説明

知育玩具

【課題】 自在な高さによる立体形状を表現することができ、使用する者の想像力を喚起させ得る知育玩具を提供する。
【解決手段】 複数の貫通孔4を格子状に整列させてなる基部1と、基部の底面を構成する2底部と、底部と基部との中間に介在される台紙3と、基部の貫通孔に嵌入可能な複数の棒状部材5とを備える。棒状部材は、長さの異なる複数種類とする。また、少なくとも先端表面が異なる色彩を有する。台紙は、表面に形状・模様が描かれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、知育玩具に関し、特に、棒状部材を貫通孔に嵌入して所定形状を完成させることのできる知育玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の知育玩具の中には、基盤に穴を設け、ピン(棒状部材)を穴に差し込むことによって、地形を立体的に表現できる構成のものがあった(特許文献1参照)。この従来技術は、所望の立体形状がピン(棒状部材)の高さによって形成されるように、予め穴の深さを変化させるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−232602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記従来技術は、地球観測衛星等が撮影した衛生画像に基づいて、地形を立体的に表現させるものであるところ、予め所望の立体形状が選定され、当該立体形状に従って計算された深さに穴を穿設するものであった。そして、差し込むべきピン(棒状部材)は、同じ長さのものが使用されており、前記穴の深さに応じて、ピン(棒状部材)の先端の高さが変化するものであった。
【0005】
しかしながら、上記技術は、基盤の穴に沿った所望の立体形状を表現するためのものであって、その形状は穴の深さによって決定されるものであり、これを使用するものの自由な形状を表現させるものではなかった。すなわち、何度も使用する場合、出来上がり形状は常に一定であり、異なる立体形状を表現することはできなかった。また、使用する者の自由な発想による立体形状を表現させることができず、使用する者の創造力を喚起させるものではなかった。
【0006】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、自在な高さによる立体形状を表現することができ、使用する者の想像力を喚起させ得る知育玩具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、複数の貫通孔を格子状に整列させてなる基部と、この基部の底面を構成する底部と、この底部と上記基部との中間に介在される台紙と、上記基部の貫通孔に嵌入可能な複数の棒状部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
上記構成によれば、台紙が底部と基部の中間に介在されていることから、基部の貫通孔を透過して基部の上方から台紙の表面を視認することができる。また、基部は複数の貫通孔が整列される構成であるが、底部によって底面が構成させていることから、格子状に整列された複数の有底筒状部分が複数形成されることとなり、この有底筒状部分に棒状部材を嵌入させることによって、底部から所定の高さに棒状部材を立設させることが可能となる。なお、基部と底部は固着されるものではないので、その中間に介在される台紙を交換することが可能である。
【0009】
上記発明において、前記棒状部材が、長さの異なる複数種類の棒状部材である構成とすることができる。
【0010】
上記構成によれば、貫通孔に嵌入される棒状部材は、その下端が底部に当接して一定の位置となるから、異なる長さに応じて、上端の位置が変化することとなる。この長さの異なる種類は、2種類でもよいが、段階的に長さを異ならせた3種、4種またはそれ以上の多種とすることができる。段階的に異なる長さの棒状部材を多種使用することにより、基部から上方に突出する棒状部材の長さを段階的に立設させることが可能となり、基部の上方に立体形状を出現させることができる。
【0011】
また、上記各発明において、前記棒状部材が、少なくとも先端表面が異なる色彩を有する棒状部材である構成とすることができる。
【0012】
上記構成によれば、基部の貫通孔に嵌入され、底部から立設された状態の棒状部材によって、基部の平面視において色彩を有する模様を出現させることができる。ここで、少なくとも先端表面が異なる色彩とは、適宜面積を有する先端表面に着色する場合のほか、棒状部材の全ての表面に着色する場合を包含する。従って、先端表面にみに着色する場合には、平面視においてのみ模様が出現するが、全ての表面に着色する場合には、平面視に限定されず、正面視または側面視においても模様を出現させることができる。さらに、長さが異なる棒状部材を使用する場合には、さらに、立体形状と模様を同時に出現させることができる。
【0013】
また、上記各発明において、前記基部が、長尺な矩形の紙材を使用したものであって、該矩形のうちの短尺方向を鉛直方向に向けつつ長尺方向を縦横に直交させてなる基部である構成とすることができる。
【0014】
上記構成によれば、複数の紙材を縦横に直交させることにより、格子状の貫通孔が規則正しく整列する基部を構成することができる。また、紙材の肉厚部分を介して貫通孔が隣接することとなり、これらの貫通孔を接近して形成させることができる。
【0015】
さらに、上記発明において、前記底部が、前記基部の底面を形成する平面部と、前記基部の外周端縁を包囲する側面部とで構成された底部である構成とすることができる。
【0016】
