定した刺激提示方法により対象者Mに刺激を提示する(S112)。一方、現在の睡眠深度が目標睡眠深度よりも深くないときは(S110)、現在の睡眠深度が目標睡眠深度あるいは睡眠時間に達するまで、睡眠装置1はS104〜S110の工程を繰り返す(S113)。現在の睡眠深度が目標睡眠深度あるいは睡眠時間に達したときは(S113)。刺激提示部15は覚醒刺激を対象者Mに付与する(S114)。対象者Mが覚醒し、仮眠が終了する(S115)。
【0046】
以下、本実施形態の睡眠装置1において刺激効果を測る手法について説明する。睡眠装置1の刺激効果算出部13は、対象者Mの睡眠深度の測定と並行して(S105)、刺激直後に乱れる生理波形に注目し、刺激直後の脳波波形から対象者Mの睡眠深度を測定する。図18に示すように、刺激提示部15による刺激提示があったときは(S201)、睡眠装置1の特徴量算出部12は、脳波における振幅、時間比率及び周波数等の特徴量を算出する(S202)。
【0047】
以下に、脳波を例に睡眠深度の変化と脳波波形の変化とを示す。図19に示すように、覚醒時に多く出現するα波及びβ波は睡眠深度が浅くなり、覚醒と共に増加する。図20に示すように、眠りが深くなるごとに現れるδ波及びθ波は覚醒と共に減少する。刺激で発生するK複合は振幅の大きさが刺激の反応に関連する。睡眠を促進するσ波は覚醒刺激が強いほど多く出現する。そこで、刺激効果算出部13は上記特徴量に着目して対象者Mの睡眠深度を測定する。
【0048】
刺激効果算出部13は、睡眠深度を測定するためのパラメータとして、β波、α波、θ波、δ波、σ波の含有率又は時間比率及びK複合の振幅の少なくとも1つ以上を使用する。刺激効果算出部13は、α波/θ波、α波/β波、α波/δ波、β波/θ波及びβ波/δ波というように、2以上の波形についてのAND条件を満たしているか否かを判定することにより、睡眠深度を測定しても良い。刺激効果算出部13は、これらのパラメータについての多項式等の関数式を用いて睡眠深度を測定しても良い。刺激効果算出部13は、特に弱い刺激が提示されている場合には、これらの方法により各パラメータを複数回計測し、それらの加算平均値から判断しても良い。刺激効果算出部13は、刺激が提示された前後の各パラメータの変化から刺激効果を算出しても良い。
【0049】
例えば、刺激の知覚し易さで特徴脳波(例えばα波等)の割合やK複合の振幅が変化することが知られている。しかしながら、これらはノイズとして扱われ、睡眠深度変化との対応付けを行なった例がない。そこで本実施形態では、これらの特徴波形を使い睡眠深度や刺激効果を定量化した。例えば、図21に、睡眠段階2に相当する睡眠深度から刺激提示を行なった場合の睡眠深度の変化と特徴波形であるβ波の含有率の関係を示す。β波は覚醒中かつ開眼中に現れる特徴波形である。図21より、β波含有率が覚醒度合と強い関連性があることが判る。
【0050】
図18に戻り、刺激効果算出部13は、上記の特徴量が規定範囲を超えたときは(S203)、現在の睡眠深度から1を減算する。一方、刺激提示がなされなかったときに(S201)、眼球運動停止又は皮膚電気活動低下が検出されたときは(S205)、刺激効果算出部13は、現在の睡眠深度を1とする(S206)。一方、刺激提示がなされなかったときに(S201)、眼球運動停止又は皮膚電気活動低下が検出されなかったときは(S205)、刺激効果算出部13は、睡眠装置1は図4のS104の工程を再び実行する。
【0051】
以下、本実施形態の睡眠装置1において、睡眠深度が検出できないときに、刺激提示タイミングを決定する手法及び刺激効果を確認する手法について説明する。本発明者らにより、直前の睡眠深度によらず刺激提示後の睡眠深度によって睡眠深度の持続時間が決まることが分かった。そこで、本実施形態では、刺激提示後の経過時間を測ることで刺激提示タイミングや刺激効果を確認する。
【0052】
図4に示すように睡眠深度が検出できないときは(S107)、図22に示すように、睡眠装置1の刺激提示方法決定部14は、現在の経過時間から直前の刺激提示までの経過時間を減算する(S301)。刺激提示方法決定部14は、検出することが可能であった直前の睡眠深度及び経過時間から刺激提示タイミングを決定する(S302)。所定の時間に達した場合(S303)、図4に示しように、睡眠装置1の刺激提示部15は刺激を提示する(S112)。
