説明

研磨装置

【課題】台車に設けられ、それぞれ回転して研磨対象を研磨する複数の研磨部材を同一円周上、若しくは、同一円周近傍に等間隔、若しくは、略等間隔で揺動部材に配置することにより、船体などの甲板を短時間、且つ、台車の進行方向に幅広に研磨することができる研磨装置を提供する。
【解決手段】研磨装置10は、走行用車輪20(走行車輪24)と該走行用車輪20(走行車輪24)を駆動する走行用駆動装置(走行用モータ26)とを備えた台車12と、該台車12に設けられ、それぞれ回転して研磨対象60を研磨する複数の研磨部材42、及び、各研磨部材42を回転駆動する研磨部材用駆動装置(研磨部材用モータ46)とを備える。各研磨部材42は、同一円周上、若しくは、同一円周近傍に等間隔、若しくは、略等間隔で配置されると共に、相隣接する研磨部材42は、相互に逆回転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用車輪と該走行用車輪を駆動する走行用駆動装置とを備えた台車と、この台車に設けられ、それぞれ回転して研磨対象を研磨する複数の研磨部材、及び、各研磨部材を回転駆動する研磨部材用駆動装置とを備えた研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の研磨装置として、船体外板の除錆装置があり、この除錆装置は研掃台車の前部左右にゴム車輪が設けられ、後部中央にキャスタが設けられた牽引台車と、この牽引台車の後端部に、船体外板を研掃するための円筒状の研掃ブラシを回転駆動可能に備えている。この除錆装置は、船体外板の除錆作業(研磨作業も含む)を行うものであり、牽引台車の下面には船体外板に対して非接触で吸着力を作用させる磁石が取り付けられている。
【0003】
そして、永久磁石の吸着力により、垂直あるいはオーバーハング状となる船体外板面を走行させて、除錆作業区画内の船体外板面を走行させることにより、回転駆動される研掃ブラシを船体外面に押しつけて、当該船体の曲がり外板部などの除錆作業を支障なく行っていた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−53083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような除錆装置の研掃ブラシは円筒状に構成されており、除錆装置の除錆対象として例えば船体などの甲板を研掃ブラシで除錆や塗料を除去する場合、円筒状研掃ブラシの幅のみで、それ以上幅広に除錆や塗料を除去することができなかった。そこで、幅広に除錆や塗料を除去する場合は、新たに幅広の研掃ブラシを製造しなければならない。このため、除錆装置がコストアップしてしまうという問題があった。
【0005】
また、円筒状の研掃ブラシ以上幅広に除錆や塗料を除去するには、除錆装置を往復走行させることにより幅広に研掃しなければならなかった。このため、船体などの甲板を研掃するのに長時間かかってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するために成されたものであり、台車に設けられ、それぞれ回転して研磨対象を研磨する複数の研磨部材を同一円周上、若しくは、同一円周近傍に等間隔、若しくは、略等間隔で揺動部材に配置することにより、船体などの甲板を短時間、且つ、台車の進行方向に幅広に研磨することができる研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の研磨装置は、走行用車輪と該走行用車輪を駆動する走行用駆動装置とを備えた台車と、該台車に設けられ、それぞれ回転して研磨対象を研磨する複数の研磨部材、及び、各研磨部材を回転駆動する研磨部材用駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明の研磨装置は、上記において、各研磨部材は、同一円周上、若しくは、同一円周近傍に等間隔、若しくは、略等間隔で配置されると共に、相隣接する研磨部材は、相互に逆回転されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明の研磨装置は、請求項2において、各研磨部材は、円の半径方向における外側が研磨対象に接触するよう回転軸が傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明の研磨装置は、請求項1乃至請求項3のうちの何れかにおいて、台車に設けられ、