説明

短距離無線システムにおける使用者への触感効果提供

使用者に触感効果を与えるためのシステム、方法および関連するソフトウェアを提供する。
1実施形態では短距離無線相互作用システム内で使用される使用者機器に、ホスト機器と無線通信を行うためのトランシーバを搭載する。使用者機器は更に特定の相互作用事象が発生したことを判定するプロセッサを搭載する。相互作用事象は例えばホスト機器との相互作用に関係する。使用者機器に触感アクチュエータを搭載して、前記プロセッサが予め定められた相互作用事象の発生を検知すると、使用者に触感効果を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に短距離無線通信システムに関わり、更に詳細にはその様なシステム内で相互作用が生じた際に使用者フィードバックを強化することに関する。
【背景技術】
【0002】
近距離場通信(NFC : near field communication)は近接する2つの電子機器が互いに相互作用することを許す無線技術である。NFCシステムの一例は、顧客が商品またはサービスに対して容易に支払いを行うことを可能とする支払いシステムである。作動中、顧客はNFCカードを取引先(merchant)のNFC読み取り機の近くに保持するかまたは、そのカードで読み取り機の上を「叩く(tap)」。カードおよび読み取り機が互いに近接位置に持ち込まれると――およそ10センチメートル――13.56MHzチャンネル上で無線接続がそれらの間に形成され、続いて金銭取引が実施される。この様にして、顧客と取引先との間の相互作用は著しく簡略化され、従来システムに比較して更に短い時間で完遂される。NFC機器の伝送距離が非常に短いので、取引は比較的安全である。支払いシステムに加えて、その他のNFC実施例として公共交通システム、接続制御システムなどを含む。
【0003】
パーソナル・エリア・ネットワーク(PAN : personal area network)は近接する電子機器が互いに相互作用を可能とする別の技術である。しかしながら、NFCと比較してPAN機器は約10メートルまでのより長距離の間で相互作用することが可能であり、2.4GHzの周波数で通信する。PANシステムに適合する機器のいくつかの例として、ブルートゥース(Bluetooth)、ジィグビー(Zigbee)、近赤外線データ・アソシエイション(IrDA : infrared data association)機器、超広帯域(UWB : ultra wide-band)機器が含まれる。PAN機器は通常、個人または排他的グループ(exclusive group)用の単一ネットワーク内での無線データ交換用に使用される。
【0004】
これら、およびその他の短距離無線技術を組み込んでいる機器は、しばしば2つの相互作用を行う機器の一方または両方に組み込まれた、予め定められた相互作用事象が発生した際に、その使用者に対して確認を提供するための仕組みを含む。相互作用事象には、金銭取引の完了、受付可能アクセス制御キーの肯定確認、使用者の受付可能識別番号の肯定確認、サービス購入の完了などが含まれる。その他の型式の表示を、機器が互換機器の範囲内に持ち込まれた時、機器が互換機器の範囲外に持ち出された時、相互作用中にエラーが発生した時に通信するために用意することも出来る。
【0005】
1つの特定事例において、いくつかの都市の公共交通システムは、乗客がその交通システム内の種々の駅に設置されているカード読み取り機に対応した、運賃カードを購入することを認めている。その運賃カードがカード読み取り機の範囲内に持ち込まれると、通信チャンネルがそのカードと読み取り機との間に確立される。システムの設計に依存して、購入またはサービスの料金、すなわち公共交通乗車の代金、は自動的にその運賃カードの値から減額される。そのカードが十分な残高を含んでいる場合、その料金はカードから減額され回転式改札口が開いて乗客は列車の乗車区域へ入る。改札口を開くことに加えて、その処理が成功裏に完了したことを示す、別の表示が与えられる。例えば、カード読み取り機は、ビープ音の様な可聴合図信号、緑色灯および/または減額された金額とその運賃カードに残っている残高の明細の様な可視合図信号も提供する。そのカードに十分な資金が残っていない場合、異なるビープ音、赤色灯等の、別の表示がなされる。
【0006】