【0053】
刺激提示方法決定部14は、提示する刺激を決定する。この場合、選択した刺激による睡眠深度の変化の傾向が把握できていることが前提となる。刺激提示方法決定部14は、任意の睡眠深度に到達後に刺激を提示する。例えば、刺激提示方法決定部14は、浅い眠りから浅い眠りを維持する場合では、所定の間隔で刺激を提示する。脳波以外の刺激提示タイミングの決定方法としては、浅い眠りから深い眠りへの変化は、胸式呼吸から腹式呼吸への呼吸様式の変化、呼吸音に寝息がたったこと及び心拍変動等から計測可能である。また、覚醒から浅い眠りへの変化は、緩徐眼球運動及び皮膚電気活動の低下などから計測可能である。図23に示すように、浅い眠りから徐々に対象者Mを起こす場合は、眠りに付くときの睡眠深度の傾きから刺激提示時間の間隔を決定することが可能である。眠りに付くときの睡眠深度の傾きは関数式を用いても、マップを用いても良い。
【0054】
刺激効果の確認方法として、刺激提示後から刺激提示前までの経過時間から刺激の効果を算出することが可能である。仮眠前の睡眠深度が浅い眠りと深い眠りとの境界で刺激提示を行なった場合に、再び浅い眠りと深い眠りとの境界に到達するまでの時間が所定時間以上であった場合は覚醒効果がある刺激と判断ができる。
【0055】
例えば、図24に浅い睡眠深度と深い睡眠深度との境界で刺激提示を行なった場合に、刺激提示後に任意の睡眠深度に変化してから再び元の睡眠深度に戻るまでの経過時間の関係を示す。また、図25に直前の睡眠深度が浅い眠りである場合と深い眠りである場合ごとに、刺激提示後の眠りの深さとその眠りの深さが持続する時間との関係を示す。図25の棒グラフ中の数字はデータ数を示す。図24及び図25により、直前の睡眠深度によらず、刺激提示後の睡眠深度に応じて任意の睡眠深度までの経過時間が異なることが判る。
【0056】
以下、本実施形態の睡眠装置1において、刺激強度の変更及び修正を行う手法の詳細について説明する。本実施形態では、刺激提示直後の生理波形の変化から刺激強度や刺激提示方法を決定する。以下、例として刺激の提示位置を決定する場合を示す。図26に示すように、刺激提示が行なわれた場合(S401)、睡眠装置1の刺激提示方法決定部14は、生理波形の変化から反応量を算出する(S402)。この場合の生理波形としては、皮膚電気活動(EDA)や、脳波を用いることができる。あるいは、これらの加重平均で反応量を決定しても良い。
【0057】
刺激提示方法決定部14は、反応量を比較し、反応量が閾値範囲外である場合は(S403)、刺激強度あるいは刺激提示位置等の刺激提示方法を変更する(S404)。この場合、刺激提示方法決定部14は、反応量の相対変化と絶対量とで比較しても良い。刺激提示方法決定部14は、反応量の相対変化として刺激提示部位の中で最適な位置を選定する。また、刺激提示方法決定部14は、予め刺激提示タイミングDB17等で保持している反応量の情報と現実に測定された反応量とを比較し、刺激効果が弱い場合は刺激提示方法を変更する。刺激提示方法決定部14は、測定された反応量のデータが1回のみの場合は、所定の閾値による処理を行なうことができる。また、刺激提示方法決定部14は、測定された反応量のデータが複数回の場合は平均値や統計検定等で判断することができる。
【0058】
例えば、図27に示すような対象者Mへの腰部や背面の様々な位置に刺激を提示した場合において、図28に皮膚電気活動による反応量を示す。図28に示すように、この場合においては、提示位置によって大きな差が見られなかったので、刺激提示方法決定部14はどの位置に刺激を提示しても良いと判断する。また、図29に、対象者Mの性別及び年代ごとの手掌のEDAに対する腰のEDAの割合を示す。これらは標準化することで絶対値として比較することが可能である。例えば、対象者Mに手掌でシート20のアームレストにあるバイブレータを触れさせ、背部の振動の反応値(EDA)/手掌の振動の反応値(EDA)の値で標準化をかけても良い。
【0059】
これらの場合においては、バイブレータ21〜23の配置位置は、対象者Mの背、尻、太腿のいずれに接する箇所でも良いが、図2に示すように対象者Mの第二腰椎とその上下に所定の間隔にバイブレータ21〜23を複数個設置することが望ましい。この理由として、対象者Mの体格によらず、脊柱が湾曲する部分が第二腰椎にあたり、シート着座時に設置する位置であることと、日本人に限れば、性別及び年齢(18〜65歳)によらず、座面Sから上記位置までの距離がきまることから、これらの位置を刺激提示の標準位置とすることが望ましい。
