説明

研磨方法及び研磨装置

【課題】Ga元素等を含有する化合物半導体の基板に対する所望の平坦度を有する表面仕上げを行うのに特に適した研磨方法及び研磨装置を提供し、これによって、例えばGa元素を含有する化合物半導体の基板表面を実用的な加工時間で表面精度高く平坦に加工できるようにする。
【解決手段】弱酸性の水または空気が溶解した水、または電解イオン水232の中で、Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体の基板142の表面と、表面の少なくとも基板142と接触する部位に導電性部材264を有する研磨パッド242の該表面とを互いに接触させつつ相対運動させて、基板142の表面を研磨する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨方法及び研磨装置に係わり、特にGa,Al若しくはIn等の元素を含有する化合物半導体の単体基板、またはGa,Al若しくはIn等の元素を含有する化合物半導体を載せた接合基板(エピタキシャル基板)等の基板の表面(被加工面)を平坦に研磨する研磨方法及び研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、酸化性処理溶液中に基板を配し、酸性または塩基性を有する固体触媒を基板の表面(被加工面)に接触または極接近させて配して、固体触媒と接触または極接近している被加工面の表面原子を酸化性処理溶液中に溶出させて該被加工面を加工するようにした触媒支援型化学加工法を提案している(特許文献1参照)。この触媒支援型化学加工法では、処理溶液中に配した基板の表面(被加工物)に光、好ましくは紫外線を照射したり、基板と固体触媒との間に電圧を印加したりすることで、被加工面の酸化を促進して、加工速度を高めることができる。この触媒支援型化学加工法によれば、化学的作用のみによる基板表面のダメージの小さな平坦化加工が可能となる。しかし、例えばGa元素を含む化合物半導体の単体基板の表面を実用的な所要時間で十分高精度な表面粗さに平坦化加工することは一般に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−121099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出願人は、Gaイオンを含有する液性が中性域のpH緩衝溶液からなる処理溶液中にGa元素を含有する化合物半導体の基板を浸漬させ、基板表面に光を照射するか、または基板にバイアス電位を印加して、基板表面にGa酸化物を形成し、前記基板表面に形成されたGa酸化物と研磨定盤とを互いに接触させつつ相対運動させてGa酸化物を研磨除去できることを見出した(特願2009−78234参照)。
【0005】
しかしながら、上記のように、基板表面に光を照射するか、または基板にバイアス電位を印加して基板表面にGa酸化膜を形成しつつ該酸化膜を研磨除去して、Ga元素を含有する化合物半導体の基板表面を平坦化すると、研磨後の基板表面(被研磨面)が所望の平坦度を有するまで基板表面を平坦に研磨するのに多大の時間を要するか、または十分な平坦度を得ることができないことが判った。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、Ga元素等を含有する化合物半導体の基板に対する所望の平坦度を有する表面仕上げを行うのに特に適した研磨方法及び研磨装置を提供し、これによって、例えばGa元素を含有する化合物半導体の基板表面を実用的な加工時間で表面精度高く平坦に加工できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、弱酸性の水または空気が溶解した水、または電解イオン水の存在下で、Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体の基板表面と、表面の少なくとも前記基板と接触する部位に導電性部材を有する研磨パッドの該表面とを互いに接触させつつ相対運動させて、前記基板表面を研磨することを特徴とする研磨方法である。
【0008】
これにより、Ga元素等を含有する化合物半導体の基板表面に対する平坦度を高めた表面仕上げ研磨を行うことができ、これによって、例えば、処理溶液中での光の照射及び/またはバイアス電位の印加を伴う研磨と組合せることによって、Ga元素を含有する化合物半導体の基板表面が所望の平坦度を有するように研磨するのに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記弱酸性の水または空気が溶解した水のpHは、3.5〜6.0であることを特徴とする請求項1記載の研磨方法である。
pH3.5〜6.0の弱酸性の水は、酸、pH緩衝剤または酸化剤(H,オゾン水,過硫酸塩等)を添加することなく、例えば純水や水道水にCO等のガスを溶解させることで製造される。pH3.5〜6.0の空気が溶解した水は、例えば純水や水道水を空気に触れさせ、空気中のCO成分を水に溶解させることにより製造される。空気が溶解した水は、ガス溶解器を用いて積極的に溶解させても良いし、純水や水道水を空気雰囲気にさらすことで空気を自然に溶解させてもよい。弱酸性の水または空気が溶解した水のpHは、3.5〜5.5であることが好ましい。
【0010】
請求項3に記載の発明は、水または空気が熔解した水、または電解イオン水の存在下で、少なくとも一部にGa,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体の基板表面と、表面の少なくとも前記基板と接触する部位に導電性部材を有する研磨パッドの該表面とを互いに接触させつつ相対運動させて、前記基板表面を研磨することを特徴とする研磨方法である。
請求項4に記載の発明は、前記水は、Nパージ水であることを特徴とする請求項3記載の研磨方法である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記空気が溶解した水は、前記研磨パッドに純水または水道水を供給して研磨を開始し、研磨を空気雰囲気中で行うことにより、研磨中に空気中のCOが溶解した水であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の研磨方法である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記電解イオン水のpHは、3.5〜6.0または8.0以上であることを特徴とする請求項1または3記載の研磨方法である。
電解イオン水のpHは、3.5〜5.5または8.0以上であることが好ましい。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記導電性部材は、貴金属、遷移金属、グラファイト、導電性樹脂、導電性ゴムまたは導電性有機物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の研磨方法である。
貴金属としては、白金や金が挙げられ、遷移金属としては、Ag,Fe,Ni及びCoが挙げられる。導電性有機物としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン及びポリパラフェニレンビニレンが挙げられる。
【0014】
請求項8に記載の発明は、前記Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体は、GaN,GaP,GaAs,AlN,AlP,AlAs,InN,InPまたはInAsであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の研磨方法である。
GaN,GaP,GaAs,AlN,AlP,AlAs,InN,InPまたはInAsは、酸化物が弱酸性水溶液または弱アルカリ水溶液に溶解性を有するため、本研磨方法が適用できる。
【0015】
請求項9に記載の発明は、前記研磨パッドに設けた貫通孔を通して前記基板表面に励起光を照射しながら該基板表面を研磨することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の研磨方法である。
請求項10に記載の発明は、前記研磨パッドと前記基板との間に電圧を印加しながら該基板表面を研磨することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の研磨方法である。
【0016】
請求項11に記載の発明は、前記水または電解イオン水の温度、前記基板の温度、前記研磨パッドの温度の少なくとも一つを制御しながら前記基板表面を研磨することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の研磨方法である。
