説明

石積工法

【課題】施工現場での作業の効率化を図り、環境にも適した石積工法を提供する。
【解決手段】本石積工法では、予め、板状石材3の表面に多数の石材2が化粧的に割り付けて配置された意匠パネル4を製造して、該意匠パネル4を施工現場に複数搬入して、各意匠パネル4を対象施工面に敷設するので、施工現場での作業が効率良く行なわれ、環境にも適したものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、護岸や法面等の対象施工面に多数の石材を敷設する石積工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から護岸や法面等の対象施工面に多数の石材を敷設する作業を軽減する石積工法が実施されている。例えば、まず、護岸や法面等の対象施工面に対して間隔を置いた位置にエキスパンドメタル等多数の孔を有する支持板を設置する。次に、アンカーが打ち込まれた石材を多数用意して、該石材のアンカーを支持板の孔に挿入すると共にアンカーの先端に固定金具を螺合して、多数の石材を支持板の表面に固定する。最後に、対象施工面と支持板との間にコンクリートを打設して、対象施工面への石積が完了する。
【0003】
しかしながら、施工現場にて多数の石材を位置決めしながら支持板に固定する作業は作業者にとって大変な労力を要し、しかも、その作業時間が相当長くなり改善する必要があった。
【0004】
なお、石積工法に係る従来技術として特許文献1には、基布マットに多数の石材が取り付けられた石材連結マットを対象施工面に対して曲面状に敷設する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−232427
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る方法では、基布マットの材質が、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等、自然由来でないものが採用されており、環境上好ましくない。また、石材連結マットを施工面に敷設する以前は基布マットが柔軟性を有するがゆえに取り扱いが困難で、多数の石材の破損を誘発する虞もある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、施工現場での作業の効率化を図り、環境にも適した石積工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明は、予め、板状石材の表面に多数の石材が化粧的に割り付けられて配置された意匠パネルを製造して、前記意匠パネルを施工現場に複数搬入して、各意匠パネルを対象施工面に敷設することを特徴とするものである。
請求項1の発明では、例えば、工場にて、予め意匠パネルを製造し、該意匠パネルを施工現場に複数搬入して、各意匠パネルを対象施工面に敷設するようにしているので、施工現場における作業が非常に簡素化される。また、意匠パネルにおいて、多数の石材を支持するための基板に板状石材を採用したので、意匠パネルが異物を含まず石材にて一体物になり、景観的に良好で環境にも適している。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、前記意匠パネルを、複数の貫通孔を有する板状石材と、アンカーがそれぞれ打ち込まれた多数の石材とを用意して、各石材に打ち込まれたアンカーを前記板状石材の各貫通孔にそれぞれ挿通すると共に該板状石材の裏面から突出したアンカーに固定金具を固着して構成することを特徴とするものである。
請求項2の発明では、均一で高品質な意匠パネルを短時間で効率良く製造することができる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した発明において、前記意匠パネルを、前記板状石材の裏面に前記対象施工面との係合手段を設けて構成することを特徴とするものである。
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した発明において、前記係合手段を、前記板状石材の裏面に縦方向に延びるL字鋼材を横方向に間隔を置いて複数固定し、該各L字鋼材に、該L字鋼材から突出して下方に折れ曲がるフックを縦方向に間隔を置いて複数固定して構成することを特徴とするものである。
請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した発明において、前記対象施工面に、横方向に延びるレールを縦方向に間隔を置いて複数設け、前記対象施工面に備えた前記各レールに前記意匠パネルの裏面に設けたフックを係合することを特徴とするものである。
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した発明において、前記各レールを、前記対象施工面から延びるアンカーにより隙間を有して平行に延びる2本の鋼材を固定して構成し、該2本の鋼材間の隙間に前記意匠パネルの裏面に設けたフックを係合することを特徴とするものである。
請求項3〜6の発明では、対象施工面に備えた各レールの2本の鋼材間の隙間に、意匠パネルの裏面に設けた係合手段としてのフックを係合させた後、対象施工面と意匠パネルとの間にコンクリートを打設して、複数の意匠パネルを対象施工面に敷設する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の石積工法によれば、施工現場では、工場で製造した意匠パネルを対象施工面に取り付けるだけの作業であるのでその作業が非常に簡素化され、作業時間が大幅に短縮される。
しかも、各石材を支持するための基板には板状石材が採用されており、意匠パネルが石材で一体物とされるので、景観的に良好で環境上の問題も解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る意匠パネルの断面図である。
【図2】図2は、図1の意匠パネルの正面図である。
【図3】図3は、対象施工面の斜視図である。
【図4】図4は、意匠パネルが対象施工面に敷設された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図4に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る石積工法では、まず、工場等の加工、製造作業に適した場所にて、略矩形状の板状石材3の表面に多数の石材2を化粧的に割り付けられて配置された意匠パネル4を製造する。続いて、該意匠パネル4を施工現場に複数搬入して、各意匠パネル4を対象施工面5に敷設する。
