説明

石油用乳化剤としての石油スルホン酸ナトリウム混合物

【課題】高分子量の天然石油スルホン酸ナトリウムの代替品として使用することのできる乳化剤組成物に関する。
【解決手段】油と混合して潤滑剤を製造するのに適した乳化剤組成物であって、A)次の諸供給原料:i)石油、ii)直鎖モノアルキルベンゼン、iii)直鎖ジアルキルベンゼン、iv)枝分かれ鎖モノアルキルベンゼン、及びv)枝分かれ鎖ジアルキルベンゼン、の少なくとも1種がスルホン化された少なくとも1種の生成物と、B)少なくとも1種の直鎖又は枝分かれ鎖アルキルアリールスルホン酸塩と、を含有する、乳化剤組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
私は、米国特許法第120条に基づき、出願日2003年6月9日、発明の名称「石油用乳化剤としてのスルホン酸ナトリウム混合物(SODIUM SULFONATE BLENDS AS EMULSIFIERS FOR PETROLEUM OILS)」の米国仮出願第60/476,620号に対する利益を請求する。
〔発明の背景〕
〔1.発明の分野〕
本発明は、高分子量の天然石油スルホン酸ナトリウムの代替品として使用することのできる乳化剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
〔2.関連技術の記述〕
石油スルホン酸ナトリウムは、切削油、作動液、金属加工潤滑剤等として用いられる乳化可能な潤滑組成物を配合するときの主要乳化剤として広く用いられている。
石油スルホン酸塩は、ホワイト油と一緒に、ラフィネートを発煙硫酸で処理することにより、伝統的に商業的に製造されている。石油スルホン酸塩は、金属加工用途において、北米市場では年間4000万ポンドに至るまで、世界的規模ではその2倍が使用されている。
【0003】
ホワイト油及び石油スルホン酸塩を製造するための伝統的方法は、複雑であり、しかも、危険物質が利用されるため、また、危険な副産物が形成され、結果的に該副産物を廃棄する必要があるため、潜在的に危険である。これらの2つの要因は、石油スルホン酸塩のコストに大きな影響を及ぼし、しかも、この非常に重要な生成物の製造及び供給を危険な状態に置くことがある。
【0004】
石油スルホン酸ナトリウムは典型的には、高度に精製された石油製品(例えば、ホワイト潤滑油、鉱油、及びある品位のトランス油)が製造される精製工程の副産物として製造される。高度に精製されたこれら石油製品は、精製された石油蒸留物又はラフィネートを発煙硫酸で処理することによって製造される。発煙硫酸は、該油の成分と反応して、スルホン酸を生成する。スルホン酸の幾つかは油溶性であり、スルホン酸の幾つかは水溶性であり、従って、2相系が形成される。それら2つの相は2つの層に分離し、それら層の一方は、油溶性の、赤褐色又はマホガニー色(mahogany;黒味がかった赤褐色)のスルホン酸を含有する油層であり、他方は、樹脂状物質、未反応の硫酸、及び水溶性スルホン酸即ちグリーン(green)スルホン酸を含有する酸性スラッジ層と一般に呼ばれる水溶性層である。次いで、それら層は分離され、油溶性スルホン酸は、通常それらのナトリウム塩の形態で該油層から回収される。
【0005】
それらマホガニー色スルホン酸は、格別に油溶性であるが、乳化可能な石油製品(例えば、金属を形成するための可溶性切削油、作動液、金属加工潤滑液等)を調製する場合、広く用いられるようになった。酸性油層は、中和されて、ナトリウム塩を作り、極性溶媒(典型的には、アルコール)で抽出されて、油相の大部分を分離し、且つ、石油スルホン酸ナトリウムの活性を増大させる。この種のプロセスは、米国特許第1,930,488号明細書で概略的に検討されている。
上記プロセスによるホワイト油の製造は益々非経済的になってきており、結果として、ホワイト油精製の副産物、スルホン酸塩の生産量は、大幅に減少している。このことによって、石油スルホン酸ナトリウムの著しい品不足が放置されてきた。
【0006】
天然石油スルホン酸塩に関するもう1つの主な不都合は、それらの品質が調和しておらず、それらの乳化特性にばらつきが生じていることである。乳化特性を改善するために、異なる種類の第2の界面活性剤(例えば、脂肪酸塩)がしばしば添加される。使用される第2の界面活性剤の量は、使用されるスルホン酸塩の品質によって変わる。
米国特許第3,959,399号明細書には、アルケン反応物を用いてモノアルキルナフタレンを生成する、ナフタレンのアルキル化において、メタンスルホン酸と活性Pを含有する酸とから成り、約2:1〜1:2の比(最適比は約1:1)で利用される混合プロトン酸触媒を使用することによって、ポリアルキルナフタレン(とりわけ、ジアルキルナフタレン)を抑制することが開示されている。該反応は、該混合触媒に関して好ましくは無水条件で行われ、生成物は、石油化学における解乳化剤(emulsion breakers)としての有用性だけでなく、他の界面活性剤としての有用性をも示すと言う。
【0007】
米国特許第4,140,642号明細書には、金属加工用潤滑剤を形成するための、鉱油と混合するのに適した乳化剤組成物であって、2つの異なるピークを有する分子量分布であって、一方のピークは好ましくは270〜400の範囲にあり、他方のピークは350〜600の範囲にあり、それらピークは少なくとも80異なる分子量分布を有する複数のアルキルアリールスルホン酸の塩の混合物を含有する乳化剤組成物が開示されている。それら酸の当量は、C=F(M)[式中、Cは濃度を示し、Mは個々の酸の当量を示す]の関数であって、2つの異なる、当量の最大値、M及びM(M<M)を有する関数に従って分布する。枝分かれ鎖C12〜C16のアルキルo−キシレンスルホン酸5〜95重量%と、枝分かれ鎖C20〜C28のアルキルベンゼンスルホン酸5〜95重量%との混合物は、特に好ましい組成物であり、特に、該混合物が、ナフテン系鉱油と混合されることにより、安定な乳化可能な金属加工性潤滑剤を形成する場合、そうである。
【0008】
米国特許第4,482,755号明細書には、不均一触媒の存在下、比較的穏かな条件下、アルキルベンゼン溶媒溶液中でテトラアルキルジフェノキノンを水素化し;結果として得られたテトラアルキルビフェノールから該触媒を除去し;その後、強酸触媒の存在下で該アルキルベンゼン溶媒溶液を加熱して、高収率の比較的純粋なビフェノールとパラ置換のアルキルベンゼン誘導体とを回収する;ことによって、4,4’− ビフェノールとtert−アルキル置換アルキルベンゼン誘導体とを生成することが開示されている。
