説明

砂とシルト分の分離方法及び装置

【課題】簡単な装置構成により、山砂のようにシルト分含有量の多い細骨材から有害なシルトを含む微粒子分を短時間に効率よく除去し、良質の細骨材を精製できるようにする。
【解決手段】分離処理対象砂1と水2を高圧エア3とともに搬送流路4を通して圧送することにより、搬送流路内で分離処理対象砂を流路内面に付着しつつ下流側へ移動するシルト分によるヘドロ状の粘性流動物5と、流路内面に付着することなく下流側へ移動する湿った砂6とに分離させ、搬送流路から湿った砂6とシルト分によるヘドロ状の粘性流動物5とを異なる場所に取り出すように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルト分(シルト、粘土)の多い山砂や海砂などを、砂とシルト分に分別処理分離する砂とシルト分の分離方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高品質コンクリートや高品質モルタルによる耐久性に優れた高品質の建造物を構築するためには、コンクリートやモルタル用の細骨材として良質な細骨材を使用することが前提となるが、良質な川砂及び川砂採取地の減少、海砂の採取規制等により、シルト分含有量の少ない良質な細骨材の大量入手が年々困難になりつつある。そのため、山砂のようにシルト分含有量の多い細骨材から有害なシルトを含む微粒子分を短時間に効率よく除去できるシステムの開発が強く望まれている。
【0003】
尚、海砂は川砂と同様にシルト分の含有量が比較的少ないが、鉄筋や鉄骨の錆の原因とならない良質な細骨材とするためには、洗い流し等による塩分除去が必要不可欠であり、この点で川砂に劣る。また、建設現場等から排出される掘削残土や汚泥を、砂利、砂、シルト分等に分別処理する分離処理方法及び装置は、特許文献1によって提案されている。しかし、この従来技術は、高圧ジェット水の噴射により粘土塊を破砕し、水に浸漬させた回転金網体により濾過するといった分離方法であるため、高圧ジェット水を噴出させるノズル、回転金網体、回転金網体を一部が浸漬した状態に内装する水槽、分離した砂を水槽から搬出するコンベア等々多くの構成部材を要して装置構成が複雑であるばかりでなく、処理に時間が掛かり、予め所定の粒径以下に篩選別されている細骨材を砂とシルト分に分別処理する方法及び装置としては合理的でない。
【0004】
【特許文献1】特開平9−239288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の点に留意して成されたものであって、簡単な装置構成により、山砂のようにシルト分含有量の多い細骨材から有害なシルトを含む微粒子分を短時間に効率よく除去し、良質の細骨材を精製できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明は、砂とシルト分の分離方法であって、分離処理対象砂と水を高圧エアとともに搬送流路を通して圧送することにより、搬送流路内で分離処理対象砂を流路内面に付着しつつ下流側へ移動するシルト分によるヘドロ状の粘性流動物と、流路内面に付着することなく下流側へ移動する湿った砂とに分離させ、搬送流路から湿った砂とシルト分によるヘドロ状の粘性流動物とを異なる場所に取り出すことを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、砂とシルト分の分離装置であって、分離処理対象砂と水を高圧エアとともに走行台車の駆動車輪がレールの下面に圧接しながら回転するように搬送流路を通して圧送することにより、搬送流路内で分離処理対象砂を流路内面に付着しつつ下流側へ移動するシルト分によるヘドロ状の粘性流動物と、流路内面に付着することなく下流側へ移動する湿った砂とに分離させ、搬送流路から湿った砂とシルト分によるヘドロ状の粘性流動物とを異なる場所に取り出すように構成したことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の砂とシルト分の分離装置であって、搬送流路を形成する搬送ホースと、搬送ホースに水を供給する水ポンプ及び高圧エアを供給するエアコンプレッサーと、水及び高圧エアの供給位置よりも下流側において搬送ホースに分離処理対象砂を供給するホッパーとを備えていることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の砂とシルト分の分離装置であって、搬送流路を形成する搬送ホースと、搬送ホースに分離処理対象砂と水の混合物を供給する圧送機と、圧送機に接続されたエアコンプレッサーとを備えていることを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の砂とシルト分の分離装置であって、搬送ホースをコイル状に巻いてあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1,2に記載の発明によれば、ある程度の水分を含有させた分離処理対象砂を高圧エアで搬送するだけの簡単な装置構成によって、山砂のようにシルト分含有量の多い細骨材から有害なシルトを含む微粒子分を短時間に効率よく除去し、良質の細骨材を精製することが可能となる。
【0012】