上記構成によれば、紙材を直交させた状態において、その外周端縁を包囲することによって、各紙材の位置が安定することとなり、その結果として、格子状の貫通孔の形状が安定することとなる。つまり、紙材を交差させる際には、当該交差位置の相互に切り溝を設けることが必要となり、このような相互の切り溝によって紙材を交差する場合においては、交差する相互の紙材の長尺方向の角度は自由な状態となる。そこで、各紙材の長尺方向両端の位置を確定させることによって、交差状態を直交状態に確定させることができるのである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基部と底部に介在される台紙の表面は、貫通孔を透過して視認できることから、当該台紙表面に予め描かれている図形等を見ながら棒状部材を貫通孔に嵌入することができる。そして、台紙は交換可能であることから、任意の図形が描かれている台紙を使用することにより、様々な図形を棒状部材で立体化させることができる。
【0018】
また、高さが異なる棒状部材を使用することにより、基部から突出する棒状部材先端の位置を変化させることができ、また、棒状部材が色彩を有する場合には、棒状部材によって形成させる形状に色彩を施すことも可能にある。
【0019】
このように、任意の図形を使用して、その立体形状を自在に表現することによって、当該図形をリアルに表現することができるとともに、そのような立体形状または色彩を施す形状を表現させることによって、多種多様な形状を出現させることが可能となり、使用する者の想像力を喚起させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】(a)は棒状部材を嵌入する前の状態を示す平面図であり、(b)は棒状部材を嵌入した状態を示す説明図である。
【図3】(a)はIIIA−IIIA断面図であり、(b)はIIIB−IIIB断面図である。
【図4】他の使用形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態を図1に示す。この図に示すように、本実施形態は、基部1と、箱形の底部2と、この中間に介在される台紙3とを備え、さらに、基部1に形成される貫通孔4に嵌入可能な棒状部材5を備えている。
【0022】
基部1は、長尺な矩形の紙材11,12を縦横に交差させて、貫通孔4を形成するものであり、両紙材11,12は、いずれも同じ幅寸法で設けられており、その短尺方向が鉛直方向に向けられている。そして、縦方向に長尺な複数の紙材11a,11b・・・11zは、それらの平面部分が平行に維持されており、これらの紙材11a〜11zによって、等間隔の溝状が形成され、さらに、横方向に長尺な複数の紙材12a,12b・・・12zが、上記縦方向の紙材11a〜11zに直交して交差することにより、上記溝状部分を等間隔で仕切り、断面形状が矩形(本実施形態では正方形)の貫通孔4を格子状に配置させている。
【0023】
なお、個々の紙材11,12の交差位置には、予め切り溝11A,12Aが幅寸法の1/2の長さで設けられており、この切り溝11A,12Aを相互に他方の紙材11,12に挿入することにより、紙材11,12の上端縁および下端縁が揃うように構成されている。また、図は説明の便宜上、大きな形状の貫通孔を少ない数で描いているが、実際にはもっと細かな形状の貫通孔を多数に構成することが可能である。
【0024】
底部2は、底面部21のほかに、側面部22,23,24,25が設けられた箱形に構成されたものである。底面部21は、台紙3と同じ大きさ(例えば、A4サイズ)で構成され、側面部22〜25は、基部1の周囲を包囲するように構成されている。従って、台紙3は、底部2の底面部21に密着させて底部2に配置させることができ、基部1は、当該台紙3の表面に、紙材11,12の下側端縁を当接させつつ、側面部22〜25の内側に設置することができる。なお、基部1を構成する紙材11,12の長尺方向の寸法は、それぞれ底部2の大きさ(例えば、A4サイズ)に合わせられており、紙材11,12の長尺側先端縁13,14が底部2の側面部22〜25の内側に当接できるようになっている。
【0025】
台紙3は、通常の紙片で構成される。この台紙3の表面には、所望の形状や模様が描かれている。例えば、図示のように白黒模様のパンダPを描いた台紙3を使用することができるほかに、人物画や風景画が描かれた台紙3を使用してもよく、写真を印刷したものでもよい。
【0026】
棒状部材5は、貫通孔4に嵌入できる断面形状を有する部材であり、本実施形態では、正方形の貫通孔4に嵌入させるために、棒状部材5の断面形状を正方形としている。なお、正方形の貫通孔4に嵌入できれば、棒状部材5の断面形状は円形であってもよく、さらには、八角形でもよいものである。さらに、本実施形態の棒状部材5は、長さを段階的に変化させた三種類の棒状部材5を例示している。短尺なもの51、中間的なもの52および長尺なもの53の三種類である。これら三種類の棒状部材51〜53は、先端表面が黒色になっているもの51a,52a,53aと、着色されていないもの51b,52b,53bとが用意されている。これにより、台紙3に描かれている形状・模様に応じて、白色部分と黒色部分とを区別して棒状部材51a〜53bを選択的に使用できるようになっている。
【0027】
本実施形態は、上記のような構成であるから、底部2に台紙3を設置し、さらに基部1を底部2に設置することによって、基本構造が構築されることとなる。このときの状態を図2(a)に示す。この図に示すように、基部1の上方から見ると(平面視において)、紙材11,12の格子模様を除き貫通孔4を透過して、台紙3の形状・模様(図ではパンダP)を視認することができる。なお、図示では、紙材11,12の肉厚分を無視しているが、貫通孔4を透過して視認することができることに相違はない。
【0028】