【0009】
米国特許第4,873,025号明細書には、式
【化1】


(式中、R’は、C〜C20のアルキル基を表わし;Mは、水素、金属、アンモニウム又はアミンイオンを表わす)のアルキルキシレンスルホン酸塩化合物を含有する組成物が開示されている。これらの組成物は、界面活性剤として、特に、油を回収する技術に有用であると言われている。
【0010】
米国特許第5,889,137号明細書には、ごく僅かなフェノールとホルムアルデヒドとを放出するフェノールアルキル化ポリマーを形成することが開示されている。該フェノールアルキル化ポリマーは、フェノールモノマーと、少なくとも1種のスチレン誘導体と、アリールジオレフィンとから得られる。フェノールモノマー、スチレン誘導体及びアリールジオレフィンの他に、他の反応物を導入して、特定の特性を有する生成物を生成することができる。
【0011】
米国特許第6,043,391号明細書には、芳香族分子又は置換芳香族分子とアルケンスルホン酸とから誘導されるアニオン界面活性剤、及びそれらを調製する諸方法が開示されている。該アリール化合物は、スルホン酸によって中和される前、アルケンスルホン酸を用い一段階でアルキル化されスルホン化される。それら方法は、官能性スルホン酸塩基が芳香環に付着するよりむしろアルキル鎖の末端に付着するのを可能にし、従って、選択的置換基(枝分かれ、直鎖又はアルコシル化又はそれらの組合せ)が、スルホン化及びアルキル化の前、該アリール化合物の上に配置されるのを可能にすると言う。α−オレフィンの薄膜スルホン化によって生成されるアルケンスルホン酸は、アルキル化ベンゼン、モノ置換芳香族化合物、ポリ置換芳香族化合物、アルキルベンゼン、アルコシル化ベンゼン、多環式芳香族化合物、モノ置換多環式芳香族化合物、ポリ置換多環式芳香族化合物、ナフタレン、アルキルナフタレン、フェノール、アルキルフェノール、アルコシル化フェノール、及びアルコシル化アルキルフェノールアルキル置換環状化合物、アルコシル化アルキルフェノールアルキルポリ置換環状化合物、アルコシル化アルキルフェノールアルキル置換多環式化合物、又はアルコシル化アルキルフェノールアルキルポリ置換多環式化合物に使用され、その結果、該薄膜スルホン化が行われる間に用いられる直鎖又は枝分かれのα−オレフィンから誘導される追加のアルキル基を有する対応のスルホン酸を生成する。
【0012】
米国特許第6,225,267号明細書には、油と混合して潤滑剤を形成するのに適した該乳化剤組成物が開示されていて、この組成物は、約15重量%〜約30重量%の活性含有量を有する天然石油スルホン酸の、少なくとも1種の非抽出塩と;少なくとも1種の枝分かれ鎖アルキルアリールスルホン酸又はその塩と;少なくとも1種の直鎖アルキルアリールスルホン酸又はその塩と;結果として得られる乳化剤組成物の平均当量を調整するための、任意的な、少なくとも1種の他のスルホン酸又はその塩と;を含有する。
公開された欧州特許出願第0121964A1号明細書には、アルキルアリールスルホン酸塩の濃縮組成物が開示されており、中和剤を少なくとも10%w/w含有する水溶液を、少なくとも1種のC2〜9飽和アルコールと混合し、結果として得られる混合物を使用してC8〜18アルキルアリール(キシレン又はトルエン)スルホン酸を中和するプロセスであって、相対量は、結果として得られる中和された混合物が、アルキルアリールスルホン酸塩の100重量部当り少なくとも1種のアルコールを5〜40重量部含有するようなものであるプロセスが提供される。得られた流動可能液体の濃縮組成物は、取り扱いが容易な物質であり、向上した油回収プロセスという用途がある。
【0013】
上記の米国特許第3,959,399号明細書は、ジョージ(George)A.オラー(Olah),フリーデルクラフツ反応及び関連反応(Friedel-Crafts and Related Reactions),第2巻,パート1,Interscience−Wiley,第1頁〜31頁、第69頁〜71頁及び第180頁〜186頁(1964)に言及している。この文献は、種々の芳香族化合物(例えば、単環式及び多環式の炭化水素、フェノール、アミン、チオフェン、フラン等)と、アリール置換オレフィン、スチレン及びアルキルベンゼン等を包含する単純オレフィンとのカチオン核アルキル化(cationic nuclear alkylation)について検討している。第24頁〜25頁に渡る段落には、強いプロトン酸は、オレフィンを芳香族化合物と反応させるための非常に有効な触媒であることが開示されている。硫酸、リン酸、アルカンスルホン酸、及びフッ化水素は、プロペンとベンゼンの縮合のための有効な触媒であると言う。
前述の開示内容は、言及することによって、その全てがそのまま本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
〔発明の概要〕
次の記述に関し、便宜上、幾つかの表示(designation)を用いる。ここに、それらを記載する:
スルホン酸塩に関するエマルション試験方法 − 脱イオン水中に10%若しくは20%のエマルションか又は90/10のホワイト油/スルホン酸塩の混合物を用いる。
【0015】
スルホン酸塩に関する腐食試験方法 − エマルションが、並の(fair)性能ないし良好な性能を示した場合、腐食試験を行った[注釈:陰性の(negative;思わしくない)エマルションに関する腐食試験の実施は、信頼できない結果を生じることがある]。用いた手順は、修正ASTM D4627の方法に類似した。詳細は下記の通りである:
1.試験を行ったエマルションは、95/5の脱イオン水/可溶性油ベースの混合物であって、その可溶性油ベースが80/20のホワイト油/スルホン酸塩の混合物を含有するものであった。
2.前記試験は、10mm×35mmのプラスチック製ペトリ皿に入れた鉄チップ2.0gを用いて行った。
3.前記エマルションは、鉄チップ上に注ぎ、該チップを完全に浸漬して、前記ペトリ皿を満たした(5〜10ml)。
4.前記エマルションは、20分間、前記ペトリ皿の中に放置し、次いで、穏かに振盪することによって徐々に排水し、前記鉄チップから過剰液体を除去した。
