説明

石炭不活化処理装置

【課題】各種組成の石炭であっても、必要十分な条件で不活化処理を実施することが簡単にできる石炭不活化処理装置を提供する。
【解決手段】処理装置本体111で不活処理された改質炭2の一部を分取する分取装置117と、分取装置117で分取された改質炭2のサンプル3を内部に供給される評価装置本体121と、評価装置本体121に評価温度Ttの空気102を供給するブロア122及び加熱器123と、評価装置本体121でサンプル3を加熱処理した空気102の温度Teを検知する温度センサ125と、温度センサ125からの情報に基づいて、空気102の温度Teが下限値Tel以下のときには、処理ガス103の温度Tcが、下限値Tl以下であるか否か判断し、下限値Tlを超えている場合には、処理ガス103の温度Tcを規定値Tfd低下させるように加熱器114を制御する制御装置130とを備えて石炭不活化処理装置100を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素を含有する処理ガスで石炭を加熱することにより、当該石炭を不活処理する石炭不活化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
褐炭や亜瀝青炭等のような水分含有量の多い石炭である低品位石炭(低質炭)は、埋蔵量が多いものの、単位重量当たりの発熱量が低いと共に、輸送効率が悪いため、加熱処理して乾燥させることにより、単位重量当たりの発熱量を高めると共に、圧縮成形することにより、ハンドリング性を高めるようにしている。
【0003】
ところで、加熱処理された上記低質炭は、水を吸着しやすくなると共に、表面のカルボキシル基等が離脱して表面にラジカル等を生じることにより表面の活性が高くなって空気中の酸素と反応しやすくなってしまうことから、上記反応に伴う反応熱によって自然発火してしまうおそれがある。
【0004】
このため、例えば、低質炭を乾燥して乾留し、タールを分離した後、乾留炭を低酸素雰囲気(酸素濃度約10%前後)中で加熱(約150〜170℃)して、当該乾留炭の表面を一部酸化させて当該乾留炭の表面の活性を低下させる不活化処理を行うことにより、上記炭を改質して当該炭の自然発火を抑制するようにしている(例えば、下記特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−310785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したような不活化処理においては、石炭の組成が、採取される山元によってバラつきを有していることから、どのような組成の石炭であっても不活化を十分に実施できるように、雰囲気中の酸素濃度や雰囲気温度や処理時間等の各種処理条件を設定している。このため、比較的緩い処理条件で不活化を十分に実施できる石炭に対しても、比較的厳しい処理条件で不活化を実施することになってしまい、処理コストに無駄を生じてしまっていた。
【0007】
このようなことから、本発明は、各種組成の石炭であっても、必要十分な条件で不活化処理を実施することが簡単にできる石炭不活化処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための、第一番目の発明に係る石炭不活化処理装置は、酸素を含有する処理ガスで石炭を加熱することにより、当該石炭を不活処理する石炭不活化処理装置であって、前記石炭を内部に供給される処理装置本体と、前記処理装置本体の内部に前記処理ガスを送給する処理ガス送給手段と、前記処理ガス中の酸素濃度Ocを調整する処理ガス酸素濃度調整手段と、前記処理ガスの温度Tcを調整する処理ガス温度調整手段と、前記処理装置本体内で不活処理された前記石炭の一部を分取する分取手段と、前記分取手段で分取された前記石炭のサンプルを内部に供給される評価装置本体と、前記評価装置本体の内部に評価温度Ttの試験ガスを供給する試験ガス供給手段と、前記評価装置本体内で前記サンプルを加熱処理した前記試験ガスの温度Teを検知する試験ガス温度検知手段と、前記試験ガス温度検知手段からの情報に基づいて、前記試験ガスの温度Teが上限値Teh以上のときには、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocが、上限値Oh以上であるか否か判断し、当該上限値Oh未満の場合には、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocを規定値Ofu増加させるように前記処理ガス酸素濃度調整手段を制御し、当該上限値Oh以上の場合には、前記処理ガスの前記温度Tcが、上限値Th以上であるか否かさらに判断し、当該上限値Th未満の場合には、前記処理ガスの前記温度Tcを規定値Tfu上昇させるように前