即ち、分離処理対象砂(シルト分を含有する細骨材)が、水を加えられた状態で、高圧エアとともに搬送流路を圧送されると、粒径の小さなシルト分は水分と混合されて粘性が高くなるので、ヘドロ状の粘性流動物となる。このヘドロ状の粘性流動物は、粘性を有するため、流路内面に付着しつつ下流側へとゆっくり移動するが、粒径の大きい砂は水分を加えても粘性を有しないため、流路内面に付着することなく流路中心側に集中して流れ、前記粘性流動物よりも高速で移動することになる。
【0013】
そして、この移動経路の相違と移動速度差とによって、分離処理対象砂は、搬送流路内で、シルト分によるヘドロ状の粘性流動物と、シルト分を含まない湿った砂とに次第に明確に分別されることになり、例えば、ヘドロ状の粘性流動物は搬送流路の出口から引力で落下させ、粘性を有しない砂は慣性の法則によりヘドロ状粘性流動物の落下位置よりも遠くまで飛散させるといった簡便な手法により、搬送流路から湿った砂とシルト分によるヘドロ状の粘性流動物とを異なる場所に取り出すことができ、高圧ジェット水を噴出させるノズル、回転金網体、回転金網体を一部が浸漬した状態に内装する水槽、分離した砂を水槽から搬出するコンベア等は不要である。
【0014】
分離処理対象砂と水を高圧エアとともに搬送流路を通して圧送するにあたっては、分離処理対象砂と水を各別に搬送流路に供給してもよく、予め分離処理対象砂と水を混合してから搬送流路に供給してもよい。即ち、請求項2に記載の砂とシルト分の分離装置としては、請求項3に記載の発明のように、搬送流路を形成する搬送ホースと、搬送ホースに水を供給する水ポンプ及び高圧エアを供給するエアコンプレッサーと、水及び高圧エアの供給位置よりも下流側において搬送ホースに分離処理対象砂を供給するホッパーとを備えているものでもよく、請求項4に記載の発明のように、搬送流路を形成する搬送ホースと、搬送ホースに分離処理対象砂と水の混合物を供給する圧送機と、圧送機に接続されたエアコンプレッサーとを備えているものでもよい。
【0015】
何れの場合も、請求項5に記載の発明のように、搬送ホースをコイル状に巻くことにより、装置構成をコンパクト化しながらも搬送流路の長さを十分に長くとって、上述した搬送流路内での分別作用を確実に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図1、図2に基づいて説明する。図1は、定位置に据え付けるプラントとして構成された砂とシルト分の分離装置の一例を示す。この装置は、図2に示すように、分離処理対象砂(シルト分を含有する細骨材)1と水2を高圧エア3とともに搬送流路4を通して圧送することにより、搬送流路4内で分離処理対象砂1を流路内面に付着しつつ下流側へ移動するシルト分によるヘドロ状の粘性流動物5と、流路内面に付着することなく下流側へ移動する湿った砂6とに分離させ、搬送流路4から湿った砂6とシルト分によるヘドロ状の粘性流動物5とを異なる場所に取り出すように構成したものであり、搬送流路4を形成する搬送ホース7と、搬送ホース7に水2を供給する流量計付き水ポンプ8及び高圧エア3を供給するエアコンプレッサー9と、水2及び高圧エア3の供給位置よりも下流側において搬送ホース7に分離処理対象砂1を供給するホッパー10とを備えている。11は水タンク、12は給水ホース、13は高圧エア供給ホースである。
【0017】
図1に示すように、ホッパー10の底部には、セラミックコーティングにより耐摩耗性を高めたスクリューコンベア14が設けられており、ホッパー10内の分離処理対象砂1を設定流量ずつ搬送流路4内に繰り出すように構成されている。図示しないが、スクリューコンベア14に代えて、ホッパー10の底部にバイブレーターを設け、バイブレーターによるホッパー10の振動と、高圧エア3の流れによりホッパー10からの出口に発生させたコアンダー効果とによって、分離処理対象砂1を設定流量ずつ搬送流路4内に繰り出すように構成してもよい。
【0018】
搬送流路4の出口4aの直下には、漏斗15が配置され、出口4aから落下したヘドロ状の粘性流動物5を第一容器16に導くように構成されている。搬送流路4の出口4aから流路延長方向に離れた位置には、搬送流路4から飛び出した砂(湿った砂6)を受け入れる第二容器17が配置され、その底部に設けたシュート18によって第二容器17に貯留した砂を取り出すように構成されている。
【0019】
搬送流路4を形成する搬送ホース7は、縦軸芯周りでコイル状に巻回されており、これによって、装置(プラント)のコンパクト化を図ると同時に、搬送流路4の必要長さと、搬送流路4の出口4aの必要高さを確保するように構成されている。
【0020】
上記の構成によれば、分離処理対象砂1が、適量の水(好ましくは、細骨材の最大表面水率分の水)2を加えられた状態で、高圧エア3とともに搬送流路4を連続的に圧送されると、図2に示すように、砂6の表面に付着している粒径の小さなシルト分(シルト、粘土)aは水分と混合されて粘性が高くなるので、ヘドロ状の粘性流動物5となる。このヘドロ状の粘性流動物5は、粘性を有するため、流路内面(搬送ホース7の内壁)に付着しつつ下流側へとゆっくり移動するが、粒径の大きい砂6は水分を加えても粘性を有しないため、流路内面に付着することなく流路中心側に集中して流れ、前記粘性流動物5よりも高速で移動することになる。
【0021】
