説明

研掃材の製造方法及び研掃材

【課題】廃棄物の溶融スラグを有効利用して研掃材を得ることを課題とする。
【解決手段】廃棄物をガス化溶融炉1により熱分解ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融した溶融スラグから研掃材を製造する方法であって、廃棄物を熱分解ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融して溶融スラグを生成する熱分解ガス化・溶融工程と、溶融スラグを酸化雰囲気で保熱滞留させることで溶融スラグの組成成分の分散を均一とする溶融スラグの均質化を行う均質化工程と、均質化した溶融スラグを水砕槽に流下して水砕粒化する水砕工程と、水砕粒化したスラグを、該スラグと混在するメタルから選別しスラグ研掃材を得る選別工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラストに使用される研掃材を廃棄物から製造する方法及び研掃材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラストは、研掃材と呼ばれる研掃粒子を高速で被加工物表面に投射する加工方法で、被加工物表面の鋳物砂、錆、スケール、塗膜などの異物の除去、表面肌の面粗し、塗装前の下地処理、或いは疲労寿命向上などを目的として鋳物、鉄鋼、造船、橋梁、鋼構造物、タンク、自動車、航空機、電気、電子などの広い産業分野で利用されている。ブラストに用いられる研掃材には、珪砂、ガーネットなど天然鉱石系研掃材と、金属精錬時に発生する溶融スラグを水砕又は風砕処理したスラグ系研掃材などが知られている。
【0003】
一方、廃棄物処理場の不足が顕著化しており、産業廃棄物あるいは一般廃棄物の多くは、焼却処理し減容化した後に、埋立などの最終処分が行われる場合が多い。上記した焼却処理の方法として種々の方法が挙げられるが、近年、焼却場における発生ガス中のダイオキシン類など有害物質の管理が問題となっており、廃棄物を焼却処理することで発生するダイオキシン類を炉内の高温雰囲気で分解することにより、ダイオキシン類の排出を防止することが可能な処理方法が求められている。このような高温処理が可能な廃棄物処理方法として、特許文献1に開示された廃棄物処理方法が挙げられる。この特許文献1に開示されているプロセスは、かかる処理を高速で行うために、廃棄物を圧縮成形して圧縮ブロックを形成して減容化した後、この圧縮ブロックを乾燥し、ガス化溶融炉に装入して、熱分解ガス化し不燃分を溶融して、燃料ガスおよびスラグ、金属を得る廃棄物処理方法である。この廃棄物処理方法では、熱分解残渣と不燃物が溶融されスラグと金属の溶融物が排出され、金属は回収され、スラグは小粒径に処理されインターロッキングブロックなどコンクリート成形材の細骨材に利用することなどが試みられている。
【0004】
また、研掃材を金属精錬溶融スラグから製造すること以外にスラグから研掃材を製造する方法として、石炭焼却飛灰の溶融スラグから研掃材を製造することが試みられている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−323270号公報
【特許文献2】特開2000−000769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、研掃材を金属精製時の溶融スラグから得ることが知られており、そして研掃材を石炭焼却灰の溶融スラグから得ようと試みられてはいるが、都市ごみなど一般廃棄物や産業廃棄物を熱分解して得られる廃棄物溶融スラグから研掃材を製造することはこれまで試みられたことがない。これは、廃棄物から得られる廃棄物溶融スラグはあくまで廃棄物からの副産物であるため、廃棄物溶融スラグの化学組成を研掃材に適したものとするのが困難であることや、また廃棄物溶融スラグの化学組成が処理する廃棄物の種類や性状により変動するものであり安定した品質を保持しにくいという問題があるからである。また、これまでに検討された場合には、研掃材としてブラスト投射する場合に廃棄物溶融スラグは耐衝撃性に劣り粉化しやすく消耗が激しく、また所望の表面粗さや除錆の程度を得るためには被加工物に対する研掃材の投射量を多くする必要があるなど研掃効率も低いという問題があるからである。