記処理ガス温度調整手段を制御する一方、前記試験ガスの温度Teが下限値Tel以下のときには、前記処理ガスの前記温度Tcが、下限値Tl以下であるか否か判断し、当該下限値Tlを超えている場合には、前記処理ガスの前記温度Tcを規定値Tfd低下させるように前記処理ガス温度調整手段を制御し、前記下限値Tl以下の場合には、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocが、下限値Ol以下であるか否かさらに判断し、当該下限値Olを超えている場合には、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocを規定値Ofd減少させるように前記処理ガス酸素濃度調整手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
第二番目の発明に係る石炭不活化処理装置は、第一番目の発明において、前記制御手段は、前記試験ガスの前記温度Teが前記下限値Tel以下のときに、前記処理ガスの前記温度Tcが前記下限値Tl以下であると共に、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocが前記下限値Ol以下である場合に、前記処理ガスの前記酸素濃度Oc及び前記温度Tcを前記下限値Ol,Tlとするように前記処理ガス酸素濃度調整手段及び前記処理ガス温度調整手段を制御するものであることを特徴とする。
【0010】
第三番目の発明に係る石炭不活化処理装置は、第一番目又は第二番目の発明において、前記制御手段は、前記試験ガスの前記温度Teが前記下限値Telよりも大きく前記上限値Tehよりも小さいときに、前記処理ガスの前記酸素濃度Oc及び前記温度Tcをそのまま維持するように前記処理ガス酸素濃度調整手段及び前記処理ガス温度調整手段を制御するものであることを特徴とする。
【0011】
第四番目の発明に係る石炭不活化処理装置は、第一番目から第三番目の発明のいずれかにおいて、前記評価装置本体内で前記サンプルを加熱処理した前記試験ガスの二酸化炭素濃度Ceを検知する試験ガス二酸化炭素濃度検知手段をさらに備え、前記制御手段は、前記試験ガスの前記温度Teが前記下限値Telよりも大きく前記上限値Tehよりも小さいときに、前記試験ガス二酸化炭素濃度検知手段からの情報に基づいて、前記試験ガス中の二酸化炭素濃度Ceが上限値Ceh以上である場合に、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocが前記上限値Oh以上であるか否か改めて判断すると共に、前記試験ガス中の二酸化炭素濃度Ceが下限値Cel以下である場合に、前記処理ガスの前記温度Tcが前記下限値Tl以下であるか否か改めて判断するものであることを特徴とする。
【0012】
第五番目の発明に係る石炭不活化処理装置は、第四番目の発明において、前記制御手段は、前記試験ガスの前記温度Teが前記下限値Telよりも大きく前記上限値Tehよりも小さいときに、前記試験ガス二酸化炭素濃度検知手段からの情報に基づいて、前記試験ガス中の二酸化炭素濃度Ceが前記下限値Celよりも大きく前記上限値Cehよりも小さい場合に、前記処理ガスの前記酸素濃度Oc及び前記温度Tcをそのまま維持するように前記処理ガス酸素濃度調整手段及び前記処理ガス温度調整手段を制御するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る石炭不活化処理装置によれば、処理装置本体に供給される石炭の組成が経時的にバラついたとしても、当該石炭の組成に対して必要十分な条件で不活処理を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る石炭不活化処理装置の主な実施形態の概略構成図である。
【図2】図1の石炭不活化処理装置の制御フロー図である。
【図3】図2に続く制御フロー図である。
【図4】図2に続く制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る石炭不活化処理装置の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0016】
[主な実施形態]
本発明に係る石炭不活化処理装置の主な実施形態を図1〜4に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、低質炭を乾燥して乾留した石炭である乾留炭1を上部から内部に供給される処理装置本体111の下部には、不活性ガス供給源である窒素ガス供給源112がブロア113及び加熱器114を介して連結されている。前記ブロア113と前記加熱器114との間には、空気102を送給するブロア115が連結されている。
【0018】