【0017】
請求項12に記載の発明は、前記基板表面に励起光を照射しながら該基板表面を研磨する第1の研磨と、前記基板表面に励起光を照射することなく該基板表面を研磨する第2の研磨を連続して行うことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の研磨方法である。
請求項13に記載の発明は、前記基板表面に励起光を照射しながら該基板表面を研磨する第1の研磨と、前記基板表面に励起光を照射することなく該基板表面を研磨する第2の研磨を交互に繰り返すことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の研磨方法である。
【0018】
請求項14に記載の発明は、前記基板と前記研磨パッドとの間に電圧を印加しながら前記基板表面を研磨する第3の研磨と、前記基板と前記研磨パッドとの間に電圧を印加することなく前記基板表面を研磨する第4の研磨を連続して行うことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の研磨方法である。
請求項15に記載の発明は、前記基板と前記研磨パッドとの間に電圧を印加しながら前記基板表面を研磨する第3の研磨と、前記基板と前記研磨パッドとの間に電圧を印加することなく前記基板表面を研磨する第4の研磨を交互に繰り返すことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の研磨方法である。
【0019】
請求項16に記載の発明は、Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体の基板表面を研磨する研磨装置であって、弱酸性の水または空気が溶解した水、または電解イオン水を保持する容器と、表面の少なくとも前記基板と接触する部分に導電性部材を有し、前記水に浸漬させて前記容器内に配置される研磨パッドと、基板を保持して前記容器内の前記水に浸漬させ前記研磨パッドに接触させる基板ホルダと、前記研磨パッドと前記基板ホルダで保持した基板とを互いに接触させつつ相対移動させる移動機構とを有することを特徴とする研磨装置である。
【0020】
請求項17に記載の発明は、Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体の基板表面を研磨する研磨装置であって、表面の少なくとも前記基板と接触する部分に導電性部材を有する研磨パッドと、基板を保持して前記研磨パッドに接触させる基板ホルダと、前記研磨パッドと前記基板ホルダで保持した基板とを互いに接触させつつ相対移動させる移動機構と、前記研磨パッドと前記基板ホルダで保持した基板との接触部に弱酸性の水または空気が溶解した水、または電解イオン水を供給する水供給部とを有することを特徴とする研磨装置である。
【0021】
請求項18に記載の発明は、前記研磨パッドは多数の貫通孔を有し、前記研磨パッドに設けた多数の貫通孔を通して前記基板ホルダで保持した基板の表面に励起光を照射するように構成されていることを特徴とする請求項16または17記載の研磨装置である。
【0022】
請求項19に記載の発明は、前記研磨パッドは、多数の貫通孔を通して前記基板ホルダで保持した基板の表面に励起光を照射する光透過エリアと光非透過エリアとを有し、前記移動機構は、前記基板ホルダを前記研磨パッド上の光透過エリアと光非透過エリアとの間を往復動させるように構成されていることを特徴とする請求項16または17記載の研磨装置である。
【0023】
請求項20に記載の発明は、前記研磨パッドと前記基板ホルダで保持した基板とを結び、内部に電源を介装した導線を更に有することを特徴とする請求項16乃至19のいずれかに記載の研磨装置である。
【0024】
請求項21に記載の発明は、前記空気が溶解した水は、前記研磨パッドに純水または水道水を供給して研磨を開始し、研磨を空気雰囲気中で行うことにより、研磨中に空気中のCOが溶解した水であることを特徴とする請求項16乃至20のいずれかに記載の研磨装置である。
【0025】
請求項22に記載の発明は、前記導電性部材は、貴金属、遷移金属、グラファイト、導電性樹脂、導電性ゴムまたは導電性有機物であることを特徴とする請求項16乃至21のいずれかに記載の研磨装置である。
請求項23に記載の発明は、前記Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体は、GaN,GaP,GaAs,AlN,AlP,AlAs,InN,InPまたはInAsであることを特徴とする請求項16乃至22のいずれかに記載の研磨装置である。
【0026】
請求項24に記載の発明は、前記弱酸性の水または空気が溶解した水のpHは、3.5〜6.0であることを特徴とする請求項16乃至23のいずれかに記載の研磨装置である。
請求項25に記載の発明は、前記電解イオン水のpHは、3.5〜6.0または8.0以上であることを特徴とする請求項16乃至24のいずれかに記載の研磨装置である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、Ga元素等を含有する化合物半導体の基板表面に対する平坦度を高めた表面仕上げ研磨を行うことができ、これによって、例えば、処理溶液中での光の照射及び/またはバイアス電位の印加を伴う研磨と組合せることによって、つまり、処理溶液中での光の照射及び/またはバイアス電位の印加を伴う研磨レートの高い研磨を行った後、平坦度を高めた表面仕上げ研磨を行うことによって、Ga元素等を含有する化合物半導体の基板表面が所望の平坦度を有するように研磨するのに要する時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の研磨装置を備えた平坦化システムの全体構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す平坦化システムに備えられている研磨装置の概要を示す断面図である。
【図3】図2に示す研磨装置の基板ホルダを示す拡大断面図である。
【図4】図2に示す研磨装置の研磨定盤を示す拡大断面図である。
【図5】研磨定盤の他の例を示す拡大断面図である。
【図6】図1に示す平坦化システムに備えられている本発明の実施形態の研磨装置の概要を示す断面図である。
【図7】図6に示す研磨装置の研磨パッドを示す拡大断面図である。
【図8】図6に示す研磨装置でGaN基板を研磨した時の研磨レートと研磨時間の関係を示すグラフである。
【図9】(a)は、研磨前のGaN基板表面の干渉顕微鏡像を示す図で、(b)は、同じく基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を示す図である。
【図10】(a)は、第1段階の研磨後のGaN基板表面の干渉顕微鏡像を示す図で、(b)は、同じく基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を示す図である。
【図11】(a)は、第2段階の研磨後のGaN基板表面の干渉顕微鏡像を示す図で、(b)は、同じく基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を示す図である。
【図12】(a)は、第3段階の研磨後のGaN基板表面の干渉顕微鏡像を示す図で、(b)は、同じく基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を示す図である。
【図13】(a)は、実施例1における研磨後のGaN基板表面の原子間力顕微鏡像を示す図で、(b)は、同じく基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を示す図である。
【図14】(a)は、比較例1における研磨後のGaN基板表面の原子間力顕微鏡像を示す図で、(b)は、同じく基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を示す図である。
【図15】(a)は、実施例2における研磨後のGaN基板表面の原子間力顕微鏡像を示す図で、(b)は、同じく基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を示す図である。
【図16】本発明の他の実施形態の研磨装置の概要を示す断面図である。
【図17】図16に示す研磨装置を使用しGaN基板表面に励起光を照射しながら研磨した時における研磨後のGaN基板表面の原子間力顕微鏡像を示す図である。