【0007】
このような事情に鑑みて、本発明は、上記した従来技術の問題点を解決し、廃棄物の溶融スラグを有効利用でき、かつ、ブラスト投射する場合に粉化しにくく、研掃効率の高い研掃材を廃棄物の溶融スラグから製造する方法及び研掃材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、研掃材の製造方法そして研掃材は、次のように構成される。
【0009】
<研掃材の製造方法>
本発明では、研掃材の製造方法は、
廃棄物をガス化溶融炉により熱分解ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融した溶融スラグから研掃材を製造する方法であって、
廃棄物を熱分解ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融して溶融スラグを生成する熱分解ガス化・溶融工程と、
溶融スラグを酸化雰囲気で保熱滞留させることで溶融スラグの組成成分の分散を均一とする溶融スラグの均質化を行う均質化工程と、
均質化した溶融スラグを水砕槽に流下して水砕粒化する水砕工程と、
水砕粒化したスラグを、該スラグと混在するメタルから選別しスラグ研掃材を得る選別工程とを備えることを特徴としている。
【0010】
このような構成の本発明によると、廃棄物の溶融スラグを有効利用でき、かつ、ブラスト投射する場合に粉化しにくい研掃材を廃棄物の溶融スラグから得ることができた。
【0011】
本発明においては、ガス化溶融炉に廃棄物として鉄を含む廃棄物を供給すること、該廃棄物とともに酸化鉄を含む物質を供給することの少なくとも一方を行うことにより、酸化鉄の状態で鉄を3質量%以上かつ24質量%以下の範囲で含むスラグ研掃材を得ることが好ましい。
【0012】
スラグ研掃材の酸化鉄として鉄の含有率が3質量%より小さいと、スラグ粒の強度が低くブラスト投射の衝撃により容易に粉化するので好ましくない。スラグ研掃材の酸化鉄として鉄の含有率が24質量%より大きいと、スラグ粒の比重が高すぎるためブラスト投射するためのエネルギーが多く必要になりブラスト設備の運転費用が嵩むので好ましくない。
【0013】
スラグ研掃材の組成として、酸化鉄として鉄を3質量%以上かつ24質量%以下の範囲で含む組成をFeOに換算すると、FeOの含有率は3.9質量%以上かつ30.9質量%以下となる。
【0014】
本発明において、より好ましい組成は、酸化鉄として鉄を6質量%以上かつ15質量%以下の範囲で含む組成であり、これをFeOに換算すると、7.7質量%以上かつ19.3質量%以下となる。
【0015】
スラグ中の鉄は酸化鉄の形態で存在することが安定して均質に含まれるので好ましい。これに対し、酸化鉄ではなく、金属状の鉄の形態で含まれると、金属鉄を含む部分が脆く破壊されやすくブラスト投射すると容易に粉化しやすくなり好ましくない。
【0016】
この本発明における好ましい形態として、鉄を含む廃棄物の例は、カーシュレダーダストであり、酸化鉄を含む酸化鉄源物の例は、ブラストに使用して回収した廃棄物スラグ研掃材である。その理由は、研掃により剥離した鉄錆を含むため酸化鉄をより多く含むので好ましいからである。
【0017】
<研掃材>
このような方向で得られる本発明の研掃材は、廃棄物をガス化溶融炉により熱分解ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融した溶融スラグから製造される研掃材であって、酸化鉄の状態で鉄を3質量%以上かつ24質量%以下の範囲で含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように構成されるので、廃棄物の溶融スラグを有効利用でき、かつ、ブラスト投射する場合に粉化しにくい研掃材を廃棄物の溶融スラグから製造する方法及び研掃材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る廃棄物スラグ研掃材製造装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施形態に係る廃棄物ガス化溶融炉を用いて廃棄物スラグ研掃材を製造する廃棄物スラグ研掃材製造装置の一実施形態を示す。
