研磨機
【課題】グラインダーや従来の包丁とぎ器では、刃物が回転研磨体に対して跳ね返り易く、刃物を研磨する角度が安定しにくいという不具合があった。
【解決手段】回転運動する回転軸の両端に一対の研磨面を有する研磨体と、一対の研磨面のそれぞれに対向して設けられた一対の側面板と、研磨体と側面板とを包み込むように設けられた筐体とを備えた刃物を研磨するための研磨機であって、一対の研磨面と一対の側面板とのそれぞれの間に一対の案内溝を有するとともに、該案内溝に刃物を挿入した場合に刃物が側面板により押圧されること。
【解決手段】回転運動する回転軸の両端に一対の研磨面を有する研磨体と、一対の研磨面のそれぞれに対向して設けられた一対の側面板と、研磨体と側面板とを包み込むように設けられた筐体とを備えた刃物を研磨するための研磨機であって、一対の研磨面と一対の側面板とのそれぞれの間に一対の案内溝を有するとともに、該案内溝に刃物を挿入した場合に刃物が側面板により押圧されること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包丁やナイフなどの各種刃物を研磨するための研磨機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円盤状の研磨体が2枚平行に並んだグラインダーなどが知られている。また、電動モーターの出力軸に連結した回転研磨体を回転させて包丁の刃先に当接する事により、包丁の刃先を研磨する電動包丁研磨機などが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−083558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのグラインダーや電動包丁研磨機では、刃物が回転研磨体に対して跳ね返り易く、刃物を研磨する角度が安定しにくい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑みて本発明の研磨機は、回転運動する回転軸の両端に一対の研磨面を有する研磨体と、前記一対の研磨面のそれぞれに対向して設けられた一対の側面板と、前記研磨体と前記側面板とを包み込むように設けられた筐体とを備えた刃物を研磨するための研磨機であって、前記一対の研磨面と前記一対の側面板とのそれぞれの間に一対の案内溝を有するとともに、該案内溝に刃物を挿入した場合に前記刃物が前記側面板により押圧される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の研磨機によれば、研磨後の刃先の角度が安定し易くなり、切れ味のよい刃物を研磨できる研磨機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の研磨機の一実施形態における研磨機の斜視図である。
【図2】本発明の研磨機の一実施形態の正面図である。
【図3】本発明の研磨機の一実施形態の背面図である。
【図4】本発明の研磨機の一実施形態の上面図である。
【図5】本発明の研磨機の一実施形態の底面図である。
【図6】本発明の研磨機の一実施形態の右側面図である。
【図7】本発明の研磨機の一実施形態の左側面図である。
【図8】本発明の研磨機の一実施形態の分解斜視断面図である。
【図9】本発明の研磨機の一実施形態における研磨状態を示す側面図であり、(a)は右側での研磨状態、(b)は左側での研磨状態を示すものである。
【図10】本発明の研磨機の一実施形態における研磨体の拡大図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図11】本発明の研磨機の他の実施形態における研磨体の拡大図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図12】本発明の研磨機の他の実施形態である図11におけるa部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の研磨機の一実施形態を図1〜10を用いて説明する。
【0009】
研磨機は、研磨体3と、一対の案内溝4を有する筐体2と、それらを積載する上ケース6と、研磨体3を回転させるための電動モーター(不図示)を有する下ケース7にて構成されている。
【0010】
なお、利き手選択スイッチ及び誤作動防止用のリミッターがついており、保護カバーを逆に装着することはできないようになっている。
【0011】