5.前記鉄チップは次いで、前記ペトリ皿に入れて蓋を取り外して一晩中(16〜24時間)放置し、次いで、合格(腐食なし)又は不合格(腐食あり)として評価した。まれに、ほんの僅かのチップが腐食した。その場合、それらチップの数を数えて、10個未満の腐食チップが存在した場合、限界的(marginal;かろうじての)合格(腐食なし)と記録した。
【0016】
場合によっては、候補物質PSR(とりわけ、合成物質)は、天然Dと70/30の比では乳化せず、そのため、80/20、85/15及び90/10の比で実験を行って、それらのエマルション性能及び腐食性能を評価した。
合成直鎖A − 合成直鎖のモノアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩及びジアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(当量430)[パイロットケミカル(Pilot Chemical)からのアリストネート(Aristonate)L];
合成直鎖B − 合成直鎖のモノアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩及びジアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(当量460)[パイロットケミカルからのアリストネートM];
合成直鎖C − 合成直鎖のモノアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩及びジアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(当量520)[パイロットケミカルからのアリストネートH];
合成直鎖D − 合成直鎖のベンゼンスルホン酸ナトリウム塩[クラリアント(Clariant)からのフォングラポル(Fongrapol)PSSR];
合成直鎖E − 合成直鎖のベンゼンスルホン酸ナトリウム塩[ナビーン・アディティブ社(Naveen Additives Ltd.)からのマナス(Manas)S−301];
合成直鎖F − 合成直鎖のベンゼンスルホン酸ナトリウム塩[キメス(Kimes)からのサンスル(Sansul)455];
【0017】
合成枝分かれA − 合成枝分かれ鎖のモノアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(当量520)[インフィネウム(Infineum)からのシナクト(Synacto)246];
合成枝分かれB − 合成ドデシルo−キシレンスルホン酸ナトリウム塩(当量390)[インフィネウムからのシナクト476];
天然A − 天然石油スルホン酸ナトリウム(当量580〜600)[ペンレコ(Penreco)からのペトロスル(Petrosul)HX−60];
天然B − 天然石油スルホン酸ナトリウム(当量540〜560)[クロンプトン(Crompton)からのペトロナート(Petronate)HH];
天然C − 天然石油スルホン酸ナトリウム(当量520〜560)[クロンプトンからのペトロナートHMW];
【0018】
天然D − 天然石油スルホン酸ナトリウム(当量460〜480)[クロンプトンからのペトロナートHL−I];
天然E − 天然石油スルホン酸ナトリウム(当量415〜445)[クロンプトンからのペトロナートL];
天然F − 典型的にはエクソン・アメリカ・コア(Exxon America Core)600から製造される600SUS石油がスルホン化された生成物(当量約550〜580);
天然G − 天然スルホン酸ナトリウム[日本、マツムラ・オイル・リサーチ社(Matsumura Oil Research Co.)からのスルフォル(Sulfol)430];
天然H − 天然スルホン酸ナトリウム[日本、マツムラ・オイル・リサーチ社からのスルフォル465];
天然I − 天然スルホン酸ナトリウム[チューハイ・ダチェング・ケミカル社(Zhuhai DaCheng Chemical Co.)からのもの];
天然J − 天然スルホン酸ナトリウム[チューハイ・ダチェング・ケミカル社からのもの];
【0019】
合成/天然混合物A − 次の諸供給原料:
600SUS石油[典型的には、エクソン・アメリカズ・コア600から製造されたもの]54.0〜58.0%;
直鎖(約C12〜C14)ジアルキルベンゼン[ビスタ・ケミカル(Vista Chemical)からのV9050]24.0〜28.0%;
直鎖(約C20〜C24)モノアルキルベンゼン[パイロット・ケミカルからのアリストール(Aristol)AW]16.0〜19.0%
の混合物が共スルホン化された生成物;
合成/天然混合物B − 次の諸供給原料:
600SUS石油[典型的には、エクソン・アメリカズ・コア600から製造されたもの]54.0〜58.0%;
直鎖(約C12〜C14)ジアルキルベンゼン[SASOLケミカル(Chemical)からのV9050]42.0〜46.0%
の混合物が共スルホン化された生成物。
【0020】
アメリカズ・コア600の特性:
【表1】

【0021】
現在、北米と欧州の両方において、大きい当量の天然石油スルホン酸ナトリウム(例えば、天然C)の数量不足が予想されている。従って、本発明者らは、十分な腐食防止を与えるが、金属加工流体のエマルション安定性に悪影響を及ぼさない代替品を決定する研究を開始した。
金属加工用途における石油スルホン酸塩の如何なる代替品(以下「石油スルホン酸塩代替品」又は「PSR」という)のための性能調和(performance match)も典型的には、少なくとも3種の成分:油溶性乳化剤、水溶性乳化剤及び溶媒、を含有する基礎配合物から創り出される。溶媒は通常、パラフィン油であり、これは、石油スルホン酸塩代替品に流動性を与えるために用いられる。石油スルホン酸塩代替品の最終配合物は、他の諸成分を含有することがあり、それぞれ、第2の機能(例えば、カップリング、消泡、固形分ブースティング(solid boosting)、等)を満たすために用いられる。
【0022】
本発明による好ましい石油スルホン酸塩代替品は、合成/天然混合物Aと合成枝分かれA(当量520)との混合物(好ましくは50/50の混合物)である。それは、天然Dと一緒に70/30で並のエマルションを与え、且つ、腐食試験(ASTM D4627)を合格した。この性能は、大きい当量の天然石油スルホン酸ナトリウムの性能に類似した。