いくつかのシステムにおいて、携帯電話機が運賃カードまたは購入カードの代わりに使用出来る。携帯電話機は既に可聴出力を含み、またしばしば可視出力も同様に使用しているので、これらの携帯電話機の出力機構はNFCまたはPANシステム内のある種の事象を表示するために使用できる。その様な相互作用において、購入はその使用者の携帯電話機請求書に振り替えることが出来る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は短距離無線通信システムに含まれるシステムおよび方法を記述している。特に、ある特定相互作用事象が生じた際に、触感効果が使用者に提供されている。なかんずく1つの実施例において、使用者機器はトランシーバ、プロセッサおよび触感アクチュエータを含む無線相互作用システム内で動作可能である。トランシーバはホスト機器と無線で通信するように構成されている。プロセッサは、特定の相互作用事象が発生したか否かを判定するように構成されており、此処で相互作用事象とはホスト機器との相互作用に関するものである。触感アクチュエータは、プロセッサが特定の相互作用事象が発生したと判定した際に、使用者に対して触感効果を押しつけるように構成されている。
【0008】
此処に明示的には開示されていない、本発明の開示のその他の特徴、長所および実現例は、通常の技量を有する当業者には、以下の詳細説明および添付図を吟味することにより明らかであろう。本開示のその様な暗示的実施は此処に含まれるものと意図している。
【0009】
添付図の構成部品は本開示の一般的原理を強調するために図示されている。対応する構成部品の参照記号は、整合性および明瞭性のため必要に応じて図を通して繰り返されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は1つの実施例に基づく無線相互作用システムのブロック図である。
【図2】図2は1つの実施例に基づく、図1に示す使用者機器のブロック図である。
【図3】図3は1つの実施例に基づく無線相互作用システム内で触感効果を提供するための方法を図示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例えば、非接触スマート・カード、近接カード(proximity card)、および近傍カード(vicinity card)の様な非接触集積回路機器は、高速で簡単そして安全なホスト機器との相互作用を可能とするために使用される。通常、短距離相互作用に関しては使用者機器は携帯型で使用者が容易に持ち運べるものである。相互作用を開始するには、使用者機器がホスト機器の近傍に持ち込まれ、これは使用者機器と相互作用を行うための同等の無線通信設備を含んでいる。ひとたび無線通信チャンネルが2台の近接機器の間で確立されると、それらの間の相互作用が行われる。例えば、購入システムで実施される際には、その使用者機器の使用者の購入を適切に関連づける様に情報が交換される。
【0012】
使用者機器とホスト機器との間の相互作用に関して、ある種の事象が行われたことを確認するために、設計者は使用者に対してフィードバックを提供するための仕組みを組み入れている。短距離無線相互作用システムでは、フィードバックは典型的に可聴または可視出力の形式で提供されている。例えば、ホスト機器は典型的に可聴および可視合図信号を与えるための出力装置を含み、これは特定の相互作用事象が発生した事の確認を使用者に提供する。相互作用事象のいくつかの非限定的事例として、2つの機器の間での無線結合の確立、無線結合の切断、ファイル転送の完了、金銭取引の完了等を含む。
【0013】
非接触集積回路機器の様な使用者機器は、典型的には可聴または可視出力設備は含んでいない。従って何らかの相互作用事象の確認は通常ホスト機器により提供される。しかしながら、いくつかの短距離システムでは、携帯電話機が運賃カードまたは購入カードの代わりに使用可能で、NFC技術を使用して近くのホスト機器と相互作用を行える。携帯電話機は可聴出力、また通常は同様に可視出力を提供するための構成部品を既に装備しているので、使用者は使用者機器自体から相互作用事象が生じたことの確認を受け取ることが出来る。使用者インタフェースを更に強化するために、可聴および可視出力に加えて、此処に教えるように別の感覚出力を具備することが可能である。
【0014】
本開示は、短距離無線通信システムにおいて、使用者に触感フィードバックを提供するためのシステムおよび方法を記述している。この教えに依れば、使用者に持ち運ばれる非接触集積回路機器の様な使用者機器は、運動感覚フィードバック(例えば、能動および抵抗力フィードバック)および/または触感フィードバック(例えば、振動(vibration)、振動触覚(vibrotactile)フィードバック、肌触り(texture)、熱など)を使用者に提供するように装備することが可能である。一般的に運動感覚および触覚フィードバックは纏めて「触感フィードバック」または「触感効果」として知られている。触感フィードバックは使用者インタフェースを改善するための合図信号を与えることが出来る。特に、触感効果は短距離無線通信システム内で特定の相互作用事象が発生したことを使用者に確認する上で有効である。この触感フィードバックは可聴および可視フィードバックを補足するために使用可能であり、どの様にして情報が使用者に提供されるかを強化する。