【0014】
まず、意匠パネル4を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
平面視略矩形状の板状石材3を用意する。該板状石材3には複数の貫通孔6が形成されている。なお、板状石材3の各貫通孔6は、各石材2が板状石材3の表面に所望の態様、すなわち、化粧的に割り付けられて配置されるように適宜位置に穿孔される。板状石材3は、矩形状の他、ひし形、台形、円形または長円形等に形成してもよく、施工対象面5(図3参照)の形状に対応した適宜形状に形成される。
また、石材2として自然石や人工石を多数用意する。該石材2の形状は、図2に示される定形のものや、自然石の様相を呈するもの等要請に応じて適宜選択される。一方、各石材2の板状石材3との当接面7は平坦面に形成される。各石材2には、予め当接面7側から複数のアンカーボルト8が打ち込まれている。
【0015】
そして、各石材2に植設されたアンカーボルト8を板状石材3の対応する貫通孔6に挿通して、板状石材3の裏面から突出したアンカーボルト8の先端に固定金具15、例えばナットを締め込むことで各石材2を板状石材3の表面にそれぞれ固定する。なお、各石材2の板状石材3との当接面7に接着材を塗布してもよい。その結果、多数の石材2が板状石材3の表面に化粧的に割り付けられて配置される。
【0016】
また、板状石材3の裏面には、縦方向に延びるL字鋼材11が横方向に間隔を置いて複数固定される。詳しくは、板状石材3に打ち込まれたアンカー(図示せず)により各L字鋼材11が板状石材3の裏面に固定される。さらに、各L字鋼材11には、各L字鋼材11から突出して下方に折れ曲がるフック12(係合手段)が縦方向に間隔を置いて複数固定される。以上説明した構成からなる意匠パネル4(図1の状態)が工場等で製造される。
【0017】
次に、図3に示すように、施工現場の対象施工面5には、横方向に延びるレール16が縦方向に間隔(フック12の縦方向の間隔に対応する間隔)を置いて複数備えられる。各レール16は、例えば、間に隙間18aを有して平行に延びる2本の鋼材18を、対象施工面5に打ち込まれた複数のアンカー10により固定して構成される。そして、各レール16の鋼材18間の隙間18aに、意匠パネル4のフック12が係合される。
なお、他の実施形態として、対象施工面5にレール16として横方向に延びるL字鋼材を縦方向に間隔を置いて複数アンカー等により固定する。そして、各L字鋼材の一辺に設けた係合孔に、意匠パネル4のフック12を係合するように構成してもよい。
【0018】
そして、上述したように意匠パネル4が工場等で製造され、意匠パネル4が施工現場に複数搬入される。この時、意匠パネル4の形状は略一定となっているために取り扱いが容易であり、運搬も容易となる。
次に、図4に示すように、各意匠パネル4の裏面に設けられた各フック12を、対象施工面5に備えられた対応する各レール16の鋼材18間の隙間18aに係合させて位置決めする。この時、意匠パネル4は取り扱いが容易であるので、その作業時間が大幅に短縮される。
【0019】
最後に、対象施工面5と各意匠パネル4(板状石材3)の裏面との間にコンクリート17を打設することで、各意匠パネル4の裏面と対象施工面5との間に位置する各固定金具15、各L字鋼材11、各フック12及び各レール16等をコンクリート17内に埋没させて、各意匠パネル4を対象施工面5に固定して、対象施工面5への石積が完了する。
【0020】
以上説明したように、本実施の形態では、工場等にて、予め、板状石材3の表面に多数の石材2が化粧的に割り付けられて配置された意匠パネル4を製造して、該意匠パネル4を対象施工面5に複数敷設するので、施工現場での作業が非常に簡素化され、その作業時間が大幅に短縮される。しかも、意匠パネル4は工場等で製造されるので、均一で高品質な意匠パネル4を短時間で効率良く製造することができ、さらに、意匠パネル4の形状が略一定となっているため取り扱いに優れ、運搬も容易となり、保管に係る問題も発生しない。
【0021】
また、本実施の形態では、多数の石材2を支持するための基板に板状石材3を採用したので、意匠パネル4が異物を含まず石材2、3にて一体物になり、景観的に良好で環境にも適している。
【符号の説明】
【0022】
2 石材,3 板状石材,4 意匠パネル,5 対象施工面,6 貫通孔,8 アンカーボルト,10 アンカー,11 L字鋼材,12 フック(係合手段),15 固定金具,16 レール,17 コンクリート,18 鋼材,18a 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め、板状石材の表面に多数の石材が化粧的に割り付けられて配置された意匠パネルを製造して、
前記意匠パネルを施工現場に複数搬入して、各意匠パネルを対象施工面に敷設することを特徴とする石積工法。
【請求項2】
前記意匠パネルを、複数の貫通孔を有する板状石材と、アンカーがそれぞれ打ち込まれた多数の石材とを用意して、各石材に打ち込まれたアンカーを前記板状石材の各貫通孔にそれぞれ挿通すると共に該板状石材の裏面から突出したアンカーに固定金具を固着して構成することを特徴とする請求項1に記載の石積工法。
【請求項3】
前記意匠パネルを、前記板状石材の裏面に前記対象施工面との係合手段を設けて構成することを特徴とする請求項1または2に記載の石積工法。
【請求項4】
前記係合手段を、前記板状石材の裏面に縦方向に延びるL字鋼材を横方向に間隔を置いて複数固定し、該各L字鋼材に、該L字鋼材から突出して下方に折れ曲がるフックを縦方向に間隔を置いて複数固定して構成することを特徴とする請求項3に記載の石積工法。
【請求項5】
前記対象施工面に、横方向に延びるレールを縦方向に間隔を置いて複数設け、
前記対象施工面に備えた前記各レールに前記意匠パネルの裏面に設けたフックを係合することを特徴とする請求項4に記載の石積工法。
【請求項6】
前記各レールを、前記対象施工面から延びるアンカーにより隙間を有して平行に延びる2本の鋼材を固定して構成し、該2本の鋼材間の隙間に前記意匠パネルの裏面に設けたフックを係合することを特徴とする請求項5に記載の石積工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−46977(P2012−46977A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190735(P2010−190735)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(504018644)株式会社 創景 (3)
【Fターム(参考)】