説明

砂製造方法及びその方法に用いる凝集剤

【課題】 汚泥から得られた脱水ケーキから、環境を害することない砂を短期間で製造することのできる砂製造方法及びその方法に用いる上で優れた凝集剤を提供すること。
【解決手段】 本発明の砂製造方法によれば、凝集剤を用いて汚泥(脱水ケーキ)から砂が得られるので、得られた砂からは、従来の砂製造方法による問題点であった六価クロムの溶出が生じず、環境破壊が生じない。また、特定の組成を有する凝集剤を用いることによって、従来では砂として十分な硬度が得られるまでに数週間レベルかかった全工程を、半日〜数日レベルに短縮できるので、作業場所の占有による製造コストなどを削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥から得られた脱水ケーキから砂を製造する砂製造方法及びその方法に用いる凝集剤に関し、特に、環境を害することない砂を短期間で製造できる砂製造方法及びその方法に用いる上で優れた凝集剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、汚泥(例えば、建設汚泥や浚渫土など)に、凝集剤及び灰分(焼却灰)を添加し、それらを攪拌・混合することによって、汚泥から含水率の少ない脱水ケーキを回収する方法が一般的に用いられている(例えば、特開2004−81959号公報(特許文献1))。
【0003】
しかし、そのように回収された脱水ケーキは、従来は、埋め立てなどによって処分されていたが、処分地の枯渇化や処分コストの高騰によって、脱水ケーキの再利用が望まれている。そこで、脱水ケーキの再利用という観点において、セメントを用いて脱水ケーキから砂を得る方法が提案されている(例えば、特許第3404000公報(特許文献2))。
【特許文献1】特開2004−81959号公報
【特許文献2】特許第3404000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セメントを用いて砂を得た場合には、得られた砂に含まれるセメント分から溶出する六価クロムにより環境が汚染されるという問題点があった。
【0005】
また、セメントを用いて砂を得るには、セメントと脱水ケーキとの混合物の含水率を十分に低減させる必要があり、この脱水作業は、しばしば、天日干しやプレスによって行われる。しかし、天日干しやプレスにより脱水を行った場合、砂として実用的な硬度(約10〜20N程度)になるまで数週間の期間を要するという問題点があった。
【0006】
ここで、天日干しやプレスによる脱水作業は、設備や装置の規模が大きいため、砂が得られるまでの期間が長ければ長い程、作業場所の占有や大掛かりな装置の運用に伴う製造コストが嵩むことになる。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、汚泥から得られた脱水ケーキから、環境を害することない砂を短期間で製造することのできる砂製造方法及びその方法に用いる上で優れた凝集剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、請求項1記載の砂製造方法は、汚泥に凝集剤と灰分とを添加することによって得られた脱水ケーキから砂を製造する方法であって、前記脱水ケーキと凝集剤とを混合し、前記脱水ケーキから、液状部分と泥分を主成分とする凝集体との分離液を得る凝集剤混合工程と、その凝集剤混合工程により得られた分離液から前記凝集体を分離する分離工程と、その分離工程により分離された前記凝集体から、砂を造粒する造粒工程とを備えている。
【0009】
請求項2記載の砂製造方法は、請求項1記載の砂製造方法において、前記凝集剤は、少なくとも下記成分を下記重量割合で含む:二酸化珪素15.0〜35.0重量部、酸化アルミニウム20.0〜40.0重量部、酸化第二鉄1.0〜10.0重量部、酸化カルシウム20.0〜40.0重量部、酸化ナトリウム1.0〜5.0重量部、酸化カリウム0.1〜1.2重量部、酸化マグネシウム0.3〜1.8重量部、リン酸0.8〜2.5重量部、酸化チタン0.01〜2.0重量部。
【0010】
請求項3記載の砂製造方法は、請求項1又は2記載の砂製造方法において、前記凝集剤混合工程は、複数回行われる。