当該台車の進行方向に交わる方向に揺動可能とされた揺動部材と、該揺動部材を揺動させる揺動部材用駆動装置とを備え、各研磨部材は揺動部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の発明の研磨装置は、請求項4において、揺動部材は、台車の進行方向に対して直交する方向に揺動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走行用車輪と該走行用車輪を駆動する走行用駆動装置とを備えた台車と、該台車に設けられ、それぞれ回転して研磨対象を研磨する複数の研磨部材、及び、各研磨部材を回転駆動する研磨部材用駆動装置とを備えたので、例えば、請求項2の如く、各研磨部材は、同一円周上、若しくは、同一円周近傍に等間隔、若しくは、略等間隔で配置されると共に、相隣接する研磨部材は、相互に逆回転されるので、研磨対象を走行用駆動装置にて走行する台車の進行方向に対して揺動部材に設けた複数の、研磨部材の端から端までの幅よりも広い幅で研磨することができる。これにより、例えば、船舶などの広い甲板やコンテナの上面や床面などを短時間で研磨し、メンテナンスや再塗装などを容易に行えるようになる。従って、研磨装置の利便性を大幅に向上させることができるようになるものである。
【0013】
特に、相隣接する研磨部材は、相互に逆回転されるので、各研磨部材にて研磨対象を研磨する回転摩擦力で、研磨装置が左右前後方向へ移動してしまうなどといった不都合を阻止することが可能となる。従って、台車が蛇行してしまう不都合を阻止し、研磨装置を安定して進行方向に走行させることができるようになる。
【0014】
また、請求項3の発明によれば、請求項2において、各研磨部材は、円の半径方向における外側が研磨対象に接触するよう回転軸が傾斜して設けられているので、例えば、回転軸を傾斜させずに各研磨部材の研磨面で研磨対象を研磨する場合に対して、研磨部材外側の周速の速い部分だけで研磨することが可能となるので、研磨効率を向上させることができる。又、各研磨部材の回転軸を傾斜させることにより研磨対象を研磨できる面積は少なくなるものの、研磨部材の研磨効率を向上させることでより確実に研磨することが可能になると共に、研磨部材を複数設けているので、全体としては広い面積を研磨することができる。従って、研磨対象を迅速且つ高速に研磨することが可能になり、更に研磨装置の利便性を向上させることができるようになるものである。
【0015】
また、請求項4の発明によれば、請求項1乃至請求項3のうちの何れかにおいて、台車に設けられ、当該台車の進行方向に交わる方向に揺動可能とされた揺動部材と、該揺動部材を揺動させる揺動部材用駆動装置とを備え、各研磨部材は揺動部材に取り付けられており、例えば、請求項5の如く、揺動部材は、台車の進行方向に対して直交する方向に揺動するので、研磨部材を台車の進行方向左右に揺動させながら、研磨対象を研磨することができる。これにより、例えば各研磨部材が所定の間隔で配置されていても、研磨対象を隙間無く研磨することが可能となる。従って、研磨対象の研磨残しもなくて幅広く研磨を行うことができるので、例えば、船舶などの広い甲板やコンテナの上面や床面などの研磨を極めて短時間で研磨することができ、メンテナンスや再塗装などを容易に行えるようになるものである。
【0016】
特に、揺動部材を台車の進行方向に対して直交する方向に揺動させているので、台車の進行方向に対して研磨対象を揺動部材の幅よりも幅広に研磨することが可能になる。これにより、揺動板の小型化も可能になるので、研磨装置のコンパクト化を図ることができ、コストダウンを図ることが可能となる。従って、極めて取り扱いや持ち運びに便利な研磨装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す研磨装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施例を示す研磨装置の下面図である。
【図3】研磨装置を構成する揺動部材の概略側面図である。
【図4】揺動部材を揺動させた場合(図中左側に揺動させた場合)の研磨装置の概略下面図である。
【図5】揺動部材を揺動させた場合(図中右側に揺動させた場合)の研磨装置の概略下面図である。
【図6】研磨装置に設けられた制御装置の電気系統を示すブロック図である。