【0023】
もう1つの好ましい石油スルホン酸塩代替品は、
A)ジアルキルベンゼン[メリーランド州、SASOLバルティモア(Baltimore)からのV9050]44%と600SUS油[エクソン・モービル・アメリカズ・コア(Exxon Mobil Americas Core)600]56%との混合物であって、共スルホン化されて、約527の当量を有する62%活性スルホン酸ナトリウムになっている混合物(合成/天然混合物B)約10〜20重量%と、それに相当するものとして、
B)合成枝分かれA約80〜90重量%と
の混合物である。
【0024】
更にもう1つの好ましい石油スルホン酸塩代替品は、
A)ジアルキルベンゼン[メリーランド州、SASOLバルティモアからのV9050]44%と600SUS油[エクソン・モービル・アメリカズ・コア600]56%との混合物であって、共スルホン化されて、約527の当量を有する62%活性スルホン酸ナトリウムになっている混合物(合成/天然混合物B)約30重量%と、
B)合成枝分かれB約70重量%と
の混合物である。
【0025】
本発明は、更に詳しくは、油と混合して潤滑剤を製造するのに適した乳化剤組成物であって、
A)次の諸供給原料:
i) 石油、
ii) 直鎖モノアルキルベンゼン、
iii) 直鎖ジアルキルベンゼン、
iv) 枝分かれ鎖モノアルキルベンゼン、及び
v) 枝分かれ鎖ジアルキルベンゼン、
の少なくとも1種がスルホン化された少なくとも1種の生成物と、
B)少なくとも1種の直鎖又は枝分かれ鎖アルキルアリールスルホン酸塩(好ましくは、モノアルキルベンゼン及びアルキルo−キシレンから成る群から選ばれている構成要素)と、
を含有する、乳化剤組成物を対象とする。
【0026】
本発明は、もう1つの実施態様において、潤滑液又は切削液組成物において、
A) i) 次の諸供給原料:
a)石油、
b)直鎖モノアルキルベンゼン、
c)直鎖ジアルキルベンゼン、
d)枝分かれ鎖モノアルキルベンゼン、及び
e)枝分かれ鎖ジアルキルベンゼン、
の少なくとも1種がスルホン化された少なくとも1種の生成物;並びに
ii) 少なくとも1種の直鎖又は枝分かれ鎖アルキルアリールスルホン酸塩;
を含有する組成物と、
B)全油ベース組成物の約50重量%〜約95重量%の量の、パラフィン系石油、ナフテン系石油、精製されたパラフィン系石油及び精製されたナフテン系石油から成る群から選ばれている少なくとも1種の油と、
を含有する、潤滑液又は切削液組成物を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0027】
石油スルホン酸塩を必要とする用途のために適切であるためには、代替品は、次の必要条件を満たさなければならない:
1.代替品は、透明液体であって、沈降性物質又は沈降物を含有しないものでなければならない。
2.代替品は、最終使用者(end-users)の用途における石油スルホン酸塩の性能と同一の性能を提供しなければならない。
3.代替品は、最終使用者の配合物の改変も調節も必要とすることなく、スルホン酸塩と取り替えることができるのが望ましい。
4.代替品の活性(activity)は、好ましくは59〜62%の範囲であるのが望ましい。
5.代替品は、十分な腐食防止を提供しなければならない。
【0028】
本発明を実施する場合に用いる天然の石油スルホン酸/石油スルホン酸塩は、天然石油に含有されている芳香族化合物(例えば、40℃で15〜400cStの粘度を有する典型的な潤滑基油)をスルホン化することによって調製することができる。酸性油は、重力沈降によってスラッジを除去し、また、塩基(好ましくは、ナトリウム)からのいずれかの一価カチオンで中和する。生成物は、抽出も溶媒処理も行わないで、油又は塩類を除去するのが好ましい。従って、該プロセスは、乳化剤組成物に入れて使用するための天然石油スルホン酸塩を調製するための従来使用されていたプロセスよりも単純化することができる。
【0029】
本発明の組成物のこの第1の成分は、天然石油スルホン酸又は天然石油スルホン酸塩であり、これは、石油(好ましくは、パラフィン系油)をスルホン化するために、硫酸、オレウム(即ち、発煙硫酸)、及び/若しくは三酸化イオウ、若しくは他のスルホン化剤を用いて調製される。本発明で使用される1種の好ましい油は、40℃で15〜4000cStの典型的な潤滑基油である。酸性油は、自然重力を用いて沈殿させることによってスラッジを除去し、その後、中和して、油中の、約15〜30%、好ましくは約20〜30%活性の石油スルホン酸塩にする。更なる如何なる抽出も、油又は塩を除去するための如何なる処理も必要でない。これらの抽出されていない、中性塩としての天然スルホン酸塩は、金属に腐食防止特性を与え、乳化性能に役立つ。
【0030】
本発明の第1の成分として好ましく用いられる天然石油スルホン酸塩は、最少量の処理しか必要としないため、製造するのが非常に経済的である。好ましいパラフィン系油の供給原料流れは、低コストであり、豊富な供給状態にある。該スルホン酸塩は、他のスルホン酸塩乳化剤と混合して、好ましくは60%以上の活性含有量(active content)を有する生成物(例えば、非常に活性なスルホン酸を含有するもの)を生成することができる。この種の天然石油スルホン酸ナトリウムの例は、石油スルホン酸ナトリウム、天然F、コネチカット州グリニッチ(Greenwich)、クロンプトン社(Crompton Corp.)によって供給される30%活性のスルホン酸である。
スルホン化することのできる天然石油生成物の好ましい例は、名称「EXXON3278」でエクソン社(Exxon Corporation)から市販されており、これは、パラフィンと、スルホン化することのできるアルキルアレーンとの混合物であると思われる。スルホン化されたEXXON3278を調製するための1つの方法は次の通りである。
【0031】