【図18】本発明の更に他の実施形態の研磨装置の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の例では、GaNからなる単体基板(GaN基板)の表面を研磨して該表面を平坦化するようにした例を示す。なお、サファイア若しくはSiC等の基材表面にGaNを載せた接合基板(エピタキシャル基板)にも適用でき、GaN基板若しくはエピタキシャル基板に不純物(ドーパント)を注入し、p型若しくはn型とした基板にも適用できる。また、GaN基板若しくはエピタキシャル基板に不純物(ドーパント)を注入し、基板表面に配線パターンを形成した基板、配線パターンを形成した後に更に活性化アニールを行った基板にも適用できる。更には、GaN以外のGaP,GaAs,AlN,AlP,AlAs,InN,InPまたはInAs等の化合物半導体にも適用できる。
【0030】
図1は、本発明の実施形態の研磨装置を備えた平坦化システムの全体構成を示す平面図である。この平坦化システムは、GaN基板の表面を研磨して該表面を平坦化するためのものである。図1に示すように、この平坦化システムは、略矩形状のハウジング1を備えており、ハウジング1の内部は、隔壁1a,1b,1cによって、ロード/アンロード部2と研磨部3と洗浄部4とに区画されている。これらのロード/アンロード部2、研磨部3及び洗浄部4は、それぞれ独立に組立てられて独立に排気される。
【0031】
ロード/アンロード部2は、多数の基板(被加工物)をストックする基板カセットを載置する1つ以上(この例では3つ)のフロントロード部200を備えている。これらのフロントロード部200は、平坦化システムの幅方向(長手方向と垂直な方向)に隣接して配列されている。フロントロード部200には、オープンカセット、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッド、又はFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができる。ここで、SMIF、FOUPは、内部に基板カセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
【0032】
ロード/アンロード部2には、フロントロード部200の並びに沿って走行機構21が敷設されており、この走行機構21上に基板カセットの配列方向に沿って移動可能な第1搬送機構としての第1搬送ロボット22が設置されている。第1搬送ロボット22は、走行機構21上を移動することによって、フロントロード部200に搭載された基板カセットにアクセスできるようになっている。この第1搬送ロボット22は、上下に2つのハンドを備えており、例えば、上側のハンドを基板カセットに基板を戻すときに使用し、下側のハンドを加工前の基板を搬送するときに使用することで、上下のハンドを使い分けることができるようになっている。
【0033】
ロード/アンロード部2は、最もクリーンな状態を保つ必要がある領域であるため、ロード/アンロード部2の内部は、装置外部、研磨部3、及び洗浄部4のいずれよりも高い圧力に常時維持されている。また、第1搬送ロボット22の走行機構21の上部には、HEPAフィルタやULPAフィルタなどのクリーンエアフィルタを有するフィルタファンユニット(図示せず)が設けられており、このフィルタファンユニットによりパーティクルや蒸気、ガスが除去されたクリーンエアが常時下方に向かって吹出ている。
【0034】
研磨部3は、基板表面(被加工面)の研磨が行われる領域であり、第1段階の研磨と第2段階の研磨を連続して行う2台の研磨装置30A,30Bと、第3段階の研磨を行う本発明の実施形態に係る2台の研磨装置30C,30Dを内部に有している。これらの研磨装置30A〜30Dは、平坦化システムの長手方向に沿って配列されている。
【0035】
研磨装置30A,30Bは、図2に示すように、Gaイオンを含有する液性が中性域のpH緩衝溶液からなる処理溶液130を内部に保持する容器132を有している。容器132の上方には、処理溶液130を容器132内に供給する処理溶液ノズル133が配置されている。この処理溶液130として、例えばpH6.86の燐酸緩衝溶液に、処理溶液130のGaイオンを飽和状態に近づけるために、例えば濃度10ppm以上のGaイオンを添加した溶液が使用される。液性が中性域のpH緩衝溶液のpH(室温25℃での測定換算)は、例えば6.0〜8.0である。
【0036】
容器132の底部には、光透過性の研磨定盤134が取り付けられていており、容器132の内部に処理溶液130を注入した時に、研磨定盤134の上方が処理溶液130で満たされるようになっている。研磨定盤134は、例えば光透過性に優れた固体酸性触媒である石英ガラスによって構成されている。研磨定盤134として、固体塩基性触媒(塩基性の固体触媒)を使用しても良く、また、研磨定盤134の表面のみに固体または塩基性の固体触媒層を有するものを使用しても良い。
【0037】
容器132は、回転自在な回転軸136の上端に連結されており、容器132の底板には、回転軸136の周囲に沿ってリング状に延びて研磨定盤134によって閉塞された開口部132aが形成されている。この開口部132aの直下方に位置して、励起光、好ましくは紫外線を放射する光源140が配置されている。これによって、光源140から放射された励起光、好ましくは紫外線は、容器132の開口部132a内を通過した後、研磨定盤134の内部を透過して、該研磨定盤134の上方に達するようになっている。
【0038】
容器132の上方に位置して、表面を下向きにして、例えばGaN基板等の基板142を着脱自在に保持する基板ホルダ144が配置されている。基板ホルダ144は、上下動及び回転自在な主軸146の下端に連結されている。この例では、容器132を回転させる回転軸136及び基板ホルダ144を回転させる主軸146によって、研磨定盤134と基板ホルダ44で保持した基板(GaN基板)142とを相対移動させる移動機構が構成されているが、どちらか一方を設けるようにしてもよい。
【0039】
さらに、この例では、基板ホルダ144で保持した基板142と研磨定盤134との間に電圧を印加する電源148が備えられている。この電源148の陽極から延びる導線152aには、スイッチ150が介装されている。
【0040】
また、この例では、容器132の中に処理溶液130を満たして研磨定盤134と基板ホルダ144で保持された基板142が浸漬しつつ加工する、いわゆる浸漬型が開示されているが、研磨定盤134の表面に処理溶液ノズル133から処理溶液130を滴下することにより基板142と研磨定盤134の表面に処理溶液130を供給して、処理溶液存在下で加工する滴下型の加工装置でも良い。
【0041】
図3に示すように、基板ホルダ144は、処理溶液130が内部に浸入することを防止するカバー160を有しており、このカバー160の内部で、主軸146の下端に連結した駆動フランジ162に、自在継手164及びばね166を有する回転伝達部168を介して、金属製のホルダ本体170が連結されている。
【0042】
ホルダ本体170の下部周囲には、リテーナリング172が昇降自在に配置され、ホルダ本体170の下面(基板保持面)には、該下面と導電性ゴム174との間に圧力空間176が形成できるように、導電性ゴム174が取り付けられている。圧力空間176には、ホルダ本体170内を延びるエア導入路を通じて、エア導入管178が接続されている。更に、金属製のホルダ本体170のフランジ部には引出し電極180が設けられ、この引出し電極180に電源148の陽極から延びる導線152aが接続されている。
【0043】
リテーナリング172と研磨定盤134が接触する部分において、リテーナリング172の表面の磨耗によりリテーナリング172の表面材質が研磨定盤134の表面に付着するのを抑制するために、リテーナリング172表面のうち少なくとも研磨定盤134と接触する部分は、石英、サファイア若しくはジルコニア等のガラス、又はアルミナ、ジルコニア若しくは炭化珪素等のセラミックスのいずれかで構成されることが好ましい。導電性ゴム174としては、例えば導電性クロロプレンゴム、導電性シリコーンゴムまたは導電性フッ素ゴムが挙げられる。
【0044】
これによって、基板ホルダ144のホルダ本体170の下面(基板保持面)に基板144の裏面を吸着等によって保持した時に、基板144の裏面と導電性ゴム174とが接触して基板142の裏面に通電され、更に、この基板142の裏面への通電を維持したまま、圧力空間176内に空気を導入して、基板142を研磨定盤134に向けて押圧できるように構成されている。
【0045】
このような構成によって、基板142に簡易かつ低抵抗で通電しつつ、基板142を基板ホルダ144で保持することができる。なお、導電性ゴム174に接触させて基板142を基板ホルダ144で保持する時、導電性ゴム174と基板142との間に極導電性グリースを充填できるようにすることが好ましい。
【0046】