【0011】
請求項4記載の砂製造方法は、請求項1から3のいずれかに記載の砂製造方法において、前記造粒工程は、前記凝集剤混合工程において使用した凝集剤の添加を伴う。
【0012】
請求項5記載の砂製造方法は、請求項1から4のいずれかに記載の砂製造方法において、前記造粒工程の後に、得られた砂をさらに混練する混練工程を備えている。
【0013】
請求項6記載の砂製造方法は、請求項1から5のいずれかに記載の砂製造方法において、前記粉砕工程又は前記混練工程の後に、得られた砂の表面に粒子付着防止剤を被覆する被覆工程を備えている。
【0014】
請求項7記載の砂製造方法は、請求項1から6のいずれかに記載の砂製造方法において、前記凝集剤混合工程において使用した凝集剤は、前記脱水ケーキを得るために使用した凝集剤と同じ凝集剤である。
【0015】
請求項8記載の凝集剤は、請求項1から7のいずれかに記載の砂製造方法に用いる凝集剤であって、少なくとも下記成分を下記重量割合で含む:二酸化珪素15.0〜35.0重量部、酸化アルミニウム20.0〜40.0重量部、酸化第二鉄1.0〜10.0重量部、酸化カルシウム20.0〜40.0重量部、酸化ナトリウム1.0〜5.0重量部、酸化カリウム0.1〜1.2重量部、酸化マグネシウム0.3〜1.8重量部、リン酸0.8〜2.5重量部、酸化チタン0.01〜2.0重量部。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の砂製造方法によれば、汚泥を脱水して得た脱水ケーキと凝集剤とが凝集剤混合工程により混合されると、脱水ケーキが液状部分と泥分の凝集体との分離液が得られる。この分離液から泥分の凝集体が分離工程により分離されて、分離された凝集体が造粒工程により造粒されて砂とされる。
【0017】
よって、本発明の砂製造方法では、セメントを用いることなく砂が得られる。即ち、六価クロムの溶出による環境汚染への危惧とは無縁の環境に安全な砂を得ることができるという効果がある。
【0018】
なお、特許請求の範囲及び明細書中で使用される用語「汚泥」は、法律(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)によって産業廃棄物として分類される汚泥(例えば、建設汚泥)だけでなく、この法律によっては産業廃棄物としては分類されない泥状物質(例えば、浚渫土など)を含むことを意図する。
【0019】
また、本発明の砂製造方法において、凝集剤混合工程において使用する凝集剤は、脱水ケーキを得るために使用する凝集剤と同じであっても異なっていてもよい。凝集剤混合工程において使用する凝集剤と、脱水ケーキを得るために使用する凝集剤とを、同じ凝集剤とした場合には、資材管理が容易であると共に、凝集剤を貯留するホッパの共通化による製造効率の向上が図れるので好ましい。
【0020】
請求項2記載の砂製造方法によれば、請求項1記載の砂製造方法の奏する効果に加え、特定成分を特定割合で含み、優れた水分調整機能を発揮する凝集剤、具体的には、二酸化珪素15.0〜35.0重量部、酸化アルミニウム20.0〜40.0重量部、酸化第二鉄1.0〜10.0重量部、酸化カルシウム20.0〜40.0重量部、酸化ナトリウム1.0〜5.0重量部、酸化カリウム0.1〜1.2重量部、酸化マグネシウム0.3〜1.8重量部、リン酸0.8〜2.5重量部、および酸化チタン0.01〜2.0重量部を少なくとも含む凝集剤を用いるので、水分除去のために天日干し又はプレス等の長時間を要する作業を行う必要がなく、短期間で砂を製造できるという効果がある。よって、短期間で砂が製造できることにより、作業場所の占有による製造コストを削減できるという効果もある。
【0021】
また、上記組成を有する凝集剤を用いた場合、汚泥の質に依ることなく、汚泥の脱水ケーキから砂を製造できるという効果がある。また、上記組成を有する凝集剤を用いることによって、土壌として再使用可能な中性を示す砂を得ることができるという効果がある。
【0022】