【0060】
また、本実施形態では、対象者Mの身長や座り方により刺激提示位置にバイブレータ21〜23等がなくとも、刺激提示位置に合わせた刺激を提示することが可能である。例えば、図2及び図30に示すように、対象者Mが刺激の提示位置によって知覚の差があり、刺激提示に適した範囲内となる刺激への反応が得られる刺激提示位置Pがバイブレータ21〜23の中間位置にある場合は、睡眠装置1の刺激提示部15はバイブレータ21〜23の中間位置に対して刺激提示を行なう。もし、バイブレータ21とバイブレータ22とから等距離の中間位置に刺激提示位置Pがあるときは、バイブレータ21,22が二箇所に同時に同じ強度の刺激を提示することで、バイブレータ21及びバイブレータ22のちょうど中間位置を刺激提示位置Pとすることができる。
【0061】
また、刺激提示位置Pがバイブレータ21とバイブレータ22とから等距離の中間位置にないときは、刺激提示部15は、異なる刺激強度のバイブレータ21とバイブレータ22とを同時に用いて刺激提示位置Pに刺激を提示する。刺激提示方法決定部14は、図31に示すように、刺激提示タイミングDB17に記憶されたバイブレータ21,22の刺激強度の差に対する刺激提示位置の関係を利用してバイブレータ21,22の刺激強度を決定することができる。この場合、図32に示すような線形の関係を用いても良い。この他にも、提示位置を変えずに提示強度を強めることもできる。あるいは、機械的にバイブレータ21〜23の位置が変更されても良い。これらの手法は、刺激の提示量が同じ場合に刺激提示位置の中間位置に同強度の刺激を感じる現象(Phantom Sensation)として知られている。
【0062】
また、本実施形態では、シート20にかかる加圧の影響を加味して刺激強度を変更しても良い。図26に示すように、刺激提示方法決定部14は、シート角センサ26及び圧力・加速度計28を用いて、シート20にかかる圧力及びシート角度を検出する(S405)。刺激提示タイミングDB17には、図33及び図34に示すように、圧力に対する刺激補正値Δあるいはシート角度に対する刺激補正値Δが記録されている。刺激提示方法決定部14は、刺激提示タイミングDB17に記録された圧力及びシート角度に対する刺激補正値Δを参照し、刺激強度を補正する(S406)。この場合、刺激提示方法決定部14は、圧力やシート角度の数値に任意の係数を乗じることにより、刺激強度を算出しても良い。
【0063】
対象者Mの体格の予測については、刺激提示方法決定部14は、対象者Mの体動時の圧力や圧力・加速度計28の振幅や変化率やそれらの積分値から算出しても良い。シート20に圧力・加速度計28を搭載しない場合は、刺激提示方法決定部14は、バイブレータ21〜23に圧力を印加したときの電圧や電流の変化から、シート20にかかる圧力を算出しても良い。刺激提示方法決定部14は、刺激の効果を観察しつつ、必要があれば刺激強度をさらに補正する。なお、シート20への荷重が増すほど、対象者Mの感覚器の変形が大きくなり知覚が低下する可能性が考えられる。ただし、平均的な体格の対象者Mがシート20の背もたれの角度を変更しても近くには大きな差が無いと考えられる。
【0064】
また、本実施形態では、対象者Mの体格による振動の伝播の違いを利用して刺激強度を補正する。他には、対象者Mの着衣による影響を加味するkとおも可能である。図3及び図26に示すように、刺激提示方法決定部14は、バイブレータ21〜23により振動を提示し、振動の振幅を圧力・加速度計28により計測する。刺激提示方法決定部14は、バイブレータ21〜23と圧力・加速度計28との振幅比(減衰率)を算出する。刺激提示タイミングDB17には、図35に示すように、バイブレータ21〜23及び圧力・加速度計28の振幅比と対象者Mの体脂肪率との関係が記録されている。刺激提示方法決定部14は、刺激提示タイミングDB17に記録された振幅比と対象者Mの体脂肪率との関係を参照して、対象者Mの体脂肪率を算出する(S407)。
【0065】