つまり、前記ブロア113,115を作動させると、前記窒素ガス供給源112からの窒素ガス101と外部の空気102とを混合した処理ガス103を前記加熱器114で加熱して前記処理装置本体111の内部に送給することができるようになっているのである。ここで、前記ブロア113,115からの前記窒素ガス101及び前記空気102の送給量を調整することにより、前記処理ガス103中の酸素ガス濃度を調整することができ、前記加熱器114を調整することにより、前記処理ガス103の温度を調整することができる。
【0019】
前記処理装置本体111の上部には、当該処理装置本体111内から排気された使用済みの前記処理ガス103中の粉塵を除去するフィルタ116が連結されている。
【0020】
前記処理装置本体111の下部には、当該処理装置本体111内で不活化処理されて送出された改質炭2からごく一部を分取する分取手段である分取装置117が配設されている。この分取装置117で分取されない大部分の改質炭2は、図示しないコンテナ等の容器に回収される。前記分取装置117で分取されたごく一部の改質炭2のサンプル3は、当該サンプル3の不活性具合を評価する評価装置120の評価装置本体121の内部に上部から供給されるようになっている。
【0021】
前記評価装置本体121の下部には、試験ガスである空気102を送給するブロア122が加熱器123を介して連結されている。前記評価装置本体121の上部には、当該評価装置本体121内から排気された使用済みの前記空気102中の粉塵を除去するフィルタ124が連結されている。前記評価装置本体121の内部で評価された前記改質炭2は、下部から排出されるようになっている。
【0022】
前記評価装置本体121と前記除塵フィルタ124との間には、前記空気102の温度を検知する試験ガス温度検知手段である温度センサ125と、前記空気102中の二酸化炭素濃度を検知する試験ガス二酸化炭素濃度検知手段であるCO2センサ126とが設けられている。これらセンサ125,126は、制御手段である制御装置130の入力部にそれぞれ電気的に接続している。この制御装置130の入力部には、入力手段である操作盤131がさらに電気的に接続されている。上記制御装置130の出力部は、前記ブロア113,115,122、前記加熱器114,123、前記分取装置117にそれぞれ電気的に接続されており、当該制御装置130は、前記操作盤131からの情報に基づいて、前記ブロア122、前記加熱器123、前記分取装置117の作動をそれぞれ制御することができると共に、前記操作盤131からの情報及び前記センサ125,126からの情報に基づいて、前記ブロア113,115、前記加熱器114の作動をそれぞれ制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
【0023】
なお、前記処理装置本体111としては、従来から不活処理に利用されている、例えば、前記特許文献1等に記載されているサーキュラグレード型や焼結機型(メッシュコンベア型)等のような連続処理式や、バッチ処理式等のような各種のタイプのものなど、いずれでも適用できる。また、前記評価装置120の前記評価装置本体121としては、前記処理装置本体111と同様な構造をなして前記処理装置本体111よりも小型のサーキュラグレード型や焼結機型(メッシュコンベア型)等のような連続処理式や、バッチ処理式等のように、供給されたサンプル3を所定の温度の雰囲気中に所定時間さらすことが可能なものであれば、いずれでも適用できる。さらに、前記分取装置117としては、移動堰や移動式定容シリンダ等のように、前記処理装置本体111から送出される改質炭2から一部を分取できるようなものであれば、いずれでも適用できる。
【0024】
このような本実施形態においては、前記窒素ガス供給源112、前記ブロア113,115等により処理ガス送給手段を構成し、前記ブロア113,115等により処理ガス酸素濃度調整手段を構成し、前記加熱器114等により処理ガス温度調整手段を構成し、前記ブロア122、前記加熱器123等により試験ガス供給手段を構成している。
【0025】
次に、上述した石炭不活化処理装置100の作動を説明する。
【0026】
前記処理装置本体111の内部に乾留炭1を供給すると共に、前記操作盤131に運転開始の情報を与えると、当該制御装置130は、当該操作盤131からの情報に基づいて、酸素濃度Ocが基準値Os(例えば、10%)であり、温度Tcが基準値Ts(例えば、150℃)である処理ガス103を前記処理装置本体111の内部に送給するように前記ブロア113,115及び前記加熱器114を制御すると共に(図2中、S1)、評価温度Tt(例えば、150℃)の空気102(酸素濃度:約20%)を前記評価装置本体121の内部に送給するように前記ブロア122及び前記加熱器123を制御する(図2中、S2)。