図4に示すように、研磨定盤134の上面の前記容器132の開口部132aに対応する位置には、多数の溝134aが設けられ、この多数の溝134aの底部に金属配線を構成する金属膜154が蒸着されており、この金属膜(金属配線)154に電源148の陰極から延びる導線152bが接続されている。金属膜154の材質は、耐腐食性のある白金または金であることが好ましい。また、研磨定盤134の上面に設けられる溝134aは、同心円状であること好ましいが、スパイラル状、放射状または格子状であってもよい。なお、図5に示すように、研磨定盤134の上面に設けた多数の溝134aの底部に、金や白金等からなる金属線(金属配線)156を埋め込むようにしてもよい。
【0047】
基板ホルダ144の内部には、該ホルダ144で保持した基板142の温度を制御する温度制御機構としてのヒータ158(図2参照)が回転軸146内に延びて埋設されている。容器132の上方に配置された処理溶液供給ノズル133には、容器132の内部に供給する処理溶液130を所定の温度に制御する温度制御機構としての熱交換器が必要に応じて設置される。更に、研磨定盤134の内部には、研磨定盤134の温度を制御する温度制御機構としての流体流路(図示せず)が設けられている。
【0048】
アレニウスの式で知られるように、化学反応は反応温度が高ければ、それだけ反応速度は大きくなる。このため、基板142、処理溶液130、研磨定盤134の温度の少なくとも1つを制御して、反応温度を制御することで、加工速度を変化させながら、加工速度の安定性を向上させることができる。
【0049】
研磨装置30A,30Bには、図1に示すように、研磨定盤134の表面(上面)を良好な平坦度と適度なラフネスを有するようにコンディショニングする、例えば研磨パッドからなるコンディショニング機構(コンディショナー)190が備えられている。つまり、研磨定盤134の表面(上面)は、このコンディショニング機構(コンディショナー)190によって、PV(Peak-Valley)0.1〜1μm程度の表面粗さを有するようにコンディショニングされる。この時、必要に応じて、研磨定盤134の表面に砥粒を含むスラリが供給される。
【0050】
更に、研磨装置30A,30Bには、前記光源140を一部とした光電流式ダメージ量測定装置201と、同じく前記光源140を一部としたフォトルミネッセンス光式ダメージ量測定装置202が備えられている。つまり、電源148から延びて基板ホルダ144で保持して基板142に接続される導線152aと電源148から延びて研磨定盤134の金属膜(金属配線)154に接続される導線152bとを繋ぐ導線152cと、この導線152c内に設置した電流計204と、前記光源140で光電流式ダメージ量測定装置201が構成されている。導線152cにはスイッチ206が介装されている。また、基板134の表面で反射したフォトルミネッセンス光をスペクトル解析し、基板142のバンドギャップに相当する波長(例えば、365nm)の強度を測定する分光器208と前記光源140でフォトルミネッセンス光式ダメージ量測定装置202が構成されている。
【0051】
なお、この例では、基板142に励起光を照射して該基板表面を酸化させる光源140を光電流式ダメージ量測定装置201及びフォトルミネッセンス光式ダメージ量測定装置202の光源としても使用するようにしているが、光電流式ダメージ量測定装置201及びフォトルミネッセンス光式ダメージ量測定装置202専用の光源を光源140とは別に設けるようにしてもよい。
【0052】
本発明の実施形態の研磨装置30C,30Dは、図6に示すように、上面を平坦にした回転自在な回転テーブル230と、この回転テーブル230の周縁部に立設されて回転テーブル230の上面との間に内部に水232を保持する容器234を形成するリング状の堰部材236を有している。この水232として、例えば、弱酸性の水または空気が溶解した水、または電解イオン水が使用される。この弱酸性の水または空気が溶解した水のpHは、例えば3.5〜6.0、好ましくは3.5〜5.5であり、電解イオン水のpHは、例えば3.5〜6.0、好ましくは3.5〜5.5、または8.0以上である。
【0053】
このpH3.5〜6.0の弱酸性の水は、酸、pH緩衝剤または酸化剤(H,オゾン水,過硫酸塩等)を添加することなく、例えば純水や水道水にCOガスまたは空気中のCO等を溶解させることで製造される。このように、酸、pH緩衝剤または酸化剤(H,オゾン水,過硫酸塩等)を添加することなく、pHを3.5〜6.0にした弱酸性の水を使用することで、研磨レートの低下を抑えつつ、基板142の表面(被研磨面)にエッチピットが発生することを防止した研磨を行うことができる。また、この方法では酸、pH緩衝剤または酸化剤等の廃液処理が必要となる薬品を使用しないため、廃液処理に要するコストを削減できる他、研磨後の洗浄工程を簡易化できるといった特徴も有する。
【0054】
この例では、回転テーブル230の上方に位置して、純水供給源(図示せず)から延び、内部にガス溶解器238と熱交換器240を設置した水供給ライン(水供給部)241が配置されている。これによって、純水供給源から送られてくる純水に、ガス溶解器236でCO等のガスまたは空気を溶解させて、pHを3.5〜6、好ましくは3.5〜5.5にした水232を堰部材236で区画された容器234内に注入し、必要に応じて、容器234に注入される水232の温度を熱交換器240で所定の温度に調整するようにしている。なお、研磨初期には純水もしくは水道水を供給し、空気雰囲気中で研磨を行うことで、研磨と同時に純水もしくは水道水に空気中のCOを溶解させて、pHが3.5〜6.0、好ましくは3.5〜5.5になるようにしても良い。
【0055】
この例では、純水に、CO等のガスまたは空気を溶解させて、pHを3.5〜6、好ましくは3.5〜5.5にした水232を使用しているが、この水232の代わりに、水道水または純水にNをパージさせた中性領域のNパージ水を使用しても良い。このように、中性領域のNパージ水を用いた場合、pHを3.5〜6、好ましくは3.5〜5.5にした水232を使用した場合と比較して、加工レートは遅くなるが、同等の被加工面が得られる。
【0056】
回転テーブル230の上面には、堰部材236で周囲を区画された容器234の内部に位置して、研磨部材である研磨パッド242が取り付けられ、容器234の内部に水232を注入した時に、研磨パッド242の上方が水232で満たされるようになっている。回転テーブル230の内部には、回転テーブル230の温度を制御する流体流路230aが設けられている。
【0057】
堰部材236で周囲を区画された容器234の上方に位置して、表面を下向きにして、例えばGaN基板等の基板142を着脱自在に保持する基板ホルダ244が配置され、基板ホルダ244は、上下動及び回転自在な主軸246の下端に連結されている。この基板ホルダ244及び主軸246は、図3に示す基板ホルダ144及び主軸146と同様な構成を有しているので、ここでは重複した説明を省略する。
【0058】
研磨パッド242は、図7に示すように、例えばシェアA硬度50〜90で、表面に同心状のまたはスパイラル状等の溝260aを設けた弾性体からなる基材260と、この基材260の表面に真空蒸着等によって形成された中間層262と、この中間層262の表面に真空蒸着等によって形成された導電性部材264を有している。このように、弾性体からなる基材260の表面に、中間層262を介在させつつ、導電性部材264を設けることで、基板142の表面(被研磨面)の長/短周期の凹凸に導電性部材264を容易に追従させることができる。
【0059】
基材260の厚さは、例えば0.5〜5mmで、基材260を構成する弾性材としては、例えばゴム、樹脂、発泡性樹脂または不織布等が挙げられる。また、弾性率の異なる2層以上の弾性材を重ね合わせて基材を構成するようにしてもよい。
【0060】
中間層262は、例えば厚さが1〜10nmで、基材260と導電性部材264との密着性を向上させるために基材260と導電性部材264との間に介在され、基材260と導電性部材264の両方と密着性が良好な、例えばクロムやグラファイト系(SP2結合)のカーボンからなる。この中間層262を基材260の表面に真空蒸着で形成する場合、高温による基材260の膨張や変質を抑制するため、イオンスパッタ蒸着法を用いることが好ましい。このことは、中間層262の表面に真空蒸着法で導電性部材264を形成する場合も同様である。
【0061】