また、刺激提示タイミングDB17には、図36に示すように、対象者Mの体脂肪率に対する刺激強度の関係が記録されている。刺激提示方法決定部14は、刺激提示タイミングDB17に記録された対象者Mの体脂肪率に対する刺激強度の関係を参照して、刺激強度を変更する(S408)。なお、刺激提示方法決定部14は、振動の伝播の度合いとして、圧力・加速度計28の位置での周波数と、バイブレータ21〜23の位置での周波数とを比較しても良い。また、刺激提示方法決定部14は、振幅や周波数の対数をとって、刺激強度を算出しても良い。
【0066】
図37に示すように、体脂肪率と感じやすさとの関係においては、体脂肪率が高くなるほど感じやすさは低下する。体脂肪率が低く感じやすいほど、対象者Mは弱い刺激でも知覚するため、刺激提示方法決定部14は刺激強度を下げる。ただし、図37に示すように、若干の体脂肪率の変化であれば、感じやすさに大きな影響は無い。また、図38に示すように、対象者Mがスーツを着用しているか否かによっても感じやすさは異なるため、刺激提示方法決定部14は、上記の方法により対象者Mの着衣による相違も加味することができる。刺激方法決定部14は、刺激強度が目標強度に達しないときはさらに刺激強度を上げる。
【0067】
また、本実施形態では、対象者Mの刺激への順応を加味して刺激強度や刺激提示方法を変更する。図39に示すように、刺激提示方法決定部14は、特徴量の反応量を算出する(S501)。この場合の反応量としては、一定時間の反応割合、前回の反応量との比率及び平均反応量との比率とすることができる。刺激提示方法決定部14は、これらの反応量が所定の閾値を下回った場合には(S502)、刺激種の変更や刺激強度の増加を行なう(S503)。
【0068】
例えば、刺激提示方法決定部14は、刺激への反応量が低下した場合や刺激提示後に再び刺激を提示するまでの時間経過が短くなった場合には、刺激強度を変更する。また、刺激提示方法決定部14は、刺激への反応量が無い場合や刺激提示後に再び刺激提示するまでの時間経過が半減した場合には、刺激強度を上げる。刺激提示方法決定部14は、刺激後の反応割合から対象者Mの刺激への順応の度合いを計測し、刺激の強度及び種類を変更する。この場合の反応割合としては、例えば、(一定時間内の反応回数/一定時間内の刺激回数)とすることができる。あるいは、反応割合として、(一定時間内の平均反応量/一つ前の測定区間の一定時間内の平均反応量)とすることができる。
【0069】
また、本実施形態では、車内の振動及び騒音を利用して刺激強度を高めることができる。図40に示すように、刺激提示方法決定部14は、圧力・加速度計28によりシート20の速度及び加速度を算出する(S601)。刺激提示タイミングDB17には、図41に示すようなノイズの振幅に対する刺激強度の関係が記録されている。刺激提示方法決定部14は、刺激提示タイミングDB17を参照しつつ、ノイズの振幅から刺激強度を算出することにより刺激提示量を補正する(S602)。
【0070】
刺激提示方法決定部14は、振動については、車両であれば、シート20の材質、車両速度及びサスペンション等により事前に刺激提示の効果が高まる振幅を設定する。車両がアクティブサスペンションを搭載している場合には、刺激提示方法決定部14は、走行速度から減衰率を変更し、効果が高まる振幅を設定する。刺激提示方法決定部14は、振動及び騒音の周波数がホワイトノイズ又はピンクノイズとなるように設定する。
【0071】
本実施形態によれば、睡眠装置1の刺激提示部15は、刺激効果算出部13により測定された対象者Mの現在の睡眠深度と目標とする対象者Mの目標睡眠深度との乖離度に基づいて決定された刺激を付与するため、単に目標睡眠深度に応じて刺激を付与するよりも、対象者Mの現在の睡眠深度に応じて適切な刺激を付与することができる。これにより、対象者Mの睡眠の深さを目標の睡眠深度で維持することも容易となる。
【0072】