【0027】
前記処理装置本体111の内部に供給された前記乾留炭1は、前記処理ガス103によって、その表面が一部酸化されて活性が低下し、改質炭2となる。このような不活化処理を所定時間(例えば、20分間)施された改質炭2は、前記処理装置本体111の下部から送出され、前記容器に回収される。このとき、前記制御装置130は、処理時間等に基づいて、前記処理装置本体111から送出された前記改質炭2のごく一部をサンプル3として所定時間ごと又は連続的に分取して前記評価装置本体121に所定時間ごと又は連続的に供給するように前記分取装置117を制御する(図2中、S3)。
【0028】
前記評価装置本体121に供給された前記サンプル3は、前記空気102によって規定時間(例えば、10分間)加熱される。上記サンプル3を加熱した上記空気102は、前記センサ125,126で温度及び二酸化炭素濃度が計測される(図2中、S4)。
【0029】
前記制御装置130は、前記温度センサ125からの情報に基づいて、前記空気102の温度Teが、下限値Tel(例えば、150℃)以下(Te≦Tel)、上限値Teh(例えば、200℃)以上(Teh≦Te)、下限値Telよりも大きく上限値Tehよりも小さい(Tel<Te<Teh)、のいずれであるか判断する(図2中、S5)。
【0030】
前記温度Te(例えば、160℃)が前記下限値Telよりも大きく前記上限値Tehよりも小さい場合(Tel<Te<Teh)には、前記制御装置130は、引き続き、前記CO2センサ126からの情報に基づいて、前記空気102中の二酸化炭素濃度Ceが、下限値Cel(例えば、0.1%)以下(Ce≦Cel)、上限値Ceh(例えば、2%)以上(Ceh≦Ce)、下限値Celよりも大きく上限値Cehよりも小さい(Cel<Ce<Ceh)、のいずれであるか判断する(図2中、S6)。
【0031】
そして、前記二酸化炭素濃度Ce(例えば、1%)が前記下限値Celよりも大きく前記下限値Celよりも小さい場合(Cel<Ce<Ceh)には、前記制御装置130は、分取した前記サンプル3が前記評価温度Ttの前記空気102によって燃焼していない、すなわち、前記処理装置本体111の内部において前記改質炭2が前記条件で十分に不活化処理されていると判断し、前記処理ガス103の前記酸素濃度Oc及び前記温度Tcをそのまま維持するように前記ブロア113,115及び前記加熱器114を制御し(図2中、S7)、運転停止信号の入力の有無を確認した後(図2中、S8)、前記ステップS5に戻り、前記分取装置117で前記評価装置本体121に新たに供給されるサンプル3に対する、前記空気102の前記温度Teを改めて計測する。
【0032】
また、前記ステップS5において、前記温度Te(例えば、200℃)が前記上限値Teh以上である場合(Teh≦Te)には、前記制御装置130は、前記サンプル3が前記評価温度Ttの前記空気102によって燃焼していると判断して、前記処理ガス103の前記酸素濃度Oc(例えば、10%)が、上限値Oh(例えば、16%)以上である(Oh≦Oc)か否か判断し(図3中、S9)、当該上限値Oh未満の場合(Oc<Oh)には、前記処理ガス103の前記酸素濃度Ocを規定値Ofu(例えば、2%)増加させるように前記ブロア113,115を制御する(図3中、S10)。
【0033】
そして、前記ステップS5に戻り、前記処理装置本体111の内部において上記条件で不活化処理されて前記分取装置117で前記評価装置本体121に新たに供給されるサンプル3に対する、前記空気102の前記温度Teを改めて計測する。
【0034】
また、前記ステップS9において、前記酸素濃度Oc(例えば、16%)が、前記上限値Oh(例えば、16%)以上の場合(Oh≦Oc)には、前記制御装置130は、前記処理ガス103の前記温度Tc(例えば、150℃)が、上限値Th(例えば、170℃)以上である(Th≦Tc)か否か判断し(図3中、S11)、当該上限値Th未満の場合(Tc<Th)には、前記処理ガス103の前記温度Tcを規定値Tfu(例えば、10℃)上昇させるように前記加熱器114を制御する(図3中、S12)。
【0035】
そして、前記ステップS5に戻り、前記処理装置本体111の内部において上記条件で不活化処理されて前記分取装置117で前記評価装置本体121に新たに供給されるサンプル3に対する、前記空気102の前記温度Teを改めて計測する。
【0036】
なお、前記ステップS6において、前記二酸化炭素濃度Ce(例えば、2%)が前記上限値Ceh(例えば、2%)以上である場合(Ceh≦Ce)には、前記制御装置130は、分取した前記サンプル3が前記評価温度Ttの前記空気102によってやはり燃焼していると判断し、前記ステップS9に移って、当該ステップS9を含めた上記ステップS10〜S12を行う。
