矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体
【課題】仮設工が簡単に行えるため施工期間を短縮できるとともに、仮設費を抑えて安価に施工することができる矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体を提供する。
【解決手段】既設控え部材2の陸側に新設控え部材12を打ち込む新設控え部材打設ステップと、既設矢板1の海側面および既設控え部材2の陸側面に配置される一対の横架材41と、各横架材41に所定間隔を隔てて架設される複数本の支持梁材42とから構成される仮設支持材4を設置する仮設支持材設置ステップと、既設連結部材を撤去する既設連結部材撤去ステップと、新設矢板11を打ち込む新設矢板打設ステップと、新設矢板11と新設控え部材12とを新設連結部材13で連結する新設連結部材連結ステップと、仮設支持材4を撤去する仮設支持材撤去ステップとを有する。
【解決手段】既設控え部材2の陸側に新設控え部材12を打ち込む新設控え部材打設ステップと、既設矢板1の海側面および既設控え部材2の陸側面に配置される一対の横架材41と、各横架材41に所定間隔を隔てて架設される複数本の支持梁材42とから構成される仮設支持材4を設置する仮設支持材設置ステップと、既設連結部材を撤去する既設連結部材撤去ステップと、新設矢板11を打ち込む新設矢板打設ステップと、新設矢板11と新設控え部材12とを新設連結部材13で連結する新設連結部材連結ステップと、仮設支持材4を撤去する仮設支持材撤去ステップとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や港湾等において施工された矢板を使用してなる矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の大型化に伴い、水深の大きな係船岸を擁する港湾が全国に複数存在している。しかしながら、多くの係船岸が老朽化していること、計画当初の使用目的が変更される場合があること、あるいは近年、比較的大きな地震が頻繁に発生していることもあって係船岸にも耐震性能を向上する必要性が高まっており、今後、多くの港湾において係船岸を強化する改良工事が必要になる。
【0003】
上述した係船岸の改良工事にあたっては、一般的に、同一の前面法線に沿って新たな構造物を作り直す場合が多い。また、掘り込み式の港湾においては、限られた航路・泊地区域を確保するため、前出し式の岸壁にはできない場合もある。さらに、港湾内での作業用船舶を用いた工事は制約が多くなるため、陸上からの施工が望ましいとされている。
【0004】
ところで、矢板を使用してなる矢板式係船岸は、通常、前面の矢板をタイロッド等で引っ張り、背後の控え材に保持させることで構成されている。このため、水深が大きくなるほど背後の土砂の重量が重くなり、施工上、大きな負担となる。つまり、矢板式係船岸を同様の構造に作り直す場合には、前面の矢板を同じ位置に打設するために、一旦、背後の土砂を全て取り除かなければならない。このため、コストがかかる上、土砂を取り除くための陸上作業が困難であり、現状では、既設矢板の背後に新設矢板を打設しているケースが多い。
【0005】
矢板式係船岸の改良工法として、例えば、(1)仮設矢板を用いる工法、(2)既設矢板を斜坑で支持する工法、(3)タイロッド等で代替する工法が知られている。上記(1)は、工事対象箇所を仮設矢板によって仮締め切りを行った後、背後の土砂を掘り下げて既設構造物を撤去し、新設構造物を造築する工法である。上記(2)は、既設矢板の前面に斜坑を沿打ちして固定し、当該斜坑の水平反力によって既設矢板を保持しながら既設タイロッドを切断し、新設構造物を造築する工法である。上記(3)は、既設タイロッドの代わりに新たなタイロッド等を配置し、その反力によって保持された矢板の背後に新設矢板を打設する工法である。
【0006】
また、上記(1)〜(3)の他に、特開平11−323872号には、既設矢板を海側の構造体から支持する工法も提案されている(特許文献1)。この工法は、海底に沈めた構造体(ポンツーン等)の側面に設けられた油圧ジャッキによって、海側から既設矢板を支持した後、タイロッドを取り外して地盤改良工事等を行うとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−323872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記(1)の工法は、土砂を掘り下げるため陸上作業が困難であり、仮設費が嵩む上、後背地に土砂を除けるための広範囲の敷地が必要になる等の問題がある。また、上記(2)の工法は、仮設費が嵩む上、施工期間が長期化するという問題がある。さらに上記(3)の工法は、新設矢板を打設する毎にタイロッド等の張り替え作業に手間がかかるため、施工期間が長期化するという問題がある。
【0009】
また、特許文献1に記載された発明においては、構造体を沈められない港湾では施工できない上、構造体の運搬に手間がかかるという問題がある。また、海に沈める構造体は、波の影響を受けやすいため、正確に設置するのが困難であり、波の強さによっては流されてしまうおそれもある。さらに、海底の深さに応じた大きさの構造体を必要とするため、水深が10mを超えるような港湾等では、当該水深に応じた構造体を設置すること自体が極めて困難である。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、仮設工が簡単に行えるため施工期間を短縮できるとともに、仮設費を抑えて安価に施工することができる矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る矢板式係船岸の改良工法は、既設矢板と既設控え部材とを既設連結部材で連結してなる矢板式係船岸を、新設矢板と新設控え部材とを新設連結部材で連結してなる矢板式係船岸に改良する改良工法であって、前記既設控え部材の陸側に前記新設控え部材を打ち込む新設控え部材打設ステップと、前記既設矢板の海側面および前記既設控え部材の陸側面に配置される一対の横架材と、各横架材に所定間隔を隔てて架設される複数本の支持梁材とから構成される仮設支持材を設置する仮設支持材設置ステップと、前記既設連結部材を撤去する既設連結部材撤去ステップと、前記新設矢板を打ち込む新設矢板打設ステップと、前記新設矢板と前記新設控え部材とを前記新設連結部材で連結する新設連結部材連結ステップと、前記仮設支持材を撤去する仮設支持材撤去ステップとを有している。
【0012】
また、本発明において、前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記一方の横架材を前記既設控え部材の陸側面に配置する工程に代えて、前記新設控え部材の陸側面または仮設控え部材を打設してその陸側面に前記横架材を設置してもよい。
【0013】
さらに、本発明において、前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記支持梁材の両端部には、前記各横架材の外側面に掛止するフック部が設けられているとともに、前記フック部と前記横架材との隙間をなくすための隙間調節部材が配置されており、前記隙間調節部材によって前記隙間を埋めてもよい。
【0014】
また、本発明において、前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記仮設支持材を設置する場合、前記各横架材と前記各支持梁材とを予め略矩形枠状に組み合わせた仮設支持枠体として設置してもよい。
【0015】
さらに、本発明において、前記新設矢板の打ち込み予定位置上に前記支持梁材が架設されている場合、当該支持梁材の近接位置まで前記新設矢板を打ち込んだ後、当該打ち込み後の新設矢板上に別途、前記支持梁材を架設し、前記打ち込み予定位置上にある前記支持梁材を撤去してもよい。
【0016】