先ず、衝撃ジェット反応器(impact jet reactor)中で、供給原料(EXXON3278)を過剰スルホン化(over-sulfonation)する。過剰スルホン化プロセスによって、最大量の活性生成物が生じるが、結果としてかなりの量のジスルホン化生成物、「スラッジ」の成分も生じる。このスラッジを除去するため、該反応器から出て来る酸性流れ(acid stream)を、(活性油及び遊離油(free oil)を可溶性にするための)ヘプタン及び(該スラッジを可溶性にするための)濃硫酸と混合する。放置した後、硫酸/スラッジの層は分離して除去し、次いで、ヘプタン生成物層は、水で洗浄して、それの遊離硫酸含有量を減少させる。この生成物層は次いで、中和し、ヘプタンは蒸留によって除去する。
それら石油スルホン酸塩は、有機物又は無機物である場合がある。好ましい無機塩は、ナトリウム塩である。しかし、アンモニウム塩、又は他の金属(とりわけ、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属)の塩を使用することもできる。使用することのできる無機化合物には、バリウム、カルシウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、ストロンチウム、ラジウム、ラジウム、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、等を含有する無機化合物が包含されるが、これらに限定されない。しかし、ナトリウムは、本発明で使用するための好ましい金属である。
【0032】
使用することのできる有機塩基には、窒素塩基(例えば、第一級、第二級又は第三級のアミン;ポリアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンを包含するアルカノールアミン;それらの混合物、等)が包含される。
それら天然石油スルホン酸塩は、本発明の組成物の中で、全乳化剤組成物の約10重量%〜約70重量%、好ましくは約20重量%〜約60重量%、更に好ましくは全組成物の約30重量%〜約50重量%の量で有効に使用される。
本発明の天然石油スルホン酸塩と組み合せて使用される非常に活性なスルホン酸塩は、油の相溶性(compatibility)と、結果として得られる乳化剤混合物の乳化性能とのバランスを取るように慎重に選定される。
【0033】
現在市販されている大きい当量の石油スルホン酸ナトリウム(以下、便宜上、「HMW−PS」という)(例えば、天然C)に取って代わる物質の好ましい実施態様には、諸組成物:
1.合成枝分かれAと合成/天然混合物A製造からの供給原料との50/50混合物、
2.合成/天然混合物Bと合成枝分かれAとの混合物(10〜20/90〜80)、又は合成/天然混合物Bと合成枝分かれBとの混合物(30/70)、
の天然スルホン酸塩と合成スルホン酸塩との混合物が包含される。
【0034】
本発明の乳化剤組成物は、第2の成分として、少なくとも1種の直鎖又は枝分かれ鎖のアルキルアリールスルホン酸塩をも含有する。枝分かれ鎖アルキルアリールスルホン酸塩は、改善された溶解性とエマルション安定性とを示すことが知られており、米国特許第4,140,642号明細書で検討されている。この米国特許明細書は、言及することによってそっくりそのまま本明細書に組み入れる。アリール基には、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、キシレン、等が包含される。本発明の好ましい実施態様において、枝分かれ鎖アルキルアリールスルホン酸は、ベンゼン及びオレフィン、オレフィンオリゴマー(例えば、ポリプロピレン又はポリイソブチレン)又はそれらの混合物のアルキル化生成物である。
その枝分かれ鎖アルキルアリールスルホン酸塩は、全組成物の約5重量%〜約40重量%、好ましくは約10重量%〜約30重量%、更に好ましくは約10重量%〜約20重量%、最も好ましくは約11重量%〜約14重量%(95%活性)の量で適切に使用される。特定の枝分かれ鎖アルキルアリールスルホン酸塩は、クロンプトン社によって供給されている枝分かれドデシルベンゼンスルホン酸である、WITCO(登録商標)1298Hである。該アルキルアリールスルホン酸の枝分かれアルキル基は、C〜C30アルキル、好ましくはC〜C24、更に好ましくはC10〜C24アルキルである場合がある。
【0035】
代替的に、本発明の組成物の第2の成分は、上述のように、直鎖アルキルアリールスルホン酸塩である場合がある。この場合もやはり、適切なアリール基には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等、好ましくは、ベンゼン、トルエン又はキシレン、更に好ましくは、キシレン、最も好ましくはo−キシレンが包含される。
それら直鎖アルキルアリールスルホン酸塩は、好ましくは、全活性スルホン酸塩の約5重量%〜約50重量%、更に好ましくは約10重量%〜約50重量%、最も好ましくは約20重量%〜約30重量%の量で使用される。
【0036】
これら直鎖アルキルアリールスルホン酸塩のアルキル基は、好ましくはC〜C30アルキル、更に好ましくはC〜C24アルキル、最も好ましくはC10〜C24アルキルである。特定の好ましい直鎖アルキルアリールスルホン酸塩は、アルキルキシレンスルホン酸塩であり、更に特定的にはモノアルキルキシレンスルホン酸塩であり、とりわけ、ドデシルキシレンスルホン酸ナトリウムであり、高い活性含有量(塩形態で約70重量%)のスルホン酸ナトリウムである。この物質は、非中和酸形態(90〜95重量%の活性含有量)で供給されることもある。
これら直鎖アルキルアリールスルホン酸塩は、小さい当量の重量成分の属性(attributes)に寄与し、同時に、油中での完全な溶解性を維持する。これらの物質はTSCAインベントリーとDSLインベントリーの両方で使用が登録されているので、該物質は好ましい。
【0037】
これらアルキルアリールスルホン酸塩(枝分かれと直鎖の両方)は、標準的スルホン化技術を用いて調製することができる。該スルホン化技術は典型的には、適切な芳香族炭化水素のスルホン化を行い、それによって、アルキルアリールスルホン酸を得、次いで、その後、該アルキルアリールスルホン酸を塩基で中和することを含む。
アルキル化は、当業者に知られている如何なる方法を用いても実施することができ、ルイス酸触媒の存在下、ハロゲン化アルキル、アルカノール又はアルケン反応物を用いるフリーデルクラフツ反応を包含する。触媒には、フッ化水素及び活性粘土が包含されることがある。
【0038】