【0037】
他方、前記ステップS5において、前記温度Te(例えば、150℃)が前記下限値Tel以下である場合(Te≦Tel)には、前記制御装置130は、前記処理ガス103による前記改質炭2の不活化処理が過剰に行われていると判断して、前記処理ガス103の前記温度Tc(例えば、170℃)が、下限値Tl(例えば、150℃)以下である(Tc≦Tl)か否か判断し(図4中、S13)、当該下限値Tlを超えている場合(Tl<Tc)には、前記処理ガス103の前記温度Tcを規定値Tfd(例えば、10℃)低下させるように前記加熱器114を制御する(図4中、S14)。
【0038】
そして、前記ステップS5に戻り、前記処理装置本体111の内部において上記条件で不活化処理されて前記分取装置117で前記評価装置本体121に新たに供給されるサンプル3に対する、前記空気102の前記温度Teを改めて計測する。
【0039】
また、前記ステップS13において、前記温度Tc(例えば、150℃)が、前記下限値Tl(例えば、150℃)以下の場合(Tc≦Tl)には、前記制御装置130は、前記処理ガス103の前記酸素濃度Oc(例えば、10%)が、下限値Ol(例えば、6%)以下である(Oc≦Ol)か否か判断し(図4中、S15)、当該下限値Olを超えている場合(Ol<Oc)には、前記処理ガス103の前記酸素濃度Ocを規定値Ofd(例えば、2%)減少させるように前記ブロア113,115を制御する(図4中、S16)。
【0040】
そして、前記ステップS5に戻り、前記処理装置本体111の内部において上記条件で不活化処理されて前記分取装置117で前記評価装置本体121に新たに供給されるサンプル3に対する、前記空気102の前記温度Teを改めて計測する。
【0041】
また、前記ステップS15において、前記処理ガス103の前記酸素濃度Oc(例えば、6%)が、下限値Ol(例えば、6%)以下である場合(Oc≦Ol)には、前記制御装置130は、前記処理ガス103の前記酸素濃度Oc及び前記温度Tcを前記下限値Ol,Tlとするように前記ブロア113,115及び前記加熱器114を制御する(図4中、S17)。
【0042】
そして、前記ステップS5に戻り、前記処理装置本体111の内部において上記条件で不活化処理されて前記分取装置117で前記評価装置本体121に新たに供給されるサンプル3に対する、前記空気102の前記温度Teを改めて計測する。
【0043】
なお、前記ステップS6において、前記二酸化炭素濃度Ce(例えば、0.1%)が前記下限値Cel(例えば、0.1%)以下である場合(Ce≦Cel)には、前記制御装置130は、前記処理ガス103による前記改質炭2の不活化処理がやはり過剰に行われていると判断して、前記ステップS13に移って、当該ステップS13を含めた上記ステップS14〜S17を行う。
【0044】
このため、本実施形態に係る石炭不活化処理装置100においては、前記処理装置本体111に供給される乾留炭1の組成が経時的にバラついたとしても、当該乾留炭1の組成に対して必要十分な条件で不活処理を簡単に行うことができる。
【0045】
したがって、本実施形態に係る石炭不活化処理装置100によれば、各種組成の乾留炭1であっても、低コストで不活化処理を実施することができる。
【0046】
ところで、本実施形態においては、処理装置本体111で不活処理された改質炭2の一部を分取したサンプル3を評価装置120で評価した結果を、処理装置本体111に新たに供給される乾留炭1の不活処理条件に反映させるようにしていることから、場合によっては、不活処理が不十分な改質炭2を生成してしまうことがある。しかしながら、このときに生成する不活処理が不十分な改質炭2の量は、十分に不活処理されるほぼ同じ処理条件の改質炭2の量、すなわち、同じ山元から採取されてきて処理される低質炭の量に比べて、極めて少ないため、ほとんど問題とならない程度である。ここで、例えば、評価装置120での評価結果を反映した不活処理条件に新たに設定した処理装置本体111に対して、不活処理が不十分な上記改質炭2を再度供給して改めて不活処理すれば、十分に不活処理を施された改質炭2にすることも可能である。
【0047】
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、前記評価装置120に前記温度センサ125及び前記CO2センサ126を設け、前記制御装置130が、前記温度センサ125からの情報に基づいて、前記空気102の前記温度Teが前記下限値Telよりも大きく前記上限値Tehよりも小さいときに、前記CO2センサ126からの情報に基づいて、当該空気102中の二酸化炭素濃度Ceに応じて、前記処理ガス103の前記酸素濃度Ocや前記温度Tcに対する判断を改めて行うようにしたが(前記ステップS6)、他の実施形態として、例えば、前記CO2センサ126を省略して、前記温度センサ125からの情報に基づいて、前記空気102の前記温度Teが前記下限値Telよりも大きく前記上限値Tehよりも小さいときに、当該空気102中の二酸化炭素濃度Ceに関係なく、前記処理ガス103の前記酸素濃度Oc及び前記温度Tcをそのまま維持するように前記ブロア113,115及び前記加熱器114を制御する、すなわち、前記ステップS6を省略することも可能である。