【0015】
本開示は短距離無線相互作用システムを記述しており、この中で使用者機器はホスト機器と、2つの機器が互いに近接した際に相互作用を行う。此処に記述されている短距離無線相互作用システムは、近距離場通信(NFC : near field communication)技術とパーソナル・エリア・ネットワーク(PAN : personal area network)技術とを含む。しかしながら、本開示の教えはまた、2つの近接にある機器間での無線通信を含む他の短距離無線システムをも包含することを理解されたい。他の実施方法および長所は当業者には本開示を理解することにより明らかとなろう。
【0016】
図1は無線相互作用システム10の1つの実施例を図示するブロック図である。この実施例において、無線相互作用システム10は使用者機器12とホスト機器14を含み、これらは比較的短い無線チャンネル16を介して互いに通信する。信号は使用者機器12からホスト機器14へ、またその逆方向に、無線で送信される。使用者機器12およびホスト機器14が相互作用するために、2つの機器は互いに近接した範囲に持ち込まれる。使用者機器12とホスト機器14が通信出来るのが短距離であるため、相互作用は2つの機器の間で排他的に生じるように設計されており、これは本質的に相互作用中のセキュリティーレベルを提供している。
【0017】
典型的に使用者機器12は携帯型機器であり、使用者により持ち運び可能であって、ホスト機器14は比較的固定されたものである。別の実施例では両機器共に携帯型である。各々の機器は無線方式で互いに通信するための信号送信能力を含む。機器の間で無線接続または結合を確立するために、機器の1方または両方が周期的にポーリング信号を送信し、応答を待っている。相手側機器はポーリング信号を検索するように構成されており、2つの機器が互いの範囲内に入った時に、ポーリング信号を受信した機器が応答信号を送信して2つの機器が範囲内に入ったことを確認し、通信チャンネルを確立する。
【0018】
無線接続が確立されると、2つの機器は設計された様に相互作用を行うことが出来る。使用者機器12とホスト機器14との間の相互作用は、例えば金銭取引である。金銭取引システムのいくつかの非限定的事例として、Tap & Go, PayWave, Pay and Go, Touch-n-Go, PayPass, ExpressPay, Blink 等が挙げられる。別の金銭取引には、公共交通システムで使用される運賃カードの様な、前支払いサービス・カードが含まれる。別の実施例において、使用者機器12とホスト機器14との間の相互作用はデータの送信または交換である。相互作用はまた、制限領域へのアクセス制御の様な識別番号チェックも含む。
【0019】
使用者機器12は個々の用途(particular application)に応じて、幾らでも可能な実現方法に基づいて構成することが可能である。例えば、使用者機器12は、非接触集積回路カード、非接触スマート・カード、スマート・カード、近接集積回路カード(proximity integrated circuit card)、近接カード(proximity card)、近傍カード(vicinity card)などである。カードとして実装される場合、使用者機器12は携帯性および格納性を容易にするため、クレジット・カード形状因子(form factor)を有する。使用者機器12はまた、携帯電話機(mobile phone)、セルラフォーン(cellular phone)、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA : personal digital assistant)、デジタル・カメラなど、またはホスト機器14と互いに近接した際に無線で結合することの可能な全ての好適な機器が考えられる。
【0020】
ホスト機器14は無線周波認証(RFID : radio frequency identification)読み取り機、店舗販売時点情報管理(POS : point of service or point of sales)機器の様な小売り金銭登録機(retail register)、またはその他の好適な近接結合読み取り機として構成されている。いくつかの実施例において、ホスト機器14は、NFC対応使用者機器12と誘導的に結合するために13.56MHzで動作する磁気ループ・アンテナを含む。ホスト機器14に磁気ループ・アンテナが装備されている時に、使用者機器12はLC回路を含むはずであり、これはホスト機器14で生成された電場に応答して、使用者機器12で使用するための電力を蓄電するためにキャパシタに充電することが出来る。別の実施例において、ホスト機器14は情報配信機器であって、例えば行き先、指示、広告、クーポン、またはその他の型式の情報をその近傍の使用者機器に提供するための情報キオスク(information kiosk)などである。情報配信機器は広告標識またはポスター、または商人の所在地と関連づけられている。
