説明

砂中子造型用砂の流動可視化方法

【課題】最適なゲートのレイアウトを容易に予測可能な砂中子造型用砂の流動可視化方法を提供する。
【解決手段】砂中子造型用砂に色の付いた流動性に変化を与えない粉体を混ぜることにより形成された複数色の着色砂C1,C2を準備し、金型のキャビティに複数のゲート19A,19Bからそれぞれ別の色の着色砂を充填し、造型した中子の着色砂の分布状況を目視確認する。砂中子造型用砂に粒径が該砂の平均粒径よりも小さい粉体を混ぜて着色砂を形成するため、砂中子造型用砂の流動性を阻害することなく、実際の砂中子造型用砂の充填と相関を取ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂中子造型用砂の流動可視化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砂中子造型用の金型において、砂は、ブロー、ゲートを通ってキャビティに充填される。これらブロー及びゲートの位置は、砂中子の品質に大きく影響を及ぼす。
従来、複数の砂中子を造型可能な砂中子造型方法において、キャビティ毎に独立したブローを設け、他のブローの影響を受けないようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−39777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ブロー位置自体の決定方法は提案されていない。特に、1つのキャビティに複数のゲートを必要とするような複雑な形状の中子を造型する金型においては、ゲートの位置は、経験則に基づいて決定される場合が多く、また、流動シミュレーションを行うことによって決定される場合もあるが、精度が思わしくない。
そこで、金型を試作し、その金型で造型した中子を検証することで、ゲートの位置を決定することになるが、中子を見ただけでは、各ゲートからの砂の充填範囲や量を把握することができないので、最適なゲートの位置や本数といったレイアウトを決定するまでに、充填の試行や金型の改修を何度も繰り返す必要があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、最適なゲートのレイアウトを容易に予測可能な砂中子造型用砂の流動可視化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、砂中子造型用砂に色の付いた流動性に変化を与えない粉体を混ぜることにより形成された複数色の着色砂を準備し、金型のキャビティに複数のゲートからそれぞれ別の色の着色砂を充填することを特徴とする。
上記構成によれば、砂中子造型用砂に色の付いた粉体を混ぜることにより形成された複数色の着色砂を準備し、金型のキャビティに複数のゲートからそれぞれ別の色の着色砂を充填するため、各ゲートから充填される砂がそれぞれ別の色で着色されているので、造型した中子を見れば、各ゲートからの砂の充填範囲や量を目視できる。また、流動性に変化を与えない粉体を用いるため、実際の砂中子造型用砂の充填と相関を取ることができる。
【0006】
上記構成において、砂中子造型用砂に粒径が該砂の平均粒径よりも小さい粉体を混ぜて着色砂を形成してもよい。
上記構成によれば、砂中子造型用砂に粒径が該砂の平均粒径よりも小さい粉体を混ぜて着色砂を形成するため、砂中子造型用砂の流動性を阻害することなく、実際の砂中子造型用砂の充填と相関を取ることができる。
上記構成において、砂中子造型用砂に粒径が該砂の平均粒径の10分の1以下である粉体を混ぜて着色砂を形成してもよい。
上記構成によれば、砂中子造型用砂に粒径が該砂の平均粒径の10分の1以下である粉体を混ぜて着色砂を形成するため、砂中子造型用砂の流動性を阻害することなく、実際の砂中子造型用砂の充填と相関を取ることができる。
【0007】
上記構成において、砂中子造型用砂に光明丹を混ぜて着色砂を形成してもよい。
上記構成によれば、砂中子造型用砂に光明丹を混ぜて着色砂を形成するため、砂中子造型用砂を赤く着色できるので、着色砂の充填範囲や量を容易に目視できる。
上記構成において、砂中子造型用砂に黒鉛を混ぜて着色砂を形成してもよい。
上記構成によれば、砂中子造型用砂に黒鉛を混ぜて着色砂を形成するため、砂中子造型用砂を黒く着色できるので、着色砂の充填範囲や量を容易に目視できる。
【0008】
上記構成において、前記着色砂を複数のゲートから充填し、未充填部分があったときにゲートの開口の大きさを変化させて充填を試行し、これを繰り返して、砂中子造型用砂の金型を設計してもよい。