【0021】
本実施形態装置は、廃棄物をガス化溶融炉により熱分解ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融した溶融スラグと溶融金属の混合物を生成し、溶融スラグを酸化雰囲気で滞留し均質化し、均質化した溶融スラグを水砕槽に流下し水砕粒化し、水砕粒化したスラグと混在するメタルとを選別しさらに研掃材として好ましい粒度のスラグを得るように構成されている。
【0022】
図1に示される本実施形態の研掃材製造装置には、廃棄物をガス化溶融炉により熱分解ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融し溶融スラグとして排出する廃棄物ガス化溶融装置Iと、溶融スラグから研掃材として不適な物質を分離し研掃材を精製する溶融スラグ処理装置IIとが設けられている。
【0023】
<廃棄物ガス化溶融装置>
廃棄物ガス化溶融装置Iには、廃棄物投入装置10、圧縮装置20、加熱炉30、竪型ガス化溶融炉50が設けられている。廃棄物投入装置10は、後述の圧縮装置20内へ上方から廃棄物と、酸化鉄を含む物質(以下酸化鉄源物ということもある)を投入するようになっており、該廃棄物投入装置10は、廃棄物と上記酸化鉄源物を受け入れるホッパ11と、該ホッパ11の底部をなし開閉自在な蓋部12とを有している。該廃棄物投入装置10は、蓋部12が開位置にあるときに圧縮装置20と連通し、廃棄物等を圧縮装置20内に投入する。
【0024】
上記酸化鉄源物とは、都市ごみ等の一般廃棄物とは別の、酸化鉄を含む産業廃棄物をいい、ブラスト作業に使用した廃研掃材、などを用いることができる。
【0025】
上記廃棄物投入装置10の下方には、上記廃棄物を圧縮して圧縮ブロックPを成形する圧縮装置20が設けられている。該圧縮装置20は、ホッパ11の下方位置で水平方向に延びる筒状部21と、該筒状部21内を前後方向(図1にて左右方向)で往復動する圧縮手段としての圧縮ヘッド22と、該ホッパ11よりも下流位置(図1にて右方側)で上下方向に往復動して筒状部21の下流側開口を開閉する板状の圧縮支持盤23とを有している。圧縮支持盤23は後述する加熱炉30の上流側開口を開閉するゲートを兼ねている。上記筒状部21は、その内壁断面が、後述する加熱炉30の内壁断面と同形かつ同一寸法で形成されている。
【0026】
上記圧縮装置20は、圧縮支持盤23が下降位置にて筒状部21の下流側開口を塞いだ状態で、圧縮ヘッド22が圧縮支持盤23へ向けて近づくように前方(図にて右方)へ移動することにより、該圧縮ヘッド22と圧縮支持盤23とでホッパ11から投入された廃棄物と酸化鉄源物を前後方向で挟んで圧縮し、該廃棄物等の圧縮ブロックPを成形する。該圧縮ブロックPの成形は、回分的(バッチ的)に行われる。
【0027】
上記圧縮装置20の下流側には、該圧縮装置20の筒状部21に接続されトンネル式加熱炉30(以下、「加熱炉30」という)が水平方向に延びて設けられている。該加熱炉30は外部から加熱されており、上記圧縮装置20から供給された圧縮ブロックPが該加熱炉30内で乾燥されるようになっている。該加熱炉30の下流側端部は、竪型ガス化溶融炉50(以下、「ガス化溶融炉50」という)の装入口51と接続されており、乾燥後の上記圧縮ブロックPを該装入口51からガス化溶融炉50内へ供給可能となっている。
【0028】
ガス化溶融炉50は、上下方向に延びる鉛直部分を有している。上記鉛直部分は、その略下半部が熱分解・溶融部52として形成されており、略上半部がガス改質部53として形成されている。ガス化溶融炉50の熱分解・溶融部52は、水平方向に延びる均質化炉54と接続されている。