【0021】
無線相互作用システム10は、幾らでも多くの考えられる用途で使用できるはずである。例えば金銭取引に関しては、無線相互作用システム10は商品を販売するために商人により使用される。無線相互作用システム10は例えば公共交通の様な、サービス向け非接触支払いシステムに含まれることも可能であり、そこでは支払いは自動的に使用者のカードから引き落とされるか、または自動的に使用者の携帯電話機請求書に課金される。また、このシステムは燃料の購入でも使用されて、此処では使用者機器は給油カードである。その他の例として、公衆電話、駐車場、自動販売機などの支払いでの使用を含む。
【0022】
金銭取引に加えて、無線相互作用システム10はまた識別システムでも使用され、此処では使用者機器はその使用者を識別するためのIDカードである。同様に、このシステムはアクセス管理または検問所システム(check point system)として使用可能で、そこでは使用者機器は、その使用者が特定領域、例えば或る特定の人間のみに制限された領域へのアクセスを得ることを許す鍵カードまたはアクセス管理カードである。別の実施例では、無線相互作用システム10は銀行からお金を引き出すための現金自動預入支払機(ATM : automated teller machine)として使用される。無線相互作用システム10はまた、使用者のプロフィールまたは嗜好に基づき、使用者に情報を提供する手段として使用される。例えば、小売業者または広告主は販売、クーポンなどに関する情報を、使用者機器12がホスト機器14を有する小売店、広告標識またはポスターなどに近接した際に提供する。
【0023】
更に別の実施例では、無線相互作用システム10は照合引き合わせシステム(matchmaking system)を含み、その中で使用者機器12とホスト機器14はピアツーピア機器、例えば携帯電話機、PDA等の携帯型機器である。照合または適合個性プロフィール(compatible personality profile)を有する人間が範囲内に居るとき、使用者機器12はその使用者に他の人間が存在することの注意喚起をするように構成されている。この点に関して、潜在的に適合する人間を使用者に、その使用者に気まずい注意を引かせ兼ねない可聴または可視表示抜きで慎重に通知することが可能である。
【0024】
無線相互作用システム10は全ての好適な短距離規格に基づいて構築できる。使用者機器12とホスト機器14との間の通信は、任意の好適な周波数範囲、任意の好適な送信強度を含み、任意の好適な距離で機器間の結合を行うように出来る。いくつかの実施例に於いて、無線相互作用システム10はNFC,PAN、無線PAN(WPAN),Wi−Fiまたはその他の短距離または有限距離規格に基づいて構築されている。
【0025】
無線相互作用システム10は、使用者機器12とホスト機器14の間の相互作用に関する1つまたは複数の特定事象が発生した際に、使用者に対して確認を与えるように構成されている。使用者機器12および/またはホスト機器14はこれらの事象の発生を表示するための出力機器を含む。いくつかの実施例において、この出力機器は無線相互作用システム10に関連する別の機器に、代わりに組み込まれているものも有る。無線相互作用システム10は可聴および/または可視表示器を含み、更に触感効果を使用者に与える様に構成された出力機構を含む。
【0026】
使用者に触感効果を与えるために、1つまたは複数の触感アクチュエータを、使用者機器12の中に組み込むことが可能である。使用者機器12は更に何時1つまたは複数の特定事象が発生したかを判定するための回路および/またはロジックを含む場合がある。1つの事象が発生したと判定された際に、使用者機器12は事象の型式に基づいて適切な触感効果を決定し、使用者にその触感効果を課するように触感アクチュエータに指令する。触感フィードバックを任意の数の特定事象に応答して使用者に与える事が可能である。例えば、使用者機器12とホスト機器14が互いの範囲内に持ち込まれた際に触感フィードバックが与えられ、これにより機器の間で情報伝送または交換が行えることを表示する。事象は機器間での無線接続の確立または切断または接続の喪失である。触覚フィードバックはまた、金銭取引の開始または完了時にも与えられる。べつの実施例において、触感フィードバックは、ファイル転送完了時または使用者が安全規制領域へのアクセスを認証されたと認識された時に与えられる。