上記構成によれば、着色砂を複数のゲートから充填し、未充填部分があったときにゲートの開口の大きさを変化させて充填を試行し、これを繰り返して、砂中子造型用砂の金型を設計するため、金型の改修の手間を省くことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、砂中子造型用砂に色の付いた粉体を混ぜることにより形成された複数色の着色砂を準備し、金型のキャビティに複数のゲートからそれぞれ別の色の着色砂を充填するため、各ゲートから充填される砂がそれぞれ別の色で着色されているので、造型した中子を見れば、各ゲートからの砂の充填範囲や量を目視でき、その結果、ゲートの最適なレイアウトを容易に予測できる。また、流動性に変化を与えない粉体を用いるため、実際の砂中子造型用砂の充填と相関を取ることができる。
【0010】
また、砂中子造型用砂に粒径が該砂の平均粒径よりも小さい粉体を混ぜて着色砂を形成すれば、砂中子造型用砂の流動性を阻害することなく、実際の砂中子造型用砂の充填と相関を取ることができる。
また、砂中子造型用砂に粒径が該砂の平均粒径の10分の1以下である粉体を混ぜて着色砂を形成すれば、砂中子造型用砂の流動性を阻害することなく、実際の砂中子造型用砂の充填と相関を取ることができる。
【0011】
また、砂中子造型用砂に光明丹を混ぜて着色砂を形成すれば、砂中子造型用砂を赤く着色できるので、着色砂の充填範囲や量を容易に目視でき、その結果、ゲートの最適なレイアウトを容易に予測できる。
また、砂中子造型用砂に黒鉛を混ぜて着色砂を形成すれば、砂中子造型用砂を黒く着色でき、着色砂の充填範囲や量を容易に目視でき、その結果、ゲートの最適なレイアウトを容易に予測できる。
また、着色砂を複数のゲートから充填し、未充填部分があったときにゲートの開口の大きさを変化させて充填を試行し、これを繰り返して、砂中子造型用砂の金型を設計すれば、金型の改修の手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る砂中子造型用砂の流動可視化方法を適用する中子造型装置の断面を模式的に示す正面図である。
【図2】中子造型装置を示す側面図である。
【図3】上型及び下型を示す平面図である。
【図4】ウォータージャケット用の中子を示す斜視図である。
【図5】ブローブッシュ及びゲートをそれぞれ3つ形成して造型した中子を示す斜視図である。
【図6】一のゲートの開口を拡大して造型した中子を示す斜視図である。
【図7】一のゲートの開口を埋め、他の開口を拡大して造型した中子を示す斜視図である。
【図8】他のゲートの開口を埋め、埋めた一のゲートを再形成して造型した中子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る砂中子造型用砂の流動可視化方法を適用する中子造型装置の断面を模式的に示す正面図である。図2は、中子造型装置の断面を模式的に示す側面図である。図3は、可動型及び固定型を示す平面図である。
図1に示すように、中子造型装置1は、ブローヘッド2と、可動ダイベース3と、固定ダイベース4と、金型5と、を備えて大略構成されている。
ブローヘッド2は、上面を開口した略箱状に形成されており、上面の開口から中子の材料である砂中子造型用砂Sが投入されてブローヘッド2内部に収容されるようになっている。ブローヘッド2の底壁には、ブローヘッド2の上方に設けられたホッパ(不図示)からの高圧空気、及び、ブローヘッド2内の砂中子造型用砂Sを吹き出すためのブローノズル6が複数設けられている。
【0014】
可動ダイベース3は、略板状に形成されており、この可動ダイベース3に、ブローヘッド2が載置されている。可動ダイベース3は、図示しない駆動機構により上下に移動される取付枠7に取り付けられ、ブローヘッド2とともに、上下移動可能に構成されている。
可動ダイベース3には、ブローブッシュ8が、ブローノズル6に対向するように複数取り付けられている。ブローブッシュ8は、可動ダイベース3及び金型5を貫通して金型5のキャビティ9に延出しており、ブローノズル6から吹き出された高圧空気及び砂中子造型用砂Sがブローブッシュ8及びゲート19(図3参照)を通ってキャビティ9内に導入されるようになっている。
【0015】
固定ダイベース4は、略板状に形成されており、固定のスペーサブロック10に固定されている。