本実施形態は、回転運動する回転軸の両端に一対の研磨面を有する研磨体と、一対の研磨面のそれぞれに対向して設けられた一対の側面板と、研磨体と側面板とを包み込むように設けられた筐体とを備えた刃物を研磨するための研磨機であって、一対の研磨面と一対の側面板とのそれぞれの間に一対の案内溝を有するとともに、該案内溝に刃物を挿入した場合に刃物が側面板により押圧されるものである。
【0012】
ここで押圧手段としては刃物5を挿入した場合に刃物5を付勢するものであればよく、例えば、弾性体を用いるのが適当である。本実施形態においては押圧手段として板バネが用いられている。
【0013】
図9に示すように、溝4は刃物5を挿入しない場合、側面板4aにて閉じているが、刃物5を挿入すると側面板4aが横にスライドしつつ、刃物5の側面を側面板4aが押圧し続けるので、溝4の幅には依存することなく、一定の研磨角度で研磨することが容易になる。
【0014】
図10に示すように、研磨体3において研磨面3bは回転軸3aの両端に位置しており、必要な番手に応じて随時交換可能である。
【0015】
これにより、刃物5に向かって側面板4aを付勢させておくことで、刃物5の動きを適切な範囲に制限することを容易にするので、研磨作業中における刃物5と研磨体3との間での圧力の変動を低減できる。
【0016】
そして、刃物5を研磨体3に当接させる圧力を安定にできるとともに、刃先5aを研磨面3bの特定位置だけに当接させることができるので、様々な形状の刃物5に対応して、刃先5aにおける斑を低減し、円滑な研磨を可能にしている。
【0017】
ここで研磨体3と側面板4aとの間隔は、2〜8mmであって、さらに深くなるほど狭くなっている。ここで回転運動については、例えば後述される一実施形態のように、電動モーターの回転に伴い、一方向に回転運動する研磨体3を備えることで、容易に実現することができる。
【0018】
さらに、本実施形態は、案内溝は、刃物を挿入しない場合には該側面板により閉状態となり、研磨時には側面板が刃物で押し退けられることによって開状態となる。
【0019】
これにより、研磨屑が反対側の案内溝から外部に飛散しないので、安全に研磨作業ができる。
【0020】
さらに、研磨時において研磨面と側面板とのなす角度は15〜20度である。
【0021】
ここで最適角度とは、小刃用での角度であり、この範囲であれば大刃よりも十分大きな角度の小刃となり、欠けの発生を低減できる。
【0022】
さらに、研磨面の番手は400番以上800番以下である。
【0023】
この範囲であればセラミック包丁を研磨するのに適した研磨速度が得られる。
【0024】
次に、例えば大刃と小刃を備えた刃物を研磨する場合について、特に適した研磨体を有する研磨機について説明する。
【0025】
図11および図12において、研磨体3の研磨面3bは突出部3cと周囲3dを有しており、刃物5が突出部3cと周囲3dによって研磨されることを示している。この研磨機は、研磨面の回転中心に向かって漸次突出した突出部を有している。小刃5cは研磨面3bの周囲3dで粗研磨して(不図示)、次に、突出部3cで小刃5cを仕上げ研磨している。
【0026】
これにより大刃5bの粗研磨とともに小刃5cの仕上げ研磨を同時に行うことができ、大刃5bは粗研磨、小刃5cは細かい研磨として仕上げることができる。
【0027】
ここで一般的に、大刃5bとは刃先5a以外における刃物5の両面のなす角度、小刃5cとは刃先5aに連続する刃物5の両面のなす角度であり、小刃5cは刃こぼれしないように大刃5bよりも刃物5の両面のなす角度が大きいのが通例である。
【0028】
さらに、本実施形態において、突出部は略円錐形状である。
【0029】
これにより、大刃5bと小刃5cの形状に沿ってそれぞれを同時に研磨することができるので効率的である。
【0030】
さらに、本実施形態は、突出部の研磨面と、突出部の周囲の研磨面とのなす角度は15〜45度である。これにより、刃物5の大刃面5bを研磨面3bの周囲3dに、刃物5の小刃面5cを研磨面3bの突出部3cに沿わせることで、大刃5bと小刃5cとのなす角度βを正確に設定することができる。
【0031】
さらに、本実施形態は、突出部の研磨面の番手は突出部の周囲の研磨面の番手よりも大きくなるように設定されている。これにより刃先5aを溝4に少しずつ差し込んで、小刃5cの粗研磨を周囲3d、仕上げ研磨を突出部3cで施すことができる(不図示)。
【0032】
さらに、本実施形態は、突出部の研磨面の番手は600番以上800番以下、突出部の周囲の研磨面の番手は400番以上600番未満であること。これにより、突出部3cの周囲3dで粗研磨、突出部3cで仕上げ研磨を施すことができる。
【0033】
研磨体3の表面の材質は砥石としての寿命の観点から、ダイヤモンド粒が好適であるが、研磨体3自体は砥石として使用可能なものであれば構わず、アルミナや窒化珪素のようなセラミックだけに限定されない。