導電性部材264は、例えば厚さ100〜1000nmである。これは、厚さが100nm以下では、1時間程度の研磨で導電性部材264が磨耗して実用的ではなく、また厚さが1000nm以上では、研磨時に導電性部材264の表面にひび割れが発生するおそれがあるためである。導電性部材264としては、白金が好ましく使用されるが、上記水232に不溶もしくは微溶(溶解速度10nm/h以下)である金等の他の貴金属、遷移金属(Ag,Fe,Ni,Co等)、グラファイト、導電性樹脂、導電性ゴムまたは導電性有機物等を使用しても良い。導電性部材に遷移金属を用いる場合には、前記供給水として、純水もしくは水道水を電気分解し陰極で生成する水素を溶解した水(水素水)を用いることが好ましく、これにより、水中の溶存酸素による該導電性部材の腐食を抑制することができる。
【0062】
アレニウスの式で知られるように、化学反応は反応温度が高ければ、それだけ反応速度は大きくなる。このため、基板142、水232、回転テーブル230の温度の少なくとも1つの制御して、反応温度を制御することで、加工速度を変化させながら、加工速度の安定性を向上させることができる。
【0063】
研磨装置30C,30Dには、図1に示すように、研磨定盤134の表面(上面)を良好な平坦度と適度なラフネスを有するようにコンディショニングする、例えば研磨パッドからなるコンディショニング機構(コンディショナー)190が備えられている。
【0064】
この研磨装置30C,30Dによれば、基板ホルダ244で保持した基板142と研磨パッド242とを水232に浸漬させながら、基板142の表面と研磨パッド242の白金等の導電性部材264とを互いに接触させつつ相対運動させることで基板142の表面を研磨することができる。なお、研磨パッド242の上面に水供給ライン241から水232を供給することで、基板ホルダ244で保持した基板142と研磨パッド242との間に水232を介在させつつ、研磨を行うようにしても良い。
【0065】
この研磨のメカニズムは以下のように考えられる。つまり、基板142の表面と研磨パッド242の白金等の導電性部材264とを互いに接触させつつ相対運動させると、接触部でひずみが発生し、価電子帯電子が伝導帯へと励起されて電子・正孔対が生成される。次に、伝導帯に励起した電子は(仕事関数が大きい)白金等の導電性部材264に移動し、基板表面に正孔が残る。残った正孔に水232中のOHイオンまたはHO分子が作用し、この結果、接触部のみが酸化される。すると、Ga,Al,Inの酸化物は、二酸化炭素溶液等の弱酸や弱アルカリに可溶なため、接触部に形成された酸化物は、水232の内部に溶解して基板142の表面から除去される。
【0066】
基板142の表面と研磨パッド242の白金等の導電性部材264との接触圧は、基板142の反りを解消するとともに、基板142がスリップアウトしたり、研磨パッド242の導電性部材264が基材260から剥がれたりすることを防止するため、例えば0.1〜1.0kgf/cmであることが好ましく、0.4kgf/cm程度であることが特に好ましい。
【0067】
図6に示す研磨装置を使用してGaN基板を研磨した時の研磨レートの研磨時間との関係を図8に示す。水232として空気が溶けた純水を使用し、研磨パッド242として白金を蒸着させた研磨パッドをそれぞれ使用した。図8から、研磨開始時の研磨レートは、22nm/h程度であるが、研磨が進行するにつれて研磨レートが徐々に減少し、研磨終了時には研磨レートがほぼ0nm/hになることが判る。これは、研磨初期の表面が荒れた状態では研磨により除去される部分が多いために研磨レートが高いが、表面が平坦になると研磨により除去される部分が少なくなるために研磨レートが低くなるためであると考えられる。
【0068】
なお、研磨パッド242の基材260及び中間層262を共に導電性部材で構成し、更に図6に仮想線で示すように、電源270の陽極から延びる導線272aを基板ホルダ244で保持した基板142に、陰極から延びる導線272bを研磨パッド242の基材260にそれぞれ接続し、研磨パッド242の導電性部材264と基板ホルダ244で保持した基板142との間に電圧を印加しながら、基板142の表面の研磨を行うようにしてもよい。これにより、研磨レートを高めることができる。
【0069】
図1に戻って、研磨装置30A,30Bと洗浄部4との間には、長手方向に沿った4つの搬送位置(ロード/アンロード部2側から順番に第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、第4搬送位置TP4とする)の間で基板を搬送する第1(直動)搬送機構としての第1リニアトランスポータ5が配置されている。この第1リニアトランスポータ5の第1搬送位置TP1の上方には、ロード/アンロード部2の第1搬送ロボット22から受け取った基板を反転する反転機31が配置されており、その下方には上下に昇降可能なリフタ32が配置されている。また、第2搬送位置TP2の下方には上下に昇降可能なプッシャ33が、第3搬送位置TP3の下方には上下に昇降可能なプッシャ34が、第4搬送位置TP4の下方には上下に昇降可能なリフタ35がそれぞれ配置されている。
【0070】
研磨装置30C,30Dの側方には、第1リニアトランスポータ5に隣接して、長手方向に沿った3つの搬送位置(ロード/アンロード部2側から順番に第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、第7搬送位置TP7とする)の間で基板を搬送する第2(直動)搬送機構としての第2リニアトランスポータ6が配置されている。この第2リニアトランスポータ6の第5搬送位置TP5の下方には上下に昇降可能なリフタ36が、第6搬送位置TP6の下方にはプッシャ37が、第7搬送位置TP7の下方にはプッシャ38がそれぞれ配置されている。更に、研磨装置30Cとプッシャ37との間には、桶と純水ノズルとを有する純水置換部192が、研磨装置30Dとプッシャ38との間にも、桶と純水ノズルとを有する純水置換部194が配置されている。
【0071】
研磨時にスラリ等を使用することを考えるとわかるように、研磨部3は最もダーティな(汚れた)領域である。したがって、この例では、研磨部3内のパーティクルが外部に飛散しないように、定盤等の研磨部の周囲から排気が行われており、研磨部3の内部の圧力を、装置外部、周囲の洗浄部4、ロード/アンロード部2よりも負圧にすることでパーティクルの飛散を防止している。また、通常、定盤等の研磨部の下方には排気ダクト(図示せず)が、上方にはフィルタ(図示せず)がそれぞれ設けられ、これらの排気ダクト及びフィルタを介して清浄化された空気が噴出され、ダウンフローが形成される。
【0072】
洗浄部4は、基板を洗浄する領域であり、第2搬送ロボット40と、第2搬送ロボット40から受け取った基板を反転する反転機41と、基板を洗浄する3つの洗浄ユニット42,43,44と、洗浄後の基板を純水でリンスしてスピンドライする乾燥ユニット45と、反転機41、洗浄ユニット42,43,44及び乾燥ユニット45の間で基板を搬送する、走行自在な第3搬送ロボット46を備えている。これらの第2搬送ロボット40、反転機41、洗浄ユニット42〜44及び乾燥ユニット45は、長手方向に沿って直列に配置され、これらの第2搬送ロボット40、反転機41、洗浄ユニット42〜44及び乾燥ユニット45と、第1リニアトランスポータ5との間に、第3搬送ロボット46が走行自在に配置されている。これらの洗浄ユニット42〜44及び乾燥ユニット45の上部には、クリーンエアフィルタを有するフィルタファンユニット(図示せず)が設けられており、このフィルタファンユニットによりパーティクルが除去されたクリーンエアが常時下方に向かって吹出ている。また、洗浄部4の内部は、研磨部3からのパーティクルの流入を防止するために研磨部3よりも高い圧力に常時維持されている。
【0073】
研磨部3を包囲する隔壁1aには、反転機31と第1搬送ロボット22との間に位置して、シャッタ50が設置されており、基板の搬送時にはシャッタ50を開いて、第1搬送ロボット22と反転機31との間で基板の受け渡しが行われる。また、研磨部3を包囲する隔壁1bには、CMP装置30Bと対面する位置に位置してシャッタ53が、研磨装置30Cと対面する位置に位置してシャッタ54がそれぞれ設置されている。
【0074】
次に、このような構成の平坦化システムを用いて基板の表面を平坦化する処理について説明する。
【0075】
フロントロード部200に搭載した基板カセットから、1枚の基板を第1搬送ロボット22で取出して、反転機31に搬送する。反転機31は、基板を180°反転させた後、第1搬送位置TP1のリフタ32に乗せる。第2トランスポータ5は、横移動を行って、リフタ32上の基板を第1搬送位置TP1または第3搬送位置TP3の一方に搬送する。そして、研磨装置30Aは、その基板ホルダ144でプッシャ32から、研磨装置30Bは、その基板ホルダ144でプッシャ34から基板をそれぞれ受取って、基板表面の第1段階の研磨と第2段階の研磨を行う。
【0076】