また、上記組成を有する凝集剤を含む液体のpHはほぼ中性域であり、添加により生じる廃液のpHがアルカリ性又は酸性方向に大きく変動されないという効果がある。ここで、従来のようにセメントを用いて砂を得る場合には、セメントの添加によって廃液のpHが必ず強アルカリ性とされるので、廃液の中性化などの廃液処理工程が必ず必要とされていた。しかし、上記組成を有する凝集剤を用いた場合には、添加によっても廃液のpHが大きく変動されないので、汚泥(脱水ケーキ)の質によっては、廃液処理工程が不要とされ、その結果、作業コストを抑制することができる。
【0023】
また、上記組成を有する凝集剤は、原料(脱水ケーキや脱水後の残留物(凝集体))の重量に対して比較的少量添加するだけで、脱水ケーキ(汚泥)から砂の製造を可能とする。よって、本発明の砂製造方法を小規模の設備で実施可能とするので、製造コストを低減することができるという効果がある。また、上記組成を有する凝集剤は、紛状の形態で、原料(脱水ケーキや脱水後の残留物(凝集体))に添加可能であるので、凝集剤を予め溶液として調整しておく作業が不要であり、作業コストや設備コストを低減することができるという効果がある。
【0024】
請求項3記載の砂製造方法によれば、請求項1又は2記載の砂製造方法の奏する効果に加え、凝集剤混合工程が複数回行われるので、脱水ケーキの含水率を砂が得られる程度にまで確実に減少させることができると共に、硬度の高い粒子から構成される凝集体を得ることができるという効果がある。
【0025】
請求項4記載の砂製造方法によれば、請求項1から3のいずれかに記載の砂製造方法の奏する効果に加え、造粒工程による造粒では、凝集剤混合工程において使用された凝集剤を添加するので、より含水率が少なく、より硬度の高い砂を得ることができるという効果がある。
【0026】
請求項5記載の砂製造方法によれば、請求項1から4のいずれかに記載の砂製造方法の奏する効果に加え、混練工程により、造粒工程によって得られた砂がさらに混練されるので、砂の硬度をより高めることができ、結果として、硬度の高い砂を得ることができるという効果がある。
【0027】
請求項6記載の砂製造方法によれば、請求項1から5のいずれかに記載の砂製造方法の奏する効果に加え、被覆工程により、粉砕工程又は混練工程によって得られた砂の表面に粒子付着防止剤が被覆されるので、得られた砂粒子が互いに付着することを防止し、良質な砂を得ることができるという効果がある。
【0028】
請求項7記載の砂製造方法によれば、請求項1から6のいずれかに記載の砂製造方法の奏する効果に加え、凝集剤混合工程において使用した凝集と脱水ケーキを得るために使用した凝集剤とが、同じ凝集剤であるので、資材管理が容易であると共に、凝集剤を貯留するホッパの共通化による製造効率の向上が図れるという効果がある。
【0029】
請求項8記載の凝集剤によれば、二酸化珪素15.0〜35.0重量部、酸化アルミニウム20.0〜40.0重量部、酸化第二鉄1.0〜10.0重量部、酸化カルシウム20.0〜40.0重量部、酸化ナトリウム1.0〜5.0重量部、酸化カリウム0.1〜1.2重量部、酸化マグネシウム0.3〜1.8重量部、リン酸0.8〜2.5重量部、および酸化チタン0.01〜2.0重量部。を少なくとも含むことによって、優れた水分調整機能を発揮するので、請求項1から7のいずれかに記載の砂製造方法に用いた場合に、水分除去のために天日干し又はプレス等の長時間を要する作業を行うことなく砂を製造できるという効果がある。よって、砂が製造されるまでの期間を短縮できると共に、製造コストが削減されるという効果がある。
【0030】
また、請求項8記載の凝集剤を用いることにより、汚泥の質に依ることなく、汚泥の脱水ケーキから砂を製造できるという効果がある。
【0031】
また、請求項8記載の凝集剤を用いることにより、セメントを用いることなく砂が得られる。即ち、六価クロムの溶出による環境汚染への危惧とは無縁の環境に安全な砂を得ることができるという効果がある。また、請求項8記載の凝集剤を用いることにより、土壌として再使用可能な中性を示す砂を得ることができるという効果がある。
【0032】