【0034】
また、柄2や筐体4の材質はABS樹脂で作ることが適しているが、PP(ポリプロピレン)やPS(ポリスチレン)のような材質でもかまわない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
(試料作製)
図10に示す研磨機の試料の条件を変化させることによって、研磨した包丁の試料を作製する。
【0036】
案内溝4の有無、側面板4aの有無、研磨面3bと中心線Lのなす角度α、研磨面3bの番手を変えた各条件を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
試料9については従来のグラインダーのような研磨機8に相当するものである。
【0039】
(評価方法)
表1に記載した各条件の研磨機8を用いて、ジルコニア製のセラミック包丁(大刃のみ)の刃先15aの研磨を順次おこなった。
【0040】
研磨条件は、金属包丁を片刃ずつ、片道10秒で砥ぐものとし、本多式切れ味試験機にて各金属包丁の切れ味を比較した。
【0041】
本多式切れ味試験の条件としては、測定環境は室内、試験紙は上質用紙、紙形状は厚さ0.038mm×幅8mm、紙束は400枚/束、負荷荷重は800g、摺動速度は20mm/g、測定方法は試験紙を固定して紙束を1往復させ、そのときに切断された紙の枚数を測定した結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2において、○は100枚以上、△は50〜99枚、×は50枚未満の切断枚数を示している。
【0044】
試料9は研磨時に金属包丁が跳ね返るため、角度が斑になりやすかったので、切れ味が悪くなったと考えられる。
【0045】
試料10は案内溝4内で金属包丁が振れるため、角度が斑になりやすかったので、切れ味が悪くなったと考えられる。
【0046】
試料1〜8はよい切れ味であった。特に試料2,3は研磨角度αが最適な範囲,試料6,7は研磨面3bの番手が最適な範囲のため優れた切れ味であった。
これらの結果により、案内溝4を有してさらに側面板4aで付勢することの作用が有効であることがわかる。また、研磨面と中心線のなす角度α、研磨面3bの番手にも最適範囲があることも確認できた。
【0047】
(実施例2)
(試料作製)
図11に示す研磨機の試料の条件を変化させることによって、研磨した包丁の試料を作製する。
【0048】
実施例1に準じて突出部3cを有する研磨体3を用意して、刃物5の大刃5bの面を基準とした小刃5cの角度βを変えて評価した結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3は突出部3cの番手を700番、周囲3dの番手を500番に固定して角度βを変化させて、ジルコニア製のセラミック包丁(大刃と小刃を有するもの)5の刃先15aの研磨をおこなった結果である。
【0051】
表3において、例えば試料12〜14のように角度βが30度付近であれば、セラミック包丁5の大刃面5bと小刃面5cとのなす角度βを最も適正に合わせて研磨することができるため、切れ味の結果が最も良好となった。
【0052】
なお、試料11では角度βが小さいため大刃15bと小刃15cとの区別があまりなく、刃こぼれしやすくて切れ味が悪くなることがあったが、実使用上問題のない範囲であった。
【0053】
試料15では角度βが大きいため小刃15cのなす刃先15aが鈍角になり過ぎて切れ味が悪くなることがあったが、実使用上問題のない範囲であった。
【0054】
(実施例3)
図11に示す研磨機の試料の条件を変化させることによって、研磨した包丁の試料を作製する。
【0055】
実施例1に準じて突出部3cを有する研磨体3を用意して、研磨面3bの番手を変えて評価した結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
表4は角度βを30度に固定して番手を変化させて、ジルコニア製のセラミック包丁(大刃と小刃を有するもの)5の刃先15aの研磨をおこなった結果である。
【0058】
表4において、例えば試料18〜32のように研磨面3bの番手が400番以上800番未満であれば適正な切れ味を得ることができた。
【0059】
さらに、試料19、20、21、22、24、25、26、28、29、30、31のように突出部3cの研磨面3bの番手が周囲3dの研磨面3dの番手よりも大きければ、さらに良好な切れ味に仕上げることができた。
【0060】