【図7】研磨部材にて研磨対象を研磨した部分を示す研磨装置の概略下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、研磨対象の塗料や錆びを除去するため、研磨対象の塗料や錆びを短時間で確実に落とすことを目的とする。研磨対象の塗料や錆びを短時間で確実に落とすという目的を、揺動する揺動部材に複数の研磨部材を同一円周上近傍に略等間隔で配置するだけの簡単な構造で実現した。
【実施例1】
【0019】
次に、図面に基づき本発明の実施の形態を詳述する。図1は本発明の一実施例を示す研磨装置10の斜視図、図2は本発明の一実施例を示す研磨装置10の下面図、図3は研磨装置10を構成する揺動部材の概略側面図をそれぞれ示している。
【0020】
本実施形態における研磨装置10は、図1に示すように、所定の重量を支持できる縦長略矩形状の台車12と、この台車12の下部に設けられた後述する揺動部材とから構成されている。台車12は、所定厚さの鋼板にて構成されており、この台車12の下面に走行用車輪20が設けられている。該走行用車輪20は、台車12の長手方向一側(研磨装置10の進行方向後方側)の両端近傍に設けられた走行車輪24と、台車12の長手方向他側(研磨装置10の進行方向前方側)の中央近傍に設けられた駆動車輪28とから構成されている。
【0021】
台車12の他側の略中央にはT字状のハンドル16が立設して設けられている。該ハンドル16は、台車12の一部が所定寸法前方に延在してハンドル取付部14が形成され、ハンドル16はそのハンドル取付部14に回動自在に取り付けられている。ハンドル16の下部には走行用モータ26(本発明の走行用駆動装置に相当)を備えた駆動車輪28が設けられており、この走行用モータ26の回転によって駆動車輪28は回転駆動される。尚、ハンドル16は、研磨装置10を手で引いて移動させる際使用するものである。
【0022】
また、ハンドル16の下部となる駆動車輪28とハンドル取付部14との間には操舵用モータ22が設けられている。この操舵用モータ22とハンドル16は、タイミングベルト23(この場合、タイミングベルト23の代わりに、チェーンなどを用いても差し支えない)にて接続されており、操舵用モータ22が回転駆動することによってハンドル16は、ハンドル取付部14を軸に左右に回転し、駆動車輪28の方向を変えられるように構成されている。
【0023】
そして、両走行車輪24と駆動車輪28が研磨対象60に接地した状態で、台車12は略水平になるように構成されている。尚、18はハンドル16の取っ手で、ハンドル16上部に設けられている。また、62は受光センサで、ハンドル取付部14の前部に設けられ、所定距離離れたヵ所に設置された、レーザー発光装置70(図7に図示)から発光されたレーザー光を受光し、その信号を後述する制御装置30に送信するように構成されている。
【0024】
台車12の後部上(走行車輪24と反対側の面)には、研磨装置10を駆動制御するための汎用マイクロコンピュータを備えた制御装置30が設けられており、この制御装置30は図示しないボルトにて台車12に固定されている。また、台車12には、ハンドル16と制御装置30との間に研磨装置10を動作させるためのバッテリ50(実施例では鉛バッテリ)が載置され、このバッテリ50も図示しない取付具とボルトにて固定されている。
【0025】
台車12の下部(走行車輪24側の面)には、当該台車12よりも小さな揺動板32(本発明の揺動部材に相当)が設けられている。この揺動板32は、後述する揺動用モータ36(本発明の揺動部材用駆動装置に相当)の回転にて研磨装置10の走行方向に対して交わる方向に揺動(詳しくは、研磨装置10の走行方向に対して略直交方向(左右)に揺動)するように構成されている。尚、揺動板32は、実施例では正6角形に形成され、厚さ約10mmの金属板(この場合、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板など)にて構成されている(図2)。また、揺動板32は軽量化のため、当該揺動板32の内周側(この場合、後述する各傾斜部材44(研磨部材42)及びロッドエンドベアリング40などの円周方向内側)に上下面を貫通する貫通孔を設けても差し支えない。
【0026】
該揺動板32の前部近傍には、図2に示すようにロッドエンドベアリング40の一端が回動自在に支持され、このロッドエンドベアリング40の他端は台車12の前部に回動自在に支持されている。即ち、ロッドエンドベアリング40の一端が、揺動板32の前部近傍に支持されると共に、揺動板32の両端近傍に位置して、研磨装置10の走行方向に対して左右に回動自在に取り付けられている。
