説明

石詰めカゴおよび内カゴ

【課題】 石詰めカゴに石を詰める際の作業労力を軽減することのできる、石詰めカゴを提供すること。
【解決手段】 石詰めカゴ10は、石詰め用の石6を投入するための外カゴ5と、外カゴ5に収容可能でより小さい石3を投入するための一以上の内カゴ2を備えてなる、複層構造のカゴである。金網を用いる場合、内カゴ2は外カゴ5よりも網目の小さいものが用いられる。外カゴ5および内カゴ2はいずれも、これらが石詰めに適した強度その他の物性・仕様を備えたものである限り、その材質も種類も規格も限定されない。菱形金網、溶接金網といった金網製のものは好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は石詰めカゴおよび内カゴに係り、特に築堤港湾用等に使用される大型の石詰めカゴに石を詰める作業労力を軽減することのできる、石詰めカゴおよび内カゴに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石詰めカゴは、築堤港湾用すなわち漁港・工業港等の建設工事の他、臨海埋立、人工漁礁、防波堤、根固め、消波、海岸・河岸浸食防止、海底パイプライン敷設工事、山間部での法面保護等の工事、災害時の緊急復旧工事など、様々な場面で用いられる。石詰めカゴは、金網製のカゴに、1個10〜100kg等の大きく重量のある石を詰めることによって、形成される。
【0003】
図3は、従来の石詰めカゴの構成を示す説明図である。図示するように従来の石詰めカゴの形成は、金網製の大型のカゴ45の中に、一個10〜100kgもの比較的大きな石46を重機で投入して積み上げ、その後、作業員が、積まれた石の最上部ができるだけ平らになるように手作業にて石46の並べ替え作業をし、最後に上部に蓋網を被せ、側網と蓋網をコイル結合することによって、石詰め作業を完成する、というものだった。
【0004】
なお、石詰めカゴについては従来、技術的な提案もなされている。たとえば後掲特許文献1は、金網製パネルからなる石詰籠において、正面パネルに外面側に縦棒鋼と横棒鋼とを結合した補強部材が結合され、背面パネルと正面パネルとは縦棒鋼と横棒鋼とを結合した中枠によって繋がれ、補強部材の縦棒鋼と中枠の縦棒鋼とを交互に配置した構成を提案し、これによって正面パネルの膨張変形を効果的に防止し、隣り合う中枠間の距離を大きくできるため石詰め作業の効率が向上するとしている。
【0005】
また、特許文献2に開示されている技術は、現場への輸送と現場における組み立て・連結作業が簡単な角形石詰篭として、矩形状をした底面網に前面網および後面網と仕切網とを予め連結することにより形成した胴網部材、胴網部材の左右いずれか一方の側面に取り付けるための1枚の側面網と、胴網部材の上面に取り付けるための上面網とを1組とした、組立式角形蛇篭を提案するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−302955号公報「石詰籠」
【特許文献2】特開2001−107366号公報「組立式角形石詰篭及びその施工方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、図3により説明した従来の石詰め作業方法は、最上部をできるだけ平らにするための作業員による石の並べ替え作業が大変な重労働である。石詰めカゴの形成作業は、当然ながら屋外にて行われ、しかも築堤等の現場またはその近傍にて行われるものであるため、風・雨・雪といった自然条件の影響を直接受ける状況での作業となる。また石の並べ替え作業だけではなく、側網と蓋網とをコイル結合する際にコイルを網目に挿入する作業も、手間がかかり、重労働である。
【0008】
さらにこれらの作業には、比較的高齢の者があたることも多い。老年者・高齢者にとっては、石詰め作業は一層過酷なものになるといえる。これら従来の状況・問題点は、上記各文献開示技術によっても何ら着目されておらず、当然ながら解決できるものでもない。
【0009】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点を踏まえ、石詰めカゴに石を詰める際の作業労力を軽減することのできる、石詰めカゴを提供することである。特に重労働であるところの、石の並べ替え作業の労力を軽減できる石詰めカゴを提供することである。また、これに加えて本発明が解決しようとする課題は、コイル結合作業労力をも軽減ないしは解消できる、石詰めカゴを提供することである。また、これらの課題を解決することによって、石詰め作業の効率や作業性を高め、工期を短縮可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題について検討した結果、カゴの上部を一部仕切った状態とすること、すなわち上下方向に二重構造にした大型の石詰めカゴとすることに基づいて課題解決が可能であることに想到し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0011】
(1) 石詰め用の石を投入するための外カゴと、該外カゴに収容可能でより小さい石を投入するための一以上の内カゴを備えてなる、複層構造の石詰めカゴ。
(2) 前記内カゴは投入される石が外に漏れない構造であり、石詰めの調整に使用可能であることを特徴とする、(1)に記載の石詰めカゴ。
(3) 前記外カゴおよび内カゴは金網製であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の石詰めカゴ。