なお、試料16、17については、研磨面3bにおける周囲3dでの番手が小さいため、小刃面5cの表面仕上げが多少は悪くなるということがあったが、実使用上問題のない範囲であった。
【0061】
また、試料33〜38については、研磨面3bにおける突出部3cでの番手が大きいため、大刃面5bの研磨に時間が多少は掛かるということがあったが、実使用上問題のない範囲であった。
【符号の説明】
【0062】
1:研磨機
2:筐体
3:研磨体
3a:回転軸
3b:研磨面
3c:突出部
3d:周囲
4:案内溝
4a:側面板
5:刃物
5a:刃先
5b:大刃(面)
5c:小刃(面)
6:上ケース
7:下ケース
α:研磨面3bと側面板4aのなす角度
β:刃物5の大刃5bの面を基準とした小刃5cの角度
【技術分野】
【0001】
本発明は包丁やナイフなどの各種刃物を研磨するための研磨機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円盤状の研磨体が2枚平行に並んだグラインダーなどが知られている。また、電動モーターの出力軸に連結した回転研磨体を回転させて包丁の刃先に当接する事により、包丁の刃先を研磨する電動包丁研磨機などが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−083558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのグラインダーや電動包丁研磨機では、刃物が回転研磨体に対して跳ね返り易く、刃物を研磨する角度が安定しにくい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑みて本発明の研磨機は、回転運動する回転軸の両端に一対の研磨面を有する研磨体と、前記一対の研磨面のそれぞれに対向して設けられた一対の側面板と、前記研磨体と前記側面板とを包み込むように設けられた筐体とを備えた刃物を研磨するための研磨機であって、前記一対の研磨面と前記一対の側面板とのそれぞれの間に一対の案内溝を有するとともに、該案内溝に刃物を挿入した場合に前記刃物が前記側面板により押圧される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の研磨機によれば、研磨後の刃先の角度が安定し易くなり、切れ味のよい刃物を研磨できる研磨機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の研磨機の一実施形態における研磨機の斜視図である。
【図2】本発明の研磨機の一実施形態の正面図である。
【図3】本発明の研磨機の一実施形態の背面図である。
【図4】本発明の研磨機の一実施形態の上面図である。
【図5】本発明の研磨機の一実施形態の底面図である。
【図6】本発明の研磨機の一実施形態の右側面図である。
【図7】本発明の研磨機の一実施形態の左側面図である。
【図8】本発明の研磨機の一実施形態の分解斜視断面図である。
【図9】本発明の研磨機の一実施形態における研磨状態を示す側面図であり、(a)は右側での研磨状態、(b)は左側での研磨状態を示すものである。
【図10】本発明の研磨機の一実施形態における研磨体の拡大図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図11】本発明の研磨機の他の実施形態における研磨体の拡大図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図12】本発明の研磨機の他の実施形態である図11におけるa部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の研磨機の一実施形態を図1〜10を用いて説明する。
【0009】
研磨機は、研磨体3と、一対の案内溝4を有する筐体2と、それらを積載する上ケース6と、研磨体3を回転させるための電動モーター(不図示)を有する下ケース7にて構成されている。
【0010】
なお、利き手選択スイッチ及び誤作動防止用のリミッターがついており、保護カバーを逆に装着することはできないようになっている。
【0011】
本実施形態は、回転運動する回転軸の両端に一対の研磨面を有する研磨体と、一対の研磨面のそれぞれに対向して設けられた一対の側面板と、研磨体と側面板とを包み込むように設けられた筐体とを備えた刃物を研磨するための研磨機であって、一対の研磨面と一対の側面板とのそれぞれの間に一対の案内溝を有するとともに、該案内溝に刃物を挿入した場合に刃物が側面板により押圧されるものである。
【0012】