そして、この移動経路の相違と移動速度差とによって、分離処理対象砂1は、搬送流路4内で、シルト分によるヘドロ状の粘性流動物5と、シルト分を含まない湿った砂6とに次第に明確に分別されることになり、ヘドロ状の粘性流動物5は搬送流路4の出口4aから引力で漏斗15に落下させ、粘性を有しない砂6は慣性の法則によりヘドロ状粘性流動物5の落下位置よりも遠くまで飛散させ、第二容器17へと取り出されるのである。
【0022】
このように、ある程度の水分を含有させた分離処理対象砂1を高圧エア3で圧送するだけの簡単な装置構成によって、山砂のようにシルト分含有量の多い細骨材から有害なシルトを含む微粒子分を短時間に効率よく除去できるのであり、良質の細骨材を精製することが可能となる。
【0023】
図3は、本発明の他の実施形態を示し、搬送流路4に供給する前に分離処理対象砂1と水2を予め混合しておく点に特徴がある。即ち、この分離装置は、搬送流路4を形成する搬送ホース7と、搬送ホース7に分離処理対象砂1と水2の混合物を供給する圧送機19と、圧送機19に接続されたエアコンプレッサー9とを備えており、圧送機19の内部で分離処理対象砂1と水2を混合し、この混合物を圧送機19によって搬送ホース7に送り出し、エアコンプレッサー9から供給される高圧エアによって圧送するように構成してある。20は給水車である。その他の構成、作用は、図1、図2の実施形態と同じであるため、説明を省略する。図3に示す実施形態では、砂とシルト分の分離装置を移動可能なプラントとして構成してあるが、図1と同様に据付け式プラントとして実施してもよい。
【0024】
尚、図1〜図3に基づいて説明した各々の実施形態において、搬送流路4の長さは10m以上とすることが望ましい。10m未満では砂とシルト分が十分に分離しないからである。また、搬送流路4の長さに技術的な上限はないが、あまりに長すぎると、装置が大きくなり重量が嵩んで不利であるばかりでなく、エアコンプレッサー9の能力が高くないと搬送できないことになり、不経済でもある。従って、これらを考慮すると、搬送流路4の長さは20〜200mが最も望ましい。搬送流路4の断面形状は特に限定されないが、断面円形の場合が最もスムーズに搬送できるため好適である。また、搬送流路4の断面積は、5cm未満であると一度に搬送できる砂の量を極端に抑えなければ流路が詰まってしまい、300cmより大きくても嵩張るだけであるから、5〜300cmとすることが望ましく、分離作業の施工性・効率性を考慮すると、搬送流路4の断面積は15〜100cmが最も好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態を示す砂とシルト分の分離装置の側面図である。
【図2】上記装置による砂とシルト分の分離方法を説明する図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す砂とシルト分の分離装置の側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 分離処理対象砂
2 水
3 高圧エア
4 搬送流路
5 ヘドロ状の粘性流動物
6 砂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離処理対象砂と水を高圧エアとともに搬送流路を通して圧送することにより、搬送流路内で分離処理対象砂を流路内面に付着しつつ下流側へ移動するシルト分によるヘドロ状の粘性流動物と、流路内面に付着することなく下流側へ移動する湿った砂とに分離させ、搬送流路から湿った砂とシルト分によるヘドロ状の粘性流動物とを異なる場所に取り出すことを特徴とする砂とシルト分の分離方法。
【請求項2】
分離処理対象砂と水を高圧エアとともに搬送流路を通して圧送することにより、搬送流路内で分離処理対象砂を流路内面に付着しつつ下流側へ移動するシルト分によるヘドロ状の粘性流動物と、流路内面に付着することなく下流側へ移動する湿った砂とに分離させ、搬送流路から湿った砂とシルト分によるヘドロ状の粘性流動物とを異なる場所に取り出すように構成したことを特徴とする砂とシルト分の分離装置。
【請求項3】
請求項2に記載の砂とシルト分の分離装置であって、搬送流路を形成する搬送ホースと、搬送ホースに水を供給する水ポンプ及び高圧エアを供給するエアコンプレッサーと、水及び高圧エアの供給位置よりも下流側において搬送ホースに分離処理対象砂を供給するホッパーとを備えていることを特徴とする砂とシルト分の分離装置。
【請求項4】
請求項2に記載の砂とシルト分の分離装置であって、搬送流路を形成する搬送ホースと、搬送ホースに分離処理対象砂と水の混合物を供給する圧送機と、圧送機に接続されたエアコンプレッサーとを備えていることを特徴とする砂とシルト分の分離装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の砂とシルト分の分離装置であって、搬送ホースをコイル状に巻いてあることを特徴とする砂とシルト分の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−283190(P2007−283190A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112166(P2006−112166)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000231431)日本植生株式会社 (88)
【Fターム(参考)】