【0029】
上記熱分解・溶融部52では、圧縮ブロックPが堆積して廃棄物堆積層Qが形成され、該廃棄物堆積層Qの廃棄物等が熱分解によりガス化されるともに、熱分解残渣と不燃物が溶融されて溶融スラグと溶融金属の混合物を生成するようになっている。ガス化溶融炉50の側壁の下部には、上記廃棄物堆積層Q内に酸素含有ガスを供給する第一酸素含有ガス供給口55が設けられている。
【0030】
上記ガス改質部53では、後述するように、上記熱分解・溶融部52で廃棄物堆積層Qから発生したガスが改質されて改質ガスが生成される。ガス化溶融炉50の側壁の上部側には、ガス改質部53内に、ガス改質のための酸素含有ガスを供給する複数の第二酸素含有ガス供給口56が設けられている。
【0031】
ガス化溶融炉50の頂部には、該頂部に形成された改質ガス排出口59から延びガス改質部53で生成された改質ガスを炉外へ排出するためのガスダクト59Aが設けられている。ガスダクト59Aの下流側には、上記廃棄物ガス化溶融装置Iとは別装置として形成された、上記改質ガスを冷却洗浄するための冷却洗浄水循環装置(図示せず)、改質ガス中のHCLガス等を除去して燃料ガスとして適した性状に精製するガス精製装置(図示せず)が設けられている。
【0032】
上記均質化炉54では、上記熱分解・溶融部52で生成された溶融スラグと溶融金属の混合物が酸化雰囲気で滞留され加熱されて該溶融スラグに含まれる炭素等がガス化されて除去されるとともに、溶融スラグの組成成分の分散を均一とする均質化が行われる。均質化炉54の上壁には、上記均質化炉54に燃料ガスを燃焼するバーナ57が設けられている。また、該均質化炉54には、上記溶融物を外部へ流下排出するための溶融物排出口58が下方へ延びて設けられている。均質化炉54では溶融金属が下層に溶融スラグが上層に分離される。
【0033】
<溶融スラグ処理装置>
上記廃棄物ガス化溶融装置Iには、溶融スラグから研掃材として不適な物質を分離し研掃材を精製する溶融スラグ処理装置IIが接続されている。
【0034】
この溶融スラグ処理装置IIは、上記溶融物排出口58の下方に位置する水砕槽60、振動篩61、一次磁力選別機62、スラグを磨砕する磨砕機63、その下方に位置する篩分級装置64、そして二次磁力選別機65を有している。
【0035】
上記水砕槽60には冷却水Wが収容されており、均質化炉54からの溶融物たる溶融スラグと溶融金属が上記溶融物排出口58を経て上記冷却水Wへ流下するようになっている。溶融スラグと溶融金属は冷却水Wによる急冷と、冷却水と衝突することにより、水砕粒化し、スラグ粒と金属粒が該水砕槽60内で底部に堆積される。
【0036】
上記振動篩61は、上記水砕槽60の側方かつ上方に位置しており、該水砕槽60の底部とコンベア66により接続されていて、水砕槽60の底部に堆積されている、水砕粒化したスラグ粒と金属粒が上記コンベア66により振動篩61にもたらされるようになっている。
【0037】
一次磁力選別機62は、磁力により金属粒とスラグ粒(非金属)とに選別するように構成されている。金属のうち、少量だけ含まれる非磁性金属も、磁性金属(主として金属鉄)と一体に粒化しているため、磁力により金属として選別される。この一次磁力選別機62は、上記振動篩61から落下する小径のスラグ粒と金属粒を受けて、これらを該一次磁力選別機62へ搬送する搬送コンベア67で、上記振動篩61と接続されている。ここで、搬送コンベア67からのスラグ粒と金属粒は、供給装置68に貯留され、単位時間当りの供給量が所定値(例えば、定量)となるように、上記一次磁力選別機62へ供給される。
【0038】
上記一次磁力選別機62では、スラグ粒と金属粒とが磁力選別され別々に落下する。金属粒は、回収されて再利用に供される。一方、落下するスラグ粒の下方には、磨砕機63が配されており、スラグ粒はこの磨砕機63で、さらに小粒化されて落下するようになっている。該磨砕機63の下方には、篩分級装置64が配されていて、磨砕機63からの小粒径スラグ粒、小粒径金属粒はここで、さらに分級される。篩分級装置64の下方には、二次磁力選別機65が配置されており、篩分級装置64で分級された、微小粒径のスラグ粒と金属粒が磁力で選別され、スラグ粒と金属粒とが別途落下する。金属粒は回収されて再利用に供され、スラグ粒が研掃材として排出される。