つまり、研磨装置30Aでは、表面(被処理面)を下向きにしてGaN基板等の基板142を保持した基板ホルダ144を容器132の上方に移動させ、基板ホルダ144を下降させて、基板142を容器132の内部に保持した処理溶液130中に浸漬させる。このように基板142と研磨具134との間に処理溶液130が存在する状態で、光源140から励起光、好ましくは紫外線を放射して、基板142の表面(下面)に励起光、好ましくは紫外線を照射する。この時に照射する励起光の波長は、被加工物のバンドギャップに相当する波長以下、GaNのバンドギャップは3.42eVであるので、GaN基板を加工する場合には、365nm以下の、例えば312nmであることが好ましい。これにより、GaN基板を加工する場合には、GaNを酸化させて、GaN基板の表面にGa酸化物(Ga)を生成させる。
【0077】
この時、電源148のスイッチ150をONにして、研磨定盤134と基板ホルダ144で保持した基板142との間に、研磨定盤134が陰極となる電圧を印加する。これにより、GaN基板を加工する場合に、GaN基板の表面のGa酸化物(Ga)の生成が促進される。
【0078】
次に、光源140から励起光、好ましくは紫外線を放射したまま、更には、研磨定盤134と基板142との間に電圧を印加したまま、回転軸136を回転させて研磨定盤134を回転させ、同時に基板ホルダ144を回転させて基板142を回転させながら下降させ、基板142の表面に研磨定盤134の表面を、好ましくは0.1〜1.0kgf/cm程度の面圧で接触させる。これは、面圧0.1kgf/cm未満であれば、基板142の反りを矯正して基板142全体を均等に研磨できなくなる可能性があり、面圧が1.0kgf/cm以上であれば、基板142の表面に機械的な欠陥が生じてしまう可能性があるためである。これによって、GaN基板等の基板142の表面に形成されたGa酸化物の研磨定盤134と接触する部位、つまり凹凸を有する基板142の表面の該凸部先端に形成されたGa酸化物を選択的に除去し、主に基板142の表面ダメージ除去を目的とした第1段階の研磨を行う。この第1段階の研磨における研磨レートは、例えば〜1000nm/h程度である。
【0079】
この第1段階の研磨時に、例えば、フォトルミネッセンス光式ダメージ量測定装置202の分光器208で基板134の表面で反射した光のベクトル解析を行ってフォトルミネッセンス光を測定し、これによって、第1段階の研磨の終点を検知する。
【0080】
第1段階の研磨が終点した時、光源140からの励起光、好ましくは紫外線の放射を継続したまま、スイッチ150をオフにして、研磨定盤134と基板142との間への電圧の印加を停止し、これによって、主に基板142の表面荒さの改善を目的とした第2段階の研磨を行う。この第2段階の研磨における研磨レートは、例えば〜200nm/h程度である。この第2段階の研磨時に、例えば、スイッチ206をONにして、基板142と研磨定盤134の金属膜(金属配線)154とを繋ぐ導線152cに沿って流れる電流を光電流式ダメージ量測定装置201の電流計204で測定し、これによって、第2段階の研磨の終点を検知する。
【0081】
第2段階の研磨が終了した後、光源140からの励起光、好ましくは紫外線の放射を停止し、基板ホルダ144を上昇させた後、基板142の回転を停止させる。そして、基板表面を、必要に応じて純水でリンスした後、第2搬送位置TP2でプッシャ33に受渡す。第1トランスポータ5は、プッシャ33上の基板をリフタ35に搬送する。研磨装置30Bにあっても同様に、その基板ホルダ144でプッシャ34から基板142を受取って、第1段階の研磨及び第2段階の研磨を行い、しかる後、研磨後の基板142を第4搬送位置TP4でリフタ35に受渡す。
【0082】
第2搬送ロボット40は、リフタ35から基板から受取り、第5搬送位置TP5でリフタ36に乗せる。第2トランスポータ6は、横移動を行って、リフタ36上の基板を第6搬送位置TP6または第7搬送位置TP7の一方に搬送する。
【0083】
研磨装置30Cは、その基板ホルダ244でプッシャ37から基板を受取って第3段階の研磨を行う。つまり、表面(被処理面)を下向きにしてGaN基板等の基板142を保持した基板ホルダ244を容器234の上方に移動させ、基板ホルダ244を回転させながら下降させて、基板142を容器234の内部に保持した水232の中に浸漬させ、更に、下降させて、回転中の研磨パッド242の白金等の導電性部材264に、例えば100〜1000hPa(0.1〜1.0kgf/cm)、好ましくは400hPa(0.4kgf/cm)程度の接触圧(押圧力)で基板142の表面を接触させる。このように、水232の中で、基板142の表面と研磨パッド242の白金等の導電性部材264とを互い接触させつつ相対運動させ、これによって、基板表面の表面仕上げを目的とした第3段階の研磨を行う。なお、水供給ライン241を通して、研磨パッド242の白金等の導電性部材264と基板142の表面との間に水232を供給しながら、第3段階の研磨を行っても良い。
【0084】
第3段階の研磨を終了した後、基板表面に残った水232を純水置換部192で純水に置換して第6搬送位置TP6に戻す。研磨装置30Dにあっても同様に、その基板ホルダ244でプッシャ38から基板142を受取って、第3段階の研磨(表面仕上げ研磨)を行い、研磨加工後の基板表面に残った水232を純水置換部194で純水に置換して第7搬送位置TP7に戻す。しかる後、純水置換後の基板を、第2トランスポータ6を横移動させて、第5搬送位置TP5に移動させる。
【0085】
第2搬送ロボット40は、第5搬送位置TP5から基板を取出し、反転機41に搬送する。反転機41は、基板を180°反転させた後、第1洗浄ユニット42に搬送する。第3搬送ユニット46は、基板を第1洗浄ユニット42から第2洗浄ユニット43に搬送し、ここで、基板を洗浄する。
【0086】
そして、第3搬送ロボット46は、洗浄後の基板を第3洗浄ユニット44に搬送して、ここで基板の純水洗浄を行った後、乾燥ユニット45に搬送し、ここで基板を純水リンスした後、高速回転させてスピン乾燥させる。第1搬送ロボット22は、スピン乾燥後の基板を乾燥ユニット45から受取り、フロントロード部200に搭載した基板カセットに戻す。
【0087】
例えば、研磨前のGaN基板表面の干渉顕微鏡像を図9(a)に、基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を図9(b)にそれぞれ示す。GaN基板の表面に対し、前述の励起光の照射と電圧の印加を伴う第1段階の研磨を研磨レート〜1000nm/hで5分間行った時の基板表面の干渉顕微鏡像を図10(a)に、基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を図10(b)にそれぞれ示す。GaN基板の表面に対し、前述第1段階の研磨を行った後、前述の励起光の照射のみを伴う第2段階の研磨を研磨レート〜200nm/hで30分間行った時の基板表面の干渉顕微鏡像を図11(a)に、基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を図11(b)にそれぞれ示す。更に、GaN基板の表面に対し、前述の第1段階の研磨及び第2段階の研磨を行った後、導電性部材として白金を、水として純水にCOを溶解させてpHを5.5にしたものを、それぞれ使用した前述の第3段階の研磨を研磨レート〜10nm/hで180分行った時の基板表面の干渉顕微鏡像を図12(a)に、基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を図12(b)にそれぞれ示す。
【0088】
図9〜図12により、表面粗さRa:5.271μmであったGaN基板の表面が、第1段階の研磨を5分間行うことで、表面粗さRa:4.17となり、第2段階の研磨を30分間行うことで、表面粗さRa:0.363μmとなり、更に第3段階の研磨を180分間行うことで表面粗さRa:0.083μmとなる。これによって、約215分の研磨で表面の十分な平坦度を有する基板が得られることが判る。
【実施例1】
【0089】
基板表面に対し、励起光の照射と電圧の印加を伴う第1段階の研磨と、励起光の照射のみを伴う第2段階の研磨を順次行ったGaN基板を用意した。そして、このGaN基板の表面に対し、図6に示す研磨装置を使用して第3段階の研磨(表面仕上げ研磨)を行った。この図6に示す研磨装置において、導電性部材264として白金を使用して、ガス溶解器238で純水に空気中のCOを溶解させてpHを5.5とした水232を堰部材236で区画された容器234内に注入させた。そして、研磨時間3時間、回転テーブル230の回転速度を10rpm、基板表面と導電性部材(白金)236との接触圧(押圧力)を0.4kgf/cmとして、3時間の研磨を行った。