また、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法に用いる仮設支持枠体は、既設矢板と既設控え部材とを既設連結部材で連結してなる矢板式係船岸を、新設矢板と新設控え部材とを新設連結部材で連結してなる矢板式係船岸に改良する改良工法に用いる仮設支持枠体であって、前記既設矢板の海側面および前記既設控え部材の陸側面に配置される一対の横架材と、これら各横架材に所定間隔を隔てて架設される複数本の支持梁材とを略矩形枠状に組み合わせてなる。
【0017】
また、本発明において、前記支持梁材の両端部には、前記各横架材の外側面に掛止するフック部が設けられており、前記フック部と前記横架材との隙間には、当該隙間をなくすための隙間調節部材が配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、仮設工が簡単に行えるため施工期間を短縮できるとともに、仮設費を抑えて安価に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る矢板式係船岸の改良工法の一実施形態を示すフローチャート図である。
【図2】本実施形態において、新設控え部材が打ち込まれ、既設連結部材の一部が露出された状態を示す斜視図である。
【図3】本実施形態において、露出された区域において仮設支持材が設置され、既設連結部材が撤去され、新設矢板が打ち込まれた状態を示す斜視図である。
【図4】本実施形態において、新設連結部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】本実施形態において、仮設支持材を撤去した状態を示す斜視図である。
【図6】本実施形態において、既設控え部材を撤去した状態を示す斜視図である。
【図7】本実施形態において、仮設支持材(仮設支持枠体)を設置した状態を示す平面図である。
【図8】本実施形態において、仮設支持材(仮設支持枠体)を設置した状態を示す正面図である。
【図9】図8の9A−9A線における断面図である。
【図10】本実施形態において、新設矢板を打ち込む状態を示す正面図である。
【図11A】本実施例の矢板式係船岸の改良工法と、従来工法との工程を比較した比較図である。
【図11B】本実施例の矢板式係船岸の改良工法と、従来工法との工程を比較した比較図である。
【図11C】本実施例の矢板式係船岸の改良工法と、従来工法との工程を比較した比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0021】
なお、本発明において、矢板式係船岸とは、岸壁、桟橋、ドルフィン、浮桟橋、物揚場等のように、船舶が接岸、係船する構造物である係船岸のうち、岸壁等の壁体となる矢板と、控え工としての控え部材とをタイワイヤーやタイロッド等の連結部材で連結してなる全ての構造物を含む概念である。
【0022】
また、本発明において、改良しようとする矢板式係船岸を構成する矢板、控え部材および連結部材をそれぞれ既設矢板1、既設控え部材2および既設連結部材3とし、新たに設置する矢板、控え部材および連結部材をそれぞれ新設矢板11、新設控え部材12および新設連結部材13というものとする。
【0023】
そして、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法は、既設矢板1と既設控え部材2とを既設連結部材3で連結してなる矢板式係船岸を、新設矢板11と新設控え部材12とを新設連結部材13で連結してなる矢板式係船岸に改良する方法に関するものである。
【0024】
本実施形態の矢板式係船岸の改良工法を実施する場合、図1および図2に示すように、岸壁等に打ち込まれた既設控え部材2の陸側(背面側)に、新設控え部材12を打ち込む(ステップS1:新設控え部材打設ステップ)。この新設控え部材12は、新たに打ち込まれる新設矢板11を保持するものであり、通常、既設控え部材2よりも剛性や強度の高い鋼矢板や鋼管杭等が使用される。本実施形態では、クローラクレーンに吊り下げたバイブロハンマーを使用し、新設控え部材12を既設控え部材2よりも陸側に打ち込んでいる。なお、新設控え部材12の打ち込み位置は便宜上、陸側に設定しているが適宜選択してよく、打ち込み作業に用いる重機も適宜選択してよい。
【0025】
つぎに、新設矢板11を打ち込もうとする施工エリアの土砂を掘削する(ステップS2:施工エリア掘削ステップ)。これにより、図2に示すように、土中に埋設されていた既設控え部材2や、この既設控え部材2と既設矢板1とを連結していた既設連結部材3が露出される。なお、本実施形態では、施工エリアの掘削作業に際し、バックホウを使用しているが、その他の掘削機を使用してもよい。また、本実施形態では、支持力を高めるため、既設控え部材2が前後方向に二列で設置されているが、この構成に限定されるものではなく、一列であってもよい。
【0026】
つづいて、横架材41および支持梁材42から構成される仮設支持材4を設置する(ステップS3:仮設支持材設置ステップ)。横架材41および支持梁材42は、互いに協働して既設連結部材3の引張力による支持機能を一時的に代替するものである。具体的には、図3,図7および図8に示すように、仮設支持材4は、既設矢板1の海側面および既設控え部材2の陸側面に配置される一対の横架材41と、各横架材41に所定間隔を隔てて架設され、その両端部が各横架材41に掛止される3本の支持梁材42とから構成されている。
【0027】
横架材41は、支持梁材42から受ける引張力を均等に分散させるためのものであり、H鋼等の腹起材によって構成されている。一方、支持梁材42は、既設矢板1にかかる土圧を支持するためのものである。このため、支持梁材42は、施工エリア内の既設連結部材3が受けている全荷重を考慮し、当該荷重を支持しうるように素材や数量を選択する。なお、本実施形態では、3本の支持梁材42を使用しているが、この本数に限定されるものではなく、少なくとも両端を支持する2本の支持梁材42があればよい。
【0028】
また、本実施形態において、支持梁材42は、図7および図8に示すように、H鋼等からなる切梁材43と、この切梁材43の両端部に設けられる一対の掛止部材44とから構成されている。各掛止部材44は、図8に示すように、一端側に鉤状のフック部45を有しており、各横架材41の外側面に掛止されるようになっている。一方、掛止部材44の他端側には、切梁材43の端部を挿入させる箱状の接続部46が設けられており、固定ピン47で連結されるようになっている。
【0029】
なお、本実施形態では、横架材41や支持梁材42として、既製の腹起材や切梁材43(山留材)を用いることで仮設費を抑制しているが、この構成に限定されるものではない。特に、支持梁材42は、切梁材43と掛止部材44とが別体に構成されているが、横架材41の外側面に掛止可能なフック部45を両端に有している限り、一体的に構成されていてもよい。
【0030】
また、本実施形態では、図3に示すように、陸側の横架材41を既設控え部材2の陸側面に配置しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、土圧に対する反力不足等により既設控え部材2を使用できない場合には、別途、H鋼等の仮設控え部材を打設し、当該仮設控え部材の陸側面に横架材41を配置してもよい。また、仮設控え部材の施工が困難な場合には、上述した新設控え部材12の陸側面に横架材41を配置してもよい。
【0031】
さらに、本実施形態では、作業時間の短縮化を図るため、図7に示すように、一対の横架材41と両端の支持梁材42とを予め略矩形枠状に組み合わせた仮設支持枠体4として設置し、別途、中間の支持梁材42を補強用に設置している。しかしながら、この設置方法に限定されるものではなく、既設矢板1の海側面および既設控え部材2の陸側面にブラケット等を取り付け、その上に各横架材41を仮置きした後、支持梁材42を設置してもよい。
【0032】
つぎに、支持梁材42のフック部45と横架材41との間の隙間に隙間調節部材5を設置し、当該隙間を埋める(ステップS4:隙間調節ステップ)。この隙間調節部材5は、フック部45と横架材41との隙間をなくし、既設連結部材3を切断した際の衝撃荷重を低減するためのものである。本実施形態では、図8に示すように、隙間調節部材5として伸縮自在なキリンジャッキ5を使用しており、前記隙間に配置した後、伸長させて締め付けている。