【0039】
<研掃材を製造する方法>
次に、上述した図1の形態の研掃材製造装置による、廃棄物から研掃材を製造する方法について説明する。
【0040】
まず、廃棄物と酸化鉄源物を廃棄物投入装置10のホッパ11に貯留する。そして、該ホッパ11に設けられた蓋部12が開放されることにより所定量の該廃棄物等が圧縮装置20へ投入される。該圧縮装置20は、圧縮支持盤22を下降位置にもたらした状態でピストン22を前方へ移動させることにより、上記廃棄物等が圧縮されてち密な圧縮ブロックPを形成する。該圧縮ブロックPの成形は、回分的(バッチ的)に行われ、該圧縮ブロックPが順次成形されることにより、該圧縮ブロックPが前方へ押し出されて加熱炉30へ供給される。
【0041】
上記圧縮ブロックPの断面形状は、加熱炉30の入口の内壁断面と同形、同一寸法であり、圧縮ブロックPは加熱炉30の内壁と接触状態を保ったまま押し込まれるため、加熱炉30の入口で加熱炉内雰囲気をシールできる。圧縮ブロックPは、順次新しい圧縮ブロックが押し込まれる毎に、加熱炉30内を滑りながらガス化溶融炉50の装入口51へ向けて移動する。
【0042】
既述したように、加熱炉30は外部から加熱されており、内部は昇温され、圧縮ブロックPの移動、昇温過程において、圧縮ブロックP中の水分が蒸発され乾燥される。そして、乾燥された圧縮ブロックPは、ガス化溶融炉50の装入口51から該ガス化溶融炉50の熱分解・溶融部52内へ装入そして供給される。
【0043】
上記熱分解・溶融部52内へ供給された圧縮ブロックPは、上述のように、廃棄物堆積層Qを形成する。該廃棄物堆積層Qでは、熱分解・溶融部52の下部に設けられた第一酸素含有ガス供給口55から該廃棄物堆積層Q中へ酸素含有ガスが供給される。この結果、廃棄物中の固定炭素などの可燃物が燃焼して、その熱エネルギーで廃棄物と酸化鉄源物の揮発分が揮発して熱分解される。廃棄物が熱分解されて一酸化炭素、水素、炭化水素、二酸化炭素等へのガス化が行われるとともに、熱分解残渣と不燃分(金属、灰分など)が溶融して溶融物(スラグと金属の溶融物)が生成される。
【0044】
第一酸素含有ガス供給口55から該廃棄物堆積層Q中へ供給する酸素含有ガスの酸素濃度は、80vol%以上の濃度が好ましい。酸素含有ガスの酸素濃度が80vol%より低いと、廃棄物中の固定炭素などの可燃物を燃焼させて得る熱エネルギー量が十分でなく、熱分解残渣等を溶融する溶融温度を十分に高くすることができず、溶融が不十分になるからである。
【0045】
ガス化溶融炉50のガス改質部53では、第二酸素含有ガス供給口56から酸素含有ガスが供給されており、廃棄物堆積層Qからの発生ガスの一部が燃焼されて温度雰囲気を1000℃以上にされた領域で該発生ガスが滞留され、以下のガス改質がなされる。
【0046】
熱分解・溶融部52の廃棄物堆積層Qにおいて、圧縮ブロックPが熱分解して生成された上記発生ガスに含まれる炭化水素(メタン等)と一酸化炭素は、ガス改質部53にて、該発生ガスに含まれる水蒸気と下記(1)、(2)の反応により反応し、燃料ガスとして有用な一酸化炭素と水素を多く含むように改質される。
CH+HO→CO+3H (1)
CO+ HO→H+CO (2)
【0047】
また、熱分解・溶融部52の下部に接続された均質化炉54では、バーナ57にLNGなど燃料ガスが供給されるとともに、燃焼用酸素が燃料ガスに対して過剰となるように酸素含有ガスが供給されて酸化雰囲気を形成し、燃焼して生成する高温燃焼ガスで上記溶融物がこの酸化雰囲気を維持された状態で加熱され、該溶融物に含まれる微量の炭素などがガス化して除去されるとともに、酸化雰囲気下で加熱されることにより酸化鉄が溶融スラグ中に均質分散され均質化される。ここで、均質化とは、溶融スラグの組成成分が均一に分散していることである。スラグと金属から成る溶融物は溶融物排出口58から溶融スラグ、そして溶融金属として流下排出される。上記酸化雰囲気を形成するための燃焼用酸素過剰の割合としては1vol%以上20vol%以下が好ましい。