また、本実施形態によれば、刺激提示部15は、対象者Mの現在の睡眠深度と対象者Mの目標睡眠深度との乖離度が大きいほど、より強い強度の刺激を付与するため、乖離度の大きさに応じて適切な強度の刺激を付与することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、刺激提示部15は、対象者Mの現在の睡眠深度が深いほど、より強い強度の刺激を付与するため、対象者Mの現在の睡眠深度の深さに応じて適切な強度の刺激を付与することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、刺激提示部15は、対象者Mに刺激を付与した後に、刺激効果算出部13が対象者Mの現在の睡眠深度を測定することが不可能なときは、対象者Mの現在の睡眠深度と、対象者Mの目標睡眠深度との乖離度に関わらず、予め設定された時間の経過後に対象者Mに刺激を再び付与するため、現在の睡眠深度を測定することが不可能であった場合でも確実に刺激が付与される。これにより、例えば刺激提示が外乱となり、生理波形が乱れて睡眠深度測定が不可能であった場合にも対応することが可能となる。
【0075】
また、本実施形態によれば、刺激効果算出部13は、刺激提示部15が対象者Mに刺激を付与した直後の対象者Mの脳波に基づいて対象者Mの現在の睡眠深度を測定する。これにより、例えば刺激提示が外乱となり、生理波形が乱れた場合であっても、刺激を付与した効果を抽出して対象者Mの現在の睡眠深度を精度良く測定することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、刺激提示部15は、付与した刺激に対する対象者Mの現在の睡眠深度の変動が減少した場合、及び対象者Mの現在の睡眠深度と対象者Mの目標睡眠深度との乖離度に基づいて決定される刺激を付与する頻度が減少した場合のいずれかの場合は、対象者Mが刺激に順応し、刺激を付与する効果が低下していると考えられるため、より強い強度の刺激を付与する。これにより、対象者Mに常に適切な刺激を与えることが容易となる。
【0077】
また、本実施形態によれば、刺激提示部15は、対象者Mの周囲の振動及び雑音のいずれかを利用して対象者Mに刺激を付与するため、例えば、自動車内の対象者Mに対しては車内の振動及び雑音を利用して、小さな素子であっても対象者に刺激を付与する効果を高めることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態によれば、対象者Mの睡眠状態前の刺激提示部15が付与する刺激に対する生体反応量を測定する刺激効果算出部13をさらに備え、刺激提示方法決定部14は、刺激効果算出部13が測定した睡眠状態前の生体反応量に基づいて、対象者Mの睡眠状態時に付与する刺激を補正する。このため、対象者Mごとの個人差や状態によらずに対象者Mに適切な刺激を与えることが容易となる。なお、自動車以外の移動体、例えば、飛行機や電車にも、本実施形態の構成は適用することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、刺激提示部15は、対象者Mに対して複数の位置に刺激を付与することが可能であり、刺激効果算出部13が測定した睡眠状態前の複数の位置ごとに付与された刺激に対する生体反応量に基づいて、対象者Mの睡眠状態時に刺激を付与する位置を補正する。このため、対象者Mごとのシートへの座り方やベッドへの着床状態によらずに対象者Mに適切な位置に刺激を与えることが容易となる。また、刺激提示部15は、複数の位置ごとに付与する刺激を変更することにより、対象者Mの睡眠状態時に刺激を付与する位置を補正するため、刺激を付与することが可能な位置同士の中間位置が刺激を付与する位置として適切な場合でも、複数の位置ごとに付与する刺激を変更することにより、中間位置にも適切な刺激を与えることが可能となる。
【0080】
また、本実施形態によれば、刺激提示方法決定部14は、対象者Mが着座するシート20又は対象者が着床するベッドにかかる圧力及び傾斜角のいずれかに基づいて、対象者Mに付与する刺激を補正する。このため、対象者Mの着座又は着床の仕方や対象者Mの体格によらずに対象者Mに適切な刺激を与えることが容易となる。
【0081】
また、本実施形態によれば、刺激提示方法決定部14は、振動の対象者Mの身体における伝播に基づいて、対象者Mに付与する刺激を補正する。このため、対象者Mの体格、体型及体脂肪率によらずに対象者Mに適切な刺激を与えることが容易となる。
【0082】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