【0033】
なお、本実施形態では、図8に示すように、海側の横架材41を各フック部45の内側面にボルトで固定するとともに、陸側の横架材41はキリンジャッキ5を介してフック部45の内側面にボルト固定することで略矩形状に組み合わせている。また、本実施形態では、隙間調節部材5として既製品のキリンジャッキ5を使用することで仮設費を低減しているが、フック部45と横架材41との隙間を埋められるものであれば、複数枚の鉄板や鋼板を狭持させるようにしてもよい。
【0034】
つづいて、新設矢板11を真っ直ぐに打ち込むための導材6を設置する(ステップS5:導材設置ステップ)。本実施形態において、導材6は、図10に示すように、新設矢板11の前後面と摺接するフレーム状のH鋼等から構成されており、新設矢板11の打ち込み位置に合わせて設置する。なお、本実施形態では、図10に示すように、側面視略T字形状の振動防止部材7が打ち込まれており、この振動防止部材7上に支持梁材42を載置することで新設矢板11を打ち込む際の振動を低減させている。
【0035】
つぎに、既設矢板1と既設控え部材2とを連結している既設連結部材3を撤去する(ステップS6:既設連結部材撤去ステップ)。具体的には、既設連結部材3として、タイワイヤーやタイロッドが用いられている場合、それらを切断して撤去する。このとき、横架材41および支持梁材42が、既設矢板1にかかる土圧を別途、既設控え部材2に支持させている。このため、既設連結部材3を切断しても既設矢板1が土圧によって倒壊することがない。
【0036】
また、本実施形態では、フック部45と横架材41との間に隙間調節部材5を狭持させて締め付け、両者間の隙間を確実に埋めている。このため、既設連結部材3を切断した際、既設控え部材2の陸側面に配置した横架材41が、土圧により海側へ引っ張られるが、その引張方向の加速度が最小限に抑えられるため衝撃荷重が低減する。したがって、横架材41や支持梁材42に無理な荷重がかかって破損してしまうのを防止できる。
【0037】
既設連結部材3を撤去した後、図3および図10に示すように、既設矢板1の背面に新設矢板11を打ち込む(ステップS7:新設矢板打設ステップ)。この新設矢板11は、矢板式係船岸の前面を新たに構成するものであり、通常、既設矢板1よりも剛性や強度の高い鋼矢板や鋼管杭等が使用される。なお、本実施形態では、導材6によって打設法線を維持するため、新設矢板11が正確に鉛直下方へ打ち込まれる。また、新設矢板11の打ち込み作業には、新設控え部材12の打ち込みに使用したクローラクレーン9やバイブロハンマー91を兼用できるため、施工コストが抑えられる。
【0038】
なお、後述するように、支持梁材42を盛り替える際には、土圧の影響により、新設矢板11が海側に押されて前面の法線に若干の誤差が生じる。このため、当該誤差を予測し、新設矢板11の打ち込み位置を予め陸側にずらしておくことが好ましい。これにより、新設矢板11の打ち込み位置の誤差を低減することができる。
【0039】
つづいて、仮設支持材4として支持梁材42を3本以上使用する場合、両端以外の支持梁材42が新設矢板11の打ち込み予定位置上に架設されることとなる(ステップS8:YES)。本実施形態では、図3および図7に示すように、3本の支持梁材42を使用しているため、中間の支持梁材42が、新設矢板11の打ち込み予定位置上に架設されている。このような場合、そのままでは新設矢板11を打ち込めないため、打設の邪魔になる支持梁材42を盛り替える(ステップS9:支持梁材盛替ステップ)。
【0040】
具体的には、図3および図7に示すように、中間の支持梁材42の近接位置まで新設矢板11を打ち込んだ後、当該打ち込み後の新設矢板11上に別途、新たな支持梁材42(図7において点線で示す)を架設するとともに、打ち込み予定位置上に架設されている支持梁材42を撤去する。これにより、支持梁材42による全体の引張力を保持したまま、打ち込み位置上に架設されている支持梁材42を撤去でき、当該位置に新設矢板11を打ち込めることとなる。
【0041】
なお、本実施形態では、3本の支持梁材42を使用しているため、中間の支持梁材42だけを盛り替えているが、4本以上の支持梁材42を使用する場合にも同様に、打設の邪魔になる支持梁材42の盛り替え作業を行えばよい。一方、両端部に配置する2本の支持梁材42しか使用しない場合には、中間に支持梁材42がないため、上述した盛り替え作業は不要である。
【0042】
盛り替え作業を経て、全ての新設矢板11の打ち込みが完了すると(ステップS8:NO)、新設矢板11と新設控え部材12とを新設連結部材13で連結する(ステップS10:新設連結部材連結ステップ)。この新設連結部材13は、新設矢板11にかかる土圧を新設控え部材12に支持させるためのものであり、通常、既設連結部材3よりも大径で剛性や強度の高いタイワイヤーやタイロッド等が使用される。
【0043】
なお、既設控え部材2が新設連結部材13の邪魔になる場合は、当該既設控え部材2を撤去すればよい。また、新設連結部材13の取り付けに際しては、図4に示すように、新設矢板11の海側面および新設控え部材12の陸側面のそれぞれに腹起材8を配置し、当該腹起材8に新設連結部材13を連結する。これにより、新設連結部材13に伝わる反力が均等に新設矢板11や新設控え部材12に伝えられるため、矢板式係船岸への悪影響を防止する。仮に、腹起材8が無い状態で波の影響を受けた場合、新設矢板11がそれぞれ違う動きをし、後に打設する上部コンクリートにクラック等の悪影響を及ぼしてしまうが、これを防止することができる。
【0044】
新設連結部材13を取り付けた後、図5に示すように、横架材41および支持梁材42からなる仮設支持材4を撤去する(ステップS11:仮設支持材撤去ステップ)。このとき、新設矢板11は、新設連結部材13によって新設控え部材12に連結されて引張力が作用しているため、土圧によって倒壊することがない。また、新設矢板11、新設控え部材12および新設連結部材13は、それぞれ既設矢板1、既設控え部材2および既設連結部材3よりも剛性や強度が高められているため、矢板式係船岸自体の耐震性能が向上する。
【0045】
なお、仮設支持材4の撤去に際しては、図7に示すように、一対の横架材41と3本の支持梁材42とを全て組み合わせた仮設支持枠体4のままクローラクレーン等によって吊り上げる。これにより、撤去作業にかかる時間が短縮される。
【0046】
最後に、以上の工程が完了した施工済みエリアを埋め戻す(ステップS12:施工済エリア埋戻ステップ)。その際、図6に示すように、既設控え部材2を撤去してもよいが、施工コスト等を勘案し、撤去せずにそのまま埋めてもよい。
【0047】
以上により、1サイクル分の改良作業が完了するとともに、次の施工エリアがある場合(ステップS13:YES)、上述したステップS2からステップS12の工程を繰り返す。一方、次の施工エリアがなければ(ステップS13:NO)、改良作業を終了する。
【0048】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
1.既設矢板1を一時的に支持する仮設工を簡素化し、施工期間を短縮することができる。
2.仮設工にかかる費用を抑えて安価に施工することができる。
3.仮設支持材4の設置・撤去には、新設矢板11や新設控え部材12の打ち込みに使用する重機を兼用でき、施工コストを抑えることができる。
4.既設連結部材3を切断する際の衝撃荷重を最小限に抑制し、仮設支持材4が破壊されるのを防止することができる。
5.横架材41および支持梁材42を組み合わせた仮設支持枠体4として設置・撤去し、施工期間を短縮することができる。
6.支持梁材42を盛り替えて施工できるため、1サイクルの施工エリアを大きく設定し、作業効率を向上することができる。
【0049】