各金型5は、可動ダイベース3に支持される可動型11と、固定ダイベース4に支持される固定型12とを備えており、可動型11及び固定型12が対向することで、中子の形状に対応したキャビティ9が形成される。本実施の形態の金型5は、例えばシリンダヘッドの内部の中空部分(本実施の形態では、ウォータージャケット)を形成する中子を造型できるようになっている。可動型11は可動型用ボルト20によって可動ダイベース3に固定され、固定型12は固定型用ボルト30によって固定ダイベース4に固定されている。
ここで、可動型11及び固定型12の開閉は、取付枠7が上下に移動されることによって行われるが、可動型11及び固定型12の型締め(型合わせ)は、可動型11の自重によって行われる。
【0016】
金型5内には、図2に示すように、複数(本実施の形態では、18)本のヒータ13が設けられている。ヒータ13は、可動ダイベース3及び固定ダイベース4の長手方向に沿って隣接する金型5を貫通して一方向に延びている。そして、中子の造型に際しては、ヒータ13の熱によって、可動型11及び固定型12が約180〜200℃に加熱されるようになっている。
スペーサブロック10内には、図示しない移動板によって進退自在な押出板14が配置され、押出板14には、金型5を開いたときに造型した中子を押し出す押出ピン15(図1参照)と、金型5を閉じるときに可動型11の合わせ面に突き当たって押出板14を押し下げるリターンピン16とが取り付けられている。
【0017】
図3に示すように、可動型11の四隅にはガイドピン17Aがそれぞれ設けられ、固定型12の四隅にはガイドピン17Aが挿入されるガイドブッシュ17Bがそれぞれ形成されている。同様に、固定型12の四隅にはガイドピン18Aがそれぞれ設けられ、可動型11の四隅にはガイドピン18Aが挿入されるガイドブッシュ18Bがそれぞれ形成されている。これらのガイドピン17A,18A及びガイドブッシュ17B,18Bによって、可動型11と固定型12との型合わせがなされる。
【0018】
ここで、金型5から造型されたウォータージャケット用の中子を図4に示す。図4は、中子を可動型11側から示す斜視図である。
中子40は、略円形状の中子本体部41と、この中子本体部41の外周部から湾曲して延出する通路部42とを備えて構成されている。中子本体部41の略中心部には、可動型11(図3参照)側の面に、略円柱状のカム合わせ部43が突出するように設けられている。中子本体部41には、通路部42側にバルブ用中子挿通孔41Aが形成され、カム合わせ部43に対しバルブ用中子挿通孔41Aと反対側にバルブ用中子挿通孔41Bが形成され、通路部42の延出方向と反対側に点火プラグ用中子挿通孔41Cが形成されている。
【0019】
また、中子40は、ブローブッシュ8(図3)で造型されたブロー部44と、ゲート19(図3)で造型されたゲート部45とを備えている。
ところで、本実施の形態では、ブローブッシュ8及びゲート19の位置や本数といったレイアウトは、金型5(図1)を試作し、その金型5で造型した中子を検証することで、決定される。したがって、ブローブッシュ8及びゲート19の最適なレイアウトを予測するためには、各ブローブッシュ8及びゲート19から充填された砂中子造型用砂がどのように流動したかを目視できることが望ましい。
【0020】
そこで、本実施の形態では、実際に中子を造型する際に使用する砂中子造型用砂に、色の付いた粉体を混ぜることにより複数色の着色砂を形成し、1つのキャビティ9(図3)に複数のブローブッシュ8及びゲート19からそれぞれ別の色の砂を充填する。
砂中子造型用砂は、砂粒子の表面に粘結剤である樹脂(レジン)をコーティンしたレジンコーテッドサンドであり、焼き固まると例えば黄色に変色する。本実施の形態では、粒径が100メッシュ(目開き量0.150mm)を中心に分布し、平均粒径(D50)が約80メッシュ(目開き量0.180mm)である砂中子造型用砂が用いられている。なお、本実施の形態における平均粒径(D50)とは、粉体の粒径分布において、ある粒径より大きい重量が、全粉体の重量の50%を占めるときの粒径をいう。
【0021】
砂中子造型用砂には、この砂中子造型砂の流動性や焼き固めに変化を与えない粉体が混ぜられる。すなわち、粉体の粒径は、砂中子造型用砂の平均粒径(D50)よりも小さいことが望ましく、さらには、例えば砂中子造型用砂の平均粒径(D50)の10分の1以下であることが望ましい。粉体には、砂中子造型砂の流動性や焼き固めに変化を与えない、かつ、砂中子造型用砂の色と異なる物質が望ましく、黄色の砂中子造型用砂と区別し易い色を有する黒色の黒鉛や赤色の光明丹等が用いられる。また、粉体の量は、着色を目視でき、かつ、砂中子造型砂の流動性や焼き固めに影響を与えない量に設定され、例えば砂中子造型用砂の体積に対し約7〜10%に設定される。