【0027】
図2は図1の使用者機器12の1つの実施例を図示するブロック図である。この特定の実施例において、使用者機器12はプロセッサ20、メモリ22、入出力(I/O)機器24、駆動回路26、触感アクチュエータ28、およびトランシーバ30を含む。使用者機器12の構成部品は互いにバス・インタフェース32を介して通信するように構成されている。I/O機器24はキーパッド、タッチ・スクリーン、押しボタン、カーソル制御装置、またはその他のデータ入力機器の様な、入力機構を含む。出力機器には、表示器スクリーン、音響出力装置、LEDまたはその他の可視または可聴出力機器を含む。専用運賃カード、近接カード、近傍カードまたはその他の類似のカードまたは機器などの非接触集積回路機器を含む実施例の様な、いくつかの実施例において、I/O機器24は個別の設計に依ってはオプションであり省略される。
【0028】
トランシーバ30は、ホスト機器14と無線通信するための任意の短距離送信および受信構成部品を含む。トランシーバ30はNFC規格、PAN規格および/またはその他の類似の短距離無線送信規格に基づいて構成される。トランシーバ30は例えば、2.4GHz,13.56MHz、赤外領域周波数などを含む、任意の好適な周波数で信号の送受信を行う。送信強度は比較的弱く他の機器との信号受信を、例えばおよそ10センチ、10メートル以内の様な短距離に制限している。RFIDまたはその他の誘導的結合技術を使用する実施例に関して、トランシーバ30は使用者機器12の構成部品に電力供給するためのLC回路を含む。
【0029】
プロセッサ20はトランシーバ30に対して或る種の情報を送信またはブロードキャストするように指令する。また、ホスト機器14からトランシーバ30で受信された情報はプロセッサ20で処理される。プロセッサ20が使用者機器12とホスト機器14との間の相互作用に関連する予め定められた事象が発生したと判定した際に、プロセッサ20は次ぎに駆動回路26に対して触感アクチュエータ28を駆動し、特定の触感効果を使用者に与えるように指令する。いくつかの実施例において、プロセッサ20は複数の相互作用事象を検知し、各々それぞれの事象に対して特定の触感効果を選択することが出来る。触感アクチュエータ28はこれにより異なる型式の触感効果を個別事象に基づいて提供することが出来る。
【0030】
触感アクチュエータ28は1つまたは複数の振動または力適用機構を含み、これらは振動触覚またはその他の好適な力を使用者機器12に与えることが可能である。触感アクチュエータ28は、電磁アクチュエータ、偏心した物体がモータで回転されている偏心回転体(ERM : eccentric rotating mass)、バネに取り付けられた物体が前後に駆動されている線形共鳴アクチュエータ(LRA : linear resonant actuator)、ピエゾ電気物質、電気活性樹脂、または形状記憶合金の様な「スマート物質(smart material)」を含む。
【0031】
プロセッサ20はホスト機器14へ送られる情報およびホスト機器14から受信される情報を制御し、使用者機器12の全体動作を管理する。メモリ22は、口座番号、識別番号、アクセス・コード、残金、または、ホスト機器14と相互作用するために必要なその他のデータまたは情報の記録を格納する。加えて、メモリ22はホスト機器14と相互作用するための動作に関連したソフトウェア・プログラムの様なプログラムも格納する。更に、メモリ22の中に格納されたプログラムまたはソフトウェアはまた、予め定められた相互作用事象が発生した時を判定するためのロジックも含む。判定される事象に基づき、使用者に提供される適切な触感フィードバックを決定するための追加ロジックも使用される。
【0032】
プロセッサ20は汎用または特定用途プロセッサまたはマイクロ・コントローラで構わない。メモリ22は1つまたは複数の内部固定記憶ユニットまたは取り外し可能記憶ユニットを含む。記憶ユニットは情報、データ、命令、および/またはソフトウェア・コードを格納するように構成できる。記憶ユニットは、随意アクセス・メモリ(RAM)、ダイナミックRAM(DRAM)等の様な揮発メモリ、および/または、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラム可能ROM(EEPROM : electrically erasable programmable ROM)、フラッシュメモリ等の様な不揮発メモリを含む。
【0033】