【0027】
詳しくは、両ロッドエンドベアリング40は、後述する揺動板32に取り付けられた研磨部材42の前列と中列との略中間に位置するとともに、それぞれ中列の両研磨部材42の前方に位置している。そして、ロッドエンドベアリング40の他端は、揺動板32に取り付けられた一方のロッドエンドベアリング40の前方となる台車12の前部近傍(台車12の両端近傍)に設けられると共に、研磨装置10の走行方向に対して左右に回動自在に取り付けられている。尚、両ロッドエンドベアリング40、40は、略平行に設置されている。
【0028】
また、揺動板32の後部にもロッドエンドベアリング40が設けられており、このロッドエンドベアリング40の一端は揺動板32の後部中央に回動自在に支持されている。ロッドエンドベアリング40の他端は台車12に設けられた前記揺動用モータ36に取り付けられたターンテーブル38に支持されている。具体的には、揺動用モータ36は、台車12に固定された揺動モータ収納箱34と、この揺動モータ収納箱34内に収納固定された揺動用モータ36と、この揺動用モータ36の回転軸に固定された、所定の直径のターンテーブル38とから構成されている。揺動板32に支持されたロッドエンドベアリング40の他端は、このターンテーブル38の周囲近傍に回動自在に取り付けられている。
【0029】
そして、揺動用モータ36の回転によりターンテーブル38が時計方向、或いは、半時計方向に回転すると、ロッドエンドベアリング40を介して、揺動板32が研磨装置10の走行方向に対して左右に揺動するように構成されている。即ち、揺動板32の前部は、両ロッドエンドベアリング40によって台車12に支持されており、ターンテーブル38の回転により、当該ターンテーブル38に回動自在に支持されたロッドエンドベアリング40が揺動板32を揺動させる。
【0030】
このとき、揺動板32の前部両側にはロッドエンドベアリング40が略平行に回動自在に支持されているので、揺動板32は当該略平行のロッドエンドベアリング40によって円滑に研磨装置10の走行方向に対して左右に揺動させることができる。尚、ターンテーブル38は、回転することにより後述する揺動板32の両端近傍に設けられた研磨部材42を台車12端から端まで移動できる大きさにて構成されている。
【0031】
前記研磨部材42は、図3に示すように揺動板32に対して所定角度傾斜して設けられると共に、揺動板32には、複数(実施例では6個)の研磨部材42が設けられている。これらの各研磨部材42は、揺動板32の中心を基準にして同一円周上、若しくは、同一円周近傍に等間隔、若しくは、略等間隔で配置されている。この場合、揺動板32は正6角形に形成されており、各角近傍に研磨部材42がそれぞれ設けられると共に、手前の一片両端の研磨部材42を前列、この前列に対向する反対側(後方)の一片の両端の研磨部材42を後列、そして、それら前列と後列の中間に位置する両端の研磨部材42を中列として、手前から後方に三列の研磨部材42が設けられている。尚、研磨部材42の傾斜角度は後に詳しく説明する。
【0032】
また、前述した如く揺動板32は台車12よりも小さく形成しているので、揺動板32に設けられた研磨部材42は、研磨装置10の走行方向に対して台車12の幅よりも所定寸法内側に位置している。そして、揺動用モータ36(ターンテーブル38)の回転駆動により研磨装置10の走行方向に対して揺動板32が左側に揺動すると、図4に示すように当該揺動板32は台車12の左側に少許はみ出し、揺動板32が右側に揺動すると、図5に示すように当該揺動板32は台車12の右側に少許はみ出すように構成されている。尚、揺動板32が左右に揺動し、台車12より揺動板32がはみ出した部分をカットして、揺動板32が台車12よりもはみ出さないようにしても差し支えない。また、揺動板32を台車12よりも大きくはみ出すようにして、研磨部材42の研磨幅を台車12の1.5倍〜2.0倍幅広く研磨するようにしても差し支えない。
【0033】
また、揺動板32には一側を厚く、他側となる反対側を薄く構成した傾斜部材44が図示しないボルトにて固定されている。この傾斜部材44にて揺動板32に取り付けた研磨部材42を所定角度傾斜させるように構成している。傾斜部材44には、研磨部材42を回転駆動させるための研磨部材用モータ46(本発明の研磨部材用駆動装置に相当)が図示しないボルトにより固定されており、研磨部材用モータ46の回転軸48の先端に研磨部材42が固定されている。この場合、揺動板32と研磨部材42との間に傾斜部材44を介在させて、当該揺動板32と研磨部材42とを図示しないボルトにて固定しても差し支えない。