【0022】
本実施の形態では、砂中子造型用砂に、最大粒径が砂中子造型用砂の平均粒径(D50)の10分の1以下である黒鉛を、砂中子造型用砂の体積に対し約7〜10%の分量だけ混ぜて形成した黒色の着色砂と、砂中子造型用砂に、最大粒径が砂中子造型用砂の平均粒径(D50)の10分の1以下である光明丹を、砂中子造型用砂の体積に対し約7〜10%の分量だけ混ぜて形成した赤色の着色砂とを準備する。
なお、着色砂は、複数のブローブッシュ8及びゲート19からそれぞれ別の色の砂を充填できるように、ブローブッシュ8及びゲート19の数に応じて1つ又は複数種類準備される。着色砂は、複数のブローブッシュ8及びゲート19からそれぞれ別の色の着色砂を充填できるように、ブローブッシュ8及びゲート19の数と同一数準備されてもよいし、1つのブローブッシュ8及びゲート19に砂中子造型用砂を充填し、残りのブローブッシュ8及びゲート19にそれぞれ別の色の着色砂を充填できるように、ブローブッシュ8及びゲート19の数より1つ少ない数準備されてもよい。
【0023】
中子造型装置1においては、図1に示すように、ブローヘッド2内に着脱自在な仕切り板2Aを配置して、ブローヘッド2内を区分けすることにより、例えば、砂中子造型用砂Sと、この砂中子造型用砂Sと色の異なる着色砂Cとが収容可能になる。仕切り板2Aは、キャビティ9に複数のブローブッシュ8及びゲート19(図3)からそれぞれ別の色の砂を充填できるように、ブローブッシュ8及びゲート19の数に応じて1つ又は複数配置される。
【0024】
ここで、ブローブッシュ8及びゲート19をそれぞれ3つ形成して造型した中子40Aを図5に示す。なお、図5では、ブローブッシュ8及びゲート19から造型された各ブロー部44及び各ゲート部45に、ブロー部44A〜44C及びゲート部45A〜45Cと符号を付して各々を区別し、また、ブローブッシュ8及びゲート19についても、ブロー部44A〜44C及びゲート部45A〜45Cに対応して、ブローブッシュ8A〜8C及びゲート19A〜19Aと符号を付して各々を区別して表記するものとする。
中子40Aを造型するにあたり、一のブローブッシュ8A及びゲート19Aは、通路部42の先端側に位置するように配置されている。また、二のブローブッシュ8B及びゲート19Bは、ブローブッシュ8A及びゲート19Aから離れた中子本体部41の外周部に、バルブ用中子挿通孔41Aに近接するように配置されている。さらに、三のブローブッシュ8C及びゲート19Cは、ブローブッシュ8A及びゲート19Aとブローブッシュ8B及びゲート19Bとの間に位置するように配置されている。
【0025】
中子40Aは、砂中子造型用砂に黒鉛を混ぜて形成した黒色の着色砂C1をブローブッシュ8Aから充填し、砂中子造型用砂に光明丹を混ぜて形成した赤色の着色砂C2をブローブッシュ8Bから充填し、砂中子造型用砂Sをブローブッシュ8Cから充填することによって造型される。なお、砂中子造型用砂Sは、上述したように、焼き固められると黄色に変色する。したがって、各ゲート19A〜19Cから充填された砂C1,C2,Sがそれぞれ黒色、赤色、黄色と別の色になっているので、図5に示すように、中子40Aを見ると、各ブローブッシュ8A〜8Cからの砂C1,C2,Sの充填範囲を目視できる。なお、図では、黒色の着色砂C1を一番細かい網掛けで示し、赤色の着色砂C2を次に細かい網掛けで示し、黄色の砂中子造型用砂Sを一番荒い網掛けで示すものとする。
【0026】
ブローブッシュ8Aから黒色の着色砂C1が比較的多く流入していることから、ブローブッシュ8A及びゲート19Aは最適位置にあると予測できる。
ブローブッシュ8Bから赤色の着色砂C2があまり流入しておらず、また、ゲート19Bのすぐ下流にゲート19Bに対向する壁41B1があることから、ゲート19Bの位置や向きを変更する必要があると予測できる。
ブローブッシュ8Cから黄色の砂中子造型用砂Sが多く流入している。一方、黄色の砂中子造型用砂Sが流れ込んでいるカム合わせ部43に充填不良(未充填)が生じ、また、ゲート19Cのすぐ下流にゲート19Cに対向する壁42A1があることから、ゲート19Cの位置や向きを変更する必要があると予測できる。ここで、充填不良とは、カム合わせ部43の形状が円柱状に形成されていない状態を言う。
【0027】
そこで、まず、ゲート19Bから未充填部分に着色砂C2が流れるように、ゲート19Bの開口を点火プラグ用中子挿通孔41C側に拡大して試行を行う。ここで、ゲート19Bの開口を拡大して造型した中子40Bを図6に示す。