1…睡眠装置、11…生体情報検出部、12…特徴量算出部、13…刺激効果算出部、14…刺激提示方法決定部、15…刺激提示部、16…睡眠深度DB、17…刺激提示タイミングDB、20…シート、21〜23…バイブレータ、26…シート角センサ、28…圧力・加速度計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の現在の睡眠深度を測定する睡眠深度測定ユニットと、
前記対象者に刺激を付与する刺激付与ユニットと、
を備え、
前記刺激付与ユニットは、前記睡眠深度測定ユニットにより測定された前記対象者の現在の前記睡眠深度と、目標とする前記対象者の目標睡眠深度との乖離度に基づいて決定された刺激を付与する、睡眠装置。
【請求項2】
前記刺激付与ユニットは、前記対象者の現在の前記睡眠深度と前記対象者の前記目標睡眠深度との前記乖離度が大きいほど、より強い強度の刺激を付与する、請求項1に記載の睡眠装置。
【請求項3】
前記刺激付与ユニットは、前記対象者の現在の前記睡眠深度が深いほど、より強い強度の刺激を付与する、請求項1又は2に記載の睡眠装置。
【請求項4】
前記刺激付与ユニットは、前記対象者に刺激を付与した後に、前記睡眠深度測定ユニットが前記対象者の現在の前記睡眠深度を測定することが不可能なときは、前記対象者の現在の前記睡眠深度と、前記対象者の前記目標睡眠深度との前記乖離度に関わらず、予め設定された時間の経過後に前記対象者に刺激を再び付与する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の睡眠装置。
【請求項5】
前記睡眠深度測定ユニットは、前記刺激付与ユニットが前記対象者に刺激を付与した直後の前記対象者の脳波に基づいて前記対象者の現在の前記睡眠深度を測定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の睡眠装置。
【請求項6】
前記刺激付与ユニットは、付与した刺激に対する前記対象者の現在の前記睡眠深度の変動が減少した場合、及び前記対象者の現在の前記睡眠深度と前記対象者の前記目標睡眠深度との前記乖離度に基づいて決定される刺激を付与する頻度が減少した場合のいずれかの場合は、より強い強度の刺激を付与する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の睡眠装置。
【請求項7】
前記刺激付与ユニットは、前記対象者の周囲の振動及び雑音のいずれかを利用して前記対象者に刺激を付与する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の睡眠装置。
【請求項8】
前記対象者の睡眠状態前の前記刺激付与ユニットが付与する刺激に対する生体反応量を測定する生体反応量測定ユニットをさらに備え、
前記刺激付与ユニットは、生体反応量測定ユニットが測定した睡眠状態前の前記生体反応量に基づいて、前記対象者の睡眠状態時に付与する刺激を補正する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の睡眠装置。
【請求項9】
前記刺激付与ユニットは、
前記対象者に対して複数の位置に刺激を付与することが可能であり、
生体反応量測定ユニットが測定した睡眠状態前の複数の位置ごとに付与された刺激に対する前記生体反応量に基づいて、複数の位置ごとに同時に付与する刺激を変更することにより、前記対象者の睡眠状態時に刺激を付与する位置を補正する、請求項8に記載の睡眠装置。
【請求項10】
前記刺激付与ユニットは、前記対象者が着座するシート又は前記対象者が着床するベッドにかかる圧力及び前記対象者が着座するシート又は前記対象者が着床するベッドの傾斜角のいずれかに基づいて、前記対象者に付与する刺激を補正する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の睡眠装置。
【請求項11】
前記刺激付与ユニットは、前記対象者に対して振動により刺激を付与し、前記振動の前記対象者の身体における伝播に基づいて、前記対象者に付与する刺激を補正する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の睡眠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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