【0034】
詳しくは、傾斜部材44は、揺動板32の台車12側の面に固定されると共に、この傾斜部材44は、揺動板32の中心側を薄く、当該揺動板32の中心を基準にする円の半径方向における外側を厚く構成している。これにより、研磨部材用モータ46の回転軸48を所定角度傾斜させている。この場合、研磨部材用モータ46の回転軸48は、傾斜部材44及び揺動板32に予め形成された孔(図示せず)を貫通して下方に延在(揺動板32を基準にして、台車12の反対側に延在)して、その先端(下端)に研磨部材42が固定されている。
【0035】
具体的には、各研磨部材42は、揺動板32の中心を基準にする円の半径方向における外側が研磨対象60に接触(図2研磨部材42の斜線部分)するよう回転軸48が傾斜して設けられている。この状態で、各研磨部材42は、下面(研磨対象60側の面)を研磨対象60に対して図3矢印範囲角度A(約15°〜30°)傾斜している(前記した研磨部材42の詳しい角度)。これにより、研磨部材用モータ46にて回転駆動する研磨部材42の中心近傍に位置する回転周速の遅い部分に対して、外側の周速の速い部分だけで研磨対象60を研磨できるように構成されている。
【0036】
ここで、研磨部材42は、例えば、直径約75mm〜120mmの椀状カップ内にワイヤーの一端が収納されたワイヤーブラシにて構成されている。該研磨部材42は、直径約0.3mm〜0.5mmのワイヤーが多数円柱状に束ねられて一端(元部)がカップ内に収納されると共に、他端(先部)はカップ部から約25mm〜35mm突出している所謂カップブラシ、或いは、研磨材が練り込まれたナイロンブラシ等により研磨対象60(例えば、船舶などの広い甲板やコンテナの上面や床面など)の面を研磨できるように構成されている。尚、実施例では研磨部材42にはカップブラシが用いられる。
【0037】
この場合、揺動板32と、研磨部材42が研磨対象60に接触するまでの距離は、揺動板32と台車12が略平行になる長さ寸法に構成されている。該研磨部材42には、図示しないが当該研磨部材42を所定圧力で研磨対象60に接触させるための付勢部材が設けられている。この付勢部材によって、各研磨部材42はそれぞれ一定、且つ、略同一圧力で研磨対象60に付勢できるように構成されている。
【0038】
また、相隣接する研磨部材42は、相互に逆回転するように構成されている。これにより、各研磨部材42にて研磨対象60を研磨するときの摩擦力で、当該各研磨部材42は揺動板32の中心から放射方向に応力が働くと共に、円周方向に等間隔で摩擦力が働く(図3の三方向放射矢印)ので、その摩擦力で台車12が左右前後の何れの方向へ蛇行してしまうのを阻止することができる。
【0039】
一方、前記制御装置30には、図6に示すように操舵用モータ22、及び、走行用モータ26が接続されている。また、制御装置30に揺動用モータ36、及び、バッテリ50が接続されると共に、受光センサ62が接続されている。更に、制御装置30には、各研磨部材42を回転駆動するための研磨部材用モータ46が接続されている。また、図示しない電源スイッチがONされるとバッテリ50の電力が制御装置30に通電される。そして、制御装置30は、バッテリ50の電力を操舵用モータ22、走行用モータ26、揺動用モータ36、各研磨部材用モータ46に通電可能に構成されている。
【0040】
図中、70はレーザー発光装置で、このレーザー発光装置70から発光されたレーザー光を、研磨装置10に設けられた受光センサ62で受光できるように構成されている(図7)。また、制御装置30は、レーザー発光装置70から発光されたレーザー光が受光センサ62からずれた場合は、バッテリ50の電力を通電して操舵用モータ22を回転駆動し、駆動車輪28の方向を変えて研磨装置10をレーザー発光装置70から発光されたレーザー光方向に向け、受光センサ62にてレーザー光を受光するように構成されている。これによって、研磨装置10がレーザー発光装置70方向に走行できるように構成されている。
【0041】
尚、制御装置30にてレーザー発光装置70から発光されたレーザー光を受光センサ62で受光して研磨装置10をレーザー発光装置70から発光されたレーザー光方向に走行させる技術については既に周知の技術であるため詳細な説明を省略する。また、制御装置30は、レーザー発光装置70まで研磨装置10が移動した場合、各モータの電源をOFFして研磨装置10を自動停止するように構成されている。