中子40Bは、黒色の着色砂C1をブローブッシュ8Aから充填し、赤色の着色砂C2をブローブッシュ8Bから充填し、砂中子造型用砂Sをブローブッシュ8Cから充填することによって造型される。したがって、各ゲート19A〜19Cから充填された砂C1,C2,Sがそれぞれ黒色、赤色、黄色と別の色になっているので、図6に示すように、中子40Bを見ると、各ブローブッシュ8A〜8C及びゲート19A〜19Cからの砂C1,C2,Sの充填範囲を目視できる。
ゲート19Bの開口を拡大したものの、ゲート19Cから充填された黄色の砂中子造型用砂Sの流入が強く、赤色の着色砂C2の流入に大きな変化がない。また、カム合わせ部43の充填不良も解消されていない。これらのことから、ゲート19Bを止め、ゲート19Cの位置や向きを変更する必要があると予測できる。
【0028】
そこで、ゲート19Bの開口を埋めるとともに、ゲート19Cから未充填部分に砂中子造型用砂Sが流れるように、ゲート19Cの開口を通路部42側に拡大して試行を行う。ここで、ゲート19Bの開口を埋め、ゲート19Cの開口を拡大して造型した中子40Cを図7に示す。
中子40Cは、黒色の着色砂C1をブローブッシュ8Aから充填し、砂中子造型用砂Sをブローブッシュ8Cから充填することによって造型される。したがって、各ゲート19A,Cから充填された砂C1,Sがそれぞれ黒色、黄色と別の色になっているので、図7に示すように、中子40Cを見ると、各ブローブッシュ8A,8C及びゲート19A,19Cからの砂C1,Sの充填範囲を目視できる。
ブローブッシュ8Cから充填された黄色の砂中子造型用砂Sは、図6でゲート19Bからの赤い着色砂C2が充填されていた部分に流入しているものの、カム合わせ部43の充填不良が解消されていない。このことから、ゲート19Cを止め、ゲート19Bの位置や向きを変更する必要があると予測できる。
【0029】
そこで、ゲート19Cの開口を埋めるとともに、埋めたゲート19Bを再形成して試行を行う。ここで、ゲート19Cの開口を埋め、埋めたゲート19Bを再形成して造型した中子40Dを図8に示す。
中子40Dは、黒色の着色砂C1をブローブッシュ8Aから充填し、赤色の着色砂C2をブローブッシュ8Bから充填することによって造型される。したがって、各ゲート19A,Bから充填された砂C1,C2がそれぞれ黒色、赤色と別の色になっているので、図8に示すように、中子40Dを見ると、各ブローブッシュ8A,8B及びゲート19A,19Bからの砂C1,C2の充填範囲を目視できる。
ゲート19Bから充填された赤色の着色砂C2は、図6ではゲート19Cから充填された黄色の砂中子造型用砂Sによって堰き止められていたが、図8では、多く流入している。また、カム合わせ部43に生じていた充填不良が解消されている。
【0030】
以上の試行から、図4に示すように、ブローブッシュ8A及びゲート19Aを通路部42の先端側に配置するとともに、未充填部分となっていたカム合わせ部43に砂が流れるように、ブローブッシュ8B及びゲート19Bをバルブ用中子挿通孔41Bと点火プラグ用中子挿通孔41Cとの間に配置するというレイアウトを予測できる。そして、このレイアウトから、未充填部分のない所望の形状の中子40を造型可能となった。
このように、複数のゲート19からそれぞれ別の色の砂を充填するため、各ゲート19から充填される砂がそれぞれ別の色で着色されているので、造型した中子を見れば、各ゲート19からの砂の充填範囲を目視でき、その結果、ゲート19の最適なレイアウトを容易に予測できる。これにより、充填の試行回数及び金型5(図1)の改修回数を削減できる。
【0031】
砂中子造型用砂の着色には、流動性や焼き固めに変化を与えない粉体を用いるため、実際の砂中子造型用砂の充填と相関を取ることができる。また、粉体に黒色の黒鉛や赤色の光明丹を用いたため、それらを砂中子造型用砂に混ぜることで形成した着色砂C1,C2及び砂中子造型用砂の色を容易に区別できるので、それらの流れを容易に目視できる。さらに、黒鉛や光明丹は、工場等で一般的に使用されているので、入手も容易である。