また、請求項8記載の凝集剤を含む液体のpHはほぼ中性域であり、添加により生じる廃液のpHがアルカリ性又は酸性方向に大きく変動されないという効果がある。ここで、従来のようにセメントを用いて砂を得る場合には、セメントの添加によって廃液のpHが必ず強アルカリ性とされるので、廃液の中性化などの廃液処理工程が必ず必要とされていた。しかし、請求項8記載の凝集剤を用いた場合には、添加によっても廃液のpHが大きく変動されないので、汚泥(脱水ケーキ)の質によっては、廃液処理工程が不要とされ、その結果、作業コストを抑制することができる。
【0033】
また、請求項8記載の凝集剤は、原料(脱水ケーキや脱水後の残留物(凝集体))の重量に対して比較的少量添加するだけで、脱水ケーキ(汚泥)から砂の製造を可能とする。よって、本発明の砂製造方法を小規模の設備で実施可能とするので、製造コストを低減することができるという効果がある。また、請求項8記載の凝集剤は、紛状の形態で、原料(脱水ケーキや脱水後の残留物(凝集体))に添加可能であるので、凝集剤を予め溶液として調整しておく作業が不要であり、作業コストや設備コストを低減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の砂製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、本発明の砂製造方法では、まず、建設汚泥や浚渫土などの汚泥から脱水ケーキの分離を行う(脱水ケーキ分離工程:S1)。
【0035】
なお、この脱水ケーキ分離工程(S1)は公知の技術であるので、具体的な説明は省略するが、建設汚泥や浚渫土などの汚泥を洗浄して重金属成分や油分などを除去した後、その洗浄土に、凝集剤とペーパスラッジなどの灰分を含有する改質剤とをそれぞれ所定割合で混合・撹拌した後、得られた混合物を、遠心分離などによって脱水すると、目的とする脱水ケーキが得られる。
【0036】
次に、脱水ケーキ分離工程(S1)により得られた脱水ケーキと凝集剤Xとを混合し、脱水ケーキを固液分離させる(凝集剤混合工程:S2)。
【0037】
この凝集剤混合工程(S2)では、凝集剤Xとして、少なくとも下記成分を下記重量の割合で含む凝集剤が使用される:二酸化珪素(SiO)15.0〜35.0重量部;酸化アルミニウム(Al)20.0〜40.0重量部;酸化第二鉄(Fe)1.0〜10.0重量部;酸化カルシウム(CaO)20.0〜40.0重量部;酸化ナトリウム(NaO)1.0〜5.0重量部;酸化カリウム(KO)0.1〜1.2重量部;酸化マグネシウム(MgO)0.3〜1.8重量部;リン酸(HPO)0.8〜2.5重量部;酸化チタン(TiO)0.01〜2.0重量部。
【0038】
また、より好ましい凝集剤Xは、少なくとも下記成分を下記重量の割合で含む凝集剤である:二酸化珪素20.0〜30.0重量部;酸化アルミニウム25.0〜35.0重量部;酸化第二鉄2.0〜7.0重量部;酸化カルシウム25.0〜40.0重量部;酸化ナトリウム1.0〜3.0重量部;酸化カリウム0.5〜1.2重量部;酸化マグネシウム0.5〜1.5重量部;リン酸1.0〜2.0重量部;酸化チタン0.05〜1.0重量部。
【0039】
また、さらにより好ましい凝集剤Xは、少なくとも下記成分を下記重量の割合で含む凝集剤である:二酸化珪素20.0〜28.0重量部;酸化アルミニウム28.0〜32.0重量部;酸化第二鉄3.0〜5.0重量部;酸化カルシウム28.0〜38.0重量部;酸化ナトリウム1.0〜2.0重量部;酸化カリウム0.5〜1.0重量部;酸化マグネシウム0.8〜1.2重量部;リン酸1.0〜2.0重量部;酸化チタン0.05〜0.5重量部。
【0040】
なお、上記組成を有する凝集剤Xは、少なくとも、二酸化珪素(SiO)と酸化アルミニウム(Al)と酸化第二鉄(Fe)と酸化カルシウム(CaO)と酸化ナトリウム(NaO)と酸化カリウム(KO)と酸化マグネシウム(MgO)とリン酸(HPO)と酸化チタン(TiO)とを、上記したような重量比で含んでいればよく、上記組成以外の成分を少量含んでいてもよい。
【0041】
例えば、下記成分を下記重量の割合で含む凝集剤Xを使用できる:二酸化珪素(SiO)24.0重量部;酸化アルミニウム(Al)30.0重量部;酸化第二鉄(Fe)4.0重量部;酸化カルシウム(CaO)32.0重量部;酸化ナトリウム(NaO)1.6重量部;酸化カリウム(KO)0.8重量部;酸化マグネシウム(MgO)1.0重量部;リン酸(HPO)1.5重量部;酸化チタン(TiO)0.1重量部;その他の成分5.0重量部。