つぎに、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体4の実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の実施例によって示される特徴に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
本実施例では、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法と、従来工法(2)として上述した既設矢板1の前面を斜坑で支持する工法とを実施し、1サイクル(新設矢板6本分:約8.1m分)あたりの施工期間を比較した。その結果を図11A〜図11Cに示す。
【0051】
図11Aに示すように、従来工法では、まず、杭打機およびクローラクレーンの作業足場を組み立てる作業に約4日かかる(ステップB1)。つぎに、杭打機によるH鋼斜杭の打込作業と、当該H鋼斜杭を前面矢板にピースで連結する作業に約5日かかる(ステップB2)。その後、クローラクレーンによって作業足場を解体する作業に約3日かかる(ステップB3)。つぎに、クローラクレーンによって既設鋼矢板を引き抜く作業、および既設タイロッドを切断する作業に約1日かかる(ステップB4)。つまり、従来工法では、ここまで累計で約13日かかっているのに対し、本発明に係る改良工法ではそのような作業が必要ない。
【0052】
つぎに、図11Bに示すように、本発明に係る改良工法および従来工法の双方において、クローラクレーンによる新設控え部材12の打ち込み作業に約2日かかる(ステップA1、ステップB5)。つづいて、本発明に係る改良工法では、バックホウによる施工エリアの掘削作業を約1日かけて行った後(ステップA2)、クローラクレーンによって仮設支持材4を設置するとともに、導材6を設置する作業を行う(ステップA3)。一方、従来工法では、導杭を打設するとともに導材6を設置する作業を行った。これらの作業にはいずれも約半日を要した。
【0053】
つぎに、本発明に係る改良工法では、既設連結部材3を切断するとともに、新設矢板11を打ち込む作業に約2日かけた後、新設連結部材13の取り付けに邪魔となる既設控え部材2を引き抜く作業に約半日かかった。一方、従来工法では、クローラクレーンによる鋼管矢板の打設作業に約2日かけた後、クローラクレーンによる導材6の撤去作業および導杭の引き抜き作業に約半日かかった。ここまでの累計施工日数は、本発明に係る改良工法では約6日しかかかっていないのに対し、従来工法では約3倍の約18日もかかっている。
【0054】
つづいて、本発明に係る改良工法では、図11Cに示すように、クローラクレーンによって新設連結部材13を取り付ける作業(ステップA6)、仮設支持材4を撤去する作業(ステップA7)、および施工済みエリアを埋め戻し、次施工エリアを掘削する作業(ステップA8)に、それぞれ約半日しかかからない。以上より、本発明に係る改良工法では、1サイクルの施工に要した累計施工日数は約7.5日である。
【0055】
一方、従来工法では、バックホウによるタイロッド取付部の掘削作業に約1日(ステップB9)、クローラクレーンによるタイロッドの取り付け作業に約半日(ステップB10)、次のタイロッドを設置する箇所の掘削作業および設置済み箇所の埋め戻し作業に約半日(ステップB11)、さらに、クローラクレーンによるH鋼斜杭の引き抜き作業に約1日かかる(ステップB12)。以上より、従来工法では、1サイクルの施工に要した累計施工日数は約21日である。
【0056】
以上の本実施例によれば、本発明に係る改良工法によって矢板式係船岸を改良した場合、施工期間が従来工法の約1/3に短縮されることが示された。なお、通常の施工現場では、上記サイクルを何度も繰り返す必要がある。このため、仮に10サイクルを要する現場を施工する場合、本発明に係る改良工法では、約2ヶ月半で完了できるのに対し、従来工法では、約7ヶ月もかかることとなり、その差は歴然である。
【0057】
なお、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体4は、前述した実施形態や実施例に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0058】
例えば、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法を用いて、既設矢板1の背後にある地盤改良を行ってもよい。具体的には、地盤の液状化対策等を行う場合、横架材41および支持梁材42からなる仮設支持材4を設置した後、各支持梁材42の間からロッドコンパクション等を実行すればよい。この場合、既設連結部材3の設置間隔よりも支持梁材42の設置間隔を広くとれるため、地盤改良作業を行いやすい。
【符号の説明】
【0059】
1 既設矢板
2 既設控え部材
3 既設連結部材
4 仮設支持材(仮設支持枠体)
5 隙間調節部材
6 導材
7 振動防止部材
8 腹起材
9 クローラクレーン
11 新設矢板
12 新設控え部材
13 新設連結部材
41 横架材
42 支持梁材
43 切梁材
44 掛止部材
45 フック部
46 接続部
47 固定ピン
91 バイブロハンマー
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や港湾等において施工された矢板を使用してなる矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の大型化に伴い、水深の大きな係船岸を擁する港湾が全国に複数存在している。しかしながら、多くの係船岸が老朽化していること、計画当初の使用目的が変更される場合があること、あるいは近年、比較的大きな地震が頻繁に発生していることもあって係船岸にも耐震性能を向上する必要性が高まっており、今後、多くの港湾において係船岸を強化する改良工事が必要になる。
【0003】
上述した係船岸の改良工事にあたっては、一般的に、同一の前面法線に沿って新たな構造物を作り直す場合が多い。また、掘り込み式の港湾においては、限られた航路・泊地区域を確保するため、前出し式の岸壁にはできない場合もある。さらに、港湾内での作業用船舶を用いた工事は制約が多くなるため、陸上からの施工が望ましいとされている。
【0004】
ところで、矢板を使用してなる矢板式係船岸は、通常、前面の矢板をタイロッド等で引っ張り、背後の控え材に保持させることで構成されている。このため、水深が大きくなるほど背後の土砂の重量が重くなり、施工上、大きな負担となる。つまり、矢板式係船岸を同様の構造に作り直す場合には、前面の矢板を同じ位置に打設するために、一旦、背後の土砂を全て取り除かなければならない。このため、コストがかかる上、土砂を取り除くための陸上作業が困難であり、現状では、既設矢板の背後に新設矢板を打設しているケースが多い。
【0005】
矢板式係船岸の改良工法として、例えば、(1)仮設矢板を用いる工法、(2)既設矢板を斜坑で支持する工法、(3)タイロッド等で代替する工法が知られている。上記(1)は、工事対象箇所を仮設矢板によって仮締め切りを行った後、背後の土砂を掘り下げて既設構造物を撤去し、新設構造物を造築する工法である。上記(2)は、既設矢板の前面に斜坑を沿打ちして固定し、当該斜坑の水平反力によって既設矢板を保持しながら既設タイロッドを切断し、新設構造物を造築する工法である。上記(3)は、既設タイロッドの代わりに新たなタイロッド等を配置し、その反力によって保持された矢板の背後に新設矢板を打設する工法である。
【0006】
また、上記(1)〜(3)の他に、特開平11−323872号には、既設矢板を海側の構造体から支持する工法も提案されている(特許文献1)。この工法は、海底に沈めた構造体(ポンツーン等)の側面に設けられた油圧ジャッキによって、海側から既設矢板を支持した後、タイロッドを取り外して地盤改良工事等を行うとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−323872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記(1)の工法は、土砂を掘り下げるため陸上作業が困難であり、仮設費が嵩む上、後背地に土砂を除けるための広範囲の敷地が必要になる等の問題がある。また、上記(2)の工法は、仮設費が嵩む上、施工期間が長期化するという問題がある。さらに上記(3)の工法は、新設矢板を打設する毎にタイロッド等の張り替え作業に手間がかかるため、施工期間が長期化するという問題がある。