この状態において、基部1の上方から台紙3の図柄Pを見つつ、その図柄Pに合わせて棒状部材5を貫通孔4に嵌入させることによって、所望の立体形状を基部1の上方に出現させることが可能となるのである。
【0029】
棒状部材5を貫通孔4に嵌入した状態を図2(b)に示す。嵌入させた棒状部材は、高さを複数段階に異ならせた多数種類のものを使用し、一部の棒状部材の先端表面を黒色としている。図示のように、図柄(パンダ)Pの黒色部分には、先端表面が黒色のものを使用し、その他の部分には白色(無色)のものを使用することによって、図柄(パンダ)Pが基部1の上方に出現することとなる。このときの形状は、モザイク模様として表現されることとなる。なお、図は、説明の都合上、各棒状部材5の大きさを、比較的大きなものとして示していることから、モザイク模様の各コマが大きく、図柄に対して円滑な曲線を表現できていないが、この棒状部材5を小さくする(貫通孔も小さくする)ことによって、このモザイク模様の各コマが小さくなり、円滑な曲線を表現することが可能となるものである。
【0030】
また、上記模様の表現と同時に、長さを異ならせることによって、上記形状が立体的となる。図3には、縦横方向の断面図を示す。この図に示すように、複数の棒状部材5が立設している状態において、各棒状部材5の長さが異なることから、リアルな形状を基部1の上方に表現することができる。つまり、異なる長さの棒状部材5は、その下端が底部3に当接することによって、同じ高さに揃うこととなり、当該棒状部材5の長さに応じて、その上端の位置が異なることとなるから、その上端の位置の変化によって、全体的に立体的な形状が構成されるのである。
【0031】
本実施形態は、上記のような構成であることから、台紙2の表面に描かれている図形に沿って、棒状部材5を立設することによって、その棒状部材5による形状を基部1の上方に出現させることができるうえ、使用する者の感性に応じて、突出長を自在に変化させることができることから、独自の起伏を有する立体形状を表現することもできる。従って、よりリアルな立体形状を表現するために棒状部材5の高さを調整(異なる棒状部材に変更)することも可能であり、この場合は、描写的な感覚を養うことができ、個性的な立体形状を表現するために棒状部材5の高さを調整することにより、オリジナルのキャラクターを想像することも可能となる。そして、台紙3を種々変更することによって、所望の形状を立体的に表現することも可能となる。
【0032】
他方、立体形状については、異なる使用態様も考えられる。例えば、地図などに描かれる等高線から立体形状を表現する場合である。図4は、そのような使用例を示している。図4(a)に示すように、台紙3の表面には等高線Tが描かれており、この等高線Tに沿って高さを変更しながら棒状部材5を立設させるのである。等高線Tは、連続する線で囲まれる範囲が同じ高さであるから、等高線Tのうち、最も外側の等高線よりも外に位置する範囲を最も低い棒状部材5を立設し、次の等高線の位置で一段階高い棒状部材5に交換し、さらに、次の等高線の位置でさらに一段階高い棒状部材5に変更するようにして、最も内側の等高線よりも内の範囲には最も高い棒状部材5を立設させるようにするのである。
【0033】
このように、等高線Tに沿って異なる高さの棒状部材5を立設することによって、図4(b)に示すように、等高線Tで描かれた形状を立体的に表現することができるのである。このように、地図等の性格上、高低差を記号で表現するものについて、具体的な立体形状に変換することができることから、地図等の記号と具体的な立体形状とを一致させるような練習になり得るものである。
【0034】
本発明の実施形態および使用形態は上記のとおりであるが、これは、単なる一例である。すなわち、図示することができないが、多色に着色した棒状部材を使用することによって、複雑な模様の立体形状を表現することも可能であることは、本発明の趣旨から明らかである。また、予め撮影した写真等を画像編集機能により、モザイク処理することによって、台紙の表面にモザイク画が描かれたものを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 基部
2 底部
3 台紙
4 貫通孔
5 棒状部材
11,12 紙材
13,14 紙材の長尺方向端縁
21 底面部
22,23,24,25 側面部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を格子状に整列させてなる基部と、この基部の底面を構成する底部と、この底部と上記基部との中間に介在される台紙と、上記基部の貫通孔に嵌入可能な複数の棒状部材とを備えたことを特徴とする知育玩具。
【請求項2】
前記棒状部材は、長さの異なる複数種類の棒状部材である請求項1に記載の知育玩具。
【請求項3】
前記棒状部材は、少なくとも先端表面が異なる色彩を有する棒状部材である請求項1または2に記載の知育玩具。
【請求項4】
前記基部は、長尺な矩形の紙材を使用したものであって、該矩形のうちの短尺方向を鉛直方向に向けつつ長尺方向を縦横に直交させてなる基部である請求項1ないし3のいずれかに記載の知育玩具。
【請求項5】
前記底部は、前記基部の底面を形成する平面部と、前記基部の外周端縁を包囲する側面部とで構成された底部である請求項4に記載の知育玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−100695(P2012−100695A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249071(P2010−249071)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(509102650)有限会社福益工業所 (2)
【Fターム(参考)】