【0042】
上記組成を有する凝集剤Xは、(1)汚泥に含まれる泥分を疎水化して凝集させる、即ち、固形分としての泥分が保持する水分量(含水率)の調整を図る水分調整機能(疎水機能)と、(2)凝集された泥分(固形分)に適度な親水性を付与し、残留水分によって硬結晶化させる凝結機能と、(3)凝結した泥分の硬化を促進させる硬化促進機能とを有する。
【0043】
よって、詳細は後述するが、本発明の砂製造方法において上記組成を有する凝集剤Xを使用した場合には、汚泥の質に依ることなく、最終的に10〜20N程度の硬度を有する砂又は砂礫を製造することが可能となる。また、上記組成を有する凝集剤Xを用いることにより、最終的に得られる砂のpHが、7〜8程度の中性を示すため、得られた砂をそのまま土壌として再使用することができる。
【0044】
また、上記組成を有する凝集剤Xを含む液体のpHはほぼ中性域であり、添加により生じる廃液のpHがアルカリ性又は酸性方向に大きく変動されない。よって、汚泥(脱水ケーキ)の質によっては、廃液の中性化などの廃液処理工程を不要にでき、その分作業コストを抑制できるという利点がある。なお、汚泥から砂を製造するために従来において主に行われていた方法では、セメントが添加されるので、その廃液は強アルカリ性を示し、廃液に対する廃液処理工程が必ず必要とされていた。
【0045】
また、上記組成を有する凝集剤Xは、原料(脱水ケーキや脱水後の残留物)の重量に対して、比較的少量(例えば、原料100重量部に対して、2.5〜15重量部程度)添加するだけで、原料からの脱水及び粒子の凝結を図ることができる。よって、本発明の砂製造方法を小規模の設備で実施可能とするので、製造コストを低減することができる。また、上記組成を有する凝集剤Xは、紛状の形態で、原料(脱水ケーキや脱水後の残留物)に添加可能であるので、凝集剤Xを予め溶液として調整しておく作業が不要であり、作業コストや設備コストを低減することができる。
【0046】
なお、上記した凝集剤Xを、脱水ケーキ分離工程(S1)において、汚泥から脱水ケーキを得るため添加する凝集剤として使用することもできる。脱水ケーキ分離工程(S1)と凝集剤混合工程(S2)とで同じ凝集剤Xを用いることにより、資材管理が容易化されると共に、凝集剤Xを貯留するホッパの共通化による製造効率の向上を図ることができるので好ましい。
【0047】
本実施形態の凝集剤混合工程(S2)では、脱水ケーキの100重量部に対し、上記した凝集剤Xを1〜20重量部、好ましくは、2.5〜15重量部(例えば、5〜7重量部)の割合でミキサー(例えば、強制練りミキサー(水平1軸型、水平2軸型、パン型、可傾式)、重力式ミキサー、連続練りミキサーなど)に投入し、これらを数十秒〜数分間(例えば、10秒〜1分間程度)攪拌する。すると、脱水ケーキ中の固形分(泥分)が凝集剤Xによって疎水化されて凝集する。即ち、脱水ケーキ中の固形分が保持する水分の一部が排出され、その結果として、固液分離が生じる。
【0048】
凝集剤混合工程(S2)に続いて、凝集剤混合工程(S2)により生じた固液分離物から、固形分から構成される凝集体の分離を行う(固液分離工程:S3)。この固液分離工程(S3)では、遠心分離機を用いて数分程度の遠心分離を行うことにより、固液分離物から凝集体部分を回収する。
【0049】
次に、固液分離工程(S3)によって回収された凝集体に、凝集剤Xを再度加え、凝集体をさらに固液分離させる(凝集剤混合工程:S4)。本実施形態の凝集剤混合工程(S4)では、脱水ケーキの100重量部に対し、凝集剤Xを1〜20重量部、好ましくは、2.5〜15重量部(例えば、5〜7重量部)の割合でミキサー(例えば、強制練りミキサー(水平1軸型、水平2軸型、パン型、可傾式)、重力式ミキサー、連続練りミキサーなど)に投入し、これらを数分〜数十分撹拌(例えば、2分間〜10分間程度)する。その結果、凝集体Xの特性により、凝集体中の固形分(泥分)が保持する水分の一部が排出されて、固液分離が生じる。次いで、得られた固液分離物を、上記した固液分離工程(S3)と同様に遠心分離にかけ、凝集体部分を回収する(固液分離工程:S5)。