ここで押圧手段としては刃物5を挿入した場合に刃物5を付勢するものであればよく、例えば、弾性体を用いるのが適当である。本実施形態においては押圧手段として板バネが用いられている。
【0013】
図9に示すように、溝4は刃物5を挿入しない場合、側面板4aにて閉じているが、刃物5を挿入すると側面板4aが横にスライドしつつ、刃物5の側面を側面板4aが押圧し続けるので、溝4の幅には依存することなく、一定の研磨角度で研磨することが容易になる。
【0014】
図10に示すように、研磨体3において研磨面3bは回転軸3aの両端に位置しており、必要な番手に応じて随時交換可能である。
【0015】
これにより、刃物5に向かって側面板4aを付勢させておくことで、刃物5の動きを適切な範囲に制限することを容易にするので、研磨作業中における刃物5と研磨体3との間での圧力の変動を低減できる。
【0016】
そして、刃物5を研磨体3に当接させる圧力を安定にできるとともに、刃先5aを研磨面3bの特定位置だけに当接させることができるので、様々な形状の刃物5に対応して、刃先5aにおける斑を低減し、円滑な研磨を可能にしている。
【0017】
ここで研磨体3と側面板4aとの間隔は、2〜8mmであって、さらに深くなるほど狭くなっている。ここで回転運動については、例えば後述される一実施形態のように、電動モーターの回転に伴い、一方向に回転運動する研磨体3を備えることで、容易に実現することができる。
【0018】
さらに、本実施形態は、案内溝は、刃物を挿入しない場合には該側面板により閉状態となり、研磨時には側面板が刃物で押し退けられることによって開状態となる。
【0019】
これにより、研磨屑が反対側の案内溝から外部に飛散しないので、安全に研磨作業ができる。
【0020】
さらに、研磨時において研磨面と側面板とのなす角度は15〜20度である。
【0021】
ここで最適角度とは、小刃用での角度であり、この範囲であれば大刃よりも十分大きな角度の小刃となり、欠けの発生を低減できる。
【0022】
さらに、研磨面の番手は400番以上800番以下である。
【0023】
この範囲であればセラミック包丁を研磨するのに適した研磨速度が得られる。
【0024】
次に、例えば大刃と小刃を備えた刃物を研磨する場合について、特に適した研磨体を有する研磨機について説明する。
【0025】
図11および図12において、研磨体3の研磨面3bは突出部3cと周囲3dを有しており、刃物5が突出部3cと周囲3dによって研磨されることを示している。この研磨機は、研磨面の回転中心に向かって漸次突出した突出部を有している。小刃5cは研磨面3bの周囲3dで粗研磨して(不図示)、次に、突出部3cで小刃5cを仕上げ研磨している。
【0026】
これにより大刃5bの粗研磨とともに小刃5cの仕上げ研磨を同時に行うことができ、大刃5bは粗研磨、小刃5cは細かい研磨として仕上げることができる。
【0027】
ここで一般的に、大刃5bとは刃先5a以外における刃物5の両面のなす角度、小刃5cとは刃先5aに連続する刃物5の両面のなす角度であり、小刃5cは刃こぼれしないように大刃5bよりも刃物5の両面のなす角度が大きいのが通例である。
【0028】
さらに、本実施形態において、突出部は略円錐形状である。
【0029】
これにより、大刃5bと小刃5cの形状に沿ってそれぞれを同時に研磨することができるので効率的である。
【0030】
さらに、本実施形態は、突出部の研磨面と、突出部の周囲の研磨面とのなす角度は15〜45度である。これにより、刃物5の大刃面5bを研磨面3bの周囲3dに、刃物5の小刃面5cを研磨面3bの突出部3cに沿わせることで、大刃5bと小刃5cとのなす角度βを正確に設定することができる。
【0031】
さらに、本実施形態は、突出部の研磨面の番手は突出部の周囲の研磨面の番手よりも大きくなるように設定されている。これにより刃先5aを溝4に少しずつ差し込んで、小刃5cの粗研磨を周囲3d、仕上げ研磨を突出部3cで施すことができる(不図示)。
【0032】
さらに、本実施形態は、突出部の研磨面の番手は600番以上800番以下、突出部の周囲の研磨面の番手は400番以上600番未満であること。これにより、突出部3cの周囲3dで粗研磨、突出部3cで仕上げ研磨を施すことができる。
【0033】
研磨体3の表面の材質は砥石としての寿命の観点から、ダイヤモンド粒が好適であるが、研磨体3自体は砥石として使用可能なものであれば構わず、アルミナや窒化珪素のようなセラミックだけに限定されない。
【0034】
また、柄2や筐体4の材質はABS樹脂で作ることが適しているが、PP(ポリプロピレン)やPS(ポリスチレン)のような材質でもかまわない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