メモリ22はまた、プロセッサ20が無線相互作用手順を実行可能とするプログラム・コードも格納することが出来る。無線相互作用手順の中で、此処の教えに従っていくつかの手順が実行されて特定相互作用事象が発生した時を判定する。その様な事象の1つが発生する時、使用者に適切な触感フィードバックを与える様に触感アクチュエータ28を駆動させるべく、ロジック・モジュールが駆動回路26に対して指示する。種々のロジック指令または命令がプログラム・コードの中に含まれていて、ホスト機器14との相互作用を可能としている。本開示の無線相互作用プログラムはハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組合せとして実現できる。ソフトウェアまたはファームウェアとして実装された際には、無線相互作用プログラムはメモリ22内に格納され、プロセッサ20で実行することが出来る。ハードウェアとして実装された場合には、無線相互作用プログラムはディスクリート・ロジック回路、特定用途集積回路(ASIC : application specific integrated circuit)、プログラム可能ゲート・アレイ(PGA : programmable gate array)、現場プログラム可能ゲート・アレイ(FPGA : field programmable gate array)等、またはそれらの組合せを用いてプロセッサ20内に実装される。
【0034】
無線相互作用ソフトウェアまたはプログラム、および関連する事象応答触感フィードバック手順はメモリ22の中に格納することが出来る。これらおよびその他のソフトウェア、プログラム、または此処に記載するような実行可能ロジック指令を含むコンピュータ・コードは、任意の好適な処理装置で実行するためにコンピュータ読み取り可能媒体の中に統合することが可能である。コンピュータ読み取り可能媒体は1つまたは複数の好適な物理媒体構成部品上に含むことが可能で、これはソフトウェア、プログラムまたはコンピュータ・コードを測定可能な時間の間格納することが出来る。
【0035】
図3は短距離無線相互作用システム内で1つの機器を使用している使用者に、触感効果を与えるための方法の1つの実施例を図示する流れ図である。特に図3の方法は、図1および2に示す使用者機器12の機能に関連している。別の実施例において、方法は短距離無線相互作用システム内で使用され、触感効果を与えるように構成されている別の使用者機器の動作に関係する場合もある。使用者機器と一緒に使用されるホスト機器は、変化の無い規則的な手順に従って動作することに注意されたい。しかしながら、いくつかの実施例において、ホスト機器が此処に開示されている方法に基づいて追加機能を含む場合もある。
【0036】
方法のブロック40に示されるように、ホスト機器からの予め定められたポーリング信号の検索が行われる。このポーリング信号はホスト機器と例えば、ホスト機器と通信するように構成されている使用者機器の様な機器との間で無線結合相互作用を開始するための任意の好適な信号である。判定ブロック42に示されるように、ポーリング信号が受信されたか否かが判定される。受信されていない場合、ポーリング信号が最終的に受信されるまで、方法はブロック40へ戻る。受信された際には、この方法はブロック44へ進み、これは応答信号がホスト機器へ送られることを示している。応答信号はそのポーリング信号に応答して、その機器がホスト機器の範囲内に有ることを示す情報を含む。
【0037】
このポーリング/応答手順はブロック40,42および44に関して説明された方法が反転され、使用者機器がポーリング信号を送るように構成されまた、ホスト機器が応答するように構成される場合もある。2つの機器がリンクされている方法には関係なく、無線相互作用セッションはそれらの間に確立される。いくつかの実施例において、この相互作用は2つの機器の間で生じ、他の中間ネットワーク機器またはチャンネルを必要としない。しかしながら、無線相互作用システムの別の実施例では社会的ネットワーク・アプリケーションとして実施されており、この中では2つ以上の機器が社会的ネットワークの中でリンクされている。また、これらの機器は近接位置に移動され、最も近くに居る機器のみが互いに通信信号を受信できるようにしている。密接度は通常、範囲内に入るために使用者機器をホスト機器または他の使用者機器に向かって動かしている使用者によって制御される。
【0038】
ブロック46は機器とホスト機器の間で相互作用が処理される状況を示している。個別のアプリケーションおよびシステムに依存して、相互作用セッションは或る種の取引、データ転送、識別認証などを完遂するために、2つの機器の間で任意の個数の通信を含むはずである。判定ブロック48に示すように、予め定められた相互作用事象が発生したか否かが判定される。予め定められた相互作用事象は2つの機器の間での相互作用セッションに関連する全ての好適な事象を含む。予め定められた事象が発生しなかった場合この方法はブロック46へ戻り、相互作用セッションの処理が継続される。