【0050】
複数回の凝集剤混合工程(S2,S4)の実施によって、脱水ケーキ又は凝集体(固液分離工程(S3)によって回収された凝集体)から水分が排出された結果として、より含水率の低い凝集体が得られる。即ち、凝集剤混合工程(S2)の結果として、脱水ケーキより含水率の低い凝集体が得られ、2度目の凝集剤混合工程(S4)の結果として、最初の凝集剤混合工程(S2)の結果として回収された凝集体よりも含水率の低い凝集体が得られるのである。
【0051】
その一方で、上記したような凝集剤Xの凝結機能による固形分(泥分)の凝結によって、回収された凝集体の構成粒子は、脱水ケーキ又は凝集体(固液分離工程(S3)によって回収された凝集体)に含まれる固形分(泥分)の粒子よりも高い硬度を有する。即ち、
凝集剤混合工程(S2)の結果として、脱水ケーキに含まれる粒子より硬度の高い粒子から構成される凝集体が得られ、2度目の凝集剤混合工程(S4)の結果として、最初の凝集剤混合工程(S2)の結果として回収された凝集体よりも硬度の高い粒子から構成される凝集体が得られるのである。
【0052】
次いで、固液分離工程(S5)により回収された凝集体を造粒工程(S6)に供する。この造粒工程(S6)では、凝集体をミキサー(例えば、強制練りミキサー(水平1軸型、水平2軸型、パン型、可傾式)、重力式ミキサー、連続練りミキサーなど)や造粒機(例えば、パン型造粒機、ドラム型造粒機など)の刃を用いて粉砕することによって造粒を行う。この造粒工程(S6)の結果として、粒径0.1〜20mm程度の不定形の砂粒子(砂礫性状粒子)が得られる。
【0053】
なお、この造粒工程(S6)による造粒の際に、凝集剤Xを必要に応じて添加(固液分離工程(S5)により回収された凝集体100重量部に対して1〜20重量部程度するように構成してもよい。造粒工程(S6)において凝集剤Xを添加することによって、得られる粒子の含水率の低減と硬度の向上を図ることができる。
【0054】
造粒工程(S6)の後、造粒された粒子の硬度が砂として十分な硬度(例えば、本実施形態の場合には10〜20N程度)であるかを確認する(S7)。このS7における確認は、作業者の経験的な知見や感覚によるものであっても、硬度計などの機械的な計測によるものであってもよい。S7において確認した結果、粒子の硬度が砂として十分な硬度であれば、即ち、造粒工程(S6)による造粒によって砂粒子が得られたのであれば(S7:Yes)、造粒された粒子を被覆工程(S8)に供する。
【0055】
この被覆工程(S8)では、造粒された砂粒子の表面をコーティング剤で被覆する。コーティング剤としては、種々のコーティング剤(例えば、糖質やデンプン質の天然物由来のコーティング剤や、アクリル樹脂やスチレン樹脂などの合成樹脂製のコーティング剤など)を使用できる。この被覆工程(S8)により砂粒子表面がコーティングされることにより、製造された砂粒子同士が付着することがなく、転圧などの外力の付加に対しても安定である良質な砂を提供することができる。
【0056】
一方で、S7において確認した結果、粒子の硬度が砂として不十分な硬度であれば(S7:No)、造粒された粒子を混練機(バドル、リボン、スクリューなどの種々の撹拌翼を利用する容器固定型混練機、容器回転型混練機、複合型混練機など)で混練する混練工程(S9)に供する。この混練工程(S9)は、原料である汚泥の成分によって異なるが、数分〜数十分程度の混練によって粒子の硬度を高めることができる。なお、この混練工程(S9)では、必要に応じて、凝集剤Xを添加するように構成してもよい。混練工程(S9)において凝集剤Xを添加することによって、得られる粒子の含水率の低減と硬度の向上を図ることができる。
【0057】
混練工程(S9)の後、造粒工程(S6)に戻って造粒を行う。そして、S7において、造粒された粒子の硬度が砂として十分な硬度であると確認されるまで、混練工程(S9)及び造粒工程(S6)を繰り返す。
【0058】
上記S1〜S9の処理を行った結果として、汚泥から、10〜20N程度の硬度を有する粒径0.1〜20mm程度の不定形の砂粒子(砂礫性状粒子)を得ることができるのである。
【0059】