【0009】
また、特許文献1に記載された発明においては、構造体を沈められない港湾では施工できない上、構造体の運搬に手間がかかるという問題がある。また、海に沈める構造体は、波の影響を受けやすいため、正確に設置するのが困難であり、波の強さによっては流されてしまうおそれもある。さらに、海底の深さに応じた大きさの構造体を必要とするため、水深が10mを超えるような港湾等では、当該水深に応じた構造体を設置すること自体が極めて困難である。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、仮設工が簡単に行えるため施工期間を短縮できるとともに、仮設費を抑えて安価に施工することができる矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る矢板式係船岸の改良工法は、既設矢板と既設控え部材とを既設連結部材で連結してなる矢板式係船岸を、新設矢板と新設控え部材とを新設連結部材で連結してなる矢板式係船岸に改良する改良工法であって、前記既設控え部材の陸側に前記新設控え部材を打ち込む新設控え部材打設ステップと、前記既設矢板の海側面および前記既設控え部材の陸側面に配置される一対の横架材と、各横架材に所定間隔を隔てて架設される複数本の支持梁材とから構成される仮設支持材を設置する仮設支持材設置ステップと、前記既設連結部材を撤去する既設連結部材撤去ステップと、前記新設矢板を打ち込む新設矢板打設ステップと、前記新設矢板と前記新設控え部材とを前記新設連結部材で連結する新設連結部材連結ステップと、前記仮設支持材を撤去する仮設支持材撤去ステップとを有している。
【0012】
また、本発明において、前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記一方の横架材を前記既設控え部材の陸側面に配置する工程に代えて、前記新設控え部材の陸側面または仮設控え部材を打設してその陸側面に前記横架材を設置してもよい。
【0013】
さらに、本発明において、前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記支持梁材の両端部には、前記各横架材の外側面に掛止するフック部が設けられているとともに、前記フック部と前記横架材との隙間をなくすための隙間調節部材が配置されており、前記隙間調節部材によって前記隙間を埋めてもよい。
【0014】
また、本発明において、前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記仮設支持材を設置する場合、前記各横架材と前記各支持梁材とを予め略矩形枠状に組み合わせた仮設支持枠体として設置してもよい。
【0015】
さらに、本発明において、前記新設矢板の打ち込み予定位置上に前記支持梁材が架設されている場合、当該支持梁材の近接位置まで前記新設矢板を打ち込んだ後、当該打ち込み後の新設矢板上に別途、前記支持梁材を架設し、前記打ち込み予定位置上にある前記支持梁材を撤去してもよい。
【0016】
また、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法に用いる仮設支持枠体は、既設矢板と既設控え部材とを既設連結部材で連結してなる矢板式係船岸を、新設矢板と新設控え部材とを新設連結部材で連結してなる矢板式係船岸に改良する改良工法に用いる仮設支持枠体であって、前記既設矢板の海側面および前記既設控え部材の陸側面に配置される一対の横架材と、これら各横架材に所定間隔を隔てて架設される複数本の支持梁材とを略矩形枠状に組み合わせてなる。
【0017】
また、本発明において、前記支持梁材の両端部には、前記各横架材の外側面に掛止するフック部が設けられており、前記フック部と前記横架材との隙間には、当該隙間をなくすための隙間調節部材が配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、仮設工が簡単に行えるため施工期間を短縮できるとともに、仮設費を抑えて安価に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る矢板式係船岸の改良工法の一実施形態を示すフローチャート図である。
【図2】本実施形態において、新設控え部材が打ち込まれ、既設連結部材の一部が露出された状態を示す斜視図である。
【図3】本実施形態において、露出された区域において仮設支持材が設置され、既設連結部材が撤去され、新設矢板が打ち込まれた状態を示す斜視図である。
【図4】本実施形態において、新設連結部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】本実施形態において、仮設支持材を撤去した状態を示す斜視図である。
【図6】本実施形態において、既設控え部材を撤去した状態を示す斜視図である。
【図7】本実施形態において、仮設支持材(仮設支持枠体)を設置した状態を示す平面図である。
【図8】本実施形態において、仮設支持材(仮設支持枠体)を設置した状態を示す正面図である。
【図9】図8の9A−9A線における断面図である。
【図10】本実施形態において、新設矢板を打ち込む状態を示す正面図である。
【図11A】本実施例の矢板式係船岸の改良工法と、従来工法との工程を比較した比較図である。
【図11B】本実施例の矢板式係船岸の改良工法と、従来工法との工程を比較した比較図である。
【図11C】本実施例の矢板式係船岸の改良工法と、従来工法との工程を比較した比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0021】
なお、本発明において、矢板式係船岸とは、岸壁、桟橋、ドルフィン、浮桟橋、物揚場等のように、船舶が接岸、係船する構造物である係船岸のうち、岸壁等の壁体となる矢板と、控え工としての控え部材とをタイワイヤーやタイロッド等の連結部材で連結してなる全ての構造物を含む概念である。
【0022】
また、本発明において、改良しようとする矢板式係船岸を構成する矢板、控え部材および連結部材をそれぞれ既設矢板1、既設控え部材2および既設連結部材3とし、新たに設置する矢板、控え部材および連結部材をそれぞれ新設矢板11、新設控え部材12および新設連結部材13というものとする。
【0023】
そして、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法は、既設矢板1と既設控え部材2とを既設連結部材3で連結してなる矢板式係船岸を、新設矢板11と新設控え部材12とを新設連結部材13で連結してなる矢板式係船岸に改良する方法に関するものである。
【0024】
本実施形態の矢板式係船岸の改良工法を実施する場合、図1および図2に示すように、岸壁等に打ち込まれた既設控え部材2の陸側(背面側)に、新設控え部材12を打ち込む(ステップS1:新設控え部材打設ステップ)。この新設控え部材12は、新たに打ち込まれる新設矢板11を保持するものであり、通常、既設控え部材2よりも剛性や強度の高い鋼矢板や鋼管杭等が使用される。本実施形態では、クローラクレーンに吊り下げたバイブロハンマーを使用し、新設控え部材12を既設控え部材2よりも陸側に打ち込んでいる。なお、新設控え部材12の打ち込み位置は便宜上、陸側に設定しているが適宜選択してよく、打ち込み作業に用いる重機も適宜選択してよい。
【0025】
つぎに、新設矢板11を打ち込もうとする施工エリアの土砂を掘削する(ステップS2:施工エリア掘削ステップ)。これにより、図2に示すように、土中に埋設されていた既設控え部材2や、この既設控え部材2と既設矢板1とを連結していた既設連結部材3が露出される。なお、本実施形態では、施工エリアの掘削作業に際し、バックホウを使用しているが、その他の掘削機を使用してもよい。また、本実施形態では、支持力を高めるため、既設控え部材2が前後方向に二列で設置されているが、この構成に限定されるものではなく、一列であってもよい。