(4) 前記内カゴは、目の細かい網または透水性のシートにより形成されていることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の石詰めカゴ。
【0012】
(5) 前記内カゴは、目の細かい網または透水性のシートの少なくともいずれか一方によって被覆されることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の石詰めカゴ。
(6) 上面を被覆する蓋網がU字クリップまたはU型ボルトにより固定されていることを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の石詰めカゴ。
(7) (1)ないし(6)のいずれかに記載の石詰めカゴに用いるための、内カゴ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の石詰めカゴおよび内カゴは上述のように構成されるため、これによれば、石詰めカゴに石を詰める際の作業労力を、大幅に軽減することができる。特に、重労働であるところの石の並べ替え作業の労力を、大幅に軽減することができる。また、U字クリップ等を用いる本発明石詰めカゴによれば、コイル結合作業労力・手間をも解消、または大幅に軽減することができる。
【0014】
本発明によれば、屋外の、しかも風・雨・雪といった自然条件の影響を直接受ける状況での作業となる石詰め作業の苦労、過酷さを、相当程度軽減することができる。またこのことは、石詰め作業の作業効率を大いに向上させ、作業性を高めることに直接つながり、工期を短縮させることができ、その後の作業や工程を加速することができ、ひいては工事目的の構造物等における生産・製造活動の開始を、早めることができる。
【0015】
また本発明による作業労力軽減効果は、石詰め作業に従事することの多い老年者・高齢者にとっては特に喜ばれることであり、人に優しい、人間性重視の生産活動の一つとしても、大いに意義を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】本発明石詰めカゴの基本構成を示す断面視の使用状態説明図である。
【図1B】本発明石詰めカゴの実施例を示す斜視の説明図である。
【図2】本発明に係る内カゴの使用例を示す断面視の説明図である。
【図3】従来の石詰めカゴの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1Aは、本発明石詰めカゴの基本構成を示す断面視の使用状態説明図である。図示するように本石詰めカゴ10は、石詰め用の石6を投入するための外カゴ5と、外カゴ5に収容可能でより小さい石3を投入するための一以上の内カゴ2を備えてなる、複層構造のカゴであることを、主たる構成とする。なお、以下述べる「石詰めカゴ」とは、石が詰められた状態ではなく、石を投入するためのカゴ自体のことをいう。
【0018】
図において、外カゴ5および内カゴ2はいずれも、これらが石詰めに適した強度その他の物性・仕様を備えたものである限り、その材質も種類も規格も限定されない。たとえば、菱形金網、溶接金網といった金網製のものは好適に用いることができるが、それ以外のものも本発明から除外されない。
【0019】
内カゴ2に入れられるべき小さい石3は、作業員による石の並べ替え作業、あるいはならし作業を従来よりも実際上軽減できるものである限り、そのサイズは特に限定されない。したがって、これを入れるべき内カゴ2の各面の構造も、作業員による石の並べ替え作業、あるいはならし作業を従来よりも実際上軽減できるものである限り、特に限定されない。
【0020】
要するに、内カゴ2と、これに投入される小さい石3との関係として、小さい石3が内カゴ2の外に漏れない構造であること、および内カゴ2が問題なく石詰め作業の最終段階における石3の並べ替え作業あるいはならし作業といった調整作業に使用可能であることが満たされればよい。
【0021】
図示するように内カゴ2は、外カゴ5の内側に収容可能なもので、しかもその内側上部に、石詰め用石5の最上部の上に載せて用いるものである。また図では、内カゴ2は一つ設けられている構成を示すが、これは二以上でもよい。つまり、外カゴ5内側上部に平面構成で二以上の内カゴを設ける、という構成である。かかる構成は、作業を複数の作業員によって行う場合の工程管理・工程設計に、個人差やスケジュール等に基づき自由度が求められる際に、有益となる場合がある。
【0022】
以上の構成により本発明石詰めカゴ10によれば、まず外カゴ5の中に石詰め用の石6が重機等によって投入され、ある程度の高さ(深さ)まで粗く石6が詰められ、その後、内カゴ2がその上に載せられる。そして内カゴ2の中に、石詰め用の石6よりも小さいサイズの石3が、投入される。この投入は、機械によっても、あるいは作業員の人力であってもよい。
【0023】
内カゴ2内に投入された石3は、石詰め用の石6と比較してサイズも重量もさほどではないため、作業員の人力による並べ替えや、ならしの作業は、従来よりも大幅に軽減される。これらの作業は、スコップ等の利用によって、簡単に行うことができる。小さい石3は並べ替えやならしの作業によって上面が外カゴ5の上端部に合わせた高さにて平らにされ、その後、蓋網9が取り付けられて、石詰めの作業が完了する。このようにして本発明の石詰めカゴ10によれば、作業効率も高まり、作業時間が短縮されて、石詰めの作業が実施される。
【0024】