また、上記した砂製造方法による砂の製造方法によれば、半日〜数日程度で汚泥から砂を得ることができる。
【0060】
以上説明したように、本発明の砂製造方法によれば、汚泥を脱水して得た脱水ケーキから砂を製造する過程において、特定の組成を有する凝集剤Xなどの凝集剤を用いて脱水ケーキ中に含まれる固形分(泥分)が保水する水分を十分に排出させて造粒した結果として砂が得られる。
【0061】
ここで、特に、凝集剤として凝集剤Xを用いた場合、上記した通り、凝集剤Xの添加後、数秒〜数十分の混合によって固液分離が行われて、固形分(泥分)の含水量を確実に低減させることができるので、汚泥を、半日〜数日程度で砂に変換することができる。
【0062】
即ち、本発明の砂製造方法によれば、汚泥からの水分除去のために天日干し又はプレス等の長時間を要する作業を行う必要がなく、その結果として、短期間で砂を製造できるのである。
【0063】
ここで、天日干しやプレスによる脱水作業は、設備や装置の規模が大きいため、砂が得られるまでの期間が長ければ長い程、作業場所の占有や大掛かりな装置の運用に伴う製造コストが嵩むことになる。よって、本発明の製造方法によれば、短期間で砂が製造できるので、その結果として製造コストの削減に繋がるのである。
【0064】
また、本発明の砂製造方法によれば、従来から用いられていたセメントを使用することなく砂を得ることができるので、六価クロムの溶出による環境汚染への危惧とは無縁の環境に安全な砂を得ることができる。
【0065】
また、本発明の砂製造方法では、特定成分(二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、リン酸、および酸化チタン)を特定の重量割合で含む凝集剤Xを用いるので、この凝集剤Xが持つ(1)水分調整機能(疎水機能)と(2)凝結機能と(3)硬化促進機能とにより、汚泥の質に依ることなく、最終的に十分な硬度を有する砂を製造することができるのである。
【0066】
また、この凝集剤Xを用いることによって、セメントを用いることなく砂を製造できるので、得られた砂から六価クロムが溶出することはなく、環境汚染が生じない。
【0067】
また、特定の組成を特定の割合で含む凝集剤Xを用いることにより、中性を示す砂が得られるので、得られた砂をそのまま土壌として再使用することができる。
【0068】
また、特定の組成を有する凝集剤Xを含む液体のpHはほぼ中性域であり、添加により生じる廃液のpHがアルカリ性又は酸性方向に大きく変動されない。よって、汚泥(脱水ケーキ)の質によっては、廃液の中性化などの廃液処理工程を不要にでき、その分作業コストを抑制できる。
【0069】
また、特定の組成を有する凝集剤Xを用いた場合、原料(脱水ケーキや脱水後の残留物)の重量に対する添加量を比較的少量(例えば、原料100重量部に対して、2.5〜15重量部程度)とすることができるので、本発明の砂製造方法を小規模の設備で実施可能とし、製造コストを低減することができる。また、特定の組成を有する凝集剤Xは、紛状の形態で、原料(脱水ケーキや脱水後の残留物(凝集体))に添加可能であるので、凝集剤を予め溶液として調整しておく作業を不要とすることができ、その結果として、作業コストや設備コストを低減することができる。
【0070】
以上、好ましい実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0071】
例えば、上記実施形態において、砂製造方法における各工程(S1〜S6,S7,S8)を、別々の装置(ミキサーや遠心分離機や造粒機など)を用いるかのように説明したが、これらの各工程を実行するのに必要な機能(撹拌や固液分離や造粒や混練など)を備えた1台の装置(例えば、撹拌や固液分離や造粒や混練の機能を備えたミキサー)を用いて実行する連続生産方式によるものであってもよい。
【0072】
上記実施形態では、凝集剤Xを投入する工程を2回(凝集剤投入工程(S2)及び凝集剤投入工程(S4))行うように構成したが、2回に限定されるものではなく、1回のみ(即ち、凝集剤投入工程(S2)のみ)行う構成であっても、3回以上行うような構成であってもよい。
【0073】