【0039】
予め定められた事象が発生したと判定されると、この方法はブロック50へ進み、これは適切な触感効果を使用者に伝えることが決定されたことを示す。この触感効果はブロック48に関連して判定された予め定められた事象に基づいている。適切な触感効果が決定されると、ブロックはその触感効果が開始されることを示す。触感効果または触感フィードバックが使用者に対して使用者機器を介して与えられるかまたは、使用者に対して無線相互作用システム内のその他の機構、例えば使用者がその上に立っているプラットフォームなどを用いて与えられる。
【0040】
2つの機器間の相互作用で必要とされる処理時間は比較的短く、使用者には感知出来ない程度である。この点に関して使用者は触感効果が感じられるまで単に使用者機器をホスト機器に向かって動かすだけのはずである。使用者が触感効果を相互作用のある特定事象の確認として受け取ると、使用者はその相互作用事象が生じたことの追加保証を得る。しかしながら、他の型式の触感効果を使用者に与えて、追加動作を使用者側に要求する1つまたは複数の事象を示すことも可能である。
【0041】
此処に記述されたステップ、処理または操作はソフトウェアまたはファームウェアの中で実現できる全てのモジュールまたはコード・シーケンスを表している。この点に関して、これらのモジュールおよびコード・シーケンスは、物理的構成部品の中で特定の論理ステップ、処理、または操作を実行するための命令または指令を含むことが可能である。更に、此処に記述された1つまたは複数のステップ、処理および/または操作は、基本的に同時に、または明示的に記述されたのとは異なる順序で実行できることは、当業者には明らかであることを理解されたい。
【0042】
此処に記述した実施例はいくつかの実現例を表わすためのものであり、本開示を特定の実施例に必ずしも限定することを意図するものではない。それどころか、当業者には理解されるように、種々の修正変更をこれらの実施例に加えることが可能である。全てのその様な修正変更は本開示の精神および範囲に含まれ、添付の特許請求項で保護されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線相互作用システム内で動作可能な使用者機器であって:
ホスト機器と無線で通信するように構成されたトランシーバと;
ホスト機器との相互作用に関係する特定の相互作用事象が発生したか否かを判定するように構成されたプロセッサと;
プロセッサが特定相互作用事象が発生したと判定した際に、使用者に触感効果を与えるように構成された触感アクチュエータとを含む、前記使用者機器。
【請求項2】
請求項1記載の使用者機器が更に、トランシーバがホスト機器へ送信する情報を格納するように構成されたメモリを含み、該メモリが更にトランシーバがホスト機器から受信した情報を格納するように構成されている、前記使用者機器。
【請求項3】
請求項2記載の使用者機器において、メモリが更にプロセッサが特定相互作用事象の発生を判定可能とするために、プロセッサで実行可能なロジックを含むように構成されている、前記使用者機器。
【請求項4】
請求項2記載の使用者機器において、メモリが差引勘定残高に関連する情報を格納するように構成された、前記使用者機器。
【請求項5】
請求項2記載の使用者機器において、メモリがアクセス制御または認証識別情報に関連する情報を格納するように構成されている、前記使用者機器。
【請求項6】
請求項1記載の使用者機器が更に、プロセッサからの指令に応答して触感アクチュエータを駆動するように構成された駆動回路を含む、前記使用者機器。
【請求項7】
請求項1記載の使用者機器が更に、クレジット・カード形状因子の寸法とほぼ等しい寸法を有し、トランシーバ、プロセッサおよび触感アクチュエータを保持するように構成されたハウジング(housing)を含む、前記使用者機器。
【請求項8】
請求項1記載の使用者機器において、トランシーバが特定周波数範囲内のポーリング信号を検索するように構成されている、前記使用者機器。
【請求項9】
請求項8記載の使用者機器において、トランシーバとホスト機器が互いに短距離位置に配置された際にトランシーバがホスト機器と通信するように構成されている、前記使用者機器。
【請求項10】
請求項9記載の使用者機器において、短距離がおよそ10センチメートル程度である、前記使用者機器。
【請求項11】
ひとつの方法であって:
無線接続をホスト機器と確立し;
ホスト機器との相互作用に関連する予め定められた相互作用事象が発生したか否かを判定し;
予め定められた相互作用事象が発生したと判定された際に、触感効果を使用者に対して開始する、ことを含む前記方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、無線接続の確立が更に:
ホスト機器からのポーリング信号を検索し;
ポーリング信号が受信されたか否かを判定し;
ポーリング信号が受信された際にホスト機器に応答信号を送信する、ことを含む、前記方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、触感効果の開始が更に、使用者に与える適切な触感効果を決定することを含む、前記方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、適切な触感効果が予め定められた相互作用事象に基づいている、前記方法。
【請求項15】
請求項11記載の方法が更に:
複数の相互作用事象の発生を判定し;
個々の相互作用事象の発生に基づく、複数の各々個別の触感効果を開始することを含む、前記方法。
【請求項16】
コンピュータ読み取り可能媒体上に格納され、プロセッサによって実行されるように構成された触感効果提供プログラムであって:
無線接続がホスト機器と確立した事を判定するように適合されたロジックと;
ホスト機器との相互作用を処理する様に適合されたロジックと;
ホスト機器との相互作用を分析し、予め定められた相互作用事象の発生を判定するように適合されたロジックと;
予め定められた相互作用事象に基づき、使用者に提供する適切な触感効果を決定するように適合されたロジックを含む、前記触感効果提供プログラム。
【請求項17】
請求項16記載の触感効果提供プログラムにおいて、無線接続がホスト機器と確立した事を判定するように適合されたロジックが更に、使用者機器がホスト機器の短距離範囲内に入った事を判定するように適合されている、前記触感効果提供プログラム。
【請求項18】
請求項17記載の触感効果提供プログラムにおいて、短距離範囲がおよそ10センチメートルまでの距離を含む、前記触感効果提供プログラム。
【請求項19】
請求項17記載の触感効果提供プログラムにおいて、短距離範囲がおよそ10メートルまでの距離を含む、前記触感効果提供プログラム。
【請求項20】
無線相互作用システムであって:
1つまたは複数の使用者機器と;
ホスト機器の近接位置内に居る携帯型使用者機器に対してポーリング信号を送信するように構成されたホスト機器を含む無線相互作用システムにおいて、
使用者機器がホスト機器の近接位置に持ち込まれた際に、使用者機器がホスト機器に応答信号を送信し、使用者機器とホスト機器との間で無線接続を確立し;
無線接続が確立された際に使用者機器とホスト機器との間の相互作用に関連する相互作用事象の発生が判定された時に、ホスト機器に近接した使用者機器の使用者に触感効果が与えられる、前記無線相互作用システム。
【請求項21】
請求項20記載の無線相互作用システムにおいて、各々の1つまたは複数の使用者機器が、触感効果を使用者に与えるように構成された1つの触感アクチュエータを含む、前記無線相互作用システム。
【請求項22】
請求項20記載の無線相互作用システムにおいて、ホスト機器が触感効果を使用者に与えるように構成された機構に関連している、無線相互作用システム。
【請求項23】
請求項20記載の無線相互作用システムにおいて、使用者機器が非接触集積回路機器、非接触スマート・カード、近接カード、近傍カード、近接結合機器、公共交通運賃カード、給油カード、携帯電話機、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、識別認証カード、鍵カードまたはアクセス制御カードからなるグループから選択されている、前記無線相互作用システム。
【請求項24】
請求項20記載の無線相互作用システムにおいて、ホスト機器が近接結合読み取り機、無線周波認証(RFID)読み取り機、店舗販売時点情報管理機器および店舗サービス時点情報管理機器からなるグループから選択されている、前記無線相互作用システム。
【請求項25】
請求項20記載の無線相互作用システムにおいて、ホスト機器が比較的固定されている、前記無線相互作用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−525267(P2011−525267A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507504(P2011−507504)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/037640
【国際公開番号】WO2009/134545
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(399047149)イマージョン コーポレイション (57)
【Fターム(参考)】