【0090】
研磨後の基板表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図13(a)に、基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を図13(b)にそれぞれ示す。図13(a)から結晶欠陥に依存するエッチピットは観察されず、また図13(b)から明瞭なテラス−ステップ構造が観察され、原子レベルで平坦かつダメージレスの研磨が行われたことが判る。
【比較例1】
【0091】
ガス溶解器238で純水に空気中のCOを溶解させてpHを5.5とした水232の代わりに、HFを溶解させたHF溶解液を使用し、その他は実施例1と同様な条件でGaN基板表面の研磨を行った。
研磨後の基板表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図14(a)に、基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を図14(b)にそれぞれ示す。図14(b)から明瞭なテラス−ステップ構造が観察されるものの、図14(a)からテラス上に深さ0.5nmのエッチピットが帯状に観察されることが判る。これは結晶欠陥等が腐食性の強いHFにより選択的にエッチングされた結果であると考えられる。
【実施例2】
【0092】
GaN単体からなるGaN基板の代わりに、サファイア基板の表面にGaNを載せた接合基板(エピタキシャル基板)使用し、その他は実施例1と同様な条件でGaN表面の研磨を行った。
研磨後の基板表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を図15(a)に、基板表面の距離(Distance)と高さ(Height)の関係を図15(b)にそれぞれ示す。図15(a)から結晶欠陥に依存するエッチピットは観察されず、また図15(b)から明瞭なテラス−ステップ構造が観察され、原子レベルで平坦かつダメージレスの研磨が行われたことが判る。
ここでは、サファイア基板の表面にGaNを載せた接合基板の研磨結果について説明しているが、SiC基板の表面にGaNを載せた接合基板、Si基板の表面にGaNを載せた接合基板、及びGaAs基板の表面にGaNを載せた接合基板でも同様に研磨することができる。
【0093】
なお、上記例では、第1段階の研磨と第2段階の研磨を同じ研磨装置に行うようにしているが、第1段階の研磨と第2段階の研磨を別々の研磨装置に行ってももい。また、第1段階の研磨と第2段階の研磨を行った基板に対して、第3段階の研磨を行うようにしているが、第1段階または第2段階の一方の研磨を行った基板に対して、第3段階の研磨を行うようにしても良い。
【0094】
更に、CMP後、イオン注入後、活性化アニール後またはRIE後の基板に対し、図6に示す研磨装置を使用して、表面仕上げ研磨(第3段階の研磨)を行うようにしても良い。
【0095】
図16は、本発明の他の実施形態の研磨装置30Eの概要を示す断面図である。この研磨装置30Eは、例えば図1に示す研磨装置30C,30Dの少なくとも一方に置き換えられて、第3段階の研磨に使用される。
【0096】
図16に示すように、この研磨装置30Eは、内部に水232を保持する容器300を有している。この水232として、例えば、弱酸性の水または空気が溶解した水、または電解イオン水が使用される。容器300の底部には、光透過性の回転テーブル302が取り付けられ、この回転テーブル302の上面に研磨パッド304が取り付けられている。これによって、容器300の内部に水232を満たした時に、研磨パッド304は、水232の中に浸漬されるようになっている。研磨パッド304の少なくとも表面(上面)には、例えば白金からなる導電性部材が真空蒸着等によって形成されている。
【0097】
容器300は、回転自在な回転軸306の上端に連結されており、容器300の底板には、回転軸306の周囲に沿ってリング状に延びて回転テーブル302によって閉塞された開口部300aが形成されている。この開口部300aの直下方に位置して、励起光、好ましくは紫外線を放射する光源308が配置されている。更に、研磨パッド304の光源308に対向する領域には、多数の貫通孔304aが形成されている。これによって、光源308から放射された励起光、好ましくは紫外線は、容器300の開口部300a内を通過した後、研磨パッド304の貫通孔304aの内部を通過して、該研磨パッド304の上方に達するようになっている。
【0098】
容器300の上方に位置して、表面を下向きにして、例えばGaN基板等の基板142を着脱自在に保持する基板ホルダ310が配置されている。基板ホルダ310は、上下動及び回転自在な主軸312の下端に連結されている。この基板ホルダ310及び主軸312は、図3に示す基板ホルダ144及び主軸146と同様な構成を有しているので、ここでは重複した説明を省略する。
【0099】
この例では、基板ホルダ310で保持した基板142と研磨パッド304との間に電圧を印加する電源314が備えられている。この電源314の陽極から延びる導線316aには、電流計318が介装されている。電源314の陽極から延びる導線316aは、基板ホルダ310で保持した基板142に接続され、電源314の陰極から延びる導線316bは、研磨パッド304に接続される。
【0100】
例えば、深い傷が局所的に存在する基板を研磨するには、傷を取り除くために削り量を大きくする必要がある。この場合、研磨が進行し基板の大部分が平坦になると研磨レートが低くなるため、局所的に存在する深い傷を除去するまでの所要時間が非常に長くなる。このような場合に、図16に示す研磨装置30Eを使用し、基板142の表面に励起光を照射し、必要に応じて、基板142と研磨パッド304との間に電圧を印加しながら基板142の表面を研磨すると、図17に示すように、基板142の表面は、励起光照射の影響によって微小なエッチピッド(1〜2nm)が生成されながら研磨される。このエッチピッドの存在により、表面が荒れた状態と同等の研磨レートで研磨されるため、研磨レートを低下させることなく大削り量の研磨を行うことができる。そして、励起光の照射及び電圧の印加を停止して仕上げ研磨を行うことで、基板の表面に生成されたエッチピッドを除去することができる。
【0101】
なお、照射する光は、被加工物のバンドギャップに相当する波長以下、GaNのバンドギャップは3.42eVであるので、GaN基板を加工する場合には、365nm以下の、例えば312nmであることが好ましい。
【0102】
例えば、前述のように、研磨装置30A,30Bの一方で、光源140から励起光、好ましくは紫外線を放射し、更には、研磨定盤134と基板142との間に電圧を印加したまま、5分間の第1段階の研磨を、光源140から励起光、好ましくは紫外線を放射したまま、研磨定盤134と基板142との間への電圧の印加を停止して、25分間の第2段階の研磨を連続して行う。
【0103】
次に、図16に示す研磨装置30Eを使用し、光源308から励起光、好ましくは紫外線を放射し、更には、必要に応じて、研磨パッド304と基板142との間に電圧を印加しながら、15分間の第3段階の第1研磨を、光源140から励起光の照射及び研磨パッド304と基板142との間への電圧の印加を停止して、15分間の第3段階の第2研磨を行う。
このように、第3段階の研磨を2つの研磨に分けて実施することで、例えば深い傷が局所的に存在する基板を効率的に研磨することができる。
【0104】
上記の例では、基板142の表面に励起光を照射しながら基板142の表面を研磨した後に、基板142の表面への励起光の照射を停止して仕上げ研磨を行っているが、基板142の表面に励起光を照射しながらの基板142の表面の研磨と、基板142の表面への励起光の照射を停止した状態での基板142の表面の研磨とを交互に繰り返すようにして、最終的には光の照射なしで仕上げ研磨を行って仕上げ研磨を終了させても良い。
【0105】
上記の例では、基板142の表面に励起光を照射し、必要に応じて、基板142と研磨パッド304との間に電圧を印加するようにしている。基板142の表面に励起光を照射することなく、基板142と研磨パッド304との間に電圧を印加することによっても、基板142の表面にエッチングピッドを生成させて研磨レートを高めることができる。
【0106】
図18は、本発明の他の実施形態の研磨装置30Fの概要を示す断面図である。この図18に示す研磨装置30Fの図16に示す研磨装置30Eと異なる点は、研磨パッド304の代わりに、貫通孔320aを有する光透過エリアE1と貫通孔のない光非透過エリアE2を有する研磨パッド320を使用し、更に、基板ホルダ310が研磨パッド320上の光透過エリアE1と光非透過エリアE2との間を往復動するようにしている点にある。