【0026】
つづいて、横架材41および支持梁材42から構成される仮設支持材4を設置する(ステップS3:仮設支持材設置ステップ)。横架材41および支持梁材42は、互いに協働して既設連結部材3の引張力による支持機能を一時的に代替するものである。具体的には、図3,図7および図8に示すように、仮設支持材4は、既設矢板1の海側面および既設控え部材2の陸側面に配置される一対の横架材41と、各横架材41に所定間隔を隔てて架設され、その両端部が各横架材41に掛止される3本の支持梁材42とから構成されている。
【0027】
横架材41は、支持梁材42から受ける引張力を均等に分散させるためのものであり、H鋼等の腹起材によって構成されている。一方、支持梁材42は、既設矢板1にかかる土圧を支持するためのものである。このため、支持梁材42は、施工エリア内の既設連結部材3が受けている全荷重を考慮し、当該荷重を支持しうるように素材や数量を選択する。なお、本実施形態では、3本の支持梁材42を使用しているが、この本数に限定されるものではなく、少なくとも両端を支持する2本の支持梁材42があればよい。
【0028】
また、本実施形態において、支持梁材42は、図7および図8に示すように、H鋼等からなる切梁材43と、この切梁材43の両端部に設けられる一対の掛止部材44とから構成されている。各掛止部材44は、図8に示すように、一端側に鉤状のフック部45を有しており、各横架材41の外側面に掛止されるようになっている。一方、掛止部材44の他端側には、切梁材43の端部を挿入させる箱状の接続部46が設けられており、固定ピン47で連結されるようになっている。
【0029】
なお、本実施形態では、横架材41や支持梁材42として、既製の腹起材や切梁材43(山留材)を用いることで仮設費を抑制しているが、この構成に限定されるものではない。特に、支持梁材42は、切梁材43と掛止部材44とが別体に構成されているが、横架材41の外側面に掛止可能なフック部45を両端に有している限り、一体的に構成されていてもよい。
【0030】
また、本実施形態では、図3に示すように、陸側の横架材41を既設控え部材2の陸側面に配置しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、土圧に対する反力不足等により既設控え部材2を使用できない場合には、別途、H鋼等の仮設控え部材を打設し、当該仮設控え部材の陸側面に横架材41を配置してもよい。また、仮設控え部材の施工が困難な場合には、上述した新設控え部材12の陸側面に横架材41を配置してもよい。
【0031】
さらに、本実施形態では、作業時間の短縮化を図るため、図7に示すように、一対の横架材41と両端の支持梁材42とを予め略矩形枠状に組み合わせた仮設支持枠体4として設置し、別途、中間の支持梁材42を補強用に設置している。しかしながら、この設置方法に限定されるものではなく、既設矢板1の海側面および既設控え部材2の陸側面にブラケット等を取り付け、その上に各横架材41を仮置きした後、支持梁材42を設置してもよい。
【0032】
つぎに、支持梁材42のフック部45と横架材41との間の隙間に隙間調節部材5を設置し、当該隙間を埋める(ステップS4:隙間調節ステップ)。この隙間調節部材5は、フック部45と横架材41との隙間をなくし、既設連結部材3を切断した際の衝撃荷重を低減するためのものである。本実施形態では、図8に示すように、隙間調節部材5として伸縮自在なキリンジャッキ5を使用しており、前記隙間に配置した後、伸長させて締め付けている。
【0033】
なお、本実施形態では、図8に示すように、海側の横架材41を各フック部45の内側面にボルトで固定するとともに、陸側の横架材41はキリンジャッキ5を介してフック部45の内側面にボルト固定することで略矩形状に組み合わせている。また、本実施形態では、隙間調節部材5として既製品のキリンジャッキ5を使用することで仮設費を低減しているが、フック部45と横架材41との隙間を埋められるものであれば、複数枚の鉄板や鋼板を狭持させるようにしてもよい。
【0034】
つづいて、新設矢板11を真っ直ぐに打ち込むための導材6を設置する(ステップS5:導材設置ステップ)。本実施形態において、導材6は、図10に示すように、新設矢板11の前後面と摺接するフレーム状のH鋼等から構成されており、新設矢板11の打ち込み位置に合わせて設置する。なお、本実施形態では、図10に示すように、側面視略T字形状の振動防止部材7が打ち込まれており、この振動防止部材7上に支持梁材42を載置することで新設矢板11を打ち込む際の振動を低減させている。
【0035】
つぎに、既設矢板1と既設控え部材2とを連結している既設連結部材3を撤去する(ステップS6:既設連結部材撤去ステップ)。具体的には、既設連結部材3として、タイワイヤーやタイロッドが用いられている場合、それらを切断して撤去する。このとき、横架材41および支持梁材42が、既設矢板1にかかる土圧を別途、既設控え部材2に支持させている。このため、既設連結部材3を切断しても既設矢板1が土圧によって倒壊することがない。
【0036】
また、本実施形態では、フック部45と横架材41との間に隙間調節部材5を狭持させて締め付け、両者間の隙間を確実に埋めている。このため、既設連結部材3を切断した際、既設控え部材2の陸側面に配置した横架材41が、土圧により海側へ引っ張られるが、その引張方向の加速度が最小限に抑えられるため衝撃荷重が低減する。したがって、横架材41や支持梁材42に無理な荷重がかかって破損してしまうのを防止できる。
【0037】
既設連結部材3を撤去した後、図3および図10に示すように、既設矢板1の背面に新設矢板11を打ち込む(ステップS7:新設矢板打設ステップ)。この新設矢板11は、矢板式係船岸の前面を新たに構成するものであり、通常、既設矢板1よりも剛性や強度の高い鋼矢板や鋼管杭等が使用される。なお、本実施形態では、導材6によって打設法線を維持するため、新設矢板11が正確に鉛直下方へ打ち込まれる。また、新設矢板11の打ち込み作業には、新設控え部材12の打ち込みに使用したクローラクレーン9やバイブロハンマー91を兼用できるため、施工コストが抑えられる。
【0038】
なお、後述するように、支持梁材42を盛り替える際には、土圧の影響により、新設矢板11が海側に押されて前面の法線に若干の誤差が生じる。このため、当該誤差を予測し、新設矢板11の打ち込み位置を予め陸側にずらしておくことが好ましい。これにより、新設矢板11の打ち込み位置の誤差を低減することができる。
【0039】
つづいて、仮設支持材4として支持梁材42を3本以上使用する場合、両端以外の支持梁材42が新設矢板11の打ち込み予定位置上に架設されることとなる(ステップS8:YES)。本実施形態では、図3および図7に示すように、3本の支持梁材42を使用しているため、中間の支持梁材42が、新設矢板11の打ち込み予定位置上に架設されている。このような場合、そのままでは新設矢板11を打ち込めないため、打設の邪魔になる支持梁材42を盛り替える(ステップS9:支持梁材盛替ステップ)。
【0040】
具体的には、図3および図7に示すように、中間の支持梁材42の近接位置まで新設矢板11を打ち込んだ後、当該打ち込み後の新設矢板11上に別途、新たな支持梁材42(図7において点線で示す)を架設するとともに、打ち込み予定位置上に架設されている支持梁材42を撤去する。これにより、支持梁材42による全体の引張力を保持したまま、打ち込み位置上に架設されている支持梁材42を撤去でき、当該位置に新設矢板11を打ち込めることとなる。
【0041】
なお、本実施形態では、3本の支持梁材42を使用しているため、中間の支持梁材42だけを盛り替えているが、4本以上の支持梁材42を使用する場合にも同様に、打設の邪魔になる支持梁材42の盛り替え作業を行えばよい。一方、両端部に配置する2本の支持梁材42しか使用しない場合には、中間に支持梁材42がないため、上述した盛り替え作業は不要である。
【0042】