凝集剤Xを投入する工程を複数回行うことによって、脱水ケーキの含水率を砂が得られる程度にまで確実に減少させることができると共に、硬度の高い粒子から構成される凝集体を得ることができることになる。ただし、凝集剤Xを投入する工程を必要以上に行うことは、資材コストの無駄であるので好ましくない。
【0074】
なお、上記実施形態では、造粒工程(S6)により造粒された粒子を被覆工程(S8)に供し、粒子表面をコーティング剤で被覆するように構成したが、被覆工程(S8)を行わない構成をしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の砂製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
S2,S4 凝集剤混合工程
S3,S5 固液分離工程(分離工程)
S6 造粒工程
S8 被覆工程
S9 混練工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥に凝集剤と灰分とを添加することによって得られた脱水ケーキから砂を製造する砂製造方法において、
前記脱水ケーキと凝集剤とを混合し、前記脱水ケーキから、液状部分と泥分を主成分とする凝集体との分離液を得る凝集剤混合工程と、
その凝集剤混合工程により得られた分離液から前記凝集体を分離する分離工程と、
その分離工程により分離された前記凝集体から、砂を造粒する造粒工程とを備えていることを特徴とする砂製造方法。
【請求項2】
前記凝集剤は、少なくとも下記成分を下記重量割合で含む特徴とする請求項1記載の砂製造方法:二酸化珪素15.0〜35.0重量部、酸化アルミニウム20.0〜40.0重量部、酸化第二鉄1.0〜10.0重量部、酸化カルシウム20.0〜40.0重量部、酸化ナトリウム1.0〜5.0重量部、酸化カリウム0.1〜1.2重量部、酸化マグネシウム0.3〜1.8重量部、リン酸0.8〜2.5重量部、酸化チタン0.01〜2.0重量部。
【請求項3】
前記凝集剤混合工程は、複数回行われることを特徴とする請求項1又は2記載の砂製造方法。
【請求項4】
前記造粒工程は、前記凝集剤混合工程において使用した凝集剤の添加を伴うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の砂製造方法。
【請求項5】
前記造粒工程の後に、得られた砂をさらに混練する混練工程を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の砂製造方法。
【請求項6】
前記粉砕工程又は前記混練工程の後に、得られた砂の表面に粒子付着防止剤を被覆する被覆工程を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の砂製造方法。
【請求項7】
前記凝集剤混合工程において使用した凝集剤は、前記脱水ケーキを得るために使用した凝集剤と同じ凝集剤であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の砂製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の砂製造方法に用いる凝集剤であって、
少なくとも下記成分を下記重量割合で少なくとも含むを特徴とする凝集剤:二酸化珪素15.0〜35.0重量部、酸化アルミニウム20.0〜40.0重量部、酸化第二鉄1.0〜10.0重量部、酸化カルシウム20.0〜40.0重量部、酸化ナトリウム1.0〜5.0重量部、酸化カリウム0.1〜1.2重量部、酸化マグネシウム0.3〜1.8重量部、リン酸0.8〜2.5重量部、酸化チタン0.01〜2.0重量部。

【図1】
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【公開番号】特開2007−69129(P2007−69129A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259424(P2005−259424)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(502291562)
【出願人】(505338888)
【Fターム(参考)】