試行する際には、ブローヘッド2内に着脱自在な仕切り板2Aを配置するだけでよいので、中子造型装置1を改修する必要がない。そして、造型した中子に未充填部分が生じ、ゲート19の位置や向きを変更する必要が生じた場合に、壁41A1,41B1等の障害物を避けて未充填部分に砂が流れるように、ゲート19の開口を拡大する方法を取ったので、例えばゲートの位置や向きをずらして形成する場合に比べ、金型5の改修の手間を省くことができる。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態によれば、砂中子造型用砂に色の付いた粉体を混ぜることにより形成された複数色の着色砂C1,C2を準備し、金型5のキャビティ9に複数のゲート19からそれぞれ別の色の着色砂C1,C2を充填するため、各ゲート19から充填される砂がそれぞれ別の色で着色されているので、造型した中子を見れば、各ゲート19からの砂の充填範囲や量を目視でき、その結果、ゲート19の最適なレイアウトを容易に予測し、試行回数及び金型5の改修回数を削減できる。また、流動性に変化を与えない粉体を用いるため、実際の砂中子造型用砂の充填と相関を取ることができる。
【0033】
また、本実施の形態によれば、砂中子造型用砂に粒径が砂の平均粒径よりも小さい粉体を混ぜて着色砂C1,C2を形成するため、砂中子造型用砂の流動性を阻害することなく、実際の砂中子造型用砂の充填と相関を取ることができる。
また、本実施の形態によれば、砂中子造型用砂に粒径が砂の平均粒径の10分の1以下である粉体を混ぜて着色砂C1,C2を形成するため、砂中子造型用砂の流動性を阻害することなく、実際の砂中子造型用砂の充填と相関を取ることができる。
【0034】
また、本実施の形態によれば、砂中子造型用砂に光明丹を混ぜて着色砂C2を形成するため、砂中子造型用砂を赤く着色できるので、着色砂の充填範囲や量を容易に目視でき、その結果、ゲート19の最適なレイアウトを容易に予測できる。
また、本実施の形態によれば、砂中子造型用砂に黒鉛を混ぜて着色砂C1を形成するため、砂中子造型用砂を黒く着色できるので、着色砂の充填範囲や量を容易に目視でき、その結果、ゲート19の最適なレイアウトを容易に予測できる。
また、本実施の形態によれば、着色砂を複数のゲート19から充填し、未充填部分があったときにゲート19の開口の大きさを変化させて充填を試行し、これを繰り返して、砂中子造型用砂の金型5を設計するため、金型5の改修の手間を省くことができる。
【0035】
但し、上記実施の形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、砂中子造型用砂に混ぜる粉体を黒鉛や光明丹として説明したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施の形態では、焼き固められると黄色に変色する砂中子造型用砂を用いたが、砂中子造型用砂は、焼き固められた際に、変色しないものであってもよいし、他の色に変色するものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
5 金型
9 キャビティ
19 ゲート
C,C1,C2 着色砂
S 砂中子造型用砂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂中子造型用砂に色の付いた流動性に変化を与えない粉体を混ぜることにより形成された複数色の着色砂を準備し、
金型のキャビティに複数のゲートからそれぞれ別の色の着色砂を充填することを特徴とする砂中子造型用砂の流動可視化方法。
【請求項2】
砂中子造型用砂に粒径が該砂の平均粒径よりも小さい粉体を混ぜて着色砂を形成することを特徴とする請求項1に記載の砂中子造型用砂の流動可視化方法。
【請求項3】
砂中子造型用砂に粒径が該砂の平均粒径の10分の1以下である粉体を混ぜて着色砂を形成することを特徴とする請求項2に記載の砂中子造型用砂の流動可視化方法。
【請求項4】
砂中子造型用砂に光明丹を混ぜて着色砂を形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の砂中子造型用砂の流動可視化方法。
【請求項5】
砂中子造型用砂に黒鉛を混ぜて着色砂を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の砂中子造型用砂の流動可視化方法。
【請求項6】
前記着色砂を複数のゲートから充填し、
未充填部分があったときにゲートの開口の大きさを変化させて充填を試行し、
これを繰り返して金型を設計することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の砂中子造型用砂の流動可視化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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