本発明の組成物は任意的に、種々様々な、高い活性の天然及び合成スルホン酸又はスルホン酸塩から選ばれる他のアルキルアリールスルホン酸又はアルキルアリールスルホン酸塩を更に含有することがある。それら天然及び合成のスルホン酸又はスルホン酸塩には、中程度の当量の、大きい当量の、及び非常に大きい当量の諸石油スルホン酸ナトリウム及びそれらの塩と;小さい当量の、中程度の当量の、及び大きい当量の諸合成スルホン酸ナトリウム及びそれらの塩[例えば、ARISTONATE(登録商標)L、M及びH(塩形態)、並びにARISTONIC(登録商標)L、M及びH(酸形態)]と;大きい当量の枝分かれ及び直鎖のアルキルベンゼンスルホン酸並びにそれらの塩であって、側鎖がC14〜C30であるものと;スルホン化されたC10〜C14のアルキル化残油のナトリウム塩と;が包含される。
【0039】
前記残油物質は、アルキレートから出発して製造される。アルキレートは典型的には、アルキル化プロセスの生成物として生成され、アルキル化プロセスからのアルキル化残油、蒸留残油と呼ばれることがある。前記プロセスの1つであって、それによってこの副産物が生成されることのあるプロセスは、ベンゼンのドデシル化からのものである。ドデシルベンゼンは蒸留除去され、残存しているアルキレートは、本発明に係るスルホン酸ナトリウムを製造するのに用いることができる。該アルキレートは、高純度スルホン酸にスルホン化される。この高純度スルホン酸は、続いて、アルキル金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)で中和されて塩形態となる。これら化合物は、当量又は他の諸性能パラメータを調整するのに有用である。本発明の1つの目的は、標準的方法で調製される(即ち、抽出プロセスを包含する、ホワイト油の精製プロセスの副産物としての)天然石油スルホン酸塩を、同一性能を達成するために、諸スルホン酸塩の混合物と取り替えることである。例えば、これらの化合物を用いて、全乳化剤組成物の当量を約400g/モルの小さい当量に調整するか、又は、全乳化剤組成物の当量を約500g/モルの大きい当量に調整することができる。約400未満の当量を有する物質は典型的には、前記の用途のための十分に可溶性の油ではない。約500g/モルより大きい当量を有し、且つ、優れた腐食特性を示す物質は典型的には、好ましくないエマルション性能を示す。
【0040】
小さい(L)当量の天然石油スルホン酸塩として分類される石油スルホン酸塩は典型的には、約410〜440g/モルの当量を有するが、中程度の(HL;中程度の当量の天然石油スルホン酸塩は典型的には、小さい当量の天然石油スルホン酸塩と大きい当量の天然石油スルホン酸塩との混合物として供給されたため、このように称される)当量の天然石油スルホン酸塩として分類される石油スルホン酸塩は典型的には、約450〜480g/モルの当量を有し、また、大きい(H)当量の天然石油スルホン酸塩として分類される石油スルホン酸塩は典型的には、約490〜520g/モルの当量を有する。
これらの一般的当量の範囲は、合成石油スルホン酸塩と天然石油スルホン酸塩との両方に当てはまり、金属加工用途の範囲として効を奏している。
【0041】
スルホン酸塩は、約55〜65%以上の活性含有量(active content)、及び約95%以下の活性含有量を有するのが好ましい。
これらスルホン酸塩は、全流体濃縮物の約20重量%以下から、好ましくは全組成物の約5重量%〜約15重量%から有用である。有用なスルホン酸塩の特定の例は、ペトロナート(Petronate)HL、62%活性石油スルホン酸ナトリウムである。
本発明の諸成分は、石油又は精製石油に完全に溶解できる乳化剤組成物が生成されるように選定する。パラフィン系石油を用いるのが好ましい。例えば、ネチカット州グリニッチ、クロンプトン社から入手可能なCarnation(登録商標)ホワイトミネラルオイル(White mineral oil)のようなホワイトミネラルオイルを選定することができる。
【0042】
本発明の乳化剤組成物は、全混合物の約10重量%〜約50重量%の量で石油に添加することができる。結果として得られる油ベース組成物は、例えば、金属加工用切削油剤として用いることができる。そのような用途のために、使用される石油(パラフィン系又はナフテン系)は、40℃で約5〜約100cStの粘度を有するのが望ましい。これらの石油は、本発明の乳化剤組成物の他に、脂肪酸石鹸を約0重量%〜約30重量%、1種以上の極圧潤滑剤を1重量%〜約30重量%、1種以上の他の防錆剤を約1重量%〜約20重量%、及び1種以上の殺菌剤を0.1重量%〜約3重量%、含有することができる。当業者は、該流体に添加することのできる追加の作用物質に関する知識を有しているであろう。切削液濃縮物は、次いで、水に分散させられ、金属加工用の安定な水性エマルションを生成する。
【0043】
本発明の組成物はまた、他の石油ベース組成物、とりわけ、工業用途のために使用されるもの[例えば、作動液(hydraulic fluids)、研削液、錆止め液、引抜き加工液(drawing fluids)、圧延加工液、水中油型エマルション、油中水型エマルション、等]の中での用途も見出せる。
【実施例1】
【0044】
潜在的なHMW−PS(現在市販されている大きい当量の石油スルホン酸ナトリウム)の代替品候補物の評価は、エマルション安定性と錆との両方を決定するための直接的方法が存在しないため、妨げられた。天然DとHMW−PSとの70/30混合物は、良好なエマルションを示し、且つ、優れた腐食防止を提供することが観察された。如何なる潜在的PSR(石油スルホン酸塩代替品)もこれらの特性を有するのが望ましく、従って、諸潜在的候補物の混合物は、70/30で作成し、スルホン酸塩のためのエマルション試験方法(the Emulsion Test Method for Sulfonates)でエマルション性能を評価することを決定した。
【0045】
金属加工工業において、可溶性油に関する腐食評価のためのASTM手順(ASTM D4627)では、ごく僅かなクリーム(cream)を含有するエマルションが必要である。しかし、スルホン酸ナトリウムのためのエマルション試験において、10ml以下のクリームはしばしば存在する。この過剰クリームのために、しばしば矛盾した(inconsistent;一貫しない)結果が生じることがある。従って、腐食性能を評価するための好ましい方法は、クリームを減少させていっそう安定した(consistent;むらのない)結果を提供するために、80/20のホワイト油/スルホン酸塩の混合物を使用することであった。