盛り替え作業を経て、全ての新設矢板11の打ち込みが完了すると(ステップS8:NO)、新設矢板11と新設控え部材12とを新設連結部材13で連結する(ステップS10:新設連結部材連結ステップ)。この新設連結部材13は、新設矢板11にかかる土圧を新設控え部材12に支持させるためのものであり、通常、既設連結部材3よりも大径で剛性や強度の高いタイワイヤーやタイロッド等が使用される。
【0043】
なお、既設控え部材2が新設連結部材13の邪魔になる場合は、当該既設控え部材2を撤去すればよい。また、新設連結部材13の取り付けに際しては、図4に示すように、新設矢板11の海側面および新設控え部材12の陸側面のそれぞれに腹起材8を配置し、当該腹起材8に新設連結部材13を連結する。これにより、新設連結部材13に伝わる反力が均等に新設矢板11や新設控え部材12に伝えられるため、矢板式係船岸への悪影響を防止する。仮に、腹起材8が無い状態で波の影響を受けた場合、新設矢板11がそれぞれ違う動きをし、後に打設する上部コンクリートにクラック等の悪影響を及ぼしてしまうが、これを防止することができる。
【0044】
新設連結部材13を取り付けた後、図5に示すように、横架材41および支持梁材42からなる仮設支持材4を撤去する(ステップS11:仮設支持材撤去ステップ)。このとき、新設矢板11は、新設連結部材13によって新設控え部材12に連結されて引張力が作用しているため、土圧によって倒壊することがない。また、新設矢板11、新設控え部材12および新設連結部材13は、それぞれ既設矢板1、既設控え部材2および既設連結部材3よりも剛性や強度が高められているため、矢板式係船岸自体の耐震性能が向上する。
【0045】
なお、仮設支持材4の撤去に際しては、図7に示すように、一対の横架材41と3本の支持梁材42とを全て組み合わせた仮設支持枠体4のままクローラクレーン等によって吊り上げる。これにより、撤去作業にかかる時間が短縮される。
【0046】
最後に、以上の工程が完了した施工済みエリアを埋め戻す(ステップS12:施工済エリア埋戻ステップ)。その際、図6に示すように、既設控え部材2を撤去してもよいが、施工コスト等を勘案し、撤去せずにそのまま埋めてもよい。
【0047】
以上により、1サイクル分の改良作業が完了するとともに、次の施工エリアがある場合(ステップS13:YES)、上述したステップS2からステップS12の工程を繰り返す。一方、次の施工エリアがなければ(ステップS13:NO)、改良作業を終了する。
【0048】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
1.既設矢板1を一時的に支持する仮設工を簡素化し、施工期間を短縮することができる。
2.仮設工にかかる費用を抑えて安価に施工することができる。
3.仮設支持材4の設置・撤去には、新設矢板11や新設控え部材12の打ち込みに使用する重機を兼用でき、施工コストを抑えることができる。
4.既設連結部材3を切断する際の衝撃荷重を最小限に抑制し、仮設支持材4が破壊されるのを防止することができる。
5.横架材41および支持梁材42を組み合わせた仮設支持枠体4として設置・撤去し、施工期間を短縮することができる。
6.支持梁材42を盛り替えて施工できるため、1サイクルの施工エリアを大きく設定し、作業効率を向上することができる。
【0049】
つぎに、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体4の実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の実施例によって示される特徴に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
本実施例では、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法と、従来工法(2)として上述した既設矢板1の前面を斜坑で支持する工法とを実施し、1サイクル(新設矢板6本分:約8.1m分)あたりの施工期間を比較した。その結果を図11A〜図11Cに示す。
【0051】
図11Aに示すように、従来工法では、まず、杭打機およびクローラクレーンの作業足場を組み立てる作業に約4日かかる(ステップB1)。つぎに、杭打機によるH鋼斜杭の打込作業と、当該H鋼斜杭を前面矢板にピースで連結する作業に約5日かかる(ステップB2)。その後、クローラクレーンによって作業足場を解体する作業に約3日かかる(ステップB3)。つぎに、クローラクレーンによって既設鋼矢板を引き抜く作業、および既設タイロッドを切断する作業に約1日かかる(ステップB4)。つまり、従来工法では、ここまで累計で約13日かかっているのに対し、本発明に係る改良工法ではそのような作業が必要ない。
【0052】
つぎに、図11Bに示すように、本発明に係る改良工法および従来工法の双方において、クローラクレーンによる新設控え部材12の打ち込み作業に約2日かかる(ステップA1、ステップB5)。つづいて、本発明に係る改良工法では、バックホウによる施工エリアの掘削作業を約1日かけて行った後(ステップA2)、クローラクレーンによって仮設支持材4を設置するとともに、導材6を設置する作業を行う(ステップA3)。一方、従来工法では、導杭を打設するとともに導材6を設置する作業を行った。これらの作業にはいずれも約半日を要した。
【0053】
つぎに、本発明に係る改良工法では、既設連結部材3を切断するとともに、新設矢板11を打ち込む作業に約2日かけた後、新設連結部材13の取り付けに邪魔となる既設控え部材2を引き抜く作業に約半日かかった。一方、従来工法では、クローラクレーンによる鋼管矢板の打設作業に約2日かけた後、クローラクレーンによる導材6の撤去作業および導杭の引き抜き作業に約半日かかった。ここまでの累計施工日数は、本発明に係る改良工法では約6日しかかかっていないのに対し、従来工法では約3倍の約18日もかかっている。
【0054】
つづいて、本発明に係る改良工法では、図11Cに示すように、クローラクレーンによって新設連結部材13を取り付ける作業(ステップA6)、仮設支持材4を撤去する作業(ステップA7)、および施工済みエリアを埋め戻し、次施工エリアを掘削する作業(ステップA8)に、それぞれ約半日しかかからない。以上より、本発明に係る改良工法では、1サイクルの施工に要した累計施工日数は約7.5日である。
【0055】
一方、従来工法では、バックホウによるタイロッド取付部の掘削作業に約1日(ステップB9)、クローラクレーンによるタイロッドの取り付け作業に約半日(ステップB10)、次のタイロッドを設置する箇所の掘削作業および設置済み箇所の埋め戻し作業に約半日(ステップB11)、さらに、クローラクレーンによるH鋼斜杭の引き抜き作業に約1日かかる(ステップB12)。以上より、従来工法では、1サイクルの施工に要した累計施工日数は約21日である。
【0056】
以上の本実施例によれば、本発明に係る改良工法によって矢板式係船岸を改良した場合、施工期間が従来工法の約1/3に短縮されることが示された。なお、通常の施工現場では、上記サイクルを何度も繰り返す必要がある。このため、仮に10サイクルを要する現場を施工する場合、本発明に係る改良工法では、約2ヶ月半で完了できるのに対し、従来工法では、約7ヶ月もかかることとなり、その差は歴然である。
【0057】
なお、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法およびこれに用いる仮設支持枠体4は、前述した実施形態や実施例に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0058】
例えば、本発明に係る矢板式係船岸の改良工法を用いて、既設矢板1の背後にある地盤改良を行ってもよい。具体的には、地盤の液状化対策等を行う場合、横架材41および支持梁材42からなる仮設支持材4を設置した後、各支持梁材42の間からロッドコンパクション等を実行すればよい。この場合、既設連結部材3の設置間隔よりも支持梁材42の設置間隔を広くとれるため、地盤改良作業を行いやすい。