(試料作製)
図10に示す研磨機の試料の条件を変化させることによって、研磨した包丁の試料を作製する。
【0036】
案内溝4の有無、側面板4aの有無、研磨面3bと中心線Lのなす角度α、研磨面3bの番手を変えた各条件を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
試料9については従来のグラインダーのような研磨機8に相当するものである。
【0039】
(評価方法)
表1に記載した各条件の研磨機8を用いて、ジルコニア製のセラミック包丁(大刃のみ)の刃先15aの研磨を順次おこなった。
【0040】
研磨条件は、金属包丁を片刃ずつ、片道10秒で砥ぐものとし、本多式切れ味試験機にて各金属包丁の切れ味を比較した。
【0041】
本多式切れ味試験の条件としては、測定環境は室内、試験紙は上質用紙、紙形状は厚さ0.038mm×幅8mm、紙束は400枚/束、負荷荷重は800g、摺動速度は20mm/g、測定方法は試験紙を固定して紙束を1往復させ、そのときに切断された紙の枚数を測定した結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2において、○は100枚以上、△は50〜99枚、×は50枚未満の切断枚数を示している。
【0044】
試料9は研磨時に金属包丁が跳ね返るため、角度が斑になりやすかったので、切れ味が悪くなったと考えられる。
【0045】
試料10は案内溝4内で金属包丁が振れるため、角度が斑になりやすかったので、切れ味が悪くなったと考えられる。
【0046】
試料1〜8はよい切れ味であった。特に試料2,3は研磨角度αが最適な範囲,試料6,7は研磨面3bの番手が最適な範囲のため優れた切れ味であった。
これらの結果により、案内溝4を有してさらに側面板4aで付勢することの作用が有効であることがわかる。また、研磨面と中心線のなす角度α、研磨面3bの番手にも最適範囲があることも確認できた。
【0047】
(実施例2)
(試料作製)
図11に示す研磨機の試料の条件を変化させることによって、研磨した包丁の試料を作製する。
【0048】
実施例1に準じて突出部3cを有する研磨体3を用意して、刃物5の大刃5bの面を基準とした小刃5cの角度βを変えて評価した結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3は突出部3cの番手を700番、周囲3dの番手を500番に固定して角度βを変化させて、ジルコニア製のセラミック包丁(大刃と小刃を有するもの)5の刃先15aの研磨をおこなった結果である。
【0051】
表3において、例えば試料12〜14のように角度βが30度付近であれば、セラミック包丁5の大刃面5bと小刃面5cとのなす角度βを最も適正に合わせて研磨することができるため、切れ味の結果が最も良好となった。
【0052】
なお、試料11では角度βが小さいため大刃15bと小刃15cとの区別があまりなく、刃こぼれしやすくて切れ味が悪くなることがあったが、実使用上問題のない範囲であった。
【0053】
試料15では角度βが大きいため小刃15cのなす刃先15aが鈍角になり過ぎて切れ味が悪くなることがあったが、実使用上問題のない範囲であった。
【0054】
(実施例3)
図11に示す研磨機の試料の条件を変化させることによって、研磨した包丁の試料を作製する。
【0055】
実施例1に準じて突出部3cを有する研磨体3を用意して、研磨面3bの番手を変えて評価した結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
表4は角度βを30度に固定して番手を変化させて、ジルコニア製のセラミック包丁(大刃と小刃を有するもの)5の刃先15aの研磨をおこなった結果である。
【0058】
表4において、例えば試料18〜32のように研磨面3bの番手が400番以上800番未満であれば適正な切れ味を得ることができた。
【0059】
さらに、試料19、20、21、22、24、25、26、28、29、30、31のように突出部3cの研磨面3bの番手が周囲3dの研磨面3dの番手よりも大きければ、さらに良好な切れ味に仕上げることができた。
【0060】
なお、試料16、17については、研磨面3bにおける周囲3dでの番手が小さいため、小刃面5cの表面仕上げが多少は悪くなるということがあったが、実使用上問題のない範囲であった。
【0061】
また、試料33〜38については、研磨面3bにおける突出部3cでの番手が大きいため、大刃面5bの研磨に時間が多少は掛かるということがあったが、実使用上問題のない範囲であった。