【0048】
また、前述した実施形態においては、前記処理装置本体111から送出された前記改質炭2の一部を移動式の分取装置117によりサンプル3として所定時間ごと又は連続的に分取して前記評価装置本体121に所定時間ごと又は連続的に供給するように前記制御装置で制御するようにした場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、前記処理装置本体111から送出された前記改質炭2の一部を固定堰や固定式スクレーパ等のような定置式(固定式)の分取手段により制御手段で制御することなくサンプル3として分取して前記評価装置本体121に供給するようにすることも可能である。
【0049】
また、前述した実施形態においては、窒素ガス101と空気102とを混合することにより、所望の酸素濃度Ocを有する処理ガス103を生成するようにしたが、他の実施形態として、例えば、窒素ガス101と酸素ガスとを混合することにより、所望の酸素濃度を有する処理ガス103を生成するようにすることも可能である。しかしながら、前述した実施形態のように、窒素ガス101と空気102とを混合することにより、所望の酸素濃度を有する処理ガス103を生成するようにすれば、酸素ガスをわざわざ用意しなくても済むので、非常に好ましい。
【0050】
また、前記窒素ガス供給源112としては、処理ガス103を生成させるためだけに用意した窒素ガスボンベ等を適用することができるのはもちろんのこと、その他、例えば、乾留装置に送給された窒素ガスにより低質炭を乾留して当該乾留装置から送出された後に揮発成分や粉塵等を分離された乾留ガス(主成分:窒素ガス)を適用することも可能であり、この場合、不活処理を行うにあたって処理ガス103に新たに加える熱エネルギを削減することが可能となる。
【0051】
また、前述した実施形態においては、空気102を試験ガスとして利用するようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記処理ガス103の場合と同様に、窒素ガス101と空気102とを混合することにより、前記上限値Oh(例えば、16%)を超える酸素濃度Ocを有する試験ガスを利用することも可能である。このときの窒素ガス源としては、前記処理ガス103の場合と同様に、窒素ガスボンベからの窒素ガスはもちろんのこと、上記乾留ガスを適用することも可能である。
【0052】
また、前述した実施形態においては、乾留炭1を不活処理する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、石炭を不活処理する場合であれば、前述した実施形態の場合と同様に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る石炭不活化処理装置は、処理装置本体に供給される石炭の組成が経時的にバラついたとしても、当該石炭の組成に対して必要十分な条件で不活処理を簡単に行うことができるので、産業上、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 乾留炭
2 改質炭
3 サンプル
100 石炭不活化処理装置
101 窒素ガス
102 空気
103 処理ガス
111 処理装置本体
112 窒素ガス供給源
113 ブロア
114 加熱器
115 ブロア
116 フィルタ
117 分取装置
120 評価装置
121 評価装置本体
122 ブロア
123 加熱器
124 フィルタ
125 温度センサ
126 CO2センサ
130 制御装置
131 操作盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を含有する処理ガスで石炭を加熱することにより、当該石炭を不活処理する石炭不活化処理装置であって、
前記石炭を内部に供給される処理装置本体と、
前記処理装置本体の内部に前記処理ガスを送給する処理ガス送給手段と、
前記処理ガス中の酸素濃度Ocを調整する処理ガス酸素濃度調整手段と、
前記処理ガスの温度Tcを調整する処理ガス温度調整手段と、
前記処理装置本体内で不活処理された前記石炭の一部を分取する分取手段と、
前記分取手段で分取された前記石炭のサンプルを内部に供給される評価装置本体と、
前記評価装置本体の内部に評価温度Ttの試験ガスを供給する試験ガス供給手段と、