図1Bは、本発明石詰めカゴの実施例を示す斜視の説明図である。図示するように本石詰めカゴ110は、従来はこれだけが用いられていたところの外カゴ15に、上端部に届くまでにはある程度の空間を取った状態で石詰め用の石(図示せず)の投入工程が済んだ後、その石の上に内カゴ12が載せられる。図示されるのは、内カゴ12は一つのみを用いた例である。この内カゴ12内に、上面を平らにするための、作業員の人力によっても容易に並べ替えやならしの作業が可能な調整用の小さい石(図示せず)が投入され、並べ替え等の作業がなされる。
【0025】
外カゴ15、内カゴ12ともに金網製とする場合、たとえば、石詰め用の石(割栗石)を投入するための外カゴ15はその網目を150〜200mm程度とし、一方、調整用の小さい石を投入するための内カゴ12はその網目を20〜80mm程度とする、という具合に、網目は適した仕様であればよく、本発明はこれに限定されない。
【0026】
また、外カゴ15に対する内カゴ12の高さは、たとえば外カゴを900〜1200mm程度、内カゴを100〜200mm程度として、外カゴに対して8〜25%程度の高さにするなど、これも、内カゴ12を用いての調整作業によって一定の労力軽減効果が得られるものである限り、特に限定されない。
【0027】
また、内カゴ15は、上述したような目の細かい網、あるいはまた透水性のシートによって、形成されるものとすることができる。金網等の網材を用いる場合、目の細かさは要するに、中に投入する調整用の小さい石が漏れ出ない程度以上であればよい。また、網材に替えて熱可塑性樹脂製等のシートを用いてもよいが、その場合は、内カゴ内に雨水が溜まる等のことを避けるために、透水性のものを用いればよい。
【0028】
図2は、本発明に係る内カゴの使用例を示す断面視の説明図である。図示するように本発明石詰めカゴを構成する内カゴ22は、調整用の小さい石26が投入されて平らにする調整がなされた後、別の目の細かい網または透水性のシート24、あるいはその双方によって被覆するようにしてもよい。
【0029】
たとえば、内カゴ22自体は金網製で、しかも小さい石26が相当サイズが小さい砂状レベルのものであって、屋外に放置している間に風によって飛散する可能性がある場合、あるいは小さい石26によって調整した上面の形態保持の必要がある場合などは、かかる目の細かい網や透水性シートによってさらに被覆する方法は、有益である。
【0030】
なお、本発明の石詰めカゴでは、上面を被覆する蓋網と側網との結合方法は特に限定されない。したがって、コイル結合によって行うことも、本発明の範囲内ではある。しかし、コイル結合の作業も上述のとおり、一定の労力を要する作業である。そこで、コイル結合に替えて、U字クリップまたはU型ボルトによる固定方法をとることもできる。
【0031】
なおまた、以上説明した内カゴ自体も、本発明の範囲内である。したがって、既存の従来の石詰めカゴ本体および蓋体があれば、本発明の内カゴのみを新たに準備するだけで、本発明による労力軽減効果を簡単に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の石詰めカゴおよび内カゴによれば、石詰めカゴに石を詰める際の作業労力を、大幅に軽減することができる。そして、石詰め作業の作業効率を大いに向上させ、作業性を高めることに直接つながり、工期の短縮にもつながる。また本発明は、石詰め作業に従事することの多い老年者・高齢者にとっては特に喜ばれ、人に優しい、人間性重視の生産活動の一つとしても、大いに意義を有するものである。したがって、関連する全ての産業分野において産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0033】
2、12、22…内カゴ
3、26…小さい石
5、15…外カゴ
6…石詰め用の石
9…蓋網
10、110…石詰めカゴ
24…目の細かい網または透水性のシート
45…カゴ
46…石



【特許請求の範囲】
【請求項1】
石詰め用の石を投入するための外カゴと、該外カゴに収容可能でより小さい石を投入するための一以上の内カゴを備えてなる、複層構造の石詰めカゴ。
【請求項2】
前記内カゴは投入される石が外に漏れない構造であり、石詰めの調整に使用可能であることを特徴とする、請求項1に記載の石詰めカゴ。
【請求項3】
前記外カゴおよび内カゴは金網製であることを特徴とする、請求項1または2に記載の石詰めカゴ。
【請求項4】
前記内カゴは、目の細かい網または透水性のシートにより形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の石詰めカゴ。
【請求項5】
前記内カゴは、目の細かい網または透水性のシートの少なくともいずれか一方によって被覆されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の石詰めカゴ。
【請求項6】
上面を被覆する蓋網がU字クリップまたはU型ボルトにより固定されていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の石詰めカゴ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の石詰めカゴに用いるための、内カゴ。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−219465(P2012−219465A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84213(P2011−84213)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(501297996)青森昭和産業 株式会社 (4)
【Fターム(参考)】