【0042】
以上の構成で次に図7を参照して研磨装置10の動作を説明する。尚、研磨装置10はレーザー発光装置70方向に向き、受光センサ62でレーザー発光装置70から発光されたレーザー光を受光できる状態にあるものとする。また、バッテリ50は充電されているものとする。そして、図示しない電源スイッチがONされると、制御装置30はバッテリ50の電力を各研磨部材用モータ46、揺動用モータ36、及び、走行用モータ26に通電する。これによって揺動用モータ36は回転駆動し、揺動板32を左右に揺動させながら(図中点線)、走行用モータ26の回転によって研磨装置10はレーザー発光装置70方向へ走行して行く(図中一点鎖線矢印方向)。
【0043】
このとき、制御装置30は各研磨部材用モータ46を回転駆動させているので、各研磨部材42(カップブラシ)によって研磨対象60が研磨される(図中斜線部分)。この場合、研磨装置10は、各研磨部材42を斜線部分内の波形曲線のように、左右に揺動しながらレーザー発光装置70方向へ走行して行く。
【0044】
該制御装置26は、レーザー発光装置70から発光されたレーザー光を受光センサ62にて受信すると、その信号を発光しているレーザー発光装置70方向へ研磨装置10を走行させる。ここで、例えば研磨装置10が傾いてレーザー発光装置70から発光されたレーザー光が受光センサ62から外れた場合、研磨装置10はレーザー発光装置70方向へ走行できなくなってしまう。
【0045】
そこで、制御装置30は受光センサ62からレーザー光が外れた方向へ駆動車輪28の方向を変えるように操舵用モータ22に通電し、当該駆動車輪28の方向を変える。これにより、制御装置30は、レーザー発光装置70から発光されたレーザー光方向に研磨装置10の方向を変える。該制御装置30は、そこで受光センサ62にてレーザー光を受光し、研磨装置10を、レーザー光を発光しているレーザー発光装置70方向に走行させた状態で、各研磨部材42にて研磨対象60の研磨を行う。
【0046】
このように、研磨装置10は走行車輪24と該走行車輪24を駆動する走行用モータ26とを備えた台車12と、該台車12に設けられ、それぞれ回転して研磨対象60を研磨する複数の研磨部材42、及び、各研磨部材42を回転駆動する研磨部材用モータ46とを備え、各研磨部材42は、同一円周上、若しくは、同一円周近傍に等間隔、若しくは、略等間隔で配置されると共に、相隣接する研磨部材42は、相互に逆回転するように構成しているので、複数の研磨部材42にて研磨対象60を走行用モータ26にて走行する台車12の進行方向に所定の幅で研磨することができる。これにより、船舶などの広い甲板やコンテナの上面や床面などを短時間で研磨できて、メンテナンスや再塗装などを容易に行うことができる。
【0047】
特に、相隣接する研磨部材42は、相互に逆回転するように構成しているので、各研磨部材42にて研磨対象60を研磨する回転摩擦力で、台車12(研磨装置10)が左右前後方向へ移動してしまうなどといった不都合を阻止することが可能となる。これにより、研磨装置10が蛇行してしまう不都合を阻止し、研磨装置10を安定して進行方向に走行させることができる。
【0048】
また、各研磨部材42は、円の半径方向における外側が研磨対象60に接触するよう回転軸48が傾斜して設けられているので、回転軸48を傾斜させずに各研磨部材42の平面で研磨対象60を研磨する場合に対して、研磨部材42外側の周速の速い部分だけで研磨することが可能となるので研磨部材42での研磨効率を向上させることができる。また、各研磨部材42の回転軸48を傾斜させることにより研磨できる面積は少なくなるものの、研磨部材42の研磨効率を向上させることでより確実に研磨することが可能になると共に、研磨部材42を複数設けているので、全体としては広い面積を研磨することができる。これにより、研磨対象60を迅速且つ高速に研磨することができるようになる。
【0049】
また、台車12に設けられ、当該台車12の進行方向に交わる方向に揺動可能とされた揺動板32と、該揺動板32を揺動させる揺動用モータ36とを備え、揺動板32に各研磨部材42を取り付け、当該揺動板32を台車12の進行方向に対して直交する方向に揺動させているので、研磨部材42を台車12の進行方向左右に揺動させながら、研磨対象60を研磨することができる。これにより、各研磨部材42が所定の隙間(間隔)で配置されていても、研磨対象60を隙間無く研磨することが可能となる。従って、研磨対象60の研磨残しもなくて幅広い研磨を行うことができるので、船舶などの広い甲板やコンテナの上面や床面などの研磨を極めて短時間で研磨することができ、メンテナンスや再塗装などを容易に行うことができる。