場合によっては、候補のPSR(石油スルホン酸塩代替品)、とりわけ合成物質は、70/30の比で天然Dを乳化しなかった。従って、それらのエマルション性能及び腐食性能を評価するための好ましい方法は、90/10の比で実験を行うことであった。
【0046】
〔結果と検討〕
多くの外部及び内部の供給源からの合成と天然の両方である多くのPSRを評価した。評価の結果は、表1に示され、次のようにまとめることができる。
1.(28と62の両方の活性の)天然Fと、(天然D中の)70/30の合成/天然混合物Aとの両方の試料のエマルション性能は、陰性であった。合成枝分かれBを添加しても、天然D中のエマルションは改善されなかった。90/10の比で、該エマルションは(合成枝分かれBを添加することなく)並となったが、腐食は不合格(failure)となった。
2.合成直鎖D、合成直鎖C、合成直鎖F、合成直鎖Eのスルホン酸塩は全て、腐食試験が不可であった。
3.最善の結果は、合成/天然混合物Aと合成枝分かれAとの50/50混合物であった。これは、天然Dとの70/30で並の(fair)エマルションを有し、且つ、腐食試験に合格した。これの性能は、HMW−PS(現在市販されている大きい当量の石油スルホン酸ナトリウム)の性能に類似した。
4.合成/天然混合物Aの試料は、合成枝分かれBと80/20で混合した。これは、天然D中で70/30で混合し、貧(poor)エマルションを有し、腐食試験にかろうじて合格した。
【0047】
【表2−1】

【0048】
【表2−2】

【0049】
【表2−3】

【0050】
〔天然F及び合成/天然混合物Bの乳化〕
天然F28%と合成/天然混合物Bと混合物、及び天然F62%と合成/天然混合物Bと混合物を作成して、PSRs(石油スルホン酸塩代替品)としてのそれらの可能性(viability)を決定した。表2で分かるように、天然Dとの70/30組成での生成物の混合物は、全ての試料について陰性のエマルションを生成した。これら試料のエマルションの区切り点(break point)を決定する試みを行い、天然Dとの90/10組成で全ての生成物は、並の(fair)エマルションを生成するが、合格腐食性能を有さないことが分かった。実際、この比では、天然Cと区別されない。天然Fの試料は、合成/天然混合物Bと何ら変わりはなかったが、28%活性スルホン酸塩含有量は、最終使用者(end-users)がいっそう希薄な生成物を使用することを必要とするであろう。そのことは、合成/天然混合物Bと同程度に魅力的ではないように思えた。合成/天然混合物Bは、希釈しないで使用することができるようである。
合成枝分かれA(当量520)は、エマルション試験だけは合格したが、腐食試験は合格しなかった。対照的に、合成/天然混合物Bと組合せた合成枝分かれAは、エマルション評価を陰性(negative)から並(fair)に変化させ、また、腐食性能を合格させた。
【0051】
〔合成石油スルホン酸塩による合成/天然混合物Bの乳化〕
合成/天然混合物Bの試料を調製し、合成枝分かれA及び合成枝分かれBと混合した。表3において、合成/天然混合物B/合成枝分かれB/合成枝分かれA(40/24/36)の混合物は、腐食試験を合格させ且つ貧(poor)エマルションとなり、最善の結果をもたらすことが分かる。この混合物のエマルション性能は、天然D/合成/天然混合物B/合成枝分かれA(70/15/15)の混合物よりもいっそう貧であり、それによって、合成石油スルホン酸塩を含有する合成/天然混合物Bの実用的配合物が存在することが実証される。
合成/天然混合物Bと合成枝分かれAとの組合せ(50/50)は、腐食性能及びエマルション性能がHMW−PS(現在市販されている大きい当量の石油スルホン酸ナトリウム)に最も類似したが、他の合成スルホン酸塩と合成枝分かれAとの組合せについても研究を行い、それらの性能を決定した。表4で分かるように、他の合成及び天然の高分子量スルホン酸塩は、並のエマルションと腐食性能合格との両方を有している訳ではない。実際、諸直鎖合成(合成直鎖F、合成直鎖C、合成直鎖D)は全て、腐食試験が不合格であった。対照的に、天然スルホン酸塩天然Aは、腐食試験に合格しているが、合成/天然混合物Bよりもいっそう貧のエマルションを有している。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
表4 他のHMW代替品の評価
試料 型 エマルション試験 腐食試験
天然C 天然 良好 合格
合成直鎖F/合成枝分かれB 合成/合成 貧 不合格
合成直鎖C/合成枝分かれB 合成/合成 並 不合格
合成直鎖D/合成枝分かれB 合成/合成 貧 不合格
天然A/合成枝分かれB 天然/合成 貧 合格
合成/天然混合物B/合成枝分かれB 天然/合成 並 合格
【0055】
合成/天然混合物Bの当量(527)は、大き過ぎて、天然Dの代替品として直接使用することはできない。それのエマルション性能については、入手可能な小さい当量の物質と混合して試験を行った。
スルホン酸塩の諸試料は、スルホン酸塩6重量%でホワイト鉱油(Carnation)に溶解させた。Carnationホワイト鉱油の特性は次の通りである:

特性 典型的な値 方法
25℃/25℃での比重 0.829/
0.845 ASTM D4052
40℃での動粘度、cSt 10.8/
13.6 ASTM D445
色、セイボルト +30最小値 ASTM D156
流動点、℃ −7 ASTM D97

【0056】
油混合物に入れたスルホン酸塩の諸エマルションを10容量%で、共栓メスシリンダーを用いることによって、脱イオン水の中に混合した。それらエマルション0〜5の段階で評価した。0は、クリーム層がエマルション層から明瞭には分離していない、完全に乳状のエマルションを表わす。5は、エマルションがほとんど存在しない水様層の頂部にかなり大きい油層が分離しているものを表わす。1〜1.5の段階は、天然Eに類似する性能を表わす。2〜2.5の段階は、天然Dに類似するようである。