前記評価装置本体内で前記サンプルを加熱処理した前記試験ガスの温度Teを検知する試験ガス温度検知手段と、
前記試験ガス温度検知手段からの情報に基づいて、
前記試験ガスの温度Teが上限値Teh以上のときには、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocが、上限値Oh以上であるか否か判断し、当該上限値Oh未満の場合には、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocを規定値Ofu増加させるように前記処理ガス酸素濃度調整手段を制御し、当該上限値Oh以上の場合には、前記処理ガスの前記温度Tcが、上限値Th以上であるか否かさらに判断し、当該上限値Th未満の場合には、前記処理ガスの前記温度Tcを規定値Tfu上昇させるように前記処理ガス温度調整手段を制御する一方、
前記試験ガスの温度Teが下限値Tel以下のときには、前記処理ガスの前記温度Tcが、下限値Tl以下であるか否か判断し、当該下限値Tlを超えている場合には、前記処理ガスの前記温度Tcを規定値Tfd低下させるように前記処理ガス温度調整手段を制御し、前記下限値Tl以下の場合には、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocが、下限値Ol以下であるか否かさらに判断し、当該下限値Olを超えている場合には、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocを規定値Ofd減少させるように前記処理ガス酸素濃度調整手段を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする石炭不活化処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の石炭不活化処理装置において、
前記制御手段は、前記試験ガスの前記温度Teが前記下限値Tel以下のときに、前記処理ガスの前記温度Tcが前記下限値Tl以下であると共に、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocが前記下限値Ol以下である場合に、前記処理ガスの前記酸素濃度Oc及び前記温度Tcを前記下限値Ol,Tlとするように前記処理ガス酸素濃度調整手段及び前記処理ガス温度調整手段を制御するものである
ことを特徴とする石炭不活化処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の石炭不活化処理装置において、
前記制御手段は、前記試験ガスの前記温度Teが前記下限値Telよりも大きく前記上限値Tehよりも小さいときに、前記処理ガスの前記酸素濃度Oc及び前記温度Tcをそのまま維持するように前記処理ガス酸素濃度調整手段及び前記処理ガス温度調整手段を制御するものである
ことを特徴とする石炭不活化処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の石炭不活化処理装置において、
前記評価装置本体内で前記サンプルを加熱処理した前記試験ガスの二酸化炭素濃度Ceを検知する試験ガス二酸化炭素濃度検知手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記試験ガスの前記温度Teが前記下限値Telよりも大きく前記上限値Tehよりも小さいときに、前記試験ガス二酸化炭素濃度検知手段からの情報に基づいて、前記試験ガス中の二酸化炭素濃度Ceが上限値Ceh以上である場合に、前記処理ガスの前記酸素濃度Ocが前記上限値Oh以上であるか否か改めて判断すると共に、前記試験ガス中の二酸化炭素濃度Ceが下限値Cel以下である場合に、前記処理ガスの前記温度Tcが前記下限値Tl以下であるか否か改めて判断するものである
ことを特徴とする石炭不活化処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の石炭不活化処理装置において、
前記制御手段は、前記試験ガスの前記温度Teが前記下限値Telよりも大きく前記上限値Tehよりも小さいときに、前記試験ガス二酸化炭素濃度検知手段からの情報に基づいて、前記試験ガス中の二酸化炭素濃度Ceが前記下限値Celよりも大きく前記上限値Cehよりも小さい場合に、前記処理ガスの前記酸素濃度Oc及び前記温度Tcをそのまま維持するように前記処理ガス酸素濃度調整手段及び前記処理ガス温度調整手段を制御するものである
ことを特徴とする石炭不活化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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