【0048】
均質化炉で溶融物の厚さを、例えば、200mm以下(100mm以下がより好ましい)とし酸化雰囲気下で加熱して3分以上滞留させることにより、溶融物に残存する炭素などをガス化して除去し、巻き込まれた気泡を抜き、均質化された溶融スラグを得ることができる。
【0049】
溶融スラグそして溶融金属は、上記均質化炉54から溶融物排出口58を経て水砕槽60へ流下して、該水砕槽60内の冷却水により急冷されると共に冷却水との衝突によって、水砕され粒状化される。粒状化されたスラグ粒と金属粒は、水砕槽60の底部に堆積する。
【0050】
上記スラグ粒と金属粒は、コンベア66により上記水砕槽60の底部から振動篩61へ搬送される。この振動篩61では、スラグ粒と金属粒は、粒径が一次所定値より大きいものは除去され、一次所定値以下の粒径のものが搬送コンベア67上に落下して該搬送コンベア67により供給装置68へ貯留され、該供給装置68により、所定量だけ一次磁力選別機62へもたらされる。
【0051】
上記一次磁力選別機62では、金属粒は除去されてスラグ粒が磨砕機63へ供給される。スラグ粒は磨砕機63で磨砕され小径化される。磨砕により、スラグ粒は小径化されると共に、その形状が脆弱な破断面を有していない形状とし研掃材として好ましい形状になる。このような脆弱な破断面を有さない形状とすることによりブラスト時に発生する粉塵を抑えるとともに、ブラストの研掃効率を高くすることが可能となる。また、小径化により、スラグ粒内に残留保持されていた金属分が脱落してスラグ分から分離した金属粒となるものもある。この磨砕では、スラグ粒径は0.1mm〜2.5mmの粒径範囲に調整することが好ましい。ブラスト研掃の対象物や要求される表面粗さなどの研掃仕上がりのグレードなど研掃材の用途により異なるが、例えば、大きい表面粗さが要求される場合には粒径は0.3mm〜2.4mm、小さい表面粗さが要求される場合には粒径は0.3mm〜 1.2mmが好ましい。
【0052】
磨砕されたスラグ粒そして残留する金属粒は篩分級装置64にもたらされ、ここで最終所定値以上の粒径のものが除去され、最終所定値以下の粒径のものが、二次磁力選別機65へもたらされる。この二次磁力選別機65で、金属粒は除去され、スラグ粒のみが研掃材となる製品として取り出される。しかし、この研掃材中にも、若干量の金属が混入あるいは混在していることがあるが、その量は1質量%以下にすることが好ましい。
【0053】
かくして得られる研掃材の好ましいスラグの組成は、酸化鉄として鉄を3質量%以上かつ24質量%以下、SiOが25質量%以上かつ45質量%以下、Alが5質量%以上かつ20質量%以下、CaOが30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下である。
【0054】
本発明では、上記のガス化溶融炉では、ガス化溶融炉の廃棄物堆積層に酸素含有ガスを供給して均質化炉内を酸化雰囲気とし、廃棄物中の固定炭素などの可燃物が燃焼して、その熱エネルギーで廃棄物と酸化鉄源物の揮発分が揮発して熱分解され、熱分解残渣と不燃物が溶融される。このようなガス化溶融炉内の雰囲気では廃棄物中の鉄は酸化鉄の状態として、溶融スラグに含まれる。
【0055】
一方、廃棄物ガス化溶融炉としてコークス床を有する廃棄物ガス化溶融炉が、例えば特公昭60-11766号公報で知られているが、この公知の廃棄物ガス化溶融炉では、コークス床が炉下部に設けられていて、吹き込まれた酸素富化空気によりコークスを高温燃焼させコークスの高温燃焼帯が形成され、その熱エネルギーにより熱分解残渣と不燃物が溶融される。したがって、酸素富化空気はコークスの高温燃焼に消費されてしまい、熱分解残渣と不燃物が溶融する部分の雰囲気は強還元雰囲気となっているため、鉄は酸化鉄の状態ではなく金属鉄の状態となり易く溶融メタルとして排出されるため、スラグに酸化鉄が含まれる比率が極めて少なくなる。また、コークス床を有する廃棄物ガス化溶融炉では、溶融スラグを炉から円滑に出滓させるため、溶融スラグの溶融粘度を下げるように石灰石を廃棄物とともに供給している。そのため、スラグ中のカルシウム含有率が高くなる。従ってコークス床を有する廃棄物ガス化溶融炉から回収されるスラグには酸化鉄含有率が低く、カルシウム含有率が高いので、研掃材として用いるには不適である。