表5は、合成枝分かれA及び合成枝分かれBを含有する合成/天然混合物Bの幾つかの試料の試験結果を示す。合成/天然混合物Bは、合成枝分かれAの中に10〜20%で配合することができる。過剰の合成/天然混合物Bはエマルション性能に大きな不出来を生じさせるので、注意を払う必要がある。合成/天然混合物Bは、合成枝分かれBにおいて、より大きなレベル、約30%で用いることができる。
【0057】
【表5】

【0058】
合成/天然混合物Bの特性は、大きい当量のスルホン酸塩のものにいっそう類似しているので、主として、小さい当量及び中程度の当量の様々なスルホン酸塩を用いて試験を行った。合成枝分かれA及び合成枝分かれBを用いて見出だされる改善以外の、エマルション性能に関する唯一の改善は、性能がほんの僅かに天然Dに近づいた合成直鎖Aを用いて見出だされた。
【0059】
【表6】

【0060】
〔結論〕
1.合成/天然混合物Bは、合成枝分かれA又は合成枝分かれBを用いて配合することができ、エマルション性能は、天然E及び天然Dに匹敵するようになることがある。
2.試験を行った他の小さい当量及び中程度の当量のスルホン酸塩は、限界的(marginal;最低限界に近い)エマルションを与える合成直鎖Aを除き、合成/天然混合物Bのエマルション性能を改善しなかった。
本発明の基調を成す原理から逸脱することなく行うことのできる多くの置き換え及び部分的変更を考慮すれば、本発明に与えられる保護の範囲を理解するためには、特許請求の範囲を参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油と混合して潤滑剤を製造するのに適した乳化剤組成物であって、
A)次の諸供給原料:
i) 石油、
ii) 直鎖モノアルキルベンゼン、
iii) 直鎖ジアルキルベンゼン、
iv) 枝分かれ鎖モノアルキルベンゼン、及び
v) 枝分かれ鎖ジアルキルベンゼン、
の少なくとも1種がスルホン化された少なくとも1種の生成物と、
B)少なくとも1種の直鎖又は枝分かれ鎖アルキルアリールスルホン酸塩と、
を含有する、乳化剤組成物。
【請求項2】
前記アルキルアリールスルホン酸塩は、モノアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルo−キシレンスルホン酸塩から成る群から選ばれている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Aは、石油、直鎖モノアルキルベンゼン及び直鎖ジアルキルベンゼンがスルホン化された生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Aは、石油及び直鎖ジアルキルベンゼンがスルホン化された生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
Bは、合成枝分かれ鎖モノアルキルベンゼンスルホン酸塩である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
Bは、合成ドデシルo−キシレンスルホン酸塩である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
Bは、合成枝分かれ鎖モノアルキルベンゼンスルホン酸塩である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
Bは、合成ドデシルo−キシレンスルホン酸塩である、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
潤滑液又は切削液組成物において、
A) i) 次の諸供給原料:
a)石油、
b)直鎖モノアルキルベンゼン、
c)直鎖ジアルキルベンゼン、
d)枝分かれ鎖モノアルキルベンゼン、及び
e)枝分かれ鎖ジアルキルベンゼン、
の少なくとも1種がスルホン化された少なくとも1種の生成物;並びに
ii) 少なくとも1種の直鎖又は枝分かれ鎖アルキルアリールスルホン酸塩;
を含有する組成物と、
B)全油ベース組成物の約50重量%〜約95重量%の量の、パラフィン系石油、ナフテン系石油、精製されたパラフィン系石油及び精製されたナフテン系石油から成る群から選ばれている少なくとも1種の油と、
を含有する、潤滑液又は切削液組成物。
【請求項10】
前記アルキルアリールスルホン酸塩は、モノアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルo−キシレンスルホン酸塩から成る群から選ばれている、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
iは、石油、直鎖モノアルキルベンゼン及び直鎖ジアルキルベンゼンがスルホン化された生成物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
iは、石油及び直鎖ジアルキルベンゼンがスルホン化された生成物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
iiは、合成枝分かれ鎖モノアルキルベンゼンスルホン酸塩である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
iiは、合成ドデシルo−キシレンスルホン酸塩である、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
iiは、合成枝分かれ鎖モノアルキルベンゼンスルホン酸塩である、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
iiは、合成ドデシルo−キシレンスルホン酸塩である、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
水性媒体に分散している請求項1に記載の組成物。

【公開番号】特開2010−235952(P2010−235952A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124294(P2010−124294)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【分割の表示】特願2006−533625(P2006−533625)の分割
【原出願日】平成16年6月8日(2004.6.8)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】