【0050】
特に、揺動板32を台車12の進行方向に対して直交する方向に揺動させているので、台車12の進行方向に対して研磨対象60を揺動板32の幅よりも幅広に研磨することが可能になる。これにより、揺動板32の小型化も可能になるので、研磨装置10のコンパクト化を図ることができ、コストダウンを図ることが可能になる。
【0051】
尚、実施の形態では、研磨装置10を動作させるためにバッテリ50を用いたが、研磨装置10の動作はバッテリ50に限らず、燃料電池、或いは、商用交流電源であっても差し支えない。この場合、バッテリ50の代わりに燃料電池を用いた場合は、バッテリ50の寿命のように、数年で使用できなくなってしまうなどといった不都合もなく、産業廃棄物もならず環境に優しく、また、バッテリ50に商用交流電源を用いた場合は、バッテリ50に蓄電された電力が減ることもないので、常時研磨装置10を強力に動作させることができる。尚、商用交流電源を使用する場合は、研磨装置10の移動範囲内の延長コードを使用すればよい。
【0052】
また、揺動部材を揺動板32で説明したが、揺動部材は揺動板32に限らず、L型アングルや方形アングルなどを用いて、研磨部材42やロッドエンドベアリング40などを取り付け、揺動板32同様に構成しても本発明は有効である。これにより、研磨装置10の軽量化を図ることが可能になると共に、取り扱いや持ち運びが極めて便利になる。
【0053】
また、実施形態では研磨装置10の形状や寸法或いは角度を記載したが、研磨装置10の要旨を逸脱しない範囲内で形状や寸法を変更しても良いのは言うまでもない。勿論本発明は、上記実施例のみに限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の様々な変更を行っても本発明は有効である。
【符号の説明】
【0054】
10 研磨装置
12 台車
14 ハンドル取付部
16 ハンドル
18 取っ手
20 走行用車輪
22 操舵用モータ
23 タイミングベルト
24 走行車輪
26 走行用モータ(走行用駆動装置)
28 駆動車輪
30 制御装置
32 揺動板(揺動部材)
34 揺動モータ収納箱
36 揺動用モータ(揺動部材用駆動装置)
38 ターンテーブル
40 ロッドエンドベアリング
42 研磨部材
44 傾斜部材
46 研磨部材用モータ(研磨部材用駆動装置)
48 回転軸
50 バッテリ
60 研磨対象
62 受光センサ
70 レーザー発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用車輪と該走行用車輪を駆動する走行用駆動装置とを備えた台車と、
該台車に設けられ、それぞれ回転して研磨対象を研磨する複数の研磨部材、及び、各研磨部材を回転駆動する研磨部材用駆動装置とを備えたことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記各研磨部材は、同一円周上、若しくは、同一円周近傍に等間隔、若しくは、略等間隔で配置されると共に、相隣接する前記研磨部材は、相互に逆回転されることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記各研磨部材は、前記円の半径方向における外側が前記研磨対象に接触するよう回転軸が傾斜して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記台車に設けられ、当該台車の進行方向に交わる方向に揺動可能とされた揺動部材と、
該揺動部材を揺動させる揺動部材用駆動装置とを備え、
前記各研磨部材は前記揺動部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の研磨装置。
【請求項5】
前記揺動部材は、前記台車の進行方向に対して直交する方向に揺動することを特徴とする請求項4に記載の研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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