【実施例】
【0056】
廃棄物に、鉄が多く含まれている他の廃棄物(カーシュレッダーダスト)を添加し、廃棄物ガス化溶融炉へ供給する廃棄物の灰分中のFeを10質量%に調整した。図1に示す廃棄物ガス化溶融装置を用い、純酸素を供給して、ガス化溶融した。均質化炉にて、LNG・酸素バーナにより加熱し、溶融スラグを100mm以下の層厚で、3.5分滞留させた。均質化炉のLNG・酸素バーナーは理論燃焼酸素量より5%だけ過剰に酸素を供給し酸素過剰燃焼とし溶融スラグを酸化雰囲気に保持した。溶融スラグを水砕し粒子状のスラグ粒子を得た。
【0057】
該粒子状スラグを磁力選別し、金属鉄を除去した後、磨砕し、再度磁力選別し、金属鉄の含有率を0.3%にした。
【0058】
スラグの組成は酸化鉄としてFe:9.7質量%(FeO換算:12.5質量%)、CaO:22質量%、SiO:35質量%、Al:13質量%、MgO:3質量%であった。スラグの強度は高く、粉化しにくいため、ブラスト用研削材として適したスラグが製造できた。
【比較例】
【0059】
コークス床を有する廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物をコークスと石灰石を入れて、廃棄物をガス化溶融し、溶融スラグを得た。溶融スラグを水砕し粒子状のスラグ粒子を得た。スラグの組成はFe:1質量%(FeO換算:1.3質量%)、CaO:31質量%、SiO:43質量%であった。スラグの強度は低く、粉化しやすいため、ブラスト用研削材としては使用できなかった。
【符号の説明】
【0060】
I 廃棄物ガス化溶融装置
II 溶融スラグ処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物をガス化溶融炉により熱分解ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融した溶融スラグから研掃材を製造する方法であって、
廃棄物を熱分解ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融して溶融スラグを生成する熱分解ガス化・溶融工程と、
溶融スラグを酸化雰囲気で保熱滞留させることで溶融スラグの組成成分の分散を均一とする溶融スラグの均質化を行う均質化工程と、
均質化した溶融スラグを水砕槽に流下して水砕粒化する水砕工程と、
水砕粒化したスラグを、該スラグと混在するメタルから選別しスラグ研掃材を得る選別工程とを備えることを特徴とする研掃材の製造方法。
【請求項2】
ガス化溶融炉に廃棄物として鉄を含む廃棄物を供給すること、該廃棄物とともに酸化鉄を含む物質を供給することの少なくとも一方を行うことにより、酸化鉄の状態で鉄を3質量%以上24質量%以下の範囲で含むスラグ研掃材を得ることとする請求項1に記載の研掃材の製造方法。
【請求項3】
廃棄物をガス化溶融炉により熱分解ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融した溶融スラグから製造される研掃材であって、
酸化鉄の状態で鉄を3質量%以上かつ24質量%以下の範囲で含むことを特徴とする研掃材。

【図1】
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【公開番号】特開2013−91143(P2013−91143A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236126(P2011−236126)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】