【符号の説明】
【0059】
1 既設矢板
2 既設控え部材
3 既設連結部材
4 仮設支持材(仮設支持枠体)
5 隙間調節部材
6 導材
7 振動防止部材
8 腹起材
9 クローラクレーン
11 新設矢板
12 新設控え部材
13 新設連結部材
41 横架材
42 支持梁材
43 切梁材
44 掛止部材
45 フック部
46 接続部
47 固定ピン
91 バイブロハンマー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設矢板と既設控え部材とを既設連結部材で連結してなる矢板式係船岸を、新設矢板と新設控え部材とを新設連結部材で連結してなる矢板式係船岸に改良する改良工法であって、
前記既設控え部材の陸側に前記新設控え部材を打ち込む新設控え部材打設ステップと、
前記既設矢板の海側面および前記既設控え部材の陸側面に配置される一対の横架材と、各横架材に所定間隔を隔てて架設される複数本の支持梁材とから構成される仮設支持材を設置する仮設支持材設置ステップと、
前記既設連結部材を撤去する既設連結部材撤去ステップと、
前記新設矢板を打ち込む新設矢板打設ステップと、
前記新設矢板と前記新設控え部材とを前記新設連結部材で連結する新設連結部材連結ステップと、
前記仮設支持材を撤去する仮設支持材撤去ステップと
を有する矢板式係船岸の改良工法。
【請求項2】
前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記一方の横架材を前記既設控え部材の陸側面に配置する工程に代えて、前記新設控え部材の陸側面または仮設控え部材を打設してその陸側面に前記横架材を設置する、請求項1に記載の矢板式係船岸の改良工法。
【請求項3】
前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記支持梁材の両端部には、前記各横架材の外側面に掛止するフック部が設けられているとともに、前記フック部と前記横架材との隙間をなくすための隙間調節部材が配置されており、前記隙間調節部材によって前記隙間を埋める、請求項1または請求項2に記載の矢板式係船岸の改良工法。
【請求項4】
前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記仮設支持材を設置する場合、前記各横架材と前記各支持梁材とを予め略矩形枠状に組み合わせた仮設支持枠体として設置する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の矢板式係船岸の改良工法。
【請求項5】
前記新設矢板の打ち込み予定位置上に前記支持梁材が架設されている場合、当該支持梁材の近接位置まで前記新設矢板を打ち込んだ後、当該打ち込み後の新設矢板上に別途、前記支持梁材を架設し、前記打ち込み予定位置上にある前記支持梁材を撤去する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の矢板式係船岸の改良工法。
【請求項6】
既設矢板と既設控え部材とを既設連結部材で連結してなる矢板式係船岸を、新設矢板と新設控え部材とを新設連結部材で連結してなる矢板式係船岸に改良する改良工法に用いる仮設支持枠体であって、
前記既設矢板の海側面および前記既設控え部材の陸側面に配置される一対の横架材と、これら各横架材に所定間隔を隔てて架設される複数本の支持梁材とを略矩形枠状に組み合わせてなる仮設支持枠体。
【請求項7】
前記支持梁材の両端部には、前記各横架材の外側面に掛止するフック部が設けられており、前記フック部と前記横架材との隙間には、当該隙間をなくすための隙間調節部材が配置されている、請求項6に記載の仮設支持枠体。
【請求項1】
既設矢板と既設控え部材とを既設連結部材で連結してなる矢板式係船岸を、新設矢板と新設控え部材とを新設連結部材で連結してなる矢板式係船岸に改良する改良工法であって、
前記既設控え部材の陸側に前記新設控え部材を打ち込む新設控え部材打設ステップと、
前記既設矢板の海側面および前記既設控え部材の陸側面に配置される一対の横架材と、各横架材に所定間隔を隔てて架設される複数本の支持梁材とから構成される仮設支持材を設置する仮設支持材設置ステップと、
前記既設連結部材を撤去する既設連結部材撤去ステップと、
前記新設矢板を打ち込む新設矢板打設ステップと、
前記新設矢板と前記新設控え部材とを前記新設連結部材で連結する新設連結部材連結ステップと、
前記仮設支持材を撤去する仮設支持材撤去ステップと
を有する矢板式係船岸の改良工法。
【請求項2】
前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記一方の横架材を前記既設控え部材の陸側面に配置する工程に代えて、前記新設控え部材の陸側面または仮設控え部材を打設してその陸側面に前記横架材を設置する、請求項1に記載の矢板式係船岸の改良工法。
【請求項3】
前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記支持梁材の両端部には、前記各横架材の外側面に掛止するフック部が設けられているとともに、前記フック部と前記横架材との隙間をなくすための隙間調節部材が配置されており、前記隙間調節部材によって前記隙間を埋める、請求項1または請求項2に記載の矢板式係船岸の改良工法。
【請求項4】
前記仮設支持材設置ステップにおいて、前記仮設支持材を設置する場合、前記各横架材と前記各支持梁材とを予め略矩形枠状に組み合わせた仮設支持枠体として設置する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の矢板式係船岸の改良工法。
【請求項5】
前記新設矢板の打ち込み予定位置上に前記支持梁材が架設されている場合、当該支持梁材の近接位置まで前記新設矢板を打ち込んだ後、当該打ち込み後の新設矢板上に別途、前記支持梁材を架設し、前記打ち込み予定位置上にある前記支持梁材を撤去する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の矢板式係船岸の改良工法。
【請求項6】
既設矢板と既設控え部材とを既設連結部材で連結してなる矢板式係船岸を、新設矢板と新設控え部材とを新設連結部材で連結してなる矢板式係船岸に改良する改良工法に用いる仮設支持枠体であって、
前記既設矢板の海側面および前記既設控え部材の陸側面に配置される一対の横架材と、これら各横架材に所定間隔を隔てて架設される複数本の支持梁材とを略矩形枠状に組み合わせてなる仮設支持枠体。
【請求項7】
前記支持梁材の両端部には、前記各横架材の外側面に掛止するフック部が設けられており、前記フック部と前記横架材との隙間には、当該隙間をなくすための隙間調節部材が配置されている、請求項6に記載の仮設支持枠体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【公開番号】特開2012−172313(P2012−172313A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32477(P2011−32477)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【特許番号】特許第4773584号(P4773584)
【特許公報発行日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(502297014)岩倉建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【特許番号】特許第4773584号(P4773584)
【特許公報発行日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(502297014)岩倉建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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