【符号の説明】
【0062】
1:研磨機
2:筐体
3:研磨体
3a:回転軸
3b:研磨面
3c:突出部
3d:周囲
4:案内溝
4a:側面板
5:刃物
5a:刃先
5b:大刃(面)
5c:小刃(面)
6:上ケース
7:下ケース
α:研磨面3bと側面板4aのなす角度
β:刃物5の大刃5bの面を基準とした小刃5cの角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動する回転軸の両端に一対の研磨面を有する研磨体と、
前記一対の研磨面のそれぞれに対向して設けられた一対の側面板と、
前記研磨体と前記側面板とを包み込むように設けられた筐体とを備えた刃物を研磨するための研磨機であって、
前記一対の研磨面と前記一対の側面板とのそれぞれの間に一対の案内溝を有するとともに、
該案内溝に刃物を挿入した場合に前記刃物が前記側面板により押圧される研磨機。
【請求項2】
前記案内溝は未研磨時には該側面板が付勢されることによって閉状態となり、研磨時には前記側面板が前記刃物で押し退けられることによって開状態となることを特徴とする請求項1に記載の研磨機。
【請求項3】
前記研磨時において前記研磨面と前記側面板とのなす角度は15〜20度であることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨機。
【請求項4】
前記研磨面の番手は400番以上800番以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨機。
【請求項5】
前記研磨面の回転中心に向かって漸次突出した突出部を有する請求項1〜4のいずれかに記載の研磨機。
【請求項6】
前記突出部は略円錐形状である請求項5に記載の研磨機。
【請求項7】
前記突出部の研磨面と、前記突出部の周囲の前記研磨面とのなす角度は15〜45度である請求項5または6に記載の研磨機。
【請求項8】
前記突出部の研磨面の番手は前記突出部の周囲の前記研磨面の番手よりも大きい請求項5〜7のいずれかに記載の研磨機。
【請求項9】
前記突出部の研磨面の番手は600番以上800番以下、前記突出部の周囲の前記研磨面の番手は400番以上600番未満である請求項5〜8のいずれかに記載の研磨機。
【請求項1】
回転運動する回転軸の両端に一対の研磨面を有する研磨体と、
前記一対の研磨面のそれぞれに対向して設けられた一対の側面板と、
前記研磨体と前記側面板とを包み込むように設けられた筐体とを備えた刃物を研磨するための研磨機であって、
前記一対の研磨面と前記一対の側面板とのそれぞれの間に一対の案内溝を有するとともに、
該案内溝に刃物を挿入した場合に前記刃物が前記側面板により押圧される研磨機。
【請求項2】
前記案内溝は未研磨時には該側面板が付勢されることによって閉状態となり、研磨時には前記側面板が前記刃物で押し退けられることによって開状態となることを特徴とする請求項1に記載の研磨機。
【請求項3】
前記研磨時において前記研磨面と前記側面板とのなす角度は15〜20度であることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨機。
【請求項4】
前記研磨面の番手は400番以上800番以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨機。
【請求項5】
前記研磨面の回転中心に向かって漸次突出した突出部を有する請求項1〜4のいずれかに記載の研磨機。
【請求項6】
前記突出部は略円錐形状である請求項5に記載の研磨機。
【請求項7】
前記突出部の研磨面と、前記突出部の周囲の前記研磨面とのなす角度は15〜45度である請求項5または6に記載の研磨機。
【請求項8】
前記突出部の研磨面の番手は前記突出部の周囲の前記研磨面の番手よりも大きい請求項5〜7のいずれかに記載の研磨機。
【請求項9】
前記突出部の研磨面の番手は600番以上800番以下、前記突出部の周囲の前記研磨面の番手は400番以上600番未満である請求項5〜8のいずれかに記載の研磨機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−25401(P2011−25401A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133908(P2010−133908)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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