【0107】
この例によれば、光源308から励起光を照射したまま、基板ホルダ310を研磨パッド320上の光透過エリアE1から光非透過エリアE2に移動させることで、基板ホルダ310で保持した基板142に対する励起光の照射を停止させることができる。
【符号の説明】
【0108】
3 研磨部
30A,30B、30C,30D,30E,30F 研磨装置
134 研磨定盤
130 処理溶液
132 容器
136 回転軸
140 光源
142 基板(GaN基板)
144 基板ホルダ
146 主軸
154 金属膜(金属配線)
230 回転テーブル
230 水
232 容器
238 ガス溶解器
241 水供給ライン(水供給部)
242 研磨パッド
244 基板ホルダ
246 主軸
260 基材
262 中間層
264 導電性部材
300 容器
304,320 研磨パッド
308 光源
310 基板ホルダ
312 主軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱酸性の水または空気が溶解した水、または電解イオン水の存在下で、Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体の基板表面と、表面の少なくとも前記基板と接触する部位に導電性部材を有する研磨パッドの該表面とを互いに接触させつつ相対運動させて、前記基板表面を研磨することを特徴とする研磨方法。
【請求項2】
前記弱酸性の水または空気が溶解した水のpHは、3.5〜6.0であることを特徴とする請求項1記載の研磨方法。
【請求項3】
水または空気が熔解した水、または電解イオン水の存在下で、少なくとも一部にGa,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体の基板表面と、表面の少なくとも前記基板と接触する部位に導電性部材を有する研磨パッドの該表面とを互いに接触させつつ相対運動させて、前記基板表面を研磨することを特徴とする研磨方法。
【請求項4】
前記水は、Nパージ水であることを特徴とする請求項3記載の研磨方法。
【請求項5】
前記空気が溶解した水は、前記研磨パッドに純水または水道水を供給して研磨を開始し、研磨を空気雰囲気中で行うことにより、研磨中に空気中のCOが溶解した水であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の研磨方法。
【請求項6】
前記電解イオン水のpHは、3.5〜6.0または8.0以上であることを特徴とする請求項1または3記載の研磨方法。
【請求項7】
前記導電性部材は、貴金属、遷移金属、グラファイト、導電性樹脂、導電性ゴムまたは導電性有機物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の研磨方法。
【請求項8】
前記Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体は、GaN,GaP,GaAs,AlN,AlP,AlAs,InN,InPまたはInAsであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の研磨方法。
【請求項9】
前記研磨パッドに設けた貫通孔を通して前記基板表面に励起光を照射しながら該基板表面を研磨することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の研磨方法。
【請求項10】
前記研磨パッドと前記基板との間に電圧を印加しながら該基板表面を研磨することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の研磨方法。
【請求項11】
前記水または電解イオン水の温度、前記基板の温度、前記研磨パッドの温度の少なくとも一つを制御しながら前記基板表面を研磨することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の研磨方法。
【請求項12】
前記基板表面に励起光を照射しながら該基板表面を研磨する第1の研磨と、前記基板表面に励起光を照射することなく該基板表面を研磨する第2の研磨を連続して行うことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の研磨方法。
【請求項13】
前記基板表面に励起光を照射しながら該基板表面を研磨する第1の研磨と、前記基板表面に励起光を照射することなく該基板表面を研磨する第2の研磨を交互に繰り返すことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の研磨方法。
【請求項14】
前記基板と前記研磨パッドとの間に電圧を印加しながら前記基板表面を研磨する第3の研磨と、前記基板と前記研磨パッドとの間に電圧を印加することなく前記基板表面を研磨する第4の研磨を連続して行うことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の研磨方法。
【請求項15】
前記基板と前記研磨パッドとの間に電圧を印加しながら前記基板表面を研磨する第3の研磨と、前記基板と前記研磨パッドとの間に電圧を印加することなく前記基板表面を研磨する第4の研磨を交互に繰り返すことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の研磨方法。
【請求項16】
Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体の基板表面を研磨する研磨装置であって、
弱酸性の水または空気が溶解した水、または電解イオン水を保持する容器と、
表面の少なくとも前記基板と接触する部分に導電性部材を有し、前記水に浸漬させて前記容器内に配置される研磨パッドと、
基板を保持して前記容器内の前記水に浸漬させ前記研磨パッドに接触させる基板ホルダと、
前記研磨パッドと前記基板ホルダで保持した基板とを互いに接触させつつ相対移動させる移動機構とを有することを特徴とする研磨装置。
【請求項17】
Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体の基板表面を研磨する研磨装置であって、
表面の少なくとも前記基板と接触する部分に導電性部材を有する研磨パッドと、
基板を保持して前記研磨パッドに接触させる基板ホルダと、
前記研磨パッドと前記基板ホルダで保持した基板とを互いに接触させつつ相対移動させる移動機構と、
前記研磨パッドと前記基板ホルダで保持した基板との接触部に弱酸性の水または空気が溶解した水、または電解イオン水を供給する水供給部とを有することを特徴とする研磨装置。
【請求項18】
前記研磨パッドは多数の貫通孔を有し、前記研磨パッドに設けた多数の貫通孔を通して前記基板ホルダで保持した基板の表面に励起光を照射するように構成されていることを特徴とする請求項16または17記載の研磨装置。
【請求項19】
前記研磨パッドは、多数の貫通孔を通して前記基板ホルダで保持した基板の表面に励起光を照射する光透過エリアと光非透過エリアとを有し、
前記移動機構は、前記基板ホルダを前記研磨パッド上の光透過エリアと光非透過エリアとの間を往復動させるように構成されていることを特徴とする請求項16または17記載の研磨装置。
【請求項20】
前記研磨パッドと前記基板ホルダで保持した基板とを結び、内部に電源を介装した導線を更に有することを特徴とする請求項16乃至19のいずれかに記載の研磨装置。
【請求項21】
前記空気が溶解した水は、前記研磨パッドに純水または水道水を供給して研磨を開始し、研磨を空気雰囲気中で行うことにより、研磨中に空気中のCOが溶解した水であることを特徴とする請求項16乃至20のいずれかに記載の研磨装置。
【請求項22】
前記導電性部材は、貴金属、遷移金属、グラファイト、導電性樹脂、導電性ゴムまたは導電性有機物であることを特徴とする請求項16乃至21のいずれかに記載の研磨装置。
【請求項23】
前記Ga,Al及びInのいずれかを含有する化合物半導体は、GaN,GaP,GaAs,AlN,AlP,AlAs,InN,InPまたはInAsであることを特徴とする請求項16乃至22のいずれかに記載の研磨装置。
【請求項24】
前記弱酸性の水または空気が溶解した水のpHは、3.5〜6.0であることを特徴とする請求項16乃至23のいずれかに記載の研磨装置。
【請求項25】
前記電解イオン水のpHは、3.5〜6.0または8.0以上であることを特徴とする請求項16乃至24のいずれかに記載の研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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